2019年4月1日月曜日

韓国の「行き過ぎた北朝鮮宥和政策」を懸念する米国―【私の論評】米国の本音はどこにあるのか?


 韓国の文在寅大統領の北朝鮮に対する宥和政策の行きすぎに関して、最近、同盟国の米国内で懸念の声が上がっている。ポンペオ国務長官やボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、北朝鮮の非核化がなされるまでは国連制裁の手を緩めないと述べているのに対し、文在寅大統領は、北朝鮮に対する制裁を解除して南北協力を早急に進めたいようである。

平城市内をパレード中に笑顔をみせる韓国の文在寅大統領(左)と
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長 昨年9月18日

 このような文在寅大統領の姿勢には、韓国内のメディアでも疑問を呈するものが出て来た。例えば、3月10日付のコリア・ヘラルド紙(韓国の英字紙)の社説がそれである。同社説は、文在寅は、南北協力や制裁解除に対する米国の懸念を直視し、より対米協力をするべきであると述べている。

 この社説は、常識的な正論を述べたものであるが、このような意見は、野党や大手メディア等の少数派である。文在寅政権は、必要な対北朝鮮の制裁解除を行い、金剛山観光、開城工業団地の再開や鉄道共同プロジェクトなどを促進させ、早期に北朝鮮の金正恩労働党書記長のソウル訪問を実現させたいと考えている。それ故、ハノイでの第2回米朝首脳会談が決裂に終わったことには、衝撃を受けたようだ。文在寅政権は、南北という狭い視野しか持たず、世界を知らない人々が多すぎるように見える。文正仁特別補佐官(延世大学教授)は英語も喋れ、世界のことも知っている面白い人だが、左派志向が強い。

 文在寅政権に対する米国の態度が硬化していることは、コリア・ヘラルド紙の社説でも指摘されている。当然であろう。主たる理由は、韓国の南北融和一辺倒の立場と制裁解除の主張である。3月上旬に訪米した韓国の国会議長訪問団に参加した元野党大統領選挙候補の鄭東泳氏もペロシ下院議長等からいろいろ言われたことを明らかにしている。鄭東泳氏は、これは日本の工作の結果だと、日本を批判している。とんでもない話である。

 なお、文正仁大統領特別補佐官は、最近の講演会で、ハノイでの米朝首脳会談の失敗の原因は、米国と北朝鮮、そして日本にあると述べたと言われる。一方、今、ワシントンには、「韓国責任論」といった感じもあるようだ。昨年3月、金正恩委員長の非核化の意図をいわば「保証」し、首脳会談を米国に働きかけたのは韓国だった。が、注意深い検討もなく、それに飛びついたのはトランプだったことも事実である。

 文在寅大統領は、最近、内閣改造を断行した。南北関係を所掌する統一部長官の趙明均氏を替え、金錬鉄統一研究院長を後任に指名した。同人は、極端な考えや発言で知られ、承認公聴会はもめるであろうが、それでも文在寅は強行任命するだろう。大手メディアは康京和外相、鄭義溶安保室長こそ交代すべきだと主張している。

 国連制裁は対北朝鮮交渉の重要な梃子であり、大事にしていかなければならない。米韓作業部会でも、韓国は、開城団地再開などの問題を提起する。3月12 日、国連制裁委員会の年次報告書が公表されたが、制裁の確実な実行こそが重要である。

 米韓両国は、3月2日、合同軍事演習「フォール・イーグル」と「キー・リゾルブ」の廃止を発表した。昨年夏に実施を取りやめた「乙支フリーダム・ガーディアン」を含めて、三大軍事演習がすべて打ち切られ、新たな小規模の演習に代わることになった。トランプ大統領は、国防省の説明と違い、理由に予算節約をあげている。が、米国が只でかかる大きな譲歩をするのは良くなかったのではないか。一方的廃止ではなく、少なくとも何らかの約束事にして、北朝鮮から相応の措置を取るべきではなかったか。最近の東倉里実験場の再整備のように、一方的措置は撤回可能である他、米国がそれをやれば、北朝鮮は益々一方的措置で非核化を済まそうとするであろう。

【私の論評】米国の本音はどこにあるのか?

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が米国にケンカを売りました。核を手放そうとしない北朝鮮に対し、堂々と経済援助に動き始めたのです。

金剛山観光をする人々

2月27、28日にベトナムの首都ハノイで行われた米朝首脳会談で、「非核化せずに、制裁だけ緩和させよう」との北朝鮮の本心が露わとなりました 。会談と前後して、北朝鮮が破棄したと称していた弾道ミサイル基地の復旧の兆候 があることも明らかとなりました。

にもかかわらず韓国は、制裁破りの援助に動いています。当然、米国も世界もそんな韓国に驚きの目を向けています。文在寅政権の暴走は止まるのでしょうか。

米朝首脳会談の翌3月1日、「3・1節」記念演説で文在寅大統領は「金剛山観光と開城工業団地との再開も米国と協議します」と宣言しました 。いずれも北朝鮮に多額のドルが渡る、南北の経済協力事業です

もちろん米国は一蹴しました。3月7日、匿名を条件にブリーフした国務省高官は「金剛山観光と開城工業団地に対する(国連)制裁を解くのか」との質問に対し、たった一言「NO」と答えました 。

韓国の保守系紙は「北朝鮮に非核化意思がないことが明らかになった後も制裁緩和を求める文在寅政権に、米国が怒り出した」と一斉に懸念を表明しました。

朝鮮日報は社説「文の『金剛山・開城工団の提案』に『NO』と一言だけ答えた米国」(3月9日、韓国語版)で以下のように書きました 。
  • (「NO」との答弁は)同盟国のトップが公に言及した提案を米国が即座に拒否したということだ。米国の方針はすでに決定済みなので、韓国は邪魔するな、との意味だろう。 
  • 米国の官民全体が北朝鮮に核放棄を決心させるには圧迫だけであるとの共感で1つになった。 
  • だが、韓国の統一部は「金剛山・開城工団再開案を用意して米国と協議する」と言い、与党関係者は「それらを利用して米朝仲介を牽引せよ」と要求しました。 
  • 大統領だけでなく、集団的に分別を失ってしまったのだ。こんな韓国の動きを見て米国の関係者らは「ジョークでやっているのだろう」と言っているという。

ところが、こうした批判に文在寅政権は馬耳東風。3月8日には南北関係の責任者である統一相を交代する人事を発表しました。国連制裁を念頭に置いて対北政策を進めたとされる官僚出身の趙明均(チョ・ミョンギュン)氏を更迭。新たに指名したのは学者出身の金錬鉄(キム・ヨンチョル)氏です。 同氏はこれまで「開城工団の閉鎖は自殺行為」 「(米国が)大韓民国を主権国家と見なしているか疑わしい 」などと親北・反米発言を繰り返してきた人物です。

中央日報は社説「韓国、北東アジアの除け者にならないよう米国との『政策すれ違い』に警戒を」(3月12日、日本語版)で、ワシントンでは「(韓米関係の悪化により)このままだと韓米首脳会談も難しい」との空気が高まったと報じました 。

米韓同盟が破壊されると危機感を高めた保守系の最大野党「自由韓国党」のナンバー2、羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)院内代表 は3月12日、国会で「大韓民国の大統領は金正恩(キム・ジョンウン)の首席報道官だと、顔から火が出るような恥ずかしい話を聞くことがないようにしてほしい」と演説しました。この発言に与党「共に民主党」の議員らは猛反発し、演説が中断されるなど国会は紛糾しました。

同日、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会・専門家パネルは年次報告書を発表。北朝鮮が政府機関主導のサイバー攻撃で仮想通貨を5億7100万ドル(約630億円)不法に取得しなどと指摘、制裁逃れの実態を明らかにしました。

この報告書は、制裁により輸出が禁じられているはずの高級車を北朝鮮が使っていると写真付きで指摘。その1枚は、2018年9月、平壌で金正恩委員長と文在寅大統領が一緒にメルセデス・ベンツに載っている写真でした (報告書の47ページ )。韓国では「南北経済協力の名称で制裁を破ろうとする韓国への警告」と受け止められています。

平壌で金正恩委員長と文在寅大統領が一緒に乗ったとされるメルセデス・ベンツ

それでも文在寅政権は、米国と全面対決する構えを崩しません。3月14日、文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官が、統一相の人事について「米国とは関係なしに、朝鮮半島政策を推し進める大統領の意向の表れだ」と述べました。

大統領の本音を語ると韓国で見なされる文正仁氏は「(統一相に指名された)金錬鉄氏は主張通り仕事を進めていくだろう」「(それに対し)米国も何もできないはずだ」とも語りました。

ついに文在寅政権は、北朝鮮を助けるためなら米国との決別も辞さない、と言い出したのです。「ルビコン河を渡った」のは、このままでは一心同体の金正恩政権がじり貧となるとの判断からでしょう。

ハノイでの米朝首脳会談が物別れに終わったため、国連の対北制裁が緩む見通しは立たなくなりました。制裁により北朝鮮は、石炭、繊維、水産物の輸出が激減、外貨不足に陥っています。

朝鮮日報のアン・ヨンヒョン論説委員 は「今や金正恩は『通貨危機』を心配することに」(3月6日、韓国語版)で「制裁が続けば北朝鮮は2~3年後に(外貨が枯渇し)通貨危機に陥る可能性が高い」と書きました。

北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は3月15日に平壌で会見し、金正恩委員長が米国との非核化交渉に関する声明を近く発表すると明らかにしました。

その内容は、米国の非核化要求を拒絶、交渉中断や大陸間弾道弾の試験再開を表明する可能性が高いと見られています。 じり貧の道から脱し、米国を再交渉の場に引き戻すには、「放っておけば危険な北朝鮮」とのイメージを打ち出すしかないとの思惑でしょう。

朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン) 主筆は「文政権、金正恩と運命共同体になっている」(3月7日、韓国語版)を書きました。「北朝鮮との関係改善」というカードに全てをかけた文在寅政権は、世界中を敵に回した金正恩政権とスクラムを組むしかなくなった、との分析です。



では韓国は、北朝鮮との連帯をやめ、米国との同盟を堅持する路線に戻るのでしょうか。確かに保守系紙は、そうすべきだと主張しています。ところが、普通の人々がこぞって「北朝鮮よりも米国」を選択するかは分からないです。「米朝の仲介役として米国からも大事にされている韓国」といった幻想を、保守も含め多くの韓国人が信じ込んでいるからです。

トランプ政権は、情報機関同士のパイプを通じて、北朝鮮と首脳会談の開催にこぎつけました。その際、疎外感から韓国が駄々をこねないよう、韓国の仲介もあって会談が実現したかのように演出しました。

文在寅政権はこれを利用し「朝鮮半島では韓国が主導権を握っている」と大々的に宣伝しました。すると「自分たちは疎外されている」と不満を溜めていた韓国人のほとんどが、「我々が運転席に座っている」と信じ込んだのです。

朴槿恵(パク・クネ)政権は、米中等距離外交を展開 、「2大国を操り、それを背景に日本と北朝鮮を叩く偉大な韓国」との妄想を国民に植え付けました。

前政権と同様に、文在寅政権も「妄想作戦」に出たのです。ちなみに今回の妄想は、「米国と一定の距離を置いてこそ、北朝鮮を会談に引き出すなど仲介が可能になる」との含意があります。

もしここで米国の側に完全に戻れば、韓国は仲介者の資格を失うことになります。運転席の座から降りたくない韓国人が、「米国側に戻ろう」とは言いにくい仕組みとなっています。

2017年3月に実施された米韓合同演習「フォールイーグル」

もちろん妄想に生きる韓国人も、世界中から向けられる冷たい視線に、次第に気が付いていくでしょう。ただその時になって米国側に戻ろうとしても、米国から突き放される可能性が高いです。

ハノイでの米朝首脳会談で非核化に何の進展もなかったというのに、米国は3月2日、例年2~4月ごろ実施していた大型の米韓合同軍事演習の廃止を発表しました。野外機動訓練「フォールイーグル」と、シミュレーション中心の指揮所演習「キー・リゾルブ」です 。

合同軍事演習を実施しない同盟は脆弱です。日米の安保専門家の間では「トランプ政権は韓国との同盟維持の意欲を失った。米韓同盟の廃棄を北朝鮮の非核化と交換するカードにするつもりだろう」との観測が一気に高まりました。

米政界の動向に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は産経新聞・正論欄に「在韓米軍を非核化の梃子にせよ」(3月6日)を寄稿。「すでに日本の防衛線は(朝鮮半島の軍事境界線から)対馬海峡まで後退している」と書きました。

東亜日報の社説「トランプ氏『米軍駐留費150%賦課』…韓米『形ばかりの同盟』になるのか」(3月11日、日本語版)も「(米韓同盟が)外形だけが残る道に進んでいる」と危機感を表明しました。その理由として、大型の合同軍事演習の廃止に加え「米軍ではなく韓国軍が司令官を務める韓米連合司令部体制」に近く移行することを挙げました。

米軍は、ある程度の規模以上の部隊は、外国軍に指揮されないとの原則を持っています。「韓国人を指揮官に抱く在韓米軍」は、極めて小規模の部隊にならざるを得ないのです。

北朝鮮の核ミサイル

韓国は米国との同盟、つまり“核の傘”を、失う可能性が高まっています。その際、韓国は「誰の核に頼るのか」を決めねばならないです。中国かロシアか、それとも自主開発か。最も手っ取り早いのが、北朝鮮の核を頼る手です。

北朝鮮から核弾頭を全て除去する完全な非核化は難しいです。仮にそれが実現しても、核弾頭の開発に携わった人材は残り、核の潜在保有国ではあり続けます。

その事実に直面する韓国人のうち、かなりの人々が「北朝鮮と和解すれば、その核は自分たちに向くどころか民族の核として活用できる」と信じるでしょう。韓国で「民族の核」に反対するのは、極めつけの保守だけとなるでしょう。

朝鮮日報の楊相勲・主筆は「南北の政権が野合し、運命共同体になった」と書きました 。だが、現実はもっと厳しいものになるでしょう。南北の政権だけではなく国同士である韓国と北朝鮮という2つの国が、運命共同体になっているのです。

だからこそ、世界からどんなに冷笑されようと、国内からどんなに批判が高まろうと、文在寅政権は「勝算あり!」とばかりに、ますます北とのスクラムを固く組むのです。

現状は米国にとってどうなのでしょう。私は現状は最悪の状況ではないと思います。そもそも、北の核は米国だけを標的にしたものではありません。中国も標的となっています。

韓国の文在寅というより、歴代の政権、特に朴槿恵あたりから、韓国は中国に従属する姿勢を露わにしています。

北朝鮮は、中国の過度の干渉を嫌っています。金正男氏や、張成沢(チャン・ソンテク)氏の殺害はそれを如実に示しています。

そのため、北朝鮮とその核は、中国が朝鮮半島に浸透することを防いでいます。韓国は中国に従属しようとしつつ、北朝鮮との接近をはかっています。ただし、北朝鮮をはさんで、中国に接している韓国は、中国に完璧に従属することができないでいます。

これは、たとえ、韓国が全くあてにならなくなったにしても、安全保証上の空き地があるようなもので、この状況は、米国にとっては決して悪い状態ではありません。

最悪の状況は、中国が朝鮮半島全域を掌握し、覇権の及ぶ範囲とすることです。

米国としては、北・韓国の両国とも様子見というところでしょう。中国の覇権が朝鮮半島で強まることがあれば、米国は具体的に動きはじめるでしょう。また、北朝鮮が核実験、ミサイル実験を再開したときにも、具体的な動きをみせるでしょう。

韓国に関しては、文在寅の支持率も下がっていることですから、長期政権にならず、次の大統領が比較的まともであれば、米韓合同演習を再開する可能性もあります。

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2019年3月31日日曜日

中国・李首相が「バラマキ型量的緩和」を控える発言、その本当の意味―【私の論評】中国が金融緩和できないのは、投資効率を低下させている国有ゾンビ企業のせい(゚д゚)!

中国・李首相が「バラマキ型量的緩和」を控える発言、その本当の意味

「独裁国家」のひずみが見えてくる
ドクター Z

全国的にすすむ「景気の落ち込み」

 2019年に入り、中国の景気減速がしきりに報じられるようになった。今年1~2月の小売売上高の伸び率は前年比8・2%となり、'03年並みの水準に逆戻りしたという。

こうしたなか、李克強首相は「量的緩和(QE)や公共投資の大幅な拡大などの措置を講じようという誘惑に抵抗する」と発言した。緩やかな減税は継続するが、景気拡大を狙った量的緩和は控える、という判断である。このような発表に至ったのは、なぜなのか。
 

 まず、マクロ経済政策には、「財政政策」と「金融政策」の2種類があることを押さえておこう。

 財政政策の選択肢はさらに、「公共投資を増やす」「税金を減らす」と分けられる。減税は続けると言っている中国は、財政政策を取りやめるわけではないことがわかる。

 ただし公共投資と減税は、その効果を受ける対象が異なっている。公共投資の場合は、波及効果を受ける地域は限定される。官製企業の多い中国ならなおさら、恩恵を受けるのは官とつながりのある地域や企業ということになる。

 一方、減税は全国に波及し、民間消費を促す。今回、中国が減税路線を明確にしたのは、景気の落ち込みが全国的に進んでいるのが大きな原因だろう。

 また公共投資の場合、自治体も負担分があるが、中国は地方自治体単位で深刻な債務問題を抱えているところが多い。そもそも公共投資に耐えられる経済状況ではない地域もあるのだ。

 では、量的緩和や引き締めといった金融政策に中国政府が言及しなかったのはなぜか。これは、中国の政治経済の基本的な構造が関係している

 先進国が採用するマクロ経済政策の基本モデルとして、マンデルフレミング理論というものがある。これはざっくり言うと、変動相場制では金融政策、固定相場制では財政政策を優先するほうが効果的だという理論だ。

 この理論の発展として、国際金融のトリレンマという命題がある。これも簡単に言うと(1)自由な資本移動、(2)固定相場制、(3)独立した金融政策のすべてを実行することはできず、このうちせいぜい2つしか選べない、というものだ。


 先進国の経済において、(1)は不可欠である。したがって(2)固定相場制を放棄した日本や米国のようなモデル、圏内では統一通貨を使用するユーロ圏のようなモデルの2択となる。もっとも、ユーロ圏は対外的に変動相場制であるが。

 共産党独裁体制の中国は、完全に自由な資本移動を認めることはできない。外資は中国国内に完全な自己資本の民間会社を持てない。中国へ出資しても、政府の息のかかった国内企業との合弁経営までで、外資が会社の支配権を持つことはない。

 ただ、世界第2位の経済大国へと成長した現在、自由な資本移動も他国から求められ、実質的に3兎を追うような形になっている。現時点で変動相場制は導入されていないので、結果的に独立した金融政策が行えなくなってきているのだ。

 中国の中央銀行である中国人民銀行は、政府の政策に強い影響力を持っているとは言えない。停滞気味の中国がバラマキ型の量的緩和を行えない理由は、急激に発展した一党独裁国家のひずみにあるのだ。

【私の論評】中国が金融緩和できないのは、投資効率を低下させている国有ゾンビ企業のせい(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事には、「停滞気味の中国がバラマキ型の量的緩和を行えない理由は、急激に発展した一党独裁国家のひずみにある」としていますが、そのひずみは具体的にいかなるものなのか、本日はそれを掲載します。

結論からいうと、中国では金融緩和を実施すれば、投資効率の低下、資産負債比率の上昇という構造問題が深刻化することが見込まれているからです。債務の株式化も低調であるため、政府はリスクに配慮した慎重な金融政策をせざるを得ないのです。
中国は、長い間、過剰債務状態にありながらも、金融システムが不安定化することはなかったため、政府はもちろん、国外でも先行きを楽観する見方があります。しかし、現状の中国で金融緩和を実施すれば、中国の債務水準は前人未到の領域に入る可能性が高いです。

国際通貨基金(IMF)は、2018年2月に発表した報告書で、過剰債務抑制に向けた抜本的な政策を打ち出さなければ、家計と政府を含む非金融部門の与信残高は2017年のGDP比255.7%からさらに上昇し、2020年に290%に上昇するとの試算を示しました。過去の経験から今後も安泰と考えるわけにはいかないでしょう。

投資効率が低下していることからも、緩和はリスクの高い政策といえます。中国では投資をけん引役とする成長が続いてきたこともあり、収益率の高い投資案件はそれほど残っていないとされています。

政府のシンクタンク国務院発展研究センターによれば、中国はGDP1元を生みだすために6.9元の投資を必要とするのです。1998~2007年、2008~17年はそれぞれ4.0元と5.7元であったことから、投資効率は著しく低下しています。緩和によって非効率な投資が助長されれば、投資効率は一段と低下することになります。

投資効率を低下させている国有ゾンビ企業

投資効率を低下させているのは国有企業です。国有企業は政府が主導するプロジェクトの担い手であることから、民間企業よりも銀行融資を受けやすいです。これは国有企業の投資効率を引き下げると同時に、資産負債比率を引き上げる要因になっています。

鉱工業分野の企業の資産負債比率をみると、私営企業がほぼ一貫して低下しているのに対し、国有企業は60%超で高止まりしており、サービス業を含む国有企業全体では65%を上回っています。国有企業の資産負債比率は緩和によってさらに上昇し、債務不履行が頻発する事態を招来しかねないのです。

株式債権化(デッド・エクイティ・スワップ)の仕組み

政府は企業の債務が積み上がっていくことを警戒していないわけではありません。債務を削減するため、金融引き締めと同時に導入されたのが債務の株式化です。債務の株式化とは、債務を株式に転換することで利払い負担を軽減し、企業の再建を促そうとするものです。

しかし、実績は低調です。銀行と企業は2017年末までに1.5兆元の債務の株式化について合意したものの、実行に移されたのはその1割強にとどまっています。

この背景には銀行が債務の株式化に消極的なことがあります。中国では、1990年代に債務の株式化が実施されたものの、政府主導で進められたことから、銀行と企業の当事者意識が希薄になり、期待されたほどには企業の再建は進まなかった経緯があります。

このため、政府は今回の債務の株式化は市場主導で進める、つまり、企業の選定や債券の取引価格など、個別の事案に政府は介入せず、銀行と企業の自主的な協議に委ねるとしました。

しかし、2017年6月までの実績をみると、債務の株式化を実施した企業の98%を国有企業が、産業別にみても過半を過剰生産能力が問題視される鉄鋼と石炭企業が占めることから、政府は依然として対象企業の選定に関与している模様です。

再建ではなく、救済を目的に対象企業が選ばれれば、配当や株式売却益を得ることが困難になります。銀行が債務の株式化に慎重な背景には、一方的にリスクを負わされることに対する警戒感があるとみられます。

債務の株式化は政府が期待するほどには進まないことから、金融緩和の余地はそれほど大きくないです。また、政府は投資効率や国有企業の財務体質だけでなく、足元で進む人民元安への影響にも配慮する必要があるため、慎重に緩和を進めざるを得ないのです。

成長減速を緩和で回避するという従来型の政策対応のリスクは明らかに高まっています。経済の持続可能性を高めるためには、やはり非効率な国有企業を市場から退出させるといった抜本的な構造改革が避けて通れません。

国営ゾンビ企業のほとんどは、先進国であれば、倒産した企業です。

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2019年3月30日土曜日

緊迫する南シナ海:中国の進出阻止に本気の米国―【私の論評】本気の米国、南シナ海で比に攻撃あれば米が防衛するとポンペオ氏明言(゚д゚)!

緊迫する南シナ海:中国の進出阻止に本気の米国

米軍、中東のテロ対策から対中戦略へ本格シフト

南シナ海で軍事拠点化を進める中国に対し、米軍が対中政策により力を入れ始めている。

 3月19日、ハワイのフォート・シャフター陸軍基地で開かれた会議で、米太平洋軍司令官のロバート・ブラウン陸軍大将が中国に対抗するため、本土から数千から万単位の兵士をアジアに配備する用意があると述べたのだ。

米太平洋軍司令官のロバート・ブラウン陸軍大将

 「南シナ海で問題(有事)が起きた時には陸海空および海兵隊の兵力が協力し合って対処していくことになります」

 この発言が海軍大将ではなく陸軍大将から出たところに注目したい。

 中国が南シナ海で人工島を造成し、軍事基地化を進めている中で、ブラウン大将は陸軍の出動も念頭に入れているということだ。

 米軍準機関紙『星条旗新聞』によると、実際の有事になった時にはハワイ州、ワシントン州、アラスカ州などから陸軍兵士を短期間、アジアに配備することになるという。

 同大将は具体的な兵数を口にしていないが、準備を整えている。

 「誰も紛争を望んでいません。我々も望みませんが、有事の際にはどんなシナリオにも対応できる体制を整える必要があります」

 海洋でも最終的には陸軍の出動が必要になるとの見方だ。さらにブラウン大将は同会議で「最優先は中国です」と明言した。

 これは過去20年ほど、米軍が第一義として精力を注いできた中東でのテロリズムとの戦いから、対中政策へと戦略がシフトしてきたということでもある。

 特にイラクとアフガニスタンに派遣していた兵力を世界の別地域に向かわせる中で、中国がプライオリティーになったのだ。

B52戦略爆撃機


 今月に入ってから、米軍は南シナ海上空に「B52」戦略爆撃機を3回も飛行させている。

 「定例訓練」であるが、米軍はわざわざ公表する義務がない。しかし3回とも公式発表している。

 最初は3月4日で、2機が米領グアムのアンダーセン空軍基地を飛び立ち、1機は南シナ海上空を「定例訓練」し、もう1機は航空自衛隊と共同訓練をして帰還した。

 14日にも2機のB52戦略爆撃機が、さらに19日にも同様に2機を飛ばしている。

 米太平洋軍報道官は「米航空機は同盟国や友好国、さらに自由で開かれたインド・太平洋地域を守るために恒常的に同地域で作戦行動を行う」と述べて、南シナ海での中国の行動をけん制した。

 さらに米第7艦隊は11日、イージス駆逐艦「スプルーアンス」と「プレブル」を南シナ海に派遣。これは「航行の自由」作戦の一環で、今後も定期的に行っていく予定である。

 作戦の目的は中国が南沙(スプラトリー)諸島で過度な海洋進出をしていることへの「異議申し立てと国際法に準拠した航路を維持するため」だ。

 今月の米軍によるこうした動きを見ると、前述したブラウン大将の「陸海空および海兵隊の兵力が協力し合って対処する」プランは着実に前に進んでいるかにみえる。

 米軍のこうした行動に中国はすぐに反発。

 外務省報道官は米イージス駆逐艦の派遣直後、「米軍艦が中国の許可なく海域に進入したことは中国の主権を侵す行為」と嫌悪感を露わにした。

 さらに「米国は南シナ海で挑発し、緊張を生み出し、平和と安定を脅かしている」と挑発した。

 しかし中国こそが挑発を繰り返す平和と安定の破壊者であるとの見方は、米国では広く支持されている。

 首都ワシントンにある新アメリカ安全保障センターのイーリー・ラトナー副所長は、米国が南シナ海を含めたインド太平洋地域で効果的な防衛体制を維持することは中国の拡張をけん制する意味で重要であると説く。

 「米国の抑止力が同地域でなくなったら、台湾をはじめとする所地域に政治的不安定がもたらされることになる」

 いますぐに南シナ海で有事が勃発する可能性は低いが、文字どおり万難を排して準備しておく必要性は高い。

 ただやっかいなことは、中国は南沙諸島の人工島を軍事基地だけでなく非軍事基地としても使用する意図がある点だ。

 民生基地としての併用であれば、米軍は民間人をむやみに殺傷できないとの思惑がある。

 南シナ海は地政学的に重要な場所であると同時に、海洋資源の宝庫であることは広く知られている。

 中国の貿易額の64%の貨物は南シナ海を通過しているし、南シナ海経由の原油のうち23%は日本にも来ている。

 海洋資源という点に目を向けると、原油と天然ガスの埋蔵量が豊富である。

 米エネルギー情報局(EIA)の調査によると、原油の未発見埋蔵量は112億バレル。ところが中国政府が見積もる埋蔵量はさらに多い。

 中国海洋石油総公司が算出した埋蔵量は、EIAの10倍以上にあたる1250億バレルに達する。

 また天然ガスの埋蔵量はEIAの調査では190兆立方フィート。一方の中国海洋石油総公司の見積もりは500兆立方フィートで、やはり中国の方が2倍以上も多い。

 埋蔵量を正確に算出することは難しいが、大量の天然資源が埋もれているとことは間違いない。

 世界の他地域と比較しても、原油と天然ガスは中東、ロシアの埋蔵量にはかなわないが、天然資源の宝庫と呼んで差し支えない。

 中国政府がそれを狙わないわけがない。地政学的、資源的、軍事的に南シナ海を内海したいとの野心は強まる一方なのだ。

 米専門家からは、南シナ海が「中国のクリミア半島」になりつつあると危惧が聞こえてくる。

 ロシアが2014年、力ずくでクリミア半島を併合した手法を中国は手本にしているとの見方だ。

 中国による明らかな国際法違反を、米国だけでなく関係国がともに異議として唱えると同時に、圧力を加えていく必要がある。

 前出のブラウン陸軍大将は「すべての領域でいいポジショニングを得るために、陸軍が果たす役割もある」と、米軍はすでに普段から南シナ海を眺め、陸海空および海兵隊が総合的に対中国戦略を練っていることを示唆した。
【私の論評】本気の米国、南シナ海で比に攻撃あれば米が防衛するとポンペオ氏明言(゚д゚)!


フィリピン・マニラで同国のテオドロ・ロクシン外相(左)と握手するマイク・ポンペオ米国務長官

以前のこのブログでも掲載したように、南シナ海に関しては、ポンペオ米国務長官も最近重大な発言を行っています。これも、南シナ海への中国の進出阻止に本気の米国の姿勢を示すものです。

ポンペオ米国務長官は、中国の南シナ海への覇権拡張をけん制するために、南シナ海におけるフィリピン軍等への攻撃が米比相互防衛条約の対象になると明言し、以下のように述べました。
島国としてフィリピンは、自由な海洋へのアクセスに依存している。南シナ海における中国の人工島建設と軍事活動は、米国だけでなく貴国の主権、安全、したがって経済的活動に脅威を与えている。南シナ海は太平洋の一部をなしているので、同海域におけるフィリピンの軍、航空機、公船に対する如何なる攻撃も、米比相互防衛条約第4条の相互防衛義務発動の引き金となる。
この発言は3月1日、訪問先のフィリピンでドゥテルテ大統領、ロクシン外相と会談、同外相との共同記者会見において行われたものです。

2017年末に発表された国家安全保障戦略(NSS)、2018年の8月に成立した国防権限法でもフィリピンや台湾防衛の強化が謳われており、既定路線だったと言えます。また昨年のマイク・ペンス副大統領の東アジア首脳会議(EAS)で、「中国による南シナ海の軍事化と領土拡張は違法で危険だ」との発言を一層具体化するものとなりました。

なぜポンペオ氏はこうした発言をしたのでしょうか。

米比相互防衛条約第4条では、「各締約国が太平洋地域におけるいずれか一方の締約国に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の手続きに従って、共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と規定しています。

これまでは南シナ海が「太平洋地域」に入るのかどうかが不明であったため、「南シナ海は太平洋の一部である」と発言することで、その曖昧さを払拭したのです。これによって、以前もこのブログで掲載したように、南シナ海問題、米国とフィリピンの「温度差」を解消しようとしているのでしょう。

米国の政府高官がこうした発言をしたのは数十年ぶりです。オバマ政権下では、同種の規定のある日米安保条約が尖閣に対して適用されるという宣言があった一方で、米比相互防衛条約の適用は注意深く避けられてきました。つまり中国が着々と南シナ海において、人工島を造り、軍事基地化していた時期にこのような発言はなかったため、フィリピンの米国に対する不信は募っていました。

もし、米国が日本に与えたのと同じような確証を私達にも与えてくれるなら、フィリピンは米国に頼ることができ、ドゥテルテ大統領は、中国に対して独自の外交政策を進めようとは思わなかったでしょう。

しかし、フィリピンはすでに、2つの島を失っています。その時米国は、フィリピンを助けに行きませんでした。米国は、国際法のもとで解決されると考えており、領土問題でフィリピンの味方はしませんでした。

中国に対して独自の外交政策をすすめてきたドゥテルテ大統領

一方、米国が4条の適用を宣言してこなかったのは、その適用を宣言すれば、アメリカが望まない戦争に巻き込まれる危険や、中国がアメリカの「レッドライン」を試す可能性が高まるからです。

それにもかかわらず、米比相互防衛条約の適用を宣言したのは、着々と進む南シナ海の中国の内海化の動きです。

中国は、東シナ海、南シナ海を聖域化していく方針で、中国は2010年代半ばに南シナ海を「核心的利益」と呼び、戦争をも辞さないという姿勢を示しています。

この方針は、1989年から1997年まで中国共産党中央軍事委員会副主席であり、人民解放軍海軍の司令官であった劉華清氏(1916~2011)によって出されたものです。

劉氏は、中国の軍隊が陸軍中心に編成されていることに不満を持ち、近代的な海軍を保有するよう主張。中国は1992年に「領海法」を施行し、海洋での資源や戦略拠点といった海洋権益の確保が、中国の安全保障にとって死活的に重要だと規定しました。

その中で中国は、東シナ海、南シナ海、南沙諸島を自国の領土だと一方的に宣言しています。つまり第一列島線から南シナ海を中国の内海として支配することを決めたのです。

中国は南シナ海を中国原潜の聖域にすることを狙っている

中国はすでに西沙諸島や南沙諸島において岩礁等を埋め立てて人工島を造り、軍事基地化しています。さらにフィリピンの隣に位置するスカボロー礁の埋め立てを完成すれば、戦略的トライアングルができ、南シナ海の内海化が完成します。

南シナ海は水深が深いため、ここに中国の原子力潜水艦が潜み、海南島の三亜海軍基地から南シナ海を通り、バシー海峡から太平洋に出ていくことができれば、アメリカ本土に核弾頭を打ち込むことができるようになります。

つまり米国に王手を打つことができるわけです。それは、米国が世界の警察官から撤退することを意味し、日本がアメリカの核の傘を失う時でもあるのです。

米比相互条約の適用について、「取引(deal)」が得意なトランプ大統領も、何のディールも持ち出していません。フィリピン防衛の表明は、アメリカは「覇権から降りない」という意志の表明そのものでもあるためでしょう。


南シナ海は、日本に輸送される石油の9割がこの海域を通過するなど、日本にとっても生命線ともいえる海域です。

この海域を護るために、日本は現在2つのことをしています。1つは、フィリピンやベトナムといった沿岸国に教育訓練を施したり、防衛装備を供与したりすることであり、もう1つは、南シナ海で潜水艦が訓練し港に寄港するなど、訓練と寄港で「中国の自由にさせない」というプレゼンスを示しています。

しかし、南シナ海に戦力を投じれば、東シナ海が手薄になるため、いずもを空母化したり、シーパワーを増やしていかないと、これ以上のことはできないでしょう。

政治とは未来を変えるために現在意思決定をすることです。海軍力の増強には時間がかかるため、日本も海軍力の増強に本腰を入れるとともに、米、英、仏とともに海洋の自由を守ることが不可欠となってきています。

このような準備をすすめる一方で、現在米国が行っている対中国冷戦も大きな意味を持ちます。これによって、中国共産党一党支配をやめ、中国が民主化、政治と経済の分離、法治国家し体制を変えるならば、新中国は国際法を遵守することになり、問題は解決します。

もし、中国が体制を変えないというなら、経済冷戦をさらに強め、米国のみならず世界の先進国がこれに協力し、中国経済を弱体化させ、その後自滅を待つか、軍事的に弱体化したとき、米国およびその他同盟国は、南シナ海の海域で何らかの軍事行動を起こすことになるでしょう。

中国は、現在の体制と、南シナ海の軍事基地をなんとしても守り抜くことになるでしょうから、米国は中国が他国に影響力を行使できなくなるくらいまで、経済を弱体化させ、軍事行動にでることになるでしょう。それは、いますぐということではなく、はやくても10年後くらいになることでしょう。

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2019年3月29日金曜日

【主張】欧州の対中戦略 結束乱れる危うさ認識を―【私の論評】日欧ともに最早お人好しであってはならない(゚д゚)!

【主張】欧州の対中戦略 結束乱れる危うさ認識を

     欧州で自らの勢力圏拡大を図ろうとする中国にどう対応するか。欧州の対中戦略は世界の経済や安全保障にも影響する重要な意味を持つ。

 だが、中国の習近平国家主席による訪欧で明確になったのは、対中国で足並みをそろえられない欧州の現実である。

対中接近をはかる中・東欧諸国(16カ国)

 欧州連合(EU)の欧州委員会は、中国を貿易や技術開発の「競争相手」とする見解をまとめ、中国への警戒感をあらわにした。実際、フランスやドイツではそうした見方が多い。ところがイタリアや中・東欧諸国は、むしろ対中接近を図っている。

 EUの結束どころか、分断が深まるようでは危うい。経済、軍事上の覇権を追求する中国が、EU各国を切り崩しながら膨張主義を強めることに懸念を覚える。

 欧州に求めたいのは、目先の経済利益に踊らされず、日米と連携して中国に厳しく対処する姿勢である。その認識を共有し、結束を取り戻せるかが問われよう。

 マクロン仏大統領は習氏に「EUの結束を尊重するよう望む」と求めた。イタリアが中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に協力する覚書を結んだためである。EU内の旧共産圏諸国なども覚書を結んでいるが、先進7カ国(G7)ではイタリアだけだ。対米関係で苦境に立つ中国には成果である。

 問題は、これを機に一帯一路が再び勢いづきかねないことだ。一帯一路は、相手国を借金で縛る手法への批判が世界中で相次いでいる。欧州でも中国の手に落ちたギリシャ港湾などが軍事利用されることに警戒がある。そうした懸念が強まることにならないか。

 反EU機運が高まる中、イタリアのように経済が停滞する国が中国に傾斜する流れが強まれば、EUの求心力は一段と弱まることにもつながりかねない。

 域内では第5世代(5G)移動通信システムでも対応に温度差があり、欧州委員会は米国が求める中国の華為技術(ファーウェイ)の一律排除を見送った。それが米欧の溝を際立たせてもいる。

 留意すべきは、EU域内のみならず、日米欧がばらばらに動けばどこを利するかである。日本は一帯一路に前のめりとなる一方、ファーウェイ製品の政府調達を事実上排除した。国ごとの違いを乗り越え対中戦略でどう連携できるか。G7の場で深めるべき重要なテーマだと認識しておきたい。

【私の論評】日欧ともに最早お人好しであってはならない(゚д゚)!

上の記事では、「日本は一帯一路に前のめりとなる一方、ファーウェイ製品の政府調達を事実上排除した」としています。しかし、「一帯一路にまえのめり」は事実ではないと思います。特に日本政府、安倍首相はそうではありません。それについては、以前このブグにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
安倍首相、中国の一帯一路協力に4つの条件 「全面賛成ではない」―【私の論評】日本には中国および習近平政権の今後の行方を左右するほどの潜在能力がある(゚д゚)!

参院予算委員会で答弁を行う安倍晋三首相。右は麻生太郎副総理兼財務相、
左奥は根本匠厚生労働相=25日午後

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、安倍晋三首相が25日の参院予算委員会で、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に日本が協力するには、適正融資による対象国の財政健全性やプロジェクトの開放性、透明性、経済性の4条件を満たす必要があるとの認識を示した。「(4条件を)取り入れているのであれば、協力していこうということだ。全面的に賛成ではない」と述べたことを掲載しました。

そうして、安倍総理は「一帯一路」に対して両手をあげて賛成しているどころか、牽制しているという趣旨の主張をしました。それに関する部分を以下に引用します。
安倍総理が、条件づきで一帯一路への協力の可能性を述べたのは、何も今に始まったことではありません。以前から何度か述べています。
たとえば2017年都内で行われた国際交流会議の席上、安倍総理は中国の経済構想「一帯一路」に初めて協力の意向を表明しています。これを受け一部メディアはあたかも日本が中国に屈したかのように報じるなど、「中国の優位性」が強調され始めました。
安倍首相は同年6月5日に国際交流会議「アジアの未来」の夕食会で講演し、中国の経済圏構想「一帯一路」について、「(同構想が)国際社会の共通の考え方を十分に取り入れることで、環太平洋の自由で公正な経済圏に良質な形で融合し、地域と世界の平和と繁栄に貢献していくことを期待する。日本は、こうした観点からの協力をしたい」と述べました。
新聞各紙は、初めて安倍首相が「一帯一路」への協力を口にしたということをポイントとして強調しています。これだけ見ると、いよいよ日本も「一帯一路」に参加するかのような印象を与えました。
当時は、米国のTPP離脱で窮した安倍政権が、「一帯一路」に尻尾を振り始めたと見る向きもありました。しかし、その後日本は自らTPPの旗振り役となり、米国を除いた11カ国で昨年末に発効しています。
ただし、産経新聞は「安倍晋三首相、中国の『一帯一路』協力に透明性、公正性などが『条件』」という見出しで、中国が支援する国の返済能力を度外視して、インフラ整備のために巨費を投じることが問題化しつつあることを踏まえた発言だという内容となっています。むしろ中国を牽制する狙いがあるという論調です。私もそう思います。

本日の安倍総理による4条件①対象国の財政健全性、②プロジェクトの開放性、③透明性、④経済性も同じことであり、これは中国を牽制する狙いをより明確にしたものです。
安倍総理の対中戦略は一貫したものであり、要するに中国がまともになれば、協力することもあり得るが、そうはなりそうもないので、当面は協力はあり得ないということを表明しているのです。

中国の習近平国家主席は27日、イタリア、モナコ、フランスの欧州3カ国への歴訪を終えて帰国しました。巨大経済圏構想「一帯一路」についてイタリアと先進7カ国(G7)で初となる覚書を交わすなど、習指導部は「中欧関係の発展に新たな推進力を注入した」(耿爽外務省報道官)と成果をアピールしています。ただイタリアの対中傾斜で欧州連合(EU)内部の警戒感はさらに高まり、人権問題をめぐる溝も埋まっていません。

米国との貿易摩擦が長期化する中、習指導部は巨額投資と巨大市場の開放をテコにEUとの関係強化を図っていますが、期待したほど一帯一路への支持は拡大できていないのが現状です。

中国共産党は27日、収賄容疑で調査していた国際刑事警察機構(ICPO、本部・仏リヨン)前総裁の孟宏偉前公安省次官を党籍剥奪処分にしたと発表しました。同事件をめぐってはフランスにとどまる孟氏の妻がマクロン仏大統領に、中仏首脳会談で待遇改善を提起するよう求める書簡を送付。訪仏後まで処分の発表を遅らせたのは、事件に注目が集まるのを避ける狙いがあったようです。

中国外務省は習氏が外遊に出発した21日、EUの駐中国大使らに新疆ウイグル自治区へのツアーを提案しました。100万人以上のウイグル族らを強制収容しているとの批判に反論するのが狙いとみられますが、EU側は「準備が必要」だとして拒否しました。中国側の政治的主張に利用される懸念があったとみられます。

EU首脳会議後の会見で笑顔を見せるユンケル欧州委員長=22日、ブリュッセル

陸のシルクロードと呼ばれる「一帯一路」では、中国は欧州において、すでに旧共産圏16カ国との間で協力の枠組み「16プラス1」を持っています。バルト3国、旧東欧諸国、バルカン半島の国々が参加し、大規模なインフラ整備事業ではこれらの国々の対中依存度は高まりつつあります。

問題は、このうちポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、バルト3国など11カ国がEU加盟国であることです。これに加えて、中伊の急速な接近に対し、フランスのマクロン大統領やEU執行機関・欧州委員会のユンカー委員長らが強く反応したのも無理はないです。

マクロン氏は22日にブリュッセルで行われたEU首脳会議の場で記者団に、「中国に関して欧州がお人好しでいる時代は終わった。長い間、われわれは対中政策で共同歩調を取らず、中国は欧州の分断から利益を吸いあげてきた」と警戒感を直截に表現した。ユンカー氏の中国に関する発言は「トランプ米大統領並みだった」との報道もあります。

EU首脳らは会議で、欧州委員会による対中戦略の見直し計画を承認しました。この文書は中国について「全体的なライバルである」と明記し、気候変動対策や核不拡散問題では従来型の協調維持を掲げつつも、「お人好し」一辺倒の路線とは明確に決別するトーンで貫かれている点が目新しいです。

中国の対欧投資を規制することや、中国に市場開放をより厳しく求めること、中国が積極的に輸出する次世代通信5Gの通信網整備については安全保障上の脅威の有無について検討すべきことなども盛り込んでいます。

ある欧州外交官は「中国による分断工作をはねつけるための対策だ」と語っています。首脳会議では、サイバー分野についてはコンテ伊首相も「懸念を共有する」と述べ、この分野で中国と協力する場合には、透明な形でEUに情報提供すると約束しました。EU内で高まる懸念に一定の配慮を示さざるを得なかったのです。

マクロン仏大統領

マクロン氏は26日、習氏が国賓として滞在中だったパリにユンカー氏とメルケル独首相を呼び、4者会談を行いました。EUの中軸をなす独仏と欧州委員会の共同歩調をアピールするために設定したものです。この場でもマクロン氏は「中国はEUの一体性と価値観を尊重しなければならない」と述べ、カネにものを言わせて欧州の分断を図る試みを率直に批判したのである。

問題の一因は、EU加盟国が自国の国家安全保障政策に関する主権をまだEUに移譲していない制度にもあるでしょう。例えば、中国の通信大手「華為技術(ファーウェイ)」を5G通信網整備に関与させるか否かについての最終的な判断は、EUではなく、加盟国が下すのです。

安保政策の「統合不足」は、中国による分断工作を許す弱点でしょう。マクロン氏が中国に注文をつける一方で、300機のエアバス機売却について習氏の同意を得たことが示すように、対中関係は是々非々のバランスも難しいです。

マクロン氏はさる3月5日、EU加盟国の28のメディアに寄稿し、「欧州の再生」を呼びかけました。ドイツを怒らせるユーロ圏の共通予算構想など従来の主張は封印し、米国が強く求める国防費の増額をEUが義務化することや、内実の伴う共同防衛計画の策定、EUから離脱するであろう英国を取り込んだ「欧州安全保障理事会」の創設、相互防衛条約の締結をなど提唱しました。

通商政策では、租税、データ保護、環境などのEU基準や戦略的利益を無視した商取引を禁じることや、米中並みの産業・調達政策を導入すべきことも主張しました。

EUが今後、マクロン氏の問題提起をどこまで議論するかは不透明です。28カ国の総意で重要案件を決めていくEUの意思決定は確かに時間がかかります。しかし、こうした大手術が必要であることは間違いないです。

第2次大戦後の欧州は「平和構築」「繁栄の共有」「民主制度の改革」という発展指向の試みによって運命共同体を築きました。その欧州はいま、文明を共有する一体的な空間の「防衛」、つまり自らの浮沈をかけた闘いに直面しているのです。

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2019年3月28日木曜日

5月20日が消費増税停止期限か 政権目標のデフレ脱却道半ば…日本も「リーマン級」混乱懸念―【私の論評】安倍総理は消費税増税の空気に抗え(゚д゚)!

5月20日が消費増税停止期限か 政権目標のデフレ脱却道半ば…日本も「リーマン級」混乱懸念
 
 
   2月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は昨年2月と比べて0・7%上昇した。総合指数は0・2%上昇、「食料及びエネルギーを除く総合」は0・3%上昇だった。   これらから、生鮮食品は下落しているが、エネルギー価格が上昇しており、全体としては極めて緩やかな上昇にとどまっていることが分かる。ただし、エネルギーのうちガソリンについては、これまで上昇していたが、2月には2年3カ月ぶりにマイナスに転じたため、エネルギーの上昇への寄与が低下し、総合指数と「生鮮食品を除く総合」で伸び率が鈍化した。   もともと、季節要因と海外要因で影響を受けやすい総合指数と「生鮮食品を除く総合」でみるよりも、「食料及びエネルギーを除く総合」で見たほうが傾向が見やすい。それの対年同月比でみると0・3%なので、物価はほとんど上がっていない。   これでは、デフレから完全に脱却していない。デフレ脱却は安倍晋三政権の一丁目一番地といえる目標である。   こうしたなかで行われる消費増税はデフレ脱却に支障が出るばかりか、名目経済成長を阻害し、財政当局が主張する財政健全化のためにも逆効果である。   安倍首相はこれまで「リーマン・ショック級のことがない限り消費増税を行う」と言ってきたので、消費増税見送りの可能性はある。   中国経済は米中貿易戦争のために急減速している。英国と欧州連合(EU)もブレグジット(EU離脱)の混迷により経済変動が不可避の状況だ。それに加えて、インフレ目標2%を下回るほど、日本の経済活動は不活発である。   日本国内経済がさえないのは、事実上の金融引き締め政策であるイールドカーブコントロール(長短金利操作)を日銀が堅持し、同時に財務省も緊縮財政路線から脱していないからだ。今の景気は既に下降局面に入っている。    もっとも今年度予算が成立する3月中は予算成立が安倍政権の最優先なので、消費増税は予定通りとしかいえない。しかし、4月以降、安倍首相が君子豹変(ひょうへん)することはあり得る。     これまで消費増税は2度見送られた。1度目は2014年11月で、衆院解散・総選挙が行われた。15年10月からの消費増税を世論に問うものだった。     2度目は、16年5月の伊勢志摩サミット。その時、17年4月からの消費増税はリーマン・ショック級の経済変動があり得るとして見送られた。    二度あることは三度あるなのか、三度目の正直なのか。    こうした状況の中、いつまでに安倍首相が最終決断するかというと、常識的には5月20日の1~3月期国内総生産(GDP)速報公表までだろう。7月の参院選の公約は6月上旬までに取りまとめる必要があるからだ。 リーマン・ショック級というなら、3年前の伊勢志摩サミット時より今のほうがその確率は高い。震源地となる候補として、中国、英国に加えて、日本も挙げておこう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
 
【私の論評】
 
 
 
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2019年3月27日水曜日

トランプ大統領「再選」の目に韓国&北朝鮮が震撼! 日本は拉致問題解決の追い風に―【私の論評】トランプ再選の可能性はかなり高い(゚д゚)!安倍四選も?


ロシア疑惑を乗り切ったトランプ氏

 ドナルド・トランプ米大統領に「再選」の目が出てきた。2016年の大統領選をめぐるロシア疑惑をめぐり、特別検察官が提出した捜査報告書で、トランプ陣営とロシアの共謀は認定できないと指摘されたのだ。来年の大統領選に向けた「最大の障害」がなくなり、トランプ氏は続投に意欲を見せる。一方、韓国と北朝鮮には震撼(しんかん)が走りそうだ。トランプ氏は韓国への不信感を強め、北朝鮮にも制裁を緩める気配がない。日本にとっては、悲願の拉致被害者奪還に追い風となりそうだ。

 「2年間もかけて、証拠が1つも出なかった。米民主党としては、ロシア疑惑しか、トランプ氏の再選を阻む手段はない。経済政策はうまくいっているし、外交でも米中新冷戦でポイントを挙げている。民主党の大統領候補は極左ばかりで、トランプ氏の再選の可能性がさらに強まった」

 国際政治学者の藤井厳喜氏はこう語った。

 ウィリアム・バー司法長官は24日、ロバート・モラー特別検察官の捜査報告書について議会に概要を報告した。そのなかで、「特別検察官の捜査は、トランプ陣営や関係者らが、大統領選に影響を及ぼすためロシア側と共謀したり協力したりしたということを見いださなかった」と指摘した。

 司法妨害についても、バー氏は「特別検察官の捜査による証拠は、大統領の司法妨害への関与を立証するには不十分」と結論づけたとする意見を記したという。

 こうした動きを受け、トランプ氏は同日、ツイッターに「共謀も(捜査)妨害もない。完全かつ全面的に疑いが晴れた。米国を偉大にし続けよう!」と投稿した。「偉大にし続ける」という部分から、続投への強い意欲が感じられる。

 米議会下院を握る民主党は報告書全文の公開を要求したが、トランプ氏にとっては「再選への追い風」となったのは事実のようだ。

 これらは、韓国と北朝鮮には「最悪の事態」を意味する。トランプ氏と両国との関係悪化が顕在化しているからだ。

 米国の同盟国である韓国だが、文在寅(ムン・ジェイン)政権の誕生後、米韓関係は悪化の一途をたどっている。

 北朝鮮の「核・ミサイル」問題をめぐり、文政権が「仲介者」となって始まった米朝交渉だが、北朝鮮の「見せかけの非核化」が明らかになり、2月末の米朝首脳会談は決裂した。世界各国で、対北制裁緩和を主張し続けた文大統領に対し、トランプ政権は「北朝鮮の代弁者」とみなして不信感を強めている。

 韓国の保守系メディアは最近、「米韓関係の悪化」を懸念する記事を掲載している。

 米朝首脳会談から1カ月近くがたった25日にも、中央日報(日本語版)は《「文大統領の仲裁論に米国務長官が不快感、韓米外相会談はないと…」》と伝えた。記事では、ワシントンの情報筋の話として、マイク・ポンペオ国務長官と、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相の会談が、今月中にはないとの見方を紹介している。

韓国海軍駆逐艦による、海上自衛隊哨戒機への危険な火器管制用レーダー照射事件についても、米国側は「韓国側の暴挙」について、日本側から詳細な情報を得ているという。

 北朝鮮にとっても、トランプ政権の継続は歓迎すべき話ではない。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は昨年6月と今年2月、トランプ氏との首脳会談に臨んだが、何の成果も得られなかった。列車で3日近くかけて大宣伝しながらベトナムに乗り込んだものの、経済制裁も緩和されず、最高指導者の権威に傷がつくだけの結果に終わった。

 先週、正恩氏のロシア訪問を示唆する動きがあったが、米朝首脳会談の決裂を受けて、米国の譲歩を引き出そうとした可能性がある。

 前出の藤井氏は「トランプ氏が強くなるということは、『親北』の文政権にはマイナスだ。北朝鮮としても、『もう少し柔らかい民主党の大統領になれば、くみしやすい』とみているだろう。トランプ政権が続けば『核・ミサイル』問題で妥協せざるを得なくなるはずだ」と解説する。

 逆に日本にとって、トランプ氏の続投は追い風といえる。



 安倍晋三首相とトランプ氏との信頼関係が強固で、先月の米朝首脳会談でも、安倍首相が最重要課題と位置づける拉致問題を、会談冒頭を含めて2回も提起したのだ。

 藤井氏は「北朝鮮は首脳会談で、米国が経済制裁を解除してくれると甘く踏んでいたようだが、そうはならなかった。『(拉致問題を解決して)日本から金を引き出さないと厳しい』という考えになっているようで、水面下で日本に接近してきたと聞く。トランプ政権は対北強硬路線を取っており、日本にとって、トランプ氏の再選は良い事態だ」と語っている。

【私の論評】トランプ再選の可能性はかなり高い(゚д゚)!安倍四選も?

トランプはおそらく再選されることでしょう。それには以下のような理由があります。

第一に米国の現職大統領は再選される可能性が高いことがあります。第二次大戦後米国では11人の現職大統領が再選選挙に臨みましたが、8人が再選を果たしました。

再選できなかった3人は、フォード、カーター、父ブッシュですが、この内フォード大統領は任期途中で辞任したニクソン大統領に代わって副大統領から繰り上がって就任し選挙を経ていないので除外すると、現職大統領の再選の可能性は80%以上ということになるります。

それもイラン問題でしくじったカーター大統領や、景気不振を招いた父ブッシュ大統領の場合と違い、トランプ大統領には今のところ政策的に大きな間違いは犯してていません。

第二に相手候補のことがあります。民主党側では2ダース以上の候補者の名前があがっていて乱立気味です。

2020年のアメリカ大統領選挙は、まだ1年以上先なのですが、すでに公式に出馬を表明したのは、ジュリアン・カストロ(元住宅都市開発省長官)、リチャード・オジェダ(ウエストバージニア州上院議員)、ジョン・デレイニー(メリーランド州選出下院議員)等3人だですが、この他にコーリー・ブーカー(ニュージャージー州選出上院議員)、カマラ・ハリス(カリフォルニア選出上院議員)などですが、彼らは実は米国内でも知名度は低いのです。

ジュリアン・カストロ

そこで、バイデン元副大統領やヒラリー・クリントン前大統領候補の出馬が取りざたされているが「新味がない」との声も高いです。

民主党の場合、党内の候補者の最初の討論会が今年6月に開催され、党内の候補者選びがスタートするが、今年は全ての日程が早まり有力州の予備選は12月に始まります。つまり、6月までには一年半の選挙戦を戦い抜く組織と資金を確保しておく必要があるわけですが、今のところそこまで準備できそうな候補は見当たらないです。

ちなみに、前回の大統領選でヒラリー・クリントンは2015年4月までに組織と資金の準備を終えて正式な出馬表明をしていました。

一方のトランプ大統領は、昨年2月の大統領就任時にすでに2020年への出馬を連邦選挙委員会に届け出て公式に選挙運動を始め、昨年(2018年)2月には選挙参謀を指名しました。資金的にもすでに3500万ドル(約40億円)を集めたとされています。

最後に、トランプ大統領に有利にはたらく要素があるとすれば、意外と思われるかもしれないが下院での弾劾の動きです。

中間選挙で過半数を獲得した民主党は、新議会でトランプ大統領への弾劾を目指していわゆる「ロシア疑惑」について厳しく追求してきました。

しかし、1998年にクリントン大統領のインターンとの不倫問題で共和党が弾劾に向けて激しく追求した時に行われた中間選挙では、その共和党が議席を失うということになりました。有権者は議会が弾劾にばかり熱をあげることには反対するのです。

さらに、モラー報告書によって過去2年間も調査を実行したのに「ロシア疑惑」なるものには、何の実体もないことが明らかになったわけですから、これは当然トランプ大統領に有利に働くのは当然のことです。これ以上弾劾の動きがあれば、さらにトランプ大統領に有利となるでしょう。



日本では、安倍総理四選の噂もでています。そうして、それはあながち否定できないところがあります。これは、自民党の党則を変えれば実現できるものだからです。

こういった噂が出る背景には、安倍氏の後継候補がなかなか見えてこないという事情がああります。石破氏は先の総裁選の地方票で健闘して「ポスト安倍」レースで一歩抜けた印象がありますが、肝心の国会議員票では2割にも達していませんでした。

その他は岸田氏、加藤氏、茂木敏充経済再生担当相らの名が上がりますが、政治的力量、知名度、人望ともに心もとないです。特にこれら候補すべてが、増税派であるということも気になります。

さらに石破氏も含めて4人は、いずれも60歳代。64歳の安倍氏とほぼ同世代です。これでは、対外的に世代交代したというアピールができません。

自民党の若手が、経験を積むまでの間、安倍氏に続けてもらったらどうか。そういう考えを抱く議員も多いようです。

安倍・トランプ続投で日米にとって朝鮮半島問題、中国への対処などかなりやりやすい状況になるのは間違いないと思います。

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2019年3月26日火曜日

トランプが米韓合同軍事演習の中止を正当化する「2つの理由」―【私の論評】本当の中止の理由は情報漏えいか(゚д゚)!

トランプが米韓合同軍事演習の中止を正当化する「2つの理由」

岡崎研究所

 米国防総省は3月2日、二つの大規模な米韓合同軍事演習の中止を発表した。一つは「Foal Eagle(フォール・イーグル)」で、40年間毎年空軍と海軍の参加も得て通常兵器による陸上での紛争を模擬実験してきた。2017年には韓国駐留の2万8000人に加え、3600人が参加した。二つ目は「Key Resolve(キー・リソルブ)」で、これは北朝鮮の攻撃後に不可欠な司令部を作るためのコンピュータ・シュミレーションを行うものである。これらは、規模を大幅に縮小した演習により代替されることになる。

2017年米韓合同演習に参加した米、韓国両国の将兵

 トランプは米韓合同軍事演習の中止を二つの理由で正当化している。一つは費用が掛かりすぎる、お金の無駄遣いであるということであり、今ひとつは金正恩と交渉中であるので、彼に善意のジェスチャーを見せる必要があることである。演習の中止に伴う米韓軍の即応能力の低下、米韓同盟に与える影響は大したことではないとの判断であると思われる。

 まず第1に費用が掛かりすぎるとの点については、トランプは「1億ドルかかっている」と主張するが、どこからそういう数字をトランプが持ってきたのか、よくわからない。国防総省は、昨年の演習中止の節約額は1400万ドルだったと言っており、トランプの見積もりは高すぎる。その上、防衛はお金の問題も重要であるが、それだけで考えるべき問題ではない。同盟の維持、即応力の問題はお金の計算で割り切れるようなものではなく、そういう意味でトランプの主張は適切とは言えない。ウォールストリート・ジャーナル紙の3月6日付け社説‘Trump Gets Exercised Over Exercises’は「演習を調整することは軍事的即応力を直ちに損ずるわけではない。しかし、小規模演習による代替は能力を損ずるというのではないが、戦争のストレスの模擬実験する上では陸、海、空における大規模演習のように適切なものはない」と指摘している。その通りであろう。

 第2に、「金正恩と交渉中であるから善意のジェスチャーを」ということで、大規模軍事演習の中止を決めたとすれば、これも適切ではない。共産主義者やその亜流は、力関係を重視し、戦略を考えるのが普通であり、敵または交渉相手の善意を信じるということはほぼない。彼らは大変に現実的である。こういう相手との交渉では、善意で先に譲歩することは相手から弱さと評価されるか、あるいは下手な交渉と評価されるかである。交渉の材料、いわば譲歩は見返りを得てこそするのが良く、一方的な譲歩は極力避けるのが良いと思われる。北朝鮮はこのトランプの譲歩を善意のジェスチャーとは看做さず、その見返りに態度を変えることは見込まれない。対北圧力手段の一つを放棄させた戦利品として、見返り無しに固定化していくことを狙うであろう。非核化交渉に今一つの問題を上乗せした結果になりかねない。このことはプーチンとの交渉にも当てはまるように思われる。

 米朝交渉はハノイ会談の後、どう進展するのかよくわからない。米朝の対立点が明確になったことから、次の会談前に双方が交渉姿勢を見直すことはありうる。米側からは圧力強化が、北からはそれに対する反発が出てくるとみておくのが当面の常識的判断であろう。第3回目の首脳会談については、失敗は許されないと思われ、事前の調整が事務レベルや閣僚レベルで行われることになるだろう。「出たとこ勝負」の首脳会談ではなく、よく準備された、成功がほぼ約束された首脳会談が米朝双方の狙いになろう。非核化がすんなりいくとは思えないが、中身がどうなるかを予測するのは時期尚早である。

【私の論評】中止の本当の理由は情報漏えいか(゚д゚)!

上の記事では、指摘されていませんが、トラン不政権が米韓合同演習を中止した最大の理由は情報漏えいを恐れてのことだと思います。最近の文在寅の親北ぶりは異常なもので、トランプ政権としては、文大統領の次の大統領がまともな大統領だった場合、演習を再開するのではないか思います。

米国は韓国をまったく信用していません。例えば、米韓両軍が合同軍事演習で採用してきた最高機密『5015作戦計画』があります。特殊部隊による『正恩氏排除=斬首作戦』を含むものですが、これが韓国から北朝鮮に全部もれたとされています。あり得ないことです。

2017年10月14日、朝鮮半島情勢が緊迫化する中、韓国軍の機密文書が北朝鮮とみられるハッカーによって大量に盗まれていたことが発覚しました。米軍から提供された情報も漏れた可能性がありました。北の指導部を狙った「斬首作戦」に関する情報も流出したとされ、韓国紙は「北で起これば全員死刑」と批判していました。

韓国メディアによると、昨年9月、北朝鮮からと推定されるハッカーが韓国軍のデータベース(DB)センターに相当する国防統合データセンター(DIDC)をハッキングして盗み出した文書は235ギガバイトに登りました。A4サイズの紙で1500万枚に相当する量です。韓国軍は流出したデータの総量自体は確認しましたが、どんな資料が流出したかは全体の22.5%に当たる53ギガバイト分(約1万700件)しか把握できていないといいます。

地上から撮影されたされるKH12の写真

朝鮮日報は国会国防委員会で与党「共に民主党」の幹事を務める李哲熙議員の話として「流出資料には、米軍が独自に収集して韓国軍に提供した写真ファイルが多数含まれていた」と報道しまし。代表例として「キーホール」(鍵穴)という別名で呼ばれるKH12偵察衛星が収集した情報などを挙げました。

KH12は、北朝鮮の300~500キロ上空を1日に3、4回通過して内部の動向をつかみます。韓国の安全保障専門家は「この情報が韓国側のミスで北朝鮮のハッカーに渡ったのだとしたら、今後米軍が情報共有を避ける口実にされかねない」と危惧していました。

さらに流出した情報には、金正恩・朝鮮労働党委員長らを殺害する「斬首作戦」ともいわれる「作戦計画5015」などの軍事機密が数多く含まれていたとされます。これは、以前も北朝鮮に漏洩したとされていましたが、さらに詳細が漏洩した模様です。

斬首作戦は有事の際、米国の増援部隊が韓半島(朝鮮半島)に到着する前に特殊部隊やミサイルなどを使い、朝鮮人民軍の司令部を攻撃するものですが、その細かい内容が北朝鮮の手に渡ってしまった可能性が捨てきれないのです。

さらに、文政権は昨年は、中国やロシアと連携して、国連安保理決議で決めた「対北制裁」を、是が非でも緩和させようと画策していました。これで米国の同盟国といえるのでしょうか。

平城を訪問した文在寅

ジェームズ・マティス米国防長官(当時)は昨年5月29日来日し、安倍晋三首相や小野寺五典防衛相(当時)らと会談しました。次の4点で日米は固く一致しました。

 (1)北朝鮮の核兵器と大量破壊兵器とあらゆる射程の弾道ミサイルについて「完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄(CVID)」を目標とする。

 (2)北朝鮮に対し、具体的な非核化の行動を早くとるよう迫る。

 (3)国連安保理で決めた経済制裁を堅持する。

 (4)米国は、(安倍首相が全面解決に執念を燃やす)日本人拉致問題を重視する。

一方、文大統領は前日28日、訪韓したマティス氏との会談をドタキャンしました。理由は「風邪だ」と発表されました。

米国防長官との会談は、同盟国のトップにとって最重要会談の1つです。風邪でドタキャンなど、考えられません。当時は重病説もながれましたが、その後ピンピンしていることから、やはり仮病だったと思われます。

マティス氏に、正恩氏の言い成り状態を怒られるから逃げたのかもしれません。トランプ大統領の文氏嫌いは有名で、『韓国は裏切り者だ。懲らしめろ』という敵視論まで噴き出ています。

さらに、韓国統一省当局者は昨年12月28日、韓国に居住する北朝鮮脱出住民(脱北者)の支援に当たる機関がハッキングを受け、997人分の氏名や生年月日、住所などの個人情報が流出したと明らかにしました。

当局者によると、大部分は南東部慶尚北道に住む脱北者。脱北者の定着支援を担う「ハナセンター」の職員が外部から届いたメールを開いたところ、パソコンが悪性プログラムに感染し、保存されていたファイルから個人情報が流出しました。

脱北者らが何らかの被害に遭ったとの報告はないが、身辺保護強化が必要と判断される場合は転居なども含め対応を検討します。情報が漏れた脱北者には個別に通知しているといいます。

脱北者の個人情報を含む文書は暗号をかけたり、インターネットにつながっていないパソコンに保存したりするよう指針で定められているが、守られていなかったそうです。

このような情報の取扱の杜撰さや、親北政権による人為的な漏洩などを米国は警戒しているのだと思います。

米側としては本当は米韓軍事演習を中止などしたくないはずです。

第一には、一度中止した軍事演習をまた復活したという苦い経験があるからです。今から27年前の1992年に米国は北朝鮮との間で「バーター取引」をしたことがありました。米韓両国は1992年に恒例の米韓合同軍事演習(当時はチームスピリット)を実施することで合意していたが、1992年1月7日、北朝鮮がIAEA(国際原子力機構)との核査察協定に調印することを条件に14年間続いていた合同軍事演習の中止に踏み切りました。

中止が発表されると同時に北朝鮮外務省はIEAEの査察受け入れを表明し、1月30日に査察協定に正式調印した。翌2月には南北初の総理会談で「和解・不可侵と交流協力合意書」と「非核化共同宣言」が発表されました。

しかし、北朝鮮が申告した内容とIAEAの査察結果に重大な差があることが判明し、IAEAは北朝鮮に対して特別査察の受け入れを迫り、北朝鮮がこれを拒否したことで1993年にチームスピリットが復活することとなりました。

第二は、合同軍事演習が北朝鮮の戦争遂行能力を削ぐことにあるからです。

米韓合同軍事演習は北朝鮮を降伏させるための「5015作戦」に従って実施されているが、この作戦は2002年にブッシュ政権下で作成された「5030作戦」も取り入れています。

当時、ラムズウェルド国防長官を頭にペンタゴンが作成した「5030作戦」はずばり、北朝鮮を干し挙げるための作戦計画です。軍事衝突発生前に北朝鮮政権を転覆させる多様な低感度の作戦で、統帥権者である大統領の承認なしで遂行できる作戦です。

例えば、「R-135」偵察機を北朝鮮の領海に近づけ、北朝鮮戦闘機のスクランブル発進を誘導させることで燃料を消費させるとか、戦略爆撃機「B-1B」や原子力空母、原子力潜水艦など戦略兵器を投入し、北朝鮮を緊張状態に置き、北朝鮮の戦争備蓄を消費させ、経済活動を麻痺させるという戦法が取り入れられています。制裁を掛けて、北朝鮮の金融システムを封鎖する作戦も含まれています。

上記の二点からしても、米軍が米韓合同演習を実施するのはかなり重要なことであったとご理解いただけるものと思います。

軍事境界線(DMZ)

最後に、朝鮮半島(韓国)は米軍にとって格好の演習場となっていたことがあります。

朝鮮半島は「アジアの火薬庫」と称されて久しいです。駐韓米軍と韓国軍は東西248kmに及ぶ軍事境界線(DMZ)を挟んで120万の兵力を有する敵(北朝鮮軍)と対峙しています。世界でも稀に見る緊張状態が続く地域では本番さながらの演習が可能です。

かつての、韓国は親米国家でした。また、保守、革新問わず、歴代大統領は親米でした。米軍撤退の声も、基地反対の声も起きてはいませんでした。米軍にとって演習の立地条件としてはこれほど好条件に恵まれているたのは他になかったのです。

国際的紛争の解決に向け在韓米軍を他の地域に投入する、あるいは紛争地域に派遣するうえでも韓国での演習は米軍にとって不可欠なものだったのです。

しかし、文在寅大統領になってからは状況が変わっています。文在寅大統領は、なし崩し的に北に接近するとともに、中国にも従属しようとしています。これは明らかに同盟国米国に対する敵対行為です。

米韓合同演習を続ければ、米軍の情報が漏洩する可能性は否定できません。トランプ政権としては、文政権は全く信用できないため、演習を続ければ金正恩に手の内を読まれてしまうことを否定しきれない現状では米韓合同演習を中止せざるを得ないのでしょう。ただし、これを公言すれば、米朝関係が弱体化したことを公言するようなものなので、費用が掛かりすぎなどとお茶を濁しているだけなのでしょう。

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2019年3月25日月曜日

安倍首相、中国の一帯一路協力に4つの条件 「全面賛成ではない」―【私の論評】日本には中国および習近平政権の今後の行方を左右するほどの潜在能力がある(゚д゚)!

安倍首相、中国の一帯一路協力に4つの条件 「全面賛成ではない」

参院予算委員会で答弁を行う安倍晋三首相。右は麻生太郎副総理兼財務相、
左奥は根本匠厚生労働相=25日午後

 安倍晋三首相は25日の参院予算委員会で、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に日本が協力するには、適正融資による対象国の財政健全性やプロジェクトの開放性、透明性、経済性の4条件を満たす必要があるとの認識を示した。「(4条件を)取り入れているのであれば、協力していこうということだ。全面的に賛成ではない」と述べた。

 一帯一路では、対象国に対する中国の過剰融資が国際的に問題視されている。首相は「(対象国に)経済力以上に貸し込むと、その国の経済の健全性が失われてしまう」と指摘。

 首相は「アジアのインフラ需要に日本と中国が協力して応えていくことは両国の経済発展にとどまらず、アジアの人々の反映に大きく貢献をしていくことになる。(4条件)をやっていくことで、お互いより良い地域を作っていこうということだ」と語った。

【私の論評】日本には中国および習近平政権の今後の行方を左右するほどの潜在能力がある(゚д゚)!

安倍総理が、条件づきで一帯一路への協力の可能性を述べたのは、何も今に始まったことではありません。以前から何度か述べています。

たとえば2017年都内で行われた国際交流会議の席上、安倍総理は中国の経済構想「一帯一路」に初めて協力の意向を表明しています。これを受け一部メディアはあたかも日本が中国に屈したかのように報じるなど、「中国の優位性」が強調され始めました。

安倍首相は同年6月5日に国際交流会議「アジアの未来」の夕食会で講演し、中国の経済圏構想「一帯一路」について、「(同構想が)国際社会の共通の考え方を十分に取り入れることで、環太平洋の自由で公正な経済圏に良質な形で融合し、地域と世界の平和と繁栄に貢献していくことを期待する。日本は、こうした観点からの協力をしたい」と述べました。

新聞各紙は、初めて安倍首相が「一帯一路」への協力を口にしたということをポイントとして強調しています。これだけ見ると、いよいよ日本も「一帯一路」に参加するかのような印象を与えました。

当時は、米国のTPP離脱で窮した安倍政権が、「一帯一路」に尻尾を振り始めたと見る向きもありました。しかし、その後日本は自らTPPの旗振り役となり、米国を除いた11カ国で昨年末に発効しています。

ただし、産経新聞は「安倍晋三首相、中国の『一帯一路』協力に透明性、公正性などが『条件』」という見出しで、中国が支援する国の返済能力を度外視して、インフラ整備のために巨費を投じることが問題化しつつあることを踏まえた発言だという内容となっています。むしろ中国を牽制する狙いがあるという論調です。私もそう思います。

本日の安倍総理による4条件①対象国の財政健全性、②プロジェクトの開放性、③透明性、④経済性も同じことであり、これは中国を牽制する狙いをより明確にしたものです。

中国が対外インフラ投資を利用して他国の土地を支配していることについては、このブログにも掲載したことがあります。


スリランカのコロンボにあるハンバントタ港は、中国からの融資でインフラ開発されましたが、6%を超える高利であるためスリランカ側の返済の目処がたたず、このハンバントタ港を中国企業に99年間貸与するという、「事実上の売却」に迫られました。

中国が主導するAIIBについては、これまでも麻生副総理をはじめとして、日本は透明性と公正性が重要だということを強調してきました。本日の安倍首相の発言も、「一帯一路」について、従来の政府の立場を踏襲したにすぎません。

よく語られるように、「一帯一路」と「AIIB」は中国が日米経済連携に対抗し、覇権を確立するための世界戦略です。しかし、中国中心の発想であり、自国のゾンビ企業の過剰生産と軍事拠点づくり、発展途上国の財政圧迫、そして資金不足で頓挫するプロジェクトが絶えないなど、さまざまな問題点が指摘されています。

最終的には日米主導の世界銀行やアジア開発銀行からの資金的協力が不可欠であり、外資頼りだった「改革開放」路線の延長としての「他力本願」であることは一目瞭然です。

同年5月14、15日に北京で開催された「一帯一路」国際会議では、米国が代表団を送り、安倍首相も二階俊博幹事長を特使として派遣して習近平主席に親書を渡しました。これに対して、人民日報は同年6月4日、「中日改善改善に日本は具体的行動を」という記事を掲載し、日中関係を改善したいなら、具体的な政策と行動を示せと、かなり上から目線で「命じて」いました。

記事では、文部科学省が「銃剣道」を中学「学習指導要領」に入れたことや、台湾と日本の交流窓口の名称を「亜東関係協会」から「台湾日本関係協会」に変更したことなどを挙げて、「日本は歴史問題で小細工を繰り返している」などと批判していました。

さらに、「日本は東中国海で緊張をつくり、南中国海問題に干渉し、朝鮮半島情勢を刺激してエスカレートさせている。こうした行動の背後には中国と主権・権益を争う私利があり、改憲・軍拡につなげる魂胆もある。中国は、地域の安全における消極的要素になってはならないと日本に警告する」とまで論じていました。東シナ海も南シナ海も、日本が緊張をもたらしているのだから、挑発をやめろと言ったわけです。

要するに、「一帯一路」に入りたいなら中国の言うことを聞け、ということをかなりあからさまに要求してきていたのです。これだけでも「一帯一路」に参加することは、日本の国益を犠牲にしなくてはならないことだということがわかりました。

ほとんど実績のない習近平

しかし、よく観察してみると、総書記になってから現在に至るまで、習近平にたいした実績はありません。経済成長率は年々減少していますし、南シナ海問題では米国に「航行の自由」作戦を行われてしまいました。ハーグの常設仲裁裁判所には中国が主張する南シナ海の領有権について「根拠なし」と言われてしまいました。

台湾では蔡英文政権が誕生してしまうし、北朝鮮も言うことを聞かないし、AIIBの起債も単独起債は未だ数件しかありません。

腐敗追及運動だけは、周永康を逮捕するなど進展がありましたが、中国官僚は誰もが腐敗していますから、逆に習近平への憎しみが増加しただけです。経済成長の衰退から人民解放軍を再編して兵力削減を目指していますが、同年2月には、退役軍人が反腐敗運動の拠点である北京の党中央規律検査委員会の前で、待遇改善を求めて大規模デモを起こしました。

しかも肝煎りの「一帯一路」にしてもインドは自国に敵対的と見ており、モディ首相は中国からの「一帯一路」国際会議への招待を拒否しました。おまけに代表団を送った北朝鮮は開幕日に弾道ミサイルを発射して、習近平の面子を潰しました。

ロシアは一帯一路で中国から欧州までを結ぶインフラ建設のルートがほとんどロシアを通っていないことに不満を高めています。

要するに、習近平の実績はゼロなのです。

当時、安倍首相から条件付きでも一帯一路についての「協力」の言葉がもらえたとなれば、習近平にとっては国内にアピールする良いチャンスだったはずです。もちろん中国は内外に向けて、「東夷が天朝の恵みを求めてきた」という尊大なポーズを取っていますが、習近平にとってはありがたかったでしょう。少なくとも北戴河、そして共産党大会までは、日本と対立して余計な波風を立たずにすみました。

しかも、習近平は次の2018年の共産党大会で、中国憲法を変更したうえで、終身主席となったのです。

もちろん、中国の権力闘争は複雑怪奇ですから、日本の反発心を高めて習近平の実績をゼロにしようと動く勢力もいます。最初からゼロならば問題にならないことでも、いちどプラスに持ち上げておいて、そこからゼロに転じれば、それは汚点となります。

そういう意味で、習近平は安倍首相の対中発言や動向に神経を尖らせているはずです。日中関係は、これまでも胡耀邦総書記が失脚する原因の一つとなったり、あるいは天安門事件に対する国際的制裁解除のキーポイントとなってきました。

日本人が考える以上に、中国にとって日本の存在は大きく、他国との関係以上の特別なものがあります。

最近は中国政府の規制で全く行われなくなった反日デモ

中国人はよく「小日本」などといって、ことさら日本の存在の小ささをアピールしますが、そのわりには無視するのではなく、わざわざ「5・4運動記念日」「7・7抗日戦争記念日」「抗日戦勝記念日」「柳条湖事件記念日」「南京大虐殺追悼日」など、かつての日本と関連する記念日を数多く作っています。

26ある記念日の約5分の1が日本関連であり、「マルクス」「レーニン」に関する記念日より多く、中国が意識する外国としては、他の追随を許しません。それほど日本を意識しているということなのです。

つまり、中国および習近平政権の今後の行方を左右するほどのポテンシャルが日本にあるわけです。安倍総理が「一帯一路に協力する気は全くない」と表明すれば、習近平は窮地に追い込まれるでしょう。一方、安倍総理が「一帯一路に積極的に関与していく」と表明し、本当に実行すれば、これは習近平大きな実績となり、習近平の立場は盤石となります。

ただし、習近平が失脚したとしても、現状の中国は何も変わらず、日本にとって良いこともないでしょう。だから、安倍総理は様子見で、従来の主張を繰り返してみせただけなのです。しかし、これは無論、ここぞというときに外交カードとして使えます。

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2019年3月24日日曜日

ロシア疑惑捜査、“灰色”決着か、モラー報告書、新たな訴追なし―【私の論評】実体なき疑惑という点でよく似た米国の「ロシア疑惑」と日本の「もりかけ問題」(゚д゚)!

ロシア疑惑捜査、“灰色”決着か、モラー報告書、新たな訴追なし

佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

2年近くに及んだモラー特別検察官のロシアゲート捜査が22日終了、報告書が司法省に提出された。内容はまだ不明だが、新たな訴追の勧告はないとされており、「大統領選挙でロシアと共謀した」という疑惑は“灰色”のまま終わりそう。ただ、事件のもみ消しを図ったという司法妨害については「大統領の犯罪」に言及している可能性もあり、報告書の公表に全米の関心が集まっている。

モラー特別検察官

容疑に蓋し逃げ切りか

 モラー特別検察官の捜査は主に、大統領選挙でロシアとトランプ陣営との共謀があったのか、捜査をやめさせようという司法妨害があったのか、の2点が中心。報告書が提出された段階で判明しているのは「新たな訴追の勧告は盛り込まれていなかった」(司法省当局者)ということと、「ロシア共謀疑惑」で起訴された者は誰もいなかったということだ。

 捜査では起訴された者が34人。うち6人はトランプ陣営の幹部らだった。ポール・マナフォート元選対本部長、リック・ゲーツ元選対副本部長、マイケル・フリン大統領補佐官、マイケル・コーエン元個人弁護士、大統領の友人のロジャー・ストーン氏、ジョージ・パパドポロス元外交顧問だ。

 しかし、6人はロシアとの共謀という本筋を問われたのではなく、議会や捜査当局への虚偽証言や脱税、資金洗浄などのいわば別件容疑だ。マナフォート氏は詐欺罪などの容疑で7年半の禁錮刑を受け、コーエン氏も3年の刑で5月から収監される予定だ。6人以外の残りはロシアの情報関係者や軍人らである。

 問題はトランプ大統領の疑惑だ。選挙期間中、トランプ氏がロシア側と直接的に秘密接触していた可能性は薄いと見られており、大統領が長男のジュニア氏も含め、部下に接触を指示していたことが報告書に記されているかが1つの焦点だ。明記されていれば、罪には問われなくても、大統領の道義的、政治的な責任があらためて追及されることになるだろう。

 より可能性があるのは「司法妨害疑惑」だ。大統領は17年2月、コミー連邦捜査局(FBI)長官に対し、フリン大統領補佐官への捜査をやめるよう求めた疑いがかかっており、事実であれば、司法妨害に相当する。報告書がこの点についてどのように判断しているのかが最大の注目点だ。

 だが、報告書に限って言えば、大統領が逃げ切った可能性もある。第一に司法省の指針によると、現職の大統領は訴追されないことになっている。またモラー特別検察官が捜査で大きく依存した大陪審の規則は、実際に当事者が起訴されない限り、大陪審を通して入手した情報の公表を禁じており、大統領が起訴されないのであれば、大統領に関する情報の公開は蓋をされる恐れがある。

ボールはバー司法長官に

 捜査報告書は今後、バー司法長官からその要約が議会へ送られ、事実上公表されることになる。同長官は22日、議会指導者への書簡で、数日内に報告書の要約を送るとし「できる限り透明性を確保する」と述べた。議会下院は先に、報告書の全文を公表するよう求める決議を満場一致で可決している。

 しかし、特別検察官規則によると、報告書の内容をどの程度、要約に盛り込むかは司法長官の裁量に委ねられており、捜査の情報源や方法などの極秘情報が漏洩しないよう、また大陪審での証言が漏れないように配慮することになっている。

 民主党はかつて、長官がトランプ大統領の主張に沿うようなメモを書いていたことなどを念頭に、要約にホワイトハウスの意向が反映されるのではないかと懸念している。民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務は共同声明を発表、「公表前に報告書をホワイトハウスに密かに見せないよう」司法長官に警告した。米紙によると、ホワイトハウスは報告書の不都合な部分については、大統領特権を行使して、公表させないことも検討しているようだ。

 大統領弾劾の手続き上の出発点になる下院司法委員会のナドラー委員長(民主党)は、現職の大統領が訴追されないという指針を犯罪のもみ消しに使われかねないと指摘、司法長官とホワイトハウスをけん制した。しかし、ペロシ下院議長は勢いづく大統領弾劾論に距離を置き、「トランプ氏は弾劾に値しない」と慎重姿勢を示しており、弾劾をめぐる動きは流動的といえるだろう。

際立つ強気

 週末をフロリダの別荘で過ごしているトランプ大統領は、ロシア疑惑で起訴される者が誰もいないことを予想していたのか、強気ぶりを際立たせている。報告書が提出される前、モラー氏の捜査を「魔女狩り」「政治的なでっち上げ」と非難する一方で、「国民は報告書の内容を知りたがっている。公表されるべきだ。共謀など何もなかったことが分かる」と胸を張った。

 報告書がロシア疑惑で明確な犯罪性を指摘できなければ、トランプ大統領は自らの無実を正当化する動きに拍車を掛けるだろう。しかし、一連の捜査でトランプ氏や側近らのロシアとのうさんくさい関係が浮き彫りになったのは紛れもない事実。その目的は大統領選挙で勝利するため、対立候補のクリントン氏に不利な情報を入手しようとしたことだった。ロシアと接触した側近らは18人、頻度は100回以上に及んだことは決して見過ごされないだろう。

 モラー氏の捜査がロシアゲートを立件はできないにせよ、大統領の不倫口止め料支払いなど、捜査の過程で浮かび上がったさまざまな疑惑は今後、議会や州の司法当局の調査でさらに追及されることとなる。「捜査の終わりではなく、始まりだ」(アナリスト)という声が強まる中、報告書の公表が待たれる。

【私の論評】実体なき疑惑という点でよく似た米国の「ロシア疑惑」と日本の「もりかけ問題」(゚д゚)!

日本のモリカケ問題と米国のロシアゲートは「争点隠し」という点でよく似ています。加計学園による獣医学部新設は岩盤規制の打破が真の争点ですが、安倍晋三首相の「えこひいき疑惑」に話がそらされ倒閣運動に利用されました。

冒頭の記事を書かれた方は、あくまでリベラル派の視点から書かれたようであり、「容疑に蓋し逃げ切りか」とか「際立つ強気」などという言葉づかいからもそれがうかがえます。

はっきりいえば、米国のリベラル派のメディアの垂れ流す報道を鵜呑みした上で、トランプ大統領を評価しているという、日本のメディアと同次元のものであり、とても現実を見据えたものとはいえないと思います。

では、ロシアゲートはどうかといえば、米国内でほぼ事実と認定されているのは次の2点でした。
(1)2016年米大統領選に際し、ロシア情報機関によって民主党陣営のメールがハッキングされ、ネット上で公開された 
(2)投票機器の操作などはなかった-。
(1)にトランプ陣営が関与したのでは、というのが反政権側の追及する「疑惑」ですが、今に至っても確たる証拠は出ていません。

ところで、なぜメールの流出がヒラリー陣営に打撃となったのでしょうか。ここにリベラル派が目を背ける「不都合な真実」があり、真の争点があります。最も問題となった2つのメールを見てみましょう。

ボデスタ氏

1つは、民主党エリートを代表するポデスタ選対本部長(クリントン政権で大統領首席補佐官)がヒラリー氏に宛てた、副大統領候補選定に関するメールです。

ポデスタ氏はまず、候補者を「食品群」(food groups)に分けたと軽口を叩(たた)き、女性、黒人、白人、ヒスパニック、巨額献金者などに分類、最後に「特殊食品」として予備選のライバルだったサンダース議員を挙げました。

ここに見られるのは、アイデンティティー・ポリティクス(差別強調政治。警察対黒人、富裕層対貧困層、男対女、保守派対LGBT=性的少数者=などの対立図式を強調し、被差別弱者の側に立つと主張する政治)を推進してきた中心人物における、冷笑的で功利主義的な態度です。素朴な有権者の間に嫌悪感が広まったのも無理はないです。

もう1つは、民主党全国委員会(予備選の公正な実施が職務)の幹部間で交わされた「サンダース(ユダヤ教徒)は無神論者」との噂を広めて、宗教色の強い南部での支持率を落とすべきだ、などとした謀議メールです。

政治と宗教の峻別(しゅんべつ)、無神論者への配慮(公立学校で「神」に言及しないなど)を高らかに掲げてきた民主党エリートにおける、これまた冷笑的かつ露骨な背信行為でした。サンダース氏支持者は当然激怒し、ヒラリー氏に近い全国委員長は辞任に追い込まれました。

サンダース氏

要するに、ロシアの干渉と言っても、買収工作や怪文書拡散があったわけではなく、民主党幹部の“素の姿”を明らかにしたにすぎないのです。

メールが流出しても中身が卑猥(ひわい)な冗談程度なら一時のゴシップで終わります。ヒラリー陣営の真の敗因は、差別強調政治の裏にある偽善性と陰謀体質が白日の下に晒されたことにありました。そして、そこを誰よりも峻烈に突いたのがトランプ氏でした。

新聞は全部、テレビはFOXTVを除いて全部が、リベラル派で湿られている米主流メディアのロシアゲート報道は、この民主党エリートにとっての不都合な真実から目をそらし、トランプ陣営関係者の脱税や性的スキャンダル、失言のみを追う形で進められていました。本質的に党派的かつフェイクといわれても仕方ないでしょう。

では実体なき「疑惑」の追及がなぜ終息しなかったのでしょうか。ここでもモリカケに似た構造があります。国会における野党の追及が誤答弁や官僚の資料操作につながり「疑惑をさらに深めた」のと同様、アメリカでは特別検察官がしばしば無から有を作り出す働きをしました。

犯罪事実がなくとも事情聴取に不正確に答えれば偽証、提出を求められたメールを一部でも削除すれば捜査妨害でいずれも訴追対象となりました。メディアは「疑惑が深まった」と報道しました。終わりの見えない特別検察官の動きに、トランプ大統領のみならず政権支持派が怒りを募らせるのも無理はありませんでした。



ニューヨーク・タイムズやCNNを見てトランプ氏の弾劾は近いと考えるのは、朝日新聞を見て安倍政権が倒れるのは近いと考えるのと同じだったのです。

草の根保守に強い影響力を持つトークラジオの3大人気ホスト、リンボー氏、ハニティ氏、レビン氏はいずれも、トランプ氏は左派の捏造(ねつぞう)攻撃に堂々と反撃し、規制緩和、保守的判事指名、「中共」(ChiComs)圧迫など公約を次々に実行していると、支持の姿勢を強めています。

大統領弾劾は、検察役の下院が過半数で訴追し、陪審役の上院が3分の2以上で可決して成立します。ハードルは非常に高いです。過去に唯一弾劾が見えたニクソン大統領(実際は手続き途中で辞任)の場合、支持基盤である保守層が、価格統制、デタントなど内外政策でのニクソンの「裏切り」に不満を募らせていたことが大きかったです。今はそうした状況にありません。

「ヒラリーには大統領に必要な巨大なスタミナはない」。3年前の大統領候補討論会でトランプ氏が発した言葉です。特に中国との長期にわたる戦略的攻防を考えれば、政治家の評価でますます重要になるポイントでしょう。

いずにせよ、「もりかけ問題」も「ロシア疑惑」ももし実体のある疑惑であれば、もうすでに何らかの物的証拠が明るみにでいてるべきです。物証がないものに対して、ああだこうだと言っても徒労に終わるだけです。

私自身は、これに近いようなことは以前もこのブログに掲載しました。この事実を知っていれば、もう「ロシア疑惑」などというフェイク情報に踊らされ、テレビをみたり、記事を読んだりして時間を無駄にするということはないでしょう。

すでに奪われた時間については、もう取替しようがないですが、テレビや新聞などに不満をぶつけるということも考えられるかもしれません。ただし、そんなことをしても、彼らは一切とりあないでしょうが・・・・・・

それにしても、モリカケで時間と精力を無駄にした日本の野党は、政策論争はおろか、政局でも与党に負けています。次の選挙でも、従来と同じような結果となるだけでしょう。何かあったにしても若干議席数を増やすことができるだけでしょう。

それに比較して、米国の民主党は「ロシア疑惑」によって最初に被った悪いイメージは一連のイメージコントロール払拭できたのでしょうか。それは次の大統領選挙でまたわかることでしょう。

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