2022年4月15日金曜日

ネプチューン地対艦ミサイルによる巡洋艦モスクワ撃沈の衝撃―【私の論評】海戦の主役が変わったことを告げる「モスクワ」撃沈(゚д゚)!

ネプチューン地対艦ミサイルによる巡洋艦モスクワ撃沈の衝撃

ウクライナ防衛企業ウクロボロンプロムよりネプチューン地対艦ミサイル

 現地時間4月14日(日本時間4月15日)、ロシア国防省の発表によるとロシア海軍の黒海艦隊旗艦である巡洋艦「モスクワ」が曳航中に沈没しました。前日に爆発炎上し総員退艦、その後まだ浮いていたのでセヴァストポリ港に戻ろうと曳航している最中でした。

 ウクライナ側は前日に地対艦ミサイル「ネプチューン」2発を巡洋艦モスクワに命中させて撃破したと主張しています。ロシア側はこれを認めていませんが、どちらにせよ艦は失われました。

 ロシア海軍黒海艦隊旗艦スラヴァ級ロケット巡洋艦モスクワ撃沈。その衝撃は戦史に永久に刻まれることになるでしょう。ウクライナ海軍地対艦ミサイル部隊の大戦果であり、ロシア海軍の大失態となります。

巡洋艦「モスクワ」を喪失した意味

 巡洋艦モスクワはロシア海軍黒海艦隊旗艦であり、黒海艦隊の中では最大最強の艦でした。ただし主兵装の超音速巡航ミサイル「P-1000ヴルカン」には対地攻撃能力は無く、ウクライナとの戦争でこの艦は広域防空艦として価値を発揮していました。

 長距離艦対空ミサイル「S-300F」を搭載した巡洋艦モスクワはウクライナ南部の黒海沿岸の沖合いに進出し、防空網の一角を担っていました。長射程の対空ミサイルでウクライナ空軍機の活動を妨害していたのです。

 これが消えました。ロシア海軍黒海艦隊には他に広域防空艦は居ません。ウクライナ空軍は南部での行動の制約が大きく解かれたのです。

 また、これでもうロシア軍は揚陸艦隊を用いてオデーサに上陸作戦を行うことが困難になりました。ロシア艦隊は地対艦ミサイルを恐れて、容易には沿岸に近付けなくなった筈です。

 そして首都モスクワの名前を関する軍艦の喪失はロシア全軍どころかロシア全国民の士気を下げ、ウクライナの士気を大きく向上させることになります。

地対艦ミサイル「ネプチューン」

 ウクライナ語”Нептун”の発音は「ネプトゥーン」の方が近く、英語のNeptune(ネプチューン)と語源は同じでローマ神話の海神の名前です。

 ネプチューンは亜音速の対艦ミサイルで、アメリカ軍のハープーン対艦ミサイルやロシア軍のKh-35対艦ミサイルとよく似た性能です。固体燃料ロケットブースターで加速した後にジェットエンジンを始動して巡航し、海面を這うような低い高度で飛んで行きます。

 ネプチューンはウクライナ国産の新兵器で生産に入ったばかりであり、開戦前のスケジュールでは最初の1個大隊の編成完了が4月予定だったので、ぎりぎりでロシアとの戦争に間に合いました。

 ネプチューン地対艦ミサイル1個大隊は4連装発射機が6両で1斉射24発、予備弾含め3斉射分72発が定数となっています。

 ウクライナ海軍の想定ではトルコ製「バイラクタルTB2」無人偵察攻撃機で洋上索敵を行い目標艦を発見したらネプチューン地対艦ミサイルで攻撃するという手順を予定していましたが、実際の巡洋艦モスクワ攻撃ではどのような攻撃方法だったのかはまだ発表がありません。

 なおロシア海軍は巡洋艦モスクワが被弾する2日前に、黒海艦隊のフリゲート「アドミラル・エッセン」がウクライナ軍のバイラクタルTB2無人機を撃墜したことを誇る動画をUPしていました。これはウクライナ軍がドローン(無人機)による洋上索敵を積極的に行っていた可能性を示しています。

 あるいは無人機のバイラクタルTB2はロシア海軍を油断させるための囮で、本命の対艦索敵はアメリカ軍の偵察手段だった可能性もあります。一部のウクライナ報道ではバイラクタルTB2を囮に使ってその隙にネプチューンで攻撃した戦法が示唆されています。

 黒海にはアメリカ軍の大型無人偵察機「グローバルホーク」が開戦後も頻繁に飛んで来ていたので、巡洋艦モスクワの位置情報の提供を行っていた可能性があります。ただしこれが仮に事実だとしても公表したらロシアを怒らせるので、黙っている筈です。

 まだ不明な点は多いのですが、今回のネプチューンによる歴史的な大戦果の詳細はいずれ明らかにされていくことでしょう。

【参考外部記事】ウクライナ軍事ポータルサイト「Український мілітарний портал (ウクライーンシクィー・ミリタリニィー・ポルタル)」の英語版記事より。
The first battalion of “Neptune” coastal missile system will be delivered by April 2022 – Neizhpapa
“Moskva” missile cruiser – the flagship of the Russian`s Black Sea Fleet – sank

※なおネプチューンの発射車両は試作型と量産型で車両が異なります。
試作型の発射車両:КрАЗ-7634НЕ(ウクライナ製)
量産型の発射車両:タトラT815-7(チェコ製)

【私の論評】海戦の主役が変わったことを告げる「モスクワ」撃沈(゚д゚)!

今回の、モスクワの沈没に関しては、アメリカ国防総省 カービー報道官は、
「ウクライナ側が言うようにミサイル攻撃によるものかは確認できないが、それに反論する立場でもない。ウクライナ側がミサイルで攻撃したというのは、ありうることだ」と語っています。

上の記事では、ウクライナ側がミサイル攻撃したという記事が正しいものとして、ウクライナ側の主張を掲載しています。

この記事も、このウクライナ側の主張が正しいものとして、解説します。今回のモスクワ撃沈は、もう数十年前からいわれていた海戦の変貌ぶりを示したものといえます。

NHKどらま「坂の上の雲」で放映された日本海海戦における日本艦隊の旗艦「三笠」

海戦の主役は大きく2回変わっています。最初は、「大艦巨砲」ともいわれるように、巨砲を何門も持つ大艦同士が、海上で大砲撃戦を行い、海戦の雌雄を決定しました。その典型的な事例は、日露による日本海海戦です。

次の時代は、空母打撃群による海戦です。空母を主力とする艦隊を空母打撃群と呼び、この空母打撃群の空母以外の艦艇は、空母を護衛するのが主な目的であり、空母に積載した航空機が、海戦の雌雄を決めることになりました。その典型例は、大東亜戦争における太平洋の戦いです。

日本では、空母打撃群という呼び名はありませんでしたが、本格的な空母打撃群を最初に運用したのは、日本海軍でした。この空母打撃群は、ハワイ真珠湾攻撃等で活躍しましたが、やがて物量にまさる米軍が、空母の数でも、航空機の数でも日本をはるかに上回るようになり、各地で日本の空母打撃群を破るようになりました。

米国のハワイには、真珠湾の戦いの記念館があります。そこには、日本海軍が最初に空母打撃群を運用しはじめたということが展示物で示されています。米軍はそれを参考にして、空母打撃群を運用させるようになり、今日米海軍の主力になっているという旨のことが展示されています。

発艦した航空機から撮影した空母「赤城」

そうして、数十年前までは、実際にそうでした。しかし、もう随分と前から、実は空母打撃群は海戦の主役ではなくなっています。その主役は何かといえば、第二次世界大戦までは脇役であった潜水艦です。

このブログにも以前述べたように、米国の戦略家である、エドワード・ルトワック氏は次のように語っています。

「現在では、艦艇は2種類しかない、空母やイージス艦のような水上艦艇と潜水艦の二種類しかない。そうして、水上艦は空母であれ、他の巨大な艦艇であれ、いずれミサイルや魚雷で撃沈されてしまう。もはや、大きな目標でしかない。しかし、潜水艦はそうではない、水中に潜航して、容易に撃沈されることはない。現在の海戦の主役は潜水艦なのだ」

この言葉、最初はルトワックが語ったのかと思っていましたが、そうではないようです。潜水艦が原子力で動くようになり、さらに魚雷だけではなくミサイルを装備するようになった頃から言われはじめたそうです。

そうして、ロシアは2020年トルコ軍兵士が27日にシリアのアサド政権軍の空爆で死亡したことを巡り、トルコ側の対応に問題があったと主張し、シリア沖に巡行ミサイルを搭載した艦船2隻を派遣したことがあります。そのときの1隻が今回撃沈された「モスクワ」です。ルトワックは、これについて以下のような発言をしています。

「ロシアのミサイル巡洋艦など、象徴的なものにすぎない。米軍なら5分で吹きとばせる」

これは、事実なのでしょう。だからこそ、今回「モスクワ」はウクライナ軍に撃沈されたとウクライナ側は公表し、米国もこれをはっきりとは否定しなかったのでしょう。

無論、ルトワックの脳裏には、攻撃型原潜などを想定したものと思います。米国の攻撃型原潜の大型のものになると、100発以上もの巡航ミサイル「トマホーク」を搭載できます。しかも、米軍はロシア軍よりも、対潜哨戒能力に優れていいます。

この攻撃型原潜が、ロシアの艦艇を攻撃すれば、ひとたまりもないでしょう。

ただ、今回のウクライナによる「モスクワ」攻撃は、地上のミサイルランチャーから、ネプチューンを発射して撃沈したとされています。潜水艦から発射したものではないですが、ルトワックも語っていた「水上艦は空母であれ、他の巨大な艦艇であれ、いずれミサイルや魚雷で撃沈されてしまう。もはや、大きな目標でしかない」という発言を実証したといえます。

考えてみると、フォークランド紛争時には、ルトワックの語ったことは、現実になっていたと考えられます。

1982年3月のフォークランド紛争では、イギリス海軍の原子力潜水艦「コンカラー」によるアルゼンチン海軍巡洋艦「ヘネラル・ベルグラーノ」の撃沈はアルゼンチン海軍の戦意に冷や水を浴びせることになり、空母「ベインティシンコ・デ・マヨ」を始めとしたアルゼンチン海軍の水上戦闘艦は現存艦隊主義に転じて、二度と出撃してくることはありませんでした。

潜水艦の能力でも、対潜哨戒能力でも英軍に著しく、劣っていたアルゼンチン軍は、海戦においては最終的には、英軍の敵ではなかったようです。ただ、英軍はそれまでアルゼンチン軍のフランス製のエグゾセミサイルで、駆逐艦「シェフィールド」が沈没するなどの被害を受けています。

「モスクワ」と同程度以上の艦艇が撃沈されたのは、フォークランド紛争以来といわれています。今回の「モスクワ」撃沈により、まさに、水上艦は現代の海戦においては、「ミサイル」や「魚雷」の大きな目標にすぎないことが、さらに鮮明になったといえます。

なお、先のルトワックの発言については、「極端」と批判する人たちもいますが、今回の「モスクワ」撃沈が本当であったら、「極端」とはいえないと思います。

このブログでは、こうしたルトワック氏の発言などにもとづいて、私は日本の潜水艦隊の優位性を主張してきましたが、半信半疑の人も多いようです。今回の「モスクワ」撃沈がウクライナのミサイルのものであれば、「極端」とはいえなくなると思います。

陸上から放つミサイルも、水中から放つミサイルも同じことですし、潜水艦からの発射は、陸上からよりも、敵に発見されにくく軍事的にさらに有利といえます。しかも、日本の潜水艦のステルス性は「世界一」であり、この優位性についても理解が進むと思います。中国の台湾侵攻に関して、まるでこの世に潜水艦など存在しないかのような論評をする人もいますが、それでは全く意味がありません。

ウクライナ軍が日本の海自なみの最新鋭の潜水艦を持っていれば、軍事上かなり有利になっていたと思われます。もしそうだったら、初戦でロシア黒海艦隊は壊滅していたことでしょう。さらに、潜水艦からミサイルを発射し陸上の主要な目標を破壊し、かなり有利に戦争を遂行できたと思います。

このブログで、以前紹介したように、トランプは、「(プーチンが)またその言葉(核兵器)を口にしたら、われわれは原子力潜水艦核を送って、沿岸を上下左右に航行させるぞと言うべきだ」と語っていました。

これを、かなり物騒な発言とするむきもありますが、これはプーチンに対してかなりの牽制になりますし、核ミサイルでなくて、通常のミサイルを搭載する攻撃型原潜を派遣しても、ロシア側にとってかなりの脅威となるでしょう。

何しろ、米国の攻撃型原潜でも大型のオハイオであれば、巡航ミサイル・トマホークを154基も搭載できます。これは米誘導ミサイル駆逐艦の1.5倍以上、米海軍の最新鋭攻撃型潜水艦の4倍近いです。無論、その他にも魚雷、防空ミサイルも搭載しています。

このような攻撃型原潜を、2〜3隻黒海でも配置すれば、巨大なミサイル基地が即座にできあがり、米国のインテリジェンスンスに基づき、ロシアの軍事拠点を攻撃をすれば初戦でロシア軍は崩壊していたかもしれません。

今後の軍事研究の発展のためにも、ミサイル巡洋艦「モスクワ」の撃沈が、ウクライナのミサイルによるものだったのか、公表していただきたいものです。

それにしても、今回の「モスクワ」の沈没、ウクライナ側の発表が正しかろうが、正しくなかろうがロシア軍にとっては大打撃であることには変わりはないです。過去の日本の例でいえば、開戦2ヶ月目にして、連合艦隊の旗艦「大和」が沈んだようなものです。ロシア軍の士気の低下は免れないと思います。

ミサイル巡洋艦「モスクワ」

モスクワは、ロシア軍が3隻しか保有していない大型巡洋艦の1隻です。搭載する防空ミサイルシステムS300でウクライナ軍の戦闘機や無人機をけん制し、南部一帯での部隊展開を支えてきました。黒海艦隊は、ロシアにとって重要な標的である港湾都市オデッサなどの攻略を目指していました。

ところが独立系メディア、メドゥーザによると、ロシア軍はモスクワを失ったことで、残る部隊をウクライナ軍の攻撃から防ぐ能力が著しく衰える恐れがあります。ロシアとウクライナの交戦を理由に、トルコが黒海への軍艦の侵入を制限しているため、ロシアが地中海経由で代替の巡洋艦を派遣することも難しいです。

侵攻以降のロシア軍の被害も甚大とみられます。ウクライナ国防省は15日、ロシア軍の死者が「2万人を突破した」と発表。ロシア側は最新の死者数を1300人余としていますが、契約軍人を募るキャンペーンを強化するなど、実際は兵力不足が深刻な可能性が高いです。

こうした状況の中、ロシアの政権与党幹部は15日「軍事作戦は間もなく完了する」と同国メディアに強調。5月9日の対独戦勝記念日に合わせた「勝利宣言」名目で、プーチン大統領が幕引きを図る可能性も大いにありそうです。

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2022年4月14日木曜日

一刻も早い補正予算編成と果断な実行「強く求める」=公明党提言案―【私の論評】岸田政権が長期政権になれば、ウクライナショックよりも、岸田ショックのほうが、より深刻な事態をまねきかねない(゚д゚)!

一刻も早い補正予算編成と果断な実行「強く求める」=公明党提言案


公明党が近く岸田文雄首相に申し入れる物価高対策の提言案が判明した。日本経済と国民生活を断じて守るため、「政府は一刻も早く補正予算を編成し、必要な対策を果断に実行するよう強く求める」と明記。ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除も併せて求め、地方税収の減収分は国が補填すべきとしている。

提言では、ウクライナ情勢の動向によっては「日本経済が戦後最大の危機に陥りかねない」との危機感を示し、政府に速やかな対応を求める。予見しがたい支出に迅速かつ柔軟に対応できるよう、「予備費のさらなる積み増しを行うこと」も明記する。

焦点となるトリガー条項発動では、自民、公明、国民民主3党で立ち上げた原油価格高騰・トリガー条項についての検討チームでの検討結果をもとに「凍結解除すること」としている。トリガー発動に伴う地方税収の減収分については「国が補填する」とした。ロイターが提言案を確認した。

激変緩和事業に関しては、元売り事業者に対する補助金上限を大幅に引き上げるとともに、「ガソリン・軽油・灯油・重油の4油種に舗装用アスファルトや航空機ジェット燃料も対象に加えたうえで延長すること」を求める。

石炭や魚介類などの調達コストの増大を念頭に、ロシアに対する経済制裁の影響を受ける事業者を支援するための基金創設も盛り込み、「新たな経済対策に向けた緊急提言」として、今夕首相に申し入れる。

【私の論評】岸田政権が長期政権になれば、ウクライナショックよりも、岸田ショックのほうが、より深刻な事態をまねきかねない(゚д゚)!

公明党はあいかわらず、マクロ経済音痴のようですが、そうではあっても、ウクライナ情勢いかんでは、とんでもないことになりそうだという勘は正しい、というか普通の感覚の人なら、そうなります。

にもかかわらず、岸田総理は補正予算を組もうとしません、これは、普通の感覚ではありません。

普通の感覚の人なら、どのくらいの規模にするかは別問題として、もしものときのために、ある程度の補整予算を組むことを考えるでしょう。日本経済の規模や、現在日本がおかれている様々な危機を考えた場合、本予算予備費5兆円ですむと考えるのは、これは経済理論がどうのこうのというより、素人より始末に悪いです。

ただ、公明党も現在の日本の経済の状況を明らかにわかっていないようなので、以下にその概観を掲載します。

日本銀行が4月12日に発表した3月の国内企業物価指数は112.0と、前年同月比9.5%の上昇でした。プラスは13ヵ月連続。指数の水準は1982年12月以来、39年3ヵ月ぶりの高さとなりました。


これを見て、物価が上昇すると、報道されていますが、それは違います。上のグラフをみてもわかるように、消費者物価指数はほとんど上がっていません。

これは、なぜかといえば、総供給が総需要を上回っているので価格には転嫁できないからです。 国内企業物価とは、仕入れ段階の話なので、商品に転嫁できるかどうかは、それぞれの商品の需要に依存します。

品目の需要というのは、すべて足し算をして、また供給についても足し算をして、総需要・総供給を計算するのですが、実は総供給の方がまだ数%大きいのです。ということは総需要があまり大きくないので、転嫁できない業種が多くなることを意味しています。

ここ数年テレビなどで、低価格でおいしくて、良心的な老舗が原材料の高騰で閉店せざるを得なくなったというニュースをみることがありますが、そのようなとき多くの人は、値上げすれば良いのにと単純に思ってしまうかもしれませんが、簡単には値上げできないのです。

なぜかといえば、インフレ状況なら値上げしても、需要が落ちることはないのですが、総供給が総需要を上回っている状況では、値上げしてしまえば、需要がおちてしまうことが予想されるからです。

確かにコストプッシュインフレのよう状況にはなっています。ただし、どこまで転嫁できるのかということは、その製品にどのくらい需要があるのかによります。需要がないのに価格を上げてしまったら、より売れなくなってしまいますので、転嫁することができないのです。

現在のような状況では企業経営は厳しくなります。総需要と総供給の差を表すGDPギャップという数字があります。

本当はそれに相当するぐらいの補正予算を打つべきなのですが、岸田政権にはそのような動きもないです。

当面は予備費での対応となり、最大5兆円です。先ほどのGDPギャップは30兆円以上あると思いますので、補正予算を打たないとなると全然足りません。


13日の各紙経済面などでも、ガソリンのトリガー条項の撤廃を行わず補助金のみという、「かなり期待外れだ」と報道しています。

個別価格が上がっているときは、個別にかかる税金を下げるべきです、ガソリン価格はその典型です。さらに、消費税の軽減税率を行うのが定石なのですが、それをしないということなれば需給ギャップは放置されたままになります。経済理論から予測できるのは、おそらく企業活動が低調になり、その結果として半年後くらいに失業率が高まります。

このような状況ですから、6月初旬までに補正予算の議論をするべきです。政府は相変わらず賃上げ要請をしていますが、GDPギャップが存在する間は、雇用対策をいくらやっても効かないです。それが埋まらない限り、雇用は増えません。現在は雇用調整助成金で失業率を抑えているところがありますが、これから半年ぐらいの間にそれも効かなくなり失業率が上がることになるでしょう。

現在は、国会はそれほど忙しいわけではないので、6月頭まで補正予算の議論はできますし、いまからやれば選挙にも間に合います。

現在国会で重要法案とされているのは経済安全保障の関連法案で、これは衆院を通過しましたし、あとは「こども家庭庁」の設置に関わる基本法です。予算委員会は何も審議はしていないようです。

現在国会を開いているので、経済対策として、補正予算を通すのが最も簡単で良い政策です。補正予算をつくるのも、それほど時間がかかるわけではありません。

コロナ禍による景気の落ち込みから立ち直る前に、ウクライナ情勢で大変になってしまったところを穴埋めすれば良いだけですから、難しくもないし、あまり反対されることもないでしょう。官僚であれ、政治家であれ、マスコミも、今このタイミングで反対すれば、その根拠を問われることになるでしょうが、それを理詰めで説明できるような人は誰もいないでしょう。むりやりすれば、かなりの批判を浴びることになるでしょう。

財源も、先に述べたように、現在はインフレではないので、国債を大量発行して、それを日銀が買いとったとしても、それで将来世代のつけになるということもないですし、インフレが加速するということもないです。むしろ、今はデフレ傾向なので、100兆円くらい国債を擦り増し、日銀が買い取ったとしても何の支障もないどころか、そうしたほうが日本経済には良い結果をもたらします。

そもそもマクロ経済音痴の公明党から、一刻も早い補正予算編成と果断な実行「強く求める」と要求されるのですから、岸田首相も終わっています。

安倍政権や、菅政権では、公明党からは補正予算の額が大きすぎるなどの批判を受けたことはありますが、補正予算をすみやかに組めなどと要求されたことはありません。

このようありさまですから市場関係者が多く視聴する日経CNBCが同チャンネルの視聴者を対象に行った調査で、「あなたは、岸田政権を支持しますか?」という質問に対して、「はい」という回答がたったの3%しかありませんでした(調査期間は2022年1月27日~1月31日)。

金融所得への課税強化を言い出して、すぐに棚上げにしたり、新しい資本主義などと得体の知れないことを言い出し、もともと市場関係者からは嫌われていましたが、それにしても3%とは驚きです。これは、ほほどすべての人が岸田総理を支持せず、市場関係者の中では一部の風変わりな人だけが支持しているということです。

公明党の要請によって、岸田政権が補正予算を組めば良いのですが、そうしなかった場合や、公明党ですら満足できない水準の補正予算だった場合、選挙協力が不調に終わることも考えられます。そうなった場合、自民党候補が予想以上に落選した場合に何が起こるでしょうか。

野党の体たらくをみていると、さすがに、衆参の「ねじれ」が起こるほどに負けないでしょうが、岸田政権は弱体化することになります。完敗ではなくほどほどの負けは、安倍晋三氏、麻生太郎氏、菅義偉氏、二階俊博氏といった、「岸田政権の主流ではない政治的実力者たち」にとって好都合でしょう。

加えて、注目できるのは、公明党にとっても、同党の協力がなければ自民党が選挙で苦労することを示すことは、自分たちの価値をつり上げて、政治的影響力を増す効果があるでしょう。

仮に、参院選の敗北などで岸田政権が弱体化したときに、自民党内で「政局」は起こる可能性は十分にあると思います。とにかく、あまりにポンコツな岸田首相にははやく辞めていただきたいです。

岸田政権を短期政権で終了させて、次は岸田氏よりポンコツではない次は無難な人物を総理にし、まともな経済政策、外交をできるようにしていただきたいです。

私は、安倍首相や、菅首相の時には、是々非々で批判をしたこともありますが、辞めたほうが良いなどと批判したことは一度もありませんでした。ましてや、「お灸をすえて」政権交代すれば良いなどと語ったこともありません。

あの民主党による政権交代で日本がどのようなことになったかを思えば、現在でも「お灸をすえて」自民党を下野させるようなことはすべきではないと思います。現状の野党をみていると、残念ながらそう考えざるを得ません。

安保法案に反対し、国会議事堂正面の道路を埋め尽くし廃案を訴えるデモ参加者 =2015年8月30日

やはり、まともな首相のもとに自民党政権が安定政権となり、安倍政権のときにそうであったように、たとえ政権維持のためには良くないことでも、敢えて様々な必要不可欠な改革をしていくのが王道だと思います。

残念ながら、今の野党にはそのような力はありません。現在でもまかり間違って政権交代がおこれば、かつての民主党のように何もきめられず漂流するか、政権の座を守るのが精一杯ということになるでしょう。それに乗じて、官僚たちが蠢き、財務省は増税、日銀は金融引締をして、その他の官僚も鉄のトライアングルを活用して自分たちの利権をあさり、日本はまた、失われた30年を繰り返すことになりかねません。

ただ、今の自民党は、岸田氏という稀に見るポンコツが首相という状態です。まともな自民党有志の皆さんは、なんとか岸田政権を短期政権で終わらせて下さい。

岸田総理は、経済で出身派閥の宏池会がせっかく掲げた「所得倍増政策」は無視し、新しい資本主義なることばはあげたものの、その中身を具体的に明らかにすることもなく、結局経済政策では何もせず、エネルギー、食糧政策でも何もせず、外交、安保では米国に要請されたこと以外は何もせず、特に重要なことでは、ひたすら「緊張感をもって注視していく」「検討します」というばかりです。

まかりまちがって、岸田政権が長期政権になれば、日本ではウクライナショックよりも、岸田ショックのほうが、より深刻な事態をまねきかねません。

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2022年4月13日水曜日

北海道にロシア兵が上陸し 東京がブラックアウトしない限り ニッポンは危機に気づかないのかも―【私の論評】ロシアの北海道への領土的野心と、略奪などに備えよ(゚д゚)!

北海道にロシア兵が上陸し 東京がブラックアウトしない限り ニッポンは危機に気づかないのかも


「人殺し」に助けてもらうのか

破壊されたロシアの人員輸送車

ウクライナ危機のニュースに毎日接しているうちに戦争がだんだん他人事ではなくなってくる。共産党の志位委員長が、有事の際に自衛隊が「国民の命を守るのは当然」と発言し、自衛隊を違憲だとする共産党の立場と矛盾すると批判された。


自衛隊のことを「人殺し」と呼ぶくせに、身の危険を感じたら助けてくれと言うのは虫が良いのではないかと思うが、ある意味正直でもある。むしろ「憲法9条を守ってさえいれば平和は守られる」といまだに言っている人達の方がヤバいかもしれない。

 「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して、われらの安全と生存を維持しようと決意した」という日本国憲法の有名な前文があるのだが、残念ながらロシアはもちろん、北朝鮮も「平和を愛する諸国民」ではない。中国も、たぶん、違うだろう。

ウクライナ危機が打ち砕いた幻想

だからウクライナのように核を放棄し、どこの軍事同盟にも属さないと、「平和を愛さない諸国民」に侵略される恐れがあることが今回わかった。つまりウクライナ危機は日本における「9条神話」という幻想を打ち砕いてしまったのだ。

 先日あるロシアの政治家が「ロシアは北海道の権利を持っている」という発言をしたというニュースを見てぞっとした。「あの土地は元々俺たちのものだ」といセリフは専制国家が侵略する時に必ず使うキーワードだからだ。 ウクライナ危機はもう一つの幻想も打ち砕いた。

それは「再生エネルギーさえあれば原発も、そして石炭火力もいらない」という欧州発の間違った考え方だ。 先月日本では地震で一部の火力発電所が停まり、そこに悪天候が重なって初の「電力需給ひっ迫警報」が出た。今後ロシアからの石油や天然ガスが止まれば日本の電力危機はさらに深刻になる。

 「ロシアは戦費調達にあなた方を利用している」とゼレンスキー・ウクライナ大統領に議会で演説され、国際的に大恥をかいたドイツは、安保もエネルギーも大幅な政策転換を迫られている。 軍事費についてはGDP比2%に大幅引き上げすることを決めたが、脱原発の流れはまだ止まっておらず、現時点では石炭火力発電の廃止を先送りするくらいしかできないようだ。

危機に気づかないニッポン大丈夫か?

では日本はどうなのか。安倍元首相が今年度5.4兆円の防衛費を来年度は6兆円越えにしたらどうかと提案したら、野党からは「不誠実だ」などの批判の声が上がった。ドイツみたいにGDP2%(日本なら10兆円)にしろと言っているわけでもないのに「不誠実」と叱られる、これが日本だ。

 エネルギーに関しても岸田首相は「原発はベースロード電源であり重要だ」という従来の答弁を繰り返すだけで、積極的な原発再稼働にカジを切るわけでも、小型モジュール炉の導入による「新設」に言及するわけでもない。

 わが日本は大丈夫なのだろうか。やはり北朝鮮のミサイルが九州の端っこに落ちるとか、ロシア兵が間違って北海道に上陸するとか、あるいはある日突然、大停電で東京がブラックアウトになるとか、そういうとんでもないことが起こらない限り、平和で、安全で、豊かな国ニッポンに住んでいる我々は本当の「危機」に気づかないのではないだろうか。

【執筆:フジテレビ 上席解説委員 平井文夫】

【私の論評】ロシアの北海道への領土的野心と、略奪などに備えよ(゚д゚)!

上の記事では、ニッポン人という表記がありますが、これはどういう、意味なのでしょう。このブログでも過去に「ニッポン人」とか「日本人」という表記をしたことがあります。

その時には「日本人」とは日本の過去の伝統を受け継いだ人のことであり、「ニッポン人」とはそうではない人のことをいうというような定義をして用いました。

上の記事の平井氏も、そのような意味で用いているのだと思います。そうして、平井氏がわざわざ「ニッポン人」として、批判したのは、日本にはこの「ニッポン人」とは異なる、危機を危機として認識する「日本人」も存在していることから、その「日本人」をも否定することを避けるためにわざわざ「ニッポン人」という言葉を用いたのだと思います。

平井氏が「豊かな国ニッポン」と表記したのも、日本の伝統をすっかり忘れてしまい、サファリパークのライオンのようになってしまっている日本を憂いたからこそ、この言葉を使っているのでしょう。

私自身は、自分のことを「日本人」だと思っています。だかこそ、このブログで従来から中露の危険については、随分前から指摘してきました。このブログを最初に書き始めたのは、2007年のことです。

最初はブログのタイトル「犬とレストランとイタリア料理」通りの内容からはじめましたが、あの民主党が政権をとったころから、かなりの危機感を感じたため、時事的な内容が増え、その後それがほとんどとなり、現在に至っています。

これからも、「日本人」的価値観で、時事問題を扱い、日常に潜む様々な危機を明るみに出していこうと思います。

そうした観点からすると最近一番気になるのが、ロシアの元上院議長が「ロシアは北海道を領有する権利を持つ」と発言でしょう。ロシアから平和条約締結交渉を一方的に蹴っ飛ばされるなど、日ロ関係が急速に悪化する中、波紋が広がっています。

問題発言の主はプーチン体制下で2011年まで上院議長を務め、現在は下院第3勢力の左派系野党「公正ロシア」の党首を務めるセルゲイ・ミロノフ議員。いわゆる体制内野党のトップです。


ロシアのネットメディア「レグナム」が配信したインタビュー記事(4日付)で、「どの国でも隣国に対して領有権を主張でき、国益の観点からそうする正当な理由がある。これまでクリル諸島(北方領土と千島列島)を欲しがっていたのは日本だけだった」と持論を展開。

先立つ1日には「日本はクリル諸島に関して常にロシアにクレームをつけているが、一部の専門家によれば、ロシアは北海道の完全な権利を有しているという」とツイートしていました。

 ウクライナで想定外の苦戦にあえぐロシアに二正面で構える余裕はないとはいえ、気味の悪さは拭えない。 

これに対して防衛省関係者は「万が一、ロシア軍が北海道侵攻を企てたとすれば、専守防衛が国是である以上、海岸線では防御できない。自衛隊は旭川-帯広ラインで押し戻すのが精いっぱいです」と語っています。

ただ、これについては従来からこのブログでは反論をしてきました。まずは、現在のロシア軍は、海上輸送能力が脆弱であり、北海道に大部隊を一度に送り込むことはできません。そのため、日本の自衛隊が上陸位置をあらかじめ察知すれば、その都度撃破されるということになります。

現在もそうなのですが、ソ連の時代も海上輸送力が脆弱であったため、結局ソ連が北海道に上陸する可能性は実はかな低かったといわれています。

さらに、日本はロシアに比較すると、対潜水艦戦闘力がかなり強く、特に潜水艦のステルス性においては、ロシアを大きく引き離しており、海戦においては日本が圧倒的に有利です。そうなると、ロシア軍が北海道侵攻を目指して大艦隊を送り込んできたとしても、そのほとんどは撃沈されてしまいます。

それでも、多大な犠牲を出しながらも、ロシア軍が北海道に部隊を上陸させたとしても、日本が北海道を潜水艦で包囲すると、補給部隊は北海道に近づくこともできず、近づけば撃沈されてしまいます。北海道に上陸したロシア軍部隊は、弾薬、食糧などを補充できなくなり、お手上げになります。

しかし、だからといって安心というわけではありません。上記のように、仮にロシア軍が北海道に侵攻して、負けたとしても、北海道の住民や自衛隊は大きな被害を被ることは避けられないからです。

それこそ、現在のウクライナのような状況になるでしょう。多くの人が犠牲になることが予想されます。やはり、最初から侵攻などされないほうが良いに決まっています。

近海では米ロが一触即発状況です。そうでなくても、ウクライナ戦争の影響で、北海道周辺は緊張が高まっています。このブログでも紹介したように、ロシアはカムチャツカ半島に拠点を置く太平洋艦隊の潜水艦基地ルィバチに、核兵器を積んだ弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を配備。オホーツク海を潜航し、日本列島の近くを行き来しています。

これについてはも、対潜水艦戦闘力に優れた日本の自衛隊は、哨戒能力も高く、その動向を詳細に把握しているでしょう。これについては、日本は冷戦時に多数の最新鋭の哨戒機を米国から購入し、哨戒任務にあたり、その情報を米国と共有し、実質的にソ連の原潜をオホーツク海に封じ込めたという歴史があります。

これにより、日本の対潜哨戒能力は飛躍的に向上氏、今やその能力は米国とならび世界トップクラスです。そうして、いまでも日本の自衛隊はロシア軍の潜水艦や艦艇に目を光らせています。

そのため、ロシア原潜も迂闊な動きはできません。ただ、将来的にプーチンがウクライナに侵攻したように、ロシア軍が北海道には絶対に侵攻してこないなどという保証はありません。

ウクライナ戦争をめぐり、米国が主導するNATO(北大西洋条約機構)の直接介入を阻止したいプーチン政権は核使用をチラつかせていますが、米国への対抗措置のひとつがオホーツク海からワシントンへの核ミサイル攻撃です。そうしたことから、北方領土や千島列島で軍事演習を繰り返しています。

在日米軍は当然、そうした動きを監視しています。ウクライナ戦争が米ロ戦争に拡大した場合、SSBNを沈めることが在日米軍の最大の役割になるからです。これに対しても、日本の自衛隊はその卓越した対潜哨戒能力を生かして、米国に大きな貢献をしているのは間違いないでしょう。

そのたいめ、滅多なことでは、ロシアが米国や日本に対して核攻撃をするということはないでしょうが、まかり間違ってロシア軍が北海道に侵攻するということでもあれば、戦況はロシア軍にとって圧倒的に不利な状況になりますから、それを打開するために戦術核を使うということは十分にありえることです。

そうなれば、日本が多大な被害を被るのは間違いないです。これは、避けるべきです。これについては、高橋洋一氏が興味深い主張をしています。その動画を以下に掲載します。


詳細はこの動画をご覧いただくものとして、高橋洋一氏は、まずは最近のロシアの動向に対抗して、日本はオホーツク海で大規模な軍事演習を行うべきことを主張しています。ロシアは最近北方領土でミサイル発射の軍事演習を行っています。これに対して、日本側が何もしないということではなく、これに対応して日本側も大規模な軍事演習を行うべというのです。

これは、外交上の常識として当然実施すべきものです。それと、古い日露間の条約では、樺太、千島列島の交換することを決めているわけですから、そこにまで戻って千島列島の全変換の交渉をすべきだとも語っています。これも外交上の常識といえます。

ただ、高橋氏は「岸田政権」には無理だろうと語っています。自民党内の保守系議員の方、なんとか頑張ってこれを実現していただきたいものです。

そうして、上の平井氏の記事で気になるのが、「ロシア兵が間違って北海道に上陸」という部分です。

これについては、前例があります。昨年民間のロシア人が国後島から、北海道まで泳いで渡っています。それに、2017年に松前小島に上陸した北朝鮮木造船の漁船員が泥棒をして逮捕されたという事件もありました。

目を海外に広げると、そのようなことは多くあります。北朝鮮の暴風軍団が最近そのようなことで逮捕されています。これは、朝鮮人民軍第11軍団としても知られる山岳戦、夜戦、後方撹乱などに長けた北朝鮮の特殊部隊です。

先月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)や両江道(リャンガンド)の国境地帯に派遣されたのですが、新型コロナウイルス対策としての国境警備の強化、国境警備隊の勤務状態の監視などが目的と見られています。そんな暴風軍団のある兵士が、犯罪目的で一時的に脱北する事件が起きました。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じました。

北朝鮮暴風軍団

逮捕後の身体検査で、現金500元(約7700円)と中国の長白山ブランドのタバコ2カートンを隠し持っているのを発見されました。取り調べでこの兵士は、強盗目的で密かに国境を越えて中国に渡ったと自白しました。

中朝国境地帯の中国側では脱北兵士による凶悪犯罪が相次いでいました。

2014年12月には、吉林省和龍市の村の民家に北朝鮮軍の兵士が押し入り、4人を殺害し、カネを奪って逃げる事件が起きました。2015年4月にも同じ和龍市で北朝鮮軍の兵士が強盗殺人事件を起こしています。

強盗までに至らなくとも、川沿いにある食堂にやってきて食べ物、ビール、タバコをねだりに来るといいます。断ると嫌がらせをされるため、食堂のオーナーは応じざるを得ないそうです。

その後、国境警備の強化で脱北兵士による犯罪が減少した模様ですが、現地では、暴風軍団のせいで同様の事件がまた増えるのではないかとの懸念が高まっています。

これについては、前例があります。昨年民間のロシア人が国後島から、北海道まで泳いで渡っています。それに、2017年に松前小島に上陸した北朝鮮木造船の漁船員が泥棒をして逮捕されたという事件もありました。

目を海外に広げると、そのようなことは数多くあります。北朝鮮の暴風軍団が最近そのようなことで逮捕されています。これは、朝鮮人民軍第11軍団としても知られる山岳戦、夜戦、後方撹乱などに長けた北朝鮮の特殊部隊です。

先月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)や両江道(リャンガンド)の国境地帯に派遣されたのですが、新型コロナウイルス対策としての国境警備の強化、国境警備隊の勤務状態の監視などが目的と見られています。そんな暴風軍団のある兵士が、犯罪目的で一時的に脱北する事件が起きました。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じました。

逮捕後の身体検査で、現金500元(約7700円)と中国の長白山ブランドのタバコ2カートンを隠し持っているのを発見されました。取り調べでこの兵士は、強盗目的で密かに国境を越えて中国に渡ったと自白しました。

中朝国境地帯の中国側では脱北兵士による凶悪犯罪が相次いでいました。

2014年12月には、吉林省和龍市の村の民家に北朝鮮軍の兵士が押し入り、4人を殺害し、カネを奪って逃げる事件が起きました。2015年4月にも同じ和龍市で北朝鮮軍の兵士が強盗殺人事件を起こしています。

強盗までに至らなくとも、川沿いにある食堂にやってきて食べ物、ビール、タバコをねだりに来るといいます。断ると嫌がらせをされるため、食堂のオーナーは応じざるを得ないそうです。

その後、国境警備の強化で脱北兵士による犯罪が減少した模様だが、現地では、暴風軍団のせいで同様の事件がまた増えるのではないかとの懸念が高まっています。

北朝鮮は、中国に比較すると、かなり貧乏であり、それがこの事件の誘引にもなっていると思われます。

中露は北朝鮮ほどには貧乏ではありませんが、それでも個人あたりの所得は100万円前後であり、日本と比較すればかなり低いです。中露人にとって、日本は天国のように豊かな国です。日本の家電品や身の回りののは、彼らにとっては宝の山です。

ロシア兵は、ウクライナで略奪をし、それをウクライナの郵便局から、ロシアに送っているとか、ウクライナ軍が傍受したロシア兵の会話では略奪を自慢しているものもあるといわれています。


ロシア軍がせめてこなくても、北方領土と北海道は泳いで渡れるほど近いですから、ロシア軍の不心得者が、やってきて略奪などをする可能性は否定できません。私はロシア軍の北海道侵攻より、こちらのほうがはるかに可能性が高いと思いますし心配です。

ロシアは財政難でロシア人の生活はますます苦しくなります。そうなると、ロシア軍の規律も緩んでくるおそれがあります。こうした略奪行為が大規模化する可能性はあります。それがエスカレートして、強姦、殺人にも発展しかねません。

そうして、中露北は日本に近く、いつ狼藉者が侵入してくるかわかったものではありません。さらには、ロシア経済が疲弊すれば、ロシア人難民が日本に大挙して押しよせてくることもあり得ます。ゼロコロナ対策で大混乱する中国や、北朝鮮からも来ることもあり得ます。こういうことにも、日本は対処すべきでしょう。

そのためには、防衛費の増加は無論のこと、こうしたことにも的確に対応できるよう、法改正も必要です。犠牲が出てからでは遅すぎるのです。

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2022年4月12日火曜日

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米韓が北にらみ事前演習 米空母、近海に4年半ぶり

原子力空母エーブラハム・リンカーン(左)と空母打撃群

 米韓両軍は、12~15日の日程で合同軍事演習の事前演習に当たる危機管理参謀訓練を開始した。18~28日には本演習である合同指揮所演習が行われる。北朝鮮は実施前から米韓演習に激しく反発。米韓は、北朝鮮が対抗措置として核実験や弾道ミサイル発射など、新たな軍事的挑発に踏み出す可能性を警戒している。

 また、韓国の聯合ニュースなどによると、米原子力空母「エーブラハム・リンカーン」が12日、韓国東部沖の日本海に入った。軍事的挑発を強める北朝鮮を牽制(けんせい)する狙いとみられる。

 米空母の韓国近海入りは2017年11月以来、約4年半ぶり。前回は、北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射や6度目の核実験を受けて米空母3隻が日本海入りし、自衛隊や韓国軍とそれぞれ訓練を実施した。今回、空母は5日間程度この海域にとどまる見込みだが、演習への参加予定は伝えられていない。

 危機管理参謀訓練は、局地的な軍事挑発やテロといった突発状況への対処態勢を点検する。本演習では、主にコンピューターシミュレーションにより、北朝鮮の本格的攻撃を想定した防御と反撃の訓練を行う。

 北朝鮮では15日に金日成(キム・イルソン)主席生誕110年、25日に朝鮮人民革命軍創建90年の節目を迎えることから、大規模な軍事パレードのほか、7回目の核実験や新たなミサイル発射を実行する可能性が警戒されている。

 北朝鮮が18年に廃棄を宣言した北東部、豊渓里の核実験場では、入り口を爆破した坑道を復旧させるための掘削とみられる活動が衛星写真で捉えられている。潜水艦基地のある東部、新浦でも新たな潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射準備の可能性がある動きが観測されている。

【私の論評】ロシアのウクライナ侵攻と韓国新大統領の就任を契機に、日米韓の軍事演習が活発化する(゚д゚)!

ロシアのウクライナ侵攻を契機に、国際情勢が揺れ動き始めています。ウクライナ「異変」で、これから北朝鮮の核問題をめぐって、中国、ロシア、日本、米国、韓国など各国はどのような動きをするのでしょうか。

そうした中、韓国で文在寅大統領から尹錫悦次期大統領に政権交代が実現したことで、国際情勢に変化の兆しがみられるようになってきました。

今回の米韓の演習もその一環であると考えられます。

北朝鮮の核問題は文在寅政権で時間を浪費し、後戻りが難しいところまで来てしまいました。

日米にとって直ちに有効な対処方法はないでしょう。

しかも北朝鮮にだけ対処すれば良い環境でもなくなりました。今後は中ロが北朝鮮を支援しないよう一層の圧力を高めていくなど戦略的な外交が必要になってくるでしょう。

そうした時文在寅政権が去り、尹錫悦氏が大統領になるのが唯一の救いです。日米韓、米韓、日韓の政策調整をついに始めるときが来ています。

日本、米国、韓国の高官らは、北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射後これを非難しました。

米国務省のプライス報道官によると、米国のソン・キム北朝鮮担当特別代表は、外務省の船越健裕アジア大洋州局長や韓国の魯圭悳(ノ・ギュドク)朝鮮半島平和交渉本部長と個別に電話協議を行いました。

北朝鮮の国営メディアは3月25日、同国が3月34日の実験で「新型」のICBM「火星17」を発射したと報じました。

こうした中、米国務省のポーター報道官は、中国やロシアがICBMの発射を再開した北朝鮮に対し、これ以上の「挑発」をやめるよう促すべきだという考えを示しました。

また、米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は「一層危険な挑発行為」を行っている北朝鮮への国際制裁を「更新・強化」するよう国連安全保障理事会に働き掛けると表明。ただ、具体的な内容には触れませんでした。

中国の張軍国連大使は、「いかなる当事者も緊張を高めるような行動をとってはならない」とし、「米国は北朝鮮の正当な要求を無視し続けることはできない。早期対話再開への道を開くため、魅力的な提案をするべきだ」と述べました。

この魅力的な提案とは、おそらく、米国が北朝鮮が核・弾道弾開発を放棄するかわりに、経済援助するなどのことを約束することを意味していると思います。

ただ、これには中国の思惑があると考えられます。

それを理解するには、まずはこのブログでも過去に述べたように、朝鮮半島に北朝鮮と、その核があることによって、それが抑止力となり、朝鮮半島への中国の浸透を防いできたという事実を認識しなければなりません。

北朝鮮の核は、日米などは無論、実は中国も照準に入れています。金王朝は金日成、金正日、金正恩の三代にわたって、中国の浸透を嫌っています。もし、北に核が存在していなければ、中国はすぐに北朝鮮に浸透して、金王朝は放逐され、北朝鮮を共産主義化したかもしれません。挙げ句の果てに、北朝鮮に傀儡政権を樹立したかもしれません。

そうして、いずれは北を中国に飲み込み、韓国に文政権のような政権ができたら、それをも飲み込み、今頃朝鮮半島は中国の朝鮮省になっていたかもしれません。

金王朝はだからこそ、核や弾道弾の開発に踏み切ったという面は否めません。

文政権における韓国は、北との関係を深めていこうとしましたが、ある時点からそれを拒絶しました。金正恩としては、南北統一などすれば、得体の知れない、金王朝に敬意など払うことない韓国人が大勢北朝鮮にやってくることになるので、そもそも統一するつもりなどはなからありません。

ただ、いっとき韓国との関係を良くしたのは、それによって米国との関係を良くして、制裁をゆるめてもらったり、韓国からの援助なども期待したのでしょう。ただ、統一する気などさらさらないですから、最終的には関係が悪化するのは当然の成り行きだったのです。

ポンコツ文在寅は、そんなこととはつゆ知らず、ただビエロのように、北朝鮮によって掌で弄ばれただけなのです。

白頭山の山頂で記念写真に納まる金正恩朝鮮労働党委員長(左から2人目)と南朝鮮(韓国)の文在寅大統領(右から2人目)。両端は李雪主夫人(左)と金正淑夫人=2018年9月20日

ただ、その韓国で、保守系の尹錫悦氏が大統領になることが決まり、事情は変わってきました。しかし韓国では24年まで続く『ねじれ国会』問題があります。現在の韓国議会は約6割が革新系で、保守派の尹大統領の意向がストレートに通りづらいところがあります。

そのため、日韓関係がすぐに改善することはありえませんが、軍事面では期待できそうです。尹氏は、「サード(THAAD:終末高高度防衛ミサイル)追加配置」を大統領選の公約にしています。

そうして、ロシアのウクライナ侵攻が現実になってしまった現在、かつてウクライナが核保有国だったことを忘れるべきではありません。ソ連が1991年に崩壊すると、ウクライナは期せずして米露に次ぐ核大国になりました。ソ連がウクライナ国内に大量の核兵器を置いていたためです。ウクライナにあった核弾頭は当時1240発。英国が冷戦期に保有していた「核」の2倍以上です。

それでもウクライナは核保有の道を選びませんでした。チェルノブイリ原発事故の影響から、国民に核アレルギーがありました。ウクライナ議会はソ連崩壊の前年、「受け入れない、作らない、手に入れない」の非核三原則を宣言しています。ただ、政府や軍には「核を手放して、自国の安全を守れるか」との懸念もありました。まるで、現在の日本のようです。

燃料の処理を終えた大陸間弾道ミサイルRT23の1段目= ウクライナ東部パブログラドで2019年11月29日

ソ連崩壊で、核の拡散を懸念する米英露はウクライナに放棄を求めました。ブダペストで94年、全欧安保協力会議の首脳会議が開かれます。ここで米英露は「ウクライナの領土的統一と国境の不可侵を保証する」という覚書を交わします。ウクライナが全ての核をロシアに移送したのは96年です。

当時は冷戦終結(89年)で、欧州がウクライナを敵視する可能性は低いと考えられましたし、ロシアとは歴史的、民族的に結びつきが強く、軍事的脅威とはならないだろうと、信じたウクライナは、経済再建を優先し軍縮を急ぎました。戦略爆撃機や中距離重爆撃機のほとんどをロシアに売却するか、国内で解体しています。

覚書から20年。軍縮を進めたウクライナをあざ笑うかのように、プーチン露政権は2014年、ウクライナ領クリミアを軍事力で強制編入しました。米英は覚書に反すると批判しましたが、プーチンはそのようなことは意に介さず、今度はウクライナに侵攻しました。

もし、ウクライナが一部でも核兵器を保持し、戦略爆撃機や中距離重爆撃機を保持していたとしたら、プーチンも迂闊にはウクライナに侵攻することはできず、ロシアは国境紛争程度でそれ以上は踏み込まなかったかもしれません。

北朝鮮も核を放棄すれば、ウクライナのようになる可能性は十分にあります。それを認識している金王朝は、核・ミサイル開発を手放すことは絶対にしないでしょう。そうすれば、北も金王朝もおしまいと認識しています。

以上のようなことを考えれば、日米韓は北朝鮮問題に慎重にならざるを得ないところがあります。当面は、朝鮮戦争後の秩序を維持するということになるでしょう。要するに、現在の38度線を一ミリたりとも動かさないということです。これは、米国、中国、ロシア、北朝鮮も朝鮮戦争停戦協定で批准しています。


文在寅大統領のときの韓国は、北朝鮮や中国に接近し、在韓米軍の撤退もあり得る状態になり、この38度線はアチソンラインまで、後退することが懸念されたほどですが、尹新大統領は、38度線を維持するのは間違いないようです。というより、文在寅が極めて異常だったのです。

もし、アチソンラインが米国の防衛ラインということになってしまえば、日本の東京が最前線ということになってしまいます。本当に大変なことになるところでした。私は、文在寅が大統領である限り、韓国には軍事的にも何も期待できず、韓国に軍事的な空き地があるだけで良いと考えていました。

これからの日米韓は、38度前を守りつつ、現状維持をはかるのが最適であると思います。核・ミサイル開発に関しては、反対はするものの、できればその主力を、中国むけの戦術核に限定するようにもっていけるな、そうするべきと思います。

これは、理想論からはかなりかけ離れていますが、現実をみれば、このあたりが当面の落とし所にならざるを得ないと思います。仮に米国が現在すぐに、北朝鮮に対して何らかの手段を工事、核やミサイルを無力化すれば、中国を利することになり、敵に塩を送ることになりかねません。

そのようなことをするのではなく、あくまで対峙の最優先は中国にすべきです。米国が北朝鮮問題を強引に解消したとしても、中国がそのままであれば、習近平をぬか喜びさせるだけです。習近平は、北朝鮮に浸透し、次は韓国に浸透するでしょう。

それを実施する上で、武力を用いれば、朝鮮半島版ウクライナ戦争になりかねません。国際関係は理想論で語れるほど、単純でもないし、秩序だったものではないのです。

新冷戦で中国が破れ、中国の体制が崩壊すれば、北朝鮮問題はほとんど何もしなくても解消することになるでしょう。やはり、中国を最優先すべきなのです。核をなくすのは理想だからといって、順番を間違えれば、かえって事態を悪くし、ウクライナの二の舞いになりかねません。

米国もこれを意識した上で、4年ぶりの米韓合同軍事演習を実施するのでしょう。これによって、文在寅統治の韓国から、尹錫悦新大統領統治の韓国に変わったことを北や中国に理解させようとしているのでしょう。

そうして、これからは韓国も含んだ、合同演習は増えていくと思います。そうして、この演習で牽制する対象は、北朝鮮も含まれますが、メインはあくまで中国なのです。ただ、日本としては、これを機に停滞していた拉致問題を進めるべきでしょう。いずれにしても、拉致という北朝鮮による国家犯罪は、いずれ国際法に照らして裁かれなければいけません。

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バイデン外交の欠陥が露呈しているウクライナ戦争

岡崎研究所

 3月22日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)で、同紙コラムニストの ジャナン・ガネシュが、ウクライナ問題では、バイデンの理想主義的外交がサウジアラビア等の離反を招き米国外交の足かせとなっており、もっと現実主義的外交をすべきであると論じている。


 ガネシュは、ウクライナ戦争を民主主義と独裁主義の戦いと位置付けたのでは、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、トルコ、更には中国の協力を得ることができないので、より現実的な外交政策をとるべきだと述べる。歴史的にも、米国は、ソ連との対抗で中国に肩入れしたり、韓国やラテンアメリカの軍事政権を支援したりしたように、目的のためには、非民主的勢力の協力を得て来たと指摘する。そして、今後の中国との覇権争いにおいても、そのような戦術が必要となると論じている。

 バイデン外交には、人権・民主主義を重視する民主党の基本的立場が背景にある。また、トランプの理念なき外交を批判して政権を獲得したこともあり、自らの持論でもある民主主義重視の価値観外交を進めて来た。

 また、バイデンの個人的性格にもあるのか、これまでサウジやア首連の指導者、イスラエル首相、ブラジル大統領など、政策的に問題のある政治指導者とは会おうとしなかった。政策や意見が合わなくとも、いざという時のために、首脳レベルで直接働きかけを行なえるような最低限の個人的関係が構築されていることが望ましい。

 また、このようなバイデンの頑なさと共に、あまりに率直な発言に、やや不安を覚えるところがあった。バイデンは、早々にウクライナに軍事介入をしないことを明言し、プーチンを戦争犯罪人と呼び、また、制裁が効果を生ずるのには時間がかかるなど、それらが事実であるにしても、外交駆け引き的な要素が少なく選択の余地を自ら狭めている印象もある。

 バイデンは、プーチンの理不尽な侵略に対して米国自身が交渉する余地は無く、当面制裁強化一本やりということであろうが、そうであればこそ、実利を重視し民主的とは言えない第三国に対しては今後もう少し柔軟な対応に軌道修正し、少しでも対ロシア制裁への協力を求めることが望ましい。西側同盟以外の国々が制裁に参加せず協力しないということは、制裁の抜け穴が広がることを意味しかねない。ウクライナ後の中国対策においても同様であろう。

即時停戦がロシアのためであるという説得を

 3月16日頃には、ウクライナ筋から15項目からなる停戦合意が近いとの見通しも報道されたが、3月23日には、ロシア側から米国が停戦を妨害しているとのコメントがあり、停戦の機運が遠のいているが、これはロシアが交渉を引き延ばしていることを示唆している。プーチンは、もともと停戦するつもりは無く文民に対する無差別攻撃を継続、強化することにより、ウクライナ側の戦意喪失を待つ作戦なのではないかと疑いたくなる。

 ウクライナ人の命を救うためには、プーチンがこのような軍事侵攻に踏み切った理由やこれまでの経緯を考慮すべきだとの意見が内外に散見されるが、これは正に信用できないプーチンの主張である。ウクライナ人側には、命を懸けても守りたいものがあることを理解すべきであろう。

 ロシアに影響力を持つ国や人脈を持つ人物は、全力でロシア側に即時停戦を働きかけ、無差別攻撃を続けることが利益とならないことをロシア側に理解させるよう努力すべきである。特にプーチンに対しては、その意図は交渉により実現すべきもので、そのためにはまず即時停戦が必要であると説得するべきであり、それができるのはロシアが頼りとしている中国しかない。

 3月24日の北大西洋条約機構(NATO)緊急首脳会議でもそのような意見が出たようであるが、中国には、そのような役割を果たす重い責任があるというべきであろう。

【私の論評】バイデンは、中東諸国やイスラエル、トルコ等とはある程度妥協しても良いが、中国にロシアを説得させてはいけない(゚д゚)!

ロシア軍がこのような苦戦するのは、最初からある程度予想がつきました。軍事専門家らによれば、ウクライナ全土を制圧するには最低60万人の軍が必要だとされています。

ソビエト連邦軍主導のワルシャワ条約機構軍による軍事介入したチェコ事件においては、80万人の軍隊が動員されました。チェコの人口は1000万人(ウクライナ4000万人)ですし、面積も半分以下です。

にもかかわらず、ウクライナに投入された軍は19万人です。しかも、キエフ、ハリコフ、東部、南部と広い戦線にわたって投入されました。これでは、制圧どころではありません。

苦戦するのが最初から目に見えていました。仮に、西側諸国からの支援がなかったにしても、かなり苦戦したでしょう。

さらに、ロシアの経済が脆弱(GDPでは韓国より若干下回る、一人あたりGDPは100万戦後で、これは韓国をはるかに下回る)であることから、ロシア軍の戦いはお粗末なものになるであろうことは、最初から予測されたことです。

初戦でのロシア軍のウクライナー侵攻

こうしたことはバイデン政権もわかっていたはずです、プーチンにロシアがウクライナに侵攻すれば、相当苦戦することや、西側諸国が支援すれば、さらに苦戦することなどをプーチンに知らしめるべきでしたし、ある程度戦争がエスカレートした場合は、米軍が直接介入する可能性を示唆すべきでした。バイデンはやはり、外交で失敗したと言えるのだと思います。

特に、上の記事でも述べているように、バイデンは、早々にウクライナに軍事介入をしないことを明言し、プーチンを戦争犯罪人と呼び、また、制裁が効果を生ずるのには時間がかかるなど、それらが事実であるにしても、外交駆け引き的な要素が少なく選択の余地を自ら狭めている印象もあるとしていますが、まさにそのとおりです。

腹の中ではどう思っていても、ウクライナに段階的に軍事介入する可能性ははっきり否定すべきではありませんでした。それに制裁されるにしても、それが効き目がでてくるのに時間はかかると認識させたのは間違いないです。

これでは、プーチンは下手をすると、米国やNATOはウクライナに対して、武器供与も、軍事費の支援もしないと思い込んだかもしれません。制裁も、ウクライナを打ち負かす前までに効力を表すことはないとの確信を抱いたかもしれません。

現在、ロシアはウクライナに侵攻を行ったと国際社会から批判されています。侵攻とは、挑発もされないのに、先制武力攻撃を行うことです。プーチンは色々と言い訳をして「ウクライナが先に挑発してきた」と言っていますが、国際社会の圧倒的多数は「それは挑発と認められない」と評価しています。

一方で、バイデン大統領は相当のポンコツです。ポーランドに行ってロシアの国際法違反を片っ端からあげつらうまでは良かったのですが、「プーチンを権力の座に留まらせない」とまで発言しました。さすがに同盟国の英仏が「我々は知らん」「いい加減にしろ」と呆れられていましたが、米国政府の高官も火消しに必死でした。

それはそうでしょう。プーチンを「挑発もされないのにウクライナに手を出した」と批判しているのに、バイデンがプーチンを挑発してどうするのでしようか。


そうして、最近のマスコミなどの論調では、真実をつきとめようとか、ロシアの立場にもたってみるべき、などのごたくを並べる者もいますが、これは明らかな間違いです。現在進行形の出来事に、しかも戦時に「真実が知りたい」と思い、探ること自体が、プロパガンダに騙される原因になるだけです。真実など歴史にならないとわからないのに現在進行形の時に探るものではありません。

そのようなことよりも、西側諸国としては、この戦いに何としても、勝つべきです。そのためには、より現実的な外交政策をとるべきなのは間違いありません。戦争が現に始まっているのですから、まずはこれに勝たねばなりません。

勝つためには、場合によっては、妥協も必要です。ただ、やって良い妥協とそうではない妥協とがあります。それは、踏まえるべきでしょうが、して良い妥協はすべきです。

妥協には2つの種類があります。1つは古い諺の「半切れのパンでも、ないよりはまし」、1つはソロモンの裁きの「半分の赤ん坊は、いないより悪い」との認識に基きます。前者では半分は必要条件を満足させます。パンの目的は食用であり、半切れのパンは食用となります。半分の赤ん坊では妥協にもなりません。

ソロモン王の裁き

何が受け入れられやすいか、何が反対を招くから触れるべきでないかを心配することは無益であって、時間の無駄です。心配したことは起こらず、予想しなかった困難や反対が突然ほとんど対処しがたい障害となって現れことになります。

何が受け入れられやすいかからスタートしても得るところはありません。それどころか、妥協の過程において大切なことを犠牲にし、正しい答えはもちろん、成果に結びつく可能性のある答を得る望みさえ失うことになるのです。

現在でいえば、バイデンは中東諸国やイスラエル、トルコ等とはある程度妥協しても良いと思います。ただ、上の記事にもあるように、中国に即時停戦が必要であるとロシアを説得させることはするべきではありません。

それで、ロシアが即時停戦をしたとすれば、習近平の存在感は嫌がおうでも高まります。下手をすると、習近平はノーベル平和賞を受賞するかもしれません。そうなると、習近平はそれを利用して、国内での権威付け行い、統治の正当性を強化するでしょう。

そうなると、習近平は余勢をかって、喜び勇んで台湾併合にはずみをつけるかもしれません。その後世界は中国にさらに翻弄されることになるでしょう。これは、悪い妥協です。バイデンはこの種の妥協は、絶対にすべきではありません。

今のところ、そのような兆候はありませんから、さすがのバイデンも中国に利するような真似はしないつもりなのでしょう。

無論、戦争に勝つためには、戦争や戦闘における真実を知る努力は、必要ですが、それ以前のなぜ戦争になったのかなどという事柄は、裁判のとき、さらにその後で、歴史的事実になった後に詳細を分析して、後世に役立てるべきです。

そうして、そのようなことよりも、日本としては、ウクライナがロシアに降伏して、何か良いことがあるのか自問すべきです。 自分を殴っている相手に自らの生殺与奪の権を委ねれば、殺されるだけです。

 国が殺されるとはどういうことでしょうか。男は奴隷にされます。現に、ロシアに捕まったウクライナ人の少なからずがシベリア送りにされています。女は犯される。降伏するとは、殺され、犯され、奴隷にされることなのですが、それで良いはずはありません。  

事実、プーチンはそれを実行してきました。そんな国が日本の隣にあるのです。 では、どうすべきなのでしょうか。

殴られないようにするには、軍事力をつけるしかありません。そうして、それを可能にする経済力もつけねばならないです。ドイツは「防衛費をGDP2%超にする」と宣言しましたが、最低の数字です。 日本は、これを上回るようにすべきです。

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2022年4月10日日曜日

新築住宅に太陽光パネル メーカー義務化、条例改正へ―東京都―【私の論評】太陽光パネルを義務化するくらいなら、原発を稼働させよ(゚д゚)!

新築住宅に太陽光パネル メーカー義務化、条例改正へ―東京都


 東京都は、住宅メーカーなどを対象に、新築物件の屋根に太陽光パネルの設置を義務付ける新制度を創設する。全ての住宅への一律設置を課すのではなく、事業者単位で目標を設定して達成を求める方針。住宅分野の脱炭素化が目的で、都の検討会で制度の導入時期など詳細を詰め、今秋以降に関係条例の改正を目指す。

出光、太陽光パネル生産終了 中国勢にシェア奪われ―来年6月

 設置を想定しているのは、延べ床面積が2000平方メートル未満の中小規模の住宅やビル。これまでは主に大規模建築物を対象に環境配慮を求めてきたが、着工棟数の大半を占める中小物件の対策を後押しする。総延べ床面積で年間2万平方メートル以上を供給するメーカーや不動産デベロッパーなどを義務付けの対象にする。

 都の調査によると、都内住宅の約85%で屋根にパネルを設置して発電することができる。都は日照条件などの地域差をさらに考慮した上で、各メーカーなどが供給する棟数に応じて設置すべき目標を定める。各棟の合計で目標を達成すればよい仕組みにする。

 新制度ではこのほか、断熱など一定の省エネ性能確保も義務付ける方針。都内の二酸化炭素排出量のうち、住宅を含む家庭部門からの割合は約3割を占めており、都は太陽光発電機能と省エネ性能を兼ね備えた住宅を普及させることで排出量の削減につなげたい考えだ。

【私の論評】太陽光パネルを義務化するくらいなら、原発を稼働させよ(゚д゚)!

国土交通省・経済産業省・環境省では昨年、住宅や建築物への太陽光パネルの設置や省エネ性能確保などに関する議論を行ってきた。8月23日に開催された「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」では、新築住宅では義務化は見送りになっていました。


政府は2030年に、新築される住宅でのZEH水準の省エネ性能(再エネを除き20%削減)と、新築される建築物でのZEB水準の省エネ性能(再エネを除き20%~40%削減)の確保と、新築戸建住宅6割における太陽光発電導入を目指します。

50年には、ストック(中古物件)平均でZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保と、導入が合理的な住宅や建築物で太陽光発電などの再エネ導入が一般的となることを目指す。大きな論点となった太陽光パネルの設置は、公共の新築住宅・建築物では原則設置となりましたが、新築住宅では義務化は見送りとなりました。

日本政府は昨年CO2削減目標を26%から46%へ20%も引き上げました。固定価格買い取り制度(FIT)の実績からいえば1%当たり毎年1兆円の費用がかかっており、単純計算しても毎年20兆円の費用が追加でかかれのか。政府がほのめかし、東京都が目指す太陽光発電の設置義務化を実行すれば国民は疲弊し、産業は高コストになり、日本経済は弱体化します。


太陽光パネルは確かに従前よりは安くなったのですが、まだ電気料金への賦課金を原資に寛大な補助を受けています。太陽が照ったときしか発電しない間欠性という問題は解決していないため、いくら太陽光発電を導入しても火力発電所は必要なので二重投資になるし、火力を減らしてしまえば停電のリスクが高くなります。

安価に太陽光発電を設置できる場所も減ってきており、これも今後の高コスト要因になります。小泉進次郎氏が環境相の時、まだ空いている屋根があるから設置をすればよいと言ったが、なぜまだ空いているのか理由を考えなかったのでしょうか。これまでも莫大な補助が与えられたにもかかわらず、採算が合わなかったのです。

こんなことは、最初からわかりきっていたので、 CO2削減目標を46%に引き上げることを宣言した菅総理(当時) の頭の中には、原発再稼働も視野に入っていたのではないかと思います。

そもそも太陽光発電はCO2排出こそ少ないですが、本当に環境に優しいかも疑わしいです。かなり頻繁に誤解されているようですが、太陽光や風力発電は「脱物質化」などでは決してなく、むしろその逆です。

太陽光や風力発電は、確かにウランや石炭・天然ガスなどの燃料投入は必要ないです。一方で、広く薄く分布する太陽や風のエネルギーを集めなければならないです。このため原子力や火力よりも多くの発電設備が必要で、大量のセメント、鉄、ガラスなどの材料を投入せねばならず、結果、廃棄物も大量になります。

屋根ではなく地上に設置する方がコストは安くなりますが、広い土地を使います。農地や森林がその代償で失われます。施工が悪ければ台風などで破損したり土砂災害を起こしたりして近隣に迷惑が掛かかります。

日本には1993年を最後に、中心気圧が940ヘクトパスカル以下の横綱級の台風は不思議と来なくなりましたが、またいつ来るか分からないです。日本の太陽光発電設備はいまだそのような台風を経験していないので心配が募ります。

太陽光発電設備は安くなったといいますが、その理由は何でしょうか。太陽光発電にはさまざまな方式があるが、いま最も安価で大量に普及しているのは結晶シリコン方式であり、世界における太陽光発電用結晶シリコンの80%は中国製です。そうして、うち半分以上が新疆ウイグル自治区における生産であり、世界に占める新疆ウイグル自治区の生産量のシェアは実に45%に達します。

高いシェアの理由は、安価な電力、低い環境基準、そして低い賃金です。多結晶シリコンの生産には大量の電力が必要で、新疆では安価な石炭火力で賄っています。また、製造工程では大気・土壌・水質に環境影響が生じ得るので、規制が厳しいとコスト要因になります。

では賃金が低い理由は何かと考えると、強制労働に太陽光発電産業も関わっている疑いがあります。コンサルタントのホライゾンアドバイザリーの報告によると、世界第2位の多結晶シリコン製造事業者・GCLポリエナジー、および同第6位のイーストホープが、強制労働の疑いのある「労働者の移動」プログラムに明白に参加しています。

ほかにも複数の中国企業の名前が挙がっています。海外の太陽光発電関係企業は、米国のウイグル強制労働防止法や、それに追随するであろう諸国の規制への対応を検討しています。既に、米国の大手電力デューク・エナジーやフランスのエンジーなど、175の関係企業が、サプライチェーンに強制労働がないことを保証する誓約書に署名しました。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、中国製の輸入を止めると太陽光パネルの価格は倍増します。日本もこの覚悟が必要です。

中国産太陽光バネルについて、「強制労働によってつくられていることが排除できない」として、米国当局は、新疆ウイグル自治区でこのようなものをつくっている主要企業を「エンティティ・リスト」に入れ、「ここからの輸入はダメ」という方針にしています。これは問題があるということです。それに、東京都が加担して良いはずがありません。

太陽光発電の問題点を以下に簡単にまとめておきます。
  • 太陽光発電は同等能力の待機発電設備必要 
  • 関係特定業者の利権に 
  • 費用対効果が悪く電気料金負担増(現在一割増に) 
  • 住宅建設費増ー私有財産制への侵害 
  • 利用後、製品有害物廃棄処分未解決 
  • 部品調達は中共ジェノサイドに加担.人権問題有 
  • 景観悪化
政府は住宅への設置義務化は見送りましたが、官公庁の建築物へは設置を義務化する方針です。しかし官公庁だからコストを度外視してよいという発想は誤りではないでしょうか。おおよそ技術は進歩してみな安くなりますが、政府はわざわざコストのかかる政策を選んで実施するのが得意だということを忘れてはいけないです。

国民の納税は公務のためであり、太陽光発電のためではありません。太陽光発電の政策の実施に当たっては、1tのCO2削減に何円かかるのかを明らかにし、それによって実施の可否を決めるべきです。コスト無視の官公庁には炭素税も効果がなさそうですが、「政策の削減コスト」によって無駄遣いに歯止めをかけることができるでしょう。

新築住宅も同じです。「削減コスト」に注目し、原発や化石燃料と比較し「削減コスト」がそれを下回らないかどうかを検討してから導入を検討すべきです。

原発などと比較すれば、太陽光パネルによる発電はコスト高になるのは、目に見えています。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻をきっかけにしたエネルギー価格の高騰などを踏まえ、イギリス政府は、原子力発電所を最大8基新設することを柱とする新たなエネルギー計画を発表しました。

英国の新規原発開発計画

この計画は、コロナ禍からの経済活動の再開による需要の増加や、ウクライナへの軍事侵攻をきっかけにしたエネルギー価格の高騰を踏まえ、イギリス政府が7日までに発表しました。

それによりますと、2030年までに最大8基の原発を新設し、2050年には電力需要のうち最大25%を原子力発電でまかなうとしています。

「小型モジュール炉」と呼ばれる次世代の原子炉の開発も急ぐ方針です。

日本もまずは、現在稼働中止中の原発のうち安全が確認されたものは、すぐにでも稼働させるべきです。原発を稼働させさえしなければ安全という考え方は、妄想に過ぎません。現実には、稼働させようにさせまいと、安全性に違いはありません。であれば、稼働させるべきです。

太陽光発電を中国製の太陽光パネルを用いて大々的に実施すれば、国際的にも非難される可能性がありますが、安全が確保された原発を稼働させても、そのようなことはありません。

電力不足による危機は、思ったよりもはやくなりそうです。その兆候はすでに見え始めています。学校やトンネルなどの公共施設で使う電力は国などが入札を行って契約先を決めますが、参加する電力会社がなく入札が成立しないケースが各地で相次いでいることがNHKの取材で分かりました

燃料価格の高騰などを背景に、電力会社が決まった価格で長期間の契約を結ぶことに慎重になっているとみられます。

太陽光パネルでこの問題は俄には解決しません。一番はやく解決できるのは、原発再稼働です。これですと、2週間もあれば再稼働できます。

今のままだと、あなたの職場が電気不足で操業できず、自宅待機になるかもしれません。職場はなんとか、電気を確保してみたところで、電車は電力不足で満足に動かなくなるかもしれません。その状態が続けば、解雇されるかもしれません。いや、それどころか、家族が病気になっても、病院が停電で満足に手当を受けられないかもしれません。学校も、コロナでもないのに閉鎖されるかもしれません。

そうなれば、家でテレビでも見ていれば良い、スマホでも見ていれば良いと考える人もいるかもしれませんが、電気がなければそれもできないのです。

そうなる前に、原発を再稼働すべきです。

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2022年4月9日土曜日

アメリカの「利上げ」、意外にも日本経済に「いい影響」を与えるかもしれない…!―【私の論評】米国の利上げの追い風でも、酷い落ち込みならない程度で終わるかもしれない日本経済(゚д゚)!

アメリカの「利上げ」、意外にも日本経済に「いい影響」を与えるかもしれない…!

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長


「逆イールド」の意味

 3月のFOMC(連邦準備理事会)で利上げが始まった。ウクライナ情勢が世界経済を失速させるなどの悲観論がとりあえずは和らいだこともあって、米国の金融市場では金利が大きく上昇している。

 特に、パウエル議長が3月21日に50bps(0.5%)の利上げを行う姿勢を示した後に、政策金利引き上げが急ピッチになるとの期待で、FRB(連邦準備理事会)が操作する「FF金利」の見通しが影響する2年満期の国債金利などが大きく上昇、満期が長い国債金利が低くなる、いわゆる「逆イールド」が金融市場で観測されている。

 債券市場で逆イールドが増えていることは、将来の米国の景気後退が迫っているシグナルとして意識される。1980年以降の景気後退局面(5回)の前に、10年国債と2年国債の格差でみた逆イールドが定着したケースでみると、逆イールドが始まってから平均15ヵ月後に景気後退となっている。

 もっとも、逆イールドは観測され始めたばかりで、これが定着するかどうかは不確実だし、逆イールドとなってから景気後退までに至る期間は差がある。

 一方、FRBは過去の分析などから、10年国債と2年国債の金利差が示す逆イールドは、景気後退のシグナルとして必ずしも適当ではない点を指摘している。FRBは、より短い年限(1年半と3ヵ月の格差)でみたイールドカーブの方が、景気後退のシグナルとして有用としている。このため、景気の先行きとイールドカーブの関係について、様々な議論が行われている。

 年限別のイールドカーブのうち、どれが最も使えるのか。それぞれのイールドカーブには特徴があるので、特定のイールドカーブだけで景気判断を行うことは、難しいのではないかと筆者は考えている。

 4月1日にわずかながらもマイナスとなった10年-2年国債の金利差は、長期的に経済成長率やインフレ率が鈍化する可能性を示している。ただ、これが景気後退に直結するはっきりとした理由はない。また、満期が長い米国の金利は、国債購入政策によって低く抑制されているので、従来ほどは景気後退のシグナルとしての有用ではなくなっている可能性がある。

 一方、FRBが重視する短い年限のイールドカーブ(上記の「1年半と3ヵ月の格差」など)は、景気後退到来を予知するシグナルとしては有用とみられるが、将来予想のツールとして説明できる範囲は限定的になる。

すぐに景気失速することはない?

 確かなことは、パウエル議長などのFRBの主流派は、逆イールドにはなっていない短い年限のイールドカーブを重視しており、長期国債の年限で観測される逆イールドを問題にはしていないことである。インフレ鎮静化とインフレ期待安定を重視するなかで、高インフレが続く限り利上げを続けるとみられる。

 パウエル議長などの発言を踏まえると、当面のFOMCにおいて中立的な水準であるFF金利2%超を目指して、1回の会合での50bpsの利上げが数回行われる可能性が高い。

 インフレ抑制のために2023年前半までFRBの引き締め政策が続く可能性が高いが、米国経済が早々に失速するリスクは大きくないと、筆者は現状では考えている。

 ただ、2023年半ばから利上げの景気抑制効果が本格化するとみられ、米国経済のダウンサイドリスクが高まるだろう。コロナ後の回復が未だに緩慢なままの日本経済にとっては、米経済の減速、そしてウクライナ情勢への不透明感もあり、外部環境について逆風が和らぐ展開は期待しづらいのではないか。

黒田日銀の「円安容認」姿勢

 一方、FRBの利上げ期待がもたらした米金利上昇をうけて、3月中旬から一時1ドル125円程度円安に振れるなど、ドル高円安が進んでいる。そんななか日銀は、現行の政策の枠組みを維持し、為替市場において円安を容認することで、事実上緩和政策を強化している。外部環境はほとんどがネガティブだが、数少ない日本経済にとっての追い風が、FRBからもたらされていると位置付けられる。

 ガソリンや食料品などの価格上昇で、家計の日常生活が苦しくなる側面はある。このため、ガソリンなどの個別の価格上昇するなか、落ち着いている一般物価(経済全体のインフレ)とガソリン・食料品などの個別の物品の価格が同一視され、しかも円安が進んでいるため、日本銀行の金融緩和政策に批判的な意見も増えている。

 ただ、日本は持続的なインフレには至るにまだ距離が残っているため、現行の政策対応を続けるとの姿勢を、黒田総裁らは一貫して保っている。こうした姿勢が揺るがないということが、3月後半の日銀の行動によって裏付けられた。長期金利目標レンジを維持するための大規模な国債購入発動をおこない、金融緩和を強化するアクションを取ったのである。

 今後、円安があまりに急ピッチで進む場合には事態が変わる可能性があるが、日銀の現行の金融緩和政策は基本的には続くと見られる。

 実際に、4月1日に発表された日銀短観においても、製造業、非製造業とも業況判断が悪化した。事前予想ほど悪化しなかったことなどややポジティブに評価できる点もあるが、海外情勢の悪化に加えて、原材料価格の上昇を販売価格に十分に転嫁できていないこと、そしてコロナ対策の営業制限の余波が残っていることが、企業の景況感を曇らせている。

 業種別に景況感をみると、対個人サービス業、飲食サービスなど、営業制限を受けた個人消費関連の景況感の悪化が目立つ。ガソリンなど資源価格上昇への対応に加えて、景気停滞に対して、政策によるサポートが必要な状況と言える。

 また、日本においては、労働市場の逼迫がもたらす賃金上昇は始まっていない。コロナの影響が比較的軽微だった大企業製造業の春闘において、若干のベースアップが行われる兆しが見え始めた程度である。米金利の上昇を通じて日本の金融緩和が強化されることは、家計所得を後押しして、日本経済がコロナからの復調を目指す後押しするツールと位置付けられると思われる。

 日銀による金融緩和政策について、物価高などに対して批判的な世論を理由に、岸田政権から圧力がかかるリスクを筆者は懸念していた。ただ、岸田政権を支える主要政治家は、3月後半に、ガソリン高などを理由に金融緩和をやめるのは難しいと発言するなど、緩和を継続する日銀の対応をバックアップしていると思われる。

 また、年金給付者への5000円給付という与党政治家から提唱された対応は、シルバー政治の象徴とも言え、様々な観点から問題が大きいと思われるが、どうやら白紙になった模様である。ガソリンなど物価高の弊害を和らげるために、2022年度予備費を財源とした2兆円規模の対策が策定されるとの観測記事もある。最終的にどうなるかは不明だが、自民党の内部からの拡張的な金融財政政策を重視する声が、岸田政権の政策にも影響し始めたのかもしれない。

 日本経済を成長させる大胆な政策がでてくるとまでは期待はしづらいだろうし、「新しい資本主義」のメニューのなかで、増税政策を打ち出される可能性もある。ただ、仮に、岸田政権の対応が経済成長を重視する方向に転換されれば、株式市場において、好調だった米国株に対して日本株のリターンが負け続けた昨年までの状況は、2022年は回避されるかもしれない。

村上 尚己(アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト)

【私の論評】米国の利上げの追い風でも、酷い落ち込みならない程度で終わるかもしれない日本経済(゚д゚)!

上の記事をざっくりまとめてしまうと、債券市場で逆イールドが増えていることは、将来の米国の景気後退が迫っていることを示しているようにも見えるが、現状では米国の景気がすぐに落ち込み、それが日本にも悪影響を与えて、日本がすぐに景気が落ち込むことはないでしょうということです。

なぜそのようなことがいえるかといえば、米金利上昇をうけて、3月中旬から一時1ドル125円程度円安に振れるなど、ドル高円安が進んでいますが。日銀は、円安を容認することで、事実上緩和政策を強化しているからです。

国際的にみると、現状では日本経済にとっては、エネルギー価格の上昇や、資源価格の上昇など、日本経済にとって良いことはあまりないのですが、米国の利上げにより、円安傾向が続くことは日本の経済にとってプラス働くとみられます。

3月18日日銀の黒田東彦総裁は金融政策決定会合後の会見で円安を容認する考えを示し、東京外国為替市場では一時、1ドル=119円台まで円安が進みました。

日銀・黒田東彦総裁は、「円安が経済・物価を共に押し上げ我が国経済にプラスに作用している基本的な構造は変わりはない」と語りました。

黒田総裁は日本の企業が海外であげた収益を国内に送金する際に「円建ての金額は円安によって拡大しGDPもプラスになる」と述べ、円安を容認する考えを示しました。

発言を受けて円相場は一時およそ6年1カ月ぶりの水準となる1ドル=119円台まで円安が進みました。

金融政策については原油価格の高騰などで消費者物価が「4月以降2%程度の伸びとなる可能性がある」としながらも引き締め策を取ると企業収益を悪化させ家計の負担を増やすとして「金融緩和を続ける」との考えを強調しました。

このほか物価の上昇と景気の停滞が同時に起こる「スタグフレーション」については「そういう恐れが日米欧にあるとは思っていない」と述べました。その理由として「資源価格の上昇は一時的なものでコロナ禍からの経済回復は明確だ」としました。

この円安容認が、まさに日本にとって吉と出ることになりそうなのです。

そもそも、為替が10%円安になるとGDPは0.2~0.5%アップすることは従来から試算で確かめられています。だから円安で輸入物価が上がっても日本経済としてはそれを上まわるメリットがあるのです。

円安と原油高、小麦粉などの資源高を分けて考えてみます。円安にはメリット、デメリットの両面があるとしても、短期的には景気に対してメリットが大きいと考えるのが一般的です。購買力を低め内需を低迷させる効果と比べ、外需を増加させる効果の方が大きいとみられるためです。

こうしたメカニズムを確認するには、マクロ計量モデルの推計結果が有用です。日本では、少なくとも数年の期間では自国通貨安(円安)は国内総生産(GDP)にプラスの影響を及ぼします。先にも述べたように、これは内閣府の短期マクロモデルでも確認できます。10%の円安によって、GDPは0.2~0.5%程度増加します。


このように自国通貨安が経済全体にプラスの影響を与えることはほとんどの先進国でみられる現象です。どの国も総じて輸出産業は世界市場で競争している優良企業群で、輸入産業は平均的な企業群です。優良企業に恩恵を与える自国通貨安は、デメリットを上回って経済全体を引き上げる力が強いとみるべきです。
 
 例えば、経済協力開発機構(OECD)のインターリンクモデルでみても、輸出超過、輸入超過の貿易構造にかかわらず自国通貨安は短期的には景気にプラスです。その影響は貿易依存度によって異なり、依存度が高い国ほどプラス効果が大きいです。

日本は、先進国の中では内需依存で貿易依存度が低いことから、円安の効果は他の国と比べると実はそれほど大きくはありません。ただ、これは逆の方向からいえば、市場関係者らが唱える円安弊害論は、一部の産業に限られており、日本経済全体の話ではないのが実態です。

一方、原油・資源価格の上昇はどうでしょうか。これは交易条件の悪化を通じて、日本経済からの海外への所得移転になり、日本のGDPを低下させます。この意味で、原油高・資源高は日本経済にマイナスです。

2011年初から13年末頃まで、原油価格は1バレル80~100ドル程度の高値で推移しました。今後も、新型コロナからの回復に合わせてエネルギー価格が上昇したことと、ロシアに対する経済制裁で、さらに上昇する可能性はあります。ちなみに、本日は、96.9ドル↑ (22/04/08 08:41 EST)です。

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ただ、日本は原油価格が高かった11~13年でも一般物価上昇率はマイナスで、デフレのままでした。こうしたことから、原油・資源価格の上昇が限定的ならば、一般物価上昇率はそれほど上がらないでしょう。つまり悪い物価上昇でもなく、スタグフレーションまでいかないでしょう。

むしろ、原油や小麦粉などの個別価格が上がっても、ここ1年ほど消費者物価総合が前年比マイナスとなるなど一般物価上昇率がデフレ基調であることの方が問題です。個別物価、一般物価の区別もつかず、「悪い円安」だ、「悪いインフレ」だと騒ぎ回る人がいることには、本当に疑問を感じます。

「悪い円安」「悪いインフレ」とは結局スタクフレーションのことであり、これは全体の供給不足で起こる現象ですが、日本の足下では需要不足のほうが心配です。


ここ数年、老舗の廃業が時々報道されますが、これを見ていると材料費や燃料が値上がりしているのだからと、単純に「値上げすれば良いのに」と思ってしまいますが、デフレ気味の日本では、なかなか値上げができないのです。

「悪い円安」だ、「悪いインフレ」という声に乗って、金融引締をしたり緊縮財政をしてしまえば、日本はまたデフレスパイラルのどん底に沈むことになります。

いまやるべきは、目一杯の金融緩和、積極財政を行いつつ、減税などで、エネルギー価格、資源価格の上昇の悪影響を抑えることです。それ以外の政策は、日本経済を毀損するだけです。そして、それは円安を容認することでもあります。日銀は、円安を容認することを表明しましたが、政府・財務省もそれを容認すべきです。

ただ、本来は政府は大規模な補正予算組むべきですが、政府にはその気はなく、何とコロナや今般のロシア制裁による悪影響への対策に5兆円の予備費をあてようとしています。

先日も述べたように、現在では30〜40兆円の需給ギャップ がありますから、これでは全くの焼け石に水であり、これこそ、日本経済にとって大きな悪影響を与えることになります。

アメリカの「利上げ」が日本にとって、追い風になりそうなのに、単に「ひどい経済の低迷」にならない程度で終わってしまうかもしれません。

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2022年4月8日金曜日

ウクライナ危機はやはり自由主義を守る戦争―【私の論評】日本人にとっても、自由民主主義は守り抜く価値がある(゚д゚)!

ウクライナ危機はやはり自由主義を守る戦争

岡崎研究所

 著書『歴史の終わり』で有名な米国の政治学者フランシス・フクヤマが、フィナンシャル・タイムズ紙に3月4日付で‘Putin’s war on the liberal order’と題する論説を寄稿し、民主的価値はプーチンのウクライナ侵略の前から脅威に晒されていた、しかし今や1989年の精神を呼び覚ますべきだ、と述べている。



 フクヤマの主張は、
①自由主義の秩序は、プーチンの前からポピュリズムや独裁者など社会の左右から攻撃を受けてきた。
②ウクライナの危機は自由な世界秩序を当然視できないことを明確にした、闘わねば消滅する。
③プーチンが負けても自由主義の「仕事」は終わらない、その後に中国やイラン、ベネズエラ、キューバ等が控えている。
④自由主義の精神はウクライナで生きている、その他の国の我々も徐々に覚醒している。
ということで。フクヤマの自由主義への強い信念と中国など反自由主義国に対する強い危機感が印象的だ。

 ウクライナ戦争につき「これはロシアの戦争ではない。プーチンの戦争だ」という見方がる。確かにその側面は強いが、ロシアのシステム、社会の問題も大きい。ロシアが民主主義であったならば、今回の侵略のようなことは起こらなかっただろう。

 ロシア国内の民主化の動きが注目される。3月14日夜には、国営テレビの放送中に同テレビ局関係者が「戦争反対」の看板を掲げてニュース・キャスターの後ろに立った。冷戦終了後の民主化、自由主義の芽は、いくらプーチンが摘もうとしても確実に育っているのだろう。

 世界から真実を伝えていくことが重要だ。元加州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーが3月17日付アトランティック誌サイトに、「ロシアの友人へのメッセージ」と題し、ウクライナ戦争の真実を発信している。音声メッセージも付いたパワフルな発信だ。

やはり、「歴史は終わらない」

 フクヤマは、近々新著「自由主義とその不満者達(Liberalism and Its Discontents)」を出版する。フクヤマは1989年にナショナル・インタレスト誌に論文「歴史の終わり」を発表、世界に大きなインパクトを与えた。しかし、世界ではその後もウクライナを含め武力紛争が絶えない。フクヤマは、今回の記事で、間接的ではあるが、ウクライナ侵略を多くの人が「歴史の終わり」の終わりを画するものだと見ていると述べる。

 なお、フクヤマの後93年にはサミュエル・ハンティントンが、論文「文明の衝突か?」等を出し、歴史は終焉しないと主張した。当時日本を含め多くの学者達がハンティントンの議論について学問的でない等と辛辣な批判をした。こうした批判は不合理だったように思われる。「冷戦後の世界の紛争は文明間の紛争になるのではないか?」とのハンティントンの問いかけは重要だったと言ってよいだろう。

 残念ながら国際社会から紛争は無くならない。その意味で「歴史は終わらない」のである。しかし、ベターなイデオロギーがない以上、長期的に自由主義は勝利するだろう、そうであっても、自由主義を守る闘いを続けていくことが必要だ、とのフクヤマの主張に異論はない。とりわけ、権威主義的な大国である中国による脅威の増大を抱え、自由主義秩序の維持は死活的に重要な問題である。

【私の論評】日本人にとっても、自由民主主義は守り抜く価値がある(゚д゚)!

フクヤマの『歴史の終わり』を、単に冷戦中に考えられたアメリカの一方的な政治観だと切り捨ててしまうのは間違いです。

フクヤマの議論は、自由民主主義に対抗できるイデオロギーが現代でも出てきていないことを考えると、いまだに説得力がある議論だからです。

また、『歴史の終わり』はその後の国際政治学に大きな議論を巻き起こしており、国際政治を学ぶ上では必ず知っておくべき思想です。


フクヤマの議論の要点は、
  • 自由民主主義は最良…自由民主主義に対抗できるイデオロギーは存在しない
  • 自由民主主義は普遍的…あらゆる歴史、文化、文明を持った国家に適合する
  • 自由民主主義は永遠…今後は自由民主主義が最高のイデオロギーとして一貫し、滅びることはない
ということです。

自由民主主義という単一のイデオロギーをここまで支持するのは、もちろん理由があります。

ハンチントンによると、自由民主主義が優れている理由の一つは、国内で大きな政治問題があった場合に最も柔軟に対応できるのが、自由民主主義国家だからということです。

なぜなら、自由民主主義国家は、普通選挙によって問題のある政党を政権交代させることができるため、国家全体が破滅することがないからです。

しかし、「それでも、共産主義に代わる別のイデオロギーが登場する可能性があるのでは?」と思われるかもしれませんが、これもフクヤマはないと考えました。

なぜなら、イデオロギーは歴史上、その他のイデオロギーと対抗し、互いに吸収・止揚してきて、その最後のイデオロギー闘争だったのが「共産主義VS自由民主主義」だったからです。

対立するイデオロギーの止揚を繰り返した結果、最後に残ったのが自由民主主義なのだから、今後対抗する概念が登場することはないのだ、とフクヤマは主張しました。

さらに、自由民主主義は他のイデオロギーに比べて経済発展に貢献すると考えました。

フクヤマは、シーモア・M・リプセット(Seymour Martin Lipset)の説に同意し、安定した民主主義と経済発展には強い相関関係があると考えました。

しかし、高度な経済発展は自由民主主義だけでなく、開発主義的な権威主義国家(国家が強く経済を統制し経済成長させる中国などアジアに多く見られる体制)にも行き着く可能性があります。

これに対し、フクヤマは確かに短期的には開発主義国家が発展するが、長期的には結局自由民主主義国家の方が発展するのだと考えました。

なぜなら、権威主義的国家は利益団体が政治と癒着し、国家が非効率な産業を保護することにより、経済発展が遅れるようになるからです。

そのため、結局は自由な経済活動が認められ、国家が経済に介入しない、自由主義的な民主主義国家が優れている、というのがフクヤマの主張です。

フクヤマは、ヘーゲルの「最初の人間(他人に認められるために、命を脅かすような行動すら行う)」に対して、「最後の人間(何かを犠牲にする覚悟はないが、承認を求めて衝動的に行動する)」という人間観を主張しました。

ヘーゲルが唱えた「最初の人間」は、名誉のために生存本能に反した闘争を行い、その勝敗が階級社会を生んだ(それが「歴史の始まり」だった)という議論です。

これに対して、フクヤマの「最後の人間」は、ニーチェ哲学の概念で、
最初の人間のような名誉を求めて闘争するような勇気は持たないし、命を懸けて行動するような覚悟もない。しかし、承認を求めて衝動的に行動してしまうのだ
と考えました。

例えば、現代においても天安門事件やタハリール広場、またテロ活動のように、命を投げ出して行動する人々がいます。これを認知を求める闘争と言います。

自由民主主義が優れているのは、この「認知を求める闘争」に寛容だからです。

共産主義は、この個人への認知を与えず、人々を画一的に扱います。そのため、共産主義は政治を動かすエネルギーを失い、崩壊してしまったのだ、とフクヤマは主張します。

フクヤマは、このような人間観に基づいて、歴史を、
  • 人間の「認知を求める闘争」であり、イデオロギー闘争である
  • 多様なイデオロギーが自由民主主義に向かって弁証法的に発展していったものである
と考えました。

よく考えてみてください。

なぜ戦争は、何百万人も殺戮し国土を灰にしてしまうほど苛烈になってしまうのでしょうか?また、冷戦期のように地球を何度も滅ぼせるような兵器を作ってしまうのはなぜでしょうか?それほどのエネルギーがあるのであれば、産業の発展に投資して経済成長させた方が良いとは思いませんか?

しかし、このように合理的に行動できないのが人間の本性なのだ、とフクヤマは考えました。

フクヤマは、それが人間の本性である「認知を求める闘争」だと考えます。人間は、「自分のことを知って欲しい!」という「認知」をモチベーションにして行動し、その結果として歴史が発展するということです。

この人間本性があるからこそ、人間は時に非合理的な行動をとりそれが歴史を動かしていくのです。

つまり、合理的選択ではなく、精神的なもの(=イデオロギー)が歴史を発展させ政治を動かすということです。

このように、フクヤマは歴史をイデオロギーの闘争としてとらえたのですが、さらに歴史を「自由民主主義に向かって弁証法的に発展する」ものだとも考えました。

このように言うと、

「ヘーゲルやマルクスが行った古い議論では?」

「アメリカの価値観を最高のものと考える自民族中心主義では?」

と思われるかもしれません。

しかし、フクヤマの考えはそうではありません。

上で解説したような理由から、自由民主主義は他のイデオロギーに対して客観的に優れたものだと考えられるし、事実、自由民主主義体制の国家は増えています。アメリカが太平洋戦争における日本や、冷戦におけるソ連に勝利できたのは、自由民主主義という普遍的なイデオロギーを持っていて、国民の支持を得ることができたからだ、とフクヤマは考えました。

そのため、イデオロギー闘争は自由民主主義の勝利によって終結し、イデオロギー闘争という歴史は終わったのだ、と主張したのです。

しかし、フクヤマは自由民主主義の勝利によって生まれる問題点も指摘しました。

それが以下のものです。
  • 歴史が終わることで人々は闘争する理由を失い、歴史を発展させるエネルギーを失ってしまう
  • 自由民主主義の浸透によって共同体的な価値観が崩れ、「人間の尊厳は何によって構成されているのか?」ということについて合意できなくなる
こうした『歴史の終わり』において行われたフクヤマの議論は、その後批判されるようになりました。

冷戦終結によって、確かに自由民主主義がイデオロギーとして勝利しましたが、その後大きく経済発展したのは、中国をはじめとする開発主義的・権威主義的体制のアジアの国家だったからです。

アメリカより統制的な経済体制であったり、そもそも民主主義でもない国家が大きく成長したのです。

また、『歴史の終わり』的に自由民主主義が唯一のイデオロギーだと考える思想は、アメリカの価値観を普遍的なものと考え、それを国際政治に介入する理由にするネオコン的な思想にも繋がります。

こうした理由から『歴史の終わり』は厳しく批判されたのです。

とはいえ、フクヤマの議論後には「イデオロギー闘争の終焉」に関する議論が行われ、特にフクヤマの師匠であるハンチントン『文明の衝突』は有名です。

それに、体制としては開発主義的国家が成長しましたが、それらの国家が普遍的なイデオロギーを生んでいるとはいえず、依然として自由民主主義が世界で普遍的で理想的なイデオロギーと考えられています。

この点で、フクヤマの議論はすべてが間違っていたとは言えませんし、その後の議論を生んだ点意義があるものだったのです。

ソ連崩壊後も、世界には戦争が絶えませんでした。そうして、現在はロシアがウクライナに侵攻しています。

フランシス・フクヤマ氏は、ロシアのウクライナ攻撃が始まった直後の2月26日、台湾の大学が開催したオンライン講演で力を込めて語りました。 

フランシス・フクヤマ氏

「ロシアのウクライナ侵略はリベラルな国際秩序に対する外部からの脅威であり、全世界の民主政治体制は一致団結して対抗しないとならない。なぜならこれは(民主体制)全体に対する攻撃だからだ」 

『歴史の終わり』の趣旨からすれば、今回のウクライナ出兵は予想外のものであり、民主主義の拡張と経済相互依存が世界を支配するという未来への想像を打ち砕くものでした。 

ただ、フクヤマは2015年ごろから主張を修正し、中国による科学技術を駆使した高いレベルの権威主義体制には成功のチャンスがあり、「自由主義世界にとって真の脅威になる」とも述べていました。 

フクヤマは今回の講演のなかで、台湾に対する中国の武力行使は、近年の国際環境の変化とウクライナ情勢によって「想像できない事態から想像しえる事態になった」とし、ウクライナと比べると台湾は自ら戦う決意が弱いように見えており、「もしも自らのために戦わなければ、台湾は米国が救いにくると期待することはできない」と述べました。これは台湾への叱咤激励であり、警告でもありました。 

台湾の世論調査では、6割以上の人は台湾が侵略を受けた場合は武器を取って戦うと答えています。一方、台湾社会は、世界が心配するほどには、中国の武力行使を不安視しない傾向がありました。

ウクライナ戦争で新たに焦点となった問題で、中国が攻撃した場合に米軍が台湾を支援するかどうかという長年の議論があります。これについて米国は「戦略的あいまいさ」で明確な回答を示していないです。

与党民進党で国防・外交委員会の委員を務める羅致政議員は、米政権が先週、ロシアのウクライナ侵攻直後に元政府高官のチームを台湾に派遣したことについて、米国は当てにならないという考えを払拭する狙いがあったと主張しました。

「海峡の向こう側と台湾の人々に、米国は信頼できるというメッセージを送った」と、党のポットキャストで8日に述べました。

半導体の主要生産国である台湾は、その地理的、サプライチェーンの重要性から、ウクライナとは異なることを望んでいます。

しかし、バイデン政権は繰り返しウクライナへの派兵を否定しており、台湾の一部では不安も広がっています。

かつて大陸委員会副主任を務めた台湾・中国文化大学の趙建民氏は、「台湾の人々は本当に欧米諸国が助けに来てくれると思っているのだろうか」と疑問を呈しました。

フランシス・フクヤマ氏の主張するような、「歴史の終わり」はいつか来るのかもしれません。ただ、現状はまだ歴史は終わっておらず、少なくともここ数十年くらいは来そうにもありません。

であれば、我が国日本も、それを前提として行動しなければなりません。産経新聞の記者の阿比留瑠比氏が、興味深いツイートをしていました。

これが多くの高校生の典型的な反応だとは思いたくありませんが、日本では自由主義が隅々まで行き届き、フランシス・フクヤマ氏がいう「最初の人間(他人に認められるために、命を脅かすような行動すら行う)」はいなくなり、「最後の人間(何かを犠牲にする覚悟はないが、承認を求めて衝動的に行動する)」ばかりになっているとしたら、恐ろしいことです。

彼らには、逃げた先に何が待っているのか、そうして逃げた後の自分たちの町や、学校がどうなるのか、想像もつかないのかもしれません。

ロシアがウクライナに侵攻した今日、中国、ロシア、北朝鮮などの全体主義国家に囲まれている日本は、いつ戦争に巻き込まれるかなどわかったものではありません。

ウクライナで苦戦しているロシアをみた中国は、最初に軍隊を海上輸送して、それで制圧して占領するなどという行動をとらないかもしれません。

極端なことをいうと、最初に、自分たちの役に立つと思われる、工場や、研究開発施設などは外して、そのほかの人口密集地や米軍の基地や、自衛隊の基地等に戦術核を打ち込み、さらにサリン等を撒いて、大量に人々を殺傷して、その後に軍隊を送り込むなどということをするかもしれません。

これに対して米国は反撃するでしょうか。あるいは、自らの危険を顧みずに、日本のために、中国に対して核攻撃をするでしょうか。それは、確かであると誰も確信を持っていうことはできないと思います。

そうなった場合、どこに逃げて、どこで生活の糧を得て、どこでどのような生活するというのでしょうか。どこに逃げようと、現在普通に思われているような生活が、まったく崩壊してしまうだけではなく、命の危機さえあるのです。

ドラマ『日本沈没 希望のひと』より関東沈没のシーン

昨年「日本沈没 希望の人」というテレビドラマが放映されていました。私は、Tverで見ましたが、日本の沈没することが明らかになった後に、日本政府は世界中に日本人の町をつくることを世界中の国々にお願いしていました。そうして、その中には中国もありました。

そうして、いずれの国に行くかは、自ら選べず政府の抽選になるというストーリーでした。自分が、その場にいたらどうするだろうかと考えました。そうして出した結論は、中国に行くことが決まったら、自分はそれを拒否して、日本に残るだろうとと思いました。

中国などに行けば、ウイグル人やチベット人などのジェノサイドが行われていますし、ゼロコロナ政策などで、漢族ですらもかなり迫害されているのですから、日本人である自分が行けばどうなるかなど、容易に想像がつくからです。

そのような悲惨な目にあうくらいであれば、自分はそのまま日本に残るだろうと思いました。

 そうして、このドラマは意外な方向に展開しました。日本は予想どおりに沈没したのですが、何と九州と北海道は残ったのです。

これは、ドラマの話なのですが、それにしても、自分がこのドラマと同じ状況におかれていたとしたら、私が現在住んでいるのは札幌ですから、これは大正解だったことになると、思いました。

まさに、「希望の人」になることができるのです。中国に行ってでも、当座の命を守りたいのか、日本に残って、たとえ生命を失ったとしても日本と運命をともにするかは、個々人の価値観によるでしょうが、それにしても中国に行けば何の希望も持てないでしょうし、命の危険にもさらされることになるでしょう。

しかし、日本の残ったこと、それも運良く北海道に残れば、次の希望が持てるということです。このようなことは現実の世界でもあり得ると思います。人は貧乏であれ、たとえ危険であったにしても、先に希望が持てれば、苦難や自らの死の危険をも乗り越えていくこともできますが、希望を失えばすぐに活力を失います。

日本人は自由民主主義を守るために、「最後の人間」ではなく「最初の人間」になることを選ばざるをえない局面もあるということを認識すべきと思います。そうして、現在の自由主義体制が他国によって奪われたら、どのような運命が待っているのか、想像力を養う教育も欠かせないと思います。

日本人にとっても、自由民主主義は守り抜く価値があるのです。それには、上で述べたようなことを知らなくても、想像力を働かせれば、誰にでも理解できるはずです。

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