2021年11月8日月曜日

AUKUSを読む上で重要な地政学的視点―【私の論評】同盟は異なった思惑の集合体であり必ず離合集散する。AUKUS、QUAD、CPTPPも例外ではない!我々は序章を見ているに過ぎない(゚д゚)!

AUKUSを読む上で重要な地政学的視点

岡崎研究所

 10月16日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙コラムニストのジャナン・ガネッシュが、9 月の米英豪の原子力潜水艦などの安全保障に関する協力合意(AUKUS)がなされた後「英語圏」とは何なのかということが問われているが、「ファイブ・アイズ」の英語圏(英米加豪NZ)を結びつけるものは、文化というよりも地理的幸運であるなどと述べている。


 ガネッシュの主張は、①9月のAUKUS原潜合意の後「英語圏」の国々を結びつけるものは何かと考えてきたが、それは言語ではなく、海洋に囲まれ、隣に大国がいないという地理的幸運だと感じるようになった、②英語圏の国々が他の世界と相違するのは、偶然の地理的独立(地理的に離れていること)であるが、それが他国に対してこれらの国を無理解にしているということであろう。英語圏の国々は、欧州大陸の国々や恐らく中国、ロシア、アジアの地理的幸運に恵まれない国の状況を理解する必要があると言う。

 ガネッシュが9月のAUKUS結成を英語圏同盟(アングロサクソン同盟と言っても良いだろう)と見て、それを結びつけるのは言語ではなく、地理的幸運だとするのは興味深い。しかし、それは意図したというよりも結果論であろう。偶々関係三国の利害が一致したと理解すべきであろう。

 英国はグローバル・ブリテンを早く具現したい、今後ますますコストのかかる原潜維持負担をできれば英豪合体化で合理化したい、豪州はフランスによる通常推進潜水艦の建造がうまく進まない問題を早急に解決したい、米国は対中戦略上、米英豪の原潜能力を強化したい、経済上のメリットもありうるなどの動機を持っていたと考えられる。

 だからと言って、AUKUS結成に地政学が全く無関係だったとは言えない。広い意味で中国に対する地政学上の配慮は強くあったし、民主的国際秩序の保護という利益の配慮も強くあった。ガネッシュの考えは面白いが、狭くなった今日の世界では「地理的幸運」に安閑としているわけにはいかず、国際政治は依然として「地理」と「利益」で動くということではないだろうか。

AUKUS運用への数々の課題

 AUKUS合意を受けて、関係三国は事務レベルでプロジェクトの詳細の検討に入っているものと思われる。今後莫大な難しい問題を解決していく必要がある。これから種々紆余曲折があるように思える。問題を幾つか挙げれば次の通りである。

(1)如何なる原潜を誰が建造するのか。母港整備を含むインフラをどこに建設し、保守など高度な原子力人材を如何に確保し、維持するのか。

(2)コストの配分はどうするか。豪州にとっては通常潜水艦より高額の資金が必要になるだろう。リース方式を検討するのか。

(3)豪州の現有コリンズ型潜水艦の退役(退役は2026年頃からと言われていた)と新艦就航(2030年代後半以降予定)の時間的ギャップをどうするか。コリンズ型の延命措置も検討されているようで、その場合は遅いもので2050年代まで就役することになるという。

(4)NPTとの関係、IAEAとの関係も問題となる。非核保有国による原潜保有の初めての事例になる。IAEAは既に実体的、法的検討を開始している。原潜建造に関心を持つイランなどが注目しているようだ。イランの他、カナダ、韓国(先年韓国は米国に協力を求めたが米国は拒否したと言われる)、ブラジルが原潜建造に関心を持っている。IAEAのグロシ事務局長によると、セーフガード措置から外した核燃料の核兵器転用阻止を如何に確保するかが最大の問題になる。

(5)米国内の反対論を抑えられるか。米海軍は技術移転に当初慎重だったという。既に専門家などがバイデンに反対の書簡を送付した。

 日本は、豪州の潜水艦受注に関して、かつてフランスやドイツと争い、結局受注がフランスに決まったという経緯がある。今回、AUKUSには入っていないが、自由で開かれたインド太平洋戦略の中で、何らかの形で連携ができたら良いだろう。

【私の論評】同盟は異なった思惑の集合体であり必ず離合集散する。AUKUS、QUAD、CPTPPも例外ではない!我々は序章を見ているに過ぎない(゚д゚)!

AUKUSが結成された背景には何があったのでしょうか。米誌FORBES(2021/9/19)は「フランス製の最新式の原子力潜水艦を通常動力に変更して12隻建造するという豪州との取り決めは、中国が小規模だった原子力潜水艦艦隊を急拡大する兆しを見せたため、貧弱に見え始めた」と分析しています。

中国は現在、米国、ロシアに次ぐ、約60隻の潜水艦保有国で、攻撃型原子力潜水艦は少なくとも6隻は保有しているとみられます。中国は軍事拠点化を進める南シナ海に戦略ミサイル原潜を遊弋(ゆうよく)させています。

中国海軍が21年現在、6隻保有する094型晋級戦略ミサイル原潜には、最大射程7400キロ以上、核弾頭を最大4個装備可能なJL-2核弾頭ミサイルが搭載され、海中から発射できる態勢が整っています。

弾道ミサイル搭載型潜水艦094型(晋級)

ちなみに、物理的には南シナ海中央から約7400キロ圏内に豪州と日本の全域が入ります。そして中国が2020年代中の就役を目指して開発中の096型戦略ミサイル原潜が将来は、射程1万2000~1万5000キロのJL-3ミサイルを搭載して南シナ海に潜む可能性もあります。これだけの射程になれば、南シナ海の海中から米本土だけでなく、英仏も物理的には射程内に収まるようになります。

AUKUS署名後、モリソン豪首相は記者会見で同国海軍のホバート級イージス駆逐艦にトマホーク巡航ミサイル(射程1600キロ以上)を装備することを言明。さらに今後、延命工事が行われるコリンズ級潜水艦にも、トマホーク巡航ミサイルを装備する可能性を示唆した。

AUKUS署名で仏企業は、650億ドル規模のビジネスをキャンセルされ、仏政府は駐米、駐豪仏大使を一時帰国させましたが、9月22日にマクロン仏大統領とバイデン米大統領の電話会談の後、駐米、駐豪の仏大使は任地に帰還しまし。

10月29日、米大統領はローマで開かれる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を前に、マクロン仏大統領と会談。米側の不手際を認め、「米国はインド太平洋地域のフランスの役割を歓迎する。フランスは地域全体に拠点を置く軍事力により、自由で開かれたインド太平洋への安全保障への貢献、提供者となっている」などを内容とする米仏首脳共同声明を発出しました。

この中では、AUKUSについては一言もなかったのですが、「米仏防衛貿易戦略対話を開始する」との文言がありました。その同じ日、在豪英国大使館は豪西部のパースに入港した英国海軍のアスチュート級攻撃型原潜の画像をツイートしました。

これは対中国という観点からか、「AUKUSを補強する」ため、というのです。

中国の094型、そして、近い将来の096型弾道ミサイル原潜をけん制するために、豪海軍の水上艦(ホバート級駆逐艦)と攻撃型潜水艦にトマホーク巡航ミサイルを装備することがAUKUSの目標と思われます。

前述のFORBES誌(2021/9/20)は「米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦28隻のほとんどは退役する予定だが、同級原潜を豪州に貸与すれば、豪州は“米国外”でありながら、この地域のさまざまな米国の需要を支援するために利用可能」になるといいます。

米海軍で最も製造隻数の多いロサンゼルス級原潜 クリックすると拡大します

具体的には「米英は原潜用の埠頭(ふとう)、ドライドック(船体の検査や修理などのために水を抜くことができるドック)、その他の特殊施設の設計要件を豪州に伝え、豪州は米英の攻撃型潜水艦を支援するのに必要なインフラの構築を開始できる」としています。

「その他の特殊施設」については、具体的な指摘はないですが、例えば将来、豪州の軍艦や潜水艦に搭載されるトマホーク巡航ミサイルの貯蔵施設が豪国内に建設されれば、米英も利用でき、その戦略的意味は大きくなります。

豪州の将来の原潜が米国のバージニア級や英国のアスチュート級原潜とどのような関係になるかは不明ですが、どちらも、トマホーク巡航ミサイル搭載艦という共通点があります。かくして「豪州の潜水艦契約破棄事件」は、AUKUS結成に伴い豪州の潜水艦建造にまで本格介入する米英、ことにバイデン政権の「中国包囲網」構築の本気度を示しているのかもしれないです。

潜水艦から発射されたトマホーク

AUKUSの創設の背景に米国の潜水艦戦略があることを見落としてはならないです。

中国の海洋進出に対する米国の抑止力の中心は潜水艦です。特に原潜は長距離を速い速度で移動することができ、長期間潜航したまま隠密活動ができます。

そのため、米国は現在保有している51隻の攻撃型原潜のうち、60パーセントを太平洋に配備しています。また、日本の海上自衛隊の潜水艦部隊とも連携することによって、潜水艦戦力では中国を圧倒的に凌駕しています。

しかし、その米国の潜水艦戦力も旧型原潜の退役が近い上に、新造艦の建造スペースが遅いこともあって、2020年代の後半から10年程度は、米国の攻撃型原潜の数は42隻にまで落ち込むことが試算されています。実は、米国はその穴埋めとしてオーストラリアの原潜に期待を寄せているのです。

英国政府筋によれば、オーストラリアが現在の通常型潜水艦を南シナ海へ派遣した場合、現地に留まることができる期間はわずか10日間程度であるのに対して、原潜ならほぼ無期限で活動できます。また、日本の沖縄周辺からインド洋までの全域で中国海軍の活動を監視することが可能になります。

インド太平洋には、もう一つ、QUAD(クアッド)という対話の枠組みがあります。日本が主導して始めたもので、米国、オーストラリア、インドが加盟しており、9月には初めての対面形式の首脳会議がホワイトハウスで開催されました。首脳会議は今後、毎年開催される予定です。

AUKUSが今後、発展していくにつれて、QUADとどのように連携していくのかが、大きなテーマになるでしょう。

英国はCPTPPへの加盟を検討していますし、日本も将来、AUKUSへの加盟を検討しなくてはならない時期が来るでしょう。やがて、インド太平洋では、政治はQUAD、安全保障はAUKUS、経済はCPTPPという役割分担が成立するかもしれないです。

歴史を見ればわかるように、同盟は異なった思惑の集合体ですから、必ず離合集散します。これらの枠組みもいつかは統合し、分裂し、さらにNATOや日米同盟もこれらに吸収されることになるかもしれないです。

AUKUS、QUAD、CPTPP、それらはやがて一つにまとまり、作り替えられて、将来、インド太平洋同盟として花開く可能性を秘めています。

今、われわれが目にしているのはその始まりにすぎないのです。

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2021年11月7日日曜日

遠山元財務副大臣を任意聴取 東京地検―【私の論評】特捜部の捜査の進展次第では、今後、政界にも波及する見通しが強まった(゚д゚)!

遠山元財務副大臣を任意聴取 東京地検

遠山清彦氏

日本政策金融公庫の融資を違法に仲介した貸金業法違反容疑の関係先として公明党衆院議員事務所が家宅捜索を受けた事件で、東京地検特捜部が、元財務副大臣で同党の遠山清彦元衆院議員(52)から任意で事情聴取していたことが7日、関係者への取材で分かった。遠山氏は、融資の違法な仲介などへの関与を否定したという。

事件をめぐっては、東京都内で環境関連会社を経営する男性会社役員(74)ら2人が貸金業の登録がないまま、新型コロナウイルス禍で融資を求める複数の業者に対し、公庫の担当者を紹介するなど契約を仲介していたとされる。貸金業法は無登録で融資仲介を行うことを禁じている。

特捜部は8月、遠山氏の元秘書2人と太田昌孝前衆院議員(60)の元秘書1人が、会社役員らから依頼され仲介に関与した疑いがあるとみて、太田氏の事務所と、遠山氏の元秘書2人が秘書を務めていた吉田宣弘衆院議員(53)の事務所を家宅捜索していた。

関係者によると、男性役員はこれまでの特捜部の聴取に、複数の業者から融資成立の謝礼を受け取っていたと説明。「遠山氏側には年間現金数百万円を渡した」と供述する一方、「現金は融資とは無関係だ」と主張しているという。

特捜部は6日に遠山氏を参考人として聴取。関係者によると、遠山氏は、元秘書2人が公庫の融資の担当者名を伝えるなど男性役員に協力していたことは認めた上で、「融資に関して現金は受け取っておらず、無登録の貸金業などには関与していない」などと説明したという。

【私の論評】特捜部の捜査の進展次第では、今後、政界にも波及する見通しが強まった(゚д゚)!

遠山清彦氏といえば、緊急事態宣言下の深夜に東京・銀座のクラブを訪れたことが批判を浴びていたことが記憶に新しいです。遠山氏は、1月29日に党幹事長代理を辞任していました。

遠山氏は10月1日、国会内で記者団に「政治への信頼を深く傷つけてしまったことに対して心からおわびしたい。次の選挙で立候補する意思は持っていない」と述べました。

遠山氏は、自らが代表を務める資金管理団体からキャバクラやスナック4軒での飲食代計約11万円を支出していたことも判明。総務省に政治資金収支報告書の修正を届け出ていました。

遠山氏は2001年に参院議員に初当選。2期務めた後に、衆院にくら替えし、4期目でした(比例九州ブロック)財務副大臣を務めました。2月1日、議員辞職願を大島理森衆院議長あてに秘書を通じて提出し辞職していました。

融資の仲介を主導したとされる男性会社役員(74)が東京地検特捜部の任意の事情聴取に、同党の遠山清彦元衆院議員(52)に「現金計約1000万円を手渡した」と供述していることが、毎日新聞社の関係者への取材で判明していました(11月5日)。遠山元議員が副財務相に就任していた2019年9月から約1年間、複数回にわたり提供したといいますう。特捜部は現金の趣旨を慎重に調べている模様です。

この男性(74)は、詐欺罪などで社長らが特捜部に逮捕・起訴された横浜市の太陽光発電関連会社「テクノシステム」の元顧問です。

特捜部は8月、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス特別融資を巡り、遠山元議員の元秘書らが無登録での融資仲介に関与したなどとして、貸金業法違反容疑の関係先として遠山元議員の自宅などを家宅捜索。捜索令状の容疑者はこの男性でした。 

関係者によると、この男性(74)側は20年4月以降、資金繰りの苦しい複数の会社から「融資を早く受けたい」との依頼を受け、親交のあった遠山元議員の元秘書に公庫の担当者を紹介するよう仲介。

この男性(74)はテクノシステムなどから現金を預かり、遠山元議員に渡した疑いがあります。公庫は財務省が所管しています。 


この男性(74)が融資を仲介したのは延べ100件程度とみられ、中には融資が早期に実現した例もあったといいます。現金は仲介への謝礼の可能性がある一方、特別融資制度の創設前に提供されたものもあるといい、特捜部が趣旨を慎重に調べています。 

男性は毎日新聞の取材に「詳しいことは話せない」と答えた。遠山元議員は家宅捜索を受けた8月、「男性から現金を受け取ったことはない」と説明していました。

この男性(74)は、上でも述べたように、詐欺罪などで社長らが特捜部に逮捕・起訴された横浜市の太陽光発電関連会社「テクノシステム」の元顧問です。

金融機関に嘘の書類を提出して融資金約11億円を騙し取ったとして、東京地検特捜部は5月27日、太陽光発電関連会社『テクノシステム』社長の生田尚之容疑者(47)ら3人を詐欺容疑で逮捕しました。

生田容疑者らの逮捕容疑は昨年3月~7月ごろ、太陽光発電やバイオマス発電事業への融資をめぐり、虚偽の名目で融資申込書などを提出、阿波銀行(徳島県)と富士宮信用金庫(静岡県)から計約11億6500万円を騙し取ったというものです。

他にもテクノ社は同じ手口で、金融持ち株会社『SBIホールディングス』傘下の金融ネット仲介会社『SBIソーシャルレンディング』から約400億円の融資を受けていました。


SBIグループや信用金庫がなぜ、こんなに簡単に騙されるのでしょうか。その理由の1つはテクノ社の広告塔として小泉純一郎元首相が協力していたからでしょう。また、テクノシステムの影の実力者といわれているのが、世界最大級の洋上風力発電を計画する企業のH代表です。

H氏は小泉元首相が常連の赤坂の小料理屋『津やま』の女将を生田社長に紹介したことから、小泉元首相とパイプができたとされています。テクノシステムに対しては、融資先の金融機関に〝小泉元首相の写真を見せて信用させろ〟と資金調達の指南役を務めていたようです。

生田社長は小泉元首相を広告塔として利用する傍ら、長男で俳優の小泉孝太郎は、テクノシステムのホームページやパンフレット、CMに登場させています。

テクノ・システムのCMに登場した小泉孝太郎氏 クリックすると拡大します

生田容疑者が近づいた政治家は、小泉元首相だけではありません。小池百合子東京都知事や、今年1月の緊急事態宣言下、銀座高級クラブでの深夜豪遊が発覚して議員辞職に追い込まれた元公明党幹事長代理の遠山清彦氏らとも、親しさを吹聴していたといいます。

生田社長らは小池都知事側に計200万円、遠山氏が務めていた公明党衆議院比例区九州第2総支部に100万円の政治献金をしていました。特に〝小池都知事の金庫番〟と呼ばれているM氏と生田社長は昵懇の仲。テクノ社が買収した銀座の老舗フランス料理店『ドン・ピエール』(事件化した後に売却)で、小池都知事を接待していたされています。

その他にも、生田容疑者と親しい政治家の名前が数人挙がっています。小泉進次郎氏(環境大臣当時)はある日突然、ここは良い風が吹いているから再生エネルギー特区としてスーパーシティを作り、日本のエネルギー政策を転換するんだよと言い出し、レジ袋を有料化しながら「このエネルギー基本計画案では、2030年度の再生可能エネルギーの導入目標を『36~38%』とする」と力強く語りました。


再生エネルギーの割合を増やし、温暖化ガスを削減して、世界的な気候変動がより破壊的なことにならないようにする、という方向性には誰も反対しないかもしれません。ただし、それがどういう手順で、いかなる実現可能な目標設定であるべきかについては、本当はきちんと科学的根拠やプロジェクト上の達成スケジュールを組み合わせて考えていかなければなりません。

永田町筋では、特捜部の捜査は「小泉元首相の反原発運動潰しから始まった」という見方もされています。それだけに政界ルートは徹底的に洗い出されることになる可能性もあります。

特捜部の捜査の進展次第では、今後、政界にも波及する見通しが強まっている。頂上作戦が始まったようです。

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2021年11月6日土曜日

ロシア極東戦力の一端明らかに 軍事演習、異例の公開 潜水艦基地や最新鋭艦も披露〔深層探訪〕―【私の論評】東西冷戦の戦勝国でもある日本は、「インド太平洋憲章」を提唱し新たな世界秩序の樹立に貢献すべき(゚д゚)!

ロシア極東戦力の一端明らかに 軍事演習、異例の公開 潜水艦基地や最新鋭艦も披露〔深層探訪〕

 ロシア国防省は10月下旬、時事通信など内外メディアに極東のカムチャツカやサハリン、ウラジオストク沖で行われた軍事演習の様子を公開した。海軍太平洋艦隊の潜水艦基地区域の立ち入りや最新鋭コルベット艦の乗船も許可するなど異例の公開ぶりで、アジア太平洋をにらむ極東のロシア軍の戦力の一端が明かされた。

  ◇潜水艦4隻を近く配備 

 「近く新たに潜水艦4隻が配備される」。太平洋艦隊潜水艦部隊のアルカジー・ナワルスキー海軍少将は10月27日、カムチャツカ半島ビリュチンスクの基地に停泊したボレイ型原子力潜水艦「ウラジーミル・モノマフ」の艦上でこう語り、戦力拡充ぶりをアピールした。少将は「潜水艦部隊の活動目的は、アジア太平洋地域でのロシアの軍事的安全の確保だ」と強調。軍事インフラも絶え間なく改善されていると自信たっぷりに述べた。

ボレイ型原子力潜水艦「ウラジーミル・モノマフ

  半島南部の太平洋側に位置する基地には複数の潜水艦が停泊しており、この日は基地水域に侵入した敵艦艇の撃退を想定した訓練が行われた。入出域が管理されている基地区域には軍人やその家族向けにプールなどを備えた娯楽施設もあり、少将は「インフラ拡充や部隊の戦闘能力向上のほかに、国家指導部や国防省は軍人の生活の質向上に大きな関心を払っている」と説明した。 

 カムチャツカでは、ロシアが介入したシリア内戦にも投入された地対空ミサイルシステム「S400」による対空防御訓練も実施。実際に発射はしなかったが、発射台を動かしたり、訓練場所に煙幕を張ったりした。翌28日には北海道北方に位置するサハリン島での訓練を公開。島南部のアニワ湾沿岸で、無人機「エレロン3」やT80戦車などを投入して敵の上陸阻止訓練が行われた。 

 ◇中国と軍事協力強化 

 欧米と対立を続けるロシアは、対米で結束する中国との軍事協力を深めており、アジア太平洋地域での軍事演習を活発化させている。中ロは10月14日からウラジオストク沖の日本海で海上合同軍事演習を実施。そのまま中ロ軍艦10隻は津軽、大隅両海峡を通過し、23日まで日本周辺で「海上合同パトロール」を行った。航行は中ロの連携を示し、日米をけん制する狙いがあったとみられている。 

 演習公開3日目の10月29日には津軽、大隅両海峡を通過した中ロ軍艦10隻のうちの1隻である太平洋艦隊のコルベット艦「アルダル・ツィデンジャポフ」に報道陣を乗せ、ウラジオストク沖の日本海で砲撃訓練などが行われた。同艦は昨年12月に配備された最新鋭艦で100ミリ砲や機関砲を備え、対潜哨戒ヘリコプターの発着艦が可能だ。

  ロシアは毎年9月ごろに国内の軍管区の一つで大規模軍事演習を実施。来年は極東を管轄する東部軍管区で「ボストーク(東方)2022」が予定されており、国防省によれば、今回公開された訓練の一部は来年の大規模演習に向けた準備の一環でもあった。 

 18年に行われた前回のボストークには中国軍が参加した。30万人が動員され「冷戦後最大規模」とも言われた。来年のボストークも中ロが軍事的結束を誇示する場となりそうだ。

【私の論評】東西冷戦の戦勝国でもある日本は、「インド太平洋憲章」を提唱し新たな世界秩序の樹立に貢献すべき(゚д゚)!

連携を深めつつある中露海軍ですが、これに日本はどう対処すべきかについては以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中露の航行許す津軽の「特定海峡」指定 「領海」にしないと国益を損ねる 「非核三原則」も早急に見直しを ―【私の論評】中露などの軍艦艇、潜水艦や核兵器積載艦艇の海峡通過は有害通行とみなすべき(゚д゚)!
津軽海峡を通過する中露艦隊

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に結論部分のみ引用します。
日本は、1968年の国会において、核兵器積載艦船の領海通航は無害とはみなさないという立場を表明し、この立場に変更がないことは、96年の国連海洋法条約を批准する際の国会審議においても確認されています。

日本としては、「核三原則」は捨てても、この立場は堅持すべきです。ただし、米国など同盟国の艦艇や潜水艦、核兵器積載艦艇の通過は無害とみなし、中露などの艦艇や潜水艦や核兵器積載艦艇に関しては、有害とみなすようにすべきです。

これにより、今回の中露の軍事演習のような行為は国際的にも認められなくなります。
ただ、これは日本が単独で、中露に対して牽制をするということであり、日本としてはそれだてげはなく、同盟国等他の国々にも働きかけていくべきでしょう。何よりも日本が世界に向かって新たな世界の秩序をつくりあげるための提言をしていくべきです。
 
現在の世界は、第二次世界大戦やその後の世界とは異なり、「自由民主主義国家 vs.中露などの全体主義的強権国家」の対立であり、新冷戦とも言える状況にあります。

過去に似たような状況があったとしたら、それは、1989年に終了した東西冷戦です。米国を中心とする西側陣営は、この東西冷戦に明確な勝利を得ました。


米国は、第2次世界大戦終了後、数々の戦争に関与してきました。しかしながら、世界最強の軍事力を持ちながら、主要な戦争に敗北し続けてきました。

米国の著名な戦略家のエドワード・ルトワックが著書『ルトワックの日本改造論』(飛鳥新社、2019年12月)第3章の中の一節「1945年以降、アメリカは負け続けている」という箇所の中でも明言しています。

ルトワックは、朝鮮戦争は、「参戦してきた中国義勇軍兵の攻勢に米韓軍は統制も士気も乱れ、大打撃を受けた。結果として、運よく引き分けに持ち込んだ程度だった」と述べています。

第2次世界大戦後、最大の米兵犠牲者(5万8000人強)を出したベトナム戦争は米国の敗北で終わっています。

最近では、20年間にわたり2兆ドル以上(250兆円)を投じたアフガニスタンへの米軍の駐留は、再びタリバンが同国支配の奪還に成功する中、さる8月30日、米軍の完全撤退の形で終了しました。

まさに、ルトワック氏が主張する大国は小国に勝てないという理論を実証した形になりました。

そうして、外交政策についても、米国は重要な節目節目で大きな間違いをすることが多いです。

東西冷戦は熱戦ではないですが、米国にとって第2次世界大戦後、ほとんど唯一といっても良いほどの輝かしい勝利と言えます。これは、西ヨーロッパ諸国と日本が全面的に協力したからこそ勝利できたのです。


日本では多くの人が認識していないようですが、わが国は、米国、西ヨーロッパ諸国とともに、冷戦の勝者です。日本は冷戦の戦勝国なのです。さらに、日本はこの戦いに手をこまねいて何もしなかったということはありません。

オホーツク海においては、日本は米国の要請に応じて、対潜哨戒能力を強め、ソ連原潜の探査を行い、米国と協同の上ソ連原潜の実質上の封じ込めに成功しました。

冷戦期間という長期にわたって、日本はオホーツク海における対潜哨戒活動を行ってきたため、哨戒の能力が飛躍的に伸び、いっときは米国を凌駕するまでになり、世界一といっても良い状況にありました。この貢献は米国や西側諸国にとっても非常に大きいです。

日本の対潜哨戒能力は今でも世界のトップレベルです。米国もそうです。そのため、日米は海戦能力がトップレベルであり、中露と日米が本格的な海戦をすれば、中露に勝ち目はありません。

中国は海戦では日本単独でも勝つことはできないでしょう。ロシアも総力戦ではなく、海戦ということでは、日本と戦えば相当厳しいです。特に長期の海戦になれば、陸空の軍事技術には秀でてはいますが、海においてはそうでもありませんし、経済力が今や日本の1/3程度ですから、兵站に支障をきたす可能性が高いです。

朝鮮戦争においては、日本は直接戦争に参加することはありませんでしたが、朝鮮で戦う米軍に対する巨大な兵站基地となって支えました。日本は今でも中国と対峙する米軍の巨大な兵站基地の役割を担っています。

これらを実施するために、日本は莫大な経費と時間と努力を費やしてきました。おそらくこれは、米国に次ぐ多さだと思います。

ここで話は変わりますが、現在すでに時代遅れとなった「大西洋憲章」なるものが「新大西洋憲章」として、未だに生き残っています。「大西洋憲章」は、第2次世界大戦に至る「連合国 vs. 枢軸国」の対立の過程で作成されたものです。「新大西洋憲章」も枠組みは「大西洋憲章」と変わりありません。

1941年8月の米国のフランクリン・ルーズベルト大統領と英国のウィンストン・チャーチル首相による大西洋に浮かぶ英戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」の艦上で合意されました。

「新大西洋憲章」は米英で定められたものです。第二次世界大戦後はこれで良かったかもしれませんが、現在ではこれにかわる新たな「憲章」が必要です。そうして、現在日本が中心となり自由民主主義諸国の理念を「インド太平洋憲章」として起草する資格が十分にあるといえるでしょう。

そもそも、一番最近終わった世界大戦は第2次世界大戦ではなく、1989年に終わった東西冷戦です。

ロシア(ソ連)は、東西冷戦の明確な敗者であり、中国もほとんどそれに近いです。ただし、中国は当時は軍事的にも経済的にもとるに足りない存在であったので、失うものがソ連に比較して少なかったということであり、敗戦国であることに変わりはありません。

わが国は、一番最近終わった世界戦争の勝者の主要な一員という意味でも、新冷戦の理念を掲げる「インド太平洋憲章」を起草する資格を有していると言えるでしょう。

日本は、いつまでも、敗戦国の汚名を着せられたままでいることはできません。これを機に、わが国は、直近の世界大戦の勝者として、国際社会に登場すべきです。

「インド太平洋憲章」に盛り込むべき内容としては、そもそも先の「新・大西洋宣言」の8つの条項には、人権の尊重が明示されていないですが、東トルキスタン、チベット、モンゴル、香港など酷い人権侵害を続けている中国を牽制する観点からも、こうした条項は「インド太平洋憲章」には不可欠です。

そもそも日本は、世界で最初に人種的差別撤廃を提案した国です。第一次世界大戦後のパリ講和会議の国際連盟委員会において、日本が主張した、「国際連盟規約」中に人種差別の撤廃を明記するべきという提案をしました。

ところが、この提案に当時のアメリカ合衆国大統領だったウッドロウ・ウィルソンは反対で事が重要なだけに全員一致で無ければ可決されないと言って否決しました。国際会議において人種差別撤廃を明確に主張した国は日本が世界で最初です。

このような経緯からも、「インド太平洋憲章」を日本が起案して、人権尊重の条項を盛り込む資格を有しているといえます。

参加国の枠組としては、新冷戦の自由民主主義陣営は、日米豪印4カ国のQUADを中心として、世界のすべての民主主義国に参加してもらうべきです。

ただし、「インド太平洋憲章」に当初参加してもらうのは、「QUAD +α」とするのが適当でしょう。

このプラス・アルファの諸国には、すでに軍事的なものを含めて、インド太平洋への関与を表明している英仏独蘭の4カ国に、カナダとニュージーランドの2カ国を加え、計6カ国とするのが適当であると思います。

そのため、「インド太平洋憲章」は、少なくとも当初は、この「QUAD +α」の計10カ国によって合意されるものとすべきと思います。

是非とも、これらの10カ国を主導して、日本政府が、「インド太平洋憲章」の草案作りをすべきです。

なぜならば、上で述べてきたようにその資格が最もあるのは、わが国だからであり、さら付け加えると、自由で開かれたインド太平洋戦略は、元々は2016年(平成28年)8月に、時の内閣総理大臣・安倍晋三が提唱した、日本政府の外交方針だからです。

こうした下地があったからこそ、米国はインド太平洋戦略を推進しやすかっといえます。米国に反対する勢力も多いこの地域で安倍総理が関係諸国に橋渡ししたからこそ、うまくいったといえます。

さらには、クアッド構想も06年に安倍晋三首相が4カ国の戦略対話を訴えたのがきっかけだからです。2013年安倍氏が首相へ返り咲いて計画が再浮上しました。17年11月に局長級会合が始まり、19年9月にニューヨークで初の4カ国外相会談を開催しました。

そうして日本は第二次世界大戦から、冷戦を経て今日に至るまで、戦争や紛争に直接関与したことは一度もないからです。

米国をはじめとして、戦争や紛争に直接関与してきた国が草案をつくれば、利害関係のある国々の執拗な反対は免れないと思います。それに比して、日本の草案づくりに反対するのは、対抗軸にある中露と北朝鮮、及び風変わりな国である韓国だけでしょう。

「インド太平洋憲章」ができあがれば、世界はまた結束して新冷戦に勝利することになるでしょう。


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2021年11月5日金曜日

戦闘機導入問題で揺れるトルコと欧米露の関係―【私の論評】日本人は親日国トルコの情勢を客観的にみるべき(゚д゚)!

戦闘機導入問題で揺れるトルコと欧米露の関係

岡崎研究所

 トルコは戦闘機をどのように近代化させるのかという問題に直面している。トルコは本来、米国の第5世代戦闘機F-35を導入する予定であったが、2019年にロシアの防空システムS-400を導入したことに米国が反発し、トルコはF-35共同開発計画から締め出された。その結果、トルコ空軍はF-16戦闘機に頼らざるを得なくなり、最近、米国に対し、40機の新型F-16と現有の80機のF-16をアップグレードする近代化キットへの要請を出した。


 トルコへのF-35の供与が凍結されたのは、米国の主張によれば、ロシアの防空システムS-400導入により、F-35の脆弱性がロシア側に明らかになる可能性が出てきたためである。トルコが同盟の精神をないがしろにしたと批判されても当然であろう。

 米国がF-35のトルコへの供与をやめたことは根拠のある判断である。その結果、トルコの戦闘機がF-16頼りになったことは、いわばトルコの自業自得というべきものではあろう。そういう状況の中で、トルコがF-16戦闘機の新型、および現有F-16戦闘機のアップグレードのための協力を求めているわけである。

 しかし、10月14日付けフィナンシャル・タイムズ紙の解説記事‘Turkey’s search for fighter jets puts Biden in a bind’によれば、F-16はF-35と異なり、S-400の導入により脆弱性を増すという事情はないとのことである。そういうことであれば、トルコのF-16に関する要求は厚かましいところがあるが、米は同盟国としてトルコの要請にこたえてしかるべきであろう。議会は反対かもしれないが、バイデン政権としてトルコの要請を認めるように働きかけるべきであろう。

 NATOは、同条約5条が、加盟国は一カ国への攻撃は全ての加盟国に対する攻撃とみなし全加盟国が攻撃された国を守るとしている、と規定している通り、強固な同盟である。各国の防衛努力はNATO全体にとっても重要であり、腹立ち紛れで対応すべき問題ではない。トルコが同盟国である限り、それなりの敬意を払うべきであろう。

トルコで積もり始めているロシアへの不満

 トルコ・ロシア関係について言えば、トルコのロシアに対する不満はかなり大きく、トルコをロシア側に追いやらないかぎり、ロシア・トルコ間において同盟類似の関係はありえない。黒海をはさんでトルコとロシアは対峙しているが、ロシアのクリミア併合をトルコは認めておらず、ウクライナの立場を支持している。ウクライナには無人航空機をトルコが出すという話もある。

 シリアでは、イドリブでトルコ兵士が20人ほど死亡する衝突事件があったが、ロシア軍の関与が疑われている。さらにコーカサスでのアルメニア・アゼルバイジャン戦争ではロシアがアルメニア側につき、トルコがアゼルバイジャン側につき、アゼルバイジャンが勝利したこともあった。

 トルコ・ロシア関係はトルコと欧米の関係よりもっと難しい関係と見ておいてよい。トルコのF-16に関する要求に応えることで、トルコを欧米側に引き付けて置けるし、そのことは欧米側にとっても利益になると思われる。

【私の論評】日本人は親日国トルコの情勢を客観的にみるべき(゚д゚)!

3月24日人権NGO(非政府組織)ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領が先週、女性に対する暴力と家庭内暴力の防止と撲滅に関する欧州評議会条約からトルコを脱退させたことを受け、トルコが「前例のない」規模で「人権保護を破壊している」と非難しました。

エルドアン・トルコ大統領

この動きは、トルコの検察長官が、野党である親クルド派の人民民主党(HDP)を、「国家と国との不可分の一体性に反する行為」をしたとして活動停止にする計画を発表したことを受けたもので、全国の都市で党員の逮捕が相次いる中での出来事です。

エルドアン大統領は国民民主主義党(HDP)について、テロ組織指定されているクルディスタン労働者党(PKK)を支援しているとして非合法化を要求、3月17日には最高検 察庁が憲法裁判所にHDPの解党を申請していました。

トルコでは、クルド人が約2割を占めるとされています。PKKは1984年から武装闘争を続け、トルコや米国、EUがテロ組織に指定。政府は、PKKによる攻撃で、これまでに4万人以上が犠牲になったとしています。トルコ軍は現在も、同国南東部やイラク北部で空爆などを含めたPKK掃討作戦を続けています。

PKKの女性民兵

HRWのケネス・ロス事務局長は、エルドアン大統領が「トルコ社会の再構築に向けた幅広い取り組みを妨げるあらゆる機関や社会の部分を標的にしています」と述べています。

「議会の反対勢力、クルド人、女性に対する最近の動きは、人権と民主主義の保護に違反して、大統領が権力を維持するためのものです」

HRWは、エルドアン大統領が宗教的に保守的な層にアピールするために、イスタンブール条約として知られる「画期的な」欧州評議会の条約を「武器」にしていると非難した。

イスタンブール条約は、女性に対する暴力と家庭内暴力の防止と撲滅に関する欧州評議会条約、通称イスタンブール条約は、2011年5月11日にトルコのイスタンブールで署名された女性に対する暴力と家庭内暴力に反対するための欧州評議会の国際人権条約です。 この条約は、暴力の防止、被害者の保護、加害者の免責の撤廃を目的とします。

「今回の(条約からの)離脱決定は、トルコにおける女性の権利を守るための闘いを大いに後退させるものであり、政治的スペクトラムを問わず、すべての女性にとって大きな打撃となります」とロス事務局長は述べました。。

HRWは、HDPの活動停止計画は、何百万人ものクルド人の民主的権利に対する攻撃であると言います。また、トルコでは過去30年間に他の5つのクルド人政党が閉鎖されていると彼は付け加えました。

「2018年の総選挙で全国的に11.7%の票を獲得し、55人の選出議員を擁する政党を閉鎖するための訴訟を開始することは、政治的結社と表現の権利に対する大きな攻撃です」とロス事務局長は述べました。

「この動きは、600万人近くの有権者が選んだ代表者を否定し、投票権を侵害することになりかねません」

HRWによると、トルコの検察長官は、HDPに対する広範な弾圧の一環として、687人のHDPメンバーを政治活動から追放することも求めているといいます。

人権重視をうたう米バイデン政権は、国務省が3月17日、「(解党は)有権者の意思を不当に覆し、民主主義を阻害する」との声明を発表しました。欧州からも懸念が表明されたのですが、トルコ外務省は同月18日、名指しは避けつつ、「無節操に行動し、我々の内政に干渉するものに対し、トルコの独立した司法による法手続きを尊重するように求める」と主張しました。

トルコがテロ組織とみなしているクルド系武装組織を、米国が過激派組織「イスラム国」(IS)掃討のため支援している問題でも強い不満を抱えています。エルドアン氏は9月下旬、米トルコ関係が「健全ではない」と不満をあらわにしました。

トランプ前政権に比べてバイデン大統領はエルドアン大統領に厳しい姿勢で知られています。
トルコ側はいらだちを強めています。チャブシオール外相は10月28日の地元テレビで、米国が売却に応じなければロシアからの導入を検討する考えを示しました。ロシア製への切り替えは軍制全体に影響するため現実的でないですが、米側を揺さぶる狙いが透けてみえます。

エルドアン大統領は、10月には、トルコに対して人権活動家の釈放を要求した米欧など10人の駐トルコ大使を追放すると宣言しました。

ただし、後にエルドアン大統領は、各国の大使館が内政に干渉しないとする声明を発表したことを受けて処分を見送る方針を示しました。ようやく開催された10月31日のバイデン、エルドアンによる首脳会談では協議の継続を確認するのみで、具体的な進展はみられませんでした。

バイデン(左)、エルドアン(右) 首脳会談

「バイデン大統領は前向きだった」。トルコのエルドアン大統領は20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に際してバイデン氏と会談し、その後に開いた記者会見で、トルコが米国に売却を求めている戦闘機F16についてこう語りました。

もっとも、両国の声明などによると、合意事項は貿易量の増加に向けた協議の枠組み設置にとどまりました。米高官は記者団に対し「(バイデン氏は)トルコの要求を理解している」などと述べるにとどめ、微妙な温度差ものぞかせました。

米トルコ関係が専門のイルハン・ウズゲル元アンカラ大教授は「両者は互いに主張を伝え、継続協議としただけでF16を巡る実質的な進展はなかった」とみています。

トルコは兵員規模でNATO2位を占め、米国や欧州にとっては中東や旧ソ連圏に接する戦略的に重要な同盟国です。その同盟国への武器売却が円滑に進まないのは、両国間に近年生じた深刻な相互不信のためです。

ホワイトハウスの声明によると、バイデン氏は会談でS400への懸念のほか、人権や民主主義、法の支配の重要性を訴えたといいます。米国ではエルドアン政権の強権ぶりに対する懸念が高まっています。仮にバイデン政権が戦闘機売却を認めても、米議会が承認する見通しは立たない状況です。

双方が譲歩し、同盟関係を根本から揺るがしかねない追放劇は回避されたが、溝の深さは改めて浮き彫りになりました。

一方トルコ国内に目を転じると、2019年に国外へ移住したトルコ人は前年比2%増加しました。トルコ統計局が発表した公式統計によると、国外へ移住したトルコ人は合計330,289人に達し、そのうち40.8%は20~34歳でした。トルコの人口は、8,434万人 (2020年)ですから、これは決して無視できない数字です。

イスタンブール政治研究所のセレン・セルビン・コルクマズ常任理事によると、この調査結果は、若者たちがトルコを離れる理由が、主に労働条件や生活水準、仕事の機会、そして自由のためであることを示しているといいます。

「移住は日常の苦闘からの出口戦略になります。国内では若者の失業率が25%以上に達しており、若者の多くが、依然として家族の経済的支援を受けているか、低賃金で働いている状況です」とコルクマズ氏は語りました。

これでは、バイデン政権がトルコの要請をなかなか、受け付けられないのも無理はありません。

トルコは日本国内では、親日国といわれますが、日本人はそれはそれとして、現在のトルコの状況を客観的にみていく必要があります。

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米、台湾防衛巡る曖昧さ減らすべき=下院情報委員長―【私の論評】米国は戦略的曖昧さを捨て去り、米軍の卓越した海戦能力を用い中国の台湾侵攻を阻止すると明言すべき(゚д゚)!

2021年11月4日木曜日

米、台湾防衛巡る曖昧さ減らすべき=下院情報委員長―【私の論評】米国は戦略的曖昧さを捨て去り、米軍の卓越した海戦能力を用い中国の台湾侵攻を阻止すると明言すべき(゚д゚)!

米、台湾防衛巡る曖昧さ減らすべき=下院情報委員長

米下院情報特別委員会のアダム・シフ委員長(民主党)

米下院情報特別委員会のアダム・シフ委員長(民主党)は3日、バイデン政権は米国の台湾政策を巡る曖昧さを減らす必要があるとの見方を示した。アスペン・セキュリティ・フォーラムで述べた。

米国は1979年の台湾関係法に基づき、台湾に自衛手段を提供することが義務付けられているが、台湾が攻撃を受けた際に米国が軍事介入するかどうかは明確にしない「戦略的曖昧さ」と呼ばれる政策を取っている。

シフ氏はこれについて「曖昧さは大きいより小さい方がおそらく好ましい」とし、「われわれは台湾防衛義務について、より明確にする必要がある」と述べた。

また、米政府が他国と連携し、「武力で台湾侵攻・併合を試みればどれほどの代償を払うことになるか、中国に極めて明確に示す」必要があると述べた。

ロシアによるウクライナ侵攻とクリミア併合を引き合いに出し、国際的な抑止を強めなければ、「中国とロシアは今世紀に武力で世界地図を塗り替えることが再び容認されると感じるだろう」と指摘。

米国や同盟国が中国に対し、台湾攻撃が招く経済的な結果は受け入れがたいほど大きくなると理解させることが重要とし、「それが最も効果的な抑止になるかもしれない」と述べた。

米国の立場をより明確にすべきとする一方、「台湾を軍事的に支援するかどうかの議論には微妙なラインがある」とし、「台湾への武力行使に関する中国の考え方や時期を加速させるような表明はすべきでない」と述べた。

バイデン米大統領は10月、台湾が中国に攻撃されれば米国は台湾を防衛すると発言。戦略的曖昧さの立場から逸脱したかに見えたが、ホワイトハウスは直ちに、米国の台湾政策に変更はないと説明した。

【私の論評】米国は戦略的曖昧さを捨て去り、米軍の卓越した海戦能力を用い中国の台湾侵攻を阻止すると明言すべき(゚д゚)!

このブログにも過去に何度か掲載してきたように、現在の中国軍と台湾軍の戦力差ならば、軍事侵攻自体は可能でしょうが、米国政府は在日米軍をはじめとする部隊を送り、介入するはずです。

特に攻撃力に優れた攻撃型原潜による潜水艦隊ならびに対潜哨戒機や艦艇などを派遣するのは確実であり、そうなると、中国には全くといって良いほど勝ち目はありません。

米海軍「P-8A Poseidon」対潜哨戒機

特に、海戦、空戦ではボロ負けするでしょう。米軍は対潜戦闘(ASW)では、世界一の対潜哨戒能力を有しているので、いち早く台湾近海に米攻撃型原潜を派遣して中国の潜水艦をことごとく撃沈して、米軍への脅威を取り除くことになるでしょう。

米軍には「見えない空母」とも言われる巡航ミサイルを多数積載した攻撃型原子力潜水艦(SSGN)が4隻あります。1隻でトマホークを154発積むことができます。

600発の巡航ミサイルを積んだ「見えない空母」が、第1列島線の内側に入り込み、ピンポイントで中国のレーダーや宇宙監視の地上施設を攻撃して、まず「目」を奪うでしょう。そうなれば、中国は米空母などがどこにいるか把握できず、ミサイルを当てようがないのです。

そうして、米軍は攻撃型原潜で台湾を包囲するでしょう。そうなると、台湾に近づく艦艇はことごとく撃墜、航空機は撃墜されることになります。そうして、中国は米攻撃型原潜の包囲をとくことができず、台湾侵攻はできなくなります。

それでも、多大な犠牲を出してでも台湾に人民解放軍を上陸させたとしても、潜水艦に包囲されていれば、補給ができず、お手上げになるだけです。

仮にそれをさらに、打ち負かしたとしても、その後、民主主義が浸透した人口2300万人の台湾を統治するためには、統治機構を作り直さなければなりません。例えば、警察や軍の組織、選挙制度、教育制度などです。

これら一連の膨大な作業が必要であり、すべてがきちんとできて初めて統治に「成功した」と言えるのです。できなければ、現在のチベット自治区や新疆ウイグル自治区以上の不安定要因を中国は内部に抱えることになります。

しかも、台湾は大陸から離れているので、統治はさらに難しくなることが考えられます。中国は国土と人心が荒廃した台湾ではなく、自国の発展の役に立つ台湾を欲しているのです。それが成就できなければ、それを手にいれるためにほとんど勝ち目のない軍事的な侵攻をするのは無謀で愚かなことです。

それでも、中国が台湾に侵攻する可能性はあります。それは主に二つの要因によるものと推測できます。

まず第一は、中国が勝てると誤解することです。以前から述べているように、現代の海戦の本当の戦力は潜水艦であるといえます。水上に浮かんでいる艦艇は、ミサイルなどの標的に過ぎず、いずれ必ず撃沈されるからです。

潜水艦による戦いということになれば、上でも述べたように圧倒的に米軍が強いです。それについては、現場の軍人は熟知しているでしょうが、中共の幹部は知らない可能性があります。

世界の軍事力などを比較するジェーン年鑑などで、中国の海軍力などが報告され、それには艦艇の数などが掲載されていて、軍事的な知識がないと、中国海軍は世界一と思い込むときがくるかもしれません。

しかし、中国は先進国の軍隊とまともに戦った経験がありません。大東亜戦争中に日本と戦ったのは、現在台湾に存在する国民党の軍隊でした。中国はベトナムと戦った惨敗した経験があるのですが、その当時とは根本的に状況が違うと考えたり、中国海軍はまともに海戦を戦ったことが一度もないにもかかわらず中国海軍は世界最強で米軍と戦っても勝つとの幻想をいだく中共幹部もいるかもしれません。

1979年の中越戦争では中国は惨敗

そうなると、台湾に侵攻する可能性あります。ただ、そうなれば、きついボロ負けになるだけですが、それでも米軍は無論ですが、日本も被害を受ける可能性があります。

もう一つの可能性としては、クライブ・ハミルトン氏の著書『目に見えぬ侵略』に描かれた、オーストラリア社会に中共がありとあらゆる手段を講じて浸透したように、台湾に浸透した場合です。

たとえば、台湾政府、軍隊その他ありとあらゆる組織に深く浸透し、あとひと押しで台湾が中国にひれ伏す可能性が出てきた場合です。この場合、中国は台湾に侵攻するかもしれません。

中国共産党は7月1日午前(日本時間同)、北京中心部の天安門広場で創立100年を記念する式典を開催しました。習近平党総書記(国家主席)は「台湾問題の解決と祖国の完全統一実現は党の歴史的任務だ」と演説し、台湾統一の実現に強い意欲を表明しました。


独裁者になろうとする習近平には、残念ながら、建国の父である毛沢東や、経済発展を実現させた鄧小平のような手柄がありません。その手柄を得るために、台湾に侵攻する可能性は否定できません。

この場合も、上に示したように、米軍が台湾を攻撃型原潜で包囲してしまえば、中国は台湾に侵攻することはできません。ただ、この場合も米軍や日本も被害を受ける可能性はあります。

一番良いのは、中国が自国の軍事力を過信しようが、台湾社会にかなり浸透したにしても、中国が台湾に侵攻すれば、ボロ負けするだけであることを周知徹底し、最初から中国が台湾侵攻する意図を挫くことです。

台湾が攻撃を受けた際に米国が軍事介入するかどうかは明確にしない「戦略的曖昧さ」と呼ばれる政策は捨て去り、「台湾が中国に攻撃されれば米国は台湾を防衛すると」名言するとともに、軍事機密にもかかわることなので、詳しいことは言わなくて良いですから、「米軍の中国軍に比較して卓越した海戦能力を用いて中国の台湾侵攻を阻止」するくらいのことは言っても良いと思います。

その意味するところは、まともな軍事アナリストには伝わり、中共幹部にも伝わり、何よりも台湾の人々を勇気づけることになるでしょう。

これは今では言うまでもないことなのですが、米軍が空母打撃群や海兵隊を用いるような時代遅れの作戦を想定することは、人民解放軍に格好の標的を与えるだけで、もはや愚劣であり、中共をぬか喜びさせるだけです。

ただ、いまでも米海軍の中には頑迷固陋な空母打撃群信奉者が存在するのは事実のようで、空母打撃群を中心に作戦を組んだ場合、米軍も出す必要のない多大な犠牲者を出すことになるでしょう。ただ、この場合でも最終的には米軍が勝利することになるでしょう。

このような馬鹿真似は普通はしないでしょうが、それにしても最近の米軍のアフガン撤退をみていれば、馬鹿真似をしないとは言い切れないかもしれません。

一番愚かな選択は、空母打撃群が攻撃を受けて壊滅的な打撃を受けたからといって、台湾防衛をあきらめることです。これも、決してありえないシナリオとは言い切れません。特に、バイデン政権や米軍に中国が深く浸透していれば、ありえるシナリオです。

このようなシナリオも想定して、日本は独自の日本の潜水艦隊による台湾防衛の方式を予め策定しておくべきです。中国よりも対潜戦闘能力に格段に優れた日本は、中国よりもはるかに海戦能力に優れているので、単独でも台湾を防衛できます。しかも、潜水艦隊中心の作戦であれば、あまり犠牲を出さずともできます。

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2021年11月3日水曜日

米バージニア州知事選、真の敗者はバイデン氏―【私の論評】2024年大統領選挙で、トランプ・バイデンが対峙する可能性が高まりトランプ勝利も十分ありえるシナリオに(゚д゚)!

米バージニア州知事選、真の敗者はバイデン氏

バイデン大統領

米南部の激戦州バージニア州で民主党候補が敗れた知事選で、真の敗者はバイデン大統領だ。1年後に中間選挙を控え、バイデン氏の政策的な行き詰まりと支持低迷は今後も民主党の足かせとなりうる。政治経験のない共和党候補ヤンキン氏の勝利は、トランプ前大統領の支持層を手放さず無党派層も取り込む勝利の方程式を共和党に示したといえるだろう。(ワシントン 渡辺浩生)

「バージニアはどんどん青色(民主党のイメージカラー)に変わっている」。外遊先の英国で記者団に知事選の情勢を聞かれたバイデン氏は余裕をみせた。確かに同州は昨年11月の大統領選でバイデン氏が10ポイント差をつけてトランプ氏を破った。

だが1年で形勢が逆転したのはバイデン氏自らの支持低迷と、「トランプ色」を薄めたヤンキン氏の選挙戦略が奏功したからだ。トランプ氏本人から支持を得ながら選挙戦では終始、同氏から距離を置いた。

ヤンキン氏は1日夜の住民集会でも前大統領の名前を一切口にせず、教育、税金、治安など「食卓の話題」に集中した。学校教育で「批判的人種理論(CRT)」の導入禁止を訴えると歓声は一気に高まった。

CRTは人種差別や白人至上主義が教育や司法などの社会制度に構造的に組み込まれ、差別や格差を固定化させたとする理論だ。進歩的な教師らが学校教育に浸透を図っているとの批判を保守層が強め、その是非が全米の論争となっている。

教育と人種問題をからめた主張は、トランプ氏に不信感が拭えない無党派層と同時に、トランプ人気が根強い共和党支持層を取り込むためだ。CNNの出口調査によれば、ヤンキン氏は共和党支持者の96%、無党派層の54%、トランプ支持層の95%を獲得。狙いは的中した。来年の中間選挙で共和党がどう戦うか、その処方箋を示した形だ。

民主党候補のマコーリフ氏はヤンキン氏への攻撃で「トランプ批判」を連呼したが効果なく、その敗北はバイデン氏の不人気ぶりをかえって印象付けてしまった。

政権の看板法案が党内の路線対立で難航し直近の支持率は43%に低下。バイデン氏は外遊出発直前の先月末、大型経済対策法案の予算規模を1兆8500億ドルに半減させる妥協策を発表して打開を図ったが、穏健派の重鎮議員から合意を得られなかった。大型インフラ整備法案も、財政拡大に固執する下院の民主党左派の条件闘争に遭い棚上げ状態だ。

気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)首脳級会合でバイデン氏は「米国は世界中の国々を助ける義務がある」と指導的立場をアピールしたが、最初の信任投票の敗戦は今後のかじ取りに暗い影を落とす。米国が再び内向きに転じる兆候を同盟諸国は警戒するだろう。
【私の論評】2024年大統領選挙で、トランプ・バイデンが対峙する可能性が高まりトランプ勝利も十分ありえるシナリオに(゚д゚)!

日本では、総選挙が大きな焦点となりましたが、米国でも来年の中間選挙に向けて、ある知事選挙の行方に全米が注目していました。バイデン政権にとって負けられない戦いにはオバマ元大統領も参戦。そして無論トランプ氏も参戦していました。

先々週土曜日。バージニア州で開かれた集会に多くの人が集まっていました。

民主党 マコーリフ候補:「みなさん、こんにちは。バージニアを愛しています」
登場したのは、知事選の民主党候補マコーリフ氏。多くのメディアが駆けつけ、全米に生中継される中、そこに現れたのは・・・
記者:「民主党の候補者の応援に大物が駆けつけました。バラク・オバマ元大統領です」
オバマ元大統領:「バージニアをより良い将来に導きましょう。みなさんを信じていますよ。自分を信じて投票に行き、やるべきことをやりましょう。YES WE CAN!」
退任後も人気を誇るオバマ元大統領がわざわざ応援に駆けつけたのには訳がありました
共和党 ヤンキン候補:「我々が勝利するこの選挙は、バージニアの私たち全員のためのものです」
共和党の知事候補のヤンキン氏。新型コロナワクチンやマスク着用の義務化に反対するなどバイデン政権の政策に批判的な立場で、着実に支持を伸ばしてきました。バージニア州では過去5回の知事選で民主党候補が4回勝利してきましたが、今回は支持率がほぼ並んでいます。

民主党にとってはバージニアでもし負ければ、来年の中間選挙でも厳しい戦いを迫られるとの危機感があったのです。そんな知事選の“陰の主役”とも言われているのが、この人でした。
トランプ前大統領: 「ジョー・バイデンと過激な左派が国を破滅の瀬戸際に追い込んでいる」
トランプ前大統領

トランプ前大統領は共和党のヤンキン候補の支持を表明。これを機に、民主党側はヤンキン氏をトランプ氏や連邦議会襲撃事件と結びつけるネガティブキャンペーンを繰り広げました
民主党候補の選挙CM(トランプ前大統領):ヤンキン氏はバージニアをまともにし、我々が知事に求める全てのことをやってくれるでしょう。全部取り戻すぞ、バージニアを取り戻せ」
民主党候補の選挙CM:「グレン・ヤンキン氏、トランプ氏の考えが一番

 日本時間の27日午前にはバイデン大統領も応援に入り、こう強調しました。

バイデン大統領:「ヤンキン候補は人格検査で不合格だ。『大統領選挙が盗まれた』というトランプの嘘を市民に広げて回っている」
勝敗を左右するのは無党派層の投票はどう動くのか。トランプ氏の存在が有権者にどんな影響を及ぼすのか。全米が注目しましたが、結局ランキン氏が勝利ました。その勝因は、上の記事にもある通り、ヤンキン氏が、トランプ前大統領の支持層を手放さず無党派層も取り込む勝利の方程式を編み出したことによるものでしょう。

選挙から半年経った5月24日にロイターが発表した世論調査によると、米国人の25%が大統領選挙には不正があったと信じています。4人に1人がトランプが勝利者だと考えているわけです。

8月4日にヤフーが発表した調査では、共和党支持者の66%が本当の大統領はトランプだと信じています。依然として、共和党で最大の支持者を持つ存在です。

いっぽう、バイデン大統領の支持率は急落していました。

バイデンは就任以来、50%以上の支持率を維持してきました。8月13日の金曜日、ロイターの世論調査では53%がバイデンの仕事ぶりを評価していました。それが、週明けの17日火曜日には46%にダウンしました。その間に何があったのでしょう。

8月15日、アフガニスタン全土がイスラム武装勢力タリバンの手に落ちたのです。20年間、24万の犠牲者を出し、3兆ドルを投じたアフガン戦争は米国の敗北に終わりました。

バイデン大統領は4月末に米軍の撤収を開始、8月に最初の都市が陥落すると、1カ月かからずに首都カブールは陥落しました。米軍に訓練され、装備を与えられたアフガン政府軍30万人はタリバンにほとんど抵抗しませんでした。

バイデンは米軍撤収について、「自国を守るために戦おうとしないアフガンの人々のために、米兵が命を落とすべきではない」と正当化しました。それは同盟国との結束を強めると言っていたバイデンが言ってはいけないセリフでした。

さらには、バイデンが最も力を入れてきたコロナ対策も行き詰まってきました。

バイデンは就任から破竹の勢いでワクチン接種を進めました。5月いっぱいまでで全人口の5割が少なくとも1回の接種、4割が2回接種を受けることができました。

ところがその後、接種率は伸びませんでした。8月になっても接種を2回受けた国民は6割しかいません。トランプは7月17日にバイデンのワクチン接種の遅れを揶揄しました。

「ワクチン接種を拒否してる人々が多いからだ。なぜなら、彼らはバイデン政権を信じていない、選挙の結果を信じていないからだ」

現在、米国のコロナ感染による死者は再び増えています。その99%は1回もワクチンを受けていない人々です。でも、未接種者が全人口の4割もいるので、収束にはまだほど遠いと言わざるを得ません。死者が増えれば、経済の立て直しもまたスローダウンし、バイデンの支持率もさらに下がるでしょう。

コロナ対策をめぐってトランプと戦ったニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事もその後、セクハラで辞任に追い込まれ、民主党は失点が続いています。

クオモ知事の性的ハラスメントを告発した、アナ・ラッチ氏の友人が撮影した写真

トランプのほうは、2024年の大統領選挙に向けて、着実に捲土重来の準備を固めています。支持者の熱狂度だけでなく、彼が大統領選から現在までに集めた寄付の額は1億ドル(約100億円)を超えます。

最新世論調査によると、民主党の大多数は、バイデン大統領以外の人物なら2024年大統領選で民主党が勝利する最善のチャンスが与えられると考えています。

バイデンは、大統領の座について1年足らずですでに支持率が低迷していますが、最新のマリスト世論調査で民主党が次期大統領選挙でどれだけバイデンを信頼しているかが明らかになりました。

同調査によると、民主党・民主党寄りの無党派の36パーセントは、バイデンが2024年の候補者のトップとなるべきだと考えています。

実に民主党と民主党寄り無党派の約半数は、バイデンが候補者のトップとならずに別の人物に出馬して欲しいと望んでいます。これはバイデン大統領が自身の党の信頼を維持しようと四苦八苦している状況を示す明快な数字です。

一方、共和党と共和党寄り無党派の50パーセントは、トランプ前大統領が2024年に共和党の候補者のトップになって欲しいと考えています。

共和党の35パーセントは、次期大統領選挙でトランプが共和党の候補者トップとなることに反対でした。

さらに、民主党と無党派左派の5人に1人は、バイデンが2024年に候補者トップとなることについてどちらともいえないと答えましたが、共和党でトランプについて同様の回答をしたのはわずか14パーセントでした。

バイデンの大統領就任1年目は、サプライチェーン危機、何万人もの不法越境移民、そしてアフガニスタン陥落を含む複数の危機によって打撃を受けました。

その上、インフレ増大によって冬の休暇前に経済が落ち込み続け、冬に近づきある現状でエネルギー価格が高騰しています。

2024年大統領選挙で、トランプとバイデンが対峙する可能性が高まってきました。そうして、トランプ勝利も十分ありえるシナリオになってきました。

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2021年11月2日火曜日

台湾「日本が出兵協力」58% 中国の武力攻撃に対して―【私の論評】日米潜水艦隊が協同で「台湾有事」に対応することを表明すれば、中国の台湾侵攻の意図を挫ける(゚д゚)!

台湾「日本が出兵協力」58% 中国の武力攻撃に対して

軍装の蔡英文総統

 台湾の民間シンクタンク、台湾民意基金会が2日発表した世論調査で、中国が台湾に武力攻撃した際に「日本が出兵して台湾防衛に協力すると思うか」との問いに58.0%が「見込みあり」と回答、「見込み無し」は35.2%だった。米軍については「見込みあり」が65.0%だった。

 日米の台湾軍事支援に対する期待の高さが浮き彫りになった。

 台湾軍による自衛能力については48.4%が「自信あり」と答えたのに対し、「自信なし」も46.8%。中国による武力攻撃に対する備えは「十分」が43.7%だったが、47.6%が「不十分」と回答した。

【私の論評】日米潜水艦隊が協同で「台湾有事」に対応することを表明すれば、中国の台湾侵攻の意図を挫ける(゚д゚)!

このブログに以前何度か掲載したとおり、台湾防衛はさほど難しいことではありません。米国の有名な戦略家でルトワック氏は、「潜水艦を三隻も派遣すれば守れる」と語っています。

ルトワック氏

私もそう思います。巷の軍事評論家などは、台湾防衛がいかにも難しいことのように語っていることも多いですが、それは完璧な間違いです。こうした軍事評論家は、決まって潜水艦のことは語りません。まるで、中国も米国も潜水艦なしで、空母やその他の艦艇だけで、米中が海戦を戦うような論評をします。

米軍は世界一の対潜哨戒能力を誇り、攻撃力がずば抜けて高い攻撃型原潜を多数持っています。そのため米軍は世界最高の対潜水艦戦闘能力(ASW)を持っています。

ASWに優れた米軍が、台湾に三隻もの潜水艦を派遣して、台湾を包囲してしまえば、ASWが格段に劣る中国軍が台湾を奪取しようとしても、この包囲網を破ることができないので不可能です。

米国の原潜は原潜という構造上ステルス性には難がりますが、それでも原潜としてはステルス性に優れたものも存在します。中国の攻撃型原潜や通常型潜水艦はステルス性はかなり劣っています。

米軍の攻撃型原潜はステルス性に劣るとはいえ、米軍は先に述べたようにASWが中国に比較して格段に勝っているので、米軍のほうが圧倒的に有利です。米中が海戦になれば、米軍に圧倒的に有利となり、中国には不利となります。

米中が海戦となれば、米軍は圧倒的に優れたASWにより、まずは台湾海域の中国の潜水艦隊を殲滅するとともに、空母を含むすべての艦艇を撃沈するでしょう。その他台湾の侵攻にかかわる、航空基地、レーダー施設、衛星監視のための地上施設等をことごとく破壊するでしょう。

そうなる前に中国は戦闘を中止せざるをえなくなります。もし、それでも無理やり戦闘を継続して、台湾に中国軍を上陸させることに成功しても、米軍が台湾を原潜で包囲してしまえば、輸送船や航空機などが近づけなくなり、台湾に上陸した中国兵に対して、食料・水・弾薬などの補給ができなくなります。これでは、中国軍は戦闘を継続できず、お手上げになってしまいます。

このように米軍は攻撃型原潜で台湾を包囲することにより、台湾を中国から守ることができます。

日本も米軍のように通常型潜水艦を5隻も派遣すれば、同じように台湾を守ることができます。日本の場合は、米軍の攻撃型原潜に比較すれば、攻撃力は高くはないですが、それでもその攻撃力は侮れません。

何よりも日本の潜水艦は、ステルス性が高く、最新鋭のものはほとんど「無音」と言っても良いくらいで、中国海軍にこれを発見することはできません。日本もASWにおいては、中国軍圧倒することになります。

10月14進水した日本の最新鋭潜水艦「はくげい」

中国海軍は台湾海域に日本の潜水艦が潜んでいるという懸念があれば、台湾に近づくことはできなくなるでしょう。何しろ中国海軍は日本の潜水艦を探知できないのですから、発見できない敵から攻撃されても防御できないからです。

さらにもう一つの利点は、日本が潜水艦を多様する戦闘を実施すれば、たとえ日中海戦になったとしても、日本側の犠牲はほとんどでないということがいえます。

これに対して、中国は強襲揚陸艦などを撃沈されれば甚大な被害を出すことになります。

冒頭の記事では、「日本が出兵して台湾防衛に協力すると思うか」とありますが、これはそもそも曖昧なアンケートだと思います。

アンケートをとる際に日本のASWが中国よりもかなり高度であることを知らせ、さらに潜水艦で加勢する可能性も示せば、「見込みあり」と答える人ももっと増えたのではないかと思います。

私は、日米ともに、台湾有事の場合は、日米単独でも加勢する旨を台湾に伝えるべきと思います。

日本は平和憲法の観点からそのようなことはできないという人もいるようですが、私はそうではないと思います。

中国が台湾に侵攻した場合の対応について、7月5日麻生副総理兼財務大臣は、安全保障関連法で集団的自衛権を行使できる要件の「存立危機事態」にあたる可能性があるという認識を示しました。

麻生太郎氏

「存立危機事態」は安全保障関連法で、集団的自衛権を行使できる要件として「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」などと規定されています。私は、台湾危機は「村立危機事態」であると十分解釈できるものと思います。

そうして、私は「台湾有事」の場合は、日本と米国が協同してこれを防ぐべきと思います。日米ともにASWに優れています。初戦においては、このASWを最大限活用して、潜水艦を最大限に活用して、中国の試みを打ち砕くべきです。

日本の潜水艦隊は、ステルス生を生かして情報収集にあたりその情報を米国潜水艦隊と共有し、いざ海戦ということになれば、日本は主に中国の潜水艦を攻撃し米潜水艦を支援し、米潜水艦艦隊は強大な戦闘力を用いて、あらゆる艦艇を撃沈、軍事施設を破壊するというような戦術をとるのが望ましいと思います。

さらに、日米は食料などの補給、乗組員の交代などを台湾の港でできるように予め台湾と交渉しておくべきものと思います。

このようなことをすることにより、日米は台湾を勇気づけ、中国の台湾侵攻の意図を挫くことになります。

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2021年11月1日月曜日

枝野立民代表、進退あすまでに判断 衆院選敗北、党内に辞任論【21衆院選】―【私の論評】今回の選挙は、自民党が勝ったというより、 野党共闘により惨めで哀れで醜悪な面々が明らかにされ、自滅した(゚д゚)!

枝野立民代表、進退あすまでに判断 衆院選敗北、党内に辞任論【21衆院選】

枝野氏


 立憲民主党の枝野幸男代表は1日午前、衆院選で公示前の110議席を割り込む敗北を受けて、「結果が出たばかりなので、何人かの方と相談して、あすの執行役員会までには何らかの考え方を示す」と述べ、自身の進退を含めた執行部の責任について明らかにする考えを示した。東京都内で記者団の質問に答えた。

自民、「魔の3回生」当選は9割超 選挙区では苦戦も

 枝野氏は「議席を減らしたことは大変残念で申し訳なく思っている」と陳謝した。


 立民は共産党などとの野党共闘を実現させて、213選挙区で候補者を一本化させたものの96議席に後退。党内からは「執行部の責任問題」(党関係者)との声が上がっており、枝野氏らの辞任は避けられないとの見通しが出ている。


 これに先立ち、同党の福山哲郎幹事長も国会内で「執行部として、選挙結果には責任がある。私自身の対応については腹を決めているが、ここで申し上げるべきことではない」と述べた。 


 枝野、福山両氏は連合本部を訪れ、芳野友子会長らに選挙結果を報告し、支援への謝意を伝えた。


 一方、11議席に上積みした国民民主党の玉木雄一郎代表は東京都内で記者団に「改革中道、対決より解決の姿勢で政策を訴えて手応えを感じた」と強調。来夏の参院選に向けて「こうした路線をしっかりと貫き、ぶれずに筋を通したい」とも語った。


【私の論評】今回の選挙は自民党が勝ったというより、 野党共闘により惨めで哀れで醜悪な面々が明らかにされ、自滅した(゚д゚)!

東京8区では、自民前職の石原伸晃元幹事長と立憲新顔の吉田晴美氏が争ったのが争いでした。

当初、共産党も候補者擁立を準備していたがのです、野党共闘で立憲・吉田氏に候補者を一本化しました。


ただ、公示前にれいわ新選組の山本太郎代表が同区からの立候補を発表するなど、候補者擁立をめぐって野党内で一時混乱もありました。一悶着はあったのですが、共闘した野党陣営は吉田氏をバックアップ。結果、岸田文雄首相も応援に入った自民党の派閥領袖を下しました。しかも、比例復活を許さないほどに……。

「東京8区」の重みは、立憲民主党の開票センターで午後9時前からはじまった「花付け」からも伺えました。

当選確実が伝えられた議員の名前を張り出す立憲・長妻副代表(右)と福山幹事長

「花付け」とは、当選確実が報じられた候補者の名前を張り出すセレモニーのことです。このとき、最初に貼り付けられたのも「東京8区」を制した吉田氏のものでした。

「東京8区」は、まさに“野党共闘の象徴”となった選挙区でした。

ところが、開票が進むにつれて風向きが怪しくなりました。

深夜にかけて、立憲の票の伸び悩みが明らかになってきたからです。

枝野氏の会見終了からおよそ1時間半後が経った11月1日午前1時半過ぎ、立憲民主党が公示前の109議席を下回ることが確実になりました。

加えて、自民党で起こった「ベテラン」敗北の事例は立憲民主党にも起こりました。

党重鎮の小沢一郎氏や「無敗の男」と呼ばれ無所属から立憲入りした中村喜四郎元建設相が選挙区で敗北。党副代表の辻元清美氏と党選対委員長平野博文氏は比例復活もならず、議席を失いました。

辻元清美氏

結果、立憲民主党の議席数は公示前勢力の109議席から13減らし96議席に。野党共闘による議席増で与党を過半数割れに追い込むことを目指したが、不発に終わりました。

たしかに小選挙区では自民党との接戦に持ち込んだ選挙区がいくつもありました。

立憲幹部が誇った東京8区や神奈川13区にように立民が圧倒した選挙区もありました。達成したところもあった。

ところが、思った以上に競り負けるところがあったのも事実です。加えて比例が伸びなかったことも響きました。

社民党や共産党などとの連携を進め「野党共闘」を推進したことで、有権者が立憲民主から離れていった点は否めません。

いかに枝野氏が「政権奪取時、共産党は“閣外からの協力”」と、距離を置く発言をしても、政策的には共産党と重なる部分はかなりありました。社民・共産と支持者が被れば、支持の広がりを欠いたことも想定されます。

野党にはこの先、どんな手段が残されているのでしょうか。

比例で当選した小沢氏

枝野氏は小選挙区で当選したものの、日付が変わって当確という有様でした。

日付が変わった一日午前零時十分ごろ、さいたま市大宮区にある立民前職の枝野幸男(57)の事務所に当選確実の一報が入ると、支援者からは「よかったー」と安堵(あんど)の声が一斉に漏れました。


枝野は東京都内で結果を見守ったため、代わりに選対本部長の熊谷裕人参院議員がマイクを握り、「簡単な選挙戦ではないと思ったが、こんな時間に当確が出るとは」とあいさつ。険しい表情を浮かべました。

党代表として応援に全国を回り、選挙期間中に地元に入ったのは二日間だけ。一騎打ちとなった自民前職には安倍晋三、菅義偉の両首相経験者ら政党幹部が相次いで応援に入りましたが、何とか退けました。


今回の衆院選で対決パターン別に与野党の勝敗を分析したところ、立憲民主や共産など野党5党が統一候補を擁立した213選挙区のうち、保守系無所属を含む自民または公明のいわゆる与党系候補は、約65%にあたる139選挙区で勝利したことが分かりました。これに対し、統一候補は約28%の59選挙区でしか勝てず、野党共闘の効果が限定的だったことを裏付けました。


213選挙区を地域別にみると、北海道は官公労が強い地域とあって、統一候補を擁立した9選挙区中、自公4勝、立民5勝と野党5党側が勝ち越しました。東京では革新系の影響力が残っていますが、与党系10勝なのに対し、統一候補は7勝と及びませんでした。 保守地盤が強固な西日本では、日本維新の会が幅を利かす大阪府を除き、中国地方で統一候補は14選挙区中1勝、四国では8選挙区中2勝しかできませんでした。


九州でも自民16勝なのに対し、統一候補は6勝にとどまるなど、野党が束になって掛かっても、与党側は寄せ付けませんでした。 135選挙区に上る事実上の与野党一騎打ちでも、与党系が96勝なのに対し、野党系は39勝と振るいませんでした。 一方、野党5党から複数の候補者が出た72選挙区ついては、与党59勝に対し、野党5党側はわずか6勝と無残な結果に終わりました。


 これらの選挙区については、反自民票が分散したために5野党側が敗北したとは必ずしも言えず、5野党で候補者を一本化した場合の票数を単純計算で足し合わせた場合、与党候補を上回ったのは5選挙区だけでしたた。与党に太刀打ちできないと判断した選挙区については、あえて候補者調整をせずに、比例票の掘り起こしを優先させた可能性があります。


今回の衆院選結果は、立民が組織票目当てで共産などと組んでも、票の上積みには限界があり、地力に勝る自民を負かすには、旧民主時代から言われ続けてきた、党の足腰となる地方組織の強化が急務であることを改めて突き付けたといえます。


今回の選挙では、立民共産の共闘が一見功を奏したかのようにみえた局面もありましたが、総体的には失敗であったことが明らかになりました。


野党は自民党には提供できない価値を提示する努力をせずに、与党への批判と数合わせの論理だけで自らの存在価値を示そうとしたので、結果的には成長できなかったし、これからも成長できそうにもありません。表面的方法が通じるほど有権者は馬鹿ではないということです。

今回の選挙は、自民党が勝ったというより、 野党共闘により惨めで哀れで醜悪な面々が明らかにされ、自滅したといえると思います。

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