2023年5月3日水曜日

ロシア 爆発で2日連続の列車脱線「破壊工作」とみて捜査―【私の論評】あらゆる兆候が、ウクライナ軍の反転大攻勢が近く始まることを示している(゚д゚)!

ロシア 爆発で2日連続の列車脱線「破壊工作」とみて捜査


 ウクライナと国境を接するロシア・ブリャンスク州で2日夜、爆発が起こり、貨物列車が脱線しました。ブリャンスク州では前日も爆発による列車の脱線が起きたばかりでした。


 タス通信などによりますと、ブリャンスクの州都に近い駅の付近で2日夜、爆発が起き、貨物列車およそ20両が脱線したということです。けが人はいませんでしたが、当局は何者かが意図的に爆発物を仕掛けたものとみて、調べています。

 ブリャンスク州では前日も爆発により、ベラルーシから石油製品などを運んでいた貨物列車が脱線していて、ロシア当局は破壊工作とみて調べています。

 ブリャンスクでは今年3月、ウクライナから侵入したとみられるグループが、市民2人を殺害する事件が起きていて、プーチン大統領は、テロとの見方を示していました。

【私の論評】あらゆる兆候が、ウクライナ軍の反転大攻勢が近く始まることを示している(゚д゚)!

ウクライナのロシア侵攻は、現状では東部と南部に限定されています。であれば、こちらの地域の鉄道を破壊するならわかりますが、なせブリャンスク州なのでしょうか。

3月には武装集団がウクライナから国境を越えてブリャンスク州西部の村を襲撃。直後にロシアからウクライナに移住した極右活動家が率いる組織が犯行声明を出すなど、不穏な事態が相次いでいます。これをロシア側は「ウクライナ側」の仕業としましたが、ウクライナ側は否定しています。

上の記事にもあるように、前日の1日にも、ブリャンスク州で同様の爆発が起きていました。ボゴマズ州知事は1日、テレグラムを通じて「ブリャンスクとウネーチャをつなぐ線路の136キロ地点で午前10時17分頃、正体不明の爆発装置が炸裂し、貨物列車が脱線した」と伝えました。

この事故でも人命被害はありませんでしたが、事故現場の写真を見ると、線路脇の草むらに倒れた列車に火がつき、煙が立ち上る様子が確認できる。この列車は石油と建築資材を運んでいたといいます。

同日、ロシアの第2の都市サンクトペテルブルクから南に60キロ離れたスサニノ村の近くでは、送電塔が破壊された。レニングラード州のアレクサンドル・ドロスデンコ州知事は、一晩の間に送電塔1基が爆破され、他の送電塔近くでも爆発装置が発見されたと明らかにした。ロシア当局はソーシャルメディアとマスコミを通じてこのニュースを伝えたが、誰の仕業かについては言及しなかった。


ブリャンスク州は、ロシア西部に位置し、ベラルーシ、ウクライナと国境を接する地域である。モスクワと西ヨーロッパ、ロシアとウクライナを結ぶ主要な交通路に位置し、戦略的な立地です。

ソ連時代、ブリャンスク州は軍事兵站の重要な拠点として、西部戦線への兵員や物資の輸送の拠点となっていました。ソビエト連邦崩壊後、この地域の軍事的プレゼンスは低下しましたが、輸送インフラは維持されたままでした。

近年、ロシア軍はブリャンスク州のインフラに投資し、物流能力を向上させているとの報告があります。鉄道や道路網の拡張、保管施設や物流センターの新設などです。

ロシアのウクライナ侵攻において、ブリャンスク州が兵員や物資を前線に輸送するための物流拠点として機能する可能性はあります。ただ、先にも述べたように、現状の戦線はウクライナ東部、南部に集中しています。

ただ、懸念されるのは、ロシアのプーチン大統領は昨年12月、ベラルーシのルカシェンコ大統領との会談で両国軍の合同演習の継続で一致するなど、ベラルーシとの結束を誇示しました。ベラルーシ国防省は6日、新たに露軍部隊が到着したとして、鉄道で運ばれてきたとみられる多数の軍用車の写真を公開しました。ベラルーシ大統領府は同日、ルカシェンコ氏が露軍部隊も駐留するウクライナ国境近くの演習場を視察したと発表しました。

ロシア軍が再度、キーフへの侵攻をする可能性も捨てきれません。その場合、ブリャンスク州がロシア軍の兵站基地になることが考えられます。しかも、ブリャンスク州はベラルーシとも国境を接しています。

ベラルーシの軍隊や軍事物資等、ブリャンスク州を経由して運ばれることも懸念されます。そのため、今回のテロはこれに対する牽制であるとも受け取れます。

ただ、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は1日の記者会見で、情報機関の分析として、ウクライナに侵攻するロシア側の兵士・戦闘員の昨年12月以降の死者数が2万人以上、負傷者数が8万人以上にのぼるとの見方を示していました。

ロシアはウクライナ東部ドネツク州バフムトの攻略を目指しており、ここ数カ月で死傷者数が加速度的に増加しているとみられます。これでは、ロシアにはもうすでに、ウクライナ東部・南部戦線と、キーウを狙う北部戦線のすべで攻勢に出るのはかなり難しいでしょう。

カービー氏は、ウクライナ側の死傷者数は明らかにしませんでした。ロシア側の死傷者の多くは、民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員といいます。刑務所からリクルートされた受刑者らが、十分な戦闘訓練や指導もないままバフムトなどに投入されているとしました。

この状況だと、ブリャンスク州やクルスク州などは軍事的にはかなり手薄になっていると考えられます。これは、ロシアもしくはウクライナの武装グループが仕掛けたものでしょう。あるいは、両方かもしれません。

武装グループにとっては、まずは攻撃しやすいということがあるのでしょう。さらに、今後のウクライナ軍による大反抗が予想されるなか、ブリャンスク州で頻繁にテロを起こして、こちらのほうにロシア軍をひきつけて、少しでもウクライナに有利になるようにするという意図もあるとみえます。

先月29日には、2014年3月にロシアが合併を宣言したクリミア半島のロシア黒海艦隊の拠点であるセバストポリの油類貯蔵庫で、ドローンによるものとみられる攻撃で爆発が発生しました。ウクライナ軍はこれに対して、異例にもウクライナ軍の大規模反撃攻勢のための「準備過程」だったと発表しました。

軍ではない、武装グループもこれに呼応して、自分たちの裁量で、破壊活動をしている可能性があります。

モスクワの軍事政治研究センターで責任者を務めるアンドレイ・クリンチェビッチ氏は「敵軍(ウクライナ軍)は今月9日(戦勝記念日)にロシア領土深くに入る込む大規模な挑発を準備している」と述べました。

モスクワで、戦勝記念日に行う軍事パレードのリハーサルをするロシア軍(4月28日)

同メディアは「(ウクライナは彼らの)勝利について欧米など世間の耳目を惹く動きを必要としている」と伝え、反撃の時期を戦勝記念日と予測した理由について説明しました。

同メディアは「ウクライナの反転攻勢によりロシアの都市を狙った小規模なテロ攻撃が数十回行われる可能性がある」とも予測しているとも伝えています。

旧ソ連による対独戦勝記念日である5月9日にモスクワの「赤の広場」で行う軍事パレードに、外国の首脳が一人も出席しない見通しとなりました。露大統領報道官が4月末、ロシア通信などに明らかにしました。

参加者や登場する兵器も減らす予定で、ウクライナ侵攻の影響が、プーチン大統領が特に重視する行事にも及んでいます。

報道官は、戦勝記念日は「我々ロシア人にとっての祝日だ」と述べ、「外国首脳を招待しなかった」と説明しました。戦勝75年の節目だった2020年には米欧や日本の首脳も招待してました。

やはり、ロシアはウクライナ反転攻勢を警戒しているでしょう。さらに、軍事パレードなどもテロの対象になる可能性を懸念しているのでしょう。

米ニューヨーク・タイムズも1日付で「ウクライナによる反転攻勢が近い徴候が相次いで捕捉された」と報じました。

ニューヨーク・タイムズは「この徴候には双方の軍事攻撃強化、ロシア軍による防衛陣地の移動、ウクライナと接するロシア西部の都市で発生した爆発による列車脱線事故なども含まれる」と伝えています。

ウクライナのレズニコフ国防相も先月28日に国営テレビに出演し「反撃の準備は最後の段階に入った」「その方法や位置、時期については指揮官たちが決めるだろう」と述べ、反転攻勢を予告しました。

これに対してロシア軍もウクライナの反転攻勢に備えるため、南部の防衛陣地に部隊を移動させています。英国の国防情報参謀部はロシアが最前線近くだけでなく、現在統制している地域でも「最も広範囲な軍事防衛システムを構築した」と説明しました。

米カペラ・スペース社の衛星写真に映し出された、ウクライナ・ザポロジエ州のロシア占領地域に築かれた3層構造の防衛線=4月11日 クリックすると拡大します

実際露側は進軍を妨害する約800キロメートルにも及ぶ防衛線(塹壕)の構築を急ぎ、完成間近か、完成されいることが分かっています。露軍は、占領地域の防衛に徹することに戦術を切り替え、持久戦に持ち込む狙いとみられます。

しかし、防衛線を保つには、乱れのない指揮系統や空中戦での優位が必須条件とされ、時代がかった長大な塹壕は無用の長物と化す可能性もあります。

さらにロシアはミサイルによる奇襲攻撃を行うことで大攻勢を阻む意図を伝えるとみられるシグナルを送っています。 ロシア軍は1日未明、ウクライナ全土に3日間で2回目となるミサイル攻撃を行いました。 東部の地区で大規模な火災が発生し、当局者によると34人が負傷、住宅数十棟が損害を受けました。 ウクライナ軍は、防空部隊がロシア軍のミサイル18発のうち15発を破壊したと発表しました。

これらは、本当に今月9日(戦勝記念日)に反転大構成があるかどうかは別にしてウクライナ軍の反転大攻勢を近いことを示している兆候であると考えられます。

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2023年5月1日月曜日

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 南アフリカがプーチン大統領側にサミットに来ないで

 BRICS(新興5カ国首脳会議)で今年の議長国を務める南アフリカがロシア側にプーチン大統領の出席をやめるよう求めていると地元メディアが報じました。

 南アフリカのサンデータイムズは30日、南アフリカ当局がロシア大統領府に対し、プーチン大統領のオンラインでの首脳会議出席を提案していると報じました。

 ICC(国際刑事裁判所)がプーチン大統領に逮捕状を出していて、ICC加盟国の南アフリカはプーチン大統領が南アフリカへ入国する場合には逮捕しなければなりません。

 南アフリカは一時、プーチン大統領を受け入れるためにICCを脱退する動きも見せましたが、今は一転してICCにとどまる方針を明らかにしています。

 タス通信などロシアの国営メディアもサンデータイムズ紙の報道を引用して報じています。

【私の論評】様々な情報が飛び交う中、プーチンが弱体化していることだけは間違いない(゚д゚)!

ロシア大統領府のペスコフ報道官は先月24日、プーチン大統領が8月に南アフリカで開かれる新興5カ国(BRICS)首脳会議に出席するかは、時期が近づいたら適切に決定すると述べていました。

BRICSはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国で構成。国際刑事裁判所(ICC)はウクライナでの戦争犯罪容疑でロシアのプーチン大統領に逮捕状を出しており、南アで開催されるBRICS首脳会議にプーチン氏が出席した場合、ICCに加盟している南アは理論上、プーチン氏を逮捕する必要がありました。

プーチン(左)とシリル・ラマポーザ南アフリカ大統領(右)

ペスコフ報道官は定例記者会見で、プーチン大統領が出席するか「時期が近づいたら適切に決定する」とし、 ロシアはBRICSを極めて重要視しているため、「いずれにしてもロシアは積極的に(会議に)参加する 」と述べました。

ICCは3月17日にプーチン大統領に対する逮捕状を発行。ロシアはICCに加盟していないですが、プーチン氏がICC加盟国に渡航し、逮捕されれば、裁判にかけられる可能性があります。

結局、南アフリカは、プーチンがBRICSサミットに参加させない道を選びました。

ロシアと南アフリカの関係は、両国が冷戦時代から外交的な接触を持っていたことに由来します。この関係は、南アフリカが民主主義に移行した後も継続しており、経済、政治、文化、軍事などの分野での協力が見られます。

経済面では、ロシアは南アフリカの主要な貿易相手国の1つであり、両国は金、プラチナ、ダイヤモンドなどの天然資源の取引を行っています。また、ロシア企業は南アフリカでの投資を拡大しており、エネルギー、鉱業、農業などの分野での共同プロジェクトが進行しています。

政治面では、両国は国際的な問題において協力しています。例えば、南アフリカは国際原子力機関(IAEA)理事会においてロシアの委員資格を支持するなど、国際社会においてロシアを支援しています。

軍事面では、南アフリカはロシアとの軍事技術協力に積極的に取り組んでおり、両国は兵器や軍事訓練などの分野で協力しています。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻やその他の国際的な問題に関して、南アフリカ政府はロシアに対する批判的な姿勢を示していることもあります。

BRICSは、先にもあげたように、新興国の5か国からなる新興国・途上国のグループであり、国際的な政治や経済における影響力を高めることを目的としています。

中国は、「中国が国際基軸通貨であるドルの弱体化を望んでいるという一定の証拠がある」

米大統領経済諮問委員会(CEA)のメンバーのジャレッド・バーンスタイン氏は米上院銀行委員会が4月18日に開いた公聴会でこのように述べました。

この発言は、昨年2月のロシアのウクライナ侵攻後に、中国を始めBRICS(ブリックス)の間で「ドル離れ」の動きが生じていることを意識したものです。

中国を訪れたブラジルのルーラ大統領(右)

一方、BRICSプラスは、BRICSに加えて、イランやサウジアラビアなどの国々を含むグループを指します。BRICSプラスがドルの地位を脅かすものとなるかどうかについては、複数の要因があります。

まず、BRICSプラスがドルの地位を脅かすためには、膨大なドル建ての資産を持つ国々や企業が、BRICSプラスに参加してドル以外の通貨や決済システムを利用する必要があります。

しかし、現在のところ、これらの国々や企業がドルを放棄することは容易ではなく、BRICSプラスがドルの地位を脅かす可能性は低いと考えられます。

また、BRICSプラスに参加する国々の経済規模や影響力がまだまだドルに劣ることもあり、BRICSプラスがドルの地位を脅かすためには、まず経済や政治的な発展を遂げる必要があります。

しかし、BRICSプラスがドル以外の通貨や決済システムを活用することで、ドルの地位に対するアジアやロシア、中東などの国々の関心が高まることはあり得ます。また、BRICSプラスの影響力が高まることで、ドルを代表するアメリカの影響力が低下する可能性もあります。

総じて言えることは、BRICSプラスがドルの地位を脅かすことは難しいと思われますが、BRICSプラスが成長し、国際社会における影響力を高めることは、ドルの地位に影響を与える可能性があるということです。

ただ、その可能性は現状では、まだまだ低いです。今回の、南アフリカがプーチンにサミットにこないように申し出たのは、やはり背景にこのようなことがあるからでしょう。

まあ、ロシアの経済はウクライナ戦争の前でさえ、韓国を若干下回る程度で、軍事的にもウクライナにすぐには勝利を収められない現状をみれば、南アフリカとしても、ロシアに義理立てしてもあまり意味がないことを十分に理解したのでしょう。

プーチンは28日、ロシア国籍を取得した人がロシア軍の信用をおとしめる行為などをした場合、国籍を剝奪(はくだつ)できる改正法案に署名しました。政府がサイトで公表した。180日後に施行される。ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ4州の出身者も対象となっており、ウクライナ侵攻への批判を封じる狙いがあるとみられます。

これは、本当かどうかは、わかりませんせが、元ロシア連邦警護庁(FSO) グレブ・カラクロフ氏は、「プーチンは暗殺を恐れていると思う。サンクトペテルブルク、ソチとモスクワ郊外にある大統領公邸の執務室の内装は全く同じ。例えばプーチンがソチにいた時、テレビで彼がモスクワ郊外で会議をしたというニュースが流れた。そこでソチにいる仲間に“彼はもう帰ったの?”と聞くと“まだいる”と返ってきた」


つまりモスクワに移動したと見せかけた後に執務室のプーチン氏が映れば、皆モスクワの執務室だろうと思うが、実際は同じ内装のソチの執務室にいるとされています。これは無論、テロが多発していることを暗に示していると思います。

これが、本当かどうかは、わかりませんが、ただ、ロシアがウクライナで破竹を進撃をし、とうの昔に、キーウを占領して、ゼレンスキー政権を追い出し、ロシアの傀儡政権でも樹立していれば、このような、もっともらしい話もなかったかもしれません。

プーチンが苦境に追い込まれていることだけは、間違いないようです。

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2023年4月30日日曜日

動き出したスリランカ支援―【私の論評】スリランカの破綻の直接の原因は実はエネルギー問題、日本は途上国と先進国の両方を満足させる技術を持っている(゚д゚)!

動き出したスリランカ支援

深刻な経済的苦境にあるスリランカの新大統領にラニル・ウィクラマシンハ氏が選出され抗議する人々(2022年7月20日)

【まとめ】

IMF、スリランカに対する4年間で30億ドル相当の金融支援を行うことで合意。

G20中央銀行総裁会議、日本主導でスリランカの債務返済繰り延べに向け債権国会議を発足。

・中国は債権国会議の対応を見ながら、自らの力をより大きく見せる方途を探っている。

 
経済危機に直面するスリランカに対する支援を巡り、動きが活発化してきている。

スリランカは人口の70%が仏教徒主体のシンハリ人で、タミル人との紛争が終結した2009年以降も国内で政争が絶えなかった。

2019年の爆破テロ事件、同年のゴダバヤ・ラージャーパクサ大統領による減税や新型コロナ感染拡大での主力産業の観光の落ち込みなどで外貨準備が輸入額の1か月分にも満たない額にまで減少

2022年3月以降、大統領の退陣を求めるデモが起きた。同国財務省は同年4月12日、国際通貨基金(IMF)の経済調整プログラムに沿った債務再編が行われるまで債務支払いを停止するとデフォルト宣言をした。

このため、5月にはマヒンダ・ラージャーパクサ首相が辞任に追い込まれ、その後の大規模デモ・騒動でゴタバヤ・ラージャ―パクサ大統領は国外脱出後に辞任するという事態に陥った。マヒンダが兄でゴダバヤが弟だ。その後、ウィクラマシンハ首相が新大統領に選出され、今日に至っている。

IMFは同年9月の事務レベル会合で、スリランカに対する4年間で30億ドル(約3,950億円)相当の金融支援を行う拡大信用供与措置(Extended Fund Facility=EFF)を採ることで合意。今年3月20日の理事会でEFFを承認した。

EFFは国際収支の改善を通じ、マクロ経済の安定化、債務の持続性、貧困者や弱者に対する影響の軽減を狙ったもの。同承認を受け、IMFはスリランカにまず3億3,300万ドルの支援を行うこととなった。

◾️日本の主導で債権国会議が発足

日本は、1951年の二次大戦後のサンフランシスコ講和会議で、スリランカのジャヤワルデナ蔵相(当時)が「憎悪は憎悪によって止むことなく、愛によって止む」という仏陀の言葉を引用して演説したことに感銘。大統領になったジャヤワルデナを1979年9月、国賓として日本に迎えた。日本からは1990年に海部俊樹首相(当時)がスリランカを訪問、2014年9月には安倍晋三首相(当時)が、日本の首相として24年ぶりに同国を訪れている。老練政治家のウィクラマシンハ大統領は、そうした流れの中で日本政府関係者の受けが良い。

今年の4月13日には米ワシントンで、G20 ・中央銀行総裁会議が開かれた。途上国で問題化する債務問題などで共同声明は出せなかったが、日本の主導でスリランカの債務返済繰り延べに向けた債権国会議を発足させた。鈴木俊一財務相兼金融担当相、インドのシータラーマン財務相、フランスのムーラン経済・財政省国庫総局長、スリランカのウィクラマシンハ大統領兼財務相(オンライン参加)およびセーマシンハ財務担当国務相、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエヴァ専務理事、岡村健司副専務理事が記者会見し、同会議の発足を表明した。

鈴木財務相はその席で「広範な債権国間の協調体制が生まれることは歴史的快挙」と述べた。G20 は2020年に低所得国の債務問題を扱う共通の枠組みをつくり、スリランカのような中所得国扱いに対する債務返済危機に対しては債権国で構成するパリクラブが当たっていた。今回のスリランカに対する債権国会議にパリクラブのメンバーでないインドも入っている。鈴木財務相は、国としてスリランカに最大の債権を有する中国が同会議に出席するかどうかについて言及しなかった。

◾️「債務のわな」を仕掛けた中国の出方がカギ

スリランカは中国の一大経済圏構想「一帯一路」の下で、「債務のわな」に陥ったとの見方が一般的だ。中国はそうした見方に反発している。しかし、スリランカは南部の主要港であり、ラージャーパクサ兄弟の地元であるハンバントタ港の建設資金約14億ドルに関し、中国からの負債と同港の99年間の運営権をスワップ(交換)している。その合意では、中国の軍関係者の関与を禁じるとなっているようだが、中国がミャンマー、パキスタンに続き、スリランカにインド洋進出の拠点を手中にしたと見る向きは根強い

スリランカの対外債務額は資料によって異なるが、IMFの今年3月段階の同国レポートによると、2022年の官民の対外債務総額は暫定値で587億ドル、2023年の予測値は562億ドルとなっている。外国法に準拠した2022年の公的対外債務額は約415億ドル弱。うち、IMF、世界銀行、アジア開発銀行など多国籍機関が115億ドル弱。個別国の総額は114億ドル強で、日本などパリクラブ所属国が48億ドル弱、非パリクラブ国の中国が45億ドル弱、同じく非パリクラブ国のインドが18億ドル強。中国の国家開発銀行などによる貸し付けが29億ドルなどとなっている。

IMFはスリランカの今年の実質GDP成長率をマイナス3.0%と見込んでいる。

スリランカの貿易相手国で、輸入で最大なのは中国でシェアは21%、2位はインドで22.4%、産油国のアラブ首長国連邦(UAE)が3位で6.8%。輸出は、米国が24.8%、英国が7.5%、インドが6.6%の順。

ロイター電は3月初旬、中国輸出入銀行がスリランカに送付した書簡の中で2022年と2023年が支払期限の債務について支払い猶予を数か月内に実施などと繰り返し強調、と報じている。

中国は債権国会議の対応を見ながら、自らの力をより大きく見せる方途を探っているように見える。(敬称略)

【私の論評】スリランカの破綻の直接の原因は実はエネルギー問題、日本は途上国と先進国の両方を満足させる技術を持っている(゚д゚)!

上の記事では、スリランカがなぜデフォルトしたのかについては、述べていません。特にデフォルトの直接にきっかけについては述べていません。これについては、以前このブログに述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
破産宣言のスリランカ 債務再編主導を日本に依頼へ―【私の論評】スリランカは、日本に開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させ、その開発・利用への支援を再開して欲しいと願っている(゚д゚)!
この記事より一部を引用します。
"
スリランカの経済が破綻し大規模デモがおきて政権が転覆したのは、数々の失政が重なった結果ですが、とどめの一撃となったのは燃料費の高騰でガソリンが輸入できなくなったことでした。

スリランカの最大都市コロンボで最近みられる、ガソリンスタンドでたくさんの車やバイクが行列ぎょうれつをつくる光景

いまの開発途上国でのエネルギー危機は、単にウクライナの戦争のせいではありません。近年になって、欧米の圧力によって化石燃料事業への投資が停滞していたことが積み重なって、今日の破滅的な状態を招いているのです。

インド人の研究者である米国ブレークスルー研究所のビジャヤ・ラマチャンドランは科学雑誌Natureに書いています。
「近代的なインフラを最も必要とし、世界の気候変動問題への責任が最も軽い国々に制限を課すことは、気候変動の不公正の極みである」。
ラマチャンドランは、国際援助において、気候変動緩和をすべての融資の中心に据えるという近年の方針について、偽善であり、二枚舌だとして、猛烈に抗議しています。
「それは、経済開発に使える資源を必然的に減らすことになり、しかも地球環境にはほとんど貢献しない。・・なぜそのような努力をするのか。世界銀行とIMFの主要株主である富裕国は、これまでのところ、エビデンスや合理的なトレードオフに基づく気候変動政策の策定にはほとんど関心を示していない。 
それどころか、天然ガスを含む化石燃料への融資を制限し、自国では思いもよらないような制限を世界の最貧国に対して課すことを、自画自賛しているのである。その規制の中には、化石燃料への開発金融をほぼ全面的に禁止することも含まれている。 
世界銀行は、気候変動緩和政策と貧困削減の間の急激なトレードオフを最もよく理解しているはずである。しかし、国内の環境保護団体を喜ばせたい資金提供者が課した条件には従うしかなかったようだ。・・欧州連合は、自分たちはクリーンエネルギーの原子力発電所を停止し、天然ガスの輸出入を増やし、国内の石炭発電所を新たに稼働させる一方で、開発金融機関に対しては、貧困国でのすべての化石燃料プロジェクトを直ちに排除するよう主張している。」
「さらに悪いことに、EUの官僚たちは現在、『何がクリーンエネルギーか』をめぐって一進一退の攻防を繰り広げている。燃料不足に直面する加盟国から、原子力や天然ガスまで定義(タクソノミー)を拡大するよう圧力がかかっている。その一方でEUの広報担当者は、“EUの柔軟な分類法は、開発政策に反映されることはない”と明言した。つまり天然ガスはヨーロッパ人にとってはグリーンだが、アジアやアフリカの人々にとっては事実上禁止されるということだ。」
何十億人の人々が、先進国のエリートたちによって、化石燃料のない、貧困に満ちた未来へと組織的に強制されているのです。気候危機説を信奉する指導者たちが、開発途上国の化石燃料使用を抑圧しているからです。哲学者のオルフェミ・O・タイウォは、この現象を「気候植民地主義」と呼んでいます。
"
「気候植民地主義」という言葉は、さまざまな学者や活動家によってさまざまな文脈で使われてきましたが、一般的にはインドの環境学者・物理学者であるヴァンダナ・シヴァの言葉だとされています。シヴァは、環境主義、社会正義、グローバリゼーションの交わるところについて幅広く執筆し、気候変動の緩和と適応の努力による費用と利益の不平等な分配は、新しい形の植民地主義を構成すると主張している。

ヴァンダナ・シバ

「気候植民地主義」とは、歴史的に温室効果ガスの最大排出国である先進国が、その富と権力を使って気候変動対策の条件を決定し、途上国に解決策を押し付け、しばしば地域社会や生態系を損なっているという考え方です。

これは、たとえば、ダムや再生可能エネルギー設備のような大規模なインフラプロジェクトが、しばしば地元の人々を追い出したりや生態系を傷つけたりすることにより、コミュニティ主導のアプローチや社会正義よりも市場ベースのメカニズムや技術的解決を優先する政策や協定をとることもあるとの主張です。

日本では、最近では無秩序な太陽光パネルの設置が問題になっています。

無秩序で危険極まりない太陽光バネルの設置(和歌山県)

CO2素排出削減目標や再生可能エネルギーの義務付けを行うことも、独善的と受け取られかねません。このようなアプローチは、途上国が経済成長と社会発展を支えるために、安価で信頼できるエネルギー源へのアクセスを必要とすることが多いという事実を無視しかねません。

 先進国は、エネルギー問題に関連する国際援助や開発資金に条件を付け、自国のエネルギーの優先順位を途上国に押し付けることがあります。これは、各国の多様なエネルギーニーズと優先順位を認識しない独善的なものと言わざるを得ないです。

例えば、エネルギープロジェクトに対する資金援助を、現地の状況における技術の適合性や実現可能性を考慮することなく、特定の技術やエネルギー源に結びつけることは、画一的なアプローチの押し付けと受け取られかねないです。

先進国は、再生可能エネルギー技術などのクリーンエネルギー技術の途上国への移転を制限することもあります。これは、途上国がよりクリーンなエネルギー源への移行や気候変動の緩和に役立つ技術にアクセスすることを妨げるものであり、独善的と受け取られかねません。

技術移転の制限は、先進国による知的財産保護主義や技術進歩の囲い込みの一形態と見なすことができ、途上国が持続的にエネルギー需要に対処するための進歩を妨げる可能性があります。

先進国は、南半球のエネルギー資源や管理に関する先住民や地域の知識を軽視したり、過小評価したりすることがあります。

これは、何世代にもわたって天然資源とともに持続可能な生活を送ってきた地域社会の伝統的な知恵や慣習を無視するものであり、独善的と受け取られかねません。先住民や地域の知識を無視することは、地域コミュニティの疎外や移動につながり、先進国と途上国の間の力の不均衡を永続させる可能性があります。

世界のエネルギー問題に取り組むには、開発状況にかかわらず、すべての国の協力的な努力と相互尊重が必要であることを認識することが重要です。すべての国が持つ固有のエネルギーニーズ、状況、視点を考慮した包括的かつ公平なアプローチは、世界のエネルギー問題に対する有意義で持続可能な解決策を促進するのに役立ちます。

気候植民地主義の支持者は、このアプローチは植民地主義を特徴づける搾取と支配のパターンを再現し、途上国や先住民の主体性と主権を損なうと主張しています。気候変動の影響を最も受ける人々の声やニーズを重視し、気候危機の原因となった歴史的・継続的な不公正を認識した上で、より民主的で公平な気候変動対策へのアプローチを求めています。

私は、「環境植民地主義者」の主張に関して、これをすべて支持するものではありませんが、それにしても、これを無視することは、先進国の傲慢であると思います。

日本主導でスリランカの債務返済繰り延べに向け債権国会議を発足したことは喜ばしいことです。今年日本はG7議長国となります。開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させて、化石燃料の開発・利用への支援の再開を訴えるべきです。

もしこれに失敗すれば、開発途上国は本当に欲しいものを供給し支援してくれる国々を頼るようになるかもしれません。それはロシアであり、中国かもしれません。あるいは、原子力発電の実績のある北朝鮮かもしれません。北朝鮮は、原子力発電所の輸出ととも、核兵器を輸出するかもしれません。

開発途上国は先進国が呼びかけた対ロシア経済制裁に殆ど参加しませんでした。つまりいつまでも先進国の言いなりにはならないということです。

そうした中での、日本主導でスリランカの債務返済繰り延べに向け債権国会議を発足です。これを機会に、日本は開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させて、化石燃料の開発・利用への支援の再開を訴えるべきです。

そうして、それができる裏付けが日本にはあります。日本の化石燃料を用いた発電など、かなり技術が進んでいます。たとえば、横浜市にある磯子石炭火力発電所は、「クリーンコール技術」とよばれる技術を活用し、大気汚染物質の排出を大幅に削減しています。2002年のリプレース(建て替え)前に比べると、窒素酸化物(NOx)は92%、硫黄酸化物(Sox)は83%、粒子状物質(PM)は90%減っています。

さらに日本には、火力発電所で発生するCO2を分離、回収して貯留することでCO2を削減するCSSという技術も開発しています。

世界には、石炭をエネルギー源のひとつとして選択せざるを得ない国が存在しています。その理由は、安定した供給を行うことができるという「エネルギー安全保障」、そして「経済性」にあります。

国際エネルギー機関(IEA)の分析では、インド、東南アジア諸国を中心とした新興国では、経済発展とともに、今後も石炭火力発電のニーズが拡大する見通しとなっています。新興国にとって、安く、安定的に採れる石炭は、引き続き、重要なエネルギーなのです。

日本は、エネルギー面での、グローバル・サウス(発展途上国)と、先進国の両方満足させる技術やノウハウを提供できます。これを活用しない手はありません。これによりグローパルサウスがエネルギーで中露に取り込まれるのを避けるべきです。日本は、この面で先進国と途上国の両方の架け橋になるべきです。戦後一度も、紛争等に直接介入したり、覇権を行使してこなかった日本こそが、その役を担うことができると思います。

先進国の理想を実現しようとし、グローバル・サウスのほとんどが、中露に取り込まれるようなことだけは避けるべきです。


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2023年4月29日土曜日

防衛財源確保法案のカラクリ 本当は「増税なしでも手当可能」だ 透けてみえる財務省の思惑―【私の論評】確実に税収が上ブレする現状で防衛財源確保法案は、財務省の増税の意図を隠す表看板に過ぎない(゚д゚)!



 防衛力の強化をめぐり、防衛財源確保の特別措置法案が提出された。「防衛力整備計画」の財源を裏打ちしたものだ。

 防衛力整備計画は国防に関する中長期的な整備計画で、改定された「国家安全保障戦略」および、防衛計画大綱に代わって策定された「国家防衛戦略」とともに昨年12月16日に閣議決定された。

 同計画の5年間の防衛力整備に係る金額は43兆円程度とされており、その財源として、歳出カット、外国為替資金特別会計(外為特会)の利差益などとともに実施時期未定の防衛増税がある。

 宇宙・サイバー・電磁波領域を含む全ての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする多次元統合防衛力を抜本的に強化するとされている。

 日本を取り巻く安全保障環境の急変から、大幅な防衛予算には異論が少ないだろうが、財源にはさまざまな意見がある。

 安倍晋三元首相は生前、「防衛国債」を主張した。「道路や橋は次の世代にインフラを届けるための建設国債が認められている。防衛予算は消耗費といわれるが間違っている。防衛予算は次の世代に祖国を残していく予算だ」と語っていた。

 一方、岸田文雄首相は「国債でというのは、未来の世代に対する責任として採り得ない」と述べた。

 どちらが正しいかといえば、安倍元首相だ。防衛はインフラと同じで将来世代まで便益があるのだから、国債にふさわしい。そもそも「有事費用は国債で賄われる」という歴史事実さえ押さえておけば、事前の有事対応にも国債がふさわしいのは自明だ。だが、今回も経済や学者からはまともな声は出てこない。

 ドイツは防衛費の国内総生産(GDP)比2%のために1000億ユーロ(14・5兆円程度)の特別基金を創設し、国債発行で賄った。これは、安倍元首相の防衛国債そのものだ。

 国債に関連していえば、減債基金自体、先進国ではかつてはあったが今では存在していないので債務償還費の繰り入れがない。となると、日本の予算では、歳出が債務償還費分、歳入はその同額の国債が先進国から見れば余分に計上されていることになる。

 その債務償還費の一般会計繰り入れを特例法で停止し、それで基金をつくれば、少なくともドイツと同じ特別基金ができる。しかも増税は必要なくなる。事実上、防衛国債と同じだ。

 また、現状では外為特会の利差益は財源とするが評価益は使わないという。評価益を使えば、これも増税なしになる。

 これまでの中期防衛力計画では、今回のような財源確保法はなく、毎年度予算で対処してきた。もっと率直にいえば5カ年計画の財源はすぐに用意できるので増税の必要はまったくない。なのに防衛財源確保法案を出すのは、防衛予算の大幅増を奇貨として、増税にもっていこうとする財務省の思惑が透けてみえる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】確実に税収が上ブレする現状で防衛財源確保法案は、財務省の増税の意図を隠す表看板に過ぎない(゚д゚)!

世界中の国々で、戦争や大規模な自然災害への対応として、政府が国債を発行して資金を調達するのは普通のことです。これにはいくつかの理由があります。

日本の戦時国債

まず、国債は、政府が多額の資金を迅速に調達するための手段だからです。政府が国債を発行するということは、実質的に投資家からお金を借りるということです。投資家は国債を購入し、お金を貸す代わりに国から利息を受け取ります。このため、政府は、増税や他の分野での支出を削減することなく、多額の資金を調達することができます。

第二に、国債は、政府が緊急の出費を長期にわたって分散させる方法を提供するものです。政府が債券を発行する場合、通常、一定期間(10年、30年など)、債券の利息を支払うことになります。戦費などの場合は、数十年から100年近くに及ぶ場合もあります。

実際、日露戦争(1904〜1905年)の戦費は、国債で賄っており、1980年代にその償還が終了しています。これにより、政府は緊急事態の費用を一度に支払うのではなく、より長い期間にわたって分散させることができます。

第三に、債券は、政府が信用力を維持するための手段でもあります。政府が債券を発行するということは、その政府が資金を借り入れ、債務を返済する能力があることを実質的に証明することです。このことは、政府の財政管理能力に対する信頼を維持することにつながり、経済の安定を維持する上で重要です。

政府が戦争や自然災害への初動を国債で賄った例としては、次のようなものがあります。

米国は、第一次世界大戦と第二次世界大戦の際に戦時国債を発行し、戦費を調達しました。日本もそうでした。

日本は、巨額の戦費を国債で賄ったため、終戦後超インフレになりかけました。これをもって国債を発行することを忌避するむきもありますが、これには一考を要します。

もし、日本が仮に巨額の戦費をすべて増税で賄っていたとしたら、国力が衰えて、そもそも米英等とは戦争できなかったかもしれません。この一面だけを捉えると現実を見失います。

米英と戦争しなくても、日本はソ連に一方的に押しまくられる存在になったていたでしょう。結局、日本はいずれかの形でソ連圏に組み込まれていたかもしれません。そうなれば、今頃わたしたちの国日本は、ウクライナのようになっていたかもしれません。それどころか、日本が加わったソ連は、さらに精強になり、今頃まだ冷戦は終わっていなかったかもしれません。

第二次世界大戦は、日本では日本と英米との戦いのみが、強調されますが、日ソの戦いがあったことも忘れるべきではありません。

朝鮮戦争後、マッカーサーは公聴会で日本の中国大陸での戦争について聴かれ、「朝鮮戦争で実際に戦ってみてわかったが、日本は満州でソ連と対峙していたのであって、その意味では彼らの戦争は防衛戦争だったといえる」と証言しています。


関東軍が満州で踏ん張っていたからこそ、日本はソ連圏に組み込まれることはありませんでした。もしそうでなかったら、日本だけでなく中国や朝鮮半島も、第二次世界大戦後ソ連に組み込まれていたでしょう。そのようなことが予め予想できたので、日本は中国大陸での戦争に踏み切ったのでしょう。

現在のように国連や国連軍もNATOもなかった時代には、自国を守るためには、残念ながら他に選択の余地はなかった思います。当時の日本のような地政学的な位置にあれば、他国でも同じようなことをしたでしょう。マッカーサーはこれを理解したのでしょう。現在の尺度で歴史を見たり判断すべきではありません。

米英がこのことを理解していれば、第二次世界大戦はもっと違った形のものになったかもしれません。戦争後はソ連に、今日では中国や北朝鮮に振り回されことはなかったかもしれません。残念ながら、歴史には「もし」はありません。

米英がいくら当面の戦争を早めに終わらせるためとは言え、全体主義国ソ連を仲間に引き入れたのは、明らかな間違いでした。その後の世界を複雑なものにしてしまいました。今日のウクライナ問題も、大きな枠組みでは、そのための余波といえます。

巨大な戦費に関して、目先のことだけで判断していれば、判断を誤ります。防衛費も大きな視野、長期の時間軸によって考えるべき筋のものです。ちなみに、英国では戦時には戦費を賄う会議に財務大臣を参加させません。

米国をはじめとする多くの国は、COVID-19の大流行に対する初期対応として、景気刺激策や医療制度への支援などのために国債を発行しています。日本もそうでした。

国債は、戦争や大規模な自然災害やパンデミック等への初期対応に必要な資金を調達するために、政府が多額の資金を迅速に調達できる便利で柔軟な方法です。

政府が防衛費倍増のための巨額の資金を得るためには、さまざまな方法がありますが、コロナ以前の二度の増税があったこと、さらにはコロナ禍があったことなどから、現在で需要ギャップが30兆円程度はあると考えられており、増税などではなく、国債で賄うべきなのは明らかてす。

防衛財源確保法案は、防衛省が中期防衛力整備計画に必要な財源を確保するために、必要な手段を講じることができるようにするために提出された法案です。この法案によって、防衛省は必要な費用を確保するために、税制改正や政府債券の発行など、様々な手段を講じることができるというのが建前ですが、これは財務省が増税するための隠れ蓑として用いているとしか思えません。

中期防衛力整備計画の財源を毎年度予算で対処することは可能であり、しかも、国の一般会計税収が大幅に増加していることからこれは確実にできます。

さらに足元の月次税収の趨勢を踏まえ、2022 年度は 72 兆円程 度への着地を予想されています。22 年度税収は当初予算時点で 65.2 兆円のところ、昨年 11 月の補正予算時点 で 68.4 兆円と上方修正がなされましたが、ここから更なる上振れ着地が予想されます。 

一般会計税収(4~翌 2 月の累計値)

背景にはインフレ・円安、賃金・雇用の回復などがあります。足元で特徴的なのが景気の振幅に影響 されにくい消費税が大きく伸びている点です。およそ 40 年ぶりの物価急上昇は、税収にもこれまでに ない変化をもたらしています。

このような状況でも、わざわざ防衛財源確保法案を出すのは、これを財務省は増税の隠れ蓑にするためだと判断するのが妥当だと思います。

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2023年4月28日金曜日

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 23日に投開票された衆参計5選挙区の補欠選挙では、自民党の「4勝1敗」という結果となった。衆院解散に追い風になるのかどうか。野党の勢力図に変化は出てくるだろうか。

 衆参の補選は政権にとって中間評価だといえる。手応えが良ければ政権運営に弾みがつくが、悪ければ行き詰まる。菅義偉政権では補選で全敗(不戦敗を含む)したので、解散もできずに退陣に追い込まれた。

 今回は衆院千葉5区、和歌山1区、山口2区、山口4区、参院大分選挙区で補選があった。補選の前はそれぞれ自民、国民、自民、自民、非自民系と「自民3、非自民2」だった。

 今回の選挙では、それぞれ自民、維新、自民、自民、自民が勝ち、自民は4勝1敗だった。注目の千葉5区は前職が不祥事で辞職、参院大分は自民候補の知名度が低く接戦だったが、自民が制した。和歌山1区は、岸田文雄首相が襲撃され、同情票もあったと思われるが、日本維新の会の勢いが強く、自民は負けた。維新が衆院小選挙区で議席を持っていたのは大阪府のほかは兵庫県だけだったが、和歌山県にも広がった。立憲民主党は議席を獲得できなかった。

 野党の立民や共産党は統一地方選でも芳しくなかった。その典型が参院大分で、自公対立民・共産の戦いだったが、立民・共産は負けてしまった。

 野党の維新は強いが、立民・共産は弱い。維新も強いのは関西だけなので、全国的にみると、まだ自公を脅かす存在にはなっていない。ただし、統一地方選で、合計約470人の地方議員と首長を「600人以上」に増やす目標を馬場伸幸代表は公約し達成したので全国政党に向けて着実に進んでいる。

 となると、5月中旬の先進7カ国(G7)広島サミット後の衆院解散・総選挙の可能性が高くなっているのではないだろうか。野党第1党が立民から維新に代わるかもしれない。

 補選は国政選挙なので、事実上の増税を予定する「防衛財源確保法」など今の国会で提出されている法案も一応審判の対象になったはずだ。だが、おそらく多くの有権者は、そんな法案を聞いてもいないだろう。国会における予算案審議で議論すべきところ、立民は「放送法文書」問題に拘泥し、成果を上げられないままに時間を浪費し、国民に防衛増税の危うさを訴えることができなかったからだ。

 「異次元の少子化対策」もその裏で増税の動きがある。本コラムで、いずれ消費増税になると予想したが、経済団体はそう主張し始めた。

 仮に総選挙になっても、自公は増税を明言することはないだろう。かといって増税を否定することもない。実際、防衛財源確保法でも増税を決めたわけでなく、行革や剰余金処理などいろいろな財源が列記されている。しかし、これらの財源捻出は財務省のさじ加減で決まるので、筆者は事実上、増税がセットされているとみている。

 本当に増税回避したいなら、外国為替資金特別会計の評価益や国債整理基金への債務償還費繰入停止などで財源を確保するはずだ。それをやらないことが増税志向だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】消費者と企業経営者のマインドが安定し、将来に対する明るい展望が開けるまで増税、特に消費増税するな(゚д゚)!

安倍総理によるアベノミクスが行われた当時、第1の矢「大胆な金融政策」はよく飛び、第2の矢「財政政策」も、ある程度は飛びました。しかし、第3の矢「成長戦略」はさほど飛んでいないではないか、と批判されました。 


しかし、安倍政権においては、結局2度消費増税が行われ、特に二度目の増税は、経済にかなりの悪影響を与えたことを考えると、この批判は的を射たものとはいえません。増税すれば、成長戦略などできません。

1回目の消費税増税は5%から8%へ。そして2019年10月に行われた2回目の消費税増税は、軽減税率が付いていたものの、8%から10%へ上がりました。この2回のショックは多くの人の予想をはるかに超えて経済に悪影響をもたらしました。特に二回目の増税はかなりのものでした。

 1回目は「影響が出るだろう」と覚悟の上で実施したようです。エコノミストの中には、「消費税増税の影響は軽微」としたものもいましたが、その予想はことごとく外れました。

大和総研チーフエコノミスト熊谷亮丸氏は「消費税増税の影響は軽微」と語っていたが・・・・

2回目の増税は、当時の安倍首相も悪影響がなるべくでないようにと、工夫して、「全世代型社会保障政策を実施」することで、増税するけれども、お返しをするという方向で臨みました。しかし、増税されて所得が減っていくことの悪影響が、非常に大きく経済は落ち込みました。

その後、2019年の第4四半期、10~12月期には成長率がマイナスになりました。ただ、そこからコロナ禍が続いてしまいした。結局、経済の落ち込みが増税によるものなのかコロナによるものか原因がはっきりしないまま、低調が3年間続きました。

 これを見てもわかるように、消費者と企業経営者のマインドが安定し、将来に対する明るい展望が開けるまでは、増税はやめるべきです。特に消費税の増税はやめるべきです。

日銀や内閣府が計算している需給ギャップ、需要と供給のバランスで見ると、まだまだマイナスが続いています。30兆円前後のギャップがあります。やはり需要がなければ、どんな政策も難しいです。

アベノミックス第3の矢は基本的には規制緩和を行い、そして競争を喚起するものでした。それから政府のやるべき公共的な事業に投資し、それによって競争を喚起するものでした。とにかく競争を喚起しないと第3の矢は飛ばないのです。ところが、当たり前のことですが、需要がないと競争は起こらないのです。

インフレになれば「他社と違うことを行う」努力をしなければ持たなくなります。 それが生産性を上げ競争につながります。

需要がないなかで競争しようとすると、「価格を下げよう」となってしまいます。 価格が上がるなかで、どう企業が工夫するか。どのように価格上昇をお客さんに納得してもらうかという形で、工夫が生まれるのです。


これを無視して、米国のGAFAなどと比較して、日本企業は駄目になったと語る人もいますが、それは違います。米国は、日本のような深刻な長期にわたるデフレを世界恐慌以降経験したことはありません。そのような環境で生きている企業と、日本のようにデフレが長く続いた環境で生きてきた企業を同一次元で語るのは間違いです。

日本企業も、これから緩やかなインフレが長く続くと確信できるような社会になれば、さまざまな創意工夫をするようになるはずです。

価格の上昇をお客さんに納得してもらうには、もちろん政府の政策も大事なのですが、企業自身による「この環境を生き残っていくのだ」という主体的な動き、努力も合わせて必要になります。 

ただし、これまでは景気がまったく温まっていません。物価が上下しないなかで、「経済が価格によって動く」という現象が起こっていませんでした。そのため政府頼み、または同業他社を見て、同じようなことをやっていれば良かったわけです。 

このブログでも掲載しましたが、新規採用でも、いわゆる「コミュニケーション重視」が強調されることになったのです。「コミュニケーション」重視とは、景気が良くないので、やる気が目一杯、深い専門知識を持つとか、特殊能力や特技を持ちチャレンジ精神豊富でいわゆる「尖った」人よりも、周りの人を気遣う調整型の人を雇いたいのですが、それではあまりに格好が悪いので「コミュニケーション」重視というきれいな言葉で飾っただけです。

実際、私はデフレ真っ只中の最中に採用を担当していたことがありますので、就活フェアなどで、他企業の採用担当に「御社におけるコミュニケーション能力重視とはどういう意味ですか」と質問してみると、結構格好の良いキャッチフレーズなどをあげたりするのですが決起をく「ホウレンソウ」などのことを言うのみで、とてもコミュニケーションの本質を理解しているとは思えず、このことを確信しました。


現在も「コミュニケーション重視」とする企業は結構あります、これは実体経済を反映しているのてしょう。こんなことよりも、もっと「尖った」人を企業が採用するようになれば、実体経済も良くなっているということだと思います。

今後、インフレの時代になっていけば、競争力をつけて「自社が他社と違うことをやっていく」という努力をしないと、会社が持たなくなってくるでしょう。 値段以外で付加価値をつけるのです。それがまさに「生産性を上げる」ということに繋がっていくのです。

その意味では、日本はこれからがチャンスです。日本は昔からの風習が多く続いています。例えば正規職員と非正規職員の区別は、世界中にはありません。

基本的には不定期で雇う形と、フィックスターム、例えば3年契約~5年契約で雇うという、2種類しかないのです。 ところが日本では、待遇がまったく違います。社会保険の手当もそうです。同じ労働をしているにも関わらず、正規と非正規で違い過ぎます。

そういうことが非生産性を生んでしまいます。本来ならば、非正規職員の方がいつ解雇されるかわからないのですから、場合によっては高い賃金を払わなければならないのです。

 しかし、日本ではそういうことが久しくありませんでした。ベースアップは基本的には正規職員だけです。これはデフレのためにそうなってしまったのです。しかし、日本も少なくと90年代より前には、同じ仕事内容なら、正社員よりパートやアルバイトのほうが、時間あたりの賃金は高かったのです。現在の若年や中年層にはそのような経験はないでしょうが、それ以上の世代だとそれが記憶に残っている人もいるでしょう。

ただ、一部の老人たちの中では、それが記憶に残っていて、現状の経済環境を知らず、今の若者は根性なしだと、批判する人もいます。長時間働けたとか、過激に働けたのは少なくともデフレではなく、インフレ気味だっかったからです。デフレではびこった、ブラック企業での恒常的な低賃金の長時間労働とは全く性質が異なります。

さらに、特に日本では、定年制という慣行が良くないところがあります。米国では州によりますが、「定年制は年齢による不当な差別だ」として、違憲判決が出ている州が多いのです。そのような州では、担当している職務が、老化などによって規定どおりにできなくなった場合は、解雇しても問題はありませんが、年齢だけを理由にして解雇することはできません。 

無論定年制が必要な職業もあります。警察官や消防士だと、70歳~80歳の人が犯罪者を捕まえたり、火を消しに行くのは難しいです。しかし、例えば普通の会社員や公務員のような仕事は、定年を超えても普通に続けられます。

もちろん若い人に手伝ってもらわないといけないことも多いかもしれません。ただ、高齢の人は若い人にはできない各種の判断能力など備わっていることもありますし、さらには自らの職場だけではなく、会社全体のことを考えた上で業務を遂行する能力が身についている人もいます。しかし、そういうことを一切抜きにしてクビになってしまうのは、日本の生産性を損なうのではないでしょうか。非常にもったいないです。

これも、デフレであるため、このようなことがなかなか改善されないのです。インフレであれば、人手不足が恒常化し、今までは働く意思があっても、働けなかった高齢の人たちや女性や障害者の方たちにもさまざまな職場で働いてもらわなければ、事業が成り立たなくなります。

ただ、このような問題を改善していくためにも、まずは緩やかなインフレにならなければ、需要もなく、競争も起こらず、すべての前提が崩れてしまうのです。

増税の間違いについては、多くの人が理解するようになりました。特に少子化対策で増税で負担が増えるるということになれば、これこそ、本末転倒です。おそらく、増税で生活が苦しくなれば、本来子どもを産み、育てる世代の人たちの負担も増え、3人子どもを産もうと考えていた人たちが1人が2人にするとか、そもそも、子どもを持つことを諦めてしまう人もでてくるかもしれません。それどころか、結婚を諦める人もさらに多くなるかもしれません。

防衛費も同じことです。防衛増税で経済が落ち込めば、国力が衰え、防衛費を賄う事自体が難しくなります。日本は、戦中に巨額の戦費を国債でまかないました。そのため、戦後には超インフレになりかけたため、国債を忌避するむきもあります。

しかし、当時日本が巨大な戦費をすべて増税で賄っていれば、国力が衰え、米英とは戦争をしなかったというかできなかったかもしれませんが、戦後にはソ連圏に組み込まれ、現在のウクライナのようになっていたかもしれません。

それどころか、米英は冷戦に負けていたかもしれません。そうなっていれば、今頃私達は、ロシア連邦の一員となりロシア語を話し、他国との戦争の最前線に駆り出されていたかもしれません。経済もロシア(一人あたりのGDPは100万円を少し超える程度)並以下になっていたかもしれません。財務官僚も日銀官僚も、天下り先で優雅な生活を送ること等儚い夢になります。

財源をいつでも何でも増税だけに頼り続けるというやり方を続ければ、いつかはこのような破滅的なことになります。

やはり、先にもあげたように、消費者と企業経営者のマインドが安定し、将来に対する明るい展望が開けるまでは、増税はやめるべきです。特に消費税の増税はやめるべきです。絶対に駄目です。

そうして、私は何も積極財政、金融緩和を永遠に続けろと言っているわけではありません。消費者と企業経営者のマインドが安定し、将来に対する明るい展望が開ければ、その後いずれ必ず経済は加熱します。

物価が上がっても、失業率が下がらない状態になります。そうしたときには、財務官僚の大好きな増税を、日銀官僚が大好きな金融引締をすれば良いのです。

経済でも、人体でも中庸が重要です。人が、ダイエットをやりすぎて摂食障害になってしまうこもあるように、実体経済を無視して、いつでも緊縮・増税というのは明らかに間違いです。そんなことをすれば、国力が衰えるだけです。

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2023年4月27日木曜日

韓国への戦略原潜派遣、北朝鮮の攻撃から守る米国の決意示す―【私の論評】日本も日米「核共有」を検討し、中露北のミサイルを牽制できる「極超音速ミサイル」の配備を急げ(゚д゚)!

韓国への戦略原潜派遣、北朝鮮の攻撃から守る米国の決意示す

4月27日 バイデン米大統領と尹錫悦韓国大統領が合意した「ワシントン宣言」に基づき、米軍は核兵器を搭載できる弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を韓国に派遣する。写真はジョージア州キングスベイの潜水艦基地に戻ったオハイオ級原子力潜水艦アラスカ。

 バイデン米大統領と尹錫悦韓国大統領が合意した「ワシントン宣言」に基づき、米軍は核兵器を搭載できる弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を韓国に派遣する。SSBNの寄港は1980年代以来で、北朝鮮の攻撃から韓国を守るという米国の決意を示す。

 SSBNは秘密裏に行動するため、外国での寄港を公にすることはほとんどない。

 韓国の元潜水艦長Moon Keun-sik氏は「潜水艦の位置情報は通常明らかにされないため、北朝鮮にとって大きな圧力となり得る」との見方を示した。

 SSBNの寄港には韓国を安心させ、自国産の核兵器開発を思いとどまらせるという狙いも透ける。

 別の元潜水艦長Choi Il氏は「米国のSSBNが韓国に寄港するのは非常に珍しく象徴的なことだ」と指摘。「米国は抑止力の強化を目に見える形で示し、韓国の懸念を抑えたい考えだ」と語った。

 米海軍は現在14隻のSSBNを保有している。「オハイオ」級は1隻当たり20基の潜水艦発射弾道ミサイル「トライデントII D5」を搭載。同ミサイルは1基当たり最大8発の核弾頭の搭載が可能で1万2千キロ離れた目標を攻撃できる。

 米国科学者連盟(FAS)の報告書によると、1970年代にはSSBNが定期的に韓国に派遣されていた。数年間ほぼ毎月、時には月に2─3回安定したペースで寄港していたが、81年に停止され、それ以降は再開されていないという。

 SSBNの寄港に関する詳細は明らかにされていない。米政府高官は記者団に、空母、潜水艦、長距離爆撃機などの「戦略資産」をより頻繁に朝鮮半島に送ることになり、SSBN派遣はその一環と説明した。

 その上で「これらの戦略資産や核兵器を韓国に常駐させたり、基地化したりする計画はない」と言明した。

【私の論評】日本も日米「核共有」を検討し、中露北のミサイルを牽制できる「極超音速ミサイル」の配備を急げ(゚д゚)!

バイデン大統領は26日、ホワイトハウスで韓国のユン・ソンニョル大統領と首脳会談に臨み、核・ミサイル開発に一段と拍車をかける北朝鮮に対し、アメリカの核戦力を含む抑止力で同盟国を守る「拡大抑止」について、意見を交わしました。

会談後の共同記者会見でバイデン大統領は「アメリカや同盟国などへの北朝鮮の核攻撃を許さない。そうした行動を取れば、いかなる体制でも終わりを迎えることになる」とけん制しました。

会談後、両首脳が発表した共同声明には、北朝鮮の脅威に対する拡大抑止に加え、日米韓3か国の関係強化などについても盛り込まれています。

このうち、日米韓3か国については「両首脳は共通の価値観にもとづいた協力関係の重要性を強調した」とした上で「バイデン大統領は日韓関係改善に向けたユン大統領の大胆な決断を歓迎した」としています。


今後、核弾頭を搭載したオハイオ級等のSSBNが韓国に定期的に訪問し、交替制で韓国に常時核が存在することになるでしょう。

一方、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は26日の記者会見で、日本や周辺地域に核兵器を搭載できる戦略原子力潜水艦の母港を置く可能性について問われ、「そのような計画はない」と否定しました。 

日本では、核に対する忌避感が未だ強いことに配慮したのでしょう。

かつて、安倍晋三元総理はNATOと同様の米国と日本の「核共有」主張しました。この「核共有」とは、日本と米国が核兵器を共有し、日本が核の抑止力を持つことを意味しています。この考え方によって、日本は以下のようなメリットを享受することができます。


安全保障が強化される:日本が核の抑止力を持つことによって、外部からの脅威を抑止することができます。これによって、日本の安全保障が強化され、国民の安全が確保されます。

財政負担が軽減される:日本が自前で核兵器を保有することは財政的に非常に高額なものとなりますが、核共有によって、費用を分担することができます。このため、日本は財政的な負担を軽減することができます。

米国との協力関係が強化される:核共有は、日本と米国の協力関係を強化することにつながります。米国は、日本が核兵器を持つことによって、自国の安全保障も強化されるため、核共有は日米同盟の強化につながります。

ユン・ソンニョル大統領は、当初は米韓で「核共有」を目論んでいたのでしょうが、米国はまずは過去にも実施していたSSBNの定期的寄港から始めることから合意したものとみられます。

SSBNの寄港については、軍事的には無意味という軍事評論家もいますか、やはり北朝鮮にとっっては脅威です。北が核ミサイルを発射すれば、米軍としては最悪、これに向けて核ミサイルを打ち込めば、確実にこれを破壊できます。しかも、北朝鮮の近くから打つということで、確実に早期に仕留められます。

仮に北朝鮮のミサイルがロフテッド軌道を取ったにしても、核ミサイルを含めて、かなり大きな部分が同時に破壊されることになります。

韓国は、今後も米国と「核共有」の話をすすめていくことになるでしょう。米国がなぜ今回、SSBNの派遣を決めたかというと、いきなり「核共有」の前に、まずはしばらく中止していたSSBNの派遣することにより、これから徐々にハードルをあげていくことを北朝鮮に示したものとみられます。

米国は核を搭載できる、B21爆撃機の昨年12月3日に公開もしたばかりです。この戦力化がある程度進めば韓半島への展開だけでなく場合によって暫定的または循環配備も可能になるでしょう。中国、ロシア、北朝鮮にとっては、ステルス性能がないB1、B52爆撃機よりはるかに脅威です。

昨年暮公開された米軍B21爆撃機

中露北には、新たな戦略爆撃機の開発計画はなく、米国がこれを随時展開すれば米国の抑止の拡大は、彼らにとってさらに大きな脅威になります。

米韓で検討されている金正恩が恐れるもう一つの軍事対応は「ダークイーグル(Dark Eagle)ミサイル」(LRHW)の実戦配備でしょう。

このミサイルの発射が初公開されたのは一昨年でした。2021年10月77日、ワシントン州タコマ市郊外にある米陸軍のルイス=マコード統合基地に、開発中の新型中距離ミサイル「LRHW」の試作型発射機が送られ初公開されました。

「ダークイーグル」は、陸海空共通の極超音速滑空体(C-HGB)を弾頭に使う極超音速滑空ミサイルで、マッハ17、射程2775km以上の最新式の新型中距離ミサイルです。

ダークイーグルの発射想像図

この「ダークイーグルミサイル」の韓国配備を金正恩は恐れているのでしょう。4月10日の党中央軍事委員会で、金正恩が韓国の地図を映し出し指さしている場面がありましたが、「ダークイーグル」対策を語ったかもしれないです。このミサイルが韓国の平沢(ピョンテク)市にある米軍基地(キャンプ・ハンフリーズ)に配備されれば、平壌へは1分、北京は3分で精密打撃できます。

北朝鮮から日本まで核ミサイルが飛んでくる時間は、約6 〜7分です。発射されてすぐにこれを発射すれば、撃墜できる可能性はかなり高いです。日本で言われているロフテッド軌道をとるようなミサイルであっても、発射後1分以内なら、その軌道を取る前に撃墜できます。

今後、二重三重に米国が選択できる手段はあります。北朝鮮にはこれに対抗手段を取るのは難しいです。

日本も、「核共有」や「ダークイーグルミサイル」の配備の検討、もしくは自国で開発する体制を整えるべきです。

岸田文雄首相は2月15日の衆院予算委員会で、米国の核兵器を日本国内に起き、共同運用する「核共有」政策について、今後の検討を改めて否定した。安全保障環境の厳しさなどを理由に検討を促した自民党石破茂元幹事長に対し、「政府として議論することは考えていない」と答えました。

日本も「極超音速ミサイル」の開発をすすめています。日本も、韓国なみに米軍の「SSBNの派遣」、「核共有」、「ダークイーグルミサイル」の配備も検討すべきです。検討するだけでも、抑止になります。そうして、これらは北朝鮮だけではなく、中国やロシアに対して抑止につながることはいうまでもありません。

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2023年4月26日水曜日

「性自認」が焦点 LGBT法案、国会で議論開始へ 保守派は「差別」訴訟乱発、悪用を懸念 山田宏氏「拙速に進めることは慎むべき」―【私の論評】米英では、反LGBTの声も大きくなった昨今、周回遅れで拙速に法律を制定するな(゚д゚)!

「性自認」が焦点 LGBT法案、国会で議論開始へ 保守派は「差別」訴訟乱発、悪用を懸念 山田宏氏「拙速に進めることは慎むべき」


 終盤国会の焦点に、LGBTなど性的少数者に対する理解増進法案が浮上してきた。公明党などは来月広島で開催されるG7(先進7カ国)首脳会議前の成立を求めている。自民党は週内に党内議論を再開する方針を決めたが、党内保守派は自分の性別を個人の判断に委ねる色彩が濃い「性自認」という文言などを問題視し、慎重な議論を求めている。

 「理解増進のための取り組みや課題について復習したい」

 自民党「性的マイノリティに関する特命委員会」の高階恵美子委員長は25日、党本部での会合で、こう語った。

 法案は2021年5月に与野党の実務者間で合意したが、「性自認を理由とする差別は許されない」などの文言が加わったことで、自民党内で賛否が割れた。

 保守派は当時、「差別」の定義があいまいなことで訴訟が乱発したり、トイレや更衣室、お風呂などの利用で混乱が生じると懸念を示し、法案の国会提出は見送られていた。

 一方、世耕弘成参院幹事長は同日の記者会見で、「スケジュールありきで議論を拙速に進めると、逆に亀裂を深める」と語った。

 当事者団体からも慎重論が挙がる。性同一性障害の人たちでつくる「性別不合当事者の会」など4団体は先月、拙速な法案審議を避けるよう求める共同要請書を岸田文雄首相に送付している。

この問題をどうみるか。

自民党の山田宏参院議員は「『性自認』という言葉の定義すらはっきりせずに、法律の文言に入れるのは時期尚早ではないか。多くの人は、身体と心の性が違っていることは理解するだろう。ただ、『自分が考えたから男、女』というのでは、心の中の問題で証明しようがない。これを悪用することも懸念され、スポーツやトイレ、浴場などで、他の利用者が不安に陥ることにもなる。LGBTの側からも『性自認』にさまざまな意見がある。拙速に進めることは慎んだ方がいいと考える」と語った。

【私の論評】米英では、反LGBTの声も大きくなった昨今、周回遅れで拙速に法律を制定するな(゚д゚)!

米国の州レベルでは、反LGBT法が可決された13州、LGBT法令自体ない州が14州と米国の半分以上が「差別禁止法」がありません。国レベルで共和党の反対にあってLGBT法案を成立させられないバイデン政権に急かされて浮き足立つ日本の政治家の愚かさが恥ずかしいです。


米国大使が公明山口代表、維新の吉村知事、立憲の泉代表とも面談。当然、政権の官房長官、西村大臣などと精力的に会合。はては、欧州駐日大使と連名でLGBTの法整備を要求。バイデン夫人の岸田夫人への説得。異常です。日本は、米国の内政干渉に屈するべきではありません。

近年、LGBT政策推進の先進国と言われてきた米国では、多様性や差別禁止をといったポリティカル・コレクトネスを信奉する過激な急進リベラル派の活動により、価値観を押し付ける全体主義の様相が強まりつつありました。

これに反対する国民は対峙することになり、事実、社会の分断が認識されるようになり、文化戦争とまで言われるようになり、ついにはリベラルメディアまでもが行き過ぎたLGBT運動の弊害を直視し、客観的に精査する動きが出ています。

米英では教育者による行き過ぎたジェンダー教育の影響で、たった15分の医療診断で性適合手術に踏み込み、後に取り返しのつかない状況となり、医師らが訴えられ、集団訴訟となっていること等が報道され、大きな社会問題になっています。 

行き過ぎた性教育による子供のアイデンティティ形成に混乱が生じることを懸念した米国の10州では、既に誤りに気が付き、幼稚園や小学校低学年での性的指向や性自認に関する教育を禁止する州法を制定しています。

それらどころか、むしろ最近ではLGBTQに対する反発も強まっており、2017年1月時点ですら19の州で50件を超える「反LGBTQ法」が制定されました。LGBT理解増進を目的にしていたはずの条文が、かえって当事者に対するタブー意識を強めてしまうだけでなく、対立や分断を生じさせてしまうことになったのです。

現在平穏の中で生活している「そっとしておいてほしい」と考える性的少数者の当事者と国民全体を不幸にすることになってしまったのです。

米国では「差別を禁止する法律や条例を作ることを禁ずる州法」もあり、全米の31州では「スポーツの性区分は出生時の性とする」と州法で定めています。

東京五輪に出場したトランスジェンダー・アスリート

英国では、「トランスジェンダーであると主張した性犯罪者が女子刑務所に収監され、女性の囚人をレイプ」「性別違和を訴える思春期女子が急増」「思春期抑制剤や性交差ホルモンの投与、外科手術など性別適合治療を受けた後で健康被害を訴えたり、元の性別に戻す事例が現れる」など、LGBT問題、特に「性自認」をめぐるトラブルや事件が注目を集めています。 

スコットランドでは性別変更の要件を簡素化する法律が昨年末に可決されましたが、女性スペースが危機にさらされるなどの批判もあって英国政府が実効化を阻止しました。 

日本にも同様の軽薄な状況がマスコミの後押しで広がっていることを直視する必要があります。 

これに対して英国政府は1月17日、同法案は国内の性専用スペースに身震いするような影響を及ぼすとして、国王による同意を得ることを阻止しました。青少年の性同一性サービスに関する中間レビューによれば、定期的かつ一貫したデータ収集が行われていないため、子供たちがジェンダー・サービスによってたどる経路や結果を正確に追跡できないため、特定のイデオロギーの理論的観点からデータを解釈する危険性が高いといいます。

性の多様性と「性的自己決定権」を尊重する「包括的性教育」によって、子供たちの性転換手術が急増し、大混乱に陥った英国が今、「性自認」の扱いに苦慮している現状、小学生に性の多様性と「性的自己決定権」を教えた米国で「差別を禁止する法律や条例を作ることを禁ずる州法』が制定され、性教育をめぐって親と学校の対立が深刻化している現実を直視する必要があります。

LGBT理解増進法の審議は先送りされたとされましたが、復活の可能性も出てきました。「こども家庭庁」が発足し、秋までに策定する「こども大綱」に向けて審議が本格化します。子供の最善の利益・ウェルビーイングを第一に考える「こどもまんなか社会」の実現に向けた「性の多様性尊重」の法律や条例はいかにあるべきかについて、欧米の教訓を踏まえて、慎重に議論を尽くす必要があります。

法律を制定するにしても、しないにしても、拙速に決めるべきではありません。米英などで多数発生した問題も踏まえて、じっくり検討してからにすべきです。

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2023年4月25日火曜日

予算凍結を求める強硬論も 学術会議「民営化」に自民党内で意見噴出 八幡氏「当事者能力ない。今後は民営化の方向に進むのでは」―【私の論評】学術会議は設立当初から共産主義者らの巣窟、審議会制度が定着した現在無用の長物(゚д゚)!

予算凍結を求める強硬論も 学術会議「民営化」に自民党内で意見噴出 八幡氏「当事者能力ない。今後は民営化の方向に進むのでは」


 自民党内で、日本学術会議の「民営化」を求める意見が噴出した。同党の学術会議に関するプロジェクトチーム(PT)と、内閣第2部会の合同会議が24日に開かれ、岸田文雄首相が日本学術会議法改正案の今国会への提出を見送ったことに対し、批判の声が相次いだ。

 「法案審議をやるべきだった」

 PT座長の塩谷立元文部科学相は会議冒頭、こう苦言を呈した。

 学術会議は、年間約10億円もの血税が投入されながら、特定の政治勢力の影響力が強く、日本の「軍事・防衛研究」に反対してきた。このため、安全保障や経済成長の妨げになっているとの批判もあり、菅義偉前政権では「廃止・民営化」論が出ていた。

 PTは学術会議について、「政府から独立した法人格(民間法人化)への組織変更」を提言していた。これに対し、政府は「国の機関」として維持したうえで、会員選考に第三者を関与させて透明性を高める法改正案をまとめた。

 「かなり妥協した」印象が強い政府案だったが、学術会議は「会員人事への介入で独立性が損なわれる」などと徹底抗戦した。結果、岸田首相は改正案の今国会への提出見送りを了承した。

 学術会議を担当する後藤茂之経済再生担当相は24日の会議で、「民間法人とする案を俎上(そじょう)に載せて学術会議と議論し、早期に結論を得ることにした」と説明したが、出席者からは「学術会議の予算を凍結すべきだ」といった強硬論も飛び出した。

 PT事務局長の大塚拓元財務副大臣は「政府から独立しなくて済む政府案は、自民党側としては妥協案だ。それが駄目だというなら、法人化案に戻って設計することになる」と記者団に語った。

 今後、学術会議はどうなりそうか。

 評論家の八幡和郎氏は「あの程度の改革案を受け入れる話もできない学術会議の幹部は『当事者能力がない』ことを示した。政府が改正案の今国会提出を見送ったのは、左派の影響の強い他団体などに、『(学術会議の改革は)仕方がない』と納得させる思惑もあったのでは。政府は今後、予算を減らしたり、締め上げたりして、『民営化の方向』に進んでいくのではないか」と話した。

【私の論評】学術会議は設立当初から共産主義者らの巣窟、審議会制度が定着した現在、無用の長物(゚д゚)!

他の国々にも、民間の科学技術に関する組織や機関が存在する場合があります。これらの組織は、政府から独立して運営され、一般には非営利的な民間組織として活動することが多いです。

例えば、アメリカ合衆国には国立科学財団(National Science Foundation; NSF)という独立機関があります。これは政府の支援を受けて運営されていますが、直接的には政府の一部ではありません。また、イギリスには王立協会(Royal Society)や科学技術施設の運営を行うUK Research and Innovation(UKRI)などもあります。

これらの民間組織は、科学技術に関する政策立案や助言、研究の支援や促進、科学者のコミュニティの発展などを目的としています。政府との連携を持ちながらも、独立性や柔軟性を持つことができ、科学技術に関する専門的な意見を提供することができるという利点があります。

ただし、これらの組織にも、資金調達や政府との関係の調整などの課題がある場合があります。国によって異なるため、具体的な組織の形態や運営方法は異なるかもしれません。

以下に、日本の世界各国の日本学術会議のような組織について掲載します。


日中以外は、すべて政府から独立しています。財源は、日中独が政府です。独だけが、州政府からも支出があります。

1949年1月に発足した日本学術会議は、前年12月に選挙で会員210名を選出されました。しかし、その選挙においては共産党関係者や民主主義科学者協会(民科)の候補者が多く当選し、学術会議の3分の1に迫る66名ほどの勢力を形成しました。

これはGHQ(連合国軍最高司令部)内の共産主義者の後ろ盾を持っていたとされています。このような状況の中で、学術会議は「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」とする声明を出しました。

一方で政府は、1955年に新しいエネルギー源を目指して原子力関連の研究に乗り出しました。しかし、学術会議の会長や国立大学協会会長らは反対し、原子力委員会設置法に「原子力利用に関する経費には、大学の研究経費は含まない」との付帯決議をつけさせ、日本の原子力研究を制限することになりました。

その後も政府は学術会議への対抗策として、1956年に原子力委員会を設置し、同時に科学技術庁も設置しました。さらに1959年には科学技術会議が設置され、学術会議の中心議題は全てこちらに移され、1967年には文部省が学術審議会を設置し、学術会議の役割が縮小されました。1980年代には各省庁が審議会を設置し始め、学術会議の役割は限定的なものとなってしまいました。

原子力委員会の初会合に臨む(左から)藤岡由夫、湯川秀樹、正力松太郎、石川一郎、有沢広巳の各委員(1956年1月4日、首相官邸)

学術会議の会員を長年務め、副会長も務めた唐木氏は、「1969年から1977年にかけて学術会議は自己点検をし、改善すべきところは改善しようとしたものの、政府との全面的対決を選ぶべきではなかった」と述べています。そして学術会議は政府に対して妥協し、その後の年代には各省庁の審議会に取って代わられる形で役割を縮小していきました。

振り返ってみれば、日本学術会議は最初から共産主義者らの巣窟だったといえます。

学術会議側は、菅首相が6人を任命しなかったのは学問の自由の侵害だと言っていました。とんでもない間違いです。学問の自由とは研究の自由、発表の自由、教育の自由を指します。

ところが学術会議は研究機関ではないため研究も教育もしません。発表するのは学術会議の中での検討事項だけで、学問の自由と学術会議は全く無関係です。

菅前総理の「任命拒否問題」によって国民的な非難が政権に向けられるだろうという野党の期待もあえなく外れ、政権よりもむしろ日本学術会議のほうが、現在非常に厳しい状況に陥っています。

日本経済新聞社とテレビ東京は先月24〜26日に世論調査をした。岸田文雄内閣の支持率は48%で2月の前回調査から5ポイント上がった。内閣を「支持しない」と答えた割合は44%で、7カ月ぶりに支持率が上回りました。

首相のウクライナ訪問や日韓首脳会談などが岸田政権の支持率を押し上げたようです。ウクライナ訪問を「評価する」との回答は71%で「評価しない」の20%と差がつきました。政党支持率のトップは自民党の43%でした。2位は立憲民主党と日本維新の会がともに8%、支持政党がない「無党派層」は24%だった。2月はそれぞれ39%、9%、8%、27%でした。

さらに、共産党は統一地方選・後半戦の市区町村議選で、909議席を獲得しました。総務省のまとめなどによると、一般市議選で55議席減らすなど、2019年の前回選と比べて計89議席減らしました。統一選・前半戦の道府県議選・政令市議選に続く議席減で退潮傾向が続いています。

統一地方選でひとり負けだった共産党

4月23日に投開票された衆参5補選。千葉5区や参院大分選挙区では当選確実が日をまたぐほどの接戦が繰り広げられましたが、ふたを開けてみるとどちらも自民党が制する結果に。 

対する立憲民主党は全敗となり、大きく明暗が分かれました。日本維新の会が和歌山1区で議席を獲得して躍進するなか、立憲の存在感低下は危機的状況になっています。早期の解散総選挙も想定され、体制の立て直しが急務となるが、内部からは「打つ手がない」という声が漏れるなど、その憂いは深いです。

民意は、共産党、立憲民主党からは離れているようです。あっ、社民党を忘れていましたが、これは最初からないのと同じようなもので、ここでは述べません。

もうここまでくれば学術会議は民営化するのが一番でしょう。民営化すれば、学術会議のメンバーは、自分たちがいかに無用の長物なのか思い知ることになるでしょう。

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