まとめ
- 日銀のマイナス金利解除の理由付け(2%のインフレ目標が持続的に実現)は不十分である。インフレ率が一時的に2%を超えただけでは金融引き締めの理由にならない。
- 金融政策は物価のみならず雇用など経済全体を勘案すべきだが、日銀はその原則に反している。欧米では5%程度までインフレ率が高くても引き締めを行わなかった。
- 日銀の決定のタイミングと情報リークには問題があり、一部金融業界への利益誘導の可能性がある。日銀と金融機関の癒着が疑われる。
- 政府が日銀の動きを金融正常化の口実に利用しようとしており、増税などの締め付け政策が予想される。
- 米国FRBは経済状況を総合的に判断し政策変更を見送った。日銀はFRBの慎重な姿勢を見習うべきだった。
日銀は3月19日、マイナス金利政策を解除する決定を行った。その理由として「2%のインフレ目標が持続的に実現できる状況に至った」と説明している。しかし、この理由付けには根本的な問題がある。
金融政策は単にインフレ率だけでなく、雇用など経済全体の動向を勘案して判断すべきである。一時的にインフレ率が2%を超えただけで急いで金融引き締めに走るのは、「ビハインド・ザ・カーブ」という金融政策の基本的な考え方に反する。実際、欧米でもインフレ率が5%程度までは金融引き締めを行わなかった。
日銀の今回の決定のタイミングや、一部への情報リークの疑惑には大きな問題がある。日銀は政府の影響下にあり、情報リークは金融業界への利益誘導につながりかねない。これは日銀と金融機関の癒着ぐあいの表れとも受け取れる。
一方、米国FRBは経済の現状を総合的に判断し、政策変更は見送った。インフレ率が2%を上回っていても、その時点での引き締めは控えている。日銀はこうしたFRBの慎重な姿勢を見習う必要があるだろう。
実のところ、今回の日銀の決定には、政府による財政健全化への動きとリンクしている側面もある。政府は日銀の動きを金融正常化の口実に利用しようとしており、今後は増税などの締め付け政策が打ち出される可能性が高い。
つまり、日銀の今回の判断は、経済状況を十分に踏まえたものではなく、政府の思惑が背景にあるのではないかと危惧される。性急な金融引き締めは、かえって日本経済に冷や水を浴びせかねない。日銀は独立性を発揮し、慎重に対応すべきであった。
金融政策は単にインフレ率だけでなく、雇用など経済全体の動向を勘案して判断すべきである。一時的にインフレ率が2%を超えただけで急いで金融引き締めに走るのは、「ビハインド・ザ・カーブ」という金融政策の基本的な考え方に反する。実際、欧米でもインフレ率が5%程度までは金融引き締めを行わなかった。
日銀の今回の決定のタイミングや、一部への情報リークの疑惑には大きな問題がある。日銀は政府の影響下にあり、情報リークは金融業界への利益誘導につながりかねない。これは日銀と金融機関の癒着ぐあいの表れとも受け取れる。
一方、米国FRBは経済の現状を総合的に判断し、政策変更は見送った。インフレ率が2%を上回っていても、その時点での引き締めは控えている。日銀はこうしたFRBの慎重な姿勢を見習う必要があるだろう。
実のところ、今回の日銀の決定には、政府による財政健全化への動きとリンクしている側面もある。政府は日銀の動きを金融正常化の口実に利用しようとしており、今後は増税などの締め付け政策が打ち出される可能性が高い。
つまり、日銀の今回の判断は、経済状況を十分に踏まえたものではなく、政府の思惑が背景にあるのではないかと危惧される。性急な金融引き締めは、かえって日本経済に冷や水を浴びせかねない。日銀は独立性を発揮し、慎重に対応すべきであった。
【私の論評】日銀のマイナス金利解除は時期尚早 - 物価と経済データから検証
まとめ
- 日本のコアコアCPI(食料品・エネルギーを除く物価上昇率)は他国と比べて顕著に低い水準にある。
- 日本のCPI(総合物価上昇率)も他国と比べるとさほど高くない。
- 米国では2022年から積極的な利上げを行っているが、日本はまだ緩和的な金融政策を継続中。
- 日本が米国に追随してマイナス金利解除を急ぐと、為替・物価・企業活動・金融市場に悪影響がある可能性。
- 日銀は政府と連携し、現状に即した慎重な金融政策運営が求められる。
このブログでは、過去のコアコアCPIの推移の国際比較や米国と日本の対比等から現状では利上げ(マイナス金利解除)などすべきではないことを指摘してきました。
その時に論拠としたのは、コアコアCPIの表だけでしたが、CPIの表も同時に示さないと、日銀やマスコミの得体のしれないおかしげな説明ともあいまって、多くの人が理解しにくいのではないかと思いましたので、本日CPIも表であげようと思います。
以下はCPI(総合物価指数)の上昇率の国際比較です
2020年~2023年12月時点の総合CPI上昇率の国際比較
CPIで比較しても、日本の物価上昇率は他国と比較すれば、さほどでないことがわかります。CPI情緒率だけを根拠に、マイナス金利政策の解除をマスコミ等は支持しているようですが、以下の表をご覧いただければ、その根拠は脆弱であることがわかります。
以下に以前このブログに掲載したコアコアCPI(食料品、エネルギー除く) 上昇率の国際比較を掲載します。日本は他国と比較すると明らかに低成長です。
2020年〜直近までの先進国のコアコアCPI
参考資料:
- 国際通貨基金 (IMF) World Economic Outlook database: https://www.imf.org/en/Publications/WEO
- OECD Economic Outlook, Interim Report, March 2024: https://www.oecd.org/economic-outlook/
以下に日米CPI(総合物価指数)比較と米国の金利政策を併記した表を掲載します。
日米の四半期毎の失業率とCPIの推移 (前年比)
米国経済は、2020年3月の新型コロナウイルス感染症によるパンデミックによる景気悪化から回復し、現在はインフレ懸念が強まっています。
FRBは、景気拡大を維持するために金融緩和政策を実施していました。2019年7月から2020年3月にかけて、政策金利であるフェデラルファンドレートを7段階で計1.5%引き下げ、0.00%~0.25%に設定しました。
しかし、2021年後半から、消費者物価指数(CPI)の上昇率が加速し、インフレ懸念が強まりました。2021年12月には前年比7.0%上昇し、40年ぶりの高水準となりました。
これを受け、FRBは2022年3月から利上げを開始しました。2023年12月までに7回、計4.25%の利上げを行い、政策金利は4.25%~4.50%となっています。
FRBがインフレ抑制を過度に重視し、景気後退を招く可能性を指摘しています。失業率が依然として低水準(2023年12月は3.5%)であることを根拠に、景気過熱の懸念は限定的でしょう。
コアコアCPIに関する分析は、以下の記事で行っていますのです。こちらをご覧になってください。
以下に以前このブログに掲載した日米コアコアCPI(総合物価指数)比較と米国の金利政策を併記した表を再掲載します。
日米の四半期毎の失業率とコアコアCPIの推移 (前年比)
情報源失業率
- 米国: 米国労働統計局 (BLS) - 雇用統計
- 日本: 総務省統計局 - 労働力調査 ([無効な URL を削除しました])
コアコアCPIとCPI
- 米国: 米国労働統計局 (BLS) - 消費者物価指数
- 日本: 総務省統計局 - 家計調査
コアコアCPIに関する分析は、以下の記事で行っていますのです。こちらをご覧になってください。
マイナス金利解除に2人反対=審議委員の中村、野口氏―日銀―【私の論評】金融政策の効果発現に時間はかかる - 日本経済の過ちと教訓
現在、米国経済は堅調な成長を続けており、高インフレに直面していますが、日本経済はまだ緩やかな回復段階にあり、低インフレ環境が続いています。このような状況下で、日本銀行がマイナス金利政策の解除を急ぐべきではない理由が複数あります。
第一に、米国の積極的な利上げによる金利差の拡大が円安を招き、輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力を高め、家計や企業の負担を一層増す恐れがあります。特に、エネルギー価格の高止まりは消費を大きく抑制し、景気回復の足かせになりかねません。
第二に、マイナス金利解除は企業の資金調達コストを押し上げ、設備投資の手控えにつながる可能性があります。日本企業の設備投資は既に低迷しており、これ以上の投資減退は将来の経済成長を阻害するリスクがあります。
第三に、長期金利の急上昇は債券市場や株式市場に混乱をもたらし、金融市場を不安定化させる恐れがあります。金融市場の混乱は、その影響が実体経済に波及するため避けるべきです。
第四に、日銀は政府と連携し、財政出動による景気刺激策とあわせて金融緩和を維持することが求められます。金融政策と財政政策の適切な組み合わせが、よりスムーズな経済運営につながります。
このように、為替、物価、企業活動、金融市場、政策運営の面から検討すると、現時点でマイナス金利解除に踏み切るのは時期尚早と言えます。日本銀行には経済の現状をより丁寧に分析し、米国との政策の違いを踏まえた上で、慎重に金融政策の調整を図るべきでした。
第一に、米国の積極的な利上げによる金利差の拡大が円安を招き、輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力を高め、家計や企業の負担を一層増す恐れがあります。特に、エネルギー価格の高止まりは消費を大きく抑制し、景気回復の足かせになりかねません。
第二に、マイナス金利解除は企業の資金調達コストを押し上げ、設備投資の手控えにつながる可能性があります。日本企業の設備投資は既に低迷しており、これ以上の投資減退は将来の経済成長を阻害するリスクがあります。
第三に、長期金利の急上昇は債券市場や株式市場に混乱をもたらし、金融市場を不安定化させる恐れがあります。金融市場の混乱は、その影響が実体経済に波及するため避けるべきです。
第四に、日銀は政府と連携し、財政出動による景気刺激策とあわせて金融緩和を維持することが求められます。金融政策と財政政策の適切な組み合わせが、よりスムーズな経済運営につながります。
このように、為替、物価、企業活動、金融市場、政策運営の面から検討すると、現時点でマイナス金利解除に踏み切るのは時期尚早と言えます。日本銀行には経済の現状をより丁寧に分析し、米国との政策の違いを踏まえた上で、慎重に金融政策の調整を図るべきでした。
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