2025年3月1日土曜日

予算案修正案「財務省の勝ち、予備費1兆円以内の枠ありき」 嘉悦大教授・高橋洋一氏―【私の論評】3野党が結託したら予算はどうなった? 財務省の裏ワザと特例公債法の闇

予算案修正案「財務省の勝ち、予備費1兆円以内の枠ありき」 嘉悦大教授・高橋洋一氏

まとめ
  • 予算案修正の規模と財務省の意図: 自民・公明が提出した2025年度予算案修正は、財務省が予備費1兆円の範囲内に抑えたい意向を反映。国民民主党の7兆円超減税案や立憲民主党の3兆8千億円減額案は受け入れられず、維新の2千億円増案が採用され、公明の6千億円減税案も含め修正は1兆円内に収まった。
  • 野党間の調整と財務省の戦略: 財務省は国債発行増や法改正を避けるため、大規模修正を拒否。野党3党(立憲、国民、維新)の協調を防ぎ、政府・与党をコントロールする形で予算をまとめた。
財務省解体デモ

 自民党と公明党は2025年度予算案の修正案を国会に提出した。財務省は予備費1兆円の範囲内で修正を抑えたいと考えており、それを超えると国債発行額が増加し、法改正が必要になるためだ。

 国民民主党の「年収103万円の壁」を178万円に引き上げる案は7兆円以上の減税となり、受け入れられない。立憲民主党の修正案は3兆8千億円の減額だが手続きが煩雑で避けたい。一方、日本維新の会の教育無償化案は歳出増が2千億円と少なく、同意しやすかった。

 公明党の減税案は6千億円で、予算修正は1兆円以内に収まった。財務省は野党間の協調を防ぎ、政府・与党をコントロールした形だ。立民、国民、維新の3野党が協調して、政府・与党に対峙(たいじ)させないように計算した財務省の勝ちのようなものだ。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】3野党が結託したら予算はどうなった? 財務省の裏ワザと特例公債法の闇

まとめ
  • 3野党が結束すれば、予算案を大胆に修正し、10兆円規模の歳出拡大や減税をぶち上げることになった。国民生活を支える財政出動が膨らみ、国債発行や特例公債法改正が避けられなくなる。
  • 統一戦線を組んで政府・与党に圧力をかけ、減税や社会保障拡充などの国民目線の政策で支持を集め、国会運営を乗っ取る勢いで予算を国民目線に変えるシナリオが考えられた。
  • 財務省の硬直的な財政規律や予備費1兆円の枠が崩れ、特例公債法を活用した大規模財政出動や改正で、国民経済の成長と暮らしの向上につなげるチャンスが生まれたかもしれない。
  • 高橋洋一が「財務省の勝ち」と言うのは、3野党の足並みを揃えさせず、バラバラな提案を放置した財務省の策略が成功したからだ。
  • 特例公債法の改正は必須で、「赤字国債」という誤解を招く呼称を捨て、国債を経済成長の原資と捉え直せば、財政政策が柔軟になり国民生活が向上する。コロナ禍の100兆円国債発行と雇用調整助成金で経済を安定させた例がその証だ。

立憲・維新・国民は「給食費無償化」法案ではまとまったが・・・・

高橋洋一氏が言う「立民、国民、維新の3野党が手を組んで政府・与党に立ち向かう」とは、一体どんな展開になるのか。 まず考えられるのは、3野党が一丸となって予算案を大胆にぶった斬り、書き換えるシナリオだ。国民民主党の「年収103万円の壁を178万円に引き上げ」で7兆円超の減税、立憲民主党の3兆8千億円減額案、日本維新の会の教育無償化で2千億円増。

これを全部合わせたら、10兆円規模の歳出拡大や減税だ。もしこれが実現したら、国民の暮らしを支える財政出動が一気に膨らみ、国債発行が増え、特例公債法の改正だって避けられない。

次に、3野党がバラバラに動くのではなく、事前に作戦を練って統一戦線を張り、政府・与党にガツンと圧力をかけるパターンだ。予算委員会や国会審議で共同提案をぶち上げ、減税、教育投資、社会保障の拡充と、国民が「おお!」と目を輝かせる政策を並べ立てる。与党に譲歩を迫り、国民の支持をガッチリつかむ戦略だ。

さらに、国会運営を乗っ取る勢いで動く可能性もある。維新が現実的な歳出増を打ち出しつつ、立民と国民が大規模な財政出動を叫べば、与党は分裂し、予算案を国民目線でガラッと変えざるを得ない。審議日程をグズグズ引き延ばし、硬直的な予算成立をぶち壊す展開だってあり得た。

もしこんな協調が現実になったら、財務省が頑なに守る硬直的な財政規律や予備費1兆円の枠など吹っ飛び、国民経済を活性化させる政策が大規模に動き出したかもしれない。

ここで特例公債法の話だ。これは財政法第4条で「赤字国債はダメ」と禁止されているのを、特別な事情があれば認めるにする法律だ。経済危機や災害のような緊急時に国会で決め、一時的に国債発行を認める仕組みだ。だが日本では、この特例公債法が毎年お決まりで制定され、「特別な事情」なんて関係なく運用が常態化している。

結果、財政法第4条の原則は形だけで、実質的な財政規律の歯止めが効かなくなっているのが現状だ。野党が力を合わせたら、この特例公債法を使って国民生活を支える大規模な財政出動をぶち上げるか、抜本的に法律の改正を求めることで、硬直的な財政運営をひっくり返し、国民経済の成長と暮らしの向上につなげるチャンスが生まれるかもしれなかった。

高橋洋一が「財務省の勝ち」と評したのは、こういう国民目線のシナリオを潰し、3野党の足並みを揃えさせなかった財務省の策略がハマったったという意味だ。立民の大規模減額、国民の大胆な減税、維新の控えめな増額と、各野党の提案規模や優先順位がバラバラなのをそのまま放置し、協調の時間を与えず、1兆円の予備費枠を盾に「財政規律崩壊」と脅した。野党同士を対立させ、団結の芽を摘んだ。財務省は野党の「違い」を利用し、10兆円規模の国民目線政策を潰した。統一戦線を組ませなかった。財務省は高笑いだ。

だが、特例公債法の抜本的な改正は、国民経済を考えれば絶対に見直すべき課題だ。例えば、2020年のコロナ禍だ。政府は特例公債法を使って約40兆円の赤字国債を発行し、給付金や事業支援を打ち出した。これで経済の急落を食い止めた。

2020年財務省は「国の借金」一人当たり1000万超と煽っていたが・・・

安倍政権時代に60兆円、菅政権で40兆円の合計100兆円もの国債を発行し、日銀がそれを買い取る形でコロナ対策を進めた。さらに、日本特有の雇用調整助成金制度が効いて、他国では失業率が一気に跳ね上がったのに、日本ではそんなことはなかった。

米国だと2020年4月に失業率が14.8%まで爆上がりしたが、日本は最大でも2.8%で済み、雇用を守り抜いた。この事実が示すのは、国債発行と政策がうまく噛み合えば、経済の安定はしっかり守れるということだ。そうして、このようなことを実行しても当時から岸田政権初期までは、良いことばかりで何の不都合もなかった。もしあれば、財務省やマスコミ、識者などはここぞとばかり「赤字国債大量発行の失敗」を批判しただろう。いや、本当は批判したかったのだが、批判すれば、ボロがでることを恐れているのかもしれない。

マクロ経済の常識から見ても、国債発行で財政支出を増やすのは景気調整に効く。特に低金利の今なら債務負担だって軽い。1990年代以降の日本は緊縮財政で経済が停滞した苦い過去がある。特例公債法の硬直的な運用は、国民経済の可能性を押し潰しているといえる。3野党が結束して、特例公債法をを改正し、財政法第4条の古臭い原則を今の経済状況に合わせて柔軟に変えるべきだ。それが国民生活を良くし、経済成長を引っ張る道だ。財務省の硬直的な財政運営をぶっ壊す、真の国民のための政策だ。

そもそも、「赤字国債」という呼び方自体が正しくない。「国が借金で財政を賄う」などと暗いイメージを植え付けるが、マクロ経済で見れば、国債発行は経済全体の需要を支える大事な武器だ。経済学者のポール・クルーグマンは、低成長期に国債を発行すれば経済が動き出し、税収が増えて長期的には財政が安定すると喝破している。

 ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン

2008年のリーマンショック後、米国は大胆な財政出動でGDP比の債務が増えたのに経済を立て直した。日本では「赤字国債」という言葉が1970年代から使われてるが、これは財政法の古い枠組みに縛られた政治的な言い回しにすぎない。他国ではこんな呼び方はしない。米国だと一般的には「Treasury Bonds」、英国なら「Gilts」と呼ばれ、「赤字」などというネガティブな響きはない。

日本の「赤字国債」は財政法第4条の特有な背景から来てる異端児ともいえる。国民経済の視点で見直せば、国債は「経済成長の原資」だ。「赤字」などの誤解を招く言葉は捨て去るべきだ。特例公債法の改正と一緒にこの認識をぶち壊せば、財政政策はもっと柔軟になり、国民生活をグッと押し上げる力になる。

野党の幹部らは、そこまで読んだのか? 情けないの一言に尽きる。だが、今後このような機会は、自公が少数野党である限り、何度でもある。ここは、野党に期待したい。こと経済面に関しては、本当の大きな敵は、自公ではなく財務省であるという視点を忘れるな!

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