まとめ
- 米国債売却と長期金利急騰: トランプ政権下で米国債の大量売却が続き、10年物利回りが3.9%から4.6%近くまで急上昇、24年ぶりの週間上昇幅を記録。30年債も38年ぶりの上げ幅。相互関税90日間停止でも売りが止まらず、ドル安と米国資産離れが進行。
- 要因と懸念: 各国機関投資家や中国の売却、欧州由来の売り圧力が要因とされる。米国債の安全資産としての地位低下が懸念され、市場の動揺が続いている。
トランプ米政権下で米国債の売却が止まらず、長期金利が急激に上昇している。9日に相互関税の大部分を90日間停止する措置を発表したが、市場の売り圧力は収まらず、ドル安が急速に進んでいる。投資家の米国資産離れが目立ち、市場に動揺が広がっている。米国債は通常、世界で最も安全な金融資産とされるが、現在の株価乱高下の中でも売られ続け、専門家からは「米国債の安全資産としての地位が揺らぐ」との声が上がっている。
長期金利の指標である10年物米国債利回りは、週明け7日未明の3.9%前後から8日夜には4.5%付近まで急騰。関税停止で一時低下したものの、11日には4.6%近くに達した。ロイターによると、10年債利回りの週間上昇幅は2001年以来24年ぶりの大きさで、30年債も1987年以来38年ぶりの上昇幅を記録。背景には、機関投資家の売却、中国の報復的売却の臆測、欧州からの売り圧力があり、米国債市場の混乱が続いている。
長期金利の指標である10年物米国債利回りは、週明け7日未明の3.9%前後から8日夜には4.5%付近まで急騰。関税停止で一時低下したものの、11日には4.6%近くに達した。ロイターによると、10年債利回りの週間上昇幅は2001年以来24年ぶりの大きさで、30年債も1987年以来38年ぶりの上昇幅を記録。背景には、機関投資家の売却、中国の報復的売却の臆測、欧州からの売り圧力があり、米国債市場の混乱が続いている。
【私の論評】貿易赤字と内需縮小同一視の誤解を解く! トランプの関税政策と安倍の知恵が示す経済の真実
まとめ
- 貿易赤字と内需縮小は別物である。内需が強いと輸入が増え、貿易赤字が拡大することがあり、縮小とは逆の現象だ。為替や国際競争力も赤字に影響し、内需とは直接関係しない。
- 米国の基軸通貨であるドルは、貿易赤字を維持しやすくする。世界的なドル需要により、米国は内需の強弱に関係なく赤字を続けられ、基軸通貨の特権で縮小を避けられる。
- 関税は輸入を抑えるが、報復関税や物価上昇で赤字削減や内需拡大の効果は限定的だ。トランプ政権の関税政策は、市場混乱を抑えきれず、限界を示した。
- トランプは貿易赤字を内需縮小と結びつけ、輸出依存を下げて内需を強化する戦略を持っていた可能性がある。しかし、関税に頼りすぎ、効果を期待できない。
- 内需拡大には、関税よりインフラ投資、減税、教育支援が有効だ。これらは国際摩擦や物価上昇を避け、経済を穏やかに成長させる。
- 安倍晋三元首相は、トランプに内需重視の戦略を伝え、過激な関税を抑えた可
- 能性がある。日米貿易協定や首脳会談での対話が、保護主義のリスクを軽減した。
貿易赤字とは、輸入が輸出を上回る状態だ。消費者が外国製品を買いあさったり、企業が海外から原材料を調達したりすれば、輸入が増え、貿易赤字が膨らむ。一方、内需は、国内の消費、企業の投資、政府の支出など、経済を動かす力の総和である。内需が縮小すれば、消費や投資が減り、経済は停滞する。だが、貿易赤字と内需の縮小が直結すると思うのは早計だ。
経済が好調で、消費者がガンガン買い物をしたり、企業が投資を増やしたりすれば、国内の生産では追いつかず、輸入が急増する。内需が強いからこそ、貿易赤字が拡大するのだ。これは縮小とは真逆の話だ。米国の貿易赤字は、消費者が外国製品を求める強い内需に支えられてきた。
2022年の商務省のデータでは、米国の貿易赤字が9710億ドルに達したが、パンデミック後の消費ブームが輸入を押し上げた結果だ。為替レートや国際競争力も赤字に影響する。ドル高なら輸入品が安くなり、赤字が膨らむが、これは内需の縮小とは無関係だ。2022年にドル指数が20年ぶりの高水準を記録したとき、輸入が加速し、赤字が拡大した。
輸出産業が弱ったり、企業が海外で生産したりすれば、輸出が減り、赤字が増える。これも内需とは別問題だ。内需が縮小しても、海外の需要が落ち込んだり、輸出品の競争力が低下したりすれば、輸入が相対的に多くなり、赤字が続く。
2023年の世界貿易機関の報告では、グローバルな需要減が米国の輸出を圧迫し、赤字を維持したとある。米国の基軸通貨、米ドルがこの構図をさらに複雑にする。ドルは世界の貿易や投資の柱であり、原油や金の取引もドル建てだ。
2022年の国際決済銀行のデータでは、国際取引の88%がドル建てだった。世界中がドルを欲しがるから、米国は貿易赤字を維持しやすい。消費者が外国製品を買い、企業が海外から原材料を輸入すれば、ドルで支払う。ドルはどこでも通用するから、輸入は簡単だ。内需が強ければ輸入が増え、赤字が膨らむ。だが、内需が弱まっても、ドルへの需要は揺るがず、輸入が減りにくい。
関税とトランプの経済戦略
関税も話をややこしくする。関税は輸入品に課す税金で、価格を上げ、輸入を抑える効果がある。2018年、トランプ政権が中国製品に25%の関税をかけたとき、米通商代表部の報告では、対象品の輸入 が一時的に減った。だが、相手国が報復関税を課せば、輸出が減り、赤字が逆に増える。
2019年の米国農務省のデータでは、中国の報復関税で大豆輸出が40%減少し、赤字削減の効果は薄れた。関税は内需にも響く。輸入品の価格が上がれば、消費者が国内製品に目を向けるかもしれないが、物価上昇で財布の紐が固くなり、内需が縮小することもある。2020年の全米経済研究所の研究では、トランプ政権の関税が物価を0.4%押し上げ、消費を冷やしたとされる。
関税を下げれば、輸入品が安くなり、消費が刺激されて内需が拡大するが、輸入が増えるから赤字が膨らむ。為替レートやサプライチェーンの変化も絡むから、関税の効果は一筋縄ではいかない。中国からの輸入が減っても、ベトナムやメキシコからの輸入が増え、2021年の商務省データでは赤字に大差はなかった。記事で、トランプ政権が相互関税を90日間停止したのに、赤字や市場の混乱が収まらなかったとあるのは、関税の限界を示す。
トランプが貿易赤字を内需の縮小と結びつけていた可能性は、彼の発言や政策から読み取れる。彼は赤字を「米国の富が海外に奪われる問題」と捉え、国内経済の弱さと直結させた。2018年3月のツイートで、「莫大な貿易赤字は国にとって良くない。製造業を国内に戻し、雇用を取り戻す」と言い切った。赤字は内需、特に製造業の衰退を意味すると考えていたのだろう。
高関税政策は、輸入を減らし、国内生産を増やして赤字を縮小し、内需を強くする狙いだった。2018年の鉄鋼・アルミニウム関税の演説で、「関税は米国の工場を再び動かし、労働者を守る」と力説した。だが、関税が内需を大きく押し上げることはなかった。
2020年のピーターソン国際経済研究所の分析では、関税で製造業の雇用が少し増えたが、物価上昇が消費を圧迫し、内需への効果は小さかった。トランプは赤字を「負け」と単純化し、基軸通貨やグローバル経済の複雑さを軽視した節がある。2019年の経済諮問委員会との対話で、「赤字は中国に奪われた雇用だ」と語ったが、経済学者は赤字の多くがドル需要や消費パターンによるものだと指摘した。
過去のこのブログで主張したように、トランプが米国の輸出依存度を下げ、内需を拡大しようとした可能性は十分に感じられる。米国の輸出はGDPの12%(2022年、商務省データ)だが、第二次世界大戦中や戦後は5~8%と低く、国内市場中心の経済だった。トランプの「アメリカ第一主義」は、輸出より国内の生産と消費を優先し、赤字を減らしつつ内需を強くする戦略だったと見える。
2017年の税制改革は、企業や家計の可処分所得を増やし、内需を刺激した。2020年の連邦準備制度のデータでは、税制改革で個人消費が1.1%増えたとされる。だが、関税に頼りすぎたため、物価上昇や報復関税で効果が打ち消された。トランプが内需拡大を真剣に目指したなら、関税より穏やかな方法があった。
インフラ投資はその一つだ。道路や橋、公共交通の整備に大金を投じれば、建設業の雇用が増え、経済が回る。2017年にトランプが提案した1兆ドルのインフラ計画は議会で潰れたが、2021年のバイデン政権のインフラ法(1.2兆ドル)は、2023年にGDPを0.5%押し上げた(商務省試算)。税制の優遇も有効だ。
中小企業や中低所得層の減税を増やせば、消費や投資が伸びる。2020年のピーターソン国際経済研究所の報告では、個人向け減税が消費を直接押し上げるとある。教育や職業訓練への投資もいい。労働者のスキルを上げれば、国内産業の生産性が上がり、輸入依存が減りつつ内需が強まる。2022年の労働統計局のデータでは、技術訓練を受けた労働者の賃金が10~15%高く、消費を支えた。これらの方法は、関税のような国際的な軋轢や物価上昇を避け、経済を滑らかに成長させる。
安倍元首相の影響と経済の未来
関税を下げれば、輸入品が安くなり、消費が刺激されて内需が拡大するが、輸入が増えるから赤字が膨らむ。為替レートやサプライチェーンの変化も絡むから、関税の効果は一筋縄ではいかない。中国からの輸入が減っても、ベトナムやメキシコからの輸入が増え、2021年の商務省データでは赤字に大差はなかった。記事で、トランプ政権が相互関税を90日間停止したのに、赤字や市場の混乱が収まらなかったとあるのは、関税の限界を示す。
トランプが貿易赤字を内需の縮小と結びつけていた可能性は、彼の発言や政策から読み取れる。彼は赤字を「米国の富が海外に奪われる問題」と捉え、国内経済の弱さと直結させた。2018年3月のツイートで、「莫大な貿易赤字は国にとって良くない。製造業を国内に戻し、雇用を取り戻す」と言い切った。赤字は内需、特に製造業の衰退を意味すると考えていたのだろう。
高関税政策は、輸入を減らし、国内生産を増やして赤字を縮小し、内需を強くする狙いだった。2018年の鉄鋼・アルミニウム関税の演説で、「関税は米国の工場を再び動かし、労働者を守る」と力説した。だが、関税が内需を大きく押し上げることはなかった。
2020年のピーターソン国際経済研究所の分析では、関税で製造業の雇用が少し増えたが、物価上昇が消費を圧迫し、内需への効果は小さかった。トランプは赤字を「負け」と単純化し、基軸通貨やグローバル経済の複雑さを軽視した節がある。2019年の経済諮問委員会との対話で、「赤字は中国に奪われた雇用だ」と語ったが、経済学者は赤字の多くがドル需要や消費パターンによるものだと指摘した。
過去のこのブログで主張したように、トランプが米国の輸出依存度を下げ、内需を拡大しようとした可能性は十分に感じられる。米国の輸出はGDPの12%(2022年、商務省データ)だが、第二次世界大戦中や戦後は5~8%と低く、国内市場中心の経済だった。トランプの「アメリカ第一主義」は、輸出より国内の生産と消費を優先し、赤字を減らしつつ内需を強くする戦略だったと見える。
2017年の税制改革は、企業や家計の可処分所得を増やし、内需を刺激した。2020年の連邦準備制度のデータでは、税制改革で個人消費が1.1%増えたとされる。だが、関税に頼りすぎたため、物価上昇や報復関税で効果が打ち消された。トランプが内需拡大を真剣に目指したなら、関税より穏やかな方法があった。
インフラ投資はその一つだ。道路や橋、公共交通の整備に大金を投じれば、建設業の雇用が増え、経済が回る。2017年にトランプが提案した1兆ドルのインフラ計画は議会で潰れたが、2021年のバイデン政権のインフラ法(1.2兆ドル)は、2023年にGDPを0.5%押し上げた(商務省試算)。税制の優遇も有効だ。
中小企業や中低所得層の減税を増やせば、消費や投資が伸びる。2020年のピーターソン国際経済研究所の報告では、個人向け減税が消費を直接押し上げるとある。教育や職業訓練への投資もいい。労働者のスキルを上げれば、国内産業の生産性が上がり、輸入依存が減りつつ内需が強まる。2022年の労働統計局のデータでは、技術訓練を受けた労働者の賃金が10~15%高く、消費を支えた。これらの方法は、関税のような国際的な軋轢や物価上昇を避け、経済を滑らかに成長させる。
安倍元首相の影響と経済の未来
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安倍総理とトランプ大統領 |
安倍晋三元首相は、トランプの関税政策を穏やかにしたとみられる。安倍はトランプと個人的な信頼を築き、2017年から2020年まで首脳会談やゴルフ外交で頻繁に対話した。外務省の記録では、2017年から2019年だけで日米首脳会談が10回以上あり、経済や貿易が中心議題だった。安倍は日本の経験を基に、内需主導の経済成長の重要性をトランプに伝えたかもしれない。
安倍政権の経済政策は、内需と輸出のバランスを模索したが、内需主導への転換は道半ばだった。しかし、2013年のアベノミクスは、金融緩和や財政出動で内需を刺激し、2014年にGDP成長率を1.4%押し上げた(内閣府データ)。この成功を、トランプに「関税より内需重視が賢い」と説いた可能性がある。2019年9月の日米貿易協定交渉は、その一例だ。
トランプは当初、自動車など日本製品に高関税をちらつかせたが、安倍は交渉で関税引き上げを回避し、デジタル貿易や農産物の相互開放で合意した。ロイターの2019年9月26日の報道では、安倍が「関税の応酬は両国経済に害」とトランプを説得し、米国の農家支援策を提案して妥協を引き出したとある。この協定は、米国の対日赤字を大きく減らさなかったが、関税戦争の激化を防ぎ、両国の内需への悪影響を抑えた。
安倍のアプローチは、関税より協調的な経済政策が繁栄の鍵との信念に基づいていた。2018年のG7サミットでも、安倍はトランプの保護主義に対し、自由貿易の重要性を説き、米国の内需を傷つけない方法を議論した(日経新聞、2018年6月10日)。2017年の訪米時の演説(2月10日、ホワイトハウス)で、「日米の経済は相互依存であり、開かれた市場が繁栄の鍵」と述べ、保護主義のリスクを牽制した。
安倍の影響は、トランプの関税政策が一部で抑えられた点にも表れている。トランプは2018年に中国に大規模な関税を課したが、日本やEUに対しては全面的な関税戦争を避け、部分的な合意を選んだ。安倍ら同盟国のリーダーが、関税の副作用を警告した結果だ。安倍の助言がなければ、トランプの関税政策は上の記事のような市場の混乱をさらに悪化させ、経済的緊張を高めていたかもしれない。
米国は長年、大きな貿易赤字を抱えている。基軸通貨のドルがこれを支える。消費者が外国製品を買い漁り、内需が強いから、輸入が増えて赤字が膨らむ。ドルは世界中で必要とされるから、赤字が続いても問題が少ない。
上記事では、米国債売却やドル安でドルへの信頼が揺らいだが、赤字が内需縮小と直結せず、関税や市場の動揺が絡む複雑な状況だった。日本のような基軸通貨でない国なら、赤字が通貨安を招き、内需が縮小する。だが、米国は基軸通貨の特権でこれを避けられる。トランプが赤字を内需の縮小と結びつけた可能性は、彼の発言や政策から感じる。
だが、データや分析を見れば、赤字は内需だけでなく、ドル需要やグローバル経済の構造に依存する。彼が内需拡大を目指したなら、関税よりインフラ投資、減税、教育支援が、内需を育て、赤字への依存を減らせた。安倍がこうした戦略を伝え、過激な関税を抑えた可能性は、両者の緊密な対話や日本の経験から納得できる。結局、貿易赤字の拡大は、内需の強さ、為替、国際競争力、基軸通貨、関税など、さまざまな要因で決まる。
米国では、ドルが基軸通貨だから、内需が強くても弱くても赤字を維持でき、縮小に直結しない。関税は輸入や内需に影響するが、報復関税や物価上昇で効果は複雑だ。トランプの視点は赤字を経済の弱さと結びつけたが、現実はもっと複雑だ。しかし、この類の勘違いをする人間は多い。トランプが目立っただけだ。
安倍の知恵がトランプを導き、関税の罠から経済を引き戻したなら、それは歴史に刻むべき功績だ。今回もトランプは、過去の安倍の説得を思い返しており、安倍の説得の正しさを今更ながら噛み締めているだろう。貿易赤字と内需縮小を一緒にするのは、経済の真実を見誤る愚かな過ちである。複雑な仕組みを解き明かし、冷静に未来を切り開くことこそ、今、我々に求められているのだ。世界各国は国内でも、国際的にも経済の真実を握り、揺るぎない一歩を踏み出すべきときが来たのだ。
安倍政権の経済政策は、内需と輸出のバランスを模索したが、内需主導への転換は道半ばだった。しかし、2013年のアベノミクスは、金融緩和や財政出動で内需を刺激し、2014年にGDP成長率を1.4%押し上げた(内閣府データ)。この成功を、トランプに「関税より内需重視が賢い」と説いた可能性がある。2019年9月の日米貿易協定交渉は、その一例だ。
トランプは当初、自動車など日本製品に高関税をちらつかせたが、安倍は交渉で関税引き上げを回避し、デジタル貿易や農産物の相互開放で合意した。ロイターの2019年9月26日の報道では、安倍が「関税の応酬は両国経済に害」とトランプを説得し、米国の農家支援策を提案して妥協を引き出したとある。この協定は、米国の対日赤字を大きく減らさなかったが、関税戦争の激化を防ぎ、両国の内需への悪影響を抑えた。
安倍のアプローチは、関税より協調的な経済政策が繁栄の鍵との信念に基づいていた。2018年のG7サミットでも、安倍はトランプの保護主義に対し、自由貿易の重要性を説き、米国の内需を傷つけない方法を議論した(日経新聞、2018年6月10日)。2017年の訪米時の演説(2月10日、ホワイトハウス)で、「日米の経済は相互依存であり、開かれた市場が繁栄の鍵」と述べ、保護主義のリスクを牽制した。
安倍の影響は、トランプの関税政策が一部で抑えられた点にも表れている。トランプは2018年に中国に大規模な関税を課したが、日本やEUに対しては全面的な関税戦争を避け、部分的な合意を選んだ。安倍ら同盟国のリーダーが、関税の副作用を警告した結果だ。安倍の助言がなければ、トランプの関税政策は上の記事のような市場の混乱をさらに悪化させ、経済的緊張を高めていたかもしれない。
米国は長年、大きな貿易赤字を抱えている。基軸通貨のドルがこれを支える。消費者が外国製品を買い漁り、内需が強いから、輸入が増えて赤字が膨らむ。ドルは世界中で必要とされるから、赤字が続いても問題が少ない。
上記事では、米国債売却やドル安でドルへの信頼が揺らいだが、赤字が内需縮小と直結せず、関税や市場の動揺が絡む複雑な状況だった。日本のような基軸通貨でない国なら、赤字が通貨安を招き、内需が縮小する。だが、米国は基軸通貨の特権でこれを避けられる。トランプが赤字を内需の縮小と結びつけた可能性は、彼の発言や政策から感じる。
だが、データや分析を見れば、赤字は内需だけでなく、ドル需要やグローバル経済の構造に依存する。彼が内需拡大を目指したなら、関税よりインフラ投資、減税、教育支援が、内需を育て、赤字への依存を減らせた。安倍がこうした戦略を伝え、過激な関税を抑えた可能性は、両者の緊密な対話や日本の経験から納得できる。結局、貿易赤字の拡大は、内需の強さ、為替、国際競争力、基軸通貨、関税など、さまざまな要因で決まる。
米国では、ドルが基軸通貨だから、内需が強くても弱くても赤字を維持でき、縮小に直結しない。関税は輸入や内需に影響するが、報復関税や物価上昇で効果は複雑だ。トランプの視点は赤字を経済の弱さと結びつけたが、現実はもっと複雑だ。しかし、この類の勘違いをする人間は多い。トランプが目立っただけだ。
安倍の知恵がトランプを導き、関税の罠から経済を引き戻したなら、それは歴史に刻むべき功績だ。今回もトランプは、過去の安倍の説得を思い返しており、安倍の説得の正しさを今更ながら噛み締めているだろう。貿易赤字と内需縮小を一緒にするのは、経済の真実を見誤る愚かな過ちである。複雑な仕組みを解き明かし、冷静に未来を切り開くことこそ、今、我々に求められているのだ。世界各国は国内でも、国際的にも経済の真実を握り、揺るぎない一歩を踏み出すべきときが来たのだ。
上の見方は、トランプの考え方そのものが間違いであるとの前提で解説したが、無論未だそれを結論付けることはできない。トランプは上で解説したことを知った上で、関税政策を意図的に実行している可能性もある。それは、今後の推移で見えてくるだろう。そのようなことがあれば、またこの話題について掲載しようと思う。ただ、上の解説をご覧いただくと、貿易赤字と内需縮小を一緒にして経済の真実を見誤る愚かな過ちについてご理解いただけるもの考える。
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