2021年6月12日土曜日

【日本の解き方】東京五輪後に政治はどう動く? ワクチンは9月末に8割接種、10月10日に衆院選の投開票も ―【私の論評】五輪か命の二者択一ではなく、万全な感染対策で命と五輪を両立させ開催すべき(゚д゚)!

【日本の解き方】東京五輪後に政治はどう動く? ワクチンは9月末に8割接種、10月10日に衆院選の投開票も 
東京五輪、21年7月開催へ

東京五輪のモニュメント

 東京五輪の開幕まで約1カ月半となった。五輪とパラリンピック閉幕後の政治シナリオはどうなるだろうか。

 菅義偉首相のこれまでの言動からみると、新型コロナウイルス対策が最優先で、その中で五輪・パラリンピック開催や衆院解散を考えているのだろう。

 当面の政治スケジュールを確認しておこう。通常国会は延長なしで6月16日までだ。東京都議会選挙は25日告示、7月4日に投開票される。東京五輪は7月23日から8月8日、パラリンピックは8月24日から9月5日まで開かれる。そしてデジタル庁が9月1日に発足する。

 菅首相の自民党総裁の任期は9月30日に、衆院議員の任期は10月21日にそれぞれ満了となる。ここまでくると衆院選の日程はかなり絞られてくる。最短でパラリンピック後の9月6日に臨時国会を召集し、補正予算を通して28日公示、10月10日投開票が考えられる。

 9月28日は大安で10月10日は先勝だ。縁起的にも申し分ないスケジュールだが、新型コロナの状況を考慮しても合理的選択肢だといえる。

 ワクチンについては、控えめな予測でも東京五輪までに国民の4割以上が接種できるだろう。かなりの人に新型コロナウイルスの耐性ができ、新規感染者が落ち着く可能性が高い。今とは全く違う光景になるだろう。

 無観客などの対策を実施すれば、五輪が感染拡大の契機にもなりにくい。それはこれまでの各種国際大会や国内スポーツイベントでも明らかだ。となると、ワクチン接種を前提とすれば、五輪は間違いなく開催できる。

 日本のワクチン接種率の国別順位は、4月19日時点で71位、5月20日時点で79位、6月3日時点で71位だ。ただし、新型コロナの感染状況を加味した順位でみると、4月19日時点で45位、5月20日時点で42位、6月3日時点で32位と、ここにきて急速に順位を上げている。

 ワクチン接種については、従来の集団接種やかかりつけ医での接種に加えて、自衛隊による大規模接種センターや、企業や大学での接種など、地元医師会の主導とは別ルートでの接種方法も出てきている。今後の接種状況は、筆者が想定した控えめなものより急速に進展するだろう。

 9月末ごろになると、総ワクチン接種率は8割程度になっていると考えられる。これは、今の欧州より高く、英米並みの数字で、ほぼ集団免疫を獲得しているといっていい。そこまでくると、新型コロナへの心配は無用となっているだろう。

 菅政権としては、五輪とパラリンピックの興奮が冷めないうちに、解散総選挙をしたくなってもおかしくない。パラリンピック後に速やかに補正予算を通して、前述したように、9月28日公示、10月10日投開票という公算が大きいのではないか。

 補正予算は、5月の緊急事態宣言などからGDPギャップ(完全雇用を達成する潜在GDP水準と現実のGDP水準の差)が30兆円程度あることを考慮すれば、かなりの規模にする必要がある。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】五輪か命の二者択一ではなく、万全な感染対策で命と五輪を両立させ開催すべき(゚д゚)!

東京五輪の開催が1カ月半後に迫り、「命と五輪とどちらが大事か」という二者択一の議論が国会やマスコミをにぎわしています。これは、あまりにも極端な論議だと思います。

二者択一というのではなく、感染対策を万全にすることで、命と五輪を両立させるという三つ目の選択肢もあります。

もうすでに効果があるとわかっていることでも、大々的に実施されていないこともあります。たとえば、次亜塩素酸水や紫外線、光触媒などウイルスを効果的に殺菌できる理学と工学の手法を総動員すべきです。

これについては、すでに、平成26年にある論文が発表されています。その論文の表紙とリンクを以下に掲載します。




「理学・工学との連携による 革新的ウイルス対策技術の開発」

医学的なアプローチ以外にもこのような有効な手法もあるのに、なぜ国会で「あらゆる感染対策をして五輪を成功させよう」という前向きの議論がされないのでしょうか。五輪開催は世界の希望となるとともに、私たち日本人にとっても、困難を跳ね返すことにやり自分たちの真の力を取り戻すきっかけとなりますし、さらには経済効果もあります。

函館五稜郭病院に設置された室内を殺菌するUV―C紫外線照射システム

それに、五輪が開催されなかった場合の、日本の損失ははかりしれません。無論賠償金の問題もありますが、それだけではなく、日本人の自信喪失につながるのは間違いないです。

5月12日、衆議院第一議員会館大会議室において「感染対策を資材と方法から考える超党派議員連盟」の設立総会が約50人の国会議員の参加で開かれました。会長に就任した片山さつき元地方創生担当相は「いま感染対策に何らかの思いを持たなければ国会議員ではない。感染対策に有効性があるものを活用、改善するプロセスなくして、この難局と戦うことはできない」と挨拶しました。

先にあげた、理学・光学的手法は、五輪後においても、デパート、レストラン、映画館、病院、介護施設、保育園、幼稚園、小中高の学校、大学、企業のオフィス、家庭など、あらゆる場所で利用できます。それによって医療機関の過度の負担が大幅に軽減され、あらゆる分野で我が国の経済力の復活につながることになります。

ワクチン接種が進んだ欧米諸国は、新規感染者の発生が激減し、日常を取り戻しつつあります。しかし、国立研究開発法人「国立循環器病研究センター」の健康サポートセンターは「定期的(多分6か月ごと)に流行中の変異新型コロナウイルスに有効なワクチンを接種する必要」を示唆しており、ワクチンはゲームチェンジャーだが万能ではないことを示しています。

実際、英国では1日の感染者数が6万人を超える感染爆発に見舞われた今年1月、英国は人口の8割弱を占めるイングランドで原則自宅待機の強いロックダウンに踏み切りました。並行して、ワクチン接種を加速させ、4月には新規感染者を一気に2000人程度にまで減少させました。 そうして、3月以降、徐々にロックダウンを緩和し、今月21日には全面解除する予定でした。 ところが、ジョンソン首相は2日、全面解除について「慎重に対応する必要がある」とロックダウンの延長をにおわせました。足元の感染者数は5000人を超えるまでになってるからです


日本の感染者数は6月11日現在では、2044人です。イギリスの人口は6665万ですから、5000人以上の感染者というと、日本におきかえると、9000人くらい発生しているのと同程度です。

日本でワクチン接種が遅れたのは、日本が他国と比較すると、感染が桁違いに低く抑えられていたからであり、感染が酷いところからワクチン接種を開始すべきという防疫上の理論からいえば、当然のことなのです。日本が英米と同じ時期に、ワクチンを確保していたら、米英などの感染の酷い国々のワクチン接種を阻害することになり、他国から非難されたおそれもあります。

そのワクチン接種も急ピッチで進んでいます。そうして、英国南西部コーンウォールで始まった先進7カ国首脳会議(G7サミット)は11日午後(日本時間12日未明)、初日の討議を終えました。菅義偉首相は東京五輪・パラリンピックを開催する方針を表明し、「世界のトップ選手が最高の競技を繰り広げることを期待している。強力な選手団を派遣してほしい」と要請しました。日本政府によると、G7首脳は支持する意向を示しました。

G7サミットで記念撮影をする菅義偉首相(後列左から2人目)ら各国首脳

東京五輪は、あらゆる方法を駆使してウイルス感染を防ぎ、二者択一というのではなく、感染対策を万全にすることで、命と五輪を両立させて開催すべきです。それこそ、日本の能力、日本人の能力を世界に見せるチャンス、日本が世界の希望となる大きなチャンスです。

大きな長い苦しみの果にとうとう最初に五輪が開催される場が日本になるということは、何と素晴らしい名誉なことではありませんか。これを成功させれば、人々の間に長く記憶に残る祭典になります。まさに、私達日本人が、人類がパンデミックに打ち勝てることを示す新たな世界史の1ページを綴ることになるのです。

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2021年6月11日金曜日

G7にらみ中国が脅し「反外国制裁法」スピード可決 対中に報復する法的根拠の狙い 石平氏「『愛されない』理由を反省しようとしていない」―【私の論評】「反外国制裁法」は国内向けの政治的メッセージ(゚д゚)!

G7にらみ中国が脅し「反外国制裁法」スピード可決 対中に報復する法的根拠の狙い 石平氏「『愛されない』理由を反省しようとしていない」

 中国共産党政権が、先進7カ国(G7)首脳会議を前に、堂々と脅しをかけてきた。中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)の常務委員会は10日に北京で開いた会議で、外国による中国への制裁に反撃するための「反外国制裁法」を可決し、即日施行したのだ。11日開催のG7首脳会議では、中国の人権弾圧や軍事的覇権拡大に対し、自由主義国家の結束が注目される。露骨な分断工作に負けてはならない。

 「中国が自国の利益を損なう結果を受け入れるなどと幻想を抱いてはいけない」「強力な反制裁闘争(を展開する)」

 中国の栗戦書常務委員長(国会議長)は10日の会議でこう語った。国営メディアが報じた。

栗戦書常務委員長

 公表された「反外国制裁法」の全文によると、外国の対中制裁に対し、「中国内の資産凍結」や「入国禁止」といった措置を講じるとした。欧米の対中制裁に報復する法的根拠を与え、速やかに対抗できるようにする狙いがある。

 同法案は4月下旬に審議入りしたが、G7首脳会議をにらみ、1カ月余りでのスピード可決となった。習近平指導部が成立を急いだとみられる。

 G7首脳会議では、中国による新疆ウイグル自治区の人権弾圧や、香港での民主派の排除、台湾への軍事的圧力なども討議される予定で、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を首脳宣言に盛り込むことを検討している。

 対中強硬派であるジョー・バイデン米大統領や、ボリス・ジョンソン英首相が主導し、菅義偉首相も賛同する方向だが、ドイツやイタリアは中国との経済関係を重視しており、足並みがそろえられるかが注目される。

 習国家主席は5月末、「信頼され、愛され、尊敬される」中国のイメージをつくり、友好国の輪を拡大したいと共産党幹部に伝えた。

 だが、「反外国制裁法」はまるで開き直りであり、G7分断を狙った“爆弾”といえそうだ。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「中国は、G7などが批判する人権弾圧や覇権拡大をやめるつもりがなく、国際社会から制裁を受けることに開き直って、脅しをかけてきた。自由主義諸国による制裁は正当性がある一方、中国側の行為(ジェノサイド=民族大量虐殺)には正当性がない。中国は『愛されない』理由を反省しようとしていない」と語った。

【私の論評】「反外国制裁法」は国内向けの政治的メッセージ(゚д゚)!

西側諸国のロシアや中国に対する制裁は、マグニツキー法が原型となっていることを昨日の記事に掲載したばかりです。この法律により、人権侵害に加担した個人に対して米国は、その個人の入国禁止や米国内の資産を凍結できるようになりました。

昨日も述べたように、ロシアのならず者のごろつき政府高官どもの汚職を告発した直後に拘束され、2009年に獄中死したロシア人弁護士セルゲイ・マグニツキー氏の名前を冠したのが「マグニツキー法」です。マグニツキー法の採択を受け、ロシア政府は米国人のロシア人子女の養子縁組を拒否し、米国政府関係者のロシア入国を禁止するリストを発行し、死亡しマグニツキー氏に有罪判決を下しました。

セルゲイ・マグニツキー氏の墓

さらに、ロシア政府は、ケネス・デュバースタインが率いる広報会社を通じて、この法律に反対する働きかけを行いました。その後、ロシアの弁護士であるナタリア・ベセルニツカヤは、米国でのマグニツキー法に反対するロビー活動のために雇われました。彼女は、この問題を議論するためと称して、ドナルド・トランプ・ジュニアとの面会しました。

2012年12月19日、ロシア連邦議会は400対4の賛成多数で、ロシア人児童の米国への国際養子縁組を禁止する法案を可決しました。この法案は、2008年にアメリカ人の養父が彼をSUVの後部座席に乗せていたことを忘れ、熱中症で死亡したロシア人の幼児、ドミトリー・ヤコブレフ (チェイス・ハリソン)にちなんで非公式に名付けられました。

ただ、養子縁組ができなくても、他国や国内ですれば良いだけの話で、ほとんど米国にとっては損失の少ないものでした。

翌年の2013年には、さらに2つの法律が提案され、1つは、米国市民がロシアの政治的なNGOで活動することを禁止するもので、もう1つの法律は、最終的には放棄されましたが、国家の信用を失墜させた場合、外国人が国営テレビで発言することを禁止するものでした。

2013年4月13日、ロシアはマグニツキー・リストに対抗して、人権侵害の疑いで18人の米国人をロシアへの入国を禁止するリストを発表しました。

ただ、ロシアに入国できないことは、米国に入国できないことと比較すれば、段違いに損失は少なく、あまり効果があるとは言い難いものでした。また、米国のように個人の資産凍結などはしてもあまり効果がないと判断してしなかったのでしょう。

そもそも、ロシアの金融機関などに米国人が資産を預けたとしても、ほとんどメリットがありません。実際預けている人はほとんどいないでしょう。

ただし、ロシアのならず者のごろつき政府高官どもの汚職を告発したマグニツキー氏を拘束し、死に至らしめたことが、マグニツキー法制定の端緒となっているわけですから、非は明らかにロシアのほうにあるわけです。

プーチン

ロシアのような全体主義国家は、結局自らの非は絶対に認めないのです。

中国も同じことです。諸外国が中国に制裁を加える原因はそもそも、中共は国内でジェノサイド などの悪行をやっているからです。「反外国制裁法」とは要するに彼らが悪行を改めるつもりは全くなく、国際社会と最後まで対抗するつもりなのです。世界共通の敵は一体誰か、これでよく判ったのではないかと思います。

中国の制裁はロシアの制裁よりは、米国等にとって効き目があるかもしれません。ただ、米国は世界の金融を事実上支配しており、中国が米国を制裁したとしても、米国はそれを上回る制裁ができます。

中国の人民元は実質上のドルペッグ制です。ドルペッグ制(Dollar Peg)とは、自国の貨幣相場を米ドルと連動させるペッグ制(固定相場制)をさします。

習近平

中国の人民元の信用は中国がドルを、大量に保有していることを前提として成り立っているのです。実際、ドルの裏付けがなくなれば、人民元は明日から紙切れになることでしょう。

米国が最終的に、人民元とドルとの交換停止とか、あるいは中国の保有する米国債を無効にするなどのことをしてしまえば、中国の金融システムは崩壊してしまいます。無論貿易もできなくなります。

実際に、トランプ前大統領はこのようなことをチラつかせていましたが、実行はしませんでした。当時は実行すれば、中国は破綻しますが、米国も相当の被害を被るため実行できなかっのでしょう。しかし、米中デカップリングがすすみ、米国の被害が少なくてすむようになれば、米国がこれを実行する可能性は十分にあります。

それに、ここまでいかなくても、それ以前に米国ができることはかなりあります。これに比較して、中国のできることには限りがあります。

「反外国制裁法」を制定して、米国などの外国を制裁したとしても、最初から限度があります。習近平としては、そのようなことは百も承知なのでしょうが、結局国内向けに米国等に対決する姿勢をアピールしてみせているのでしょう。

G7はこのような中国の恫喝に揺らぐことなく、結束を固め中国と対峙すべきです。

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EUは中国との投資協定批准せず 人権侵害への日本の態度は―【私の論評】日本版マグニツキー法の成立を急げ(゚д゚)!


2021年6月10日木曜日

EUは中国との投資協定批准せず 人権侵害への日本の態度は―【私の論評】日本版マグニツキー法の成立を急げ(゚д゚)!

EUは中国との投資協定批准せず 人権侵害への日本の態度は

岡崎研究所


 欧州議会は、5月20日、EU・中国間の包括投資協定(CAI)の批准のための審議を凍結することを、圧倒的多数で決めた。この決議は、賛成599票、反対30票、棄権58票で可決された。EUと中国との投資協定の実施には欧州議会の賛成が必要であり、この決議により同協定の発効は当分見送られることになる。同条約は、昨年12月、ドイツのメルケル首相がEUの議長国であった時に、慎重論もあった中で、政治レベルで合意されたものだ。

 今回、欧州議会が中国との投資に関する条約の批准を凍結したことは、EUと中国との関係に否定的な影響を与えるだろう。

 そもそも、今年3月20日、ウイグル人問題について、これを人権侵害として、 EUが中国の高官等にEU諸国への入国禁止や資産凍結の制裁を発動したのに対して、中国共産党が、欧州議会議員、外交官、学者、シンクタンク等に報復制裁したことが、EU・中国関係の大きな悪化を招いた。そして、今度は、欧州議会が昨年末に合意された EU・中国投資条約の批准を凍結することで応えたというのが経緯である。

 EUも中国も態度を変えることは見込まれず、EU・中国投資条約は少なくとも当面は批准されないことになろう。その経済に与える影響は正確には測定不可能であるが、EUの対中投資、中国の対EU投資に否定的な影響を与えることは確実である。

 経済取り決めは通常、双方にとり利益になるものであるから、それを取りやめることは双方の損失になる。EUがそれを覚悟してこの投資条約の批准を「凍結」したことは、EUの対中姿勢が経済的利益だけで動いているのではないことを示すものであり、そういう姿勢は歓迎される。経済的利益よりも政治的に筋を通すことを優先させた姿勢は評価される。

 米国、EU、英国、カナダはともに、ウイグル人問題について中国に制裁を課している。日本は米国のマグニツキー法やEUの同じような法律のごとく、人権侵害に制裁を課す法律を持たない。したがって、ウイグル人問題について制裁を課すことが法律上不可能である。こういう法律があった方が米国とEUと歩調を合わせることが出来、民主主義陣営としての協調ができるが、同時にそういう法律を作り運用することは、このケースでも見られるように中国の報復制裁につながることになる。この問題は諸要素を考慮して考えていくべきであろうが、どちらかといえば、制裁という手段も発動には慎重であるべきだが、手元に用意しておくのが適切ではないかと考える。すなわち、法律は準備しながらも、その運用は慎重にということである。

 中国は習近平の下で、香港についての国際条約違反、国際法を無視した南シナ海での行動、国内での人権侵害など、鄧小平の姿勢とは様変わりして、強引な対外政策を遠慮なしに追求している。これは中国の覇権追求政策を示しており、これにはブレーキをかけていくことが重要である。EUの今回の出方はそれに資すると言えるだろう。

【私の論評】日本版マグニツキー法の成立を急げ(゚д゚)!

上の記事にもあるように、日本には米国のマグニツキー法やEUの同じような法律のように、人権侵害に制裁を課す法律がありません。そのため、ウイグル人問題について制裁を課すことが法律上不可能です。

しかし、そのような動きはあります。人権侵害をきっかけに資産凍結などの制裁を科せるようにする法律は、2020年からJPAC(対中政策に関する国会議員連盟)で検討が進んでいました。しかし、JPAC自体が香港問題をきっかけに設立されたことから、中国を念頭に置いているのではという指摘もされ、公明党と共産党からは参加議員がいませんでした。

国民民主党・山尾志桜里氏。奥は自民党・中谷元氏

そのためもあり、各政党の賛同を得るため、特定の国を名指ししない「人権侵害を超党派で考える議員連盟」が2021年4月に発足しました。これまで公明党と共産党を含めた衆・参合わせて82名が参加しています。

人権侵害をきっかけに海外の個人や団体に強力な制裁を科せるようにする「人権侵害制裁法」の成立を目指すこの議員連盟の会合が、5月14日に開かれました。

議員連盟は、人権侵害をきっかけに海外の個人や団体に資産凍結などの強力な制裁を科せるようにする「人権侵害制裁法」の制定を目指しています。

 この日は第2回目の総会が開かれ、「制裁法」の素案をもとに、出席した議員が非公開で意見交換をした。 「人権侵害制裁法」は、ロシアのならず者のごろつき政府高官どもの汚職を告発した直後に拘束され、2009年に獄中死したロシア人弁護士セルゲイ・マグニツキー氏の名前を冠した「マグニツキー法」がベースです。

あり日しのセルゲイ・マグニツキー氏

マグニツキー法は米国で2012年に最初に導入されました。ロシアの弁護士セルゲイ・マグニツキー氏が、ロシアの税務官の巨額な不正行為を告発したあと、疑惑の極めて高い状況で2009年に獄死。これを受け、マグニツキーを死に至らせたロシアの高官を罰するためのものです。現在その適用範囲は、腐敗した高官や人権侵害者へと拡張されています。

これをきっかけに、カナダやイギリス、EUなどで類似の法律が作られました。 素案では、外為法や入管法を改正して、人権侵害をきっかけに資産凍結や入国拒否などを発動できるようにするとしています。

 議員連盟はさらに、人権侵害の疑いが生じた場合、国会が政府に対して「調査」を要求することができるようにしています。政府は必ず調査を実施し、その結果、必要であれば制裁措置を講じることになります。

これは、人権問題への対応が外交関係に影響することを危惧する政府の「背中を押す」機能とされまする。 しかし、総会後に取材に応じた共同会長の中谷元氏(自民党)と山尾志桜里氏(国民民主党)によると、素案には異論もあがったといいます。

 山尾氏によると、出席した議員からは、国会が主導権を握って政府に調査をさせることに対して「国会ルートが強すぎると政府の外交にとって問題だ」とする懸念の声があがったといいます。

また、中谷氏によると、人権侵害の有無を調査する政府の能力に疑問を呈する声もあったといいます。中谷氏は「日本が独自で正しい判断ができることが大事だという意見があった。情報収集や分析をできるような体制を作らないといけない」と話しました。

 今後、提示された素案を各政党で検討する。山尾氏は「今は全くの素案」とした。また、今国会の成立を目指すとした従来の目標については「できれば時期を失さずまとめたい」と答えるにとどめました。

米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官の初外遊の来日による日米の2+2会合が3月16日に開催されました。その直前の同月12日には、「クアッド」4カ国の首脳会議が開催されました。

来日したブリンケン国務長官(左)とオースティン国防長官(右)

日本は同盟国を米国しか持たない国です。その日本が、日米同盟を堅固にしながら、その基盤の上にインド太平洋に広がる恒常的なネットワークを確立していくことは、大変に望ましい方向性です。米国のバイデン政権が日米同盟の堅固を求めている間に、それに素直に対応できたことは、とても良いことでした。

ただし気になることもありました。ブリンケン長官と茂木大臣との外相会談の席上で、ブリンケン長官が冒頭で「民主主義・法の支配・人権がミャンマーと中国で脅かされている、アメリカと日本は価値を共有している」と発言したことが、日本国内では報道されなかったことだ。

日本の報道では、中国、中国、中国、と、アメリカの高官が中国について何を言ったか、だけが大々的に扱われました。「ミャンマーと中国で脅かされている」と米国の国務長官が発言しても、「対中強硬路線」というふうにしか報道されませんでした。

しかし、中国へのスタンスだけで日米同盟の行方を推し量るのは、間違いです。日本が重視して強化すべきなのは、第二次安倍政権時代に頻繁に語られたような「価値観外交」です。

バイデン政権は人権を重んじる外交を標榜しています。選挙期間中から大統領就任後は世界「民主主義サミット」を開催するとしていました。このサミットに台湾を招くことも決めたといいます。確かに中国に気兼ねしない姿勢です。

しかし、バイデン政権が仕掛けているのは、「民主主義vs.権威主義」という世界観にそって、米中対立を理解することです。中国に対する米国の外交政策も、その世界観にそって世界に説明することを心掛けています。

このバイデン政権の姿勢の支柱になっているのが、ブリンケン国務長官です。今やバイデン政権の「価値観外交」の部分を、大統領以上に代表していると言えます。バイデン大統領が上院外交委員長だった時代からの20年来の外交ブレーンです。日米同盟の堅持は、ブリンケン長官との良好な関係を抜きにしては、ありえないです。

そのブリンケン長官の発言を真剣に受け止め、バイデン政権時代においても日米同盟を堅持するのであれば、ミャンマー問題を軽視するべきではないのです。

日本は世界の民主主義の行方には関心がない、日本はただ米国が中国に対抗して尖閣諸島を守ってくれさえすればそれでいい、という姿勢は、日米同盟の安定を損なわせることになります。「価値観外交」の部分がなければ、「FOIP(自由で開かれたインド太平洋)」へ日米同盟の可能性を広げていくことも難しくなるでしょう。

しかし本来の「マグニツキー法」は、中国と敵対するための法案ではありません。実際に、JPACの有力議員たちは、議員立法のために主要会派の合意を求めるため中国だけを対象とした法律ではないことを明確にすべく「人権侵害を超党派で考える議員連盟」を作ったのです。

日本版「マグニツキー法」が中国だけを標的にしたものではないことを明らかにするのであれば、議員立法を目指す方々には、是非ミャンマーにも関心を払ってほしいです。香港、ウイグル、チベットについて述べたら、次に必ずミャンマーについてふれてほしいです。

ミャンマー軍が行っていることは、人道に対する罪と断罪すべき行為ですし、それを裏付ける証拠も次々と伝わってきています。日本版「マグニツキー法」を現下のミャンマー情勢と重ね合わせることが、法案の趣旨を一層明確にすることにもつながることになります。

さらに言えば、甚大な人権侵害に対して関心を払う国である姿勢を見せることは、ブリンケン国務長官と歩調をあわせ、日米同盟を堅固にする方向性でもあります。そのことを、懐疑派の方々には、よくよく考えてほしいものです。


報道機関はバイデンを「保護している」:共和党と民主党が同意―【私の論評】多くの陰謀論の裏側にはチャイナが、蠢いていると認識するのが現実的(゚д゚)!

2021年6月9日水曜日

報道機関はバイデンを「保護している」:共和党と民主党が同意―【私の論評】多くの陰謀論の裏側にはチャイナが、蠢いていると認識するのが現実的(゚д゚)!

報道機関はバイデンを「保護している」:共和党と民主党が同意


<引用元:ワシントン・エグザミナー 2021.6.8>ポール・ベダード氏によるワシントン・シークレット論説

バイデン氏

メディアはドナルド・トランプ前大統領を嘘つき呼ばわりすることを生業にしていたが、リベラルのジョー・バイデン大統領に対しては完全におべっか使いの状態になり、メディアに対するアクセスを非常に制限していることすら許している。

少なくともそれが、民主党を含めた有権者の考えだ。

最新のゾグビーの世論調査で、62パーセントはメディアが「政策課題についての厳しい質問をしないことでジョー・バイデンを保護」していると答えた。

世論調査員のジョナサン・ゾグビーは、民主党の55パーセントがそうした評価に同意し、共和党では80パーセントが同意したと述べた。

ゾグビーが本紙に提供した分析によると、「ほとんどすべてのサブグループの大多数―大いに同意・ある程度同意を合計―は、特定のメディアが政策課題についての厳しい質問をしないことでジョー・バイデンを保護しているということに同意した」。

特定の課題についての質問に対しては、さらに高い数字のものもあった。ゾグビー・アナリティクスの調査によると、例えば高まる国境の危機について、63パーセントはメディアがバイデンをかばっていると述べた。

有権者はバイデンの広報スタッフが大統領へのアクセスを制限しているとも考えている。対してトランプは、ほぼ毎日メディアプールに対応できるようにしていた。

59パーセント対30パーセントの差で、調査回答者は「バイデンのスタッフが、バイデンがメディアに話す機会を減らすことで大統領を保護している」と答えた。

それでもゾグビーによると、現時点でバイデンはトランプよりも高い人気を保っていることがわかった。だがそれも、メディアの称賛とは裏腹に大統領の政策が行き詰まれば一時的なものになる恐れがあると彼は述べた。

「バイデン大統領は有頂天になっているように思われるが、突然劇的な出来事に直面する恐れがある。主流メディアはバイデンの味方だが、有権者はあとどれくらいの間味方するだろうか?バイデンがインフラ政策を果たすことができず、民主党が下院で共和党に対して過半数を失えば、バイデンの人気は打撃を受けて転落する恐れがある」とゾグビーは述べた。
【私の論評】多くの陰謀論の裏側にはチャイナが、蠢いていると認識するのが現実的(゚д゚)!

バイデン大統領が認知症なのは、周知の事実です。「こんなボケ老人を大統領にして米国は大丈夫なのか?」という質問を米国人に投げかけたところ、民主党支持派の米国人の多くは表現は異なるものの「ありは単なる飾り」に過ぎないとはいいます。

しかし、米国大統領が飾りで良いはずがないです。今月には、ロシアのプーチン大統領との直接会談が予定されていますが、ボケ老人を時差のあるジュネーブに行かせて、本当に話し合いになるのでしょうか。バイデン大統領は何らかの醜態を晒すことになりそうなきがします。

上の記事での指摘にもある通り、米国のTVでバイデンが何か話しているところを見ても、報道は非常に短いです。バイデンが3~5語くらい語ると、放送はカットされてしまいます。

もしかして、本当に1スピーチ数語で止めて引っ込まざるを得ない状態なのかも知れません。

その点、トランプ大統領は、スピーチに勢いがありました。移民を考慮してか、難しい単語は使わず、私でもわかる語彙で話してくれましたた。何より、見ていて力強かったです。国のリーダーたるもの、話し声も、表情も、力強くあってほしいものです。

トランプ氏

菅総理は、秋田人のせいか、あまり人前ではしゃいだり、大きなアクションで話したりすることは好まないようです。

しかし、ワクチン接種のこととか、緊急事態宣言のことなどを国民に向けてスピーチするときは、もう70歳すぎのご年齢とは言え、もう少々、パワーを感じるような話し方をしていただきたいです。さらに、目に生気が感じられないのも、気がかりです。

菅総理には国民全員でこれを乗り越えたら、明るい未来が待っている、という希望をもっと抱かせるスピーチをしていただきたいものです。

私は、平均的な日本国民は他国民に比較すれば、優秀だと思います。そうして世界で一番清潔好きで、米国、インド、やブラジルそれにEU諸国などと比較しても、人口比で比較すると、感染者数は桁違いに少ないです。

マスコミは、当初、ワクチンは危険だ危険だと煽り、ワクチンが世界で普及し始めてからは、政府の対策は遅いとなじりはじめました。

今日、菅内閣の支持率が過去最低の40%を切ったと報道されていました。チャイナは良いです。政府の悪口を言ったら逮捕投獄が待っているわけです。習近平がバイデンのように、ボケていても、一切報道されることはありません。米国ではバイデンがボケていても、大手メデイアなどは、上の記事にもある通り、隠そうとはしますが、それでも、上の記事にもあるように、それを明るみに出す人たちもいます。

日本は、与党の悪口を言うのが格好が良いとてでも思われいるようです。少なくとも、テレビワイドショーみている限りではそのように見えます。


菅総理には国民全員でこれを乗り越えたら、明るい未来が待っている、という希望を抱かせるスピーチをしていただきたいものです。

私は、平均的な日本国民は他国民に比較すれば、優秀だと思います。そうして世界で一番清潔好きで、米国、インド、やブラジルそれにEU諸国などと比較しても、人口比で比較すると、感染者数は桁違いに少ないです。菅政権はこのことを、しっかりと誰にでも理解できるように、トランプ氏のようにわかりやすく説明すべきです。また、いままでは、経済対策も他国に比較して、かなりよくやっていることも説明すべきです。

朝日新聞と毎日新聞が、東京都の予約システムに、ニセの接種券番号や65歳未満の年齢でも予約が出来たと騒ぎたてたましたが、本来、そういうようなことは「してはならないこと」です。しかし、本来そのようなことを周知しているはずである弁護士出身の立憲民主党の代表の枝野氏は、

「政府は、欠陥を見つけてくれた朝日新聞と毎日新聞に感謝をしろ」

とかほざきました。

立憲民主党代表枝野氏

本来ならば、「システムにアクセスする権限のない人は、一切アクセスしてはいけない。このような行為は妨害行為なのであって、一切おこなってはならないことである」と、野党の代表であっても、注意喚起をしなければならないはずです。

枝野氏がこのような発言をしたせいもあったのかもしれませが、先に述べたように自民党の支持率が下がりました。しかし、立憲民主党や、そのトップである枝野の支持率が上がっていませんし、これからも上がりそうもありません。そもそも、朝日や毎日で、ニセのアクセスをして予約した分は、その後、撤回したのでしょうか。

最近「Covid-19の発症は、武漢のウイルス研究所の流出によるものとだという説は間違いではない可能性がある」と言われています。

バイデン大統領は、「再調査せよ」と呑気な声明を出しましたが、いまごろ何言っているのだと言いたいです。そもそも、世界が何を言っても、肝心のチャイナが、査察も訪問調査もなにもかも一切拒んでいました。

拒む、ということはつまり、「Covid-19の発症は、武漢のウイルス研究所の流出によるものだ」ということです。これは、小学生が考えても認識できる話です。

それにしても、これを「陰謀論」としてきた人たちは、今頃吠え面をかいているようてすが、「陰謀説」の背後には、チャイナが蠢いているのは確実でしょう。日本でも、米国でもチャイナが様々なところで暗躍しているのは当然でしょう。

それをチャイナに納得させ自他共に認めさせることとと、それを前提として様々な備えや準備をすることとは別問題です。

そもそも、チャイナはどのようなことがあっても、どのような証拠がでてきてもそれを認めることはないでしょう。我々は、それを前提として行動しなければならないのです。

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2021年6月8日火曜日

国産ワクチンが遅れた理由 日本学術会議による軍事研究の事実上禁止で基礎研究が十分にできず 副反応あおる報道も一因に ―【私の論評】ワクチンを素早く大量生産できる能力は、安全保障の観点から欠くことはできない(゚д゚)!



 政府は国産ワクチンの開発・生産体制を強化するとして、拠点整備などを行う国家戦略を閣議決定した。

 今回の新型コロナウイルスの対応については、大国では官民で巨額な資金が投入され、1年もたたないうちにワクチンが完成した。ワクチンは生物兵器の防御として軍事的な研究の厚みがものをいうので、軍事大国ほど開発が速かった。日本は軍事大国ではない上、日本学術会議が軍事研究を事実上禁止し、重要な基礎研究が十分にできなかったという事情もある。

 加えて、日本では1970年代頃から、マスコミがワクチンの副反応を社会問題としてたびたび取り上げた。反ワクチン運動による多くの訴訟が起こり、国の敗訴も多かった。

 厚生省(当時)は1994年に予防接種法を改正し、ワクチンは義務接種から任意接種に変更された。それまでもワクチン接種率は低下し新規ワクチン開発も停滞していたが、法改正は国内メーカーのやる気を大いにそいだ。80年代まで日本はワクチン輸出国だったが、今や輸入国になっている。歴史を振り返ると、水痘、日本脳炎などのワクチンは日本が世界に先駆けて開発したものだ。

 そうした歴史に加えて、今回のコロナ禍で日本は比較的感染者数が少なかったので、国の承認を得るために必要な臨床試験(データを集めるための人に対する試験)を十分に行うことができなかった。

 日本も、いくつかの会社が民間技術で頑張っているが、スピードではかなわない。関係者に聞くと、軍事大国で開発されたワクチンは、自動車に例えると「F1」だという。最高技術をえるために巨額の資金投下をしているからだ。一方、日本企業が目指しているのは、安価な大衆車だ。世界中で50種類以上のワクチン開発がなされ、日本企業は軍事大国のトップグループではないが、その次の2、3番手グループらしい。現時点で今年中の実用化は厳しいかもしれないが、来年以降になると日本の出番も増えてくるかもしれない。

 こうした状況は、国難ともいえるので、6月2日の「COVAX(コバックス)ワクチンサミット」で、菅義偉首相は、国産ワクチンの研究開発拠点の整備構想を表明した。遅ればせながらであるが、ワクチン開発環境を一変させる重要な一歩だ。

 こうした基礎技術は、何はともあれ、予算を投入しなければ、うまくいかない。ワクチン開発は国防と考え、景気に左右されない安定的な予算を組まないと、いざというときに対応できなくなるだろう。

 マスコミも、副反応のみをあおる姿勢を改め、メリットとリスクをバランス良く報道すべきだ。

 これまでの偏った報道が結果的に影響した面もあると思うが、日本のワクチン接種率の低さは国益にならない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ワクチンを素早く大量生産できる能力は、安全保障の観点から欠くことはできない(゚д゚)!

安定した生物兵器を製造することは、現在でも困難だとされています。しかし、だからといって生物兵器の開発は行わていないと主張することは、正しいとはいえないです。

現実に、生物兵器を作ることを使命としていた旧ソ連の科学者たちの中には、冷戦終結後、米国からの支援を受けて医療研究やワクチン開発に従事している者も多いです。バイオテクノロジー産業機構の年次会議に出席したあるロシア人研究者は、遺伝子操作できわめて毒性の強いウイルスを簡単に作り出せる現状について警告していました。

1990年代のソ連が崩壊する前まで、アミル・マクシュートフ氏は、対米国用の生物兵器として利用する可能性のある、毒性の強いインフルエンザ菌やその他の感染性病原体の開発に従事していました。現在、マクシュートフ氏は、HIV、インフルエンザ、マラリアなどのワクチン開発を進めました。

不気味なソ連の生物兵器工場

マクシュートフ氏は、ソ連崩壊後に米国の庇護を受けられる科学者の1人になれて幸運でした。旧ソ連は、きわめて殺傷能力の高い感染性病原体を大量に作り出すために優秀な科学者を大勢雇用していたのですが、冷戦が終わると、多くの研究者は職を失ってしまいました。

そうした研究者が敵対勢力の手に落ちては困るので、米国は旧ソ連の科学者を支援し共同研究を進めるプログラムを考え出しました。

マクシュートフ氏は2004年6月7日(米国時間)、バイオテクノロジー産業機構(BIO)の年次会議に出席し、通訳を介して、「殺傷する目的のものを開発するより、(薬を開発する方が)はるかに気分が良い」と語りました。「今、われわれの可能性は非常に強まり、数多くの新薬を開発できるようになった」

マクシュートフ氏は、シベリアのノボシビルスク地方にある国立ウイルス学・バイオテクノロジー研究所(SRC VB VECTOR)の研究員です。マクシュートフ氏によると、この街の住民は全員同研究所と何らかの形で関わる仕事をしているといいます。

かつては地上で最も危険な病原体の製造施設だったものが医療研究施設に生まれ変わることができたのは、米国政府とロシア人科学者の共同作業が見事に成功した例の1つだと言えます。

「ロシアには才能ある人的資本が豊富にある」と語るのは、マサチューセッツ総合病院で国際医療問題上級アドバイザーを務めるジェフリー・ゲルファンド氏。ゲルファンド氏は、米国務省バイオインダストリー・イニシアチブでロシアにおける研究プロジェクトの確立にも協力しています。「一時期、もう何年も昔の話だが、その資本の使い方を誤っていた時があった。今はそれを正しい方向に導き、人類の役に立てているのだから、実に素晴らしい」

ゲルファンド氏によると、ロシア人研究者は往々にして、米国人ならおそらく思いつかない方法でプロジェクトにアプローチするといいます。たとえば、マクシュートフ氏は、HIVウイルスがワクチンからの攻撃を避けるために突然変異するパターンが4万6000通りもあることを発見した。そこでマクシュートフ氏は、この4万6000通りの突然変異の1つ1つにカウンターパンチを加えられるワクチンを開発しました。

国立ウイルス学・バイオテクノロジー研究所(SRC VB VECTOR)

「われわれの柔軟性を欠いた考え方からすれば、そんなものが効くはずがない、ということになっただろう」とゲルファンド氏。しかし、ウサギを使った実験でワクチンは効果を発揮し、国務省がその後の実験を支援することになったのです。

フセボロト・キセリョフ博士もまた、生物兵器の研究者から医学界に奇跡をもたらす人物へと転身した科学者の1人でした。キセリョフ博士は現在、モスクワにある分子診断治療研究所の生物工学研究室責任者として、『ヒト乳頭腫ウイルス』(HPV)と闘うワクチンの開発に取り組んでいる。

 HPVの一種から発症する喉頭乳頭腫は、幼児の気道内にイボを作って呼吸困難を引き起こしたり、場合によっては死に至らしめたりもする。米国務省からの資金提供を受け、キセリョフ博士は、新しいワクチンのみならず、ワクチンを作るまったく新しい技術まで開発することに成功した。

「ワクチンというものは通常弱く、十分な防御にはならない」とキセリョフ博士は述べました。「私は、その防御レベルを著しく改善する技術を開発した――少量のワクチンで高いレベルの防御が得られ、副作用はない」

このワクチンは当時はまだ初期段階にありました。動物での実験が終了すれば、技術を他の種類のワクチンに応用できる可能性もあるとキセリョフ博士は語りました。

こうした前進にもかかわらず、米国が旧ソ連の生物兵器科学者たち全員を魅了するのに成功しているわけではありませんでした。マクシュートフ氏によると、米国からの資金提供が生物兵器の拡散防止に役立ってきたことは事実でしたが、もっと努力を重ねる必要があると語りました。マクシュートフ氏は、「人類に対して友好的でない研究施設」が今から5〜10年の間に生物兵器を開発するのではないかと憂慮するとしていました。

「今の生物工学のレベルは非常に高いので、遺伝子操作したインフルエンザ・ウイルスなど、きわめて危険な新ウイルスを作り出すことも可能だ」とマクシュートフ氏。「1918年のスペイン風邪の大流行でさえ、小さく見せてしまうほどのものだ。こういった潜在的な危険性を秘めたウイルスは、厳しい監視体制の下に置いておかなければならない」

マクシュートフ氏はさらに、ワクチン開発に向け、インフルエンザ・ウイルスの構造や働きの研究も行なっていました。

「私は、さらに毒性の強いウイルスを作る方法をよく知っている。残念ながら、それは本当に簡単な方法だ」とマクシュートフ氏は語りました。まだ真相は明らかになっていませんが、今日マクシュートフ氏の予言は当たってしまったかもしれません。

確かに安定した生物兵器を、作るのは現在でも困難です。いかに毒性が強いウイルスを開発できたにしても、それを単純に散布してしまえば、敵国だけではなく、自国もその毒性の強いウイルスに滅ぼされてしまうことになります。

やはり、ウイルス等の予防法などを確立した上で、散布するなどのことをしなければならなくなります。ただし、ワクチンを事前に、多くの国民や特に軍人などに接種すれば、何のためにそれを実施するのかが問われ、最悪自国が敵国に攻撃されることになります。

さらに、ウイルスや病原菌など、思いの外弱く、すぐに活性を失ったり死滅したりします。それを安定させ、目的地まで運ぶのは困難です。さらに、それを何らかの方法で多くの人々に感染させることはかなりの困難を伴います。そのため、ウイルスや病原菌などを安定した兵器にするのは今でも困難です。しかし、完成された兵器にするのは難しいかもしれませんが、イスラム過激派の自爆テロのように、死を覚悟ということなら、ウイルスや病原菌も兵器の変わりに使うことはできるかもしれません。

たとえば、多くの人がご存知の地下鉄サリン事件においては、「サリンのパックを傘で刺し、逃走」などと実行の様子が記載されています。「パック」とは何なのか、どの程度の穴をいくつ開けたのかなどは、公表されていませんが、何らかの容器に入れたサリンを容器に穴をあけるという方式で散布したようです。


このような方式でも、あのような犯罪を実行したのですから、実行犯が死ぬことを覚悟したり、自国民がある程度死ぬことも辞さない覚悟で、実行するというのなら、安定した生物兵器でなくても、敵国に対して大きな混乱をもたらしたり、多くの敵国国民を殺傷することは、ある程度可能かもしれません。

マクシュートフ氏が語るように、毒性の強いウイルスを作る方法は、ウイルス学者にとっては簡単なようです。このような、毒性の強いウイルスを長年わたって、多数つくっていけば、中には扱いやすい安定したものや、自国民にとっては比較的害の少ないものなども作成できるようになるかもしれません。

そうして、上で述べたことから、先日もこのブログで述べたように、コロナウイルスは「武漢ウイルス研究所流出説」は正しいかもしれません。

真相は、まだわかりませんが、可能性としては捨てきれません。そうして、これに対処するには、現在のところ病原体を発見した場合、すぐにそれに対処できるようにワクチンをすみやかに大量生産して速やかに多くの国民に接種することです。

まさに、ワクチンを素早く作成できる能力は、安全保障の観点からして、欠くことのできないものであり、ワクチンは戦略物資です。

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2021年6月7日月曜日

A級戦犯7人の遺骨、米軍将校「太平洋にまいた」 昭和史の謎だったが…公文書発見―【私の論評】日本人は先の大戦で無条件降伏していないこと、戦犯の処刑は違法行為であることを思い起こすべき(゚д゚)!

A級戦犯7人の遺骨、米軍将校「太平洋にまいた」 昭和史の謎だったが…公文書発見


 第2次大戦後、極東国際軍事裁判(東京裁判)で死刑判決を受けた東条英機元首相らA級戦犯7人の遺骨について、米軍将校が「太平洋の上空から私がまいた」と記した公文書が、7日までに見つかった。米軍による具体的なA級戦犯の遺骨処理の方法が公文書で判明するのは初。遺骨は遺族に返還されず、太平洋や東京湾にまかれたとの臆測はあったが、行方は昭和史の謎とされていた。

 文書は、占領期に横浜市に司令部を置いた米第8軍が作成。日本大生産工学部の高澤弘明専任講師(法学)が米国立公文書館で入手した。

 極秘文書には現場責任者のルーサー・フライアーソン少佐が経緯を報告。火葬後、7人の遺骨は「横浜の東の太平洋上空を約30マイル(48キロ)地点まで連絡機で進み、私が遺骨を広範囲にまいた」と記している。

【私の論評】日本人は先の大戦で無条件降伏していないこと、戦犯の処刑は違法行為であることを思い起こすべき(゚д゚)!

A級戦犯で亡くなられた方々の、遺骨もないということを、遺族の方が語っていたのを聴いたことがありましたが、戦後70年以上もたってようやく明らかにされました。まずは、亡くなられた7人の方々をご冥福をお祈りさせていただきます。

それにしても、戦後70年以上も経て「A級戦犯」は、「戦争ですごく悪いことをした主犯級の人のこと」を意味する言葉だと考えている人でも多いのではないでしょうか。

現代でも、何かまずい事が起きたときにその中心となって事件を起こした人や一番酷いことをした人のことを「あいつがA級戦犯だ」と言うことがありますが、私たちは「A級戦犯」という言葉を正しい意味で理解しているでしょうか?

第二次世界大戦で日本は敗けました。

勝った連合国側は、戦後にポツダム宣言に従って、日本の重要な戦争犯罪人を裁くための裁判を行うことにしました。

ただし、それを裁くための法律がなかったので、まず極東国際軍事裁判所条例を作り、その第五条(イ)項で戦争犯罪に関して定義を作成し、それを元にして東京裁判(極東国際軍事裁判)を開きました。

この法律は、「事後法」と言われ、裁くために作られた法律であり罪状ですから、現在からみると完璧に違法です。

作られた条例には3つの種類の罪が明記されていました。
A.平和に対する罪
B.戦争犯罪
C.人道に対する罪
英語で作られたこの条例は、ABCに分けて書かれており、A級戦犯とは、このAの平和に対する罪で有罪となった者を呼ぶ呼び方です。

つまり、ABCは罪の深刻さでレベル分けされたのではありません。3つにグループ分けされた罪状のうち、平和に対する罪のグループをAにしたので、それを犯したとされる人々がA級戦犯と呼ばれることになったに過ぎません。

AがBやCより罪が重い、という意味はないのです。

ソビエト連邦のポツダムによって行われたポツダム宣言の合意に基づき、1945年7月26日に米国、英国、中華民国の名において大日本帝国に対して無条件降伏を求めるポツダム宣言が発せらたと信じている人も多いようですが、これも大きな間違いです。

日本は無条件降伏などしていません。

日本は、降伏条件が明示された、ポツダム宣を受諾することで、降伏したのです。

ポツダム宣言(The Potsdam Declaration)は、昭和20年(1945年)7月26日に、米合衆国大統領、英首相、中華民国主席の名において、日本に対して発せられた、全十三か条からなる宣言です。その第五条には次の文があります。

 五、我々の条件は以下の条文で示すとおりであり、これについては譲歩せず、我々がここから外れることもない。執行の遅れは認めない。

 要するに、ここには連合国が、「この条件から外れるようなことは、絶対にしない」と、書いてあるのです。

ポツダム宣言は、日本に『条件付き降伏』を求めていたのです。

第七条には、「第六条の新秩序が確立され、戦争能力が失われたことが確認される時までは、我々の指示する基本的目的の達成を確保するため、日本国領域内の諸地点は占領されるべきものとする」とあります。

つまり、日本全国を占領することはしない。日本が、われわれの要求する、条件を達成するまで、連合国側は、「いくつかの地点を占領」するという、条件を出しているのです。

日本全土を占領するとは、どこにも書いていません。米国が、日本全国を占領したということも、重大なポツダム宣言違反です。

第十条には、「我々の意志は日本人を民族として奴隷化しまた日本国民を滅亡させようとするものではないが、日本における捕虜虐待を含む一切の戦争犯罪人は処刑されるべきである。日本政府は日本国民における民主主義的傾向の復活を強化し、これを妨げるあらゆる障害は排除するべきであり、言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立されるべきである」と、書かれています。

「戦争犯罪人」というのは、それまでの戦時国際法によれば、たとえば非戦闘員を殺すとか、一般市民への略奪を行うとか、あるいは女性に対して乱暴をはたらく、あるいは降伏して捕虜となった者を虐待するなどの「戦場犯罪」を意味します。

戦犯として裁かれた東條閣下 この裁判自体が違法だった

それまで、国民の指導者に対して、「戦争犯罪人」として、責任を問うたことは、人類史上ただの一度もありませんでした。だから、日本がポツダム宣言を受諾したときには、当然のことながら「戦争犯罪人」というのは、通常の戦場犯罪をおかした、いわゆる「戦争犯罪者」を罰するものだと、理解していたのです。

それ以外の解釈は全く考えられませんでした。前例がないのだから、当然です。

さらに、最後の第十三条では、「我々は日本政府が全日本軍の即時無条件降伏を宣言し、またその行動について日本政府が十分に保障することを求める。これ以外の選択肢は迅速且つ完全なる壊滅があるのみである」と、書いてあります。ここでの「無条件降伏」とは、「全日本軍」の無条件降伏を要求しているのであって、「日本国」としての無条件降伏はもとめていないのです。

そもそも第五条には、「我々の条件は以下の条文で示すとおりであり、…我々がここから外れることもない。…」と、書いてあります。意訳すると、「われらの条件は左の通りである。われらはこれらの条件より離脱することはない」と、宣言しているのです。

そう宣言しながら、日本全土を占領し、極東国際軍事裁判を行っているのです。連合国による日本の占領政策は、ポツダム宣言の重大な違反なのです。

日本は、天皇を人質にとられた状況でしたた。「天皇を捕えて戦争犯罪人として裁く。命も保障できない」と脅迫されたら、二千六百年余りに及ぶ「国体」の護持が、最大の望みである日本人は、何の文句も言えなかったのです。

こうして、米国の国際法への重大な違反は、自ら発した『ポツダム宣言』に違反するところからはじまったのです。

日本の大新聞をはじめとして、多くのメディアは平然と、「日本は先の戦争で無条件降伏をした」という「虚偽」報道をしています。

占領軍は、自らが宣言した日本の降伏条件を、一方的に破ったのです。だから日本が「無条件降伏をした」という、ことにして虚偽情報を蔓延させたのです。

その宣言の中に「我らの捕虜を虐待した者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重な処罰が加えられる」とあります。

さらに、同年8月8日に英国、米国、フランス、ソビエト連邦の4ヶ国が「欧州枢軸諸国の重要戦争犯罪人の訴追求お呼び処罰に関する協定」(ロンドン協定)を締結し、8月10日それらを日本が受諾しました。

9月2日には日本の降伏文書調印式が行われています。

降伏文書調印式に参加した日本の代表団

その後、ダグラス・マッカーサー連合国軍最高司令官が中心になって東条英機を逮捕し、戦争犯罪人容疑者のリスト作成が行われました。

この際、米国政府は、占領政策の円滑化のために日本に天皇が欠かせないという認識があったため、昭和天皇の訴追は行っていません。

アメリカ軍の憲兵司令部へ出頭命令を受けた戦犯容疑としての逮捕者は126名。それ以外に5名が逮捕・出頭前に自殺しています。

中でも28名がA級戦犯として昭和天皇の誕生日4月29日に起訴され、病死や精神障害により裁判を終了できなかった3名以外の25名が判決を受けました。

さらにそのうち以下の7名の男性がA級戦犯として死刑判決を受けました。
東條英機(陸軍大将、元首相)
土肥原賢二(陸軍大将)
松井石根(陸軍大将)*
武藤章(陸軍中将)
板垣征四郎(陸軍大将、元陸軍大臣)
広田弘毅(元首相)
木村兵太郎(陸軍大将)
彼らは、当時の皇太子明仁親王の誕生日である1948年12月23日、真夜中の巣鴨プリズンで絞首刑を執行されました。

巣鴨拘置所の入り口(現在のサンシャインシティーのある場所)

これら天皇、皇太子の誕生日を起訴や死刑執行日に選んだのは、訴追できない天皇に対する連合国側の意図があったと言われています。

松井石根はA級戦犯としては無罪、B級戦犯として処刑されていますが、同時期に処刑された人々が全てA級戦犯だったことから、今でもA級戦犯とされることがあります。

日本人は日本は今回戦犯として処刑された方々の遺骨がどうなったのか、明らかになったことを機会に、第二次世界大戦で無条件降伏していないことと、戦犯の処刑は違法行為であることを思い起こすべきです。

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2021年6月6日日曜日

【独自】安保技術の提供、許可制に…外国の「強い影響下」にある日本人研究者も対象―【私の論評】これは政府が昨年5月に施行された改正外為法を厳格に適用し取締を強化していく前ぶれ(゚д゚)!

【独自】安保技術の提供、許可制に…外国の「強い影響下」にある日本人研究者も対象


 政府は、日本の大学や研究機関を通じて軍事転用可能な先端技術が海外に流出するのを防止するため、外国政府の「強い影響下」にある留学生や日本人研究者に対する技術提供は、経済産業相の許可制とする方針を固めた。安全保障上の懸念が強いケースは不許可とし、流出を阻止する。 




 複数の政府関係者が明らかにした。外国為替及び外国貿易法(外為法)の通達を改正し、2022年度までの運用開始を目指す。中国は海外に派遣した留学生・研究者や、日本人を含む外国人への資金提供などを通じ、軍事転用可能な技術の獲得を図っているとされ、対策を強化する。

 外為法は、軍事転用可能な機微技術の外国人に対する提供は、国内であっても「みなし輸出」に当たるとし、輸出と同様に経産相の許可制としている。

 ただ、現行制度では、国内で雇用された外国人や入国から6か月が経過した外国人は、日本人と同じ「居住者」として扱われる。「居住者」に対する軍事関連技術の提供は許可が不要となり、政府内で「技術流出の抜け穴」だとして規制強化策が検討されてきた。

 通達の改正では、「居住者」であっても、雇用関係や資金提供などを通じて外国の政府や法人から「強い影響」を受けていると判断される場合は、こうした「居住者」に技術提供を行おうとする大学や研究機関、企業に対し、経産相への許可申請を義務付ける。

 日本人研究者は「居住者」に当たるが、外国の「強い影響下」にあれば同様に規制対象とする。こうした研究者への技術提供が外国人への提供と同一視できる場合なら、現行法の運用の厳格化で規制可能だと判断した。中国の人材招致プロジェクト「千人計画」に参加している研究者などを想定している。「強い影響下」にあるかどうかの判断基準の具体化も急ぐ。

 留学生・研究者らと外国政府との関係などの把握は、大学などが担う。政府は、外国からの資金提供状況や外国機関での勤務経歴などの情報を大学などと共有することも検討している。

 一方、自由な研究活動を阻害しないため、留学生らに対する基礎研究分野の情報提供や、一般的な特許出願内容の情報公開、研究者による論文発表などは規制の対象外とする考えだ。

【私の論評】これは政府が昨年5月に施行された改正外為法を厳格に適用し取締を強化していく前ぶれ(゚д゚)!

外為法(「外国為替及び外国貿易法」)は、わが国と外国との間の資金や財(モノ)・サービスの移動などの対外取引や、居住者間の外貨建て取引に適用される法律です。

外為法の目的は、対外取引に対し必要最小限の管理・調整を行い、対外取引の正常な発展やわが国または国際社会の安全の維持等を促すことにより、国際収支の均衡と通貨の安定を図り、さらにはわが国経済の健全な発展に寄与することです(同法第1条)。

外為法を所管しているのは、財務大臣と経済産業大臣ですが、同法第69条の定めに基づき、日本銀行がその事務の一部(許可申請書、届出書、報告書の受理事務や国際収支統計等の作成事務)を行っています。

外為法は1998年(平成10年)4月に抜本的に改正され、資本取引の「事前届出・許可制」が原則として廃止されました。これにより、現在は、対外取引を行った後に当該取引の内容を財務大臣や事業所管大臣等に事後的に報告する「報告制度」が基本となり、許可や事前届出を要するのは、経済制裁や一部の直接投資・技術導入に限られるようになりました。


戦後の日本では当初、国内産業を守りつつ、貴重な外貨を日本企業の設備投資に回すため対外取引は制限されてきました。1980年代にかけて自由化にかじを切って以降は、日本企業への出資などを原則自由とする法規制が形作られました。

しかし先端技術が民間から多く生まれ、企業が持つデータの価値が高まるなかで、近年は規制強化の動きが目立つようになりました。米国は昨年2月13日、対米外国投資委員会(CFIUS)の機能を強化する法律を施行。重要技術やインフラ、個人データを扱う事業への出資は支配権を取らなくても審査することにしたほか、軍事施設の近くにある不動産の取引も審査対象に加えました。

安全保障上重要な企業に対する外資の出資規制を定めた改正外為法が、昨年5月に施行されました。2019年11月に成立した改正法によって、外国人投資家の株式取得に関する審査基準が大幅に厳しくなりました。米国が中国との間で技術・経済の両面で覇権を争う中、同盟国・日本に対し対中強硬姿勢で足並みをそろえるよう迫ったことが背景にあります。日本は安全保障を強化でき、さらに中国からの投資が難しくなるなどの大きなメリットもあります。



このように外為法は、法律そのものは、十分対応していたのですが、運用が穴だらけだったところがあります。本来みなし輸出(日本政府から業務を受注した企業が、日本政府の技術や機密に関連する情報を日本人あるいは永住権保持者以外に渡すこと)が確認された時点で外為法違反なのですが、取り締まりができていなかったのです。

今回は、経済制裁等を実施していない外国政府であっても、そのの「強い影響下」にある留学生や日本人研究者に対する技術提供は、経済産業相の許可制とするということのようです。許可されていないものを提供した場合は、外為法違反で取り締まるということです。無論これは、中国を念頭においたものであるとみられます。

米バイデン政権はトランプ政権が始めた中国ハイテク企業への禁輸政策、市場排除政策などを継続、中国企業の封じ込め政策、米中デカップリング政策を進める方針のようです。

ただ、米国がデカップリングを推進しても、日本から米国の技術やそれかわる日本独自の技術が中国に漏れることなどがあれば、米国のデカップリング政策は無意味になります。だから、バイデン政権は日本を含め、同盟国との連帯を強め、中国包囲網を築きたいようです。

日本は安倍元総理により、アジア太平洋戦略に米国を組み入れることに成功し、さらにQuadでも米国を取り込み、米国をアジアの安定と平和の一角を占めるように促し、それに成功しました。これはトランプ政権のときのことですが、バイデン政権も継承しています。

一方で、日本には政界や財界に親中的な勢力も多く、日本から米国の技術や日本独自の技術が中国に漏れる可能性は未だ高いですし、事実一部の情報は漏れているものと考えられます。

日本としては、中国包囲網築きたい米国の考えは、以前から認識しているため、これに応えるためにも、特に軍事転用可能な先端技術が海外に流出するのを防止するために、中国の強い影響下にある留学生や日本人研究者に対する技術提供は、経済産業相の許可制とする方向で検討をすすめているのだと考えられます。

たとえばFCV (燃料電池車)はトヨタが開発で先行し、基幹システムの生産も国内にとどめてきました。ところが、中国政府がこの現地化を求め、清華大学系の北京億華通科技と合弁企業を設立しています。 トヨタは清華大学と「清華大学-トヨタ連合研究院」を設立して、共同研究も実施しています。

 中国における水素社会の実現に向け、6社連合で商用車用の
 燃料電池システムの研究開発会社を設立

これでは、日本の先端技術が中国にただ漏れであり、これによって、中国はFCVの技術を手にして、将来これによって自動車販売で急速に伸びていく可能性も高いです。

このようなことは、中国をデカップリングしようとしている米国からみても、裏切り行為であるとうつることでしょう。この状態を日本が放置しておけば、米国はトヨタを制裁対象にすることも十分考えられます。

しかし、このようなことになる前に、日本政府はこれに対処するため、外為法を弾力的に運用していく必要があります。たとえば、外為法の輸出管理の輸出規制品目に、FCV技術を用いた製品を加えるなどのことを実施すべきです。

いずれにせよ、今回の外国為替及び外国貿易法(外為法)の通達を改正しようとする動きは、政府が昨年5月に施行された改正外為法を厳格に適用し取締を強化していく前ぶれてと見るべきでしょう。

中国と取引している企業や、これからそうしようと考えている企業は、このことを前提として、経営戦略を立案すべきです。

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「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!


<「反中の陰謀説」とされてきた新型コロナウイルスの「研究所流出説」がここへ来て急に見直されているのは、中国の説明がおかしいと感じた世界各地のアマチュアネットユーザーがチームを組んで否定しがたい新事実を科学界と大メディアに突きつけたからだ>


新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)は中国・武漢の研究所から手違いでウイルスが流出して引き起こされた──これはつい最近までオルト・ライト(新右翼)的な陰謀論としておおむね無視されてきた主張だ。【ローワン・ジェイコブソン】 

【動画】肛門PCR検査後、ペンギンのように歩く中国の人々 

ワシントン・ポストは2020年初め、「専門家が何度もその誤りを証明した陰謀論を、執拗に蒸し返している」として、トム・コットン上院議員を批判。CNNは「陰謀論や誤情報を信じている友人や家族を説得する方法」を伝え、ニューヨーク・タイムズも「非主流の説」扱いをし、公共放送のNPRも「研究所の事故で流出したという説は虚偽だと証明されている」と述べるなど、アメリカの他の主要メディアもおおむねこの説を否定していた。

 そうした中で、本誌は例外的に2020年4月、武漢ウイルス研究所(WIV)はウイルスの病原性や感染性を強める「機能獲得型」研究を行なっており、ここから流出した可能性も否定できないと報道した。同様の報道を行なったのは、左派系雑誌のマザー・ジョーンズに加え、ビジネス・インサイダー、ニューヨーク・ポスト、FOXニュースと、ごく少数のメディアだけだ。 

<あるのは好奇心と根気だけ>

 だがこの1週間ほど、研究所流出説がにわかに注目を浴び始めた。ジョー・バイデン米大統領は情報機関に追加調査を指示。主要メディアも手のひらを返したように、流出説をあり得る仮説として扱い始めた。

 雲行きが変わった理由は明らかだ。この何カ月かの間に武漢の研究所からの流出を疑わせる状況証拠が次々に明るみに出て、無視できないほどに蓄積された。

それらの証拠を探り当てたのは、ジャーナリストでもスパイでも科学者でもない。アマチュアの「探偵」たちだ。彼らの武器は好奇心、そして来る日も来る日もインターネット上の膨大な情報をかき分け、手掛かりを探す根気強さ。それだけだ。

 パンデミックが始まってからというもの、その原因に関心をもった世界各地のアマチュア20数人が独自に調査を行い、埋もれた文書を掘り起こし、断片的な情報をつなぎ合わせてきた。彼らがばらばらに発信した推理が1つ、また1つとツイッター上でつながり、やがてはまとまったストーリーが紡ぎ出されてきた。

<チーム名は「ドラスティック」>

それは言ってみれば「オープンソースの自由参加型ブレインストーミング」であり、ネット調査と市民ジャーナリズムの要素が合体した、全く新しい調査方法である。彼らは自分たちをDRASTIC(Decentralized Radical Autonomous Search Team Investing COVID-19=新型コロナウイルス感染症に関する分散型の急進的な匿名の調査チームの頭文字を取った略称だ)と名乗る。

 DRASTICの調査結果は長い間、ツイッター上のオタク世界の片隅に埋もれ、少数のフォロワーにしか知られていなかった。探偵たちはたびたび捜査の袋小路にぶつかったし、時には彼らの解釈に異を唱える科学者たちと論争になった。それらの数々のツイートは、ツイッターの「ファイヤーホース」サービスを介して、1つのまとまったニュースの流れを形づくった。

 調査の質はしだいに向上し、事実究明に向けたその執念がより幅広いフォロワーを引きつけ、科学者やジャーナリストもその内容に注目するようになった。 

DRASTICのおかげで、今ではいくつかの重要な事柄が分かっている。

<どう見ても疑うしかない新事実>

まず、武漢の研究所が長年、コウモリのいる洞窟で何種類ものコロナウイルスを収集してきたこと。その多くは2012年にSARS(重症急性呼吸器症候群)のような症状を起こして3人の鉱山労働者が死亡した銅鉱山で見つかったもので、新型コロナと最も近縁なウイルスもそこに含まれるとみられている。

また、武漢の研究所はこれらのウイルスを使ってさまざまな実験を行なっていたが、安全管理はお粗末で、曝露や流出の危険性があったことも明らかになった。研究所も中国政府もこうした活動を外部に知られないよう、ひた隠しにしていたのだ。

さらに、新型コロナの発生源とされた武漢の華南海鮮市場で最初の集団感染が起きるよりも何週間も前に、既に感染者が発生していたことも分かった。

これらのいずれも、研究所流出説を裏付ける決定的な証拠とは言えない。研究所が発生源ではない可能性も十分にある。しかしDRASTICが集めた証拠は、検察官の言う「相当な理由」にはなる。つまり、研究所から出た可能性を疑い、本格的な捜査を行うに足る理由がある、ということだ。

<最初は「海鮮市場が発生源」を信じた>

アメリカやその他の国々が精力的に調査を進めても、研究所流出説を裏付ける明白な証拠が得られるという保証はない。中国の全面的な協力なしには、徹底した調査はできないが、中国の協力は得られそうにない。

 それでも、この雑多な背景を持つ少数のアマチュアたちがやってのけた草の根の調査報道は、21世紀の最大のスクープとなる可能性がある。 

以下はその詳しい経緯だ。

 DRASTICの1人、「シーカー(探索者)」と名乗る20代後半のインド人男性がメールとテキストメッセージで本誌の取材に応じてくれた。

 彼はインド東部の西ベンガル州在住。地元の伝統的な舞踊に使われる仮面をツイッターのロゴにしている。仕事は建築、絵画、映像制作など。母や姉妹がよく作るインドのお粥「キチュリー」のように雑多な素材が混じり合うことで、意外性に富む作品ができるそうだ。

 熱心な独学者で、グーグルが監視の目を光らせるネット上の「表通り」からは外れた「路地裏」に精通し、興味を持ったトピックについてはそこでせっせと情報収集をしてきた。その成果をレディットに頻繁に投稿し、75万カルマ・ポイントを獲得したという。

 本誌に明かしてくれたプロフィールは以上。本名の公表は控えたいそうだ。 

<「流出説」を揉み消した大物の正体> 

パンデミックが始まった当初、新型コロナ関連のニュースを追っていた人たちの例に漏れず、シーカーも武漢の海鮮市場で野生動物からヒトに感染が広がったと信じていた。3月27日付のツイートで、彼は「珍しい動物の取引で生まれたおかしなウイルスで、親や祖父母が死ぬなんて、ひどい話だ」と嘆いた。

 彼がそう信じたのは、主要メディアがそう報じたからで、主要メディアがそう報じたのは何人かの科学者がそう主張したからだ。 

ピーター・ダスダック氏

そう主張した科学者の筆頭格がピーター・ダスダック。パンデミックを起こす可能性がある自然界の病原体について大規模な国際調査を行う非営利の研究機関、エコヘルス・アライアンスの代表だ。

 ダスダッククは、武漢ウイルス研究所に所属するコウモリのウイルス研究の第一人者、石正麗(シー・ジェンリー)と長年共同研究を行ってきた。十数本近い論文を共同執筆し、分かっているだけで60万ドルの米政府の助成金を彼女に回してきた。

<自然発生説のほうが陰謀だった>

世界で最も多くコロナウイルスを収集してきた研究所のすぐそばで、未知のコロナウイルスの集団感染が発生したとなると、研究所から流出した疑いを持つのは理の当然だ。ダザックはすかさずそれに待ったをかけた。他の26人の科学者と連名で2020年2月19日、医学誌ランセットで公開書簡を発表。「新型コロナウイルス 感染症が自然な発生源を持たないことを示唆する陰謀論を、私たちは断固として非難する」と宣言したのだ。

 今では情報自由法の請求記録から、ダスダックが研究所流出説を潰すための公開書簡の作成を主導したことが分かっている。彼は書簡の草案を作成し、仲間の科学者たちに署名させて、それが幅広い科学者の見解を示すものに見えるように画策したのだ。

 ダザックは科学者たちに署名を求めるメールの中で、「この声明にはエコヘルス・アライアンスのロゴは入らないし、特定の組織や人物が作成したものだと特定されることはない」と確約していた。武漢ウイルス研究所と研究内容が重なる科学者たちは、「(署名から)研究内容を逆にたどられることがないように」署名しないことで同意した。

 だが当時、ダスダックが果たした役割については、それをほのめかす兆しもなかった。公開書簡が発表されたことがきっかけでメディアに頻繁に登場するようになったダスダックは、研究所流出説を「不合理」「根拠に欠ける」「完全なでたらめ」と一蹴した。彼はまた、同研究所につながる証拠を発表した複数の科学者を攻撃。研究所流出説が理にかなわない理由の一部として、武漢ウイルス研究所では、新型コロナウイルスに少しでも似ているウイルスを一切培養していなかったと主張した。 

<コウモリウイルスの専門家、石正麗> 

ダザックは長期にわたって、驚くほど大きな影響力を持ち続けた。彼のしたことが公にされれば、彼のキャリアも組織も大きな打撃を受けただろうが、メディアがそうした疑問を提起することはほとんどなかった。 

皮肉にもダスダックの「共犯」となったのが、ドナルド・トランプ前米大統領だった。「中国ウイルス説」を唱えるトランプ政権がエコヘルス・アライアンスへの助成金を打ち切ると、メディアはダザックを陰謀論者たちの「犠牲者」として同情的に取り上げたのだ。

  シーカーは、2020年前半までにはその考え方に疑問を抱くようになっていた。そこで、通説のあら探しをしていた人々とのやり取りを始めた。 

その中で見つけた重要な情報が、カナダの起業家ユーリ・デイギンによる、オンラインプラットフォーム「メディウム」への投稿だ。デイギンはこの中で、石正麗が2月3日に科学誌ネイチャーで発表したウイルス「RaTG13」を取り上げていた。石正麗は論文の中で、新型コロナウイルスについての詳細な分析結果を紹介。新型コロナウイルスと遺伝子レベルで似ているウイルスとして、「RaTG13」(コウモリコロナウイルス)を挙げていた。

<検閲されて疑い強まる>

論文はRaTG13の起源については曖昧で、中国南部の雲南省に生息するコウモリから以前検出されたと述べるだけで、いつ・どこで発見されたのか具体的な言及はなかった。

 デイギンはこの論文に疑念を抱いた。新型コロナウイルスは、RaTG13あるいはその関連ウイルスを調べていて、遺伝子を混ぜ合わせたり、照合したりする作業の過程で生まれた可能性があるのではないかと考えた。デイギンの投稿内容は包括的で、説得力があった。シーカーはデイギンの説をレディットに投稿。

するとすぐに、彼のアカウントは永久凍結された。 この検閲の気配が、シーカーの好奇心とやる気を刺激した。ツイッター上にあるグループのアイデアをさらに読んでいくと、「この問題について活発に議論し、調査しているグループが見つかった」と、彼は本誌へのメールで述べた。

 この刺激的なグループを構成していたのは、起業家やエンジニア、それにロッサーナ・セグレトという米インスブルック大学の微生物学者もいた。彼らは互いに面識はなかったが、新型コロナウイルスの起源が動物という通説に疑問をもった点が共通していた。

 アジアのどこかに暮らしているという冗談好きのコーディネーターがグループの会話を管理していた。この人物はビリー・ボスティックソンという偽名を使っており、ツイッターのアイコンには、痛めつけられた研究用のサルの絵を使っている。

 <真相を明らかにする使命感>

まさにシーカーにぴったりのグループだった。「彼らの手助けを得て、詳しいことを学んでいった」と彼は言う。「いつの間にか、この謎にすっかり夢中になっていた」

彼を駆り立てたのは好奇心だけではなく、ひとりの市民としての責任感でもあった。「新型コロナウイルスは、数えきれない人の命を奪い、大勢の人の生活を破壊した。多くの謎も残しているのに、その追跡調査が行われていない。人類には答えを知る権利がある」

シーカーをはじめとするメンバーたちは徐々に、RaTG13がその「答え」の一部を解明する上での鍵を握っているのではないかと確信するようになった。

グループのスレッドでは、6人ほどの参加者がこの謎について活発な議論を展開。彼らはヒントを求めて、インターネットや武漢ウイルス研究所の過去の論文をくまなく調べた。彼らは世界中の人々が見られる形で、リアルタイムでデータを更新し、さまざまな仮説を検証し、互いの意見を修正し合い、幾つかの重要な指摘を行った。

RaTG13の遺伝子配列が、石正麗が何年も前に発表した論文に記されていた遺伝子コードの一部と完璧に一致した、というのもその一つだ。この遺伝子コードは、武漢ウイルス研究所が雲南省のコウモリから発見したウイルスのものだった。

<始祖ウイルス発見は2012年?>

DRASTICチームは、2つの論文に含まれる重要な詳細情報を過去の複数の報道と結びつけて、RaTG13は雲南省の墨江八二族自治県にある鉱山の坑道で発見されたウイルスだと断定した。ここでは2012年に、コウモリの糞を除去していた男性6人が肺炎を発症し、そのうち3人が死亡していた。DRASTICはこれが、ヒトが新型コロナウイルスの始祖ウイルス(おそらくRaTG13かそれに類似したウイルス)に感染した初めての症例だったのではないかと考えた。

石正麗は科学誌「サイエンティフィック・アメリカン」に掲載されたプロフィールの中で、複数の鉱山労働者が死亡した墨江八二族自治県の鉱山について調査を行ったことを認めている。だが彼女はこの銅鉱山の一件とRaTG13を関連づけることは避けており(論文の中でも触れていない)、作業員たちは洞窟の中の「真菌(カビ)」が原因で死亡したと主張した。

 DRASTICの面々は納得しなかった。鉱山労働者を死に追いやったのは真菌ではなく、SARSウイルスに似たウイルスで、研究所は何らかの理由でそれを隠そうとしているのではないかと、彼らは考えた。だが、それは直感にすぎず、証明する手立てはなかった。

<2012年の鉱山労働者の死因を追え> 

だがネット情報を探るうちに、シーカーは中国の学術誌や論文を網羅した巨大なデータベース、CNKI(中国学術文献オンラインサービス)を見つけた。ここにある膨大な学術文献の中に、鉱山労働者の死に関連した情報が埋もれているかもしれない。

 彼はベッドの横のテーブルにチャイを用意し、携帯電話とノートパソコンで夜を徹して探索を続けた。問題の鉱山がある地域の名称(墨江ハニ族自治県)に思いつく限りの関連キーワードを付けて、グーグル翻訳で英語を簡体字の漢字に変換して検索をかけ、検索結果をまた英語に翻訳して目を通す。「墨江+肺炎」「墨江+武漢ウイルス研究所」「墨江+コウモリ」「墨江+SARS」という具合だ。

 1回の検索で何千もの結果が出て、雑誌、本、新聞、修士論文、博士論文などのデータベースが半ダース程も表示される。シーカーは来る夜も来る夜もそれらに目を通したが、有用な情報は得られなかった。精魂尽きるとチャイを飲み、アーケードゲームで気分転換して、また作業を続ける。

<大スクープに値する発見>

その宝物に出くわしたのは、あきらめかけた時だった。昆明医科大学の院生が2013年に提出した60ページに及ぶ修士論文だ。タイトルは「未知のウイルスによる6人の重症肺炎患者の分析」。患者1人1人の症状と治療の進展を事細かく述べた上で、執筆者は疑わしい「犯人」を挙げていた。「シナキクガシラコウモリ、あるいはその他のコウモリ由来のSARSのような(症状を引き起こすコロナウイルス)」の仕業だ、と。 

シーカーは淡々と、論文のタイトルとリンクをツイッターに投稿した。2020年5月18日のことだ。次に、中国疾病対策予防センターの博士研究員(ポスドク)が執筆した同じテーマの論文を調べると、内容の多くは最初の論文と一致していた。鉱山労働者のうち4人はSARSウイルスに似たウイルスの抗体検査で陽性だったこと、これらの検査結果は全て、武漢の研究所に報告されていたことも分かった(シーカーが2つの論文のリンクを貼った直後に、中国はCNKIのアクセス管理を変更し、彼が行なったような調査はできなくなった)。 

<主要メディアの無関心に呆れる> 

2012年にSARSウイルスに似たウイルスが見つかり、その事実が隠蔽され、武漢の研究所が問題の鉱山からさらにサンプルを採取して持ち帰るためにスタッフを派遣したのだとすれば、これは一大スクープだ。欧米の主要メディアはすぐさま飛びついて派手に報道するはずと思ったが、何週間も話題にすらならなかった。

イギリスではサンデー・タイムズが特集を組んだほか、少数のメディアが報道したが、米メディアは全く取り上げなかった。 

「メディアは大騒ぎになると思っていた」と、シーカーは本誌に打ち明けた。「事実や因果関係に対する関心のなさに、あきれるばかりだった。潤沢なリソースを持つ主要メディアが、調査報道で(アマチュア集団に)大幅な後れを取るなんて、さっぱり理解できない」

 DRASTICは数日のうちに、墨江ハニ族自治県にある鉱山の位置を突き止めたが、主要メディアがそのツイートに注目し、記者たちが我先に問題の坑口を目指し始めたのは、2020年も終わりに近づいてからだ。 

(後編に続く)

【私の論評】今やいかなる組織も、何らかの非合法な活動や隠蔽をすれば、オシントで合法的に素人に暴かれる(゚д゚)!

DRASTICチームの活躍は、現実とも思えないほど、素晴らしいものです。まるで、映画の世界の出来事のようなことにも思えます。でも、これは現実なのです。彼らの、気の遠くなるような根気と、そうしてそれを支えた飽くなき好奇心、探究心が今回の成果を生み出したといえます。

上の記事にもあるように、確かに彼らのチームは、研究所流出説を裏付ける決定的な証拠とは言えません。研究所が発生源ではない可能性も十分にあります。しかしDRASTICが集めた証拠は、検察官の言う「相当な理由」にはなります。つまり、研究所から出た可能性を疑い、本格的な捜査を行うに足る理由があることだけは間違いありません。

このような証拠が明るみにだされたからこそ、バイデン大統領も、再調査を指示せざるを得なくなったのでしょう。そうして、トランプ前大統領は、コロナウイルス研究所から流失したという事実を確かな筋から得られたと主張したことには、根拠があったのだと今更ながら思い知らされたような気がします。

トランプ前大統領としては、確かな筋から得られたとして、その情報源を明らかにしなかったのには、情報提供者を守るという意味があったのかもしれません。

最近は、ハッカー等がかなり脅威となっているためか、情報収集というと、ハッキングによるものというのが通り相場のようですが、実はDRASTIcチームのように、様々な公開情報を組み立てて、情報活動を行うという手法は昔からありました。それはオシントといわれるものです。

実は昔からスパイ活動のうち007のような派手な活動は、ほんの一部でスパイ活動の大部分は一見地味に見えるこのオシント(OSINT:open source inteligence 公開されている情報を情報源とする情報収集活動)によるものです。CIAもかつてのソ連のKGBの活動も大部分は、オシントです。ヒューミント(人を介して行う超包活動)はごく一部です。

ちなみに、ヒューミントは、Human Inteligenceの略ですし、シギントはSignals Inteligenceの略です。

スパイ活動には、オシント、シギント、ヒューミントの3つがある

そのオシントの例として、このブログでは以前、第二次世界大戦中に、新聞その他の公開情報から、たとえばドイツの高官がある町の結婚式に参加した等の情報を丹念につみあげていき、独ソ戦の開始日をあてた諜報員の例をあげたことがあります。

なぜドイツの将官がある町の結婚式に参加したことが、独ソ戦の開始日の予測に結びついたかといえば、当時のドイツとソ連の国境(現在のポーランド)に、ドイツ軍の機甲部隊が結集しているという情報があり、それに加えて、何か特殊なことが無い限り、その町に縁のないドイツの将官が来るはずもなく、しかも結婚式に参加という事態は普通なら起こり得ないことだったからです。

無論この二つの情報だけでは、独ソ戦の開始日など予測することなどできず、その他様々な公情報や、ヒューミントやシギントの情報も含めて、最終的に独ソ戦の開始日を予測したのです。その当時は、インターネットも、AIもなかったので、これを調べるためには、複数の諜報員がかなり時間をかけて、様々な膨大なソースからこれを割り出したのでしょう。

DRASTICチームの活動は、スパイ活動でいえば、冒頭の記事でもわかるように、大部分がオシントによるもののようです。

公開情報を収集する方法として、それを補助するツールが世の中には流通しています。DRASTICチームも当然このようなツールを用いていたと思います。

これらのツールの入手先については、以下のサイトをご覧になってください。


これらをいろいろい試してみれば、あなたもDRASTICチームのような探索ができるかもしれません。

さて、以下では具体的にこれらのツールを用いたOSINTのやり方の留意点など述べます。

・複数名で行うこと
一人で分析をすると、思い込みが強くなっていって、正しい結論を導けない可能性があります。複数名で分析することで、ディスカッションが生まれるようにします。この時、処遇評価を行える権限のある人(あるはそれに近い人)を参加させないように注意します。 
DRASTICチームは、まさに一人ではなく、複数の人間で行ったからこそ、成果をあげることができたものと思います。
・フレームワークを使うこと
思い込みをなくすために使いましょう。「知っていること」を整理するのと同時に、「知らないこと」は何であるかを明らかにしておきます。但し、フレームワークに定義できないものもあることを認識しておきましょう。そうしないと、無理やりフレームワークに収めて結論を誤ったり、情報を落とす可能性があります。検討状況はリアルタイムでわかるようにしたいですが、最終結論は急がないようにすべきです。フレームワークも、ネット上を探せば、様々なツールがあります。
・カウンターインテリジェンスに気を付けること
とうぜこのような活動には、攻撃者も陽動してきます。頭の片隅に、そのことも意識しながら分析しましょう。上級者向けのテクニックとして、Deception(おとり)をシステムに組み込んでおくのも良いです。うまくいくと、攻撃者のPlaybookから外すことができます。(例:hostsファイルにダミー用の情報を書いておく、とか)

・ Common情報に気を付けること

分析の過程で、公開プロクシのIPアドレスや枯れたマルウェアのハッシュ値だったり、そういったものが見つかります。それらはどの攻撃者(スキル高低問わず)も使いますので、それらを細かく調べても、特定の攻撃者にはたどり着けません。目を向けすぎないように注意しましょう。特徴となりえるものを探しましょう。

さて、長々とツール自体について、講釈をたれるつもりはありません、以上にようなことを掲載したのは、今の世界では、OSINTを実行するために、有用なツールがネット上にオープンソースで提供されているということを言いたかったからです。 

さて、このようなオシントを一躍有名したのが、べリングキャットです。

独立系オープンソース調査組織の「べリングキャット」は、OSINTの報道への応用を最初に実行した機関です。ブロガーのエリオット・ヒギンズは、イギリスのレスターにある彼のアパートのノートパソコンから、乳児の娘の世話をしながらシリアの戦争を取材して、波紋を呼びました。

2014年、彼はべリングキャットを設立し、今ではハーグにオフィスを構え、約十数人のスタッフを抱えるまでに成長しました。ヒギンズは、国際紛争やデジタルデータに関する特別な知識があるわけではなく、ビデオゲームで遊んでいた時間があったからこそ、どんな謎も解けるという考えが身についたといいます。

べリングキャットは2014年に ウクライナ東部上空で起きた マレーシア航空17便の墜落事故を調査したことで 一躍有名になりました。

当時 ベリングキャットは ボランティアのグループで主にSlackチャンネルを使って協力していました。墜落現場の写真とフェイスブックの更新情報をもとに、攻撃に使用された発射装置を特定し、ミサイルが発射される数日前にロシアからウクライナの反政府勢力の領土に移動されたと報告しのです。

昨年6月、オランダ主導の国際検察チームは、ロシアの軍事・諜報機関とつながりのある3人の男を襲撃事件で起訴しましたが、べリングキャットは今年、その裏話を詳述したポッドキャストを製作しました。

オランダ人映画監督のハンス・プールは、ベリングキャットの墜落事故の報道を見て、ベリングキャットのドキュメンタリーを作ろうと思い立った。プールのドキュメンタリー『Bellingcat: Truth in a Post-Truth World』は、国際エミー賞を受賞しました。


べリングキャットは、政府機関の一部でもなく、大企業から支援を受けるわけでもありません。市民がネット上で手に入れることができる情報をきっかけに真相に迫るその手法が、インテリジェンス(諜報(ちょうほう))の世界に新たな風を巻き起こしつつあります。

今回は、OSINTによるDRASTICチームの活躍により、今回は「研究所流出説」を甦らせました。今後、世界のいかなる政府、企業、いや、いかなる組織も都合の悪い情報を隠し仰せなくなる可能性が高いです。

今やいかなる個人も組織も、何らかの非合法な活動をしたり隠蔽をすれば、ネット上に必ず痕跡が残り、合法的な手段で、公開情報を丹念分析する、ヘリングキャットやDRASTICチームなどのような集団から暴露されることになるでしょう。

それは、無論中国共産党も例外ではないということを、今回DRASTICチームが証明してくれました。世界のあらゆる悪の個人、組織は覚悟すべきです。無論、いますぐということではないしょうが、特に世界に対して影響の大きい、不正行為や隠蔽は、いずれDRASTICチームのような素人のチームや、べリングキャットのような組織に暴かれることになります。

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2021年6月4日金曜日

外交部、日本からのワクチン提供に「心から感謝」―【私の論評】これまで日本への支援を惜しまなかった台湾に、日本はワクチン提供で恩に報いることができた(゚д゚)!

外交部、日本からのワクチン提供に「心から感謝」


日本政府は3日、台湾にアストラゼネカ製ワクチン124万回分を提供し、台湾と共同で新型コロナウイルスに立ち向かう決意を示した。ワクチンはきょう(4日)午後、台湾に到着する。写真は成田空港でワクチンを載せた航空機に深々とお辞儀をする台北駐日経済文化代表処の謝長廷駐日代表。(台北駐日経済文化代表処より)


台日双方の緊密な交渉の末、日本政府が台湾にアストラゼネカ製ワクチン124万回分を提供し、台湾と共同で新型コロナウイルスに立ち向かう決意を示した。ワクチンはきょう(4日)午後、台湾に到着する。外交部(日本の外務省に相当)は同日、ニュースリリースを発表し、日本が適切なタイミングに支援の手を差し伸べてくれたことに「心から感謝する」と述べている。ニュースリリースの概要は以下のとおり。

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昨年、新型コロナウイルス感染症が全世界に拡大して以来、わが国は医療物資をさまざまな国に無償提供し、国際社会から評価されてきた。最近、新たな感染拡大の波が世界を襲っている。日本政府は、台湾で感染拡大が深刻化していることを鑑み、また、日本の各方面から台湾支援の声が上がる中、日本国内の感染状況が依然厳しい段階にあるにも関わらず、ワクチンを提供することで台湾に協力する決定を下した。これは「人溺己溺(他人が溺れていることを自分が溺れていることとみなす。つまり、他人の苦しみをわが事ととらえる)」、「同舟共済(同じことにあたっている者たちが力を合わせて難局を乗り切ること)」の人道的精神を発揮し、台湾と日本の感染症対策での協力を強化するものだ。外交部は、わが国の政府および国民を代表し、日本政府および関係者に心から感謝申し上げる。

台湾と日本はもとより緊密な関係にあり、固い友情を築いてきた。災害や事故が発生するたびに互いに支援の手を差し伸べ、「雪中に炭を送る」という行動を繰り返し、長期にわたって支え合いの手本を他国に示してきた。このコロナ禍においても、台湾と日本は互いに、第三国に取り残された相手国民の救出に協力してきた。大型客船ダイヤモンドプリンセス号の台湾人乗客を帰国させるためのチャーター機の運航、あるいはペルー、インド、フィジーなどに取り残された人々の帰国など、さまざまなケースを台日双方の協力で無事解決してきた。今年5月に開催された世界保健機関(WHO)年次総会では、日本の菅義偉首相をはじめとする多くの政府高官が、台湾のWHO参加を支持する立場を表明した。これに加えて、このたび日本政府からワクチンの支援を受けられることは、わが国の感染症対策システムを強化し、国民の健康を守るために大きく役立つことだ。このことはまた、台湾と日本のパートナーシップが「患難真情(まさかのときの友こそ真の友)」であることを改めて証明した。日本の人々からの心温まる支援を、わが国の政府と国民は永遠に忘れないだろう。

台湾と日本は、自由や民主主義という普遍的価値を共有している。さまざまな側面において、双方は重要なパートナーであり、貴重な友人である。わが国は、この盤石な関係を基礎に、さらに双方の関係を深めていきたいと考えている。

【私の論評】これまで日本への支援を惜しまなかった台湾に、日本はワクチン提供で恩に報いることができた(゚д゚)!

本日は、日本の無償提供ワクチン124万回分を載せた航空機が台湾到着しました。市民の感謝の声をメディアが一斉に報じています。蔡英文氏は6日前「困難な時代を支え合って共に切り抜けようという姿勢がこれまで以上に鮮明に。深い友情に心から感謝します」と発信していましたが、そのワクチンの到着が本日の天安門事件32周年と重なることになりました。なにやら、不思議なめぐり合わせを感じます。

新型コロナを長く抑えていた台湾では、5月中旬から一気に感染が広がり、累計感染者が約1万人に膨れ、ワクチン不足の課題が急浮上した。いち早く中国が台湾へのワクチン提供を申し入れたが、台湾当局は「中国のワクチンは怖くて使えない」とし、強く拒否する状況にありました。

中国は、こうした台湾の日米中で異なる対応の違いに強く反発している。外務省の汪文斌副報道局長は5月31日の記者会見で「我々は台湾の同胞のために(ワクチン提供などで)最善を尽くす意思を繰り返し表明してきた。だが(台湾与党の)民主進歩党が善意を踏みにじり、中国から台湾へのワクチン輸入を妨害している」と語りました。

その上で日本の台湾への支援については「新型コロナ対策を政治的なショーに利用しており、中国への内政干渉に断固反対する」などと批判しました。

台湾では域内のメーカーによる「国産」ワクチンの開発や、当局による調達努力が今なお続きました。ところが大量調達の確保には至っておらず、政権への批判も強まっています。

こうした状況に、蔡英文総統は5月26日、党内の会議で「(台湾当局のワクチン調達の動きに)中国が介入し、契約が進まず、今まで遅れている」と明かし、中国に対して強い不快感を示しています。

ただし、このブログにも以前掲載したように、台湾のコロナ感染症は、高橋洋一氏が「さざなみ」と評した日本の感染状況よりもさらに低く、現状でも欧米諸国に比較すれば、かなり感染は低い状態に抑えられています。そのため、感染の酷い地域から、ワクチンの接種を始めるという防疫上の観点からいっても、台湾の接種の遅れはさほどのものではないともいえます。

このような背景と、さらに中国の妨害があったので、若干遅れたというのが、実体であるとみるべきです。今後台湾は確実に感染症を抑え、いずれ収束に向かうと考えて良いでしょう。

台湾に対する英製薬大手アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの提供は、中国からの「横槍(よこやり)」を警戒しつつ、水面下で慎重に準備が進められてきた。ワクチンを共同購入して途上国に分配する国際的枠組み「COVAX(コバックス)」を通じて台湾に供給する案も検討されたが、「時間がかかりすぎる」と判断。安倍晋三前首相ら自民党議員も動き、迅速な提供を実現しました。
5月24日夜、東京都港区の台北駐日経済文化代表処では、台湾の駐日大使に当たる謝長廷代表と米国のヤング駐日臨時代理大使の意見交換会(写真下)に薗浦健太郎元首相補佐官が招かれていました。


「日本はアストラゼネカ製のワクチンを公的接種では当面使わない。それを台湾に譲る動きもある」 薗浦氏はアストラゼネカ製の使い道を問われ、こう答えた。薗浦氏の発言にヤング氏も「グッドアイデアだ」と賛意を示しました。

日本はファイザーとモルデナで全国民分のワクチンをすでに確保済。アストラゼネカも1億回分確保していて、今日その一部を台湾に提供することになったのです。

 台湾は新型コロナウイルスの押さえ込みに成功してきたのですが、5月中旬から感染が拡大。与党関係者によると、日本政府にも5月の大型連休明け以降に、台湾側から複数のルートで「100万回分ほどワクチンが融通できないか」と打診が届いており、水面下での検討が進められていたといいます。

 薗浦氏は翌日、安倍氏に謝氏らとのやり取りを報告して協力を要請しました。2人は前政権で首相と、首相を支える首相補佐官や党総裁外交特別補佐として外交政策を担ってきた間柄でもあります。

安倍氏も「すぐにやろう」と応じました。 国有財産であるワクチンの譲渡は財務省の了解が必要となります。麻生太郎副総理兼財務相に報告した上で、菅義偉(すが・よしひで)首相のゴーサインを得ました。

園裏元安倍首相補佐官(左)と安倍首相(右)

関係省庁間の調整役には加藤勝信官房長官が当たりました。 外務省は当初、コバックスを通じた提供を検討しましたが、安倍氏らから「それでは時間がかかりすぎる」との声が上がりました。

台湾側からは「数量はともかく、スピード重視で対応してもらいたい」との意向が伝えられていたこともあり、コバックスではなく日台間の相互援助の一環として提供する方針に転換しました。 

日本が震災や新型コロナのマスク不足で困難に直面した際、台湾からは多額の義援金やマスクが届いた経緯があります。今回はその「返礼」としてワクチンが送られることになりました。提供に関わった議員は「災害など、困ったときには互いに助け合ってきた歴史がある。国民の理解も得られるだろう」と語りました。

日本のワクチン提供を伝える台湾主要紙

4日付の台湾各紙は、日本政府が台湾に新型コロナウイルスの英アストラゼネカ製のワクチンを提供することを「日本の124万回分が今日台湾到着」との見出しで1面トップに掲載し、日台の友情を改めて証明したと報じた。米国が国際枠組み「COVAX(コバックス)」を通じ、台湾を含むアジアに700万回分を提供することも伝えました。

自由時報は「日本は中国の脅しに直面しながら気概を示した」とたたえました。日本政府がアストラゼネカ製を特例承認したものの、国内では当面使わない方針を決めたことを受け、蔡英文総統ら政権幹部が台湾への提供に向けて日本側と交渉を続けたとしました。

今回のワクチン提供は5/24、駐日台湾代表の謝氏が日米代表と会談、翌日には頼清徳副総統、金美齢さん、そして安倍-岸ブラザ一ズで「早急に実現させなければ」という連携があった、とも報道されています。見事なチームプレーでした。

駐日台湾代表の謝氏は、ご自身のフェイスブックに「一年前の四月、私はこの場所で中華航空が台湾から運んできたマスクを迎えました。今日はこの同じ場所で、日本航空が台湾に運ぶワクチンを嬉しく見送りました。どちらも新型コロナウィルス対策の為のもので、とても温かな気持ちで一杯です」と投稿されています。

東日本大震災のときには、義援金が世界で一番高額であったことなども含めて、これまで日本への支援を惜しまなかった台湾に、日本はワクチン提供で恩に報いることができました。

こうした動きは、人道的にも道義的にも高く評価できます。中国は「政治的利益を図っている」などと日本を批判していますが、ワクチン調達を妨害した中国こそ、政治的利益のために人命を軽視する本質が顕になったといえます。

最も難度の高かった台湾への支援を皮切りに、日本はこれから東南アジア諸国への「人道的ワクチン外交」を展開することになります。我が国日本は、アジアの大国だという自覚と責任を日本人は持つべきで、政府と国会、マスメディアはそれにふさわしい発信をすべきです。

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