2022年12月27日火曜日

騙されてはいけない、トランプは「これまで同様に強力」と有力世論調査員―【私の論評】日米のリベラルメディアの情報だけだと、日米の半分しかみえない(゚д゚)!

騙されてはいけない、トランプは「これまで同様に強力」と有力世論調査員

投稿日:2022年12月27日

トランプ大統領(現職当時)

<引用元:ワシントン・エグザミナー 2022.12.22>ポール・ベダード氏によるワシントン・シークレット論説
本コラムや他の場所で、ドナルド・トランプ前大統領に挑むロン・デサンティス知事などの浮上を大々的に宣伝する世論調査をご覧になっただろう。だが共和党では今のところ、2024年共和党大統領予備選挙への出馬を発表したのはトランプのみだ。

それらは、前大統領が多くの局面でやり玉に上げられながらも、倒れずにやり返している中で出た。

トランプと強いつながりを持つ2人の米国共和党トップ世論調査員は今、トランプが予備選挙に勝ってジョー・バイデン大統領を打ち負かすのに、引き続き「これまで同様に強力」なままである理由を説明している。

マクラフリン・アンド・アソシエイツを運営するジョン・マクラフリンとジム・マクラフリンは最近、前大統領がデサンティスに対して48パーセント対23パーセントで優位に立つことを示す世論調査を発表した。先月の選挙の時と同様の人気であり、バイデンには48パーセント対45パーセントでリードしている。

本コラムにおいて、世論調査のことは多く取り上げており、デサンティスの浮上について特に先月の知事再選の大勝後に多く強調してきた。最初の党員集会や予備選挙までまだ1年以上ある中、それらはみな、候補者が有権者の間でどのような状況であるかを提示しているが、決定的な言葉として受け取るべきではない。

マクラフリン世論調査について異なる点は、使用するサンプルについてもっと厳しいということだ。全く投票したことのない人を多く含む比較的大きなターゲットではなく、投票する可能性が最も高い人々にサンプルを絞ろうとしているのだ。

マクラフリンは、多くのメディアの世論調査における反トランプ偏向を避けようとしている。そして最後に、より最近の選挙の民主党・共和党比を再現している。

それは結果に違いを生じさせることがあると、マクラフリンは述べた。

「まず世論調査と発信元の品質に目を向けなければなりません。発表された世論調査のほとんどはリベラルの、反トランプメディアからのものであり、彼らはトランプへの投票者や献金者を抑え込むための偏向した調査を作り出すために、態度を急変させます。偏向メディアの世論調査の多くは投票しない人々で薄められており、選挙様相調査で行うような、実際に投票する人々を反映しません。また反トランプ的な質問をしてサンプルに偏見を抱かせます」とジョン・マクラフリンは述べた。

2016年と2020年の両方でも明らかだったように、世論調査はトランプの支持を少なく見積もることが多く、民主党を推進する。「有権者が2016年の『ヒラリー・ロック』」や2020年の『バイデン・ブルー・ウェイブ』の事を有権者が忘れたと彼らは思っているのでしょうか?」と2人はブログ投稿で問いかけた

「我々にとってはデジャヴの繰り返しです。2016年と2020年で学んだかもしれないことを別にして」と彼らは述べた。

Newsmaxのブログ投稿でも、次のようにいくつかのサンプル基準についてこの説明をしている。
「またもメディアがトランプ前大統領の支持者と献金者を落胆させ、抑え込むために世論調査を利用しています。なぜか?それは共和党エスタブリッシュメント、ワシントンD.C.エスタブリッシュメント、そしてメディアエスタブリッシュメントが、トランプを再び大統領にさせたくないからであるのは非常に明白です」

「サンプルを希釈したり、サンプルの25パーセントまで共和党を少なくしたり(2020年出口調査は共和党が36パーセントでした)、投票について質問する前に反トランプ的な主要な質問をしたりするこうしたメディアの世論調査と異なり、我々の調査は全体的にトランプ前大統領にとって朗報でした」
ジョン・マクラフリンは本コラムにこう付け加えた。「バイデン大統領と議会のリベラル派によるトランプに対する継続的な攻撃は、トランプの保守派支持基盤を活性化させています。結論として―トランプは依然として勝てる共和党候補であり、実際の代議員選挙への投票は1年以上先のことです」

彼らの最新調査では、トランプが依然として対立候補として有力であるだけでなく、先月の選挙以来、デサンティスへの支持が全米で4ポイント低下する一方で、トランプの支持が1ポイント上昇している。

他に追随を許していない。マイク・ペンス前副大統領は5パーセントと一桁に留まっており、最新調査では3位だ。

【私の論評】日米のリベラルメディアの情報だけだと、日米の半分しかみえない(゚д゚)!

上の記事をうらずけるような出来事もあります。米ドナルド・トランプ前大統領は、自身をモチーフにした公式NFT(非代替性トークン)デジタルトレーディングカード「CollectTrumpCards」を発売しました。

カードの価格は、「1枚たったの99ドル(約1万4千円)!」と宣伝していました。トランプ氏とゴルフができる権利などが当たる抽選付きで、45枚購入すれば同氏との夕食会に加われるそうです。

CollectTrumpCardsは15日にリリースされ、投機的な買いも集めてわずか数時間で完売しました。トランプ人気が衰えていれば、これだけ売れるはずもないと思います。

詳細は、以下の記事をご覧になってください。


イーロン・マスク氏

ご存知のように、米国ではイーロン・マスク氏がツイッターファイルとして、ツイッターが政府や官僚、メディアと連携して、トランプの不利になるような情報操作を行っていた証拠を次々暴露しました。ネット界隈では以前から言われていたことなので、今更驚くことではありませが、実際の証拠としてデータが開示されたのは重要なことです。それまで、関係者は、知らぬ存ぜぬで、事実を否定、隠蔽していました。

http://totalnewsjp.com/2022/12/11/musk-180/

この事実は、年明けから下院は共和党が握っている議会が動き出して、バイデン親子はもちろん、ペロシやヒラリーも糾弾され、2020選挙の不正が暴かれることにもなるかもしれません。

そうなると、2024の大統領選挙はトランプが返り咲く可能性も十分にあります。その場合、長年、世界統一政府を目指してたグローバリスト、民主党が、またトランプに足を引っ張られることになって、なりふり構わず動き出すかもしれません。

今後米国がどのような事になるのか、わかりませんが、このまま民主党が不正を働き続けると、ほんとに米国は腐り果てて、自由も民主主義も失われ、完全に崩壊し、それは現在の世界秩序の終焉になるかもしれません。

ただし、隠蔽されてた悪事が暴露されたということは、そう言った隠蔽工作が、できなくなるので、エスタブリッシュメント(米国支配層)にとっては動きづらくなるでしょう。

2022年12月15日15時(米国時間)にトランプ氏は、重大な発表をしました。先にあげたトレカの発売も発表しましたが、それと同時に重大な発表もしています。

トランプ氏は、「今日、私は左翼の検閲体制を打ち砕き、全ての米国人のために言論の自由の権利を取り戻す計画を発表する」と宣言し、「堕落した報道機関の邪悪な集団が、米国民を操り黙らせるために共謀していたことが、衝撃的な報道で確認されている。彼らは選挙から公衆衛生に至るまで、あらゆる重要な情報を抑圧するために協力してきた。検閲カルテルは解体され、破壊されなければならない」と述べています。

これはイーロン・マスク氏がTwitter社を買収し、2020年当時の大統領選挙で何が起きていたか、Twitter社の経営陣がトランプ氏の自由な発言の場をTwitterのプラットフォームから締め出した犯罪的行為の証拠の数々を、先にもあげたように、マスク氏が最近公にした事実を指していると思われます。

そしてトランプ氏は、次の大統領選挙で勝利した時には、「私の就任後数時間以内に、私は大統領令に署名し、連邦省庁がいかなる組織、企業、個人と共謀して、米国市民の合法的な言論を検閲、制限、分類、または妨害することを禁止する。そして私は、国内の言論に誤報や偽情報のレッテルを貼るために連邦政府の資金が使われることを禁止する。そして、国内検閲に直接的、間接的に関与した連邦官僚を、国土安全保障省、保健福祉省、FBI(連邦捜査局)、司法省、誰であろうと特定し、解雇するプロセスを開始する」と宣言しています。

さらに、「私は司法省に対し、絶対的に破壊的で恐ろしい新しいオンライン検閲体制に関わる全ての関係者を調査し、特定されたあらゆる犯罪を積極的に起訴するよう命じる」と述べ、「これには、連邦市民権法、選挙資金法、連邦選挙法、証券法、反トラスト法、ハッチ法、その他多くの潜在的な刑事、民事、規制、憲法違反の可能性がある」と指摘しています。

他にも多く語っていますが、こういうトランプ氏の発言内容を見ますと、米国は2020年の大統領選挙において、完全に言論の自由を失っていた可能性があるということであり、検閲活動、情報統制によって、全体主義国家と変わらない不公平さと差別性によって、誤報や偽情報の方がまかりとおる犯罪的な国家に陥っていたかもしれないのです。

言論の自由を失えば、もはや、健全な民主主義国家は成立しません。そのような意味で、現在、米国は民主主義国家とは言えない状態であり、専制的、統制的、抑圧的な全体主義の国家に近づいている可能性があるのです。

言論の自由を取り戻そうとするトランプ氏の真摯(しんし)な挑戦は、真の民主主義を打ち立てるための戦いであると言えますし、米国には今なお、それを信じている国民も多いのです。

このブログでは、以前から主張しているように、米国のメデイアのうち、大手新聞はすべてリベラル系であり、大手テレビ局は、FOXTVを除くすべてがリベラル系です。リベラル系メデイアがトランプ氏を悪く言うのは当然のことです。

メディア・バイアス・チャート クリックすると拡大します

大手メデイアがリベラル系であるということは、無論世論はリベラル系の価値観でかたちづくられることになります。この価値観は米国では、社会のありとあらゆるところで、幅を効かせ、職場や学校、地域社会でも当然のこととされ、この価値観に反する保守派は、変わり者か、物の道理をわきまえない人とみられてしまいます。

そのような社会において生まれた、GAFAやtwitterもリベラル系の価値観を有するようになったのは、無理からぬところもあると思います。ただし、twitterが、トランプの不利になるような情報操作を行うようなことは、許されることではありません。しかし、現実にはそれが行われていたのです。GAFAにもその疑いがあることは、否定できません。

そうなると、保守派は心の中で思っていることを公言できず、口を閉ざしてしまいます。世論調査などでも、自分の考えを正直には出さないようになってしまうでしょう。そのため、世論調査ではこのようなバイアスを取り除かなければあまり意味がなくなってしまうのです。しかし、米国の少なくとも半分は保守派であり、だからこそ、トランプ氏をはじめ共和党の大統領も誕生しています。

しかし、日本のメディアはこうした米国リベラル系メデイアの報道をほとんどそのまま日本国内で垂れ流しているだけです。こうした報道だけを見聞きするということは、日本でいえば、産経新聞は一切読まず、朝日・毎日・読売のようなリベラル系新聞の情報だけを読んで、日本を判断しているようなものです。日本でもリベラルメディアだけの情報を見ているのは、日本の一部だけをみているようなものであり、偏るのは当然です。

そのような姿勢では、米国の人口のおそらく半分は存在する保守系は無視するということになります。それでは、米国の半分しかみていないことになります。

日米ともにリベラルメディアだけをみていれば、日米の半分しかわからない

どんな人物にだって、毀誉褒貶があります。トランプ氏にだって、良いところと悪いところがあるのは当たり前です。しかし、米主要メディアと日本主要メデイアだけをみていると、トランプ氏の良いところはみえてきません。

その状態だと米国の真の姿は見えてきません。時には、米国の保守メディアの情報も見聞きして、正しい姿をみるべきと思います。

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2022年12月26日月曜日

岸田首相の失策で、アベノミクスは潰えた…ついに「失われた20年」が再来する予感―【私の論評】増税危機はかなり切迫!財源確保法案が来年国会に出されることが決まれば、その時点で試合終了(゚д゚)!

岸田首相の失策で、アベノミクスは潰えた…ついに「失われた20年」が再来する予感
髙橋 洋一 

萩生田氏はまだ粘っているが…

 先週の本コラムで、防衛増税はほぼ決まりかけており、一縷の望みは、財源確保にかかわる法案の扱いだと述べた。その法案について、政府(岸田政権・財務省)は次期通常国会に提出予定としている。

現物はこちらからご覧になれます

 実施時期は確定しないが、この法案に増税措置が盛り込まれるはずだ。次期通常国会の提出が決まれば、防衛増税は確定する。

 ただし、萩生田政調会長はまだ頑張っている。12月25日、フジテレビ「日曜報道 THE PRIME」に出演し、防衛増税について「明確な方向性が出た時には、国民に判断してもらう必要も当然ある」と述べ、衆院の解散総選挙で信を問うべきだとの姿勢を示した。

 5年後に1兆円超を増税でまかなう方針について、「必ずしも1兆円でなくてもいいわけだから、しっかり見れば、まだまだ使える金はあるのではないかと思うので、来年、深掘りしていく」と述べ、具体的には「歳出改革の努力、あるいは特別会計など」を挙げた。

 この防衛増税は、アベノミクスの方向を大きく転換させることになる。安倍・菅政権では、民主党政権で決めた消費増税以外は、極力増税を回避してきた。本コラムにも書いたが、新型コロナ対策の100兆円予算も、政府・日銀の連合軍(安倍首相の言葉)により、増税せずに行った。

 ここで、アベノミクス10年を振り返っておこう。

 アベノミクスの最大の成果は、雇用の確保だった。筆者は安倍元首相と話す機会が多かったが、マクロ経済政策について、最低ラインは雇用の確保、その上に所得が高ければいいといつも説明した。そのために、財政政策と金融政策を使って、GDPギャップを解消しインフレを加速しない失業率(NAIRU)を目指すというシンプルなものだ。そうしたマクロ経済を表する筆者の基準もシンプルで、雇用の確保が出来れば60点、その上に所得の向上があれば40点を追加して100点満点とするものだ。

 アベノミクスでいろいろなことを言う人がおり落第点という人も少なくないが、その評価基準について筆者にはさっぱり分からない。筆者は大学教授をしているが、学生の評価について、100満点でつける。その評価基準はどこの大学でも同じで予めシラバスで公開しているが、筆者の場合、授業点(出席点)が50点、定期試験が40点、レポート提出点が10点としている。この基準では、万が一定期試験が0点であっても、まじめに出席し正しいレポートを提出していれば、60点を取ることができ、及第(60点)となる。
 
 アベノミクスの方向性が大転換

 さて、アベノミクスを採点すると、安倍政権での雇用は歴代政権で最高である。雇用は失業率低下と就業者数で測れるが、安倍政権は400万人以上の就業者数増、1.3%の失業率低下だった。こうした点から見れば、雇用は60点満点だ。


 所得の観点ではどうか。所得は実質GDP成長率で計るが、同時にインフレ率(名目GDPと実質GDPの比であるGDPデフレータ)をみておく。安倍政権は、実質GDPは0.4%、インフレ率は0.7%であり、高度成長期の歴代政権と比べると見劣りがする。戦後GDP統計のある鳩山政権以降の31政権において、安倍政権の実質GDP成長率は25位、インフレ率は2%から乖離でみると7位。


 いずれにしても、戦後政権での安倍政権のGDPパフォーマンスはほぼ中位であるので、40点満点中20点である。

 したがって、安倍政権の評価をすれば、雇用60点、GDP20点で、計80点だ。

 なお、日本がデフレに陥った1995年以降の13政権の中では、安倍政権は実質GDP成長率で8番目、インフレ率では1位(安倍政権以外はすべてマイナス)だ。安倍政権は、デフレ経済にあって唯一デフレ脱却しかけた政権だった。

 これが、数字から見たアベノミクスの評価である。

 冒頭の防衛増税で、アベノミクスの方向性が違ってきた。防衛増税については、たかだか1兆円なので、防衛国債の範囲を拡大することか埋蔵金(外為特会や債務償還費を活用)でどう考えても回避できる。財務官僚がどうして増税したいとしか考えられない。

 これで、思い出すのが、東日本大震災後の「ホップ、ステップ、ジャンプ」論だ。復興増税をホップとして、ステップ、ジャンプで二段階の消費増税を行う財務省の構想だった。実は、それを2011年6月20日の本コラムで暴露した。実際にはそのとおりになった。

日銀が現した馬脚

 今回も、防衛増税はホップであり、ステップ、ジャンプで2段階消費増税を財務省は狙っている。そして、消費税率は15%になるだろう。そのためには、ともかく「増税」したのだ。

 他方、金融政策でもアベノミクスの真逆の政策が実施されようとしている。

 日銀は、20日容認する長期金利の上限と下限を0.25%から0.5%程度まで拡大した。会見で、黒田総裁は、事実上の利上げだとの指摘に対し、利上げではないと強調した。また、金融緩和は維持しているとし、景気にプラスとした。

 市場の反応は、長期金利が0.2%程度上昇し、為替は5円程度円高になり、株価は800円程度下落した。黒田総裁は利上げでないと言ったが、市場の反応は長期金利の急騰だった。黒田総裁は9月26日の会見で、長期金利の上限引き上げは利上げに当たるのかとの質問に「それはなると思う。明らかに金融緩和の効果を阻害するので考えていない」と明言していたので、そのとおりだった。

 その結果、急な円高になったが、黒田総裁は急な為替変動は好ましくないといっていたが、今回の円高は急な為替変動だ。

 日銀事務方の説明は、イールドカーブの歪みの是正だ。

 しかし、イールドカーブを是正して「金融緩和」するなら残存8~9年の国債を買えばいいだけだ。日銀はこのあまりに稚拙な説明資料により、実際は「利上げ」したかった馬脚が現れた。いくら黒田総裁が利上げでないといっても、変動住宅ローン金利は既に上がっており、借入者の金利支払いはもうすぐなのでそろそろ誰の目にも分かるだろう。

 また、10月24日付けの本コラムで書いたように、円安は日本経済全体のGDP押し上げ要因だったが、円高になったので、株価が急落したのは当然だ。

 円安で企業の経常利益は過去最高となっており、円高が景気悪化につながるだろう。生産拠点の国内回帰の動きにも冷や水を浴びせかねない。

 今後、住宅ローンの金利も上昇し、企業が融資を受ける条件も厳しくなるだろう。一方で、銀行など金融機関の経営には恩恵が大きい。今回の事実上の利上げは、雇用、GDPなどマクロ経済よりも金融機関を優遇した政策だといえる。

 いずれにしても、市場から見れば、黒田総裁は従来の発言を翻した。しかし、これだけの政策方向の転換について、黒田総裁だけの独断とも考えにくい。岸田首相の了解があったと考えるのが自然だ。

 いよいよアベノミクスから大きく舵が切られた。筆者の予感は、再びデフレ、失われた20年の再来だ。

髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】増税危機はかなり切迫!財源確保法案が来年国会に出されることが決まれば、その時点で試合終了(゚д゚)!

日銀は、20日容認する長期金利の上限と下限を0.25%から0.5%程度まで拡大したことについては、イールドカープコントロールの一環であると説明しており、これは利上げではないとしており、高橋洋一氏以外のいわゆるリフレ派の方々の中にも、そのように解釈している人もいます。

ただ、これは、確かに高橋洋一氏が主張するように、まったく実施する必要のない措置でした。日銀は、今まで通りの金融緩和を継続すべきでした。

高橋氏としては、半端ではない危機感を抱いているのだと思います。上の記事には、「今回も、防衛増税はホップであり、ステップ、ジャンプで2段階消費増税を財務省は狙っている。そして、消費税率は15%になるだろう。そのためには、ともかく「増税」したのだ」という指摘があります。

これについては、高橋氏がABCテレビに出演した際にも語っています。

嘉悦大の高橋洋一教授(67)、京都大学大学院の藤井聡教授(54)は24日、レギュラー出演するABCテレビ「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」の特番「わ~るいどカップ2022 ミカタオールスターズが語ーるSP」に出演。消費税15%の可能性について言及しました。下は、その番組で用いられたテロップです。


テロップ一番下の、高橋洋一氏の発言を御覧ください。防衛増税確保法案が出てしまうと、増税が確定しまい。その時点で、後から何を言おうと、どのような手段を講じても、試合終了になってしまうのです。

自民・公明両党は先日、防衛費増額の財源をまかなうため法人税、所得税、たばこ税の増税が盛り込まれた2023(令和5)年度の税制改正大綱を決定しましたが、元財務官僚の高橋氏は「今のところ、増税の話は自民党の文書でしか書いていない。本当にゲームセットになるのは法案が次の通常国会に出たら。財源確保法案っていうのを用意している」と今後の流れを解説しました。

来年の2023年1月27日からはじまる通常国会に防衛増税確保法案が出されることが決まれば、それでほぼ防衛増税が決まり、その後は消費税増税もいずれ15%は決まりになるだろうというのが高橋洋一氏の見立てです。

これを受け、藤井氏は「今回増税になると法人税と所得税が増税になる。これが本当に通ると、確実に消費税の増税を岸田政権は仕掛けてくる。15%になるとも言われている」と指摘。高橋氏も「東日本大震災を思ってください。復興増税があったでしょ?あれがホップ。その後にステップで消費増税。もう1回狙ってるんですよ」と話し、「多分、12%とかやって、そのあと15%」と防衛増税後の消費増税を予測しました。

番組MCの東野幸治やスタジオパネラーのほんこん、「ジャニーズWEST」中間淳太らが「15%?」と唖然とするなか、藤井氏は「その布石を止めるために、今の局面が極めて大事」と強調していました。


まさに、今の局面が大事なのです。「2023(令和5)年度の税制改正大綱」にもとづく、財源確保法が、次の通常国会にだされ、その法律が通ってしまえば、人税、所得税、たばこ税の増税が本決まりになり、そこから先は、どう頑張っても取り返しがつきません。

これは、三党合意により決まった、消費税増税法案を思い起こさせます。

三党合意(さんとうごうい)とは、2012年の民主党政権(野田内閣)下において、民主党、自由民主党、公明党の三党間において取り決められた、社会保障と税の一体改革に関する合意です。

2012年(平成24年)6月21日に三党の幹事長会談が行われ、三党合意を確約する「三党確認書」が、作成されました。この三党合意にもとづき消費税増税法案が国会で審議し、成立したのです。まさに、「2023(令和5)年度の税制改正大綱」は、この三党合意のような働きをして、今のままだと、防衛増税は決まってしまいそうなのです。

三党合意とその後の消費税増税法案が決まったということがあったため、後に安倍首相は、増税を2度も延期しましたが、結局総理大臣在任中に8%と10%の増税をせざるを得なかったのです。一旦決まった法律を覆すことは、本当に難しいことなのです。

だかこそ、高橋洋一氏はかなり危機感を感じており、日銀の実質上の利上げに関しても大反対しているのでしょう。

このブログでは、英国のジョンソン、トラス両首相の辞任という大政変を例にとり、日本でも増税反対に抗議して、閣僚が自ら辞めるということをすべきではないかということを主張しました。

ただ、このときは、ここまで増税危機が切迫しているとは思っていなかったので、安倍派閣僚が4人がひとりずつ辞任して、最後の最後にそれでも、岸田総理が翻意をしなかった場合、閣僚ではないものの、萩生田光一政調会長が辞任するという具合に進めれば良いと思っていました。

ただ、状況の切迫具合からみると、それでは甘いかもしれません。岸田文雄首相が26日、秋葉賢也復興相を事実上更迭する方針を固めました。これは年内に「閣内の火種」を消し、来年1月下旬に召集される通常国会の論戦に向けて仕切り直しを図るためとみられます。

これで、人事の岸田といわれる、岸田政権の閣僚の辞任は四人目となります。これとほぼ同時に、安倍派閣僚四人も防衛増税ならびに消費税増税に反対し、増税するなら、総選挙で国民の信を問うべきと主張して、辞任すべきではないかと思います。そうなると、秋葉氏とあわせて、5人が辞任というこになり、岸田政権への打撃は半端なものではなくなります。

それこそ、国会は、防衛費財源確保法案の審議どころでなくなります。これは、かなりのインパクトがあり、野党はこれに大反発して、国会はこの話題が中心となり、マスコミもこの話題でもちきりとなり、財源確保法案のことなど、忘れさられたような状況になるでしょう。当然審議は、後回しにされることになります。

岸田首相は、5人の閣僚がほぼ同時に辞任ということになれば、内閣改造だけでは国民も野党も納得せず、解散総選挙を迫られることになるでしょう。それでも、増税の看板を下げることがなければ、それに今更下げたとしても、大敗を喫するのは目に見えています。それでも、与党の座を譲ることにはならいないとみられますが、岸田首相は辞任せざるを得なくなるでしょう。

その後の総裁選びが焦点になります。ポスト岸田の有力候補は、茂木氏、河野氏、林氏とされ、茂木氏が有力とされていましたが、これも番狂わせが起こりそうです。ここで、掲載すると、長くなってしまいそうなので、また機会を改めて掲載しようと思います。

次の総裁はマクロ経済を理解する人になっていただきたいです。いずれにせよ、現在は切迫した状況にあるのは、間違いありません。皆さんも、大反対しましょう。

そうして、有力政治家に陳情しましょう。私自身も、最近甘利氏にツイッターで陳情しました。それで、行動や考え方はかわりはしなかったようですが、このようなことをかなり多くの人が実施すれば、ある程度の影響は与えられるものと思います。最近の政治家は、SNSをかなり気にしているようです。

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2022年12月25日日曜日

岸田首相が秋葉復興相を〝切り捨て〟 年内交代を検討 政権運営「内閣改造」より「解散総選挙」が8割以上、夕刊フジ緊急アンケート実施中 厳しい声相次ぐ―【私の論評】安倍派議員は、令和維新を目指せ(゚д゚)!

岸田首相が秋葉復興相を〝切り捨て〟 年内交代を検討 政権運営「内閣改造」より「解散総選挙」が8割以上、夕刊フジ緊急アンケート実施中 厳しい声相次ぐ


 岸田文雄政権が、「政治とカネ」問題がくすぶる秋葉賢也復興相を早期に交代させる方向で検討に入った。これまで、1月召集の臨時国会前の年明けに実行するとの見方があったが、年内の交代や内閣改造も含めて最終判断する。ただ、夕刊フジでは現在、編集局公式ツイッターで、政権運営を問う緊急アンケートを実施しているが、岸田政権には「内閣改造」より、「解散総選挙」を求める声が8割以上に上っている。

 「目先を変えるのも、局面や流れを変える意味では良いかもしれない」

 二階俊博元幹事長は23日、TBSのCS番組収録で、岸田首相による内閣改造の検討について、こう語った。複数の自民党幹部も、秋葉氏について「代えた方がいい」「年内交代も選択肢だ」との見方を示した。

 岸田首相は年明けに、欧米のG7(先進7カ国)訪問を検討している。通常国会で与党は2023年度予算案の早期成立を目指す。秋葉氏だけでなく、審議の支障となりかねない要素は早めに〝切り捨てる〟との考え方だ。

 しかし、国民はこれを望んでいるのか。

 夕刊フジは現在、週明け26日朝を期限に、岸田首相の政権運営について緊急アンケートを実施している。24日午前7時時点で、「内閣改造」を求める回答は約15%で、8割以上が「解散総選挙」で国民の信を問うよう求めている。「現状維持」は約4%だった。

 公式ツイッターには厳しい声が相次いでいる。

 「重要な防衛費増額で突然『増税』を決めた。『増税しない』と嘘をついた」「ムダな予算の削減、防衛国債発行という意見に聞く耳がない。選挙で審判を受けるべき」などの意見が寄せられた。

 さらに、日銀が金融政策決定会合で、大規模緩和を修整する方針を決め、「事実上の利上げ」に踏み切ったことを批判する声もある。

 「増税、利上げ。国民を苦しめることばかり」「景気が沈んで賃上げできるのか。これで『資産倍増』とは意味不明だ」

 果たして、岸田首相は体制を立て直せるのか。

【私の論評】安倍派議員は、令和維新を目指せ(゚д゚)!

自民党の萩生田光一政調会長は25日、フジテレビの番組で、防衛費増額の財源を確保するため増税する時期を決定した際は衆院解散・総選挙で信を問うのが筋だとの認識を示しました。「財源を増税で賄うことは7月の参院選で約束していない」と指摘した上で、「明確な方向性が出た時は国民に判断してもらう必要も当然ある」と語りました。

政府・与党は防衛費増額の財源として法人税など3税を充てる方針を決めました。ただ、増税の実施時期は「2024年以降の適切な時期」として、決定を先送りしています。

萩生田氏はまた、歳出改革などで増税額の縮減に努める考えを強調した。国債の「60年償還ルール」を見直して償還費の一部を財源に充てる案にも改めて触れ、期間の80年への延長に言及しました。

萩生田政調会長がこのように主張刷るのは、当然です。以前このブログにも掲載したように、当面増税をしないで、防衛費増をする具体的な方法は、羽牛田政調会長がいう国債の「60年償還ルールの見直し」以外にも、あります。それについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
防衛増税で日本を守れるのか 平時の経済を弱体化させれば…有事の前に国が倒れてしまう 鳴りをひそめていた財務省でうごめく「増税虫」―【私の論評】防衛増税賛成派と財務省官僚は、そもそも資本主義を理解していない(゚д゚)!

この記事の中で、「安全保障・未来保障」危機突破5か年予算の現実的な財源として以下をあげました。

①特別会計剰余金(円安効果で外為特会増加分約30兆円)
②一般会計剰余金(昨年度は6.3兆円)
③自然増収(昨年度は9.5兆円)
④国債60年償還ルール撤廃(毎年の国債費16兆円が浮く)

 これで当面増税などすることなく、防衛費財源にすることができます。これは、いわゆる積極財政派から財政再建派など対して、増税の必要がないことを説得する上では、模範解答ともいえるものです。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では資本主義の基である貨幣循環理論からいえば、増税は財源にすらならないことも掲載しました。以下に上の記事から、さらに一部を以下に引用します。

防衛支出の財源として、増税が検討されています。しかし、貨幣循環を理解していれば、防衛支出という政府の需要こそが財源、すなわち「貨幣を生み出す源泉」であることがわかるでしょう。むしろ、税は、安定財源どころか、財源(貨幣を生み出す源泉)にすらなりえないのです。

資本主義の前提である、貨幣循環論を理解しないということは、明治維新でなぜ近代的な銀行と、日本銀行(中央銀行)が創設されたのかも理解できないということです。要するに、経済に関しては、明治時代よりも前の江戸時代の考えであるということです。

江戸時代は1868年に終了しています。今から、150年以上も前です。岸田総理、財政再建派の議員、財務省も資本主義を理解せず、経済に関しては150年以上も前の幕藩体制の中の、将軍や幕臣と同じような考えを持っているということです。

数年や、数十年のギャップなら、いずれ埋め合わせもできるでしょうが、150年以上のギャップはあまりに隔たりすぎです。

江戸時代の将軍や幕臣に対して、現在の貨幣循環論を論じたとしても、何を言っているのか誰も理解しないでしょう。坂本龍馬や中岡慎太郎のような特殊な人達は理解していたでしょうが、彼らが将軍や幕臣に説明しても全く理解できなかったでしょう。

中岡慎太郎を中心とした幕末の志士たちの人物相関図

であれば、貨幣流通論など説いても、無駄であり、先にあげた財源①〜④を根拠として、当面防衛増税を阻止するしかないでしょう。

そうして、明治維新のように財政ならびに日銀の金融政策も含む、令和財政維新をするしかないと思われます。

その主体は、やはり安倍晋三氏の遺訓を引き継ぐ、安倍派議員たちでしょう。これらが中心となり、他の無派閥の議員や他派閥の一部の議員も巻き込んで、令和財政維新を実現すべきです。

萩生田光一政調会長が、岸田政権が防衛費増額の財源を確保するため増税する時期を決定した際は衆院解散・総選挙で信を問うべきと主張するのは、筋が通っています。

もし、岸田政権が増税を決めて、防衛増税法案を国会で審議するという挙に出た場合は、安倍派は座して死を待つよりは、令和財政維新を起こすべきです。実際、岸田政権が、防衛増税法案を国家で審議できるような状況を整えたとすれば、先の内閣改造で、統一教会問題を利用して、安倍派外しの挙に出た以上の今度は安倍派粛清の挙にでることは十分に予想できることです。

安倍派の対応については、英国の最近の政変を参照して、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

財務省が完勝した防衛増税、こうすれば「大逆転」でひっくり返る―【私の論評】英国の大政変のように、日本でも安倍派が地獄の釜を岸田政権に向けて開けるときがくるか(゚д゚)!
安倍晋三元首相の葬儀に参列した儀仗隊

安倍派閣僚は、岸田首相を翻意させるために、辞任するという手もあります。いきなり四人が辞任するまでは必要ないですが、まず防衛増税に反対という意見表明をした上で、まずは一人辞める。

それでも岸田首相か翻意しな場合は、もう一人、また一人と辞任するのです。これを実施すれば、岸田内閣はかなりの窮地に追い込まれます。これに同調して、高市氏のような無派閥や他派閥の閣僚の中にも辞任するものがでてくるかもしれまん。

それでもどうしても、岸田首相が翻意しないというのなら、最後に萩生田政調会長が辞めても良いと思います。そうなると、岸田政権は、国会で野党から追求され、党内も蜂の巣をつついたような状況になるでしょう。マスコミも連日報道するでしょう。

国民の信を問うために、解散総選挙をせざるをえなくなるでしょう。しかし、増税の意思を翻意しないままで、選挙をすれば、大敗する可能性も濃厚になります。

そうして、岸田総理が翻意をして、増税をとり下げれば良いですが、そうでなければ、安倍派は国会では増税法案に対しつつ、他派閥や他党の協力もとりつけて反対し、法案を潰すべきです。

そうして、安倍派いっときの政変に満足することなく、岸田総理が翻意しようがしまいが、その後も改革を続けるべきです。

その改革の方向性として、親日家でもあるドラッカー氏の考えが参考になります。 それについてもこのブログに掲載したことがありますので、その記事のリンクを掲載します。

ただ事ではない財務省の惨状 同期ナンバーワン・ツー辞任 ちやほやされてねじ曲がり…―【私の論評】統治と実行は両立しない!政府は統治機能を財務省から奪取せよ(゚д゚)!


詳細は、ここで解説すると長くなるので、この記事を是非ご覧になってください。

一言でいってしまうと、このブログで述べたのは、ドラッカー氏の見解を参考にしつつ、政府は日本国を統治する機関であって、実行をする機関ではないので、実行する機関はすべて政府の外に出し、非営利・営利民間企業に任せるようにすべきという主張です。

その背景にあるのは、統治と実行は根本的に異なる機能であり、これを同一の組織て行うと、絶望的にパフォーマンスが低下するという経験則です。

そのため、現代の大企業では本社と子会社というように、分離されるようになり、本社は全体の統治機構を担い、小会社は実行を担うような形態となっています。

それを政府機構にも、適用すべきという主張です。財務省などの各省庁のほとんどは、政府の外に出し、民間の営利・非営利企業に任せます。従来各省庁に中途半端に存在した統治に関する機能は、政府に取り込み、政府はもっぱら統治に専念するという構想です。

このようにすれば、財務省の大部分も政府の外にでて、実行の仕事のみを担うことになり、政府内で、巨大な政治グループのように振る舞うことは不可能になります。

そもそも財務省ではなく、財務実務請負会社になります。この会社が、政府が何度もまともな財務を実行せよと警告したとしても、それができなければ、政府は財務請負会社を変更するということになるだけです。他の省庁も同じことです。

無論地方自治体も同じことで、役所が持っていた、統治の機能を知事や市長に統合したうえで、知事や市長とそのスタッフは統治に専念し、他は外に出し、民間の営利・非営利組織に請け負わせるようにするのです。

これは、日本ではあまり例がないので、ほとんど理解されませんが、米国などでは、銀行や建築会社やその他のスタッフによる、非営利団体が貧困層の住宅を、就職支援等も包括した包括支援バッケージとして提供したりしています。市役所などは、これを管理というか、こうした団体を統治しています。

これらは、すでに民営化という形で部分的に実行されています。しかし、日本が実行部分をすべて外に出すということを実現し、政府が統治に集中するということを実現すれば、世界初ということになります。大改革です。

政府は元々国民から選挙で選ばれた議員で構成されますから、民意を完全に無視するような政府は選挙で淘汰することができます。そうして、政府の実行部分である請負会社も民営であることから、民意を無視するような行動をしていれば、政府から切られることになります。

これによって、いままで世界中で政府の非効率ということがいわれてきまたが、それが劇的に改善されることになります。だからといって、何もかも改善・改革されて良くなるというわけではありませんが、それにしても政府や地方自治体のパプォーマンスは格段にあがることは間違いありません。

ただ、こうした改革には、旧幕臣や旧藩藩士らが明治維新に反対したように、財務省をはじめとした各省庁、それに頭の古い野党、自治労などは、マスコミも大反対するでしょう。これによって、彼らは革新を推進する母体などではなく、革新を妨げる守旧派であることがはっきりします。そのため、数年でこれを実現することは無理かもしれません。10年以上の年月を要するかもしれません。

それ以前に省庁再編制などを行うことが現実的ですが、それにしても最終的には何を目指すかをはっきりさせた上での改革を実施すべきです。それなしに、省庁再編を行っても、改革にはならないでしょう。省庁再編により、財務省を分解したにしても、財務省は他省庁を植民し、結局元通りになるということも考えられます。

しかし、日本が最初に令和財政維新を実現すれば、他の先進国も右に倣えをする可能性もあり、そうなれば、世界中で政府の非効率の問題が解消されることになります。これでますます、全体主義国家と民主主義国家の違いが際立ち、民主主義国家の強さがはっきりすることになります。

自民党安倍派は、安倍元総理の遺訓を守るだけではなく、この次元まて目指していただきたいものです。この次元の改革となれば、もはや財政の改革だけではなく、統治機構の抜本的に改革になるので、令和財政維新ではなく、令和維新と呼んだほうが相応しいです。そうなれば、令和維新は、無血革命であることと短期でなされたことで世界の評価が高い明治維新よりもさらに、世界の多くの国々の人々によって称賛されることになるでしょう。

そうして、ちまちましたことが嫌いで、大括りて物事を考えることが好きだった、安倍晋三氏も大満足でしょう。そうして、ドラッカー氏も生きておられたら、日本をさらに高く評価することでしょう。

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2022年12月24日土曜日

今こそ民主主義の「強さ」について語ろう―【私の論評】全体主義国家が、政府の一声で何でも短期間に成し遂げられると思い込むのは幻想に過ぎない(゚д゚)!

今こそ民主主義の「強さ」について語ろう

岡崎研究所


 12月1日付のワシントン・ポスト紙に、同紙コラムニストのファリード・ザカリアが、「民主主義の弱さについては、もう十分だ。その強さについて語ろう」と題する論説を書いている。

 過去2~3 カ月、我々は民主主義の脆さを心配してきた。米国、ブラジルからスウェーデン、イタリアまで、民主主義は挑戦に直面していると思えた。しかし事実はこれらのすべての事例で、選挙は最も非リベラルな勢力の多くをおとなしくさせる効果を持ち、少なくとも今は中道が勢力を維持した。一方、我々は、その間、世界最強の独裁国で、深い構造的弱さの証を見ている。

 最も衝撃的な例は中国である。抗議の異常な波が権力に対決している。問題の中心にはコロナ政策を変えようとしない中央政府がある。これは政策決定が閉鎖的で上意下達で説明責任がない独裁制に固有の問題である。

 ロシアでは、同じように閉鎖的で無反応な政策決定がどう破局につながるかを見た。プーチンの戦争の結果、ロシアは孤立し、貧乏になっている。プーチンは最近、予備役30万人を召集した。数十万のロシア人は祖国を離れた。目標もなくコストの高い戦争なので、常に反対がある。

 イランでは、国をイデオロギーで支配する神権専制政治が見られる。イランの統治エリートは、イスラムの原理的信条は執行されなければならないと信じている。    

 対称的に、自由民主主義は国民にイデオロギーを押し付けない。人間は自分自身の幸福のあり方を選択する自由を持ち、他の人もそうであるとの深い信条がある。

 米国は、個人の権利を保護し、指導部の定期的変更を可能にし、宗教的ヘゲモニー(覇権)を防止し、大きな変化に適応できるために十分に柔軟な構造を作り上げた。

 民主主義はそれなりに壊れやすいが、今はその強さを考えるいい時である。第二次世界大戦時の英国の首相チャーチルは、民主主義は最悪の政府の形態である、ただし他のすべての形態を除外すればとの信条を持っていたが、彼の正しさは証明済みである。

*   *   *

 このザカリアの論説は時宜を得た良い論説である。

 最近、論説が指摘するように独裁制(専制政治)と民主主義のどちらがより良いのかとの問題が論じられている。しかし、ザカリアは明確に民主主義の優れた点を指摘している。彼の論に賛成である。

 プラトンは哲人政治を理想とする考え方を打ち出したが、独裁者が哲人であれば、独裁もその効率性などを考えればメリットがある。が、独裁者が哲人や賢人である可能性は大きくはない。また、権力は腐敗するのも事実である。

 プーチンは、ウクライナへの侵略で誤算につぐ誤算を重ね、ロシアをダメな国にしているが、選挙を通じて彼を退陣させることは、操作可能なインターネット投票の活用などで選挙結果を歪めて平気なので、不可能であろう。プーチンは哲人や賢人からはほど遠い。

「中国式民主主義」は民主主義ではない

 習近平は今の中国には中国式の民主主義があると米中首脳会談で言ったようであるが、共産党支配の堅持が彼の政策の中で核心中の核心である。共産党員数は中国の人口の 1 割にも満たない。こういう支配を民主主義とは言わない。習近平は宣伝で自分への個人崇拝を進めているが、同時に中国にも民主主義があるなど、よくわからない言説である。米ソ冷戦の時代に、ソ連は共産党支配の国であったが、新民主主義、参加型民主主義を唱えていた。それを思い出す。

 イランについては、ヒジャブをかぶらずに韓国でのボルダリング競技に参加した女子選手の家を破壊するなど、そのやり方は常軌を逸している。

 プーチンや習近平やハメネイの独裁制が、米国によって作り出された人権を尊重し、平和的政権交代を組み込んだ民主主義よりも体制として劣ることに疑問の余地はない。この民主主義を時代の進展に合わせて、さらに改善することが重要であると思われる。

【私の論評】全体主義国家が、政府の一声で何でも短期間に成し遂げられると思い込むのは幻想に過ぎない(゚д゚)!

民主主義が全体主義より優れていることは、このブログでも何度か主張してきました。特に、高橋洋一氏の経済発展の度合いと民主主義の度合いとの間には、高い相関関係があることは、何度かこのブログで掲載してきました。

その記事の典型的なものの、リンクを以下に掲載します。
米中「新冷戦」が始まった…孤立した中国が「やがて没落する」と言える理由―【私の論評】中国政府の発表する昨年のGDP2.3%成長はファンタジー、絶対に信じてはならない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
開発経済学では「中所得国の罠」というのがしばしば話題になる。一種の経験則であるが、発展途上国が一定の中所得までは経済発展するが、その後は成長が鈍化し、なかなか高所得になれないのだ。ここで、中所得の国とは、一人あたりGDPが3000~10000ドルあたりの国をいうことが多い。

要するに、発展途上国が経済発展を目指し、政府主導て産業の近代化等をすすめると、確かに経済発展をするのですが、一人当たりのGDPが10000ドル前後に達するとそこから先はなかなか伸びないというのが「中所得国の罠」という経験則です。

例外はあります。たとえば、日本です。日本は、発展途上国から先進国に仲間入りしました。無論、随分前に一人あたりのGDPは10000ドルを超えています。

もう一つの例外はアルゼンチンです。アルゼンチンはかつて、先進国でした。「母を訪ねて3000里」という物語は、ご存知と思いますが、これはその当時先進国だったアルゼンチンに、イタリアの少年マルコが母を訪ねに行く物語です。


「母をたずねて三千里」は時代が1882年(明治15年)という設定です。 1882年、つまり19世紀後半のアルゼンチンがどんな様子だったかというと、スペインから独立を果たし、農業と畜産業で大いに栄え、ラテンアメリカ地域で最も繁栄した国になっていました。

当時のアルゼンチンは、一人あたりのGDPは現在価値に直せば10000ドルを超えており、先進国でした。

19世紀の欧州各国は、産業革命による工業化が進み急速に経済成長を遂げました。ところが、欧州においても経済成長の恩恵が行きわたらない地域が少なくなく、貧しさを克服できない人たちにとって産業革命は、新天地を求める動きをつくり出す「移民の時代」でもあったのです。

人口密度が高いヨーロッパで賃金があまり上昇しなかったのに対し、人口密度が低い新大陸では賃金が上昇しやすい傾向がありました。

マルコの父親は診療所を経営していたのですが、貧しい人を無料で診るなどしていたため借金がかさみました。そこで母親が高賃金を求めてアルゼンチンに渡ったというわけです。

産業革命そのものも「移民の時代」を後押ししました。航海の手段が、それまでの帆船から蒸気船にとって代わったからです。当時まだすべての面で蒸気船が帆船より優れていたわけはないですが、航行の確実性が間違いなく増し、人々の移動も貨物の運搬も飛躍的に進歩することになったのです。

ただ、このアルゼンチンは様々な不運が重なり、後に先進国から発展途上国になってしまいました。

そうして、発展途上国から先進国になったのは、世界で日本だけです。先進国から、発展途上国になった国はアルゼンチンだけです。

先進国になるのはそれだけ難しいことなのです。世界から先進国として認められるには、経済がある程度の規模がなければなりませんが、もう一つの条件は、民主化です。

さて、先の記事からまた引用します。
以上のG20の状況をまとめると、高所得国はもともとG7諸国とオーストラリアであった。それに1万ドルの壁を破った韓国、サウジ。残りは中所得国で、1万ドルの壁に跳ね返されたアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコの6ヶ国、まだそれに至らないインドとインドネシア。それに1万ドルになったと思われる中国だ。

さらに、世界銀行のデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、上の民主主義指数を組み合わせてみると、面白い。中所得国の罠がきちんとデータにでている。

民主主義指数が6程度以下の国・地域は、一人当たりGDPは1万ドルにほとんど達しない。ただし、その例外が10ヶ国ある。その内訳は、カタール、UAEなどの産油国8ヶ国と、シンガポールと香港だ。

ここでシンガポールと香港の民主主義指数はそれぞれ、6.03と5.57だ。民主主義指数6というのは、メキシコなどと同じ程度で、民主主義国としてはギリギリだ。

もっとも、民主主義指数6を超えると、一人当たりGDPは民主主義度に応じて伸びる。一人当たりGDPが1万ドル超の国で、一人当たりGDPと民主主義指数の相関係数は0.71と高い。

さて、中国の一人当たりGDPはようやく1万ドル程度になったので、これからどうなるか。中国の民主主義指数は2.27なので、6にはほど遠く、今の程度のGDPを20年間も維持できる確率はかなり低い。
「民主主義指数」と「一人あたりのGDP」には明らかな相関関係があり、しかも相関係数は0.71であり、これは様々な条件が複雑らからみあっている社会現象の相関係数としてはかなり高い方の部類に入ります。

これをみると、民主化とは経済発展の前提条件であり、民主主義の強さを示すものといえます。なぜそうなるかといえば、民主化により星の数ほどの中間層が輩出され、それらが、自由に社会経済活動を実施して、あらゆる地域、あらゆる階層において、イノベーションを継続的に生み出すことができるからです。

そうして、民主主義の強さといえば、最近の中国のコロナ対策のあり方がそれを、さらに裏付けています。

中国で今、かつて低評価だった「日本のコロナ対策」の評価が高まっています。

厳しい「ゼロコロナ対策」が行われていた頃、中国の国民は政府の言う通りにせざるを得ない状況でしたし、そしてそれは、成功していたように見えました。中国は都市ロックダウンなど強固な措置を講じていったんコロナを抑えこみ、それによって経済活動が順調に再開できました。

当時、日本や欧米諸国が感染防止と経済活動のバランスに頭を抱えている姿を、中国は、「政府は寝そべって国民を見捨てている」とか「我々の宿題を丸写しさえできないのだ」などと冷ややかな目で見ていました。

「アメリカは高齢者を見殺した」「日本の第7波は医療崩壊、地獄」などの報道もたびたびありました。また、今年の8月には岸田首相が感染したことが中国で大々的に報道され、「一国の首相まで感染したのか?」と話題になりました。習近平国家主席からお見舞いの電報を送られたことも報じられました。

日本でも、中国のコロナ対策を評価する声もあちこちであがっていたことは、記憶に新しいです。

ところが、ここにきて中国政府は、一気に制限を緩和。現在の中国の人々は、ハーネスをつけられた犬の状態から、突然、ハーネスを外されたようなものです。「政府の方針」というハーネスに頼って行動していれば良かった状態から、急にハーネスなしで行動する、つまり「自らの判断」で行動しなければならない状態になってしまったのです。

そこで今、中国で改めて注目され、関心が高まっているのが日本のコロナ対策です。日本のコロナ対策を紹介する中国語の記事のアクセス数が急上昇している。

民主主義国である日本は、全体主義の中国政府のように厳しいコロナ対策ができません。その中で、「自由」と「感染予防」のバランスを考えながら、政府も国民も苦労しながらコロナ対策を実施してきました。

中国人からみれば、日本のコロナ政策はゆるい、事実上の放棄だとみえていたようです。しかし実際には、日本は経済活動を中止せず、国民には自由もあり、その間、国が緊急ベッドの確保や医療設備の増加など、医療崩壊しないようにいろいろな措置を取っていました。

これに加えて、特筆すべきは、安倍・菅両政権において日本政府は、合計100兆円の補正予算を組み、様々なコロナ対策を実施したことです。その中でも、雇用調整助成金という制度も用いて、コロナ蔓延中であっても、失業率が2%台で推移したことです。これは、まさに平時の失業率と言ってもよく、他国の失業率が同時期には鰻上り上がったことを考えれば、大成果といえます。

日本では、若年層の失業率も、コロナ蔓延期だけが特に上がったということもありませんでした。

以下に、中国の都市部の失業率のグラフをあげます。


中国では、特に若年の失業率が高いことがわかります。失業率は典型的な遅行指標であり、現状の失業率は半年前の経済政策による悪影響とみるべきです。5月の失業率は、昨年11月の経済対策によるものです。ということは、昨年11月の中国政府による経済対策は妥当なものではなかったということです。

菅政権においては、コロナワクチンの接種スピードを飛躍的にあげ、医療村の反発にあって、コロナ病床の増床はあまりできなかったものの、それでも結果的には医療崩壊を起こすことなく、収束することに成功しました。これは、大成果といえます。これが、今中国から評価されつつあるのです。評価しないのは、日本のマスコミと一部の野党です。

しかし同じ期間で中国が何をしたかといえば、ひたすら「ロックダウン」や、街ぐるみで数千万人ものPCR検査を行うことに財力や人力を費やしていました。もし、これらの予算で医療資源を充実させたり、医薬品を開発したりしていたら、今の状況にはならなかったでしょう。

結局、準備がまったくできていないのに政策を転換したこと、しかも段階的でなく、一気に転換したことが大きな問題です。中国でこれから重症者や死者が爆発的に増えていったとしても、それは無理のないことです。

中国では、今になって、日本のコロナ政策は悪いものではないと認識されたようです。中国人のほとんどは、政府の言う通りに従っていただけだったといえます。しかし、自由と感染リスクの兼ね合いがいかに難しいかを今頃思い知らされたようです。

日本のコロナ対策の中でも関心が高いのが高齢者への感染対策で、現在中国の政府関係者らや介護業界からの質問が集中しています。特に、日本の高齢者へのワクチン接種率の高さが注目されているようです。

結局のところ、民主主義体制においては、全体主義国家のように人々の自由を制限することはできないものの、「自由」と「感染予防」のバランスを考えながら、政府も国民も苦労しながらコロナ対策を実施し、中国のような全体主義よりは成果をあげているのです。

民主主義には自由の確保という前提があり、これは感染症対策には障害とみられていたのですが、「感染予防」のバランスを考えながら、政府も国民も苦労しながらコロナ対策を実施してきました。それが、結果として中国という全体主義の国家のコロナ対策よりも良い結果をもたらしているのです。

これは、民主主義の強さによるものと評価すべきです。そうして、この強さは、感染症対策だけではなく、先に述べたように経済の分野でも発揮されるでしょうし、社会のありとあらゆる面で発揮されると考えられます。

多くの社会問題なども、中国などの全体主義国家では、政府が号令をかけて、資金を提供して何かの方策を実施すれば、一見すぐに解決されてしまったようにみえても、時が経つと綻びがでてきて、どうしようもなくなり、実施をとりやめるか有名無実になり、その後大混乱に至るということになるのでしょう。

中国では、建国以来毎年数万、2012年あたりからは、10万件を超える暴動が起こっているともいわれているということがそれを示しています。これを中国は、ことごとく弾圧してきました。

ただ、中国のという国は、民族、言語、社会習慣も地域ごとに異なり、地域地域による特殊事情があるため、暴動は単発で起こることが多かったので、中国はこれを今までは弾圧することができました。 

しかし、先日の「白紙革命」は、バラバラだった中国国民がはじめ中共の「ゼロコロナ政策」に対する、恐怖と憎悪という念で一つにまとまって起こされた全国同時デモであり、これには中共も弾圧はできないと判断したのでしょう。だからこそ、今回は「ゼロコロナ政策」を緩和したとみられます。

一方民主主義の国々においては、社会問題の解決もいわゆる営利・非営利の組織である民間組織が実施し、最初はその解決は困難にみえ、いつまでたっても解消しないようにみえながら、ある民間組織が何とかそれに成功し、それが最適なものであると確認されれば、同じ社会問題を抱えている他の地域の民間組織がそれを参考にして、同じような社会問題を解決したり、大きな民間組織が全国的にそれを実施したり、場合によっては政府がそうした活動に資金を割り当てたりして、加速度的に進んでいくのです。これは、全体主義国家にはできないことです。

結局、国民一人ひとりの幸福を考えた場合、経済的にも社会的にも民主主義は全体主義に勝っているし、はるかに柔軟に対応できるのです。

これこそが民主主義の強みです。全体主義国家が、政府の一声でなんでも短期間に成し遂げるられると思い込むのは幻想に過ぎないのです。

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2022年12月23日金曜日

日銀がサプライズ利上げ決定 防衛増税と並ぶ誤った政策だ 「失われた20年」の再来になる―【私の論評】日銀黒田総裁は、財務省の日銀に対する非協調的姿勢に屈したか(゚д゚)!

日本の解き方


 日銀は20日の金融政策決定会合で、長期金利の上限を従来の0・25%程度から0・5%程度に引き上げることを決めた。事実上の利上げとなる。これを受けて株式市場は急落し、急速な円高が進んだ。

 決定会合前の17日には、岸田文雄政権が、日銀との共同声明を改定する方針を固めたと報じられていた。報道の中に、「日銀は2%の物価上昇目標に縛られて身動きできず、急激な円安と歴史的な物価高を誘発するなど、このところ、金利を極めて低い水準に抑え込む大規模な金融緩和の弊害が目立っている」という趣旨の文がある。ここに共同声明を改訂したい側の思惑が透けて見える。日銀の利上げはこうした動きを先取りしたものとみられる。

 円安は金融緩和の効果であるが、国内総生産(GDP)を伸ばすので日本経済には好都合だ。実際、法人企業統計で、経常利益が過去最高を記録している。円安で一部の業界が苦しくなるのは事実だが、政府が円安による最大の利益享受者なので、対策さえ施せば日本経済全体の問題にはならない。

 物価高というが、2桁程度上昇している諸外国に比べるとまだ楽な方だ。10月の消費者物価指数では、対前年同月比で総合が3・7%、生産食品を除く総合が3・6%、生鮮食品・エネルギーを除く総合が2・5%であるが、消費者物価を含む全体を示すGDPデフレーター(7~9月期)は、前年同期比0・3%下落とまだマイナスである。先進国の物価目標もほとんどが2%で、それらの国でも2%になったら直ちに金融引き締めするわけではない。金融政策の一般則として「ビハインド・ザ・カーブ」があり、金融引き締めはやや遅れて行うものだ。

 今回の利上げや共同声明の見直し論は、世界の標準的な金融政策からみてかなり的外れと言わざるを得ない。低金利を日本経済の弊害だと主張する一部の金融機関や、アベノミクスを失敗としたい一部の政治勢力、マスコミなどが後ろで糸を引いている可能性がある。

 防衛増税ではっきり国民に分かってしまったが、岸田政権は財務省の言いなりで財政緊縮路線だ。この財政緊縮路線と整合的なのは金融引き締め路線である。白川方明(まさあき)前総裁体制までは、日銀はひどい金融引き締め路線だった。

 筆者は、1990年代半ばから日本経済が低成長だったのは、90年頃のバブル後の間違った金融引き締めを間違っていないと言い張り、継続した結果だと思っている。

 それを裏付けるデータもある。バブルの前、日本のマネーの伸びはそこそこで経済成長も良かった。84~93年の統計数字をいえば、世界142カ国で相関係数0・94(1が最大)、日本は小さい順でマネーの伸びが26位、成長が25位だった。しかし、94~2013年は世界171カ国で相関係数が0・79、日本は小さい順でマネーの伸びが1位、成長1位だった。つまりマネーの伸びでも成長でも世界ビリになってしまった。

 岸田政権のマクロ政策は、増税路線といい、金融引き締めといい、まるで失われた20年の再来のようだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】日銀黒田総裁は、財務相の日銀に対する非協調的姿勢に屈したか(゚д゚)!

消費者物価指数が、今年4月以降、世界的な資源高を背景に前年比+2%を超える推移が続いていることで、日本国内でもインフレに関する議論が取り沙汰されています。その一方、もうひとつの重要な物価指標であるGDPデフレーターは、依然としてマイナス圏での推移となっており、二つの指標は大きく乖離しています(資料1)。両者の違いはなぜ生まれているのでしょうか?


GDPデフレーターは、名目GDPと実質GDPの比で表されます。GDPは国内で生産した付加価値の合計ですから、輸入は控除されます。これは、原油高のような海外発の価格上昇によって輸入額が増加した時、名目GDPが減少し、GDPデフレーターの押し下げ要因となることを意味します。

輸入価格の上昇が物価指標の押し下げ要因となることに違和感があるかもしれませんが、次のように考えることができます。すなわち、輸入価格上昇の一方で、輸入コスト増加分がすべて商品に価格転嫁されれば、最終的な消費額も増加するはずです。

そのため、輸入価格上昇によるマイナス分は相殺され、GDPデフレーターは不変となります。一方で、もし価格転嫁が不十分な場合には、GDPデフレーターは下落することになります(資料2)。こうしたことから、GDPデフレーターは「ホームメイド・インフレ(国内主導の物価上昇)を示す物価指標」と呼ばれます。


現在、世界的な資源価格高騰で輸入物価は大幅な上昇が続いており、消費者物価はこれを反映して上昇が続いています。一方で、GDPデフレーターはマイナスの推移が続いていることから、足元の物価基調は輸入インフレに留まり、国内における需給バランスの改善による自律的な物価上昇は実現していないことが読み取れます。

実際に、経産省が中小企業に向けて行った調査では、コスト上昇分の3割以下しか価格転嫁できていないとする企業が過半数をしめており、国内価格へ波及は十分に進んでいるとは言えません(資料3)。

景気が十分に回復していない中では、消費者の値上げに対する抵抗感も強く、国内企業の値上げ行動が難しいという課題の表れとも言えます。このように、物価の基調を正しく判断する上ではGDPデフレーターに注目することが重要です。


上の高橋洋一氏が指摘するように、消費者物価を含む全体を示すGDPデフレーター(第2四半期:7~9月期)は、前年同期比0・3%下落とまだマイナスです。

先進国の物価目標もほとんどが2%で、それらの国でも2%になったら直ちに金融引き締めするわけではありません。金融政策の一般則として「ビハインド・ザ・カーブ」があり、金融引き締めはやや遅れて行うものということを考えると、今回の日銀黒田総裁の事実上の利上げは、やや拙速だったと考えられます。少なくとも、GDPデフレーターがプラスに転じてから、実施すべきであったと考えられます。

このブログでも以前掲載したように、通貨安は「近隣窮乏化策」とも呼ばれるように、通貨安の国だけのGDPを上げる効果があります。日本も例外ではなく、円安は日本経済全体のGDP押し上げ要因だったのですが、円高になったので、株価が急落したのは当然といえば当然です。

円安で企業の経常利益は過去最高となっており、円高が景気悪化につながることになるでしょう。生産拠点の国内回帰の動きにも冷や水を浴びせかねないです。

長期金利の上限を0.5%に引き上げた決定について日銀は、国債市場のゆがみを取り除くためで、金融引き締めではないと説明しています。

日銀としては、これまで10年物国債のゼロ金利誘導政策(+-0.25%は許容)を長年続けて来た結果、利回り曲線が10年の所で凹み、歪んでしまいました。そこで10年物の許容範囲を+-0.5%に拡大し、同時に、10年物以外も買いオペし、利回り曲線全体を下げようとしているのでしょう。

これは、イールドカーブ・コントロールの一環であると考えられます。しかし日銀の理屈は分かりにくく、実質的な利上げと言われても仕方ないです。市場の圧力に押されたと受け止められれば、今後さらなる修正を見込んだ催促相場につながる懸念があります。

今回の決定は唐突な印象が否めず、黒田東彦総裁の記者会見を聞いても、なぜこのタイミングなのか判然としません。株価は大幅に下落し、円相場も急騰するなど、市場に大きなインパクトをもたらした。日銀の決定が本当に市場の安定に寄与するのかこれから見極めていくことになりますが、いずれにしても、日銀には金融政策運営で丁寧な説明が求められます。

特になぜこのような、理解しにくい、イールドカーブコントロールをしなければならないのか、もっと説明すべきでしょう。問題の根源の奥の奥には財務省の日銀に対する非協調的な姿勢があること、緊縮姿勢があり、国債を発行しなことなどがあることなども説明すべきと思います。ただは、これは 財務省出身の黒田総裁には難しいことなのかもしれません。

今後、マイナス金利政策や長期金利目標のさらなる見直しが行われる可能性はあります。ただ、その大前提となるのは2%の物価目標を安定的に達成できる見通しが描けることです。達成できていない以上、これまでの緩和策を続けるべきでした。

今後、住宅ローンの金利も上昇し、企業が融資を受ける条件も厳しくなるでしょう。一方で、銀行など金融機関の経営には恩恵が大きいです。今回の事実上の利上げは、雇用、GDPなどマクロ経済よりも金融機関を優遇した政策です。

いずれにしても、市場から見れば、従来の発言を翻した「黒田の乱」といえます。しかし、これだけの政策方向の転換について、黒田総裁だけの独断とも考えにくいです。岸田文雄首相の了解があったと考えるのが自然です。

岸田政権は、防衛費増に対して、防衛増税を打ち出しました。あまりに唐突であったので防衛増税については自民党内でも反対が多いです。しかし、自民党税調の税制改正大綱には書きこまれました。

結局、岸田政権は、財務省の言いなりで無理筋の防衛増税を押し込みました。このブログでは増税なしで防衛費を捻出することも出来ることを主張しましたが、にもかかわらず岸田首相はあえて選びました。

マクロ経済からみれば、増税も利上げも経済に悪影響しかありません。今のタイミングでやることではありません。おそらく、黒田日銀総裁も、増税をする岸田政権を陽動作戦で側方支援しているのではないかと思います。

黒田日銀総裁は元財務官僚で税畑であるので、基本的に増税指向です。利上げは金融機関には恵みの雨であり、財務官僚も日銀官僚も多く天下っているので、身内の評判は悪くないことも背景にあるかもしれません。

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2022年12月22日木曜日

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 日本の解き方

防衛増税で日本を守れるのか 平時の経済を弱体化させれば…有事の前に国が倒れてしまう 鳴りをひそめていた財務省でうごめく「増税虫」

高橋洋一


 2023年度の与党税制改正大綱で、防衛費増額の財源として増税する方針が決まった。

 周辺国の軍拡など国際関係により、防衛費を急増しなければいけないのが今の日本だ。それは、ドイツも同じ事情で、国内総生産(GDP)比1・5%を2%まで高めるために特別基金を作った。財源は国債である。

 その理由は財政学での課税平準化理論にある。今回のような防衛費の急増はいつもあるわけではない。意に反して有事になったときに限られる。その意味では、数十年に一回という大震災と同じだ。

 大震災で経済が大打撃を受けているのに復興財源を増税にしたら、ダブルパンチになってしまう。長期国債により課税負担を平準化しなければいけない。

 有事の際や、有事に備えるための防衛費でも同様に考えることができる。課税負担を平準化するために長期国債で対応するのが正しいとなる。増税した場合、平時において経済を弱めてしまう。万が一有事になったらさらに経済を悪化させ、有事対応すらできなくなってしまう。

 長期国債で対応するのは、負担を現世代だけではなく将来世代にも負わせることになると批判する声もある。しかし、いま防衛費を高めることは戦争確率を減らす。これは将来世代も便益を受けるので。負担するのは理にかなっている。

 安倍晋三元首相は、こうした考えを理解して防衛費を長期国債で賄うべきだと主張し、「次の世代に祖国を残していく」と述べていた。

 しかし、岸田文雄首相は「未来の世代に対する責任」として、国債を否定した。同じ趣旨の発言は公明党の山口那津男代表からも出ている。これらは財務省からの振り付けではないのだろうか。

 その後、防衛費の一部について、財務省は「建設国債対象経費」とせざるを得なくなった。岸田首相はある意味で財務省からはしごを外された形だ。

 また、岸田首相は当初、増税から所得税を除くとしていたが、自民党税制調査会で、復興特別所得税を充てることになった。

 ここでも岸田首相や所得税は増税しないと言った一部の関係者は、財務省の捨て駒にされている。

 結局、財務省が真の主権者であるかのような動きを見せている様子がバレバレだ。東日本大震災の復興財源として長期復興国債でなく復興増税になった際も、〝黒幕〟の財務省に、民主党はいいように操られていた。同じ光景が繰り返されている。

 民主党政権では、増税を自由に行えた財務省も、安倍・菅義偉政権では不自由な身だったはずだ。安倍政権では2度消費税を引き上げたが、何度も延期された。約100兆円のコロナ対策も「政府・日銀連合軍」により増税なしで行われた。

 今回、防衛費の追加分は20兆円程度で、防衛国債も埋蔵金もあるのに増税とはおかしい。安倍・菅政権で鳴りをひそめていた財務省の「増税虫」がうごめいてきたのだ。

 これでは、有事の前に国が倒れてしまう。防衛増税の是非を国民に問うべきだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】防衛増税賛成派と財務官僚は、資本主義の基"貨幣循環論"を理解していない(゚д゚)!

防衛増税に両手をあげて賛成する人たちは、増税しなければね長期的な視野に立った防衛政策の社会的、財政的基盤をつくりあげることにならないと信じ切っているようです。防衛増税するなという主張はつまるところ「当座しのぎ」に他ならないと考えているようです。防衛力強化には税負担が不可欠という現実を国民に説得するのが政治家の仕事だと思いこんでいるようです。


確かに「当座しのぎ」は良くないです。そうでなく、防衛政策の社会的基盤、財政的基盤をつくり上げるべきという観点は重要です。ただし、5年間で防衛費を倍増するなどという荒療治はそう滅多にないことです。

そうはいっても、ウクライナ戦争や中国習近平体制の動向、米国内政治の混乱などを考えると、この5-10年が非常に危険です。ここで我が国の防衛力を抜本的に強化しないと手遅れになるとの切迫感があります。

したがって、5年で防衛費の倍増は必須です。それでも大型の正面装備は配備されるまでに5-7年かかります。しかし、その荒療治をコロナ禍3年でこれだけ経済が痛んでいる最中に行うわけですから、いきなりこれを増税で賄うということになれば、家計を直撃し消費を萎縮させ、景気は腰折れするのは必定です。

ならば、先ず他に使える財源をかき集め、その上で、恒久財源に議論を移行しても決して無責任ではないです。むしろ、ここでさらに経済を萎縮させることの方が無責任です。増税により、経済が萎縮してしまえば、高橋洋一氏が上の記事で主張するように、有事の前に国が倒れてしまいかねません。

国が倒れるまではいかなくても、それこそ日本国経済が停滞し、社会保障の経費が増大して、防衛費増どころでなくなりかねません。企業には外部経済がありますが、国には外部経済はありません。

企業の場合は、余剰人員などを整理して解雇すれば、それは外部経済に移り企業に悪影響を及ぼすことはなくなります。しかし、政府の場合は違います、政府は国民を解雇して、国から外に追い出すことなどできません。

そのため、増税など無理な政策を実行すれば、貧困層が増えるなどして、結局生活保護などの社会保障費が増えて、かえって出費が増すことになりかねません。これが莫大なものとなれば、防衛費どころでなくなる可能性も高いです。

そのようなことを避けるためにも、特別会計や一般会計の剰余金や国債費など、増税に代わる現実的な選択肢を追求すべきです。

その上で、「安全保障・未来保障」危機突破5か年予算の現実的な財源として
①特別会計剰余金(円安効果で外為特会増加分約30兆円)
②一般会計剰余金(昨年度は6.3兆円)
③自然増収(昨年度は9.5兆円)
④国債60年償還ルール撤廃(毎年の国債費16兆円が浮く)
などを用い、足らざるは長期国債で賄うなどして、増税は極力回避すべきです。

これが、防衛増税賛成派への模範的回答になると思います。ただ、防衛増税賛成派は基本的な経済理論を理解していません。これを理解しなければ、いつまでもこのような論争は絶えなくなります。

これに防ぐには、ブログ冒頭の記事を書かれている、高橋洋一氏が日頃から主張されているように、マクロ経済への理解が必要なのでしょうが、それ以前に資本主義を理解していない人が多いのではないでしょうか。

結論からいうと、資本主義においては、税は、安定財源どころか、財源(貨幣を生み出す源泉)にすらなりえないのです。

日本には、「金は天下の周りもの」という諺がありますが、これを現在の信用貨幣や銀行や、中央銀行が存在する中での文脈で理解すれば資本主義を理解できると思います。しかし、これが覚束ない人が多いのではないかと思います。何というか、教科書的なものを読んで、試験などでは合格できるのですが、その根底を理解できず、現実社会における文脈で理解できない人が多いのではないかと思います。

貨幣循環の過程は、貸し出し先が政府の場合も、企業の場合と基本的に同じです。

ただし、企業と政府とでは、大きな違いがあります。企業に貸し出しを行うためには、その企業に返済能力がある必要があります。しかし、近代国家における政府は、強力な徴税権力を有しており、返済能力は確実にあります。したがって、中央銀行は、政府の需要に応じていくらでも貨幣を創造し、供給することができます(日本銀行による国債の直接引き受けは原則禁止されていますが、市中消化の場合でも、基本的な原理は同じです)。


① 中央銀行制度があるおかげで、政府は、税収を元手にしなくても、中央銀行が「無から」創造した貨幣を得て、支出を行うことができます。
② 貨幣とは負債であり、貸し出しによって創造され、返済によって破壊されます。すなわち、政府が国債を発行して債務を負うことは、貨幣の「創造」です。そうして、政府が税収によって債務を返済することは、貨幣の「破壊」です。
無論、「破壊」とはいっても、本当に日銀がわざわざこれをすぐに全部破壊するという意味ではなく、日銀の金庫に入った時点で市場に流通しなくなるので、事実上の「破壊」ということです。ただし、現実には、日銀は日銀に入った貨幣のうち利用できるものは利用して、金融緩和が必要なときにはこれを市場に流通させるということはあります。

さて、この資本主義の基本原理を踏まえたうえで、昨今の防衛費をめぐる財源の議論を振り返ってみましょう。

防衛支出の財源として、増税が検討されています。しかし、貨幣循環論を理解していれば、防衛支出という政府の需要こそが財源、すなわち「貨幣を生み出す源泉」であることがわかるでしょう。むしろ、税は、安定財源どころか財源(貨幣を生み出す源泉)にすらなりえないのです。

資本主義の仕組みを理解していれば、これが結論になるのです。これが理解できない人が多いようです。これと、現代貨幣理論(MMT)とを混同する人も多いようですが、これは明らかに違います。

MMTでは、政府の需要こそが「貨幣を生み出す源泉」であることから、政府は無限に貨幣を生み出すことができるなどという妄想を是としていますが、そのようなことはなく、政府が貨幣を生み出し続け、供給が需要を超えても際限なく貨幣を生み続ければ、当然のことながらインフレが亢進することになります。

よって、政府が貨幣を無限に生み出し続けることなどできず、自ずと限界はあります。ただ、防衛支出という需要が供給能力の枠内に収まっている限りにおいては、貨幣を生み出し続けてインフレにはなりません。現代の日本は、デフレ気味であり、政府が30兆円超の貨幣を生み出したとしても、インフレになりません。

貨幣を生み出す方法には、政府が紙幣を増刷すること、政府が国債を発行することなど様々な方法があります。ただ、増税では貨幣を生み出すことはできません。需要があるにもかかわらず、貨幣を生み出すことなく、増税して、防衛費増を賄うということになれば、当然のことながらデフレになります。これを理解せずに、政府の支出を家計のように考える人があまりに多いようです。

銀行制度特に中央銀行の存在しない資本主義以前の社会であれば、封建領主は、防衛支出の財源を確保するために、増税によって、領民のもつ財産を没収して防衛費に充てるしかなかったのかもしれないです。しかし、その限界を資本主義によって超えることができるようになったのです。

歌川国芳『武田上杉川中嶋大合戦の図』(部分)

銀行制度が完備された資本主義においては、政府(と中央銀行)は、防衛支出という需要に応じて、新たに貨幣を創造することができるのです。

要するに、増税や歳出削減によって防衛費を確保しようとする考え方は、資本主義以前の前近代的な発想に基づいているということです。これでは、何のための資本主義なのか、何のために日本が資本主義を導入したのか、全く本末転倒の状況に陥っているとしかいいようがありません。

防衛増税派の防衛費の財源を国債の発行に求めるのは無責任だと主張し、増税を容認しました。

残念ながら、防衛増税派の議員の政治家としての、そうして岸田総理や財務官僚の経済観念ならびにそれに基づく責任感は、資本主義以前の、前近代的な封建領主のそれです。まさに、明治時代より前の、江戸以前のそれです。

まずは、資本主義や貨幣について正しく理解するのが、政治家や官僚の果たすべき最低限の責任です。これが理解できないと、マクロ経済も理解できません。

前近代的な政治経済観を抱いたままで、この過酷な世界や社会を生き残れるはずもないです。

仮に、今回防衛増税派の議員が、勝利を収めて、防衛増税に成功したとしても、景気が格段に悪くなり、ふたたび深刻なデフレに陥り、それこそ、次の選挙で自民党は下野して、防衛増税派の議員の政治生命は絶たれるかもしれません。

今は権勢を誇っている財務省も、資本主義が理解できないようでは、強大で絶対的な権力を誇った鎌倉幕府や江戸幕府が滅んだように、いずれ滅ぶでしょう。そのようなことにならないためにも、若手財務官僚やそれを目指す人たちは、少なくとも貨幣循環論を地頭でしっかりと理解すべきです。これを理解した上で、当然のことながらマクロ経済、会計学の基礎(簿記等)も学ぶべきです。

昨年、文芸春秋(11月号)に掲載された財務省の矢野康治事務次官の財政危機を訴える寄稿は「矢野論文」と称され、世の中に波紋を広げました。私は、この論文を読む前までは、まさか財務官僚が資本主義自体を理解していないなどということはないだろうと思っていましたが、理解していないことを確信しました。

資本主義を理解しない政治家や官僚が多く存在し、メディアでも理解しているのは、ほんの一握りというのが、現代日本の第一の不幸の源であるといえます。自民党の、積極財政派の方々も、積極財政をを説く前に、まずは「資本主義」の基礎を説くべきなのかもしれません。

なぜなら、資本主義を理解しない人はマクロ経済を理解できないからです。私は、積極財政派の議員の中でさえ、資本主義をしっかり理解していない議員が存在するかもしれないことを危惧しています。そのような議員は、今は積極財政派であっても、すぐに財政健全派に鞍替えする可能が高いです。

そもそも、積極財政派、財政健全派という分類自体が間違いです。財政とはその時々の経済の状況に応じて、積極財政を実施したり、財政健全化をしたりするのが正しく、その時々の状況に応じて流動的に靭やかに実施すべきであって、どちらか一方だけを推進するのは間違いです。

野党議員の中にも、選挙対策として、増税反対を主張する議員もいますが、そのような議員の中にも資本主義を理解していない人がいるのではと、私は危惧しています。そのような議員がまかり間違えて、政権をとったとしたら、その途端に増税反対の看板を取り下げて、増税に走るということも十分考えられるからです。

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2022年12月21日水曜日

数カ月で人口の6割感染との予測も、中国のコロナ流行に世界から懸念の声―【私の論評】中共は、「ゼロコロナ」政策をやめ中国人が多数が死亡しても集団免疫を獲得すれば良いと考えたか(゚д゚)!

数カ月で人口の6割感染との予測も、中国のコロナ流行に世界から懸念の声

この動画と、以下の文面とは直接関係はありません(ブログ管理人)

中国当局は20日、新型コロナウイルス感染で新たに5人の死者を報告した。感染を封じ込める「ゼロコロナ」政策を大幅に緩和した後もコロナ流行は続いており、各都市は病床の追加確保や発熱外来クリニックの増設に奔走している。

北京にあるこの体育館は、急遽発熱外来として使われることになった。同様の施設は、国内の主要都市に次々と設置されている。新型コロナの感染拡大による医療崩壊を防ごうと、集中治療室の収容力拡大や、発熱外来の設置が全土で進められている。

コロナが、中国の医療体制に打撃を与えようという兆候が徐々に強まっている。中国当局は今月、国民の抗議を受けて隔離と検査を繰り返す厳格な「ゼロコロナ政策」を大幅に緩和した。その結果、14億人の人口を抱える中国はウイルスの脅威に直面。集団免疫を獲得していないため、死者の増加や変異ウイルスの出現、経済や貿易への影響が懸念されている。

中国疾病予防管理センターの当局者は、新たな変異株が出現する可能性はあるが、懸念はないと述べた。また新たな変異株が、より致死性を増す可能性は低いとしている。

中国政府がウイルスを放置するという驚きの決断をしたことに対して、国際社会の懸念が高まっている。米国務省のプライス報道官は19日、中国で新たな変異株が発生する可能性は、世界にとっても脅威だとの見方を示した。

米国務省 プライス報道官
「中国のGDPや経済規模を考えると、感染拡大による影響は世界にとって懸念事項だ」

当局の会見に同席した北京大学第1医院の王貴強院長は、新型コロナ感染後に発症した肺炎や呼吸不全による死亡のみを、新型コロナによる死者として数えると述べた。心臓発作や心血管系疾患による感染者の死亡は、この基準には含まれない。2019年末にパンデミックが始まって以来、中国が発表した新型コロナの死者数は累計でわずか5242人で、世界的にみても少ない。

12月7日にゼロコロナを緩和して以来、この統計が新型コロナの本当の影響を反映しているのか、疑念が強まっている。規制緩和以来、一部の病院には患者が殺到し、薬局では薬の売り切れが続出している。自主隔離をする市民が増え、北京では薬を受け取りに来た配達員が薬局に集まっていた

一部の専門家は、今後数カ月で中国の人口の60%が感染すると予想。これは世界の全人口の10%に相当する。さらに200万人以上の死者が出る可能性があると予測している。

【私の論評】中共は、「ゼロコロナ」政策をやめ中国人が多数が死亡しても集団免疫を獲得すれば良いと考えたか(゚д゚)!

日本においては、コロナが発生してから、今日までの、合計死亡者数53,738人です。中国の人口は14億人、日本は1億2千万人ですから、中国の人口は日本の10倍より多少多いくらいです。

今後新たに100万人とか、200万人の死者がでるとされていますから、1/10にすれば、10万人〜20万人ということで、日本に置き換えても、これは結構な数ともいえます。

これは、とてつもないことになりそうですが、中国としては、中国製ワクチンはほあまり効かない、まともなコロナ薬が流通していないのですから、そうなるとみて間違いないでしょう。

日本では、たとえばCTが診療所レベルの診療機関にも設置してあり、世界で一番普及しています。これで診察すると、肺炎であるか否がすぐに診断できます。肺炎の人は、すぐにPCR検査などを受けるという措置がなされ、それ相当の治療がなされます。日本の医療現場では、このようなことが行われていました。日本では、このような対応が可能だったのです。

私達には見慣れたCTだが、中国をはじめあまり普及していない国もある

他国と同じように、PCR検査にのみ頼る診査体制であれば、日本の医療現場はかなり混乱したことでしょう。それこそ、医療崩壊を起こしていた可能性もありました。しかし、日本の場合、CTの普及率の高さなどが幸いして、未だにコロナ感染症の分類が2類とされているにも関わらず、何とか医療崩壊を起こさないですんでいます。今後、日本でもコロナ治療薬の「ゾコーバ」などが普及すれば、早急に5類に分類しなおすべきです。

中国では、日本のように医療体制が整っておらず、今後感染者、死者が増えれば、かなり深刻な事態になることが予想できます。特に、地方の僻地などでは、かなり医療体制が遅れていますし、都市部においても、貧困層は、まともな治療を受けられる体制にはありません。コロナに感染しても、病院で治療を受けないということは十分に考えられます。

上海市内にある集合住宅の中庭。四方を囲む形にして外部と遮断し、通り抜けできないようになっている。

中国政府がなぜ「ゼロコロナ」政策を緩和しかといえば、こういう実態を踏まえれば、「ゼロコロナ」など最初から不可能であったことをようやっと理解したのでしょう。

ただ、中国共産党中央政府には、これを認識した上で、さらに恐ろしい企てがあるかもしれません。それは、以前のブログでも述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
サマーズ氏が予見、中国医療制度「壊滅的」影響も-コロナ政策転換で―【私の論評】6カ月後には、コロナ蔓延で中国はGDPで米国を追い越すと言われていたとは思えないような国に(゚д゚)!

サマーズ元FRB長官

日本では、中国のアウトバウンドを期待するむきもあるようですが、おそらく無理でしょう。多くの人が、感染を恐れて、海外旅行どころではなく、外出することすらためらうようになるでしょう。

こうなると、国民はデモどころではなくなります。中共の指導層は自分たちは、米国製ワクチンや薬を確保するとともに、自らを一般人から隔離する体制を強化しつつも、できるだけ安寧な生活ができるように準備して、医療体制も整え、大きな嵐が過ぎ去るのを待つつもりなのかもしれません。

全体主義国家の中共を甘く見るべきではありません。経済がどうなろうと、自国民が多数命を失おうが、体制を守り通そうとするのが彼らです。
中国共産党として、今後も全国各地で同時に「ゼロコロナ」政策に対するデモが起これば、これを鎮圧するのは難しいですし、かといってこれを放置すれば、反政府デモが過激化・先鋭化し、共産党の統治の正当性が危機にさらされると考えたのでしょう。

であれば、「ゼロコロナ」政策などやめて、多数の人間が感染して、死亡したとしても、それで中国人の多くが集団免疫を獲得すれば、いずれ収まると考えた可能性は十分あります。無論、その過程で「反政府」デモは、コロナ感染が鎮圧してくれるだろうという目論見もあるものと考えらます。

だとしたら恐ろしいことです。しかし、中国共産党の短い歴史をみても、そのようなことは十分考えらます。彼らを甘く見るべきではありません。

そうでなくて、国民の命が第一と考えれば、自分たちの非力を公にしても、海外からのワクチンや薬に頼るはずです。そのような気はさらさらないようです。

それで、サマーズ氏が予測したように、中国経済が落ち込んだとしても、自らの体制を守れれば良いと考えているのでしょう。

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