2024年1月31日水曜日

「北方領土への日本の感情 何とも思わない」 露メドベージェフ氏、岸田首相演説に反発―【私の論評】メドベージェフの日本人侮辱発言を受け、プーチン政権の牽制に向けて日本はどう対応すべきか

「北方領土への日本の感情 何とも思わない」 露メドベージェフ氏、岸田首相演説に反発

まとめ
  • メドベージェフ氏は、岸田首相の北方領土問題の解決後に日露平和条約を結ぶ方針に反発し、北方領土はロシア領であり、領土問題は既に存在しないと主張した。
  • メドベージェフ氏は、さらに「つらい思いをしたサムライは日本の伝統的なやり方で命を絶つのがよい。切腹するのだ」と発言した。
メドベージェフ氏

 ロシアのメドベージェフ国家安全保障会議副議長は30日、岸田文雄首相が施政方針演説で対露制裁の維持や北方領土問題の解決後に日露平和条約を結ぶ方針を堅持する姿勢を示したことに対し、「いわゆる『北方領土』は協議対象の土地ではなく、ロシア領だ」「われわれは日本人の『北方領土に対する感情』など何とも思わない」などと交流サイト(SNS)に投稿し、反発した。

 メドベージェフ氏は平和条約締結の条件として、領土問題は既に存在せず、ロシアが新兵器配備を含むクリール諸島(北方領土と千島列島の露側呼称)の開発を進めていることを日本側が理解することが必要だと主張した。

 その上で「つらい思いをしたサムライは日本の伝統的なやり方で命を絶つのがよい。切腹するのだ」などとも言い放った。

【私の論評】メドベージェフの日本人侮辱発言を受け、プーチン政権の牽制に向けて日本はどう対応すべきか

まとめ
  • メドベージェフの発言は日本国民の感情を傷つける挑発的な内容である
  • ロシアはウクライナ侵攻で北方領土の守備が手薄となり、日本の優勢を懸念している可能性がある
  • 日本は安保関係の強化、軍事力増強、ロシアへの対抗、国際的圧力の結集、価値観の強調などの対応が必要
  • ロシアの経済力は日本の約3分の1にすぎず、日本の軍事費倍増はロシアにとって脅威となる
  • メドベージェフの発言はその牽制の可能性もあるが、日本は正しい立場に基づきロシアに対峙すべき
  • 岸田首相は米国訪問時、ロシアへの牽制策を主張するリーダーシップの機会とすべき

アンドレイ・ナザレンコ氏

ウクライナのハルキウ出身の政治評論家、外交評論家、著作家、元英語教師、国際貿易従事者。日本のナショナリスト団体である日本会議、およびウクライナのナショナリスト政党である国民軍団の活動にも参画しているアンドリー・イーホロヴィチ・ナザレンコ氏は、メドベージェフの発言について以下のように発言しています。
メドベージェフ氏のツイートは、非常に挑発的な内容であり、日本国民の感情を傷つけるものであると言えます。

しかし、なぜこのような発言をするのか、それには裏がありそうです。

現在ロシアは現在ウクライ侵攻をしており、北方領土にある軍隊や兵器をウクライナに移動しており、この地域の守備がかなり手薄になっています。その結果として、日本がこの地域で優勢になりつつあることをかなり懸念しているのではないかということです。

日本は以下のようなことを実行すべきです。

1.安全保障関係を強化し、情報面で緊密に協力し、アメリカやインド、オーストラリアなどの同盟国と頻繁に合同軍事演習を行うべきです。

2. 日本の軍事力を増強し、柔軟にすべきです。防衛費を大幅に増やし、ミサイル防衛や新たな海・空軍施設を配備し、オホーツク海などでの軍事演習を通じて強さのメッセージを発信する。日本が強くなればなるほど、ロシアは挑発する勇気をなくすでしょう。

3. ロシアの秘密戦術に積極的に対抗すべきです。ロシアのプロパガンダを弱体化させ、インフラを守り、ハッキングやサイバー作戦で対抗すべきです。防衛だけでなく攻撃も行うべきです。日本はまた、いかなる攻撃に対しても公に責任を負わせ、ロシアにコストを課すべきです。

4. 協調的な国際的圧力を結集すべぎてす。民主主義諸国と協力してさらにロシアを外交的に孤立させ、主要なオリガルヒ/産業をグローバル金融から切り離す制裁を課し、ロシアの侵略と帝国主義に対して統一的な動きをすべきです。

5. 長期的な繁栄と価値に焦点を合わせるべきです。ロシアに対抗する一方で、日本は経済成長、社会的結束の維持、次世代の民主的価値観の育成を見失うべきではありません。ソフトパワーと道徳的権威が鍵となるでしょう。

6. 民主主義モデルと権威主義モデルのギャップを強調すべきです。開かれた、公正で繁栄した同盟国として繁栄することで、日本はロシア市民と世界に、それに比べてプーチンの権威主義体制の弱さを示すべきです。あらゆる場面で民主主義と自由を推進すべきです。

日本は、同盟関係を強化し、軍事力を強化し、あらゆる分野でロシアに対抗し、同盟国との協調行動を結集し、繁栄と価値観の基本に焦点を当て、統治モデル間の格差を広げるようにすべきです。

クレムリン

日本は、もはや弱小国に陥りかけているロシアを抑止するために強者の立場から、緊張も挑発も避けるべきではありますが、その目的はロシアの帝国的野心に挑戦することであり、単に開戦を回避することではないことを自覚すべきです。

ロシアが今も大国であるとの認識は大間違いです。2023年のIMF(国際通貨基金)の推計によると、ロシアのGDPは1.7兆ドル、日本のGDPは5.1兆ドルです。したがって、ロシアのGDPは日本の約33%です。

一人当たりGDPでは、ロシアは2023年で1万ドル、日本は4万ドルです。したがって、ロシアの一人当たりGDPは日本の約25%です。

つまり、ロシアのGDPは日本の約3分の1、一人当たりGDPは日本の約4分の1ということになります。この経済力で、あれだけ広大な地域を守備しなければならないのです。しかも、守備といった場合、広大な国境を持つロシア連邦は外国からの侵入から守るだけではなく、多民族国家であるロシア連邦内の他民族の造反からロシア人を守らなければならないという宿命も負っています。

一昔前は、領土が大きいほうが、軍事的にも経済的にも強国であることの証となりましたが、現在のロシアは、領土が広大すぎることが軍事的にも経済的に足かせになっています。

日本が軍事費を倍増すると、2023年のSIPRIの調査によれば、日本の軍事費は約920億ドルとなります。これは、現状のロシアの軍事費(863億ドル)を上回ることになります。無論単純比較はできず、ロシアは、旧ソ連の核や軍事技術を継承する国であり、決して侮ることはできません。

しかし、ロシアに対する日本の抑止力は大きく高まります。また、米国との同盟関係に基づき、日本と米国の連合軍の軍事力は、世界でもトップクラスに位置づけられることになります。

なお、ロシアのGDPは、現状では落ち込んではいませんが、それは戦争、特に総力戦に入った国家にはよく見られることであり、兵器等の軍事物資の生産などがGDPに反映されるためです。しかし、ロシア経済はあいかわらず、インフレ傾向です。経済制裁の影響で引き続き実質経済は低迷する見通しです。ロシアにとってこれは、日本の軍事費倍増は、大きな脅威です。これに対する牽制が上のメドベージェフによる発言である可能性もあります。

このような状況であるにもかかわらず、メドベージェフなどの脅しに屈して、開戦を回避するためだけに、ロシアに過度に譲歩したり宥和的に接すれば、プーチンに日米や同盟国の免罪符を得たと勘違いさせるだけです。

日本と同盟国は、正しい立場(人を殺すべきではないという倫理的立場)にあるからこそ、ロシアのウクライナ侵攻を非難し、さらなる経済制裁を科すべきです。


このブログでは、昨日岸田首相が、今年の4月に訪米した際に、日本や他の同盟国が米国の対イラン政策に期待する立場を声高に具体的に主張することで、リーダーシップを発揮する機会を得ることになるとしました。

岸田首相は、米国訪問時にバイデンに対して、ロシアに対する牽制も声高に具体的に主張していただきたいものです。

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2024年1月30日火曜日

バイデン大統領に高まる圧力、米兵死亡でイランとの対決求める動き―【私の論評】イランの脅威に立ち向かうため、岸田首相は4月の訪米時にバイデン大統領に強硬策を訴えよ

 バイデン大統領に高まる圧力、米兵死亡でイランとの対決求める動き

まとめ

  • 米国がこれまでに比べ強い対応を余儀なくされるのは明白-関係者
  • 大統領が回避したい考えを示していた地域的な紛争拡大のリスクも
米軍基地への無人機攻撃で亡くなった3人の米兵


 イランが支援する武装グループによるヨルダンの米軍基地への無人機攻撃で米兵3人が死亡したことを受け、バイデン大統領は報復を検討している。

 米政府関係者によると、バイデン大統領は、攻撃を実行した武装グループを罰し、地域でのイランの行動を抑止したい考えだ。しかし、その一方で、イランの指導部と直接対決するリスクも懸念している。

 バイデン大統領は、隠密作戦による攻撃や、トランプ前大統領が行ったソレイマニ司令官殺害のような直接的な報復など、さまざまな選択肢を検討している。

 また、バイデン大統領は、さらなる経済的混乱につながる可能性についても考慮する必要がある。フーシ派による商船攻撃を受け、原油価格が上昇するなど、地域の経済情勢は不安定化している。

 米国家情報会議(NIC)の元高官であるパニコフ氏は、バイデン政権は「今回のような出来事の再発を防ぐため、強力に対応する一方で、紛争をエスカレートさせないよう、非常に繊細に取り組まなければならないだろう」と指摘した。

 バイデン大統領がどのような判断を下すのか、今後の動向が注目される。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】イランの脅威に立ち向かうため、岸田首相は4月の訪米時にバイデン大統領に強硬策を訴えよ

まとめ

  • イランは「抵抗の枢軸」と呼ばれる反米同盟を形成
  • バイデン政権はイランへの報復を検討中だが弱腰
  • イランの軍事施設への空爆、制裁強化、同盟国支援など強硬策が必要
  • 長期的な紛争が予想され、イランの核開発を阻止するには断固たる対応が不可欠
  • 岸田首相は4月の米国訪問で、対イラン強硬姿勢を訴えるべき

イランと、イランが支援する武装グループは「抵抗の枢軸」を形成しています。これは、イラン、シリア、レバノンのヒズボラ、パレスチナのハマスなど、中東におけるならず者国家とテロリスト集団の反欧米同盟を指します。これらの過激勢力はイスラエルと米国に反対し、過激なシーア派イスラム主義イデオロギーを広めようとしています。

バイデン大統領はこの「抵抗の枢軸」に関して、報復を検討しているわけです。ただ、抵抗の枢軸に対して報復をすれば、イランとの直接対決になるのではないかと懸念しているわけです。

バイデン政権

バイデンは、アフガン撤退での大失敗しましたし、ロシアのウクライナ侵攻前にあらかじめ軍事介入しないと表明したことは、ロシアに対する事実上の「侵攻許可」となってしまいしまた。

これらは、過去の米国の伝統的な政策とは大きく異なります。

これらを踏まえると、バイデン大統領が今回も判断を誤る可能性は否定しきれません。

抵抗の枢軸に対して米国は、基地、武器庫、ミサイル基地など、イランの軍事目標に対して外科的空爆を行うべきでしょう。これは、我々が米軍への攻撃を容認しないことを示し、彼らの能力に損害を与えるものです。

イランへの制裁と外交圧力を強化し、さらに経済を圧迫すべきです。イランの石油輸出と国際金融へのアクセスをさらに制裁すべきです。同盟国を結集し、政権への圧力に参加させるべきです。

イスラエルが防衛を強化し、ヒズボラのようなイランの代理勢力に対抗できるよう、軍事援助とアドバイザーを提供すべきです。イスラエルはイランの侵略に対抗する最前線にいるため、彼らを強化することは米国の利益につながります。

サウジアラビアやアラブ首長国連邦のような穏健なスンニ派アラブ諸国への支援を強化すべきです。イランの影響力に対抗し、軍事力を強化する手助けをする。敵の敵は味方なのです。

イランの核開発と兵器開発を妨害するための秘密作戦を展開すべきです。サイバー攻撃、主要科学者の暗殺、施設の破壊工作を行うべきでしょう。イランの核兵器と長距離ミサイルの開発を遅らせるのです。

イラン革命防衛隊を外国のテロ組織として指定すべきです。これにより、イラン革命防衛隊は世界金融から遮断されるとともに、イラン革命防衛隊に対する軍事行動が正当化されることになります。イラン革命防衛隊は、米軍を攻撃する代理勢力を支援しています。

制裁を解体する一方で欠陥だらけのイラン核合意から離脱すべきでしょう。イランのミサイル計画、代理勢力、地域的侵略にも対処する、より強力な協定を再交渉すべきです。現金のバラマキはすべきでないです。


イランの侵略を抑止するため、中東における米軍のプレゼンスを維持すべきです。空母群、爆撃機部隊、部隊、基地を中東全域に維持すべきです。このような大胆でタカ派的な行動こそが、"抵抗の枢軸 "に対抗するために必要です。

バイデン大統領はこのようなアプローチをとるのが賢明でしょうが、彼がこの指針に従うとは到底思えないです。残念なことに、イランと断固として対決する指導者が現れるまで、米国は脅威にさらされ続けるでしょう。

イランが資金を供給し、「抵抗の枢軸」武装し続ける限り、彼らはこの地域における米国の利益を脅かし続けるでしょう。そうして、バイデン政権が彼らと対決することに弱腰を見せる限り、彼らの攻撃性は持続し、時間の経過とともにエスカレートしていくでしょう。

ロシアのウクライナ侵攻のように、イランとその代理人との紛争は、いくつかの要因によって何年も長引く可能性があります。

イランに対抗する米軍の厳しく持続的な戦略的行動がなければ、イランは引き下がる動機がありません。イランは、代理攻撃や影響力を通じて、時間をかけて米国の力を削ぐことができます。

イランは過激なシーア派イスラム革命を中東全域に広げようとしています。現政権が続く限り、彼らは権力と領土を奪い続けるでしょう。

イラン核合意やその他の合意には抜け穴があり、イランが彼らの政策を進めることを許しています。真に歯応えのある新たな協定が必要です。

イランは、シリアのような他のならず者政権、ヒズボラのような過激派組織、イラクの民兵組織などと同盟関係を維持しています。このネットワークを根絶するには、何年にもわたる大規模な協調努力が必要です。

イランは直接的な衝突を避けるため、代理人を通じて戦争を行うことを好んでいるようです。イランは汚い仕事をする集団に武装させ、資金を提供し続けるため、常に警戒が必要です。

イランが核兵器と長距離ミサイルを追求することは危険な脅威であり、それを阻止するためには先制的な軍事行動が必要になるかもしれなです。

この紛争はウクライナ情勢のように今後何年も続く可能性があるということです。イランの強硬派政権が権力を握り、侵略を意図している限り、米国と同盟国は、彼らの影響力に対抗し、同盟国の利益を促進するために断固とした態度で臨む必要があります。流れを決定的に変えるには、決意と、おそらくは直接対決が必要です。バイデン政権がその任務を果たしてくれることを願うが、またしても私は疑念を抱いています。

日本は緊密な同盟国として、中東の安定とイランのような脅威に対抗することに米国と利害関係があります。岸田首相は、4月に国賓待遇で米国を訪問する予定になっています。バイデン大統領との面会を通じて、これらの重要な問題に対する強い姿勢を表明すべきです。


岸田首相が伝えるべき重要なポイントをいくつか挙げます。

イランの侵略と核兵器開発への懸念を表明するべきです。核武装したイランは世界の安全保障と安定を脅かします。岸田外相はバイデン大統領に対し、強硬姿勢で臨み、欠陥だらけのイランとの取引から離脱し、必要であれば軍事行動も検討するよう促すべきです。

イランの政権に対する制裁と圧力の強化を求めるべきです。特にイランの石油輸出と金融へのアクセスに対する追加制裁は、テロリストの代理人への資金提供や核開発を弱めるのに役立つことになります。日本は協調制裁に参加することを約束すべきです。

米国はこれに呼応し、「抵抗の枢軸」に立ち向かうことを宣言すべきです。これには、ヒズボラのようなグループによる攻撃に力強く対応すること、IRGC(イラン革命防衛隊)をテロリストとして指定すること、イラクとシリアにおけるイランの影響力を押し返すことが含まれます。日米の同盟国もまた、これに呼応すべきです。

米国に対し、この地域の同盟国との軍事協力を強化するよう要請すへきです。イスラエル、サウジアラビア、アラブ首長国連邦などとの協力関係を緊密にすることで、イランに対する防衛力を強化することができます。日本は地域の安定に依存しており、同盟国を支援することは脅威の抑止につながります。

米国が強力な軍事的プレゼンスを維持することを求めるべきです。中東に空母、爆撃機部隊、軍隊、基地を維持することは、イランの侵略を抑止することになります。撤退は力の空白を生み、イランはそれを埋めようと躍起になるでしょう。

日本の軍事的役割は限られていますが、外交的支援を提供し、制裁に加わり、情報を共有し、場合によってはパトロールを拡大することができます。同盟国の協力は少しでも米国の助けになるでしょう。

ヨーロッパ、アジア、中東の同盟国を結集し、共同でイランに対抗することが最も効果的なアプローチになることでしょう。日本や他の国々は、この脅威に立ち向かうことに利害関係があります。

岸田首相は、日本や他の同盟国が米国の対イラン政策に期待する立場を声高に具体的に主張することで、リーダーシップを発揮する機会を得ることになるでしょう。同盟国が協調し、タカ派的な姿勢を示すことで、イランの急進的な体制を真に阻止することができます。岸田外相には、このチャンスをつかんでほしいものです。日本と世界の将来の安全保障は、共通の敵に対する同盟の強さにかかっているのです。


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2024年1月29日月曜日

日本政府も資金拠出を一時停止 ハマス攻撃 国連職員関与疑惑―【私の論評】国連の偏向と非効率  改革か脱退か廃止か

日本政府も資金拠出を一時停止 ハマス攻撃 国連職員関与疑惑

UNRWAの職員がハマスによるイスラエルへのテロ攻撃に関与した疑い AI生成画像

 外務省は28日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員がイスラム原理主義組織ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃に関与した疑いが浮上したことを受け、UNRWAへの資金拠出を一時停止すると発表した。

 小林麻紀外務報道官の談話で「疑惑について極めて憂慮している」と表明。UNRWAに対し「本来の役割を果たせるよう、調査が迅速かつ完全な形で実施され、適切な対応が取られることを強く求める」と要請した。

【私の論評】国連の偏向と非効率  改革か脱退か

まとめ
  • 国連は冷戦終結後、民主主義や人権といった西側諸国の価値観を共有する国々によって主導されてきたが、近年は中国やロシアなどの権威主義国家の影響力が高まっている。国連内には反米や反イスラエル等の左翼的勢力が浸透している。
  • 国連の活動の中には、大量移民の推進や人権侵害国家への容認など、各国の国益に反する場合がある。効率性や透明性の点でも問題がある。
  • 国連改革は容易ではないが、活動の偏向化や非効率性を改善するためには議論が必要である。少なくとも偏った委員会への資金提供は見直すべきだ。
  • 日本もこれまで国連の決議に追随してきたが、国連の在り方を冷静に分析し、国益に合致しない場合は独自の立場をとるべき時期に来ている。
  • 国連存続の是非も含めて、国連改革の可能性と自国の立場を真剣に検討すべき時期にある。国連脱退論も一案として議論に値する。

国連が左翼過激派、グローバリスト、反欧米イデオローグの巣窟になっていると云っても良い状況にあることは周知の事実です。今回、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の疑惑が浮上したことで、それがさらにはっきりし、深刻であることが再確認されたといえます。

米国にの保守系シンクタンクである、ヘリテージ財団は、国連システム内で推進されている左翼的偏向と反欧米政策について幅広く報告しています。国連はしばしば、人権を侵害する社会主義や共産主義の政府を後援したり、その土台を形成しています。

ショーン・ハニティやタッカー・カールソンなどのフォックス・ニュースのコメンテーターは、国連難民局やユネスコの教育プログラムのような国連組織が推進するグローバリズム、国境開放のアジェンダを頻繁に暴露してきました。

ショーン・ハニティ氏(左)とトランプ氏(右)

マーク・ステイン、ダグラス・マレー、エズラ・レバントのような保守派の思想家たちは、国連のさまざまな委員会や指導者たちがとる反欧米、反イスラエル、反言論の立場を記録した本や記事を出版しています。

UN WatchやCommittee for Accuracy in Middle East Reportingのような監視グループは、国連とその関連組織による極端な左翼、反欧米、反イスラエルの行動を監視し、報告しています。彼らは国連の偏見に関する広範な証拠をまとめています。

国連総会と人権理事会の投票記録を見ると、ならず者国家はしばしば極端な左翼的・反欧米的決議を推し進める一方で、自国の人権侵害を非難する決議には反対しています。彼らは国連を利用して欧米を批判する一方で、自らは批判から身を隠しているのです。

ヴィクトール・オルバンやマッテオ・サルヴィーニのようなナショナリストの世界的指導者たちは、国連が推進するグローバリズムや国境開放政策が、国民国家の主権を損なうものであることを正しく訴えています。

彼らは国連を、大量移民のような左翼的政策を推進する脅威とみなしています。そのエビデンスは圧倒的なものです。私たちは、国連を掌握した過激な勢力から、国家主権と安全保障、そして世界の秩序そのものを守らなければならないです。国連を改革すること、あるいは国連から脱退することは、日本にとっても緊急の課題といえると思います。

日本でも、国連改革や国連からの脱退を主張する人はいます。

その代表的な人物として、作家の百田尚樹氏が挙げられます。百田氏は、著書「日本国紀」の中で、国連を「世界政府の触手」と批判し、国連からの脱退を主張しています。百田氏は、国連が大量移民や人権侵害を推進するなど、日本の国益に反する活動をしていると主張しています。

また、保守系の政治家や言論人の中にも、国連改革や国連からの脱退を主張する人は少なくありません。例えば、自由民主党の杉田水脈氏は、国連改革の必要性を主張しており、国連の常任理事国入りを目標にすべきだと述べています。また、評論家の山本七平氏は、国連を「無力な組織」と批判し、国連から脱退して自国の国益を守るべきだと主張しています。

杉田水脈氏

こうした主張は、日米だけでなくヨーロッパなどの国々でも聞かれるものです。国連は、冷戦終結後、民主主義や人権などの価値観を共有する国々によって主導されることになりました。しかし、近年では、中国やロシアなどの権威主義国家の影響力が拡大し、国連の政治的バランスが変化しています。また、国連の活動は、大量移民や人権侵害などの問題に取り組む一方で、効率性や透明性に問題があるとも指摘されています。

こうした背景から、国連改革や国連からの脱退を主張する人は、今後も増えていく可能性があると考えられます。

具体的な主張としては、以下のようなことが挙げられます。
  • 国連は、大量移民や人権侵害などの左翼的政策を推進している。
  • 国連は、常任理事国を5か国に限定することで、特定の国々の利益を優先している。
  • 国連は、民主主義や人権などの価値観を共有する国々によって主導されているが、近年では、中国やロシアなどの権威主義国家の影響力が拡大している。
  • 国連の活動は、効率性や透明性に問題がありすぎる。
こうした主張は、国連の存在意義や役割について、根本的な議論を呼び起こすものと言えるでしょう。

私たちの稼いだ税金が、イスラエルのような米国の同盟国に攻撃を仕掛けようと企てるUNRWAのような組織に資金提供されるなど言語道断です。

米国やその同盟国は国連の改革、あるいは脱退を真剣に検討すべきです。少なくとも、国連内のUNRWAのような偏った組織への資金提供は恒久的に止めなければならないです。

UNRWA職員がハマスのようなテロリスト集団に協力しているという疑惑は非常に厄介ですが、驚くべきことではありません。彼らの真の動機が反イスラエル、反欧米であることは明らかです。

国連内に多くの左翼活動家が入り込んでいる以上、真の改革を推進するのは難しいでしょう。しかし、彼らの急進的な意図や資金の不正使用を今回の事例をもとに、暴露することは良いスタートです。

日本も、国益を重んじる多くの国民に対して、左翼的な大義を押し付けるための駒として国連を利用させるべきではないです。コスプレ活動家等は本来国連で政策を指示する立場にありません。


今回のスキャンダルにより、国連改革をすべきなのか、あるいは放棄すべきかについて、もっと多くの人が関心をもつべきことが明らかになったとえます。ならず者国家と過激派活動家が国連を支配する限り、国連は世界の安全保障と西側の価値観に対する脅威であり続けるでしょう。改革もしくは、国連からの脱退や廃止などについてもタブーとせずに、真剣に議論すべきときがきたといえます。

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2024年1月28日日曜日

米、ウクライナ戦略転換 領土奪還よりも侵攻抑止に注力―【私の論評】バイデン政権の対外政策の誤りが世界の混乱を招いている5つの理由

米、ウクライナ戦略転換 領土奪還よりも侵攻抑止に注力

まとめ
  • バイデン政権は、ウクライナ支援の戦略を転換する。
  • ロシアによる新たな侵攻を抑止することに注力する。
  • 長期的な戦力強化や経済基盤の立て直しを支援する。

バイデン大統領

 27日付米紙ワシントン・ポストは、バイデン米政権がウクライナ支援を巡り、ロシアが占領した領土の奪還よりも、新たな侵攻を抑止することに注力する戦略を策定していると報じた。ウクライナによる昨年の反転攻勢で期待した戦果を得られなかったことで方針を転換した。長期的な戦力強化や、経済基盤の立て直しに重点を置く。

 バイデン政権は今春、10年先までを見据えた支援策を公表する。11月の米大統領選でウクライナ支援に否定的な共和党のトランプ前大統領が再選される可能性も見据え、米国の支援を将来も保証する狙いもある。

 ウクライナ軍は昨年6月に反転攻勢に出たが不本意な結果に終わった。

【私の論評】バイデン政権の対外政策の誤りが世界の混乱を招いている5つの理由

まとめ
バイデン政権の体外政策の誤りが世界の混乱を招いている
  • バイデン政権のウクライナ支持表明は、ロシアのさらなる侵攻を招く恐れがある
  • トランプ政権下では強硬外交が採られ、反米勢力を抑止できていたが、バイデン政権はそうではない
  • バイデン政権は軍事力を軽視し、対外政策が弱すぎる
  • 中国やロシアなどの反米勢力がそれに乗じて台頭している、ハマスも例外ではないが、それでもバイデンは改めようとしない
  • 反攻作戦の成功には時間がかかるのが常識だが、バイデン政権はせっかちに過ぎる
私には、なぜ今の時点で、バイデン政権がウクライナの領土奪還よりも侵攻抑止に注力を置くなどと公表するのか、理解に苦しみます。戦争が継続している現在、このような発表をすれば、ロシア側は、併合した地域の防備を手薄にしても、さらに侵攻しようとするかもしれません。

ただし、米国がロシアにそのように思わせて、併合した地域で手薄になった地域への侵攻を企てているというのなら理解できます。

しかし、過去のバイデン政権をみているとそうではないようです。バイデン政権の対外政策の軟弱さが米国の国力低下と世界の混乱を招いているといえます。

トランプ大統領と安倍総理

トランプ政権下では、中国機の台湾領空侵犯やヨーロッパ・中東での軍事衝突はありませんでした。これはトランプ政権が軍事力を背景に対外的に強硬な姿勢を示したためだと考えられます。

その例としてトランプ政権は国防費を大幅に増額し、史上最大の防衛支出を行いましたし、中国を意識して海洋発射型の中距離核ミサイルの開発を進めました。

一方、バイデン政権になって、軍事力への配慮が手薄になり、対外政策が柔軟過ぎるという批判がなされています。国防費の伸び率が鈍化し、中距離核ミサイルの開発も中止されてしまいました。

また、ロシアのウクライナ侵攻前にあらかじめ軍事介入しないと表明したことは、ロシアに対する事実上の「侵攻許可」となってしまいしまた。これは、過去の米国の伝統的な政策とは大きく異なります。

このように、バイデン政権の軍事力軽視と対外政策の柔軟すぎる対応が、ロシアや中国といった反米勢力の台頭を許し、現在の世界的な混乱状況を招いているといえます。米国の力の低下と対外政策の失敗が、世界の危機的状況を作り出している根本原因ともいえます。

反米勢力は米国が実力行使をためらう姿勢を察知し、米国の反対する動きを強めており、その背景には、バイデン政権が軍事力行使に後ろ向きな姿勢があります。

特に注目されるのが中国です。中国は習近平政権以降、米国主導の自由民主主義を基調とする国際秩序に対する挑戦を強めています。台湾攻略や東アジアでの勢力圏拡大といった具体的な目標を掲げる一方、グローバルな覇権も視野に入れています。

しかし、この最大の脅威である中国に対して、バイデン政権は「競争相手」と位置づけるに留まり、危機感が弱いです。ロシアやイランなど他の反米勢力も、軍事面だけでなく価値観の面でアメリカとの対立を深めています。

最近のハマスによるイスラエル攻撃の背景にも、バイデン政権の対外政策の弱さがあります

ハマスは、バイデン政権下でアメリカの中東関与が弱まり、イスラエルへの支援力が低下したと判断して攻撃に踏み切ったとみられます。米国の「弱さ」は軍事力そのものの問題ではなく、バイデン政権の消極的な力の行使に問題があるとみれます。

11月の中間選挙後は、米国の世論や議会は反米勢力に対する強硬姿勢を要求する可能性が高いです。

長期的には、アメリカの対外政策は誰が大統領になったとしても、現在の弱さか少なくても、中間的な強さへと回帰する公算が大きいです。

昨年の6月に始まったウクライナ軍の反攻作戦

さて、ここでウクライナに話を戻します。上の記事では、「ウクライナによる昨年の反転攻勢で期待した戦果を得られなかった」としていますが、反攻作成は、元々守備と違って、労力や時間もかなりかかるものなのです。

場合によってはこれがあてはまるとは限りませんが、一般の軍事作戦において、攻撃する側は、守備する側の三倍の兵力を必要とするといわれています。

ウクライナ軍の反攻については、このブログでも2年〜3年は続くだろうとしました。その記事のリンクを以下に掲載します。
ウクライナ、反攻で「破滅的」損失 プーチン氏―【私の論評】今回の反転攻勢が成功すると、2~3年以内に占領された土地を奪還できるかも!戦争はまだ続く(゚д゚)!


この記事は、昨年6月14日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にウクライナの領土奪還作戦に時間がかかる理由を述べた部分を引用します。

今後の見通しとしては 、 今回の反転攻勢によりロシアの占領地の分断に成功すれば、かなり有利になります 。

ただ 、分断すると 、今度は突破した部分が挟み撃ちに遭うので 、逆にウクライナ側は挟み撃ちから守りきる陣地をつくらなければなりません 。

これを秋冬の地面がぬかるむ時期にまでに できれば 、 分断されたロシア軍の弱い方を来年 ( 2024年 ) 攻めることになるでしょう 。 つまり 、 ドンバス地方かクリミアのどちらか弱い方を攻めて 、 再来年にもう片方残った方を攻める形になるでしょう 。

今回の反転攻勢が成功すると 、 2 ~ 3年以内には占領された土地を奪還できるかも知れないです 。 無論奪還しても戦争が終わるとは限りませんが 、 少なくとも見通しは立ちます 。

一方で反転攻勢に失敗し 、 投入された12旅団が磨り潰されるようなことになると、 組織的な反転攻勢は今後 、 難しくなります 。 そうなると5年以上 、 下手をすると10年ぐらい膠着状態が続くかもしれません。いずれにせよ、現在の反転攻勢が成功したとしても、すぐに戦争が終わるとはみるべきではないです。
ウクライナ軍の反攻は、最高にうまくいっても最初から2〜3年はかかる見通しだったといえます。これは、第二次世界大戦中の連合軍によるノルマンディー上陸作戦をみてもわります。ノルマンディー上陸作戦を実施した頃には、連合軍は、制海権も、制空権も完璧に握っており、兵力や物量からいっても連合軍が圧倒的に有利であり、事実上ノルマンディー上陸によって、ドイツの敗北は決定づけられたと云って良いです。

しかし実際には、ノルマンディー上陸作戦からドイツの降伏までは、約1年1ヶ月かかっています。

ノルマンディー上陸作戦

反攻作戦をはじめたからといって、すぐにそれが成功するとか、現時点で失敗だと考えるのは、あまりにせっかちにすぎます。

バイデンはせっかちどころか、現時点でわざわざ「ウクライナの領土奪還よりも侵攻抑止に注力を置く」などと公表し、プーチンを奮い立たせるようなことをするのは、こうした軍事的な現実を無視するようなものであり、バイデン政権の軍事力軽視と対外政策の柔軟すぎる対応は明らかに、世界を危険にさらしているといえます。

ただし、これは、今年の大統領選挙で誰が大統領になったとしても、振り子のように元に戻ることにはなるでしょう。米国民そうして、世界中の米国同盟国やパートナー国が現状をそのまま許容するとはとても思えません。

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2024年1月27日土曜日

派閥解散で浮上する衆院解散・総選挙、続投を目指して消費税減税の可能性も―【私の論評】岸田首相、「派閥解散で財務省の圧力封じ」と「消費税減税で国民の支持回復」を目論んだか

派閥解散で浮上する衆院解散・総選挙、続投を目指して消費税減税の可能性も

まとめ
  • 岸田首相が派閥解散を宣言したことで、長期政権を目指して衆院解散に踏み切る可能性が出てきた。
  • メインシナリオは9月の自民党総裁選までの政権継続だが、秋の総裁選で続投が難しいと判断すれば、一か八かの衆院解散もあり得る情勢だ。
  • 仮に首相が衆院解散に踏み切るとすれば、所得税・住民税の減税が実施される6月か。あわせて、消費税減税も視野に入る。
(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)


 2024年1月、岸田文雄首相は、自らが率いていた岸田派(宏池会)の解散を宣言した。これは、政治資金問題で派閥の元会計責任者が略式起訴されたことを受けての判断であった。

 これに伴い、安倍派(清和政策研究会)や二階派(志帥会)も解散を決定し、自民党の主要派閥は6から2に減少した。

派閥解散の背景

 岸田派の解散は、政治資金問題による追い込まれた決断であった。しかし、その背景には、自民党内の派閥政治の変化も影響している。

 これまで、自民党の政権運営は、派閥の力学によって大きく左右されてきた。しかし、近年は、派閥の力は弱まり、首相の権限が強まっている。

 その背景には、以下の要因が考えられる。
  • 選挙制度の改正による小選挙区制の導入
  • マスコミの報道力の強化
  • インターネットの普及による国民の政治意識の高まり
 これらの要因により、派閥の力は弱まり、首相の権限が強まった。そのため、岸田首相は、派閥の力を排除し、自らの政権運営を進めるために、派閥解散を決断したと考えられる。

派閥解散の影響

 派閥解散は、自民党内の権力闘争を難しくし、岸田首相の政権継続を容易にすると考えられる。

 これまで、派閥は、首相の退陣や党内人事をめぐる権力闘争の舞台となってきた。しかし、派閥が解散したことで、そのような権力闘争が難しくなる。

 また、派閥解散は、自民党内の対立を緩和する効果も期待される。

 これまで、自民党内には、安倍派と岸田派の対立など、さまざまな対立があった。しかし、派閥が解散したことで、そのような対立が緩和され、政権運営が円滑になる可能性がある。

衆院解散の可能性

 岸田首相は、秋の総裁選まで政権を継続する意向を示している。しかし、内閣支持率が低迷していることから、衆院解散の可能性も指摘されている。

 もし、岸田首相が衆院解散に踏み切った場合、6月に行われる所得税・住民税の減税と合わせて、消費税減税を実施する可能性も考えらる。

 消費税減税は、国民の支持を回復させるための有効な手段として考えられるため、岸田首相は、衆院解散を機に消費税減税を実施する可能性が高い。

経済政策への影響

 政治情勢の変化は、経済政策にも影響を与える可能性がある。

 金融政策については、誰が首相になっても、当面影響はないだろう。しかし、財政政策については、首相次第だ。

 岸田首相は、財政健全化と分配の両方を目指すスタンスだが、続投を目指して分配重視へ大胆に舵を切る可能性もある。そのため、消費税減税などの大胆な経済政策を実施する可能性も念頭に置く必要がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたいかたは、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】岸田首相、「派閥解散で財務省の圧力封じ」と「消費税減税で国民の支持回復」を目論んだか

まとめ
  • 岸田首相は、秋までの続投と秋の総裁選で勝利しさらに続投する考えのようだ。
  • 岸田首相は、財務省の「減税潰し」に対抗するためにも派閥解消を行った可能性がある。
  • 岸田首相の所得税・住民税減税は、減税額が小さい、財政赤字を拡大させる、景気への効果が不透明などの理由から、国民に不人気なようだ。
  • 岸田首相は、財務省のネガティブキャンペーンも、所得税・住民税減税に対する国民不人気を高めている可能性があると考えているようだ。
  • 岸田首相は、所得税・住民税減税だけでは、国民の支持を得られないとして、消費税減税に踏み込む可能性もある。そうすれば、大快挙となり、歴史に名を刻む可能性もある。

岸田政権の安定した運営を目指し、首相は派閥解散などの様々な手を打っているようです。周りや有権者などとは、関係なく、岸田首相自身は秋まで続投し、あわよくば秋の総裁選で勝利し続投する考えのようです。秋までの続投は、首相自身がそれを翻さない限り、これを誰も阻止することはできません。

鈴木財務大臣

岸田政権が昨年「来年6月から、所得税を1人当たり3万円、住民税を1人当たり1万円減額する方針」を示した際、鈴木俊一財務相が11月8日の衆院財務金融委員会で、岸田首相がこの「国民還元」の原資だと説明した税収増について、「政策的経費や国債の償還に既に充てられてきた」といい、還元の原資がないことを表明しました。

宮沢洋一自民党税調会長も同日掲載の日経新聞インタビューで、「『還元』といっても税収は全部使ったうえで国債を発行している。それは還元ではない」と述べていました。

これは、岸田首相の説明を完全否定され、身内から梯子を外されたともいえる、異常事態といえます。最強官庁といわれる財務省と呼吸を合わせて「減税潰し」の挙に出てきたとみられます。この異常事態により、岸田首相は、財務省の"緊縮財政増さえできれば、首相など誰でも良い、減税する首相は潰す"という財務省の本性を嫌というほど思い知らされたことでしょう。

派閥解消は、財務省に対する対抗策であった可能性も高いです。

派閥解消により、自民党内の派閥政治が弱まり、首相の権限が強まります。そのため、首相は、派閥に頼らず、財務省の意見に左右されずに、財政政策を決定しやすくなります。

また、派閥解消により、財務省の天下り先が減少する可能性があります。派閥の力が弱まると、財務省の幹部が派閥の役員や議員に就任する機会が減少するためです。

具体的には、財務省の政策提言が政府の政策決定に影響を与えにくくなり、政府の政策決定に介入する機会が減り、天下り先が減少し、人材の流動性が低下するなどの事が考えられます。派閥解消は、財務省にとって、一定のリスクを伴うのは間違いありません。

さらに、派閥解消は、「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の権限を強める可能性はあります。

派閥解消により、自民党内の派閥政治が弱まり、首相の権限が強まります。そのため、首相は、派閥に頼らず、積極財政派議員の支持を獲得するために、議連の活動を重視するようになる可能性があります。

また、派閥解消により、積極財政派議員がより自由に活動できるようになるため、議連の活動が活発化し、政府への影響力が増す可能性があります。

無論、財政再建派議連の権限が強まる可能性もありますが、積極財政派の議員のほうが数的には多いです。

責任ある積極財政を推進する議員連盟

現在、岸田首相は自民党内の自らの権限を強めることにより、首相続投を目指し奔走しています。派閥解消により、それは成就されつつあります。ただ、もう一つの大きな懸念があります。それは、岸田政権の支持率低下です。これは、なんとかしなければなりません。

岸田首相は、支持率の上昇を狙って、所得税・住民税の減税を打ち出したのでしょうが、これは、なぜか国民にあまり人気がなかったようです。

これは、減税額が小さい、財政赤字を拡大させる、景気への効果が不透明ということが理由のようです。

ただし、減税そのものは、本来歓迎すべきものだと考えられるにもかかわらず、あそこまで不人気なのは、他にも理由があると考えられます。財務省やそれに追随する人々によるネガティブキャンペーンも、所得税・住民税減税に対する国民の反発を高めている可能性は否定できません。

財務省は、財政赤字を抑制することを最優先に考えているため、所得税・住民税減税に反対しています。財務省は、所得税・住民税減税は財政赤字を拡大させ、景気への効果も不透明であると主張しています。

こうした財務省の主張は、マスコミや一部の経済学者によって取り上げられることで、国民に広く知られるようになりました。このため、国民の中には、所得税・住民税減税は財政赤字を拡大させるだけの無駄な政策であると考える人が増えたと考えられます。

岸田総理は、財務省出身の親族や内閣メンバーが多いことから、財務省の内部事情に詳しいと考えられます。また、財務省出身の財務大臣と協調しながら政策を進めていることから、財務省の考え方を理解しているとも考えられます。

このようなことから、岸田総理は、財務省の思惑や動きをある程度予測することができるでしょう。また、財務省との交渉においても、有利な立場から交渉を行うことができる可能性があります。

さらに、首相が財務省の政治活動を封じるための具体的な制度や法律については、以下が考えられます。

1. 財務省設置法:財務省設置法は、財務省の組織とその職務を規定しています。この法律により、財務省は国の予算、決算、会計、租税、通貨制度、日本国債、財政投融資、国有財産、外国為替、酒類、たばこ、塩事業に関することなどを司ることとされています。これを改定するという手があります。

2. 経済安全保障推進法:経済安全保障推進法は、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律であり、首相が財務省の政治活動を封じるための具体的な法律の一つです。

3. 公務員の政治活動の自由の制限:公務員は全体の奉仕者であり、行政の中立性とそれに対する国民の信頼性のために、公務員の政治活動の自由の制限は、合理的で必要やむをえない制限が許されるとされています。

これらは一部の視点であり、具体的な制度や法律は状況や目標によります。また、これらの制度や法律はすべて首相の権限と責任の範囲内で行われるべきです。しかし、財務省が岸田政権の安定運営に対する障害になれば、首相は国権を発動して、財務省の政治活動を制限できます。そもそもも財務省は、国民から選ばれたわけではないので、政治活動をすべきではありません。大義名分もあります。

財務省

こうしたことから、岸田首相は所得税・住民税減税だけでは、国民の支持を得られないとして、消費税減税に踏み込む可能性は捨てきれません。これにより、岸田政権の支持率が上がれば、消費税減税を公約として、解散総選挙に打ってでる可能性もあります。

もし、そうすれば、消費税減税は過去に事例がないこと、あの安倍首相ですら、在任期間中に、延期はしたものの、結局二度も消費税を上げざるを得なかったのですから、大快挙となるのは間違いないです。これを実現すれば、その動機はどうであれ、岸田首相は名宰相とし歴史に名を刻むことができるでしょう。

これに対して、財務省とその走狗達は、大ネガティブキャンペーンをはるでしょうが、国民は、消費税減税に関しては、素直に評価すべきでしょう。

無論現段階では、岸田首相が実際に消費税減税をするかどうかまでは、全く予想できませんが、続投したいなら、これを実施するくらしか手は残されていないのも事実です。

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2024年1月26日金曜日

港求めるエチオピアから読む中東・アフリカ地政学―【私の論評】東アフリカの不安定化要因と将来展望

 港求めるエチオピアから読む中東・アフリカ地政学

まとめ

  • エチオピアがソマリランドから海岸線を租借し、海へのアクセスを確保
  • エチオピアにとっては悲願の達成だが、ソマリアは反発
  • ソマリランドにとっては、エチオピアからの国家承認の可能性
  • UAEがエチオピアを支援し、地域での影響力拡大を狙う
  • エジプトやサウジアラビアなど周辺国の反発も予想され、地域の不安定化が懸念される

 1993年のエリトリアの独立により内陸国となったエチオピアは、海へのアクセス確保を長年の悲願としていた。ジブチ港への依存は使用料の問題もあり、海軍力回復と地域影響力拡大を狙って、エチオピアはソマリランドから軍港を含む海岸線を租借する合意を結んだ。

 ソマリランドにとっては、エチオピアによる国家承認の可能性獲得が対価であるが、ソマリア政府は猛反発。国際社会でのソマリランド承認も困難だ。

 UAE(アラブ首長国連邦)がエチオピアの後ろ盾となり、地域の代理勢力としてこの合意を支援している。湾岸アラブ諸国はポスト石油を見据えアフリカ進出を強めている。トルコとの対立もあり、UAEはエチオピアを頼りに地域での影響力拡大を狙っている。

 しかし、エチオピア・UAE側に味方する国はなく、むしろエリトリア、ジブチ、エジプトなどの反発が予想される。サウジアラビアの対応が鍵となるだろう。

 トルコはソマリアでのプレゼンスを高めており、その領土保全を支持する可能性が高い。イランもシーア派との対立から、サウジ・UAE側につくことは考えにくい。

 複雑な地域の勢力図の中で、エチオピアの海へのアクセス確保という長年の悲願が、地域の不安定化を招く恐れが指摘されている。その行方は地域の複雑な力関係次第である。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】東アフリカの不安定化要因と将来展望

まとめ
  • 東アフリカは、ソマリランドの独立承認をめぐるエチオピアとソマリアの対立、テロ組織の活動、ロシアや中国の地域への進出など、さまざまな要因により不安定化している
  • 今後の東アフリカの将来は、以下の3つのシナリオが考えられます。・地域紛争の増加・外交的解決策・予期せぬ出来事
  • これらのシナリオは、いずれも地域の安定と繁栄にとってマイナスの影響を与える可能性がある
  • 東アフリカの安定を維持するためには、地域の主要国による協力と、外部勢力による干渉の抑制が重要

上の記事を読むにあたっては、まずはソマリランドという言葉を理解しなければなりません。

世界地図のどこを探しても見つからない、そんな不思議な「国」がアフリカ大陸に存在します。それが、1991年にソマリアからの独立を一方的に宣言した「ソマリランド共和国」です。

ソマリアやエチオピアのあるアフリカ大陸東端は、その形状から「アフリカの 角 」と呼ばれます。ソマリランドは、その角の根もと、アデン湾に面するソマリア北部に位置する。全土を独自の政府が統治し、ソマリア政府の支配は及びません。事実上、独立した状態が続いています。

アフリカの角

東アフリカには様々なテロ組織が存在し、さらにはロシアや中国も様々な利権を狙いこの地域の不安定化に寄与しているといえます。

この地域が今後どのようになっていく可能性があるのか、最新のデータ等を用いていくつかのシナリオを描くと以下のようになります。

1. 地域紛争の増加
引き金: エチオピア軍がソマリア軍と衝突。
激化: ジブチとエリトリアが介入し、エチオピアの拡張主義を恐れてソマリアを支援。ナイル川支配への懸念からエジプトも参戦。
複雑化: UAEとトルコがソマリアとエチオピアを通じて代理戦争。ロシアと中国は異なる派閥に武器と支援を提供。
結果: 紛争は長期化し、壊滅的な人道的被害をもたらし、ソマリアは分断され、地域の不安定化は何年も続く可能性がある。
2. 外交的解決策
引き金: きっかけ:アフリカ連合が主導する可能性のある国際的圧力と調停努力により、エチオピアとソマリアが交渉するよう説得される。
妥協点:ソマリランドはソマリア内で何らかの国際的承認または自治権を獲得し、エチオピアは直接的な領土支配を伴わない協定を通じて港湾アクセスを確保する。
キーパーソン サウジアラビアが取引の仲介役として重要な役割を果たし、UAEの影響力を均衡させ、地域の安定を確保する。トルコはソマリアとの関係を維持するため、この結果を受け入れる。
成果: 地域に相対的な平和と安定が戻り、経済発展と協力が促進される。湾岸アラブ諸国とトルコは、アフリカでの競争に別の道を見出す。
3. 予期せぬ出来事
引き金: エチオピア、ソマリア、エジプトなどの主要国の内政的混乱により、既存の協定や同盟が崩壊する可能性がある。
混乱: テロ攻撃や大規模な環境災害が地域を不安定化させ、安定に向けた前進を頓挫させる可能性がある。
不確実性: ロシアや中国のような外部アクターの関与は、彼らの利害が必ずしも地域の安定と一致するとは限らないため、状況にさらなる予測不可能性をもたらす。
結果: ボラティリティが高まり、予測不可能な展開が起こる可能性が高まるため、長期的な予測が困難になる。

アフリカと中東の主なテロ組織

考慮すべき追加要因:
テロ集団や民兵のような非国家主体の役割は、今後も地域の力学に重要な役割を果たす。
東アフリカにおける経済開発イニシアティブの成功は、安定に寄与し、紛争の魅力を減らす可能性がある。
気候変動と資源不足は、将来の紛争や地政学的緊張において、ますます重要な要因となる可能性が高い。
全体として、東アフリカの将来は依然として不透明であり、プラスとマイナスの両方の発展の可能性がある。今後数カ月から数年の間に、地域および国際的な主要アクターが下す決断は、この地域の軌跡に大きな影響を与えるだろう。
なお、これらは考えられるシナリオのほんの一部であり、実際の成り行きは大きく異なる可能性があります。この地域の最新動向を常に把握し、この地域の将来を形成しうるさまざまな要因を認識しておくことが重要です。

私が最も恐れるのは、東アフリカの不安定化に乗じて、中国やロシアがこの地域にの自らの覇権の及ぶ範囲としてしまい、米国やその同盟国による世界秩序を自分たちの都合の良いように作り変えようとすることです。

懸念を裏付ける要因:

機会: 東アフリカが不安定化することは、中国やロシアのような強力な外部アクターに利用されやすい脆弱な地域を生み出すことになります。
既存のプレゼンス: 両国はすでに東アフリカのさまざまな国々と経済的・安全保障上の関係を築いています。
動機: 中国は世界的なリーダーシップと資源へのアクセスという野心を抱いており、ロシアは欧米の影響力に対抗し、自国の勢力圏を拡大しようとしています。
戦略: 資源取引、デット・トラップ外交、軍事的関与、偽情報キャンペーンなどの戦術を用い、影響力を強固なものにする可能性がある。

対抗要因:

地元の抵抗: 東アフリカ諸国は、内部分裂にもかかわらず、より大きな地政学的ゲームの単なる駒になることに抵抗するかもしれないです。
国際的圧力:米国を筆頭とする西側諸国は、この地域における中国やロシアの覇権を受け入れそうになく、外交的、経済的、さらには軍事的手段によって対抗する可能性があります。
アフリカ連合の役割: アフリカ連合が仲介役となり、アフリカでの解決策を提唱し、外部からの支配を阻止する可能性があります。
予測不可能な結果: ロシアと中国内部の力学、不測の事態、地域の勢力争いが、予期せぬ結果を招き、彼らの計画を複雑にする可能性があります。

中国とロシアが東アフリカにおける地域覇権の確立に成功するかどうかを確実に予測することは不可能です。可能性がある一方で、彼らの成功を制限するかもしれない対抗勢力を考慮することは重要です。


以下は、検討すべき追加的なポイントです。

21世紀における「覇権」の性質は、過去の歴史的モデルとは異なる可能性が高いです。中国やロシアのような国々が、軍事的優位性よりも、経済力、技術的優位性、パートナーシップを通じて影響力を行使することで、より拡散的で多面的なものになる可能性があります。

米国主導の世界秩序の将来は依然として不透明です。課題に直面しているとはいえ、その終焉を宣言するのは時期尚早です。同盟関係の回復力、新たな経済的現実への適応力、そして効果的なリーダーシップが、その関連性の継続を左右するでしょう。

東アフリカ諸国の機関は極めて重要な役割を果たしています。東アフリカ諸国が団結し、地域的な解決策を追求し、外部からの操作に抵抗する能力は、自らの運命を切り開き、望ましくない覇権主義を阻止する上で極めて重要です。

東アフリカとそれ以外の国々の動向について常に情報を入手し、多様な情報源からの情報を批判的に分析し、これらの複雑な地政学的問題について建設的な議論に参加することが重要です。

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2024年1月25日木曜日

海上自衛隊P-1哨戒機の部隊がシードラゴン2024演習の対潜戦技競技で優勝、2連覇を達成―【私の論評】他国海軍力の脅威に対抗する日本の決意と米国との緊密な同盟関係を示す

海上自衛隊P-1哨戒機の部隊がシードラゴン2024演習の対潜戦技競技で優勝、2連覇を達成

まとめ
  • 海上自衛隊のP-1哨戒機が対潜戦技競技で2連覇を達成
  • シードラゴン演習は対潜訓練を目的とした多国間共同演習
  • 初回の2019年は哨戒機を参加させたのはアメリカとオーストラリアの2カ国だけでしたが、翌2020年以降に日本や韓国などから参加国が増えています
  • これまでの優勝国は、2019年オーストラリア、2020年ニュージーランド、2021年カナダ、2022年カナダ、2023年日本
シードラゴン2024に参加した海自のP1とそのクルーたち

 2024年1月8日から1月24日まで、アメリカ海軍が主催する多国間共同対潜演習「シードラゴン2024」がグアムで開催されました。参加国はイギリス、フランス、カナダ、インド、日本、韓国の7カ国(ブログ管理人注:イギリス、フランスは例年参加しているが、2024年は参加していません)で、各国で競う対潜戦技競技で日本海上自衛隊のP-1哨戒機の部隊が優勝しました。これは昨年に続いて2連覇となります。

 シードラゴン演習は対潜訓練を目的とした演習で、初回の2019年は哨戒機を参加させたのはアメリカとオーストラリアの2カ国だけでしたが、翌2020年以降に日本や韓国などから参加国が増えています。

 2020年以降は、古いベテランのP-3C哨戒機が3連続で優勝していましたが、2023年から新鋭のP-1哨戒機が2連続で優勝しています。

 今回のシードラゴン2024に参加した海上自衛隊のP-1哨戒機の部隊は、第3飛行隊(厚木基地)の第31飛行隊です。昨年のシードラゴン2023に参加したのは第1飛行隊(鹿屋基地)の第11飛行隊でした。

【私の論評】他国海軍力の脅威に対抗する日本の決意と米国との緊密な同盟関係を示す

まとめ

  • シードラゴン演習は、対潜戦能力を向上させるための訓練と実践の場であり、参加国は、潜水艦の追跡、識別、攻撃などの技術を磨き、実践的な経験積む。
  • この演習は、同盟国・友好国間の連携を強化するための機会である。
  • この演習は、地域の安全保障の向上に貢献する。
  • シードラゴン演習は、米国の世界的影響力の向上に役立つ一方日本の連続優勝は、海自の対潜哨戒能力の高さを示すとともに、日米同盟の強固さを示すことにもなった。
  • 台湾は、シードラゴン演習に参加することで、対潜戦能力を向上させ、中国による脅威に対する抑止力を強化することができるが、中国をいたずらに刺激することなく、段階的に進めるべきである。


演習の主な目的は、参加国間の相互運用性を高め、集団防衛能力を向上させるための戦術を交換することにあます。参加国は哨戒機や潜水艦、駆逐艦などの海上自衛隊を派遣し、対潜戦術の訓練や実戦演習を行います。

演習では、潜水艦を追跡、識別、標的化するためのさまざまな飛行任務が課され、各軍の準備態勢をテストするためのリアルタイムのシナリオが提供されました。

対潜戦技競技では、各国が派遣した哨戒機が、潜水艦を模した目標艦を探知・追尾・攻撃する能力を競いました。その結果、日本海上自衛隊のP-1哨戒機の部隊が優勝し、2連覇を達成しました。

シードラゴン演習は、参加国の対潜戦力運用能力の向上と、同盟国・友好国の連携強化に大きく貢献しています。今後も継続して開催されることにより、参加国の防衛力強化や、地域の安全保障の向上につながることが期待されています。

シードラゴン2024に参加したインド海軍のP8Iとそのクルーたち 

シードラゴンの参加各国の意義は以下のようなことが考えられます。

1.合同演習は、国家間の信頼とパートナーシップを構築する。これは、すべての関係者にとって国家の安全保障に利益をもたらします。

2. 海軍能力の強化。対潜水艦戦(Anti Submarine Warfare:ASW)は極めて重要な技術であり、シードラゴンに参加することで、各国はASW技術を向上させ、貴重な経験を積み、パートナー国から新しい技術や知識を得ることができます。

3. 共通の敵を抑止する。シードラゴンのような演習は、中国、北朝鮮、ロシアのような国々に対して、米国と同盟国が、特に太平洋のような戦略的地域において、脅威に対抗するために協力する用意があることを示すことになります。これは潜在的な侵略を抑止することができます。

4. 相互運用性の向上。各国が演習や訓練に共同で参加することで、互いの軍事能力、兵器、通信システムなどをよりよく理解することができます。これにより、将来の潜在的な作戦において、より効果的に協力することができるようになります。

5. 米国の世界的影響力の向上。シードラゴンのスポンサーである米国は、世界の舞台でリーダーシップを発揮し、同盟関係を強化し、国際海域への自由で開かれたアクセスというビジョンを推進することができます。これは、世界の超大国としての米国の地位を高めることになります。

シードラゴンを実施することの、地政学的な意味合いとしては、次のようなことが考えられます。

1.太平洋地域、特に南シナ海を支配しようとする中国に対抗米国や日本のような同盟国が協力する用意があることを中国に示す。これにより、中国の領土拡張主義や戦略的地域の軍事化を阻止することができます。

2. アジア太平洋におけるパワーバランス。日米海軍の合同演習は、アジアにおける中国の軍事力強化に対する対抗手段の確保に役立ちます。これにより、中国の手に力が集中するのを防ぎ、この地域が特定の国に支配されるのを防ぐことができます。

3. 米国のプレゼンスを強化する。太平洋での演習を主導することで、米国はアジアの安全保障と安定に対する継続的なコミットメントを示すことができます。これは同盟国やパートナーを安心させるとともに、北朝鮮のような潜在的な敵対国に注意を促すことになります。その結果、米国の影響力と同盟は強化されます。

4. 民主主義的価値の共有を促進する。シードラゴンに参加する米国、日本、インドなどの国々は、一般的に民主主義、航行の自由、法の支配という原則を共有しています。協力は、世界の安全保障と繁栄に貢献するこれらの価値観の向上に役立ちます。

5. ロシアの侵略を阻止する。ロシアはシードラゴンに直接参加していませんが、ロシア海軍は演習を注意深く監視していたようです。米国と同盟国の軍事的パートナーシップと能力を示すことは、特にウクライナやグルジアといった国々に対するロシアの過去の挑発行為を考えれば、潜在的なロシアの侵略を抑止することができます。

この訓練は、民主主義国家間の協力を促進し、中国やロシアのような敵対国の野心に対抗し、アジアの安定を促進し、米国のグローバルなリーダーシップと同盟を確保することになります。シードラゴンと同様の共同訓練は、より安全な世界の実現に役立つでしょう。

日本がシードラゴン2024に出場し、2連覇を達成したことは非常に意義深いことです。

 日本にとっては、そのの海軍力と能力を示すことに。対潜水艦競技で優勝することは、海上自衛隊の高度な技能と技術を示すことになります。これにより、海軍力としての地位が高まることになります。

地域の脅威に対抗する決意を固める。中国が海軍を拡大し、北朝鮮がミサイル兵器を増強する中、日本がシードラゴンに参加することは、脅威に対抗し、国家の安全を守り、同盟国と協力的に関与する決意を示すことになります。

日米同盟の強化。シードラゴンのような合同演習は、日米間の軍事的パートナーシップを強化することになります。演習での成功は、日米がいかに効果的に協力できるかを浮き彫りにし、日米同盟に利益をもたらすことになります。

米国と同盟国にとって日本の能力に対する信頼を高める。シードラゴンによって、米国や他の同盟国は日本の軍事的長所と短所について貴重な洞察を得ることができます。日本が演習で成功するのを見ることは、日本が将来起こりうる作戦において強力なパートナーになるという自信を抱かせることになります。

相互運用性の促進。シードラゴンでの共同作業は、日米両軍の相互運用性を高めるのに役立つ。お互いの能力、通信システム、作戦方法、武器などをよりよく理解することができる。これにより、共同任務はよりシームレスなものとなります。

侵略の抑止。ロシア、北朝鮮と中国は、シードラゴンで示された日米間の強力な軍事協力を見て、挑発的な行動を取らないよう警戒することになります。統一戦線を眼の前にすれば、直接対決を避ける傾向が強くなります。

利害の共有。日米のような国家が合同で軍事演習に参加することは、中国の野心に対抗し、北朝鮮を非核化し、航行の自由を確保するなど、アジア太平洋における重要な安全保障上の利益を共有していることを示すものです。

日本がシードラゴン2024に参加し、成功したことは大きな意味を持ちます。これは、他国海軍力の脅威に対抗する日本の決意とともに、相互運用性を促進し、侵略を抑止し、同盟国との共通の利益を推進するものでした。この演習は、すべての関係者にとってwin-winのものだったといえます。

このブログに述べたように、台湾は最近潜水艦を自前で開発しています。この台湾化、対潜水艦戦能力(ASW)をさらに高めれば、将来台湾が、シードラゴンに参加ということも考えられるかもしれません。

台湾が自主建造した潜水艦

ただ、すぐにそうすることは、中国との緊張を高める可能性もあることと、未だ台湾ASW能力は高くはないことから、最初は、日本や米国と台湾が単独で演習をし、その次は、日米と台湾で、その後にシードラゴンに参加などの段階を踏むと良いと思います。

台湾の抑止力を強化し、パートナーシップを強化し、責任ある計算された方法で「力による平和」を達成するために、段階的に協力を進めるべきと思います。

台湾の安全保障を擁護する一方で、不本意なエスカレーションを避けるために慎重でなければなりません。このような、段階的なアプローチは、これらの利益のバランスを取る上で理想的だと思います。

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2024年1月24日水曜日

陸自幹部らの靖国参拝は問題か 防衛大臣は処分を行うべきではない これまでも安全祈願を実施、事務次官通達はいずれ廃止すべき―【私の論評】陸自幹部らの靖国参拝問題が象徴する我が国法体系の危機

陸自幹部らの靖国参拝は問題か 防衛大臣は処分を行うべきではない これまでも安全祈願を実施、事務次官通達はいずれ廃止すべき

まとめ
  • 防衛庁事務次官通達「宗教的活動について」は、憲法解釈を行政官僚が行うという越権行為である。
  • 通達は現在でも有効であるため、行政府の越権行為を是正するためにも、廃止すべきである。
  • 通達に抵触するかどうかは、部隊参拝の定義が明確でないため、判断が難しい。
  • 今回の件は、私的な個人行動であるため、処分を行うべきではない。
  • 部隊行動については、憲法問題として対処すべきであり、いずれ通達は廃止すべきである。
靖国神社

 陸上自衛隊の複数の幹部が靖国神社を参拝したことに関連し、「部隊参拝」を禁じた通達に違反した疑いが浮上している。報道によれば、この通達は1974年に発せられたものであり、防衛庁事務次官通達「宗教的活動について」の一環として位置づけられている。通達は憲法20条および89条の解釈指針を提示しており、通常、このような憲法解釈は司法の仕事であるが、当時の旧大蔵官僚出身の防衛庁田代一正事務次官による自信過剰な雰囲気からくるものと見られる。

 通達の内容によれば、「神祠、仏堂、その他宗教上の礼拝所に対して部隊参拝すること及び隊員に参加を強制することは厳に慎むべきである」とされており、今回の靖国神社参拝がこれに抵触するとされている。ただし、報道によれば、陸自で航空事故の調査に携わる幹部たちは過去にも「年頭航空安全祈願」と称して靖国参拝を行っており、今回の参拝も同様の趣旨であったと主張されている。

 一部マスコミは、この参拝が能登半島地震発生後に行われたことを問題視しているが、筋違いであり、通達違反に関する問題は憲法上の問題であり、通達の廃止を検討すべきだ。

 ただ、通達は今なお有効であり、その発出権限は防衛大臣にある。しかし、陸自の幹部たちが時間休を取得し、私的な個人行動として参拝した点を考慮すれば、処分は妥当でないと考えられる。通達の廃止については防衛大臣が決定すべきだが、この通達が行政府の越権行為であり、いずれは憲法上の問題として廃止すべきだ。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】陸自幹部らの靖国参拝問題が象徴する我が国法体系の危機

まとめ
  • 通達によってなされている外国人に対する生活保護の拡充が、我が国の法体系に危機をもたらしている。
  • 医療法人の行政指導において通達が法的根拠を持たずに実質的な法として機能し、法の不備が露呈している。
  • 通達と通知の区別が不明確であり、通達が法律との矛盾を引き起こす場合、法の支配が揺らぐ危険性が高い。
  • 地方自治体の基本条例が国の法律や憲法に反する内容を含み、全国的な法秩序の混乱を招いている。
  • これらの問題に対して保守派は、具体的な行動と検討を通じて、法の支配を堅持し、国の未来へ向けた取り組みが必要である。
我が国の法体系が抱える危機的状況は、上の事例だけではなく、たとえば外国人への生活保護拡充が巻き起こす懸念により一段と深まっています。1954年の通達以来、我が国は外国人に対しても社会の一員としての手助けを行ってきましたが、その中で法の抜け穴や法律の不備が露呈し、我が国の法秩序が揺らぎつつあります。この危機的状況に立ち向かうには、具体的な例を通して深い理解を得ることが必要です。


医療法人の行政指導において、通達が法的根拠を持たずに実質的な法として機能している問題は、我が国の法体系の脆弱性を示しています。通達により法外な基準が導入され、これが組織の運営に影響を与え、法の支配が揺らぐ可能性が高まっています。この事例が、我が国が抱える法の不備や法秩序の混乱を象徴しています。

通達と通知の区別においても問題が生じています。通達は原則として行政内部の命令であり、外部に法的拘束力はないとされていますが、実際にはあたかも通知のように法的拘束力を持つ場合があります。この曖昧さが、法の支配の中で混乱を生み出し、通達が法律との矛盾を引き起こす場合、法の支配が揺らぐ危険性が増大します。


地方自治体の基本条例において、国の法律や憲法に反する内容を含むことで、全国的な法秩序の乱れを招いています。地方自治体が独自のルールを制定することで、全国的な法の一貫性が失われ、法体系が分断される危険性があります。これは全国的な法秩序の混乱を象徴し、我が国が直面している法の危機を一層深刻なものとして浮き彫りにしています。

自治体基本条例の脅威につてい解説する書籍

このような問題点を考えると、我が国の法体系が抱える危機は現実のものであると言えます。外国人に対する生活保護の拡充や地方自体の憲法等等が、法の支配を揺るがす危険を孕んでいるのです。これに対して保守派の皆様には、これまでの議論を踏まえ、具体的な問題に対処する力強い行動と検討をお願いしたいと思います。

我が国は長い歴史の中で培われた伝統と価値観を大切にし、法の支配によって安定した社会を築いてきました。しかし、この伝統を守りつつも、新たな時代においても法の支配を確立し、アイデンティティを守るためには、積極的な行動が求められます。保守派の皆様が一丸となり、法の支配を堅持するために、国家の未来へ向けた取り組みを進めていただきたいと強く訴えます。

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