2021年9月30日木曜日

日本と英国が初の潜水艦共同訓練、その内容とは 世良光弘氏「そうりゅう型、アスチュート級がそれぞれ参加か」―【私の論評】艦名さえ伏せるほど、潜水艦の秘匿に神経質な英国がなぜ日英共同訓練の公表を認めたか(゚д゚)!

日本と英国が初の潜水艦共同訓練、その内容とは 世良光弘氏「そうりゅう型、アスチュート級がそれぞれ参加か」



英「アスチュート型攻撃型原潜」

 海上自衛隊の潜水艦1隻と、英海軍の潜水艦1隻が14、15両日、日本周辺の海域で、共同訓練を初めて実施していた。英国はインド太平洋への関与を強めており、日本との防衛協力を進め、存在感を示す狙いがあるとみられる。日英の潜水艦訓練とは、どのような内容なのか。  「日英共同訓練について」  海自は28日、このようなプレスリリースを出した。

  日英の潜水艦が、対潜戦訓練を行ったというもので、潜水艦の艦名も、詳しい訓練海域も公表されていない。

  目的に「戦術技量の向上と、英海軍との連携の強化」とあり、日英の潜水艦共同訓練は初めてと記されていた。

  英海軍の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群は現在、太平洋に展開している。軍事的覇権拡大を進める中国を牽制(けんせい)するもので、空母打撃群は、潜水艦1隻を含む8隻で編成される。

  韓国の聯合ニュースが8月12日、同打撃群所属の原子力潜水艦が釜山に入港したと報じている。英国の攻撃型原潜「アスチュート級」とみられ、同型は潜航して高速移動でき、トマホーク巡行ミサイルなどを搭載する。

  日英潜水艦による、初の共同訓練をどうみるか。

  軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「最近は日英の連携が急速に強化されており、その一環が潜水艦による訓練だ。潜水艦は性能や行動などがトップシークレットであることから公表されていないが、日本は『そうりゅう型』、英は『アスチュート級』がそれぞれ訓練した可能性がある。英国が最新鋭の攻撃型原子力潜水艦を日本との訓練に使用していることを考えれば、米国なしでも関係が強化されているということだろう」と推察した。

【私の論評】艦名さえ伏せるほど、潜水艦の秘匿に神経質な英国がなぜ日英共同訓練の公表を認めたか(゚д゚)!

この日英潜水艦協同訓練に先立ち、海上自衛隊は、イギリス空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群「CSG21」と、2021年9月8日から翌9日にかけて日英米蘭加共同訓練「PACIFIC CROWN(パシフィッククラウン)21-4」を実施しました。

この訓練は、海上自衛隊の戦術技量の向上と、各国海軍との連携の強化を目的としたもので、関東東方の太平洋上において、海上自衛隊の護衛艦「いせ」と「いずも」が、、イギリス海軍の空母「クイーン・エリザベス」らと戦術運動や通信訓練などを行ったほか、双方の艦載機による発着艦訓練なども行われました。

太平洋上を並走する日英の大型艦。上から「いせ」「クイーン・エリザベス」「いずも」(画像:海上自衛隊)。

8月11日、韓国の釜山にイギリス海軍のアスチュート級攻撃原潜1番艦「アスチュート( Astute )」が入港しました。これは極東遠征中の英空母打撃群CSG21の一員で、空母「クイーン・エリザベス」が入港する前の下見を兼ねたもののようです。ただし、空母打撃群自体は結局韓国には未だに寄港していません。

韓国の報道では釜山に入港したのはアスチュート級攻撃原潜3番艦「アートフル( Artful )」と伝えられていますが、これは間違いです。実際に来たのは1番艦「アスチュート( Astute )」です。

韓国釜山港に入港した「アスチュート」とみられる原潜 クリックすると拡大します

アスチュート級は2番艦「アンブッシュ」以降、ベント穴の数と位置はセイル後方の3×2に変更されています。艦尾の3つの穴は無くなりました。

 1番艦アスチュート・・・右舷:4穴×2+3穴、左舷:3穴×2+3穴。
 2番艦以降・・・右舷:3穴×2、左舷:3穴×2。

3番艦「アートフル」も右舷側の穴はセイル後方に3×2のみです。つまり釜山に来ているのはアートフルではありません。興味のあるかたは、上の写真を拡大してご覧ください。ベント穴を確認できます。

イギリス海軍はCSG21に随伴している攻撃原潜の個艦名を遠征計画当初から現在に至るまで未だに発表していません。このため韓国側にも正確な艦名の公表をしないように協力を頼んで、報道には欺瞞情報を発表させている可能性があります。

はじめての日英潜水艦共同訓練に関する海自のプレスリリースにも具体的な艦名は公表されていません。これは、おそらく英国からの要望により伏せているでしょう。

潜水艦は秘匿性が重要になるので、できるだけ情報を知られたくないのでしょう。ただしHMSアスチュートは同型艦の中でも特定しやすいので隠し続ける意味はあまり無く、そろそろ正しい個艦名を公表しても何ら差し支えはない思います。ほとんどの軍事専門家にとっては、周知の事実だと思います。

「PACIFIC CROWN(パシフィッククラウン)21-4」では、日英の潜水艦も当然参加していたと考えられます。その後に、潜水艦の共同訓練を行い、それを公表したのはなぜなのでしょうか。

それは、日英ともに潜水艦が空母打撃群とは別の単独行動をとることもあることを周知させるという意味があったと思います。しかも、単独行動する日英の潜水艦が協同行動をとることもあると周知させるという意味もあるでしょう。


英軍は、潜水艦名まで伏せてその秘匿性に神経質であるにもかかわらず、潜水艦が空母打撃群とは別に単独行動をとること、そうして日英が協同することを周知するする、その意味は何なのでしょうか。

それは、無論中国に対する牽制です。日本の対潜哨戒能力、対潜戦闘力は米国とならび世界トツプ水準です。英国は、日米には及ばないものの、中国に比較すれば、かなりハイレベルです。

そうして、日本の潜水艦は、ステルス性が高く中国側には発見できません。英国の原潜はステルス性には難はありますが、攻撃力にすぐれています。その日英潜水艦が協同して、中国と海戦になれば、中国は日英には全く及ばないことを意味します。

中国が、日英に海戦を挑んだにしても、潜水艦を含めた中国艦艇はことごとく撃沈され、航空機も撃墜されることになります。そうして、日英潜水艦にはほとんど損害は出ないでしょう。そのような大きな懸念があるので、中国海軍は日英海軍と直接戦うことは忌避するでしょう。

そのことを周知させ、中国を強く牽制するという意味があったものと考えられます。

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2021年9月29日水曜日

本文わずか“2ページ”立民の残念なアベノミクス検証 雇用創出の実績を分析できず、支持母体の労働者に響くのか ―【私の論評】安倍・菅両氏の「お土産」と立憲民主党の体たらくで、新政権は安定(゚д゚)!

本文わずか“2ページ”立民の残念なアベノミクス検証 雇用創出の実績を分析できず、支持母体の労働者に響くのか 

高橋洋一 日本の解き方

立憲民主党枝野代表

 立憲民主党がアベノミクスの検証結果をとりまとめ、「お金持ちをさらに大金持ちに、強い者をさらに強くした」「大規模な金融緩和で株価は上昇したが、消費増には結びつかず、物価安定目標2%も達成していない」「格差や貧困の問題の改善にはつながらなかった」などとして、枝野幸男代表は「アベノミクスは間違いなく失敗だった」と強調した。

 報告書は同党のウェブサイトで見ることができるが、本文2ページの極めて簡素なものだ。政治的には、自民党総裁選に世間の関心が集まる中で、自党の存在感を示すためのものなので、アベノミクスは失敗だったという結論ありきだ。しかし、その分析や視点は恐ろしくむなしい。

 まず、経済政策を評価する場合、特にマクロ経済政策では、第1に雇用の確保が重要だ。第2に、その上で所得が上がればいい。要するに、雇用量と給与の2つを見なくてはいけない。

 雇用量は総務省の就業者数や失業率など、給与は厚生労働省の名目賃金指数や実質賃金指数などの統計で確認できる。

 立民は労働者に支持される政党であるはずだが、まず雇用、次に所得という観点を忘れている。前身である民主党政権と第2次安倍晋三政権のパフォーマンスを比較してみよう。まず就業者数でいえば、民主党政権時代に40万人程度減少したが、安倍政権では390万人程度増加しており圧勝だ。ちなみに、安倍政権は過去の政権の中でも雇用創出のパフォーマンスはほぼトップである。

 もっとも、雇用が増加してもそれは非正規ではないかという批判もある。雇用が増えることが先決だと考えれば正規でも非正規でもどちらでもいいのだが、念のために比較しておこう。

 民主党時代、正規雇用は50万人程度減少し、非正規雇用は100万人程度増加した。安倍政権では正規で200万人程度、非正規で220万人程度増加しており、この点でも安倍政権の圧勝であり、非正規ばかりが増加したという指摘は完全な的外れだ。

 次に、所得について比較しよう。名目賃金は民主党時代2・3ポイント低下したが、安倍政権では2・9ポイント増加した。実質賃金では民主党時代に1・3ポイント低下し、安倍政権では4・5ポイント低下している。

 立民は、アベノミクスで実質賃金が低下したというが、民主党時代も低下している。一方、名目賃金は民主党政権で低下したが、安倍政権では上昇した。所得についても、安倍政権の方が民主党政権のときよりマシだろう。

 この程度の検証力しかないと、立民の政権運営能力を疑ってしまうし、そもそも支持母体の労働者にも響かないだろう。

 これでは、11月にも予定される衆院選での政権交代はやはり無理ではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍・菅両氏の「お土産」と立憲民主党の体たらくで、新政権は安定(゚д゚)!

アベノミクスによる雇用増は、以下のグラフをご覧いただければ、一目瞭然です。


このような成果がなぜ得られているかといえば、安倍政権の時には、結局増税を2回も実施してしまったにもかかわらず、日銀はイールド・カーブ・コントロールにより、緩和を手控えながらも緩和姿勢を崩していないからです。

さらに、上のグラフでみても、わかるとおりコロナ感染症が経済に悪影響を与えても、日本では雇用が悪化しなかったのは、以前のこのブログにも掲載したように、日本には雇用調整助成金があるからです。

この制度は、労働者の失業防止のために事業主に給付するものです。類似制度は世界ではそれほど多くないが、似た制度があるドイツも、ピーク時の失業率上昇は0・7ポイントと他国と比べて抑えられています。

日本の失業率はコロナ前の2020年2月に2・4%でしたが、その後上昇し、10月に3・1%とピークになり、21年7月は2・8%まで低下しました。米国は20年2月に3・5%でしたが、4月に14・8%とピークで、21年7月は5・4%。EUは20年3月が6・3%でしたが、8月に7・7%、21年7月は6・9%となりました。

それぞれ、コロナ前とコロナ後のピークの差は日本が0・7ポイント、米国が11・3ポイント、EUが1・4ポイントでした。コロナ前と直近の差は日本が0・4ポイント、米国が1・9ポイント、EUは0・6ポイントです。

これらの数字から、コロナ禍による失業率の上昇を最も抑えたのが日本であることがわかります。



ご存知のように、本日自民党総裁選においては、岸田氏が勝利しました。

これまでの歴史を見ると長期政権の後は短命政権が続いています。ただ岸田政権には「貯金」と「お土産」があります。

「貯金」は安倍元首相が残した「雇用の改善」と「国政選挙6連勝」です。このおかげで衆参ともに自公で過半数をがっちり確保しており、一度の選挙で多少負けても毎年の予算は通ります。

だから短命になりにくいでしょう。政権が長く続くと成果も出ます。

「お土産」は退陣する菅首相からもあり、ワクチン接種を強力に進めたおかげでコロナは終息しつつありますし、先にも述べたように、コロナで雇用が激減することもなく、菅政権下で東京オリパラも開催してもオリパラが感染を加速することもなく終えたので、国内では大きな懸案事項もありません。安倍・菅路線を継承すれば、大やけどすることもないでしょう。

そうして、今後自民党はさらにコロナ対策のために、補正予算を組むことになるでしょう。それは、様々な日程を考えると、衆院選後になるでしょう。そうして、日本経済は復活するでしょう。 つまりこれだけの貯金とお土産があれば、当面首相は誰でも務まるかもしれません。

菅退陣で政党支持率が上がり衆院選で大負けすることもないでしょう。

なぜなら、上の記事にもあるように、最大野党の立憲民主党の体たらくがあるからです。今年は、自民党の総裁選ですっかり影が薄くなったのですが、昨年も同じでした。

昨年立憲民主党はどうだったかといえば、立憲民主党国民民主党などが合流してつくる新党の代表選が7日、告示され、国民の泉健太政調会長(46)と、立憲の枝野幸男代表(56)が立候補を届け出ましたが、10日に投開票され、枝野氏が代表に選出されました。

ただ、ほぼ同時期に自民党の総裁選も行わており、野党の代表戦は影の薄いものになりました。

今年も、昨年と同様に総裁選によって立憲民主党などの野党は影の薄い状況です。

昨年に続き、今年も総裁選で、すっかり野党は影が薄くなりました。

立憲民主党の安住淳国対委員長は29日、新たな首相を選出する臨時国会に関し、予算委員会の開催を含む十分な質疑時間を確保するよう与党に要求すると強調しました。国会内で記者団に「理不尽なことをすれば(臨時国会の)初日に内閣不信任決議案提出もあり得る。徹底抗戦する」と牽制しました。

同時に「自民党総裁選で言っていたことは本当に実現するのか。土日を使ってでも予算委を提案したい。ちゃんと質疑した上で衆院選で国民の信を仰ぐべきだ」と指摘したそうです。

これに先立ち安住氏は、共産、国民民主両党の国対委員長と国会内で会談し、予算委開催を求める方針を改めて確認したそうです。

立憲民主党には、理念も信念も何もないようです。ただただ、自分が議員バッヂをつけて国会議員でいられさえすればそれでいいようです。そのためだったらイデオロギーもポリシーもかなぐり捨てて、共産党であろうと手を組むというような姿勢であれば、次の総選挙でも大敗北は確定でしょう。

まさに、安倍・菅両氏の「お土産」と立憲民主党の体たらくで、新政権は安定することでしょう。このようなことを見越してか、菅総理が総裁不出馬を公表してから、市場はこれを好感して、株価が上がり始めました。それを見越せずに、いつもと同じ対応しかできない立憲民主党には明日はないと思います。

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2021年9月28日火曜日

対中政策として選択すべきバイデン政権のTPP復帰―【私の論評】TPPは最早台中対立の最前線!米英も早期に参戦すべき(゚д゚)!

対中政策として選択すべきバイデン政権のTPP復帰

岡崎研究所

 バイデン大統領は、政権発足以来、トランプ政権が離脱してきた様々な国際合意への復帰を、順次果たしてきた。WHO(世界保健機関)や気候変動に関わるパリ協定がそうである。

 現在、イランとの核合意も再生させようと模索している。しかし、TPP(環太平洋連携協定) への復帰を予定しているとは聞かない。TPPはオバマ政権下で、厳しい交渉の末、12か国で合意したものだが、トランプ政権下で米国が離脱した後、残り11か国でCPTPP (環太平洋連携に関する包括的・先進的協定)として発足したものである。

 11か国とは、豪州、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレイシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール及びベトナムである。これらアジア・太平洋の11か国で、世界のGDPの14%を占めていると言われる。EU(欧州連合)を離脱した英国は、CPTPPへの加盟を期待し、11か国と交渉を開始した。


 TPPに関する米国の姿勢に関しては、9月10日付のForeign Affairsにて、アジア・ソサイエティ政策研究所副所長のウェンディ・カトラー(元USTR代表補)が、バイデン政権は中国との競争を外交政策の最大の課題に掲げているが、それなら TPP(CPTPP)に復帰すべきであると論じている。

 カトラーの論説には全面的に賛成である。バイデン政権はCPTPPに復帰すべきである。この論説はオバマ政権でTPPの交渉責任者を務めた人物によるものであるが、国内向けの観測気球という側面を持つものかも知れない。

 バイデン大統領は、選挙戦中から貿易協定には消極的で、焦点は国内にあるとして、まずは国内に投資し世界経済で成功する用意が出来るまでは新たな貿易協定は一切結ばないと主張していた。そこまで言い張ることに合理的根拠があるようには思えなかったが、CPTPPに回帰する様子は微塵もなかった。

 しかし、バイデンはインド・太平洋で中国と競争することを外交政策の最優先に位置付けており、そうであれば、カトラーの論説が的確に指摘するように、CPTPPに回帰することは避けて通れないはずである。

中国の動きには警戒を

 カトラーの論説は、米中貿易戦争とコロナの感染拡大が、中国に供給源を過度に頼ることのリスクを指摘して、米国がCPTPPのメンバーであれば、より強靭で信頼出来るサプライチェーンを構築する基礎として使えることを論じているが、バイデンはCPTPPを単に国内の製造業や雇用との関連ではなく、より広い戦略的な観点で国民に説明が可能ではないかと思われる。

 そんな折、カトラーの論説が発表されて1週間も経たない9月16日、中国の商務省は、中国がCPTPPに加盟申請したことを明らかにした。CPTPPが合意された本来の目的の一つは、巨大化する中国経済に対抗する意味合いもあった。CPTPPは、そのルールを守る限りいかなる国を排除するものではない。が、容易に中国がCPTPPのルールを守りうるとは思えない。

 バイデン政権は注意が必要である。習近平の発言はCPTPPに台湾が参加することを妨害する意味合いが大きいのではないかと思うが、いずれにしても、中国のCPTPPへの参加には慎重な検討が必要であろうと思われる。

【私の論評】TPPは最早台中対立の最前線!米英も早期に参戦すべき(゚д゚)!

日本やオーストラリアなど環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の加盟11カ国は28日、英国の加入をめぐる第1回の作業部会をオンライン形式で開いた。日本が作業部会の議長を務め、英国の加入交渉が本格化します。

英国のTPP加入をめぐる第1回の作業部会の画面

英国は2020年1月に欧州連合(EU)を離脱し、今年2月にTPP加入を申請。6月に交渉入りが決まった。作業部会は、英国が加入に向けてこれまで行ってきた取り組みや、加入の際に改正が必要な国内法令などが議題。18年12月のTPP発効以来、新規加入交渉は初めてとなります。
TPPに今月、加入申請した中国と台湾の話題は出ませんでし。ただ、台湾が法改正を進めるなど準備を進めてきた一方、中国については「都合の良い例外を設けようとする」(経済官庁幹部)との懸念もあります。政府関係者は英国との交渉で「(ルール変更を認めない)先例ができる」と話しています。

中国の加盟に向けた課題は多いです。特に障害となりそうなのがデータを巡るルールです。TPPはデータ流通の透明性や公平性を確保する原則を定めています。

これは既存の多くのFTAが盛り込めなかったもので、専門家の間では「TPPスタンダード」と呼ばれています。中国は、企業や個人による国境を越えた自由なデータの流通には否定的です。データ安全法(データセキュリティー法)などで統制を強化する同国は「RCEPレベルが限界だ」との指摘があります。

2つ目は強制労働の撤廃や、団体交渉権の承認など、労働に関するルールです。ウイグル族への人権侵害が国際世論の反発を招く中で、中国はTPPの加盟交渉で難しい立場に置かれることになります。

3つ目として、国有企業への補助金や政府調達の手法など、中国国内の制度改革が必要なテーマも難しい分野です。TPPは競争をゆがめるとして国有企業を補助金などで優遇することを禁じています。


習近平指導部が進めてきた国有企業の増強を続けるなら、交渉はつまずくことになります。TPPは政府調達でも国内外企業の差別を原則的になくすよう求めますが、中国は安全保障を理由に外資系の排除を進めてきた経緯があります。

また、中国が加盟するには全加盟国の支持が必要です。マレーシア、シンガポールは加盟申請に歓迎の意向ですが、日本・豪州は慎重な姿勢を見せています。メキシコもTPPは「高い基準を順守するすべての国に門戸は開かれている」と指摘。国有企業への補助などの中国の経済ルールが加盟に課題となることを暗に示唆しました。

一方台湾の蔡英文総統は、2016年の就任時からTPP加盟を悲願としてきました。台湾経済は中国に大きく依存し、輸出は4割強を占める。統一圧力を強める中国からの脱却を急ぐには、TPPに加盟し中国への依存度を引き下げる必要があると判断しました。その中国に加盟申請で大きく遅れれば、加盟が困難になるとみて申請手続きを急いだようです。

台湾に関しては、中国と比較すればはるかに民主化・自由化等が進んでおり、中国よりはかなりTPPに加入しやすいです。

ところが、台湾悲願の加盟にも難題があります。中国大陸と台湾は1つの国に属するという「一つの中国」を唱える中国の圧力です。中国は自身がTPPに加盟できなくても、台湾加盟を阻止するために、加盟国に対する働きかけを強める可能性が高いです。TPP加盟国には、中国と強い貿易関係で結ばれる南米のチリやペルーや東南アジアの国々が多く含まれています。

中国外務省の趙立堅副報道局長は23日の記者会見で、台湾のTPPへの加盟申請に強く反発しました。「台湾がいかなる公的な性質を帯びた協定や組織に参加することにも断固反対する」と述べました。米国がTPPから離脱した現在、中国の圧力を受けながら台湾の加盟を強力に後押しできる国は乏しいのが実情です。

日本との関係でも課題がある。台湾は福島県など5県の農産品の輸入を全面禁止にしてきました。今でも5県産の農産品の輸入に対する市民の反対が根強いです。TPPへの加盟のために輸入解禁を強行すれば、反対運動が起こって蔡英文政権運営を揺るがしかねない事情という事情があります。ただ、これは台湾の国内問題であり、日本が台湾にワクチンを供給したこともあり、

台湾当局は、2011年の福島第一原発の事故以降、福島県などの食品の輸入規制を継続して行っていて、日本政府は「非科学的な対応を外してほしい」と解除を訴えていました。

台湾当局は23日の会見で、「TPPの主席である日本と台湾の間には緊密な連携がある。TPPへの申請案を提出した後、国際ルールに従い日本政府と交渉する」と発言しました。

 福島県産品の食品の輸入規制を巡っては、2018年に台湾で住民投票が行われ、食品の輸入を禁止することが決まっていました。 

台湾の中華経済研究院WTO及びRTAセンターの李淳副執行長は、「中国の加入申請が台湾の参加申請のブースターになったのは確かで、最大の課題は日本の食品輸入問題。すでに米国、欧州とも科学的に福島の産品には危険性がないことを認めており、台湾が日本にノーと言い続けることは難しい」と述べています。

茂木敏充外務大臣は、台湾の加入申請について「台湾は我が国にとって基本的価値を共有して、密接な経済関係を有する極めて重要なパートナーで、台湾の加入申請をまずは歓迎したい。他の参加国ともよく相談する必要がありますが、我が国としては、戦略的な観点や国民の理解も踏まえながら、対応していきたい」と語りました。

茂木敏充外務大臣

茂木外務大臣の「戦略的な観点」という言葉は重要です。その含意は、対中包囲網の強化という大所高所に立って、台湾が食品輸入問題の解決に前向きな取り組みを見せてくれれば、即時解除の措置を取らなくても、日本は台湾の加入を応援できるとの姿勢を示したものと思われます。

一方、米国のネッド・プライス国務省報道官は「米国は会員ではないが」と断りつつ、「台湾は民主主義を信奉し、WTOの責任あるメンバーでもある。中国は経済力で他国を強制しており加盟での評価に影響するだろう」とコメントし、台湾の加入に肩入れし、中国の加入を歓迎しない姿勢をほのめかしました。

TPPがにわかに中台対立の舞台となることは、加盟国にとっても米国にとっても想定外のことだでしょう。米国は当分TPPへの復帰には慎重な姿勢を崩していないですが、中台の同時申請に加盟国がそれぞれどう対応するのかに注目することでしょう。

米中新冷戦のもと、存在価値をたかめたTPP体制の真価が問われるタイミングが突如やってきた形で、この難題をどう処理するか、各国の連帯や日本の外交力が問われる局面になりますし、中国との競争を外交政策の最大の課題に掲げているバイデン政権もこれに注目するのは当然のことです。

中国のCPTPPへの参加は元々無理筋であり、台湾を牽制するために、TPP加入申請をしたとも考えられますが、TPPの加入、加入拒否などは、加盟国の合意がないとできませんが、TPPの加盟国に対して圧力を加えて、加入をしようと試みるかもしれません。

このブログでは何度が解説したように、一般に流布さているような中国による台湾の武力侵攻はありえず、中国が軍事的に台湾に侵攻することは、今後数十年間は不可能です。それは中国自身が良く知っていることでしょう。であれば、中国は対台湾戦略として、軍事力による侵攻ではなく、軍事力以外の様々な方法を駆使することを考えるでしょう。TPPはその一環として用いられる可能性があります。

TPPは元々オバマ政権下で、厳しい交渉の末、12か国で合意したものです。そうして、その大きな目的一つは中国囲い込みです。それが、中国に加入されてしまっては本末転倒になりかねないわけです。

やはりバイデン政権は、中国と対峙するためにもTPPに早期復帰すべきです。現在日本は、自民党総裁選の真っ最中ですが、新総裁、つまり日本の新総理大臣は、バイデン政権のTPP早期復帰を説得すべきです。これが、新総理大臣の最大の外交課題になるでしょう。

米国は、TPPに復帰しようとすれば、交渉はすでにすんでいるので、すぐに加入できるはずです。英国も中国よりは、遥かに加入しやすいし、中国の加入手続きは困難を極めることでしょう。

英米が加盟すれば、TPPとしては、中国は加入できないですが、台湾は加入できますし、中国が香港の「一国二制度」を復活すれば、香港の加入も可能になると主張すべきでしょう。実際、これは可能だと思います。しかし、中国が体制も変えない、香港の「一国二制度」も復活しないというのなら、検討の余地なしとして、門前払いされるのは当然です。

米国が中国に仕掛けた間接的な戦争に、中国が外国人・企業への制裁を行うことで対抗措置を自国内で実行すれば、国際社会から批判される可能性があります。さらに外国人を拘束し自由を奪えば、国際社会からの軍事的な先制攻撃を正当化させる可能性が有ります。

英国には、香港人の救出を目的とした戦争を行う大義名分が有ります。しかも中国は、英国と交わした一国二制度を一方的に破棄しました。中国は英国との約束を破り、しかも香港人の人権を弾圧。これらは英国を怒らせるには十分で、英国が香港・澳門奪還作戦を行えば、正義は英国側にあります。

TPP交渉は、こうした米英の立場も活用したうえで、中国に対して有利に展開することが可能です。「一国二制度」の復活をつきつけられた、中国の取るべき道は「一国二制度」を復活させることを認めるか、認めないでTPPに加入することをあきらめるしかなくなります。

このような戦略を実行すれば、TPP交渉は、台中対立の最前線から、米英を含むTPP加盟諸国と中国との対立の最前線になるのです。そうして、これはTPP側が勝利する確立がかなり高いと思われます。


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習氏、TPP参加「積極的に検討」 APEC首脳会議―【私の論評】習近平の魂胆は、TPPを乗っ取って中国ルールにすること(゚д゚)!


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2021年9月27日月曜日

【続・「脱炭素」は嘘だらけ】「脱炭素は世界の潮流」は大嘘 “有言不実行”が世界の標準 米はCO2ほとんど減らさず…中国、石炭火力発電所は日本の20倍保有―【私の論評】客観的なデータは「気候変動」のフェイクに踊るべきでないことを示している(゚д゚)!

【続・「脱炭素」は嘘だらけ】「脱炭素は世界の潮流」は大嘘 “有言不実行”が世界の標準 米はCO2ほとんど減らさず…中国、石炭火力発電所は日本の20倍保有

バイデン大統領

 日本の大新聞とテレビを見ていると、「『脱炭素』は世界の潮流」で、日本は大変遅れていることになっている。それで「脱炭素」政策を説く政治家がいる。

 いわく、「日本は太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が遅れている」「ハイブリッド自動車は時代遅れで、もう世界は電気自動車だ」「海外はみんなCO2(二酸化炭素)を排出する火力発電など止めようとしているのに、日本だけが続けている」「金融界は環境金融へと動いている」「このままでは、だれも日本へ投資してくれない」「CO2を排出して製造した日本製品は世界で売れなくなる」…。

 よくもまあ、こんな大嘘を毎日毎日報道し続けるものだ。

 実態はどうかといえば、「脱炭素」は世界の潮流などではない。

 確かに、先進国は軒並み「2050年までにCO2をゼロにする」といっている。また、「30年までにCO2をおおむね半分にする」とも言っている。だが、言っているだけで、実態は全然違う。

 ジョー・バイデン米政権は「脱炭素」に熱心だが、これは米国の総意からは程遠い。国の半分を占める共和党は、そもそも「気候危機説など嘘だ」と知っていて、「脱炭素など無用だ」とする。ドナルド・トランプ前大統領だけが例外なのではない。

 それに米国は世界最大の産油国であり、産ガス国である。石炭埋蔵量も世界一で、日本の消費量に匹敵するぐらい大量に輸出している。ちなみに日本にも輸出している。エネルギーを有する州は多く、当然、その産業を守る。だから、環境税やCO2規制は議会を通らない。実は、米国はCO2をほとんど減らさない。

 中国は、日本の10倍のCO2を出しており、今後5年であと日本1つ分さらにCO2を増やすと5カ年計画にはっきり書いてある。石炭火力発電所についても日本の20倍も保有していて、毎年日本1つ分以上増やしている。

 のみならず、中国は経済圏構想「一帯一路」構想の下、世界中で石炭火力発電所の建設を手掛けている。合計すると、日本全体の石炭火力発電所よりも多い。「30年を過ぎたらCO2を減らす」とか、「60年にはCO2をゼロにする」などと言っているが、新型コロナでも人権でも嘘をつき続ける国を、どうして信用できるだろうか。

 環境運動家が大好きな欧州はどうか。

 電気自動車は高い補助金などの優遇措置で強引に導入されているけれど、まだまだ金持ちのおもちゃだ。ドイツは石炭はもとより、原子力も風力もバイオテクノロジーも、あらゆる技術を「環境に悪い」と言って否定した結果、今頃になってロシア頼みでガスパイプラインを引いている。あれCO2減らすじゃなかったの?

 「脱炭素」については、「有言不実行」が世界の標準だ。諸君、だまされて大損しない様、気を付けよう。

 ■杉山大志(すぎやま・たいし) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。1969年、北海道生まれ。東京大学理学部物理学科卒、同大学院物理工学修士。電力中央研究所、国際応用システム解析研究所などを経て現職。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、産業構造審議会、省エネルギー基準部会、NEDO技術委員等のメンバーを務める。産経新聞「正論」欄執筆メンバー。著書に『「脱炭素」は嘘だらけ』(産経新聞出版)、『地球温暖化のファクトフルネス』(アマゾン)など。

【私の論評】客観的なデータは「気候変動」のフェイクに踊るべきでないことを示している(゚д゚)!

地球温暖化のせいで台風などの災害が激甚化しており、地球は気候危機にある。破局を避けるには2050年にCO2(二酸化炭素)排出をゼロ、つまり『脱炭素』しなければならない」という言説が流布されています。

だが、この「気候危機説」はフェイクに過ぎないです。莫大な費用をかけて「脱炭素」をするほどの科学的根拠など、どこにもありません。

最近の例では、昨年はコロナ禍もあり多くの国々で多くの産業がストップしました。その結果CO2の排出がかなり削減されました。これについては、以前このブログに述べています。その記事のリンクを以下に掲載します。
水素エンジン車レース完走 世界初、量産に向けトヨタ―【私の論評】昨年は第二次世界大戦後、最もCO2排出量が減ったが夏は暑く、世界中で異常気象が発生していた(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を引用します。
新型コロナウイルスの感染症COVID-19のパンデミックに対する世界的な取り組みにより、世界の2020年の年間の二酸化炭素(CO2)排出量は第2次世界大戦以来で最も減少したことが明らかになっています。研究結果は科学ジャーナル「Earth System Science Data」に昨年12月11日に掲載されました。

この研究によると、今年のCO2排出量は7%減少したとされています。最も大きく減少したのはフランスとイギリスで、感染の第2波に対応するための厳格な経済活動の停止が主な要因だそうです。 
世界の炭素収支を報告している「グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)」によると、今年の炭素排出量は24億トン減少したそうです。
一方で、2009年の世界的な景気後退の最中の減少量はわずか5億トン。第2次世界大戦末期の減少量は10億トン弱だったそうです。昨年と今年あたりには、温暖化に関しては、どのようなことがおこっていたのか、あるいはおこるのか、注目すべきかもしれません。とにかくCO2を減らすことが何やら、至上命題のようになっていますが、実際にCO2が減っているのですから、これが環境に良い影響を及ぼしたのか、あるいは悪い影響を及ぼしたのかを精査すべきと思います。

以下に、昨年の世界のGDPの推移を掲載します。1991年以来の落ち込みであり、しかも最も急激に落ちていることがわかります。


 気象庁は昨年に昨夏を「東日本は観測史上、最も暑い夏」と認定しています。最高気温が40度に達する観測点が続出し、西日本も記録的暑さに。熱中症とみられる症状での救急搬送、死亡者が相次ぎ、2020年夏の東京五輪・パラリンピック開催に影を落としたとしています。

2020年の世界と日本の平均気温が、観測が始まった19世紀末以降、最高となる見込みであることが今年1月の気象庁の調査で分かっています。気温上昇に伴い、各地で30年に一度の規模の高温や大雨などが頻発。国内も九州で豪雨災害が発生するなどしました。

これには、地球温暖化も寄与したとみられ、2020年は新型コロナウイルスだけでなく、気象も人類に牙を向いた年として記憶されそうだとしています。一方、今年はこうした傾向がやや緩和されるとの見方もあるそうです。

今年は皆さんもご存知のように、桜の開花がかなり早まりました、これも温暖化の影響といえるのでしょうか。ワクチン接種が進んだとはいえ、4月はまだコロナの流行は深刻で、CO2もどちらかといえば、通常の年よりは排出量が少なめだったと思います。
昨年はCO2排出量が7%減少していても、気温が上昇したり、異常気象が起こっているわけですから、あまりCO2など関係ないようにも見えます。
そのほか、「気象変動」がフェイクであるとするに足る統計もあります。これは公開されている統計で確認できます。

実は台風は増えても強くなってもいません。台風の発生数は年間25個程度で一定しています。台風に幾つか等級がある中で、「強い」以上に分類される台風の発生数は15個程度と横ばいで増加傾向はありません。

猛暑は都市熱や自然変動によるもので、温暖化のせいではありません。地球温暖化によって気温が上昇したといっても江戸時代と比べて0・8度に過ぎないのです。過去30年間当たりならば0・2度とわずかで、感じることすら不可能です。

豪雨は観測データでは増えていません。理論的には過去30年間に0・2度の気温上昇で雨量が増えた可能性はありますが、それでもせいぜい1%です。よって豪雨も温暖化のせいではありません。

観測データを見ると、そもそも災害の激甚化など起きていないことが分かります。ましてや、地球温暖化による災害の激甚化などは皆無であったことが分かります。過去においても、激甚災害があったことは、多くの人が知っていますし、記録をみれば誰でも確認できます。

温暖化によって大きな被害が出るという数値モデルによる予測はあります。ところが、これには問題が幾つもあります。モデルはろくに過去を再現することすらできないのです。

それにも関わらず、モデルを用いた被害予測が流布されていて、気候危機説の中核を成しているのです。

実際のところ、過去になされた不吉な予測は外れ続けてきました。

温暖化で海氷が減って絶滅すると騒がれたシロクマはむしろ増えています。人が射殺せず保護するようになったからです。

温暖化による海面上昇で沈没して無くなると言われたサンゴ礁の島々はむしろ拡大しています。サンゴは生き物なので海面が上昇してもそれに追随からです。

CO2の濃度は江戸時代に比べるとすでに1・5倍になりました。その間、地球の気温は0・8度上がりました。しかし、観測データで見れば何の災害も増えていません。

今後も感じることができないぐらい緩やかな温暖化は続くかもしれないです。しかし、破局が訪れる気配はありません。「気候変動」なるものは、どこにも存在しません。

では、なぜフェイクが蔓延したのでしょうか。政府機関、国際機関、御用学者、NGO、メディアが「不都合なデータ」を無視し、異論を封殺し、プロパガンダを繰り返し、利権を伸長した結果です。

国民は、気候危機説にとって「不都合なデータ」を隠蔽されて、「脱炭素」という、莫大な経済負担を伴う無謀な目標に駆り立てられています。このようなことが許されて良いはずはありません。

ジョー・バイデン米政権は「脱炭素」に熱心ですが、その背後には、小型原発の開発と、それを輸出することがあるのではないかと思います。さらに、それは中国の小型原発開発を牽制するという意味合いもあるようです。

「気象変動」に関しては、様々な利権、様々な政策、様々な人々や団体の思惑などが複雑に絡み合い、何が真実なのか単純には理解できない状況にあるということを私達は理解すべきです。

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2021年9月26日日曜日

台湾・最大野党次期党首に習近平氏から祝電 92年合意や「統一」言及―【私の論評】国民党が原点回帰し反中姿勢に戻れば、米国よりまともな二大政党制が、台湾に根付くかもしれない(゚д゚)!

台湾・最大野党次期党首に習近平氏から祝電 92年合意や「統一」言及

習近平氏(右)と握手する朱立倫氏=2015年、北京

最大野党・国民党の新主席(党首)を決める選挙に当選した元職の朱立倫氏に26日、中国共産党の習近平総書記から祝電が送られた。習氏は「一つの中国」を前提にした「92年コンセンサス」と「台湾独立反対」に言及した上で、「国家の統一」を共に目指す考えを示した。朱氏はこれに対し、「共通点を追い求めながら、互いの違いを尊重しましょう」と呼び掛けた。

対中融和路線を打ち出してきた国民党。党勢の立て直しを目指し、92年コンセンサスの見直しに前向きな姿勢を示していた若手の江啓臣氏が昨年、党主席に選出されたが、慣例となっていた習氏からの祝電はなく、今回、党首に返り咲いた朱氏に祝電が寄せられるか注目された。

朱氏は習氏からの祝電に謝意を示し、与党・民進党が「反中」政策を取ったことで両岸(台湾と中国)の関係悪化を招いたと指摘。92年コンセンサスなどにのっとり、互いの違いを尊重しながら関係の深化を望む考えを示した。

民進党は報道資料で、民主主義国家の政党が独裁国家の指導者からの祝電を期待することはないとし、待ち遠しく思うのは国民党だけだと指摘。また、「統一」に言及した習氏に対し、台湾の主流の民意のために声を上げる勇気がないことは遺憾だとの考えを示した。

(劉冠廷、葉素萍/編集:楊千慧)

【私の論評】国民党が原点回帰し反中姿勢に戻れば、米国よりまともな二大政党制が、台湾に根付くかもしれない(゚д゚)!

昨年1月の総統選挙において、蔡英文総統は野党国民党候補(韓国瑜・高雄市長)に大差をつけて勝利しました。敗北した国民党は、総統選をめぐる過程やその後の経緯を見ても、内部分裂に近い様相を呈していました。

このような状況の中で、昨年3月7日行われた国民党内部の主席(党首)選において、それまで、台湾の政治の世界では、ほぼ無名に近かった江啓臣が選出されました。(江は馬英九政権下で行政院報道官を務めた。立法委員)。

江啓臣氏

台湾内部では、国民党は中国に接近しすぎているとの印象が強く、特に多くの若者たちの間でそのように受け止められているというのが昨年1月の総統選挙の結果が示すところでした。国民党としては、そのような台湾の世論に即応した形のなんらかの「改革」を迫られていました。江については、国民党の「改革派」であると見る向きもあり、勝利宣言のなかで「92年コンセンサス」を放棄することを示唆したとの指摘がありました。

もともと「92年コンセンサス」(「92共識」)という用語は、とくに国民党・馬英九政権下で、中台関係を律するものとして台湾側が使った曖昧な同床異夢を意味する用語です。「一つの中国、各自表述」と訳され、台湾にとっては「一つの中国」とは、「中華民国」を意味します。これに対し、中国のいう「一つの中国」の原則とは、中華人民共和国が唯一の合法政府であり、台湾はあくまでもその領土の不可分に一部にすぎない、ということを意味します。

馬英九総統は2015年5月7日、台湾海峡両岸関係は「92年コンセンサス」と合致してこそ発展すると重ねて強調

それまで約15年間にわたり、中国共産党総書記は、国民党党首が選出されるたびに祝電を発出していたのですが、当時、「92年コンセンサス」の放棄を示唆したとも受け取れる江の選出に当たり、中国共産党ははじめて祝電を出さなかったのです。

それに対し、江は声明を出し、自分としては「中国の意向を尊重する」と述べつつ、祝電が来なかったことは「台湾の国民党の改革に特段の影響を与えない」と述べました。その後、中国国務院台湾事務弁公室のスポークスマンは、江が「92年コンセンサス」を守り、台湾独立反対の立場を堅持することを望む旨の発言をしました。

中国から見ると民進党のみならず、国民党まで中国からさらに離れていくのではないかとの警戒感を強め、江に対し強硬な姿勢を示したのでしょう。中国としては、国民の目を少しでも他にそらせるために台湾に対してより強硬な方策を取ろうとする可能性があるので、今後とも要注意です。

中国共産党に中国大陸から追い出された国民党はなぜ、親中なのか、多くの人は理解に苦しむところだと思います。

戦後の国共内戦で毛沢東率いる中国共産党に敗れて1949年に台湾へ移った蒋介石は反共でした。当時の国民党は、中国共産党を匪賊扱いで「共匪」と呼んで、大陸反攻を国是とする反共政党でした。

大陸反攻を国是としたのも、台湾はあくまでも仮住まいでいずれ中国大陸を奪還し、正統政権として全土支配する意志があったからです。蒋経国総統時代になっても、中国共産党とは「接触しない、交渉しない、妥協しない」という「三不政策」が基本方針でした。

徹底した反共主義者であった蒋介石初代台湾総統

変化が生じ始めたのは80年代後半でした。台湾と大陸の通商・経済交流が徐々に拡大していきました。国民党と共産党のイデオロギーにおける本質的な相違を棚上げして経済的利益を先行させました。その結果、経済の中国依存が進み、中国大陸をなくして台湾は生きて行けない段階にまで至ったのです。

ただ問題は、「中国依存」の恩恵が広く全国民に行き渡らなかったことです。中国共産党政権の「統一戦線」は決して、相手国の一般国民を対象にしているわけではありません。政財界のいわゆるキーパーソンを味方につける手法が取られるため、結果的に一部の特権階層が利益を手にしただけで、全体的国益が軽視・無視されてきたのです。

今回国民党の新主席に選ばれた朱立倫氏は、習近平から祝電を受け、再び中国に融和的になるのでしょうか。しかし、世界中で「反中国共産党」の潮流が勢いを増した現在、その先に中国共産党政権の崩壊・交替があるかもしれないです。

そうなれば、蒋介石が夢見ていた「大陸反攻」が単なる夢ではなくなり、実現する可能性も出てきます。

無論蒋介石の夢がそのまま実現するということはないでしょうが、いざ大陸に民主主義の政体ができた時点で、国民党が民主主義国家運営のノウハウや豊富な党内人材を生かせば、与党としての貫禄を世界中に見せつけるという可能性もでてきます。

現在国民党が基本的な立場を「反中国共産党」に切り替えたところで、むしろ重荷を下ろしての原点回帰といえます。そうすれば、民進党との戦いを本格化させ、政権奪還に挑むこともできます。

晩年の李登輝元総統

このように見方を変えれば、国民党は、目先の利益よりも長期的利益に着目し、より大きなビジョンを掲げることができます。台湾民主主義の父である李登輝元総統は、「反攻大陸」のスローガンを下ろしたものの、台湾の民主化を推進した国民党の政治家であり、蒋介石を補佐していたことを思い起こすべきです。

そうして、蔡英文率いる民主進歩党も、紛れもなく、民主化の産物なのです。国民党がまともになれば、台湾にまともな二大政党制が根付くことになるかもしれません。そうなれば、米国の二大政党制よりまともなそれが、台湾に出来あがることになるかもしれません。

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2021年9月25日土曜日

クアッド首脳会合 対中連携で一定の成果 軍事のAUKUSと役割分担も―【私の論評】TPPに英国や台湾が加入すれば、申請しても加入できない中国の異質さがますます際立つ(゚д゚)!

対中連携で一定の成果 軍事のAUKUSと役割分担も


米ワシントンのホワイトハウスで24日に開かれた日米とオーストラリア、インドの4カ国(通称クアッド)による初の対面形式による首脳会合は、4カ国が中国の台頭をにらみ、自由や民主主義といった共通の価値観の下で「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた結束を確認した点で、所期の成果を上げることに成功したといえる。

会合後に発表された共同声明は、中国への名指しは避けたものの、4カ国が「威圧に屈せず、国際法に根差した、自由で開かれたルールに基づく秩序」に関与し、「法の支配」「航行と飛行の自由」「紛争の平和的解決」などを支持していくと訴えるなど、中国を明確に意識した内容となった。特に、中国が覇権的行動を活発化させている東・南シナ海をめぐっては国際法の順守を訴え、中国を強く牽制(けんせい)した。

一方、オーストラリアのモリソン首相は会合後、ホワイトハウスで記者団に対し、菅義偉首相とインドのモディ首相が会合の席上、米英豪による安全保障連携の枠組み「AUKUS(オーカス)」で合意された米英による豪原子力潜水艦の開発支援に支持を表明したことを明らかにした。

対中国をにらみ、クアッドが外交を含む非軍事分野を、オーカスが軍事分野をそれぞれ分担し、両者が相互補完する態勢が早くも確立されたといえる。

一方で、インド太平洋における諸懸案の対処に向けた「枢要かつ死活的に重要な協議形式」(米政権高官)と位置付けられるクアッドが取り組むべき課題は山積している。

中でも、かつてオバマ元大統領が中国に対抗する集団的な経済安全保障の枠組みとして提唱した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について、バイデン政権は24日、「現状の内容では復帰できない」との立場を示した。

中国がTPPへの加入を目指す中、米国不在のTPPの維持と発展に力を尽くしてきた日本としては、米国の復帰を実現させることがクアッドの強化に向けた大いなる貢献になるだろう。

【私の論評】TPPに英国や台湾が加入すれば、申請しても加入できない中国の異質さがますます際立つ(゚д゚)!

中国は、バイデン米政権が構築を進める重層的な「中国包囲網」に対抗する姿勢を強めています。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入申請で孤立感の払拭を狙うほか、米国との関係改善を目指して協調姿勢を見せるなど、包囲網の切り崩しへ相次いで布石を打っています。

中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は24日の記者会見で、クアッドについて「閉鎖的、排他的、他国に照準を合わせた小派閥は時代の潮流に背く。目的を達することはない定めだ」と牽制しました。

中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官

「345中国包囲網」。香港出身の国際政治学者、林泉忠(りん・せんちゅう)氏は、米政権が主導する対中包囲網の枠組みを参加国数からこう評しています。米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」▽日米豪印の「クアッド」▽米英豪にカナダ、ニュージーランドを加えた5カ国で機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」-です。それぞれ軍事、産業、情報など多方面に及ぶ協力枠組みだが、林氏は「機能と役割は異なる」と指摘しています。

これに対し、中国は16日にTPP加入を申請。米国が関与を強めるアジア太平洋地域で影響力を高め、中国経済のデカップリング(切り離し)に歯止めを掛ける狙いです。

王毅(おう・き)国務委員兼外相は同日、クアッド参加国のインドのジャイシャンカル外相と会談し、「二大新興経済国として互いに脅威になるべきでない」と呼びかけました。ロシアやイランなど米国と対立する国とも密接な関係を強調しました。

TPPに関しては、中国は現状のままでは加入できません。加入するには、様々なシステムを変えなければなりません。中国が共産主義や国家資本主義とも呼べるような現在の体制を完璧に捨てるというのなら加入できるでしょう。しかし、それは中国共産党の崩壊を意味します。

中国は、2001年にWTOに加盟後、加盟議定 書に定められた条項で要求されたように、 WTOの義務に従うために何百もの法律や規制 などを改正するとしていました。しかし、中国はその約束を反故にしたばかりか、WTO加盟国として の承認を、国際貿易の支配的プレーヤーにするために利用してきました。もし、仮にTPPに入れたとしても、TPPを同じように利用するだけです。

そのようなことは、目に見えているため、日本をはじめとする加盟国は中国を門前払いすることでしょう。

中国はオーストラリアとの間で通商摩擦をかかえている

しかも、中国はTPP参加国のオーストラリアとの間で通商摩擦を抱えています。また、空母「エリザベス・クイーン」を含む空母打撃群を日本に寄港させ、中国との対峙姿勢を顕にした、英国が、TPP加入のための手続きを実行中です。

米国は、TPPに参加しておらず、直接的に中国のTPP加入を批判はしていませんが、台湾のTPP加入を後押しする発言をしています。

米国務省のプライス報道官は24日の記者会見で、中国政府に続いて台湾がTPPへの加入を申請したことについて、「台湾の世界貿易機関(WTO)の責任あるメンバーとしての実績や、民主主義という価値観が考慮されることを期待する」と語りました。 

中国の覇権主義的な動きなどは強く批判しました。 

米国務省のプライス報道官

プライス氏は「米国はTPPに加入していないので、参加国の判断に任せる」とした上で、中国の申請について「市場に基づかない貿易慣行や、他国に対する経済的な威圧が考慮されるべきだ」と強調しました。 

英国や台湾は、いずれ加入することができるでしょう。TPPに英国や台湾が加入できて、中国が申請しても加入できないとなると、中国の異質性がさらに際立つになることになります。

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2021年9月24日金曜日

米英豪の安保枠組みが始動 日本は原潜に高いハードル…諜報機関や法整備が大前提 ―【私の論評】日本がインド太平洋の安全保障への貢献や、シーレーン防衛までを考えた場合、原潜は必須(゚д゚)!

米英豪の安保枠組みが始動 日本は原潜に高いハードル…諜報機関や法整備が大前提 
高橋洋一 日本の解き方

2015年11月5日東京湾に姿を現した米海軍の攻撃型原子力潜水艦「ノースカロライナ(SSN-777)」

 米国、英国、オーストラリアの3カ国が、安全保障の新たな枠組みを作ると発表した。オーストラリアの原子力潜水艦配備を支援する考えを示しているが、中国の海洋進出への対抗としてどれだけの力を持つのか。そして日本はどのような役割を果たすべきなのか。

 原潜を運用している国は、米英のほか、ロシア、フランス、中国の国連安全保障理事会常任理事国とインドの計6カ国だ。オーストラリアは7カ国目になるだろう。

 原潜は軍事秘密の塊であるが、原子力により長期間の連続潜航が可能なので、敵国から本国が攻撃を受けても無傷のまま反撃できる。そのため攻撃への抑止力としては現時点では抜きんでている。

 しかし、日本には、原子力と自衛隊へのアレルギーがあり、その両者の結節点とも言える原潜の導入について、海上自衛隊内部ではこれまで幾度も検討がなされてきたが、具体的な結論はいまだに出ていない。原潜を運用すれば攻撃されにくいのに、原潜そのものを拒否してしまうという不合理な対応に陥ってしまっていたわけだ。

 日本が原潜を持ち得ないというのは、日米豪印の「クアッド」の枠組み検討の際にも欠点として指摘されていた。つまり、日米豪印でインド太平洋の安全保障を考えても、原潜保有国は米印だけであり、インドは独自の軍事戦略をもっているので、米国とはなかなか相いれないだろうと思われていた。そこを日本が橋渡しする役割があったが、日本自身が原潜を保有していない以上、説得力がなくなるのだ。

 そこで米国は、英語圏で機密情報を共有するファイブアイズ(米、英、豪、カナダ、ニュージーランド)のうち、英国に加えてオーストラリアを原潜運営国に格上げしようとしているのだ。

 これにより、日米豪印のクアッドは、日本が原潜を運用するという意思表示をしなければ米豪が基軸になるだろう。もちろん、日本国民のアレルギーをなくすとともに、米国の了解がなければ実現しないという高いハードルがある。

 筆者はかねてより、核兵器などを共同管理する「核シェアリング」を主張してきた。一例は原潜の運用は米国に委ねつつ、意思決定に日本を絡ませるというものだ。その延長線上には、原潜のレンタルや退役した米原潜の購入などもある。

 いずれにしても、日本の諜報機関設置や、スパイ防止法などの制定が大前提だ。ファイブアイズに参画できないのは、日本には役に立つ諜報機関が事実上なく、ほしい情報が入らないためメリットがないばかりか、スパイ防止法がないので情報を与えると漏洩(ろうえい)するデメリットばかりだからだ。

 自民党総裁選やその後の衆院選において、これらの日本の安全保障上の諸問題をぜひとも争点にしてもらいたい。次の日本のリーダーの重要な試金石だと筆者は考える。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本がインド太平洋の安全保障への貢献や、シーレーン防衛までを考えた場合、原潜は必須(゚д゚)!

現在、世界で使われている商業用原子炉はそのほとんどが大型軽水炉です。この炉型は大型かつベースロードで運用し、電力線網で広範囲に送電するという集中型電力システムで低コストを実現してきました。

しかし東京電力福島第一原子力発電所事故でリスクの高さを露呈し、安全対策の強化で建設コストが上昇、新設では太陽光風力発電に対して競争力を喪失しつつあります。今後は既存原発の運転期間を延長することでコスト上昇を抑えるしかありません。大型軽水炉は将来的には小型モジュラー炉にとって代わられるでしょう。


軽水炉の弱みは、冷却水の供給が何らかの理由で途絶えることで燃料のメルトダウンを招く点にあります。船舶用の動力として小型原発を使えば、万が一の場合、海中投棄でメルトダウンは防げます。燃料の補充が長期にわたって不要な点で潜水艦、砕氷船、発電バージなどで小型軽水炉は最適です。

現在の日本ではすっかり忘れ去られていますが、日本はかつて原子力船「むつ」を建造し、自前の舶用小型軽水炉を実証しましたが、放射線漏れを起こし、残念ながら建造路線は放棄されました。

日本で原潜の開発をするなら、まずは、むつの失敗を総括するところから始めなければならないでしょう。「むつ」の失敗は、「むつ」建造に関わった複数企業の設計インターフェースの悪さ、海外専門家から放射線漏れの可能性を指摘されながらも十分に検討しなかった建造体制の不備などが問題だったようです。

原子力船「むつ」

日本の場合、日本の領土と領海を守るためだけであれば、現在の通常型潜水艦でも十分であるといえます。しかし、日米豪印でインド太平洋の安全保障への貢献や、シーレーン防衛のためには原子力推進の潜水艦保有を検討すべきで。

ポストコロナの中国が南シナ海や東シナ海での軍事活動強化に走り、香港の一国二制度を否定したのは、狙いが台湾併合にあることは明らかです。今後米中関係がさらに悪化して行く中で、台湾有事も想定せざるを得ないです。長期間潜ったまま航行できる原潜が中国海軍の動きを抑えるのに役に立つ。

日本の持つディーゼルとリチウムイオン電池の潜水艦は静音性などに大変優れています。そのため、このブログで何度か掲載したように、現時点においては、日本の潜水艦だけでも、尖閣を含む日本の領土や領海を守ることは十分に可能です。

なぜなら、静寂性に優れ、対潜哨戒能力が低い中国には、これを発見することは困難ですし、逆に日本は対潜哨戒能力にすぐれ、中国の潜水艦を発見するのが容易だからです。

台湾有事においても、日本の潜水艦だけでも、これに対応できる可能性が高いです。静寂性の高い日本の潜水艦数隻で台湾を包囲してしまえば、中国海軍は台湾に近づけば、撃沈されてしまいます。

運良く、中国軍が台湾に上陸できたとしても、日本の潜水艦が台湾を包囲している限り、中国の補給船などは、台湾に近づくことができません。それでも、無理に近づこうとすれば、現地んされてしまいます。そうなれば、台湾に上陸した中国の舞台は、水・食料、武器・弾薬などの補給を絶たれお手上げになってしまいます。

日本だげでもこれだけできますが、米国の攻撃力に優れた攻撃型原潜と協同すれば、中国はお手上げです。日本の通常型潜水艦は、情報収集などにあたり、これを米軍の攻撃型原潜と共有すれば、米軍はより安全に正確に中国や中国の艦艇、潜水艦を攻撃できます。そうなると、中国海軍は最初から手も足もでないです。

ただ、日本がインド太平洋の安全保障への貢献や、シーレーン防衛までを考えた場合には、通常型潜水艦の速度や航続距離などがネックになります。最近、北朝鮮のミサイルを撃ち落とす新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」計画が放棄されました。

敵国領内での基地攻撃の可否が議論されていますが、そもそも攻撃を受けた場合、通常型巡航ミサイルでの反撃は攻撃ではなく防御です。非核巡航ミサイルを装備した原潜による敵の核攻撃抑止も、米国の核の拡大抑止の補完として検討されるべきでしょう。

まずは1隻、米国から購入し技術移転、乗員の訓練などのための日米原子力安全保障協力が必要です。日本に核装備は不要で核兵器禁止条約にも加盟すべきですが、緊張の高まる北東アジアの状況を考えれば、むつ以来のタブーを破り原子力推進の潜水艦建造を検討する必要があるでしょう。

日本では、原子力や自衛隊に対するタブーがあるので、原潜の製造には高いハードルがあるのは事実ですが、モジュール型の小型原発の開発は進んでいます。日立製作所は米ゼネラル・エレクトリック(GE)との合弁会社、日立GEニュークリア・エナジーで出力30万キロワットの小型原子炉を開発中。北米で、2030年ごろに実用化したい考えです。

このモジュール型の小型原発は、無論原潜用にも転用は比較的容易です。量産化された場合、これが原潜に転用されるということは十分に考えられます。

日本の場合、工作技術は世界のトップクラスですし、昔から様々な製品の小型化には定評があります。その日本が、本気で原潜開発に取り組めば、比較的短期間で国産の原潜を製造できるようなるかもしれません。

まずはそのためにも、1隻米国から原潜を購入し技術移転すべきです。そうして、乗員の訓練などのための日米原子力安全保障協力が必要です。日本に核装備は不要で核兵器禁止条約にも加盟すべきと思いますが、緊張の高まる北東アジアの状況を考えれば、むつ以来のタブーを破り原子力推進の潜水艦建造を検討する必要があると思います。

そうなると、日本は、静寂性に優れた通常型潜水艦と、攻撃力と航続距離に優れた原潜の両方を運用できるようになるでしょう。

米国と英国は、原潜を製造した段階で、通常型潜水艦の建造をやめています。そのため、米英には通常型潜水艦の建造技術はありません。フランスやロシアでは現在でも通常型潜水艦を建造しています。ドイツも製造しています。

ロシアの通常型攻撃潜水艦「クラスナダール」

やはり、通常型潜水艦は静寂性に優れるということで、この利点は捨てがたいところがあるようです。米国は、自国では通常型潜水艦を製造できないので、フランスから1隻、乗組員ごと通常型潜水艦を借り受けています。

日本が原潜開発ができるようになれば、静寂性の優れた通常型潜水艦と併用して、世界一の潜水艦隊をつくることができるかもしれません。

たとえば、通常型潜水艦が静寂性を発揮して情報収集や攻撃型原潜の守備にあたり、その情報に基づき攻撃型原潜が、敵基地や監視衛星の地上施設を攻撃をするというような運用の仕方も考えられるのではないかと思います。

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2021年9月23日木曜日

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米英豪3カ国がフランスを「裏切った」本当の理由。対中包囲網に小型原子炉輸出という国益


2021年6月、フランス・パリで会談したマクロン仏首相(左)とオーストラリアのモリソン首相。「裏切り」の展開はこのとき想像されていなかった模様だ。

米政府は9月15日、アメリカ・イギリス・オーストラリアによる新たな安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」創設を発表。同時にオーストラリアに原子力潜水艦の建造技術を供与することを明らかにした。 

オーストラリアはフランスと締結したディーゼル潜水艦開発契約の破棄を通告。対するフランス政府は、駐米・駐豪大使を召還する強い報復に出た。

バイデン米大統領が同盟国であるフランスを犠牲にしてまで、この決定に踏み切った理由は何か。対中包囲網の質と量の強化に加え、小型原子炉の輸出という、「一石二鳥」の狙いが透けて見える。

フランスを除外して「秘密交渉」

メディア各社の報道によると、オーカス創設計画の検討が始まったのは2021年3月。原潜保有を希望するオーストラリア海軍が、建造技術の供与についてイギリス海軍トップに打診した。

  ジョンソン英首相は6月、主要7カ国(G7)首脳会議にオーストラリアのモリソン首相を招待し、バイデン大統領をまじえた米英豪3カ国による秘密首脳会談で計画の詳細を詰めたという。

3カ国はフランスを通じて情報が漏れるのを警戒し、マクロン仏大統領を除外した。

オーストラリアが2016年にフランス政府系造船会社ナバル・グループと結んだディーゼル潜水艦12隻の開発契約(650億ドル=約7兆1500億円)破棄をフランスに通告したのは、オーカス創設発表のわずかに数時間前だった。

フランスのルドリアン外相は「同盟国間であってはならないこと」と非難し、「乱暴で予測もつかない決定はトランプ(前米大統領)と同じ」とバイデン大統領を批判。駐米・駐豪大使の召還を発表した。

バイデン大統領が約7.2兆円ものフランス国益を犠牲にして、米英豪3カ国の安全保障協力を優先した狙いは何だろう。

バイデン大統領はその目的について「21世紀の脅威に対処する能力を最新に向上させる」と、まず中国に対抗する姿勢を鮮明にし、続いて「アメリカの欧州における同盟国をインド・太平洋での協力に転換する第一歩」とも述べ、イギリスと協力する意義をつけ加えた。

具体的な協力内容としては、原子力潜水艦の建造技術をオーストラリアに提供して原潜8隻を建造するとともに、長距離巡航ミサイル「トマホーク」を供与するとしている。

オーカス創設発表翌日の9月16日には、首都ワシントンで米豪外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開き、オーストラリアに駐留する米空軍の兵力規模を拡張することで合意。中国をにらんだ米豪協力を強化していくスタンスを明らかにした。

イギリスを戦列に加え、さらにオーストラリアが西太平洋と南シナ海を舞台に原潜と軍用機で中国ににらみを利かせる「新たなステージ」ができ上がることになる。

オーストラリア原潜「参戦」の意味合い

米国防総省の報告書などによると、中国が保有する潜水艦は原潜10隻を含め計56隻。2020年代末には65~70隻に増える。

 一方、米海軍の就役中の潜水艦はすべて原潜で計68隻。このうち太平洋に展開している原潜は計10隻と、数では中国と互角。今後、協力枠組みに従ってオーストラリアが原潜を8隻保有すれば、数字上では米豪の兵力が勝る計算になる。

 ただし、原潜の「就役時期」という問題が残る。

アメリカとイギリスは今後1年半でオーストラリアへの原潜導入計画を立案し、その間にアメリカのバージニア級攻撃原潜あるいはイギリスのアスチュート級原潜のどちらかを導入するかを決定する。

しかし、それだと就役は早くても2035年以降になる。中国もその間に原潜建造を加速するので、隻数で勝る展開は望めない。

ダットン豪国防相はその点について、米英両国からの「リースや購入も検討している」と述べ、建造以外の方法で原潜就役を前倒しする可能性にも言及している。

一方、中国側の視点に立つと、オーストラリア原潜が「参戦」する意味はもっと鮮明で、以下の3点にまとめられる。

原潜は核攻撃のツールであり、オーストラリアへの核拡散につながるおそれがある。

中国海軍は、米海軍と日本の海上自衛隊への対応に加え、オーストラリア原潜に対応する必要が生まれ、兵力の分散を強いられる。

日米豪印4カ国首脳会合(Quad、クアッド)と併せて、アメリカが対中「統一戦線」を強化することになる。

※オーストラリアへの核拡散……現在原潜を保有するのは米英仏中ロにインドを加えた計6カ国。すべて核保有国で、原潜には核弾頭付き潜水艦発射弾頭ミサイル(SLBM)を搭載する。モリソン豪首相は核武装を否定しているが、中国側は疑念を捨てていない。

アメリカはアフガニスタン撤退後、「対中競争に傾注する」と強調してきたが、その実行のためにバイデン大統領が切ったカードの中身こそが、今回のオーカス創設だった。

「台湾有事」に絡めて日本政府がより主体的な台湾関与政策を強化していることに、中国は神経を尖らせている。 

今回の原潜技術供与についても、台湾や南シナ海など地域安全保障問題でアメリカが自ら前面に出るやり方を変え、日本やオーストラリアなど同盟国に委ねる方針に転じるのではとの見方が、中国側では出ている。

 自衛隊の南西諸島シフトに加え、オーストラリア原潜がアメリカの原潜に代わって南シナ海を潜航する可能性もあるとみる。

原潜向け「小型原子炉」輸出こそアメリカの国益

バイデン大統領による今回の「荒療治」は、対米自立志向の強いフランスを軽視する一方で、アメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダ・ニュージーランドというアングロサクソン系5カ国による機密情報共有枠組み「ファイブアイズ」を重視する、同盟関係の「組み換え」とみる分析もある。

しかし、この問題については「米仏対立」ばかりに目を奪われると本質を見失う。見落としてはならないのは「核大国」アメリカの現状だ。

アメリカは原子力発電所の国内での新設はもちろん、輸出もできないデッドロックに直面している。

今回の技術供与により、オーストラリア原潜向けに発電所用の小型原子炉を「輸出」できる展望が開け、デッドロックから脱出する道筋が見えてきた。それは原子力関連の技術維持にも役立つ。 

アメリカの国益にとって決定的なブレイクスルーであり、原子力産業と軍産複合体にとっては「光明」とも言える。

 原潜向けの小型原子炉は、発電所に使われる「加圧水型原子炉(PWR)」とほぼ同じもので技術的な差はない。アメリカは部品を現地に運んで組み立てる「小型モジュール炉(SMR)」を開発中で、オーストラリア南部アデレードで組み立てるとみられる。

 ルドリアン仏外相が「予測もつかない決定はトランプと同じ」と非難したように、トランプ前大統領の同盟軽視路線を批判し、再構築を進める方針を強調してきたバイデン大統領も、結局は国益優先の内向き外交から脱していないということになる。

「クアッド」と「オーカス」の関係性

最後に、バイデン大統領が今回切った新たなカードを大歓迎する台湾の視点を紹介しておきたい。

 李喜明・元台湾軍参謀総長は英紙フィナンシャル・タイムズ(9月16日付)に、「原子力潜水艦によってオーストラリアは初めて戦略的な抑止力と攻撃能力を持つ」と述べ、潜水艦の展開先として「台湾に近い西太平洋の深海」をあげつつ、「トマホークミサイルが加わると、オーストラリアのこぶしは中国本土まで届く」と指摘している。 

中国にとってはまさに「脅威」だ。 

中国共産党は抗日戦争の際など大局のために敵と手を結ぶ「統一戦線」に長けているが、今度はバイデン大統領が中国の株を奪い、反中「統一戦線」を重層的に築こうとしているわけだ。

 その文脈で言えば、インド太平洋戦略の核となる枠組みである前出のクアッドは、アメリカにとって引き続き重要な意味を持つ。9月24日には首都ワシントンで初の対面首脳会議も開かれる。 

ただし、友好国インドは伝統的に非同盟政策をとっており、経済安全保障や新型コロナ対策では協力できても、反中色の強い軍事的協力を進めるのはきわめて難しい。

だからこそ、軍事協力が可能な安全保障枠組みとして、オーカスの創設が大きな意味を持ってくる。

 (文・岡田充) 岡田充(おかだ・たかし):共同通信客員論説委員。共同通信時代、香港、モスクワ、台北各支局長などを歴任。「21世紀中国総研」で「海峡両岸論」を連載中。

【私の論評】背後には小型原発の開発競争がある(゚д゚)!

上の記事、網羅的に情報が盛り込まれていて、事情通の人などにはかなり良い記事になっていると思います。ただ、多くの人に理解してもらうためには、若干情報を付け足す必要があります。

まずは、豪州がフランスから潜水艦を受注するようになった経緯から説明します。

もともと豪州は老朽化した通常動力型のコリンズ級潜水艦の代替艦として通常動力型潜水艦の新規建造を決め、2016年にフランス企業のDCNS(現ナバル・グループ)と契約しました。受注総額は500億豪ドル(約4兆円)に上り、豪州にとって史上最高額の軍事プロジェクトとなりました。 

コリンズ型潜水艦の内部

このとき日本政府は安倍晋三政権下で武器輸出を禁じた「武器輸出三原則」を見直し、「防衛装備移転三原則」という名称で武器輸出を解禁したこともあって、フランス、潜水艦大国のドイツとともに受注競争に参加しました。 

豪州の求めていた代替艦が海上自衛隊の「そうりゅう」型潜水艦に最も近かったことから採用が有力視され、製造元の三菱重工業、川崎重工業が売り込みを図ったのですが、親日家とされたアボット首相の退陣や企業側の本気度などが問われ、フランスに破れました。 

フランスが計画した豪州の次期潜水艦は、フランス海軍最新鋭のバラクーダ級原潜を通常動力型に変更。アタック級潜水艦と命名され、2030年代から50年までに合計12隻が納入される予定でした。

ところが、問題が続出しました。 

まずは費用面です。豪州会計検査院によると、500億豪ドル(約4兆億円)と見込まれた受注額は、2019年に800億豪ドル(約6兆4000億円)に急上昇し、昨年7月には897億豪ドル(約7兆2000億円)に更新されました。 

維持費を含めると2080年までに1450億豪ドル(約11兆6000億円)の負担が必要になると見積もられました。この金額は、豪州の国防費の3倍以上にもなります。 

さらに建造開始が遅れ、このままではコリンズ級がすべて退役し、潜水艦が1隻もない状況になるという問題が浮上。フランスが受注した要因のひとつである現地生産による地元雇用も進んでいません。結局、三重苦に見舞われ、今年1月には豪州メディアが「政府がフランスとの契約キャンセルを検討している」と報道しました。 

上の記事にもあるように今回、豪州が米国の技術供与による原潜建造を決めたことでフランスとの契約は破棄されます。

ロイター通信によると、ルドリアン仏外相はラジオ番組に出演し、「これは一方的で、予測不能なひどい決定だ。トランプ前米大統領のやり方を思わせる。信義に反するもので非常に腹立たしい」と語ったという。 

ルドリアン仏外相

価格を急上昇させたうえ、受注時の条件をあやふやにしておきながら、何を今更という感がなくもないですが、フランスにとって今世紀最大のもうけ話が消えたのだから怒るのも無理はないかもしれません。 

豪州は新造が予定されたアタック級潜水艦の戦闘システムや魚雷などの武器類について米国製とすることを決めていました。受注を狙っていたのは世界最大の米軍需産業ロッキード・マーチンや米大手のレイセオンです。

米政府は潜水艦に搭載する最新鋭の戦闘システムがフランスの潜水艦に搭載されることに懸念を抱いていたとされ、今回の原潜技術の供与につながった可能性があります。潜水艦の本体ごと米国が受注すれば、秘密漏洩の不安は消えるからです。

そうして、もう一つ付け加えるべきは、中国とフランスが原子力に関して協力関係にあるということもあります。特に、フランスと中国広核集団との関係には、注目すべきです。

広核集団の最初の原子力発電所はフランス国有企業フラマトムが設計と建設を行ったものです。その後広核集団はフランスの原発を基礎とした改良型の加圧水型炉として中国国産のCPR-1000を開発しました。CPR-1000は完全に中国が設計から建設までを行える形式で、中国で建設される原発の多数がこの形式であり、電力革新の主導方法と考えられています。

2007年2月、広核集団はアレバ欧州加圧水型炉を導入した台山原子力発電所の建設に合意し、咸寧原子力発電所にはウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーAP1000を利用しました。これらの建設発表によって広核集団は第3世代+の原子炉(フラマトム社性欧州加圧水型炉 EPR)を建設する初の企業となりました。

この世界初のEPRとして、中国で運転を開始した台山原子力発電所1号機(PWR、175万kW)で今年の6月に小規模の燃料破損が生じたことについて、フランス電力(EDF)は7月22日、「同機が仏国で稼働中の原子炉であったら運転を停止していた」との見解を表明しています。

これは、大問題です。仙山原子力の燃料破損については、ここでは述べると長くなってしまうので、興味のある方は、他のメディアの記事などにあたってください。

こうした、中仏の原子力による協力関係は米国にとっても、安全保障上においても、事業上においても無視できなかったのでしょう。

特に、現在世界中の国々が次世代の小型原発の開発にしのぎを削っています。日米は無論のこと、中露仏も開発中です。

小型原発は、モジュール化されており、製造のほとんどを工場で行い、それを現地に運んで据え付けるという方式がとれるので、建造の期間が現在の巨大な原子炉よりもかなり短くてもすむという利点があります。さらに小型であることから、冷却に既存の巨大原子炉より、はるかにしやすいという利点もあり安全であるという利点があります。

さて、小型原発とはどのくらいの大きさかと言うと、以下の写真をご覧ください。

ニュースケール社が設計したSMRの上部約3分の1の実物大模型=米オレゴン州コーバリス

従来の原発よりかなり小さいです。これによる発電は従来の原発とはかなりイメージが異なります。従来だと、北海道全域などかなり広い地域に電力を供給することを想定していましたが、小型原発は、市町村単位やもっと小さな単位に電力を供給します。

そのため、中国が小型原発の開発に成功すれば、これを船に積んで、南シナ海に運び、洋上で原子力発電をして、南シナ海の中国の軍事基地などに電力を供給することも考えられます。実際に過去に中国はそのような計画を発表しています。

さらに、中国は一帯一路に関連する諸国等に、小型原発を輸出するということも考えられます。これに成功すれば、中国にとっては、外貨を稼ぐための稼ぎ頭になる可能性もあります。

これにフランスが積極的に協力することがないように、釘をさすという意味あいも、今回の「AUKUS(オーカス)」創設を発表と、同時にオーストラリアに原子力潜水艦の建造技術を供与することの背後にあると思われます。

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2021年9月22日水曜日

衆院選、初の任期満了後に…臨時国会10月4日召集を閣議決定―【私の論評】誰が総裁になっても、当面緊縮路線には振れない、今後の政局だが・・・(゚д゚)!

衆院選、初の任期満了後に…臨時国会10月4日召集を閣議決定

 政府は21日、菅首相の後継を選出する臨時国会を10月4日に召集することを閣議決定した。これで衆院選は衆院議員の任期満了日(10月21日)以降になる見通しとなった。現行憲法下では初めてとなる。

国会議事堂

 4日の召集日に衆参両院で首相指名選挙を行い、同日中に新内閣が発足する。臨時国会の会期や日程は新首相の下で決定される。

 9月29日投開票の自民党総裁選に立候補した河野太郎行政・規制改革相、岸田文雄・前政調会長、高市早苗・前総務相、野田聖子幹事長代行の4氏は、首相に選ばれた場合、臨時国会で所信表明演説と各党の代表質問を行う考えを示している。

 代表質問後の10月中旬に衆院を解散すれば、準備期間を考慮すると、投開票は11月以降が確実だ。

 新首相は衆院選後、新型コロナウイルス対策を盛り込んだ2021年度補正予算案を国会に提出するとみられる。補正予算の早期成立のため、衆院選の日程は、選挙準備が間に合うとされる10月26日公示―11月7日投開票が軸となりそうだ。

 公職選挙法に基づき、投開票日は11月28日まで遅らせることもできる。

 衆院解散を伴わない場合、公選法は任期満了選挙の投開票日を「国会閉会翌日から24日~30日後」と定めている。

【私の論評】誰が総裁になっても、当面緊縮路線には振れない、今後の政局だが・・・(゚д゚)!

現在は総裁選の真っ最中だが・・・・

上の記事にもあるように、政府は菅総理大臣に代わる、新しい総理大臣の指名選挙を行う臨時国会について、10月4日に召集することを閣議決定しました。これにより、次の衆議院選挙は衆院議員が任期満了する10月21日以降に行われる見通しになりました。

総務省によると、衆議院議員の任期満了日以降に衆議院選挙が行われれば、戦後初めてのケースになります。

ただし、自民党総裁選の日程が出たころに、このスケジュールは言われていました。

これは予想通りなのですが、このように明示されますと、今後どのようなスケジュールなのか大体わかります。十中八九10月4日に国会召集になります。その前週である9月29日の水曜日に総裁選の投開票が終わり。木曜・金曜には、いろいろな組閣の話のニュースが山ほど出て来ることになるでしょう。

10月4日になるとそれが紙面に出て、そのあと組閣になるのでしょう。国会は10月4日に招集され、所信表明演説等を行い、の月曜日からその週いっぱい開催されることになるでしょう。

所信表明演説をするとと、それに対して各党の代表質問という形になります。それが8日くらいに終わることになるでしょう。10月4日という国会召集日から逆算すると、衆議院選は、10月26日公示、11月7日投開票というスケジュールになるでしょう。

例えば8日に解散してしまうとすると、いろいろな規定があるのですが、こういう流れだと30日以内に国会というか、衆議院になるのです。予定としては11月7日の投開票。これが赤口の日です。12日以上、公示まで期間を取らないといけないのです。そうすると10月26日公示というスケジュールが簡単に出て来ます。

10月26日は大安なので、大安に公示することになるでしょう。それで11月7日の赤口のときに総選挙・投開票というのが普通のスケジュールになるでしょう。

別の角度から、総選挙・投開票の11月7日から逆算してみてもこのようなスケジュールになるざるをえません。スケジュールは1つ決まると芋づる式にみんな決まってしまいます。9月29日に総裁選の投開票をすると決まったときに、ほとんどスケジュールは決まっていたのだと思います。そうすると、その前の9月30日に「緊急事態宣言の解除」ということになるでしょう。。

11月7日の投開票前くらいには、ワクチン接種希望者はほぼ全員が打ち終わっていることでしょう。感染者数は、少し上がるかもしれませんが、いまより悪くはないでしょう。

公職選挙法の規定で、「国会閉会の日から24日以降、30日以内に選挙をしなくてはいけない」ということが決まっていて、ある程度、公示までに時間差を付けなければならないということも考えると、8日には締めなくてはいけないです。そうすると26日に公示になると。首班指名の国会のなかで、少し取り沙汰されていた「補正予算」関する審議は、日程的に難しいでしょう。

そうなると、総選挙が終わったあとに、すぐ国会を開くので、そのときに審議することになるでしょう。

新総理が、所信表明を仮にするとすれば、そのときにある程度の規模の補正予算案を出したあとで、その後にに解散総選挙ということになりますから、多くの人が様々な経済対策に言及することになります。それがあとで補正予算に反映されることになるでしょう。

緊縮命の財務省的には、嫌でしょうが、この状況では増税も含めて緊縮キャンペーンはかなりやりにくいです。。先に補正予算をある程度決めておいた方が、枠が決まります。たた、選挙になるとどのように膨らむかわからないところがあるのも事実です。


誰が新総裁になっても緊縮的な経済政策話は当面出にくいです。補正予算が何もない等ということにはならないでしょう。


何らかの形で補正予算の編成をしなければならなくなるでしょう。補正は30兆円規模だと言う人も何人かいますし、これに引きずられる形で、誰が総裁になったとしても、補正予算を組むでしょう。

補正予算に関しては、与野党各党からさまざまな政策も出て来ています。公明党は18歳以下のお子さん1人当たり、10万円の給付を柱とする政策が出されています。18歳以下の人口は少ないですから、予算的には大きくなることはないので、それはもうすでに織り込み済みでしょう。

さらに手厚く広くするかが、政策議論の論点にになるのでしょう。「減税しない」ということは現時点でもはっきりしているので、そうなると、消費が落ちているので、さらなる給付金政策が論点になるでしょう。

2020年に実施した、所得制限なしの1人当たり10万円の一律給付も俎上に上る可能性もあります。

これからの自民党総裁選と、次の衆議院選挙の期間で、決まってくることになるでしょう。

他方、立憲民主党は21日、安倍前政権の経済政策「アベノミクス」について「格差や貧困の問題の改善にはつながらなかった。日本経済が混迷から抜け出せない最大の要因だ」とする検証結果をまとめました。枝野幸男代表はこれを受け、「時限的な消費税5%への減税」を次期衆院選の目玉政策に掲げる考えを改めて述べました。

あいかわらずマクロ政策を理解していない枝野氏

立憲民主党の「アベノミクス」総括は問題外ですが、これがなぜ問題外なのか考えてみます。まずは、マクロ政策で一番重要なのは雇用確保ということです。他の経済指標が悪かったとしても、雇用が良ければ、マクロ政策は成功したとみなして良いです。逆に他の指標がどんなに良くても、雇用が悪ければ失敗です。

そういう観点からみると、安倍総理は、歴代政権で最も雇用をつくりました。そのあとコロナ感染症があったことから、割り引いて考える必要があるでしょうが、マクロ政策から見れば、失業率を考えると、コロナ禍でも日本は先進国に比べて低いので、最もいいか、2番目という成績になります。

日本の失業率はコロナ前の2020年2月に2・4%でしたが、その後上昇し、10月に3・1%とピークになり、21年7月は2・8%まで低下しました。米国は20年2月に3・5%でしたが、4月に14・8%とピークで、21年7月は5・4%。EUは20年3月が6・3%でしたが、8月に7・7%、21年7月は6・9%となりました。

それぞれ、コロナ前とコロナ後のピークの差は日本が0・7ポイント、米国が11・3ポイント、EUが1・4ポイントでした。コロナ前と直近の差は日本が0・4ポイント、米国が1・9ポイント、EUは0・6ポイントです。

これらの数字から、コロナ禍による失業率の上昇を最も抑えたのが日本であることがわかります。その理由は、日本では雇用保険の中に雇用調整助成金があるからです。この制度は、労働者の失業防止のために事業主に給付するものです。類似制度は世界ではそれほど多くないが、似た制度があるドイツも、ピーク時の失業率上昇は0・7ポイントと他国と比べて抑えられています。

コロナ失業を防いだ雇用調整助成金

厚生労働省は16日、2021年版の労働経済白書を公表しまた。新型コロナウイルス感染拡大により雇用が悪影響を受けたとする一方、雇用調整助成金(雇調金)などの効果により、完全失業率は2・6ポイント程度抑制されたとの推計を示ました。雇調金がなかった場合、失業率は5・5%に上昇した可能性があるとしています。

このように、雇用調整助成金は確実に効果を上げたのですが、一方では財源が逼迫しているので、保険料をあげようなどとの議論もされています。しかし、それでは何のための保険なのかということにもなりかねません。総裁選、衆院選と選挙が続く時期に、政府は当然このようなことはできないでしょう。それに、こういうことのためにも、補正予算を組むべきです。

とこが、立憲民主党は雇用には目もくれずすぐに、「実質賃金がー」という、本筋ではない議論をしてアベノミクスを矮小化してしまいます。

雇用が伸び始めるときには、非正規雇用から伸び始めるので、当初は実質賃金が下がるのは当然のことです。これは、アベノミクスの初期にも言われていたことです。

実質賃金が、少し下がっても、それよりは雇用の方がはるかに重要なのです。雇用が伸びるということは、いままで給料をもらっていない人ももらえるようになったというとです。マクロ経済政策では、それがいちばん重要なのです。

平均値よりは雇用の絶対量の方が重要ですから、失業率は雇用量で見るのが通常なのです。でも野党の人は、そうすると「安倍さんが歴代政権トップ」と言わざるを得なくなりますから、それは言えないでしょう。

また雇用を改善するには、政府が積極財政をするのは当然ですが、日銀は金融緩和策を取らなければなりません。これなしに、政府が積極財政をしただけでは、効果はありません。しかし、日銀が金融緩和をすれば、雇用は確実に善くなります。

経済回復しても、日銀がゆるやかな緩和を継続すれば、やがて実質賃金もあがります。そうでなければ、賃金は上がりません。それは、日本の賃金が20〜30年前から上がっていないことでも、実証されています。

日銀が金融緩和をして、雇用が改善する当初は、実質賃金は下がります。雇用が改善し、景気が回復した後でも、ゆるやかな緩和を続ければ、実質賃金も緩やかに上昇します。緩和で実質賃金が下がるのは一時的なことなのです。日本の賃金が上がらないのは、日銀の金融政策が元凶です。

そのことも、理解されるようになって欲しいものです。特に、新総裁、新しく総理になる方には、それを理解していただきたいものです。私は、総理が誰になったとしても、ここ1、2年は、緊縮に踏み切ったり、日銀が金融引締に転じることはないと思います。

ただ、2年後、3年後を考えた場合には、やはりマクロ政策、その中でも雇用政策を理解した人に総理になっていただきたいと思います。

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