2018年5月13日日曜日

イラン・イスラエル戦争が始まる? 核合意離脱で一気に不安定化する中東―【私の論評】北朝鮮との和平に向けた動きが加速すればするほど、イラン攻撃が近くなる(゚д゚)!

イラン・イスラエル戦争が始まる? 核合意離脱で一気に不安定化する中東


クリスティナ・マザ

イスラエル軍のダマスカスへのミサイル攻撃(5月10日)


<トランプ政権のイラン核合意離脱を受けて、イランがイスラエルへの攻撃を開始。この軍事衝突は戦争へと発展するのか>
シリア国内に展開するイランの革命防衛隊が、ゴラン高原を占領するイスラエル軍拠点をロケット弾で攻撃した。これに対してイスラエル軍はシリア領内のイランの軍事拠点数十カ所を報復攻撃した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

ドナルド・トランプ米大統領がイラン核合意からの離脱を表明して以降、これがイランとイスラエルの間の最初の軍事衝突となる。イランと敵対するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、トランプの核合意離脱を強く支持していた。ホワイトハウスは10日に出した声明で、イラン側のロケット弾攻撃は非難したが、イスラエル側からの報復攻撃については言及しなかった。

「アメリカはイラン政府によるシリア領内からのイスラエル市民に対する挑発的なロケット攻撃を非難し、イスラエルの自衛行動を強く支持する。イラン政府による、イスラエル攻撃を目的としたロケット弾、ミサイルシステムの配備は、中東地域全体にとって受け入れ難く、極めて危険な状況だ」と声明は述べている。

「イランの革命防衛隊には、今回の無謀な行動の結果の全ての責任がある。アメリカは革命防衛隊と(シーア派武装組織の)ヒズボラなど関連の軍事組織に対してこれ以上の挑発行動に出ないことを要求する」

イスラエル軍によると、10日未明に革命防衛隊が約20発のロケット弾でゴラン高原のイスラエル軍拠点を攻撃。イスラエルのミサイル防衛システムがそのうち何発かを撃ち落としたが、何発かは軍事施設にも着弾して被害が出た。イスラエル側での負傷者は報告されていない。

これに対してイスラエルのアビグドール・リーベルマン国防相は、2011年のシリア内戦勃発以降、最大規模の攻撃をシリア領内で実施し、シリア国内のイランの「ほとんどすべて」の軍事拠点を攻撃したと語っている。

人権団体の「シリア人権監視団」は、イスラエル軍の攻撃によってシリア全土でシリア兵士ら少なくとも23人が死亡したとしている。しかしシリア軍は、イスラエルのミサイル攻撃はほとんど迎撃され、攻撃による死亡者は3人だけだったと発表した。

中東情勢の専門家は、米トランプ政権がイラン核合意からの離脱を決めたことで、イスラエルと軍事衝突しても失なうものは少ないと感じたイラン側が攻撃に出たと見ている。

アメリカの核合意離脱には、イランの反米強硬派も反発している。強硬派の指導者からは、他の締結国が合意を継続しなければ核開発を再開するという発言も出ている。

イランが核合意の条件を破棄すれば、1年以内に核兵器を保有することが可能だと専門家は見る。

イスラエルはこの数カ月間、シリアに展開するイランの軍事拠点への攻撃を行っている。4月にはシリア軍基地でアサド政権への軍事支援を行っていたイラン軍兵士らが攻撃を受けて死亡し、両国の緊張が高まっていた。10日のイラン側からのロケット攻撃は、シリア領内の軍事拠点への攻撃に対するイラン側からの最初の報復攻撃となる。

軍事専門家は、両国間の軍事衝突が今後どこまでエスカレートするか注視している。

【私の論評】北朝鮮との和平に向けた動きが加速すればするほど、イラン攻撃が近くなる(゚д゚)!

5月8日、トランプ大統領は公約通り、2015年にイギリス、フランス、ドイツ、そしてロシアも参加してイランと締結した核合意からの離脱を発表しました。IAEA(国際原子力機関)による度重なる査察によって、イランの核兵器開発の事実がないとされていましたが、トランプ政権は、イランがいまだに核兵器開発を秘密裏に行っているとして、核合意から一方的に離脱しました。そして、最大限の制裁をイランに課すとしています。


本来、これは5月12日には発表されるとしていましたが、4日も前倒しで行われました。

この発表とまさにタイミングを合わせるように、イスラエルによる攻撃が一斉に始まりました。まず、8日にシリアの首都、ダマスカス南部のキズワにあるイラン革命防衛隊も使っている基地が攻撃され、イラン人8名を含む15名が死亡しました。兵器を輸送しているイラン革命防衛隊が標的にされたようです。

また、シリア北西部の都市、イドリブ西部でも大きな爆発があったことが確認されています。そして、ダマスカス西部のアル・カスラでも攻撃がありました。ダマスカス南部のジャバール・アルマネーでも同様の攻撃があった模様です。

4月13日のトマホークによる攻撃を実質的に撃退したシリア政府軍やイラン革命防衛隊が攻撃されているのは、イスラエル空軍機がアメリカ軍機のトランスポンダーを偽造し、アメリカ軍機のように見せかけて攻撃しているからだと見られています。

いまシリアでは、反政府勢力を支援するアメリカ軍と、シリア政府軍を支援するロシア軍とは同じ空域を飛行しています。

両軍は、それぞれの軍機を識別するトランスポンダーという信号を使い、両軍が戦闘状態になることを回避しています。アメリカ軍機のトランスポンダーであれば、シリア政府軍もロシア軍も攻撃を控えています。

イスラエルは今回この取り決めを悪用し、アメリカ軍のトランスポンダーを偽造して飛行しています。そのため、シリア政府軍やイラン革命防衛隊の防空システムが作動できないようにしているのです。

また、レバノン上空では、アメリカ軍にエスコートされたイスラエル軍機によるシリアの偵察飛行が増加しています。これは、イスラエルによるシリアの大規模な攻撃が近い可能性を示唆しています。

そして、イスラエル軍が偵察しているレバノンの同じ空域では、ロシア軍の戦闘機がイスラエル軍機を牽制するかのようにジグザグに飛行しているのが記録されています。また、イスラエル軍のF15戦闘機に給油するための空中給油機も待機していることが確認されました。

さらに、シリア南部のシリア領で、イスラエルが実行支配しているゴラン高原では、イスラエル軍の予備役召集が開始されました。この命令はいまのところゴラン高原だけですが、イスラエル全土に拡大される可能性もあります。

また、ゴラン高原の防空シェルターにいつでも住民が避難できるように、シェルターの扉の開放が指示されました。そして、シリアと国境を接するイスラエル北部のすべての病院には、戦争警戒体制でもっとも水準の高い「レベルC」が発動されました。

選挙の応援集会で気勢を上げるヒズボラ支持者ら

これらの動きは、イスラエルがイランによる報復を想定し、それに準備していることを示しています。またイスラエルは、シリアではなく先頃選挙で圧勝したヒズボラが支配するレバノンを先に攻撃し、レバノンのヒズボラの拠点の壊滅を狙う可能性も指摘されています。

そして5月9日、シリア領でイスラエルが実行支配しているゴラン高原に、シリア側のイラン系武装勢力の基地から、20発のミサイルが打ち込まれました。イスラエルがこれに報復したものの、どちらの攻撃でも死傷者はいなかった模様です。このためもあってか、戦闘は限定的なものに止まり、拡大する気配はいまのところないようです。

イスラエルが実効支配するゴラン高原

このような状況は4月13日に行われたアメリカ、フランス、イギリスによるシリア攻撃のときよりももっと悪い状況ではないかとする見方も多いです。

それというのも、4月13日の攻撃では、事前にロシアはアメリカに、シリア領内で攻撃してはならないロシア軍の軍事施設を事前に通知し、アメリカ軍がこれを攻撃しない限り自制する構えでした。

それに対し、イスラエルが主導する今回の攻撃では、そうした事前の取り決めがないので、ロシア軍が活発に動いていることです。最悪な状況では、ロシア軍機とイスラエル軍機、またはアメリカ軍機がシリアの空域で戦闘状態になる可能性もあります。

いずれかの軍に死者が出た場合、これがもっと大きな戦争の引き金になる可能性は否定できない状況になるかもしれません。

このような中、アメリカ軍の地上部隊も動いています。すでに4月から4000名のアメリカ軍がヨルダンのシリア国境付近に展開しています。これはヨルダン軍との共同軍事演習のためだと説明されていましたが、演習が終了しても撤退する気配はありません。これは、これから始まるイランの報復に対応するための展開なのではないかともいわれています。

ところで、現在海外にいる4万4000名ほどのアメリカ軍部隊の所在が明らかにされていません。米国外に展開していることは間違いないようですが、具体的な場所は公表されていません。もしかしたら、やはりこれから始まる可能性のあるイランの反撃に備えるために、ヨルダンのシリア国境周辺に配備されている可能性もあると見られています。

無論、対北朝鮮のために韓国に配置されている可能性もあります。あるいは、韓国とシリア国境付近の両方に配置されているかもしれません。

このように、現在は、非常に緊張した状態です。レバノンやイスラエルのシリア国境付近で、いきなり大きな戦闘が始まる可能性が次第に高くなっています。

こうした動きを見ると、明らかにイスラエルはイランを挑発しており、イランによる報復を誘発しようとしています。イランがなんらかの報復攻撃に出ると、イスラエルはこれを口実に、一気にシリア領内のイラン関連軍事施設の全面的な壊滅を目指した大規模な攻撃に踏み切るはずです。

また将来万が一でも、イランが核合意から離脱した場合、核兵器の開発の疑惑を口実に、イラン本土を標的にした攻撃さえも、イスラエルは辞さない可能性もあります。

このような動きは、イスラエルの基本政策である中東流動化計画が過激に遂行されており、それをトランプ政権のアメリカが全面的に支援している状況と関連があるようです。

トランプ政権にとって、イスラエルの安全保障のための中東流動化計画の実現のほうが、北朝鮮の問題よりも優先順位がずっと高いと見てよいでしょう。

しかし、イランを弱体化させ、中東流動化計画を推進するためには、実は北朝鮮の非核化を推進し、アメリカが北朝鮮との敵対的な関係を終わらせることが前提条件になります。

この意味で、北朝鮮とイランの情勢は深く連動しています。北朝鮮との和平に向けた動きが加速すればするほど、イラン攻撃が近くなると見てよいでしょう。

イランのローハーニー大統領が、北朝鮮のキム・ヨンナム
最高人民会議常任委員会委員長と会談  2016年9月18日

このように北朝鮮とイランの情勢が連動している理由は、北朝鮮のイスラエルとイランとの関係を見ると明らかです。

まず北朝鮮とイスラエルとの関係ですが、歴史的に北朝鮮はイスラエルと敵対的な関係にあり、イスラエルを国家として承認していはいません。北朝鮮はイスラエルと対立するアラブ諸国側を長年支援してきました。そして、イスラエルと北朝鮮の戦闘機が激突した歴史まであります。

1973年10月、エジプトやシリアなどのアラブ諸国が1967年の6日間戦争でイスラエルに占領された領土の奪還を目的に、イスラエルを攻撃しました。第4次中東戦争の開始です。

このとき、北朝鮮はアラブ諸国を軍事的に支援し、20名のパイロットとともに、MIG21戦闘機の編隊をエジプト南部の基地に派遣しました。この戦闘部隊はエジプト上空で、イスラエルのF4ファントム戦闘機と交戦しています。

第4次中東戦争はオイルショックを引き起こしながらも、エジプトとシリアは占領された領土の奪還に失敗し、イスラエルの実質的な勝利で終結しました。

その後、1979年にはエジプトのサダト大統領がイスラエルとの歴史的な和平に応じたため、イスラエルが占領していたシナイ半島をエジプトに返還し、両国の敵対関係は終了しました。

しかし、その後も北朝鮮のアラブ諸国支援は継続しました。

北朝鮮は第4次中東戦争後も、エジプトやシリアに軍需工場を建設し、両国との友好を大切にしました。

そうした支援は、北朝鮮からの一方通行ではありませんでした。エジプトはパイロット派兵の見返りとして、北朝鮮にソ連製弾道ミサイルである「スカッドB」(ソ連名はR-17E)を引き渡したことが韓国国防部によって確認されています。いわゆるノドンやテポドンなどの北朝鮮の弾道ミサイル開発は、ここから始まったと考えられています。


ただし、北朝鮮は最初から弾道ミサイルの引き渡しを求めて派兵したわけではなかったようです。当時の参謀総長であったシャーズィリーによると、北朝鮮の空軍部隊がエジプトに到着したのは1973年6月であったのですが、ソ連の弾道ミサイル旅団がR-17Eとともに初めてエジプトに到着したのは同年7月末のことでした。北朝鮮が派兵を決定した時には、エジプトにはまだ弾道ミサイルがなかったのです。

北朝鮮でミサイル部隊が創設されたのは、エジプト派兵から間もなくと考えられます。974年8月に金日成が、後に戦略ロケット司令部と呼ばれるようになる第639軍部隊を訪問した記録があるからです。

エジプトがいつ、北朝鮮に弾道ミサイルを渡したのかは分かっていません。ただ、エジプトにR-17Eが導入された1973年7月から、金日成が第639軍部隊を訪問した1974年8月までの間であったろうと推定されます。ここから北朝鮮の弾道ミサイル開発が始まり、第639軍部隊が戦略ロケット司令部として対外的に公にされるのは約40年後のことです。

シリアも、ハーフィズ・アル=アサド大統領(バッシャール・アル=アサド現大統領の父)が1974年9月28日から10月3日に北朝鮮を訪問し、朝鮮半島で再び戦争が起これば支援軍を送ることを約束しました。

シリアは現政権においても北朝鮮との友好関係を維持しています。アサド政権と北朝鮮の間には数々の軍事協力があったはずですが、まだ全容は明らかになっていません。

「アラブの春」によってシリアは内戦状態に入り、アサド政権は以前と比べて弱体化しています。それでも、北朝鮮は「イスラーム国(ISIL)」や自由シリア軍、ヌスラ戦線、クルド人勢力などのシリア国内の他の勢力に加担せず、アサド政権を支持し続けています。

アサド政権もまた北朝鮮を支持し続けています。アサド政権はアメリカや韓国と国交を締結していません。さらには対北朝鮮制裁にも反対しており、国連加盟国に要請されている制裁状況の報告にも一切応じていません。

また、2005年12月以来の国連人権委員会や国連総会における北朝鮮人権状況決議でも、アサド政権は一貫して反対票を投じてきました。アサド政権によるシリア国内の人権状況が問題にされていることも原因かもしれませんが、北朝鮮への支持が現在に至るまで変化していないのも事実です。

イランは、イラン・イラク戦争中の80年代半ばに北朝鮮からスカッドミサイルを入手し、独自開発を本格化。イラン指導部の親衛隊的性格を持つ革命防衛隊は2006年、同国は外国の協力なしでミサイル開発を進められるレベルに達していると宣言しました。

両国間の直接的な協力を示す証拠は表面化していないですが、専門家の間では、北朝鮮の経済危機が深刻化すれば、現金や石油獲得のために核実験のデータなどがイランに売り渡される恐れがあるとの声も出ています。

このような歴史からみても、北朝鮮とイラン情勢は深く連動していることがご理解いただけるものと思います。北朝鮮との和平に向けた動きが加速すればするほど、イラン攻撃が近くなると見てよいでしょう。

トランプ政権としては、まずは北朝鮮に核を放棄させるとともに、北朝鮮とイラン、シリアなどの中東諸国との関係を絶たせ、北と和平を結ぶか和平交渉のテーブルにつかせ、その後にイスラエルを支援し、イスラエルがイラン・シリアを攻撃し、様子を見て介入すべきと判断した場合は介入することでしょう。

トランプ大統領は、何としてもオバマ前大統領の「戦略的忍耐」を正す腹でしょう。

【私の論評】

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2018年5月12日土曜日

【日本の解き方】野党「18連休」と国民民主党 立民と「左派連立」目指すも、経済政策の無理解が問題だ ―【私の論評】多数派の意見や考えを無視しては、政治もマスコミも成り立たない(゚д゚)!

【日本の解き方】野党「18連休」と国民民主党 立民と「左派連立」目指すも、経済政策の無理解が問題だ 

野党合同ヒアリングで関係各省庁の職員から聞き取り
を行う野党議員(奥列)=8日午後、国会内

民進党と希望の党が合流した新党「国民民主党」が誕生したが、離党者も数多く出て、衆院で野党第1党になれなかった。今後、立憲民主党との違いを打ち出すことができるのだろうか。

日本維新の会を除く野党6党は、大型連休の間、本職であるべき国会審議を拒否し、連休明けを含めなんと18連休だった。その間、辞任要求をしていた麻生太郎財務相が国会に出ているのに、目の前のクビを取るための質問を国会でしなかった。

一方で、国会外で「野党合同ヒアリング」と称して、国会答弁もできない下っ端官僚をつるし上げていた。これは、ある意味でパワハラだ。答弁能力のない下っ端官僚が同じ答弁を繰り返すたびに、一部野党の議員に怒鳴り上げられ、さすがに気の毒だった。


動画はブログ管理人挿入

これには6野党支持者からも批判が出て、8日から国会審議を再開せざるを得なくなった。

そして「連休」明けの7日、野党の18連休の最後の日に、国民民主党の結党大会が開かれた。

民進党は53人、希望の党は54人だったので、本来なら合流した国民民主党は107人になって衆参両院ともに野党第1党になるはずだった。しかし、実際に参加したのは衆院議員39人、参院議員23人の計62人。約4割が新党に参加しなかったことからも、その期待度がうかがえる。新党は今の状態より良くなるために参加するのが通例だが、機を見るに敏な国会議員も見限っているのだ。

希望の党からの参加者は、現実的な安全保障や憲法改正への賛成など、旧民主党時代の曖昧な安全保障・憲法改正論議から大きく舵を切っていた人も少なくなかった。国民民主党ではそうした大きな国の方向性は議論しないらしいので、再び旧民主党時代に戻ったかのようだ。

国民民主党は旧民主党の中ではやや右の中道路線だが、立憲民主党は旧民主党の左派である。国民民主党は、旧民主党のように大きな問題の議論を避けるが、立憲民主党は左派路線そのものを隠そうとしない。

この意味で、コアな左派は立憲民主党のほうに魅力を感じるだろう。国民民主党は、リアルな安全保障や憲法改正の主張をすると、自民党との差別ができなくなってしまうジレンマがある。

この点から、立憲民主党の方から合流を申し入れることはなさそうなので、国民民主党が立憲民主党と合流して、旧民主党が復活するようなことは当面ないだろう。両党は広い意味での左派政党を目指しているが、旧民主党が分裂してできた経緯から、合流することはなく、両党が合わせて過半数を取ったときには連立政権を組むのだろう。保守系の自民党と公明党のように、政党は違うが連立パートナーになるという腹づもりのようだ。

しかし、問題は、本コラムで何回も繰り返しているように、両党ともに、雇用を増やすマクロ経済政策や金融政策について勉強不足であることだ。とても左派政党を名乗る資格はない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】多数派の意見や考えを無視しては、政治もマスコミも成り立たない(゚д゚)!

最近さらに、雇用情勢が改善されています。それは統計数字だけではなく様々な現場にも反映されています。たとえば、最近日本郵便が法人向けの郵便物の集荷サービスを6月末に廃止する方針を固めました。

人手不足の日本郵政は法人の郵便物の集荷を廃止する

宅配便「ゆうパック」の取扱量増加で人手不足が常態化する中、無料で実施してきた法人の郵便物の集荷を継続するのは困難と判断したのです。同社は既に年明けから、集荷を利用してきた法人顧客にサービス廃止の通知を出していますが、顧客から不満も出そうです。

昨年はヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスは4月、健全な労働環境を守ることを理由に27年ぶりの運賃値上げの方針を発表しました。

昨年はクロネコヤマトの運賃が値上げに

2年続けて、物流に関連する大手企業が運賃をあげたり、サービスを停止したりする状況に追い込まれています。これは、明らかに2013年度から継続してきた金融緩和による雇用増による人手不足によるものです。

このような状況になっても、高橋洋一氏がブログ冒頭の記事で掲載しているように、立憲民主党も国民民主党も、雇用を増やすマクロ政策や金融政策について理解していないようです。特に金融政策に関する理解は最悪のようです。

経済理論など理解しなくても、もう現在の人手不足の状況は理解できるはずです。そうして、この人手不足は金融緩和策による雇用の改善であることも理解できるはずです。

さらに、もっと目利きなら、難しい経済理論など理解していなくても、クロネコヤマトや日本郵便がここしばらく現場の人の採用を多めに行ってきたことにより何が起こったのかも、肌で感じることができるはずです。

クロネコヤマトも、日本郵便でも、まずは現場の人間を増やすのは当然のことです。管理職や、役員を増やすよりも、まずは現場のパート・アルバイトなどを増やすはずです。そうなると、何がおこるのか、会社単位でも平均賃金は下がります。

国レベルで全産業でこれがおこれば、当然実質賃金は下がります。実質賃金は平均値でみるからです。しかし、野党は実質賃金が下がったことを「実質賃金ガー」といって安倍政権を批判するばかりでした。

金融緩和策による雇用の改善は、労働者の雇用を改善するということで、世界中の左派政党や、労働組合などが賛成している政策です。野党は、良く女性の議員や閣僚数などを日本と比較するということなどで、良く海外のことを調べるのですが、金融政策についてはなぜか全く比較もせず、調査もしていないようです。

この世界中の左派政党や、労働組合が賛成している金融緩和策を安倍総理は2012年の政権交代選挙で公約として選挙に勝利し、2013年4月から日銀は大規模な量的金融緩和に踏切りました。それから5年間、途中で8%増税がありましたが、継続して量的緩和を行ってきた結果が今日の雇用情勢の過去にないほどの改善と、人手不足です。

保守派の安倍総理が金融政策で雇用を改善したにも関わらず、国民民主党も立憲民主党も金融緩和政策についてほとんど理解を示していません。

彼らは、元々経済がよくわかっておらず、「 政権や権力と戦うのが自分たちの使命」と思いこんでおり、とにかく「安倍には反対」という姿勢に凝り固まり、安倍総理の実施する金融緩和にまで反対してしまったというのが真相だと思います。

そうして、国民経済を良くするために、左派的な手法でも過去に十分にその効果が確認されている金融緩和策を導入する保守派の安倍総理と、安倍総理が実行している政策であるから反対という左派政党のどちらが国民にとって良いかといえば、無論安倍総理のほうが良いに決まっています。

国民のことを考える政治家と、自分たちの都合しか考えない政治家のどちらが国民に支持されるのかといえば、当然のことながら国民のことを考える政治家です。しかし、そのことに国民民主党も立憲民主党も含めた日本の野党は、何度選挙で惨敗しても理解できないようです。

そうして、選挙で惨敗し続け、少数派の支持しか受けていない野党に肩入れするマスコミもこのことを理解できないようです。

↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(万部)

実際、主要全国紙の朝刊販売数は都市を経るごとの減少しています。この減少は無論インターネットの普及という面もありますが、新聞の報道姿勢が国民の多数派の意見や考えを無視しているということも多いに影響していると思います。

朝朝日新聞は不動産事業で儲けているから、部数が減っても問題ないとよくいわれます。しかし、過去5年の朝日新聞社の財務諸表を徹底分析すると驚くべきことがわかっています。

年5%の部数減で、朝日は倒産の危機に陥るというのです。去年のデータでは40万部減、すでに5%以上部数を減らしています。「朝日廃刊」はもう荒唐無稽の話ではありません

国民民主党や立憲民主党を含む野党は、自ら多数国民を無視して、少数派になる道を選び続ける一方、新聞などのマスコミも少数派である野党にばかり肩入れしています。

少数派であることや、少数派にばかり肩入れすることに固執すれば、やがて自らも少数派になり滅んでいくのは自明の理だと思います。

無論少数派の意見や考えを無視しろと言っているわけではありません。彼らの意見も尊重すべきです。しかし、多数派の意見や考えを無視しては、政治もマスコミも成り立たないのは自明の理です。野党や、マスコミはこれをどう見ているのでしょうか。

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2018年5月11日金曜日

北海道で安倍晋三首相、李克強首相をおもてなし 帰国見送る―【私の論評】李克強の来道には中国の壮大な目論見が関係している?

北海道で安倍晋三首相、李克強首相をおもてなし 帰国見送る

安倍首相(右から2人目)から説明を受ける李克強首相(中央)、
豊田社長(左から2人目)=11日、北海道苫小牧市

 安倍晋三首相は11日、訪問先の北海道で、来日中の中国の李克強首相の自動車工場視察に同行し、昼には食事会を開いて李首相をもてなした。安倍首相は同日午後、特別機で帰国する李首相を新千歳空港(千歳市)で見送った。

 両首脳は11日午前、苫小牧市内のトヨタ自動車北海道の工場を訪問し、トヨタ自動車の豊田章男社長から、次世代電気自動車(EV)や燃料電池自動車について説明を受けた。李首相はEVの走行距離やコストなどに関して熱心に質問し、自動運転技術に関する同社と中国側の共同研究の成果に期待を示した。

 その後、安倍首相は、恵庭市内の農業テーマパーク「えこりん村」で昼食会を主催し、懇親を深めた。

恵庭市内の農業テーマパーク「えこりん村」 写真はブログ管理人挿入

 これらに先立ち両首脳は同日午前、札幌市内で開かれた日中知事省長フォーラムに出席。安倍首相は「大切なことは両国の戦略的互恵関係を目に見える形で実行に移すことだ」などと述べた。

【私の論評】李克強の来道には中国の壮大な目論見が関係している?

なぜ今この時期に、李克強氏が北海道を訪問したのか、様々な憶測が飛び交っています。特に、北海道の土地が中国によって相当購入されていることと関連付けてサイト上では様々な憶測が流れています。産経新聞では、以下のように掲載しています。
李克強首相の北海道視察の狙いは? 日本の代表的な農業地視察で米牽制か
中国の李克強首相(右)と握手を交わす
北海道の高橋はるみ知事=10日夜、札幌市

 中国の李克強首相が就任後初の日本訪問で北海道を視察先に選んだ目的については、日本の代表的な農産地を訪れることで貿易摩擦が激化する米国を牽制する狙いがあると指摘される。

 巨額の貿易赤字削減を求めて制裁措置を連発する米国に対し、中国は牛肉や大豆などの米農産物に高関税を課して対抗。こうした措置には食糧安全保障上のリスクも存在するが、指導者が“代替地”を訪れることで「輸入先を失う危険性については懸念していないとの政治的シグナルを発することができる」(中国筋)というわけだ。

 中国の孔鉉佑外務次官は李氏訪日前の記者会見で視察の狙いを問われ、「北海道の農業は加工技術などに特色があり、中国農業の重要な参考になる」と発言。自動車メーカーの先端技術の見学も挙げた。

 中国の習近平国家主席は外交や経済分野でも自らへの権力集中を進めているが、今回の訪日は李氏が日本との“パイプ役”を担うチャンスだ。ただ日本への接近は国内の対日強硬派から足をすくわれるリスクにもなる。北海道は中国の人気映画のロケ地として観光客も多く、視察先として国内世論から受け入れられやすい無難な地でもあるといえそうだ。
 李克強といえば、中国の経済をみるときの指標として李克強指数が有名です。これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
「ヤバい数字」を隠すため…?中国全人代の幹部人事のウラを読む―【私の論評】李克強の力を削いでも、中国の経済社会の矛盾がさらに蓄積されるだけ(゚д゚)!
中国副首相 左より 韓正、孫春蘭、胡春華、劉鶴 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、李克強指数に関する部分のみ以下に引用します。
これまで、経済政策は李克強首相が主導してきた。李氏は遼寧省の党委員会書記だったころ、「李克強指数」で有名になった。

これは、中国が発表するGDP統計は信頼できず、それよりも鉄道貨物の輸送量、銀行融資残高、電力消費の各統計から経済指数を導き出したほうが、信頼度が高いと発言したことに由来する。実際欧米のシンクタンクでは「李克強指数」を使って中国の経済の実力を測ろうとしてきた。

このエピソードが示すとおり、李氏は中国の経済の実態に通じていて、なかなか指摘しづらい政府のごまかしを率直に指摘してきた人物でもある。

さて、この記事では、李克強副首相について以下のようなことも掲載しています。
 筆頭副首相には共産党序列7位で政治局常務委員の韓正氏が就き、その他の副首相は習近平氏の側近で経済ブレーンの劉鶴氏らが担う。また、中国人民銀行の総裁は同行副総裁の易綱氏が昇格するなど、経済政策に強い人物を中央に固めた形となった。 
この人事は、習近平国家主席の「一強独裁」体制が色濃くなるなか、長期政権の運営には経済政策の強化が欠かせないと政府が考えてのことだろう。だがもうひとつの側面から見れば、習氏の独裁を維持するため、強力な「ナンバー2」の登場を阻止するためとも見てとれる。 

筆頭副首相には共産党序列7位で政治局常務委員の韓正氏が就き、その他の副首相は習近平氏の側近で経済ブレーンの劉鶴氏らが担う。また、中国人民銀行の総裁は同行副総裁の易綱氏が昇格するなど、経済政策に強い人物を中央に固めた形となった。 
この人事は、習近平国家主席の「一強独裁」体制が色濃くなるなか、長期政権の運営には経済政策の強化が欠かせないと政府が考えてのことだろう。だがもうひとつの側面から見れば、習氏の独裁を維持するため、強力な「ナンバー2」の登場を阻止するためとも見てとれる。 
しかし、劉氏の副首相起用で、李首相の影響力は一段と低下するだろう。筆頭副首相に共産党序列7位の韓正氏をあてたのも、政権運営で反抗分子となる存在を作らないためだと考えれば合点がいく。
なぜ、このような人事が行われ、李克強氏の力を削いでいようにみえるかといえば、李克強副首相は、胡錦濤派からでしょう。現在の習近平の独裁体制は、習近平と胡錦濤の接近によりもたらされたものですが、それにしても習近平は胡錦濤派の李克強のことを牽制しておきたいということだと思います。

この李克強がわざわざ北海道に来たわけです。そうして、北海道というと中国関連の企業などによりかなり土地が買い占められているということがわかっています。それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北海道が「中国の省の1つに?」 中国資本が北海道を狙う理由=中国報道―【私の論評】父祖が開拓した国土を徒や疎かに扱うべきではない(゚д゚)!

 経済発展が続く中国では、人びとの購買意欲は止まるところを知らない。日本国内でも中国人投資家がマンションを購入するなどの事例は多く聞かれるが、中国メディアの今日頭条はこのほど、中国資本が北海道の不動産を購入していることを伝えつつ、「北海道が中国の省の1つになってしまうほど」の勢いだと伝えている。 
 農林水産省が2017年4月に発表した「外国資本による森林買収に関する調査の結果」によれば、2016年に外国資本が買収した日本の森林面積は202ヘクタールに及び、前年の約3倍になった。買収された森林の多くが北海道にあり、外国資本のうち8割が中国企業や中国資本だった。中国資本による買収に対し、日本では危惧の声があがっているが、購入の際に日本人の名前や架空の会社の名前を用いる中国企業が存在するために対策は難しいようだ。 
李克強が北海道に来た事自体は、直接は中国資本の不動産の購入とは関係ないかもしれませんが、李克強はこの事実については当然知っていて訪問していると思います。産経新聞の調査では、北海道ではすでに7万ヘクタール以上の土地が中国資本によって購入されているといわれています。

李克強としては、中米の貿易戦争の果てには、北海道の土地を中国資本がさらに購入して、北海道を中国への牛肉や大豆などの農産物の供給基地にしてみせるという意思を表明するために来道したのかもしれません。

さらには、北海道に中国の集積回路の工場と研究施設を設置し日本の技術者を厚遇で雇入れ、米国の集積回路が輸入できなくなっても、自前で製造できるようにするという目論見があるのかもしれません。あるいは、さらにはもっと壮大な目論見があるのかもしれません。

国際政治学者で福井県立大学教授の島田洋一氏は、「氷上のシルクロード」が日本の安全保障の不安材料になると指摘しています。中国当局が南シナ海周辺諸国の主張を無視して島嶼を占拠し、軍事目的と考えられる人工島の建造を続けていることを例に挙げました。

この地図では北極航路は宗谷海峡を通ることになっているが、
中国は補給基地として苫小牧や釧路を狙っている


「長い間、中国が軍事目的で北極海を利用したがっていることは、公然の秘密だった」と島田氏は英字紙サウスチャイナ・モーニングポストに対してこう述べました。「中国側は経済的なチャンスについて多く話している。貿易とビジネスの機会が増えることは確かだが、しかし、北京の決定は人民軍の動きを念頭に置いたものだ」

「南シナ海の島嶼を奪うために同様の論理的根拠を用いていた。中国側が単純にビジネスの思惑で動いていると捉えるのは、全く甘い考えだ」。

北海道を中心に外国資本による土地や資源買収を調査する前北海道議会議員・小野寺まさる氏は今年2月8日、時事評論番組「虎ノ門ニュース」に出演し、氷上のシルクロードにおいて北海道の釧路や苫小牧は中国当局の注目する港になっていると述べました。

小野寺氏の作成した解説地図によると、日本海に接しない中国本土は、中国当局が借款する北朝鮮の羅津港、清津港を使い津軽海峡を通り、北海道の釧路港と苫小牧港へ繋ぐといいます。

釧路日中友好協会によると、中国政府は、北海道最北の稚内と露サハリンの間にある宗谷海峡ではなく、北海道と青森県の間の津軽海峡が「国際航路の主流になることを確認している」というのです。

新千歳空港にも近い苫小牧港には、中遠海運の幹部2人が視察。昨年6月には北極海ルートで巡った貨物船が初入港しました。また、日本政府により国際バルク戦略港湾に選定された釧路港では大規模開発が進んでおり、ここ3年で中国大使館公使、程永華大使、一等書記官が視察しました。


1等書記官は釧路日中友好協会2016年12月例会に出席し、「北極海航路の試験運用に本腰を入れている。アジアの玄関口として、釧路には『北のシンガポール』となるような成長性を期待している」と述べまし。

同会会長の中村圭佐氏は2018年1月26日『日中友好・新春の集い』北海道・札幌日中友好協会に出席し、あいさつのなかで「習近平政権のめだま政策である『一帯一路』『氷上のシルクロード』では、釧路が国際的にも大変注目を集めている。 釧路市の発展はそのまま北海道の活性化に直結する命題」と強調しました。

中国共産党政権主導の経済計画が北海道に浸透していることが垣間見えます。小野寺氏は「これは(私の)妄想などではなく、中国による世界戦略の一つとして北海道が含まれているということを確認していただきたい」と述べ、広く周知を呼び掛けました。

李克強としては、この壮大な試みに関わることによって、習近平に恭順の意を表するという目論見があるのかもしれません。

なお、李克強はわざわざ日本に来て東京に一泊、北海道に二泊しています。この時点で異常であることがわかるはずです。 しかし、マスコミはどこもこれを指摘しませんでした。
高橋はるみ知事をはじめとして、日本の政治家たちはこれを理解しているのでしょうか。沖縄は従来から中国が影響力を及ぼしていることが知られていますが、北海道についてはほとんど知られてきませんでした。

今後の北海道での中国の動き、これからもこのブログでレポートしていきます。

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2018年5月10日木曜日

トランプ氏、解放米国人を出迎え 米朝首脳会談を前に北朝鮮が解放―【私の論評】政府は憲法解釈を変えてでも拉致被害者を奪還せよ(゚д゚)!

トランプ氏、解放米国人を出迎え 米朝首脳会談を前に北朝鮮が解放


北朝鮮から解放された米国人3人が10日未明、米ワシントンのアンドリューズ空軍基地に到着した。ドナルド・トランプ米大統領は基地で3人を出迎えた。

トランプ氏は3人の基地到着を受け、「この本当に最高の人たちにとって特別な夜だ」と述べた。

ホワイトハウスは3人の解放が、予定されているトランプ氏と北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談を前にした友好の意思表示だとしている。

トランプ氏は首脳会談の開催地が「3日以内に」発表されるだろうと述べた。

3人を乗せた米空軍機は、午後2時45分ごろ到着した。トランプ氏とメラニア夫人は機内に入り、数分後に3人の男性と共に姿を現し報道陣に手を振った。

トランプ氏は記者団を前に、金委員長が首脳会談前に3人を解放してくれたことを喜び、「正直言って、会談前に実現するとは思っていなかった」と明らかにした。

3人の解放が自分にとって最高に誇らしい業績かと聞かれると、「それは(朝鮮)半島の完全非核化だ」と答えた。

「(3人の解放実現は)素晴らしい名誉だ。しかし、本当の名誉は、核兵器をなくす勝利の実現だ」とトランプ氏は述べた。

トランプ氏はさらに、北朝鮮に旅行できるようになる日を期待すると話し、さらに金委員長が自分の国を「本当の世界」の一員にしたがっていると、自分は確信していると強調した。

解放されたキム・ハクソン氏、トニー・キム氏、キム・ドンチョル氏の3人は帰国に先立ち発表した声明で「米政府、トランプ大統領、(マイク・)ポンペオ米国務長官、そして我々を家へと連れ戻してくれた米国の人々に深い感謝を伝えたい」と述べた。

「神と、我々と我々の帰国を祈ってくれた全ての家族や友人に感謝する」

トランプ氏は9日、「北朝鮮から飛行機で帰国中のマイク・ポンペオ国務長官に、皆がとても会いたがっている素晴らしい紳士3人が同乗中だと報告できて嬉しい。元気なようだ。そして金正恩と良い会談だった。日取りと場所が決まった」とツイートし、3人の解放を明かしていた。



3人は反政府行為罪などで拘束され、労働収容所に勾留されていた。

解放はトランプ氏と金氏との会談の詳細を調整するためにポンペオ氏が平壌を訪問している最中に起きた。

トランプ氏は「金正恩の行動と3人の帰国を許してくれたことに感謝する」と話した。

左からキム・ハクソン氏、キム・ドンチョル氏、トニー・キム氏

解放された3人はポンペオ氏と共に、米空軍の飛行機で北朝鮮を離れた。4人は帰国途中、東京近郊の横田空軍基地で、より良い医療設備を備えた飛行機に乗り換えたという。

ポンペオ氏は「全ての数値は現在のところ、彼らの健康状態がありうる限り最高に良いと示している」と述べた。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)によると、金正恩氏は同氏が3人の拘束米国人の恩赦を求める米国の申し出を承認したとし、自身とトランプ大統領の会談が朝鮮半島の状況を前進させる「素晴らしい最初の一歩」になるだろうと述べたという。

拘束された3人のうち1人は2015年に労働収容所に収容され、残りの2人は1年余りを収容所で過ごした。3人に対する有罪判決は政治的なもので、人権侵害だと広く非難されている。

解放された3人は
  • キム・ハクソン氏は2017年5月、「敵対行為」の疑いで拘束された。同氏は自分をキリスト教伝道師だとし、平壌科学技術大学(PUST)で実験的な農場を始めようとしていると説明していた。
  • トニー・キム氏はキム・サンドクという名前でも知られ、キム・ハクソン氏と同じくPUSTで勤務していた。トニー・キム氏は2017年4月にスパイ容疑で拘束された。韓国メディアによると、同氏は北朝鮮の人道支援にかかわっていたという。
  • キム・ドンチョル氏は60代前半の牧師。2015年にスパイ容疑で拘束され、その後10年の重労働刑を言い渡されていた。

解放への反応は

韓国大統領府の青瓦台は米国人の解放を歓迎し、今後の交渉に「前向きな影響」があるだろうと述べた。

青瓦台の尹永燦(ユン・ヨンチャン)国民疎通首席秘書官はまた北朝鮮に対し、同様に拘束されている韓国人6人の解放も求めた。

尹氏は「韓国と北朝鮮の融和を促進し、朝鮮半島に平和を広めるため、拘束韓国人の速やかな送還を望む」と述べた。

トニー・キム氏の家族はBBCに提供された声明で、「彼の帰還に向けて取り組み、貢献してくれた全ての人々に感謝したい」と述べた。また家族は「北朝鮮と直接やり取りしたことについて、大統領にも感謝したい」と話した。

米国の外交責任者マイク・ポンペオ国務長官は、6週間で2回、北朝鮮の指導者である金正恩氏と会談

北朝鮮の強制収容所はどんな場所なのか

米国の人権団体「北朝鮮人権委員会」(HRNK)によると、北朝鮮では約12万人が適正な手続きなしに収監されていると考えられている。

韓国製DVD観賞から亡命未遂に至るまで、住民はあらゆる罪状で政府に拘束される恐れがあるという。

そのなかでも政治犯は、専用に収容所に送られることが多い。大抵は過酷な労働収容所で、鉱山採掘や木材伐採など厳しい肉体労働が課される。

米大学生だったオットー・ワームビア氏は、平壌での涙の告白会見から1年もせずに亡くなった

重労働罪を課されていた米国人宣教師のケネス・ベ氏は、悪い健康状態にもかかわらず牧場で週6日の労働を強制されたという。

一番最近解放された米国人、ホテルの政治宣伝ポスターを盗もうとした罪で拘束されていたオットー・ワームビア氏は、昨年解放されたが致命的な健康状態で、帰国後ほどなくして死亡した。

両親のフレッド・ワームビア氏とシンディ・ワームビア氏は、「解放された拘束者やその家族と共に喜んでいる。オットーが恋しい」と話した。

(英語記事 North Korea summit: Trump greets freed US detainees

【私の論評】政府は憲法解釈を変えてでも拉致被害者を奪還せよ(゚д゚)!

安倍首相は10日朝、アメリカのトランプ大統領と電話で会談し、北朝鮮からアメリカ人3人が解放されたことについて「大きな成果だ」と伝えました。 安倍首相「私からは、拘束されていた3名の米国人が解放されたことについて、大きな成果であるとお祝いを申し上げました。

この解放については北朝鮮の前向きな姿勢であり歓迎したい」 また、安倍首相は拉致問題について「日米韓、あるいは中国の協力も得て解決に全力を尽くしていきたい」と改めて強調しました。

さらに、トランプ大統領から、北朝鮮の金正恩委員長とアメリカのポンペオ国務長官との会談について、詳細な説明を受け、米朝首脳会談での対応についてすりあわせを行ったといいます。

 この中でトランプ大統領が「日米で緊密に連携していきたい。日本はビッグプレーヤーだ」と述べたのに対し、安倍首相は「日本の立場を共有していただいていることを感謝する」と応じました。


トランプ大統領が「日本はビッグプレイヤー」だと述べたのは、日本が米国と協同でかなりの圧力を北朝鮮にかけてきたこと、さらには安倍総理の北朝鮮と長期間にわたる交渉の経験による、トランプ大統領に対するアドバイスなどを評価したものと考えられます。

さて、米国人三人の救出と比較すると、日本の拉致被害者問題がいつまでも解決されないのが気にかかります。

拉致犯人はすでにわかっています。被害者が監禁されている国もわかっています。それなのになぜ取り戻せなかったのでしょうか。

その最大の原因として、日本には、その中でもとりわけ外務省には、国家の責任で国民を救出するという考え方自体がなかったからです。現在では事情は多少変化しているとはいえ、海外で被害に遭った国民に対しては、国家としての日本は無関心であり続ける構造になっています。

なぜそうなるかといえば、憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」させられ、そしてそれをいつの間にか後生大事に抱えて現実を直視しなくなった戦後日本国民の意識が変わっていなかったからです。「平和を愛する諸国民」は自明な存在ではありません。

拉致被害者問題が明らかになったり、5人の被害者が日本に戻ってきた時あたりまでは、この国民の意識がほとんど変わっていませんでした。当時の政府の中には、北朝鮮は日本人を一時帰国させたという考え方なので、5人の被害者を北朝鮮に返そうと考えた人もいたというのですから、驚きです。これでは、日本という国は国家の意思もないといわれても、仕方ないような状況でした。

結局、安倍氏の判断で5人は政府の意思で日本に残すと発表したのですが、当時の日本は明らかに異常でした。

横田めぐみさん
 
国際社会では当り前の「国家」という言葉さえ使えない風潮の中で、政府は非常に注意深く、タブー視されていることや言葉には、触れないできたのです。日本全体の価値観が信じ難い程、おかしくなっていたのです。国家の意思、或いは責任について語ること自体が現行憲法下ではあってはならない事柄だという国に、日本はなってしまっていたのです。であれば、外務省も当然、国民を守るために動くことなどしてはならないと考えるわけです。

しかし、現在では帰国した拉致被害者を北朝鮮に返せなどといえば、そのようなことを言い出した人は袋叩きにあうのは確実です。国民の意識も最近はかわりつつあり、この国のあり方も変わってきています。それに、世界には日本のように平和をうたう憲法典を持っている国で、軍隊を持ち自衛戦争を認めている国々もあります。

そうして、この憲法の前文だとて、決して金科玉条ではなく解釈など変えられるはずです。平和を愛する諸国民に対しては、公正と信義に信頼するのは当然です。しかし、北朝鮮の諸国民とくにその中でも支配層の公正と信義は信頼できず、わられの安全と生存を保持しようと決意などできないです。よって、この前文は平和を愛する諸国民に対するものであり、そうではない国に対してはあてはまらないという解釈も十分成り立つと思います。

そうして、内閣法制局も1960年代のはじめころまでは、憲法解釈を何度も変えていました。日本の憲法典は決して、金科玉条ではないのです。

であれば、今回は拉致被害者奪還の最後のチャンスであるとも思われますので、政府としてはギリギリの選択を迫られた場合には、憲法解釈を変えてでも拉致被害者を奪還して欲しいです。米国が三人の米国市民を奪還できた背景には、米軍の強大な軍事力があったことを忘れるべきではありません。

そうして、政府は憲法解釈の変更後に、解散総選挙を実施し国民の信を問えば良いと思います。それで、与党側が負けるような国であれば、国民が馬鹿だということです。それは、それで仕方ないです。しかし、私自身は日本国民はそれほど馬鹿ではないと思います。そのくらいのことをしてでも、今回は、拉致被害者を奪還すべきと私は思います。

そうして、我が国は新たに拉致被害者が出た場合には、自衛隊を派遣してでも自国民を救出できる当たり前の国になるべきです。

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2018年5月9日水曜日

トランプ大統領、イラン核合意からの離脱を発表 欧州説得実らず―【私の論評】米のイラン核合意からの離脱の発表で、正念場を迎えた金正恩(゚д゚)!


核合意離脱を発表するトランプ大統領(ホワイトハウス、8日)

ドナルド・トランプ米大統領は8日、オバマ前政権が締結したイラクとの核合意から離脱すると発表した。合意は「衰えて腐って」おり、「市民」として「恥ずかしいものだ」と語った。

2015年に米国と共にこの合意を結んだ欧州各国からの忠告に反し、トランプ大統領は合意の見返りとして解除していた経済制裁を再び実行すると明らかにした。

これに対してイランは、ウラン濃縮再開に向けて準備を始めていると明らかにした。濃縮ウランは原子力発電だけでなく、核兵器開発の要となり得る。

イランのハッサン・ロウハニ大統領は、「米国は約束を守らないつもりだとを明らかにした」と批判した。

「イラン原子力機構(AEO)に対して、必要となれば工業水準のウラン濃縮を無制限で再開できるように、待機するよう命じた」と大統領は明らかにした。

ただし、まずは他の締結国や同盟国と核合意について話すため、「数週間待つ」としている。

「もし他の締結国との協力で核合意の目的が達成されるなら、現状を維持する」


ロウハニ大統領は「イラン核合意離脱なら米国は後悔する」と警告していた

包括的共同作業計画(JCPOA)と呼ばれるこの合意は、イランが核計画を制限することと引き換えに、国連と米国、欧州連合(EU)が同国に科していた経済制裁の解除を定めた。

トランプ氏はかねてから、この合意がイランの核計画を期限付きでしか制限しないことや、弾道ミサイル開発を制止しないを批判してきた。さらに合意によって、中東地域全体に「武器と恐怖と抑圧」をもたらすために使われた1000億ドルの臨時収入を、イランに与えてしまったなどと非難してきた。

「この衰えて腐った合意内容では、イランの核兵器を阻止できないことは自明だ」とトランプ氏は説明した。

「イランとの合意は根本から不完全だ」

核合意を結んだバラク・オバマ前大統領は、トランプ氏の発表を「不見識」と表現した。

経済制裁はいつ始まるのか

米財務省は、イランへの経済制裁はすぐには再開されないものの、90~180日ほどかかるとしている。

ウェブサイトに掲載された声明によると、制裁は2015年の合意に示された業界で再開される予定で、イランの石油産業、航空機輸出、レアメタル貿易、そしてイラン政府の米ドル獲得政策が含まれる。

ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、イランと取引関係のある欧州企も6カ月以内に取引を停止しなければ、米国の制裁を受けることになると述べたという。

世界各国の反応は?

核合意締結国のフランスとドイツ、英国の各首脳は、これまでトランプ氏を説得しようとしてきたが、今回の決定を受けて遺憾の意を表している。同じく締結国のロシアの外務省も、「深く失望した」と述べている。

EUのフェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表は、EUはこの合意を「断固として維持する」と語った。

オバマ前大統領はフェイスブックに、核合意は現在も機能しており、米国の国益にかなっていると投稿した。

「JCPOA離脱は、米国に最も近しい同盟国と、この国の一流の外交官、科学者、そして情報専門家たちがまとめた協定に背を向けることだ」

「対北朝鮮外交を成功させるために全力を尽くしているこの時にJCPOAから離脱することで、まさに北朝鮮と共に目指す結果実現につながる合意に至れない恐れがある」

アントニオ・グテーレス国連事務総長は米国の発表を受けて「深刻な懸念」を表明し、他の締結国に責務を全うするよう求めた。

一方、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は、トランプ氏が「悲惨な」合意から「思い切って」離脱したことを「全面的に支援する」と述べた。

イランのライバル国サウジアラビアもトランプ大統領の決定を「支援し、歓迎する」としている。

核合意の内容は?

ウラン濃縮作業が行われたイラン・イスファハンの施設(2005年3月30日撮影)

JCPOAはイランと国連安全保障常任理事国の米国、英国、フランス、中国、ロシアにドイツを加えた6カ国で結ばれた。

合意ではイランに対し、核燃料や核兵器に使用される濃縮ウランの在庫を15年間、10年間ウラン濃縮に使われる遠心分離機の設置台数を10年間、それぞれ制限することを定めた。

また、核爆弾に使用できるプルトニウムの製造ができないよう、重水設備を変えることでも合意。見返りとして、イラン経済を苦しめていた国連と米国、EUによる経済制裁が解除された。

イランは同国の核計画が完全に平和的なもので、核合意での取り決めを守っているかどうかも、国際原子力機関(IAEA)によって確認されていると主張している。

<分析>衝突軌道へ――ジョナサン・マーカスBBC防衛・外交編集委員

イランの核兵器開発抑止を目指す唯一の合意を、ドナルド・トランプ米大統領はあっさりと危機にさらした。合意の善し悪しは別にしても。

大統領は核合意とその欠点について容赦ない批判を浴びせた。しかし、代案は示さず、最も緊密な同盟関係にある国々と米国の外交政策を対立させる道を選んだ。

さらに一部では、中東が破滅的な地域戦争に陥る危険性を大幅に高めたと懸念されている。

(英語記事 Trump pulls US out of Iran deal

【私の論評】トランプ大統領のイラン核合意からの離脱の発表で、正念場を迎えた金正恩(゚д゚)!

昨日このブログで予測したとおり、やはりトランプ大統領はイラン核合意からの離脱を発表しました。

昨日の記事を読んでいない方のために、以下にリンクを掲載します。
イラン核合意問題 専門家はこう見る―【私の論評】トランプ氏は、米朝会談を有利にすすめるためイラン核合意問題を活用している(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分のみ以下に引用します。
私は、今回はトランプ氏が「合意から離脱」を発表をすると見ています。そうして、本当にそうするかどうかはわかりませんが、いずれイランへの武力行使の可能性もちらつかせると思います。そうして金正恩を極限まで追い詰めて、米朝会談をかなり有利にすすめるか、金正恩が会談をキャンセルするように仕向け、米軍が武力攻撃をしやすい状況にもっていくものと考えます。 
トランプ氏は元々は実業家です。実業家の場合、常に使える資源は限られていることを自覚しています。だから、優先順位をつけます。現在優先度が一番高いのは、北朝鮮です。優先順位をはっきりつけることと、定めた目標に対しては活用できるものは何でも活用するというのが、優れた実業家の真骨頂です。そうして、本当は米国でさえも、使える資源は限られています。 
イラクの問題と北朝鮮の問題に関して、どちらを優先するかということを考えれば、北朝鮮に軍配があがるのは当然のことです。 
イラン問題は多少複雑になったり、解決が長引いたにしても、イランが北朝鮮のように核ミサイルを米国に発射することはできません。11月の選挙の中間選挙のことを考えても、多少イラン問題が複雑化しようとも、北朝鮮問題の決着への見通しをこのあたりまでにはっきりと、国民に示したいというトランプ氏のしたたかな思惑が透けて見えます。 
これは、政治の専門家や、中東の専門家などにはかえって見えにくい局面だと思います。 
私は、トランプ氏は、米朝会談を有利にすすめるためイラン核合意問題を活用していると考えるのが妥当な見方であると考えます。
このような見方は、日本のメディアは無論のこと、欧米のメディアでもないようです。しかし、私はこの見方に関してある事実を知った後で、さらに確信を深めました。

それは、以下のような事実です。

トランプ大統領は8日に欧米など6カ国とイランが結んだ核合意からの離脱をホワイトハウスで発表した際、ポンペオ長官の4月訪朝に触れ、「北朝鮮と良い関係が構築されつつある」と語っています。

ポンペオ長官は4月に金委員長と会談したことで「良い関係」が生まれたと語った

トランプ大統領は米朝首脳会談について、「会談の予定は決まった。場所も選んである。日にちや時間、全部決まった」と述べました。

トランプ氏はさらに、「結局どうなるのか、見てみよう。うまくいかないかもしれない。しかし北朝鮮や韓国、世界全体にとって素晴らしいものになる可能性がある」と語りました。

トランプ大統領は3月に、北朝鮮からの首脳会談の提案を受け入れると表明し、国際社会に大きな衝撃が広がりました。米国の現職大統領が北朝鮮の最高指導者と会談したことは過去にありません。

トランプ氏は、首脳会談が6月初旬あるいは「それより少し早く」開かれるとし、いくつかの場所が検討されているが米国内ではないと述べていた。

8日には、金委員長が再び中国を訪問し、習近平国家主席と会談したことが明らかになっています。中国のメディアは、金委員長が、朝鮮半島の非核化を実現するため「段階的で同時進行的な」措置を望む、と語ったと報じました。

このポンペオ米国務長官は9日、再び北朝鮮の平壌に到着しました。北朝鮮の核問題をめぐる米朝首脳会談に備え、調整を行います。聯合ニュース(Yonhap News)は韓国の当局者の話として、北朝鮮で拘束されている米国人3人が解放され、ポンペオ氏と共に帰国するとの見通しを伝えました。

ポンペオ氏の平壌入りは同行している代表取材団が明らかにしました。現在は協議を行う柳京ホテル(Ryugyong Hotel)」に滞在しています。

聯合ニュースによると、韓国大統領府の関係者は、ポンペオ氏が「米朝首脳会談の日時を持ち帰るほか、拘束されている人たちを連れて帰るとみている」と語ったそうです。

ポンペオ氏は今月か来月に予定される米朝首脳会談の準備に当たっているほか、北朝鮮側に対し、拘束している米国人3人を解放するよう圧力をかけてきました。


私は4月ポンペオ・金正恩の会談の段階では、イランの原子力開発などを引き合いに出して、段階的で同時進行的な非核化を望んていたのでしょうが、おそらくポンペオ氏は、金正恩に対して米国はイラン核合意からの離脱する旨を伝えて、金正恩の段階的・同時進行的な非核化を断念し、あくまでもリビア方式で完璧に速やかに破棄するように迫ったのだと考えられます。

その後金正恩はすみやかに習近平と会談しています。8日も大連で会談しています。もし、北朝鮮が核を放棄した場合に備えて、北朝鮮が中国の核の傘の下に入ることなどを相談したものと思われます。それとともに、米朝会談が決裂した場合に備えて、制裁が強化された場合の中国が制裁を破る可能性についても、話しいをしたことでしょう。

いよいよ、北朝鮮は米朝会談で、リビア方式の核と核関連施設を完璧に破棄するか、米朝会談で決裂するか、そもそも米朝会談をキャンセルしかなくなりました。

米朝会談が決裂したり、キャンセルすれば、米の制裁はさらにきつくなり、その後に軍事力の行使ということにもなりかねません。

まさに、金正恩とっては正念場です。少しでも対応を間違えれば、米軍に斬首されかねません。

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2018年5月8日火曜日

イラン核合意問題 専門家はこう見る―【私の論評】トランプ氏は、米朝会談を有利にすすめるためイラン核合意問題を活用している(゚д゚)!

イラン核合意問題 専門家はこう見る


アメリカのトランプ大統領が、イラン核合意についての判断を日本時間の9日発表することについて、日本とサウジアラビアの専門家に聞きました。

トランプ政権の悪あがき イランはNPT離脱も

イラン情勢に詳しい慶應義塾大学の田中浩一郎教授は、中東のレバノンでの総選挙で、イランの支援を受けるイスラム教シーア派組織、ヒズボラの陣営が躍進したことなどが背景にあるとしたうえで、「イランの影響力が地域に広がるのを止めることに躍起になっているトランプ政権の悪あがきではないか」と分析しています。

そのうえで、「イランの核合意から離脱か、破棄するという内容になると思う」と述べ、合意から離脱すると発表する可能性が高いという見方を示しました。

また、アメリカが核合意から離脱した場合、「イラン側の責任ある立場の人から、核合意を履行することと、イランがNPT=核拡散防止条約にとどまることを条件付ける発言が出てきた。かつての北朝鮮と同じようにNPT離脱というカードを振りかざしてくる可能性がある」と述べ、イランが、強硬路線に踏み切る可能性もあると指摘しました。

そのうえで、「IAEA=国際原子力機関が、現在、世界で最も厳しい査察態勢のもとで、イランを監視しているが、これがなくなるため、イラン国内で何が行われているのか一切情報が見えなくなり、核兵器を開発しているとの疑いが生まれてしまう。こうした状態をイスラエルやサウジアラビア、それに、アメリカやヨーロッパが放置するとは考えにくく、イランの核施設に対する限定的な軍事攻撃か、イランの現体制を崩壊させるために、大規模な軍事介入をする可能性もある」との見方を示しました。

合意の見直しは不可欠 一層混乱が深まるおそれも

ムハンマド・スラミ博士

中東のアラブ諸国の盟主を自認するサウジアラビアは、おととしからイランと国交を断絶したほか、イランが内戦が続くイエメンの反体制派を支援するなどして、地域を不安定化させていると激しく非難し、アメリカのトランプ政権にイランへの包囲網を強めるよう働きかけてきました。

サウジアラビアのイラン研究機関の代表を務めるムハンマド・スラミ博士は、NHKのインタビューに対し、「核合意はイランの核兵器開発の阻止につながったが、包括的ではなかった。重要なのはイランのアラブ諸国に対する内政干渉をやめさせることを、核合意に含めることだ」と述べ、サウジアラビアにとって合意の見直しは、不可欠だとの立場を強調しました。

一方、「サウジアラビアは、直接戦争を望んでいない。ただ、イスラエルやアメリカがイランの支援を受けた中東各地の民兵を攻撃する可能性はある」と分析し、イランが影響力を拡大するシリアなどで、軍事的緊張が高まり、一層混乱が深まるおそれがあると指摘しました。

また、イランとの経済取引について、「もし湾岸諸国とビジネスの継続を望むならば、イランとビジネスをするべきでない。ビジネスの継続は、イランのネガティブな行動を支援していることにほかならないからだ」と警告しました。

【私の論評】トランプ氏は、米朝会談を有利にすすめるためイラン核合意問題を活用している(゚д゚)!

上記のニュース、イランの核問題について知らないと理解できないと思いますので、まずはそれについて掲載しておきます。

イランの核開発問題(イランのかくかいはつもんだい)とは、イランが自国の核関連施設で高濃縮ウランの製造を企画していた、またはしている、という疑惑がかけられている問題のこと。

イランは医療用アイソトープの生産を行うテヘラン原子炉の稼働のため、20%高濃縮ウランの自国製造を進めています。通常の原子力発電では低濃縮ウランで十分であり、高濃縮ウランを用いるのは原子爆弾の製造を狙っているからではないか、とアメリカなどから疑いをかけられました。

ただし原子爆弾には90%以上の高濃縮ウランが必要であるため、意見が分かれました。イランは自ら加盟する核不拡散条約(NPT)の正当な権利を行使しているのであり、核兵器は作らないと主張した。当時の第6代イラン大統領マフムード・アフマディーネジャードは『Newsweek』2009年10月7日号の取材に対して「核爆弾は持ってはならないものだ。」と否定する発言をしています。

これに対し核保有国アメリカは、イランの主張に疑念を持ち、核兵器保有に向けての高濃縮ウランであると主張して、国際的にイランを孤立化させようとする政策を取ってました。これらには政治的思惑が見え隠れしており、疑惑段階でイランに経済制裁をとる一方で、既に核兵器を保有しているパキスタンやインドなどにはイランのようなボイコット(制裁)を行いませんでした。

イランの政権は、2013年の大統領選挙によって、憲法規定による任期で退任したアフマディーネジャードからハサン・ロウハーニーに交代しました。

2015年にイランは米英仏独中露6か国協議「P5プラス1」との間で、核開発施設の縮小や条件付き軍事施設査察などの履行を含む最終合意を締結し、核兵器の保有に必要な核物質の製造・蓄積を制限することとなりました。

2016年1月16日、国際原子力機関(IAEA)はイランが核濃縮に必要な遠心分離器などを大幅に削減したことを確認したと発表。これを受けてイランとP5プラス1は同日、合意の履行を宣言し、米欧諸国はイランに対する経済制裁を解除する手続きに入りました。

国連常任理事国であり核保有国である5カ国に加えドイツがメンバーとなっている背景には、ドイツとイランの密接な経済的結びつき―とりわけ原子力分野における―があります。イランの核開発はかなりの程度ドイツの原子力技術に依存しており、シーメンスを始めとするドイツの主要企業がイランとの深いつながりを持っています。

バラク・オバマ前大統領時代の2015年に締結されたこの合意は、イランが核開発を制限するのと引き換えに、欧米諸国がイランに対する経済制裁を解除するという「包括的共同作業計画」です。

これに伴いアメリカでは国内手続きとして、イランの合意遵守状況に基づき、大統領が制裁解除を維持するかどうかを定期的に判断することになっています。今度の期限は5月12日です。

トランプは選挙戦のときから、イランとの核合意はアメリカが締結した「最も愚かな」合意の1つだとして、その「解体」を約束してきました。それでもジェームズ・マティス国防長官ら閣僚に説得されて、これまでは離脱を思いとどまってきたようです。

トランプ米大統領は7日、P5プラス1とイランの核合意に関し、「8日午後2時(日本時間9日午前3時)に私の決定を発表する」とツイッターに書いており、おそらく合意から離脱すると発表すると考えられています。

トランプ大統領のこの動きは北朝鮮問題とも関係があるものと考えられます。北朝鮮がイランのように原子力分野の開発を継続し、潜在的な核の脅威を温存することを事前に防止するための措置ではないかと考えられます。

実際、これに対応したものかどうかはわかりませんが、中国国営メディアは8日、北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が7日から8日まで遼寧省大連を訪問し、習近平国家主席と会談したと報じました。金氏の訪中が確認されたのは3月下旬以来、2回目です。つい最近会ったばかなのに、これは何か新しい動きに対応していると考えられます。

金正恩としては、トランプ氏のこの動きを察知して、これに対応するために習近平と対応を協議するために面談したということも十分考えられます。

中国国営通信 新華社が8日に配信した、中国遼寧省大連で会談する習近平主席(右)と金正恩委員長

金正恩としては、核のリビア方式による完全廃棄は何とか避けたい、最低でもイランのように原子力分野の開発を継続し、いつでも核兵器を開発できる体制を整えたいと目論んでいたのでしょうが、それも封じられる可能性がでてきたわけです。

イラン産石油の最大の「お得意様」は中国です。金正恩としては、その中国が輸入量を減らす可能性は低いとみて。中国がイラン制裁に踏み切るかどうか探りにでたものと考えられます。

12年にアメリカとEUが対イラン経済・金融制裁を強化したとき、国際市場におけるイランの石油販売量は半減しました。そしてこのことが、イランを交渉のテーブルに引き戻す重要な役割を果たしました。

しかし、今度の制裁に中国が参加しなければ、前回ほどの経済的打撃をイランに与えることはできません。そうなればイランを交渉のテーブルに引き戻すことは難しいし、ましてや、より厳しい条件の「新合意」を結ぶことなど不可能です。

そうして、イランが交渉のテーブルにつかなければ、北朝鮮にとっては有利になります。金正恩は、米朝会談で比較的優位に交渉をすすめられることにもなります。しかし、もし米国がイランに軍事攻撃という事態にでもなれば、金正恩は嫌がおうでも、リビア方式以外に生き残る道はないことになります。


いずれにしても、今回のイラン核合意問題の趨勢が米朝会談にも大きな影響を及ぼすことになりそうです。

私は、今回はトランプ氏が「合意から離脱」を発表をすると見ています。そうして、本当にそうするかどうかはわかりませんが、いずれイランへの武力行使の可能性もちらつかせると思います。そうして金正恩を極限まで追い詰めて、米朝会談をかなり有利にすすめるか、金正恩が会談をキャンセルするように仕向け、米軍が武力攻撃をしやすい状況にもっていくものと考えます。

トランプ氏は元々は実業家です。実業家の場合、常に使える資源は限られていることを自覚しています。だから、優先順位をつけます。現在優先度が一番高いのは、北朝鮮です。優先順位をはっきりつけることと、定めた目標に対しては活用できるものは何でも活用するというのが、優れた実業家の真骨頂です。そうして、本当は米国でさえも、使える資源は限られています。

イラクの問題と北朝鮮の問題に関して、どちらを優先するかということを考えれば、北朝鮮に軍配があがるのは当然のことです。

イラン問題は多少複雑になったり、解決が長引いたにしても、イランが北朝鮮のように核ミサイルを米国に発射することはできません。11月の選挙の中間選挙のことを考えても、多少イラン問題が複雑化しようとも、北朝鮮問題の決着への見通しをこのあたりまでにはっきりと、国民に示したいというトランプ氏のしたたかな思惑が透けて見えます。

これは、政治の専門家や、中東の専門家などにはかえって見えにくい局面だと思います。

私は、トランプ氏は、米朝会談を有利にすすめるためイラン核合意問題を活用していると考えるのが妥当な見方であると考えます。

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2018年5月7日月曜日

高橋洋一 日本の解き方 物価目標2%は実現できる 黒田日銀の壁は消費再増税、財政出動で景気過熱が必要だ―【私の論評】次の総理はやはり安倍晋三氏しか考えられない(゚д゚)!


2期目に入った日銀の黒田東彦総裁

 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁体制は2期目がスタートした。今度こそ2%のインフレ目標(物価目標)達成はできるのか。2014年4月の消費税率8%への引き上げは悪影響をもたらしたが、19年10月に予定されている10%への再増税はその二の舞いにならないのか。

金融政策の基本は、インフレ率を設定した目標(現在は2%)に、失業率をこれ以上は下がらない水準のNAIRU(インフレを加速しない失業率。筆者は2%代半ばと推計)にコントロールするというものだ。

インフレ率について、消費者物価指数(総合)は黒田日銀スタート時の13年4月は▲0・7%だったが、18年2月には1・5%にまでなった。目標の2%まで2・7ポイント改善すべきところが直近では2・2ポイント。これは100点満点で80点と評価できる。

失業率についてみると、13年4月は4・1%だったが、18年2月には2・5%まで改善した。目標2・5%を達成できたので100点である。インフレ率と失業率を合わせてみれば90点といえる。これは、間違いなく及第点である。

もちろん、インフレ率については、生鮮食品を除く指数が1・0%、生鮮食品及びエネルギーを除く指数は0・5%にとどまっており、まだインフレは弱いと見ることもできる。

失業率も一時的に良くなっている可能性を否定できず、もう少し様子を見るべきだとも思える。

統計として、良い数字であることは事実だが、問題は引き続き及第点が取れるかどうかである。個別価格の変動がなければ、消費者物価は総合指数に収束していく。失業率がNAIRU、インフレ率がインフレ目標になると、おのずとそうなる。そこでポイントはNAIRUがいくらかということになる。

日銀は、正式にはNAIRUについて言及していない。物価リポートでは、構造失業率という言葉を使っている。かつては、NAIRUと構造失業率の関係を聞くと、口頭では似たようなものと答えていたが、今や物価リポートでは「違う」と明確に否定している。それでは、NAIRUはいくらと思っているかと聞くと、答えない。

これは、世界の中央銀行から見れば奇妙なことだ。筆者のように、2%台半ばといえば、一応2・5%くらい、統計の誤差を考えると2・3%でもおかしくないとなるが、答えないのは、中央銀行としての説明責任を果たしていないだろう。少なくとも、物価リポートで公表している「構造失業率が3%台」というのは、ミスリーディングである。

インフレ目標2%はこのままなら達成できるだろう。問題は消費増税が予定されている19年10月までに、失業率がNAIRUとなり、インフレ率がインフレ目標を超えるくらいの過熱状態になっているかどうかだ。

過熱していれば、消費増税が冷やし玉になるかもしれない。過熱していなければ、インフレ目標の達成は遠のくだろう。過熱するかどうかは、今後の財政政策次第である。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】次の総理はやはり安倍晋三氏しか考えられない(゚д゚)!

NAIRUとインフレ目標、失業率の関係は、以下のようになっています。インフレ目標の数値、NAIRUの数値は高橋洋一氏が計算したものです。


この関係がはっきり頭に入っていれば、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事を良く理解できるでしょうし、そもそも金融政策や財政政策がその時々でどうあるべきかなどもはっきりと理解できるでしょう。これを知っていれば、金融政策や財政政策に関して、かなり理解が深まります。知らなかった人是非この際、頭の中に入れて、ことあるごとに利用すると良いと思います。

上の記事で、インフレ率、失業率に関しては、現状の日銀は90点であり、及第点であるとしています。私もそう思います。

しかし、このグラフが頭に入っていないと、高橋洋一氏の言うように、日銀が今のまま量的緩和の姿勢を崩さない限り、インフレ目標2%はこのまま日銀が量的緩和を継続するならいずれ達成できるであろうことも、消費増税が予定されている19年10月までに、失業率がNAIRUとなり、インフレ率がインフレ目標を超えるくらいの過熱状態になっているかどうかが大問題であるということなど理も解できないです。

そうして、インフレ率が完璧に2%を完璧に超える状態になれば、消費税の増税をしても問題はないことや、そのような状態にもっていくのは、今後の財政政策次第であることも理解できないでしょう。

まずは、これが頭に入っている前提で、以下に金融政策と財政政策の違いなど掲載します。これは、経済政策のラグ(ズレ、タイムラグ)を理解するとその違いがより鮮明になります。

経済政策には以下のようラグがあります。

1)内部ラグ
経済情勢の把握から経済政策の実行迄
1-1)認知ラグ
経済現象を認知する迄
1-2)決定ラグ
政策当局が経済情勢を判断し経済政策の発動の決定を行う迄
1-3)実行ラグ
決定した政策を実行に移す迄
2)外部ラグ
 政策実行から経済に効果が生じる迄

金融政策は決定ラグ、実行ラグが財政政策に比べて短く、外部ラグが長くなります。これは、日銀の9人が金融政策決定会合(時には緊急開催もあり)で、即座に決定、実行することができます。過半数の5票を取ることが出来れば良いので、追加緩和が必要であれば、その政策提案に5人の賛成で決定・実行できます。

財政政策は、与党内の調整や国会での議論などを通じて法制化しないと実行できず、決定から実行までに時間がかかります。安倍晋三総理が消費増税延期のために(修正法案提出・可決に必須ではない)衆院解散したことを見ても、財政政策の決定から実行に時間とコストがかかることが分かります。

外部ラグですが、財政政策はどの部分にいくら、と直接的にお金を使うため効果が早く出ますが、金融政策は様々な波及経路を通じて経済に効果を及ぼすため、半年〜1,2年程度のラグがあります。


以上のようなラグがあるからこそ、金融政策と財政政策をうまく組み合わせる必要があるのです。世の中には、財政政策と金融政策を比較してどちらが良いとか悪いとか語る人もいますが、医療の分野では同じ病気を治療するにしても、患者のその時々の状況にあわせて、複数の薬を使い分けるのが普通です。金融政策と財政政策も同じようなものであり、どちらか一方というのでは、経済を速やかに立て直すことはできません。

これには、世界恐慌のときに当時の大蔵大臣であった、高橋是清が財政政策と金融政策を組み合わせて世界で一番はやく恐慌から脱出したという事例があります。世界恐慌の原因は、長らく明らかにされてきませんでしたが、1990年代の研究でその原因はデフレであったことが解明されています。

昭和恐慌からの早期の脱出をみると、デフレ脱却には金融政策が有効であることが実証されました、特に昭和恐慌のような深刻な不況においては財政政策と金融政策のポリシーミックスが有効であることが明らかになりました。

そしてこれらの政策により人々の期待を上向きに変えることが必要であるということです。高橋是清の経済政策はまさにこれを狙ったものでした。

高橋是清

現代日本において「デフレは構造問題」「資金需要がない中で日銀がいくら資金供給しても無駄」というかつての「日銀理論」から、「デフレは日本銀行の責任で解決する問題」で、「断固としてデフレに立ち向かう」という能動的なレジームへの転換を意味するのです。

そしてこの転換こそが、日本に先駆けてリーマンショック時の金融危機において実際に各国が行ってきたことなのです。

山崎元氏が、日銀について以下のようなTweetをしていました。


山崎元氏は「人々の期待を上向きに変える」というのを恋愛にたとえたわけです。そうして、私は同僚の助けということで、財務省の積極財政も必要としたのです。

金融政策と財政政策は対立するものではなく、それぞれの特徴(政策決定に関わる人数やプロセスの多寡、ラグなど)を考慮して、適切な政策割り当てが必要なのです。

いずれにせよ、現状では日本がデフレから完璧に脱却して、緩やかなインフレにもっていくためには、金融政策だけでも何とかなるかもしれませんが、それでは時間がかかりすぎるし、2%のインフレ目標を達してもいないうちに、10%増税などしてしまえば、2%の達成はかなり先に伸びてしまうのは明らかです。

そうして、速やかに2%を達成するためには、財政出動が必要不可欠なのです。というより、10%増税を実行するのであれば、今こそ大規模な財政出動をし経済を加熱させておかないと、また個人消費が落ち込み、デフレになり、2%のインフレ目標はまた先延ばしになってしまいます。増税を先延ばしするなら、金融政策だけでも何とかインフレ目標が達成できるかもしれません。このいずれかの選択肢しかないということです。

これを理解しているのは、政治家では安倍総理とその側近だけです。後は、誰も理解していません。マスコミも理解していません。財務省の官僚は知らないふりをしているだけです。この状況だと、やはり現状ではポスト安倍は安倍総理しかないという結論になります。

【私の論評】

米国インサイド情報紙が「安倍3選は確実」と分析した理由―【私の論評】東京新聞ですら安倍氏3選確実と予想する自民総裁選の行方(゚д゚)!

2018年5月6日日曜日

米国インサイド情報紙が「安倍3選は確実」と分析した理由―【私の論評】東京新聞ですら安倍氏3選確実と予想する自民総裁選の行方(゚д゚)!

米国インサイド情報紙が「安倍3選は確実」と分析した理由

中東歴訪中の安倍総理

米財務省最高幹部が示した「あるコピー」

安倍晋三首相は5月3日午後、中東歴訪(アラブ首長国連邦=UAE、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区の4ヵ国・地域)を終えて、帰国した。

いよいよ大型連休明けの7日から政局が本格化する。そうした中、筆者は連休中に会食した財務省の最高幹部から米国のニューズレター「OBSERVATORY VIEW」(4月26日号)のコピーを頂いた。

同紙を発行するOBSERVATORY GROUP社は金融・財政政策、米議会の動きなど、マクロ経済に与える政治経済動向をモニターし、債券、為替、株式市場に参加する機関投資家を対象に、市場価格に影響を与える可能性がある政策決定や政治情勢に関する分析・情報を事前に提供する。

ニューヨークの本社、首都ワシントン、スペインのビスケー湾に臨むビルバオ、インドの首都ニューデリー、中国の首都北京、そして東京にもオフィスを置く。

同紙は月3~4回、場合によっては週2回発行される。4月26日号はA4版13頁、その内容は「欧州中央銀行(ECB)の会合ポストビュー」と「日本政治―更なる疑惑の影響は?」であった。

興味深く読んだのは、「日本政治」のなかにあった以下の件である。

<安倍総理を引き摺り下ろすことを望む勢力が大声で騒ぎたてているにも拘わらず、最新の世論調査によると、安倍内閣の支持率は30%台前中半でそれなりのフロアを形成しているようだ。この水準だと、9月の総裁選でチャレンジャーが安倍総理に勝利するシナリオを描くのは難しい。我々の使う支持率は11の主要メディアの毎月の世論調査結果の平均値である。NHK、大手新聞5社(朝日、産経、日経、毎日、読売)、大手通信社2社(共同、時事)、民放3社(日本テレビ、TBS、テレビ朝日)の11社だ>

「世論はメディアと逆に動いている」と指摘

上記は、新聞記事でいう「リード」である。

そのリードに続いて、分析のポイントが3点記述され、補足のファクトが3点記されている。ポイント(1)は、こうだ。

<安倍内閣の支持率は4月、(財務省文書改竄問題発覚後の)3月中旬対比でみると、僅かだが上昇している。3月全体で見た支持率平均は39.2%だが、文書改竄問題後に実施された世論調査を平均すると、34.6%に下落している。これまで我々は改竄問題への有権者の反応を把握するため、34.6%の数字を使ってきたが、4月になると、支持率は35.3%に僅かに回復している>

その上でポイント(3)は次のように続いているのだ。

<より興味深いのは、福田財務次官のセクハラ疑惑発覚後、麻生大臣の辞任を要求する声が激しさを増していないことだ。実際、メディアの連日の報道にも拘わらず、そうした意見は(誤差の範囲だが)弱まっている>

事実、「日本経済新聞」の最新世論調査(4月27~29日実施)を見てみると、麻生太郎財務相は「辞任すべきだ」は49%で「辞任する必要ない」の43%を上回ったが、「辞任すべきだ」は前月比7%低下している。

それだけではない。野党6党が麻生財務相の辞任など求めて国会審議を拒否していることについて「適切ではない」は64%で「適切だ」の25%を大幅に上回った。上述の「大声で騒ぎ立てている」のは野党6党と一部メディアだと、同紙は分析しているのだ。

4月末の外遊中も満面の笑みを見せた麻生財務大臣

4月末の外遊中も満面の笑みを見せた麻生財務大臣(Photo by GettyImages)4月末の外遊中も満面の笑みを見せた麻生財務大臣(Photo by GettyImages)

アメリカは「3選濃厚」と見ている

重要なことは、このニューズレターが米国の視座から日本政治を分析していることである。ニューズレターと言えば、米国にはかつて「Smick & Medley International Report」があった。有名な1985年の「プラザ合意」をお膳立てした共和党のジャック・ケンプ下院議員首席補佐官のデビッド・スミック、民主党のビル・ブラッドレー上院議員経済首席顧問のリチャード・メドレー両氏が設立したものだ。

両氏は歴代の米政権の金融・通貨政策立案者に非常に近いインサイダーであり、その分析や予測の正確さもさることながら、同紙の真骨頂は、なんといっても情報の「深さ」であった。当時、同紙と契約していたのは世界で約50社(金融関連企業や各国金融当局)、年間購読料が18万ドル(約2500万円)からしても、その価値が理解できるはずだ。

これと同様に世界的に高い評価を得ている冒頭のニューズレターが、「結論」として<麻生攻撃を経由した安倍批判はヒステリックなレベルに達し、過去の例で言えば政権が近未来に瓦解してもおかしくない状況になるかと思いきや、一般有権者、特に若い世代の有権者がそうした風に乗る気はない>と断じているのだ。

今後の政局は荒れ模様になることは間違いないが、どうやら9月の安倍首相自民党総裁3選の可能性は高いと言っていいだろう。

【私の論評】東京新聞ですら安倍氏3選確実と予想する自民総裁選の行方(゚д゚)!

現在の世界情勢をみると、安倍総理が総裁選で負けて、一議員になれば、安倍総理が日本として着任以来、続けてきた全方位外交により、世界中の首脳と築いた強力な信頼関係という大きな資産を投げ出すことになります。

これは、日本にとっては、現状では大きな損失です。特に、北朝鮮情勢が急変している現状ではそうです。まともな国会議員ならこのくらいの認識はあると思います。国民の多くもこれを認識していると思います。

にもかかわらず、安倍おろしに走るような議員にはまともな国会議員や、多くの国民も賛同はしないでしょう。世界情勢が急変していて自国もその影響多大に被りそうな時、政権交代や首相や大統領の交代を望むような政治家や国民が多数を占めるような国はほとんどないでしょう。それが、常識というものです。

ブログ冒頭の記事では、米国インサイド情報紙が「安倍3選は確実」と分析していますが、自民党の衆議院議員、和田政宗氏はも以下のような分析をしています。

安倍総裁三選は確定的 あとは気を引き締めてやるだけ
和田政宗氏

メディアは、安倍総裁三選「黄信号」とか「正念場」とか書くがしっかり取材しているのだろうか。 
一部メディアは三選が確実なので、それを阻止しようとバイアスをかけた報道をしているのだろうか。 
国会議員票405票のうち、細田派94人、麻生派59人、二階派44人を足すと197人。 
これに加え、派閥無所属で安倍総裁を支持し、菅官房長官をはじめとする方々にご指導いただいているグループが30人。 
この人数を足すと全員で227人となり過半数を20人以上超える。 
党員票405票についても、全国では安倍総裁支持の声が圧倒的に強い。 
豊かで平和で誇りある我が国を守り抜くためにも安倍総理・総裁の力が必要。 
外交による平和構築、アベノミクスによる経済成長。 
国民が安心し、生活が豊かになるよう我々は政策を打ち邁進していく。
気を引き締めてやっていく。 
『自民党総裁選 高村正彦副総裁、安倍晋三首相3選支持』(産経新聞) 
https://www.sankei.com/politics/news/180504/plt1805040011-n1.html
私は、和田氏の見方は正しいと思います。

各種スキャンダルで、日本国内で最悪の政治的危機を迎えている安倍総理ですが、安倍内閣の支持率はまだ「政権を譲り渡すべき水準」までは落ちていません。

通常、内閣支持率が30%を下回れば「危険な状況」とみなされます。実際、2000年代以降に執権した首相のうち、大部分が支持率30%を下回ったことで、最終的に政権を譲ることになりました。2007年第1次安倍内閣は支持率25.3%で、2008年福田内閣は23.5%で、2009年麻生内閣は14.2%で、2012年民主党の野田内閣は23.0%で頓挫しました。

現在の安倍首相の場合、26.7%(日本テレビ4月13~15日)、29.0%(テレビ朝日4月21~22日)など、20%後半を二度記録したこともありましたが、他の多くの調査では30%以上を記録しています。


調査機関によりやや違いは見られますが、安倍内閣の支持率は概ね30%を維持しています。一体どのような人々が安倍内閣を支えているのかを分析してみまし。岩盤のように堅固な30%の固定支持層の正体は誰かということです。

東京新聞によると、安倍首相の強力な後援者は若年層です。4月14~15日に実施された共同通信の調査では、安倍内閣の支持率は37%でした。ところが60代以上の支持率は31.3%、40~50代は33.2%だった反面、18~39歳の支持率は49.3%に達しました。アベノミクスの金融緩和によって、雇用が増て実際に恩恵にあずかった若年層がそれだけ多いということです。

東京新聞は、最近実施された企業関連の世論調査を根拠に「若者層とともに企業が安倍内閣を支えている」と分析しました。524社を対象に4月4~17日に実施された「ロイター企業調査」によると、回答した220社のうち「貴社の事業活動にとって安倍首相の自民党総裁3選は望ましいことですか」との質問に「はい」と回答した会社が73%にのぼりました。「政策が大きく変わらないことが経済の安定をもたらす」という理由を挙げる会社が多かったのです。

安倍首相が今年1月の施政方針演説をはじめ、機会があるごとに「日本経済が28年ぶりに7四分期連続のプラス成長を実現した」「正規社員の有効求人倍率(求職者数に対する求人数の比率)が1を越えた」と強調していることも固定支持層の指示をつなぎとめたとみられます。

しかし、同紙は「求人倍率は2012年12月第二次安倍内閣発足以前からすでに改善され始めており、(株式市場の)日経平均指数上昇も公的資金の投入による効果が大きく、実際の景気とは別物」と強調しました。

これに関連して、同紙は「若年層や経済界だけなく、本当に安倍首相を支えるグループは何が起きても野党を支持せず、ただ慣習的に自民党とそのリーダーを支持する層」という駒沢大学の山崎望教授の分析も合わせて伝えました。

反安倍派の東京新聞としては、安倍総理が次の総裁選で落ちることを願っているのでしょうが、どう考えてみても、それはあり得ないということで悔しさを滲ませているのでしょう。

実際には、「慣習的に自民党とそのリーダーを支持している」のではありません。実際に経済は上向き、雇用は現在も引きつづき改善されています。これは、消費税増税は明らかに失敗でしたが、一方では金融緩和は継続してきたからに他なりません。

そうして、この政策の最大の受益者は、すでに就職した若者と、就活中と、その準備をする学生である若者たちです。就職は若者の人生を左右する一大事であり、雇用状況を良くした安倍総理を若者が指示することは当然といえば当然です。

外交、雇用ならびに経済でも、安倍政権は、過去20年間では最も良いパフォーマンスを出しています。安全保障でも高度な議論をしています。

もし、次の総裁選で安倍総理が落選するようなことにでもなれば、外交では安倍総理ほど良い成果を挙げられかどうかは疑問です。

雇用・経済に関しては、ポスト安倍の首相候補者はいずれも、マクロ経済音痴であり、特に金融政策に関してはまともな見識がありません。そのため、ポスト安倍政権は満足な雇用・経済対策を打ち出せず、雇用は悪化、日本は再びデフレ・スパイラルのどん底に沈み、円高によって再び国内の産業が空洞化することになります。

そういうことになれば、ポスト安倍の自民党政権の支持率は、誰が首相になってもまた支持率が30%未満ということになり、短期政権が続くことになります。それどころか、短期政権が何回か続き、過去のように下野することも考えられます。

このような事実もさりながら、「反安倍派」の急先鋒である、東京新聞が「安倍3選」を予測しているわけです。選挙というものは、実際に蓋をあけてみないとわからないといわれていますから、今後どのような不確定要素が出てこないとも限りませんが、今のところ安倍3選は余程のことがない限り確実でしょう。

【私の論評】

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