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2018年1月18日木曜日

“フェイクニュース大賞” 米大統領が発表―【私の論評】日本のマスコミによる米国報道は間違いだらけ!話1/5くらいで受け止めよ(゚д゚)!

“フェイクニュース大賞” 米大統領が発表



就任から1年となるアメリカのトランプ大統領は、うそだったと見なしたニューヨーク・タイムズやABCテレビなどの報道を“フェイクニュース大賞”と称して発表し、メディアとの対立が深まっています。

今月20日で就任から1年となるトランプ大統領は17日、ツイッターを通じ、“フェイクニュース大賞”と称して、自身がうそだったと見なした報道を発表しました。

“大賞”には11の報道が選ばれていて、トップには、おととしの大統領選挙でトランプ氏が勝利した際、「これで経済は決して回復しない」とする経済学者の見解を報じた有力紙のニューヨーク・タイムズの報道を挙げています。

そして、2つ目には、先月、いわゆる「ロシア疑惑」をめぐりトランプ大統領とロシアとの関わりを伝え、内容に誤りがあったとして担当した記者が停職処分になったABCテレビの報道を選び、これによって株価が急落したと批判しています。

さらに、トランプ大統領が去年日本を訪れた際、迎賓館でこいが飼育されている池に、木箱に残っていた餌をすべて投げ入れる様子を報じたCNNテレビの編集を挙げ、過剰な餌のやり方に見せているが、安倍総理大臣にならっただけだと反論しています。

また、有力紙のワシントン・ポストなどの報道も“大賞”に選んだほか、最後には、ロシアとの共謀をめぐる報道を挙げ、「最大のでっちあげで、共謀はない」と主張しています。

そして、「偏向し、不公正な報道やフェイクニュースの1年だった」と回顧し、トランプ大統領としては、みずからに批判的なメディアに圧力をかける狙いがあると見られます。

これに対し、メディア側は「報道の信頼をおとしめる攻撃だ」などと反発していて、対立がさらに深まっています。
11の“大賞” 「授賞理由」とトランプ氏の「反論」
トランプ大統領が選んだ11の報道。トランプ氏はみずからの言い分や反論も記しています。

【ニューヨーク・タイムズに】
おととしの大統領選挙でトランプ大統領が勝利した際、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマン教授が「これで経済は決して回復しない」とした見解を掲載した報道。

大統領就任以来、アメリカ経済は200万人近い雇用を創出し、8兆ドル以上の富を獲得している。

黒人やヒスパニック系の市民は歴史上で過去最低の失業率を享受している。

【ABCテレビに】
先月、いわゆるロシア疑惑をめぐり、トランプ大統領がフリン前大統領補佐官にロシア側と接触するように指示したと報じた内容について、接触を指示した時期に誤りがあったとして担当した記者が停職処分になったことと、これによって株価が急落したことについて。

【CNNテレビに】
大統領選挙の期間中、内部告発サイト、ウィキリークスからハッキングされた資料を、当時のトランプ候補と長男のジュニア氏が入手したという報道。

【雑誌「タイム」に】
トランプ大統領が大統領の執務室からキング牧師の胸像を撤去したという報道。

【ワシントン・ポストに】
フロリダ州で開かれたトランプ大統領の集会にほとんど人が集まっていなかったとするツイッターの写真を載せたこと。

大勢の人が会場の外でこれから入ろうとするところで、中に入れない人もいるほどだった。

不誠実な記者が、人がいっぱいになる前の写真を掲載した。

【CNNテレビに】
トランプ大統領が去年、日本を訪れた際、迎賓館でこいが飼育されている池に木箱の餌をすべて投げ入れた映像の編集。

過剰な餌のやり方に見せているが、先に餌をすべて投げ入れた安倍総理大臣にならっただけだ。

【CNNテレビに】
トランプ政権の元広報責任者のスカラムッチ氏がロシア側と接触していたという報道で、編集のプロセスが守られていなかったとして担当した3人の記者が辞職したことについて。

【週刊誌「ニューズウィーク」に】
ポーランドの大統領夫人がトランプ大統領と握手をしなかったという報道。
握手をしている写真を公開。

【CNNテレビに】
トランプ大統領がロシア疑惑をめぐる捜査の対象になっていないとする主張に対して、FBIのコミー前長官が議会の公聴会で異議をとなえる見通しとする報道。

【ニューヨーク・タイムズに】
トランプ大統領が気候変動に関する報告書を隠蔽していたとする報道。

【ロシアとの共謀をめぐる報道】
ロシアと共謀したとする報道はアメリカ国民に対する最大のでっちあげ。
ロシアとの共謀はない!

このように11の項目を “フェイクニュース大賞” として並べ、メディアは90%の時間をトランプ大統領のネガティブな報道かフェイクニュースに費やしているものの、トランプ大統領は就任からおよそ1年の間に多くの成果を出している、と強調しました。

共和党議員が「恥ずべきこと」大統領を批判

与党・共和党のフレイク上院議員は17日、本会議場で演説し、トランプ大統領がメディアを「人々の敵だ」と主張していると指摘し、旧ソビエトの指導者のスターリンを引き合いに出して、「恥ずべきことだ。事実に忠実でなければ民主主義は続かない」と述べ、厳しく批判しました。

おひざ元の共和党からも、メディアとの対立を懸念する声が上がっていることについてホワイトハウスのサンダース報道官は17日の記者会見で、「われわれは日々、メディアを歓迎し、質問を受けている。トランプ大統領もそうだ」と反論しました。

CNN記者がトランプ大統領を非難

アメリカの首都ワシントンでは17日、トランプ政権を取材する記者らが参加したシンポジウムが開かれました。

この中で、ホワイトハウスを担当するCNNテレビのアコスタ記者は「トランプ大統領はわれわれをフェイクニュースと呼び、報道に対する信頼をおとしめている。大統領としてふさわしくない対応をしており、容認すべきでない」と非難しました。そのうえで、「われわれの行動指針は真実を伝えることだ。大統領が誰であれ、われわれをなんと呼ぼうが、それがわれわれの仕事だ」と強調しました。

シンポジウムを聴きに来た男性はNHKの取材に対し、トランプ大統領が“フェイクニュース大賞”を発表したことについて「報道の自由は憲法で保障されており、政治家を追及するのは報道機関の責務だ。トランプ大統領が憲法を尊重していない証拠であり、不必要にメディアと敵対的な関係をつくることは憲法の価値に反する」と話していました。
トランプ大統領ツイッター「いいニュースもある」トランプ大統領は17日、ツイッターに「非常に腐敗し不誠実な報道があるが、私が尊敬するすばらしい記者もいるし、アメリカ国民が誇りに思ういいニュースもある」と書き込みました。

今回の“フェイクニュース大賞”には、トランプ大統領が日頃、評価するFOXテレビは入っておらず、そうした報道を指しているものと見られます。

批判とひいき メディアで一線

トランプ大統領は、ツイッターを通じてアメリカの主要メディアの報道を「フェイクニュース」と呼んで繰り返し攻撃してきました。

トランプ大統領のツイッターをモニターしているウェブサイトによりますと、トランプ大統領が就任以降、今月17日までに投稿した2600回のツイートのうち、「フェイクニュース」と書き込んだ回数は186回に及んだということです。

さらに、ツイッターに主要メディアの名前を名指しで書き込んだ回数は、ニューヨークタイムズが38回、CNNが34回、NBCが31回で、その多くが批判でした。

一方、トランプ大統領がこうした主要メディアと一線を画してツイッターでも特別扱いしているメディアが保守系のテレビ局FOXです。

トランプ大統領は、これまでにツイッターで174回、FOXやその番組について投稿していますが、批判したことはなく、去年11月のツイッターでは「FOXニュースはCNNよりもはるかに重要だ」とか、「FOXを除くテレビ局の間で最も不誠実で不正確な放送をしている局がどこか、コンテストを開催すべきだ」と投稿するなど、FOXをひいきにする姿勢を明確にしています。

政治家の発言確認団体「大統領こそ間違い多い」

一方、政治家の発言の真偽を確認する団体「ポリティファクト」のアンジー・ホラン編集長は、トランプ大統領の発言こそ間違いが多いと指摘しています。

ホラン編集長はNHKのインタビューで、「トランプ大統領は、頻繁に不正確で誇張した話をする。私たちが調べた彼の発言のうち、およそ70%に間違いがあり、選挙期間中とほぼ同じ割合だった。大統領になれば、冷静になってもっと正確に話すのではないかと見られていたが変わっていないようだ」と述べました。

さらに「特にツイッターに頻繁に不正確やうその情報が含まれている。準備されたスピーチは、側近が内容をチェックできるが、ツイッターは自分で思いついたことを書き込んでいるようだ」と分析しました。

また、ホラン編集長は「大統領は時折、発言内容を変えるほか、同じスピーチの中で矛盾する発言もするので、発言の趣旨を確認するのが非常に難しい」と述べました。

「ポリティファクト」は、先月、去年2017年の最大のうそ=「ライ・オブ・ザ・イヤー」にトランプ大統領がおととしの大統領選挙にロシアが干渉したことを認めず、作り話だなどと発言したことを選んでいます。

【私の論評】日本のマスコミによる米国報道は間違いだらけ!話1/5くらいで受け止めよ(゚д゚)!

米国のマスコミのニュースは確かにフェイクが満載です。上のトランプ大統領がフェイクであると主張するニュースのほとんとは妥当だと思います。

一例だけ具体的に解説しておきます。一番最初の【ニューヨーク・タイムズに】の項目で、おととしの大統領選挙でトランプ大統領が勝利した際、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマン教授の見解です。

ポール・クルーグマン氏
クルーグマン氏は、トランプ氏が空調大手キャリア社のメキシコ移転を阻止したことに関して、ニューヨーク・タイムズに反論を展開していました。
巨大な経済の中で、本件の雇用数は1000人ほどに過ぎない。これを毎週一回実行しても、オバマ大統領が自動車産業救済で創出した雇用数を達成するには30年かかる。同様に、製造業が2000年以来失った雇用を取り戻すには、1世紀かかる。
これは、トランプ氏が選挙運動中に語ったことをもとに、クルーグマン氏が語ったことであり、これは事実です。確かに、空調大手キャリア社のメキシコ移転を阻止したとしても、それによって維持された雇用は1000人程度のものです。そうして、これはトランプ氏が選挙遊説中に語ったことをもと言っているだけで、この時点ではトランプ政権の具体的な経済政策が出ていない段階です。その後出されたトランプ氏の経済対策については、まとも論評しています。

アメリカのアカデミズムの世界はほとんどがリベラル派です。クルーグマン氏もリベラル派です。選挙直後に意見を求められれば、当然のことながらこのようなコメントになるものと思います。

これは、トランプ氏を批判するために、ニューヨーク・タイムズが著名な経済学者の発言を都合良くトランプ氏を貶めるために印象操作に利用したと言っても良いです。

他のニュースも似たり寄ったりで、私自身はここに掲載されているものは、すべてトランプ氏を貶めるためのフェイクと断定しても良いものと思います。

トランプ大統領は、なぜ米国のメディアにこれほどまでに攻撃されるのしょうか、その理由はこのブログにも何度か掲載してきました。以下に再度まとめておきます。

トランプ大統領
それは、トランプがキリスト教や道徳を重んじ、強い軍隊を支持し、頑張った人が報われる社会を願う保守主義の考え方の持ち主だからです。

日本ではほとんど知られていませんが、アメリカの大手新聞は、日本で言えば朝日新聞や赤旗といったサヨク・リベラル系ばかりで、産経新聞のような保守系の全国紙は存在しません。

ここでいうサヨク・リベラル系とは、道徳を毛嫌いし、企業は国民を酷使し搾取する存在だと決めつけ、保守派をファシストだと非難し、自分たちこそ人道的で理想主義的だと思い込んでいる人たちのことです。

テレビも同様です。世界的に有名なCNNに対して「コミュニスト(共産主義)・ニュース・ネットワーク」と揶揄する保守派もいるぐらいで、アメリカのマスコミの偏向ぶりは、日本以上にひどいと言っていいです。


日本のテレビも新聞も、アメリカのそのようなサヨク偏向のテレビや新聞の論調をそのまま紹介していますから、「サヨク・リベラルから見たアメリカ」ばかりが日本で報じられることになります。

こうした基本的な「構図」を知らずに、アメリカのサヨク偏向報道を真に受けて、「アメリカを再び偉大な国にしようと主張するトランプは、粗暴な人種差別主義者だ」と思い込んでしまっている日本人も多いようです。

だが、ちょっと待って欲しい。(ブログ管理人注:朝日新聞が良く使うフレーズです(笑))

安倍政権反対の意見こそが日本の世論であるかのごとく報じる朝日新聞や赤旗ばかりを読んでいて、日本の政治の実情を理解できるでしょうか。

朝日新聞などが連日、安倍政権を批判していますが、安倍政権の支持率は上がる一方ではありませんか。昨年は、朝日新聞などの森友・加計批判で一時は、支持率が落ちましたが、衆院選が終わって蓋をあけてみれば、安倍政権の議席数は変わらずで、野党は惨敗しました。

はっきり言いますが、アメリカのサヨク偏向マスコミと、それをそのまま紹介する日本のマスコミ報道を見ているだけでは、トランプ政権のことも、アメリカの実情も正確にする理解することは難しいです。

サヨク・リベラル系のマスコミが長年米国を牛耳ってきたため、本来は米国には昔から少なくても人口の半分は存在した保守層の意見などはかき消されてきたのです。しかし、一昨年の大統領選挙で、この事実が白日のもとに晒されたのです。

もし、米国の人口の約半分が保守層でなれければ、トランプ大統領が誕生したその理由が説明できません。米国のテレビやマスコミをみると、そこで流布されているのは、「サヨク・リベラル」の価値観やものの考え方ばかりであるため、これだけを見ていては米国の半分しか見ていないことになります。

私たちは、半分の米国には詳しかったのですが、これからはもう半分の米国も見ていく必要があります。そうしないと、米国の実態を見誤ることになります。実際、大統領選挙では日米の両メデイアも最後の最後まで、ヒラリー・クリントン優勢としていたにもかかわず、実際にはトランプ氏が大統領になり、このことが実証されました。

ヒラリー・クリントン大統領は誕生しなかった
トランプがアメリカ国民から支持されているのは、それなりに理由があります。その理由を正確に説明しないマスコミこそが米国内や国際社会を混乱に陥れているのです。

日本のマスコミや識者も様々なフェイクを発信しています。

金融緩和をするとハイパーインフレになり国債は暴落する。消費増税の日本経済への影響は軽微。このままだと、財政破綻するとか、財政危機に陥る。森友・加計問題で、総理の関与や総理のご意向があった。地下水検査の結果から豊洲は危険である等々。フェイクニュースはこの他にも、まだまだ数多く存在します。

このようなフェイクニュースを発信する日本のメディアが、こと米国に関しては正しく報道できると考えるほうがおかしいです。

日本のマスコミによる米国報道は話半分、いやそれでは駄目です、話1/5くらいで受け止めるくらいが良いと思います。もし事実を知りたいというのなら、そこで終わらせることなく、発信している人の立場を知ったり、他のソースをあたってみたり、推移を見てから、事実を見極めるべきです。

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2021年3月1日月曜日

ドナルド・トランプがCPAC2021で基調講演―【私の論評】トランプは未だ意気軒昂(゚д゚)!

 ドナルド・トランプがCPAC2021で基調講演

CPACで演説するトランプ氏

<引用元:ニューヨーク・ポスト 2021.2.28

ドナルド・トランプ前大統領は、2月28日の保守政治活動会議(CPAC)で6週間弱前にホワイトハウスを去ってから初の公の場での演説を行い、2024年の出馬の可能性をちらつかせバイデン政権を強く非難した。

トランプはオーランドで舞台に上がるとスタンディングオベーションで迎えられ、「我々の運動・・・は始まったばかりだ」と宣言した。

「私は今日みなさんの前に立ち、我々が4年前にともに始めた驚くべき旅はまだまだ続いていくと宣言します」とトランプは熱狂的な聴衆に語った。

「誇りある勤勉なアメリカの愛国者の運動は始まったばかりです。そして最後に我々が勝利します!」とトランプは述べた。

トランプは共和党で影響力を保つ意向であることを明言しながら、2024年の大統領選への出馬をほのめかした。

民主党について言及して「私は彼らを3度目に打ち負かそうと決意するかもしれません」と述べると、参加者からは割れるような喝采が起こった。

トランプはまた「強くタフな」共和党が選出されるよう取り組むと述べ、新政党を始める計画だという噂を「フェイクニュース」だと一蹴した。

「我々には共和党があり、団結してかつてないほど強力になろうとしています」とトランプは話した。

「我々は新党を始めません。『彼は全く新しい党を始めようとしている』と言い続ける人たちがいます。我々には共和党があり、団結してかつてないほど強力になろうとしています。私は新党を始めません。それはフェイクニュースでした。フェイクニュースです。違うのです。それが華々しいことになるでしょうか?新党を始めて票を分けましょう、では決して勝てません。いいえ、我々はそのようなつもりはありません」

トランプがその後、2020年大統領選に「不正があった」という主張を繰り返すと、聴衆から「あなたが勝った!」という声援が沸き起こりました。


トランプは、米国最高裁判所は結果に異議を唱える訴訟で「行動する勇気を持たなかった」と主張し、「彼らは自分たちが国に対して行ったことを恥ずべきです。正しい判断をするための根性も勇気もありませんでした」と続けた。

また後任の大統領を狙い撃ちし、バイデン大統領は「現代の歴史上の大統領の中で最も悲惨な最初の月」だったと主張した。

「我々全員がバイデン政権は悪くなると知っていましたが、どれほど悪くなるかは誰も知りませんでした」とトランプは述べた。

「南部国境での新たな悲惨な危機ほど良い例はありません。わずか1カ月の短期間でアメリカ・ファーストからアメリカ・ラストになってしまいました」とトランプは続けた。

トランプはバイデンの移民政策が次の2つの連邦選挙で民主党の足を引っ張ることになると主張した。

「我々は1つの国です。世界の問題を被る余裕はありません。喜んで―喜んで助けたいという気持ちは山々です。それはできないことです。それで彼らはみな約束と愚かな言葉のためにやって来ているのです」とトランプは語った。

前大統領はまたパンデミックの中での米国の学校再開を呼びかけ、バイデンは「アメリカの生徒たちを教員組合に売り渡した」と非難した。

「ジョー・バイデンは恥ずべきことにアメリカの若者を裏切りました。そして彼は残酷にも子供たちを家庭に閉じ込めています。そうする理由は全くありません。彼らは外に出たいのです」とトランプは語った。

「彼らは次世代のアメリカ人から彼らにふさわしい未来を騙し取っています。彼らは本当にこの未来に値します。彼らは成長しようとしていますが、傷を負おうとしています・・・こうした若者の精神的肉体的健康は限界点に達しつつあります」とトランプは続けた。

「アメリカのお母さん、お父さん、そして子供たちのために、私はジョー・バイデンに学校の再開を今すぐに行うよう要求します」とトランプが語ると喝采が起こった。

またトランプは自政権のコロナウイルス・ワクチン準備の取り組みを自賛し、「彼らの手柄にさせてはなりません。彼らは我々の計画に従っているに過ぎません」と述べた。

トランプは、前大統領が何も残さなかったので全国ワクチン配布計画を開発するために「ゼロから着手」していたという主張についてバイデン政権を非難した。

「バイデンは我々にワクチンがなかったと言いました。今私は、彼がそう言ったのは一体何が起こっているのかを分かっていなかったからだと本当に思います」とトランプはジョークを飛ばした。

また「ビッグテック」を非難し、独占の解消と「公平な競争」が取り戻されることを求めた。

「ツイッター、グーグル、そしてフェイスブックのようなビッグテックの巨人は、保守派の意見を黙らせる時はいつでも大きな制裁で罰するべきです」とトランプは述べた。

トランプは、共和党が2022年の中間選挙で多数を取り戻し2024年にホワイトハウスを勝ち取ることを願う中、オーランドでの年に1回の4日間の会議の最後を締めくくって全国の注目を取り戻した。

トランプは「民主党はアメリカに対する率直な軽蔑を基盤としている」と述べ、チャック・シューマー上院多数党院内総務、ナンシー・ペロシ下院議長、そして民主党を非難しながら、共和党を団結させるために演説を利用した。

「我々の党はアメリカ人に対する愛と、これが神に祝福された並外れた国だという信念を基盤としています」

「我々は偉大なアメリカ国旗を尊重します!」とトランプが語ると、聴衆からは「あなたを愛している」という掛け声が長時間続いた。

前大統領は聴衆の熱愛を受けるのは「名誉」だと述べ、共和党のことを「罪のない命を守ることと」アメリカ建国者の「ユダヤ・キリスト教の価値観をアップロードすることに全力で取り組んでいる」と表現した。

会場に登場したトランプの金ピカの像

「我々は自由思想を歓迎し・・・そして左翼の暴挙を拒否し、『キャンセル・カルチャー』を拒否します。我々は法と秩序を信じており・・・『警察の資金を断ち切る』ことはありません」と彼は述べた。

また「トランピズム」という言葉が現れたことを指摘し、減税、強固な国境、憲法修正第二条の保護、そして「非常に長い利用されていた忘れ去られたた男女に対する支持」と同様に、「私が考え出したものではなかったが意味するところはとても大きい」と述べた。

同時に前大統領は反トランプの共和党を追及し、「スタンドプレーをする」議員を名指しで批判した。その多くは下院と上院でトランプ弾劾に賛成した人々だった。

「ワシントンの共和党エスタブリッシュメントのトップは、バイデン、ペロシ、シューマーと民主党に反対することにエネルギーを注ぐべきです。私は彼らの一部にこう言ったことがあります。『オバマ時代、そして今はバイデン時代に、私に対する攻撃と同じだけのエネルギーを彼らを攻撃することに費やせば、実際に成功するだろう』と」

トランプが自分に反対する共和党議員を「RINO」つまり「名ばかりの共和党」と呼ぶと、聴衆は彼らに向けてブーイングを浴びせた。

「彼らを全員追い出せ」とトランプは述べた。

トランプがミッチ・マコーネル上院少数党院内総務からの推薦を指摘すると、聴衆のブーイングの声がさらに強まった。

「民主党は常に協力し合っていて、グループの中にミット・ロムニーはいません。共和党にとって幸運なことに、民主党はひどい政策です。おめでとうございます。ですから我々には共和党があります」とトランプは語った。

「しかし、共和党が協力し合わなければ、我々を取り巻くRINOが共和党とアメリカの労働者を破壊し国自体を破壊するでしょう」

「今はこれまで以上にタフで強く、精力的な、鋼のような勇気を持つ共和党指導者が求められる時代です。我々には強いリーダーシップが必要です」とトランプは語った。

トランプの待望の演説までには、共和党の大統領有望候補者ら―ジョシュ・ホーリー上院議員やテッド・クルーズ上院議員など―が週末にかけて前座を務め、かつての最高司令官を待つCPACの聴衆に勢いをつけた。

1月20日に退任してから、トランプはフロリダ州マーアラゴのリゾートで過ごしており、自身と共和党の政治の舞台での復帰に向けた下準備をする中で元陣営幹部や共和党議員らと面談していた。

トランプはCPACの演説の最後をこう締めくくった。「我々はまず下院を取り戻し、共和党大統領がホワイトハウスに勝利の帰還を果たすでしょう。それは誰になるでしょうね?」

【私の論評】トランプは未だ意気軒昂(゚д゚)!

CPAC2021の会場

CPAC(シーパック)は"The Conservative Political Action Conferenc"の略であり、守政治活動協議会または保守政治行動会議と訳されます。 American Conservative Union (ACU).が主催し、100を超える他組織が参画し、全米の保守主義の活動家・政治家が出席する、年に1度のスピーチ討論会です。

まずは、以下にこの演説を日本語に翻訳した、動画を掲載します。


この演説で、「バイデン現大統領は、アメリカ第1主義をアメリカ最後主義に転換させた」と語り、バイデン現大統領の就任からの1ヶ月を歴代大統領の中で史上最悪のスタートだとしました。

特に、バイデン大統領の移民政策や新型コロナウイルス感染拡大への対応を改めて批判する一方、ワクチン開発は「私たちの業績だ」と強調しました。

また共和党支持者への演説で、「私たちは一緒に信じられないほどの旅に乗り出し、現在、米国の将来のための歴史的な闘争の真っ只中にいる」とし、自身と支持者らが4年前に始めた「素晴らしい旅」は「決して終わってなどいない」と強調しました。

さらに、「自分は米国で新党を結成する気はなく、共和党に留まるであろう」と強調しました。

そして、「われわれは勝利し、米国はかつてないほど強く偉大な国になるだろう」と述べて、2022年の中間選挙で共和党の主導権奪還に向け、大きな役割を果たす姿勢を強調しました。

さらに「私自身が3度目の民主党の打倒を決意するかもしれない」と言明し、昨年の大統領に勝っていたとの主張を繰り返しつつ、24年大統領選に出馬する可能性を示唆しました。

米大統領選では、民主党が黒人や若者に有権者登録を呼び掛ける中、トランプが共和党支持者らに不在者投票を促さなかったことが700万票もの差で同氏がバイデン氏に敗北する要因になったとみられています。

選挙の日程は投票日当日までの数日間ではなく、実際の投票日1日のみとするべきだと主張。また「不在者投票には正当な理由が必要だ」と述べました。

さらに、もう1つの敗因となった郵便投票の廃止や、投票所での身分証明書の提示義務付けなどを提案しました。

これに先立ち、米上院の共和党最有力者の1人である上院野党指導者ミッチ・マコーネル氏は、数週間前に上院でトランプが今年1月6日の議事堂襲撃に関与したことを鋭く批判していました。

CPACで演説するポンペオ前国務長官

その一方で、トランプが党の指名争いに勝った場合、共和党は2024年の選挙でトランプを支持する、と表明しています。

トランプは、今年1月6日の米議事堂襲撃事件で支持者を騒乱へと煽動した罪に問われています。

しかし、こうした中トランプ弾劾法案は、米国上院での総議席の3分の2を得られず、否決されました。

トランプは、共和党内で同氏の弾劾に賛同した造反議員ら全員を名指しし、特に下院ナンバー3のリズ・チェイニー氏に対して強い怒りを示しています。

ひさしぶりのトランプ演説ですが、未だ意気軒昂です。今後の展開が楽しみです。今後も既存の政治家の枠を大きくはみ出た行動で、米国政界をリードしていくのは間違いないようです。

このトランプ演説に関しては、翻訳や、様々な見方が、報道されるようになると思います。今後もこのブログでは、そうした内容も取り上げていきます。よろしくお願いします。

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2021年11月16日火曜日

インフレがトランプ氏の返り咲きもたらす可能性-サマーズ氏が警告―【私の論評】2024年の米大統領選挙でトランプ氏が返り咲くか、大きな影響力を行使するのは間違いない情勢に(゚д゚)!

インフレがトランプ氏の返り咲きもたらす可能性-サマーズ氏が警告

ローレンス・サマーズ氏

ブルームバーグ): サマーズ元米財務長官は15日、過度なインフレへの対処に失敗すればトランプ前米大統領の返り咲きをもたらす可能性があると警告した。

1999年から2001年まで財務長官を務めたサマーズ氏は、「過度のインフレとそれが制御されていないという感覚が、リチャード・ニクソンロナルド・レーガンの当選を後押しした。ドナルド・トランプ氏が権力を取り戻すリスクもある」とした。同氏はブルームバーグへの寄稿者でもある。

一連のツイートは以下の通り。

原題:Larry Summers Says Inflation Risks Bringing Trump Back to Power(抜粋)

この記事の詳細は以下のリンクを御覧ください。


【私の論評】2024年の米大統領選挙でトランプ氏が返り咲くか、大きな影響力を行使するのは間違いない情勢に(゚д゚)!

ローレンス・サマーズ氏とはどのような人物なのか、Wikipediaから一部を引用します。
1982年から1983年にかけてロナルド・レーガン政権の大統領経済諮問委員会スタッフを務めた。また1988年アメリカ合衆国大統領選挙では民主党のマイケル・デュカキス候補の経済アドバイザーとなった。1991年にハーバード大学教授を辞任し、世界銀行上級副総裁(世界銀行チーフエコノミスト)に就任する。 
1993年にビル・クリントン政権が成立すると財務省に移って財務次官を務め、また1995年に財務副長官も務めた。日本でも榊原英資との円高是正の協調介入で知られている。 
1999年7月にロバート・ルービンの辞任に伴い、後任の財務長官に就任する。アメリカ合衆国財務長官として国内の経済・財政政策や日本などの対外経済関係と通貨危機などの国際経済を担当した。

詳細を知りたいかたは、 Wikipediaをご覧になってください。上の記述をみれば、サマーズ氏は政治的には民主党の立場から、そうして経済サイドからトランプ氏の大統領の復帰がありえることを示唆していることがわかります。

トランプ氏の大統領復帰がありえることは、以前このブログでも指摘したことがあります。

トランプ氏が独自SNS立ち上げ、合併相手のSPAC350%超急騰―【私の論評】2024年に、大統領に返り咲くこともあり得るトランプ氏(゚д゚)!


この記事では、トランプ氏が独自SNS立ち上げることなどを掲載しました。詳細はこの記事をご覧いただくものとして以下に一部を引用します。

ラスムセン社が先月下旬(9月下旬)に実施した世論調査によると、仮に今、大統領選が行われた場合、トランプ氏に投票するとした人が51%だったのに対し、バイデン氏は41%。民主党支持者の約5人に1人がトランプ氏に投票するとしました。
世論調査専門家のジョン・ゾグビー氏は、10ポイント差という結果は実態よりも「少し大きい」との見解を示しつつも、「就任からわずか9カ月で、(バイデン氏への)投票に後悔している人が多くいる」と指摘しています。

 以上のことのほかにも、トランプ氏が有利になりつつ報道もいくつかあります。

サマー・ザーボス(中央)

マンハッタン地区判事は12日夜、「アプレンティス」の元出演者であるサマー・ザーボスが主張を退けたのを受け、ドナルド・トランプ前大統領に対する名誉棄損訴訟を取り下げました。

棄却によってトランプは宣誓証言に出席する必要がなくなくなりました。

ニューヨーク・ポストによるとザーボスは、2007年の「アプレンティス」出演時に、自分の意思に反してトランプが自分の体を触りキスをしたとして2016年に訴えていました。

裁判官は訴訟を確定力のある決定として棄却し、彼女が再度訴えることはできなくなりました。

ところがこれだけが12日夜のトランプの法的勝利ではありませんでした。別のニューヨーク裁判官は、前大統領の関わる別の訴訟を棄却しました。こちらはトランプの元顧問弁護士・マイケル・コーエンが過去の弁護士費用のことで訴えていたものでした。

トランプ・オーガニゼーションの広報担当者は、コーエンの訴訟の棄却を称賛し、コーエンは前大統領との関係を利用して私腹を肥やそうとしていると非難しました。

12日には、他にもトランプ氏にとって有利なことが起きました。

ワシントン・ポスト紙は12日、スティール文書に関する2つの記事の一部を削除・訂正したと報告した。同紙は「記事のそうした要素の正確さをもはや堅持できない」と判断しました。同紙は、「ベラルーシ系米国人ビジネスマンを『スティール文書』の主要情報源として特定した」、2017年3月2019年2月に発表の「2つの記事の大部分を訂正・削除するという異例の措置を取った」のです。

2016年初め、米共和党の反トランプ勢力が関連する調査会社「フュージョンGPS」は、元スパイのスティール氏に対し、トランプ氏とロシアとのつながりについて調査を委託しました。

こちらが、怪しい調査書の一部。バズフィードが一部伏せ字で全文書を公開した

スティール氏は海外での情報活動をする「MI6」にかつて勤務しており、ロシア事情に詳しいです。同氏の会社「オービス・ビジネス・インテリジェンス」が、早速調査を開始しました。

当初は共和党内の反トランプ勢力が資金を提供していたものの、予備選挙が終わりトランプ氏が大統領選の共和党候補となると、ある民主党支持者が調査資金を出すようになった。つまり、反トランプ派の要請による調査報告書ということです。

報道によると、スティール氏が作成したとされる文書には、ロシア情報当局がトランプ氏に対する恐喝材料となるような事業関係の情報と、モスクワのホテルで複数の売春婦といる様子の映像を所有していると書かれていました。

この「スティール文書」は以前から、フェイクだとされていましたが、今回のワシントン・ポスト紙のスティール文書に関する2つの記事の一部を削除・訂正により、フェイクであることが確定したと言って良いです。

12日だけでも、トランプ氏に有利な展開が3つもあり、15日にはサマーズ氏が、民主党支持の立場から、トランプ氏の返り咲きもたらす可能性を指摘しているのです。

これらを見ると、2024年の大統領選挙でトランプ氏が返り咲くか、大統領選に大きな影響力を持つのは間違い情勢になってきたといえます。

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2018年9月15日土曜日

今でも「トランプ礼賛本がベストセラー」というアメリカ社会の現実―【私の論評】米国保守層の現実を知らなければ評価できない書籍(゚д゚)!


今でも「トランプ礼賛本がベストセラー」というアメリカ社会の現実

やっぱり人気は根強い

森川聡一 

■今回の一冊■
Liars, Leakers, and Liberals
筆者 Jeanine Pirro
出版 Center Street


トランプ大統領のことを手放しで礼賛する本がアメリカで大人気だ。書いたのは保守系メディアのFOXニュースで活躍する女性コメンテーターのジェニー・ピロだ。検察官や裁判官も務めた経歴を持つピロの舌鋒は鋭い。トランプを批判する人たちを、書名にある通り、Liar(嘘つき)、Leaker(不法に情報漏洩するヤツ)などと切り捨てる。

 筆者のピロは長年、トランプ一家とプライベートの付き合いがあり、トランプの子供たちのことも含め、素晴らしい人たちだと大絶賛する。本書のサブタイトル The Case Against the Anti-Trump Conspiracy がそのままズバリ示すように、ロシア疑惑などトランプをめぐる悪材料はすべて、アメリカの国家治安当局も加担する反トランプ勢力による陰謀だと批判する。

トランプ支持者たちの思いを代弁する本書

 ここで最も重要なのは、本書の内容の妥当性ではない。こんなトランプ礼賛本がアメリカでベストセラーとなっている現実そのものに意味がある。本が売れるということは、内容に共感する人がそれだけたくさんいるということだ。本書はニューヨーク・タイムズ紙の8月5日付の週間ベストセラーリスト(単行本ノンフィクション部門)で初登場し堂々の1位につけた。7週連続でのランクインとなった9月16日付リストでも6位となっている。

 主要メディアによる報道をみると、トランプ政権への逆風は強まるばかりだ。政権の内幕を暴露する本が出版されるたびに、伝統的なメディアはトランプ政権の危機をあおる。しかし、手放しでトランプを礼賛する本書を買い求めて読むアメリカ国民がたくさんいる事実を見逃してはいけない。トランプ人気の根強さを示す。本書はまさに、トランプ支持者たちの思いを代弁してるからこそ売れているわけだ。例えば、次のような一節が、トランプを大統領選の勝利に導いた支持者たちの典型的な思いのひとつかもしれない。

 To be sure, Trump was not your typical, politically correct candidate. Unlike the two-faced parasites in Washington, he really wanted to make America great again. They tagged him with every negative characterization they could. They called him a fascist, a racist, and twisted everything he said. Why? Because he was a threat to the greedy, corrupt Washington insiders who had captured our government.

 「たしかに、トランプは伝統的な清く正しい大統領候補ではなかった。ワシントンに巣食う二枚舌を使う者たちとは違って、トランプは本当にアメリカを再び偉大な国にしたいと思っていた。政界の寄生虫たちはありとあらゆる悪名をトランプにきせた。トランプのことをファシストや人種差別主義者と呼び、トランプが言うことすべてを曲解した。なぜだろうか? 政府を支配する欲深くて堕落したワシントン政界のインサイダーたちにとって、トランプが脅威だったからだ」

「トランプもノーベル賞を受けて当然だ」

 トランプが連発する不適切な発言につても、本書は次のように擁護する。

 Okay, I'll give you this: Sometimes the president isn't as politically correct as LIAR Obama. But isn't it refreshing to finally be able to listen to someone who says what he thinks? To hell with political correctness. A nation exhausted after eight years of Obama's “I say what I mean and mean what I say” doubletalk were starving for the straight talk Trump delivered. Sometimes his wording is a little rough around the edges. But Donald Trump feels the way much of America feels, and that's why he was elected our president.

 「たしかに、次の点は認めよう。トランプ大統領は時に、嘘つきオバマとは違って、政治的に不穏当な差別的な発言をする。しかし、そうした点はむしろ新鮮ではないだろうか、本音で語る人の話をついに聞けるようになったのだから。公平で中立的な偏見のない物言いなんてまっぴらだ。アメリカ国民はオバマの行儀のいい空疎な言葉に8年間も付き合い、うんざりしていたから、トランプが発する正直な言葉を待ち望んでいたのだ。トランプの言葉遣いは少し乱暴できつすぎるときもある。しかし、ドナルド・トランプはまさにアメリカ国民と同じように感じる。だからこそ、トランプはわれわれの大統領に選ばれたのだ」

 とまあ、本書は全編こんな調子で、トランプ大統領が素晴らしい理由を、これでもかと並べ立てる。北朝鮮問題でもトランプは大きな成果をあげており、何もしなかったオバマでもノーベル平和賞をもらえたのだから、トランプもノーベル賞を受けて当然だとも論陣をはる。いくら引用してもきりがないので、この辺でやめる。繰り返しになるが、こうした本書の主張に拍手喝采するアメリカ国民がたくさんいるという事実を軽視してはいけないだろう。

 最近も、著名ジャーナリストのボブ・ウッドワードが出版したトランプ政権の内幕を暴露するノンフィクションが話題だ。欧米だけでなく日本も含め主力メディアはウッドワードの著書について盛んに取り上げている。対照的にメディアは、本書のようなトランプ礼賛本が売れている事実を報じない。インテリたちが軽んじる本書のようなベストセラーの売れ行きにも目配りをしないと、アメリカの民意を読み誤るおそれがある。

【私の論評】米国保守層の現実を知らなければ評価できない書籍(゚д゚)!

日本では反トランプ本ばかり報道されます。先日のNHKのNW9も酷いものでした。偏った報道所ではなくこれはもはや情報統制の次元かもしれません。米国では、"Liars, Leakers, and Liberals"のほうが大ベストセラーになっています。ニュヨーク・タイムズの書評では、7週連続ベストセラーになっています。

ブログ冒頭の記事では、"Liars, Leakers, and Liberals"の表紙の写真を掲載しましたので、"FEAR"の表紙の写真も以下に掲載します。


米国Amazonでは、"Liars, Leakers, and Liberals"とならびこの書籍もベストセラーになっています。

同書は9月11日に発売されました。この手の書籍は既に数冊発売されていますが、中身は概ね「似たり寄ったり」です。これまでの暴露本の著者はいずれも無名でしたが、今回の著者は1972年のウォーターゲート事件の際に有名になったウッドワード記者だから本物、読む価値があるなどと言われているようですが、だからといって信用できるというのも変な議論だと思います。

確かにウッドワード氏はウォーター・ゲート事件では、それなりに有意義な活動をしていますが、その後どうだったかといえば、その書籍のほとんどな政治的なものであり、読むに値しないものがほとんどでした。

ボブ・ウッドワード氏

この現象は、このブログでも過去に紹介しているようにアメリカ社会の保守・リベラルを巡っての米国社会の状況を知らないとなかなか理解できないでしょう。

トランプ大統領登場前の、米国社会の状況がどうなっていたかといえば、このブログでも以前紹介したとおり、メディアのほとんどがリベラルであり、特に新聞の大手メディアは全部がリベラルに占められている状態です。

日本でいえば、朝日新聞、毎日新聞のようなメディアばかりであり、産経新聞はないようなものです。日本で産経新聞を読まずに、朝日新聞、毎日新聞ばかり読んでいると、安倍総理は悪人であるかのような見方になってしまい、とんでもないことになります。

それと同じように、米国の大手新聞を読んでいれば、まるでトランプ大統領のことを「気違いビエロ」のように見えてしまうのは当たり前といえば、当たり前です。

ただし、米国の大手新聞のすべはリベラルだとはいえ、中にはウォール・ストリート・ジャーナルのように、まともな報道をする新聞もあるので、まだ救われているところがあります。しかし、これは例外的であり、他の大手新聞はかなり偏向しています。

テレビはどうかといえば、大手テレビ局もほとんどがリベラルです。一つだけ例外なのが、FOXTVです。FOXニュースで活躍する女性コメンテーターのジェニー・ピロが上記のような書籍を書いたのにはこのような背景があります。

そうして、学問の分野でもリベラル派が幅を効かせています。特に文系の学会はそうです。その中で歴史学などは完璧にリベラルの牙城となっています。

ベノナ文書が発掘されて以来、特に米国内ではその分析が進んでルーズベルト大統領当時の米国政府がかなりソ連スパイに浸透されていたことが判明したり、長い間焚書扱いであった、フーバー元大統領よる「日本を戦争に巻き込むという陰謀を図った狂気の男」とルーズベルト大統領を辛辣に批判していたメモなどが明るみ出されたりで、米国保守層の中では「ルーズベルトは大悪人」ということになっています。

保守派では悪人扱いのルーズベルト

しかし、米国の歴史学会では相変わらず「ルーズベルトマンセー」であり、そうでないと米国歴史学会では生き残れません。米国では、保守的立場から歴史学を研究するとすれば、大学では不可能であり、軍の研究機関に入るか、保守系シンクタンクに入るしかないと言われています。

それを目指す人も、学生や院生までは、「ルーズベルトマンセー」を貫かなければ、芽を摘まれてしまうそうで、ひたすらリベラル派の立場で論文を書いたりして、自分の本当にしたい研究はそれなりの機関に入ってからでないとできないそうです。

これは、大学などに限らず、企業や大学よりも下の高校や小中学校でも同じでした。とにかく、リベラルが主流であり、保守系は亜流であると思われていました。

人口でいえば、米国のおそらく半分はいるであろう保守層の考え方などは、まるで存在しないかのごとく、マスコミでも学問の世界でも、かき消されてきたというのが現実です

そこに登場したのは、保守派のトランプ大統領です。トランプ大統領の誕生そのものが、米国の人口少なくとも半分は今でも保守派であるということを証明したと思います。そうでなければ、トランプ大統領が誕生することはなかったはずです。

日本人の中には、「ルーズベルト大悪人」などという考えなど到底及びもつかない人も大勢いると思います。

同時に、トランプ大統領が保守であるという意味もよくわかっていない人が大勢いると思います。

トランプ氏は保守派であり、保守派のバックポーンは典型的なピューリタニズムの原理に基づく行動です。トランプ大統領は、この原理こそが本来米国の富を築いてきたと考えていわけですが、この原理にもとづく行動は、現代の米国のリベラル派からすれば、過去に戻るというだけであって、せっかく長年かけてリベラルが気づいてきた社会に逆行するものでしかないわけです。

ただし、米国では先にも述べたように、リベラル派がマスコミはもとより、政治や学問の世界、ありとあらゆるところで、主流派となったので、本来米国の人口の半分近くを占めるはずのビューリタニズム的な勤勉をバックボーンとする保守層の考えはごく最近まですっかりかき消されてきたといのが現実でした。

そのかき消された声を代弁したのがトランプ氏の言動です。多少乱暴なところがありますが、それは軍隊を意識したものであると思います。米国の軍隊では、特に新兵の訓練などでは、教官がこれ以上汚い言葉はないのではないかと思えるくらい、徹底的に汚い言葉で、新兵を怒鳴りつけ教育・訓練します。それこそ、パワハラの連続ともいえるくらいの、汚さです。そうやって、新兵を本物の軍人に鍛えあげるのです。

トランプ大統領の乱暴な言葉や、保守派の典型的なビューリタニズム的考えは、到底並のリベラルには受け入れられるものではありません。そのあたりを代弁したのが、ジェニー・ピロの書籍なのです。

このような背景が理解できていないと、この書籍の意味するところも理解できないのではないかと思います。実際、ブログ冒頭の記事でもこの書籍を単純に「トランプ礼賛本」と位置づけていますし、最後の結論のところでは、「インテリたちが軽んじる本書」などと決めつけています。

先にも述べたように、少なくとも米国の半分は保守層なのですから、その半分のうちには当然インテリも大勢含まれています。

米国社会は、保守派のトランプ大統領が誕生した今でも、マスコミはおろか学問の世界、学校、芸能界、ありとあらゆる職場で「リベラル」が主流になっています。そんなところで、保守派的な意見などみだりに開陳できません。特に保守派インテリはそうでしょう。

下手なことをいうと、すぐに「ボリティカル・コレクトネス」等の観点から大糾弾されかねません。それどころか、下手をすると、職を失ったり、大学生や大学院生なら退学せざるをえなくなるかもしれません。そこまでいかなくても、将来の芽を摘まれることにもなりかねません。インテリこそ、普通の人よりそうした危険度は高いことでしょう。

だからこそ、「リベラル」がありとあらゆるところで、主流となっている今の米国では、ボブ・ウッドワード氏の書いた"FEAR"のような内容は、もうすでにリベラル・メディアなどで散々言い尽くされたきたことですし、リベラ派人々の話題にもなってきた事柄です。特段新しいと思われることはありません。

ところが、"Liars, Leakers, and Liberals"のような内容は、リベラル・メディアではほとんと報道されず、人々の話題にも登らなかったのです。だからそ、この書籍は保守派の人々の発露として、多くの保守派人々に共感を持って受け入れられたのでしょう。だからこそ、圧倒的なベストセラーになっているのです。

私は、このような背景を知った上で、この書籍を評価しなければ、現実を見誤り、米国の人口の半分の保守層を無視することになると思います。

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2017年1月22日日曜日

【トランプ大統領始動】「地球上で最も不誠実な輩」とさっそくメディア批判 トランプ氏、就任から一夜明け―【私の論評】分断されていた米社会、トランプ大統領登場で統合への対話が始まる(゚д゚)!

【トランプ大統領始動】「地球上で最も不誠実な輩」とさっそくメディア批判 トランプ氏、就任から一夜明け

21日、米バージニア州ラングレーのCIAで演説
するトランプ大統領 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
トランプ米大統領は就任から一夜明けた21日朝、メラニア夫人やペンス副大統領とともにワシントン大聖堂での礼拝に参加した後、中央情報局(CIA)で職員を前に演説し、メディア批判を展開した。首都ワシントンやニューヨークなど全米各地では女性を中心とした大規模なデモが行われて数百万人が参加。トランプ氏の差別的な発言に対して抗議の声を上げた。

 トランプ氏はワシントン近郊にあるCIA本部を訪れ、「私とメディアは戦争状態にある。彼らは地球上で最も不誠実な輩だ」と述べる一方で、CIA職員を「1000%支持する」と語った。就任前、トランプ氏はロシア政府が自らの不都合な個人情報を持っているという内容を米情報機関がマスコミに漏らしたとし、「それはナチス・ドイツがやるようなことだ」と批判していた。

 メディア批判でトランプ氏が問題視したのは米情報機関との確執や、就任式行事への参加者数をめぐる報道。トランプ氏はCIAでの演説で聴衆が25万人にとどまったとする報道があったと指摘し、「嘘だ」と断言。「演説をしたときに見たが、100万人か150万人はいるようようだった」と述べた。

 オバマ前大統領の就任式には過去最高の約180万人が参加。今回の就任式には70万~90万人が訪れると見込まれていた。

ワシントン記念碑から見たトランプ氏の大統領就任式の写真(左)と2009年のオバマ氏の就任式の写真
 スパイサー大統領報道官も21日、ホワイトハウスで就任後初の記者会見を開き、「最大規模の観衆が就任式を目撃した。以上だ」と述べた。式典会場を管理する国立公園局が未集計のため「誰にも人数は分からない」として、メディアを非難。質問を受け付けずに記者会見を打ち切った。

「女性の行進」に向かってトランプ氏支持のタオルを振る女性(21日)
 ワシントンで21日に開かれた「女性の行進」には数十万人が参加した。

【私の論評】分断されていた米社会、トランプ大統領登場で統合への対話が始まる(゚д゚)!

トランプ氏は、ブログ冒頭の記事で、「私とメディアは戦争状態にある。彼らは地球上で最も不誠実な輩だ」と述べていますが、これは本心でしょう。

日本のメデイアでは、あたかもトランプ大統領の登場によって、アメリカ社会が分断されたかのように報道しています。しかし、これは真っ赤な大嘘です。

アメリカ社会はトランプ氏の最近の台頭よりはるか以前から分断されていました。どのように分断されていたかというと、リベラル・左派と保守派の2つに大きく分断されてきました。正確な統計などはないのでわかりませんが、実数でも大きく半分にわかれていたと思われます。

アメリカ大統領選挙の結果 赤がトランプ氏が勝利を収めた州

しかし、今回の選挙の前までは、この事実が埋もれていて、一部の人を除きアメリカでも多くの人に知られることはありませんでした。

なぜ、そのようなことになったかといえば、このブログでも過去に何度か掲載してきたように、アメリカのメディアの9割は、リベラル・左派によって占められており、保守は1割程度に過ぎないため、保守派の人々が声をあげても、それはリベラル・左派のメディアには取り上げられることはほとんどなく、取り上げるのはほとんど全部がリベラル・左派の考えや主張だからです。

これを日本にたとえると、大手新聞なら産経新聞は存在せず、朝日新聞や毎日新聞のようなメディアだけが存在している状況です。テレビ局では、フォックスTVのみが保守系で、あとはすべてがリベラル・左派メディアです。

このような状況ですから、保守の声はかき消され、リベラル・左派の声ばかりが報道されるという状況なのです。

米メデイアはほとんどがリベラル・左派であり著しく偏っている
メディアがそのような状況ですので、学校や、企業などにおいても、リベラル・左派の考えが主流であり、保守系の考えはなきがごとくにみなされてきました。

アメリカの保守派は、ルースベルト大統領はソ連と手を結び、共産主義と対峙していた日本と戦争をした愚かな大統領として批判する人々も多いのですが、リベラル・左派の考えでは、ニューディール政策でアメリカ経済を建て直し、第二次世界体制を勝利に導いた英雄という見方をしています。

そのせいでしょうか、たとえば米国歴史学界においては、ルーズベルトを礼賛しないと学界にはとどまってはいられないそうです。そのため、まともな歴史研究をするためには、保守系のシンクタンクや、軍の研究機関に入るしかありません。

さて分断といえば、マイノリティとマジョリティによる分断、あるいは1%の富豪とそれ以外の分断、さらには白人と黒人の分断、いくらでもあります。アメリカ社会は、戦後ずっと分断され続けてきたのです。そうして、その中でも最大のものが、リベラル・左派と保守の分断でした。そうして、この分断はまるで存在しないかのような扱いを長い間受けてきました。

これに対して異議を申し立てたのがトランプ氏とトランプ支持者なのです。

トランプ支持者を一刀両断的に「プアーホワイト」のひと言で片づける論調もありましたが、決してそうではなかったことが今回の大統領選挙で明らかになったのです。アメリカ人のなかでも心ある人は、声に出さなくともトランプ氏の言葉に共感しています。今までのアメリカ大統領候補は「アメリカを否定」してきたからです。 

リベラル・左派は結果としてアメリカの国民のことは考えていませんでした。代わりにアメリカの富豪による世界戦略を考えてきたのです。

アメリカでのトランプ台頭について「ヨーロッパにおける醜い民族主義」などと評されることがありました。

「ヨーロッパで今台頭している醜い民族主義とアメリカのトランプ氏の主張は、どちらもポピュリズムであり、同じものである」という主旨です。私もトランプ現象とヨーロッパで起きていることは底流で結びつくものであるとは思います。

しかし、それは醜い民族主義でも不健全なポピュリズムでもありません。むしろ健全だと思います。

トランプ氏の主張はポピュリズムではない
無論、トランプ氏自身の言葉に現われている過激な側面を礼賛しているわけではありませんし、もちろん、トランプ氏を支持しているアメリカ人が不健全ということでもありません。また、大量の移民受け入れに反対しているヨーロッパの人たちが醜い民族主義者であるともまったく思いません。

しかし、世界のメディア、あるいは言論界、無論日米のそれもたいていこのような観点から見ているのです。彼らはずっと無条件で移民受け入れが良いことであると言い続けてきました。さらに移民に対して無条件に賛成しない人たちやそれを支持する人々をポピュリズムだと決めつけ、保守派の大衆を見下してきました。私たちはそういうメディア、またメディアに巣食う知識人の「きれいごと」に洗脳されてきたのです。

例えば「人権を守らなければならない、人種差別をすべきではない、性差別をすべきではない」という言い方があります。こうした意見に対しては誰も反対できません。しかし、こういうきれいごとと、アメリカやヨーロッパの現実には大きな乖離があります。

こうした乖離について内外の言論人はほとんど取り上げませんでした。だからこそトランプ氏の発言に支持が集まったのです。

移民の問題については、非常にわかりやすいのと、時宜にあっているので、述べましたが、ご存知のようにリベラル・左派と保守の間には他にも、改革をするための進め方や手続き、伝統的な価値観、世界観、安全保障の面でも大きな隔たりがあります。

私たちが注意しなければならないのは、現在のリベラル・左派の「頭のなかで考えていることが、現場の現実とは乖離している」ということです。そうして、問題は「ポピュリズム」まったくのレッテル貼りであるということです。大衆迎合的ということは、すでに価値判断が入ってしまっているということです。迎合という言葉も、大衆という言葉も“上から目線”になっているのです。

米国では上から目線のリベラル・左派の考えが主流だった
この上から目線というのは、移民やその他マイノリティーを守ること、伝統的価値観を捨てて、新しい価値観を受け入れることが、現場の現実からかけ離れていることもあるのに、それを絶対善として、疑問の余地がなく全く正しいものとみなすという偽善的、独善的態度のことです。

無論、リベラル・左派の考え方が何もかも間違いなどというつもりも毛頭ありません。そういう言い方をしてしまえば、現在のリベラル・左派の上から目線と同じことになってしまいます。それは決して生産的なことではありません。

しかし、ここ数十年においては、あまりにリベラル・左派の考え方が、特に米国では強くなりすぎました。あまりに強くなりすぎれば、揺り戻しがあるのは当然です。この揺り戻しが、現在米国で起こっていることなのです。

その揺り戻しのを象徴するのが、今回の米国の大統領選の結果なのです。この背景を理解していなければ、これからのアメリカの政治・経済そうして社会の変化は、全く理解できません。

さて、アメリカ大統領選挙において、トランプ氏が勝利したため、アメリカの人口の半分くらいは存在する保守派の存在が明らかになったと思います。

しかし、これは選挙でそういう結果が出たというだけであって、現在の時点ではまだまだ、アメリカではリベラル・左派の考えが主流です。

アメリカの国民の半分を占める保守派の声は、現在のアメリカ社会ではまだ浸透していません。職場でも、学校でも、メディアの世界でもリベラル・左派的な考え方が主流です。

ただ、政治の世界だけが、大統領がリベラル・左派のオバマ氏から保守派のトランプ氏に変わります。議会も、概ね保守派の共和党が主流派になります。ただし、共和党が全部保守というわけでもありません。それは、日本の自民党の中も保守だけではなく、リベラル・左派の議員も存在するのと同じです。

そういう状況の中では、保守派でトランプ支持派の人々も、自分の職場や学校などの周りの人に配慮して、自分は保守派で、トランプ氏支持派であるとは、面と向かって言い難い雰囲気があるのだと思います。

だからこそ、トランプ氏の就任演説のときの聴衆はオバマ氏のときと比較して少ないのでしょう。

「LOVE TRUMPS HATE」と書かれたTシャツを着た選挙当日のガガ
また、このような変化を理解できない人々が、トランプ大統領反対デモを開催したり、それに参加したりするのです。そうしていわゆるセレブの反トランプデモですが、それをやるなら自分の収入の大半を経済的困窮者に寄附せよと言いたくなります。これは、日本国内での自称インテリが一銭も金を出さずに「文楽を守れ!」と口だけでカッコつけていたのとよく似ています。空虚な言葉より行動をという、トランプ大統領の就任演説の言葉が身に染みます。

しかし、トランプ大統領が登場して時がたてば、まずはマスコミが報道姿勢を変えざるを得なくなります。なぜなら、トランプ大統領の考えは保守的であり、それを報道しなければ、報道機関としてまともに機能しているとはいえません。

そうして、現在米国ではトランプ氏のツイッター発信にメディアが大慌をしています。なぜならオバマ氏とメディアのリベラル・左派同士の協調関係がなくなり、これからは取材力・評論力による完全実力競争時代に突入するからです。以前のように上から目線の取材ではトランプ大統領は納得しないでしよう。ある程度以上の力がなければ記事を作れなくなるのです。

米国メディアは、これからは変わらざるをえないでしょう。米国保守を無視した報道はできなくなります。また、米国の保守は、リベラル・左派の失敗を繰り返すべきではありません。右だろうが、左だろうが、その時々において、良いものは良いし、悪いものは悪いのです。また、良いものが永遠に良いはずもなく、その逆に悪いものが、永遠に悪いものであり続けるということもないのです。

そうなると、一般社会も保守派の考え方にも耳を傾け、良いもの、まともなものは受け入れられるようになると思います。これから、本当の対話が始まるのです。トランプ大統領の登場により、分断したアメリカは、はじめて対話の緒をつかむことができたのです。もしトランプ大統領が登場しなければ、そのような機会はさらに遠のいたことでしょう。

リベラル・左派の人々も、トランプ登場をそのように考え、自分たちの考え方だけが、絶対善であるというような考え方はやめて、保守の人々とまともに対話をすべきです。そうでなければ、この変化についていくことはできません。態度を変えなければ、変化についていくことの出来ないただの認知症で妄想を信じる老人と同じです。

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2020年5月22日金曜日

スーザンライスの今や悪名高いメモは、オバマの証拠隠滅のための見え透いた企てだった―【私の論評】トランプ氏はディープ・ステート粉砕に邁進、日本のプチ・ディープ・ステート財務省は誰が?

スーザンライスの今や悪名高いメモは、オバマの証拠隠滅のための見え透いた企てだった

<引用元:ニューヨーク・ポスト 2020.5.20>社説

バラク・オバマ大統領(左)とスーザン・ライス国家安全保障担当補佐官

2017年1月5日の高官会議に関するスーザン・ライスのメモは、当時国家安全保障担当補佐官だった彼女の上司、バラク・オバマ大統領を擁護するためのものだった――だがそれは見事に裏目に出ている。

ライスは1月20日午後12時15分付のメモ(最近機密解除された)を、文字通り最後の瞬間に自分自身に送信した。つまり、その日の正午にトランプ大統領は就任宣誓を行い、彼女のいた政権は退場したのだった。

ああ、ライスの弁護士は、彼女がその草稿を書いたのは「ホワイトハウス法律顧問局の助言に基づいて」のことだとしていると、FOXニュースは報じている。

要点?表向きは、ロシアのハッキングについての状況説明後の、自身、オバマ、ジョー・バイデン副大統領、FBIのジェームズ・コミー局長、そしてサリー・イェーツ司法長官代行との会議の記録を行うためだ。

オバマは「この問題のあらゆる側面」を「規則通りに」扱うよう強調し、法執行機関が「規則通りに」進めるよう「繰り返し述べた」、とメモでは主張している。コミーは自身が「『規則通りに』進めている」ことを「確認」した。その通り。彼女はその言葉を3回使用したのだ。

これほどまでに「証拠隠滅しろ」と大声で叫んでいるメモがあるだろうか?法律顧問はなぜ、事後2週間の最後の瞬間に、ロシア捜査が全く真正なものだと示すような文書の作成を求めるというのだろうか?

それは間違いなく、人々がその逆だと考えることを恐れたためだ。捜査は真正なものではなかったのだから。

我々は今、事実として、捜査に関することが全て倫理的に適切に扱われていなかったことを知っている。

コミーはライスの後任のマイケル・フリンについて「懸念」を持っており、国家安全保障会議は「潜在的に」、チーム・トランプにロシアについての「機密情報」を伝えないようにすべきだと述べた、とライスは書いた。だがライスは、情報を共有すべきでないかどうか尋ねたのはオバマだったと認めている。

それでも彼らに、新政権チームに何も知らせないでおくための正当な理由は皆無だった。オバマの仲間は、FBIが共謀やフリンが国を裏切っているという証拠を、全く発見していないということをその時までに十分知っていた。なぜなら彼らはフリンと外国高官との電話を盗聴していたからだ。

辞任間近の大統領は誰であっても、正当に選挙で選ばれた後任者に情報を伝えないよう側近に強いるべきではない。彼らの義務は、全ての情報を共有し、最大限にそのスタッフに協力することだ。これはチーム・トランプを妨害するための徹底的な企てだった―そしてその全てが余りにもうまくいった。

だが少なくとも規則通りだった。

【私の論評】トランプ氏はディープ・ステート粉砕に邁進、日本のプチ・ディープ・ステート財務省は誰が?

上のニュースは相当ショッキングなものなのですが、その背景を知らない方には、何のことやら理解できないというところだと思います。

それを理解するには米国でいわれている、いわゆる「オバマゲート」について理解していないと困難かもしれません。これについては、日本ではほとんど報道されていません。

トランプ大統領は最近オバマゲートに関するツイートを連罰した

共和党のトランプ大統領と民主党のオバマ氏の対立は米国内では有名で、トランプ大統領は、オバマ氏の実績とされるオバマケア(医療保険改革)を廃止したり、イランとの核合意やパリ協定から離脱したり、日本とも関わりの深いTPPからの離脱など、前大統領が苦心した政策を次々と無効にしてきました。
 
そうしたなか、5月9日、オバマ氏がトランプ大統領のコロナ対策を「大惨事」と批判したとの情報がメディアをかけめぐりました。さらに、米司法省が元大統領補佐官の「ロシア疑惑」に関する起訴を取り下げたことについて、「法のルールが危機にさらされている」と懸念を表明しました。

この流れを受けて、トランプ大統領が自身のツイッターに「OBAMAGATE!」とツイート。さらに「オバマゲートで逮捕」などとツイートしたことで、一気にトレンド入りしました。この話題に関する投稿は、一時期300万件を超えました。13日には、ホワイトハウス公式ツイッターも「OBAMAGATE」と書いています。

「オバマゲート」とはオバマ氏の名前とウォーターゲートを組み合わせた造語で、日本語にするなら「オバマ疑惑」です。

ウォーターゲート事件は、ニクソン大統領(共和党)時代、何者かが民主党本部のあるウォーターゲート・ビルに盗聴器を仕掛けようとして侵入し、後にホワイトハウスの関与が暴露されて、大統領が辞任に追い込まれた事件です。以降、米国では政界の疑惑があるたび、「~ゲート」と名づけられることが多いです。

実は、この前日までは「トランプゲート」という言葉がトレンドでしたた。トランプゲートという言葉は、少なくとも2016年から使われています。1つの事件に関してではなく、反トランプのコメントが多く寄せられるハッシュタグです。トランプ大統領は、このタグに対抗する意味で、オバマゲートという言葉を使ったのでしょう。

翌日の記者会見で、記者が「オバマゲート」について質問すると、トランプ大統領は「オバマゲートは自分が大統領になる前から始まっている。情報はこれから公開される。今はまだ始まったばかりだが、恐ろしいことが起こったんだ。この国でこんなことが許されてはいけない」と説明しました。

記者から具体的な罪は何かと質問されると明言は避け、よそのメディアを読むようコメントしました。

いったい、オバマゲートとは何なのでしょうか。

一言でいうと、トランプ大統領のいわゆるロシアゲート等そもそも存在せず、実はロシアゲート疑惑をでっちあげていた張本人がオバマだったということのようです。

ロシアゲートとは、2016年の米国大統領選挙の際、共和党候補のトランプの選挙活動にロシアが介入していたのではないかという疑惑です。対立候補の悪口や選挙妨害があったのではないか、ということなのですが、いくら調べてもロシアが介入していた証拠が見つからず、ロシアと連絡していたとされる人の起訴が5月7日に取り下げられて、ロシアゲート自体なかったことになってしまったのです。

なぜオバマがロシアゲートをでっちあげたのかといえば、自分の後継である民主党のヒラリーを当選させたかったからです。

その目的を果たすためにオバマ政権時代に国務長官だったヒラリーが機密情報を含むメールを個人のサーバー経由でやりとりしていたことをFBIを使って隠ぺいさせたというのが、最初の疑惑でした。

そしてなんとしてもヒラリーを当選させるためにロシアが介入したことにしようとオバマがFBIなどの音頭を取ったのではないかというのが、2つ目の疑惑です。

さらに、オバマがトランプを大統領にさせたくないのには、トランプ之政策に反対するという実態が明らかにされていないディープステイトと呼ばれるリベラル派の圧があったとされる3つ目の疑惑です。

さらに、オバマの異母兄弟が中国でビジネスとやってるとか、異母姉がケニアでエイズ撲滅活動をしているのを中国が支援している等のことから、オバマ自身が、チャイナマネーと繋がりがあるとか、現在の中国になったのもオバマ政権時の中国政策のせいでは、などの疑惑もあります。

細かなことをいうと、きりがないので、この辺で終わらせます。

いずれにせよ、このオバマゲートの一部は7月頃には明らかになるとされています。さらに、トランプ氏が再選された場合、全貌が明らかになる可能性が大です。

トランプ氏はオバマゲートどころか、JFケネディ大統領を除く歴代大統領が決してできなかったことである、ディープ・ステートの暴露に挑戦しているようです。ディープ・ステートとは、政治グループそれも大きくて、力があり、まるでそれ自体が政府のように振る舞う政治家や官僚の集まりとされています。

JFケネディー

一説によれば、ケネディやトランプ氏を除く歴代の大統領はすべてディープ・ステートの操り人形だったとされています。もちろん、オバマもそうだったとされています。

オバマゲートに関する新たな情報が公開されたことで米国を支配し続けようとするディープ・ステートが、白日の下さらされつつあります。

ディープ・ステートに関する本(From the Company of Shadows)の著者であり元CIA(内部告発者)でテロ対策の専門家、ケビン・シップ氏は、トランプ大統領がディープ・ステートの道具であるという考え方は本末転倒であり全く話にならないと述べました。

シップ氏によれば、トランプ大統領は、JFケネディを除く歴代大統領の中で最も激しく影の政府とディープ・ステートと戦ってきた大統領なのだそうです。

シップ氏によれば、JFケネディはディープ・ステートと戦った結果、暗殺されてしまったとしています。

JFケネディ大統領を例外として、トランプ大統領以外に影の政府とディープ・ステートを暴露する勇気のある大統領はいませんでした。

ディープ・ステートは何をやってきたのでしょうか。彼らはトランプに対する激しい仕返しを繰り返してきました。

トランプがディープ・ステートの一員であるなら、彼らからの破壊的攻撃を受けるはずがありません。

トランプはディープ・ステートから彼らについて暴露したならトランプと彼の家族を殺害すると脅されていたのです。

トランプはディープ・ステート側の大統領ではありません。無論トランプ氏とて完璧ではありません。

トランプ政権には、トランプ氏が中央銀行とつながりがあることを懸念している人も何人かいます。しかしそれでも彼らはトランプがディープ・ステート側でないことを知っています。

それどころかトランプはディープ・ステートを引き裂いているのです。DNI(アメリカ合衆国国家情報長官)のリック・グレネル氏がトランプに提出した資料を見ればわかります。

トランプはディープ・ステートのメンバーの個人情報を公開することを許可したのです。トランプ氏は、ディープ・ステートの存在を暴露する大統領になるかもしれません。

米左翼は、コロナパンデミックを政治的武器として利用しています。民主党は、このままでは大統領選でトランプに敗北してしまうことを知っているため、大統領選を有利に運ぶため、コロナパンデミックを大統領選まで長引かせその間米経済を破壊しトランプにその責任を擦り付けようとしています。

トランプはまだ彼らの正体を暴露していません。それはトランプが再選されたときに、行われるでしょう。ディープ・ステートはトランプの再選に非常に怯えているのです。そして彼らはあらゆる手段を講じてトランプの再選を阻止しようとするでしょう。 

トランプ大統領、まずはオバマゲートを明らかにし、大統領選挙を勝ち抜き、その後にディープ・ステートを白日のもとにさらすでしょう。

トランプ氏はディープ・ステートからの反撃に備えて慎重にことをすすめているところでしょう。

さて、日本にもディープ・ステートよりは、強力ではないですが、似たようなものがあります。それは、財務省を頂点とする政治家や他省庁官僚やマスコミ、識者らのグループです。

岡本財務次官

このグループは、米国のディーブ・ステートのように、総理大臣などを完璧に自分たちの操り人形にするようなことはしませんし、できませんが、それでも財務省の省益に沿って、財政を操ったり、予算の差配等で、他省庁や官僚等を操っているようです。

このようなプチ・ディープ・ステートともいえる財務省の存在は、日本の政治風土を捻じ曲げているのは事実です。日本でも、トランプ氏のようにプチ・ディープ・ステートを白日のもとに晒し、これを粉砕するような総理大臣がでてきてほしいものです。

安倍総理にこれができれば、良いと思うのですが、トランプ氏のやり方を見習い、これが実現できれば、また安倍政権への期待は登場当時のときのように増すことになると思います。

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2021年2月13日土曜日

トランプ弾劾裁判は政治的駆け引きの舞台に過ぎない―【私の論評】退任した大統領を弾劾する米民主党は、相当追い詰められているとみべき(゚д゚)!

 トランプ弾劾裁判は政治的駆け引きの舞台に過ぎない

<引用元:デイリー・シグナル 2021.2.11>カル・トーマス氏による論説

トランプ氏の弾劾裁判で裁判長を務めるリーヒ上院議員

ドナルド・トランプの2度目の弾劾裁判が劇なら、1回の公演後に終了するだろう。筋書きは分かっていて、結果は明白であり、演出は不自然だ。

映画だったら「50人の怒れる上院民主党」(「12人の怒れる男」にお詫びする)か、この現在の駄作にしっくりくるようなタイトルの2003年の映画、「Runaway Jury(邦題:ニューオーリンズ・トライアル)」というところだ。

要点は何か?民主党上院議員に、気高く見えても現実には低俗な政治的駆け引きの演説をさせているところだ。

憲法弁護士のジョン・ホワイトヘッドが次のように書いたのは正しい。「トランプを弾劾して得られるものはほとんどなく、決して一般のアメリカ人の窮状を向上させることはない。現在の政治と同義になった見世物と茶番を増強するだけのことだ」

トランプの弁護団は、1月6日に米国議事堂に侵入した暴動者を前大統領が扇動したという1つの訴えの棄却を要求した文書の中で「憲法に違反する政治劇」という言葉を使った。民主党はトランプが米国大統領の犯した中で「最も重大な憲法上の犯罪」を犯したと反論した。

どこかでリチャード・ニクソンが微笑んでいる。

これは、報復を狙う貪欲な左派支持基盤を満足させ、ワシントンの考えを改めるよう改革できると考える者全員に思い知らせるために意図された見せしめ裁判だ。メッセージ?エスタブリッシュメントは再び沼をさらおうとする者がいれば破滅させるということだ。沼の生き物は沼が大好きだ。それが彼らの生き方なのだ。

また両サイドにとっての資金集めの道具でもあり、それがワシントンに残された唯一の超党派の動きであるようだ。

トランプが再び無罪判決を受ければ公の場に復帰するだろうが、ひょっとするとしばらく待つことを検討すべきかもしれない。良い劇には付き物だが、緊張を作り上げることだ。それから自分のことばかりにこだわらないことだ。その芝居はもう見てきた。そうではなく、ジョー・バイデンの政策と公約違反についてコメントすべきだ。バイデンが過去に言ったことを引用し、失業、ガソリンの値上がり、上向きかけていた景気に彼がどれほど貢献しているかを、そして大統領令の偽善を全国に伝えよ。

それから数週間経てば、トランプが視聴率を奪って大規模集会を行うためにメディアは怒り狂う。それでも中傷はなしだ。人格ではなく、政策に固執せよ。

上院に提出した文書で、トランプ弁護団は次の点を指摘した。
  1. 弾劾について説明する文書と構造は、上院に前大統領に対する権限を付与していない。
  2. 憲法は合衆国の前大統領ではなく大統領に対する上院司法権しか与えていない。
  3. 弾劾条項はトランプの憲法修正第1条の権利を侵害している。
  4. 上院は憲法修正第1条と最高裁で長らく確立された言論の自由法を無視することはできない。
  5. トランプは選挙で選ばれた立場として、政治的な演説に自由に従事するための憲法修正第1条の権利を持っている。
  6. トランプの演説は憲法修正第1条によって完全に保護されている。
  7. 最後に、「戦う」と「戦うこと」というトランプの比喩的な言葉遣いは多くの人が使用しているが、どれも弾劾に値しない。
結論として、下院はトランプに適正手続きを許可しなかったと訴えることによって、弾劾条項は「不完全であり無罪判決の結果となる以外なく」「法律問題としては弾劾に値する違反を説明できていない」としている。

法学者が既に提起した疑問は、すでに辞任した大統領を「弾劾」できるのかどうかということだ。

民主党の最終的な意図は、トランプが2024年に再出馬できないようにすることのようだ。彼らはトランプに投票した7360万人の力を恐れているらしい。トランプはベテラン政治家とエスタブリッシュメントにとっては脅威であるから、当然のことだ。

この実にひどい劇はロードショーとして生き残ることもないだろう。どちらかと言えばまずい道化芝居だ。

カル・トーマスは企業共同体が雇用するコラムニスト、著者、放送局出演者、講演者であり、世界の指導者、米国大統領、著名人、教育者など数多くの名士につながりを持つ。複数の本を執筆しており、近著は「“America’s Expiration Date: The Fall of Empires and Superpowers and the Future of the United States.”」である。

【私の論評】退任した大統領を弾劾する米民主党は、相当追い詰められているとみべき(゚д゚)!

米国のIpsosの調査では、トランプ大統領は「2024年の大統領選挙に立候補すべきか」という問いに対して、共和党支持層の57%が賛成しています。反対は41%です。まだ共和党支持層には「トランプ期待論」があるのです。民主党支持層では、97%が反対しています。

同調査では、トランプ大統領支持率は29%に低下したという結果がでています。多くの日本のメディアは同調査を引用して、「トランプ支持率、最低へ」という記事を配信しています。同調査は、選挙後のトランプ大統領の行動は「稚拙(poor)」という回答は、昨年11月の54%から62%へ上昇しています。

さらに回答者の68%が、トランプ大統領は退任後、政治活動をすべきではないと答えています。賛成と答えた比率は29%でした。党派別の内訳は書かれていません。共和党支持者の賛成の比率は、もっと高いと予想されます。

 米議事堂乱入事件:Parlerの投稿動画とGPSデータをリンクしたら、現場のリアルが!

また議事堂乱入事件の責任はトランプ大統領にあると答えた比率は52%でした。24%がトランプ大統領にまったく責任がないと答えています。弾劾に関して、「トランプ大統領が弾劾されたほうがアメリカは良くなる」という回答は54%に達しています。

任期一杯、大統領職に留まるべきだという比率は45%でした。この数字が高いのか、低いのかは、判断しにくいです。他の調査と同様、実質的に賛成と反対は拮抗しています。共和党支持層でみれば、79%が弾劾に反対しています。民主党支持層の95%が弾劾を支持しています。

民主党支持者の意見を重視すれば、トランプ大統領は弾劾されるべきであり、アメリカの世論の大勢も同様だと理解することになる。逆に共和党支持者の意見を重視すれば、共和党支持者のトランプ大統領支持は基本的に変わっていないということになる。

米国には様々な分断があります。特に政治の世界では、民主党支持者と共和党支持者の間には共通点がまったくありません。お互いに妥協し、歩み寄ろうという意識は皆無です。

ある資料を読んでいたら、ある共和党上院議員が民主党との妥協点を探し、協力し合える可能性を模索していたところ、同議員は「絶滅危惧種」と揶揄されたと書かれていました。

1970年代まで民主党と共和党は妥協し合える関係にありました。ところが、もはやその可能性はまったくなくなっています。民主党支持者と共和党支持者は決して分かり合えない世界に住んでいるのです。

その背後には社会観、倫理観、宗教観の違いがあり、地域的な分断、教育による分断が重なっています。民主党支持層と共和党支持層を分断する川幅はずっと広がってきているのです。バイデン次期大統領が共和党に妥協と協力を呼び掛けても、共和党や共和党支持者のほとんどは呼応することはないでしょう。

もうひとつ注目すべきことは、Ipsosの調査で、共和党支持派の36%が「共和党ではなく、トランプ支持派である」と答えている点です。トランプ大統領は白人労働者や保守的なキリスト教徒であるエバンジェリカル、さらにティー・パーティの一部を取り込み、「トランプ連合」を作り上げました。


それが現在、共和党の大きな支持基盤となっています。共和党議員は、トランプ大統領支持派の支援をえなければ選挙で当選できない状況になっています。日本の自民党に対する公明党の存在どころではなく、共和党は保守主義の政党から「トランプの党」へと変わってしまったのです。

共和党は、トランプ大統領と決別すれば、大統領支持派が離反していくことを知っていようです。世論調査は、そうした現実を端的に示しています。一方、民主党のバイデン氏は民主党ほ「バイデンの党」にすることはできそうもありません。

元共和党支持派であったのですが、現在は無党派を自認する弁護士のDavid Frenchは著書(『Divided We Fall』、2020年刊)の中で、「共和党支持者は、トランプは欠陥だらけの人物だが、それでも国家を救う人物だと信じている。トランプを支持しないのは共和党に対する裏切りであり、国家に対する裏切りであると信じている」とも書いています。

それが現在の共和党の実態です。共和党はトランプ大統領に依存し続けるのか、トランプなき共和党を指向するのか、選択を迫られるでしょう。そうして、おそらくトランプ氏と協調することになるでしょう。

有罪評決には民主党上院議員50人に加え、共和党議員から17人の同意が必要ですが、現時点で造反が広がる可能性は低いです。早期幕引きを図りたいトランプ陣営の意向を受けて、弁護団は持ち時間を13時間以上残して陳述を終えました。証人招致の有無については決定していないですが、13日中に検察、弁護側双方の最終弁論が行われ評決が出る可能性があります。

検察役の弾劾管理人である下院議員たちが弾劾裁判に向かうところ

米国では最初から禁じ手とわかっている「弾劾」を今回だけではなく、過去に二度も、一度は結局断念し、二度目は実際に弾劾裁判を実施しましたが、結局失敗しました。退任した大統領を弾劾する民主党は、相当追い詰められているとみべきです。

これは、日本の政治を考えてもよく理解できます。野党は、良く内閣不信任決議案を国会に提出されますが、一度も成立したことはありません。一方自民党は、そもそも下野したことがすくないのですが、一回も内閣不信任決議案を提出したことはありません。米民主党は日本の万年野党のようになり、日本の野党のように弾劾を繰り返すようになる可能性が高いです。

次の大統領選挙も中間選挙も、民主党にとってそんなに簡単ことではありません。そうなると、やはり余程のことがない限り共和党が勝つ可能性が高いですし、トランプ氏の再選ということもあり得ないことではありません。

その頃には、トランプ氏は78歳になっていますが、バイデンが高齢大統領への道を開きました。バイデンは大統領に就任の年齢がまさに78歳です。あり得ないことではないのです。トランプ氏にはその時に備えて、減量等にも取り組んでいただきたいものです。

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