2022年2月5日土曜日

北京五輪と習体制の総仕上げ 日本は過度な配慮ばかりせず「人権追及と尖閣防衛の確立」を―【私の論評】石原氏も言及しなかった、尖閣を守り抜く日本の潜水艦隊の実力(゚д゚)!

日本の解き方

聖火の点火者を務めたウイグル族のジニゲル・イラムジャン選手(左)と漢族の趙嘉文選手

 4日に北京冬季五輪の開会式が行われる。人権問題や経済、安全保障など習近平政権の国内外の現状と、五輪後の課題はどのようなものがあるのか。

 1日の衆院本会議で「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」が採択された。筆者は関係議員からこの問題について聞く機会がしばしばあり、この決議文にいたる経緯を知っていた。結論からいえば、遅きに失して、しかも決議文に「中国」が一度も登場せず、「非難」「人権侵害」といった重要な表現も削除された骨抜きの内容だ。

 当初決議案が、自民、公明の与党内調整でどのように修正されていったのかは、関係者のネットをみれば簡単に分かる。

 「名指しはなくても中国の人権侵害を非難していることは分かる」という人もいるが、この決議案を英訳すると、誰も非難していないことになる。

 次期夏季五輪開催国であるフランスでも、議会では中国によるウイグル族への人権侵害を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定し、非難する決議が出たのと好対照だ。先進国ではよくあることだが、フランス政府は次期五輪を控えて慎重だが、議会はその政府に圧力を加えるものとなった。

 それにしても、中国への過度な配慮は公然と行われている。1月31日には、旧暦の大みそかに合わせて東京タワーが赤くライトアップされた。新型コロナウイルスの緊急事態宣言かと勘違いしそうだが、実は中国紅(チャイナレッド)で、中国の春節(旧正月)の祝いだそうだ。岸田文雄首相や小池百合子東京都知事が祝辞を送り、中国でも生放送された。その一方、相変わらず尖閣諸島周辺では中国公船が領海侵入を繰り返している。

 中国は隣国なので、その動向を注視しなければいけないのは不幸ともいえるが、隣国に最大限注意するのは国際政治ではやむを得ないことだ。

 中国は北京五輪後、習体制の総仕上げに向かおうとするだろう。それは、本コラムで再三指摘してきた中国の「核心利益」の最後のパーツである「台湾・尖閣」を手中に収めることだ。それを諦めることはあり得ず、これまでも着々と準備している。尖閣への領海侵入も日常茶飯事だ。

 普通の国なら、尖閣に防衛拠点を設けるだろう。それは軍事的に抑止力になるが、国際政治では実効支配の証だ。

 作家で元東京都知事の石原慎太郎氏が1日に逝去された。石原氏は2012年4月、「日本人が日本の国土を守ることに何か文句がありますか」と都が尖閣諸島を購入すると表明した。

 その後、民主党政権下で国有化されたが、石原氏は船だまり施設の構築などを主張していたから、都が所有していれば、今より実効支配は明確になっていただろう。人権問題で言うべきことは言いつつ、一方で実効支配を確立していかなければいけない。

 石原氏は現状をかなり憂えていたはずだ。ご冥福を祈りつつ、恥ずかしくない行動をすることが、日本の五輪後の課題だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】石原氏も言及しなかった、尖閣を守り抜く日本の潜水艦隊の実力(゚д゚)!

尖閣防衛については、実は自衛隊は随分前から、準備していて軍備的には十分な防備ができる体制になっています。人によっては、日本は中国と戦争などすれば、すぐに負けて尖閣は人民解放軍に占領されてしまうと思い込む人もいますが、そんなことはありません。

尖閣諸島

日本の軍備の特徴は何かといえば、それはASW(対潜水艦戦闘力)が強いということにつきます。これには、中国は今でも全く及びません。それはこのブログでも何度も掲載してきました。

日本の潜水艦は、「非大気依存推進機関(AIP)」の搭載により作戦時にはエンジン駆動で蓄えた電気で航行できるため、ほとんど音を発しません。リチウム蓄電池の性能向上で静粛航行時間も大幅に伸びています。航行可能深度は500メートルとされます。最近では、リチウム電池だけで動く、潜水艦が開発され、それはさらに航行時間を伸ばしています。

米原潜を除けば世界のほとんどの潜水艦が400メートル以下を限界とするので、これらの真下を航行することが可能です。また、海上自衛隊の潜水艦救難艦は深度1000メートルでの救助活動が可能な深海救難艇を搭載しているほか、乗組員(水中作業員)は450メートルの深さで潜水作業した記録を持ちます。

米英の原潜は艦内で酸素を生成でき航続距離は非常に長い一方、構造上蒸気でタービンを回し続ける(原子炉を止めたり動かしたりはできない)ため静粛性では日本製に劣ります。もちろん中国の潜水艦もそうです。

潜水艦探知能力については、潜水艦配備の装備と艦外の味方からの情報を高性能コンピューターで迅速に統合管理しています。ソナーは潜水者の酸素ボンベを使った呼吸音のレベルまで見分ける能力を持ち、レーダーは潜水艦配備と衛星・対潜哨戒機の双方の監視をコンピューターで統合運用を実施しています。

しかも、これに日米合同演習で培ってきた米国側のレーダー網からの情報が加わり、日本海側全般のほか、太平洋側では中国が第2列島線とする範囲(大日本帝国が絶対防衛権とした線とほぼ同じでサイパンやパラオ、グアムまでを含む)を探ることも可能といわれています。

攻撃能力については、日本は魚雷の推進速度と距離では、終戦直後の一時期を除けば、第2次世界大戦時から現在まで、世界最高クラスを維持し続けています。また、最新鋭艦の「たいげい」型は、潜水艦上部から海上に向けて打ち上げるミサイルも搭載可能で、魚雷と併せれば水中と空中の双方からの攻撃が可能です。

日本が、太平洋インド地域全域を防備するとか、場合によっては地球の裏側まで行くという戦略的な軍事目的を遂行するのであれば、原潜も必要になりますが、日本周辺や台湾・尖閣などを防備するというのなら、現在の日本の潜水艦隊で十分に中国海軍に対応できます。

私が日本の潜水艦の能力を世界一だとするのは、他国の潜水艦は兵器ショー(兵器製造国が他国に売る武器を展示する展覧会)でパンフレットに能力を掲載しているので、それらを比較対照すれば、ほぼ間違いなく日本製より劣ると分かるからです。

無論最新型はパンフレットなどには、掲載されていない場合もありますが、既存のものを検討すれば、最新型もある程度はその性能を計り知ることができます。

そうりゅう型潜水艦

中国の潜水艦は明らかに日本の潜水艦に劣り、潜水艦探知能力も劣っています。その結果中国海軍は、日本の潜水艦を探知することも攻撃することもできません。そうなると、いざ海戦になれば、中国の潜水艦は日本の潜水艦に撃沈され、空母、その他の艦艇も撃沈されることになります。

尖閣防衛には、この日本の性能が優れた潜水艦を2隻から3隻常時尖閣付近を航行させ、中国が尖閣侵攻の動きをみせれば、尖閣諸島を包囲すれば良いです。そうして、近づく艦艇を撃沈し、近づく航空機も撃墜すれば良いです。

さらに、尖閣付近に機雷などを敷設すれば、中国海軍は尖閣に近づくこともできなくなるでしょう。それでも、無理やり上陸させたとしても、日本の潜水艦に包囲されれば、水・食糧、弾薬などが補給できなくなり、尖閣に上陸した人民解放軍はお手上げになります。

日本の潜水艦の実力は、米軍などとの合同訓練で「訓練では世界一強い日本の潜水艦隊」であることが証明されています。たとば、旧型の潜水艦が米国と合同演習をしていたときに、米軍の空母打撃群の司令官が「一体日本の潜水艦はどこに行っているのだ」と苦情をいうと、何と潜水艦が空母のすぐ横に浮上したというのです。

対潜哨戒能力に優れた米国海軍にも日本の潜水艦は発見するのが難しいです。その他も、日本のはASA(対潜戦闘能力)世界トップレベルであることが、様々な訓練などで実証されています。

それと、昨年10月12日にも、防衛省は中国海軍所属とみられる潜水艦1隻が鹿児島県・奄美大島周辺の接続水域内を潜水したまま、航行したと発表しました。領海への侵入はなかったとしています。これは、防衛省が発表し、それが様々なメディアによって日本国内や海外に伝えられました。

これに対して、同じように日米の潜水艦が、中国海軍によって台湾海峡や黄海、南シナ海で発見されたというニュースは未だにありません。これは、中国海軍の潜水艦探知能力が未だに低いことを如実に示しています。

このことから日本の海自の潜水艦は、訓練はではでき、その訓練では驚異的な成果をあげているのですが、有事においては、自衛隊は法律や社会的制約にがんじがらめにされ、その実力を本番では発揮できないのです。

例えば「国際法の順守」。これは事実上の〝攻撃禁止令〟となっており、極端なことをいうと現場の自衛隊はやられるのを待つしかないといえます。

また、訓練も時間や予算の制約でご都合主義に陥り、対潜訓練でも「最強の軍艦」であるはずの潜水艦が簡単に水上艦に探知されるなど、「八百長」がまかり通っているともいわれています。

こうした問題を解決するために、私は、自衛隊を普通の軍隊に変えたり、「軍政と軍令」の整理や「軍司法」の整備を早期に実施し、「敵前逃亡が盗撮の罪よりも軽い」といったおかしな現状を正すことが急務だと思います。そうして自衛官の地位と権威を高めることが自衛隊を強くする要でもあるといえると思います。

そうして、私自身は、日本が強力な、ASW(対潜水艦戦闘能力)を有しているからこそ、中国は尖閣付近で様々な虚仮威(こけおどし)をするのですが、結局尖閣を奪取しないのだと思います。日本が明らかに海戦能力においては中国を凌駕しているので、中国海軍が尖閣を奪取しないのでしょう。

そうでなければ、とっくに尖閣や沖縄は中国に奪取されていた可能性もあります。確かに、有事においては、自衛隊は法律や社会的制約にがんじがらめで、動けないとされていますが、本当に中国が台湾に侵攻したり、尖閣に侵攻したりすれば、日本の世論も随分変わるのではないかと思います。

政府はなかなか対応をきめられず、得意の「遺憾砲」を発射するだけで何もできないかもしれません。しかし、世論が動いて、国会で審議が行われることになり、自衛隊を普通の軍隊に変えたり、「軍政と軍令」の整理や「軍司法」の整備を早期に実施して、尖閣に上陸をした中国軍の排除に向かうことになると思います。

林芳正外相は国会で「遺憾砲」を炸裂させたが・・・・・・

これについては、既成事実を作られたら手遅れなどという人もいますが、たとえ1年〜2年かかったにしても、自衛隊が普通の軍隊になり、日本の潜水艦が尖閣を包囲し、補給をたてば中国軍はお手上げになるだけです。

中国が超音速ミサイルを発射したらどうするとか、核兵器を用いたらどうするなどの意見もありますが、そうなると確かに日本の領土は攻撃されて破壊される可能性はありますが、日本の潜水艦隊は深く潜航して、反撃の機会を待つことになるでしょう。

そうして、中国海軍を崩壊させることになると思います。何しろ、日本の潜水艦が中国の港に入ったとしても中国側はこれを発見するのは難しいです。一昔前の古い戦術かもしれませんが、たとえばかなり大きな中国の艦艇を港の入り口付近で撃沈すれば、その港を長期にわたって封鎖することができます。さらに、機雷を敷設した場合はどうなるでしょう。

そうなると、中国海軍は港を一歩も出られなくなりますし、出たとしても撃沈されます。

こんなことを言うと、中国が超高速ミサイルを発射したり、核兵器を発射したらどうなるとか、ドローンで飽和攻撃をしてきたらどうなるという意見もあると思いますが、そうなれば、日本の世論は激高し、憎き中国をやっつけるために、核兵器などを開発することになるでしょう。

それに核兵器など、どこに潜んでいるかもわからない潜水艦攻撃に使うとすれば、ありとあらゆる海域に打ち込まなくてはならなくなります。たとえ、打ち込んだとしても、深海に潜む潜水艦を破壊てきるかどうかはわかりません。超高速ミサイルも、ドローンも発見できない敵に対しては無効です。

水中に潜む日本の潜水艦隊を中国側は、発見できません。潜水艦隊がすぐに反撃に出るのは間違いないでしょう。それに当然のことながら、米軍なども加勢することになるでしょう。

日本では、なぜか尖閣防衛というと、潜水艦やASWに言及する人は少ないです。しかし、日本の潜水艦隊は、尖閣を防衛するだけでなく、他の作戦も同時にいくつも実行できるだけの能力があります。潜水艦22隻体制(一隻事故で、就航できなくなったが、新たなの潜水艦の就航でまもなく22隻体制が整う)を早々と構築した日本は、強力な海戦能力を得たといえます。

島国である日本は、強い海戦能力によって、他国の軍事的侵入を防ぐことができます。

ミサイルなどで他国を破壊することと、軍事力による侵攻とは別問題です。ただ、破壊するだけではほとんど意味がありません。

軍事力によって他国に侵攻することの意味は、侵攻して他国や他国の一定の地域を占拠して、占拠した地域を自国の思い通りにさせることです。ただ、破壊するだけではこれは成就しません。

中国による台湾侵攻も、ロシアによるウクライナ侵攻も、中露が破壊力があるから簡単に侵攻できると思い込むのは間違いです。台湾やウクライナを占拠するためには、破壊力だけではなく、軍隊を常駐させて、統治する必要があります。

これには、相当の人員と物資が必要となり、中国は海上輸送力が劣っているため、台湾侵攻はできないでしょう。ロシアも、今やGDPでは韓国とほぼ同等かそれを若干下回るくらいしかありません。一人あたりのGDPでは、韓国を大幅に下回ります。米国を抜いたNATOともまともに対峙する力はありません。ロシアが、ウクライナ全土を占拠して、従わせることは至難の業です。

このあたりが、多くの人に混同されているように思います。破壊と、軍事侵攻は別物です。確かに日本の潜水艦隊は、我が国国土の破壊を完璧に防ぐことはできないでしょうが、他国の軍事侵攻は十分に防ぐことができます。

しかし、このブログにも度々述べてきたように、潜水艦の行動は昔からいずれの国でも秘匿されてきましたし、日本もその例外ではないため、日本の潜水艦隊の実力が過小評価されるのだと思いますし、石原氏もそれに言及することはなかったのだと思います。

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2022年2月4日金曜日

森友学園問題とは何だったのか フィクション批判は意味がない、必要なのは事実に基づいた報道―【私の論評】新聞記者、映画もネット版も結局妄想で簡単な事実を歪め複雑化して見えなくしているだけ(゚д゚)!

日本の解き方


 森友学園問題を下敷きにしたとみられるドラマ「新聞記者」が、遺族の了承を得ていなかった問題などが報じられた。

 このドラマが現実と異なる点が多いと批判的に評していたジャーナリストもいるが、ドラマはフィクションなのだから、この批判は意味がないだろう。

 マスコミ関係者の中には、フィクションとドキュメンタリーの区別がつかない人が多いと、筆者は感じている。文学部出身で文章が書きたくて新聞記者になった人が多いためか、実際の事件をそのまま記事にするというより、自分のストーリーが先にあり、事実はそれを補強するために取捨選択しているかのような記事を目にすることもなくはない。

 森友問題の報道でも、筆者はまず新聞記者のストーリーありきだと感じた。それは、当時の首相夫人の関与があったので、財務省近畿財務局は国有地を値引きしたというもので、そのストーリーに都合の良い報道をするばかりだった。

 筆者の見立ては違う。森友学園に売却した国有地の東半分はその前に大阪府豊中市に売却している。その際、ゴミが埋まっていたことが判明し、同市に補助金交付が行われ、実質的な売却価格はほぼゼロだった。

 そもそも問題の国有地にゴミが投棄されたのは地元の人なら知っていることだという。こうした経緯を踏まえれば、近畿財務局は地中のゴミを前提として競争入札すべきだった。その結果はおそらくゼロ円入札となり、値引きは必要なかっただろう。

 当時の財務省理財局長は国会で追及され、この事務ミスを言い出せずに場当たりで答弁した。答弁ミスをできる限り顕在化されないように、近畿財務局の決裁文書が改竄(かいざん)された。

 決裁文書に書かれている「余計な」部分の削除であり、首相夫人の箇所はわずか一部でしかない。改竄箇所から、首相や首相夫人の関与はなかったことが明らかになっている。

 こうした筆者の推測は、過去の経緯を見ればすぐ分かることだが、マスコミは当初の思い込みで気がつかなかったのだろう。いろいろなマスコミに話しても否定されたことはない。当初段階で、筆者はあるテレビの生放送でこの話をしたところ、直後に財務省からテレビ局に猛烈な抗議があったが、その根拠は全くのデタラメだった。筆者の指摘が図星だったのだろう。

 元衆院議員の事務所もこの件に関係しており、近畿財務局とのやり取りが詳細なメモになっている。それを見ても元首相夫人の関与は全くなく、むしろ近畿財務局の事務の杜撰(ずさん)さばかりが明らかになっているのだ。

 森友問題で、関係するマスコミは、今回のドラマでも遺族の了解を取っていなかったなど、信じがたい醜態だが、事実に基づき、誰も文句のいえないドキュメンタリーを作れないものだろうか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】新聞記者、映画もネット版も結局妄想で簡単な事実を歪め複雑化して見えなくしているだけ(゚д゚)!

上の記事にもある、ドラマ「新聞記者」ネットフリックスが配信したドラマです。公文書改ざんを命じられた官僚が自殺した事件を描いています。

森友事件の遺族・赤木雅子さんにドラマ化を持ちかけたのは東京新聞の望月衣塑子記者だそうです。写真も借りていったそうです。ところが、制作陣は「全部フィクション」と言い始め、望月氏も連絡を絶ったそうです。詳しくは文春のサイトでご覧ください。以下のリンクからご覧になれます。


映画「新聞記者」ではコメントを述べていた望月衣塑子

森友問題の本質は、近畿財務局は地中のゴミを前提として競争入札すべきだったものを、なぜか随意契約にしてしまったことです。それ以上でも、以下でもありません。マスコミ報道や野党などが、かなり複雑にしていますが、事実は極めて単純です。そうして、疑いの余地もありません。

競争入札(競売)その結果はおそらくゼロ円入札となり、値引きは必要なかっただろうという、単純な話です。

森友問題はゴミが埋まっている国有地の売買は競争入札すべきルールだったのに、近畿財務局が随意契約してしまい、後で値引きしてしまい、佐川理財局長(当時)が誤った国会答弁をして、帳尻合わせで文書改竄させたというものです。メディアは妄想でストーリーを作りあげた上ルールを無視したということです。

普通は競売にするのに、なぜか随意契約にしたのかを調べるのが筋だったと思いますが、それについてはほとんど調査されていません。ただただ、妄想でマスコミや野党が首相の疑惑にまで発展させたものです。その疑惑も、首相や夫人が関係しているに違いないという、思い込みだけです、何らのエビデンスもありません。

そうして、この問題の責任は、近畿財務局と理財局にあり、当時の安倍首相と、夫人には何の関係もありません。

このことは、いわゆる森友問題がマスコミ等で報じられた頃、すでに髙橋洋一氏が主張されており、すべてはエビデンスに基づいた納得の行く説明だったので、私自身はこの問題には当初からほとんど興味がありませんでした。マスコミや野党が追求しているのを見ると倦怠感を覚えるだけでした。

当時この問題は国会での安倍総理追求にまで発展しましたが、もし安倍総理や夫人が直接関与して随意契約の中身に直接関与し、しかも値引きまでさせていたとしたら、それは犯罪であり、国会である程度追求されても仕方なかったかもしれません。

ただ、犯罪であれば、いつまでも国会で追求し続けるのではなく、司法に任せるべきでした。国会とは、法律を制定したり、そのための審議をしたりするところであり、犯罪等を追求したり処罰したりする場ではありません。今から考えると、裁判をするに値する物証も何もなかったので、裁判にせずに、安倍政権に対するネガティブ・キャンペーンを繰り返したということでしょう。

野党やマスコミはそれを知りながら、安倍政権に打撃を与えるという目的で、追求を続けたのでしょう。得意のフレーズで「疑惑は深まった」とでも言っておけば、マスコミも大騒ぎで報道しましたから、正のフィードバックが働き、「疑惑」に過ぎない思い込みが、いつまでも続いてあのようになったのでしょう。

挙げ句の果てに、森友学園の籠池理事長夫妻も、「疑惑」を深めるために、マスコミや野党に利用されたのでしょう。あのように赤木さんに寄り添ってきた新聞・メディアはなぜ「新聞記者」のゴタゴタを報道しないのか不思議です。

結局、赤木さんのことを政府批判の道具として利用したに過ぎないのでしょう。現在のマスコミの身内の恥を隠し通す態度は、ジャーナリズム精神にもとると思います。

加計問題も、桜問題もその源は同じようなものだと思います。そうして、この問題を立憲民主党は未だに追求しようとしています。2日の衆議院予算委員会の 新型コロナウイルス対策集中審議において、立憲民主党、森友問題始めました。


マスコミや野党があれだけ声高に叫んでいた安倍首相や夫人の関与の証拠なるものは未だに発見されもせず、提出もされていません。

森友問題の源は新聞記者の陰謀論といっても良いでしょう。確たる証拠が何年経っても1つもない上に、 安倍夫妻や政治家の関与のない一次資料ばかりが増え続けているだけです。 それでも「証拠があるはずだ、疑惑は深まった」と記者や野党は繰り返すばかりです。

ちなみに映画「新聞記者」新聞記者の 日本興行収入は6.0億円、 観客動員数は 日本で40.0万人 です。相良智弘によれば、日本映画のヒットの目安は日本映画製作者連盟が10億円以上の映画を発表するという理由から総興行収入10億円となる。

新聞記者の歴代興行収入ランキング(vodzoo調べ)では、 日本の興行収入は857位、観客動員数は852位 となる結果になりました。

これでは、映画としては、とても成功作品とはいえません。結局まともな視聴者は見なかったということでしょう。しかも、この映画はコロナ以前のものですから、コロナ感染が興行成績を下げたとはいえません。私自身は、この映画の興行前に、すでに森友・加計問題の本質を知っていたので、見る気もおきませんでした。


『新聞記者』に関しては「意義ある作品なだけに残念」という声も参見されました。一体どのような意義があったというのでしょうか。

映画版は加計学園をモデルにしている大学の新設が生物兵器の開発を目的としたものだとするなど悪質な妄想全開の内容なのに望月記者や前川喜平が出演しあたかも現実を下敷きにしていると思わせたトンデモ作品です。

ネットドラマも遺族の了承を得ていなかったという問題があります。どちらも酷いものです。意義など全くありません。

「新聞記者」は映画もネット版も結局妄想で真実を歪め複雑化して見えなくしているだけです。全く視聴したり論評したりする価値はありません。

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2022年2月3日木曜日

日韓関係改善のカードも飛び交う韓国大統領選―【私の論評】韓国には日米は何の期待もできないが、これからも安全保障上の有益な空き地であり続けるべき(゚д゚)!

日韓関係改善のカードも飛び交う韓国大統領選

岡崎研究所

 3月9日の韓国大統領選挙に向けて与野党の選挙戦が激しくなってきた。1月13日付けの中央日報の社説は、「革新与党候補者李在明(前京畿道知事)の強い要請にこたえて、文在寅が3月の選挙の前に補正予算を組むことを受け入れた。そのために企画財政部は税収見通しを操作しているようだ。ポピュリズムがフル回転している」と批判する。与党は現在国会で安定過半数を維持しており、補正予算承認は簡単であろう。


 革新与党は、ポピュリストの性格が強い。その候補者である李在明は、日韓関係を含め自分は何よりも実用主義を重視すると言っているが、強い信念というよりも世間のムードで動くポピュリストの性格が色濃い印象を受ける。予測不可能な印象も受ける。発言の撤回も多いようだ。

 世論調査の結果も振れており、目下の選挙戦は混とんとしている。1月17日発表の韓国の世論調査会社リアルメーターの支持率調査では、尹錫悦(保守野党、前検事総長)40.6%、李在明36.7%、安哲秀(中道野党、実業家、政治家)12.9%となり、再び尹錫悦リードに反転した。この発表の10日前の7日の韓国ギャラップの結果は、李在明36%、尹錫悦26%、安哲秀15%だった。

 尹錫悦の急落は、保守野党に衝撃を与えていた。尹錫悦を支持してきた若者層が安哲秀に流れたといわれる。尹錫悦の急落には理由があった。ひとつは12月来に激化した野党選対委の内部分裂だった。もう一つは尹錫悦の夫人金建希の略歴詐称・誇張(結婚前のものだが)のスキャンダルだった。夫人は12月26日記者会見を行い謝罪、国民の許しを請った。


 支持率急落を受けて急遽党内で和解した。また尹錫悦と安哲秀の間の野党候補統一化の可能性が取り沙汰されるようになった。しかしそれは保守野党にとっては一つの可能性にはなるが、過去の例を見ても実現はそう簡単ではない。

 主要候補者はどちらも特徴的である。2人とも国会議員の経験はなく、いずれも党内政治的にはアウトサイダー、パラシュート型の候補者であり、党内基盤も強固ではない。

 李在明は、文在寅派、李洛淵の非主流派のいずれでもない、謂わば「その他」に属する。尹錫悦は朴槿恵前大統領訴追の際の検事で、今回選挙前に保守野党「国民の力」に入党したばかりだ。両者ともにスキャンダルを抱えている(李在明は大庄洞開発疑惑等、尹錫悦は上述の通り)。人格的には、李在明は直情的、実用主義、ポピュリスト等、尹錫悦は優柔不断とも言われる。

 選挙まで1カ月少々となったが、選挙の帰趨はまだまだ分からない。世論調査の結果は非常に不安定だ。保守党寄りになっていた若者層の帰趨も不安定である。他方、政権交代論は非常に強い(世論調査でもそれを望むとの数字が高い)。これは野党に有利になるが、自責点をしないでそれを生かせるかどうかは野党次第である。

 また今後経済が大きなイシューになると思われ、両候補の経済政策が注目される。尹錫悦も効果的な経済政策が必要となる。外交問題では既にある程度の議論は出ている。李在明は、今のところ文在寅政権の政策の範囲内のことしか言っていない(南北や対中関係を重視、対日・対米関係は慎重)。尹錫悦は、現実主義で、日米韓や日韓関係重視、対中警戒、南北警戒と言える。

候補者が日本大使と会見という異例事態も

 日韓関係については、今後実際の行動を見る必要があるものの、李在明は対日強硬、尹錫悦は現実的である。李在明は、対日強硬のイメージ払拭のため11月下旬頃より実用主義で行くとスタンスを修正したが、これまでの強硬な発言は消し難く、ポピュリズムの動向や党の枠の規制も受けるだろう。尹錫悦については日米韓、日米関係重視の発言は安心感を与える。

 今回選挙で異例のことは両候補が日本大使と会見したことだ。11月下旬、尹錫悦は相星駐韓大使と会見した。日韓関係改善のカードを公式化した。

 それから1カ月後の12月下旬には李在明も日本大使と会見した。日韓関係が選挙の直接のイシューになっている訳ではないが、日韓関係の改善の一般的必要性は多くの国民の間に一定の底流として共有されていると思われる。

 しかし、特にいわゆる「労働者問題」(徴用工問題と呼ばれたりもするが適切ではない)は、解決案の中味が問題であり、韓国側が「国内措置」として解決しようとしない限り、解決はなかなか見通せない。それにしても文在寅政権の過去5年の責任は大きく、「労働者問題」と「慰安婦問題」の二つの問題が日韓の「永遠のトゲ」となって歴史に残らないよう、文在寅には残る数カ月の間にもそれを解決する責任があると言わざるを得ない。

【私の論評】韓国には日米は何の期待もできないが、これからも安全保障上の有益な空き地であり続けるべき(゚д゚)!

韓国政府は、朴槿恵(パク・クネ)大統領のときも反日であり、しかもプーチンにまで告げ口外交をする始末であり、今後誰が大統領になったにしても、反日姿勢は変わらないとみておくべきでしょう。一旦影を潜めたようにみえても、何かの危機があれば、すぐに再燃すると考えるべきであり、まかり間違っても新大統領になったからといって、関係を修復するべきではありません。

朴槿恵前韓国大統領とプーチン・ロシア大統領

その理由は、以前にもこのフログに上げたことがあります。それは米国の戦略家ルトワック氏の『自滅する中国』(2012年出版)に掲載されている韓国の分析です。以下にそれを再掲します。
●国家は普通は独立を尊ぶものだが、従属したがる国もある。それが韓国だ。 
●彼らは中国と中国人にたいして、文化面で深い敬意を持っている。中国の「マーケットの将来性」にもその原因がある。 
●韓国における中国と中国人への尊敬の念は明の時代にまでさかのぼることができる。その一番の担い手は、知的エリートとしての官僚である両班だ。 
●面白いことに、中国文化の影響が非難されるのは北朝鮮。北では漢字は事実上禁止され、ハングルの使用だけが許されているほど。 
●韓国では教育水準が高ければ高いほど反米の傾向が強まる。しかも最近はアメリカが衰退していると考えられているために、中国の重要性のほうが相対的に高まっている。個人で中国でビジネスを行っている人が多いという事情もある。 
●極めて奇妙なことに、韓国は大規模な北朝鮮の攻撃を抑止するのは、グローバル規模の軍事力を持つアメリカの役目だと考えられており、実際に天安沈没事件や延坪島の砲撃事件にたいしても(死者が出たにもかかわらず)ほとんど報復は行っていない。 
●つまり実際のところ、韓国政府は米国と中国に依存する従属者となってしまっている。米国には全面戦争への抑止力、そして中国には一時的な攻撃にたいする抑止力を依存しているのだ。 
●ところがこれは、米国にとって満足できる状況ではない。韓国を北朝鮮から庇護するコストとリスクを、米国は独力で背負わなければならないからだ。 
●その上、韓国への影響力は中国と折半しなければならない。中国は北朝鮮への統制を中止すると脅かすことで、常に韓国政府を締め上げることができるからだ。今のところ韓国が中国に声を上げることはない。 
●米韓同盟を形成しているものが何であれ、そこには共通の「価値観」は含まれていない。なぜなら韓国はダライラマの入国を中国に気兼ねして堂々とビザ発給を拒否しているからだ。 
●現在のような政策を保ったままの韓国は、いわゆる「小中華」の属国として、しかも米韓同盟を続けたまま、中国による「天下」体制の一員となることを模索しているのかもしれない。韓国が自国の安全保障のコストとリスクを受け入れず、かわりに従属者になろうとしているのは明らかだ。 
●このような韓国の安全保障の責任を逃れようとする姿勢は、「日本との争いを欲する熱意」という歪んだ形であらわれている。ところが日本との争いには戦略的に何の意味もないし、日本へ無理矢理懲罰を加えても、韓国側はリスクを背負わなくてすむのだ。
1.米国に従属している韓国は、同時に中国にもすり寄っていこうとしている。 
2.その大きな理由は二つ:歴史的・文化的な面での尊敬と、ビジネスのチャンスだ。 
3.安全保障面では、北のコントロールを中国に、そして全面戦争の抑止は米国に依存。 
4.その責任逃れの憂さ晴らしとして、日本にたいする情熱的な敵対心を展開。
この状況は根本的にも現在でも変わっていません。注目すべきは、ルトワック氏が、韓国の保守・リベラル左派とか、与党・野党などと区分して語ってはいないことです。韓国というシステムそのものの特徴や属性を語っているのです。もちろん、韓国にもこの特徴や属性にあてはまらない人もいます。しかし、韓国全体ではこのような特徴と属性を有しているといえるでしょう。

韓国には、他にも問題があります。それは、韓国という国の戦略的な脆弱さです。ソウルは北との国境線である非武装地帯から近く、対空防衛システムや防空シェルターなども十分ではないという脆弱性を晒しており、韓国の軍隊は自国をまったく守れない状態にありました。というのが40年以上も前の状況でしたが、実は今も全く同じなのです。

政府機能や民間企業の本社などを、ソウルから遠くに分散するなどの対策を一切実行していません。空襲に対応するシェルターも不十分です。40年数年前と違うのは、北朝鮮が核兵器や長距離ミサイルを開発したことだけです。もし戦争が起きれば、北朝鮮は最初の一撃で韓国の指揮所や対戦車兵器などを潰せます。

40年前にアメリカが提案した、首都機能を南に移すことや、企業の光州への移動や、軍事面での72項目にものぼる細かい変更など、ほとんどなされていません。半島有事の際に作戦を指揮する権限は、いまだに韓国軍ではなく長い間在韓米軍司令官にありました。米国側が長年、返還を示唆しても逃げ口上を駆使して延期し続けていました。これについては、2017年ようやっと韓国軍に引き継がれました。ただ韓国は、北朝鮮の核開発を阻止する動きは今でも全く見せていません。
ルトワック氏は韓国を強く批判し、次のように述べています。
韓国は北朝鮮の非核化には殆ど興味がなく、金正恩体制の崩壊は望んでいない。日米が直面しているのは「朝鮮半島問題」で、二つの国で構成されている。一つは北朝鮮であり、どんな手段でも核武装解除を進めるべき国である。そしてもう一つは、韓国という無視すべき国である。
このような現実をみれば、日本が韓国に対してどのような姿勢を取るべきか明らかです。無論、無視です。ただ、韓国が、日本政府が「佐渡島(さど)の金山」(新潟県)」を世界文化遺産候補として推薦したことに対して、批判した場合などのように、歴史の歪曲などをした場合は、これに対して史実等をもとに反論をすべきでしょう。

その他は、輸出入管理でも、通貨スワップでも、信用保証やその他の関係でも日本の都合だけで決め、韓国は一切無視で良いです。

上の記事にもあるように、韓国は安全保障面では、北のコントロールを中国に、そして全面戦争の抑止は米国に依存という虫の良い考え方をしているようですが、そのような考え方が通用するはずもありません。

そもそも、北朝鮮は中国の浸透を嫌っています。そうして、このブログで以前述べたように、北朝鮮には核ミサイルがあり、この核ミサイルは日米などに向けられているのと同時に、中国にも向けられているものであり、結果として北朝鮮とその核は朝鮮半島への中国の浸透を防いでいます。もし、そうでなければ、韓国は中国に擦り寄り姿勢であり、今頃朝鮮半島は中国の朝鮮省になっていたかもしれません。 

私は、最近の北朝鮮のミサイル発射について、以下のように分析しました。

北朝鮮では5年、10年の節目の記念日が特に重視されるため、今年は金日成主席の生誕110年(4月15日)、金正日総書記の生誕80年(2月16日)に合わせて例年よりも大規模な記念行事を行う可能性もあります。しかし、それを盛大に祝うための成果が、ミサイル発射以外にないという状況にあります。だから、ミサイルを連発しているのでしょう。

日米に対して、何かのプロパガンダを発しているとか、何らかの要求をしているという面は、全くないとはいいませんが、それにしても、従来のように米国などに明確にメッセージを発しているというようには見えません。

ただ、現在北は表には出しませんが、コロナ感染症で経済・社会かなり痛めつけらており、これに乗じて中国が北朝鮮に浸透しようとするかもしれないとの危惧の念を抱いており、これに対する牽制の意味もあって、ミサイルを連発している可能性もあるとみています。

1 月5日に発射したとみられる北朝鮮の超音速ミサイル

国連児童基金(ユニセフ)は昨年9月1日、北朝鮮が中国製(シノバック)の新型コロナウイルスワクチン約300万回分の受け取りを拒否したと明らかにしています。北朝鮮は世界的なワクチン不足を考慮し、感染状況がより深刻な国にワクチンを回すよう求めたとされています。

韓国紙、中央日報は17日、韓国政府筋の話として、国連が北朝鮮へ新型コロナウイルスワクチン6千万回分(を支援する案を打診したと報じました。昨年10~11月に米ニューヨークで、国連関係者が北朝鮮の金星国連大使に提案し、金氏は平壌の返答を待っているとしていました。この打診がその後どうなっかについての報道はありません。

ただ、中国製ワクチンを拒否したことについては、そもそも中国のワクチンの効き目を信じていないという憶測もありますが、私としては、中国の浸透を忌み嫌う北朝鮮側の意向もあったのではないかと推測しています。

この状況のなかでは、韓国は日米にとって最早安全保障上は空地のような存在ではありますが、それでもこの空地があるという状態は決して悪い状況ではないのです。

最悪の状況は、北朝鮮が非核化し、米国側につくのであれば良いですが、そうではなく北が中国に飲み込まれ、ついで韓国も飲み込まれ、結果として朝鮮半島全体が中国の支配下に入ることです。こうなると、38度線は、対馬海峡になることになります。これだけは、避けるべきでしょう。韓国には何も期待できないですが、そこに安全保障上の空地があるということが重要なのです。これからも、日米の空き地であり続けるべきです。

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2022年2月2日水曜日

トランプのPACが2021年下半期に5100万ドルを集める―【私の論評】トランプは2024年大統領選挙の有力な候補者である(゚д゚)!

トランプのPACが2021年下半期に5100万ドルを集める

<引用元:FOXニュース 2022.1.31-2.1
トランプのPACは1億2200万ドル以上の現金を手中に
29日にテキサス州コンロ―の集会で話しをするトランプ前大統領
トランプのセーブアメリカ政治活動委員会(PAC)による1月31日の発表によると、トランプ前大統領のPACは2021年下半期に5100万ドルの資金を集めており、PACは1億2200万ドル以上の現金を手にしている。

「トランプ前大統領が前代未聞のペースで資金集めを継続していることから、2022年以降の共和党の未来は、おそらく米国の歴史上で引き続き最強となることがわかる―MAGA運動は浸透している!」と発表には書かれていた。

さらにセーブアメリカPACは、集めた全資金には、トランプのプラットフォームに向けたり、トランプの似顔絵や推薦を使用したりして他のキャンペーンで集めた数億ドルは含まれていないと指摘した。

「ドナルド・J・トランプ大統領は、継続して共和党の未来を獲得し明確にする政治団体を作り上げた」とトランプの広報担当部長テイラー・ブドビックは声明で述べた。

「トランプ大統領は、彼の指導力の必要性がかつてないほどに重要になる中で11月以降を見据えて非常に良い位置にある」とブドビックは続けた。

だがトランプが2021年下半期に集めた5100万ドルは、前大統領が同年の上半期に集めた8200万ドルから著しく減少した。

トランプは2024年の大統領選再出馬をほのめかしているが、今のところ正式な発表は控えている。先週はトランプが「45代及び47代」の米国大統領となるだろうと述べた動画が浮上した。先週土曜日のテキサス州コンロ―でのセーブアメリカ大会で、トランプはもし自身が再度大統領となったら2021年1月6日の議事堂暴動に参加して収監された人々に恩赦を与えると示唆した。

「もし私が出馬して勝ったら、あの1月6日の人々を公平に扱うだろう」とトランプは、多くがワシントンDCに収監されている暴動参加者について述べた。

「そしてもし恩赦が必要なら、恩赦を与えるだろう。なぜなら非常に不公平な扱いを受けているからだ」とトランプは続けた。
【私の論評】トランプは2024年大統領選挙の有力な候補者である(゚д゚)!

日本では、ほとんど報道されませんが、ドナルド・トランプ前大統領は29日にテキサス州コンロ―の集会で1万人を超える参加者に話し、バイデン政権の外交政策と「不正な」2020年選挙を批判しました。


以下に要旨のみを掲載します。
毎日、バイデンの無能さが米国を危機にさらしている。みなさんご存知の通り、私が大統領だったら、プーチンとロシアがウクライナにやっていることは決して起こらず、可能性すらなかった。
とトランプは、ウクライナ国境で高まるロシアの侵攻に言及しました。

トランプはジョー・バイデン大統領のアフガニスタン撤退も批判し、米国は850億ドル相当の軍装備品をタリバンに与えたと指摘しました。トランプは、バイデンの政策は「本物の第三次世界大戦の危険」を作り出していると主張しました。

また前大統領は、バイデンのCOVID-19パンデミック対応について話し、
米国人が全てのCOVID関連の義務化から独立を宣言する時だ。
と主張しました。

トランプはさらに、「不正な」2020年選挙と民主党が今月初めに提案して失敗に終わった選挙権法案を批判しました。
我々の国を真に取り戻すためには、あらゆる問題の中で最も重要な事を解決しなければならない。自由で、公平で、正直な選挙を守ることだ。2020年選挙は不正操作されたのであり、誰もがそれを知っている。他の誰よりもそれを知っているのは誰か分かるだろうか?民主党だ。 
ちょうど昨日、素晴らしいペンシルベニア州で我々は大勝利した。全州の裁判所は、盗まれた選挙の直前に民主党によって導入された弁解なき郵便投票行為は、違法であり著しく憲法に違反していると判決を下した。それゆえに我々が州で勝利していたのだと確信している。
トランプはこう続けました。
我々はウィスコンシン州でも大きな訴訟に勝利した。本当に不正が盛んで、裁判官はドロップ・ボックス、彼らは鍵付きボックスと呼ぶが我々は鍵なしボックスと呼んでいるのだが、それが違法だと判決を下した。それらは違法だった。何万票も。それが違法だという判決が出た。
トランプはまた2022年と2024年の「レッド・ウェーブ」を呼びかけました。

2024年の大統領選挙には、トランプ前大統領が共和党の候補として出馬する可能性が高いですし、そうでなくてもトランプ氏寄りの人が出てくる可能性は否定できないです。

最近、有力候補としてメディアで名前が上がり始めたのは、フロリダ州のデサンティス知事です。彼はもともと、トランプ氏の支持を得てフロリダ州の知事になっています。ただし、大統領選挙に名乗りを上げるかは定かではないし、彼自身は現在、トランプ氏とは微妙な距離を保っているようです。

フロリダ州 ディサンティス知事

仮にトランプ氏が出馬するならば、彼に勝てる人はいないてしょう。しかし、仮に出ない場合、昨年11月のバージニア州知事選挙が参考になります。

バージニア州知事選では、トランプ氏が支持を表明した共和党の実業家グレン・ヤンキン氏が勝利しました。いまやトランプの支持を得ることは、共和党の中で勝ち残るためには有効な手段なっているのです。

たとえば、トランプ支持者が納得するような候補者を立て、予備選の段階ではトランプの支持を全面に出しておき、選挙本戦ではトランプを隠して、トランプ色を薄めるような戦略も考えられます。そうすれば、トランプが嫌いな人や無党派層の票も取り込めるので、選挙で勝てるのです。

グレン・ヤンキン氏

では、バイデンはどうなのかといえば、年齢から言っても懐疑的にならざるをえないです。

トランプ前大統領は70歳で大統領に就任し最年長でしたが、その後、78歳で就任したバイデン大統領がその記録を塗り替えています。バイデン大統領は現在79歳で、現役大統領として最高齢記録を更新しました。2024年に仮に選挙に勝利したとすると、2期目の就任時には、82歳になります。

それにバイデン大統領のスピーチ能力にも心配がある。彼がアドリブで話す時には、ファクトの間違いが多いと指摘されているいます。たとえば彼は、自分が10代の頃、公民権運動に関連して逮捕されたということをしばしばスピーチの中で披露していのですが、彼が逮捕されたという記録は確認できない上、逮捕されたとされる場所も曖昧で、当時の年齢についても13歳という時もあれば15歳と発言する時もあるのです。

また、カマラ・ハリス副大統領のことを過去何度も、「ハリス大統領」と言い間違えていることでも有名です。1月中旬に、1月6日の議会占拠1周年を記念した式で演説をした時にも、「先週、ハリス大統領と私は……」と述べ、訂正もしませんでした。

これらは、大きなミスではないかもしれないですが、1度や2度ならず複数回も間違えるとなれば、一国の大統領としての資質を問われても仕方がないです。

バイデン大統領(左)とカマラ・ハリス副大統領(右)

一方、ハリス副大統領の大統領候補の可能性ですが、残念ながら1年目の彼女の功績はほとんどない上、担当した移民問題でも、昨年6月の中南米訪問で「(移民はアメリカとの)国境に来ないで」と発言してしまいました。彼女の支持率は低いです。

他にもピート・ブティジェッジ運輸長官、テキサス出身のベト・オルーク元下院議員などの名前が出ることもありますが、まだまだ民主党の候補の方は不透明です。

NBCテレビによりますと、トランプ氏がこれまでに支持を表明している候補者は現職を含めおよそ90人いて、今年の中間選挙でこうした候補者たちが当選するかどうかが、トランプ氏の影響力を測る試金石になるとして注目されています。現時点では、トランプ氏は次期大統領選挙での有力な候補者と言って間違いないです。

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2022年2月1日火曜日

バイデン政権をかき乱す文在寅の北朝鮮交渉―【私の論評】文在寅5年間の対北融和政策の失敗等で、北・韓国が派手に外交の表舞台にでてくることはなくなる(゚д゚)!

バイデン政権をかき乱す文在寅の北朝鮮交渉

岡崎研究所

 北朝鮮は新年早々、新たなミサイル実験を繰り返している。極超音速ミサイルではないかとも言われている。米国は従来同様、同盟国と非難声明を発出し、新たな制裁を発表した。しかし、バイデンの「戦略的忍耐」は持続可能ではないように見える。


 ワシントン・ポスト紙コラムニストのジョシュ・ロウギンは1月13日付けの論説‘We can’t neglect North Korea for another year’で、北朝鮮をもう一年無視することはできない、人道支援のキッカケを掴むべく北を試していくべきだと述べている。

 ロウギンは、⑴ 北朝鮮は2021年世界保健機関(WHO)からの医療物資支援の受け入れを再開し、国際赤十字が同国内で活動を行うことを許可した、⑵ 金正恩の最近の動きは米のワクチンを含む大規模の人道支援を受け入れる兆候とも受け取られ、米国はこれを試すべきだ、⑶ それは交渉のキッカケになるかもしれない、と言う。

 コロナ対策を含む人道支援の可能性は以前より多くの者が言ってきたことであり、誰も異論はないであろう。しかし、目下バイデンが、対中関係、ウクライナなど対露関係、より良い再建法案の議会通過などに忙殺されている現状には留意せざるを得ない。しかし、北が真剣に重大なシグナルを出してきているのであれば、米国は逃すことなく追求していくべきだろう。

 1月17日にも北は再びミサイルを発射した。今年になって4回目となる。北のシグナルは判然としない。北が交渉に出て来ることを拒んでいる以上、他に良いオプションはない。その間に北の武器開発が進むことは、我方にとりジレンマだが、北に交渉の主導権を与えることも得策ではない。当面は国際社会の結束を維持し、ワクチン支援などあらゆるキッカケを見つけながら、辛抱強く対処するしか妙案はない。

 北には硬軟両様の対応が必要である。1月12日の米の独自制裁は評価できる(ロシア人を含めたことも良い)。また、米国がこれを基に安保理による制裁拡大を提案していることも適切である。日本など関係国の非難声明発出も良かったと思われる。

 目下対中国、ロシア関係は厳しいが、北の問題には努めて中国とロシアの関与を求めることも必要だろう。中露の対北協力(政府の関与だけなく民間の関与、取引を含めて)を遮断することが重要である。北が武器の委託実験場になっているのではないかと勘繰りたくもなる。

バイデン政権を苦しめる文在寅のこだわり

 文在寅は、朝鮮戦争終了宣言の発出に執着している。文は豪州訪問(12月)中、米中と南北は戦争終了宣言に原則合意したと述べ、北の条件は米国による対北敵視政策の終了であり、そのために南北や米朝が交渉につけないでいると述べた。

 これに関連して、米国のシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャが、「(韓国は)同盟国をコーナーに追い詰めるな」と題する異例の批判記事を書いている(12日付朝鮮日報英文)。文在寅政権のやっていることは、まさにバイデン政権を追い詰めていると言ってよい。文在寅政権による自分のアジェンダ推進のための不正確な記者発表や過早な発言の事例はしばしば見られてきた。

 なお、文在寅は戦争終了宣言を米と合意し、北の同意も得て、2月の北京冬季五輪に乗り込み、南北外交を展開することを構想してきた。しかし、12月6日に米国は北京五輪の「外交ボイコット」を発表、1月5日には北が北京五輪不参加を正式に通知した(金正恩の訪中もない)。

 文在寅は12月上旬から「北京五輪ボイコットは検討しない」と言い続けたが、1月12日に青瓦台は、文在寅が北京五輪には出席しないと正式に表明した。これで文在寅の戦争終了宣言構想や南北五輪外交構想は霧散した(退任の5月までにまた動くかもしれないが)。文在寅の構想は余りにも現実を無視した、独善的な構想だと言わざるを得ない。

【私の論評】文在寅5年間の対北融和政策の失敗等で、北・韓国が派手に外交の表舞台にでてくることはなくなる(゚д゚)!

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は7日、同国オリンピック委員会と体育省が中国オリンピック委員会などに書簡を送り、北京冬季五輪への不参加を伝えたと報じました。

これを受け、中国が落胆ないし不快感を覚えることはないでしょう。北朝鮮選手団の不参加が五輪に与えるダメージは大きくないですし、中国は北朝鮮の窮状を誰よりも理解しているからです。

こけれに比べ、韓国の文在寅大統領の落胆はかなり大きなものだっだでしょう。

任期が残りわずか(来年5月9日に任期満了)となった韓国の文在寅氏にとって、最大の外交的課題は朝鮮戦争の「終戦宣言」を実現することでした。もし、北朝鮮が金正恩総書記か、妹の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長を北京五輪の開会式に送ったとしたら、文在寅氏は自ら現地に乗り込んで米国との対話を促し、終戦宣言への道筋をつけようとしたはずです。

しかしそれも、北朝鮮が五輪不参加を表明した以上、実現可能性はなくなりました。しかし、北朝鮮が北京五輪に参加していたとしても、終戦宣言には到達できなかった可能性の方が高いです。

米国政府は先月10日、人権侵害などを理由に北朝鮮の李永吉(リ・ヨンギル)国防相と中央検察所を制裁指定しました。これは、バイデン政権発足後に初めて出された人権問題に関する制裁だ。政治犯に対する虐待や公開処刑などの人権侵害を、決して見過ごさないという態度表明と言えます。

金正恩氏(右)と李永吉氏(左)/2015年10月朝鮮中央通信より

米財務省は「北朝鮮の個人は強制労働と持続的な監視、自由と人権の深刻な制限に苦しんでいる」とし「中央検察所と北朝鮮の司法体系は不公正な法執行をし、これは悪名高い強制収容につながる」と説明した。

続いて、外国人も北朝鮮の不公正な司法体系の被害者になることがあるとし、オットー・ワームビアさんの事例に言及した。オットー・ワームビアさんは大学生だった2016年、北朝鮮訪問中に体制転覆容疑で逮捕され、昏睡状態で米国に送還された後に死亡しました。

米財務省は「生きていれば今年27歳のワームビアさんに対する北朝鮮の処遇は非難されるべき」とし「北朝鮮政府は人権に関連する悲惨な事件に対して今後も責任を取らなければならない」と主張しました。

米財務省は外貨稼ぎの手段として悪用される北朝鮮労働者の海外違法就職斡旋会社も制裁の対象に含めました。

バイデン政権に入って北朝鮮に新たな制裁を加えたのは今回が初めてです。バイデン政権はその間、北朝鮮との対話が必要だという立場を守り、従来の制裁を維持してきました。

米財務省は12日、北朝鮮の核・ミサイル開発などに関わったとしてアメリカ財務省が、12日、北朝鮮の男6人とロシア人の男のあわせて7人と、モスクワにある企業に対して、資産の凍結などの制裁を科したと発表しました。

今回の制裁にあたって米財務省は「北朝鮮は去年9月以降、弾道ミサイルを6回発射し、国連安保理の複数の決議に違反している」と、弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮を強く非難しました。

文在寅氏の望みは事実上、これらの米国の態度表明により潰えました。

一部では、米国が北朝鮮を非核化交渉テーブルに引き出すために制裁カードを活用することもできるという一種の警告メッセージを送ったという解釈もあります。

金正恩氏が、人権問題で非難されるのを何より嫌っていることは広く知られています。それなのに敢えて、人権問題で制裁を加えたのは、バイデン政権に金正恩体制を甘やかす気がないことの表れと言えます。

そうして、最近の北によるミサイルの連続発射は、この警告メッセージへの反発ともみてとれますが、それは先日もこのブログに掲載したように、みせかけであり北朝鮮の苦しい現状を反映したものではないかと考えられます。

北朝鮮では、今年が故金日成(キム・イルソン)主席の生誕110年、故金正日(キム・ジョンイル)総書記の生誕80年に当たります。

2018年に開催された〝太陽節〟金日成主席の生誕祭

北朝鮮では5年、10年の節目の記念日が特に重視されるため、今年は金日成主席の生誕110年(4月15日)、金正日総書記の生誕80年(2月16日)に合わせて例年よりも大規模な記念行事を行う可能性もあります。しかし、それを盛大に祝うための成果が、ミサイル発射以外にないという状況です。

北のミサイル連発に、バイデン政権はすで答えを出しています。それは、先日もこのブログにのべたように、一つはトライデント弾道ミサイル20基と核弾頭数十発を搭載するネバダは15日、グアムにある海軍基地に入港させたことです。

弾道ミサイル原潜がグアムに寄港するのは2016年以来で、寄港が発表されるのは1980年代以降でわずか2度目です。

もう一つは、米軍は空母3隻だけではなく、強襲揚陸艦「アメリカ」「エセックス」2隻を同じ時期にインド太平洋地域に派遣したことです。これは異例中の異例です。まさに、ベトナム戦争以降、この地域での最大の空母集結です。そうして、日本の海上自衛隊も現在も米海軍と行動をともにしています。

バイデン政権としては、中露や北朝鮮が新たな政治的なカードを持ち出すことを封じるためにこのようなことをしているのでしょう。バイデン政権としては、北や韓国、ロシアの撹乱を防ぎ、中国と本気で対峙しているという覚悟をみせた形です。

バイデンを応援する米国メディアは、どちらもありそうもない、中国の台湾侵攻を煽ったり、ロシアのウクライナ侵攻を煽っていますが、これによって、厳しく中露に対峙するバイデン政権をアピールしたいのでしょう。

海上自衛隊が米海軍と実施した共同戦術訓練。右端は米原子力空母、エーブラハム・リンカーン

米国内や米国議会における超党派での反中世論の高まり、アフガニスタンでの失敗や、今秋の中間選挙に向けての劣勢挽回のためにも、バイデン政権は中国に対する融和策を取ったり、大きな失敗はできません。北朝鮮や韓国の撹乱等を真に受けている暇などありません。

北と韓国は、最近ロシアからミサイル関連の技術の供与を受けているようです。上の記事にもあるように、北が武器の委託実験場になっているのではないかという憶測もあります。

一方韓国では2021年9月15日のSLBM発射に合わせて、航空母艦キラーと呼ばれる超音速巡航ミサイルも公開されました。射程距離500キロメートルのミサイルがマッハ3の速度でターゲットに命中する映像が公開されたのですが、ロシアの超音速ミサイル(P800、ヤホント)をコピーしたとみられます。韓国はロシアから兵器を導入する「プルゴム事業」プロジェクトを進めてきました。

これは、韓国が1991年にソ連に提供した経済協力借款14億7000万ドルについて、ロシアが現物償還を提案し、1995年から行われてきた事業です。韓国はロシアから携帯用対戦車誘導弾、携帯用対空ミサイル、戦車(T-80U)、装甲車(BMP3)、空気浮揚艇などを受けました。 2007年からは「韓露軍事技術協力事業」の形でロシアの軍事技術を取り入れています。

ロシアの支援で韓国は弾道ミサイルや巡航ミサイルなど各種の核心軍事技術を手に入れました。今回公開された超音速ミサイルはその一環でしょう。SLBM関連技術もロシアからもらった可能性を排除できないです。

韓国のSLBM開発にロシアが貢献したのなら問題は簡単ではないです。

もし、ロシアが韓国にSLBM関連技術を提供する代わりに、韓国に対して何か相応の情報を求めていたなら問題です。

韓国が有する軍事情報の中で、ロシアが関心を持つのは米国製兵器と運用方法に関することです。 日本をはじめとする自由陣営が対中国や対ロシア牽制に余念がないなか、中国に歩み寄り、ロシアと軍事技術協力事業を行う韓国を米国は疑っていることでしょう。韓国は、のようなことをする前にすべきことがあるはずです。

文在寅氏の、5年間にわたる対北融和政策は失敗に終わりました。その最大の原因は、何より彼自身が、米国との信頼関係構築に失敗したことです。

北朝鮮も結局、長期にわたるミサイル発射により、大きく世界を変えることはできませんでした。

文在寅や金正恩は、結局何も変えられませんでした。何一つ世界に貢献することはありませんでした。プーチンもそうです。結局、韓国・北朝鮮、ロシアは米中対立を複雑にしただけです。

今後、韓国や北朝鮮が、外交の表舞台に出てくることはなくなるのではないでしょか。あるとすれば、北や韓国が直接ということではなく、北は中国やロシアが仲介することになるでしょう。韓国の場合は米韓の首脳級の会談などあまりなくなり、事務方の話し合いが中心になるのでないでしょうか。日本も韓国に力添えすることもないでしょう。

そもそも、北や韓国が派手に外交の表舞台に立っていたことこそが、異常だったのかもしれません。今後はそのようなことはなくなるかもしれません。

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2022年1月31日月曜日

一行目から馬脚をあらわした 岸田首相の『文藝春秋』寄稿の笑止―【私の論評】岸田首相の経済政策は、財務省による遠大な計画を実現するための持ち駒にすぎない(゚д゚)!

一行目から馬脚をあらわした 岸田首相の『文藝春秋』寄稿の笑止

「新しい資本主義」は「新しい社会主義」か?








もう、お里が知れる

 本コラムでは、これまで岸田政権のグダグダ、モタモタを散々と書いてきた。

  2021年12月13日付の「この一ヵ月で岸田政権が間違えた3つのこと」、同27日付の「年の瀬までグダグダ・モタモタの岸田政権 いったいどこに向かうのか?」など, いくら書いても書き足りないくらいだ。これほど「とろこい」政権はひさしぶりだ。 

  筆者は、岸田政権の本質を「左派」だと見てきた。そこで新年早々に出版したのが『岸田政権の新しい資本主義で無理心中させられる日本経済』(宝島社)である。

  岸田首相は、『文藝春秋』2022年2月号に「新しい資本主義」を寄稿した。本コラムの読者であれば、昨年、矢野財務次官が寄稿した『文藝春秋』11月号の原稿について、筆者が会計学的・金融工学的観点から「落第」判定をしたのを覚えているだろう(2021年10月11日付「財務事務次官『異例の論考』に思わず失笑…もはや隠蔽工作レベルの『財政再建論』」)。またも同じ『文藝春秋』上の出来事なので、苦笑せざるを得なかった。


  岸田首相の寄稿を、筆者も早速読んでみた。この種の雑誌寄稿は、実際は首相の首相のブレーンが執筆するものだが、当然岸田首相が了解済みのものだ。

  失笑ものの矢野氏の寄稿を、岸田氏は容認した。それだけでも問題だと思うが、今度は一応本人名義の寄稿である。  総字数は1万をやや超える程度であるが、はじめの1節を読んでみて、さっそく「お里」が知れてしまった。

  はじめの1節は、問題意識や検討対象を述べる重要な箇所だ。そこではこう書かれている。  〈市場や競争に任せれば全てがうまくいくという考え方が新自由主義ですが、このような考え方は、1980年代以降、世界の主流となり、世界経済の成長の原動力となりました。他方で、新自由主義の広がりとともに資本主義のグローバル化が進むに伴い、弊害も顕著になってきました。〉

霞が関の必殺技「真空切り」

 はっきり言えば、これから後は読む必要のないほどの馬脚を露わしている。「新自由主義」なるものを糺していきたいという意気込みがわかるが、問題は「新自由主義」の定義である。岸田首相は、新自由主義を「市場や競争に任せれば全てがうまくいくという考え方」というのだ。

 どのような経済学者に聞いても、市場や競争に任せれば全てがうまくいくと考える人はいない。どのような経済学テキストでも、市場の失敗も政府の失敗の可能性も示される。市場や競争に任せればすべてうまくいくことはないし、政府に任せたからといってすべてうまくいくとは限らない。市場・競争と政府のバランスの問題なのだ。

 ところが岸田首相は、はじめの定義の段階で誤っている。無意味な定義からスタートすれば、それ以降の議論はまったくナンセンスになる。論理学ではよく知られた話ではあるが、どんなデタラメを言おうと形式論としては「正しい論法」となるから、これは最強論法だ。

 こうした論法は、官僚の世界では「真空切り」と言われる。真空切りは、たとえば予算査定においてとんでもなく大きく減額しておいて、補正で手当をしなければいけないような「あり得ない」予算査定のことを指していた。

 しかし、他の場面でもよく使われる。

 第一次安倍政権時代、筆者の仕事で、国会公務員法を改正して天下り斡旋を禁止しようとした。職業選択の自由に反する建前があるため、国家公務員の天下りそのもは規制しづらかった。しかし天下りは役所の人事の一環なので、役所(国家公務員)による斡旋が重要な構成要素となる。天下りの斡旋自体を禁止しようとしたのだ。

 しかし、役所は猛反対した。そのときに、役所側が提示してきた案の一つに「営利法人による斡旋」の禁止があった。役所の人事の一環である天下りを斡旋するのは役所(国家公務員)だから、ありえない前提だ。営利法人を規制しても意味がない。

 ありえない前提を持ち出すことで、規制をまったく骨抜きにする手法だ。これも霞が関における「真空切り」である。

 真空切りで始まる岸田氏の寄稿は、岸田政権のブレーンが書いたにしろ、あまりにもお粗末だ。この「新自由主義」への前提を読めば、その後は読まなくても、デタラメのオンパレードというのは容易に想像できる。

所信表明演説では触れていない

 なお、その他の各論については、長谷川幸洋氏と原英史氏にと私による鼎談(「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル 【岸田政権】『新しい資本主義 徹底分析』」)をご覧いただきたい。



 霞が関文学における「真空切り」論法では、しばしば荒唐無稽な「反対解釈」へと誘導されることが多い。岸田首相の場合も、「市場や競争に任せれば全てがうまくいくという考え方」を否定することで、あたかも「政府に任せれば全てがうまくいく」と思っているかのようだ。

 その一例について、先述した鼎談の中でも触れた。岸田首相は寄稿で「メインバンクの判断で債務軽減できる法整備」を主張している。債権者平等という民法原則に挑む野心策であるが、世界の資本主義国では聞いたことがない手法だ。誰かの一存により他の債権者の権利侵害を平気で行えるとは、まるで全体主義のようだ。

  筆者の周りの経営者の中にも、岸田政権の「新しい資本主義」は「新しい社会主義」ではないかと懸念する人は多い。

  岸田首相のこうした野心的な政策は、所信表明や施政方針演説では、当然ながら言及されていない。一方で、それ以外の政策については、「10兆円規模の大学ファンド」のように、これまで安倍・菅政権でやってきたことをあたかも「新しい」ことにように看板替えしただけだ。

  最後に、本コラム(2022年1月10日付「オミクロン株対策を迷走させる『岸田の鉄砲、官僚の逃亡、メディアの沈黙』」)でも指摘してきた岸田政権の「ちゃぶ台返し」について触れておこう。 

 佐渡金山の世界遺産登録の推薦で、岸田首相はまた「ちゃぶ台返し」をやった。岸田首相は外相時代に「軍艦島」の遺産登録で大トラブルになった経験もある。外務省も文科省も、佐渡金山の推薦見送りを事前説明したはずで、そのつもりだったはずだ。

  だが先々週あたりから安倍元首相を含めた自民党保守系議員から、推薦見送りはおかしいという意見が出始めた。先週1月24日の国会では、高市政調会長の質問に岸田首相はタジタジになった。翌25日の首相動静を眺めていると、関係役人を官邸に呼んでいることがわかったので、一転して推薦すると直感した私は、ツイートし、私のチャンネルでも推薦の見通しを述べた。案の定、28日、岸田首相は、佐渡金山の遺産登録推薦を表明した。 

 この調子で、新型コロナについても「ちゃぶ台返し」で感染症法上第2類相当から第5類への引き下げを期待したいところだが、当分はありそうにない。仮にあったとしても新型コロナが落ち着いてからになるだろう。

髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】岸田首相の経済政策は、財務省による遠大な計画を実現するための持ち駒にすぎない(゚д゚)!

岸田総理大臣は1月25日の衆議院予算委員会のなかで国民民主党の前原氏の質問に対して答えるかたちで、看板に掲げた「新しい資本主義」の分配政策面に関し、株主利益の最大化を重視する「株主資本主義」の弊害を是正したいとの考えを示しました。


「株主資本主義からの転換は重要な考え方の1つだ。政府の立場からさまざまな環境整備をしなければいけないという問題意識を持っている」と述べました。 

これは、一体何を意味するかといえば、「株主資本主義ではなくて株主社会主義を」目指すということでしょうか。そうして、このなかには「財務省の遠大な戦略」があるようですが、それについてはなぜか誰も解説しません。本日はそれについて解説しようと思います。 

まず、岸田氏は、「労働者の利益のため」と語っていますが、それにはは撒き餌というか見せ金があって、それが「賃上げ税制」なのです。岸田政権でも賃上げ税制による税収効果がわかるのですが、せいぜい1000億円程度過ぎません。

そうして、その次に、「資本家の方から金を取る」という意味合いで、配当課税の強化ということになるのです。岸田総理の「新自由主義」発言は、これを糊塗するためのものに過ぎません。配当課税の強化が本命で、こちらは数千億円~1兆円規模のの増収になります。

「配当課税の強化」と「賃上げ税制」をセットにし、「撒き餌」としての賃上げ税制があり、その後に配当課税の強化を実施する腹積もりでしょう。そういう財務省による遠大な計画があって、岸田氏の「新自由主義」発言は、それに則っているだけなのです。

体よく「労働者のために」という言い方をしますが、逆に言うと経営者、資本家の方から金を取るという政策です。 

配当課税の強化とは、分離課税を見直しの一環であり、今回の「株主資本主義」という言葉は、その布石のためのものです。労働者の賃上げをするふりを見せて撒き餌を行い、最後に配当課税の方に持って行くというシナリオです。

これは、すでに総裁選のときに岸田氏から少し出ていたのですが、批判があまりに多くて一旦うやむやになったものです。あまり考えずに 言ってしまったのが、大きな反発をくらってしまったので、うやむやにしたということです。


そのため今回は「株主資本主義」などと遠回しに言っているのでしょう。質問されたときは当面、賃上げ税制の話をしておくわけです。賃上げ税制は、せいぜい1000億円程度のものであり、全く効果がないですし無意味ですから、いくら語っても良いと考えているのでしょう。

そのうち頃合いを見て、配当課税の話に行くでしょう。そうなると、勤労者からすれば、賃上げはほとんどなく、そうして配当課税の方で「ドカン」と増税ということになります。配当課税方がはるかに税収も大きいから、そこを狙っているのでしょう。要するに平たく言えば大増税です。

 分離課税をする理由は、日本でも広く一般に投資をやってもらおうという、NISAやiDeCoと同じ流れのように見えるのですが、そこに政府が手を入れたいとことなのでしょう。資本家の懐の方に手を入れると成長の元手がなくなるのですが、今回の岸田政権には成長戦略がないこととも符号します。それと表裏一体です。 

成長戦略がなく、パイを大きくせずに、パイの切り分け方だけを考えているということです。岸田首相の背後には財務省がいて、取りやすいところに手を突っ込むという戦略の一環です。

財務省にとっても、本来はパイを大きくしてからの方が財政再建になるのではとも見えるのですが、 財務省は本当は財政再建を考えていないのです。考えているように見せかけるのは、先の戦略を成就させるために過ぎません。

はっきり言えば、元々政府には資産を考慮に入れたり、統合政府(政府と日銀を含めた連結決算ベース)でみれば、財政赤字などはなく、財政再建は必要ないですから、そのことを財務官僚は知っており、財政再建は先の戦略を成就するための隠れ蓑にすぎないわけです。そのために言うだけで本当は、必要ないのです。

岸田首相の経済政策は、財務省による遠大な計画を実現するための持ち駒にすぎないようです。このようなことを実行して、政権支持率が急降下しても、財務省は岸田政権を助けるようなことはしないでしょう。

財務省は、自分たちの省益を追求しているだけなので、岸田政権が存続しようが、短期政権で終わろうが、どうでも良いわけで、とにかく少しでも税金を多く徴収し、それによって各省庁を差配できる幅を増やし、自らの権力基盤を強化し、優雅な天下り生活をすることだけしか考えていないのです。

岸田政権が崩壊しても、国民経済が落ち込もうが、次の政権でまた増税ができて、国家・天下などどうでもよく、とにかくとびきり優雅な天下り生活に一歩でも早く近づければれば、それだけで満足であり、理念も哲学も、矜持も、品性も何もないのです。彼らは、そのためだけに日々邁進しているのです。

岸田首相はそのことにはやく気づくべきです。気づかないようなら、短期政権で終わらせるべきです。

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2022年1月30日日曜日

米の対北政策行き詰まり ウクライナ危機と同時進行のジレンマ―【私の論評】ベトナム戦争以降、インド太平洋地域に最大数の空母を集結させた米軍は、中露北の不穏な動きに十分に対応している(゚д゚)!

米の対北政策行き詰まり ウクライナ危機と同時進行のジレンマ

昨年12月1日に開いた党中央委員会政治局会議に参加した金正恩

 バイデン米政権がウクライナ危機の対応に集中する中、北朝鮮が今年7回目のミサイル発射を行った。対話の門戸を開き続けるだけの対北政策の行き詰まりは明白だ。核・ミサイルの脅威に対する優先度の低さを金正恩(キム・ジョンウン)政権に印象付け、開発を進める時間を与えている。

 「われわれの皿の上にはたくさん(の課題や脅威が)のっていて、その一つ一つに集中している」

 国防総省のカービー報道官は今月27日の記者会見でこう語った。ロシアによるウクライナ侵攻危機、中国による台湾への統一圧力と同時に、北朝鮮の挑発にどのように対処するのか-という質問に対する釈明は、米国が陥ったジレンマを浮き彫りにしている。

 バイデン政権は昨年、「現実的アプローチ」という対北政策を打ち出した。「最大限の圧力」を使い首脳間対話を実施したトランプ政権と、「戦略的忍耐」というオバマ政権の中間といわれてきたが、実情は個別の発射実験に声明で非難と対話呼びかけを繰り返すのみだった。

 米国が中国とロシアとの二正面の対処に追われていく過程で、北朝鮮の弾道ミサイル発射は頻度を増し、受け身の対北政策は「もはや機能しないという結論」(米誌フォーリン・ポリシー)が出たといえる。

 ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上級研究員は本紙取材に「北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したり、金正恩氏が首脳会談を提案したりすれば、バイデン大統領は北朝鮮に集中するだろう」と語る。そうした優先度の低い姿勢が、同国がICBMや核実験に踏み切るまで「傍観する」というシグナルを与えてしまった。

 その間に、北朝鮮は極超音速や多弾頭のミサイル開発など「米国と同盟国のミサイル防衛網を突破する」(米議会調査局の報告書)目標に着実に進んでいる。

 バイデン氏が今、プーチン露大統領に毅然(きぜん)と対処できなければ、金氏や中国の習近平国家主席を喜ばせるだけだ。米主導の世界秩序に挑戦する複数の脅威に対峙(たいじ)しつつ、対北圧力強化へ早急な転換が迫られる。

【私の論評】ベトナム戦争以降、インド太平洋地域に最大数の空母を集結させた米軍は、中露北の不穏な動きに十分対応している(゚д゚)!

北朝鮮はこのところ、なぜミサイルを発射し続けるのかということについて、様々な憶測が流れていますが、私はマスコミが報道するようなことはほとんど根拠がないと思います。

これには、北朝鮮が今年大きな節目を迎えることが関係していると思います。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は4日付の記事で、2022年は「わが党と人民にとって特別に重要で意義深い年」だと伝えましたた。

今年が故金日成キム・イルソン)主席の生誕110年、故金正日キム・ジョンイル)総書記の生誕80年に当たることを踏まえ、「意義深い今年を革命的大慶事の年として輝かせることは、偉大なる首領様の子孫、偉大なる将軍様の戦士、弟子たちであるわが人民の本分だ」と指摘しました。

北朝鮮では5年、10年の節目の記念日が特に重視されるため、今年は金日成主席の生誕110年(4月15日)、金正日総書記の生誕80年(2月16日)に合わせて例年よりも大規模な記念行事を行う可能性もあります。

2018年に開催された〝太陽節〟金日成主席の生誕祭

北朝鮮が金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)について金日成主席から3代続く「白頭血統」の正当性を連日強調し、結束を図っていることからも、先代の節目の生誕記念日を一段と際立たせるとみられます。

しかし、金正恩は体調不良説が噂されているとともに、この節目に相応しい成果をほとんど何も上げていません。コロナ対策は無論のこと、食糧増産、経済強国を目指したリゾート開発でも何も成果を上げられませんでした。

ただ、一つだけ例外があります。それが、核開発やミサイル開発です。党指導部は、その優れた技術力、特にそれが韓国に先んじているということを喧伝し、「国内における政権の正当性」を強化したいと考えているのでしょう。これは同時に日米韓への国外へのメッセージにもなっていると、国内に向けての大きなメッセージになります。

北朝鮮は今年から、新たな経済5カ年計画を始めました。正恩氏は昨年12月1日に開いた党中央委員会政治局会議で「国家経済が安定的に管理され、わが党が重視する農業部門と建設部門で大きな成果を収めた」と語りました。

しかし、金正恩は「制裁が続く限り、生産設備の保守・更新に必要な資材が入ってこない。自力更生路線だけでは、徐々に生産量は落ちていくだろう。このままなら、新たな5カ年計画も失敗に終わるだろう」とも語っています。

そうして、それは現実のものになりつつあります。そうなると、今年大きな節目に成果を誇れるものは何もないということになってしまいます。それを打開する窮余の策が、新技術を用いた核ミサイルの発射なのでしょう。

そのため、ミサイル発射は北京五輪の前には終了し、五輪開催中は実施しないでしょう。五輪が終わってからは、また再開するかもしれません。

そのあたりは、米国も見抜いているのでしょう。それにしても、万一に備えて、米国はそれに対して手を打っています。

このブログにも以前掲載したように、一つはトライデント弾道ミサイル20基と核弾頭数十発を搭載するネバダは15日、グアムにある海軍基地に入港しました。弾道ミサイル原潜がグアムに寄港するのは2016年以来で、寄港が発表されるのは1980年代以降でわずか2度目です。

もう一つは、23日、日本の海自と米海軍と沖縄南方で17~22日に大規模な共同戦術訓練を実施したことです。欧米諸国がロシアのウクライナ侵攻に警戒心を募らせるなか、北朝鮮は今年に入って極超音速ミサイルや弾道ミサイルの発射を繰り返している。中国が台湾への軍事的圧力を強める可能性も指摘される。日米共同訓練は、これらに対して牽制をする意味もあります。

海上自衛隊が米海軍と実施した共同戦術訓練。右端は米原子力空母、エーブラハム・リンカーン

北朝鮮もこうした米国の動きに抗って、わざわざ核ミサイルを日本や韓国などに打ち込むつもりなど、全くないでしょう。

このブログにも述べたように、イランとロシアによる関係強化により、世界の対立軸はこの2カ国に中国を加えた「反米枢軸」と「米国連合」という図式に収れんしつつあります。

とりわけ、米国の制裁に対抗しようとするイランの動きが目立ちます。イランは昨年9月、ライシ師がタジキスタンで開催された「上海協力機構(SCO)」首脳会議に出席、機構への正式加盟が承認されたのですが、これもそうした動きの一環です。

このSCOに北朝鮮は参加していません。ちなみに、SCO参加国は、中華人民共和国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタン・イランの9か国にです。

これらの国々による多国間協力組織、もしくは国家連合です。中国の上海で設立されたために「上海」の名を冠するが、本部(事務局)は北京です。加盟8か国の人口は世界の4割、国内総生産は世界の2割、面積はユーラシア大陸の6割を占める。アメリカ一極集中への対抗軸としての性格が濃いうえ、紛争地帯を域内や隣接地帯に抱えるという地政学的意味合いもあり、国際的に存在感を強めています。

北朝鮮はSCOに加入するどころではないのでしょう。あるいは、SCO加盟国、特に中露イランなどからは、戦力外とみられているのでしょう。実際、北朝鮮にはミサイル発射実験くらいしかできないです。

だからといって、危険であることには変わりはなく、これに対する対処は考えなくてはなりません。特に日本はそうです。

それにしても、上の記事のように米の対北政策行き詰まりなどというこはないです。通常潜水艦の行動は、いずれの国も表に出さないのが普通ですが、上で述べたように、ネバダがグァムに寄港したことを公表し、さらに2つの空母打撃群が日本と共同訓練をしていますが、現状では海外で作戦中の米海軍の原子力空母は計4隻ですが。このうち地中海で中東関連の任務を担当する「ハリー・トルーマン」(CVN75)を除いた残り3隻がインド・太平洋で集結しています。

このように空母3隻だけではなく、強襲揚陸艦「アメリカ」「エセックス」2隻が同じ時期にインド太平洋地域に出現しており、これは異例中の異例です。まさに、ベトナム戦争以降、この地域での最大の空母集結と言っても良いです。そうして、日本の海上自衛隊も現在も米海軍と行動をともにしていると考えられます。

ワスプ型強襲揚陸艦「エセックス」

2017年11月の北朝鮮の核・ミサイル危機当時、米空母3隻が韓半島近隣で訓練しました。このため北朝鮮に対する警告性のメッセージだという解釈が出ていました。

米海軍勢力が2017年当時と異なるのは最新ステルス戦闘機F35を搭載している点です。「カール・ビンソン」「エイブラハム・リンカーン」はF35C(空母搭載型)を、「アメリカ」「エセックス」はF35B(垂直離着陸型)をそれぞれ搭載しています。

ウクライナ情勢に関しては、以前このブログにも述べたように、現在のロシアは一人あたりのGDPが韓国を大幅に下回り、米国を除いたNATOと正面から対峙するのは困難です。それに、ロシア地上軍は今や20数万人の規模であり、ウクライナ全土を掌握することはできません。

米国としては、ウクライナ情勢に関しては、無論米国も関与するつもりでしょうが、それにしても大部分はウクライナに任せいざというときは、NATOにかなりの部分を任せるつもりなのでしょう。

それよりも、中国・北の脅威に対処するとともに、ロシアに対して東側から圧力を加えることによって、ロシアの軍事力を分散させることを狙っているのでしょう。実際、ロシアは戦車や歩兵戦闘車、ロケット弾発射機などの軍事装備を極東の基地から西方へ移動し始めています。米当局者やソーシャルメディアの情報で明らかになっています。

装備はなお移動中ですが、当局者や専門家は、ロシアによる軍備増強の次の段階なのか否かを見極めようとしています。

以上のような事実から、米国が対北政策行き詰まりと見るのは明らかに筋違いです。米軍は、中露北の不穏な動きに対して十分に対応しているといえます。

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2022年1月29日土曜日

ウクライナ大統領、ロシア侵攻めぐる発言の抑制要求 「これはパニック」―【私の論評】ウクライナ問題を複雑化させる右翼武装グループ「ロシア帝国運動」と「アゾフ連隊」(゚д゚)!

ウクライナ大統領、ロシア侵攻めぐる発言の抑制要求 「これはパニック」

ロシア侵攻に関する発言が「パニック」を引き起こしていると訴えるゼレンスキー大統領

ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、他国の指導者がロシアとの戦争の可能性を誇張し、「パニック」とウクライナ経済の不安定化を引き起こしていると訴え、発言の抑制を求めた。

外国報道陣との会見で述べた。これによると、ゼレンスキー氏はバイデン米大統領やマクロン仏大統領との電話会談で、ロシアからの脅威は「差し迫った絶え間ない」ものではあるものの、2014年の侵攻以降、ウクライナ国民はこうした脅威と暮らすことを学んできたと説明したという。

ゼレンスキー氏は「彼らは明日にも戦争になると言っている。これはパニックを意味する」と述べた。

ロシアはウクライナ国境に数万人規模の兵力を集結させており、プーチン大統領が侵攻を計画しているとの懸念の声が上がる。ただ、ロシアはウクライナ侵攻を繰り返し否定している。

ロシアの脅威の深刻さは正確には不明なままで、この点をめぐりゼレンスキー氏とバイデン氏の見解が対立しているとの情報がある。

ウクライナ高官がCNNに明かしたところによると、両氏の27日の会談は不調に終わったとされる。バイデン氏がロシアの侵攻はほぼ確実で差し迫っていると警告する一方、ゼレンスキー氏は脅威は「危険だがあいまい」なものにとどまるとの認識を改めて表明したという。

一方、ホワイトハウスはこの説明に異を唱え、匿名の情報筋が「偽情報をリーク」していると指摘。報道官の1人は、バイデン氏はゼレンスキー氏に2月侵攻の「明確な可能性」があると警鐘を鳴らしたと述べた。

【私の論評】ウクライナ問題を複雑化させる右翼武装グループ「ロシア帝国運動」と「アゾフ連隊」(゚д゚)!

このブログでは、ロシアによるウクライナ侵攻の確率はかなり低いことを主張してきました。その論拠としては、まずはロシアのGDPは今や韓国と同程度あり、しかも人口はロシアが1億4千万人、韓国は5千万であり、一人あたりのGDPとなると、韓国を大幅に下回ることです。

これだけGDPが低く、しかも国土は世界一の広さとなると、守備すべき国境線も長大であり、最早ロシアは大きな戦争はできません。米国抜きのNATOともまともに戦えば、負けます。

さらに、もう一つの論拠はロシア地上軍は兵站を鉄道にかなりの部分を頼っており、脆弱であることを考えると、ロシア軍はウクライナ全土に侵攻するのは不可能というものです。よって、侵攻するのは最大でもドネツクなどのいくつかの州であり、それも州全部ではなく、州の骨棘近くまでかもしれません。

なぜなら、兵站を鉄道に頼るロシア地上軍は、国境近くでは、高いパフォーマンスを発揮できるものの、それを超えると急激にパフォーマンスが低下するからです。

ウクライナ南部クリミア半島で18日、高速道路を走るロシア軍の装甲車

さらに、26日には別の論拠もあげました。それは、米国のランド研究所のアナリストによれば、ウクライナによる反乱を抑え込むためには、ウクライナ人1000人に対してロシアの戦闘員20人を要するとしていることです。

そうなると、ロシアは88万6000人の占領軍を必要とする計算になり。明らかに非現実的であり、反乱を鎮圧するのは困難だというものです。

ロシア地上軍の兵力は、2016年現在、約27万人の兵力と戦車を約2,700両(その他保管約17,500両)保有している(国境警備隊や内務省軍などの準軍事組織を含まない)に過ぎません。これでは、ロシア全陸軍を投入したとしてもウクライナを占拠するのは、到底不可能です。

以上は、純粋に軍事的な観点からの分析です。実は、この他にウクライナ問題を複雑にしている問題があります。それは、ウクライナとロシアに存在する過激な右翼団体の存在です。これについては、情報も少ないので、このブログではとりあげてきませんでしたが、最近は少しずつでてきているので、本日はこれについて掲載します。

ウクライナ側の右翼団体は、アゾフ連隊です。ロシア側のそれは、ロシア帝国運動です。

これについては、以下の記事が詳しいですし、よくまとまとまっています。日本にいて、漏れ聞こえてきた情報をまとめると、おおよそこの記事のようになると思います。私の知り得た情報もこれ以上のものはありません。
ウクライナ危機の影の主役――米ロが支援する白人右翼のナワバリ争い
以下に一部をこの記事から引用します。
クリミア危機の後のミンスクII合意でロシアと欧米そしてウクライナは「外国の部隊」の駐留を禁じることを約束した。これは緊張緩和の一環だった。

ところが、その後もロシア系人の多いウクライナ東部ではウクライナからの分離独立とロシア編入を求める動きが活発化しており、その混乱に乗じて2019年段階ですでに50カ国以上から約17,000人の白人系右翼が集まっていたと報告されいる。

彼らは立場上「民間人」ですが、実質的には外国人戦闘員です。とりわけ多いのがロシアから流入した白人系右翼で、その背後にいるのが「ロシア帝国運動」だ。

「ロシア帝国運動」の国内でのデモ

民間人の立場を隠れ蓑に軍事活動を活発化させるロシア帝国運動は、ウクライナでエスカレートする緊張と対立の、いわば影の主役とさえいえる。
そうして、影の主役はウクライナ側にもいるのです。ウクライナの右翼団体アゾフ連隊です。
アゾフ連隊(現在はアゾフ大隊と呼ばれている)は2014年、クリミア危機をきっかけに発足し、民兵としてロシア軍やロシア帝国運動と戦火を交えた経験を持ち、その頃から民間人の虐殺といった戦争犯罪がしばしば指摘されてきた。そのためロシアメディアではネオナチ、ファシストと呼ばれている。 
ロシア軍のクリミア侵攻の時に記念写真をとるアゾフ連隊
戦場の様子などもFacebookなどで発信し、欧米からも右翼活動家をリクルートするアゾフは、欧米での白人テロを誘発させかねない存在として危険視されている。実際、アメリカ議会は2015年、アゾフを「ネオナチの民兵」と位置付け、援助を禁じる法案を可決した。

ところが2018年、国防総省からの圧力で議会は法案を修正し、それを皮切りに欧米はアゾフに軍事援助をしてきた。ジョージワシントン大学研究チームが昨年発表した報告書によると、アゾフやその下部団体のメンバーは米国をはじめ欧米諸国から訓練を受けており、なかにはイギリス王室メンバーも卒業生のサンドハースト王立陸軍士官学校に留学した者までいる。

要するに、欧米はロシアを睨んでアゾフを手駒として利用しようとしているのです。これこそ冷たい国際政治の現実であるが、欧米での右翼過激派の動向を考えれば、危険な賭けであることも確かです。

しかし、それはアゾフには関係ない。むしろ、欧米から承認を取り付けたアゾフは、ウクライナ危機がさらにエスカレートすれば、これまで以上に活動を活発化させることになるだろう。

いわば世界が懸念を募らせるウクライナ危機は、日陰の身にあったコーカソイド系右翼にとっての晴れ舞台ともなり得るのである。

ウクライナ問題で、こうした右翼の影の動きがほとんど報道されなかったのは、 ロシアは武装グループである、「ロシア帝国運動」を支援して都合よく使ってきたからであり、欧米やウクライナもロシアの抵抗勢力として、アゾフ連隊を手駒として用いようとしてきたからでしょう。

こうした右翼団体の活動が、両陣営のコントロールが及ばなくなったときのことも想定して、ロシア軍は国境に大部隊を配置している面は否めないと思います。何しろ、ロシアはウクライナと国境を接しているので、その緊迫感は欧米よりは高いでしょう。

国境を直接接していない欧米側は、あくまでウクライナ政府にコントロールさせようとしているのでしょう。

ロシア側としては、「ロシア帝国運動」がロシアの意向に反した行動をした場合、あるいはしそうな場合は、これを攻撃して阻止するつもりでしょう。

また、アゾフ連隊が越境したり、越境しそうな場合には、これを攻撃して阻止するつもりでしょう。また、アゾフ連隊がウクライナ領内外の「ロシア帝国運動」の拠点を潰したり、潰そうとした場合これを攻撃して、拠点を確保するつもりだと思います。そうして、あわよくば、その拠点を増やそうという腹だと思います。

また、「ロシア帝国運動」や「アゾフ連隊」が不穏な動きをしないように、抑止するという意味もあると考えられます。

以上のようなことを知らない人が、ウクライナ情勢をみると、一触即発でウクライナとロシアがすぐに大戦争を始めてしまう可能性を危惧してしまうのでしょう。

米国、NATO、ウクライナ、ロシアもそれは望んでいないでしょう。ロシアとしては、戦争を望んではいないのでしょうが、ウクライナがNATOに入るのは許容できないのでしょう。

冒頭の記事でのゼレンスキー大統領の発言は、以上のようなことを説明していないので、なんとも歯切れがわるいというか、理解しにくいものになっています。

ウクライナ問題を解決するには、まずは両陣営とも、テロリストでもある右翼武装グループに対する支援を打ち切ることだと思います。その方が良いですし、そもそもテロリストはいつ飼い主の手を噛むかわかったものではないからです。

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