2018年10月11日木曜日

中国当局者を「企業機密」スパイで逮捕 米政府―【私の論評】媚中・親中などはトレンドどころか、今や米国の制裁対象になり得る時代遅れの馬鹿のすること(゚д゚)!

中国当局者を「企業機密」スパイで逮捕 米政府

Xu Yanjun(シュイ・イェンジュン)被告 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

    米司法省は10日、GEアビエーションなど米国の複数の航空・宇宙関連企業から機密情報を盗もうとしたとして、中国の情報機関である国家安全省の当局者を逮捕、起訴したと発表した。デマーズ司法次官補は声明で「米国の犠牲で中国を発展させる経済政策の一部をなすものだ。知力の成果を盗むことは容認しない」とした。

 起訴されたのは中国東部・江蘇省国家安全庁幹部、シュイ・イェンジュン被告。4月1日にベルギーで逮捕され、今月9日に米国に身柄が引き渡された。被告は少なくとも2013年12月から米国内外の航空・宇宙関連企業で働く専門家から情報を得ようとして、大学での講演を口実に中国への旅行に招待し、旅費などを負担していた。

 被告は航空機のジェット・エンジン関連技術の取得を狙っていたという。米メディアによると、中国情報当局者の身柄が米国で訴追を受けるために移送されたのは初めて。

 ペンス副大統領は4日の対中政策演説で「中国はあらゆる手段を使って米国の知的財産を取得するよう官僚や企業に命じている」と非難。米政府として中国による知的財産の窃取に厳しい姿勢で臨んでいる。

【私の論評】媚中・親中などはトレンドどころか、今や米国の制裁対象になり得る時代遅れの馬鹿のすること(゚д゚)!

米国に対する不正行為の摘発は急速に進んでいるようです。最近は、このほかにも、米ブルームバーグはこのほど、中国の情報機関が、米コンピューター・サーバー製造大手スーパーマイクロ・コンピューター(以下、スーパーマイクロ)の中国下請け企業に対して、サーバー向けマザーボードにハッキングを可能にするマイクロチップを埋め込むよう指示したと報道しています。

これを受けて、米上院議員2人がスーパーマイクロのチャールズ・リアン最高経営責任者(CEO)宛てに、さらなる情報提供を求める書簡を出しましたた。

ブルームバーグは9日、スーパーマイクロが米大手通信会社のネットワークに提供したハードウェアから悪質なマイクロチップが見つかり、8月に除去されたと報じました。

スーパーマイクロ MicroATX マイクロATX マザーボード C7Z97-M


通信会社から調査を委託されたセキュリティー専門家はブルームバーグに対して関連文書や証拠、分析などを提示し、チップの発見を明らかにしました。今回の発見は、中国当局が「米国向けに生産されたテクノロジー製品に不正に手を加えた」ことを証明した「新たな証拠」だと同専門家は指摘しました。通信会社の社名は明かされていません。

ブルームバーグ4日の報道によると、米政府は、中国軍の工作員によるマザーボード製造段階での悪質チップの埋め込みを突き止めたと伝えました。米政府と企業の情報やデータの取得が狙いだといいます。被害企業は、アップルやアマゾンなど約30社です。

スーパーマイクロ、アップルとアマゾンはブルームバーグの報道を否定しました。

いっぽう、米上院のルビオ議員(共和党、フロリダ州選出)とブルーメンソル議員(民主党、コネティカット州選出)は9日、スーパーマイクロのリアンCEO宛ての書簡で、同社は「下請け企業に対して調査を行ったか」「ハードウェア部品改ざんの証拠が見つかったのか」などの質問リストに今月17日までに回答するよう求めました。

米上院のルビオ議員(右)とブルーメンソル議員(左)

両議員は書簡で、「国会議員として、国家安全保障の面においてわれわれが直面する潜在的な脅威に驚きを隠せない」とし、スーパーマイクロは「顧客と法執行当局、議会に完全な回答と緊急調査を提供しなければならない」と強調しました。

今後米国による中国の不正行為摘発はさら苛烈になってくことでしょう。さて、この流れは日本とも無関係ではありません。それを理解するために、過去の日本と米中の関係にまで遡ります。

米国と中国は、80年代から日本を仮想敵国とした潜在的同盟国でした。その頃の日本経済は米国を追い越さんばかりの勢いが有り、それを驚異に感じた米国はプラザ合意で円高にすることで日本の勢いを止めることに成功しました。円高と中国の人民元安は日本にダブルパンチをもたらしました。

当時米国は、中国の人民元切り下げを認めました。そのため中国は、1ドル=1人民元だった為替レートを、自分勝手に1ドル=8人民元台まで大幅に切下げていきました。そうして日本円は240円から79円まで一気に円高に持って行かれました。これで中国の労働単価は日本の30分の一にまで下がったのです。

これでは、日本の輸出産業が成り立つはずがなく、日本国内にあった製造工場は中国に引っ越していってしまいました。さらに、今世紀に入ってからは、日銀が金融引締めを強烈に実行したため、日本はデフレ・超円高とてなりこの流れを加速しました。

そうして、米国自身も中国に対して資本と技術を提供して、世界中に中国製品が溢れるようになりました。そして中国は日本を追い越して世界第二位の経済大国となり軍事大国となりました。(ただし、中国の経済などはデタラメであるため、実際はドイツ以下という説もある)

日本は、米国が目論んだ通りに停滞を余儀なくされましたが、米国は同盟国と敵対し、潜在的敵国の中国とは経済同盟を組んで日本封じ込めに成功しました。このあたりは、当時アメリカで出版された「日本封じ込め―強い日本vs.巻き返すアメリカ」というジェームス・ファローズの書籍を読んでいただければ、詳細をご理解いただけるものと思います。

90年代から始まったジャパンバッシングは、オバマ大統領の時代まで続きました。そして米国は中国とのG2戦略を打ち出して、アメリカと中国の二カ国で世界をリードしようとオバマ大統領は演説するまでに至ったのです。



アメリカと中国による日本挟撃戦略は、日本に鳩山政権を生みましたが、鳩山首相は戦後初めて米軍に出て行けと言った首相になりました。米国のG2戦略は日本の離反を招きましたが、鳩山首相はあっという間に失脚してしまいました。民主党政権は米中等距離外交を打ち出しましたが、米国はこの鳩山民主党政権に相当な危機感を持ったに違いありません。

これは中国による米政界に対する工作やロビー活動の成果と考える他はないことが明らかになりつつあります。米国には親中派人脈がありました。例えばクリントン財団に中国人が多額の寄付を行っていたことが明るみになり大問題となりました。このように、中国によるアメリカ政界買収工作は成功しました。

米国は民主国家であり、独裁国家からの買収に弱く、フランクリン・ルーズベルト政権もソ連のスパイ(コミンテルン)に相当深いところまで侵入され、工作をされ、日本との戦争を強行するに至りました。このあたりは、トランプ氏を含む米国の保守層の間ではかなり理解されるようになり、歴史の見方が従来とは変わってきています。

第5回コミンテルン(共産主義インターナショナル)のプラカード。
1924年6月17日-7月8日 モスクワで行われた。

米国はソ連に買収され中国に買収されて日本は酷い目にあってきたのです。中国ロシアにとっては日本は目の上のたんこぶであり、日本を叩くには米国を利用すれば良いと考えてきたのでしょう。韓国も同じです。

そのような視点で見るとトランプ大統領の出現は画期的ですし、中国はトランプが大統領になるとは思ってもいなかったでしょうし、トランプ大統領は中国から金をもらっていないのでしょう。

そのため、中国を叩ける初めての大統領が米国に出現したのです。トランプ大統領は政権内から親中派を一掃してボルトンなどの対中強硬派を登用しました。

そうして、このブログでも度々掲載しているように、最近の米国の中国叩きはトランプ主導というよりは、米国議会主導となり、しかも超党派の動きになっています。

米上院のルビオ議員(共和党、フロリダ州選出)とブルーメンソル議員(民主党、コネティカット州選出)は9日、スーパーマイクロに対する質問などもそれを象徴するものです。

この動きも中国は予想していなかったでしょう。中国としてはトランプ政権が短期で終われば、買収などを強化すれば、米国はまた従来の親中的になると考えていたようですが、この目論見は外れたようです。

おそらく、トランプ政権が長期になろうが、なるまいが米議会の対中政策は中国自体が変わらない限り厳しいものとなるでしょう。

そうして、先にも述べたように、米国の中国に対する不正行為の摘発はさらに苛烈さをましていくでしょう。

これは、日本にとっては非常に良いことです。ただし、一つ懸念があります。それは、日本では安倍政権は中国に対しては厳しい体制で臨んできたのですが、日本の国会議員の中には、相変わらず親中派・媚中派が存在しているということです。日本のマスコミもほとんどが親中派・媚中派です。

それは、野党は無論のこと与党自民党の中にも存在しています。彼らは、米国議会本気度を未だ理解していないようです。

そうして、最近日中関係が改善の兆しを見せています。その先駆けとなった出来事は、5月に行われた中国の李克強(リー・コーチアン)首相による訪日と日中首脳会談です。

これによって、両国政府は「第三国での日中企業による協力の可能性がある分野」について検討することで合意しました。それを受け、9月末には官民合同「日中民間ビジネスの第三国展開推進に関する委員会」が開催されました。

北京で開催された「日中民間ビジネスの第三国展開推進に関する委員会」

10月には安倍晋三首相の訪中も検討されています。「これで国内の反中勢力を押し切って、中国の経済圏構想『一帯一路』関係のインフラ案件をどんどん受注できる」という期待が日本で膨らんでいるようです。

しかし、実際に第三国での日中企業による協力などという絵空事はすぐに中国によって裏切られることでしょう。

さらにおそれるべきは、このようなことを実行すれば、中国に利することになります。そうなると、日本や日本企業は中国を利しているということで、米国の対中国戦略に離反することになります。

そうなると、日本企業や日本自体が、米国の制裁の対象となりかねないです。日中友好でぬか喜びしている、政治家や財界はこの現実を認識すべきです。

米国よる中国叩きは、現在では当の中国と中国による米国内の工作に焦点があてられています。しかし、それが一巡すると今度は海外に目が向けられることになるでしょう。

そんなときに、日本が日中友好で、中国に利するようなことをしていれば、米国はどのように見るでしょうか。さらに、日本ではスパイ防止法もなく、中国の工作員は日本国内では、日本の技術を盗み放題です。

米国が米国内で、中国の技術窃盗を取締り、米国内からは不正な窃盗を阻止したにもかかわらず、日本からは、米国ならびに日本の技術が中国により盗み放題状態になっていたとすれば、米国のドラゴンスレイヤー(対中国強行派)の日本や日本企業に対する見方は厳しいものになり、最初は批判・非難をするでしょうが、その後は米国の国益を守り、国損を防ぐために、日本に対しても厳しい制裁を課すということは十分ありえます。

もう、媚中・親中などはトレンドどころか、米国の制裁対象になり得る時代遅れの馬鹿のすることであることを認識すべきです。中国に味方をしても、そもそも元々中国は日本に益をもたらす相手ではなく、損をもたらすだすだけであり、それにさらに米国の制裁対象にでもなれば、とんでもないことになるだけであることを認識すべきです。

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2018年10月10日水曜日

米中対立激化 「米国の能力見せつける」米海軍、台湾海峡で大演習へ 経済だけでなく軍事でも中国封じ込め―【私の論評】日本はまずは国会で悪魔中国の実体を暴くことから始めよ(゚д゚)!

米中対立激化 「米国の能力見せつける」米海軍、台湾海峡で大演習へ 経済だけでなく軍事でも中国封じ込め

8日、北京で行われた王毅国務委員兼外相との会談でのポンペオ米国務長官

 米中対立が日に日に過熱している。マイク・ポンペオ国務長官と王毅外相による8日の米中外相会談は、互いに非難を応酬する“異例の展開”となったのだ。マイク・ペンス米副大統領も先週、中国を名指しして、経済、軍事両面で覇権主義を強め、米国の選挙に介入していると痛烈に批判している。米海軍は来月、警告のため、南シナ海や台湾海峡で大規模示威行動を実施することを提案した。米国は貿易戦争だけでなく、中国との軍事的チキンレースに勝ちきる構えだ。

 「われわれは、中国の取った行動に大きな懸念を抱いている」「われわれの間には根本的な不一致がある」

 ロイター通信によると、北京で8日に行われた米中外相会談の冒頭、ポンペオ氏はこう述べた。

 これに対し、王毅氏は「中国の核心的利益を損なう誤った言動を直ちにやめるよう要求する」と抗議した。報道陣の面前で、両外相は歯にきぬ着せぬ過激な発言で互いを批判した。

 今回の訪中では、ポンペオ氏と習近平国家主席との会談も予定されていたが、急きょ見送られたという。

 ポンペオ氏に限らず、ドナルド・トランプ米政権は「対中敵視」姿勢を鮮明に打ち出している。

 ワシントンの政策研究機関で4日、中国政策について演説したペンス氏は「中国は今、ほかの全アジア諸国を合わせたのと同じぐらいの軍事費を使い、陸上、海上、空中、宇宙における米国の軍事的優位性を侵食しようとしている。彼らは米国を西太平洋から追い出し、同盟国を支援できないようにしようとしている。しかし、彼らは失敗するだろう」と、中国共産党を露骨に批判した。

ワシントンの政策研究機関で4日、中国政策について演説したペンス氏

中国は現在、南シナ海で岩礁を埋め立てて軍事基地化し、台湾統一を公言し、沖縄県・尖閣諸島の周辺海域に、軍艦や公船を侵入させている。9月末には、南シナ海で「航行の自由」作戦を行っていた米イージス駆逐艦に対し、中国の駆逐艦が衝突寸前といえる約40メートルの距離まで異常接近した。

 ペンス氏はこれを、「無謀な嫌がらせ」と断じ、「自由に航行し、飛行し続ける」と表明した。

 さらに、ペンス氏は、米国の知的財産権侵害や、11月の中間選挙で共和党の勝敗を左右する重要州で、中国がプロパガンダなどで干渉していることなどを1つ1つ暴露し、次のように言い切った。

 「中国がトランプ大統領の米国第一主義を挫折させようとしているが、大統領は決して屈することはない」

 トランプ政権の「対決姿勢」は、軍事行動にも表れようとしている。

 CNN(日本語版)は4日、《米海軍、大規模示威行動の実施を提案 中国への警告》という見出しの記事で、米海軍が11月に太平洋軍による複数の作戦を実施するよう勧告する案を策定したと報じた。

 作戦の目的について、CNNは「米軍の艦船や戦闘用航空機、部隊などを投入して集中的に演習を実施することで、複数の前線で迅速に敵に対抗できる米国の能力を見せつける狙いがある」とした。

 注目の示威行動が行われる場所としては、南シナ海や台湾海峡の中国領海付近を挙げた。

 習政権を「安全保障上の脅威」と位置づけるトランプ政権は7月、「対中貿易戦争」に踏み切っただけでなく、軍事的にも積極的行動を続けている。9月下旬には、核兵器搭載可能な戦略爆撃機「B52」を、南、東シナ海で飛行させて軍事的プレゼンスを示した。

 ペンス氏の演説や、米海軍の動きをどう見るべきか。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「米国は今、中国に『関税戦争』を仕掛けているが、不公正な経済慣行を改めさせると同時に、軍拡資金を枯渇させるという目的がある。軍事面でも演習を強化しており、経済、軍事両面で中国の封じ込めに入ったといえる」と解説する。

 示威行動が行われる場所も重要だ。

 島田氏は「南シナ海は、米太平洋艦隊と中東に派遣されている艦隊をつなぐ極めて重要ポイントで、米国には譲れない場所だ。中国は勝手に人工島を造り、その周りを領海だと主張しているが、国連海洋法条約に入っていない米国は力によって既得権益を確保してきた。今後も『通行の自由を邪魔するものは排除する』という方向で行くだろう」と語った。

【私の論評】日本はまずは国会で悪魔中国の実体を暴くことから始めよ(゚д゚)!

トランプ米政権は、安全保障と通商の両面から中国と対決し、「新冷戦」の到来を覚悟したようです。ペンス副大統領がワシントンで4日行った演説は、かつてレーガン元大統領がソ連を「悪の帝国」と呼んだ瞬間を彷彿とさせるものです。


米国はこれまで、国際秩序を無視した中国の影響力拡大を見過ごしてきましたが、ペンス演説は「それらの日々を終わりにする」との決意を表明しました。トランプ政権に求めることがあるとすれば、素早く同盟国との戦略調整に入ることす。

いつの時代も、貿易戦争は先端技術の争奪に根差しています。19世紀の英国も、20世紀の米国も、その時代の先端技術を制して覇権を握りました。今回の米中貿易戦争も、21世紀の覇権をどちらが握るかの戦いです。

ペンス副大統領の演説は対決が貿易戦争にとどまらず、安全保障、人権分野に関しても、米中関係を「リセット」すると宣言したものです。とくにペンス氏は、中国が11月の米中間選挙をターゲットに「米国の民主主義に干渉している」ことを重視しています。

サイバー攻撃を仕掛け、大学やシンクタンクに資金を流し、ジャーナリストの行動を制限して、米国の民主主義システムを妨害していることを非難しました。

演説で耳目を引いたのは、北京が自国民の自由と人権を抑圧するため、2020年までにすべてを共産党の監視下に置く「オーウェル的システム」の導入を目指していると糾弾したことです。

これは、英国の作家ジョージ・オーウェルが描く全体主義小説「1984年」の陰鬱な世界を指しています。人々が社会主義の名の下に自由を奪われ、反政府的な言動の一切が封じられる世界です。中国に進出する日米欧の企業内にまで「党組織」の設置を強要される異常さも浮き彫りにしました。

映画「1984」より

すでにトランプ大統領は国連安保理で、中国が中間選挙を標的に妨害行為をしているとして怒りを爆発させています。これは、中国が「トランプ後」の米国大統領が、トランプ氏ほど対中強硬姿勢はとらないとの考えから介入してきたとの判断によるものです。

だが、ペンス演説はこの大統領個人の情念を超えて、ボルトン大統領補佐官、マティス国防長官の考え方が色濃く反映したものであるといいます。この対中観の変化は、決して政権内のタカ派に限ったものではありません。

米国人はソ連による初の人工衛星打ち上げ(スプートニク・ショック)のように、出し抜かれたと判断したときに、強烈な対抗心を燃やす傾向があります。



すでに米議会は、超党派の厳しい対中姿勢を反映し、国防権限法などを通じてトランプ政権に対抗策を義務付けています。中国企業による投資の審査を厳格化し、インドや台湾との防衛協力を強化する条項も盛り込まれています。

米国の厳しい対中姿勢に対し、最近の安倍政権は習近平政権の対日友好ムードを受け入れているようにも見えますが、安易に日米引き離しの策に乗るべきではありません。中国の覇権主義的な動きを阻むためにも、同盟国として米国との協調すべきです。

そのためには、このブログでも何度か掲載しているように、まずは中国共産党の悪魔ぶりをトランプ政権のように徹底的に暴く必要があります。

それを暴く米国のように舞台装置をを設置すべきです。その舞台装置とは、米国議会に設置された「米中経済安保調査委員会」です。

これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
沖縄県知事選の結果は「民主主義国家」の皮肉!? 今後は中国の「間接侵略」が一段と進行するだろう ―【私の論評】日本でも、米国議会の「米中経済安保調査委員会」を超党派で設立して、中共の化けの皮をはがせ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より「米中経済安保委員会(U.S.-China Economics and Security Review Commission(略称 USCC)」に関する部分のみを引用します。
この委員会は2000年に新たな法律により、「米中両国間の経済と貿易の関係が米国の国家安全保障にどう影響するかを調査して、議会と政府に政策上の勧告をする」ことを目的に常設されました。議会の上下両院の有力議員たちが選ぶ12人の委員(コミッショナー)が主体となり、米中関係を背景に中国側の軍事や外交の実態を調査するわけです。 
各委員は中国の軍事、経済、外交などに詳しい専門家のほか、諜報活動や安保政策の研究者、実務家が主になります。最近まで政府や軍の枢要部に就いていた前官僚や前軍人、さらには上下両院で長年、活躍してきた前議員たちも委員を務めます。そしてそのときそのときの実際の中国の動き、米中関係の変動に合わせて、テーマをしぼり、さらなる専門家を証人として招いて、公聴会を開くのです。 
同委員会は毎年、その活動成果をまとめて、年次報告書を発表する。その内容は詳細かつ膨大となります。最終的には米国の政府と議会に対中政策に関する提言をするわけです。同委員会の事務局も中国や軍事、諜報に関する知識の抱負なスタッフで固められ、特定テーマについての報告書を委員たちとの共同作業で定期的に発表しています。
米国の中国研究はこのように国政レベルできわめて広範かつ具体的なアプローチが多いです。中国の多様な動向のなかでも米国側が最も真剣な注意を向けるのはやはり軍事動向だといえます。この米中経済安保委員会はまさに中国の軍事動向と経済動向の関連を継続的に調べているのです。
以下に最近の大統領の一覧を掲載します。この一覧表を見ると、この委員会は、2000年に創立されていますから、ビル・クリントン大統領任期の末期に設立されたということです。


この間の対中関係をふりかえってみます。

クリントン政権のときの、1996年に行われた台湾総統選挙で李登輝優勢の観測が流れると、中国軍は選挙への恫喝として軍事演習を強行しました。基隆沖海域にミサイルを撃ち込むなどの威嚇行為を行ない、台湾周辺では、一気に緊張が高まりました。

人民解放軍副総参謀長の熊光楷中将は、アメリカ国防総省チャールズ・フリーマン国防次官補に「台湾問題にアメリカ軍が介入した場合には、中国はアメリカ西海岸に核兵器を撃ち込む。アメリカは台北よりもロサンゼルスの方を心配するはずだ。」と述べ、アメリカ軍の介入を強く牽制しました。

アメリカ海軍は、これに対して、台湾海峡に太平洋艦隊の通常動力空母「インデペンデンス」とイージス巡洋艦「バンカー・ヒル」等からなる空母戦闘群(現:空母打撃群)、さらにペルシャ湾に展開していた原子力空母「ニミッツ」とその護衛艦隊を派遣しました。その後米中の水面下の協議により、軍事演習の延長を中国は見送り、米国は部隊を海峡から撤退させた。その後中国軍(1996年当時、主力戦闘機はSu-27やJ-8やJ-8II)は軍の近代化を加速させています。

この時の総統選挙は結果、台湾独立志向の李登輝が台湾人特に本省人の大陸への反感に後押しされ地滑り的な当選を果たしたため、中国軍のミサイル演習は童話「北風と太陽」で見られる典型的な逆効果だったと結論付けられています。

このような中国絡みの出来事があったからこそ、クリントン政権の末期に「米中経済安保委員会」が設置されたのだと思います。

ジョージ・W・ブッシュのときは、ブッシュ大統領は、少なくとも年一回は記者会見を開催し、テレビで中国の批判をしていました。この批判には、同委員会からの情報がかなり役立ったと思われます。

ブッシュのときに、中国はWTOに加盟しました。この加盟を米国はかなり期待していたようですが、結局米国は中国に裏切られることになりました。

そうして、オバマ大統領の期間においては、中国はとんでもない行為をたび重ねましたが、結局「戦略的忍耐」の美名のもとに、米国は中国に対して非難や批判はしたにもして、結局何もしませんでした。

トランプ大統領になって、米国ははじめて批判・非難するだけではなく、対中貿易戦争を仕掛けるなど具体的行動に打ってでるようになりました。

これら全期間にわたり、各政権においてUSCCの情報はかなり有効に利用されてきたと考えられます。

中国と対立する決断をしたトランプ大統領

そうして、トランプ政権においては、過去のUSCCのすべての情報を統合して、従来いわれきたように、中国が経済発展すれば、やがて、先進国のような体制になるだろうというような考えは、きっぱりと捨てたのでしょう。それどころか、中国は米国の覇権に挑戦して、少なくとも世界の半分を中国の覇権の及ぶ範囲にしようともくろんでいると結論づけたようです。

だからこそ、トランプ政権は、単に批判・非難するだけではなく、実行動に出たのです。これから先も様々な行動にでるでしょう。特に、中国の経済力がかなり弱まってしまい、ロシアなみ(GDPは韓国より若干下回る)に国力がかなり落ちても、覇権主義への野望を捨てない場合は、何らかの軍事行動を起こすのではないかと思います。

日本の国会にはすでにいくつも委員会がありますが、このような委員会を設置し、報告書を公表したり、公聴会を開催して、 米国のように悪魔中国の実体を暴くべきです。

日本の本格的な対中国戦略はそこから始めるべきです。このような委員会を設置して、米国のように貿易戦争などの実行動に出るまでには時間がかかります。しかし、それでも大丈夫です。米中の対立はこれから、少なくと10年、長ければ20年かかります。

今は、まだやり始めたばかりです。いずれ、ここぞというときに、米国が他国の力を要する時がきます。そのときに協調行動が取れれば良いのです。

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2018年10月9日火曜日

謎深まるICPO総裁の拘束 刃物の絵文字の意味は… 「権力闘争が絡んでいることは間違いない」―【私の論評】習近平一派は、もし失脚すればICPO総裁に地の果てまで追い詰められることを恐れたか?

謎深まるICPO総裁の拘束 刃物の絵文字の意味は… 「権力闘争が絡んでいることは間違いない」

孟宏偉氏

国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)の孟宏偉(もう・こうい)総裁が先月25日から行方不明になっていた問題で、中国公安省幹部らが出席した会議で、孟氏が国家監察委員会に収賄容疑などで調べられていると報告された。ただ、中国共産党の血みどろの権力闘争や、有力財界人の不審死などが背景にあるとの見方もあり、専門家は「さらなる大物失脚につながる可能性もある」との見方を示す。

 ICPOは7日、孟氏の辞表を受理したと発表。即時の辞任で、2020年までの残りの任期を務める次期総裁を11月の総会で選ぶという。

 AP通信などによると、リヨンに残った妻が同日に会見を開き、9月25日から孟氏と連絡が取れなくなったと説明した。通信アプリを通じて孟氏から「身の危険」を知らせようとしたとみられる刃物の絵文字のメッセージを受け取ったと明らかにした。妻によると「私の電話を待って」とのメッセージの後、刃物の絵文字が送られてきたとされている。

通信アプリを通じて孟氏から妻へ「身の危険」を知らせようとしたとみられる刃物の絵文字

 孟氏の拘束の背景について「権力闘争が絡んでいることは間違いない」とみるのは中国問題に詳しい評論家の宮崎正弘氏。孟氏は04年に公安相だった周永康・元政治局常務委員に抜擢され、14年まで公安省次官を務めた。

 江沢民派の周氏は、習近平指導部が進める反腐敗闘争で汚職により摘発され、無期懲役となった。その後も側近の高官が相次いで失脚するなか、孟氏は海警局局長や中国人初のICPO総裁など要職を経験した。

無期懲役の判決が下された周永康氏(中国中央テレビから提供された映像からの静止画像、
2015年6月11日)従来は真っ黒だった髪が真っ白になっており、多くの人が衝撃を受けた

 宮崎氏は「孟氏はICPOでも海外逃亡した中国人を多く摘発した実績を持っていたが、“燃えかす”(江沢民派の残党)を排除する狙いと考えられる」と解説する。

 もう一つの焦点が、今年7月に中国海南省の大手航空会社、海航集団の王健会長が視察先のフランスで転落死したこととの関連だ。同社は習主席の盟友、王岐山国家副主席の親族と密接な関係があるとの指摘もある。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「本部がフランスにあるICPOの総裁を務める孟氏は、王氏の死亡や王岐山氏との関係について何らかの秘密を知り得た可能性もある」とみる。

 孟氏の事件が、今後の中国国内での政局に大きな影響を及ぼす可能性もあるという。

 前出の宮崎氏は「現時点では確かなことはいえないが、秋に控える党中央委員会への対策、または習氏の経済的な失策で反対派の動きを抑えるためかもしれない」と話す。

 「米国の反政府系の中国語の新聞は『第2の王立軍事件』と報じている。12年に重慶市副市長だった王氏が米総領事館に駆け込み、国家機密を米国に提供したことで、同市トップだった薄煕来氏が失脚したといわれている。孟氏もフランス当局との交流が激しくなり、中国側の情報を提供していたのではないかという話もある。今後、さらなる大物失脚につながるかもしれない」と宮崎氏は語る。

 闇は深そうだ。

【私の論評】習近平一派は、もし失脚すればICPO総裁に地の果てまで追い詰められることを恐れたか?

上の記事中国内の権力闘争の一端を垣間見せる事件だと思います。さて、孟宏偉の中国当局による身柄の拘束と、孟氏自身がICPOに辞表を提出したということで、2020年までの残りの任期を務める次期総裁を11月の総会で選ぶということですが、この事自体は世界にとって良いことのなのか悪いことなのかという問題を考えてみたいと思います。

無論権力闘争で個人の身柄を拘束するなど、とんでもないことですが、それは別においておくとして、ICPOの総裁が中国人でなくなるということ自体は、世界にとっては良いことかもしれません。

ICPOは2016年11月、インドネシア・バリ島で開いた年次総会で、中国公安省の孟宏偉次官(63)を新総裁に選出しました。中国人が総裁に就くのは初めてでした。

「ICPOは、反体制派や批判者を迫害する権威主義体制の政府に、国際的な逃亡者に関するデータベースの使用を許可するという歴史を有するようになった」

米紙ニューヨーク・タイムズの社説(2016 年12月4日、電子版)は、共産党による一党独裁の国の治安当局者が、ICPOのトップに就くことへの皮肉から始めました。

ICPO本部(リヨン)

■国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)■ 1956年に発足。フランスに本部を置き、加盟する警察の国際的な捜査協力を促進し、国際犯罪の防止や解決に向けた活動を支援している。

■孟宏偉氏■ 中国ハルビン生まれ、北京大卒。沿岸警備を担当する中国海警局、公安省などを経て、11月、国際刑事警察機構総裁。

社説は、中国やロシアがこれまで海外逃亡者に関するICPOのデータベースを乱用してきたと指摘。本来、そのシステムは、テロリストと疑われる人物へのビザ発給を未然に防ぐといった国際的な連携のためのものであるはずが、中国によって「ジャーナリストや民主活動家、人権活動家を罰するために使われてきた」としました。

その上で社説は、孟氏の総裁就任で「あらゆる人権侵害を控えるだけでなく、人権の保護を積極的に推進するというICPOの公約が、どれだけ守られるかということに疑問が生じている」と論じました。

米紙ワシントン・ポストの社説(2016年11月19日、電子版)は、ICPOが「反体制派や人権活動家、記者、ビジネスマンを含む政敵を追跡するために組織を利用する、ロシアや中国といった抑圧的な体制の国々のしもべとなってきた、と近年、厳しく批判されてきた」と指摘しました。ICPO憲章は「『世界人権宣言』の精神に基づき、すべての刑事警察間における最大限の相互協力を推進する」ことや「政治的、軍事的、宗教的な干渉はしてはならない」と唱っています。しかし、実際は有名無実化しているというわけです。

特に問題となっているのが、「赤手配書」の「悪用」です。ICPOは、加盟国の警察に対し、引渡しなどを目的に、加盟国に対して被疑者の身柄の拘束を求める「赤手配書」を発布できますが、近年、この赤手配書の数が急増しています。

ワシントン・ポスト社説は、赤手配書について調査した英国のNGOの見解として「国境を越えて活動家やジャーナリストを迫害する政治的な道具として赤手配書を使うのは、加盟国にとってたわいもないことだ」と伝えました。

2016年1月23日北京の税関が国際逮捕手配書(赤手配書)で密輸容疑者を逮捕しているところ

社説は、高まる批判に対しICPOが改革に着手したことに触れ、「孟氏が抑圧体制の中国での経験からどのような考え方を持ち込もうとも、ICPOの改革努力にブレーキをかけてはならない。改革を加速させるべきだ」と訴えました。

ただ、中国は2014年、ICPOに100枚の赤手配書を発布させています。孟氏が仮に総裁を辞任していなかったとして、ワシントン・ポスト紙の主張に沿うような組織運営を行っていたか、その後はどうなったか定かでありません。

米政府系放送局ラジオ自由アジアの記事(2016年11月11日、電子版)によると、孟氏のICPO総裁就任について、亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」の報道官は、「中国の法執行機関は中国共産党に奉仕し、ICPOを長年、異なる意見を持つ者や海外のウイグル人のリーダーを追跡するために用いてきた」「海外に安息の地を求めるウイグル人たちに恐ろしい結果をもたらすかもしれない」と語りました。

以上のような事実から、中国人がICPOの総裁であるということは世界にとって良いことではないということは明らかです。

ということは、習近平政権は期せずして、世界に貢献したということです。何と素晴らしいことではありませんか。

それにしても、中共は異形であることが理解できる記事だと思います。普通の国なら、ICPOの総裁になった人物をいくら政敵であるからといって、権力闘争で辞任させるような真似はしないでしょう。少なくとも、任期中には務め上げさせるのが普通でしょう。

こんなことをすれば、それこそ中共の面子が丸つぶれです。中共の面子とは、この程度のものというか、われわれの面子、体面などとは随分違うようです。それに、中国としては、ICPOの政治利用もできなくなるのです。彼らにとっては、権力闘争のほうがはるかに重要なのです。

これから、世界は中共の配下の中国籍の人間を国際機関のリーダーになど据えるべきではありません。こんなことをいうと、国籍差別のように聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。

たとえば、アフリカなどの独裁国の国籍のものであっても、国際機関のリーダーにしても良いと思います。なぜなら、そのような場合であっても、中国のようにあからさまに政治利用されることはないからです。

しかし、中国は違います。中国の場合は、中共が任意で、戦時であろうが、平時であろうが「国防動員法」により、学生や一般人民はおろか国際機関のリーダーでも誰でも、地球上のどこの国にいようと、中共の手先として利用できるのです。そんな国の国籍のものを国際機関のリーダーにすべきではないです。

さて、ICPOの総裁は、おそらく中国人ではなくなると思われますが、では他に中国籍の国際機関の長は何人いるか調べてみました。

今のところ以下の四人です。

世界保健機関(WHO)事務局長の陳馮富珍(マーガレット・チャン)氏、国連工業開発機関(UNIDO)事務局長の李勇(リー・ヨン)氏、国際電気通信連合(ITU)の事務総局長に趙厚麟(ジャオ・ホウリン)氏、国際民間航空機関(ICAO)の事務局長柳芳氏。

世界保健機関(WHO)事務局長 陳馮富珍(マーガレット・チャン)氏

これに、今回辞任した孟宏偉を加えると、いっとき5人もの国際機関の長が中国籍だったということです。

これは、今までの世界は中共の恐ろしさを認識していかなったということだと思います。中国はみかけは繕っていますがその実、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされておらず、とてもまともな国とはいえません。

にもかかわらず、まともな国のように扱うべきではありません。異常な国は異常な国として扱うべきです。対中国貿易戦争を始めたトランプ米大統領はまさしく中国をそのように扱っています。我が国もそうすべきです。

そうして、私は今回の孟宏偉氏の失脚は単なる表面上の権力闘争だけではないと思います。もし習近平自身も含む、習近平派の人間が最悪失脚などして、国外逃亡などした場合、孟宏偉がICPO総裁であったとすれば、地の果てまで追い詰められる可能性は否定できません。そのようなことを防ぐために、はやめに芽を摘んだというのが、今回の事件の要因の一つではないかと思います。

さらに、中共の力がなかなか及ばない外国では、ICPOのほうがはるかに犯罪に関する調査能力は高く、それこそ海外での習近平派の一派や家族などの犯罪や不正行為や醜聞などの情報が収集され、それこそ、権力闘争に用いられる可能性も恐れたのではないかと思います。

もし、習近平体制が絶対のものであり、習近平が生きている限りこの体制が続くという確信が習近平にあれば、孟宏偉氏など絶対に裏切らないように因果を含めて泳がせて、政治利用した方が良いはずです。

しかし、習近平は現在の体制にそれほどの確信を抱くことはできないのでしょう。特に、最近のトランプ大統領による対中国攻勢が強まってからは、そうなのだと思います。さらに、孟宏偉氏がトランプ政権に習近平派の海外での犯罪の情報を提供することすらあり得ます。

だからこそ、トランプ大統領の対中国攻勢が苛烈になったこの時期に、孟宏偉氏を拘束したと考えられます。

もし、ICPO総裁が孟宏偉氏ではなく、習近平派の人間であれば、このようなことはしなかったでしょうし、トランプ政権による対中国攻勢がもっと緩やかなもであれば、孟宏偉氏の拘束自体がなかったかもしれません。

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2018年10月8日月曜日

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 ドナルド・トランプ米政権が、中国に「人権問題」で圧力をかけようとしている。新疆ウイグル自治区で、イスラム教徒の少数民族ウイグル族が弾圧されている問題で、制裁を検討しているのだ。覇権を強める習近平政権を「安全保障上の脅威」とみなす米国は、対中貿易戦争に突入し、軍事面でも牽制(けんせい)を続けている。人権問題という「第3の矢」を放ち、中国を窮地に追い詰めようとしている。

 注目のニュースは、ロイター通信が2日報じた。

 ウィルバー・ロス商務長官が、共和党議員に宛てた書簡で、米政府として近く、中国当局による住民監視や多数のウイグル族が入れられた「再教育収容所」の運営に、使われる恐れのある米国の技術の移転を制限すると伝えたと報じたのだ。

ウィルバー・ロス商務長官

 ウイグル族の弾圧については、共和党のマルコ・ルビオ上院議員らが問題視し、トランプ政権に「制裁の実施」を求めてきた。ロス氏は、ルビオ氏らへの書簡で、数週間以内に輸出管理規則(EAR)を改定し、弾圧に関連する技術の導入に関わる企業や個人の取引を制限することを検討していることを明らかにした。

 新疆ウイグル自治区では、今も深刻な人権侵害が続いている。

 米政府系「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」は2日、20万~30万人のウイグル族ら少数民族住民が、強制的に自治区外などに移動させられていると伝えた。

 報道によると、当局は9月26日以降、拘束したウイグル族らを列車やバスで自治区北部に、北部の少数民族を隣接する甘粛省に移動させているという。RFAに対し、関係者は、強制移動の理由として、収容施設の不足のほか、「収容所の職員のなかには拘束者と近い関係にある者もいる。彼らが外に情報を漏らしている」と話した。

 中国によるウイグル民族への人権侵害について、評論家の石平氏は「一部のウイグル人に限定したものではなく、ウイグル民族全体に人権侵害が行われている。100万人単位もの人々が、再教育のための収容所に入れられ、自由を奪われている。収容所の外でも監視・検問を受けており、ウイグル地域全体が『青空刑務所』といっていい。ナチス・ドイツのユダヤ人政策と本質的に変わらない」と語る。

 トランプ政権は7月、対中貿易戦争を開始し、軍事面でも中国への牽制を強化している。人権問題による対中制裁が発動されれば、中国にどんなダメージを与えるのか。

 石平氏は「貿易戦争は、中国の国内経済に大きなダメージを与えるが、人権問題の提起は、中国の国際的イメージをさらに悪化させる。米国が人権を掲げて中国に圧力をかけると、『米国vs中国』ではなく『全人類vs中国共産党独裁政権』という問題となる。中国は国際社会で孤立し、習氏は全人類の敵になりかねない」と話した。

【私の論評】悪魔中共は全人類の敵、この地上から葬り去れ(゚д゚)!

中国によるウィグル人への弾圧は、目に余るものがあります。それについては、在日ウィグル人有識者会議か『中国のウィグル人への弾圧状況についてレポート』という報告書をまとめています。

この報告書を読めば、中国のウィグル人に対する弾圧は、弾圧など通り越して悪鬼か悪魔の所業ということが理解できます。以下にこの報告書の入手先のリンクを掲載します。


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事が中国の悪鬼ぶりを示す部分を引用します。
2.中国当局はウイグル住民から DNA など生体データを採集 
2.1【検診名目で DNA 採集】 
中国国営の新華社通信は 2017 年 11 月、衛生当局の統計として、新疆の総人口の 9 割に相当する約 1900 万人がこの「検診」を受けたと伝えた。また、中国最大手インターネットポータルサイト「新浪(Sina)」が 2017 年 11 月 1 日、新疆ウイグル自治区衛生計画生育委員会から入手した情報として、ウイグル自治区は昨年 15.85 億元投資し、全自治区で 1884.48 万人、その中、南疆4地区・州(ウイグル密集地域)で 912.71 万人(100%)の検診を終えたと伝えた『参考資料19』。 
国際 NGO 人権組織の「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)」は、このような大規模な強制収集は国際人権規約を踏みにじるものだと批判した。 
当局に「全民検診」と呼ばれたこの無料のプロジェクトは、12 歳から 65 歳までの住民を対象に DNA や血液のサンプル、指紋、虹彩、血液型などの生体データを集めている『参考資20-23』。 
2.2【臓器狩り】
中国新疆出身の在英の元外科医エンヴァー・トフティ(Enver Tohti)氏は、こうした不合理な新疆地区住民の DNA 採取について、中国移植権威で富裕層や外国人移植希望者のための移植用臓器となる「生きた臓器バンク」とし、住民を秘密裏に「ドナー登録」しているのではないかとの推測を述べた『参考資料19』。 
中国衛生部(厚生省)の前副部長・黄潔夫氏は 7 月 26 日、AP 通信のインタビューで、国内ドナー登録者は 21 万人を数え、2020 年には、中国は米国を抜いて世界一の移植大国になると主張した『参考資料24』。 
第一章でも述べたが、これまでの報道で各収容所から続々死者が出ていて、家族に返す・見せることなく、新しく設けられた一般人が入ることのできない遺体処理・安置所で処理されている。 
臓器売買のため、臓器が抜き取られた痕跡のある遺体もあったという噂がある。 
以下の写真 1,2 はその証拠である。これは観光でウイグルに行った日本人により今年 1 月にカシュガル空港で撮られた写真であり、空港では「人体器官運送通路」、「人体寄付、移植器官航空運送保障プロセス」標識の専用通路やスペースが用意され、国家ぐるみで監禁されている人から 強制的に臓器を摘出していることを示す徹底的証拠である。


写真1
写真2



中国での臓器売買は以前から行われていることが指摘されていました。このブログでも掲載したことがあります。この臓器売買などについては、過去においてもいくつものソースで明らかにされています。

たとえば、以下は2012年に公開された動画です。



これは米国の新唐人という中国語メディアの動画です。以下にその内容をまとめたものを掲載します。
中国政府の不法な臓器売買について、中国のある特殊警官はスイスの新聞ル・タンに対し内部告発しました。本日はこの話題に迫ります。 
ウイグル人のアブドゥ・レイムさんは1993年から1997年までウルムチの特殊警察部隊で勤務。死刑囚への射殺命令を出していました。彼らの臓器は売買されていたと述べるアブドゥさんは、これは決して珍しくないともらします。 
2011年の9月、アジア移植免疫フォーラムでは中国衛生省の黄潔夫副大臣が「中国の臓器移植は累計10万件を超え、毎年平均1万件余り」と発言。 
しかし今年(2012年)3月、南方週末の報道に寄ると、中国でドナーからの移植はこれまでわずか130件。 
2009年、中国日報も「中国の臓器移植の3分の2は死刑囚のものだ」と報道。
実は弁護士のディビット・タマス(David Matas)氏とカナダの元閣僚ディビット・キルガー(David Kilgour)氏は、2006年から臓器刈りについて独立した調査を実施。去年は「血まみれの臓器刈り」を出版し、本の中で52の例を挙げて、生きた法輪功学者から臓器を奪っていると示しています。 
しかし多くのヨーロッパの国はこの問題に関心を持たないため、内部告発しているアブドゥさんは難民申請をずっと拒まれています。 
法輪功学者の臓器がずっと利用されていると言われているものの多くは謎のままです。 
米国民主保護財団のイーサン・ガットマンさんは「アブドゥ氏こそ死刑囚の臓器売買の生き証人だ」と強調します。中国政府が不法に臓器売買をしているという確固たる証拠がまだ不足している中、アブドゥ氏の証言はその空白を埋められるからです。ル・タン紙に対しても「中国政府の当局者から出た証拠は極めて大切だ。特に新疆という特殊な地域だ。臓器売買という敏感な問題でもある。」と述べました。 
2007年、中国を離れたアブドゥさんは、2008年ヨーロッパに来たものの、ずっと合法的な身分を得られていません。スイスやノルウェーでは難民申請を拒まれ、イタリアへと流れ着きました。しかしイタリアには30万もの中国人がおり、アブドゥさんにとって危険です。実はノルウェーの首都オスロではウイグル人から脅しを受けたことがあります。しかもアブドゥさんの父は新疆で謎の死を遂げます。 
現在、イタリアの難民キャンプに身を寄せているアブドゥさん。しかしこのままではアブドゥさんの知る中国の闇は葬り去られます。これが公にされるかイタリア当局にかかっています。新唐人記者がお送りしました。
GoogleやYouTubeなどで調べると、いくらでもこのような臓器の奪取や、売買が行われているとするソースが見つかります。

生体から、臓器を取り出し、臓器を摘出された人が死亡というのは、中国では日常茶飯で行われていることがうかがえます。しかもこれは、ギャングなど金儲けのために散発的に行うというのではなく、国家ぐるみで組織的に体系的に行われている可能性が濃厚です。

この所業をナチスにたとえる人もいますが、それは間違いです。ナチスドイツにおいては、今でいう臓器移植をしなければならないような病気の人は、優生学的な見地から、処刑されました。これは、これで悪魔のような所業なのですが、中国の臓器ビジネスもかなり悪魔的です。

サングラスをかけた習近平

我が国も含めて過去においては、世界の多くの国々は中国のこの悪魔的所業については目をつむってきたところがあります。しかし、世界は変わりつつあります。

米国が知的財産権保護という大義により、中国に本格的に貿易戦争を仕掛けました。また、軍事的にはこれから、灰色戦争を本格的に仕掛けていくことでしょう。

その過程で、米トランプ政権は、以前このブログでも掲載した、米国議会の「米中経済安保調査委員会」にて、臓器摘出・売買ビジネスに中共が絡んでいることも含めて、中共によるウイグル人弾圧の詳細な内容を報告させ、それを世界中に公開することでしょう。

そうなると、米国内ではますます中国を擁護する声はなくなり、糾弾する声がますます大きくなることでしょう。これに関しては、ロシアも含めて、中国を擁護する国はいなくなるでしょう。

まさしく、米国が人権を掲げて中国に圧力をかけると、『米国vs中国』ではなく『全人類vs中国共産党独裁政権』という問題となるのです。中国共産党は国際社会で孤立し、習氏は全人類の敵になりかねないのです。

以下の動画をご覧いただけば、ご理解いただけるものと思いますが、中共はウイグル人を悪魔化しようとしていましたが、とんでもないです。自分たちこそか悪魔です。



悪魔中共は全人類の敵なのです。親中派、媚中派は悪魔の仲間ということになります。

日本でも、国会で中共の悪魔ぶりをどんどん暴くべきです。ここで、誤解のないように言っておきますが、悪魔は中共(中国共産党)です。悪魔中共は放置しておけば、必ず国内外で悪魔的所業を行い続けます。何が何でも、この地上から葬り去らなければならないのです。

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2018年10月7日日曜日

沖縄県知事選の結果は「民主主義国家」の皮肉!? 今後は中国の「間接侵略」が一段と進行するだろう ―【私の論評】日本でも、米国議会の「米中経済安保調査委員会」を超党派で設立して、中共の化けの皮をはがせ(゚д゚)!



玉城氏は、普天間飛行場の危険を放置するのか?
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

沖縄県知事選は、元自由党衆院議員の玉城(たまき)デニー氏が、約8万票の大差で圧勝した。玉城氏は、名護市辺野古にある米軍キャンプ・シュワブを拡張して、米軍普天間飛行場(宜野湾市)を移設する計画について「断固阻止する」と公約している。

 以前も指摘したが、「国防は国の専権事項」というのが世界の常識だ。自治体の首長や住民が国防問題を左右できる日本の現状は、法制度に不備があるという意味だ。国会は怠慢過ぎないか。

 そもそも、市街地にある普天間飛行場は危険だからと、沖縄県民が移設を望んだのだ。日米両政府はその希望を聞き入れて移設を推進してきた。

 今回の選挙結果は「沖縄県民が普天間移設の希望を撤回し、固定化を望んだ」と解釈することも可能だが、本当にそれで良いのだろうか。

 実は、辺野古よりも普天間の方が、米軍にとって使い勝手がいい。例えば、標高75メートルの高台にある普天間は、辺野古と比べて津波や高波の影響を受けにくい。さらに、V字型に配置される辺野古の2本の滑走路は、いずれも1200メートルと短いが、普天間はボーイング747も離着陸可能な2700メートルである。

 普天間飛行場は市街地の真ん中にあり、「世界一危険」だと言われてきた。私も長年そう信じていたが、詳しく調べてみると、1945年の設置から現在まで、普天間に関わる航空機事故で死傷した日本人は1人もいない。

ちなみに、2015年に東京都調布飛行場近くで発生した小型機墜落事故では、搭乗者5人のうち2人死亡、3人が負傷し、地上でも1人死亡、2人が負傷した。普天間が世界一危険であれば、調布は宇宙一危険なのか?

2015年に東京都調布飛行場近くで発生した小型機墜落事故

 04年、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したときも、乗員3人が負傷したが、日本人の死傷者は1人も出ていない。

 もちろん過去に、普天間飛行場を拠点とする米軍機の事故が何度も発生し、多数の米兵が死亡・行方不明になったことは事実だ。彼らは日米安保条約に基づく任務中の事故により、日米両国のために命を落とした英雄である。基地反対派だけでなく、日本はこの事実を軽視していないか。

 先週のコラムで私は「沖縄県知事選の本質は、米中代理戦争だ」と指摘した。結果的に、米国が敗北し、中華人民共和国(PRC)が勝利した。

 共産主義国として国民に参政権を認めない国が、民主主義国の選挙制度を利用して勝負に勝つとは皮肉な話だ。今後、PRCの「間接侵略」が一段と進行するだろう。もし、「琉球独立」が実現したら、協力した沖縄県民は、参政権に加えて人権まで失う「究極の皮肉」が実現する。 

 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

【私の論評】日本でも、米国議会の「米中経済安保調査委員会」を超党派で設立して、中共の化けの皮をはがせ(゚д゚)!

ケント・ギルバート氏は、PRCの「間接侵略」が一段と進行するだろうと警告していますが、これについては米国ですでに警告を発していました。それも、オバマ政権末期の時点で発していました。

沖縄では中国が米軍基地反対運動をあおり、米軍へのスパイ活動を展開している。このようなショッキングな警告が米国議会の政策諮問の有力機関からすでに二年前に、発せられていました。中国は長期戦略として日米同盟を骨抜きにすることを図り、その具体策として沖縄での米軍基地反対運動へのひそかな支援や米軍の活動への秘密裡の軍事諜報工作を展開しているのだそうです。

沖縄基地反対運動

米国側の政府や議会の関連機関が日米同盟の光や影、虚や実について論じ、内外への注意を喚起するという作業は長年、続いてきました。ところが沖縄での米軍基地問題に関して中国の干渉を正面から指摘したという実例はきわめて珍しいです。米国側としてはそれだけ沖縄での中国の動きを危険視するにいたったということでしょう。日本側としては日米同盟の堅固な保持を望む限り、その警告を真剣に受けとめざるを得ないでしょう

日米同盟はこのところ全体として一段と堅固になりながらも、なお沖縄での在日米軍基地への反対運動は複雑な振動を広げています。まるで強壮な人間のノドに刺さったトゲのように、全身の機能こそ低下させないまでも、中枢部につながる神経を悩ませ、痛みをさらに拡大させかねない危険な兆候をみせているといえるでしょう。

沖縄の米軍基地の基盤が揺らげば揺らぐほど、日米同盟の平時有事の効用が減ることになります。日本への侵略や攻撃を未然に抑えるための抑止力が減ることになるからです。また朝鮮半島や台湾海峡という東アジアの不安定地域への米軍の出動能力を落とし、中国に対する力の均衡を崩すことにもつながるわけです。

沖縄あるいは日本全体を拠点とする米国の軍事力が弱くなることを最も歓迎するのは誰でしょうか。いまや東アジア、西太平洋の全域で米国の軍事的な存在を後退させようとする中国が米軍弱化の最大の受益者であることは明白です。

中国がそのためにソフト、ハード両面での多様な措置をとっていることは歴然ですが、二年前までは沖縄での反米軍基地運動への中国の関与は提起されることはまずありませんでした。しかも中国の対沖縄工作の最終目的は日米同盟分断だというのです。

「沖縄と中国」というこの重大な結びつきを新たに提起したのは米国議会に設置された「米中経済安保調査委員会」という機関です。この委員会は2000年に新たな法律により、「米中両国間の経済と貿易の関係が米国の国家安全保障にどう影響するかを調査して、議会と政府に政策上の勧告をする」ことを目的に常設されました。議会の上下両院の有力議員たちが選ぶ12人の委員(コミッショナー)が主体となり、米中関係を背景に中国側の軍事や外交の実態を調査するわけです。

各委員は中国の軍事、経済、外交などに詳しい専門家のほか、諜報活動や安保政策の研究者、実務家が主になります。最近まで政府や軍の枢要部に就いていた前官僚や前軍人、さらには上下両院で長年、活躍してきた前議員たちも委員を務めます。そしてそのときそのときの実際の中国の動き、米中関係の変動に合わせて、テーマをしぼり、さらなる専門家を証人として招いて、公聴会を開くのです。

同委員会は毎年、その活動成果をまとめて、年次報告書を発表する。その内容は詳細かつ膨大となります。最終的には米国の政府と議会に対中政策に関する提言をするわけです。同委員会の事務局も中国や軍事、諜報に関する知識の抱負なスタッフで固められ、特定テーマについての報告書を委員たちとの共同作業で定期的に発表しています。

米国の中国研究はこのように国政レベルできわめて広範かつ具体的なアプローチが多いです。中国の多様な動向のなかでも米国側が最も真剣な注意を向けるのはやはり軍事動向だといえます。この米中経済安保委員会はまさに中国の軍事動向と経済動向の関連を継続的に調べているのです。



米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」が沖縄と中国のからみに関しての調査結果をこのほど明らかにしたのは 「アジア太平洋での米軍の前方展開を抑える中国の試み」 と題する報告書の中でした。

合計16ページのこの報告書が警告する沖縄での中国の動きを米国の戦略全体の中で位置づけるために、まずこの報告書の主眼についての記述を紹介します。
中国は東アジア、西太平洋地域でもし軍事衝突が起きた場合の中国人民解放軍の米軍に対する脆弱性を減らすために、その種の衝突への米国側の軍事対応を抑える、あるいは遅らせるための『接近阻止』または『領域否定』の能力を構築することを継続している。 中国側は同時に軍事衝突が起きる前の非軍事的選択肢を含むその他の措置も推進している。それらの措置とは米国側の戦略的な地位、行動の自由、作戦の余地を侵食することを意図する試みである。
要するに中国はアジアでの米軍の軍事能力を削ぐことに最大の努力を傾けているというのです。その米軍能力の削減のための工作とは必ずしも軍事手段には限らないです。一連の非軍事的な措置もあるというのです。同報告書がその非軍事的措置としてあげるのが以下の三種類の動きでした。
・関与
・威圧
・同盟分断
以上、三種の中国側の戦術はみなアジアでの米軍の弱体化、同時に中国軍の強化を狙いとしています。その戦術の標的は米国と同時に日本などその同盟諸国により鋭く照準が絞られていまなす。本稿の主題である沖縄に対する中国の工作はその中の「同盟分断」の戦術に含まれていました。

では中国はなぜアジアでの米軍の能力の弱化にこれほど必死になるのでしょうか。その点については同報告書は以下の骨子の理由をあげていました。
中国人民解放軍幹部が軍科学院の刊行物などに発表した論文類は中国がアジア、西太平洋で 『歴史上の正当な傑出した立場』 に戻るためには、米国がアジアの同盟諸国とともに、有事に中国の軍事能力を抑えこもうとする態勢を崩す必要がある、と主張している。
以上の記述での中国にとっての「歴史上の正当な傑出した立場」というのは明らかに 「屈辱の世紀」 前の清朝以前の中華帝国王朝時代のグローバルな威勢、ということでしょう。その過去の栄光の復活というわけです。

この概念は習近平国家主席が唱える「中国の夢」とか「中華民族の偉大な復興」というような政治標語とも一致しています。「平和的台頭」という表面は穏やかなスローガンの背後にはいまの中華人民共和国を過去の王朝時代のような世界帝國ふうに復活させようというギラギラした野望が存在している、と米国側の専門家集団による同報告書はみているのです。

この「野望」は2016年、南シナ海での中国の海洋覇権追求に関して国際仲裁裁判所が「根拠なし」と裁定した「九段線」にもあらわとなっていました。「南シナ海は古代から九段線の区画により歴史的に中国の領海だった」という時代錯誤の中国政府の主張は、「歴史上の正当な傑出した立場」の反映なのです。ただし現代の世界ではその正当性はないのです。ちなみに、この「九段線」なるものはルトワックの『中国4.0』という書籍によれば、中華民国の将官が酔っ払って何の根拠もなく地図に描いたものとされています。

中国が主張する九段線

しかし中国側からすれば、その「正当な傑出した立場」の構築や達成には米国、とくにアジア駐留の前方展開の米軍の存在が最大の障害となります。

この点の中国側の軍事的な認識を米中経済安保調査委員会の同報告書は以下のように総括していました。
中国軍幹部たちは、米国が中国の正当な進出を阻もうとして、その中国封じ込めのためにアジアの北地域では日本と韓国、南地域ではオーストラリアとフィリピンを拠点とする軍事基地システムを築き、グアム島をその中核とし、中国深部を長距離の戦略兵器で攻撃ができるようにしている、とみている。
だからこそ中国にとっては米国がアジアで構築してきた一連の同盟関係とその軍事態勢は有事平時を問わず、敵視や反発の主対象となるわけです。

同報告書は中国側のそのアジアでの米軍の能力を弱めるための対米、反米そして対米国同盟諸国への非軍事的手段の基本的な特徴について以下のように解説していました。
中国人民解放軍の最高幹部たちは各種の論文で『戦争は単に軍事力の競合ではなく、政治、経済、外交、文化などを含めての総合的な競い合いだ』と繰り返し主張している。 つまり政治、経済、外交、文化などの非軍事的要因が軍事作戦を直接、間接に支えなければ勝利は得られないという考え方なのだ。
だから米軍のアジアでの中国のかかわる紛争への介入を阻むためには単に軍事力だけでなく、米国の政治システムや同盟相手の諸国の対米依存や対米信頼を弱めるための外交、情報、経済などのテコが必要となる。その種のテコには貿易協定や友好外交などから賄賂的な経済利権の付与も含まれてくる。
つまりは非常に広範で多様な手段による米軍の能力削減、そして同盟の骨抜きという意図なのです。中国側のその種の意図による具体的な活動が前述の三戦術「関与」「威圧」 「同盟分断」だというわけなのです。

その三戦術のうち対沖縄工作が含まれた「同盟分断」を詳述する前に「関与」と「威圧」について報告書の概略を紹介しておきます。
【関与】 
中国はタイやパキスタンとの経済協力を深め、軍事協力へと発展させ、中国海軍の現地での港湾使用などで、米軍に対する軍事能力を高めている。オーストラリアやタイとの合同軍事演習を実施して、両国の米国との安全保障協力を複雑にする。 韓国との経済のきずなを強めて、安保面でも韓国の米国との密着を緩める。
  【威圧】
中国はフィリピンとのスカーボロ環礁での衝突の際、フィリピン産バナナの輸入を規制した。日本との尖閣諸島近海での衝突の際はレアアース(希土類)の対日輸出を規制した。いずれも経済的懲罰という威圧行動だった。尖閣付近では海警の艦艇の背後に海軍艦艇を配備し、軍事力行使の威圧をかける。中国はベトナムの排他的経済水域(EEZ)での一方的な石油掘削作業でも軍事的な威圧をした。この種の威圧はいずれも米軍の抑止力を減らす意図を持つ。
「米中経済安保調査委員会」の同報告書はそのうえで3戦術の最後の【同盟分断】に触れて、そのなかの主要項目として「沖縄」をあげていました。

注目されるのは、同じ「同盟分断」の章では米国の同盟諸国の国名をあげて、国別の実態を報告しているのに対し、日本の場合は、日本という国名ではなく「沖縄」だけを特記している点でした。中国の日本に対する同盟分断戦術はいまのところ沖縄に集中しているという認識の反映のようなのです。その記述は以下のような趣旨でした。
【同盟分断】
中国は日本を日米同盟から離反させ、中国に譲歩させるための戦術として経済的威圧を試みたが、ほとんど成功しなかった。日本へのレアアースの輸出禁止や中国市場での日本製品ボイコットなどは効果をあげず、日本は尖閣諸島問題でも譲歩をせず、逆に他のアジア諸国との安保協力を強め、米国からは尖閣防衛への支援の言明を得た。
中国はだから沖縄への工作に対日戦術の重点をおくようになったというわけです。
中国軍部はとくに沖縄駐留の米軍が有する遠隔地への兵力投入能力を深刻に懸念しており、その弱体化を多角的な方法で図っている。
沖縄には周知のように米軍の海兵隊の精鋭が駐留しています。第3海兵遠征軍と呼ばれる部隊は海兵空陸機動部隊とも称され、空と海の両方から遠隔地での紛争や危機にも対応て、展開できます。多様な軍事作戦任務や地域の安全保障協力活動が可能であり、有事や緊急事態へスピーディーに出動できます。米軍全体でも最も実践的な遠征即応部隊としての自立作戦能力を備えているともいわれます。

沖縄の米海兵隊

まさに中国側からすれば大きな脅威というわけです。だからその戦力、能力をあらゆる手段を使って削ぐことは中国にとっての重要な戦略目標ということになります。

同報告書は次のようにも述べていました。
中国は沖縄米軍の弱体化の一端として特定の機関や投資家を使い、沖縄の米軍基地の近くに不動産を購入している。
報告書はこの中国側による沖縄の不動産購入について脚注で「中国工作員が米軍基地近くに米軍関係者居住用のビルを買い、管理して、管理者用のカギで米軍関係者世帯宅に侵入して、軍事機密を盗もうとしている」という日本側の一部で報道された情報を引用していました。

米国の政府や議会の報告書では米側独自の秘密情報を公開することはまずないですが、一般のマスコミ情報の引用とか確認という形で同種の情報を出すことがよくあります。つまり米側の独自の判断でも事実と認めた場合の「引用」となるわけです。

そして報告書はこんどは引用ではなく、同報告作成者側の自主的な記述としてさらに以下の諸点を述べていました。
中国は沖縄に米軍の軍事情報を集めるための中国軍の諜報工作員と日本側の米軍基地反対運動をあおるための政治工作員を送りこみ、日米両国の離反を企図している。
沖縄での中国の諜報工作員たちは米軍基地を常時ひそかに監視して、米軍の軍事活動の詳細をモニターするほか、米軍の自衛隊との連携の実態をも調べている。
中国の政治工作員は沖縄住民の米軍基地に対する不満や怒りを扇動することに努める。そのために中国側関係者が沖縄の米軍基地反対の集会やデモに実際に参加することもよくある。その結果、沖縄住民の反米感情をあおり、日米同盟への懐疑を強め、日米間の安保協力をこじれさせることを企図している。
同報告書は中国側の沖縄でのこうした動きをはっきりと 「スパイ活(Espionage)」とか「扇動(Agitation)」と呼び、そうした行動が将来も続けられるという見通しを明言していました。このへんはこの記述以上に詳細で具体的な情報こそ示されないものの、明らかに米国当局独自の事実関係把握に基づく報告であり、警告だといえます。

米中経済安保調査委員会の同報告書はさらに中国側の沖縄領有権の主張や沖縄内部での独立運動についても衝撃的な指摘をしていました。

要するに中国は自国の主権は尖閣諸島だけでなく、沖縄全体に及ぶと主張し、その領土拡張の野望は沖縄にも向けられている、というのです。報告書の記述を以下に掲載します。
中国はまた沖縄の独立運動をも地元の親中国勢力をあおって支援するだけでなく、中国側工作員自身が運動に参加し、推進している。
中国の学者や軍人たちは『日本は沖縄の主権を有していない』という主張を各種論文などで表明してきた。同時に中国は日本側の沖縄県の尖閣諸島の施政権をも実際の侵入行動で否定し続けてきた。この動きも日本側の懸念や不安を増し、沖縄独立運動が勢いを増す効果を発揮する。
確かに中国政府は日本の沖縄に対する主権を公式に認めたことがないです。中国が沖縄の領有権を有すると政府が公式に言明することもないですが、中国政府の代表である学者や軍人が対外的に「沖縄中国領」論を発信している事実はあまりに歴然としているのです。同報告書はこうした点での中国側のトリックの実例として以下のようなことも述べていました。
中国の官営ニュースメディアは『琉球での2006年の住民投票では住民の75%が日本からの独立を望むという結果が出た』という報道を流した。しかし現実にはその種の住民投票は実施されてはいない。沖縄住民の多数派は日本領に留まることを欲している。
中国側の官営メディアがこの種の虚報を流すことは年来の中国のプロパガンダ工作ではよくある事例です。この虚報の背後にすけてみえるのは、中国がやがては沖縄も自国領土だと宣言するようになる展望だといえます。

米中経済安保調査委員会の「アジア太平洋での米軍の前方展開を抑える中国の試み」という題の同報告書は中国の沖縄に対する活動について以上のように述べて、中国側のその目的はすべて日米同盟にくさびを打ちこみ、日米の離反を図って、米軍の沖縄などでの軍事能力を骨抜きにすることだと分析していました。

とくに中国側の領土拡張の狙いが単に尖閣諸島だけでなく沖縄本島などにも及んでいるという指摘、さらには中国側がすでに沖縄の内部に工作員を送りこんで、軍事、政治の両面で日米の連携をかき乱しているという警告は日本側としても重大に受けとめねばならないでしょう。

中国による日米同盟への揺さぶり工作では同報告書が日韓関係についても警鐘を鳴らしている点をも最後に付記しておきます。中国がアジアでの米国の存在を後退させる戦術の一環として日本と韓国との対立をもあおっている、というのです

日本も韓国もいうまでもなく、ともに米国の同盟国です。米国を中心に日韓両国が安保面で緊密な連携を保てば、米軍の抑止力は効果を発揮します。日韓両国が逆に対立し、距離をおいていれば、米軍の効用も減ってしまいます。中国にとっては東アジアでの米軍の能力の減殺という目的の下に、日本と韓国との間の摩擦や対立を広げる戦略をも進めてきたというのはごく自然です。同報告書は以下の諸点を指摘していました。
中国は日韓両国間の対立の原因となっている竹島問題に関して同島を軍事占領する韓国の立場を支持して、日本側の領有権主張を『日本の危険なナショナリズムの高揚』などとして非難してきた。
中国は日韓両国間の慰安婦問題のような第二次大戦にかかわる歴史認識問題に対して韓国側の主張を支持し、日本側の態度を非難する形の言動を示して、日韓間の歴史問題解決を遅らせてきた。
中国は日本の自衛隊の能力向上や役割拡大への韓国側の懸念に同調を示して、韓国側の対日不信をあおり、米国が期待するような米韓両国間の安全保障協力の推進を阻もうとしてきた。
米国の議会機関が指摘する中国の日韓離反工作も中国の沖縄への介入と目的を一致させる反日、反米のしたたかな謀略活動だともいえるでしょう。日本側としても硬軟両面でのそれ以上にしたたかな反撃が欠かせないでしょう。

安倍総理は、総理に着任する直前に、「安全保障のダイヤモンド」という論文を国際NPO団体PROJECT SYNDICATEに発表しました。この内容は、単純に言ってしまうと多国間の連携による中国封じ込め政策です。

そうして、安倍総理はこの論文の内容を実現するため全方位外交を展開し、安全保障のダイヤモンド構想を現実のものとしてきました。これは、中国にとって大きな脅威だと思います。

ただし、この内容は、未だにほとんどのマスコミで報道されることはありません。沖縄の危機についても、産経新聞などは例外としてほとんど報道されません。テレビ局ではどこも報道しません。

この状況は何としても打開しなければなりません。これを打開するには、まずは日本でも米国議会に設置された「米中経済安保調査委員会」という機関と同じような機関をつくるべきです。

中国に親和的なリベラル・左派が多数派を占める米国のマスコミや共和党が大きな力を持っていたオバマ政権末期にこの委員会は設立されています。

そうして、このブログでも以前掲載したように、米国議会のこの「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、今年の8月24日に『中国共産党の海外における統一戦線工作』という報告書が公開されていますが、これを期に米国議会では中国をあからさまに擁護する議員は、ほとんどいなくなりました。

その記事のリンクを以下に掲載します。
【古森義久のあめりかノート】中国の「統一戦線工作」が浮き彫りに―【私の論評】米国ではトランプ大統領が中共の化けの皮を剥がしはじめた!日本もこれに続け(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみを引用します。
中国共産党の正体を暴いた同報告書はトランプ政権の大きな実績です。中国共産党の各種不道徳な行為は、トランプ政権によって次々と暴露され始めています。これからも、さらに中国の異形のおぞましい姿が次々に晒されていくと思います。 
なお、この『中国共産党の海外における統一戦線工作』に書かれていことは、以前から知られていることです。多くの筋からそのような内容は、多くの人々に知られていました。その一旦は、このブログにも過去にも数多く掲載しています。 
とはいいながら、このような内容が、米国議会の「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、8月24日に『中国共産党の海外における統一戦線工作』という報告書によって正式に公表されたという事実は大きいです。 
これで、中国に対して面と向かって擁護する人は少なくとも米国ではいなくなりました。そうして、これはトランプ大統領ならび米国議会が中共との対立もじさないという並々ならぬ決意を示すものです。 
そうして、このような中国の統一戦線工作は無論米国にだけではなく、日本を含む他の先進国にも様々な工作をかけています。 
日本も、米国のように中国の化けの皮を剥がし、白日のもとに晒すべきです。
日本でも、このような委員会を超党派で設立して、中国の沖縄での工作活動を表沙汰にして、中共の化けの皮をはがせば、日本でも中国を擁護するような国会議員などいなくなります。それでも、産経新聞などの一部を除いては、それを報道しないでしょうが、政府が積極的にSNSなどで公表するようにすれば、いずれ日本も米国と同じようになり、マスコミも政治家も中国をあからさに擁護する者はいなくなるでしょう。

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「Gray War(灰色戦争)」に入った米国と中国―【私の論評】現状が続けば中共は崩壊し、米国は世界唯一の超大国の座を維持することに(゚д゚)!


2018年10月6日土曜日

「Gray War(灰色戦争)」に入った米国と中国―【私の論評】現状が続けば中共は崩壊し、米国は世界唯一の超大国の座を維持することに(゚д゚)!

「Gray War(灰色戦争)」に入った米国と中国

米日豪印の4本柱に英仏を加えた4+2体制の構築が不可欠に



米海軍誘導ミサイル駆逐艦ディケーター 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

「Gray War(灰色戦争)」という新たな概念
 米海軍作戦部長のジョン・M・リチャードソン大将は、今年(2018年)9月はじめ、ワシントンで開催されたディフェンス・ニューズ(Defense News)主催の会議において「Gray War(灰色戦争)」という新たな概念を提唱した。

 そして「本格戦闘に至る前の段階」(Areas Short of Open Warfare)での対処がいかに重要であるかを述べた。

 「Gray War(灰色戦争)」は、わが国でも大きな課題となっている「グレーゾーン事態」あるいは「グレーゾーンの戦い」に相当する概念と解釈される。

 それを主として軍事の対象領域である戦争(War)と捉え、しかも、日本で言えば海上幕僚長に相当する米海軍現役最高位の軍人が公言にしたところに重大な意味がある。

 会議の講演の中でリチャードソン作戦部長は、南シナ海はもちろん中東領域での中国およびロシアとの対立は「本格戦闘に至る前の段階における灰色戦争」であると述べた。

 そして、米海軍は、「灰色戦争」に勝利する能力を備えなければならないと強調した。

 繰り返すと、米国は、現在の中国との対立を「本格戦闘に至る前の段階」にあると認識し、その渦中にある「灰色戦争」に勝利すると明言しているのである。

 それを象徴するかのように、最近になって米軍は、西太平洋以西、特に東シナ海と南シナ海における軍事的プレゼンスを強化している。

 米国防総省は9月26日、核兵器搭載可能な米空軍の「B52」戦略爆撃機が、尖閣諸島をめぐり日中が対立する東シナ海や中国の軍事拠点化が進む南シナ海の上空を飛行したことを明らかにした。

 その際B52は、航空自衛隊の戦闘機の先導で尖閣諸島付近や、中国が東シナ海に設定した防空識別圏内を飛行したと報道されている。

B52戦略爆撃機

 9月30日には、米海軍のイージス駆逐艦「ディケーター」が、「航行の自由作戦」の一環として南沙諸島のガベン礁などの領海(12海里)内を航行したようだ。

 また、インド洋に長期派遣中であった海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)「かが」は、南シナ海において英海軍のフリゲート艦「アーガイル」と共同訓練を実施した。

 このように、日米を中心に英仏などが米国の「灰色戦争」に共同連携する動きを強め、中国の海洋進出と覇権拡大への対抗姿勢を鮮明にしつつある。

「国家安全保障戦略」に基づく既定路線
 このような米軍の動きは、昨年(2017年)12月にドナルド・トランプ米大統領が公表した米国の「国家安全保障戦略」(NSS2017)の方針に沿った「既定路線」と見ることができる。

 NSS2017は、中国(とロシア)を力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難し、米国に挑戦し、安全や繁栄を脅かそうとしている「ライバル強国」であると位置づけた。

 そして、中国はインド太平洋地域で米国に取って代わり、国家主導の経済モデルの範囲を拡大し、地域の秩序を好きなように再編成しようとしていると指摘している。

 そのうえで、「我々は新たな対立の時代に入っている」と述べ、米国は中国(とロシア)に対抗して世界各地の係争地域において、米軍の増強や近代化そして同盟国との連携などによってこうした脅威に立ち向かい、「このゲームで米国は勝利する」と宣言している。

 また、NSS2017は、「強い経済は、米国民を守り、米国の生活様式を支え、米国の影響力を維持する」として米国経済を活性化し、米国の国力と優位を回復する必要性を強調している。

 特に中国を睨んで、巨額で慢性的な貿易赤字は許容しないとし、自由で公正、互恵的な経済関係を追求するとしている。

 また、研究、技術および革新の分野で先頭に立たなければならないとして、米国は知的財産を盗用し自由な社会の技術を不当に利用する者から、自国の安全保障の基盤技術を守ることなど、いわゆる経済安全保障の見地から、中国との貿易戦争を予見させる内容になっている。
 今年7月初め、米国が340億ドル分の中国産品輸入に対する25%の関税引き上げを実施したことに始まった米中貿易戦争は、関税措置での制裁と報復の応酬が激しく繰り返される中、出口戦略を見出せない状況が続いている。

 しかし、この問題は、中国が「将来的には地球規模での優位を確立し、米国に取って代わろうとしている」との米国の対中認識が示すように、国際社会の首座を巡る米中の覇権争い、すなわち地球規模での地政戦略的支配権争いが基底をなしている。 米中相互に遠大な戦略の一部であるがゆえに、その解決が容易でないことだけは、はっきりしている。
そして、貿易戦争は、通商的・経済的対立にとどまらず、政治、軍事、情報、サイバー戦など広範な分野へと拡大する危険性を孕んで推移し、「長く、厳しい対立の時代」に入る始まりにすぎないといっても過言ではないのである。

米中は貿易戦争から全方面対決へ

 経済分野においては、対中融和派とされるウィルバー・ロス商務長官やスティーブ・ムニューシン財務長官に代わって強硬派のロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表やピーター・ナバロ米国家通商会議(NTC)委員長、ラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長が貿易問題で実権を握り、タカ派色が強まっていると伝えられている。

 また、外交・安全保障分野では、国際協調派のジェームズ・マティス国防長官は健在であるようだが、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)やマイク・ポンペオ国務長官など、いわゆるタカ派と呼ばれる側近がトランプ大統領に大きな影響力を持つようになり、米政権の顔ぶれは対中強硬派で固まったようだ。

 2018年9月28日付ロイターの『アングル:トランプ政権、中国向け「圧力戦略」が新局面入りか』という記事は、政府高官の話として下記のように伝えている。

 長年の対中強硬派として知られるボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が中心となって、貿易摩擦の枠を超え、サイバー活動や台湾、南シナ海の領有権問題なども含めて、中国に対して強い姿勢を取るようトランプ大統領を説得した。

 新たな戦術はまだ策定中だが、中国への圧力強化により、今後数週間で米国側からのさらなる強硬発言や、新たな政策措置が出てくるだろう。

 その見通しの背景としては、米中関係が緊迫化する中で、トランプ大統領が、先の国連安保理会合で、中国が11月の米中間選挙で共和党が不利になるよう介入し、通商問題におけるトランプ氏の強硬姿勢に一矢報いようとしていると非難したことに現れていると指摘している。

 対中関税措置のほかにも、米国は中国に対し、ロシアから戦闘機やミサイルシステムを購入して米制裁に違反したとして、中国人民解放軍の兵器管理部門を制裁対象に指定した。

 また、バラク・オバマ政権下で延期されていた台湾への3億3000万ドル(約375億円)相当のF16戦闘機の部品などの売却も承認した。

 さらに、中国によるネット上の盗難行為やスパイ行為に対しても、より厳しい行動を取ることを米国政府は検討している。

 前述のとおり、米国の中国向け「圧力戦略」は、NSS2017の対中脅威認識を背景に一貫した展開を見せている。

 そして、「中国は、われわれの政策を撤回させるためにあらゆる手段を講じている」「中国は、政治的、経済的、通商的、軍事的な手段やメディアを使い、中国共産党の利益を得ようとしている」とし、中国は、ロシアがクリミア半島併合で仕掛けた「ハイブリッド戦」と同じ「Gray War(灰色戦争)」を、米国に仕かけていると見ているのである。

 以上の文脈からすると、トランプ政権は、長期的・戦略視点に立って、たとえ中国から激しい反応を引き起こす恐れがあっても、より幅広く押し返そうとする全方面対決を決意していると言えるのではないだろうか。

日米豪印の「4本柱」による安全保障協力体制

 安倍晋三首相が、米ニューヨークで開かれた、先の国連総会での一般討論演説で、「北東アジアの戦後(冷戦)構造を取り除く」(カッコは筆者)と述べたことは、極めて重要である。

 北東アジアでは、終戦から73年経った今日でも戦後は終わっておらず、また、戦後とほぼ同時に始まった冷戦も完全には終わっていない。

 中国、ロシア、北朝鮮をめぐる外交・安全保障の問題がそれである。

 なかでも中国は、国力の増大に伴ってグローバルなパワーバランスに大きな変化をもたらし、軍事的動向にも顕著な影響を及ぼしている。

 それを念頭に、安倍晋三首相は、改めて国連の場で「自由で開かれたインド太平洋戦略を進める」と述べた。

 「私が『自由で開かれたインド太平洋戦略』を言いますのは、まさしくこれらの国々(ASEAN諸国や太平洋島しょ国等)、また米国や豪州、インドなど、思いを共有するすべての国、人々とともに、開かれた、海の恵みを守りたいからです」(カッコは筆者)と訴えた。

国連で演説する安倍総理

 この戦略を実効性ある現実的なものに高めるには、日本は、まず自主防衛力を強化することが先決だ。

 そのうえで、日米豪印の「4本柱」を中心として、基本的価値や戦略的目標・利害を共有する努めて多くの国・地域を有機的に連結した多国間主義による安全保障ネットワークを構築することである。

 この際、日米豪印による「4本柱」を、インド太平洋地域に強い戦略的利害関係をもつ英仏の「2本の支柱」によって補強できれば、安全保障のアーキテクチャーが一段と強化されるのは請け合いである。

 そして、日米豪印と英仏によって構築される「4+2」の安全保障協力体制に、台湾やフィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポールなどの力を結集すれば、中国の海洋侵出と世界的覇権拡大の野望を抑え込む、国際的な多国間枠組みを一段と強化・発展させることができるのである。

【私の論評】現状が続けば中共は崩壊し、米国は世界唯一の超大国の座を維持することに(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事の以下の結論部分は、このブログで私も主張してきたものです。
日米豪印による「4本柱」を、インド太平洋地域に強い戦略的利害関係をもつ英仏の「2本の支柱」によって補強できれば、安全保障のアーキテクチャーが一段と強化されるのは請け合いである。

そして、日米豪印と英仏によって構築される「4+2」の安全保障協力体制に、台湾やフィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポールなどの力を結集すれば、中国の海洋侵出と世界的覇権拡大の野望を抑え込む、国際的な多国間枠組みを一段と強化・発展させることができる。
そうして、安倍総理はまさにこの体制を築くために総理に就任直後から全方位外交に傾注してきました。この体制は完成に近づきつつあります。

さて、この体制にも大きな影響を及ぼす米中の経済冷戦はどのようになるのでしようか。

これについては、85年ほど前に起きた銀をめぐる米中間の対立に、昨今の米中貿易摩擦といくつかの類似点があり、米中関係もしくは国際関係の今後を占うためのヒントが含まれています。

各国の金本位制採用とそれに伴う銀売却、1929年に始まった世界恐慌によるデフレーション、銀鉱脈の発見による銀生産の増大などにより銀の価格は低下し、世界恐慌前には1オンス65セント程度あった銀価格は25セント程度にまで落ち込みました。

これに危機を感じた米国の銀業界は積極的なロビーイングを行いました。このころ米国内の銀生産は西部山岳の7州(アリゾナ・カルフォルニア・コロラド・アイダホ・モンタナ・ネバダ・ユタ)に偏り、米上院では人口の多寡にかかわらず各州2名の上院議員がいるので、7州14名の上院議員は「シルバー・メン」と呼ばれて一大勢力を形成していました。

シルバー・メンは、①各国に働きかけて銀需要の喚起と供給の制限を図る、②銀価格を引き上げて、銀を通貨として使用している中国等の購買力を引き上げ(つまり、ドル安元高に誘導する)、米国の輸出を増やす、③銀を通貨発行準備の一部とすることで貨幣供給量を拡大する、などの主張を行いました。

シルバー・メンの声を聞かざるをえないフランクリン・ルーズベルト大統領は銀買い上げ法の施行(1934年)等いくつかの銀価格引き上げ政策を採用し、その結果銀価格は高騰し1オンス70セントをも超えるに至りました。

米国の保守派からは、ソ連と対峙していた日本に戦争を仕掛け、
ソ連と手を組んだ大悪人とみられているフランクリン・ルーズベルト

つまりは、国際経済関係のなかで苦境に陥っている国内産業の声を聞き、自国を最優先して他国を犠牲にする典型的なアメリカ・ファースト政策です。

当時の中国の状況をみると、銀本位制度を採用する中国は、世界恐慌のときには銀価格下落のおかげで自国通貨である元が銀価格に並行して下落し、元安が世界恐慌という大火事に対する防火壁となり、中国は延焼を免れました。

ところが米国の銀価格引き上げ政策が始まると状況が一変しました。銀を米国にもっていけば高値で買い取ってもらえるのですから大量の銀が中国から米国へ流出。中国国内の銀流通総量の3分の1にもなる銀が国外に出ました。中国の貨幣供給量は一気に収縮し、中国経済は深刻なデフレーションに陥って株価は暴落、小銀行や工場、商店が相次いで閉鎖に追い込まれました。銀恐慌に陥ったのです。

中国はどう対処したかといえば、中華民国政府は応急的、一時しのぎ的な対処ではなく、大胆で根源的な策を採りました。1935年11月、約500年続いた銀本位制度を捨て去る幣制改革を断行したのです。これにより、もはや米国の政策により中国経済が翻弄されることがなくなりました。

中華民国十二年発行 竜鳳壱圓(ONE DOLLAR)銀貨
直径:39.39㎜ 重量:26.8g 現在の買取価格 ~65,000円

一連の出来事を通じて、各国の経済にどのような影響があったのでしょうか。主には次の点を挙げることができます。

まず米国については、銀業界は結局損をしました。中国を銀本位制からの離脱に追い込んだがために、もはや地球上に銀を通貨として使う者はほとんどいなくなったのです。銀に対する需要は大いに減退し、銀価格は数カ月のうちに1オンス当たり20セント程度も下落しました。

日本については、一時的ながらも漁夫の利を得ました。

中国は幣制改革を断行する直前、銀の輸出に対して高率の税を課すことで銀流出を食い止めようとしました。ところがその結果、銀の内外価格は数十%も乖離するようになり銀の密輸が激増しました。中国の銀は北方の山海関を越えて満州国に密輸出され、日本はそれを高値で売却して大きな利益を得たのです。

中国については、経済が大いに復活しました。1元40セントを超えていた為替レートは1元30セントを下回るまで下落し、貿易量が増え、生産活動は上昇し、物価は緩やかに上昇しました。恐慌状態にあった中国経済は米国の銀政策を契機とする幣制改革により一気に回復しました。

そして世界経済には、巡り巡って構造変化がもたらされました。中国の銀本位制度からの離脱により銀は大航海時代から続いた国際通貨としての地位を失いました。一方で、米ドルは基軸通貨としての地位を高めました。

中国は幣制改革を実行するにあたり、銀に代わる対外支払準備をある程度確保しておく必要がありました。幣制改革実行直後に中国は米国に5000万オンスの銀を売りドルを獲得して、それを対外支払準備としました。それまで中国経済はイギリス、もしくはポンドの強い影響下にあったのですが、これにより米国、もしくはドルの影響下に軸足が移ったのです。両大戦間期は基軸通貨としての地位がポンドからドルへと移行した時期ですが、米国の銀政策がポンドからドルへの交替を後押しすることとなりました。

ドル紙幣でできたビキニを着用する女性たち ロンドンにて

この85年前の歴史経緯をトランプ政権と中国とのあいだの貿易摩擦に当てはめつつ考えてみるとどうなるでしょうか。

銀をめぐる米中間の対立においてはポンドからドルへと基軸通貨の重心が移動し、米国は覇権国の地位を引き寄せましたが、それから約85年を経た今回の米中対立でも再度米国の地位を大幅に引き上げることが予想できます。

ここ20年くらいは、米国は中国によって、知的財産権を無視され、富を一方的に略奪されていたようなものです。今回の経済冷戦の行き着く先は、この略奪がなくなるということですから、途中経過はどうあれ、最終的には米国が唯一の超大国に返り咲くことになるでしょう。

まずは、今回の貿易戦争は、米国が知的財産権を全く守る気がないどころか、積極的に侵害しようとする中国に守らせることを主目的としているということであり、貿易戦争はその手段にすぎないということです。ここが、85年前の米国とは全く異なります。大義は米国のほうにあります。

そのため、この戦争は長く続きます。中国が音を上げ、知的財産権を守るように体制を変えることになるか、中国が体制を変えなければ、中国が経済的にも軍事的にも他国に影響が与えられないほどに弱体化するまで続けられるでしょう。

ただし、中国が知的財産権を守るように体制を変えるといっても、それはかなり困難です。現在の中国は、民主化、経済と政治の分離、法治国家がなされていません。知的財産権を守る体制にするためには、これらを先進国並みに変えなければできないです。

民主化、経済と政治の分離、法治国家化を推進するためには、驚天動地の構造改革をしなければなりません。これを実行すれば、現在の中国共産党は統治の正当性を失って、崩壊した後他の政治勢力がとって変わることになるかもしれません。

それをおそれて、この驚天動地の構造改革を実施しなければ、中国の待つ未来は、図体が大きいだけの、他国に対して影響力が全くない内にこもったアジアの凡庸な独裁国家となることでしょう。ただし、この場合も、中共は弱体化し、多くの人民が不満を持ち、内乱等が勃発して中共は崩壊することになるでしょう。

このまま、米国が経済冷戦と、ブログ冒頭の記事のように、米日豪印の4本柱に英仏を加えた4+2体制を構築さらにASEAN諸国も巻き込み、中国に軍事的に対峙して、中国の封じ込めに成功した場合、いずれにしても中共は崩壊することになるでしょぅ。

これは、当時からすれば、抜本的な構造改革である銀本位制を放棄した当時の中国(中華人民共和国)が、経済的には安定し、日本との戦いには米国などの支援があったため、なんとか勝つことができましたが、統治の正当性を主張することが出来ず、結局共産勢力に負けて、台湾に逃亡したことと類似しています。

結局現在の中共が、米国の経済冷戦と、灰色冷戦に負けて、抜本的な構造改革を断交した場合、現在の中国も過去の中国のように、経済が安定し発展するかもしれませんが、やはり統治の正当性を失い、中国共産党幹部は海外に逃亡することでしょう。彼ら幹部は、すでにドルなどで天文学的な額の蓄財をして海外に大部分を送金し、家族なども移住させ、中共が崩壊したときに自分たちも後から移住できるように準備を整えています。

中共が崩壊した中国では、中国は分裂することでしょう。そうして、おそらくいくつかの民主化、政治と経済の分離、法治国家化の進展度合いが異なる国々が成立することでしょう。これらのうち進展度合いが高い国が、米国と接近して、いずれ経済的に大成功を収めることができるかもしれません。

その後には、米国は中国による富の簒奪を免れ、しばらくの間は超大国は米国一国という時代、すなわち現在と同じような体制から中共が抜け落ちた体制が続くことになるでしょう。

ただし、これは経済冷戦や灰色冷戦が中途半端で終わらない場合です。オバマ政権のように、中途半端で終わらせれば、中共がしぶとく中国に生き残るだけとなります。やはり、この戦争は中国が抜本的に変わるまで続けなければならないのです。

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