2024年2月16日金曜日

日本の名目GDP世界4位が確定 政財界からは楽観視する声も「一喜一憂する必要はない」―【私の論評】 名目GDPと実質GDPの違いを徹底解説!経済成長率を正しく測るために

 日本の名目GDP世界4位が確定 政財界からは楽観視する声も「一喜一憂する必要はない」

ドイツ国民は物価高で苦しめられている

 2023年の名目GDP(=国内総生産)がドイツに抜かれ世界4位が確定したことについて、政財界からは楽観視する声も出ています。
 
 日本の2023年1年間の名目GDPはドル換算で4兆2106億ドルとなり、ドイツに抜かれて世界4位になりました。新藤経済再生担当大臣は、為替相場で円安が続いている影響が大きいことに加え、ドイツは物価上昇率が高いなどの要因があると説明しました。この上で、国際的な地位は外交や文化など様々な分野で構成されるため、「あまり心配しなくていいのではないか」と述べました。

  一方、日本商工会議所の小林会頭も大幅に円安が進んだことが主因であって、物価の違いや為替レートの影響を除いた購買力平価で考えれば「一喜一憂する必要はない」と指摘しました。

【私の論評】 名目GDPと実質GDPの違いを徹底解説!経済成長率を正しく測るために

まとめ
  • 名目GDPと実質GDPは、どちらも国内総生産(GDP)を表す指標だが、物価変動の影響を受けているかどうかで異なる。
  • 名目GDPは、実際に取引されている価格に基づいて算出され物価上昇の影響を受ける。一方、実質GDPは、ある年の価格水準を基準として物価変動の影響を除いたGDP。
  • 経済成長率を測るには、実質GDPを用いる必要がある。名目GDPは物価上昇の影響を受けているため、経済の実体的な成長率を反映していないからでだ。
  • 名目GDPと実質GDPの違いをよく知らないマスコミなどがドイツとの比較大騒ぎしているが、日本の名目GDPを問題とするなら、過去30年にもわたってこれが上がらなかったことだ。
名目GDPと実質GDPは、どちらも国内総生産(GDP)を表す指標ですが、物価変動の影響を受けているかどうかで異なります。

名目GDPは、実際に取引されている価格に基づいて算出されるGDPです。そのため、物価が上昇すると、名目GDPも上昇します。しかし、実際の生産量やサービス量が変化していない場合でも、物価上昇によって名目GDPは増加してしまうという問題があります。

一方、実質GDPは、ある年の価格水準を基準として物価変動の影響を除いたGDPです。実質GDPは、経済の実体的な成長率を測る指標として用いられます。

例えば、ある年の名目GDPが100万円で、翌年の名目GDPが120万円だった場合、名目GDPは20%増加したことになります。しかし、この間に物価が10%上昇していた場合、実質GDPは10%しか増加していないことになります。

名目GDPは、物価変動の影響を受けているため、経済の実体的な成長率を測る指標としては不適切です。一方、実質GDPは、物価変動の影響を除いているため、経済の実体的な成長率を測る指標として適切です。

名目GDPと実質GDPは、どちらも重要な経済指標ですが、それぞれ異なる役割を持っています。

名目GDPは、経済規模の単純比較やインフレ率計算などに使用されますが、経済の実体的な成長率を測るには実質GDPを用いる必要があります。特にインフレ率の計算のためには必要不可欠です。

それぞれの指標の特徴を理解し、目的に合わせて使い分けることが重要です。

以下にドイツと日本の名目・実質のGDPの伸び率の推移を掲載します。

下はドイツのものです。
名目GDP伸び率実質GDP伸び率
20195.00%0.60%
2020-4.90%-5.30%
20217.70%2.90%
20227.20%3.60%
20236.30%-0.30%
ドイツ経済は、2020年に新型コロナウィルスの影響で大きく落ち込みましたが、2021年と2022年には力強く回復しました。
2023年は、ウクライナ戦争の影響で景気減速が予想されています。
名目GDPは物価上昇の影響を受けているため、実質GDPよりも高い伸び率を示しています。
2023年の実質GDPはマイナス成長となり、2020年以来初めて経済が縮小しました。

下は日本のものです。
名目GDP伸び率実質GDP伸び率
20190.70%0.70%
2020-4.80%-4.80%
20212.10%1.70%
20221.30%2.10%
20233.10%1.90%
日本経済は、2020年に新型コロナウィルスの影響で大きく落ち込みましたが、2021年と2022年には緩やかに回復しました。

2023年も、世界的な景気減速の影響を受けながらも、緩やかな成長が続くと予想されています。

名目GDPは物価上昇の影響を受けているため、実質GDPよりも高い伸び率を示しています。

次に日本とドイツのコアコアCPIの推移を掲載します。

日本ドイツ
2019年0.30%1.40%
2020年0.00%0.50%
2021年0.00%3.10%
2022年0.50%5.30%
2023年1.40%8.70%

コアコアCPIは、季節変動などが激しい生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数です。

2023年12月時点で、日本のコアコアCPIは1.4%、ドイツのコアコアCPIは8.7%となっています。

ドイツのコアコアCPIは、日本よりも大幅に高い上昇率を示しています。これは、ウクライナ戦争の影響によるエネルギー価格の高騰がドイツ経済に大きな影響を与えていることを示しています。コアコアCPIには、エネルギー価格等はふくまれませんが、様々な産業活動等にはエネルギーが用いられます。そのため、エネルギー価格が高騰するとコアコアCPIも上昇するのです。

特に原発を全部廃炉にしたことが、大きいです。

日本のコアコアCPIは、2022年11月に0.8%まで上昇した後、2023年12月には1.4%まで上昇しています。これは、日本でも物価上昇が徐々に拡大していることを示してはいるものの、これは日銀が金融緩和策を継続しているからであり、正常な範囲内に収まっており異常なものではありません。

マスコミや一部の識者など、上のように総合的な判断をせず、一つの指標だけで判断して、得意の日本悲観論を語っています。このような論調には煽られないようにしましょう。

私は、名目GDPがドイツに抜かれたなどということは、何の問題もないと思いますが、過去30年間日本の名目GDPが伸びずほぼ同じであったことが問題だと思います。

その要因は、黒田総裁より前の日銀が実体経済におかまいなしに、長きにわたって、金融引き締めを行ってきたことが原因であり、それを批判してこなかったマスコミや識者に大きな問題があると思います。

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2024年2月15日木曜日

冗談のような「子育て支援金」 現役世代に負担を増やす矛盾 官僚機構に〝中抜き〟される恐れ…国債を財源とするのが最適だ―【私の論評】本当にすべきは「少子化対策」よりハイリターンの「教育投資」

まとめ
  • 岸田首相が「子ども・子育て支援金」の健康保険料上乗せによる負担が、加入者1人当たり「月平均500円弱」になると述べた。
  • かつて自民党若手が「こども保険」を子育て支援の財源として提言。これは子育てを終えた層にとっては保険の対象となる偶発事象が起こりにくく、現役世代に負担をかける可能性がある。
  • 子育て終了した現役世代には偶発事象が発生しにくく、社会保険への加入にはメリットがないという矛盾が生じる。
  • 健康保険料上乗せは「こども保険」の別型であり、負担と給付の関係に齟齬が生じる可能性がある。
  • 政府としては、税金を財源にしたいが、世間の反発があり、保険料上乗せとしたのだろうが、少子化対策は「未来への人的投資」として、国債を財源とするのが適切。
 岸田首相は「子ども・子育て支援金」について、健康保険料に上乗せされる徴収額が、加入者1人当たり「月平均500円弱になる」と述べた。歳出改革と賃上げによる実質的な負担増はないと主張しているが、支援金の方式が妥当かどうか疑問視されている。

 各種の試算では、被保険者1人当たり1000~1500円程度だみられ、現役世代の負担をこれほど増やして、子育て支援するというのは冗談にしか聞こえない。官僚機構に吸い上げられて国民に戻す間に〝中抜き〟される恐れもある。

中抜きで苦しむ人々 AI生成画像

  かつて自民党若手からは、子育て支援の財源として「こども保険」が提案された。保険とは、偶発的な事象(保険事故)に備えるために、多数の人々(保険契約者)が保険料を支払い、事象が発生した場合に被保険者に保険金を支給する制度だ。

  少子化対策は子供の保育や教育に関係するため、「偶発事象(保険事故)」は子供が生まれることになるだろう。保険契約者は公的年金の加入者であり、現役世代の20歳から60歳までの人々となる。被保険者は子育てをする人々となるだろう。

  しかし、ここで矛盾が生じる。子育てを終えた現役世代の人々には、偶発事象は起こらない。これらの人々は社会保険に加入するメリットはなく、保険料を支払うだけになってしまう。 保険料ではないと主張しても、今回の健康保険料上乗せ措置は「こども保険」の一種と言える。

 つまり、負担と給付の関係に矛盾が生じ、現役世代の負担を増やしても少子化対策にはならない。 本来、子育て支援の財源を税金としたいのだろうが、一般の人々からの反発がある。

 しかし、社会保険料に上乗せしても、結局は国民から徴収することに変わりはない。 さらに、国民1人当たりの負担額が「月500円弱」というのは誤解を招く表現だ。被保険者1人当たりの負担額について、岸田首相は「分からない」と答えている。それにも関わらず、「歳出改革と賃上げで実質的な負担増はない」と主張しているが、その断言の根拠は分からない。

 いくつかの試算では、被保険者1人当たりの負担額は約1,000〜1,500円程度とされている。現役世代の負担をこれほど増やして子育て支援をするというのは冗談のように聞こえる。また、官僚機構に吸い上げられて国民に戻る際に「中抜き」が行われる可能性もある。

  政策論からすると、少子化対策は「未来への人的投資」として考え、国債を財源とするのが最も適切だろう。このアイデアは「教育国債」として以前にも紹介したが、財務省関係者の間では知られた考え方だ。

 その効果が大きく、長期にわたる効果があり、十分な資金確保が必要なため、税財源に依存するのは適切ではない。実際、この考え方は財務官僚が書いた財政法の逐条解説(コンメンタール)にも記載されている。 

 ただし、投資である以上、効果の高い確実なものに絞るべきだ。企業経営の観点から見れば、効果のある投資ならば借り入れで賄うべきであり、企業の場合は「営業収入」である税金で賄わないのと同じだ。

 支持率が低い政権は、何もしない方が国民のためになる場合もある。

【私の論評】本当にすべきは「少子化対策」よりハイリターンの「教育投資」

まとめ
  • 「中抜き」とは業務が複数の組織を経由して行われ、各組織がその業務から一定の利益を控除し、その後に別の組織や企業に業務を再委託する現象。
  • たとえば、持続化給付金事業を受託した組織が、業務を外部企業に再委託していたことが問題視され、税金を使った事業であるため社会的な批判を受けた。
  • 将来の経済成長のためには少子化対策が必要であり、その財源としては国債発行が適切。理由として、対策の効果が長期的であり、多額の費用がかかることが挙げられる。
  • ただ少子化の原因がはっきりしておらず、他国でも成功例が限られている状況。フランスや北欧での少子化対策の成功例も近年においては挙げられていない。
  • しかし、教育投資などの投資は少子化対策とは別に必要。教育投資も費用ではなく未来への人的投資であり、将来の働き手が経済的に成功すれば税収として政府に還元される。具体的には高等教育への負担割合の海外との差をうめるべきであり、国債発行を含む教育投資の重要性を再認識すべき。
上の記事にもある「中抜き」とは、一つの業務が複数の組織や企業を経由して行われる際に、各組織や企業がその業務から一定の利益を控除し、その後に別の組織や企業に業務を再委託する現象を指します。この現象は、官僚機構だけでなく、企業間の取引においても見られます。

具体的な事例としては、政府の持続化給付金事業が挙げられます。この事業を受託した組織が、業務を外部企業に再委託していたことが問題視されました。税金を使った事業であることから、この「中抜き」は世間の批判を集めました。

政府が企業や団体に対して補助金を提供する際に、官僚機構の関係者が不正に一部の資金を de中抜きするケースもあります。例えば、本来の補助対象とは関係のない企業や団体に補助金が支給されたり、関係者の間で不正に分配されたりすることが報告されています。

たとえば、電通による持続化給付金の中抜きがあります。電通が最も多く外注した子会社は電通ライブで595億円で、その下流ではパソナ(170億円)や大日本印刷(102億円)など計13社に外注されていました。外注先も大半の業務を別会社に回していました。

中抜きで大儲けして喜ぶ重役たち AI生成画像

政府の持続化給付金事業を受託した一般社団法人「サービスデザイン推進協議会(サ推協)」が、業務を外部企業に再委託していたことが問題視されました。税金を使った事業であることから、この「中抜き」は世間の批判を集めました。

最近の「中抜き」の具体的事例としては、以下のようなものがあります。

政府の持続化給付金事業を受託した一般社団法人「サービスデザイン推進協議会(サ推協)」が、業務を外部企業に再委託していたことが問題視されました。税金を使った事業であることから、この「中抜き」は世間の批判を集めました。

たとえば、電通による持続化給付金の中抜きがあります。電通が最も多く外注した子会社は電通ライブで595億円で、その下流ではパソナ(170億円)や大日本印刷(102億円)など計13社に外注されていました。外注先も大半の業務を別会社に回していました。

このような「中抜き」は、重層的な下請け構造と密接に関係しており、日本の生産性を引き下げる要因の一つとなっています。また、この商習慣は、中間マージンを取ることだけを目的にする無駄な事業者の存在を生み出しています。

上の記事で、高橋洋一氏が語っている財務官僚が書いた財政法の逐条解説(コンメンタール)は、『予算と財政法』という書籍であると考えられます。この書籍では、財政法の条文ごとに解説が加えられており、少子化対策に関する記述も含まれています。

具体的には、少子化対策は将来の経済成長にとって重要な投資であり、その財源としては国債発行が適切であると指摘されています。その理由は、以下のとおりです。
  • 少子化対策は、将来の労働力人口減少を防ぎ、経済成長を維持するために必要な投資である。
  • 少子化対策の効果は長期にわたって現れるため、現在の世代だけでなく将来の世代も恩恵を受ける。
  • 少子化対策には、教育や子育て支援など、多額の費用がかかる。
これらの理由から、少子化対策は将来への投資であり、その財源としては国債発行が適切であると結論付けられています。

ただ、少子化の原因ははっきりしていません。北欧やフランスは、かつては少子化対策が成功した国として称賛されていましたが、近年は出生率が低下傾向にあり、必ずしも少子化対策が成功しているとは言えない状況になっています。

これについては、以前このブログにも掲載しました。その時に掲載した、フィンランドと日本の出生率の推移のグラフは衝撃的でした。そのグラフを以下に再掲します。


フランスや北欧では、かつて政府の手厚い保護が、特殊出生率をあげているとされていましたが、政府が手厚い保護をすれば、出生率があがるとは限らないようです。フィンランドは、2018年時点では、日本より特殊出生率が下回りましたが、2020からは日本を若干上回るようにはなりましたが、あまり日本と変わりません。

アフリカ諸国の特殊出生率は、世界全体と比較すると依然として高い水準にあります。1950年代には約6.0でしたが、その後は徐々に低下し、2020年には約4.5となっています。しかし、国によって差が大きく、ニジェールは約7.0、南アフリカは約2.4となっています。フランス、北欧などでは、アフリカ諸国よりははるかに、手厚い「子育て支援」をしているはずでが、このような結果になっています。

結局、少子化の原因ははっきりとはわからないといのが現状なのです。だからこそ、高橋洋一派は上の記事最後で「支持率が低い政権は、何もしない方が国民のためになる場合もある」と語っているのだと思います。

私自身も、少子化対策ということではまさにその通りだと思います。余計なことをすれば、支持率が下がるだけです。

ただ、私自身は少子化対策になるならないは別にして、こどもや、中高生、大学生などへの支援はすべきと思います。特に、教育関連支援はすべきと思います。これは、何も善意だけでそう言っているわけではありません。教育投資は、投資効率が高いからです。

以下は、それを示すグラフです。経済の成長率と教育投資の間には明らかに相関関係があります。

クリックすると拡大します

少子化対策に関しては、高橋洋一氏が主張するように、何もしないというのが良いかもしれません。しかし、投資効率の良い教育投資はすべきです。

日本の教育は昔から識字率が高く、義務教育の水準も高いと言われてきました。しかし近年、他の国々ではタブレットやPCを活用した教育の改革が進んでおり、日本はその点で出遅れていると言われています。ただし、最低限の義務教育においては、日本は他の国々と比べて劣っているわけではありません。

日本の教育投資において、最も大きな差があるのは高等教育です。具体的には、日本では大学教育に対する個人の負担が高く、多くの人が大学に進学できない状況にあります。日本では家計が高等教育の費用のほとんどを負担しなければならず、負担能力がない場合は大学進学が難しいと言えます。

一方、北欧諸国や一部の西ヨーロッパ諸国では、高等教育の費用負担が比較的少なく、家計の負担割合が低いです。ノルウェーやフィンランド、デンマークでは家計の負担割合は10%程度以下であり、高等教育の費用負担はほとんどありません。ドイツやフランスなどでも、家計の負担割合は20%以下であり、負担は少ないと言えます。

無論、大学教育を受けるだけの能力ない学生まで、大学に入れて教育をするべきではないという意見もあるでしょうが、大学や大学院進学を希望するこどもの学力を高めるという教育投資もすべきと思います。私は、大学・大学院に進学することを希望するこどもたちに、それに相応しいだけの能力をつけられないのは、教育の敗北だと思います。

また、社会人が大学や大学院に戻るか、これらに入れなかった人たちが教育を新たに受けるという投資もありだと思います。これは、今の日本ではなかなか考えられませんが、推進されてしかるべき施策だと思います。このようなことを実現するためには、抜本的な教育改革が必要になるでしょう。

そうして、教育投資は少子化対策投資と同じく「未来への人的投資」として考え、国債を財源とするのが最も適切でしょう。無論、これは一般予算に組み入れるべきですが、それで財源が足りないというのなら、国債を発行すべきでしょう。

それでは国の借金が増えて大変なことになると考える人もいるかもしれませんが、教育投資は費用でなく投資なのです、無論すぐに回収できるわけではありませんが、教育投資で育ったこどもや若者たちが、優れた働き手となって、お金をどんどん稼いでくれて、それが税収となって政府に戻ってくるのです。

すぐれた教育を受けた人たちが、いままでには思いつかなかったような少子化対策を考えて、これを克服してくれるかもしれません。教育投資は本来そのような夢のある投資なのです。夢や理想ではないのです。現実に国富を生み出す原動力となるのです。近視眼的な役人にそのようなことは理解できないかもしれませんが、まともな政治家なら、これを理解できるばずです。これを実現する戦略を考え、役人を使いこなし、是非これをすすめていただきたいものです。

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2024年2月14日水曜日

【独自】食用コオロギの会社が破産…その真相とは 経済ジャーナリストが分析「SDGsというきれい事だけではビジネスはできない。ベンチャー投資ブームが終わった」―【私の論評】SDGsに煽られて、身を誤ったり、時間を無駄にすべきではない理由

【独自】食用コオロギの会社が破産…その真相とは 経済ジャーナリストが分析「SDGsというきれい事だけではビジネスはできない。ベンチャー投資ブームが終わった」

まとめ
  • 長野県のクリケットファームが3年で倒産
  • 食糧危機解決を訴えながら、需要見込み過大だった
  • コオロギ食はSDGsの観点から注目されたが、実需少なく時期尚早
  • 内田氏はビジネスモデル未成熟と分析、イノベーション志向は評価

クリケットファームのウェブのトップページ

 長野県茅野市に工場を構える食用コオロギ会社のクリケットファームが、設立からわずか3年で倒産手続きを開始した。同社は世界的な食糧危機を訴え、コオロギを食用とすることで動物性タンパク質の新たな選択肢を提案する使命を掲げていた。 

 同社のコオロギパウダー入り製品は茅野市や岡谷市のふるさと納税の返礼品に採用され注目を集め、テレビ番組でも取り上げられるなど期待が高まっていた。しかし、2023年12月の家賃未払いをきっかけに2024年1月に倒産。親会社を含めた負債総額は2億4290万円に上った。

 コオロギ食への需要は限定的で、形状への嫌悪感も根強く、地域住民からは「まだ時期尚早」との冷めた見方も出ている。コオロギ食はSDGsの観点で注目されたが、実際にはビジネスとしてまだ未成熟な部分が多かった。

 経済ジャーナリストの内田氏は、クリケットファームのケースは「SDGsのきれいごとだけでは実現困難な部分があった」「ベンチャー投資環境の変化」の2点が重なった事例と分析。イノベーションへのチャレンジは評価するものの、需要予測の甘さとビジネスモデルの未成熟が倒産の原因と見ている。

 コオロギ食への注目度は海外に比べて低く、味覚的心理的ハードルは予想以上に高いことが裏付けられた形だ。食の分野でイノベーションを起こすには、単なる理念だけでなく、世の中の受け入れ態勢を見極める必要性が示唆された事例だと言えそうだ。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】SDGsに煽られて、身を誤ったり、時間を無駄にすべきではない理由

まとめ
  • コオロギの大量生産には大規模な施設と設備が必要で、コスト面での困難が予想される
  • コオロギの個体サイズが小さいため、大量飼育には膨大なスペースが必要となる
  • 食料危機対策としては、まず食品ロスの削減が先決課題であるべきであり、海洋資源の利用は、鯨や魚介類の海洋牧場での養殖などによって有望
  • コオロギ食の先進国主導の急速な推進は、発展途上国の事情への配慮が不足している
  • 食品ロスは日本を含めてアジアは少なく、SDGsに惑わされることなく、日本の状況に合った食料対策を考えるべき
このようなことになるのは、当初から十分予想されたものでした。これについては、以前このフログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
コオロギ粉末を使用したパンを発売 「コオロギ食べない連合」がSNSトレンド入り―【私の論評】日本では食品ロス対策、鯨等も含む海洋資源の有効利用を優先すべき(゚д゚)!

ブログ管理人が大学の施設で継代飼育した沖縄の星コオロギ 背中に特有の斑点がある(赤線点内)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の【私の論評】の部分の要約を以下に掲載します。

私が大学生の時にコオロギの研究用試料としてのコオロギの飼育経験がある。その立場から最近注目されているコオロギを食用とすることについて、技術的にも経済的にも課題が多いことを指摘した。

コオロギを実験用の飼料として飼育するのではなく、産業ベースで大量に飼育・生産するためには、大規模な施設と設備が必要となり、コストがかかりすぎる。コオロギの個体のサイズが小さいことが課題で、単純計算では牛1頭分のコオロギを生産するだけでも体育館程度のスペースが必要と指摘した。

食料危機解決にはまずは近年問題視されている食品ロスの削減が優先されるべきであると指摘した。また、海洋資源の利用可能性にも言及し、鯨や魚介類の海洋牧場での養殖が期待できるとした。

加えて、コオロギ食の急速な普及が先進国主導で進められており、発展途上国の事情への配慮が欠けていると批判。拙速過ぎる展開はかえって食料事情を悪化させかねないと指摘した。

コオロギ食の技術的困難さ、経済的非効率性、推進のあり方の問題点を多角的に指摘した。

詳細は、この記事を参照していただくものとして、コオロギの1個体が少なくとも、豚くらいのサイズがあれば、産業ベースにのせられるでしょうが、最初から無理な話だったのです。

シラスやシラウオなどの個体の小さなものでも、市場に流通していますが、それを主食とか、主要なタンパク源にするわけではなく、珍味等として昔から愛好されているから事業として成り立つのですが、コオロギは違います。コオロギのような身近な昆虫が珍味等になりえるものであれば、SDGsなどとは無関係にとうに流通していたはずです。どう考えても事業としては成り立つものではなかったのです。

シラス(左)とシラウオ(右)

クリケットファームの従業員は何と一人です。先程、述べたように私は学生の頃、コオロギの継代飼育をしていたと述べましたが、大学生と院生の二人で行っていました。実験などの片手間で、一週間に一回餌や水を供給し清掃するだけで、手間はさほどかかりませんでした。温度・湿度は一年中一定に保っていました。専任の飼育係がいれば、飼育は十分にできると思います。

すべて一人で賄ってきたからこそ、今まで操業してこられたのでしょうが、一人で操業してですら、継続できなくなったというのですから、やはりコオロギ事業は、全く成り立たないものなのでしょう。

大手でも参入している企業もありますが、これは本業があって、片手間に実施するから成り立っているのであり、これそのものが事業として成り立っているところはないでしょう。

皆さんもSDGsなる言葉に煽られるのはやめましょう。食品ロスも日本を含むアジアは少ないです、多いのは特に米国です。これに煽られて日本国内で一生懸命になって、なにかをしようとして、無駄な失敗をするべきではありません。まともなビジネス感覚を持って、まともなビジネスをすべきです。

日本では、SDGsの関連法もありますが、罰則はありません。罰則のない法律は、ほとんど意味がありません。SDGsは当たり前のことなので、誰も反対できないです、誰も反対しないことは法律にもしやすいです。

滑稽な意識高い系の人 AI生成画像

SDGsなど日本では元々「もったいない」という言葉があるほどで、結局日本では、資源を大切にすることは、SDGs以前からいわれてきた当たり前ことです。にもかかわらず、SDGsを日本国内声高に叫ぶ人は、訓垂れたい人の格好つけとしか私には見えません。

意識高い系(本当に意識の高い人ではなく、意識が高いとみせかける人こと)の人の戯言にしかみえません。あるいは、SDGsにかこつけて金儲けをしたいとしかみえません。SGDsの理念そのものは、当たり前過ぎるほど当たり前であり、その理念は美しく格調高く表現されており、これには誰も反対できません。訓たれて気持ち良くなるだけなら、無害だと思います。

しかし、これは様々な人たちに悪用されやすく、それこそ公金チューチューにも利用しやすいということで、たちが悪いと思います。

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2024年2月13日火曜日

「安倍イズム」継承へ保守派再結成の動き 鈴木哲夫氏「岩盤支持層がカギ」―【私の論評】政局混乱で問われる岸田政権の去就と官僚の影

「安倍イズム」継承へ保守派再結成の動き 鈴木哲夫氏「岩盤支持層がカギ」

まとめ
  • 自民党の政治資金スキャンダルで保守系議員が再結集
  • 安倍派の解散で、憲法改正実現に動く議員が出現
  • 総裁選を控え、岸田政権への批判と対抗馬の動きも
  • 保守系議員の再編が、党内グループの再編に影響
  • 安倍政権の未完の政策を引き継ぐ動きが注目される
安倍晋三氏

 自民党が「政治とカネ」の問題で大混乱するなか、保守系議員が動きを活発化させている。安倍晋三元首相が凶弾に倒れ、安倍派が派閥解散を決めたが、憲法改正や安定的な皇位継承などを重視する議員らが結集しつつある。日本を取り巻く安全保障環境が激化する中、国家観や安保戦略の希薄化は国難を加速させかねないとの危機感がある。「安倍イズム」の継承が問われている。 

 高市早苗経済産業大臣は保守団結の会で講演し、セキュリティー・クリアランス制度の重要性を訴えた。高市大臣はこの制度を特定秘密保護法を補完するものと位置づけ、安倍氏の未完の課題だと強調した。最大派閥の解散で、党内のリベラル派が力を持つ中、100人近い元安倍派議員の動向が注目される。

 ある中堅議員は、安倍派の政治不信を省みつつ、喫緊の安保や経済課題に取り組むためには保守系議員が改革を先導し、国民の信頼を回復する必要があると語った。9月の総裁選では、支持率低迷の岸田政権の去就が焦点で、地方組織からも「岸田の顔では戦えない」との声が上がり、対抗馬の動きもある。

 このような中、保守団結の会は勉強会を継続的に開く方針だが、保守派再結集の動きともされる。また青山繁晴氏らが「政治変革会議」を立ち上げ、次期総裁選への動きを見せている。鈴木哲夫氏は、岸田の派閥解消は再編を意味し、保守系議員の再編も重要と指摘する。安倍政権の未完の政策を引き継ぐ動きが、党内のグループ再編に影響を与えると見られている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になっ下さい。

【私の論評】政局混乱で問われる岸田政権の去就と官僚の影

まとめ
  • 検察が今回の自民党派閥事件で、大物逮捕を示唆する情報リークを行った。過去の事件でも同様のリークがあり、立件が困難な今回の事件では検察の政治介入の可能性がある。
  • 次の総裁選で岸田政権が続投できなければ、時の政権が検察に負けたことになり、検察の更なる政治介入の端緒となる恐れがある。岸田政権の続投が重要。
  • 財務省は減税を主張する岸田政権を快く思っておらず、検察の捜査と連携し政局介入を狙っている可能性が危惧される。
  • 政権を安定化させるには、次の総裁選で岸田政権を続投させる必要がある。野党も建設的な批判をすべき。
  • 現在の混乱した政局での政権交代は、官僚主導のさらなる強化を招きかねない。岸田政権を一定期間継続させた上での交代が望ましい。
先日もこのブログで指摘したように、今回の自民党派閥パーティー券事件で、検察が大物政治家の逮捕を示唆するようなリークを行い、マスコミで大々的に報じられました。

東京佐川急便事件でも、大物議員秘書の逮捕直前に氏名が報道されるなど、検察からの情報リークが指摘されました。

別の汚職事件でも、逮捕前からマスコミが「汚職議員」などと報じるケースがしばしば見受けられました。

今回の事件は、過去の大規模汚職事件ほど悪質ではなく、立件自体が困難だったことは当初から多くの識者に指摘されており、これは、検察が大物逮捕を示唆する情報を流し、事実上の政治介入を行った可能性があります。

東京地方検察庁特別捜査部が設置されている 九段合同庁舎

これを前提とした上で、次の総裁選で、岸田首相が出馬できない、あるいは出馬しても続投できない状況になるのは望ましくないと考えられます。なぜなら、それは自民党政権が東京地検特捜部に負けたことを意味するからです。そうなれば、これからも東京地検が政治に介入する端緒を与えてしまうことになりかねません。

さらに、財務省が今回の政局にどれだけ関与しているかは、不明ですが、減税を言い出した、岸田首相のことを快く思っていなかったのではないかとみられます。

東京地検の政治資金規正法に関連する捜査は、財務省にとって望ましいものだったのではないでしょうか。特に、安倍派幹部が自民党内のポストから外されたことは、財務官僚には歓迎された可能性があります。

今回の政局では、増税に反対する安倍派潰しに財務省が関与していたかどうかは定かではありませんが、政局が波乱含みとなったことに乗じ、財務省が最後にラスボスとして登場し、様々な増税策を打ち出そうとするかもしれません。

財務省と検察は定期的に交流しており、これを活用して連携し、自分たちに都合の良いように政治を操作する可能性が危惧されます。

これを防ぐためには、まず自民党内では次の選挙で岸田政権では勝てないという風潮がありますが、これを払拭し、次の総裁選で岸田首相を続投させる方向で結束するべきです。そうして政権運営を安定化させるべきです。

野党も、官僚機構の尻馬にのるような真似は避け、国民の視点に立って、自民党を批判するべきです。野党が、自分たちにも脅威となり得る検察のリークを批判しないことには大いに疑問を感じます。

これによって、官僚機構やその支援者、政権を崩壊させることを狙うマスコミへの牽制をすることにより、まずは政権を安定させるべきです。そうして、少なくとも、もう一期程度は、岸田政権を存続させるべきです。岸田政権が継続できれば、官僚主導ではなく政治主導の政治が行われているとみなすことができるでしょう。

岸田首相

安定した岸田政権下で、自民党議員は支持率低下の原因を考え対策をすべきです。野党も同様に、なぜ支持されないのかを考え、対策をすべきです。そうして、上の記事にもある「安倍イズム」を真摯に見直すべきでしょう。そうして、安倍政権がなぜ憲政史上最長の政権になったのかも、真摯に見直すべきです。

岸田政権崩壊を目指せば、事態はますます悪化するだけです。まず政権を安定化し、官僚機構の影響を排除した上で、次の展開を考えるべきです。

私は、その後に高市氏総理大臣誕生もあり得ると思いますが、政局が混乱したままの政権交代は誰が総理大臣になったとしても機能しない可能性が大きいです。

だからといって、岸田首相のいうことはすべて正しいとか、是認せよとかなどというつもりは毛頭ありません。私は、個人的には岸田氏は好きではありません。ただ、現在は岸田政権の崩壊によって、官僚主導の政治が台頭する危険性があることを多くの人々に認識して頂きたいのです。

自民党の議員、野党議員、国民も是々非々で批判すべきところは、批判すべきです。その上で、官僚主導の政治は絶対に廃するべきであり、その意思を貫くべきです。

選挙で選ばれてもいない官僚が政治を強力に主導すれば、いわゆる派閥政治や世襲政治の弊害どころではありません。それこそ、実質的に共産主義になってしまいかねません。この脅威に気づくべきです。

共産主義政権下で苦しむ人々 AI生成画像

岸田政権が一定期間存続してから政権交代する方が、官僚支配を避けられることになるでしょう。そうして、それと同時に国民の民意が尊重されるべきことはいうまでもありません。それを自民党の議員等は強く認識すべきです。短絡的な思考は、自滅を招くだけでなく、日本の政治風土をさらに悪化させることになります。

現在の混乱した政局での政権交代は、官僚主導のさらなる強化を招きかねず、当面は岸田政権を維持すべきです。

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2024年2月12日月曜日

「もしトラ」は日本の大チャンス 〝米国第一〟で軍事支援に消極的、自力で国を守る「真の独立国」に近づく機会もたらす―【私の論評】日本の真の独立を促すとみられる、トランプ外交の真実

 長谷川幸洋「ニュースの核心」

「もしトラ」は日本の大チャンス 〝米国第一〟で軍事支援に消極的、自力で国を守る「真の独立国」に近づく機会もたらす


まとめ
  • トランプ前大統領が再選されれば、日本には大きな影響があり、政策逆転の可能性がある。
  • トランプ氏は輸入品に関税をかける考えを示しており、これが日本の自動車産業に打撃を与える可能性がある。
  • 中国との貿易においてもトランプ氏は強硬策を採ると予想され、対中政策では民主党との一致が見られる。
  • 安全保障面では、トランプ氏が米国第一主義を重視し、日本に積極的な軍事的関与を求める可能性が高いとされている。
  • トランプ政権下で日本は自力で国を守る「真の独立国」に向けた大きな機会を得る可能性がある。

 もしドナルド・トランプ前大統領が再び米国の大統領になった場合、日本にはどのような影響があるのか。トランプ氏が大統領選で優位に立っている状況であるため、この「もしトラ」の問題は現実味を帯びてきている。私は、この状況が日本にとって大改革のチャンスとなると考えている。

 政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RCP)」の平均値によると、2024年2月6日時点でトランプ氏は現職のジョー・バイデン大統領を2.1ポイント引き離している。個別の調査を見ても、最近ではほとんどがトランプ氏が優勢となっている。

 もしトランプ氏が勝利すれば、バイデン政権が進めてきた政策の相当部分が覆されることは避けられない。

 例えば、トランプ氏は「米国への輸入品に一律10%の関税を課す」と公言しています。日本が輸出する自動車に10%の関税が課されれば、自動車メーカーにとっては打撃となるだろう。

 ただし、ノーベル賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマン氏は「それでも米国の貿易赤字は解消しない」と指摘している。高額な輸入品を購入することを強いられる米国の消費者にも不利な影響があるとされており、実際にどのような結果になるかは不透明だ。

 中国との貿易に関しては、ワシントン・ポスト紙が「トランプ氏が60%を超える関税を課す可能性がある」と報じ、トランプ氏自身もFOXの番組で「それ以上になるかもしれない」と述べている。また、「最恵国待遇」という他国との差別しない原則を取り消す可能性も噂されている。

 対中強硬策は、民主党との一致点が少ない中で唯一一致する分野だ。米中経済の切り離し(デカップリング)は、前政権よりも一層進むだろう。

 日本にとって最も重要な問題は安全保障だ。

 中国の習近平政権は、台湾への武力侵攻を選択肢として捨てていない。武力行使に至らなくても、臨検や海上封鎖などの措置を取る可能性がある場合、トランプ氏はどのような行動を取るのだろうか。

 トランプ氏自身は具体的な対応策について明言は避けているが、日本に対しては「積極的な軍事的関与を求める可能性が非常に高い」と考えられている。なぜなら、トランプ氏の最重要課題は「アメリカ・ファースト」だからだ。

 アメリカを最優先する考え方を日本に当てはめると、「台湾を失うことで日本が深刻な打撃を受ける」という結論になります。そのため、「日本が台湾の防衛に全力を尽くすべきだ」という考え方が生まれるのだ。

 これは大きなチャンスだ。

 第2次トランプ政権は、日本が「アメリカの従属国」の立場から脱却し、自力で国を守る「真の独立国」に近づく機会をもたらすだろう。バイデン政権の下で防衛費増額に踏み切った岸田文雄政権だが、「トランプ復活」の場合、それだけでは足りないかもしれない。台湾の防衛のために、憲法改正を求める可能性もあるだろう。実際、2016年には日本と韓国の核武装についても言及していた。

 この状況は大きなチャンスだ。第2次トランプ政権が実現すれば、日本は他国に頼らずに自ら国を守る能力を高めることができるだろう。

【私の論評】日本の真の独立を促すとみられる、トランプ外交の真実

まとめ
  • トランプ政権は中国に対する強硬姿勢やイスラエル・アラブ諸国の和平交渉成功、ISISへの迅速な対応、COVID対策の渡航制限などで外交で成果を上げた。
  • バイデン政権は中国に対してソフトな態度を取り、イラン核合意やパリ協定への再参加を模索するが、批判も受けている。
  • トランプ政権はNATOの防衛費増額要求やロシアへの軍事力強化で国際的な安全保障に影響を与えた。
  • バイデン政権は価値観外交を推進し、外交において硬直した姿勢が目立つ。批判もあり、外交政策の一貫性が問われている。
  • 第2次トランプ政権が実現すれば、日本は従属から脱却し、自立国としての機会を得る可能性が高まる。

トランプ氏が大統領になる直前にマスコミは、外交経験のないトランプ氏の外交を危ぶむ声が多かったのですが、現実はそうではありませんでした。トランプ氏の外交を以下にふりかえっておきます。

習近平

 以前もこのブログに掲載したことですが、トランプは中国に対して強硬路線をとり、不公正な貿易慣行に対処させた最初の大統領です。バイデンはすでにトランプの関税の一部を撤回し、中国に対してよりソフトな態度をとっています。

トランプの政策は功を奏し、中国に交渉を迫っていたのですが、バイデンの弱腰は中国を増長させることになるでしょう。

トランプはイスラエルとアラブ諸国との歴史的な和平交渉を仲介しました。バイデンはすでにイスラエルとアラブ諸国関係を緊張させています。トランプは、何十年もの間、他国から遠ざかっていた中東での外交的突破口を開き、懐疑論者が間違っていたことを証明しました。

 トランプは記録的な速さでISISのカリフ制国家を壊滅させました。ISISはオバマ-バイデン政権下で急成長し、トランプはその混乱を一掃しなければなりませんでした。トランプは軍を解き放ち、ISISを迅速に粉砕し、イスラム過激派のテロに対する強さを示しました。

 バイデンは、イラン核合意やパリ協定といった不公正な取引に再び参加しようとしています。トランプは、米国に不利なこれらの取引から当然のごとく脱退しました。

バイデンは、これらの取引に再び参加することで、影響力を失い、見返りも何も得られないでしょう。

トランプはメディアからの批判にもかかわらず、COVIDの蔓延を遅らせる渡航禁止措置をとりました。バイデンはこの禁止措置を「外国人嫌い」と呼びましたが、賢明な措置であることが証明されました。

バイデンの政策がボリティカル・コレクトネスによって推進されているように見えるのに対して、トランプは命を救う可能性の高い厳しい決断を早期に下しました。


バイデンやオバマのより伝統的な政治的アプローチよりも、トランプの堂々とした「アメリカ・ファースト」政策がより良い結果を生んだことは明らかです。それは、米国にとってもその同盟国にとってもそうでした。

メディアはトランプを脅威として描いていますが、彼の政策は世界における米国の地位を強化し、敵対国に責任を負わせ、外交政策で大きな勝利を収めました。トランプの外交は、世界の舞台で米国の影響力を低下させるバイデンの外交よりはるかに優れています。全体として、トランプ氏のリーダーシップのほうが、米国とその同盟国はより安全で安心できる環境をもたらしたといえます。弱い米国は、米国だけではなく、日本含む同盟国にとっても不利益をもたらすのです。

バイデン氏は政治家として外交経験も豊富なので、トランプ政権からバイデン政権に変わったとき、多くの識者は、トランプよりはバイデンのほうがまともな外交をするだろうと、安堵の声を漏らす向きも多かったのですが、現実はどうだったでしょうか。バイデン外交は失敗続きだったといっても過言ではありません。

バイデンが副大統領をつとめたオバマ大統領は外交経験に乏しく、外交の中心はバイデンが担っていました。ところが、オバマ政権で国防長官だったロバート・ゲイツはバイデンについて「過去40年、ほぼ全ての主要な外交、国家安全保障問題で間違っていた」と回顧録で切り捨てています。

「誤り」として挙げられるのはイラク戦争への対応のほか、国連決議に基づいていた1991年の湾岸戦争への反対、2011年のイラク撤退でテロ組織の台頭を許したと批判されていること、アフガニスタンへの増派反対などがあります

米企業公共政策研究所の外交政策専門家コリ・シェイクも、バイデン外交について「軍事力をいつどのように使うかという一貫した哲学に欠けている」と米誌アトランティックへの寄稿で批判しています。

バイデンが大統領になってからは、価値観外交を推進し、それが故に硬直した外交姿勢になっている面は否めません。トランプは元々実業家であり、物事を流動的にとらえ、実利の面からものごとをとらえる傾向があるため、特定の政治信条にとらわれることはありません。

一方、米国は2021年8月の米軍アフガニスタンからの撤退そのものは正しい判断ではありましたがそれにしても、撤退の仕方そのものは失敗でした。、ロシアのウクライナ侵攻の直前には、米軍は直接介入はしないとわざわざ公表し、プーチンに免罪符を与えたものと勘違いされ、結局ロシアを後押ししてしまったといわれても仕方ない状況をうみだしました。

大統領専用機のタラップを降りるバイデン大統領

「もしトラ」が現実になれば、トランプはバイデンとは異なり、現実的で流動的な政策を実行するでしょう。

2018年のトランプ大統領の欧州訪問で北大西洋条約機構(NATO)の首脳会談に出席したトランプ大統領は、NATOの欧州側加盟国に防衛費の増額を強く要求しました。加盟各国は最低限、GDP(国内総生産)2%の防衛費支出をするという約束を守れ、という要求でした。

トランプ氏のこの要求は、NATOを壊す動きだとして広く報道されました。トランプ氏はきわめて衝動的であり、米欧同盟の破壊につながるという批判もおおくありました。

しかし実際には、トランプ氏は「NATO諸国の防衛費負担の増大」を2016年4月の大統領候補として初の外交演説で第1の公約として挙げていました。当時から一貫して変わらない「公正な負担を」という政策なのです。これは国民から広く支持を得ている政策であり、オバマ前政権もこの政策を推していました。

また、トランプ大統領は「NATO体制の維持と強化」も政策として掲げてきました。2017年末から今年初頭にかけてトランプ政権が発表した「国家安全保障戦略」や「国家防衛戦略」でも、大統領として明言しています。米国が主体となって進めるNATOの維持や強化は、今回のNATO首脳会議での共同声明でも確認されました。トランプ大統領はNATO堅持を主張した上で公正な負担を求めたのです。

ロシア政策にしても、トランプ大統領は前記の「国家安全保障戦略」や「国家防衛戦略」の中で、ロシアをはっきりと米国主導の国際秩序を侵食し、破壊することを企図する危険国家として位置づけてきました。トランプ大統領はプーチン大統領と握手はしても、ロシアのクリミア奪取を許してはいませんでした。ロシアへの経済制裁もまったく緩めませんでした。

トランプ政権のロシアへの基本姿勢は、軍事力の強化によっても明らかだったといえます。トランプ大統領は2017年9月の国連演説で「原則に基づく現実主義」という理念を掲げ、国家主権に基づく「力による平和」という政策を語りました。それとともに、潜在敵であるロシアや中国の膨張を抑えるために、軍事力を大幅に強化し始めました。トランプ政権の2018年度の国防予算は、前年度から13%増加し、GDPの4%ほどに達しています。

今日ロシアがウクライナに侵攻したことを考えると、トランプのこうしたNATOへの働きかけは正しかったといえます。

トランプ氏は今月10日、南部サウスカロライナ州での集会で、過去のNATO首脳との会合を振り返ったとみられる中で、「ある大国」の大統領から「われわれが(軍事費を十分に)払わないまま、ロシアの攻撃を受けたら、あなたは守ってくれるか」と尋ねられたと紹介。「いや守らない。むしろしたいようにするよう彼ら(ロシア)に勧める。払わないと駄目だ」と答えたと語ったとされ、現在のホワイトハウスはこれを批判しています。

しかし、「払わないと駄目」という発言からもわかるように、これはNATO堅持を主張した上で公正な負担を求めた従来の姿勢を崩していないと受け取るのが妥当だと考えられます。



このようなトランプ氏です。もし大統領になった場合、中国に対する不沈空母ともいえる日本を堅持するする姿勢は崩さないでしょうが、日本も応分の対応を求めてくるでしょうし、場合によっては、日本政府の親中・媚中的な姿勢にも苦言を呈するかもしれません。

長谷川氏の主張するように、第2次トランプ政権は、日本が「アメリカの従属国」の立場から脱却し、自力で国を守る「真の独立国」に近づく機会をもたらすことになる可能性は高いです。

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2024年2月11日日曜日

「巨悪に挑む正義のヒーロー」と思ってはいけない…日本の特捜検察が冤罪を生んでしまうワケ―【私の論評】汚職事件との違いが際立つ自民党派閥パーティー券事件の本質

「巨悪に挑む正義のヒーロー」と思ってはいけない…日本の特捜検察が冤罪を生んでしまうワケ

まとめ
  • 政治資金パーティー券事件で、検察による大物政治家の立件が見送られたが、検察の政治介入の疑惑が浮上している。
  • 事件自体がそれほど悪質ではなく、立件も難しかったことから、検察の意図が問われている。
  • 日本の司法制度・運用には深刻な問題があり、国際的にも評判が悪化している。人質司法などが代表例。
  • 検察の介入で新しいビジネスが萎縮し、推定無罪の原則もないなど法治国家として異常な状況。
  • 巨悪への対処は立法を優先し、情報公開で犯罪防止を。抜本的な司法改革が喫緊の課題。
東京地方検察庁特別捜査部が設置されている 九段合同庁舎

 自民党派閥の政治資金パーティー券事件で、東京地検特捜部が派閥幹部らの立件を見送ったことについて、評論家の八幡和郎氏は辛辣だが的確な指摘を展開している。

 まず八幡氏は、事件自体が過去の大規模汚職事件ほど悪質ではなく、立件自体が困難だったことを指摘。その上で、検察が大物逮捕を示唆する情報を流し、事実上の政治介入を行った可能性を問題視する。

 加えて、検察が本丸の森喜朗元首相には手出しできず、側近の池田議員を逮捕したことから、政権との対立が意趣返しの意図につながったのではないかと疑問を呈する。

 さらに日本司法の抱える根深い問題にも言及。国際的に評判の悪いゴーン元会長への扱いや、逮捕が刑罰以上のダメージを与える「人質司法」がその象徴であると批判する。

 検察による新ビジネスへの介入が成長を阻害している点や、推定無罪の原則がないことの異常さも指摘。日本司法の前近代性を痛烈に批判している。

 その上で、巨悪への対処は立法を優先し、情報公開で犯罪を未然に防ぐことが先決であると主張。今回の検察のやり方は到底容認できず、抜本的な司法改革が必要不可欠だと訴える。

 共同親権制度の不存在や子の連れ去り問題など、国際常識から乖離した法制度の改正も喫緊の課題であるが、法務省の妨害が指摘されているという。

八幡 和郎(やわた・かずお) 
徳島文理大学教授、評論家

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】汚職事件との違いが際立つ自民党派閥パーティー券事件の本質

まとめ
  • 八幡氏が指摘する「大規模汚職事件」には、ロッキード事件、リクルート事件、東京佐川急便事件が含まれる
  • これらの事件は、政治家への大規模な金銭授受が明らかになった汚職事件
  • 一方、今回のパーティー券事件は会費名目での政治資金不正に留まり、金銭授受自体は違法とはいえない
  • 検察による大物逮捕示唆のリークなど、逮捕前の「犯人扱い」が問題
  • 事件の影響力が一様ではなく、事態の鎮静化もあり得る。慎重な見極めが必要

八幡氏が指摘している「過去の大規模汚職事件」とは、具体的にはロッキード事件やリクルート事件、東京佐川急便事件を指していると考えられます。

ロッキード事件を伝える当時の新聞

その根本的な違いは次の通りです。
  • ロッキード事件は、航空機購入の代金の一部を賄賂として政治家に渡した巨大汚職事件。
  • リクルート事件は、リクルートコスモスが自社の未公開株を政治家に割り当て、影響力の見返りを得た事件。
  • 東京佐川急便事件とは、佐川急便グループが政治家秘書らに対して現金を渡していたという汚職事件です。見返りとして佐川急便の利益につながるよう国会質問の内容調整などをしていた。政治家秘書らに対し、数千万円から1億円規模の現金を渡していた 。
これらの事件は、企業から政治家への大規模な金銭のやり取りが明らかになった汚職事件でした。

一方で今回の自民党派閥のパーティー券事件は、政治資金パーティーの会費名目で政治資金を集める際に、収支報告書への虚偽記載があったというもの。金銭の受領自体は違法ではないという点で性格が異なります。

したがって、今回の事件ほど企業と政治家の癒着という観点では重大性が低く、立件も難しいというのが八幡氏の指摘するところです。

ちなみに、ロッキード事件とリクルート事件における金銭の総額は以下の通りとされています。
  • ロッキード事件 総額:約6億2,000万円 内訳:田中角栄元首相への賄賂が約4億2,000万円など
  • リクルート事件 総額:約57億円 内訳:未公開株計130万株が政治家などに割り当てられ、1株当たり最高で約44万円のプレミアムがついたとされる
  • 佐川急便事件では、朝日新聞の調べでは、少なくとも1億2千万円以上 、日本維新の会の馬場伸幸前代表(事件当時は秘書)への授受だけで約1億円 、自民党の衆議院議員秘書に対する授受が複数あったとされ、政治家秘書らへの総額は少なく見積もっても数億円規模に上ると考えられる。
このように、ロッキード事件で数億円規模、リクルート事件では50億円、佐川急便事件では数億円を超える莫大な金額が動いていたと言われています。

リクルート事件を伝える当時の新聞

一方、今回の自民党派閥のパーティー券事件では、総額こそ明らかになっていませんが、会費名目で1人数万円程度を徴収していたとされており、規模の違いは歴然としているといえます。

八幡氏は元記事で、「逮捕される前からの犯人扱い」にしていることが問題だとも指摘しています。該当する事例として、以下のような検察による情報リークが考えられます。
  • 今回の自民党派閥パーティー券事件で、検察が大物政治家の逮捕を示唆するようなリークを行い、マスコミで大々的に報じられた
  • 東京佐川急便事件でも、大物議員秘書の逮捕直前に氏名が報道されるなど、検察からの情報リークが指摘された
  • 別の汚職事件でも、逮捕前からマスコミが「汚職議員」などと報じるケースがしばしば見受けられた
こうした報道が出回ることで、世間からの批判を受けるなど、事実上の「犯人扱い」となることが問題視されているといえます。憶測報道を避けるべきである、との八幡氏の主張は妥当なものです。

検察による捜査情報のリークは法律に違反する可能性が高い行為です。

具体的には、刑事訴訟法の「捜査の秘密」(第100条)に違反するおそれがあります。

この条文では、捜査に関与する検察官、司法警察員等に対し、職務上知り得た捜査の秘密を漏らしてはならない、と定められています。

今回のパーティー券事件での大物政治家逮捕の示唆などは、まさにこの「捜査の秘密」に関わる情報のリークに該当すると考えられます。

仮に捜査情報をリークした検察官が特定されれば、刑事訴訟法違反で処罰の対象となり得るでしょう。

したがって、八幡氏の指摘するように、検察による逮捕前の情報リークは法律上も問題がある行為だと言えます。

今回の事件が過去の「政治とカネ」の問題に端を発した政界再編の動きに似ている面はあります。

ただし、過去の事例から見ても、事件の影響力は必ずしも一様ではなく、収束していく可能性も必ずしも否定できません。

理由としては、まず今回の事件そのものが過去ほどの重大性がないことがあげられます。金額や事実関係の調査の粗っぽさから、世論の怒りを買い続けづらい側面があります。今後野党やマスコミも批判を続けるでしょうが、かといってそれによって何かが変わる可能性は低いです。そうなると、一般の関心は薄れていくことでしょう。

また、捜査当局である検察の偏向ぶりが明らかになれば、むしろ世論の反発を招きやすいところでしょう。過剰なマスコミ報道も視聴者からの反発が生じています。

自民党内でも、今回の事態が過熱することへの牽制が働くと考えられ、一定の歯止めとなり得るでしょう。

こうした動向次第では、徐々に事態が鎮静化し、大きな政界再編には至らない線も十分に描けるでしょう。今後の動向に注意が必要ですが、決して悲観的なシナリオしかないわけではないです。

私は、今回の検察のリークに端を発した事件により、大きな政界再編成がおこってしまえば、検察やマスコミを一層奢り高ぶらせ、また政治に介入してくる端緒を与えかねないと懸念しています。このような懸念を自民党幹部が抱く可能性は高いです。

岸田首相

その意味では、私自身は、岸田政権には不満であるものの、岸田政権には少なくともう一期くらいは、続けさせ政治を安定化させ、マスコミや検察などの倒閣運動など通用しないことをはっきりさせた上で、次の展開を考えたほうが良いと思います。それは、自民党に野党にもいえることだと思います。

そうでないと政局はとんでもない方向に動いていき、せっかく安倍政権・菅政権で築きつつあった、官僚主導でない政治主導の政治が根底から覆され、それこそ官僚主導、その中でも最強の官庁である財務省主導の政治がより一層色濃く展開されることになりかねません。

今のままだと、岸田政権は打倒したものの、その後継政権は岸田政権以下という事になりかねません。しかも、官僚たちが一斉に蠢き出し、財務省は緊縮財政に走り、日銀は金融引き締めに走り、経済は落ち込み、中国や韓国は、これによって一息つき、さらに日本への干渉を強めるでしょう。

LGBT理解促進法案が促進され、巷で大混乱になり、移民が大勢日本にやってきたり、ポリティカル・コレクトネスがより一層日本でも促進され、混乱の極みになる可能性は否定しきれません。混乱するだけならまだ良いのですが、多くの国民が実際にその実害を被るという事態になりかねません。

無論岸田政権であっても、これは懸念されるのですが、政権が不安定になれば、一層これを進めやすくなります。岸田政権が崩壊したということになれば、官僚やマスコミ、反日勢力などが大きく勢いづくことになります。それを防止するためにも、岸田首相には、国民にもっと寄り添い、官僚機構と闘う政治家に変身していただきたいのです。

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2024年2月10日土曜日

米海軍の「悪夢」を現実にしたウクライナ無人艇群の軍艦撃沈―【私の論評】潜水艦とドローン:日本の海洋戦略と未来の海軍力

米海軍の「悪夢」を現実にしたウクライナ無人艇群の軍艦撃沈

まとめ

  • ウクライナ軍は、水上ドローンを用いてコルベット艦「イワノベツ」を撃沈、これらによりウクライナ南部の港へのロシア軍接近を阻止
  • ウクライナ軍の攻撃が世界各国海軍に警鐘、米海軍はレーザーやマイクロ波など対ドローン技術を開発
  • 中国による台湾侵攻抑止にも活用検討、ドローン攻撃への対策強化と攻撃型ドローン開発の両面強化
  • 現代ではドローンが海戦において重要な役割を果たし、各国海軍はドローン対策と攻撃型ドローン開発に力を入れつつある
  • 米海軍のドローン認識を高め、対策加速し、ドローン攻撃への対策強化と攻撃型ドローン開発加速

ウクライナ軍の水上ドローン

 ウクライナ軍はクリミア西部で水上ドローンを用いてロシア海軍のコルベット艦「イワノベツ」を撃沈したと主張し、動画を公開した。この戦果は、ウクライナが黒海艦隊の艦艇を次々に撃破し、ウクライナ南部の港への接近を阻止することに一定の成功を収めていることを示している。

 攻撃には最大6隻の水上ドローンが使用されたと推定されており、イワノベツは移動不能となるほどの損害を受けた。ロシアは約89億~100億円の損害を被ったと見られる。

 この攻撃は、米海軍を含む世界各国海軍にとって、ドローンによる攻撃の脅威と、対ドローン防衛の重要性を浮き彫りにした。

 米海軍は、レーザーや高出力マイクロ波など、ドローンに対抗する様々な技術を開発・運用している。しかし、ウクライナ軍の攻撃は、これらの技術が十分ではないことを示している。

 一方、米海軍は攻撃型無人艇の開発も進めており、中国による台湾侵攻の抑止にも活用することを検討している。

 ウクライナ軍による水上ドローンの使用は、米海軍のドローンに対する認識を高め、ドローン攻撃への対策を加速させる可能性がある。

 現代の海戦において、ドローンは重要な役割を果たすようになってきている。今後、各国海軍はドローン攻撃への対策を強化すると同時に、攻撃型ドローンの開発にも力を入れていくことが予想される。

この記事は元記事の要約です、詳細は元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】潜水艦とドローン:日本の海洋戦略と未来の海軍力

まとめ
  • 飛行するドローンや水上ドローンは既存の哨戒システムでは発見しにくく、防御も難しい。
  • 現代海戦の主役は海上艦艇ではなく、潜水艦であり、潜水艦の発見や破壊は非常に難しい。
  • 日本の潜水艦は静寂性が高く、攻撃後の速やかな離脱により発見が難しい。
  • 日本は静寂性の優れた潜航型ドローンの開発により海軍力をさらに強化できる可能性がある。
  • 米国と日本が潜水艦をトレードすることで、両国は世界最高水準の海軍力を維持できるだろう。
ロシア海軍のコルベット艦「イワノベツ」

飛行するドローンや水上ドローンは、従来の哨戒システムでは捕捉が難しい場合があります。水上ドローンは、波や海流に紛れて、目視で発見することも難しい場合があります。

また、仮に発見できた場合でも、多数の水上ドローンの攻撃を受けた場合、これを防御するのは難しくなります。

一方水中を航行する、水中ドローンはレーダー波が減衰するため、水中を航行するドローンを検知することは困難です。

上の記事では、潜水艦に関しては述べられていません。このブログでも何度か指摘してきたとおり、現代海戦の主役は海上艦艇ではなく、潜水艦です。海上艦艇は、空母を含めて、ミサイルの標的でしかなく、ミサイルによって撃沈されてしまいます。

ウクライナ軍によるコルベット艦攻撃は、今日では、水上艦はミサイルと安価なドローンによる標的になってしまったことを象徴しています。飛行するドローンと水上ドローンの飽和攻撃を受ければ、仮に強力な防空システムや哨戒システムがあっても撃沈される可能性は高いです。特に安価なドローンは、高価なミサイルとは異なり、一度の攻撃にかなりの数を用いることができます。

現在では、ますます、水上艦艇はミサイルやドローンの標的にすぎなくなったのです。

ロシアのヤーセン型原潜

しかし、潜水艦はこの限りではありません。潜水艦を発見できれば、ドローンでもこれを破壊することは可能だと思いますが、特に潜水艦が駆動装置を止めた状態で潮流にのって移動してい場合これを発見するのは、ほとんど不可能です。

ただ、対戦哨戒能力が高い日米であれば、これを発見できる可能性はあります。特に原潜であれば、発見できる可能性もあります。

原子炉は、熱エネルギーを動力に変換するために冷却水を循環させています。この冷却水ポンプが大きな騒音を発生します。これには、様々な対策を講じていますが、いまのところは完璧ではありません。

しかし、通常型の潜水艦の場合は、原子炉を冷やす冷却水ポンプなどはないので、かなり騒音をセーブできます。この場合、発見するのはかなり難しいです。それでも、魚雷やミサイルを発射した場合には、騒音を発するので、発見されやすくなります。その後は静寂性が勝負になります。

ミサイルなどを発射した後には、敵の攻撃を避けるため、そこからすぐに離脱しますが、静寂性が低いと、発見されやすくなります。

日本の潜水艦は、潜航中ですら無音に近いとされていますから、潮流にのらなくても、発見さするのは難しいです。そのような静寂性に優れた潜水艦であっても、魚雷やミサイルを発射したときには、騒音が発生するため、発見される可能性は高いです。

ただ、発射後にすぐにその場から離脱しますから、離脱後にはかなり発見が難しくなります。特に、対潜哨戒能力が未だ日米にはるかに及ばない中国とロシアはこれを発見することは難しいです。

大砲・ミサイル・魚雷であろうと、ドローン、レールガン、レーザーガンであろうと、今後開発されるであろう想像もつかないような兵器であろうと、発見できない敵に対しては無効なのです。これは、プロパガンダや時代や倫理問題等や政治理念や超えた、単純明快な真理だと思います。

以上のことを考えると、日本の場合少なくとも、海上自衛隊に関しては、ドローン対策はすである程度できているといえます。現状では海軍としては、自国を守るという意味では、最も有利な地位にあると言っても過言ではないと思います。

日本の最新型潜水艦「たいげい」

日本としては、静寂性の優れた潜水艦が建造できるわけですから、静寂性の優れた水中ドローンを開発して、多数・多種類を実用化すれば、さらに海軍力を強化できるでしょう。

米国が製造する潜水艦は核を搭載する戦略原潜も、核を搭載しない攻撃型原潜もすべて原潜です。そのため、米国は最早最新型の通常型潜水艦を製造することはできません。無論これから、開発する能力は十分ありますが、もう数十年も製造していないのですから、これから開発するとなるとかなりの時間と労力を必要とします。運用にも時間がかかるでしょう。日本は、これを製造・運用できるわけですから、米国もこれを欲しがるかもしれません。

日本には、原潜はありません。日本にはこれを製造する技術はありますが、それでも実際に製造、さらには原潜の運用ということになれば、多くの年月を要するでしょう。

米軍と、日本とが互いに潜水艦をトレードするようになれば、日米ともに世界最高水準の海軍の座を維持し続けることになるでしょう。

日本としては、いずれトレードした米原潜に核兵器を搭載することも検討すべきでしょう。これを、中露北が最も恐れていることでしょう。たとえ、実際には搭載しなかったにしても、中露北にとっては、その潜在的な脅威があるので、かなりの牽制になるのは間違いないです。

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2024年2月9日金曜日

中国に外務省公電漏洩疑惑の衝撃 林官房長官の説明、簡単には信用できない「日本版CIA」「スパイ防止法」の制定を―【私の論評】日本の国家安全保障強化のための5つの提言

まとめ
  • 外務省システムが中国からのサイバー攻撃を受け、外交公電が漏洩
  • 米政府は2020年夏に日本政府に警告
  • 情報漏洩は国家存亡に関わる危機
  • 日本は「インテリジェンス最貧国」にならないよう、諜報活動やスパイ行為の取り締まりを強化
  • 政府は情報管理体制の強化、米国など同盟国との連携、諜報活動やスパイ行為の取り締まり強化、「日本版CIA」の創設、「スパイ防止法」の制定など、抜本的な対策を講じる必要がある

 日本の情報管理体制に深刻な問題が露呈した。機密情報を含む外交公電をやりとりする外務省のシステムが中国からのサイバー攻撃を受け、大規模な情報漏洩が発生していたのだ。

 この衝撃的な事実を報じたのは読売新聞。米政府が2020年夏に日本政府に警告していたという情報も明らかになった。

 情報漏洩の内容や、攻撃を受けた経緯はまだ明らかになっていない。しかし、北京の日本大使館と外務省本省間で交わされた公電が中国当局に読み取られていた可能性は極めて高い。

 林芳正官房長官は漏洩を否定しているが、過去の情報漏洩事件を踏まえると、楽観視は許されない。

 日本は過去にも、米紙ワシントン・ポストによって、中国人民解放軍のハッカーが日本の防衛関連ネットワークに侵入していたことが報じられている。

 外交問題においては、国家間の懸案を「外交的解決」で解決したいと考える人が多い。しかし、相手国に機密情報が筒抜けになっている状況では、外交交渉において不利な立場に立たされることは避けられない。

 情報漏洩は国家存亡に関わる危機であり、日本政府の対応は極めて不十分と言わざるを得ない。

 情報漏洩は今回が初めてではない。第二次世界大戦中にも公電が傍受された例がある。現在ではSNSの普及により、情報の重要性はかつてないほど高まっている。

 著者は2021年出版の著書「いまそこにある中国の日本侵食」において、中国の宣伝工作や情報工作について警鐘を鳴らしてきた。中国共産党傘下の対外工作機関「中央統一戦線工作部」や、中国人民解放軍傘下のサイバー部隊の存在も指摘している。

 中国の脅威が高まる中、日本にとって米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」への参加は重要である。しかし、情報管理体制が脆弱な現状では、同盟・友好国の信頼を得ることはできない。

 日本は「インテリジェンス最貧国」にならないよう、諜報活動やスパイ行為の取り締まりを強化する必要がある。

 政府は2022年12月に国家安全保障戦略など安保3文書を閣議決定したが、情報分野における対策は不十分だ。

 情報漏洩は一朝一夕に解決できる問題ではない。しかし、何か事が起きてからでは取り返しがつかない。政府は一刻も早く抜本的な対策を講じる必要がある。

 この記事は元記事の要約です、詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】日本の国家安全保障強化のための5つの提言

まとめ
  • 情報漏洩は国家の存立に関わる重大な問題である
  • 政府は国民の安全を守るため、安全保障体制を抜本的に強化する必要がある
  • 情報セキュリティ対策、同盟国との連携、諜報能力の強化が必要
  • 「日本版CIA」の新設、「スパイ防止法」の整備が必要
  • 財政面や法整備の障壁はあるが、国家の存立に関わる問題なので実行が必要
日本国家の存亡に関わる重大な局面で、国民が一丸となって立ち向かう様子 AI生成画像

情報漏洩は国家存亡に関わる重大な問題です。政府は国民の安全を守るために、迅速かつ抜本的な対策を講じる必要があります。具体的には、以下の方策を早急に実行すべきです。

近年、中国やロシア、北朝鮮をはじめとする国々によるサイバー攻撃やスパイ活動、情報戦といった国家安全保障に対する脅威が高まっています。日本も例外ではなく、政府機関や重要インフラ、防衛産業に対するサイバー攻撃が確認されるなど、情報セキュリティ体制の脆弱性が問題視されています。

このような情勢を踏まえ、日本は国家安全保障体制を抜本的に強化し、サイバー空間を含むあらゆる領域における安全保障能力を高める必要があります。具体的には以下の5点を柱とする安全保障強化策を実行することが急務です。

1. 情報セキュリティ対策の強化

政府機関や重要インフラの情報セキュリティ対策を大幅に強化し、サイバー攻撃や内部情報漏洩への防御力を高める必要があります。

具体的には、最新のセキュリティ設備の導入、職員への継続的な情報セキュリティ教育の実施、情報管理規程の見直しによるセキュリティルールの厳格化などを行うべきです。

さらに、サイバーセキュリティ担当機関の体制を拡充し、高度なサイバー攻撃に対応できる技術力と人材を育成していくことも重要です。これにより、政府機関や重要インフラの情報システムを隙間なく守り抜く体制を確立することができます。

2. 米国等との安全保障協力の拡大

米国や英国、豪州、NATO等の同盟国・友好国との安全保障協力を大幅に拡大する必要があります。具体的には、サイバー空間を含む安全保障分野における定期的な政策協議の実施、共同訓練・演習の拡充、装備・技術協力の推進などを行うべきです。

中でも米国とは、日米安全保障条約に基づく強固な二国間協力体制をさらに発展させ、サイバー攻撃に対する共同対処能力や先端技術開発での連携を深めることが重要です。こうした同盟国との緊密な連携により、日本の安全保障力は大きく強化できます。

3. 諜報機関の抜本的強化

外務省、防衛省、公安調査庁等の諜報機関の人員と予算を大幅に拡充し、情報収集・分析機能を抜本的に強化する必要があります。具体的には、情報機関職員の増員、語学力と専門性を兼ね備えた人材の育成、最新の情報収集装備の導入などを進めるべきです。

また、収集した情報を政府横断的に共有・活用するための仕組み作りも重要です。これにより、外国の軍事動向や意図、サイバー攻撃等の諜報活動を的確に探知し、対処する能力が強化できます。 

4. 「日本版CIA」の新設

外交、防衛、公安の情報機関を統合した、強力な中央情報機関を新設する必要があります。米中央情報局(CIA)や英秘密情報部(MI6)のような「日本版CIA」を設立し、政府全体の諜報活動を一元的に指揮・運用することが重要です。これにより、複雑化・専門化する諜報作戦に機動的に対応し、収集情報を政策立案に迅速かつ効果的に反映できる体制を構築できます。

日本版CIAの女性エージェント AI生成画像

5. 「スパイ防止法」の整備

外国スパイによる諜報活動を違法化し、厳しく取り締まるための「スパイ防止法」を整備する必要があります。米国の「エコノミック・エスピオナージ法」のように、外国のための情報収集活動や秘密漏洩を禁止する法整備は遅れているため、早急に実現するべきです。これにより、外国工作員によるサイバー攻撃や政府機密の窃取を抑止し、安全保障を確保できます。

以上の5点は、日本の安全保障強化における最重要課題です。財政面や法整備の障壁はあるものの、国家の存立に関わる問題であるため、政府は国民の理解を得つつ、着実に実行する必要があります。日本の安全保障能力を高め、変化する国際情勢に主体的に対応していくには、こうした安全保障体制の抜本強化が不可欠です。


日本の軍備 AI生成画像

政府は国民の英知を結集し、安保強化に向けた国家的合意形成に全力を尽くすべきです。同時に、自主独立の平和国家を目指す我が国の立場を世界に強力に発信し、国際社会の理解を得る外交努力も欠かせません。

ゆるぎない日米同盟関係のもと、積極的平和主義の旗を高く掲げ、進化する安全保障環境に適応すべく、防衛力の抜本的増強を実現することが必要不可欠です。これは決して他国を脅かすための措置ではなく、自国および同盟国の自由と繁栄を堅守するための正義の処置なのです。

今こそ、国難に立ち向かうため、国民は一丸となって、安全保障体制の抜本強化を断行すべき歴史的使命があるのです。これが、変動する国際情勢において日本が生き残り、尊厳を守る唯一の道なのです。

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