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2025年4月6日日曜日

二大経済大国、貿易戦争激化へ 中国報復、米農産物に打撃 トランプ関税―【私の論評】米中貿易戦争の裏側:米国圧勝の理由と中国の崩壊リスクを徹底解剖

二大経済大国、貿易戦争激化へ 中国報復、米農産物に打撃 トランプ関税

まとめ
  • 米中貿易戦争が激化し、相互関税の応酬が続く。トランプ政権は5日から一部関税を発動、中国は34%の追加関税で対抗。米国では農産物輸出や景気への悪影響が懸念。
  • TikTokの米事業売却が新たな火種に。トランプが期限を75日延長するが、中国は報復で承認を保留。依存度低下で報復に自信か。
  • 米国にとって中国は重要な輸出先。前回の貿易戦争で農産物輸出が急減、農家は今も苦境。対立はエスカレートする一方だ。

激論するトランプと習近平 AI生成画像

米国と中国の間で貿易戦争が激化し、相互関税の応酬がエスカレートしている。トランプ米政権は5日、一部関税を発動し、これに対し中国は米国からの輸入品すべてに34%の追加関税を課す対抗措置を打ち出した。米国では農産物の輸出減少や景気全体への悪影響が強く懸念されており、中国は報復として大豆やトウモロコシなど米国産農産物にも対象を広げている。

関税は2段階方式で、5日からすべての貿易相手国に一律10%が適用され、9日から貿易赤字の大きい国への上乗せ分が追加される。TikTokの米国事業売却問題も新たな火種となり、トランプ大統領は売却期限を延長したが、中国は相互関税への対抗として承認を保留している。

オランダのエコノミストは、中国の対米輸出依存度が低下していると指摘し、報復への自信を強めていると分析。米国農業界は前回の貿易戦争で受けた輸出急減などの打撃を訴え、再びの悪影響を避けるよう求めているが、事態悪化への懸念は収まる気配がない。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】米中貿易戦争の裏側:米国圧勝の理由と中国の崩壊リスクを徹底解剖

まとめ
  • 米中関税合戦では米国が圧倒的に有利。国際金融のトリレンマで、変動相場制の米国は自由に動けるが、管理変動相場制の中国は人民元を縛られ、金融政策が制限される。輸出品でも米国の大豆や天然ガスは代替が難しく、中国の電子機器や服は簡単に他国に切り替えられる。
  • 経済規模と貿易依存度でも差は歴然。米国のGDPは25兆ドルで内需が強く、輸出はGDPの11%。中国は18兆ドルで輸出依存度20%と高く、米国市場を失うと痛手が大きい。2018~2019年の貿易戦争で中国経済は揺れ、米国は平然と耐えた。
  • 技術とサプライチェーンでも米国がリード。ファーウェイ制裁や半導体規制で中国を締め上げ、TikTok売却問題でも圧力をかける。中国が報復関税に固執するのは意地だけだ。変動相場制と市場自由化が必要だが、共産党の統制がそれを阻む。
  • 共産党の体制が中国の足かせだ。民主化、政治と経済の分離、法治国家化が改革に必要だが、党の支配が崩れるのを恐れてできない。このままでは経済が衰退し、ソ連崩壊のような末路が待つ。経済に疎い習近平にはこの現実が見えていない可能性がある。
  • 現実が明らかになれば、中国は軍事で賭けるかもしれない。2024年の台湾演習や軍事費2450億ドルが示すように、覇権強化を狙う可能性がある。だが、米国は2正面作戦に限界があり、2025年トランプはアジアシフトを宣言。AUKUSや日韓協力で迎え撃つ準備を進めている。

トランプが「関税」のハンマーを振りかざし、習近平を圧倒! 米国の経済力と技術優位が中国を追い詰める   AI生成画像

米中間の関税合戦が火を噴いている。だが、マスコミがあまり騒がない裏で、中国が明らかに不利で、米国が圧倒的に有利な状況が広がっているのだ。この現実は、国際金融のトリレンマという世界の金の流れを支配するルールや、為替の違い、貿易への依存度から見ると、ビシッと浮かび上がる。米国は変動相場制で自由に動き回れるし、輸出品の強さ、国内市場の巨大さ、技術の力でも中国をぶっちぎっている。
中国が報復関税で意地を張っても、自分の首を絞めるだけだ。生き残る道は、為替制度をガラッと変え、市場を自由に開くことしかない。なのに、中国はそれができない。共産党の政治が足を引っ張り、民主化や法治国家への道を塞いでいるからだ。このままじゃ、長く衰退し、ソ連が崩れたみたいな末路が待っているかもしれない。
しかも、この現実は経済に疎い習近平やその取り巻きたちが強く認識していない可能性がある。今は報復関税に終始しているが、いずれ誰の目にも明らかになる。その時、中国は最後の賭けに出るかもしれない。それは、軍事力を使った覇権の強化だ。だが、米国は今、2正面作戦を余裕でこなせる状態じゃない。だからこそ、トランプはアジアにシフトすると宣言しているんだ。さあ、一気にその核心に突っ込んでみよう。
まず、国際金融のトリレンマだ。これは、金の流れを動かす3つの柱——為替を固定するか、資本を自由に動かすか、金融政策を自分で決めるか——を全部は手にできないという法則だ。どれか2つしか選べない。経験も数字もこれを裏付けている。米国は変動相場制を選んだ。ドルは世界の基軸通貨だ。資本を自由に動かしつつ、連邦準備制度が金融政策をガンガン進められる。2022年、インフレを抑えるために利上げした時、ドル高がグイッと進んだ。だが、米国経済はビクともしなかった。
変動相場制を採用している国なら、関税で輸出が減ると通貨が下落し、輸出品が安くなって競争力が回復する。2015年の日本の例を見ると、円安が進んだことで自動車や電子機器の輸出が持ち直し、経済が安定した(日本銀行データ)。米国も変動相場制だ。2022年、FRBがインフレ抑制のために利上げした時、ドル高が進んだが、その後調整が入り、輸出産業は大きなダメージを免れた(米国商務省)。つまり、米国は関税戦争の影響を為替の動きでカバーできる余地がある。

だが、中国のような固定相場制に近い管理変動相場制の国では話が違う。人民元はドルに縛られ、自由に動けない。中国人民銀行は為替を一定の範囲に抑えるため、2018~2019年の貿易戦争で外貨準備を大量に投入した(中国人民銀行発表)。為替が動かないから、関税のダメージを緩和する余地がない。2018年、米国が中国製品に25%の関税をかけた時、中国の輸出は急減し、GDP成長率が6.6%から6.1%に落ち込んだ(中国国家統計局)。一方、米国は為替調整で輸出競争力を維持し、内需の強さもあって経済は安定した(米国経済分析局)。
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次に、輸出品の違いだ。米国の対中輸出は大豆、トウモロコシ、天然ガスといった生活や産業に欠かせないものだ。中国が関税をかけても、完全には切れない。2018年、米国産大豆に25%の関税をぶつけた時、輸入は減った。だが、中国はブラジルに頼るしかなく、コストが跳ね上がった。米国農務省のデータを見れば、2020年以降、中国の需要が戻って輸出が盛り返している。一方、中国の対米輸出は電子機器や服だ。米国が関税をかければ、ベトナムやメキシコにサクッと切り替えられる。商務省の数字でも、2018~2019年に中国からの輸入が減った分、東南アジアがグンと伸びた。このズレが、中国をジリ貧に追い込む。

経済の大きさと市場の力も見逃せない。米国のGDPは約25兆ドル(2023年IMF推計)。中国は18兆ドルだ。米国は世界一の消費市場で、中国企業には欠かせない。2018年、トランプが中国製品に500億ドル、後に2500億ドルの関税を叩きつけた。中国の報復は米国製品600億ドル止まりだ。なぜか? 中国の対米輸出は総輸出の16%(2022年中国税関総署)。米国は7%(2022年米国商務省)。中国企業は米国を失うと痛い。
米国企業は他でカバーできる。貿易への依存度も目を引く。米国の輸出はGDPの11%(世界銀行、2022年)。内需がガッチリ支えている。中国は最近内需にシフトしたとはいえ、まだ20%だ。関税で輸出が減ると、中国経済はガタガタ揺れる。2018~2019年、輸出企業が売上を落とし、仕事が減った。米国は内需の力で平気だ。また米国の一人当たり名目GDPは約76,399ドルで、世界でもトップクラスに位置している。これに対し、中国の一人当たり名目GDPは約12,720ドル。この数字から、米国の一人当たりGDPは中国の約6倍に達している。この差はデカすぎる。
技術とサプライチェーンでも米国が圧倒する。半導体や先端技術でリードし、中国を締め上げる。2020年のファーウェイ制裁、2022年の半導体規制で、中国のハイテク産業は大打撃だ。国産化を急ぐが、台湾のTSMCや韓国のサムスンに追いつけない。米国は中国の安物に頼らず、サプライチェーンを広げられる。TikTokの話もそうだ。2025年4月、トランプが売却期限を75日延ばしたが、中国が承認を渋り、計画はポシャった。米国市場を失うリスクは中国側に重く、米国は平然と圧力をかける。
中国が報復関税にしがみつくのは、意地っ張りにしか見えない。経済に疎い習近平やその側近が、現実を分かってないのかもしれない。2018~2019年、GDP成長率が6.6%から6.1%に落ち(中国国家統計局)、製造業も低迷した。中国のGDP統計なんて信用ならないが、落ち込んだのは確かだ。関税は輸入コストを上げ、自国を苦しめる。抜け道はある。変動相場制にして人民元を市場に任せ、市場を自由にすればいい。2015年の人民元切り下げで輸出が持ち直した例もある。資本を自由に動かし、投資を呼び込めば、経済は強くなる。だが、中国は動けない。
なぜだ? 共産党の体制が邪魔をする。経済は党が牛耳り、人民銀行も国有企業も党の言いなりだ。変動相場制は人民元を市場に預けること。資本の自由化は資金が海外に逃げるリスクを孕む。それを防ぐには市場を透明にしないといけないが、共産党はそんなこと許さない。国有企業を優遇し、民間を締め付ける。2021年、アリババや滴滴出行を叩いたのは、党が経済を握りたいからだ。1989年の天安門後、鄧小平は経済を開いたが、政治は触らなかった。
今の習近平は権力を握り、改革を嫌う。本当は、民主化、政治と経済の分離、法治国家が必要だ。米国や西側じゃ当たり前だ。だが、中国では共産党が法の上に立ち、経済も党の道具だ。民主化は国民の声が力を持つ。政治と経済が別れれば、国有企業の利権が消える。法治国家なら党の勝手が通らない。だが、これをやれば共産党の支配が崩れる。だからできない。改革は体制を揺るがす爆弾だ。
だから中国は動けない。関税で意地を張るだけだ。だが、この現実は、いずれ誰の目にも明らかになる。経済に疎い習近平やその取り巻きは、今は報復関税に終始している。2025年3月、中国外務省の王毅は「米国の一方的ないじめ」と非難し、対抗措置をチラつかせた(CNN報道)。だが、経済は弱り、成長率は2010年代の8%超から5%台へ(2023年予測)。人口は減り、借金は膨らむ。
中国人民解放軍は今月2日間にわたって、台湾周辺で実弾演習を行った
ソ連は計画経済で潰れ、1991年に崩壊した。中国も同じ道をたどるか? その時、最後の賭けに出るかもしれない。軍事力を使った覇権の強化だ。2024年10月、習近平は台湾周辺で軍事演習を強化し、「戦争準備」を叫んだ(BBC報道)。中国の軍事費は2450億ドル(ストックホルム国際平和研究所、2023年)と米国(9160億ドル)の4分の1だが、アジアに集中すれば脅威だ。
だが、米国は今、2正面作戦を余裕でこなせる状態じゃない。ウクライナと中東で手一杯だ。2022年、ロシアのウクライナ侵攻で米国は軍事支援に追われ、2023年にはイスラエル支援も重なった(米国防総省)。兵站も予算も伸びきっている。だから、トランプはアジアにシフトすると宣言したのだ。2025年1月、彼は「アジアが最優先」と演説し、日本や韓国との同盟強化を強調した(AP通信)。AUKUSやクアッドも動き出し、2023年に米国、日本、韓国がキャンプデービッドで協力を固めた(ホワイトハウス発表)。中国が軍事で賭けに出ても、米国はアジアで迎え撃つ準備を進めている。
結論だ。米国は経済の力と体制の柔軟さで中国をぶっちぎる。報復関税は中国を弱らせるだけだ。為替と市場を変えなければ生き残れない。だが、共産党がそれを許さない。民主化も法治も無理だ。この現実を習近平が見誤れば、いずれ崩壊が誰の目にも明らかになる。その時、軍事で賭けるかもしれないが、米国はアジアにシフトして備えている。この戦い、米国が圧倒的に有利なのは、経済と現実が証明する揺るぎない真実だ。
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2025年3月25日火曜日

「デフレ克服していない」 加藤財務相、英紙に表明―【私の論評】日本がデフレ脱却できない衝撃の理由!物価・賃金・日銀の失策を暴く

「デフレ克服していない」 加藤財務相、英紙に表明

まとめ
  • 加藤勝信財務相は、日本がデフレを克服していないと認識し、物価や賃金上昇があってもデフレ再発の懸念がなくなるまで慎重に判断すべきだと強調。
  • 経済正常化には長期的な賃金上昇が物価上昇を上回ることが不可欠と訴え、日銀が政策金利を0.5%に据え置いた直後のインタビューで語った。

 加藤勝信財務相は、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、日本がまだデフレを克服していないと述べた。物価や賃金が上がっているが、デフレ再発の懸念がなくなるまでは克服を宣言すべきでないと強調。

 日銀が政策金利を0.5%に据え置いた会合直後に語った。基調的な物価や背景を総合的に見て慎重に判断すべきとし、経済正常化には賃金上昇が物価上昇を上回ることが必要だと訴えた。

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【私の論評】日本がデフレ脱却できない衝撃の理由!物価・賃金・日銀の失策を暴く

まとめ
  • 日本はデフレから脱却できておらず、コアCPIは2023年に2.5%、2024年に2.3-2.7%と不安定で、コアコアCPIも2.1-2.4%と低迷。需要が物価を押し上げる力はなく、デフレ脱却の兆しはない。
  • 実質賃金は2013年以降横ばいかマイナスで、2023年は1.8%減、2024年も1.0%減。名目賃金の上昇(2-3%)は物価上昇(3%超)に追いつかず、消費は冷え込んでいる。
  • QQE(量的・質的金融緩和)は日銀が国債や株を買い、お金を増やす政策。マネタリーベースは700兆円に達したが、マネーストック(M2)は年2-3%増の1,300兆円にとどまり、経済に火がつかない。
  • 金融緩和なしの賃上げは雇用を壊す。韓国の文在寅政権は最低賃金を急上昇させたが、金融緩和不足で2019年に失業率4.0%、雇用10万人減。2021年以降は財政と輸出で回復した。
  • 日銀の金融政策は失敗。QQEやマイナス金利でマネーストックは伸びず、2024年7月の利上げ(0.25%)は銀行支援が目的で、実体経済への効果はほぼゼロ。デフレ脱却には強力な金融緩和が必要だ。

日本はデフレの泥沼から抜け出せていない。誰もが感じるその息苦しさを、数字がはっきりと示している。総務省のデータだ。コアCPI(生鮮食品を除く)は2023年に平均2.5%上がったが、2024年は2.3%から2.7%でフラフラだ。2025年3月時点でも、2%を超えるのはエネルギー価格のせいで、安定感はゼロだ。コアコアCPI(生鮮食品とエネルギーを除く)はもっと情けない。

2023年で2.1%、2024年は2.3%から2.4%だ。2024年12月時点で2.4%(ニッセイ基礎研究所)と低空飛行だ。サービス価格は1.5%から1.6%しか上がらず、需要が物価を押し上げる力なんて皆無だ。コアCPIが一瞬2%を超えてもすぐ失速し、コアコアCPIは2%に届くか届かないかでウロウロ。デフレ脱却? 笑わせるな、そんな気配はどこにもないのだ。

実質賃金もズタボロだ。厚生労働省の「毎月勤労統計」によれば、2013年以降、ずっと横ばいかマイナスだ。2023年は前年比1.8%減、2024年も1.0%減くらいだ(速報値)。2023年の春闘で名目賃金が2%から3%上がったと言うが、物価上昇(CPI総合で3%超)に追いつかず、財布はスカスカだ。製造業の労働者がNHKの番組で吐き捨てた。「給料上がっても物価高で貯金が減る一方だよ」。その言葉が胸をえぐる。賃金が上がらないから消費は冷え、デフレの鎖が経済をガッチリ締め上げているのだ。

いまはマネタリーベースとマネーストックをぶち込むべきなのだ。マネタリーベースは、日銀が現金と銀行の準備預金で世に放つお金の総量だ。2013年の量的・質的金融緩和、通称QQEでガンガン増やした。QQEは、日銀が国債や株を買いまくって、お金をジャブジャブにする作戦だ。2013年に始まり、2023年時点でマネタリーベースは約700兆円、GDP比130%だ。

マネーストック(M2)は、世の中を流れているお金の量、現金と預金を足したものだ。こいつが消費や投資に回るかどうかが勝負だ。だが日本じゃ年率2%から3%しか増えず、2023年で約1,300兆円だ。問題はここだ。QQEでマネタリーベースを増やしても、マネーストックが育たない。銀行の貸し出しも企業の投資も火がつかない。デフレをぶっ壊すには、マネーストックをドカンと増やすしかないのだ。

最近は賃上げが話題だが、金融緩和なしで賃上げだけやると、どうなるか。雇用がズタズタになる。ケインズ経済学の進化形の現代の標準的なマクロ経済学が言う通り、金融緩和で需要をぶち上げないと、賃上げは企業の首を絞め、仕事が消える。韓国の文在寅政権がその証だ。2017年から2022年、最低賃金を無理やり吊り上げた。2018年は16.4%増、2019年は10.9%増だ。だが金融緩和がショボかった。

結果、雇用は崩壊だ。韓国統計庁のデータでは、2019年の失業率が4.0%に跳ね上がり、製造業の雇用は10万人も減った。中小企業や自営業は潰れまくり、コンビニや飲食店がバタバタ倒れた。「雇用ショック」と呼ばれたあの地獄だ。でも2021年以降、コロナ対策で財政をぶち込み、半導体輸出が好調だったおかげで持ち直した。2022年の失業率は3.0%まで下がった。金融緩和が足りなかった分を、財政と外需がカバーしたわけだ。日本が同じ道を辿れば、雇用が吹っ飛ぶのは確実だ。

雇用を激減させた文在寅

消費も死んでいる。総務省の「家計調査」だ。2人以上世帯の実質消費支出は、2020年を100としたら、2023年で98.5、2024年で99.0だ。ほぼ動かない。名目では2023年に2%増えたが、物価が上がれば実質は減る。地方の高齢者が読売新聞でこう言った。「値上げで外食なんか減らすしかない。節約が当たり前だ」。消費者が値下げを待ち、企業が値上げをビビる。この腐ったサイクルがデフレを延々と引っ張っているのだ。

日銀の金融政策はどうだ。大失敗だ。「限界」じゃない、やり方が間違っているのだ。QQEでマネタリーベースは増えたが、マネーストック(M2)は年2%から3%しか伸びない。マイナス金利やイールドカーブ・コントロール(YCC)は銀行を苦しめ、貸し出しのやる気を奪う。日銀の「生活意識調査」(2024年)では、期待インフレ率が1%未満で固まっている。地方銀行の社員が日経新聞で吠えた。「低金利で融資先がない。国債しか買えないよ」。お金が経済に流れず、死に金だ。

さらに腹立たしいのは、日銀が金融機関を助けるためだけの施策に終始している点だ。証拠はある。2024年7月、日銀は短期金利を0.25%に引き上げたが、その理由を「金融機関の収益環境改善を支援する」と明言した(日銀政策決定会合後の声明、2024年7月31日)。日本銀行の「金融システムレポート」(2024年10月)でも、銀行の利ザヤが圧迫されすぎて経営が危ないと大騒ぎだ。だが実体経済への効果は? ゼロに近い。貸出残高は2024年で前年比1.5%増(日本銀行統計)と、雀の涙だ。企業や家計にお金が回らず、銀行の帳簿を飾るだけ。こんな政策でデフレが終わるはずがないのだ。

デフレをぶち壊すには、金融緩和をガンガン続けるしかない。ケインズ経済学の進化形の現代のマクロ経済学が示す通り、マネーストックを増やし、期待インフレ率をぶち上げる。米国のFRBは1990年代や2020年にそれをやった。M2を10%以上増やし、経済に火をつけた。日本は? M2/GDPが180%もあるのに、国債に偏って消費や投資に回らない。BISのデータでも、米国の緩和は経済を動かし、日本は停滞だ。2020年の米国では、中小企業がウォール・ストリート・ジャーナルでこう言った。「融資が増えて雇用を増やせた」。日本もそうしろ。ETFや社債をガツガツ買い、財政と組んだ緩和をぶち込め。中途半端な利上げなどは、デフレのドン底に突き落とすだけだ。

日銀植田総裁

ここで大事な話だ。緩和をやれば、インフレ傾向になる。物価が上がるということだ。ビビるな、それは実は歓迎すべきことだ。なぜか。デフレの今は、お金が回らず、みんなが節約して経済が縮こまっている。物価が上がれば、企業は儲けを増やし、投資に動き出す。消費も活気づく。

たとえば、アメリカでは2021年にインフレ率が6.1%まで跳ね上がった時、企業は売上が伸び、人を雇い始めた(米労働省データ)。ウォール・ストリート・ジャーナルの記事で、ある店主がこう言った。「物価が上がったおかげで売り上げが増え、従業員の給料を上げられたよ」。日本だって同じだ。緩和でインフレが起これば、経済に血が通う。

そして何より、緩和を続ければ、賃金がインフレ率を上回って上がる。どういうことか。緩和でお金がジャブジャブになれば、企業は人手不足に悩む。仕事が増えて、人が足りなくなるからだ。すると、給料を上げてでも人を確保する。実際、アメリカでは2021年から2022年にかけて、インフレ率が6.1%に対し、平均時給は5.7%から6.5%上がった(米労働省データ)。インフレ率にほぼ追いつき、一部上回った。日本も緩和を続ければ、たとえば物価が3%上がる中で、賃金が4%や5%上がるなんてことが現実になる。財布の中身が増え、生活が楽になる。それがデフレ脱却の道だ。インフレを恐れるな。緩和で経済を動かし、賃金をインフレを上回るようにガツンと上げる。それが正解なのだ。

結論だ。コアCPIとコアコアCPIがフラフラ、実質賃金が下がり、消費が死んでいる。日本はデフレの泥沼から抜け出せていない。QQEでマネタリーベースを増やしてもマネーストックが育たず、金融政策は大失敗だ。韓国の雇用崩壊は賃上げだけじゃダメだと教えてくれる。あの回復は外からの助け頼みだった。日本は再度包括的金融緩和で、マネーストックを増やし、需要に火をつけるべきだ。2025年3月、デフレをぶっ壊すのに緩和が絶対必要なのに、日銀が利上げを企んでるなんて頭おかしい。このままじゃ経済が死ぬ。この狂った動きを今すぐ止めなきゃならないのだ。

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2025年3月12日水曜日

モスクワに過去最大の無人機攻撃、3人死亡 航空機の運航一時停止―【私の論評】ウクライナのモスクワ攻撃が停戦交渉を揺さぶる!核の影と日本の覚悟

モスクワに過去最大の無人機攻撃、3人死亡 航空機の運航一時停止

まとめ
  • 攻撃概要: 2025年3月11日未明、ウクライナがモスクワに過去最大のドローン攻撃。343機使用、3人死亡、17人負傷、4空港閉鎖。
  • ロシアの反応: ロシアは91機をモスクワ州、126機をクルスク州で撃墜。外務省は協議タイミングを指摘、報復提案も。
  • 被害: 住宅7軒破壊、クルスク原子力発電所付近で撃墜、周辺空港も閉鎖だがパニックなし。

 2025年3月11日未明、ウクライナがロシアの首都モスクワに対し過去最大規模のドローン攻撃を実施した。少なくとも3人が死亡、17人が負傷し、モスクワ州では火災が発生した。モスクワの4つの主要空港全てが一時閉鎖され、運航が停止。ロシア国防省は343機のドローンを撃墜し、91機がモスクワ州上空、126機がクルスク州上空で迎撃され、クルスク原子力発電所付近でも撃墜があったと発表した。

 ロシア外務省は、この攻撃がサウジアラビアでの米国とウクライナの高官協議に合わせて行われたとし、兵器供給国に責任があると非難。モスクワ州知事は、7軒の集合住宅が破壊されたとテレグラムで報告。航空当局はモスクワとヤロスラブリ、ニジニノヴゴロドの空港を閉鎖した。モスクワ市長は攻撃の規模を過去最大と強調し、ロシア側は民間インフラへの攻撃として非難。元国防次官は新型ミサイル「オレシニク」での報復を提案した。メディアは住宅火災の動画を公開したが、モスクワ市内でパニックは見られなかった。

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【私の論評】ウクライナのモスクワ攻撃が停戦交渉を揺さぶる!核の影と日本の覚悟

まとめ
  • 停戦交渉の進展: 3月11日、サウジアラビアで米国とウクライナが30日間の即時停戦案で合意。米国は軍事援助と情報を再開し、ロシアの同意を待つ段階に突入。
  • モスクワ攻撃の警告: ウクライナが343機のドローンでモスクワを攻撃。停戦前のロシアへの圧力と「破れば報復」のメッセージが込められている。
  • ロシア全土への脅威: モスクワ到達でウクライナの攻撃力露呈。2000km飛行可能なドローンで、シベリアもウラルも標的になり得る。
  • クルスクの核示唆: クルスク原子力発電所近くで126機撃墜。ダーティボムや核兵器を匂わせ、ロシアに心理的打撃を与えた可能性がある。
  • 日本の教訓:やり方の是非は別にして、 ウクライナの覚悟と力を日本も見習うべき。守る気概がなければ舐められるだけだ。
ウクライナとロシアの戦争終結、和平を探るためのウクライナと米国の高官協議が11日、サウジアラビア西部ジッダで始まった。
3月11日、サウジアラビアのジェッダで米国とウクライナの高官が顔を突き合わせた。米国がぶち上げた30日間の即時停戦案に、ウクライナが「乗る」と腹を決めたのだ。これを受けて米国は、ウクライナへの軍事援助と情報提供のストップを即刻解除すると宣言。共同声明で「ロシアが首を振らなきゃ平和は来ない」と言い切り、モスクワへの働きかけに動き出した。停戦はロシアが「よし」と言えば即発効、戦闘を根こそぎ止めるのが狙いだ。トランプ政権の「戦争を終わらせる」という大看板の下、交渉は今、まさにモスクワに照準を合わせている。ロシアの返事はまだ聞こえてこないが、停戦への道が一歩近づいたのは間違いない。
そんな矢先に起きたのが、ウクライナによるモスクワへのドローン攻撃だ。343機が飛び交い、モスクワの空を切り裂いたこの攻撃は、停戦を前にしたロシアへの強烈な警告だろう。ウクライナ国家安全保障防衛会議の報道官アンドリー・コバレンコが吠えた。「モスクワへの大規模攻撃は、プーチンに空での停戦が必要だと叩き込むシグナルだ」。交渉を前に、ロシアに「舐めるな」と圧をかける意図が透けて見える。過去を振り返れば、2024年8月、クルスク州でウクライナ軍がロシア領に踏み込み、38平方マイルを一時奪った。あの時も、ロシアに「本土だってやられるぞ」と見せつけた。今回のモスクワ攻撃も、停戦を破れば地獄が待っているというメッセージに違いない。
ウクライナのドローン攻撃に逃げ場のないプーチン AI生成画像

モスクワがやられたということは、ウクライナがロシア国内のいずれの地域でも攻撃力を持っている証だ。343機ものドローンがモスクワにたどり着いた現実を前に、ロシアの防空網がザルだったことがバレてしまった。2025年1月にはリュザンで石油精製所が燃え、ロシア側は121機を迎撃したと主張したにもかかわらず、火の手が上がった。2024年9月のモスクワ攻撃でも、石油精製所が炎上して民間人が死んでいる。Xでは、ウクライナのドローンが2000km飛べる上に250kgの爆弾を積めると噂が飛び交う。モスクワはキーウから600kmだが、シベリアだろうがウラルだろうが、どこでも狙えるということだ。ロシアにはもう、逃げ場はない。

クルスク原子力発電所近くでの攻撃は、もっと際どい話だ。ロシア国防省は、126機がクルスク州で落とされ、一部が発電所そばで撃ち落とされたと報告している。将来的にダーティボムや核兵器をチラつかせる狙いがあるかもしれない。2022年10月、ロシアは「ウクライナがダーティボムを作る」と騒いだが、国際機関に否定された。だが今回は、核施設のすぐ近くを狙った。

2023年10月には、クルスクの核廃棄物施設にドローンが突っ込んで、ロシアが「核テロ」と叫んだことがある。250kg積めるドローンなら、放射性物質をばらまくダーティボムはすぐに作れる。ウクライナには原発があり、プルトニウムも手に入る。長崎の原爆はプルトニウム製で、旧ソ連の技術を引き継ぐウクライナなら、その気になれば似たもの比較的短期で作れる可能性がある。クルスクでの攻撃は、ロシアに「核戦争だってあり得るぞ」とモスクワに頭を抱えさせる一撃だったろう。

ドローン攻撃を受けるクルスク原発付近 AI生成画像

結局、2025年3月11日のモスクワ攻撃は、停戦前のウクライナからの強烈な一撃だ。協議のタイミングとウクライナの言葉がその証拠だ。ロシア全土を撃てる力を誇示し、クルスクで核の影をちらつかせて、停戦後のルールをモスクワに文字通り叩き込んだ。戦争の流れが変わる可能性をもつこの攻撃は、交渉の行方を左右する大勝負になる。

日本も目を覚ますべきだ。ウクライナのように、自分の国を守る覚悟と力を見せつけなれば、いつまでたっても中露北に舐められたままだ。やり方の是非は別にして、ウクライナのこの肝っ玉だけは見習うべきだ。日本は、現状のままでは本気で生き残る覚悟があるのかと、批判されても仕方ないかもしれない。

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2025年3月7日金曜日

米国は対ロシア制裁強化も辞さず、和平につながるなら-ベッセント氏―【私の論評】米国がロシアとイランを締め上げる制裁の本質、ウクライナのためだけではない

米国は対ロシア制裁強化も辞さず、和平につながるなら-ベッセント氏

まとめ
  • ロシア制裁、「最大限の効果もたらすべく積極的に活用される」
  • 対イラン制裁も強化、石油セクターを「シャットダウン」へ-長官

ベッセント米財務長官

ベッセント米財務長官は6日、ウクライナ停戦のためならロシア産エネルギーへの追加制裁も検討すると述べた。ニューヨークの講演で、トランプ大統領の指示に基づき対ロシア制裁を積極活用すると話し、停戦交渉での影響力増を期待。バイデン前政権の制裁躊躇を批判し、イランへの制裁強化も表明、石油セクターを「シャットダウン」して再び破産させると語った。

原題:US Won’t Hesitate on Russia and Iran Sanctions, Bessent Says (1)(抜粋)

【私の論評】米国がロシアとイランを締め上げる制裁の本質、ウクライナのためだけではない

まとめ
  • 制裁の概要: 米国はロシアとイランに制裁を課す。ロシアは2022年のウクライナ侵攻以来、エネルギーや軍事産業が対象。2025年1月、250の個人・団体が追加された。イランは核開発やロシア支援で、2025年2月に石油産業が締め上げられた。
  • 背景: イランは2024年9月の国連報告でロシアへのミサイル供与が発覚。2024年米選挙介入疑惑も制裁理由。トランプ政権はイラン石油をゼロに近づける計画だ。
  • 継続性: ロシアへの制裁は2025年3月7日時点で継続。トランプは和平次第で緩和を示唆。イランは新制裁で石油輸出を潰す方向だ。
  • 誤解の否定: 「ウクライナばかり厳しい」は誤り。2025年2月、インド・UAEとイラン石油摘発。ロシアとの和平論もあるが、裏切りリスクで単純ではない。
  • 本質: 制裁は軍事力疲弊が目的。2025年3月IMFはロシア成長を報告するが、2024年12月国防総省は兵器開発遅れを指摘。イランも勢力削減が狙いだ。

米国によるロシア制裁(sanctions)は、ウクライナ戦争のためだけではない

米国がロシアとイランに突きつける制裁は、ただの経済圧力ではない。そこには国際政治のドロドロした力学が渦巻いている。まずはロシアだ。2022年、ウクライナに軍を突っ込んで以来、アメリカは容赦なく締め上げてきた。狙いは明確だ。エネルギー、金融、軍事産業をズタズタにして、ロシアの息の根を止めること。石油やガスの輸出を絞り、北極や深海での新プロジェクトを潰す。

2025年1月、米国務省がぶち上げた発表では、軍事産業を支える250もの個人や団体が新たに制裁の標的となった。中国経由の裏ルートまで叩き潰す気満々である。これぞ、ロシアの戦争マシンをぶっ壊し、同盟国と手を組むアメリカのしたたかな一手だ。

次にイランだ。これは1979年の大使館占拠からずっとアメリカとケンカ状態だ。最近では、核開発、ロシアへの武器支援、中東でのテロ資金ばらまきが制裁の火種である。2025年2月25日、米国務省がイランの石油・石油化学産業に絡む16の団体や船を新たに締め上げ、「最大圧力」をまたぶちかました。

なぜか。イランがロシアに弾道ミサイルを渡している証拠が暴露されたからだ。2024年9月、国連で公開された報告書がそれを白日の下に晒した。イラン製ミサイルがウクライナ戦場で火を噴いてるなんて、ゾッとする話だ。さらには、2024年の米大統領選に介入した疑惑で、イラン革命防衛隊(IRGC)の連中も制裁の網に引っかかった。圧力は全方位だ。


この制裁は、続くのだろうか? 新たな一撃はあるのか? 答えは簡単ではない。ロシアを見ろ。バイデン時代に作った制裁の鉄の枠は、2025年3月7日時点で未だ残っている。1月20日にトランプ政権が船出した今も、ウクライナ戦争がくすぶっている限り、方針は揺るがないだろう。

だが、トランプは一筋縄ではいかない。「ロシアが和平交渉に乗るなら、制裁を緩める余地もある」と、2025年2月20日のブルームバーグで口にした。3月4日のロイター報道では、ホワイトハウスが条件付きで緩和をチラつかせてるという話しもある。実際、2024年末にはトランプ陣営がウクライナと接触し、停戦の糸口を探ってたらしい。制裁は外交の切り札だ。

イランはどうだ。トランプは核合意(JCPOA)をゴミ箱に叩き込んで、「最大圧力」をガンガン進める気だ。ベッセント財務長官が吼えた。「イランの石油をシャットダウンする。計画はもう動いてる」。石油輸出をゼロ近くまで絞り、経済を再び破産させる魂胆だ。2025年2月の制裁強化はその第一歩。

2020年、トランプがイランの石油を日量50万バレル以下に叩き落とした再現を狙ってるって、専門家も騒いでる。ロシアとの軍事タッグをぶち壊す意味でも、新たな制裁がどんどん追加される可能性は大きい。

2025年1月、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)での討論会(注: CSISと推定。公式記録は未確認で、他の可能性もあり得る)で、専門家が叫んだ。「イランの石油マネーを断てば、ロシア支援も終わる」。アメリカの政策屋もその線に乗り気だ。

最近は、「アメリカはウクライナにばかり厳しい」などという声があるが、その見立ては間違っている。ロシアやイランの締め上げは、ウクライナ支援と肩を並べて進んでいる。ロシアに遠回しにプレッシャーをかけるイラン制裁は続いている。2025年2月、インドやUAEと組んでイラン石油の裏輸出を摘発した動きは、それが続いている証だ。アメリカは世界の安全保障を睨んだ多面作戦を繰り出しているのだ。

トランプ政権の安全保障チームには、こんな声もある。「ロシアと握ってでも、欧州のグダグダ戦争を終わらせよう。欧州の安保は欧州人に押し付けろ」。2025年2月、ヘリテージ財団の報告書がそう吠えた。「ロシアとのケンカを緩めて、中国に集中すべきだ」。しかし、米国が中国とバチバチやってる最中にロシアに裏切られたらどうする?

 2014年のクリミア併合で、西側との約束を平気でぶち壊したロシアだぞ。トランプだって、2024年選挙戦で「ロシアは信用ならん。しかし交渉で押さえ込む」とハッキリ言った。対ロシア戦略は単純ではない。トランプは和平模索と中国牽制の二刀流で、制裁の緩急を巧みに操るだろう。

ロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島セバストポリの街頭に掲げられた、プーチン露大統領のポスター

何にせよ、単純で薄っぺらい見方では、この本質は掴めない。ロシア制裁がウクライナのためだけだけなどという見方は噴飯ものだ。2025年3月のIMF報告では、ロシア経済が制裁下で2.1%成長だとぬかしてる。効果がない? こういう連中は、大きな戦争を遂行するための戦争経済においては、GDPが伸びるという経験則を知らないようだ。米国の本当の狙いは、GDPがどうのこうのという前に、ロシアの軍事力をジワジワ疲弊させることだ。

2024年12月、国防総省が「ロシアの軍事予算が圧迫され、新兵器が遅れている」と暴露した。イラン制裁も同じだ。経済的締め付けなどは表層に過ぎない。本当の狙いは、中東でのイランの勢力を削ぎ、ロシアとの連携を断つことだ。2025年2月、シリアでイラン支援の民兵が後退したニュースがそれを証明してる。

表向きの経済数字や外交の甘言に騙されず、裏の戦略と、長期の視点で見るべきだ。ロシアとイランへの制裁は、両国の経済と軍事力を削ぐため続いている。トランプ政権でもその流れは変わらない。ロシアは和平交渉で緩む隙があるが、イランは石油と軍事支援への新制裁でガチガチに締め上げられる公算大だ。

ウクライナや中東の動き次第で、どうなるかまだ流動的だ。ロシアが停戦飲めばある程度、制裁が軽くなるかもしれないし、イランが核を加速させればさらに制裁はきつくなるだろう。しかし、米国がロシアと握って中国と対峙するなどとう単純な見方だけでは、現実を見誤ることになるだろう。

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2025年2月26日水曜日

高校授業無償化が柱の新年度予算案、合意文書に自公維が署名…予算成立確実に―【私の論評】高校無償化で中国の魔の手が!? 中長期では医療費タダ乗りと移民急増の危機

高校授業無償化が柱の新年度予算案、合意文書に自公維が署名…予算成立確実に

まとめ
  • 自民、公明、維新が2025年2月25日に高校無償化の予算案修正で合意。維新賛成で3党が衆院過半数を確保、成立確実。1000億円投じ、修正案提出へ。
  • 2025年度から全世帯に年11万8800円、2026年度から私立高校生に年45万7000円支援、所得制限なし。給食無償化も推進、財源4000億円は未定。
  • 保険料軽減協議体設置、医療費4兆円削減を考慮。維新初の予算賛成で、与党は「103万円の壁」見直しも維新と連携へ。


 自民、公明、日本維新の会が2025年2月25日に高校授業料無償化を柱とする2025年度予算案の修正で合意し、署名した。維新は予算案に賛成を決め、3党の議席で衆院過半数を確保、予算成立が確実になった。石破首相、斉藤公明代表、吉村維新代表が出席した党首会談で、首相は与野党合意の意義を強調。高校無償化に1000億円を投じ、29年ぶりの予算修正案を出す方針だ。

 合意では、2025年度から全世帯に年11万8800円の就学支援金を支給。2026年度からは私立高校生への支援を年45万7000円に引き上げ、所得制限を撤廃。小学校給食無償化を2026年度から、中学校も早期に目指す。財源4000億円は行財政改革で確保するが、具体策は不明。社会保障改革では保険料軽減の協議体を設置し、維新の医療費4兆円削減を「念頭に置く」で妥結。

 衆院では自公220議席に維新38議席が加わり、過半数の258議席を握る。維新が予算案に賛成するのは初。吉村氏は「公約実現のため」と意気込む。与党は国民民主党との「年収103万円の壁」見直しでも、維新に協力を求める構えだ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】高校無償化で中国の魔の手が!? 中長期では医療費タダ乗りと移民急増の危機

まとめ
  • 自民、公明、維新の3党が2025年2月25日に高校無償化で合意。短期的(1~3年)には、中国人留学生急増や私立高校乗っ取り、医療費タダ乗りの懸念はないかもしれない。合意の目的は教育費軽減で、現行法が防ぐ。
  • ただし中長期(4~10年)では、中国が私立高校を資金で支配し、移民が増え、医療費が膨張するリスクあり。孔子学院やオーストラリアでの浸透(土地2.3%掌握、1500億豪ドル投資)が示す中国の脅威はリアル。
  • 外国人住民(2023年322万人)が無償化で増え、国民健康保険の外国人加入者(150万人、4%)が倍増なら医療費は1000億円超。中国のタダ乗り業者や医療施設買収が危機を加速。
  • 維新の医療費4兆円削減導入なら、病院縮小で日本人医療が後回しに。移民のタダ乗りが増え、国民皆保険崩壊の危険。中国の隙をつく動きが懸念される。
  • 政府の透明性・監視はザル。オーストラリアは献金禁止法で対抗、日本は無策。このままでは教育・医療が中国に食われ、国民が苦しむ可能性がでてくる。
元衆議院議員の金子恵美氏は26日、フジテレビ系「めざまし8」で、自公維が高校無償化で合意したことについて「言葉は悪いが、教育行政を人質にして予算を取ったと私は思っている」と発言

自民党、公明党、日本維新の会が2025年2月25日にぶち上げた高校授業料無償化の3党合意。これが火種となって、「いずれ中国人高校生が殺到する」「中国が私立高校を乗っ取り、移民が押し寄せ、国益を損なう教育が横行する。挙句に納税者に負担を押し付け、医療費のタダ乗りまで増える」との声が沸き上がっている。これは本当なのか。「短期」を1~3年、「中長期」を4~10年と見立てて、この不気味な予測を精査してみよう。

短期的には、さほど心配はないかもしれない。この合意に中国人留学生を増やす文言なんて一文字もない。目的は日本に住む全世帯の教育費を減らすことだ。文部科学省のデータ(2023年度)を見れば、高校レベルの外国人留学生なんて雀の涙ほど。中国人高校生が急に増えるなんて杞憂にすぎないかもしれない。

ビザの壁は厚いし、そもそも現状では学校だって受け入れる態勢がない。中国が私立高校を買い漁る? 学校教育法や私立学校法が鉄壁のガードだ。そんな簡単に乗っ取られることはないかもしれない。国益をぶち壊す教育を押し付けるなんてできないし、移民推進も目立って進んではいない。医療費のタダ乗りも今は大問題ではない。国民健康保険に加入する外国人は約150万人(2022年度)。無償化で多少移民の子供が増えても、1~3年で医療費が跳ね上がることはないだろう。しかし、これで安心てきるのだろうか。

日章学園九州国際高校の在学生の9割が中国人留学生

4~10年先となると、背筋が寒くなる。中国が動き出す可能性は大きい。日本には約1300校の私立高校があるが、少子化で生徒が減り、経営が苦しい学校がゴロゴロしてる。ここに中国が金をかけてくるかもしれない。寄付や提携をエサに理事会に潜り込み、実質的に支配する手口だ。

中国は実際海外で似たことをやってる。孔子学院だ。世界140カ国以上に約550拠点を置き、中国語や文化を教える名目で入り込んできた。だが、アメリカやオーストラリアでは「プロパガンダの巣窟だ」「学問の自由を潰す」と袋叩きにされ、締め出しが始まった。オーストラリアの大学では、中国政府が孔子学院を通じて学生を監視し、反政府的発言を封じ込めていた。2019年にはクイーンズランド大学で、香港デモを支持する学生が親中派に暴力で襲われ、中国領事館がそれを煽ったなどいう話もある。日本でも同じ手口が炸裂しないとは言えない。

しかも、中国には医療費タダ乗りをすすめる業者までいる。外国の保険制度にタダ乗りさせ、儲けを出す連中だ。こんな国だ。いずれ日本の高校をすすめる業者だって出てくる可能性は否定できない。少子化が進めば、学校は金に飢える。規制が緩めば(たとえば外国資本の参入が簡単になれば)、中国が私立高校を次々押さえる未来はリアルだ。

オーストラリアでは、中国資本が土地の2.3%を握り、企業買収に1500億豪ドルをつぎ込んだ。この浸透力は脅威だ。日本が無防備なら、私立高校が中国の手に落ちる危機は十分ありえる。とはいえ、学校教育法や文部科学省の監視が生きてる限り、国益を壊す教育を好き勝手にはできない。政府や世論が黙ってはいないだろうが、油断は禁物だ。

外国人住民は2023年で約322万人(法務省統計)。労働力不足でこれからも増える可能性がある。無償化で教育費が浮けば、中国人を含む移民の子供が私立高校に流れ込む。4~10年でその数は目に見えて増えるかもしれない。今は少ない高校留学生が、家族ごと日本に根を張るケースも出てくる。

中国からの人の波が強まれば、私立高校が中国人だらけなんて悪夢もありうる。だが、ビザや仕事の規制が緩まない限り、爆発的には増えない。無償化だけで移民が押し寄せることは考えにくい。それでも、外国人の割合が上がれば、税金で教育費を賄う負担は重くなる。いまは、情報に敏感な人たちが「移民を増やしてる!」と叫んでいるだけだが、多数の有権者がこれを叫ぶのが現実になる日が来るかもしれない。

そして医療費のタダ乗り。これが一番酷い。国民健康保険に加入する外国人は今、約150万人で全体の4%(2022年度)。だが、無償化で移民が定着すれば、4~10年でこの数字は跳ね上がる。家族で移住し、保険に入る。中国人コミュニティが病院に通えば、医療費は膨らむ。厚生労働省の試算じゃ、今でも年間数百億円かかってる。

移民が倍になれば、1000億円を超えるなんてザラだ。中国は海外で医療にも手を伸ばしてる。オーストラリアでは、中国企業が病院や医療施設を買収し、影響力を広げている。日本でも似た動きが起きないとは限らない。生活保護や医療費減免を使えば、納税者の負担はさらに大きい。「タダ乗りだ!」と怒る声が渦巻くのは時間の問題だ。

ここで維新が主張する「国民医療費を年間最低4兆円削減」が導入されたら、さらに危機が加速する。医療費を4兆円も削れば、病院の経営は苦しくなり、診療体制は縮小する。必要な治療が受けられなくなる日本人が増える一方で、移民がタダ乗りで医療を使う構図が強まるかもしれない。削減で医療リソースが減る中、中国人を含む外国人が保険をフル活用すれば、救えはずだった日本人の命が後回しになる危険すらある。

タダ乗り業者が暗躍する中国なら、この隙を突いてくる可能性は高い。医療費削減とタダ乗りの合わせ技で、国民皆保険が崩壊しかねない。政府が保険のルールを厳しくすれば抑えられるが、そんな気配はまるでない。高橋洋一氏は「医療費タダ乗り問題は米国流の民間保険加入で解決する」としているが、米国みたいに民間保険を外国人にも強制すれば、日本人の税金や保険料を守れる。

短期(1~3年)なら、この騒ぎはあまり問題にならない。3党合意にそんな意図はないし、今のルールなら何も起きないだろう。だが、中長期(4~10年)では話が違う。規制が緩み、少子化が進めば、中国が高校を押さえ、移民が増え、医療費が膨らむリスクがそこにある。孔子学院やオーストラリアへの浸透、中国のタダ乗り業者を見れば、この国が金で動き出すのは火を見るより明らかだ。

オーストラリアでは2017年に中国の政治献金が問題になり、外国からの寄付を禁じる法律を作った。日本にはそんな動きすらない。医療費だって1000億円超えもありうる。この不安は笑いごとではない。政府は何やっているのか。 透明性も監視もザルすぎる。

オーストラリア・メルボルンにある孔子学院の開校式に出席した習近平氏。2010年

アメリカでは孔子学院を締め出した。オーストラリアでは、中国資本の医療進出に警鐘が鳴ってる。日本政府はボーッと見るだけなのか? 少子化で学校が潰れかけているのに、規制緩和なんて言い出したら、中国に売り渡すようなものだろう。

医療費のタダ乗りだって、移民が増えれば、納税者が泣くのは目に見えてる。厚労省の試算だって甘すぎる。1000億円どころか、4兆円削減が絡めばもっと行くかもしれないのに、対策ゼロなどありえない。このままじゃ教育も医療も中国に食われ、国民が血を流す羽目になる。いい加減目を覚ませ、政府! 国民の不安を払拭する気があるなら、今すぐ動け! ルールを厳しくしろ、監視を強化しろ、中国のやり口を叩き潰せ! そうしなければ、与党も維新も今後有権者に見放されことになる。

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2025年2月25日火曜日

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<ウクライナ戦争和平交渉の成否を分ける3つのカギ>プーチンが求める「大国に相応しい地位」をどう失わせるか、あり得る目標とは

岡崎研究所

まとめ
  • ロシアとウクライナ双方が戦闘終結の意向を示しているが、実際の交渉開始には多くの困難が伴う。
  • ロシアはウクライナの領土併合や非武装化、NATO加盟の放棄など強硬な要求を維持している。
  • プーチン大統領の狙いは、ロシアの大国としての地位確立と国際秩序の改編にあり、ウクライナ侵攻はその一環である。
  • 交渉実現には、ウクライナへの軍事支援強化やロシアに対する制裁強化が必要である。
  • 交渉の課題は、占領地域の扱いや停戦監視体制、ウクライナのNATO非加盟問題など多岐にわたる。

AI生成画像

 ロシアとウクライナの戦争が続く中、ウォールストリート・ジャーナル紙の2025年2月5日付けの解説記事が注目を集めている。同記事は、ロシアとウクライナの双方が戦闘終結に向けた話し合いの意向を示していると報じつつも、実際に交渉を開始するには多くの困難が伴うことを指摘している。

 ロシアのクレムリン報道官であるペスコフ氏は、2月5日に米露間での接触が行われており、最近ではその頻度が増していることを明らかにした。これは、モスクワがウクライナでの戦闘終結に関する米露間の協議が進んでいることを初めて認めた発言である。このペスコフ氏の発言は、両国が紛争終結に向けて話し合う意志を示しているというシグナルとして受け取られ、和平の可能性に期待を抱かせるものであった。

 一方で、アメリカのトランプ元大統領は、ロシアのプーチン大統領に対してますます苛立ちを募らせているようである。トランプ氏とその補佐官らは、ロシアに対する制裁の強化や、ロシアの主要輸出品である原油価格の下落を通じて、モスクワに譲歩を迫る計画を打ち出している。しかし、プーチン大統領は公の場ではトランプ氏を称賛する姿勢を見せ、2020年の米大統領選挙が「盗まれた」とするトランプ氏の虚偽の主張にも同調している。さらに、もしトランプ氏が大統領であればウクライナ紛争は起きなかったかもしれないとの発言も行っている。しかし、こうした言動にもかかわらず、プーチン大統領はトランプ氏の和平提案に対しては全く関心を示しておらず、ウクライナ侵攻時に掲げた強硬な要求から一切譲歩していない。

 プーチン大統領の要求は、ウクライナの州や主要都市のすべてをロシアに併合し、ウクライナを非武装化して、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を永遠に放棄させ、事実上ウクライナを「残りかす国家」と化すというものである。このような強硬姿勢は、和平交渉を進めるうえで大きな障害となることは明白であり、仮に交渉が開始されたとしても、ロシアが戦闘で得たウクライナ領土を保持するのか、あるいは制裁緩和を得られるのかといった問題に直面することは避けられないであろう。

 また、ウクライナの将来像も大きな課題である。西側諸国の安全保障体制の中で、ウクライナをどのように位置づけるのか、またロシアが再び攻撃を仕掛けないことをどのように保証するのかという難題が残ることになる。ウクライナ戦争が始まってから約3年が経過し、ようやく停戦や終戦に向けた交渉が現実的な課題として取り上げられるようになった。ここで注目すべきは、交渉が実現する可能性と、その成否を左右する要素である。

 プーチン大統領の真の狙いは、単なるウクライナ領土の一部獲得ではない。彼が望んでいるのは、ロシアが「大国にふさわしい地位」を確立することであり、国際秩序をロシアに有利な形に改編することである。ロシアの影響力を旧ソ連圏に再構築し、欧米諸国やNATOに対して優位に立つことを目指しているのである。ウクライナへの侵攻は、プーチンの壮大な戦略の一部に過ぎず、彼の最終目標はさらに遠大なものであることを見逃してはならない。

 現在、ロシア軍は特に地上軍が疲弊しており、戦争経済も長期的な持続性を欠いている。兵員や武器の供給も新たな戦線を開くには不十分な状況である。しかし、プーチンの決意は変わらず、ウクライナ戦争がロシアによる新たな侵略を防ぐ実効的な仕組みを構築することなく終結するならば、ロシアは態勢を立て直したうえで、再び侵略を開始する可能性が高い。

 一方で、交渉を開始するためには、ウクライナへの軍事支援の強化や、ロシアに対する制裁の強化が必要である。プーチンに対して戦略環境がロシアにとって不利であると認識させ、交渉の必要性を感じさせなければならないのである。交渉を成功させるためには、まず交渉を開始するための圧力をかけることが求められるのである。

 停戦交渉が実現した場合、最も大きな論点の一つは、ロシアが実効支配するウクライナの占領地域をどのように扱うかという問題である。ロシアはこれらの地域を自国領土として法的に認めさせようとするだろうが、ウクライナと西側諸国はこれを容認することは難しい。また、停戦ラインの確定や、停戦監視の方法、ウクライナのNATO非加盟問題など、解決すべき課題は山積している。

 特に、停戦監視部隊の役割については、仮にロシア軍が攻めてきた場合に戦う覚悟が必要であり、単なる監視にとどまるようでは、過去のミンスク合意のように形骸化する恐れがある。また、ロシアが求める「ウクライナの中立」には、NATO非加盟のみならず、ウクライナの非軍事化や、ロシアの影響力を行使する権利まで含まれており、受け入れがたい内容である。

 総じて、ウクライナ戦争の終結に向けた交渉は、表面上のシグナル以上に多くの障害を伴っている。プーチン大統領の戦略的野心と、ウクライナや西側諸国の安全保障上の利益の間には、依然として深い溝があり、交渉開始から実際の和平合意に至るまでの道のりは険しいものである。しかし、戦闘が続く中で和平の可能性が語られること自体が、状況の変化を示していることも事実である。

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【私の論評】トランプ氏激怒!プーチンへの強硬批判と報復策―破滅的経済制裁・ウクライナ支援・露外交孤立化の可能性

まとめ
  • トランプ氏のプーチン大統領への怒りは、近年の発言や行動から着実に増幅している。
  • 2025年1月22日の『トゥルース・ソーシャル』で、トランプ氏はプーチン大統領を名指しで批判し、「彼はロシアを破壊している」と断じた上、高関税や追加制裁を警告した。
  • 2025年2月14日の記者会見では、プーチン大統領との交渉で一部進展があったものの、ウクライナのNATO加盟を阻止するとの現実的悲観論を示し、強硬姿勢に対する苛立ちを露呈した。
  • 2025年1月28日のプーチン大統領訪問時に、トランプ氏は「馬鹿げた戦争を今すぐ止めろ」と強烈に警告し、経済的圧力を強化する意向を示した。
  • これらの事例から、プーチン大統領が和平条件を無視し軍事行動を継続するならば、トランプ氏は経済制裁の強化、ウクライナ支援の拡大、外交的孤立化を組み合わせた報復措置を取る可能性が高いと同時に、日本のマスコミ報道だけに依拠しては現状を正確に把握できないとの警告もある。
上の記事にも一部示されているが、トランプのプーチンに対する怒りは、さらに増幅しつつあるようだ。

怒るトランプ大統領

まず、トランプ氏は2025年1月22日、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、ウクライナ戦争に関してプーチン氏を名指しで批判し、「彼はロシアを破壊している」と述べました。この発言は、トランプ氏がプーチン氏の政策や行動に明確な不満を抱いていることを示すもので、従来の友好的なトーンからの変化を感じさせる。さらに同投稿で、トランプ氏はロシアに対して「高関税と追加制裁」を警告しており、ロシアが和平に応じない場合に経済的圧力を強める姿勢を明らかにしています。この強い言葉遣いと具体的な脅しは、プーチン氏への苛立ちがエスカレートしている証拠と言えるだろう。

また、2025年2月14日の電話会談後の記者会見でも、トランプ氏はプーチン氏とのやり取りに一定の進展を認めつつ、「ロシアはウクライナのNATO加盟を許さないだろう」と現実的な悲観論を述べています。この発言からは、プーチン氏の頑なな態度に対する諦めと苛立ちが混じったニュアンスが感じられ、和平交渉の難航に対する不満が透けて見える。特に、トランプ氏が就任早々に「1日で戦争を終わらせる」と豪語していたにもかかわらず、プーチン氏が強硬姿勢を崩さない状況が続いていることは、トランプ氏にとって期待外れであり、苛立ちの原因となっている可能性が高い。

さらに別のエピソードとして、2025年1月28日にプーチン氏がサマラの無人航空機システム研究センターを訪問した際、トランプ氏は「馬鹿げた戦争を今すぐ止めろ」と異例の強い警告を発している。この発言は、ロシア経済がインフレや制裁で疲弊しているにもかかわらず、プーチン氏が戦争継続に固執する姿勢に対する直接的な非難であり、トランプ氏の苛立ちが公然と表面化した瞬間と言える。報道によれば、トランプ氏はこのタイミングでプーチン氏に対し、経済的「恩恵」をちらつかせつつも、応じなければ制裁を強化すると圧力をかけているが、プーチン氏の反応が冷淡であることがトランプ氏の苛立ちをさらに増幅させていると考えられる。

サマラの無人航空機システム研究センターを訪問したプーチン大統領

これらの事例から、トランプ氏の苛立ちは、プーチン氏が表面的には友好的な態度を示しつつも、実際にはトランプ氏の提案する和平条件を無視し、ウクライナでの軍事行動を続けている点に集約されているようだ。トランプ氏は自身の交渉力に自信を持っているだけに、プーチン氏の非妥協的な態度がその自負心を傷つけ、感情的な対立を深めていると推察される。こうした状況は、両者の関係がかつての協力的なものから、緊張感を帯びたものへと変化していることを示唆している。

プーチン大統領が表面的に友好的な態度を示しつつも、トランプ氏の提案する和平条件を無視し、ウクライナでの軍事行動を継続する場合、トランプ氏の報復は経済制裁の強化から始まる可能性が高い。トランプ氏は過去、2018年のイラン核合意離脱後に「最大限の圧力」として経済制裁を効果的に活用した実績があり、プーチン氏に対しても同様のアプローチを取るのは自然な流れだ。

同時に、トランプ氏はウクライナへの軍事支援を拡大する形で間接的な報復に出る可能性もある。2025年1月29日の報道では、米軍がイスラエルからペトリオット防空システムをウクライナに輸送したことが確認され、2月14日の記者会見では「ウクライナに平和をもたらす支援を続ける」と述べている。これにより、ロシア軍に打撃を与える装備—例えば長距離ミサイルやドローンの供与—を増やし、プーチン氏の軍事行動を牽制する意図が読み取れる。X上では2月23日に「トランプが裏切られたと感じればHIMARSを追加供与する」との声もあり、彼の「強いリーダー」イメージを保ちつつ直接戦闘を避ける方法として現実的だ。

ハイマース

さらに、外交的孤立化もトランプ氏の報復手段として浮上している。2025年2月16日のG7首脳会談で、彼は「ロシアとの貿易を制限する共同声明」を提案したと報じられ、他の主要国を巻き込んでプーチン氏を国際社会で孤立させる動きを見せている。2019年の中国との貿易戦争で同盟国を動員した経験からも、この多国間圧力は彼の得意分野と言える。ただし、直接的な軍事行動には慎重で、2月16日のスピーチで「第三次世界大戦は誰も望まない」と強調し、プーチン氏が2024年11月に発した核を含む報復警告を意識している様子がうかがえる。

結論として、プーチン大統領が和平の道を完全に遮断し続けるならば、トランプ氏は経済制裁の強化、ウクライナ支援の拡大、さらには外交的孤立化を組み合わせた報復措置を実行する可能性が極めて高い。これらの手段は、彼自身の政治的リスクを最小限に抑えつつ、交渉力を保持するための戦略として極めて合理的である。しかし、もしロシアがウクライナにおいて決定的な勝利を収め、トランプ氏の提案を嘲笑うような状況に陥れば、彼のプライドがさらなる強硬策を誘発する可能性も否定できない。

それにもかかわらず、現時点ではトランプ氏は「取引の達人」として、冷静かつ計算されたアプローチを堅持する姿勢を崩していない。なお、日本のマスコミ報道だけに依拠しては、世界の複雑な交渉状況やその裏側を正確に把握することは極めて困難であり、多角的な情報源から現状を精査する必要がある。

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2025年2月22日土曜日

トランプ大統領“停戦会合ゼレンスキー大統領出席重要でない”―【私の論評】トランプ大統領の本当の対ロシア・ウクライナ戦略とは?日本メディアが報じない真実とは

 トランプ大統領“停戦会合ゼレンスキー大統領出席重要でない”

まとめ
  • トランプ前大統領は、ロシアのウクライナ侵攻に対するゼレンスキー大統領の交渉姿勢を「効果的でない」と批判し、停戦会合への出席も重要ではないと主張した。
  • トランプ氏は、ウクライナ国内の鉱物資源をめぐる協議が不調に終わったことに不満を示したが、ゼレンスキー氏からの電話には「もちろん応じる」と対話の意向を示した。
トランプ米大統領

トランプ前大統領は、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、ゼレンスキー大統領の交渉姿勢を厳しく批判しました。彼は、ゼレンスキー氏が「選挙なき独裁者」であり、これまで効果的に交渉できておらず、停戦会合に出席する重要性も感じないと主張しました。

また、ウクライナ国内の鉱物資源をめぐる協議が不調に終わったことにも不満を示しました。一方で、ゼレンスキー氏から電話があれば「もちろん応じる」と述べ、対話自体は拒まない姿勢を見せています。

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【私の論評】トランプ大統領の本当の対ロシア・ウクライナ戦略とは?日本メディアが報じない真実とは

まとめ
  • トランプ大統領は、ロシアに対して宥和的ではなく、制裁や威嚇を通じて厳しい姿勢を示している。具体的には、2025年1月には偽情報キャンペーンに関与したロシアとイランのグループに制裁を科し、ウクライナ戦争を終わらせない場合には制裁を強化する意向も示している。
  • トランプ氏のロシア政策は一貫しており、第一期政権時にもオリガルヒや企業に対する大規模な制裁を実施しており、宥和的な姿勢ではないことが示されている。
  • ウクライナに対しては、厳しい対応というよりも、条件付きで軍事援助を継続する姿勢を示している。2025年2月にはゼレンスキー大統領が援助削減はないと述べ、実際に5億ドル規模の軍事援助パッケージが発表されている。
  • ウクライナ支援には条件が付随しており、例えばレアアース鉱物へのアクセスを求めるなど、単純な支援ではなく取引的な要素がある。
  • 日本のメディアは「ロシアに宥和的、ウクライナに厳しい」と単純化して報じているが、実際の政策は複雑で、和平交渉を進めるための戦略的な意図がある。
トランプ大統領のロシアとウクライナに対する政策は、日本のメディアで報じられているような単純なものではない。日本のメディアでは、煎じ詰めると「ロシアに対して宥和的で、ウクライナに対して厳しい対応をしている」との描写がなされているが、実際の政策行動を詳細に分析すると、この見方が正確ではないことが明らかになる。トランプ大統領はロシアに対して制裁を強化し、ウクライナに対しては条件付きながらも軍事援助を継続しているのだ。

プーチン

まず、ロシアに対する政策を考えてみる。トランプ大統領は宥和的な姿勢を取っていない。むしろ、制裁を強化する動きが明確に見られる。例えば、2025年1月には、アメリカの選挙を標的とした偽情報キャンペーンに関与したロシアとイランのグループに対して制裁が科された。これは、Reutersの報道でも確認できる。

さらに、ウクライナ戦争を終わらせるための交渉に応じない場合、関税と制裁を強化するとトランプ大統領は威嚇している。この発言は、NPRの記事で詳しく報じられている。これらの行動は、第一期政権時にも見られたロシアへの制裁の継続を示している。2018年には、ロシアのオリガルヒや企業に対して大規模な制裁が実施されたことがあり、これは主要メディアで報じられていた。これらの動きは、ロシアの行動に対する明確な対抗措置であり、宥和的な姿勢ではないことを裏付けている。

次に、ウクライナに対する政策を見てみよう。トランプ大統領が厳しい対応をしているというよりは、条件付きながらも支援を続けているのが実情だ。2025年2月には、ゼレンスキー大統領がアメリカの軍事援助が削減されていないと述べ、支援が続いていることを確認している。この発言は、Reutersの記事で確認できる。

ゼレンスキー ウクライナ大統領

また、トランプ大統領はウクライナへの軍事援助を継続する意向を示し、その見返りとしてレアアース鉱物へのアクセスを求めている。これは、NBC Newsの報道で詳しく述べられている。つまり、援助を完全に停止するのではなく、条件付きで支援を続ける姿勢なのだ。さらに、2025年1月には、トランプ政権の初期段階でウクライナへの軍事援助パッケージが発表され、その価値は5億ドルとされている。この情報は、米国国務省の公式発表で確認できる。これは、ウクライナの防衛を支援する意図があることを示している。

ただし、トランプ大統領はウクライナへの援助を削減する可能性も示唆している点に注意が必要だ。2024年6月の選挙キャンペーン中には、「再選された場合、すぐに援助を解決する」と述べている。これは、POLITICOの記事で報じられている。

また、2025年1月には外国援助を90日間凍結する決定を下し、これがウクライナにも影響を与えた。しかし、軍事援助自体は影響を受けていないとされている。この状況は、PBSの報道で詳しく説明されている。これらの動きから、援助の継続はあるものの、条件や威嚇が付随していることが分かる。

以上の事実から、トランプ大統領はロシアに対して完全に宥和的ではなく、制裁や威嚇を通じて厳しい姿勢を取っていることが確認できる。一方、ウクライナに対しては厳しい対応をしているというよりは、条件付きながらも軍事援助を継続している。ゼレンスキー大統領の声明や援助パッケージの発表がその証拠となる。ただし、援助には条件が付くことが多く、完全に支援的な姿勢とは言えない複雑な状況であることも確かだ。

和平交渉の席につく、ゼレンスキー、トランプ、プーチン AI生成画像

しかし日本のメディアの報道が必ずしも正確ではなく、トランプの政策はより多面的であることが明らかである。ロシア制裁の実施とウクライナ援助の継続は、宥和的で厳しいという二元的な描写を覆す重要なポイントである。これらの事実を踏まえると、トランプ大統領の政策は単純なレッテル貼りでは捉えきれず、複雑かつ戦略的な意図を持っていることが理解できる。

わかりやすく言えば、最近のトランプ大統領の発言は、和平交渉をスムーズに進めるためのトランプ流の地ならしとみるべきだろう。交渉のテーブルについたときに、双方の主張ばかりに時間が割かれることなく、現実的で、実質的で実りあるものにしたいのだろう。そうして、何よりもロシアの10倍のGDPと人口を持つ最大の相手である中国との対立に専念したいのだろう。

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