まとめ
- FRB当局者は、インフレ「上振れリスク」が減退したという見解を確認した。
- 「過度に制約的な」金融政策が経済に与える影響への懸念も示した。
- 「ほぼ全ての参加者が、2024年末までにフェデラルファンド(FF)金利の目標レンジ引き下げが適切であるとの見解を示した」とした。
- 参加者は「インフレ率が委員会の目標に向けて持続的に低下することが明らかになるまで、しばらくは政策を制約的なスタンスにとどめることが適切だ」と強調した。
連邦公開市場委員会(FOMC) |
また、「過度に制約的な」金融政策が経済に与える影響への懸念も示した。議事要旨によると「ほぼ全ての参加者が、2024年末までにフェデラルファンド(FF)金利の目標レンジ引き下げが適切であるとの見解を示した」とした。
一方、インフレ率が引き続き鈍化する中、いかにして経済を守るかに関して議論されたことも示された。参加者は「インフレ率が委員会の目標に向けて持続的に低下することが明らかになるまで、しばらくは政策を制約的なスタンスにとどめることが適切だ」と強調した。
- 米国やEUは、一昨年コアコアCPIが6%や5%と高水準にあったため、利上げを行った。
- 日本は、一昨年ですらコアコアCPIが2.7%にとどまっており、利上げの必要はない。
- 利上げをすると、景気が悪化し、デフレに陥る可能性がある。
- インフレ率が4%を超えるような状況になれば、欧米のように金融引き締めを検討すべきである。
- 金融緩和解除が早すぎると、低い失業率を確保できず、賃上げにつながらなくなってしまう。
この表は以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
マイナス金利は早期解除へ 欧米と異なる「金融正常化」 政治情勢ガタガタ〝火事場泥棒〟避けた? 来年1月にも決断する公算―【私の論評】金融引き締めでデフレ再来?日本はマイナス金利解除に慎重に
日銀植田総裁 |
来年は、エネルギー・資源価格の価格高騰が、沈静化し下がる傾向にあります。これは、常識的に考えても理解できます。エネルギーや資源は、多くの国々が生産しているので、資源価格が上がれは、増産するなどのことをします。そうなると、価格が安定し、落ち着くのが普通です。資源価格も同じことがいえます。無論、中東情勢の悪化などもあり、依然として上がる要素はありますが、それでも大勢としては、下がる傾向にあります。
そのようなときに、利上げをすれば、景気が落ち込むのは明らかです。特に、長い間デフレが続いてきた日本は、元々デフレではなかった米国やEUに比較すれば、物価の上昇はさほどでもありません。以下に、日本、米国、EUのコアコアCPI(食料及びエネルギーを除いた物価指数)の推移の比較の表を掲載します。(ブログ管理人 作成)
注)先の表と同じ内容
この表をご覧いただければ、髙橋洋一氏の主張はもっともであるとご理解いただけるものと思います。米国やEUは、コアコアCPI6%、5%で利上げをしています。この水準でようやっと、利上げをしたのは、やはり経済の悪化をおもんばかったからでしょう。正しい判断です。コアコアCPIを見ている限りでは、日本では、一昨年、昨年、今年ともに、日銀が金融政策を変える必要性など全くありません。今年日銀が、ゼロ金利政策をやめれば、物価は2.0%よりもさらに下がり、デフレ傾向になってしまいます。
日本は、2022年には、2.7%に過ぎません。来年は、2.0%になることが予想されています。無論、この予想は、日銀の金融政策が現状のままだと想定したものです。このようなときには、推移を見守り、金融政策は変えるべきではありません。
1月にマイナス金利の解除をしてしまえば、さらに物価が下がり、デフレ傾向になるでしょう。そのようなことをする必要性は全くありません。早急にゼロ金利政策を排除し、利上げすべきなどと言う人は、こうした数字をみていないのではいなかと思います。
ただし、予想できない何かが起こる可能性は否定できません。しかし、その時にも、すぐにゼロ金利解除とか、利上げなどに走るべきではありません。あくまで、コアコアCPIが4%を超えるなどの事態でも無い限り、ゼロ金利解除や、利上げなどするべきでありません。
こうしたことを無視して、日銀が来年早々にゼロ金利を解除し、利上げして、金融引き締めに走ってしまえば、また日本は、デフレにまい戻り、雇用がかなり悪化し、賃金も上がらすーず、それに政府が増税などの緊縮路線に走れば、日本は再びデフレの底に沈み、日本人の賃金は上がることなく、また失われた30年を繰り返すことになるでしょう。そうなれば、日本の実体経済は、現状のドイツのように酷いものになるかもしれません。
利上げをすれば、完璧にデフレになります。正しい日銀の金融政策は、金融緩和をしつつ、資源・エネルギー価格による悪影響を受けている中小企業や個人に対して支援策をすることです。ゼロ金利政策をやめたり、利上げをすることではありません。
確かに日本でも、エネルギー価格や、資源価格などは上がっていますが、これはほとんど外国から輸入しているエネルギー価格が上昇しているからです。エネルギー価格が上昇すれば、これもほとんど輸入している、小麦などの値段が上に、日本国内で生産加工している食料品を生産したり、輸送したりする費用が上昇し、食料品も値上がりします。ガソリンや電気代などが値上がりし、それが資源価格にも影響を及ぼしているのです。
原油価格の推移 |
これらの値上がりは、外国から輸入しているエネルギーや資源価格が変わらない限り、日銀がどのような金融政策をしても変わりません。
このようなときに、日銀が利上げなどしてしまえば、日本は再びデフレの底に沈んでしまいます。無論、賃金もあがりません。無理に賃金をあげると、雇用を悪化させ、失業率をあげることになります。これは、韓国が在文寅政権だったときに、金融緩和せずに、機械的に賃金をあげたがために、雇用がかなり悪化したことでも、証明ずみの事実です。
文在寅 |
インフレ目標政策では、目標の数値プラスマイナス1ポイントは許容範囲です。その上で金融引き締めは遅れてやるべきなのです。
その理由は、インフレ率(物価上昇率)が2%でも4%でも社会的コストはあまり違わないですが、金融引き締めを急いだ場合、景気への悪影響、とりわけ失業率上昇の社会的コストが大きいからです。
こうした金融政策の運営は、「ビハインド・ザ・カーブ」と呼ばれていますが、欧米での最近の金融引き締め局面でも実際に行われ、インフレ率が現実に4%程度より高くなるまで金融引き締めは基本的に実施しませんでした。米英は物価上昇率が4%を超えた時点の米国は6.10%、EUは5.30%の時点で、はじめて利上げをしたのです。
インフレ目標が2%なら、現状では日銀は、ゼロ金利政策をやめたり、利上げなどする必要性はないのです。ただしインフレ率が4%を超えるような状況になれば、欧米のように金融引き締めを検討すべきなのです。ただ、金融引き締めをやりすぎてしまえば、今度は悪影響がでてくるので、それを防ぐためにこそ、インフレ目標2%があるのです。これを下回れば、デフレになります。
そうして、金融緩和解除が早すぎれば、低い失業率を確保できず、結果として賃上げにつながらなくなってしまうのです。
今年の日銀の金融政策決定会合の予定は、1月22、23日、3月18、19日、4月25、26日です。このうち「経済・物価情勢の展望(基本的見解)」は、1月23日、4月26日に公表されることになっています。
政策変更には「基本的見解」があったほうがよく、3月は国会予算審議があり、4月は遅すぎることを考えると、今年の1月に日銀はゼロ金利解除を公表し、その後年内に利上げを公表することになるかもしれません。