2020年11月12日木曜日

盛り上がらない与野党論戦 学術会議問題に冷める国民、経済政策など議論すべき ―【私の論評】人事でも、大統領選挙でもその選考過程で疑義があるのなら裁判に訴えるのが筋(゚д゚)!

 盛り上がらない与野党論戦 学術会議問題に冷める国民、経済政策など議論すべき 

高橋洋一 日本の解き方




 臨時国会の与野党の論戦は、日本学術会議の任命拒否問題に集中しているが、これまでに問題点は浮上しているのか。ほかに議論すべきことはないのか。

 はっきり言って、国会は盛り上がっていない。国民も冷めている。学術会議の話題は一時、ワイドショーでも取り上げられたが、国民の関心は高くない。

 この問題はやればやるほど、学者が世間からかけ離れていることが明らかになるばかりだ。

 筆者は、あるテレビ番組で、菅義偉首相の人事介入は、大学の教職員への人事介入になるという大学教授の意見を聞いて、ビックリした。

 かつて国立大学の教職員は国家公務員であり、政府の任命権が問題となっていた。しかし、2004年に国立大学は独立行政法人化されて、教職員は国家公務員でなくなったので、基本的に政府の任命権はない。この程度の基本知識なしでコメントする学者を一般人は冷ややかに見ているだろう。

 議論が盛り上がらない理由は、任命を拒否された学者側にあると筆者は考える。憲法や法律を専門とする学者もおり、法律違反を叫ぶが、一向に訴訟する気配はない。法律違反で文句があるならば、訴訟に訴え出るのが法律家だろう。それなのに、政府を非難するばかりで、行動を伴っていない。法廷闘争、敗北拒否の構え トランプ氏、郵便投票「不正の温床」―大統領選出に影響―【私の論評】トランプもバイデンも大統領にならないというシナリオすらあり得る今後の米大統領選(゚д゚)!【日本の解き方】菅政権のマクロ経済政策は「第3次補正予算」が当面のポイント 内閣官房参与の仕事と決意―【私の論評】人事の魔術師、菅総理の素顔が見えてきた(゚д゚)!【湯浅 博】日本学術会議だけではない―頭脳流出に手を貸すお人好し―【私の論評】悪魔の手助けをする、周回遅れの愚か者たち(゚д゚)!

2020年11月11日水曜日

終わらない戦い、トランプ陣営が起こした訴訟の中身―【私の論評】トランプ氏の懸念をただの「負け惜しみ」と受け取る人は、米国の表だけみて、裏をみない人(゚д゚)!

 終わらない戦い、トランプ陣営が起こした訴訟の中身

過剰に登録された有権者、大量の死亡者も投票?

大統領選で不正が行われたと主張するトランプ氏の顧問弁護士ルディ・ジュリアーニ氏(2020年11月7日)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 米国大統領選挙がついに終幕を迎えた。長く険しい戦いだった。私自身の長年の現地取材では、大統領選というのはマラソンとボクシングを組み合わせたような苛酷な闘争だと感じることがよくあった。候補者たちが長い距離を走りながら、互いに殴り合い、傷つけ合うからだ。

 2020年の大統領選の戦いは、とくに熾烈だった。異常なほどと言ってもよい。新型コロナウイルスの大感染が米国全土を襲うという、かつてない環境下の選挙だったことに加え、ドナルド・トランプという型破りの現職大統領への民主党側の敵意に満ちた攻撃は尋常ではなかった。対抗するトランプ大統領も、自らがコロナウイルスに感染しながらも激しい反撃に出るという、これまた異様な展開だった。

無視できないトランプ陣営の抗議の動き

 さてその選挙の投票から1週間が過ぎた11月10日現在、開票結果は公式には確定していない。

 米国の主要メディアはバイデン氏の勝利を報じ、バイデン氏自身も全米に向けて勝利宣言の声明を出した。これまでの総得票数、各州の選挙人の獲得数のいずれもバイデン氏がトランプ大統領を上回っているのだから、「バイデン勝利」と報じられるのは自然の流れと言える。

 しかし、なおトランプ大統領は敗北を認めていない。選挙の投票や開票には大規模な不正があったとして一連の訴訟を起こした。同大統領を支持してきた共和党としても、上院の重鎮のミッチ・マコーネル議員やリンゼイ・グラハム議員らが徹底抗戦を呼びかけている。

 このトランプ陣営の動きは無視できない。いかにバイデン勝利と広く報じられても、厳密には公式の得票確定はまだである。選挙に不正の疑惑があれば、その疑惑を正当な手続きによって晴らす必要がある。それは民主主義の原則に照らし合わせれば不可欠な作業であり、疑惑が晴らされてこそ初めて結果が確定する。

 ではトランプ陣営の抗議の訴えはどんな内容であり、どれほどの信憑性があるのだろうか。
大量の死亡者が有権者に?

 11月8日、大統領の主任弁護士であるルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が記者会見でトランプ陣営の公式の立場を説明した。

 会見の場所はペンシルベニア州のピッツバーグ市だった。トランプ陣営からすると、不正な投票や開票が行われた疑いが同州で最も濃く、同州の選挙人20という規模からしても、その結果の修正は選挙全体の結果を変えるだけの重みを有するという。

 ジュリアーニ氏の報告を主体とするトランプ陣営の不正追及の主張は、以下のような骨子である。

・保守系の全米規模の人権主張団体「ジュディシャル・ウォッチ」は選挙時の調査で、ミシガン州、ニューメキシコ州、コロラド州など計29州の352郡で、国政調査での有権年齢住民数よりも有権登録者数が約180万人も多いことを確認した。その過剰分は不正な登録の疑いがある。

・ネバダ州ラスベガス地区の郵便投票の署名確認は約60万票のうち20万票が機械だけで行われたが、機械での検査は全体で40%ほどの確度しかないことが立証された。また共和党系組織は、ネバダ州からすでに州外に移転した有権者約9000人の州内での「投票」を確認した。

・アリゾナ州では、民主党系の選挙管理者たちが投票者の投票記入に特定のペンを使うことを指示したのは「記入された字が不明瞭となり、管理者が民主党側に有利に解釈できるようになる」として、共和党系団体が訴訟を起こした。同時に、同州内の開票所の多くで共和党側の立会人が開票作業への接近を阻まれたことにも、抗議の訴訟がなされた。

・保守系の市民団体「公共利益法律財団」は、ペンシルベニア州での有権者資格の調査により、少なくとも約2万1000人がすでに死亡したにもかかわらず登録有権者となっていたことを発見し、訴訟を起こした。

・ペンシルベニア州では、投票日を過ぎた後に到着した郵便投票を本人投票分と混ぜて開票作業をしていた州当局に対して、共和党側の訴えにより連邦最高裁のサムエル・アリト判事が票の混合を停止する命令を出した。票の混合は、郵便投票の無資格票が有資格とみなされる比率を高めることになるという。

・ペンシルベニア州の郵便局員数人が、投函の期日遅れの郵便投票を消印の不当操作などにより有効にみせかけることを上司から指示されていた。その大多数がバイデン票だったとみられる。そのなかの一部の郵便局員が共和党側の調査に応じて証言し、訴訟につながった。

 以上のような動きのなかで、トランプ陣営はとくに全米29州で合計180万と目される「幽霊有権者」の状況を掴み、同時に、選挙結果全体をなお左右しかねないペンシルベニア州での調査に焦点を絞るという。

 ジュリアーニ氏らは、バイデン氏が4万6000票のリードを保ったままなお最終確定できないペンシルベニア州での不正の追及に力を入れることを表明した。トランプ陣営は、ほかにジョージア州、アリゾナ州、ウィスコンシン州など僅差の州での投票、開票の正当性も綿密に調査するとしている。

 果たしてトランプ陣営のこうした選挙結果への抗議がどこまで実を結ぶのか。見通しはまったく不透明であるが、トランプ陣営の活動はまだ当分の間続くということだ。

【私の論評】トランプ氏の懸念をただの「負け惜しみ」と受け取る人は米国の表だけみて、裏をみない人(゚д゚)!

郵便投票については当初からトランプ氏は、不正の温床となると述べていました。米国大統領選挙の郵便投票については米国のルールなので米国が決めることですが、日本においては郵便投票は一般的には認められていません。様々な理由で、投票所にどうしても足を運べない方にのみ、厳格なルールの下に認められているだけです。そして投票日必着は当然のことです。投票日後の到着は認めていません。



日本においては、トランプが指摘する懸念と同じようなことを理由に、米国のような郵便投票を導入していません。そういう日本の選挙制度を甘受している日本人が、トランプの主張に知性がないと言うのは滑稽と言わざるを得ません。日本でも「コロナが蔓延しているから」の流で、一般的郵便投票制度を導入しようとしたら、トランプが指摘したのと同じ理由で多くの国民の反対が予想され、導入できないでしょう。

さらに、日本では総理大臣の一存で、米国では大統領の一存で郵便投票を導入したり、やめさせたりすることはできません。それを決められるのは米国においては、州ごとに異なっており、州知事や州議会、もしくは投票などによって決めることであり、大統領は直接これに介入できません。

だから、トランプ大統領の「郵便投票不正の可能性の指摘」に関しては、一定の合理性があります。

さらに、米国では日本よりは、郵便投票などに間違いが起こりやすい土壌があります。誤解を恐れないでいえば、米国という国は政府や、民間企業もおよそすべての組織が、人口比でいうと1%程度のごく一部の選びぬかれたエリートで動いていると言っても過言ではありません。

日本のように、昔なら小学校、いまなら中学校を卒業して、大企業の役員以上になることは日本でも最近ではあまりなくなりましたが、それでも全くないということではないですが、米国では皆無です。

そうして、社会もそのようになっています。米国では大学を卒業しても学歴のある人とはみなされません。大学院を卒業して、はじめて学歴のある人ということになります。大学院を卒業した人は文系なら、最初から本部の経営部門に配置されます、理系なら企業の研究・開発部門に配置されます。日本のように高卒の人が努力に努力を重ねて、経営陣の中にはいるとか、研究開発部門に入るということは米国の大企業においてはないです。

日本の東大、京大、早稲田、慶応などの有名大学にあたる米国のハーバード大学、スタンフォード大学等を卒業しても、学歴があるとはみなされません。大学院を卒業していないと学歴とはみなされないのです。そういう意味では日本は高学歴社会ではなく、卒業する大学による格差がある大学格差社会といえると思います。高卒・大卒と大学院卒とでは、最初から異なる人生を歩むのが普通です。エリートになりたいなら、大学院は必須です。そうでないと、エリート候補にもなれないのです。

誤解を避けるために言っておきますが、私はこれが良いとか悪いとかの価値判断をここでするつもりはありません。実体を語っているだけです。

この1%が努力するから、米国はまともに動くと言っても過言ではないのです。米国の一般社員教育用のテキストを読むと驚かされることが度々あります。その一項目でわざわざ「Quick responseをせよ」とあったのを読んだことがあります。

米国の一般社員用マニュアル

そこで教育担当者に「何でこんな当然の事まで教えるのか」問うと「米国の事務員たちは日本の者たちとは違う。言われないことはしないのだから、こういう基本的で常識的なことまで教えておく必要があるのだ」と答えました。経験上その必要性は十分に理解できました。

そもそも、米国は日本のように社会も同質ではないので、日本では「こんなことまでマニュアルに書く必要などないだろうとか、そんなこと誰でもわかるだろう、ここまで優しい言葉書く必要はないだろう」などということはないのです。

たとえば、日本ではどこからの店でアイスクリームを買おうと考えたとき、アイスクリームを販売しているところで、「日本語が通じるかどうか」などと心配することはありません。たとえ外国人が販売していたとしても、日本語で買い物はできます。ところが、米国では場所によっては、それを心配しなければならないときもあります。

職場でも、普通の内容ならすぐに通じても、複雑なことだと、文化や習慣が違う人が大勢いるので、きちんと言葉を定義して、しつこいくらい詳しく話をしないと伝わらないこともしばしばあります。日本のように忖度とか、KYなどということは滅多にありません。

忖度するのが当然とか、KYな人間は愚かなどという日本国内での常識は通用しません。勝手に忖度する人間や、KYを馬鹿にする人間は、逆に馬鹿者扱いされるのがおちです。

では、すべての人がそうで、何でもフランクに話を直截的にするかというと、そうとは限りません。本当の一部のエリートは、日本でいえば腹芸に近いこともします。ここで、腹芸とは、会話中に言葉にされない相手の本意を汲み取ること。また、言葉にはっきり出すことなく、それでも言いたいことを伝える事という意味もあります。

無論エリートも誰に対しても腹芸をするというのではなくて、それを通じる人たちにだけしているようです。それ以外はフランクに直截に、平易に話すように心がけているようです。ただ、これをもってすべての米国人が、どんな時もなんでもフランクに直截に心で思っていることを正直に話すと思い込むのは間違いです。学校や職場の公の場で、勉強や仕事に関わることには、誤解を避けるためにそうしているということです。

米国大統領選挙の開票作業

以上のようなことを言うのは、米国の選挙開票に携わっていた人たちを見れば、その仕事ぶりを懸念する材料は幾らでもあるのではないか思ったからです。現に、各テレビ局で引用されている例に「2000年のフロリダ州での数え直しをしたら得票差が狭まった」という事実があります。

我が国のでいえば、それこそ選挙管理委員会にかかる事例は十分あったと思います。私が言いたいのは、あの投票の集計の仕事場に集まっていたのは、上記の議論に言う99%の人たちではなかったかということです。QRコードの基礎から教えておく必要があるような者たちも大勢いたのではないかということです。

米国という国を内側で経験されたことがない人たちには、我が国の実情から考えて「そんなことがあり得るか」と、私の言い分などを信じてもらえないかもしれません。しかし、およそあらゆる種類の人たちが集まって形成されているのが米国なのです。実際オバマ大統領は不法移民でも英語の試験に合格すれば市民権を与えたということもあり、近年米国ではこの問題がますます顕著になったと思います。

それは、失業率をみてもわかります。最近の日本の失業率はコロナ前には2%台になっていましたが、これは平成の不況期などを除けば過去の失業率はこの程度でした。しかし、米国はコロナ直前は3%台でしたし、過去には4%くらいは当たり前です。景気が悪くなると6%台になることもあります。これは、いくらマニュアルなどを整備してフランクに平易に話をしても、雇用対象にならない人たちが、日本よりも多く存在するということです。

1994年7月にUSTRのヒルズ大使が「アメリカが対日輸出を拡大しようと思えば、労働者階層の識字率の向上と、初等教育の充実の必要がある」と認めていました。日本のトヨタ自動車などでは、現場で働く人たちのTQCが大きな力となっています。

日本では、現場で働く人達の創意工夫が生かされることが多いです。米国ではなかなか考えられないことです。あの開票作業に、当然のことながら99%の人々が多く配置されていたでしょう。様々な間違いの中には、不正に関するものもないとは言い切れません。特にそれまで実施したことない、郵便投票に間違いが生じないとはいえません。99%の中には、簡単に詐欺にかかってしまう人たちもいないとは言い切れません。トランプ大統領のクレームを故無しとは出来ないのではないでしょうか。

トランプ氏の懸念をただの「負け惜しみ」と受け取る人は、米国の実体をあまりに知らなすぎると思いますし、米国の表だけみて、裏をみない人だと思います。

日本の国内だけみていて、日本が世界の中で標準的な国と思いこむのは明らかな間違いです。日本のように言語でも、人種的にも、生活習慣的、文化的にも似通った国は世界でも珍しいです。

こんなことをいうとたとえば、「アイヌ民族」はどうなんだなどというへそ曲がりの人もでてきそうですが、民族とはその独自の生活様式な文化、言語を持っています。現在日本でアイヌといわれる人たちは、日本語をしゃべり、日本の学校に通い、日本人の文化圏で過ごしており、アイヌの血筋が入った日本人といえるでしょう。アイヌ民族の伝統を守って生活している人はいません。これと、米国の人種の問題とを同次元であるように語る人たちは、それこそ米国の実体を知らなすぎると思います。

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2020年11月10日火曜日

中国・習政権が直面する課題 香港とコロナで「戦略ミス」、経済目標も達成困難な状況 ―【私の論評】中国は今のままだと「中進国の罠」から逃れられず停滞し続ける(゚д゚)!

中国・習政権が直面する課題 香港とコロナで「戦略ミス」、経済目標も達成困難な状況 

高橋洋一 日本の解き方

習近平

 中国の習近平国家主席が、「2035年までに経済規模または1人当たりの収入を倍増させることは可能だ」と述べたと伝えられている。

 19年時点で、中国の1人当たり国内総生産(GDP)はほぼ1万ドルだ。本コラムで再三紹介してきたが、どこの国でもこれまでの経験則では、1人当たりGDPには「1万ドルの壁」がある。

 成長すると、経済的な自由を求めるようになってくるのが世界の常であるとともに、1万ドルを超えて成長しようとするなら、経済的な自由が必要である。というわけで、1万ドルの壁を越えるには、経済的な自由を確保するために、政治的な自由、つまり民主主義が必要というのが、これまでの経験則だ。

 筆者は、この点は中国も例外ではないと思っている。しかし、中国は今の共産党体制である限り、政治的に一党独裁を守らなければならず、政治的な自由には限界がある。これまでは1万ドルに達していなかったので経済成長が可能で、その矛盾を解消できた。しかし、現状では1万ドルにさしかかっている。

 それを乗り越えるには、民主化が必要というのが経験則だが、昨今の香港問題をみれば分かるように、中国は民主化しないまま1万ドルの壁を越えようとしている。

 その手法の一つは、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を通じた「一帯一路」構想で、国内ではなく国外での経済活動に活路を求めようとした。だが、これまでのところ、パキスタンの地下鉄建設などで既に失敗だったと国際社会から評価されている。

 もう一つの「中国製造2025」は、国内向けの産業政策である。中国の製造業の49年までの発展計画を3段階で表し、その第1段階として、25年までに世界の製造強国入りすることを目指している。

「中国製造」の発展の三段階


 しかし、ある程度の工業化がないと、1万ドルの壁を突破するのは難しいというのが、これまでの発展理論であるが、ここでも中国は今その壁にぶち当たっている。さらに米国が知的財産権の保護で中国を攻めており、以前のようにやりたい放題という状況ではなくなっているので、ここでも中国は苦しくなっている。この点については、誰が米国の次期大統領になっても変わらないだろう。

 「一帯一路」や「中国製造2025」の行き詰まりは、かつて本コラムでも指摘したが、それに追い打ちをかけているのが、香港と新型コロナウイルスの問題だ。コロナで世界経済が落ち込むのは中国にとっても打撃だが、それ以上に、「香港国家安全維持法」の施行を受けて民主主義国との価値観の違いが鮮明になった。

 長期的には経済面でも中国と付き合うのが困難だと感じる人が多くなったのではないか。しかも、コロナでは情報隠蔽もあった。

 過去の歴史を振り返っても、独裁者は広い視野を持っていないことが多い。

 中国では、習氏自らの長期政権による戦略ミスが自国を苦しめている。冒頭の経済目標も達成するのは難しいのではないか。 (内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中国は今のままだと「中進国の罠」から逃れられず停滞し続ける(゚д゚)!

上の記事で高橋洋一氏は"19年時点で、中国の1人当たり国内総生産(GDP)はほぼ1万ドルだ。本コラムで再三紹介してきたが、どこの国でもこれまでの経験則では、1人当たりGDPには「1万ドルの壁」がある"と語っています。

この「1万ドルの壁」とは、中進国の罠といわれるものです。中進国の罠とは、開発経済学における考え方です。定義に揺らぎはあるものの、新興国(途上国)の経済成長が進み、1人当たり所得が1万ドル(年収100万円程度)に達したあたりから、成長が鈍化・低迷することをいいます。

実質経済成長率と一人当たりGDPの推移(60年代以降):1万ドル前後で中所得国の罠に陥る国も

中国経済が中進国の罠を回避するには、個人の消費を増やさなければならないです。中国政府の本音は、リーマンショック後、一定期間の成長を投資によって支え、その間に個人消費の厚みを増すことでした。

ところが、リーマンマンショック後、中国の個人消費の伸び率の趨勢は低下しいています。リーマンショック後、中国GDPに占める個人消費の割合は30%台半ばから後半で推移しています。

昨年の個人消費の推移を見ても、固定資産投資の伸び率鈍化から景気が減速するにつれ、個人消費の伸び率鈍化が鮮明化しました。これは、投資効率の低下が、家計の可処分所得の減少や、その懸念上昇につながっていることを示しています。

現在、中国政府は個人消費を増やすために、自動車購入の補助金や減税の実施を重視しています。短期的に、消費刺激の効果が表れ、個人消費が上向くことはあるでしょう。ただ、長期的にその効果が続くとは考えにくいです。

なぜなら、中国政府は国営企業の成長力を高めることを目指しているからです。市場原理に基づく効率的な資源配分よりも、中国では共産党政権の権能に基づいた経済運営が進んでいます。それは、国有企業に富が集中し、民間部門との経済格差の拡大につながる恐れがあります。それは、民間企業のイノベーション力を抑圧・低下させることにもなりかねないです。

歴史を振り返ると、権力に基づいた資源配分が持続的な成長を実現することは難しいです。習近平国家主席の権力基盤の強化が重視される中、中国が1人当たりGDPを増やし、多くの国民が豊かさを実感できる環境を目指すことは、そう簡単なことではありません。

中国経済は成長の限界に直面している。投資効率の低下、個人消費の伸び悩みに加え、輸出を増加させることも難しいです。米中貿易戦争の影響に加え、効率性が低下する中で投資が累積され、中国の生産能力は過剰です。裏返せば、世界経済全体で需要が低迷しています。さらに、そこに最近のコロナ禍が追い打ちをかけています。

現在の中国が経済発展をして、中進国の罠から抜け出すためには、高橋洋一氏が上の記事で主張しているように、経済的な自由が必要です。

経済的な自由を確保するためには、「民主化」、「経済と政治の分離」、「法治国家化」が不可欠です。これがなければ、経済的な自由は確保できません。

逆にこれが保証されれば、何が起こるかといえば、経済的な中間層が多数輩出することになります。この中間層が、自由に社会・経済的活動を行い、社会に様々なイノベーションが起こることになります。

イノベーションというと、民間企業が新製品やサービスを生み出すことのみを考えがちですが、無論それだけではありません。様々な分野にイノベーションがあり、技術的イノベーションも含めてすべては社会を変革するものです。社会に変革をもたらさないイノベーションは失敗であり、イノベーションとは呼べません。改良・改善、もしくは単なる発明品や、珍奇な思考の集まりにすぎません。

   イノベーションの主体は企業だけではなく、社会のあらゆる組織によるもの
   ドラッカー氏は企業を例にとっただけのこと

そうしてこの真の意味でのイノベーションが富を生み出し、さらに多数の中間層を輩出し、これらがまた自由に社会経済活動をすることにより、イノベーションを起こすという好循環ができることになります。

この好循環を最初に獲得したのが、西欧であり、その後日本などの国々も獲得し、「中進国の罠」から抜け出たのです。そうしなければ、経済力をつけることとができず、それは国力や軍事力が他国、特に最初にそれを成し遂げた英国に比較して弱くなることを意味しました。

しかし、こうしたことは口でいうことは簡単ですが、実際に行うことはかなり難しいです。だから多くの中進国は「中進国の罠」にはまり込んで抜け出せないのです。日本は明治維新によってそれを成し遂げ、急速に経済を拡大しました。日本は、明治維新でこれをやり遂げることができなかったとすれば、西欧列強の植民地になっていたでしょう。

では、現在の中国にそのようなことができるかといえば、かなり難しいです。中国は「民主化」、「政治と経済の分離」、「法治国家化」するというプロセスを抜いたまま、これを成し遂げようとしています。

要するに、政府が掛け声をかけて、それだけではなく、頭の良い科学技術者等や思想家等に投資をしたり、先進国か科学技術や思想を剽窃して実行しようとしています。しかし、投資や剽窃をしただけで様々なイノベーションが起こることはありません。

先にも述べたように、星の数ほどの中間層が輩出して、社会の様々な分野で不合理や非効率を改めようとか、社会変革につながる様々なことをしようと切磋琢磨して努力できる自由のある社会に、様々な分野で星の数程のイノベーションが生まれるのです。

中国共産党が、自分たちが考えて、良かれと思って様々な分野に投資をしたり、あるいは他国の科学技術を剽窃したとしても、多数の中間層が自由に社会経済活動をしている社会にはかないません。

ある特定の技術や制度の革新にいくつか大成功したとしても、社会のあらゆる分野で革新が進まなければ、社会の非効率・非合理は改善・改革されず温存され、社会は停滞したままで、結局経済は発展しません。

これは、先進国と呼ばれる国々はすべて通ってきた道です。中国のみが、それを無視して、政府が計画して、大枚を叩けば、うまくいくということにはなりません。

多くの先進国は、その事実を歴史と経験から学んでいるため、完璧とはいえないまでも、中国と比較すれば、これを成し遂げています。だから、先進国は、かつて自分たちがたどってきたように、中国もいずれそのような道をたどると考えていたようですが、そうはなりませんでした。

先進国の誤算した原因は、中国の人口を計算に入れていなかったことだと思います。先進国の全部が中国よりはかなり人口が少ないです。先進国で最大は米国ですら人口は億人です。英国は、6665万人です。中国は14億人です。

これだけ人口が多いと、近代化のプロセスが遅れても、人口が少ない国よりは軍事力や経済力を古い体制を維持したまま伸ばすことができます。まさに、これまでの中国がそうでした。

しかし、中国の1人当たり国内総生産(GDP)はほぼ1万ドルに達した現在は、それも限界にきました。中国共産党もこれから経済力を伸ばし国力を強めるためには、体制を徐々にでも変換しなければ、中進国の罠から逃れられないと気付きつつあると思います。

しかし、中国共産党はそれを実行できません。なぜなら、以上で述べてきたこと、特に「民主化」、「政治と経済の分離」、「法治国家化」をしてしまえば、自分たちが統治の正当性を失い崩壊するからです。

国や社会のことを第一に考えれば、中国共産党一党独裁体制を崩してでも、新たな体制を築くべきと考えるのが当然だと思うのですが、中国共産党はそうは考えないようです。あくまで、現在の体制を継続しようと考えているようです。であれば、中国は他の「中進国」と同じように、永遠に「中進国の罠」から抜け出られないことになります。

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中国は米大統領選の混乱をついて台湾に侵攻するのか―【私の論評】中国は台湾に侵攻できない(゚д゚)!



2020年11月9日月曜日

中国は米大統領選の混乱をついて台湾に侵攻するのか―【私の論評】中国は台湾に侵攻できない(゚д゚)!

 中国は米大統領選の混乱をついて台湾に侵攻するのか

岡崎研究所

 英フィナンシャル・タイムズ紙のコメンテーター、ギデオン・ラックマンが、10月19日付の同紙に「気が散った米国は台湾にとり危険である。ワシントンでの政治的混乱は北京に機会の窓を開くかもしれない」と題する論説を寄せ、米中衝突の危険性を指摘している。


 最近、中国の軍用機は、より頻繁に台湾と中国との中間線を越え、台湾の領空を侵犯し、台湾側はスクランブル発進をかけている。11月3日の米国大統領選挙後の混乱の時期を狙って、北京が台湾に何かしかけてこないとも限らない。

 台湾への中国の侵攻は、長年、米国により抑えられてきた。米国は、台湾関係法により、台湾に武器を売り、米国が台湾防衛のために戦う可能性をオープンにしてきた。1996年、中国が台湾周辺海域にミサイルを発射した時には、米国は地域に空母を送り、警告した。その時以来、中国は大規模軍拡を行ってきた。

 現在の危機の背景には、習近平が2012年に指導者になった後の北京の台湾政策の急進化がある。習近平は、台湾に対する言辞を強めるとともに、中国は百万以上のウイグル人を収容所に入れ、香港の民主化運動を粉砕し、南シナ海で軍事基地を作り、ヒマラヤでインド兵を殺した。

 台湾への中国の全面攻撃は巨大なリスクである。台湾海峡を越え、兵力を台湾に上陸させる試みは多くの死傷者を出す。よって、北京は、より小規模な軍事、経済、心理的介入で、台湾人の士気と自治を侵食することを狙うことがもっとありうる。

 このラックマンの論説は頭の体操としてはよく書けているものである。台湾問題は、日本の安全保障に極めて重要なので、紹介すべきであると思い、取り上げた。

 台湾が米中覇権競争の中で一番発火しやすい問題であり、日本の安全の脅威になる可能性が一番高い問題であると考えている。北朝鮮の核の脅威などより、もっと心配すべき問題であり、我々は台湾問題に大きな注意を払っていくべきであると考えている。

 ラックマンの言う米中衝突の危険はもちろんゼロではないだろうが、その可能性はそれほど大きくないとも考えられる。それは、台湾に中国が武力侵攻しても、米国が介入に躊躇する事態は想像しがたく、米国の出方を中国が読み間違う怖れは小さいと考えられるからである。

 現在の中国の国家主席である習近平は、鄧小平とは考え方が外交姿勢に関して違うように思えるが、孫子の兵法、すなわち戦わずして勝つことを最善の策とみなしており、台湾人の士気を崩すなど、サラミ戦術をとってくる可能性が高い。ラックマンも同じ考えであるように思える。

 日本としては、台湾の民主主義を助け、台湾ナショナリズムがしっかりと台湾に根を下ろすことを、これまで同様に支援していくということだろう。中国が両岸関係の平和的解決という日米の要請を無視した場合には、日本もそれなりの覚悟をして対応するということだろう。

【私の論評】中国は台湾に侵攻できない(゚д゚)!

台湾に中国が武力侵攻した場合、米国が何の躊躇もなくすぐにこれに介入することになるでしょう。

そうして、米軍としてはすでに台湾、尖閣諸島では中国軍を迎え撃つ準備を、南シナ海では中国の軍事基地を攻撃する準備を整えているでしょう。

そうして、その準備とは、これらの海域に多数の米軍の原潜艦隊を配置し終わっているということです。

東シナ海や、南シナ海、台湾海峡などに、米軍が原潜を定期的に派遣しているのは、間違いないでしょう。水中の「航行の自由作戦」は、ずっと前から定期的に行われ、中国海軍の動向は、すでに米軍によってしっかりと把握されていることでしょう。通常潜水艦の行動は、いずれの国も表には出さないのですが、米軍はすでに5月下旬に潜水艦の行動に関して公表しています。

この潜水艦群の動きは太平洋艦隊司令部のあるハワイ州ホノルルの新聞が同司令部からの非公式な通告を受けて今年5月下旬に報道されました。米海軍は通常は潜水艦の動向を具体的には明らかにしていません。とこが、この時は太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋に出動中であることが同司令部から明らかにされました。

その任務は「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿っての「有事対応作戦」とされています。この構想の主眼は中国のインド太平洋での軍事膨張を抑えることだとされるため、今回の潜水艦出動も中国が覇権を目指す南シナ海や東シナ海での展開が主目的とみられます。

私自身は、米国はコロナに関係なく、原潜を南シナ海や東シナ海に常時派遣しているのでしょうが、今回はコロナ感染により、米軍の力が弱っていると中国にみられ、この地域で中国の行動を活発化することが予想され、それを抑止すためあえて公表したものとみています。米軍は潜水艦のみでも、中国軍を抑止ができるとみているということです。

そうして、この公表は米軍としては、普段から定期的に西太平洋に派遣している潜水艦隊に加えて、さらに7隻程度派遣しているということを示唆しているのだと思います。

そうすると、この地域におそらく少なくとも14隻、あるいはもっと多く20隻あまりもの米軍原潜艦隊が潜んでいるとみて間違いないと思います。

米国ではコロナ禍は今でも続いていますから、この体制は今も崩していないでしょう。潜水艦というと、その破壊力はあまり知られていませんが、現代の米軍の原潜の破壊力は相当なものです。

かつてトランプ大統領が、朝鮮有事を懸念して空母とともに、原潜を派遣したときに、自慢げに「米軍の原潜は空母に匹敵する破壊力を持つ、水中の空母のようなものだ」と語っていたことがあります。

米空母ロナルド・レーガン(CVN-76)

空母と原潜の破壊力を単純に比較することはできないですが、現在の米軍の原潜の破壊力はたしかに空母に匹敵します。原潜のなかには、魚雷はもちろん、各種のミサイル、戦術核や戦略核を搭載するものもあります。しかも、それが海中深くに潜んでいて、なかなか発見しにくいのです。

ただし、原潜は構造上どうしてもある程度騒音がでるので、発見しやすいです。ただし、中国の対潜哨戒能力はかなり低いですが、米軍は世界一ですので、潜水艦隊の運用では米軍のほうが、中国軍より圧倒的に優れています。

深海に潜んで動かなければ、中国が発見するのはかなり困難です。米軍要所要所に原潜を配置しておき、中国軍が不穏な動きを見せれば、水中からミサイルを発射して、攻撃するという戦法をとれば、米軍は圧倒的に有利です。

この原潜が潜むだけではなく動き回れば、中国軍もこれを発見できるチャンスもありますが、米軍のほうが哨戒能力に優れていますから、動き回る前に中国の対潜哨戒機、哨戒艦艇、潜水艦等を破壊してしまえば、中国側が米潜水艦を発見できなくなります。

これに対して、中国の原潜はかなりの騒音を出すので、米軍はこれをすぐに発見できます。そうなると、中国が台湾を奪取しようとして、航空機や艦艇を派遣すれば、これらはことごとく撃墜、撃沈されてしまうことになります。

仮に、中国軍が台湾に上陸して、橋頭堡を築いたにしても、それを維持することはできません。米潜水艦隊が台湾を包囲すれば、中国軍は補給ができずお手上げになるからです。

さらに、西太平洋には中国にとって別の手強い伏兵がいます。それは、日本の潜水艦隊です。日本も今年の3月に最新鋭艦「たいげい」が進水しましたが、これを加えると日本が保有する潜水艦は22隻となりました。

今年進水した「たいげい」

日本の潜水艦は、このブログにも掲載したように、原潜ではない通常型のものですが静寂性は世界一です。その静寂性を利用すれば、あらゆる海域で中国に発見されず哨戒活動等にあたることができます。無論、これによって得られた情報は米軍と共有することができます。

これでは、中国に勝ち目は全くありません。そのため、中国は台湾に侵攻しても、意味がありません。中国ができるのは、せいぜい台湾海峡等で大規模な軍事演習をして台湾を脅すことくらいでしょう。そのことを理解しているからこそ、中国は三戦に力をいれているのでしょう。

それでも敢えて中国が台湾に侵攻した場合、ますば米国潜水艦隊によりほとんどの中国の艦艇、航空機が破壊されることになります。無論上陸用舟艇なども破壊され、上陸部隊は殲滅されるかもしれません。

それでも、中国軍が無理やり上陸した場合は、米軍は場合によっては、中国本土のミサイル基地等も潜水艦によって破壊するでしょう。そうして、中国の脅威を取り除いた後に、さらに台湾を包囲して、補給を断ち弱らせた後に空母打撃群を派遣して中国陸上部隊を攻撃してさらに弱らせ、最終的に強襲揚陸艦等で米軍を台湾に上陸させ、上陸した中国軍部隊を武装解除して無力化することになるでしょう。

今年4月11日、上海にある造船所の桟橋に係留艤装中だった中国海軍初の
大型強襲揚陸艦「075型」1番艦から出火、未だに中国は公表していない

よく軍事評論家の中にも、空母を派遣しても中国の超音速ミサイルに攻撃されて、米国は負けるなどとする人もいますが、こういう人たちに限って、なぜか潜水艦隊のことをいいません。

今年の5月に、太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋派遣されたことをもって、米軍は有事の時には、特に海洋での有事の時には最初に潜水艦隊を用いる戦術に変えたと認識すべきです。私自身は、ずっと前から変えていると思います。海洋で、わざわざ初戦で空母打撃群を派遣して、敵に格好の的を提供する必要性などありません。

ただ、手の内をわざわざバラす必要もないので、黙っていただけだと思います。ただ、コロナ禍に中国につけこまれることを防ぐため、わざわさ公表したということです。この公表の裏には、以上で述べたことを、それとなく中国に伝える目的もあったと思います。

そうして、それは日本も同じことでしょう。だからこそ、潜水艦22隻体制をはやばやと築いたのでしょう。

中国は台湾に侵攻しません。いや、できません。尖閣にも侵攻できません。南シナ海は何十年にもわたって、サラミ戦術で確保できたのですが、もはやその戦術も通用しません。

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2020年11月8日日曜日

中国の国連ハイジャック作戦―【私の論評】国連に変わる新たな複数の国際組織をつくれ(゚д゚)!

 中国の国連ハイジャック作戦


【まとめ】

・中国が多数の国連機関トップ占め、中国有利に影響力を強めている。

・米「独裁を守る多国間主義」と非難。中国影響力抑止する措置展開。

・国連が中国にハイジャックされるなら、日本も認識の転換迫られる。


中国が国際連合の多様な機関の主導権を握り、国連全体を自国に有利な方向へ動かそうとする活動がますます顕著となってきた。アメリカ政府は中国の苛酷な人権弾圧までが国連で許容されることにもなりかねないこの国連ハイジャック作戦の阻止に力を注いでいる。 

だが果たして中国のこの影響力拡大をどこまで防げるのか。そのせめぎあいは国連重視を過度なまでにうたってきた日本政府にとっても注意せざるをえない展開である。

中国は現在、国連専門機関合計15のうち国連食糧農業機関(FAO)国連工業開発機関(UNIDO)国際電気通信連合(ITU)国際民間航空機関(ICAO)の4つに中国人の最高責任者を送り込んでいる。

なぜ国連で影響力を強くすることが中国にとって重要なのか。

2020年夏、香港での中国の弾圧を非難する決議案が国連人権理事会に提出された。イギリス、その他の民主主義諸国が主体の決議案だった。だがほぼ同時にキューバなど非民主主義の傾向の強い諸国による香港についての別の決議案が出された。その内容は香港に関して結局、中国政府を弁護する趣旨だった。

二つの決議案が同時期に個別に採決された。イギリス主導の中国非難の決議案は人権理事会で27ヵ国の賛成票を得た。キューバ主導の中国弁護の決議案は53ヵ国の賛成票を得た。中国政府による人権弾圧や国際公約違反が明白であっても、その中国の動きを非難するよりも弁護する国が二倍ほども存在するのである。この事実は中国の人権弾圧への国連全体による非難を消してしまうことになる。

中国は新型コロナウイルス大感染でも国連機関である世界保健機関(WHO)の支持を得て、国際的な糾弾を薄めることができた。中国から経済援助をふんだんに得たエチオピアのテドロス・アドノム元外相が事務局長だったWHOはコロナ発生に際しては中国政府の意向を忠実に受けて、発生自体を秘密にする隠蔽工作に完全に加わったのだ。

中国は国連やその関連機関の効用を十分に認識して、ここ数年、各種国連機関のトップの座を自国の代表が得るよう工作を重ねてきた。その結果がいまの4機関の実績なのだ。その工作は露骨である。

2019年6月のFAOの事務局長選では中国の屈冬玉候補が圧勝したが、その背後では中国代表たちが票を投じる多くの国の政府に対して債務の取り消しや輸出の停止などアメとムチとの激しい勧誘や威迫をかけたことが伝えられている。

2020年3月には国連専門機関の世界知的所有権機関(WIPO)の事務局長選挙が実施された。中国はこの選挙でも自国民の王彬穎氏を強く推し、中国にとって5番目の国連機関のトップポストを獲得しそうな気配だった。

だが実際の選挙では対抗馬のシンガポール知的財産権庁長官のダレン・タン氏が選出された。アメリカ政府が介入し、強力な反中国のロビー工作を進めた結果だった。シンガポール代表に反中国票のすべてを集めるために他の諸国の候補を辞退させての勝利だった。

このように国連でのアメリカの動きは重要である。トランプ政権はすでにWHOなどから脱退しているが、なお逆に介入しての中国阻止の活動も進めてきた。こうしたアメリカ政府の国連での中国抑止の政策と活動についてトランプ政権の国連大使ケリー・クラフト氏が10月21日、報告を発表した。アメリカの新聞ニューヨーク・ポストへの寄稿論文という形だった。

トランプ政権の国連大使ケリー・クラフト氏

そのクラフト大使の報告の骨子を紹介して、アメリカの国連での中国への対抗策に光をあてよう。クラフト大使はまず国連での中国の活動について以下の諸点を述べた。

・中国は国連安全保障理事会の常任メンバーの地位を利用してシリアベネズエライランなどの圧政政権を守ってきた。

・中国は国連で中国への債務を抱えた諸国に圧力をかけて、国連の人権理事会や総会で中国政府の弾圧行動を賞賛する声明に署名をさせてきた。

・国連に勤務する中国人は国際公務員として中立を保つはずなのに、国際民間航空機関(ICAO)の 柳芳事務局長はその地位を利用して台湾を国際民間航空から排除するためのサイバー攻撃などに参加した。

・国際電気通信連合(ITU)の趙厚麟事務局長はアメリカの反対する中国政府の「一帯一路」構想を推進し、中国軍部と密着するファーウェイ社の事業拡大を支援する言動をとった。

クラフト大使はこうした中国の動きへのアメリカ政府としての反対を明確にしたうえで、アメリカ側が実際にとってきた措置について次のように述べた。

アメリカ政府は2020年6月、国連の新たな政治宣言の草案に中国の提案による「習近平思想」という表現があることに反対し、最小限30ヵ国の賛同を得て、その削除に成功
した。

・今年9月、クラフト大使はニューヨークの台湾政府事務所の代表と1対1の会談をして、台湾の国連機関へのかかわりを強めることを協議した。国連を舞台とするアメリカと台湾の政府代表のこの種の会談は初めてだった。

・アメリカ政府は国連の各種の場で中国政府によるウイグル人などの民族弾圧に抗議を続ける一方、今年10月にはウイグル香港、チベットでの中国の弾圧を非難するドイツとイギリスの共同声明を支援して、共同署名国を39ヵ国に拡大することに成功した。

・アメリカ政府は多国間主義から離脱するのではなく、人権、民主主義、法の支配に依拠する多国間主義が破壊されることを防止し、破壊された部分を修復することに全力をあげているのだ。

・アメリカは一部の国連機関から離脱したが、当面、修復が困難とみなした機関からの脱退であり、修復が可能な機関に対しては関与を続けて、その改善に努める。多国間主義も独裁的な覇権を促進するようになれば、意味がない。

・この戦いは決してアメリカと中国との闘争ではない。世界の市民に寄与する民主的な多国間主義システムと独裁を守る多国間主義システムとの闘いなのだ。アメリカにとっては独裁的な政権の下で苦しむ人々のための闘いである。

以上のようなクラフト大使の言明はトランプ政権の対外姿勢を一国主義と断じ、国際問題への関与を拒むという非難への反論だともいえよう。

しかしトランプ政権の国連大使のこうした言明は中国が国連機関への影響力行使を強めている実態をまず指摘しているという点で日本にとっても重要な警告だともいえる。人権や民主主義を基調とする国連の機能が共産党独裁支配の中国にハイジャックされるような事態となれば、戦後の日本の国連への認識も根本からの変革を迫られるだろう。

***この記事は日本戦略研究フォーラムの古森義久氏の連載コラム「内外抗論」からの転載です。

【私の論評】国連に変わる新たな複数の国際組織をつくれ(゚д゚)!

上の記事にもある通り戦後の日本の国連への認識も根本からの変革を迫られる可能性が大きくなってきました。そもそも、国際連合とは「United Nations」であり、これは直訳する「連合国」であり、元々は第二次世界大戦の「連合国」を意味しており、国連憲章には、未だに敵国条項が存在しています。

敵国条項とは、国連憲章第53条、第77条1項b、第107条に規定されています。その内容を端的に言えば、第二次大戦中に連合国の敵国であった国が、戦争の結果確定した事項に反したり、侵略政策を再現する行動等を起こした場合、国際連合加盟国や地域安全保障機構は、安保理の許可がなくとも当該国に対して軍事制裁を科すことができる、としています。

つまり、あらゆる紛争を国連に預けることを規定した、国連憲章51条の規定には縛られず、敵国条項に該当する国が起こした紛争に対して、自由に軍事制裁を課する事が容認されるのです。さらに言えば、これらの条文は敵国が敵国でなくなる状態について言及していません。

そのため旧敵国を永久に無法者と宣言したのも同様であり、旧敵国との紛争については平和的に解決義務すら負わされていないとされています。従って、敵国が起こした軍事行動に対しては話し合いなど必要なく、有無を言わせず軍事的に叩き潰してもよろしいということになります。

一方、国連憲章第2章では、主権平等の原則を謳っており、この敵国条項の規定は国連の基本趣旨に反し、特定の国を差別していることになります。


では、いったい敵国はどのように定義されているのでしょうか。敵国とは1945年4月サンフランシスコで開かれた連合国の会議で、連合国憲章が完成したことに由来しています。

国際連合の英語名UNITED NATIONSは、戦時同盟国と同じであり、そこには連合国の団結を戦後も維持し、「米国方式」での国際秩序維持を図るとの発想があったのです。従ってサンフランシスコ会議で憲章に署名した米国、イギリス、フランス、ソ連、中華民国を含むUNITED NATIONSの原加盟国51カ国、すなわち第2次世界大戦で連合国に敵対していた国が敵対国となります。

これに対する日本政府の見解では、当時の枢軸国であった大日本帝国、ドイツ(現ドイツ連邦共和国)、イタリア王国(現イタリア共和国)、ブルガリア王国(現ブルガリア共和国)、ハンガリー王国(現ハンガリー)、ルーマニア王国(現ルーマニア)、フィンランド共和国がこれに相当するとしています。

一方、タイ王国は連合国と交戦した国ではありますが、この対象に含まれていません。またオーストリアは当時ドイツに、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国はそれぞれ日本にそれぞれ併合されていましたが、旧敵国には含まれないという見方が一般的です。

これらの点からすれば、戦勝国とは1945年のUNITED NATIONS憲章成立時に署名した国に限定されることになり、この時国家として存在さえしていなかった中華人民共和国と韓国・北朝鮮は戦勝国としての資格を持っていないことになります。

日本が国連に加盟したのは1956年、以来延々60年にわたって国連外交を政策の重要な柱として優等生的な役割を果たしてきたことは、多くの日本人の間ではほぼ常識となっているでしょう。

たとえば、直近の国連向け加盟国負担金の割合を見ても、そのことは一目瞭然です。2018年までは、日本が米国についで2位でした。2019年からは日本が第三位で中国が第二位となっています。

これは国連安保理常任理事国のイギリス、フランス、ロシアよりも多いです。

当然のことながら、日本は多額を負担しながら、敵国条項が存在する状態に抗議を続け、1995年の第50回国連総会では憲章特別委員会による旧敵国条項の改正削除が賛成155、反対0、棄権3で採択され、同条項の削除が正式に約束されました。

しかし、憲章改正には安保理常任理事会5カ国を含む加盟国3分の2以上に批准されたうえでの発行となっており、これらの国が批准するかどうかは各国の自由です。敵国条項は死文化しているとして、敗戦国とされた日本、ドイツなどの国以外にはあまり関心を持たれず、実際の国連活動には支障がないとされているますが、昨今の事情はこのような見方を許さなくなってきています

戦後70年をファシスト日本に勝利した戦勝記念として大々的にアピールする中国の存在がそれです。事実、中国は国連の場で尖閣諸島を巡る問題に関して「第二次大戦の敗戦国が戦勝国中国の領土を占領するなどもってのほかだ」(2012年9月27日)と日本を名指しで非難しているのです。

つまり中国は、国連の場で暗に敵国条項を意識した発言を行ったわけです。スプラトリー諸島の埋め立ての例を挙げるまでもなく、東シナ海での尖閣に対する領海侵犯、さらには勝手に防空識別圏を設定するなど、国際海洋法などの国際法をことごとく無視してきた中国が、70年前の条文を案に持ち出してきたのてす。

1945年の終戦当時、成立もしていなかった中華人民共和国が国連敵国条項を持ち出して、自らを戦勝国と位置付けるカードとして使っているわけです。事実上は死文化していると言われていても、敵国条項は未だに削除されていません。

このような論理を持ち出してくる中国は、国連の場において戦勝国の資格のない自己矛盾もお構いなく、日本国家の選択肢を狭めようとするばかりでなく、国連安保理の常任理事国である限り、いつでも敵国条項を持ち出して、日本の安保理常任理事国就任の道を閉ざす口実になるのです。

もう第二次世界大戦が終了してから、70年以上も経過しています。国連そのものが制度疲労を起こしているのです。

中国は、国連では侵略的な態度で、できるだけ多くの権利を得ようとしているのです。加盟国は、自国および他国の利益を守る姿勢が必要です。まさに、日本も日本の利益、他国の利益を守る姿勢を堅持するべきです。

もともと「国連」とは世界平和を目的として作られたものではなく、戦争遂行の為の攻守同盟がその本質です。

「国連」が、世界的な環境問題や貧困問題や人権問題に関しても全く無力であるのは、当然の帰結です。

1945年に成立した世界的レジームを固定化し、それに伴う既得権益の維持を最大の目的として存在しているのが「国連」である以上、そもそも「国連」は、世界の人類全体の利益の為に活動する動機を持ちません。

「国連」が世界の環境問題や貧困問題や人権問題について何かをやっているように見えるのは、単なるアリバイ作りに過ぎません。

それぞれの国よって、状況が異なり全体主義国も、自由主義国も、富める国も貧しい国も包含する現在の「国連」は、「世界平和」「環境保全」「人権擁護」といった普遍的価値観には馴染みません。

ましてや、未だに敵国条項を温存している「国連」では、紛争をもたらす事はあっても、「世界平和」など実現し得るはずもありません

また、全体主義国家もその構成要素として複数加盟している「国連」では、「人権擁護」など到底不可能ですし、国連の活動の眼中に「人権擁護」など重要なものとは写っていないのは当然のことです。様々な矛盾があるのに「1945年の原状変更を認めない」というのが、「国連」の国際官僚の至上命題なのです。

「国連」が、「1945年レジーム」の固定化を最大目的とする以上、貧困問題も環境問題も人権問題も、全て既存の状態のまま「固定化」されるのが必然的帰結です。

今や、「新しい国際組織」が必要なのです。現在の「国連」に代わる、新たな世界組織が必要です。価値観や文化や経済発展の度合いが異なる国々が「戦勝国」の築いた一つの国際組織に収まるという事自体が最初から無理なことだったのです。

第二次世界大戦中の"United Nations"のポスター

複数の国際組織をつくり、互いに競争し、さらにはその複数の組織のいかなる組織も永劫不滅ではなく、場合によっては消滅し、他の組織に吸収されることもあるような新たな秩序を形成していくべきと思います。

さらに、これら複数の組織には、当該組織における理念を尊重した行動をとることを条件に、他国の影響を受けることなく、各々の国が国民の意思で自由に加盟したり、離脱したりできるようにすべきです。

またこれは、ブロック経済を意味するのではなく、自由貿易はこれからも実行していくべきでしょう。さらには、ある国際組織が別の国際組織を手助けすることも可能にすべきです。

理念が未来永劫不変でありしかも、一つしか存在しない組織など、最初から腐敗し、何もできなくなってしまうのは最初からわかりきっています。腐敗した組織は、中国の影響も浸透しやすいです。もう現在の国連は用済みだと思います。

そのようなことは、日本の社会を考えても分かります、もし日本という国に一つしか民間企業がなければどういうことになるでしょうか。あるいは、日本政府が各地の自治体なしで、すべてを直轄したらどうなるのでしょうか。おそらく、何もできないし、組織を維持することが目的となり、すぐに腐敗することでしょう。

国際機関はもとより、あらゆる組織が社会の機関です。組織が存在するのは、組織それ自体のためではありません。社会的な目的を実現し、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためです。組織は目的ではなく手段です。したがって問題は、その組織は何かではありません。その組織は何をなすべきか、あげるべき成果は何かです。

国際機関もすべきこと、あげるべき成果は、種々様々です、「国連」という一つの組織がすべてを実行するのは不可能です。であれば、すべきごと、あげるべき成果にもとづき、複数の国際機関が存在するのは、当然のことです。

国際的な活動は当該国の政府が主体となるのではなく経験や実績のある国際的活動をするNGOやNPO等が実行部隊の主体となるべきであって、国際組織、それも複数の国際組織はそれを適正に統治するというのが正しい姿だと思います。適正に統治できない国際組織は消えるしかないのです。消す仕組みもつくっておくべきでしょう。

また、国際的なニーズは、時間とともに変わっていきます。ニーズなどに適応できない組織も、消す仕組みをつくり、新たなニーズがでてきたときには、新しい国際組織を設立する仕組みを構築すべきでしょう。

統治とは、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことです。社会のエネルギーを結集することです。問題を浮かびあがらせることです。選択を提示することです。

無数のNGOやNPOができあがって、あちこちで独自に無秩序に行動すれば、様々な混乱や、場合によっては、かえって不利益をもたらすことすらあり得ます。そういうことがないように統治するのが、国際組織の本来実行すべき仕事だと私は思います。

また、国際組織は自らの理念にもとづき行動し、理念にあわない国は、最終的には排除できる仕組みもつべきです。ただし、国は排除しても、社会は排除できないという仕組みをつくっておくべきでしょう。

そうなると、全体主義の国の政府は排除できても、社会は排除しないということになり、全体主義国家はこれを内政干渉などと受け取るでしょうが、この問題は行動しながら考えていくしかないでしょう。しかし、それでも、今の国連よりははるかにましになるでしょう。

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2020年11月7日土曜日

米国、再び「南北戦争」突入へ 偏向メディアやSNSは不正投票や「バイデン疑惑」に沈黙…敵は内側の“共産主義勢力” ―【私の論評】日本のメディアに問いたい!トランプ氏は日本に対して何か悪いことでもしたのか(゚д゚)!

 米国、再び「南北戦争」突入へ 偏向メディアやSNSは不正投票や「バイデン疑惑」に沈黙…敵は内側の“共産主義勢力” 


激突!米大統領選

一触即発。激戦のペンシルベニア州フィラデルフィアで、トランプ、バイデン両氏の支持者が向かい合った

 開票作業が続く米大統領選は、民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)が勝利目前だが、共和党のドナルド・トランプ大統領(74)は郵便投票などに不正があったと強調し、徹底的な法廷闘争を辞さない構えだ。今回の選挙も、事前の「バイデン氏圧勝」という世論調査と異なる結果となり、「メディア不信」と「米国内の分断」が浮き彫りになった。国際投資アナリストの大原浩氏は緊急寄稿で、「米国内の敵」の存在を指摘した。


 米大統領選ではいくつかの事実が明らかになった。

 一つは、偏向メディアによる「世論調査」なるものはまったくあてにならず、それらの情報を基に組み立てた記事の信憑(しんぴょう)性もほとんどないということだ。世論調査ほどのバイデン氏優勢ではなく、今回の選挙でも「隠れトランプ派」が大量に存在したことははっきりした。

 トランプ氏側は「選挙・開票作業の公正さ」を問題視し、法廷で争うとしているが、特に郵便投票の問題は見過ごせない。民主党や偏向メディアは無視を続けているが、郵便投票が不正を誘発しやすいのは確かだ。トランプ陣営を中心に、投票用紙の入った郵便物が大量に道路にばらまかれたり、死亡しているはずの有権者から投票用紙が届いたりといった「事件」も指摘されている。

 バイデン氏や次男のハンター氏の「ウクライナ」「中国」などに絡む金銭疑惑の証拠があれほど大量に出たのに、バイデン氏にそれほど打撃を与えなかったことも大きな問題だ。

 トランプ氏の疑惑であれば「あることないこと」騒ぎ立てる旧来の偏向メディアが、バイデン氏の疑惑に、ほぼ「だんまり」を決め込んだことは、逆に証拠の信憑性を高めている。

 新興の大手SNSまでが「バイデン疑惑」の拡散制限をかけ、「偏向メディア」の仲間入りをしてしまった。米国民が「バイデン疑惑の真実」にもっと触れていたら、バイデン氏完敗のシナリオもあり得たと思う。

 ジョージ・オーウェルの名作『1984年』が発表されたのは49年だが、当時は50年の朝鮮戦争の前で、冷戦ムードが高まっていた時期であった。第二次世界大戦でやっとファシズムを倒したと思ったら、共産主義が民主主義・自由主義国家を侵食し始めた恐怖は想像に難くない。

 共産主義国家に侵略され、『1984年』に描かれたビッグブラザー(今で言えばGAFA級の巨大ITと国家権力が結びついたような国民監視組織)に支配されるような事態を何としてでも避けようと、民主主義国家が懸命な努力をした結果、89年のベルリンの壁崩壊、91年のソ連邦崩壊に至った。

 しかし、切り倒したと思った共産主義の胞子は全世界に広がり、民主主義国家の内部から30年間侵食し続けた。その結果を象徴するのが、今回の米大統領選だといえる。冷戦当時は外側の敵との戦いだったが、今回は内側の敵との戦いであるから、より難しい。

 投票日前から、米国民の間では「投票日以降数日間は危険だから外出しない方がいい」という呼びかけが多数流れていた。BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大切だ)運動を隠れみのにした略奪や放火が続き、自警活動も活発になっているようなので無理もない。

 ■重要なのは「正しい道」に進めるか

 1861年から65年にかけて行われた南北戦争は、「奴隷制廃止」を掲げたエイブラハム・リンカーン大統領率いる共和党と、南部の農園主などの「奴隷制支持者」を母体とした民主党との戦いだったともいえる。

 われわれはその結果を知っているが、終結までに4年もかかったことからも分かるように、工業力で劣っても、南軍のロバート・E・リー将軍率いる部隊は手ごわく、北軍は苦戦した。

 その時リンカーン大統領が、北軍の司令官として白羽の矢を立てたのがユリシーズ・グラント将軍だった。50ドル札にもなっている英雄で、指揮官として優秀であることは誰もが認めるところだったが、不祥事もたくさん起こしていた。幹部たちはこぞって反対したのだが、リンカーン大統領の一言で起用が決まり、期待通り北軍を勝利に導いた。

 現在、トランプ氏を嫌う人が多いのは、彼の言動や不祥事が多いことによるためだが、そんなことよりも米国の政治を「正しい道」に進めることができるかどうかが重要なのだ。

 米国はこれから「南北戦争」に突入するかもしれないが、自国を正しい道に進めることができる「資質」とは何かを十分考えなければならない。それは、日本の政治においてもまったく同じである。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」を連載中。

【私の論評】日本のメディアに問いたい!トランプ氏は日本に対して何か悪いことでもしたのか(゚д゚)!

上の記事に出てくるグラント将軍の処遇めぐる、リンカーン大統領の逸話は有名な話です。これについては、経営学の大家ドラッカー氏も著書の中で述べています。それも、「人の強みを生かす」という文脈の中で述べています。
 成果をあげるには、人の強みを生かさなければならない。弱みを気にしてはならない。利用できるかぎりのあらゆる強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自らの強みを総動員しなければならない。(『経営者の条件』)
強みを生かすことは組織特有の機能です。ドラッカーは、組織における権力の正統性の基盤も、この人の強みを生かすという組織の機能に置くべきであるとまでいいます。

組織といえども、人それぞれが持つ弱みを克服することはできません。しかし、組織は人の弱みを意味のないものにすることができます。

成果をあげるには、強みを中心に据えて異動を行ない、昇進させなければならないのです。人事には、人の弱みを最小限に抑えるよりも、人の強みを最大限に発揮させなければならないのです。

グラント将軍

ドラッカーは、リンカーンの例を引きます。グラント将軍の酒好きを聞いたとき、リンカーンは「銘柄がわかればほかの将軍たちにも贈りなさい」と言ったといいます。

おそらく、リンカーンはグラントを司令官に登用することを幹部たちがこぞって反対しているのを知っていてこのようなことを言ったのでしょう。

酒好きだとしても、アルコール中毒になるほどではなく、日々能力を発揮してくれれば、何の問題もないです。リンカーンは酒好きという弱点より、指揮官として優秀であることのほうを重視したのです。

できることではなく、できないことに気をとられ、弱みを避ける者は弱い人間です。しかし部下が強みを持ち、成果をあげることによって苦労させられた者など、一人もいないです。
米国の鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが自らの墓碑に刻ませた『おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る』との言葉ほど大きな自慢はない。これこそが成果をあげる処方である。(『経営者の条件』)

 

アンドリュー・カーネギーの墓


まさに米国メディアやそれに追随する日本のメディアもこのドラッカーの主張する原則を全く無視しているのでしょう。本来ならばトランプ氏にできないことに注目するのではなく、できることに注目すべきなのです。

米国ではトランプ氏のできることに注目する人も多いので、前回の大統領選挙では勝利して、不可能と思われていたトランプ大統領が登場し、今回も選挙がこれほど伯仲したものになっているのです。

特に、日本のメディアまでが、米国のメディアに追随するのは本当に理解できません。トランプ大統領が日本に何をしたというのでしょうか。

確かにトランプ氏が大統領になったばかりのころは、 日本に対して理不尽な要求を口にしたこともありますが、それは影を潜めました。

その後現状では、日米関係は従来に比較して、最も良い状態になっていると言っても過言ではありません。

さらに、コロナ禍には悩まされていますが、これがトランプ政権の失敗によるものという明らかな証拠はありません。仮にヒラリーが大統領になっていたとしても、同じようなものだったかもしれません。

私は、6月あたりのBLM運動のデモ等で参加者のほとんどがマスクをしていなかったので、これはかなり感染が増えるだろうと漠然と思っていましたが、まさにそのとおりになりました。

ブラック・ライヴス・マター運動


大統領に就任して以来の経済対策は成功しており、それは空前の雇用状況の良さによって示されていました。さらに、コロナ禍による経済の低迷からの立ち直りも、先日もこのブログに掲載したように、米国史上空前ともいえるような速さでした。

安全保障に関しては、ご存知のように中国に対して厳しい措置をとり、米国は尖閣は日本の領土であると公式に発表しました。ちなみに、オバマ政権ではこのようなことはありませんでした。

さて、上の大原氏の記事に関しては、大部分は賛成なのですが、"自国を正しい道に進めることができる「資質」とは何かを十分考えなければならない"という部分には賛成しかねます。

なぜなら、ドラッカー氏はリーダーシップについて、以下のように述べいますし、私もそう思うからです。

リーダーシップとは人を引きつけることではない。そのようなものは煽動的資質にすぎない。仲間をつくり、人に影響を与えることでもない。そのようなものはセールスマンシップにすぎない。(『現代の経営』)

リーダーシップとは仕事であるとドラッカーは断言します。リーダーシップの素地として、責任の原則、成果の基準、人と仕事への敬意に優るものはありません。

リーダーシップとは、資質でもカリスマ性でもありません。カリスマ性といえば、ヒトラー、毛沢東、スターリン、金日成はかなりのカリスマ性を持っていたと思います。カリスマ性とは全体主義者や独裁主義に特有の資質かもしれません。

意味あるリーダーシップとは、組織の使命を考え抜き、それを目に見えるかたちで確立することです。リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者です。

リーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく望ましいかを考え抜きます。リーダーの仕事は明快な音を出すトランペットになることだとドラッカーは言います。

リーダーと似非リーダーとの違いは目標にあります。リーダーといえども、妥協が必要になることがあります。しかし、政治、経済、財政、人事など、現実の制約によって妥協せざるをえなくなったとき、その妥協が使命と目標に沿っているか離れているかによって、リーダーであるか否かが決まるのです。

ドラッカー氏自身は多くの一流のリーダーたちを目にしてきました。外交的な人も内省的な人もいました。多弁な人も寡黙な人もいました。優秀なリーダーに共通する特有の資質などなかったと、ドラッカーは語っています。その上でドラッカーは以下のように語っています。

 リーダーたることの第一の要件は、リーダーシップを仕事と見ることである。(『プロフェッショナルの条件』)

トランプ氏は、大統領になる直前に大統領就任後直ちに実行するという公約「100日プラン」を公表していました。

この公約は次から次へと実行されていきました。無論、すぐには実行できないものもありましたが、それでもかなり実行しましたし、現在でも実行しつつあります。

中には、TPPからの脱退とか、国境の壁を築くというものもありましたが、これも公約でした。そのほか、様々な公約を実現していますが、特に経済には目覚ましいものがありました。特に、雇用に関しては神経質すぎるほどで、とにかく公約を実現することに執着しつづけ、実際かなり良くしました。

このようなことは、従来の政治家にはみられませんでした。実業家出身のトランプ氏だったからこそ、このようなことを実行したのでしょう。

コロナ禍で米国経済は、一時的にかなり落ち込みましたが、7月〜9月期にはほぼ元通りに回復したと予想されています。これは、このブログにも掲載したように歴代で最もはやい回復といわれています。

これだけ、公約としての目標を掲げて、実際に実行した大統領はかつて存在しないのではないかと思います。

このようなトランプ大統領を狂ったピエロのように報道する日米のメディアは、いずれもかなり偏向しており、トランプ大統領報道に関しては全く信用できません。

今回の選挙戦はもつれにもつれましたが、最後の勝敗は無論米国民の良心に委託するものとして、日米のメディアには、もっとまともな報道をするようにすべきです。

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2020年11月6日金曜日

法廷闘争、敗北拒否の構え トランプ氏、郵便投票「不正の温床」―大統領選出に影響―【私の論評】トランプもバイデンも大統領にならないというシナリオすらあり得る今後の米大統領選(゚д゚)!

法廷闘争、敗北拒否の構え トランプ氏、郵便投票「不正の温床」―大統領選出に影響

 開票が進む米大統領選で、共和党のトランプ大統領の陣営は4日、接戦州で集計中止などを求める訴訟を相次いで起こした。選挙人獲得数で民主党のバイデン前副大統領に後れを取るトランプ氏は、大幅に増えた郵便投票について「不正の温床」だと主張し、敗北しても結果の受け入れを拒否する構え。各州で選ばれた選挙人が大統領候補に投票する来月14日を目安に、法廷闘争を交えた論争が続きそうだ。

 トランプ陣営は中西部ミシガン州と東部ペンシルベニア州で、それぞれ「州内の開票所で陣営スタッフによる合法的な立ち会いが拒否された」として提訴。郵便投票分の集計中止を求めた。ミシガン州のベンソン州務長官は「根拠がない」と反発している。

 トランプ陣営は南部ジョージア州でも、投票日を過ぎて選管に到着した郵便投票に偽造用紙が紛れ込んでいる可能性があると裁判所に訴え、問題ありとされた票とそれ以外の票を分けて保管するよう求めた。

 今回の大統領選では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、史上最多の6500万人以上が郵便投票を行った。民主党支持者に郵便投票を選ぶ傾向が強いとされ、集計中止なら相対的に共和党が有利になるとみられている。

 法廷闘争は、その後の大統領選出手続きにも影響する可能性がある。来月14日には50州と首都ワシントンで選挙人集会が開かれ、正副大統領候補に投票。通常は形式的な手続きだが、裁判が長引くなどして同8日の期限までに選挙結果が確定しない州が出れば、その州から正規の選挙人が参加できない異常事態に陥りかねない。

 選挙人投票の結果は、来年1月6日の上下両院合同会議で正式に確認される。一部州で決着がつかず、トランプ、バイデン両氏とも選挙人の過半数(270人)を確保できなかった場合、憲法修正12条の規定に基づき、大統領選出は下院の手に委ねられる。

 下院では、州単位で構成する全50の議員団が各1票を投じ、過半数の26票を得た候補が大統領となる。下院は大統領選と同時に行われた選挙で全議員が改選されており、1月3日に就任する新下院議員の構成に議員団の投票行動は左右されることになる。

【私の論評】トランプもバイデンも大統領にならないというシナリオすらあり得る今後の米大統領選(゚д゚)!

現在でもまだ大統領選でトランプ氏が勝利する可能性はあります。トランプ氏が法廷闘争をしようがしまいが、12月14日の選挙人投票は行われる可能性が十分あります。なぜなら、法廷闘争を始めたからといって、すぐに選挙の差し止めということになることは考えにくいからです。ただし、最高裁で判決がでるというシナリオも否定しきれません。

バイデンもトランプも大統領にならないというシナリオも・・・・・

実は、この選挙人投票が曲者なのです。

大統領選でバイデン氏が選挙人の過半数270人以上を獲得した場合でも、270人ギリギリの場合だと、「選挙人投票」(12月14日)で造反投票が出て、当選できなくなる危険性すらあるのです。

選挙人投票は通常はセレモニー的に行われるといわれていす。通常は全くの形式でニュースにもならないのですが、今回はここが主戦場になる可能性もあります。

バイデン氏が270人以上の選挙人をこれからか獲得したとして、選挙人全員が宣言通りに投票すれば過半数を超えるでしょうが、これが確実にそうなるという保証はないのです。それは、不誠実な選挙人が存在するからです。

前回2016年の選挙人投票でも、トランプ氏は306人を獲得していたのですが結果は304人、クリントン氏も232人のはずが227人しか得票が入らず、両陣営で計7人が自陣営候補に入れない「謀反」があったとし、これはこのときの選挙に限らず以前から発生しています。

前回の選挙ではトランプ氏が過半数を大きく超える306とっていたので大勢に影響なかったのですが、今回のようなギリギリ270のケースだと、たった1人か数人の不誠実でもバイデン氏が当選できなくなる可能性が出てくるのです。

そうして、これは政治的に問題がありますが、違法というわけではありません。選挙人投票がまったくセレモニーなどとして軽視できないのです。現に違う人に入れている人は過去にも決して少ないとはいえなかったのです。

さらに、双方270に届かない場合は、連邦議会の下院の投票で決めることになります。この場合も混乱が予想されます。ただ、現状では下院州代表は共和党が多数派なので、トランプ氏に有利です。1800年代に2回、下院で大統領が選出された例があります。

とはいいながら何があろうと、1月20日に次の大統領の任期が始まると、憲法は定めています。

1月20日の正午には、誰かを大統領にしなくてはならないのです。結論が出ないときは、後任選びの計画を進めることになります。

ペンス氏が大統領になるというシナリオも・・・・

下院が大統領を巡ってこう着する一方で、上院が副大統領候補を承認する状況も考えられます。

仮に下院が大統領就任式の日までに決着しない場合は、上院が選んだ副大統領が大統領になります。もし、上院が現行のペンス氏を副大統領として承認した場合は、ペンス氏が大統領になる可能性もあります。

下院議長ナンシー・ペロシ氏が大統領になるシナリオも・・・・・

上院が副大統領を選べない場合は、下院議長(現在は民主党のナンシー・ペロシ氏)が大統領の職に就くことになります。

トランプでもバイデンでもない人が、米国大統領になる可能性もあるのです。どのシナリオになったとしても、1月20日の午前には次期米大統領が決まります。


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2020年11月5日木曜日

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激突!米大統領選

バイデン氏

 米大統領選は4日開票が進み、民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)が、激戦の「ラストベルト」(=さびた工業地帯)の一角、中西部ウィスコンシン州とミシガン州を制し、優位に立った。ただ、共和党のドナルド・トランプ大統領(74)の陣営は、郵便投票などの不正投票疑惑を指摘しており、ウィスコンシン州では再集計を申し立てる意向で、ミシガン州では集計停止を求めて法廷闘争に着手した。大混乱する米国を横目に、中国共産党政権は「市場開放」を強調したうえ、沖縄県・尖閣諸島周辺に連日のように侵入する中国海警局に外国船への武器使用を認める草案を公開した。日本に求められる覚悟とは。ジャーナリストの有本香氏が人気連載「以読制毒」で迫った。


 これほどメチャクチャな米大統領選を見ることになるとは思わなかった。現在、日本時間5日未明だが、大勢はまだ判明していない。それどころか、まさに混沌の中に入らんとしている。

 そもそも、米民主党が、どう見ても認知能力に問題のあるバイデン氏を候補に立てるしかなかった時点で、嫌な予感はした。「本当に米国民の多数が、この人に『核のボタン』を預けていいと思うのか?」と。

 だが、民主党側はそんな良識などお構いなしだった。

 「トランプ氏を引きずり下ろせるなら、候補者など誰でもいい」と言わんばかりの、手段を選ばないすさまじい攻勢。政策もビジョンも何もないまま、ただただトランプ氏を貶すだけ。これは民主党というより、米国の極左勢力と大メディア、さらにSNS含む主要ネット企業までもが共闘して仕掛けた「仁義なき戦い」だった。

 この戦線になぜか、日本のリベラル気取りのメディア人や学者らが喜んで便乗し、4年前同様、日本の世論を「反トランプ」に誘導せんと励んだ。何とも情けない限りである。

 他方、米国の開票作業のいい加減さ、不明朗にもあきれさせられた。

 トランプ氏が、オハイオ州やフロリダ州、テキサス州を制し、そのまま逃げ切るかと思いきや、日本時間4日夜半から突如、残りの激戦州で相次いでバイデン票が大量に加算される「異常」が起きた。その1つであるミシガン州では、「1ケタ違いのタイプミスでした」と、シラッと修正される。日本では考えられないずさんさだ。

 さらに、バイデン氏がウィスコンシン州を取ったと伝えられた直後、トランプ陣営は同州に票の再集計を求めると報じられ、結果はますます読めなくなっている。

 郵便があてにならない米国で、民主党側が「郵便投票を」と呼びかけ出した時点で、まともな選挙にならないと予想はできた。それにしても、一体どこの途上国かと言いたくなる顛末(てんまつ)だ。

 そんな米国の混乱を見透かしたように、4日夜、中国の習近平国家主席が「国内市場の開放を一層進める」とのビデオ演説をしたと報じられた。

 「バイデン氏が勝てば中国が勝つ。私が勝てば米国が勝つ」

 ■永田町には緊張感なし…

 投票日の2日前、トランプ氏は、ミシガン州での演説でこう訴えたが、この言葉がまさに真実味を帯びてきている。

 トランプ氏は1カ月ほど前、ツイッターに次のような趣旨の書き込みをしていた。

 「私は中国から数十億ドルを奪って、米国の農家と財務省に配った。バイデン氏とハンター氏(=バイデン氏の次男)が勝てば、中国が米国を支配することになる」

 このツイートを読んだとき、筆者は「仮に、トランプ氏が負ければ、日本も、世界も中国の軍門に下っていくことになるだろう」と暗澹(あんたん)たる思いになったものだ。

 こうした状況下にあっても、永田町に緊張感はない。

 予算委員会は案の定、日本学術会議がどうこうとやり合う「高給遊技場」と化している。せめてもの救いは、今回、一般国民が過去になかったほど真剣に、米大統領選の行方をウオッチしていたことだ。政治家も大メディアも当てにならない。かくなる上は、自力で現地情報に触れ、今後のことを考えたいと思う国民が増えたことの証左だ。

 米国でも、大メディアや世論調査の世論誘導に左右されない多くの国民の意思が、トランプ氏の大きな得票数に表れている。

 日米の自立した国民はどこへ向かうべきなのか。その一員を自認する筆者としては、まず立ち向かうべき敵を見間違えないよう肝に銘じたいところである。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

【私の論評】バイデン氏には選挙で負ける以上の、耐え難い屈辱の日々が待っているかもしれない(゚д゚)!

日本では、トランプ大統領が米国を分断させたと思い込んでいる人が多いですが、米国でも保守であろうが、リベラルてあろうが、まともな人はそうではないことを知っています。

そもそも米国は当初から分断した国家だったのです。だからこそ、南北戦争が起こったのです。

さらに、「米国ファースト」というキャッチフレーズなどから、米国の孤立主義が懸念されましたが、これも結局間違いでした。考えてみれば、米国大統領が「米国ファースト」というのは当たり前です。米国大統領が「他国ファースト」を唱えれば全く異常です。どの国のリーダーもまずは自国民ファーストです。

「日本列島は日本人だけの所有物じゃない」とは、鳩山由紀夫 民主党幹事長(当時)が、2009年4月17日に行われたニコニコ生放送において、外国人参政権について質疑応答している最中に口にした発言ですが、このような発言をするリーダーこそ異常です。

トランプ氏との対比から、国際社会を重んじる大統領というイメージが強くなったオバマ前大統領ですが、オバマ氏こそ米国の孤立主義的なスタンスを先鋭化した大統領です。

オバマ氏は、国際社会(欧州社会)から何度も要請を受けたにもかかわらず、頑なにシリア問題への介入を拒んでいました。またオバマ氏は、米国史上最大規模の軍縮を行っており、米軍予算を大幅に縮小しました。米軍の海外展開の象徴のひとつでもあった沖縄の海兵隊を、大量にグアムに撤退させたのもオバマ政権です。

また、日本ではあまり報道されなかったのですが、オバマ政権下では日本に配備する空母の不要論まで飛び出していました。横須賀を母港とする米海軍第7艦隊の主力空母ジョージ・ワシントンは、大規模修繕に入るため米国に戻る予定でしたが、一時は後継の空母を横須賀に配備しないという話が浮上していました。

オバマ氏
最終的にはロナルド・レーガンの配備が決定し、同艦は現在、横須賀に常駐しています。とろで、アジア太平洋地域の地政学に少しでも関心のある人なら、横須賀に空母を配備しないという議論が出たことの重大性を理解できるはずです。これは在日米軍撤退を匂わせたトランプ政権の話ではなくオバマ政権での話です。

つまり米国の「引きこもり」はトランプ氏が思いつきで始めたことではなく、以前からその潮流が出来上がっていたと考えた方が自然です。大統領になりたてのトランプ氏はその流れを継承しようとして、後に誤りだと気づいたということです。

そもそ米国が引きこもりなるための経済的な諸条件はすべて整っていました。米国はシェール革命の結果、サウジアラビアを抜いて世界最大の石油産出国となりました。米国はこの先、エネルギーを外国に頼る必要がまったくなったのです。

しかも世界最大の消費市場を持ち、食糧も自国で生産することができます。高度なITを持ち、圧倒的な規模の金融市場を運営しています。こうした基礎的条件の変化は、確実に米国民の意識を変えているはずであり、それが政治の表舞台に顔を出すことがあるのです。

米国内の対立・分断についても同様です。米国は南北戦争という激しい内戦を行った国であり、公民権運動が盛り上がった1960年代にも、すさまじい対立がありました。

米国は常に分断と融和を繰り返し、変化を遂げてきた国であり、それは政党も同じです。多くの人が民主党はリベラルな政党と思っているようですが、それは党の戦略として、あえてリベラルに舵を切った結果にすぎません。民主党は以前は南部の土地所有者を支持基盤としており、どちらかというと人種差別的であり、共和党の方がむしろ融和的でした。

そうして、米国社会に目を向けると、特にメディアは、大手新聞はすべてリベラル系であり、大手テレビ局はフォックスTVを除きすべてがリベラルです。そのため、社会のあらゆる分野でリベラル系の考え方が主流であり、保守などのリベラル以外の考え方は異端です。

米国社会のほとんどが、リベラル的な考え方が主流とされています。それは、多くの職場でも、役所でも、学校でも同じです。米国にも保守をはじめリベラル以外の人々も大勢いるはずですが、そういう人たちの考え方や、行動、ライフスタイルなどはかき消されてしまうのです。

だから、米国メデイアがトランプ氏に対して否定的であるのは、当然のことなのです。しかも、こうしたリベラル主流の世論が左翼などに利用される場合もおうおうにしてあるのです。

現在はリベラルと目されている、民主党ですが、必ずしもそうとはいえないことは過去に遡ればよくわかります。

たとえば、公民権運動のひとつのきっかけとなった出来事にリトルロック高校事件と呼ばれるものがあります。1954年、黒人と白人の融合教育が進み、南部アーカンソー州リトルロックの公立高校に黒人生徒が登校を開始すると、当時のフォーバス州知事が混乱を避けるとの名目で州兵を学校に送り、事実上、黒人の登校を阻止してしまいました。

これに対して全米から反発の声が上がり、州と連邦政府は対立、最終的には連邦政府が軍をアーカンソー州に派遣するなど、一触即発の状態となりました。この時、しぶしぶながらも連邦軍の派遣を決定したのは、共和党のアイゼンハワー大統領であり、一方、黒人の登校を阻止したフォーバス州知事は民主党です。しかもフォーバス氏は、その後、辞任するどころか、再選を果たし、6期も州知事を務めました。

この事件を見れば、人種差別というものがいかに根深いものであるのかがよく分かります。また、共和党=保守、民主党=リベラルという簡単な図式では判断しない方がよいということも理解できます。ちなみにリトルロックは、民主党のビル・クリントン大統領ゆかりの地です。

米国は当初、白人同士での人種差別(メジャーなアングロ・サクソンに対して、マイノリティであるイタリア系、アイルランド系という図式)が深刻でした。そもそも米国ではイタリア系、アイルランド系が白人とはみなされない時代があったのです。

対立が解消された現在でも、人材登用がオープンな公務員にはアイルランド系やイタリア系が多いなど、かつての時代の名残りがあります。また米国の映画やドラマなどを見るとよく分かlりますが、今でも多少の差別意識は残っていることがわかります。

その後、対立の図式は黒人と白人にシフトし、公民権運動を経て黒人と白人の融和が進みました。現在ではそれがヒスパニック系やイスラム教徒との対立にシフトしていると考えれば、それほど驚くにはあたらないです。

個人的には、多くの対立を経て民主主義を確立してきた歴史を踏まえ、米国が新しい融和社会を構築してくれることを願っていますが、あくまでそれを決めるのは米国人です。ただし、わたしたち日本人は、米国社会には様々な面があり、常に対立で揺れ動いてきた国だという冷静な認識を持つ必要があるでしょう。

単純に米国メディアやそれを受け売りをする日本のメディアみて、トランプ氏のことを米国社会を分断させた、狂ったピエロのように考えるのは完璧な間違いです。

ましてや、大統領選挙の結果に不満を持ち、法廷闘争に持ち込もうとするトランプ氏を一方的に批判するのは間違いです。

バー司法長官は選挙前のCNNのインタビューで「郵便投票は論理的に、不正や強要のリスクが非常に高い。この手法のルールを変更しようとするのは無鉄砲で危険だ。火遊びをするようなものだ」と述べました。

米国のバー司法長官は、不在者投票が潜在的な不正投票の最大の温床と結論付けた連邦選挙改革委員会の2005年の報告書を引き合いに出し「それ以降、新聞やテレビ、学術論文などで不正や強要のリスクがあると言われてきた。こうした指摘が変化したのは、現政権が就任してからだ」と主張しました。

バー長官は、外国政府が投票用紙を偽造する可能性にも言及しました。ただ、そうした動きを示す証拠は確認していないとしました。

ただこうした懸念は的中したようです。激戦州で相次いでバイデン票が大量に加算される「異常」が起きたのです。

冒頭の記事ににも指摘されていた突然大量の票が加算された様子は以下のグラフではっきり分かります。ミシガンでは4日朝7時17分に突然バイデン票がトランプ票に追い付いています。それを示したのが以下のグラフです。


そしてウィスコンシンも6時23分、突然バイデン票が増えて、これまたトランプ票に追い付いてしまいました。


さらに不思議なことがあります。米大統領選挙、激戦州においては、 登録された有権者数よりも 多くの人が投票していることになっています。 余りにも不自然です。


ジョージア州では、登録した人のうち96%が投票したことになっていますが、これはかなり不自然です。独裁国家でもない限り、このようなことにはなりません。多めに見積もっても70%もいけば良い方です。

実際、今回の米大統領選挙の投票率の米メディアによる予想値は、65〜66.9%です。



他の接戦州では、100%を超えています。これではまるで、中国のGDPの統計のようです。中国のGDPは、最近はそのようなことはありませんが、ひところは、国全体のGDPが、全省の合計よりも上回っているということが何度かありました。これは、微博などでも有名になったため、その後改めたようではありません。それ以来中国のGDPは、単なる「政治的メッセージ」とみなされるようになりました。

これは何と言うか、あまりにも解りやすい不正で、露骨すぎます。また、ペンシルベニアでは投票締め切り後の票を締め切り前のものとしてカウントすると、民主党所属の州財務長官が計画し、それを実行したようです。

要するに民主党総出でツイッターなどのSNSも加わっての国家的犯罪の様相を呈してきたのです。誰もが理解できるこれだけ大掛かりな不正となれば、バイデン派でも、トランプ派でもこのからくりを知っている人も多いのでないかと思います。

バイデン派自分たちは不正をしているという負い目もあるし、不正でも勝利しそうなので、そもそも暴動を起こす必要性がないし、トランプ派は不正があまりに明らかなので、自分たちがあえて暴動を起こさなくても、トランプ氏は確実に司法に訴えるだろうし、そうすればかなり勝ち目があるだろうし、わざわざ暴動を起こすまでもないと考えるでしょう。だかこそ暴動騒ぎが起こっていない可能性があります。これからも起こらないかもしれません。

これをトランンプ陣営が見逃す筈は無いですが、民主党というか、これを計画した悪の枢軸は簡単には引き下がらないでしょう。ただし、この悪の枢軸、頭が悪すぎるとみえて、調子に乗りすぎました。要するにやりすぎたのです。中国共産党のようにさじ加減ということを知らない連中のようです。

トランプ陣営からすれば、当初の最悪の想定で進んでいます。 郵便投票と不正投票による混とんをトランプ側はその有効性を認めないでしょう。 まずは、州の再集計結果待ち その上で法廷闘争になる可能性が高いです。

トランプ側はすでに勝利宣言をしていて、これを取り下げないでしょう。勝利宣言の場で不正投票に言及しており、一部の州でそれが確認されています。また、そのような州の多くは最終結果ではないとしており、個別の票の適格性有効性をめぐる審査を要求するものと思われます。

日本の「もりかけ桜」と異なり、これだけの客観的数値的裏付けがあれば、調べれば必ず何かがでてくるでしょう。

バイデン氏には選挙で負ける以上の、耐え難い屈辱の日々が待っているかもしれません。あるいは、バイデンは単なる操り人形で、多くの人が想定している以上に大きな存在が背後で動いている可能性もあります。バイデン氏は思いもかけずに、自ら危険な領域に踏み込んでしまったようです。米司法当局はそこまで踏み込んで欲しいものです。

そうして、米国人にはこうしたマイナスの出来事にひるむことなく、過去の米国のように、米国の政治、米国の選挙方式等に大きな変革を成し遂げていただきたいです。

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「河村たかし前市長の政策と理念を引き継ぐ」名古屋市長選で広沢一郎が当選 自・立・国・公推薦の大塚耕平さんら破る  河村市政15年の評価などが争点となった名古屋市長選挙が11月24日、行われ、新人で元副市長の広沢一郎さんが当選を果たしました。 【動画で見る】「河村たかし前市長の政...