2023年1月7日土曜日

立法院、台湾版CHIPS法案可決 半導体などの先端産業の法人税を6年間優遇―【私の論評】日本でも、腐敗の温床となる補助金制度を少なくし台湾のように産業支援は減税を多用すべき(゚д゚)!

 立法院、台湾版CHIPS法案可決 半導体などの先端産業の法人税を6年間優遇


立法院院会(国会本会議)は7日、「台湾版CHIPS法」と呼ばれる先端産業を支援する関連法の改正案を可決した。半導体や高速通信規格(5G)、電気自動車(EV)などの次世代産業の法人税が優遇される。施行期間は今月1日から2029年12月31日までの6年間。

可決されたのは産業創新条例第10条の2と第72条の改正案。法案は産業を問わず、国内で技術革新を進め、かつ国際サプライチェーン(供給網)において重要な地位を占める企業が対象。その研究開発費や有効税率が一定の規模・割合に達することなどを条件に、先端技術研究開発費の25%と、先進プロセスに用いる自社用の新規機器や設備の支出額の5%に相当する金額を当該年度の営利事業所得税(法人税)から控除できると明記されている。控除総額の合計が当該年度に納めるべき法人税の50%を超えてはならないことも規定された。

同法案を巡り5日、立法院で与野党協議が開かれた。出席した王美花(おうびか)経済部長(経済相)は、先端産業が台湾の国防と経済の安全保障における強力な後ろ盾になればとその効果に期待を寄せた。

【私の論評】日本でも、腐敗の温床となる補助金制度を少なくし、台湾のように産業支援は減税を多用すべき(゚д゚)!

台湾版CHIPS法というくらいですから、他に手本があります、それは米国のCHIPS法です。

米国のCHIPS法とは、米国内の半導体産業に関する政策で、米国商務省の標準技術局や国防省の元、米国の半導体エコシステムを再構築しつつ、国内に高給職を創出し、国家安全の強化を目指す政策です。

米国内の半導体に対して500億ドル(約7兆2,500億円(1ドル145円換算、以降同様)の補助金を投じるというものです。 さらに米国時間2022年9月6日、米国商務省は同省やその他の政府機関がどのようにこの補助金を半導体関連企業に割り振るか、概要を示しました。より詳しい内容については2023年上旬に公開される見通しです。

おおよその内訳としては、500億ドルのうち約3分の2にあたる280億ドル(約4兆円(1ドル145円換算、以下同様))はIntelなどの最先端のロジックチップや、メモリチップを製造する企業の支援に使用。100億米ドル(約1兆4,000億円)は既存チップの新たな製造能力、炭化ケイ素、カーボンナノチューブ材料関連の投資に用いられます。また残りの110億米ドル(約1兆5,000億円)は、製造機関創設などに割り当てられる予定です。

米国でCHIPS法が導入されたのは、半導体をめぐる深刻な問題が背景にあります。そもそも半導体は1959年に米国人によって発明され、1990年には米国製が37%と大きなシェアを占めていました。

ところが現在では、日本や韓国、台湾といったアジア勢が、米国の生産量を大きく上回るようになっています。

そうしたなか、新型コロナウイルス禍からの経済が急速に回復し、自動車を筆頭に多くの業種で半導体の供給不足が生じるようになりました。新型コロナウイルス後の供給制約を経験し、米国では半導体製造を海外依存していることの危険性が高まりつつあります。

CHIPS法は2022年8月9日にバイデン大統領の署名をもって成立し、8月25日にはCHIPS法の実施を加速させる大統領令に署名をするなど、アメリカ政府急ピッチで進めている政策であることがうかがえます。

実は、CHIPS法のような政策は、前身であるSEMATECH(セマテック)の時期から実は議論が始まっていました。なぜCHIPS法成立を急いだのでしょうか。

それは、米国同様に半導体投資に巨額の投資をしている中国の存在です。中国の習近平国家主席は、後10年で1兆米ドルの投資を行なうと宣言するなど、半導体事業に強い取り組み姿勢を見せていました。

CHIPS法では、半導体企業が国から支援を受けるためには、向こう10年間中国国内で最先端半導体の増産や、生産能力の増強を行なわないなどの条件があります。これは実質対象企業に、中国から手を引くように求めている意図もあり、明らかに中国に対抗するための政策を言えるでしょう。CHIPS法は、世界でも最も重要な産業とも言える半導体産業を米国に取り戻すための法案というだけではなく、中国権威主義との戦いという側面もあります。

米国では、CHIPS法案成立の後、さらにダメ押しをするような政策も実行しています。それについては、以前このブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
この記事では、米商務省が10月7日、米国の技術が含まれている半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表したことを掲載しました。最先端半導体を扱う中国企業の工場への製造装置販売を原則禁止し、スーパーコンピューターなどに使われる関連製品の輸出も制限しました。

これがどのくらい厳しい措置なのか、ピンと来ない人もいるかもしれないので、この記事から一部を引用します。
バイデンの新しい制裁はおそらく中国半導体産業の終焉を意味していると考えられます。

多くの人は7日に何が起きたか本当には、理解していないかもしれません。

簡単にいえばバイデンは中国で働く全ての米国人(半導体産業)に即刻ビジネスを止めるか、米国籍を失うかという選択を迫ったのです。

すると中国にある全ての半導体製造企業の米国人幹部やエンジニアはほぼ全員辞職し、中国の半導体製造は一夜にして麻痺状態になったのです。

バイデンの今回の制裁は、トランプ4年間の12回の制裁を合わせたよりも致命的です。

トランプ時代の制裁では半導体供給にはライセンス申請が必要だったものの申請すれば1か月以内に通過していました。

一方バイデンは米国の全てのIPプロバイダー、部品サプライヤー、サービスプロバイダーをほぼ一晩で全て撤退させ、あらゆるサービスを断ち切りました。

大惨事とはまさにこのことです。中国の半導体産業の半分が価値ゼロになって完全に崩壊します。

米国は国内半導体産業を支援するとともに、中国に対しては厳しい措置をとったのです。 

米国の中国に対する制裁はこれだけに収まりません。日本、オランダを巻き込み、さらに厳しい措置を実施しています。

これについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

日米蘭3国で「対中包囲網」強化 WTO提訴も単なるパフォーマンスに 中国の野心に大打撃与える先端半導体装置の輸出規制―【私の論評】中国が「半導体技術の対禁輸」措置を日米蘭から喰らうのは致し方ないことであり、自業自得(゚д゚)!


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、世界の半導体装置のシェアは、ほとんど日米蘭によって占められています。台湾の半導体大手も無論日米蘭の製造装置を用いて製造しています。

日米蘭が半導体製造装置を売らないというのなら、今後中国の最先端の半導体製造はできなくなります。ただ、一世代前の半導体であれば、購入できますから、民生用ではそれを使うことになるでしょう。ただ、軍事用の最先端のものは入手困難となり、中国の軍事技術は一世代遅れたものになります。

台湾では、上の記事にあげたように、半導体産業支援のために「台湾版CHIPS法」と呼ばれる先端産業を支援する関連法の改正案を可決し、減税措置を講じます。

日本も「日本版CHIPS法」と呼ばれる法律は制定はしませんが、半導体産業に支援をします。

政府は、2022年度第2次補正予算案に半導体支援策を計上しました。

日米が連携する次世代研究拠点の整備に約3500億円、先端品の生産拠点の支援に約4500億円を盛る。製造に欠かせない部素材の確保にも3700億円を充て、計1.3兆円を投じる。政府は、半導体や蓄電池、医薬品などを「特定重要物資」に指定して、海外に拠点を置く工場などの「脱・中国依存」を進めたい考えとしています。

経済産業省が半導体支援を拡充するのは経済安保上の重要性からだけでなく、歴史的な円安が投資を呼び込む好機とみていまい。大規模投資をきっかけに地域の雇用、賃金増加といった経済の好循環を生み出す狙いがあります。

第2次補正予算案は蓄電池、永久磁石、レアアースなどの供給網の多様化にも1兆円規模を計上する。いずれも経済安全保障推進法上の「特定重要物資」に指定する見通しだ。岸田文雄首相は半導体を含む次世代分野に3兆円を投資すると表明。電池やロボットにも1兆円弱を投じる見通しです。

詳細は、以下のサイトを御覧ください。
EXPACT
ここで、問題なのは日本の産業支援策は、台湾では減税でも行われるにもかかわらず、ほとんどが補助金によるものということです。

しかし、米国でも補助金で実行するではないかと、言われるかたもいると思います。確かにそうですが、日本では、経済対策や産業支援政策のほとんどが、補助金で行われています。

米国でも、経済対策の大部分は減税政策で行われています。ただ、半導体産業支援事業に関しては、特別に補助金で行うという形です。減税ではできない手厚い支援を考えているからこそ、補助金にするのでしょう。

日本のように経済対策や、産業支援策の大部分を補助金で行うとどのような弊害があるかは、昨日のブログで述べたばかりです。この記事のリンクを以下に掲載します。
ネットで大騒ぎ「Colabo問題」めぐる税金の不適切な使われ方 国は〝弱者ビジネス〟助長させる「困難女性支援法」を見直せ―【私の論評】Colabo問題の本質は、日本の経済・支援政策のほとんどが減税ではなく、補助金で実行されること(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして。この記事より補助金等の弊害を示す部分を引用します。
結局、日本の経済政策や支援政策などの多くが、減税ではなく、補助金等で実行されることが、Colabo問題のような数々の問題を助長しているのです。

補助金等にばかり頼っていれば、補助金等のための審査は際限なく増え必然的に甘くなるというか、事実上できなくなり、Colabo問題のような問題を生み出し、さらに執行漏れが多数出るのは最初から判りきったことで、余った大量の補助金等は財務省が特別会計等として溜め込み、「死に金」となるのです。

このような不合理なことは、一刻もはやくやめて、日本でも減税を多用すべきです。減税であれば、補助金等と異なり、税金をとらないだけですから、簡単に実施できますし、それに不正の温床となることもあまりありません。それでいて、確実にしかも素早く効果があります。
さて、日本の経済・支援政策補助金・助成金がほとんどであり、減税が用いられないことの弊害はまだあります。特に補助金は問題となります。

補助金と助成金の違いは、補助金は予算が決まっていて最大何件という決まりがあります。 そのため、公募方法によっては抽選や早い者勝ちになるなど、申請してももらえない可能性もあります。 一方助成金は受けとるための要件が決まっているので、それを満たしていればほぼ支給されます。

こうした補助金の性質から、腐敗を生みやすいのです。それは、補助金等を受ける企業と、官僚との癒着です。補助金を受けるためには、審査書類などがパスする必要がありますが、これについては、官僚の対応の裁量により、スムーズにもできますし、そうではなくなることもありえます。

スムーズにできなけば、補助金を受けられない場合もあります。官僚が補助金の申請をする特定の企業に対してスムーズな対応をすれば、企業としてこれに恩義を感じるわけで、これは不正の温床になります。

官僚が特定の企業に対してスムーズな対応をすれば、退官後その企業に対して、スムーズに天下りできるということもあり得ます。さらに、天下りしたあとは、出身官庁とパイプを築き、補助金などの情報や、手続きの迅速化などで貢献することもできるでしょう。

こうしたこと等が積み重ねられた結果、日本には他国にはあまり見られない、鉄のトライアングルと呼ばれるものが出来上がっています。

日本には得体の知れない様々なルールや規制があります。それに守られ、いわゆる“既得権益”を受けている人たちがいます。農業の分野で言えば、日本は零細農家を守るため、株式会社は農地を持つことができません。

当初は意味のある制度だったのでしょうが、農業が国際化されてきた今日日本は世界的にみても良い作物を作れるのですから、株式会社に農業にも参入してもらい、生産性を上げ、輸出もしたほうが良いはずです。

ところが“入ってはいけない”という人たち、そこに結びついた政治家たち=族議員、そして業界の既得権益を持った人をつなぐ役割を担っている官僚がいます。この三角形がスクラムを組み、新しいことをやろうとするときに妨害するのです。こうした三角形はどこの国にもありますが、日本の場合はそれを取り持つ官僚組織がかなり強い状態で維持されています。


それは、様々な産業界にも、厳然として存在します。企業団体、族議員、経産官僚による三角形(産業ムラ)は厳然として存在してるいるのです。これは、ある意味「加計問題」と本質は同じです。

これについては、農協の事例や、債権ムラ原子力ムラ、コロナ禍でワクチン接種はスムーズに進めることができたにも関わらず、医療ムラの抵抗にあってコロナ病床の確保に失敗した菅政権などの状況をみてもおわかりいただけると思います。日本には、あらゆる産業にこうしたムラの人にしか通じない、理屈や思想を持った村社会が存在するのです。

ただし、この村社会は公式なものではなく、病院でいえば医局のような存在であり、その実像ははっきりしていませんし、それぞれの病院によってかなり機能が異なります。

colabo問題においては、今後の調査を待つ必要がありますが、官僚の中にはたとえば、元文部次官の前川喜平氏のように、左翼リベラル的思想に親和性を持つものもいますから、補助金を受けさせるために、審査書類などのパスを恣意的にスムーズにしているということも考えられます。

昨日も指摘したように、男女参画事業などで、かなりの補助金が投入されています。すでに、リベラル左翼の鉄のトライアングルは出来上っているのかもしれません。

右左とか、上下など問わずこのようなことは、補助金行政が続く限りなくならないでしょう。

昨日も指摘したように、補助金制度の多用は、弊害を生み出すのは目に見えています。日本でも、台湾のように産業支援策に減税政策を用いるようにすべきです。ただ、このようなことを主張する人は、かなり官僚や産業団体、族議員から攻撃を受けることでしょう。

そのためか、この問題を掘り下げる人は少ないですが、いずれ日本でも取り組まなければならない重要な課題だと思います。

岸田政権の経済対策はほとんどが、補助金方式です。さらには、増税も打ち出しました。これでは、財務省をはじめとする各省庁や族議員、業界団体は大喜びでしょう。彼らにとっては、今年の正月はまさに幸先の良いスタートと感じられたでしよう。

これでは、彼らは勇んで、鉄のトライアングルをますます強化し、自分たちに不利益が被りそうなれば、鉄のトライアングルでこれをさらに強力に全力で排除するでしょう。補助金制度の間隙をついて、新たな利権を生み出す打ち出の小槌である新たなな「鉄のトライアングル」づくりに励む、官僚、業界団体、新たな族議員も出てくるかもしれません。

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2023年1月6日金曜日

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有本香の以読制毒


 新年早々、納税者にとって実に不快な話題を取り上げる。昨年末から、ネット上では大騒ぎとなっていた「Colabo(コラボ)問題」である。

 ご存じない方のために概略を説明しよう。

 Colaboとは、虐待や性被害などを受けた少女たちの支援を行っている一般社団法人である。その代表理事を、ネット上ではつとに有名な〝フェミニスト〟である仁藤夢乃さんという人が、務めている。仁藤さんは33歳ながら、昨年11月には、政府が開催した「第1回 困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議」の構成員にも選ばれている。

 同じ昨年11月、この仁藤さん率いるColaboが「不当な会計をしていた」として、ツイッター上で「暇空茜」と名乗る男性が、東京都が2021年度に支出した委託料2600万円について住民監査請求を行い、都監査委員が調査していた。

 一方、仁藤さん側は「デマや誹謗(ひぼう)中傷を行っている」として暇空さんを提訴した。


 年末12月28日、住民監査請求の結果が出され、4日に東京都から公式発表された。

 果たして、Colaboの会計報告について、都監査委は、不正を指摘する監査請求の主張について、車両のガソリン代など、多くが「妥当ではない」と退ける一方、領収書がない経費が計上され、領収書があっても疑義があるケースが確認されるなど、「本件精算には不当な点が認められ、本件請求には理由がある」として、都に対し、2月28日までに再調査などを指示した。

 暇空さんの指摘の一部が認められたともいえる。

 結果が公表された4日には、「Colabo問題」はツイッターでトレンド入りした。昨年末から、多くのユーチューバーが競ってこの経緯を動画に上げ、ネット上は一種の「祭り状態」にあったのだが、ここへ来てようやく、大手メディアでも報道され始めた。

 Colaboに対するネット上の疑惑は、「女性などの〝弱者救済〟を理由に、税金が不適切な使われ方をしているのではないか」ということに集約される。都監査委が経費の再調査を求めた以上、こう非難されるのも致し方あるまい。

 仁藤さんとColabo側は真摯(しんし)に対応し、状況を改善すべきである。

 同時に、私が指摘したいのは国の対応だ。

 昨年5月、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(略称『困難女性支援法』)が成立した。DVや性虐待など家族からの暴力、性暴力、性的搾取、離婚、貧困、心身の疾患や障害、居場所の喪失、社会的孤立、予期しない妊娠・中絶・出産、孤立した子育てなど、さまざまな困難を抱える女性を支援するという法の趣旨は結構だ。

 しかし、この法律を、いわゆる「弱者ビジネス」を助長させる仕組みにしては断じてならない。その一歩として、前述の「有識者会議」の建て付けを全面的に見直し、メンバーも入れ替えて、「困難女性支援法」の乱用を防ぐ会議としてはいかがか。

有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

【私の論評】Colabo問題の本質は、日本の経済・支援政策のほとんどが減税ではなく、補助金で実行されること(゚д゚)!

東京都では2016年以降、住民監査請求された111件のうち、認められたのは前知事の公用車の利用法についての1件だけです。そうした中で請求が新たに認められたとなれば重大事のはずですが、大手メディアの報道が全くないどころか、昨年の時点では、事実確認で動いている形跡すらほとんど感じられませんでした。

沖縄で基地反対活動する仁藤夢乃さん

大手メデイアは無論のこと、野党もいわゆる党派性の病理に蝕まれ、与党が関与することなら、信者が数万しかいないような、統一教会問題など大騒ぎしても、リベラル・左翼の関わる問題解決に関してはほぼ無視を決め込むという、平成から繰り返されてきた悪しき態度や行動には、本当に気が滅入る人も多いのではないかと思います。

この問題の本質は、あまり語られていませんが、日本では、政府や自治体が行う支援が、減税ではなく補助金や助成金によって行われることが多いことが根底にあるのではないかと思います。

このブログでは、日本では、政府の経済政策が他国に比較すると、主に補助金で行われ、減税はほとんど行われていないことを指摘してきました、最近も再度指摘したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
政府、1人当たり2万6000円支給へ 税収上振れ分「人々に還元」/台湾―【私の論評】日本政府の財政の最大の欠陥は「死に金」が溜まっていく構造になっていること(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。

財政支出には補助金系と減税系の2つがあって、減税系は執行率がほぼ100%になります。税金を取らないだけだから簡単なのです。しかし、補助金系は支出するにおいては、様々な書類と手続きが必要となります。そのため、補助金系の支出は執行がスムーズにいかないときがあます。 
通常、国際的にはOECDなどの資料を調べると、景気対策は「減税系」7で「補助金系」が3ですが、日本ではこれが逆どころか補助金のほうが圧倒的に多くなっています。景気対策は、減税で実行するのが一般的なのです。 
日本だけが、補助金系が8で減税系が2です。そうして、今回の岸田政権では、ほとんど減税系がありません。要するに補助金系が10という感じで「かなり執行残がありそうだ」と最初から認識できました。 
予算を積んでも執行できなければ意味がありません。岸田政権は、このような予算を意図的につくっているのかと疑ってしまいたくなるほどです。普通は、補助金系は増やさず、減税系を増やして素早く執行すべきなのです。 
このような予算の策定方式の背景には「減税などすべきでない」などの前提があるのでしょう。だから、不自然なことになってしまうのです。まず入り口にそれがあるのでしょう。もう1つは、補助金系の方が官僚や政治家は喜ぶのです。減税よりも、補助金のほうが、いかにも仕事をしたという達成感があるのかもしれません。
岸田政権の予算は、「減税系が嫌だ」という財務省と、補助金系が好きな他省庁と政治家をうまく組み合わせたような感じです。 
そうなると、限られたところにしかお金が流れず、世の中全体の経済の浮揚にはつながりにくくなります。

このColabo騒動は、日本の行政における予算執行の杜撰さを明るみにしたことで重要な意義を持っていると思われます。

今回東京都のチェックの甘さが浮き彫りになりました、行政を良く知っている専門家によれば、行政とはそういうもの、ということのようです。考えてみればそうでしょう。自分が苦労して稼いだお金でもなく、失敗したからと言って責任を取らされるわけでもないからです。

しかも、政府による経済対策における補助金・助成金に関しては、実際には政府が行うわけではなく、東京都や他の市町村が実務を行います。補助金等をもらったことのある人なら、補助金等のお知らせなど、最寄りの市町村から通知されることをご存知だと思います。

そうなると、地方自治体の事務量は、半端なものではなくなります。通常の事務を行いつつ、さらに政府の経済対策に関わる事務を実施しつつ、場合によっては、都道府県や国の経済政策の事務もこなさなくてはならなくなります。

無論、地方自治体だけで、事務が回せなければ、外部の民間企業などの力を借りることになりますが、これは無論のこと、税金が投入されるのです。この外部機関がいい加減だったりして、大量の名簿が入ったUSBメモリを紛失したなどのこのとは時々報道されたりします。

東京都も同じく、そのような状況になってるはずで、これではチェックが十分でなかったといっても、それにはそれなりの理由があるのかもしれません。今後、十分に調査をすべきです。

現状の役所は予算の議会承認を受けて、予算項目ごとに支出し、決算で支出結果をまとめるだけの機関です。特に政府はそうです。

市町村のような地方自治体も、事業内容の妥当性を判断する機関としては事実上機能しておらず、予算書や決算書を作るための収支報告の辻褄を合わせるのが精一杯ともいえます。これは、最近ではコロナ感染対策における、各地の保健所の状況を振り返っていただければ、理解できます。

経済政策の実施手法として、日本でも、補助金等の多用ではなく減税を多様すべきであると主張する人は多いです。これを実現するうえでcolabo事件、非常に重要な転機になるのではないかと思います。というより、そうしなければならないと思います。そうして、これには財務省は大反対するでしょう。その理由は後で述べます。

colabo が話題になっていますが、それは氷山の一角にすぎないです。政府全体の支出の4割程度を占める中央政府でも似たような補助金等のバラマキ案件は沢山あります。これは、以下のサイトで確認できます。


試しに男女共同参画と入力してみてください。沢山の補助金、助成金によるバラマキ先が出てきます。これだけあれば、一つひとつの事業の妥当性を審査するのは難しくなるのは当然です。やはり、減税政策をもっと多用すべきです。

支援政策も減税を多用すれば、補助金、助成金への審査の時間を増やすこともできます。このままでは、税金が無駄に使われるだけではなく、本当に支援すべき事業や、困っている人たちの支援が滞ることになりかねません。

結局、日本の経済政策や支援政策などの多くが、減税ではなく、補助金等で実行されることが、Colabo問題のような数々の問題を助長しているのです。

補助金等にばかり頼っていれば、補助金等のための審査は際限なく増え必然的に甘くなるというか、事実上できなくなり、Colabo問題のような問題を生み出し、さらに執行漏れが多数出るのは最初から判りきったことで、余った大量の補助金等は財務省が特別会計等として溜め込み、「死に金」となるのです。

このような不合理なことは、一刻もはやくやめて、日本でも減税を多用すべ
きです。減税であれば、補助金等と異なり、税金をとらないだけですから、簡単に実施できますし、それに不正の温床となることもあまりありません。それでいて、確実にしかも素早く効果があります。

このような、政策転換をしない限り、Colaboのような問題は防ぐことは難しいでしょう。

今後、野党やマスコミがColabo問題を追求するなら、この方向性でも批判していただきたいものです。政府や役人を責めたてるのは結構だとは思いますが、それだけでは、この問題は永遠に解決しないと思います。しかし、おそらく野党・マスコミはこのようなことはしないでしょう。

このようなことは、調べてみれば、皆さんの身の回りでも、結構あると思います。私は、現在北海道札幌市に住んでいますが、北海道にはいわゆる「アイヌ利権問題」があります。ここでは、詳しくは述べませんが、怪しいアイヌ文化に多額の税金が使われていたりします。皆さんの地域においても、詳細に調べてみれば、なぜこんなことに、補助金や助成金が使われているのか理解に苦しむような事業が展開されている可能性も十分にあると思います。

それに関しては「暇空茜氏」のように声をあげる人がいなければ、いつまでも放置されることになります。やはり、特に地域の問題に関しては、地域の人たちが声を上げるべきです。

Colabo騒動を調べれば調べるほど、Colabo側の問題はもとより、構造的な問題が次から次へと出てきており、枚挙にいとまがありません。今後このブログでも順次指摘していこうと思います。

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2023年1月5日木曜日

世界10大リスク 「危険なならず者」ロシアが首位―【私の論評】台湾侵攻は「リスクもどき」、中国最大の危機は習近平(゚д゚)!

世界10大リスク 「危険なならず者」ロシアが首位


 国際政治経済のリスク分析を行う米調査会社ユーラシア・グループは3日、2023年の10大リスクを選定した報告書を公表した。ウクライナへの侵略を続けるロシアを米欧やそれ以外の地域に「安全保障上の深刻な脅威」を突きつけていると指摘し世界最大のリスクに挙げた。また、昨年10月の中国共産党大会で掌握した習近平総書記(国家主席)の長期的な権力を第2のリスクに選んだ。

 報告書はロシアについて「勝利のための良い軍事選択肢は残されていない」としつつ「引き下がらない」と予測。制裁で孤立を深めながらも「最も危険なならず者国家」となると指摘した。

 その上でイランとの軍事的な連携や核兵器による威嚇の強化を予測。核使用の可能性は低いとしつつ、事故や判断ミスで核戦争に発展する危険は1962年のキューバ危機以来最も高まると予想した。ゼレンスキー大統領暗殺を含むウクライナ指導層の排除に一段と懸命になるとも指摘した。

 2番目のリスクとした中国の習国家主席について、「あらゆる中国の政策は全権を有するひとりの指導者から流れ出る」と指摘。新型コロナウイルス対策を巡る混乱を挙げつつ、不透明な意思決定や政策の軌道修正の難しさなど権力集中の弊害が世界に及ぼす悪影響に警鐘を鳴らした。

 3番目には人工知能(AI)など米国発の技術発展を挙げ、世界の強権指導者に偽情報拡散などの能力を提供し、民主主義を弱体化させる危険を指摘した。

【私の論評】台湾侵攻は「リスクもどき」、中国最大の危機は習近平(゚д゚)!

ユーラシア・グループの地政学的リスクに関しては、昨年も当ブログに掲載しました。昨年の予測では、中国のゼロコロナ政策の失敗が最大のリスクとなっていましたが、これは時期をずらしたものの、予測は的中した形になりました。今後、春にかけて感染は拡大し、世界経済などに大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

中国のリスクはここ数年必ず掲載されるようになりましたが、昨年より前の時点では、中国の外国に対する干渉や脅威がリスクとされ、昨年は「ゼロコロナ政策の失敗」という中国の国内事情が最大のリスクとなり、今年は習近平のリスクというように、リスクの範囲が狭まってきています。

今年の、予測も妥当なものと思います。やはり、なんと言っても、ロシアの危機が最大のものと考えられます。

戦闘長期化に伴って余裕を失うロシアが、核兵器使用の威嚇を含め国際社会への揺さぶりを強化する可能性を指摘しました。報告書はロシアが「世界で最も危険なならず者国家になる」と予想しました。

第2のリスクの習氏については、昨年10月の中国共産党大会で長期支配を確立し権力の一極集中が進んだことで政策の不安定さや不透明さが増すと分析しました。

今年は、習近平が最大の地政学的リスクに

それと、中国による台湾侵攻リスクに関しては、昨年も今年も掲載されていません。報告書では、米国はインフレ、中国は経済成長鈍化などそれぞれの国内経済問題を挙げた上で、実際に軍事衝突が起きれば相互に耐え難いリスクとなると指摘しました。

貿易などを通じ米中経済は深く絡み合っており、軍事衝突は両国の経済を破壊すると分析。また中国は半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)へのアクセスを失うリスクを負うことも強調しました。

その上で、中国は力のバランスが決定的に自国に有利になるか、台湾を擁護しない米大統領が就任するまで台湾への軍事介入を延期するだろうと予測。いずれも23年中には起こり得ないとしました。

米ニューヨークに本拠を置くユーラシア・グループは毎年、その年の十大リスクを発表している。その他の「リスクもどき」はウクライナ支援を巡る課題などを挙げました。台湾有事は昨年も「リスクもどき」とされていました。

中国の台湾侵攻が「リスクもどき」という指摘はもっともだと思います。何しろ、現在中共はゼロコロナ政策をやめて、感染拡大を放置して、なるべく早い時期に、国民が集団免疫を得ることを狙っていとみられます。中共としては、23年3月5日開幕の人民大会開催の直前までには、そうなることを目指しているとみられます。

これにより、集団免疫が得られたにしても、相当数の死者がでたり、コロナ感染から回復したにしても、後遺症に悩まされる人が大勢出たりして、23年中にはその対策に追われることになるでしょう。

さらに、このブログでも解説したように、中国が台湾を破壊することは簡単ですが、侵攻して占拠して統治するということになれば、これは全く別の次元の企てであり、かなり難しいです。

そもそも、兵員の海上輸送能力が足りず、一回に数万の兵士しか台湾に送り込めず、そうなると、武力的にウクライナよりはるかに現代化されていて、強力な地対地ミサイル、対艦ミサイル、対空ミサイルならびに長距離ミサイルを多数自前で開発し配備する台湾軍に個別撃破され、艦艇は撃沈され、航空機は撃墜され、中国本土も脅威にさらされます。

また、台湾は島嶼であるにもかかわらず、最高峰の玉山は、4000m近くもあり、富士山よりも高いです。東海岸は、急峻であり、とても大部隊が上陸できるような地形ではありません。西海岸は地図上では平地が広がっていますが、それでも上陸できる地点は限られているため、台湾軍が待ち構えているところに上陸して密集した陣形をとらざるをえず、高地に陣取る台湾軍から撃破されやすいです。

台湾の地形をみれば、中国の台湾侵攻は難しい

さらに、これに日米などが加勢して、特に米軍がこの地域に大型の攻撃型原潜を派遣すれば、中国軍は太刀打ちできません。中国海軍は、台湾侵攻どころか、崩壊の危機に瀕することになります。

この点に関しては、このブログの過去記事でまとめています。下の【関連記事】のところに掲載しておきますので、関心のある方は是非ご覧になってください。

3位に関しては、すでに言葉をいくつか入力することによって、AIが写真を合成するというものも存在しており、これは確かに脅威になり得ると思います。

様々なものがありますが、たとえば、英Stability AIが発表した画像生成AI「Stable Diffusion」が、にわかに注目を集めています。基本的にローカルに実行環境を整え、インストールして使用するツールだが、デモサイトで手軽に試すことも可能です。

以下に、Putin(プーチン),rogue(ならず者),demon(悪魔)とキーワードを入力して得られた画像を以下に示しておきます。


このような合成写真が短時間にできてしまうのですから、これによって、ショッキングなものや人々の憎悪を掻き立てるような画像も簡単にできてしまいますから、確かにかなり危険です。

4位以下も十分にありそうです。本ブログでは、こうした危機が顕在化しそうになれば、昨年同様レポートしていきます。皆さん、今年もよろくお願い申し上げます。

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2023年1月4日水曜日

政府、1人当たり2万6000円支給へ 税収上振れ分「人々に還元」/台湾―【私の論評】日本政府の財政の最大の欠陥は「死に金」が溜まっていく構造になっていること(゚д゚)!

政府、1人当たり2万6000円支給へ 税収上振れ分「人々に還元」/台湾


蘇貞昌(そていしょう)行政院長(首相)は4日、国民全員に1人当たり6000台湾元(約2万6000円)を現金で支給する方針を明らかにした。時期は春節(旧正月)明けとなる見通し。

2022年度の税収は当初見込んだ額より4500億台湾元(約1兆9000億円)上振れし、国民に還元されるかが注目されていた。蔡英文(さいえいぶん)総統は3日、政府が運用可能な分について、一部を緊急時に備えて積み立てる以外は人々に現金で分配する考えを示した。

視察先の南部・嘉義県で取材に応じた蘇氏は、運用可能な1800億元(約7700億円)のうち400億元(約1700億円)を緊急時の資金とし、1400億元(約5700億円)を市民に分配する方針を発表。給付方法など詳細を詰めている段階だと話した。行政院院会(閣議)で決定され次第、立法院(国会)に送られるという。

対象に外国人が含まれるかどうかについて、行政院(内閣)は中央社の記者に対し「検討中」と回答した。

また、地方政府にも一部を回し、低所得層に一定額を毎月支給する。

残りの2000億元(約8500億円)について、蔡総統は労働保険や健康保険の基金、電気代の抑制に充てる他、従来型産業、農漁業、観光業などの支援に投入する方針だと説明した。

【私の論評】日本の財政の最大の欠陥は「死に金」が大量に溜まっていく構造になっていること(゚д゚)!

税収が想定より多かったので目に見えるはっきりした形で、国民に還元してくれる国、台湾です。日本とは随分異なるようです。

日本では、2022年度の一般会計税収が68兆3500億円余りと、過去最高だった21年度実績を上回る見通しであることが4日、分かりました。複数の政府関係者が明らかにしました。政府が近く閣議決定する22年度2次補正予算案で、昨年末の見積りを増額修正します。

主要税目のうち所得、法人税収などが堅調に推移していることを反映しています。当初は22年度税収を65兆2350億円と想定していました。新たに3.1兆円上振れすると見込み、政府が先月28日に決定した総合経済対策の財源に充てるとしています。

国の税収はコロナ禍でも伸び続け、20年度にそれまで最大だった18年度の60兆3563億円を抜き、一般会計税収が60兆8216億円となった。21年度は67兆0378億円と、再び過去最高を更新していた。想定通りに推移すれば3年連続で過去最高を更新することになります。

これについては、昨年もこのブログで解説したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
防衛費のGDP比2%以上に〝増税不要〟 この10年で税収は25兆円増に 税収増で増額分を確保、アベノミクス継承すべき―【私の論評】2018年に一般会計税収がバブル期を超え、2021年に過去最高となった日本で最早増税は必要なし(゚д゚)!

この記事は、昨年11月19日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より二つのグラフを引用します。


財務省が昨年7月5日発表した2021年度の一般会計決算概要によると、国の税収は67兆378億8500万円と過去最高だった20年度の税収(60兆8216億400万円)を更新しました。更新は2年連続です。新型コロナウイルス禍からの世界的な景気回復や円安による企業収益の増加で法人税収が伸びました。賃上げなどによる所得環境の改善で所得税収も堅調でした。

21年度税収は当初予算段階で57兆4480億円を想定。景気回復の動向を踏まえ、昨年12月成立の補正予算では63兆8800億円に上方修正していたのですが、さらに上振れる結果となりました。



このグラフに関しては、上の記事から引用します。

2018年の段階で、もうすでに、税収はバブル期を超えていたのです。2018年というと、このブログでも以前掲載したように、統合政府ベース(政府+日銀)の財政再建は2018年には確実にプラスに転じていました。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。

このグラフをみれば、良く判りますが、1990年代に入ってから、消費税増税が繰り返されましたが、最初は、消費税をあげても税収は下がっていたのですが、一時あがった時期もありましたが、リーマンショックあたりで、かなり落ちてしまいましたが、その後はまた上がりはじめ、14年あたりから、しっかりあがりはじめ、18年にはバブル期の水準を上回りました。

そこからは、バブル期の水準を下回ることなく、上の方のグラフをみてもわかる通り、19年は一時下がりましたが、20、21年と上がっています。

どうしてこうなったかといえば、消費税をあげたばかりのころは、政府は緊縮財政を繰り返し、日銀は金融引締を繰り返していたので、04年頃からは、税率があがったこともあり、税収が増えたのですが、2008年にリーマン・ショックがあったにもかかわらず、震源地の米英をはじめ、他国がかなり思い切った金融緩和をして、立ち直りが早かったにもかかわらず、日銀が金融引締の姿勢を変えなかったため、2009年にはかなり落ち込みました。

2013年には日銀が異次元の包括的金融緩和を始め、2014年には消費税率が8%になったこともあり、税収が増えました。 16年には、若干へりましたが、17年はまた上がり、18年にはとうとうバブル期の水準を超えました。

それ以降は、19年には一度税収が前年より若干落ちましたが、20年、21年そうして、先にあげたように、22年も前年を上回るのです。
 
2次補正では、税収の上振れ分に加えて税外収入なども歳入に計上します。足りない分は新規国債を22兆8500億円余り追加発行することで補います。歳出総額は28.9兆で、世界的な景気減速に備えて創設する「ウクライナ情勢経済緊急対応予備費」には1兆円を計上します。

補正予算案は8日の概算閣議決定を想定していますす。20カ国・地域(G20)首脳会議などに出席する岸田文雄首相の帰国後に国会に提出し、年内の早期成立を目指します。
補正予算すらまだ本決まりしていないのですから、岸田政権は仕事があまりに遅すぎです。これは、夏休みの宿題をやり残し、年明けになって提出するようなものであり、あまりに酷すぎです。

台湾政府としては、すでに昨年の夏辺りから準備をして秋頃には決まって、どの程度の上ブレが出るかを待ったいたという状況なのだと思います。だから、このようなことができのるだと思います。新年早々ということで、タイミングも良いです。

一方岸田政権は、補正予算を決めるにも時間がかかっているだけではなくその組み方にも問題が山積です。

政府は11月8日、2022年度第2次補正予算案を閣議決定しました。高騰する電気やガス料金の抑制策などを盛り込んだ総合経済対策を中心に、一般会計の歳出総額で28兆9222億円を計上。財源には、当初の計画を上回った税収などもあますが、歳出の約8割にあたる22兆8520億円は新たに赤字国債を追加発行して賄います。

ただ、国債を大規模に発行しなくても予算は組めるはずです。同時期に「過去の経済対策でどのくらい使い残しがあったか」という会計検査院の報告がありましたが、それが20兆円くらいでした。それを繰り越すなり、不用なものを組み込めば減らせるはずですが、繰り越しているのですから、どこかに必ず財源、いわゆる埋蔵金はあるはずです。

それを集めれば、簡単に補正予算となどできるはずです。埋蔵金を残しつつ、多くの国債を出して、見かけ上での財政の大変さを演出したのではないかと考えられます。それが、財務省のやり口です。

22兆円が赤字国債だということで、財政規律上望ましくないという意見もありました。独立行政法人であれば、埋蔵金もありますが、それは数百億円や1000億円~2000億円のレベルになってしまいますので、理解しにくいですが、外為特会では40兆円もあり、これは理解しやすいです。

埋蔵金問題の本質は、繰り越しの使途をあいまいにしておき蓋をして、まるでこれらが存在しないかのよう装い「財政危機」などといいたていることです。これは、本当に異様です。

さらに、コロナ対策なども含めて相当、財政出動したはずなのに、それが実需になっていないという問題もあります。これは、結局のところ予算が執行されていないのです。

財政支出には補助金系と減税系の2つがあって、減税系は執行率がほぼ100%になります。税金を取らないだけだから簡単なのです。しかし、補助金系は支出するにおいては、様々な書類と手続きが必要となります。そのため、補助金系の支出は執行がスムーズにいかないときがあます。

通常、国際的にはOECDなどの資料を調べると、景気対策は「減税系」7で「補助金系」が3ですが、日本ではこれが逆どころか補助金のほうが圧倒的に多くなっています。景気対策は、減税で実行するのが一般的なのです。

日本だけが、補助金系が8で減税系が2です。そうして、今回の岸田政権では、ほとんど減税系がありません。要するに補助金系が10という感じで「かなり執行残がありそうだ」と最初から認識できました。

予算を積んでも執行できなければ意味がありません。岸田政権は、このような予算を意図的につくっているのかと疑ってしまいたくなるほどです。普通は、補助金系は増やさず、減税系を増やして素早く執行すべきなのです。

このような予算の策定方式の背景には「減税などすべきでない」などの前提があるのでしょう。だから、不自然なことになってしまうのです。まず入り口にそれがあるのでしょう。もう1つは、補助金系の方が官僚や政治家は喜ぶのです。減税よりも、補助金のほうが、いかにも仕事をしたという達成感があるのかもしれません。

岸田政権の予算は、「減税系が嫌だ」という財務省と、補助金系が好きな他省庁と政治家をうまく組み合わせたような感じです。

そうなると、限られたところにしかお金が流れず、世の中全体の経済の浮揚にはつながりにくくなります。

ガソリン税に関しても暫定税率を廃止すべきでしたが、結局それも補助金で屋上屋を架しましたし、今回のガスや電気も結局そうです。

このような予算は、はっきりいうと一般国民が割を食うことになってしまいます。執行がスムーズにできない予算は良い予算ではありません。よくバラマキと批判されますが、これは完璧な間違いであり、経済対策では、特に減税系でばら撒く方が景気対策としてはるかに優れています。どうせ予算をつくるのであれば、バラマキ100%で素早く執行すべきと思います。

岸田政権の予算は何かといえば、補助金ばかりです。官僚達は大喜びでしょうが、執行という観点からみれば、景気対策で100%の効果は出しにくいのです。

効果が出せなくて、残った分が、それがそのまま埋蔵金になっていくのです。一方、上の台湾の例のように、税収が上ブレすれば、国民に目にはっきり見える形で還元するというのが台湾政府のやり方であり、そこには埋蔵金を溜め込むという考えはさらさらないようです。

それに、減税系の対策を行いつつも、時にはこういう目立った形で、補助金を直接国民に配布するというやり方で、上手に経済対策をアピールしているといえます。これは、岸田政権も見習うべきです。

台湾政府は減税政策を日本よりはかなり多用しています。たとえば、昨年11月17日には、台湾の行政院(内閣)、半導体などの先端技術の研究開発や投資を促すため、関連企業への減税措置を拡大する案を閣議決定しました。

台湾半導体製造大手のtsmc

法人税額から、研究開発費の25%(従来は15%)、設備投資の5%(同0%)をそれぞれ乗じた額を控除できるようにします。今年1月1日から施行されました。半導体などで一段の優位性を確保するのが狙いです。

一方日本では、減税措置はなく、補助金100%で埋蔵金がなるべく出るようにして予算を組み、それを財務省が特別会計等としてせっせと溜め込むというのですから、本当に困ったものだと思います。蓄えるばかりで、活用されない金のことを「死に金」といいますが、日本の財政の欠点は、いわゆる「死に金」が溜まっていく構造になっていることだともいえます。

以前このブログにも掲載したことがありますが、統合政府ベースでみれば、実は2018年あたりで、財政赤字は解消されています。そこから先は黒字に転じています。しかし、この黒字を家計と同じように良いことと、考えるのは間違いです。

「死に金」が積み上がる財政黒字よりも、「死に金」が積み上がらない財政赤字のほうが、はるかに健全です。経常収支赤字は悪で、黒字は善と決めつける人もいますが、それは間違いであって、赤字、黒字の原因により、良いこともあれば、悪いこともあります。たとえば、好景気であれば、輸入が増えて経常収支が赤になりがちですが、景気が良いことを悪いこととはいえないので、これは悪いことだとはいえません。

それと同じく、財政も赤字だから悪、黒字だから善とは言い切れません。財政が黒字ということは、政府が国民のために仕事をせずに、せっせと「死に金」を溜め込んでいることを意味するかもしれないからです。財政が赤字であっても、予想したより支出が増えたというだけであり、何も問題もないこともあれば、外国からの借金がかさんでいるというということもあります。赤字、黒字だけでは、財政が良い、悪いなどとは言い切れません。

財政赤字はそもそも駄目ではないと考える人は、それこそ家計と財政をごちゃまぜにして考えているのです。家計では、お金が外にでてなくなり、さらにお金も借りることができなければ、それでおしまいで破綻しますが、政府の場合は、徴税権があって税金を徴収できますし、国債も発行できますし、政府は、貨幣を発行することができますから、家計とは根本的に異なるのです。

財政も、経常収支も、不健全な赤字とともに、不健全な黒字もあるのです。

現状の日本を考えれば、財政は黒字より赤字くらいのほうが、「死に金」は溜まらず、財政は健全だといえます。何が何でも、黒字にもっていくことだけが、善であり正しいことだという考えは完璧な間違いです。

不健全な財政黒字のお先棒を担ぐのが、岸田政権ということもできると思います。岸田首相は財務省のいいなりで、国民のことは何も考えていないようです。ふざけるなと言いたいです。

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2023年1月3日火曜日

インド、今年人口世界一に 14億人超、中国抜く―【私の論評】今更中国幻想に浸っていては、世界の構造変化から取り残される(゚д゚)!

インド、今年人口世界一に 14億人超、中国抜く

インド西部ムンバイの海岸で、2022年最後の日没を見る人たち=22年12月31日

 14億人超の人口を抱えるインドは今年、人口で中国を抜き、世界一になる見通しだ。国連のデータが残る1950年代以降続いた「中国が人口世界一」の時代は終わる。米国と中国の競争が激化する中、独自外交路線を堅持するインドは今年の20カ国・地域(G20)議長国。政治・経済両面でさらに存在感を増すことになるが、格差や女性の社会進出の遅れなど課題も多い。

 国連によると、2022年の人口は中国が14億2600万人、インドが14億1200万人で、23年中にインドが追い抜くと予測される。50年にはインドが16億人を超える一方、中国は13億人強に減る見込み。中国は長年の一人っ子政策の影響もあって少子化が進み、23年にも人口減少に転じるとみられている。

【私の論評】今更中国幻想に浸っていては、世界の構造変化から取り残される(゚д゚)!


昨年、国連からインドの人口が来年4月中旬に、中国を抜いて世界最多になるという予測がだされていました。

中国とインドは人口大国で、過去70年にわたり、その人口の総和が世界人口の3分の1を占めてきました。

インドの人口が中国を超えるのは、主に、両国の出生率の差が理由です。

報道によると、20世紀後半、インドの人口は急増の一途をたどり、増加率は年間平均2%に達しました。1947年の独立後、インドの人口は10億人を超え、この先40年間にわたっても増加し続けると予測されています。

一方、中国を見ると、第7回国勢調査では、人口は14億1178万人だった。2010年の第6回国勢調査と比べると、5.38%増で、増加率は年間平均0.53%にとどまっています。

インドの人口は2060年代に17億人近くまで増える一方、中国は早ければ23年から人口減少が始まります。長く中国が人口世界一だった常識が大きく変わることになります。

国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(22年10月下表)によれば、インド経済は23~27年、5年間平均で6.5%の成長が見込まれ、一定の経済規模を持つ国では最も高い部類に入ります。その結果、21年のGDPで世界5位のインドは、25年には4位のドイツ、27年には3位の日本を抜く見込みです。対照的に、中国は27年までの5年間平均で4.6%成長へと減速が予測されています。
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新型コロナウイルス禍前の19年まで、10年間平均で6.9%の成長を続けていたインド。成長をけん引した産業の一つがITです。GAFAなどにもインド人の人材が多く活躍しています。

インドはなぜIT分野に強いのかといえば、インド古来の階級制度カーストの影響から逃れられたことが要因の一つと考えられます。カースト制度では「ジャーティ」と呼ばれる細かな社会集団に分類され、職業が各集団に付随して維持されてきました。しかし、「ITは新しい産業だからカーストの制約はない。将来のビジネスになる」と気付いた優秀な人たちがIT業界に一斉に集まってきたのです。

もう一つの要因としては、インドの公用語でもあるヒンディー語(母語とするのは4億人)は、もともと抽象的概念を扱いやすい言語であり、たとえば「お使いに行く」という日本語の表現を「使者性を帯びて赴く」というような表現をします。子供の頃からこのような抽象的な概念を表現できる言葉を用いている人は、システム設計などの概念も受け入れやすいようです。

インドは1991年、それまでの社会主義的政策から経済自由化政策に切り替え、発展の基礎を築きました。そして今、モディ現政権が注力する領域が製造業、特に半導体分野です。コロナ禍によって中国などに依存していた電子部品やハイテク製品が供給制約に直面。また、20年5月には中印国境で中国との戦闘も発生し、中国依存は危ないと考え、「インドの自立」を唱え始めたのです。

インド政府は今後、半導体産業育成に5年間で7600億ルピー(約1.4兆円)の補助金を拠出するといいます。すでに、電子機器受託製造世界最大手の台湾・鴻海精密工業がインドの資源関連複合企業ヴェダンタと組んで、グジャラート州に半導体の新工場の建設をインド政府に申請しています。総投資額は1.54兆ルピー(約2兆6000億円)にものぼる見込みです。
 
 また、ベルギーの世界最先端の半導体研究機関imec(アイメック)は22年10月、インド政府とインドにおける技術支援を行うことで合意しました。imecが供与する微細加工技術のレベルは、回路線幅28ナノメートル(ナノは10億分の1)かそれ以下と、最先端の半導体製品とは開きがあります。しかし、インドで半導体を国産化するうえで、産業のエコシステム(経済的な生態系)を作る基礎固めとみられます。

インドは今後、消費市場としても大きな注目を集めそうです。インドの1人当たりGDPは現在、2000ドル台ですが、25年には家電製品や家具など耐久消費財の売れ行きが加速するとされる3000ドルを超すと見込まれます。今後特に、生活の質を改善するための需要が期待でき、電力、道路、鉄道、通信、上下水道などインフラ整備も引き続き必要になるでしょう。

安倍日本首相(当時)とモディインド首相

一方の中国は、そもそも民主主義国家ではなく全体主義国家です。このブログでも何度か解説したように、開発経済におては「中進国の罠」という用語があり、民主化が進んでいない国では、政府か掛け声をかけて多大な資金を投入すれば、最初は経済発展するのですが、一人あたりのGDPが1万ドル前後あたりから、伸びなくなるというものです。

中国GDPはすでに1万ドルを若干超えています。今後伸びない可能性が高いです。インドは、現在はかなり低いですが、それは逆に言えば、伸びしろがあるということであり、さらにインドの場合は、1万ドルの壁も突破できる可能性があります。

中国では、2015年に「一人っ子政策」の廃止を決定し、21年には3人目の出産も認めたのですが、教育費の高さなどから少子化に歯止めがかかりません。すでに生産年齢人口(15~64歳)は13年、約10億600万人とピークに達し、今後も減少が見込まれます。やはり、一人っ子政策が2世代(約40年)と長期にわたったことが大きく影響しているようです。

中国とインドといえば、最大の違いは、先に述べたように、中国は全体主義国家であり、インドは未だ古い風習などが色濃く残る社会ではあるものの、民主主義的な体裁を整えた国であり、世界最大の民主主義国家です。

インドでは、不十分なところもありながら、民主主義化、政治と経済の分離、法治国家化がなされています。これが中国との大きな違いです。

中国政府が出す経済統計資料を用いて、インドとの比較をする評論家も多いですが、それには無理があります。中国のGDP統計が疑わしいということは、以前から多くの人に指摘されてきました。日本より国土が広く、人口も10倍の規模である中国が、締め日からたった20日でGDPの確報値をまとめあげてしまうのです。これについては、李克強氏も認めていました。

日本の場合は、速報値はもっと早いにしても、確報値を発表するのに1年近い時間を費やします。そのうえ、GDPの統計は内閣府、失業率は総務省統計局、貿易統計は財務省というように、集計の担当が分かれており、それぞれのチェック作用が働きます。もちろん、これらの政府機関は、統計の対象となる業界との間に利害関係はありません。

他方、中国では各地の地方政府と国家統計局が統計の集計を担っており、これらの機関は所轄地域のGDPと密接な利害関係を持っています。なぜなら中国では、経済成長の目標とは達成しなくてはならないノルマだからです。

水増し粉飾分を取り除くと、実際の中国のGDP規模は未だに日本を超えていないといわれています。そうして、現代の中国は、過大な投資による過剰な生産能力が、企業業績の悪化を引き起こし、経済低迷の原因となっています。

中国が経済発展を続けるには、すでに国内では一巡して目ぼしい案件がない現在、投資主導の経済から消費主導の経済への転換が欠かせないです。しかし、中国国民の貯蓄性向は高く、転換はうまく進んでいません。その最大の要因は、民主化がされていないことと、セーフティー・ネットが整備されていないことです。

中共は、過去の成功体験が忘れられず、海外投資で巻き返しを図ろうとして、一帯一路をはじめたのですが、海外投資の経験に乏しい中共は、投資の基本を理解しておらず、法治国家におけるビジネスの進め方も熟知しておらず、結局投資先を混乱に陥れるだけに終わりそうです。非法治国家においては、成功するかもしれませんが、そのような国は貧乏国が多く、債務の罠にはまるだけになりそうです。

27年までの5年間では、インドのように人口が増えるベトナムやバングラデシュなどで年平均6%以上の成長となるほか、エジプトやインドネシアなどは5%以上の成長が見込まれます。ナイジェリアやバングラデシュ、ベトナムは27年、アルゼンチンなどに代わってGDPの上位30位にも顔を出すとみられます。その中でも、民主化が進んでいる国においては、中進国の罠を突破して成長し続ける国もでてくるでしょう。世界の構造変化の大きなうねりは、従来から予想されていたように、目前まで押し寄せています。

最早中国の経済の停滞は一時的なものであり、また中国の経済発展が始まるなどの中国幻想に浸っている時ではありません。考えを変えていない人や組織は、世界の構造変化から取り残されることになります。

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2023年1月2日月曜日

岸田首相「所得倍増」の掛け声はどこへ? 大増税&社会保険料負担増で「これじゃ所得倍減」の指摘―【私の論評】今年のキーワードは「倍増」? 所得が倍なら納得!そうでなければ(゚д゚)!

岸田首相「所得倍増」の掛け声はどこへ? 大増税&社会保険料負担増で「これじゃ所得倍減」の指摘


 岸田内閣の支持率が急落している。一部メディアでは20%台の危険水域に突入した。その主たる要因は、防衛費増額のうちの1兆円分の財源を岸田文雄・首相が「増税」によって賄うと打ち出した点にあるだろう。国民が物価高に苦しむなかで負担増につながる施策が相次ぎ、“話が違う”という声があがっている。

 2021年秋の自民党総裁選に立候補した岸田氏はもともと、「所得倍増」を掲げていた。「中間層の拡大に向けて分配機能を強化し、所得を広げる。令和版の所得倍増を目指す」とぶち上げ、自身が領袖を務める派閥「宏池会」を立ち上げた池田勇人首相の所得倍増計画に重ねるようにしてアピールしたのは岸田氏自身であった。

 しかし、昨年末の与党税制改正大綱では防衛費増額の財源を確保するために、所得税やたばこ税、法人税の増税の方針が打ち出された。自民党内からの反発があって増税の時期こそ明記されなかったものの、なし崩し的に増税の方針が既定路線となった。さらには相続・贈与税の課税強化の方針も盛り込まれ、ウクライナ戦争や米国の利上げなどによる急激な物価高に苦しむ国民にとっては、負担増の話ばかりが聞こえてくる状況だ。

 経済ジャーナリスト・荻原博子氏は「まさに大増税時代の到来ですが、負担が増すのは税金ばかりではありません」と指摘する。

 「社会保険料の引き上げも続いています。2022年10月から雇用保険料が上がりました。新型コロナによる影響で失業した人たちの失業保険の利用が増えたこともあり、保険料が引き上げられた。これについてはさらに上がるかもしれないという声が出ている。国民年金も、現在は20歳から60歳まで40年間保険料を払えばよかったのが、65歳までへと5年延びることが議論されている。月1万6590円の保険料を5年払うとなれば、100万円の負担が増えます。介護保険も保険料が上がるという話が出てきて、お先真っ暗という感じですよね」(荻原氏)


 岸田氏は首相就任に先立って高度経済成長期になぞらえるような景気のいい「所得倍増」を唱えていたが、現実には賃金上昇を上回るスピードで物価上昇が続いている状況で、実質賃金は下がっている。そのうえ、給料から天引きされる税金や社会保険料がどんどんが上がっては手取りが減っていくばかりだ。たとえば、雇用保険の料率を見ると、2022年10月から一般事業の場合、0.3%が0.5%(労働者負担分)になっており、天引きなどの負担額が“倍近くに増える”のだ。荻原氏が続ける。

 「これでは所得倍増どころか税金や保険料の天引きばかり増えて『所得倍減』です。はっきりいって人災ですよ」

 所得が増えるどころか、減る分が倍になっていく──。これは「所得倍減」と言ったほうがしっくりくるようだ。総裁選や所信表明演説で使われた「令和版所得倍増計画」は、いつの間にか「資産所得倍増計画」へと変わり、NISA(少額投資非課税制度)の拡充などが打ち出されたが、“話が違う”と感じている人は、決して少なくないのではないか。(了)

【私の論評】今年のキーワードは「倍増」?
所得が倍なら納得!そうでなければ(゚д゚)!



上の記事は、マネーポストWEBから引用したものです、このWEB、他の大手新聞メディアと同じくマクロ経済など良く理解しない記者が書いているようなので、ほとんど読んだことはありません。

上の記事にでてくる、経済ジャーナリスト・荻原博子氏も普段話している内容などから、マクロ経済など理解していないようで、この方の発言も、あまり聴いたことはありません。

ただ、こういうメディアや経済ジャーナリスですら、今回の岸田首相の唐突な増税路線には、困惑しているようです。さすがに、防衛のためには、仕方ないというような論調にはならないようです。

マクロ経済への理解など抜きにしても、やはり岸田首相の増税路線は、唐突で異常と映るようです。

岸田総理はもう一度「所得倍増」を掲げるべきです。 結論からいうと、インフレ率を4%に引き上げれば「倍増」は不可能な目標ではありません。

所得を倍増させることは、実はそれほど難しい話ではありません。実質経済成長率は大体2%ぐらいありますから、インフレ率を4%ぐらいに引き上げれば、名目経済成長率が6%ぐらいになります。

名目経済成長率を7%は難しいですが、6%ぐらいなら手が届く範囲です。一人あたりの名目GDPは個人あたりの所得と近似できます。名目経済成長率が6%になると12~13年で倍になるので、個人あたりの所得も倍増ということになります。

これは、不可能な目標ではありません。これは、良いやり方だと思ったのですが、突然やめてしまいました。今年は、もう1回「所得倍増」と言ってもらえばよろしいと思います。

岸田首相は最近は、「資産所得倍増プラン」と言っています。所得倍増をやめて、前に「資産」と付けて「資産所得倍増」にしたのは、ずるいと思います。やはり、「所得倍増」でいくべきです。

多くの人は、「資産所得倍増」と言われても、そもそも手元にある程度資産がなければ倍増などできないと思ったでしょう。

ただ昨年は、ウクライナ情勢や安倍さんの事件の影響で国防意識が強くなり、防衛費を国内総生産(GDP)比1%から2%に増やそうとしています。こちらも倍増といえます。

しかし、また財務省が48兆円のところを43兆円ぐらいにしましたし防衛費の定義を膨らませたりもしましたから、本当に2%に届くのかなとは思います。

しかし、これは実質的に倍増させるべきです。さらに言うと、日本の周りには中露北と非民主国家が3つあります。「仮想敵国1つでGDP比1%」がいままでの相場だったので、3倍増にしてもいいのではないかと思います。

防衛3文書のなかに「反撃能力」という言葉がありました。反撃能力を持つとは簡単に言うと「抑止力」を持つということです。抑止力が何で成り立っているかと言うと、「倍返し」です。「やられたら倍返しするぞ」と言うと相手は攻撃してこなくなります。

防衛3文書に「倍返し」という意味で「反撃能力」と書いてあるのならば良いです。ただ反撃能力とすると、いろいろな制約があるらしく、「倍返し」などとは言えない部分があるらしいです。

しかし、直截にいえば「倍返し」で反撃能力は成り立っているのです。



倍というと、最近、日銀の金融政策決定会合があり、長期金利の許容変動幅を現状の±0.25%程度から±0.5%程度に拡大すると発表しました。これは、実質利上げであり、長期金利倍増で変動金利で住宅ローンを借りている人は、支払い金利が倍になります。

金利は上に張り付くのが普通ですから、現状0.25%これを±0.5%に上げて倍増です。固定金利で借りている人は、関係ありませんが、変動金利の人は、住宅ローンの支払い金利が今年から倍になるかも知れないです。

消費税は現在10%ですが、防衛費増額の財源 として、復興特別所得税の徴収 20年程度延長案検討をきっかけに15%まで上げて、最終的に20%にする可能性もあります。これも倍です。

岸田政権は、これを狙っているのです。嫌な話しです。負担を倍にするのであれば、「所得も倍にしてくれ」と考えるのが普通だと思います。その方がすっきりするはずです。所得が倍になれば、防衛費も簡単に倍にできます。

やはり、岸田首相は「所得倍増計画」の旗印をまた上げるべきです。岸田文雄・首相が率いる「宏池会」(岸田派)は、人数では 第4派閥に過ぎないですが、自民党の保守本流と呼ばれます。それを創設したのが、日本を「経済大国」へと押し上げた池田勇人・元総理大臣です。

池田勇人総理大臣(当時)

こうしたこともあり、宏池会では「所得倍増計画」を掲げていました。岸田首相は一昨年秋の自民党総裁選で、「中間層の拡大に向けて分配機能を強化し、所得を広げる。令和版の所得倍増をめざす」とぶち上げていました。

岸田総理は、出身派閥があげた「所得倍増計画」を取り下げてしまったのです。

今年は「倍増」がキーワードになりそうです。防衛費を倍増するのは無論のこと、岸田総理には「所得倍増計画」を再度掲げていただきたいのです。消費税倍増などで、所得倍減になるようなことは、多くの国民は納得しないでしょう。

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2023年1月1日日曜日

天皇陛下が新年にあたりご感想「希望を持って歩むことのできる年に」―【私の論評】日本の立憲主義の根本は、天皇と皇室のありかたがどうあるべきかから始まる(゚д゚)!

天皇陛下が新年にあたりご感想「希望を持って歩むことのできる年に」


 宮内庁は新年にあたり、皇室の新たな映像を公開するとともに「希望を持って歩むことのできる年となることを祈ります」との天皇陛下の感想を発表しました。

 天皇ご一家の映像には、お住まいの御所で今年の干支(えと)にちなんだ「うさぎ」の作品などをご覧になる様子が映されています。

 天皇陛下は新年にあたり感想を出し、「現在も世界各地で戦争や紛争が頻繁に起こり、多くの人々の命が失われていることに深い悲しみを覚えます。国際社会において、それぞれの立場の違いを乗り越えるべく対話を重ね、協力し合うことの大切さを強く感じます」「新しい年が、我が国と世界の人々にとって希望を持って歩むことのできる年となることを祈ります」などとつづられました。

 ご一家は1日、皇居・宮殿で「新年祝賀の儀」に臨まれますが、皇后さまや愛子さまら女性皇族は新型コロナウイルスの状況に鑑み、今年もティアラの着用を控えられます。

 上皇ご夫妻は1日、お住まいの仙洞御所で天皇ご一家らからあいさつを受けられます。また、2日は3年ぶりに行われる一般参賀で午前中に3回、皇居・宮殿のベランダに天皇ご一家らと立たれる予定です。

仙洞御所

 秋篠宮ご一家も未成年の悠仁さまを除き、新年祝賀の儀と一般参賀に出席されます。

【私の論評】日本の立憲主義の根本は、天皇と皇室のありかたがどうあるべきかから始まる(゚д゚)!


宮内庁は新年にあたり、天皇陛下の「新しい年が、我が国と世界の人々にとって希望を持って歩むことのできる年となることを祈ります」との感想を発表しました。以下が全文です。
昨年も地震や台風、大雪などの自然災害が各地で発生したほか、新型コロナウイルス感染症が引き続き社会に大きな影響を与えた年になりました。また、物価の高騰なども加わり、皆さんにはご苦労も多かったことと思います。

昨年は沖縄の本土復帰から50年という年でした。皇后とともに沖縄県を訪れ、沖縄戦で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、平和の大切さを改めて心に刻みました。現在も世界各地で戦争や紛争が頻繁に起こり、多くの人々の命が失われていることに深い悲しみを覚えます。

国際社会において、それぞれの立場の違いを乗り越えるべく対話を重ね、協力し合うことの大切さを強く感じます。昨秋、ほぼ3年ぶりに地方を訪問することができました。行く先々で多くの方に温かく迎えて頂いたことを、うれしく、またありがたく思っています。

大変なことも多いと思いますが、人々が、これからもお互いを思いやりながら支え合い、困難な状況を乗り越えていくことができるよう願っています。新しい年が、我が国と世界の人々にとって希望を持って歩むことのできる年となることを祈ります。
天皇ご一家は1日、皇居・宮殿で「新年祝賀の儀」(写真下)に臨まれました。


2日には一般参賀が3年ぶりに行われ、長女の愛子さまが初めて出席されます。

 君主制を廃止した国は、ことごとく不幸になっています。カンボジアしかり、アフガニスタンしかり。世界最古の立憲君主国である日本も、歴史的にみて皇室の存続と国家の安定とが深く結びついてきました。

 我が国において、立憲主義の根本は天皇です。天皇陛下がいて、皇室があって、一度も途切れることなく日本という国が続いてきました。

日本の立憲主義の根本は、天皇と皇室のありかたがどうあるべきかから始まります。

天皇弥栄。

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2022年12月31日土曜日

2022年読まれた上位10の記事

 今年読まれた上位10の記事

以下に今年読まれた記事の上位10の記事を掲載します。一番読まれた記事から順に掲載します。

1位 2021/06/01

「コロナウイルスは武漢研究所で人工的に変造された」英研究者らが法医学的学術論文発表へ―【私の論評】もしこれが事実であれば、賠償問題が再燃するのは確実(゚д゚)! 

いっときは、事実無根とされていましたが、現状では、疑惑は払拭できていないという状況です。もしこれが事実であれば、コロナ被害による賠償問題が再び再燃するのではないかと思います。中国としては、賠償問題に応じることはないでしょうが、世界中の国々が中国の資産をおさえるなどのことも考えられます。そうなると中国はかなり厳しい状況に追い込まれることになるかもしれません。 

2位 2022/01/02

ロシアのコロナ死者、公式発表の2倍超…最多の米に次ぐ65万人とロイター報道―【私の論評】今年は、マスコミに煽られて人生を諦めるようなことがあってはならない(゚д゚)!

モスクワ市内で新年を祝う人たち(1日)

 マスコミは、ロシアのコロナによる死者数を煽る一方で、ロシアのウクライナと侵攻も煽っていました。本当に、コロナで死者数が増えて、深刻な状態になっているのなら、ロシアはウクライナ侵攻どころではなかったはずです。こうした著しい矛盾にも気づかなかったのでしょうか。マスコミの姿勢は未だ変わらないようです。

3位  2022/10/06

日本をうまく利用した中国、台湾と尖閣も必ず狙ってくる 関係を見直す時期ではないか―【私の論評】ODA と超円高と中国の日本浸透を許すことで、中国を怪物に育てあげてきた日本(゚д゚)!

日本は、ODAで中国を助け、中国の軍事を含むインフラを発展させ、日銀の金融引締による円高で、今度は中国の経済を伸ばし、その後は「統一戦線工作」を封じなかったため技術移転などを促進させ中国が産業で自立するきっかけを与えました。これによって、日本は結果的に中国を怪物に育て上げてしまったのです。

4位  2022/10/07

ロシア、トルコに冬服注文断られる 「クレムリン現政権の失敗」―【私の論評】当初の戦争目的を果たせないプーチンは海外に逃避し、ガールフレンドと平穏な余生を送るべき(゚д゚)!

ブーチン(左)とその恋人とされるアリーナ・カバエワ

現時点では、プーチンは2024年に失脚するのは間違いないと考えられます。核戦争などするなどの愚かな真似はやめて、かなりの財産を国外にドルベースなどで逃避させてあるでしょうから、海外に逃亡して、ガールフレンドと平穏な余生を送るべきだと思います。ただ、もうそれが可能な時点は過ぎており、もう無理かもしれません。

5位  2022/02/01

バイデン政権をかき乱す文在寅の北朝鮮交渉―【私の論評】文在寅5年間の対北融和政策の失敗等で、北・韓国が派手に外交の表舞台にでてくることはなくなる(゚д゚)!

米国内や米国議会における超党派での反中世論の高まり、ウクライナ戦争、中間選挙においては、共和党旋風は起きなかったものの、民主党の勝利とはいえず、2024年の大統領選挙向けての劣勢挽回のためにも、バイデン政権は中国に対する融和策を取ったり、大きな失敗はできません。北朝鮮や韓国の撹乱等を真に受けている暇などありません。

6位 2022/11/28

中国「台湾侵攻」の“大嘘”…! 日本で報じられない「米軍トップ」の“意外すぎる発言”の中身と、日本人の“低すぎる防衛意識”…!―【私の論評】少し調べれば、中国が台湾に侵攻するのはかなり難しいことがすぐわかる(゚д゚)!

台湾の東海岸

少し、台湾の地理や軍事力を調べてみれば、中国が台湾に侵攻するのは、やさしいことではないことが良く理解できます。そもそも、破壊力≒軍事力ではないのです。中国にとって、台湾をただ破壊するだけなら、さほど難しいことはないですが、侵攻して占拠するとなると全く別次元の話になります。なんでも、マスコミ報道だけを鵜呑みにしていれば、間違った判断をすることになります。

7位 

2022/01/04
世界「10大リスク」1位は中国の「ゼロコロナ政策」失敗…各国の政情不安定化も―【私の論評】今年最大の地政学的リスクは、中国の対外関係ではなく国内問題(゚д゚)!

今年も、さまざまリスク予想されていましたが、ユーラシア・グループの予測では、今年最大の地政学的リスクは、中国の国内問題であるゼロコロナ政策の失敗とされていました。この予測は、なかなか的中しないようにもみえましたが、年末になってはっきりしました。来年4月あたりには、中国は、やがて米国のGDPを追い抜くとされていたような国とは、程遠い国となっていることでしょう。 

 8位 2022/11/01

この時期に消費増税論 財務省に影響「ザイム真理教」は経済カルトか 国民生活の立て直しが最優先も―【私の論評】7つの嘘で政府・国民・マスコミを欺き続けるカルト集団財務真理教団(゚д゚)!

財務真理教の 塗り固められた嘘は以下の7つに分類することができます。 

①「財政を家計にたとえると」の嘘
②「国の借金」の嘘
③「借金1000兆円」の嘘
④「国債は後世へのつけ回し」の嘘
⑤「消費増税しかない」の嘘
⑥「健全財政が正しい」の嘘
⑦「このままでは財政は破綻する」の嘘

 9 2022/03/07

プーチンとナルイシキン(手前)

 プーチン大統領は、迅速な勝利の約束を果たせなかったこと、ロシアに深刻な損害を与え、その軍隊に恥をかかせた非難に対する弁明もできなくなり、侵攻前にウクライナとの対話を提案していたロシアのセルゲイ・ナルイシキン対外情報局長官が台頭することになるかもしれません。ただ、現状はまだ流動的で誰が、ポストプーチンとなるかはまだはっきり見えません。

 10 

ロシアは「長期的な敗戦」の可能性が高い―【私の論評】最終的にプーチンは失脚か、地位の禅譲のいずれしかなくなる(゚д゚)!

今後数年のスパンで物事を考えれば、最終的にはプーチン氏は失脚するか、そうでなければ、プーチン大統領自身による体制転換ということにならざるを得ないでしょう。そうして体制転換により、誰かに自らの地位を禅譲するしかなくなるでしょう。その際にどの程度まで、院政をできるようにするかが、プーチンの課題となるでしょう。

今年、読まれた記事は、コロナ関連と、ロシアのウクライナ侵攻と、台湾危機などでした。例年ならこのあたりで終わりにするところですが、もう一つおそらく生涯忘れられない出来事がありました。このブログに掲載したうち、最もショッキングだった記事は、やはり以下の記事です。

安倍晋三元首相が死亡 街頭演説中に銃撃―【私の論評】政権の支持率を落としても、安保法制を改正し、憲政史上最長の総理大臣となった安倍晋三氏逝く(゚д゚)!


このようなことが、自分が生きているうちに起こるとは、考えもしませんでした。この事件、風化させるべきではありません。

マスコミの印象操作や、野党の全くくだらないものの執拗な「もりかけ桜」追求などで、間違った考えを持った人も一部いるのでしょうが、安倍元総理の実体はとてつもない人気ものだったのではないでしょうか。そうでなければ、憲政史上最長の総理大臣になるはずがありません。改めて、安倍元総理のご冥福をお祈りさせていただきます。合掌。

本年も当ブログをご購読いただき有難うございます。良いお年をお迎えください。

2022年12月30日金曜日

プーチンが「戦争」を初めて認めた理由―【私の論評】戦争・コロナで弱体化する中露が強く結びつけは、和平は遠のく(゚д゚)!

プーチンが「戦争」を初めて認めた理由

古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

ロシア軍へ向けて砲撃を行うウクライナ軍兵士=24日、ウクライナ・バフムート近郊


【まとめ】

・プーチン大統領がウクライナでのロシア軍の侵攻を初めて「戦争」と呼んだ。

・この表現の変更で、停戦を視野に入れる方向に傾いたとの見方も生んでいる。

・バイデン政権は、プーチンが現実を認める次の段階として、軍の撤退及び終戦を求めると表明。


 ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵略を初めて「戦争」と呼んだ。これまでは一貫して「特別軍事作戦」と呼び続けていたのだ。この言葉上の変化にどんな意味があるのだろうか。

 アメリカ側ではさまざまな読み方があるが、バイデン政権は公式には「呼称をどう変えても侵略戦争はあくまで侵略戦争」として、厳しい態度を変えていない。

だがプーチン大統領の表現の変更はウクライナでの戦闘が同大統領にとってこれまでよりも深刻さを増して、停戦を視野に入れる方向に傾いたとの見方も生んでいる

 プーチン大統領は12月22日のモスクワのクレムリンでの記者会見でウクライナでの軍事行動について「われわれの目標はこの軍事衝突を弾みを増す車輪のように回転させることとは正反対に、この戦争を終わらせることだ。そのためにわれわれは努力している」と語った。

 この言明でプーチン大統領がウクライナでのロシア軍の侵攻を公式発言としては初めて「戦争」と呼んだこととなり、幅広い関心を集めた。

 プーチン大統領はウクライナへの軍事侵攻を始めた2022年2月24日の冒頭からこの軍事行動を「特別軍事作戦」と呼び、その動きを「北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大に対する防衛的行動とウクライナのナチス勢力からロシア民族系住民を解放する努力だ」と宣言してきた。

 プーチン大統領とプーチン政権はウクライナでの自国の軍事行動に対してあくまで特別な作戦だと言明し、ロシア国内でこの「作戦」を「戦争」と呼ぶことをも新たな法律や条令で事実上、禁止してきた。プーチン政権に反対する野党側の国会議員がウクライナ侵攻を「戦争」と呼んで非難したことに対して同政権は逮捕して、懲役刑に処すという厳しい態度さえとってきた。

 プーチン政権としてはロシア国民にウクライナへの軍事侵攻はロシアの国家や国民の全体を巻き込む戦争では決してなく、限界的、一時的な特殊の軍事作戦だと印象を与えるために「戦争」という呼称を禁じてきたとされる。

 だがプーチン大統領自身がその禁句だったはずの「戦争」という言葉を公式の場で使ったのである。

 しかしこの新たな動きに対してアメリカのバイデン政権は冷淡な対応をみせただけだった。アメリカ国務省報道官は次のような声明を発表した。

 「今年2月24日以来、アメリカと全世界の多数の諸国はプーチンの『特別軍事作戦』というのはウクライナに対する一方的で不当な戦争であることをよく知ってきた。その300日も後にプーチンはついにその戦争が戦争であると認めたのだ」


 「アメリカは、プーチンが現実を認める次の段階としてウクライナからロシア軍を撤退させ、この戦争を終わらせることを求める

「プーチンの言葉の選択にかかわらず、ロシアの隣接した主権国家への侵略は多くの死、破壊、混迷を引き起こした」

「ウクライナ国民はプーチンの言葉の上での自明の表明になんの慰めも感じないだろう。プ―チンの戦争のために身内の人間を失った何万ものロシア人の家族たちも同じだろう」

以上のようなアメリカ政府の態度はこれまでも一貫してきた。バイデン政権が共和党側の支持をも得て、プーチン政権のウクライナ侵略を全面的に糾弾し、その中止をロシアに求める一方、ウクライナへの軍事支援を絶やさないという対応を保ってきたのだ。その大前提にはロシアの軍事行動の結果、ウクライナ領内で起きている事態は戦争だとする認識があった。

 だがプーチン大統領はその軍事行動を戦争とは認めず、長い期間、ロシア国内でも「戦争」を禁句とし、徹底抗戦の構えを崩さなかった。ところが侵攻開始から約300日という時点にきて、やっと戦争を戦争だと認めることに踏みきったわけだ。

 そのプーチン大統領の態度の変化についてワシントン・ポストなどの主要メディアはアメリカ側の複数の専門家たちの見解として

(1)プーチン大統領はこれまではウクライナを対等の主権国家とみなさないという前提を保ち、「戦争」という用語を使わなかったが、戦場での苦境を考慮すると、停戦への柔軟な余地を残すことが有益だと判断するようになった。

(2)国際世論のさらなる反ロシア化に対して、ある程度の譲歩を示すことが賢明だと考えるようになった。

(3)ロシア国内での国民に対する軍隊への動員令の拡大の必要性を考えると、ロシア自体がいま戦争状態にあることを明示するほうが現実的だと判断するようになった――ことなどをその理由としてあげていた。

【私の論評】戦争・コロナで弱体化する中露が強く結びつけは、和平は遠のく(゚д゚)!

プーチンは22日、ロシアはウクライナでの戦争の終結を望んでいるとし、全ての武力紛争は外交交渉で終結すると述べました。
プーチン氏は記者団に対し「われわれの目標は軍事衝突を継続することではない。逆に、この戦争を終わらせることを目標としている。この目標に向け努力しており、今後も努力を続ける」とし、「これを終わらせるために努力する。当然、早ければ早いほど望ましい」と語りました。

その上で「これまでに何度も言っているが、敵対行為の激化は不当な損失をもたらす」と指摘。「全ての武力紛争は何らかの外交交渉によって終結する」とし、「遅かれ早かれ、紛争状態にある当事者は交渉の席について合意する。ロシアに敵対する者がこうしたことを早く認識するのが望ましい。ロシアは決して諦めていない」と述べました。

米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官はオンライン形式の記者会見で、プーチン大統領は「交渉の意図があることを全く示していない」と指摘。「全く逆だ。プーチン氏が行っていることは全て、戦争をエスカレートさせる意向を示している」と述べました。

その上で、バイデン米大統領はプーチン大統領との会談を排除していないが、プーチン氏が交渉に真剣な姿勢を示し、ウクライナのほか同盟各国と協議した後のみに実現するとの見方を示しました。

ロシアはこれまでも交渉に応じる姿勢を示し、交渉を拒否しているのはウクライナだと主張。これに対しウクライナや米国などは、ロシアは戦況が思わしくないことから時間稼ぎをしようとしているのではないかと懐疑的な見方を示しています。

ウクライナのゼレンスキー氏は21日に訪米し、ホワイトハウスでバイデン大統領と会談した後、議会で演説。米政府はゼレンスキー氏の訪問にあわせ、ウクライナに対し広域防空用地対空ミサイルシステム「パトリオット」を含む18億5000万ドルの追加軍事支援を行うと発表しました。

プーチン大統領は米国が「パトリオット」供与を決めたことについて、パトリオットは「かなり古いシステム」で、ロシアの地対空ミサイルシステム「S300」のようには機能しないとし、ロシアは対抗できるとの見方を示しました。

また、ロシアの戦費調達能力を制限することを目的とした西側諸国によるロシア産石油の価格上限設定がロシア経済に打撃を与えることはないと強調。その上で、来週初めにロシアの対応を打ち出すための法令に署名すると述べました。

ドイツのシュタインマイヤー大統領は12月20日、中国の習近平国家主席と電話会談を行い、ウクライナ戦争を終結させるためロシアのプーチン大統領に対して影響力を行使するよう要請しました。

シュタンマイヤー独大統領

同会談で、シュタインマイヤー大統領はロシア軍がウクライナから撤退することは中国と欧州の共通の利益と強調したといいます。ドイツのショルツ首相が11月上旬に中国を訪問して習氏と会談した際、習氏はウクライナでの核兵器使用に明確に反対する意思を示しており、今回の電話会談もその延長線上にあり、ドイツとしてプーチン大統領と関係を保つ習氏に要請するという極めて現実的な路線を取ったといえます

仮に、習氏がプーチン大統領を説得し、同大統領をバイデン大統領やゼレンスキー大統領が待つ対話のテーブルに座らせ、ウクライナからロシア軍が撤退し、和平への兆しを主導したならば、習国家主席はノーベル平和賞ものでしょう。しかし、これについては3つのシナリオがあると考えらます。

1つは、社会主義による現代化により中国の強化を目指す習氏としては、対外的影響力を確保・拡大させるために諸外国からの評価、信頼を獲得するというシナリオです。特に、欧米との対立が激しくなるなか、習氏としてはできるだけ多くの欧米諸国と摩擦を最小化しておきたいのです。

そこで、戦争終結や和平で一役を買えば、欧米だけでなく途上国からも一定の信頼、評価を得らえられます。ロシアがウクライナに侵攻することによる中国にはメリットはほぼ皆無です。習がプーチン大統領と遠からず近からずのポジションを維持している背景には、“ウクライナ侵攻を黙認する中国”というイメージが国際社会で浸透することを回避したいという本音があります。

もう1つは、和平どころか、プーチン大統領の説得にも動かず、現在のポジションを維持するというシナリオです。習には、国内経済の勢いが低下し、反ゼロコロナなど反政権的な動向もみられ、米中対立や台湾問題など課題が山積するなか、ウクライナ問題で時間を割かれたくない、首を突っ込みたくないという想いがあると考えられます。

仮に、説得に乗り出したものの、プーチン大統領がそれを拒否すれば、中ロ関係の冷え込みに繋がる可能性すらあります。習氏も侵攻を決断したプーチン大統領を良く思わない部分もあるでしょうが、対米国という文脈でロシアが戦略的共闘パートナーであることは間違いなく、その部分で中ロ関係を悪化させたくないという本音もあるでしょう。

また、説得に失敗すれば、これまで積み上げた中国のイメージ低下に繋がる可能性もあります。欧米やグローバルサウスの中からは、“所詮、中国の国力はこんなものだ”、“3期目となっても習氏の外交交渉力は大したことない”という声が増えてくることも考えられます。米国にとってはむしろ歓迎という考えもあろうが、習氏にはそういった警戒感もあるでしょう。

以上が、中国がゼロコロナ前までのシナリオですが、もう一つのシナリオも見えてきました。

それは、中国がゼロコロナ政策をやめた後の変化によるシナリオです。

プーチンと 習近平は30日、オンライン形式で会談しました。露大統領府によると、プーチン氏は会談の冒頭、習氏に訪露を招請し、来春のモスクワ訪問に向けて準備していることを明らかにしました。ウクライナ侵略後の米欧からの圧力に対し、中露の軍事協力の拡大で対抗する姿勢も強調しました。

30日、モスクワで、中国の習国家主席(左)とオンライン形式で会談するプーチン露大統領

両首脳による会談は、9月15日に中央アジア・ウズベキスタンのサマルカンドで行った対面会談以来です。プーチン氏は習氏の訪露について、「(中露の)強固な関係を世界中に誇示することになる」と述べました。

習氏の訪露が実現すれば、2019年6月に露西部サンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムに出席して以来となります。2月のウクライナ侵略以降、米欧との対立が先鋭化しているプーチンにとって大きな外交成果となります。

習は露側が公開した冒頭のやり取りで、「ロシアとの戦略的な協力を増大する用意がある」と表明しました。訪露には言及しませんでした。

プーチン氏は、中国との軍事協力に関し、中露関係全体で「特別な地位を占めている」と重要性を強調し、「我々はロシアと中国軍の協力強化を目指す」と語りました。ウクライナ侵略が長期化する中、中国軍との緊密な関係を誇示し、ウクライナを支援する米欧をけん制する意図があるとみらます。

プーチン氏と習氏は、中露間の貿易が記録的な水準で伸びていることを互いに指摘し、エネルギー分野を中心に連携を深める方針も確認しました。

今回の両首脳による会談は、露側が再三日程に言及するなど意欲的な姿勢が目立った。先進7か国(G7)と欧州連合(EU)が今月、海上輸送する露産原油の取引価格に上限を設定する追加制裁を発動しており、プーチン氏は年内に中国との緊密な関係を確認しておきたかったものとみられます

習の訪露が実現すれば、習にとってプーチンを説得できる、絶好の機会となります。ただ、来春というと、英医療調査会社エアフィニティーは29日、新型コロナウイルス感染者が急増する中国の死者について「来年4月末までに170万人に達する恐れがある」と警告しています。米ジョンズ・ホプキンス大の集計では、コロナによる世界の死者数は約669万人。同社の推計が正しければ、中国だけで一気に死者数が膨らみそうです。

来年の4月頃には、このブログにも以前掲載したとおり、サマーズ氏が予告したように、中国は国内生産(GDP)で米国を追い越すと言われていた国とは思えないような国になっているでしょう。その頃には、中国の最大の課題はコロナ禍からの回復に絞られているはずです。

プーチンはこのことも理解していると思われます。にもかかわらす、来春に習の訪露を招請するのでしょうか。

コロナで弱りきった中国は、西側諸国のように同盟国は存在せず、しかも現状では西側諸国と対立しており、コロナ復興は自力で行わなければなりません。コロナ前の中国なら、先あげた二番目のシナリオで、和平どころか、プーチン大統領の説得にも動かず、現在のポジションを維持をする公算が高かったと考えられます。

しかし、弱りきった中国なら、ロシアにかなり接近してくる可能性は高まるでしょう。特に、エネルギーや食料に関しては、中国はロシアにかなり頼れそうです。ロシア側とすれば、中国に武器に関しては頼れそうです。両者の利益が合致して、なりふり構わず、両者のパートナーシップは強まり、同盟関係に近くなるかもしれません。

ロシアとしては、ソ連の軍事技術を引き継いでいますから、中国に対してはこれからも、軍事技術を供与しつつ、中国に武器を製造させこれを輸入し、ロシアは中国に対してエネルギーと食料を輸出するということで、互いに密接に助け合うという構図が成立するかもしれません。

習氏に訪露を招請した、プーチンの腹にはこうした思惑があると考えられます。そうであれば、プーチンの「戦争を終わらせる」という発言は単なる時間稼ぎかもしれません。

中露関係が、パートナーシップから同盟関係に近いものになれば、ロシアはウクライナでの戦争をこれからも、安定して続けられるかもしれません。そうなれば、和平は遠のくでしょう。

西側諸国は、こうしたことを防ぐために、中露に何らかの形で楔を打ち込む必要がでてくるかもしれません。

皆様、今年も当ブログをご訪問していただき誠に有りがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。よいお年をお迎えください。明日は、ブログを書くことができるかわからないので、念のためのご挨拶です。


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