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2019年5月7日火曜日

「まるで茹でガエルのよう」中国共産党の浸透工作に警戒を=米公聴会―【私の論評】中国はサラミ戦術を用い、我が国を蚕食しつつあり(゚д゚)!

「まるで茹でガエルのよう」中国共産党の浸透工作に警戒を=米公聴会

経団連、日本商工会議所などで構成する訪中団は11月21日、北京の人民大会堂で
    李克強首相と会談。会議外の会場警備員

中央統戦部に詳しい専門家によると、在外中国人の活動目的は、共産党体制のコントロール外とみなされた思想組織を攻撃し、組織を弱体化・解体させることにある。その手段は、不和を起こして内部分裂させたり、悪質なレッテル貼りなどで社会から疎外させたりしている。

攻撃対象例は人権弁護士、民主活動家、チベットやウイグル、台湾など各地区の独立容認派、法輪功など。その他、自由主義や民主主義、保守的な思想、仏道儒の三教に基づく伝統的価値など、共産党イデオロギーの異見となる主張も含まれる。

中央統戦部の活動は拡大している。CECC(米国の中国問題に関する連邦議会・行政府委員会)委員長を務めるマルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員は、日本でも当てはまる工作事例を挙げた。たとえば工作員は▼勧誘や賄賂、脅迫などの手段で強引な取引を行う▼マスコミを使い世論を操作し、中国共産党寄りに傾くようにする▼中国という巨大市場を誘惑の材料にして、独裁政治を正当化させるような思想を海外に拡散する、など。

マルコ・ルビオ上院議員

おすすめ:中国人留学生、共産党イデオロギーを持ち込む 豪有識者が警鐘ならす

学校機関では、日本や西側諸国が伝える歴史事実や領土などの見解を受け入れようとしない中国人留学生が、教師の講義内容に異議を申し立て、学校側に授業内容の変更や謝罪を求めるなどの事態が起きている。

教育を通じた対外宣伝には、孔子学院が知られている。中国国務院によると、すでに1500以上の関連組織を世界中に設ける孔子学院の目的は「核心価値である社会主義を基礎とした教育を広める」「中国の夢を宣伝する」としている。日本には、早稲田大学、立命館大学、桜美林大学、工学院大学、武蔵野大学など20以上の教育機関に設置されている。

マスコミでは、ニューヨーク・タイムスなど在米有力紙に中国官製英字紙チャイナ・デイリーを定期的に織り込ませ、読者を無自覚に洗脳している。近年、共産党機関紙の日本語版が急増している。新華社通信、人民日報、中国国際放送局などの電子版は、相次ぎ日本語サイトを開設した。CNS(チャイナ・ニュース・ネットワーク)や人民網(チャイナ・ネット)と名付けられた媒体から共産党政策の宣伝、中国賛美を中心としたニュースが流されている。

おすすめ:郭文貴氏、共産党の浸透工作を暴露 日本でも「藍金黄計画」を展開

各国は中国共産党の浸透工作への対策に追われている。オーストラリアのターンブル首相は12月5日、中国政府の政治介入を念頭に、外国人や外国企業・団体からの政治献金を禁止する選挙法改正案を議会に提出すると発表した。

CECC委員長を務めるマルコ・ルビオ議員は先のホワイトハウスでの公聴会で次のように表現した。「足元で大きな異変が起こっているにも関わらず、私たちはそれにほとんど気づいていなかった。まるで茹でガエルのように」。

(翻訳編集・王君宜/佐渡道世)

【私の論評】中国はサラミ戦術を用い、我が国を蚕食しつつあり(゚д゚)!

上の記事で、マルコ・ルビオ議員が語る「ゆでガエル」という言葉、経営や組織を語る際によく使われるたとえ話です。

「カエルをいきなり熱湯に入れると慌てて飛び出して逃げるが、水から入れてじわじわと温度を上げていくと、カエルは温度変化に気づかず、生命の危機を感じないまま茹で上がり死んでしまう」

下の動画は、実際にカエルが茹で上がってしまうところを示す動画です。



これがいをゆる「ゆでガエル理論」、「ゆでガエル症候群」などと呼ばれるたとえ話で、元々は欧米で知られていました。日本では1998年に出版された「組織論」(桑田耕太郎・田尾雅夫著、有斐閣アルマ刊)の中で、「ベイトソンのゆでガエル寓話」として紹介され、知られるようになりました。

居心地の良いぬるま湯のような状態に慣れきってしまうと、変化に気づけずに致命傷を負ってしまうというビジネス上の教訓とされています。

これは、経営論でもよく知られていますが、最近では様々なたとえ話にも良く用いられています。

中国の他国への工作の仕方は、一度に大きく実行するのではなく、中国得意のサラミ戦術により行われることが多いので、多くの人がそれ気づかず、とんでもない状態になっているということです。

サラミ戦術とは、敵対する勢力を殲滅または懐柔によって少しずつ滅ぼしていく分割統治の手法。
 別名サラミ・スライス戦略、サラミ・スライシング戦略ともいわれる。

マルコ・ルビオ上院議員は日本の事例もあげていますが、その実態について日本政府は、すでに「警察白書」をもって公式に発 表していました。

 平成 29 年「警察白書」は、第 5 章第 2 節 1 項「対日有害活動の動向と対策」の中で、「中 国の動向」について、次のように記述しています。
 中国は、諸外国において多様な情報収集活動等を行っていることが明らかになって おり、我が国においても、先端技術保有企業、防衛関連企業、研究機関等に研究者、 技術者、留学生等を派遣するなどして、巧妙かつ多様な手段で各種情報収集活動を 行っているほか、政財官学等、各界関係者に対して積極的に働き掛けを行うなどの 対日諸工作を行っているものとみられる。
警察では、我が国の国益が損なわれるこ とがないよう、こうした工作に関する情報収集・分析に努めるとともに、違法行為 に対して厳正な取締りを行うこととしています。 在日中国人の数は約 73 万人。その中には、工作員として「選抜、育成、使用」される可 能性の高い「留学生」約 12.5 万人、「教授・研究・教育」約 2 千人、「高度専門職」約 5.2 千人、「技術・人文知識・国際業務」約 7.5 万人などが含まれる。(政府統計の総合窓口「e-stat」、 2017 年 12 月現在)

 また、中国から日本への旅行者は約 637 万人(2016 年、日本政府観光局(JNTO)統計) であり、通年で、約 710 万人の中国人が日本に滞在していることになります。 正確な数字は明らかではないですが、これほど多くの中国人の中には、相当数の工作員が含 まれていると見なければならないです。

 中国には「国防動員法」があり、動員がかかれば、「男性公民は満 18 から満 60 歳まで、 女性公民は満 18 歳から満 55 歳までの間、国防に従事する」義務があります。在日中国人や中 国人旅行者もその例外ではなく、日本国内において、彼らが在日工作員あるいは潜入した 武装工作員(ゲリラ・コマンド)と連携し、情報活動や破壊活動などに従事する事態を十 分に想定しておかなければならないです。 

加えて、北朝鮮およびロシアも、様々な形で対日有害活動を行っています。 一方、国内を見ると、日本共産党は、「しんぶん赤旗」(2007 年 11 月 29 日付)において、 読者の質問に答える形で「日本共産党は、一貫して統一戦線の結成と強化をめざしていま す」と表明しています。

 旧日本社会党であった社会民主党も、それ自体が中国や北朝鮮などとつながりを持った 統一戦線としての性格を有しており、日本共産党との「社共共闘」も革新統一戦線です。

 このように、日本は、中国をはじめとして、国内外の勢力が複雑に絡み合った「統一戦 線工作」の渦中に置かれ、そうしてわが国の至る所で、日常茶飯事のごとく、国民の身近に 工作が迫っている実態を理解し、厳重な警戒を怠ってはならないのです。

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2019年3月5日火曜日

中国・ファーウェイvs.米国、全面抗争へ…世界中の通信で支障発生の可能性―【私の論評】ファーウェイは生き残れるかもしれないが、中国共産党はいずれ崩壊することに(゚д゚)!

中国・ファーウェイvs.米国、全面抗争へ…世界中の通信で支障発生の可能性



中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)がアメリカ政府を提訴する方針であることが明らかになった。アメリカ政府は国防権限法で政府機関に対してファーウェイや同じく中国企業の中興通訊(ZTE)のサービスおよび製品の利用を禁じており、それに対してファーウェイは「裁判もなく特定の企業に制裁を科すのはアメリカ憲法違反にあたる」と主張する見込みだという。

 ファーウェイはアメリカ本社のあるテキサス州の裁判所に提訴するようだが、確かにファーウェイは中国企業であるものの、アメリカ本社はアメリカ企業であり、アメリカの国内法で守られるべき存在になる。判例としては非常におもしろい裁判になる可能性があるが、国防権限法は議会が定めた法律であり、政府はそれに従い行政を行っているにすぎない。そのため、ファーウェイの動きはアメリカ政府と議会のさらなる反発を招く可能性が高い。

 また、国防権限法は安全保障に関する法律であり、国民の安全を守るという国家の最大の責務と主権に関する法律である。世界貿易機関(WTO)でも安全保障に関する問題は例外条項とされており、安全保障を理由に国際貿易などを制限することが許されている。

 この問題を考える上では、法原則としての「統治行為論」が大きな意味を持つことになるだろう。これは「国家の重要な政治的判断は司法による法解釈の枠外である」という考え方で、簡単に言えば「国がなくなればその国の法律は無意味になるので、司法の判断の枠外である」というものだ。日本でも、過去に自衛隊違憲訴訟などで適用されている。

ファーウェイをいつでも潰すことができる米国

 ファーウェイといえば、副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟被告がカナダで拘束されており、アメリカは身柄の引き渡しを求めている。カナダ司法省は3月1日に身柄引き渡しの審理開始を決定しており、6日には孟被告が出廷する予定だ。

 孟被告と法人としてのファーウェイは1月にアメリカ司法省に起訴されているが、その理由はイランへの金融制裁違反と銀行詐欺(銀行を騙しての不正な送金)、さらにTモバイルに関する産業スパイの容疑であり、問題はそれらが誰の指示で行われたのかである。

 孟被告単独の可能性は低く、中国人民解放軍出身の創業者で孟被告の父でもある任正非最高経営責任者(CEO)や中国政府および軍の関与も指摘されている。アメリカとしては、事実上の終身刑もあり得る刑罰の軽減または免責と証人保護プログラムの適用を引き換えに、孟被告にすべてを吐き出させたいはずだ。そして、仮に孟被告が任CEOや軍の関与を認めれば、ファーウェイ問題は次のステージに移ることになるだろう。

 ちなみに、今回の容疑は金融制裁違反であるため、アメリカとしては大統領令でファーウェイをセカンダリーボイコット(二次的制裁)の対象として「SDNリスト」(アメリカの経済制裁の対象となる人や国、法人のリスト)に入れることができる。そうなれば、ファーウェイはアメリカとの取引がある世界中の銀行の口座が凍結され、一切の金融取引が禁じられる可能性もあるわけだ。いわば、アメリカはドナルド・トランプ大統領の判断ひとつでファーウェイをいつでも潰すことができるといっても過言ではない。

 ただ、現在のファーウェイのシェアを考えた場合、そうなれば世界中で通信に支障が出る可能性があり、同時にアメリカが悪者扱いされることも考えられる。そのため、通信規格の世代が変わるタイミングで、まずは「5G」市場から排除し、影響が緩和されたところで一気に締め付けるという方策が現実的だ。

 任CEOはすでにBBC(英国放送協会)のインタビューで「アメリカに押し潰されるなどあり得ない」などと語っており、アメリカに対して徹底抗戦の構えを隠していない。いずれにせよ、一連の動きによって、ファーウェイとアメリカは全面対決の様相を呈してきた。

 一方で、中国は拘束中のカナダ人2人について「国家機密情報の窃取に関与していた」との見方を示すなどカナダへの圧力を強めており、今後も中国およびファーウェイとアメリカの対立はエスカレートしていくだろう。そして、それは米中の貿易協議にも大きな影響を与えると思われる。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】ファーウェイは生き残れるかもしれないが、中国共産党はいずれ崩壊することに(゚д゚)!

18年にファーウェイ問題が騒動になってから、それまでメディアにあまり登場していなかった創業者の任正非CEO(最高経営責任者)や同社幹部などがたびたびメディアの取材に応じています。その中で、ファーウェイ側は米政府による指摘について、ことごとく否定していました。

しかし、彼らの疑惑に対する回答は「玉虫色」だと言わざるを得ないです。例えば、梁華会長は2月12日、カナダのトロントで記者の質問に応じ、「中国政府から外国の通信網へのバックドア(裏口)設置を要請されたとしても、法的に義務がないことを理由に拒否する意向を示した」といいます。また、「そうした要請をこれまで受けたことはないが、要請があったとしても拒否するだろうと話した」と報じられています(ブルームバーグ、2019年2月22日付)。

ちなみにバックドア(裏口)とは、攻撃者が自由に不正アクセスできる、システムの“裏口”を指します。

ただこの話はバックドアに限定した話であり、政府からの情報提供の要請に応じないとは言っていません。というより、中国企業には応じないという選択肢はありません。

中国には、17年に施行された「国家情報法」という法律が存在します。この法律は、民間企業も個人も政府が行う情報活動に協力しなければならないというものです。中国政府からの「バックドア設置の要請」は断れば、情報提供を断ったことになり、法律違反になるのです。

さらに言えば、サイバー空間のスパイ工作で情報を盗むのは、バックドアを設置しなくてもできます。情報を盗む術はいろいろと考えられるのです。任正非CEOは、「良い製品を作れば売り上げの心配をする必要などない……買わないなら向こうが損するだけだ」と自社の技術力に自信を見せていますが、その技術力をもってすれば、情報を抜く手段はバックドアを設置せずとも十分に可能です。



もっとも、過去には実際に、ファーウェイ製品から情報が抜かれていた話も出ています。17年には、エチオピアに拠点を置くアフリカ連合(AU)本部のコンピュータシステムから、過去5年にわたって、毎晩、真夜中の0時から2時の間に機密情報が上海に送信されていることが判明しました。このシステムは、中国政府がファーウェイ製の機器やケーブルなどを使って設置したものでした。

また14年には、オーストラリアの大手企業が、会社のネットワークからファーウェイ製品を介して不正にデータが中国に送られていることに気が付いたという事件がありました。それ以降、オーストラリアでは政府関係機関や大手企業などでファーウェイ機器を使わないよう情報を通達しました。

こうしたスパイ工作についても、ファーウェイの任正非CEOや幹部たちは反論しています。そして、ファーウェイが中国政府のスパイ工作に加担しているという指摘について、米国は何ら証拠を示していないと主張しています。「盗んでいる証拠を見せろ」ということです。

ファーウェイの任正非CEO

この点について、米国側の見方はどうなのでしょうか。実のところ、米国はスパイ行為を証明する必要はないと考えていいます。

そもそも必要とあれば、国民の代表である議会議員らが連邦議会の委員会できちんとした捜査を行うことになります。現状、米国内では、その必要性すら議論されていません。過去にファーウェイが米国のメーカーなどから機密情報を盗んできた証拠もあるし、それはファーウェイ側も否定しないはずです。そんな背景からも、米国側に言わせれば、今のところスパイ工作や中国政府とのつながりを証明するまでもないのです。

さらに付け加えれば、もし米国が新たにファーウェイによるスパイ工作などのハードエビデンス(動かぬ証拠)を持っていたとしても、それが米国側から中国に対するサイバー攻撃やハッキングなどで得たものならば、公表はできるはずがないです。それ自体が、機密作戦だからです。

そもそもサイバー攻撃は、それが行われた事実を具体的かつ決定的に証明するのが難しいです。真実はどうであれ、中国政府は自らの関与を否定することができるのです。また、米国が公の場で中国の責任を問い詰めるためには、自国政府の機密やサイバー上の能力を露呈しなければならなくなります。その犠牲を払ってまでアメリカが中国政府を責めたてるとは考えられないです。


一方で、こんな声もあります。ファーウェイ自身が、同社製品には何ら怪しいことはないと証明すべきではないか、と。

例えば、16年に韓国サムスン電子製スマホである「Galaxy Note 7」が火を噴いた事件を覚えているでしょうか。当時サムスンは、その大打撃から挽回するために、客観的に調査を行う外部の専門家を雇い、徹底した内部調査を開始。その結果を広く公表することで、自社製品の安全性を訴えました。さらに、欧米などのさまざまなメディアをバッテリー工場に招き、取材もさせました。そうすることで、安全性と再発防止に向けた意思を対外的にアピールしました。

ファーウェイも本部で開催する記者会見にメディアを呼ぶだけでなく、きちんと情報を開示するなどして「後ろめたいことはない」ということをアピールすべきでしょうか。

通信機器を販売する米シスコも、機器にスパイ工作用のチップが埋め込まれているという疑惑が出たことがありましたが、シスコ側は、消費者にシスコ製品を購入して徹底的に調べてほしいと訴えました。しかも調べるために購入した代金は、シスコが負担するとまで言ったのです。ファーウェイもここまでコケにされたら、口だけでなく、疑いを晴らすべく行動すべきです。


こうしたさまざまな議論が交わされている中、トランプ大統領がまた予想外の動きを見せているとして話題になっています。トランプは、ファーウェイ排除について「見直し」を示唆しているとも報じられています。協議中である米中の貿易交渉を意識してのことのようです。

そもそも、米国がファーウェイを排除することは何ら「異常なこと」ではありません。というのも、中国政府も米IT大手のFacebookやTwitterなどを利用できないようにして米大手企業を実質的に中国市場から排除しています。ファーウェイ排除も、要はお互いさまなのです。

ではトランプは「見直し」をする可能性があるのでしょうか。そのヒントは、中国通信機器大手・中興通訊(ZTE)のケースにあるかもしれません。

米政府は18年4月、対イラン・対北朝鮮の制裁に関連する合意にZTEが違反したとして、米国企業にZTEとの取引禁止措置をとりました。これによって、半導体など基幹部品を調達できなくなったZTEは、スマホなどの生産ができなくなってしまいました。

追い詰められたZTEは、習近平国家主席に泣きつき、トランプへの口利きを要請。結局、ZTEはトランプに屈して、10億ドルの罰金を支払った上で、今後10年間、米国の内部監視チームを入れることにも合意しました。

おそらく、ファーウェイもこのくらいまでしなければ、トランプに排除を撤回させることは難しいのではないでしょうか。


ここまで見てきたような動きに加え、メディアでは、中国がニュージーランドとの貿易などで輸出を遅延させているという話が浮上したり、中国がオーストラリアからの石炭輸入を禁止にするという話も出てきたりしています。

ニュージーランドもオーストラリアも5G(第5世代移動通信システム)でファーウェイ製品を排除する方向で動いており、中国による報復措置だとする向きがあるのです。事実なら、やはり中国政府はファーウェイの後ろ盾になっていると示しているようなものです。

ちなみに英国でも、情報機関がファーウェイ製品について「リスクは管理可能」だと述べていることが話題になっています。ただし、英政府はファーウェイ製のスマホなどは禁止にしないかもしれないですが、通信機器やルーターなどインフラに絡むものは禁止していくことになるでしょう。

そもそも、英国のHSBCが 窓口となった資金洗浄とイランへの不正輸出のかどで、ファーウェイの孟晩舟副社長がカナダで拘束され、取り調 べが済み次第、米国へ移送される手筈、米国で訴訟が待っているわけです。これまでに判明している事実経過は、送金に利用された HSBCが司法取引に応じて、確固たる資料を提供していたことです。

孟晩舟は「わたしは関与していない。無罪である」と主張を繰り返していますが、HSBCでファーウェイが架空取引の口座 として使用していたのが「スカイコム」と「カニュキラ・ホールディング」という二つのペーパーカンパニーでした。

ファーウェイが1590万ドルを「カニキュラ」に貸与して、一年後に返金されている事なども口座取引の記録から判明して います。

両口座はHSBCにより閉鎖され、その残金がファーウェイに戻されていました。「スカイコム」は、イランのパートナーを通 じて、HP(ヒューレット・パッカード)のコンピュータを1500万ドルで売却していました。

こうした不正行為が発覚したのが2010年で、HSBCは司法取引に応じて19億2000万ドルを米司法省に罰金とし て 支払い、同時にファーウェイとの銀行取引をやめ、口座を閉鎖しました。

1500万ドルの不正送金で、19億ドル余の罰金とは、なんと間尺に合わないことなのでしょう。おそらく水面下の余罪は、巨 額にのぼるでしょうが、米国の裁判で、そのような機密口座の資料が公開される可能性があります。

HSBCの内部調査資料では、ファーウェイとスカイコム、さらにはファーウェイが2007年にスカイコムを売却したとする相手企業のカニキュラ・ホールディングスとの関係について新たな情報を提供しています。3社ともかつてHSBCに口座を保有していました。

資料によると、スカイコム株売却を報告してからかなり後も、ファーウェイがスカイコムとカニキュラ両社の経営権を握っていたと示唆するような関係性があったことが調査で明らかになっています。また、カニキュラによるスカイコム買収に対してファーウェイが資金を融通したことも発覚しました。

こういった関係があったにもかかわらず、孟CFOはHSBCの幹部に対するプレゼンテーションで、スカイコムはイランでの「ビジネスパートナー」だと説明。司法省起訴状では、このプレゼンテーションは「多くの事実を曲げて伝えていた」とされています。

ファーウェイは、今後も米国を批判し、安全だと主張し続けて潰れる道を選ぶのでしょうか、もしくは透明性を高め安全性を客観的に証明して生き残りの道を選ぶのかいずれかの道を選ばなければならないのは間違いないです。


ファーウェイは生き残りを模索できるかもしれませんが、中国共産党はそうではないかもしれません。

孟晩舟被告が米国で、司法取引に応じて、中国政府の関与について証言することになれば、中国のメンツは丸つぶれになり、米国と中国の対立はさらにエスカレートすることになります。

私は、トランプ大統領のファーウェイ排除について「見直し」を示唆したことは、孟晩舟被告の司法取引に関係していると考えています。ファーウェイを完璧に排除ということになれば、孟晩舟被告は司法取引に応じない可能性もあります。

トランプ大統領というか、今や米国の考えでは、一企業であるファーウェイを潰すことに大きな意味はないです。それよりも、その背後にあり、ファーウェイを操っている中国共産党をどうにかしたいのです。

米国は、孟晩舟被告の司法取引を機に、中共の卑劣な情報技術の窃盗の実態を明確化し、その後に中国に対する制裁を強化しようとしているのです。

米政府は中国が本格的に構造改革を実行して民主化、政治と経済の分離、法治国化を推進するか、中国がそれを拒否すれば、中国に対しても北朝鮮に実行しているような本格的な制裁を課すことになるでしょう。

それは、中国経済が弱体化して、他国に対して影響力が行使できなくなるまで続くでしょう。その過程において、無論中国共産党一党独裁体制は崩壊することになります。


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2018年11月19日月曜日

【瓦解!習近平の夢】ペンス氏、「中国共産党」への宣戦布告 講演で宗教弾圧を指摘―【私の論評】日本も世界の"信教の自由"に貢献すべき(゚д゚)!


ペンス副大統領

 「国際社会は一体となって、各地の残虐行為をやめさせなければならない」

 キリスト教カトリックの総本山バチカン(ローマ法王庁)が声明を出すなど、これまで70年近く、対立する関係にあったのが、“無神論者”の集団、中国共産党が統治する中国だった。

 世界各国のカトリック教会において、司教の任命権はバチカン、すなわちローマ法王にある。だが、中国政府はそれを「内政干渉だ」と拒絶し、共産党の主導で、バチカンとは独立した形でカトリック団体を設立し、独自に司教の任命を行っていた。

 一方、キリスト教に帰依する中国国内の人民たちは、中国政府の監視や干渉から逃れて活動する教会、いわゆる「地下教会」へ通っていた。信者数が増え、規模が大きくなった地下教会に対して、中国政府は、見せしめ的にカトリックの神父や、プロテスタントの牧師を拘束したり、教会や関連施設を破壊するなどの弾圧を続けていた。

 そのようななかで、今年9月下旬、「バチカンが中国と司教任命権問題で暫定合意」という衝撃のニュースが世界を駆けめぐったのだ。しかも、習近平政権が、ウイグル、チベット民族などへの宗教弾圧をますます強めていることを、人権団体やジャーナリストが、数々の証拠とともに告発していた最中の、いわば「あり得ない合意」だった。

 中国のキリスト教信者数は、政府の公式統計によると、プロテスタントが3800万人、カトリックが600万人とされている。ここに「地下教会」へ通う信者も含めると、総計で2倍強の9000万人以上と推測されている。

 習政権は4月、『宗教白書』という文書を発表したが、ここには、「宗教の中国化を進める」と記されていた。地下教会を含む宗教組織を、今後、共産党の管理下に置き、党を支持するよう誘導していく算段であることが分かる。

 事実「宗教情報員」システムも稼働している。中国統一戦線工作部に任命された情報員の主な仕事は、宗教活動を含む一般住民の生活と、「隠れた危険」をはらむ思想や活動を、各地区の宗教事務局に適宜報告することだ。情報員にはわずかながら報酬も支払われるが、反対に報告を怠ると罰金が科される。これはまさに、毛沢東時代の文化大革命と同じ、チクリ社会であり恐怖政治の幕開けである。

 それにしても、なぜバチカンが暫定合意したのか?

 「欧州でカトリック教徒の教会離れ、信者減が顕著に進んでいたから」との解説もあるが、“無神政党”に乗っ取られるとの危機感がなければおかしい。

 マイク・ペンス米副大統領は10月4日、ワシントンのハドソン研究所で講演し、「邪悪な中国共産党」との戦いを呼びかけた。ペンス氏は敬虔(けいけん)なカトリック信者でもある。「(宗教を含む)自由と民主」「法の下の平等」「人権」という価値観を持たない、習政権への宣戦布告である。

 日本の政財官界もいい加減、「神の存在なき隣国」との付き合い方を、抜本的に見直すべき時に来ているはずだ。=おわり(ノンフィクション作家・河添恵子)

【私の論評】日本も中国の"信教の自由"に貢献すべき(゚д゚)!

米国の国務省は5月29日、各国の信教の自由に関する2017年版報告書を発表しました。報告書では特に北朝鮮について、宗教活動に携わった人々が処刑・拷問・殴打・逮捕の対象になるなど、「苛酷な状態」に置かれていると指摘されています。


北朝鮮では、宗教の自由を侵害する事例が昨年だけで1304件発生しており、政治活動や宗教活動が理由で政治犯収容所に拘束されている人々が、約8~12万人に上るとの推計も示されています。

「宗教の自由問題」担当の特別大使として、2月からトランプ政権の国務省に加わったサム・ブラウンバック氏は、同日の記者会見で、「米朝首脳会談でも、信教の自由の問題が議論のテーマになる」との見通しを示しました。

自身もローマ・カトリック信者であるサム・ブラウンバック氏

トランプ大統領は5月3日、信仰に関する新しい部署「信仰・機会イニシアチブ」をホワイトハウスに設置する大統領令に署名しました。

9日付クリスチャン・トゥデイによると、トランプ氏は、「この部署の役割は、宗教団体が平等に政府の基金に預かり、信条を実践する権利を平等に持つことを保証するものです。この措置を取る理由は、多くの問題や大きな課題を解決する上で、信仰の方が政府よりも力強いことをわれわれは知っているからです。神よりも力強い存在はありません」と述べています。

米国や他国における信教の自由を守ろうとするトランプ氏の決意の表れとも捉えられます。

今回発表された報告書の中では、チベット仏教徒、ウイグルのイスラム教徒、法輪功の学習者などに対して、中国政府が行っている宗教弾圧についても言及されています。

5月30日付大紀元時報では、「中国は憲法で、国民には宗教と信仰の自由があると定めているが、中国共産党の利益にならない宗教を『脅威』と定め、支配と統制を行っている」「中国共産党政府は『愛国的な宗教活動』だけを認めており、登録されていない宗教の信仰者に対しては拷問、心身の虐待、拘束、不当な有罪判決を下している」と報じられました。

トランプ米政権は、世界の宗教の自由を保護する立場を強く打ち出しており、7月25~26日に宗教の自由を推進する閣僚級会合を開催しました。


米ワシントンD.C.で80か国の外相が出席した閣僚会議が中心となる、宗教の自由週間では、Bitter Winterが司会を務めるディスカッションが開幕イベント(上 写真)となり、中国で行われているウイグル族、法輪功、全能神教会への弾圧について話し合いました。

この会議において、弾圧されている各宗教の当事者に取材したレポーターによると、それぞれが口をそろえて述べていたことは、「アジアの大国である日本への期待」でした。アジアの多くの国が中国の経済力に依存している中、日本を頼りにしている人権活動家が多いことがうかがえます。https://jp.bitterwinter.org/tag/ministerial-to-advance-religious-freedom/

また、このレポーターによば、中国や北朝鮮で、「信教の自由」を求めて中国共産党や金正恩政権の弾圧に耐える人々の話に触れることで、「信教の自由」がいかに大切なものであるかを実感できるとしています。

ペマ・ギャルポ氏

日本に亡命しているチベット人学者のペマ・ギャルポ氏は、「宗教がなければ、善悪の区別ができません。善悪の区別がないところに、正義はありません」と述べました。日本人へのメッセージを求めると、「日本の方には、現在、どれほどの自由を享受できているのかを認識するとともに、他の国で自由を奪われて苦しんでいる人々にも関心を持っていただきたい」と述べました。

そもそも、中国や北朝鮮の独裁政権が国民を拘束して拷問したり、あらゆる自由を奪ったりしているのは、人間を「機械」としか見ていないためです。その背景には、神も仏も信じない「無神論国家」であることがあります。日本としても、アジアに信教の自由を広める動きを後押しする必要があります。

日本国憲法20条には「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」とあります。信教の自由は具体的には、(1)内心における信仰の自由、(2)宗教活動の自由、(3)宗教結社の自由の3つを意味します。

つまり、たとえ反社会的な内容であっても、個々人の心の中で信仰し、行動として表さない限りにおいては何ら制約を受けません。そして、布教活動を始めとする宗教活動や宗教団体を結成することに対しても自由が与えられています。

ただし、宗教活動が反社会的であったり犯罪行為を伴う場合は、その自由も制約を受けざるを得ないことはいうまでもありません。また、宗教団体の信教の自由と個人のそれとを同等に論じることはできないです。個人の自由を基本とする現行の憲法下では、宗教団体を構成する個人の信教の自由がまず優先されると考えられます。

このような日本では、たしかに特定の宗教に属している個人を弾圧するなどということはありません。

また、昔から八百万の神として、神々を受け入れ、他国に比較すると、互いに過激な摩擦を起こすこともなく、他国にみられる宗教戦争もなく、長い間過ごしてきたという伝統もあります。

そのような日本は、信教の自由を強く主張できると思います。だからこそ、先にも掲載したように、弾圧されている各宗教の当事者口をそろえて「アジアの大国である日本への期待」を述べたのでしょう。

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2018年9月13日木曜日

アリババ創業者突然の引退宣言、中国共産党からの「身の危険」…企業家が次々逮捕・亡命―【私の論評】習近平がすぐに失脚すると見誤った馬会長の悲運(゚д゚)!

アリババ創業者突然の引退宣言、中国共産党からの「身の危険」…企業家が次々逮捕・亡命

プーチン露大統領(左)と、アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)会長(右)
写真はブログ管理人挿入

「そこに座ってロシアのお菓子を食べている若い方に質問したい。馬雲さん、あなたはまだ若いのに、なぜ引退するのか」

「大統領閣下、私は若くありません。昨日、ロシアで54歳の誕生日を迎えました。私は創業して19年間、一生懸命働いてきました。でも、もっと多くの好きなことをやりたいと思っています。例えば、教育や慈善事業です」

これは9月11日、ロシア・ウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」でのひとこま。フォーラムに参加した企業家の円卓会議に出席したプーチン大統領が進行を遮って、冒頭の発言を行ったのだ。大統領が質問をした相手は、中国電子商取引(EC)最大手、アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)会長だった。

馬氏は前日の10日にはロシア入りしていたのだが、その当日に「教師の日、おめでとう!」と題する声明を発表し、「1年後の来年9月10日に会長を辞任する」と電撃的に宣言したのである。このニュースは世界中を駆け巡り、多忙を極めるプーチン氏の耳に入り、大きな関心を抱いたであろうことは冒頭の質問でもわかる。質問された馬氏は、一瞬きょとんとした表情をしたというが、さすがに当意即妙の返事をするところは、大企業のトップらしい。

プーチン氏は「私は若くはない」との馬氏の返事を聞いて、「あなたは私よりも若い。私はすでに66歳」と切り返したのだが、「66歳の俺が大統領を務めているのに、俺よりも若いお前が、なぜ現役を退くのか」というのが正直な感想だろう。

プーチン氏と同じ疑問は、多くの人が抱いているのではないか。3万6000人もの従業員を抱え、時価総額4200億ドル(約46兆円)の巨大企業トップの座から簡単に降りることはできるのかという疑問は、誰でも感じるだろう。その答えは、馬氏の10日の声明にある。

「東方経済フォーラム」では他にもハプニングがあった・・・

ちなみに、重大発表を行うのに9月10日を選んだのには、3つの意味がある。

まず、馬氏がプーチン氏に答えたように、54歳の誕生日であり、19年前の1999年のこの日に、馬氏を含めて18人がアリババを立ち上げた。さらに、この日は中国の「教師節(教師の日)」でもあり、今後教育に取り組みたいとしている馬氏にとっては特別な日ともいえる。

「私は教育に戻りたい」

10日の声明によると、馬氏が会長職辞任を考えるようになったのは10年前だったという。

「誰であれ、永遠に会社の最高経営責任者(CEO)と会長の仕事を続けることは不可能だ。10年前、私はこの問題を自分に問いかけてみた。馬雲が辞めた後、アリババは依然として健全に発展していけるだろうか? (中略)こう考えて、この10年間、私は絶え間なく努力、実践してきた。(中略)5年前にCEOを譲ったあとも、これまで5年間、順調に推移してきた」

そして後継者の張勇CEOについて触れ、「張勇は卓越した商才と堅実で沈着冷静なリーダーシップを持つ」として、張勇氏がCEOとして13四半期連続で業績を伸ばし続け、2018年の中国で最高経営者の栄誉を受けたとして、張勇氏を後継者に指名することは「私が現在なさなければならない、もっとも正確な決定である」と結論づけている。

そのうえで、馬氏は「私は教育に戻りたいと思う。私が最もやりたいことをするのは、私を非常に興奮させ、この上もない幸福を感じさせるのである」として、最後に「私は皆さんに請け負うことができる。アリババは馬雲だけに属するものではないが、馬雲は永遠にアリババに属していることを――馬雲 2018年9月10日」と結んでいる。

このように読んでみると、「優秀な後継者ができたから、これまでやりたくてできなかった教育の道に戻りたい」ということに尽きるのではないか。

ちらつく中国共産党の影

いわば、馬氏らしからぬ「逃げ」という印象を受ける。というのも、このところ中国では有能な若手経営者が続々と職を追われているからだ。なかには“塀の中”に落ちた者もいる。彼らは例外なく、多かれ少なかれ党中枢の幹部と密接な関係を持っている。

例えば、中国最高指導者だったトウ小平の孫娘と結婚した安邦保険の呉小暉元会長は、のちに離婚したもののその関係を利用して同社を巨大化させた。呉氏は派手な海外投資でニューヨークの著名なホテルなどを買収していったが、いまや詐欺と職権乱用などの罪で懲役18年の実刑判決を受け、個人資産105億元(約1800億円)を没収された。

また、曾慶紅元国家副主席と親しいとされる政商の郭文貴氏は現在、米国に事実上の亡命状態だ。同じく曾氏と親密な関係にあった実業家の肖建華氏は香港の最高級ホテルのスィートルームに滞在中、何者かによって拉致され、中国大陸に連れていかれたと伝えられる。

また、逮捕などはされていないが、やはり海外のホテルなどを買収するなど多額の海外投資を展開してきた大連万達(ワンダ)グループ総帥の王健林会長は、傘下のホテルを売却するなど業績が急速に悪化している。“香港の超人”と呼ばれる李嘉誠長江実業会長もさきごろ引退した。さらに、アリババのライバルでEC第2位の京東集団の劉強東CEOが性犯罪の容疑で米国で起訴されたと伝えられる。一説にはハニートラップに引っかかったとの噂も出ている。

彼らは派手な海外投資で外貨を浪費しているなどとして、中国共産党当局から目をつけられていたとの情報も伝えられていただけに、同じように海外でのビジネスを拡大してきた馬氏も、身に危険を感じたとしても不思議ではない。

馬氏のバックには習近平国家主席が付いているとされる。習氏はかつてトップを務めた浙江省に赴任していたことがあり、浙江時代の腹心は多数、中央の幹部に取り立てられているが、いまや馬氏のアリババは国有企業を差し置いて、中国有数の企業に成長したことで、馬氏と習氏の関係が微妙になっているとも伝えられている。よって、今回の唐突な馬氏の「引退宣言」は、共産党一党独裁体制下の中国という特殊なビジネス環境が大きな原因となったことは間違いないところだろう。

企業家が政治家と癒着するとろくなことがないのは、資本主義国も同じだが、中国では政治家のコネがないと成長できないのは周知の事実であり、中国の企業家は常に危険と隣り合わせているといっても過言ではないだろう。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

【私の論評】習近平がすぐに失脚すると見誤った馬会長の悲運(゚д゚)!

石平氏は、馬雲会長の引退について以下のようなツイートをしていました。

このツイートにある、香港紙とは英字新聞の"サウスチャイナ・モーニング・ポスト"のことです。この新聞は7月に、「中国共産党支配の正統性は好調な経済に支えられてきた。貿易戦争で経済危機が起これば、その正統性は確実に揺らぐ」とする上海の政治学者のコメントを引用し、米中貿易摩擦で効果的な手を打てない習氏は「体制発足後最大の試練を迎えた」と報じています。

この香港氏の報道にもあるように、中国では習近平体制をめぐり“異変”が起きているようです。国家主席の任期を撤廃し長期政権を可能にした今春以降、加速していた個人崇拝の動きに歯止めがかかっているようです。

2012年に発足してから最大の失点と目される貿易問題の影響が及んだ形のようです。先日もこのブログでお伝えしたように、8月上旬から開始された中国共産党の重要会議「北戴河(ほくたいが)会議」にも異変がありました。

これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国急変!習氏“最側近”王氏、8月恒例の「北戴河会議」に姿なし…政策失敗の全責任を負わせ失脚か? ―【私の論評】日米リベラルの中国報道を鵜呑みにすれば末は時代に取り残された化石になる(゚д゚)!
中国の習近平国家主席。米中「貿易戦争」に頭が痛い=7月、南アフリカ・ヨハネスブルク
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、「北戴河(ほくたいが)会議」の異変に関連する部分のみ以下に引用します。
「北戴河に(チャイナセブンの1人)王滬寧(オウ・コネイ)の姿がない」「1カ月近く雲隠れしている」「失脚か?」「影響力を失った」などの内容が、反共産党系中国メディアから噴出している。
歴代中国共産党トップの理論的支柱を務めてきた
王滬寧氏。習近平思想も彼が骨格をつくりあげた。
序列5位の王氏は、「3つの代表」「科学的発展観」「中華民族の偉大なる復興」など、江沢民、胡錦濤、習近平という国家主席3代の重要理論の起草に関与し、中南海の“知恵袋”と言われてきた。第16回党大会(2002年11月)で中央委員入りし、党中央政策研究室主任に就いて16年、現在に至るまで、その地位を維持してきた。
だが、第2次習政権は、その王氏に一連の政策失敗の全責任を負わせ、習政権の“イメージ転換”を図るのだろうか?
海外の中国人ジャーナリストらの弁によれば、「鄧小平時代の『韜光養晦』(とうこうようかい=才能を隠して、内に力を蓄える)の時代とは一変し、習政権が傲慢に『見える』ことで、世界から不評を買ってしまった。その責任が彼(=王氏)にある」という論理だ。2月下旬に封切られた中国の自画自賛映画『すごいぞ、わが国』も4月に突如、上映禁止が報じられた。
習国家主席(党総書記)は3月の全国人民代表大会(国会に相当)で国家主席の任期を撤廃、23年以降の続投に道を開きました。

以後、党規約や憲法に明記された習氏の政治思想は全国の学校や職場での学習が推進され、習氏の著作はベストセラーになりまし。「習主席語録」も一部で出回るなど建国の父、毛沢東以来の個人崇拝が広がっていました。

こうした中、7月、屋内外の習氏の写真やポスターを即刻撤去するよう警察が指示したとする文書がインターネット上で拡散していました。同じく7月初めには、ある女性が上海市内で「独裁、暴政に反対する」と叫びながら、習氏の写真に墨汁をかける動画が公開されていました。

また、陝西(せんせい)省の政府系研究機関、社会科学院で同時期に、習氏の思想・業績を研究するプロジェクトが突然中止されました。同様のケースが相次いでいました。

党機関紙、人民日報の“変調”も指摘されいました。ちょうどその頃1面の見出しの中に習氏の名前が含まれていない日がたまにあることに、"サウスチャイナ・ポスト"が注目し、「単なる偶然ではない」と背景に関心を寄せ、上記のような報道をしたのです。

しかし、馬雲会長はそもそも当初から、習近平と対立していたわけではありませんし、どちらかといえば、習近平を擁護していました。

アリババが香港英字紙である"サウスチャイナ・モーニングポスト(南華早報)"を買収したのは、2015年12月11日のことでした。

サウスチャイナ・モーニングポストはイギリス占領時代の1903年に設立された英字新聞で、創設時はまだ清王朝時代だったため、「南清早報」という中国名を号していました。1912年に「中華民国」が誕生すると「南華早報」に改名し、現在に至っています。

中文版もあり、中英文ともウェブサイトがあります。

政治的立場としては、激しい中国政府批判はしないものの、やや民主的で、2014年の雨傘革命のときには「普通選挙」を支持する報道をしたこともあります。そのため中国の国家的ネット検閲機関である「防火長城(万里のファイヤーウォール、Great Fire Wall)」により中英文ウェブサイトとも完全に遮断されて、中国大陸のネット空間では見ることができなくなりました。

解禁されたのは2015年の9月になってからでした。しかしなお、「港澳台(香港、澳門、台湾)」に関する報道は大陸では封鎖されたままです。

香港の雨傘革命
そのサウスチャイナ・モーニングポストをアリババが買ったのです。

それは何を意味するものだったのでしょうか?

実は2015年6月にも、アリババは「第一財経日報」およびその系列のウェブサイトなどに対して、30%の株を取得して発言権を獲得していました。表面上は「ビッグデータ処理」など、ビジネスが目的だとしていましたが、実際は違うようです。

第一財経のウェブサイトが発信する情報は、中国政府を客観的にではありますが、ときには堂々と批判することもあり、とても中国大陸のウェブサイトとは思えないような大胆さがありました。

ということは、どうもアリババは「民主化的傾向のあるメディア」あるいは、ともすれば「中国政府を批判する可能性のあるメディア」を、次々と買収したり大株主になったりして、その発信内容をコントロールしようという意図があったようにみえます。

特にサウスチャイナ・モーニングポストは、2013年7月に馬雲をインタビューした記事を4日連続で掲載したことがあります。そのときアリババで起きた不祥事に関して責任問題を問うたとき、馬雲は「六四事件(天安門事件)のときにも鄧小平は国家最高の責任者として決断をしなければならなかった。あの決断(民主を叫ぶ若者を武力鎮圧したこと、筆者注)が正しかったように、最高責任者は毅然と決断をしなければならない」という趣旨の回答をしました。

この回答をサウスチャイナ・モーニングポストがウェブサイトに載せると、香港の若者たちが激しい抗議を発信し始め、またたく間に大陸のネット空間へと広がっていっきました。

馬雲は1964年に浙江省杭州市で生まれています。1982年に高校を卒業しましたが、大学受験で数学の点数が悪く(1回目の受験で1点、2回目の受験で19点)、大学受験に失敗。そこで三輪車で雑誌社の本を運ぶ仕事に就きました。その後杭州師範学院で英語と対外貿易を学び、訪米したことからインターネット・ビジネスに興味を持ようになりました。

1999年にアリババを立ち上げるや、爆発的な成功を収め、2000年には雑誌『フォーブス』の表紙を飾るに至りました。大陸にいる中国籍の中国人がフォーブスの表紙に載ったのは、中華人民共和国建国以来、初めてのできごとで、馬雲は一躍有名になりました。

Forbsの表紙を飾った馬雲会長

2002年から2007年まで浙江省の書記をしていた習近平は、「民間企業振興」に力を注ぎました。当然ながら、浙江省で成功した馬雲のアリババを重視していました。2007年から上海市書記になると上海市政府の指導層を引き連れて浙江省視察に出かけ馬雲に会い、「上海市に活動の拠点を移してくれないか」と頼んだほどです。

それくらい馬雲を高く評価していました。だから、国家主席になった後の海外訪問では、馬雲を大規模な企業集家代表団の筆頭として随行させることが多くなりました。たとえば2015年7月の韓国訪問で習近平国家主席がスピーチをした時には、馬雲は代表団の第一列目に並んで「中国を代表する企業」としての存在感を見せつけていました。

中国の経済力によって韓国を中国側に惹きつけておきたい習近平としては、『フォーブス』の表紙を何度か飾っている馬雲は、言うならば中国経済成功のシンボルのようなものだったのでしょう。

では、馬雲と習近平の仲が非常に順調に行っていたかというと、必ずしもそうではありませんでした。

実は2015年1月15日、習近平は中共中央紀律検査委員会第三回全体会議閉幕に当たって、「私人会所」の取締りを厳しくしろという指示を出しています。「私人会所」とはどういうことかというと、党や政府の組織でなく、私人が勝手に団体を作り、富豪のクラブのようなつながりで利益を追求していく行動を指しています。

胡錦濤政権時代、中央司令塔の事務方のトップだったような令計画が当時「西山会」を作って暴利をむさぼり逮捕されていました。

このとき馬雲が浙江省杭州市に作っていた「江南会」も調査の対象になることを、馬雲は事前にキャッチしていました。この「江南会」は2006年に浙江商人8人が発起人となって作った「会所」で、入会費20万元(約400万円)。厳格な入会審査があります。この江南会も西山会同様、捜査の対象になりそうだという情報が入ってきたのです。

2015年1月21日のダボス会議では、李克強首相に随行して、やはり李克強のスピーチの最前列に陣取っていた馬雲でしたが、演台から下りた李克強は、馬雲の顔を見ず、その隣に座っていた企業家代表から握手を始め、立ち去ってきました。

3日後の1月24日、中国国家工商総局はアリババが販売するネットショップ商品の62%以上が偽商品であると発表しました。あらゆるネットショップの中で、最低の評価を受けてしまいました。続けざま、1月28日に国家工商総局は初めて『アリババ集団に対する行政指導状況に関する白皮書(ホワイト・リポート)』(2014年)を刊行しました。

窮地に追いやられ危機を感じ取った馬雲は、変わり身早く、「江南会」を「湖畔大学」に変身させ、私立の「創業者のための大学(専科)」を設立しました。入学資格は3年以上創業経験があり、30人以上の規模の企業を経営していた者。2015年3月からの開校で、150人が受験し、30人が合格しました。学費は3年間で28万元(約500万円強)。

湖畔大学創設メンバーは、「江南会」創設メンバーの8人と同じだ。この8人の中に、2015年12月10日から連絡が取れず「消息不明」となった復星集団のCEO郭広昌がいます。郭広昌は、2015年11月に北海道上川管内占冠村にある星野リゾートトマムを買収したことで注目された人物です。

失踪した原因は、どうやら光明集団の元CEO王宗南と関連があるらしいとされました。王宗南は公金横領により上海市第二中級人民法院(地方裁判所)で判決を待つ身でしたが、審査過程で復星集団と便宜供与などに関する不正な利害関係があったことが判明しています。

郭広昌氏

馬雲も一歩まちがえれば危ないことになったかもしれません。

令計画が捕まり、「私人会所」が取り調べの対象となることを知った瞬間から、馬雲の機転はフル回転し始めたようです。

イノベーションに国運をかける習近平政権の泣き所を突いて「湖畔大学」を設立させただけでなく、北京政府にとって頭が痛い香港の民主化運動を抑えるためのメディアを買収してしまうという戦略に出たのです。

今年9月の習近平訪米のときに随行した馬雲は、経済フォーラムにおける講演の寸前に、26か所も講演原稿を修正して、「習近平国家主席を讃える文言」に変換させたと言われています。

さすが、創業1年で『フォーブス』の表紙を飾っただけのことはあります。

消息不明になった郭広昌のような目に遭わないよう、危機を回避する身変わりの速さを心得ていたようです。

2015年11月11日に、中国の独身者のためのネットショップフェアがあったが、大成功した馬雲に、李克強が祝電を送るという、こちらも変わり身の速さを見せていました。

このようなことから、馬雲の傘下にあるはずの"サウスチャイナ・モーニングポスト"なぜ、習近平指導部の失策を批判するような記事を掲載したのか今のところ謎です。

ここから先は、推測ですが、おそらく変わり身の早い馬雲氏は、様々な出来事から判断して、習近平はすぐにも失脚すると踏んだのではないかと思います。実際7月には、上記にも掲載したように、習近平周辺で様々な異変がありました。

習近平が失脚するとなると、上記のように習近平と近い関係を保ってきたことが今度は裏目に出ます。今度は、反習近平派の江沢民派などと、手を組まなければ、中国内ではうまく商売ができなくなります。

だから、まずは"サウスチャイナ・モーニングポスト"あたりで、習近平を批判させ、さらに様子を見て、徹底的に批判しようとしたのでしょう。そうして、なんとか半習近平派に取り入る機会をつくろうと画策したのでしょう。

しかし、習近平は意外にしぶとく、少なくともここ1年くらいは失脚することはありえないというのが実体なのでしょう。

ここを馬雲会長は、見誤ったのでしょう。そのため、習近平側からの報復を恐れて、はやばやと引退する旨を明らかにしたのでしょう。以前はこの変わり身の速さが、馬雲を救ったのでしょうが、今回はこれが災いしたようです。

中国では、政治と経済が不可分に結びついているので、馬雲会長を単純に批判することはできません。何しろ、中国では、時の政府とうまくつきあえなければ、発展することはあり得ないからです。馬雲会長のような行動をするのは当然といえば、当然です。

このブログでも以前から掲載しているように、中国は民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされおらず、これでは他国と自由貿易もままならないですし、中間層が多数輩出し、それらが自由に社会・経済活動をして富を築くというようなことはできません。

中国の社会構造がこれだけ、遅れていたのに、なぜ経済発展することができたかといえば、中国が他国に対して莫大な人口を抱える中国は、すぐにかなり経済発展するだろうという、幻想を振りまき他国から潤沢な投資を得て、それで盲滅法で巨額のインフラ整備などをしたためです。

しかし、インフラ整備だけでは、いずれ限界がきます。さらに社会構造が遅れた中国では、インフラ整備以外には、新たな産業を生み出すのは至難の業です。それは、現体制の中国では無理です。

今回のアリババ創業者突然の引退宣言は、そんな中国を象徴しているようにみえます。

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2018年9月5日水曜日

統一選前に台湾で政治不信増大 中国共産党もアプローチに困惑―【私の論評】台湾に限らず、日本も含めてアジアの政治家はマクロ経済政策を疎かにすべきではない(゚д゚)!

統一選前に台湾で政治不信増大 中国共産党もアプローチに困惑

民進党党首蔡英文氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 台湾の政治が迷走している。

 今年11月24日、台湾では統一地方選挙(「九合一」)が行われる。投票まで100日を切ったとあって、メディアの報道も熱を帯びているので、ここで一度触れておこうと思う。

 ただ、取り上げようと思う反面、気になるのが、肝心な台湾の有権者の政治への関心が一向に高まっていないことだ。

 その理由は、有権者の“政治離れ”に歯止めがかからないからである。

 中国との関係で政策が対立する台湾では、台湾独立の受け皿となる与党・民主進歩党(民進党)と大陸との統一を掲げる国民党という二大政党の対立の構造が定着している。

 互いに象徴するカラーを定め、民進党の緑に対して国民党が青。有権者の選択はずっと、緑か青かという単純なものであった。

民主進歩党(左)のシンボル・カラーは緑、国民党(右)のそれは青

 しかし、ここにきて顕著になりつつあるのが緑にも青にも「ノー」という空気である。いわゆる「無色」勢力の伸長と呼ばれる傾向だ。

 いったいなぜこんなことになったのか。

 日本では、台湾の選挙といえば、緑か青のどちらが勝ったかで、台湾の人々の対中国観をはかろうとするのだが、対外政策が選挙の中心に来るケースは極めて稀で、実際はそうではないことの方が多い。

 では、人々は何を気にしているのかといえば、当然のこと自分たちの生活の改善である。

 その意味で蔡英文総統が誕生した当初には、民進党政権に大きな期待が寄せられた。

 だが、結果的に民進党は人々の期待に応えられなかったといってもよいだろう。

 そのことは各種の世論調査に顕著だが、その一つ、台湾民意基金会の調査結果によれば、7月の政党支持率は、民進党が25・2%、国民党が20・7%だった。

 2016年に行われた同じ調査では、民進党への支持が51・6%であったことを考慮すれば、緑に対する失望の大きさは明らかと言わざるを得ない。

 ちなみに国民党の支持率は18・9%だったので、2ポイント程度伸びた計算になるが、民進党が失った支持を取り込めたとはとても言えないのが現実である。

 緑と青に代わって拡大したのは無党派で、49・6%となった。

 焦った民進党は選挙を前に慌てて基本月給や時給を引き上げる政策を打ち出したが、効果を期待する声は少ない。

 台湾住民の貯蓄率はずっと下降傾向にあるが、昨年は過去5年間で最低になるなど、家計の厳しさを示す数字は枚挙に暇がない。

台湾の個人消費の伸び率


 だが、繰り返しになるが国民党にも決め手がない。かねてから指摘される人材不足と内紛で満身創痍状態だからだ。

 興味深いのはこうした台湾の状況に中国共産党も戸惑っていることだ。

 かつて民進党の支持基盤の南部の農家から果物を“爆買い”して揺さぶりをかけたり、観光客を制限して蔡政権のプレッシャーをかけてきたが、いまは何処に向けて何を発して良いのか分からなくなっているという。

 なんとも皮肉な話だ。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

【私の論評】台湾に限らず、日本も含めてアジアの政治家はマクロ経済政策を疎かにすべきではない(゚д゚)!

上の記事を読んでいると、民進党も、国民党も結局のところマクロ経済音痴なのではないかと思います。上の記事を書いている富坂氏もマクロ経済音痴なのではないかと思ってしまいます。

なぜなら、富坂氏も台湾のマクロ経済には全く触れないからです。こういう人は、なぜかアジアに多いです。一国の経済が、マクロ経済政策すなわち、政府の財政政策と中央銀行の金融政策に全く関わりがないなどということはありません。

それどころか、大きく関与しているというか、国の経済対策といえば、財政政策と金融政策であり、それが大部分を占め、ミクロ政策などは国にとってはあまり関係のないことです。

この基本中の基本を、民進党党首蔡英文も国民党党首呉敦義氏も、理解していないのではないかと思われます。さらには、民進党や国民党の議員のもこれを理解していないのではないかと思われます。

なぜそのようなことを言うかといえば、台湾の経済対策などみていると、どうもマクロ的な政策はみあたらず、ミクロ的なものばかりが散見されるからです。

2016年に馬英九総統に代わり、蔡英文氏が台湾総統として就任しました。

蔡政権の経済政策として特徴的なのは、「新南向政策」です。これは、蔡総統就任後の2016年に打ち立てられた政策で、経済発展が著しいASEAN10ヵ国、南アジア6ヵ国、オーストラリアとニュージーランド、計18ヵ国との関係を強化し、台湾の経済発展を目指すといった政策です。この政策では、下記4つの軸を主軸として、経済成長を目指すとしています。

(1)経済貿易協力
(2)人材交流
(3)資源の共有
(4)地域の連携


経済貿易協力では、ターゲット国のインフラ建設協力や、スマート医療、IoTシステムの輸出、さらにはEコマースでの台湾製品の発信、教育やヘルスケア分野での輸出の推進を目指しています。

人材交流では、専門性の高い人材を育成・交流を図るとしています。具体的には、台湾の大学の海外分校の設立、台湾専門のクラスの設立をすることで、台湾の専門家の育成の強化を目指します。また、交流促進の為にビザ申請等の手続きを簡素化する計画があります。

台湾で働いている外国人専門家や技術者には、評価制度を設け、一定の基準を満たした場合にビザの延長許可措置が可能になる施策も盛り込まれています。

資源の共有では、文化や観光、医療等のターゲット国の生活の質向上を目指すとしています。

文化面では、メディアやゲームを利用した台湾のブランディングの向上、観光分野では、ターゲット国からの旅行者へのビザ規制緩和、医療分野では、医薬品の認証、新薬、医療機器の開発の協力を目指しています。

最後に地域の連携では、ASEANやインドとの経済連携協定締結を積極的に図るとしています。これにより、台湾からのターゲット国への投資を期待しています。また、南アジアへの進出も第三国との連携で目指すとしています。

結局、貿易を伸ばして経済成長しようということであり、国の経済の基本である、財政政策や金融政策について具体的には何の方針もありません。

金融緩和というと、蔡英文氏は貿易に何の関係もないと思っているのでしょうか、仮にいずれかの国への貿易を増やそうとして、いくら人材育成や資源の共有、地域の連携などミクロ的な努力を重ねたとしても、台湾の中央銀行が金融引締めばかりしていて、貿易相手国が徹底的に金融緩和をしていたとしたらどうなるでしょうか。

結局台湾元高になってしまい、いくら努力をしたとしても貿易では不利になってしまいます。しかし、だからといって、今度は台湾中央銀行が金融緩和に走ったとして、際限なく金融緩和を続けたとすれば、今度は台湾国内が過度のインフレになってしまいます。

そんなことにならないように、様々な方法を駆使して、金融緩和で貿易では不利にならないように、国内では、インフレが過渡に進行しないようにしなければなりません。

この仕事を行うのは、無論台湾中央銀行ですが、それにしても方針・目標は台湾政府が定めなければならないです。

また、いくら貿易に力をいれるからといって、国内をおろそかにするわけにはいきません。国内では、まともな財政政策を実施して、経済成長を実現する必要があります。

財政政策の目玉としては、2017年に台湾政府が定めた「前瞻(せん)基礎建設計画」では、次世代インフラの建設を行うことで、投資の強化を目指しています。具体的には、

(1)風力発電や太陽光発電等のグリーンエネルギー
(2)ネットやITインフラ
(3)治水、水供給等の環境インフラ
(4)高速鉄道や台湾鉄道の高度化、都市MRT等の鉄道インフラ
(5)駐車問題の改善、道路の改善等の都市・農村インフラ


を挙げています。その中でも特に金額的に大きいのは、鉄道インフラの整備となっており、訪台した観光客や現地の住民の生活の高めることを優先としていることが考えられます。

台湾の経済対策なるものは、貿易振興のための投資計画がほとんどのようです。これによって、確かに経済が良くなることは良くなりますが、あまりに投資にばかり頼ると、クラウディング・アウトに見舞われることもあります。

クラウディング・アウトとは、行政府が資金需要をまかなうために大量の国債を発行すると、それによって市中の金利が上昇するため、民間の資金需要が抑制されることをいいます。

公共投資と、同じ財政政策でも減税や、給付金などは大規模に行ってもクラウディング・アウトがおこることはありません。

減税、給付金といっても、盲滅法に行うのではなく、その時々で最も効果の上がりそうなものを選択して行う必要があります。これを行うのが、日本でいうところの財務省ですが、それにしても目標は政府が定めなければなりません。

さらに、財政政策、金融政策など、いずれの手法をとっても、効果が出てくるまでにラグがあり、このラグも考慮しながら、財政政策と金融政策をうまく組み合わせていく必要があります。

それに、金融政策は雇用政策でもあります。インフレ率を数%あげると、日本や米国では、それだけで他に何もせずとも、一夜にして数百万の雇用が生まれます。台湾では、人口のなどの規模が違うので、ここまではとはいわずとも、雇用が大量に生まれることには変わりないです。

などと、いろいろと述べましたが、台湾経済そのものは、さほど悪くはないものの、かなり良いとか、かなり伸びているともいえるような状況ではありません。それについては、みずほ銀行の資料にうまくまとめられているので、そちらをご覧になってください。以下にリンクを掲載します。
台湾経済の現状と展望2018年6月
 ただし、台湾の経済政策は上記にあげたように、貿易によって成長しようとしているようです。しかし、その前にマクロ経済政策によって内需拡大をすべきです。マクロ政策によって前途有望であると思われるような、政策を打ち出していないので、上滑り観はまぬがれず、台湾の国民は納得していないのでしょう。それは、国民党も同じことなので、国民の政治離れが進んでいるのでしょう。

それにしても、米国の経済対策など、政府は必ず財政政策や金融政策などをあげるのが常識ですが、日本をはじめとして、アジアの国々ではそうではありません。無論米国の場合は、世界経済に影響を与えるほど、米国の国内事情は重要です。だからかこそ、米国内のマクロ経済に関しては政府も公表する姿勢を貫いているのでしょう。

しかし、米国とアジアでは経済対策が異なるなどということはありません。アジアの国々も、本来政府の経済対策といえば、まずはマクロ経済政策というのが正しいありかたのはずです。

日本も、金融政策、財政政策などを政府の方針としてあげたのは、安倍政権による3本の矢においてが初めてではなかったかと思います。

お隣の韓国では、朴槿恵政権はまともなマクロ経済政策を実行せず、文在寅大統領にかわってからは、金融緩和はせずに、最低賃金をあげるという政策を実施し、これは見事に失敗して雇用が激減しています。そうして、これは金融緩和等のマクロ政策には全く関係なく、とにかく再分配を重視すべきと主張する立憲民主党の枝野氏が主張する経済政策と同じものです。

文在寅韓国大統領

このようなアジアの国々実体をみると、やはりアジアの諸国にはそのような共通点があると思ってしまいます。

ただし、中国だけは例外かもしれません。中国の場合、とにかく経済が悪くなれば、積極財政で巨額の投資をする、それでも足りなければ、金融緩和策として巨額の元を刷り増すという具合で、景気が加熱すると逆に、緊縮財政と金融引締めに転じるという具合に、単純にマクロ経済政策を実行しています。

ただし、中国の体制はそもそも、民主化、政治と経済、法治国家化がなされておらず、様々な矛盾が蓄積しているのも事実です。そのため、結局自ら他国に対して貿易戦争を仕掛けたにも等しいことをしてしまい、最近では米国から本格的に貿易戦争を挑まれるという手痛いしっぺ返しを食らっています。

日本も、ふりかえってみれば、総裁選に出る石破氏も、経済対策に関してはマクロ経済対策はあげていません。希望の党の小池氏もマクロ経済対策はあげていませんでした。

日本では、多くの政治家には、マクロ経済政策などはないものと同じようです。自民党の政治家の多くも、経済対策というと公共工事のことと思っているようです。

このようなマクロ経済政策を無視するような台湾を含めたアジアの政治は、結局うまくいかないのは確かです。

日本でも、マクロ経済的にみれば悪手中の悪手がある10%増税を来年10月からそのまま実施してしまえば、経済が停滞するのは必定です。

もし、そうなれば、台湾のような政治不信に日本も見舞われることでしょう。さらに、まかり間違って、日銀が金融引締めにでも転ずることでもあれば、韓国のように若者雇用が最悪となることでしょう。

安倍総裁の3選は間違いないようですが、予定通りに10%増税を実行してしまえば、次の任期のときに、自民党内で本格的な安倍おろしがはじまるかもしれません。ただし、安倍さんに変わって誰かが総理大臣になったとしても、まともなマクロ経済対策を実行しなければ、短命政権に終わることでしょう。

その後どの党の誰が、総理大臣になったとしても、経済政策を根本的にあらためなければ、どの政権も短命で終わることになるでしょう。

それだけ、マクロ経済政策は重大事なのです。アジアの政治家はこれをおろそかにすべきではありません。

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2018年8月10日金曜日

末期症状の中国共産党 米学者「崩壊に備えよう」―【私の論評】東トルキスタン、チベット、内蒙古、満州、台湾で支那を包囲し二度と悪さをできないようにせよ(゚д゚)!

末期症状の中国共産党 米学者「崩壊に備えよう」

米学者のピーター・マティス氏は外交専門誌ナショナル・インタレストに寄稿し、
米国などが中国共産党政権の崩壊に備えようと提案した

米シンクタンク、ジェームズタウン財団研究員のピーター・マティス氏は8月、外交専門誌『ナショナル・インタレスト』に寄稿し、中国共産党政権が間もなく崩壊し、米政府はこれに備えて対策を練るべきだとの見解を示した。

マティス氏は2015年にも同誌で、共産党政権が崩壊後の米政府の対応について記事を発表していた。

同氏はこの度の記事で、15年1月29日米紙ウォールストリート・ジャーナルに発表された『中国共産党のたそがれ(The Twilight of China’s Communist Party)』の主張を引用した。同文章の執筆者はアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)学者のマイケル・オースリン氏だ。

マイケル・オースリン氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

オースリン氏によると、ワシントンのある私的晩餐(さん)会で、ある中国問題専門家が「崩壊の具体的な日程は、はっきり分からないが中国共産党はすでに末期症状に陥った」と発言し、中国をよく知る米政府高官や中国問題専門家の多くがこれに賛成していたという。

この見方を引用してマティス氏は、欧米政府や有識者が、中国の権力者とのパイプ作るよりも、共産党政権に排除された中国国民と新たな関係を築くべきだと提言した。

また、同氏は、1989年の「六四天安門事件」の再来を防ぐために「米政府が行動すべき」と述べた。「共産党はまだ数年維持されるかもしれないが、西側諸国は、正義の側に立つべきだ」

マティス氏は、中国国内での事態急変に備えて、米政府に対して6つの提言を行った。
1.中国共産党と対立する団体を把握すべきだ。共産党擁護の団体とそうでない団体をしっかり区別する 
2.米政府は、中国共産党の指導者(および親族)のデータ(海外資産、電話番号などの連絡方法)を収集・更新すべきだ。政権が崩壊に瀕した場合、高官らが第一に考えるのは党の安全ではなく、自身と家族の安全だ。体制内の幹部が海外脱出した場合、国内の一人または数人が局面を左右することになる。このようなキーマンと即座に連絡が取れるよう、彼らの米国内での交友関係をしっかり把握する必要がある 
3.中国軍の指揮部内部および情報機関に関する情報を掌握する。これは国民の抗争が起きた場合、政権崩壊の臨界点に達しているかを判断するための情報を入手するためだ。軍隊や国家安全部門は党の弾圧指令に従わなかった場合、この意思決定を下す人物を特定する必要がある 
4.国民の抗争がエスカレートしたとき、事態の蔓延(まんえん)を防ぐために、地方と中央はどのように協同するのか、各レベルで決断を下す幹部を特定する必要がある 
5.万が一、中国当局が国際社会との繋がりを断った場合、米政府は中国国民と情報を交換する方法を確保する必要がある。中国ではインターネットが厳しく封鎖されているため、この場合、ラジオ放送が有効な手段になる 
6.中国国内で事態が急変する場合に備えての情報収集が必要だ。新たな情報部門の立ち上げが必要。

マティス氏は中国国内の動向を把握するために米政府に協力する用意があるとも述べた。

評論家:共産党が恐れているのは「米政府と中国国民」

大紀元のコメンテーター夏小強氏は共産党の崩壊を世界は真剣に考え始めたと指摘し、「中国共産党が最も恐れているものは2つある。一つは米政府。もう一つは中国国民」と述べた。

これまで、中国当局は経済成長を政権維持の根拠にしている。しかし、今年に入ってから、トランプ米政権が厳しい対中貿易制裁を次々と打ち出し、中国経済の息の根を止める勢いだ。「経済成長」はもはや絶望的だ。

中国共産党政権の外交政策は、米国を中心にしたものだ。共産党政権が最も危惧しているのは米国からの圧力だと、夏氏は分析する。

一方、中国の政治情勢が大きく変わっても、中国の将来を決めるのは中国の国民だ。したがって、欧米諸国の政府が中国国民をバックアップすれば、共産党を排除することができると同氏はみている。

「米中貿易戦による外的要因と、共産党に抗争する国民の急増などの内的要因によって、中国社会は近い将来、大きな変革が訪れるだろう」

【私の論評】東トルキスタン、チベット、内蒙古、満州、台湾で支那を包囲し二度と悪さをできないようにせよ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、中国とか国民とひとくくりにしていますが、そもそもこれが大きな間違いです。現在の中華人民共和国の版図は、もともとはいくつかの国からなっており、それらを侵略して中華人民共和国に組み入れたのが現在の中国です。

これについては、このブログでも何度か掲載してきました。その記事の代表的なものの、リンクを以下に掲載します。
「尖閣諸島を手放せ」という人が知らない現代中国の「侵略の歴史」―【私の論評】尖閣を中国に渡せば、勢いづき日本侵攻の足がかりを提供するだけ(゚д゚)!
 

この記事では、中国(支那)の侵略の歴史を簡単に掲載しました。現在の中華人民共和国の版図とされるところは、第二次世界大戦後に支那という国が周りの国々に侵略してできあがったものです。

どのような国々かといえば、東トルキスタン(ウイグル)、チベット、南モンゴル(内蒙古)、満州という国々です。

上の記事では、中国、中国の国民として、ひとまとめにしていますが、中国共産党が崩壊すれば、当然のことながら、中華人民共和国などという国は分解して、元々の独立国だった周辺の国々は、それぞれの国民に変換し、これらの国々は各々国民が統治すべきです。

そのような動きはすでに存在します。

ちょうど1カ月ほど前、ドイツ・ミュンヘンに本拠地を置く、亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」の総裁を務めるドルクン・エイサ氏のご母堂が逝去されました。つつしんでご冥福をお祈りさせていただきます。

ドルクン・エイサ氏

ドルクン氏がウイグルを1994年に国を出て亡命した後、一度も会うことなく、77歳で再教育施設に収容されたままで亡くなられました。それから1カ月たたないうち、彼の姿は米国ワシントンにありました。

「共産主義の犠牲者追悼財団」という米国の団体がドルクン氏を招いたのです。ワシントン滞在中の間、彼は各所での演説や米国務省、連邦議会議員ら多くの人々との面会を精力的にこなしました。

ワシントン滞在中のドルクン氏は、米国でテッド・クルーズ上院議員と会談しました。クルーズ氏といえば、2016年の大統領選に一度は出馬表明した共和党の大物議員です。福音主義の牧師だった父の影響で敬虔(けいけん)なクリスチャンとしても知られます。

その翌日、日本のNHKが、早朝枠ではありましたが、ある珍しいニュースを伝えました。その映像では、マイク・ペンス副大統領が次のような演説をしていました。
北京(中国当局)は数十万、あるいは数百万とみられるウイグル人ムスリムを、再教育施設に収容し、政治教育を強いている。宗教的な信条が脅かされている。
マイク・ペンス副大統領

演説は「信教の自由」をテーマとした会合でのものでしたが、ペンス氏も、クルーズ氏と同様にキリスト教色の強い保守的な政治家です。そのペンス氏らが、中国政府が「テロ対策」を口実にウイグル人を弾圧し、大半がイスラム教徒である彼、彼女らの信仰を抑圧していることを激しく批判したのです。

ブッシュ政権時代、「テロとの戦い」をうたってアフガニスタンやイラクに攻撃を開始した際、米国は、中国に戦線を邪魔させないための取引として、北京の言いなりにウイグル人活動家を「テロリスト」と認定しました。その象徴的な1人がドルクン氏であり、そのため、彼は15年まで米国入国を許されませんでした。

今回の打って変わった米政界のドルクン氏厚遇。その裏にあるのは、やはり北京との取引です。かつて北京との宥和のために使ったウイグル問題を、今回は「貿易戦争」との合わせ技で北京を締め上げる最強カードとして切っているのです。

これは、ウィグル問題ではオバマ政権とはうって変わった措置です。現在では、ウイグル問題を米国のトップレベル、しかもキリスト教色の強いリーダーらがはっきりと口にして中国政府を批判し、その様子を世界が見ているのです。

このようなことは、ウイグルに限らず、チベット、南モンゴル、満州でもおこるでしょう。米国はこれらも北京を締め上げるカードとして用いるでしょう。そうして、未だ中国に侵略されていない台湾もカードとして用いるのは必定です。

日本も、台湾だけでなく、今から、各国の国民、特にその代表になりそうな人物や、それに近くなると予想される人物にはコンタクトをとっておき、いざ支那が崩壊しそうになったり、他国の維持がこんなになった場合には、これらとすぐに提携して、経済援助や軍事援助ができる体制を整えておくべきです。

目指すべきは、これらの国々に経済的にも軍事的にも強くなってもらい、支那をこれらの国々で包囲し、軍事的脅威を与え、支那の海洋進出を断念させることです。

日本は、米国とも協力しながら、この線で支那を徹底的に追い込むべきです。支那が体制を変えて、民主化、政治と経済の分離、法治国家をするというのなら、アジアの新たな仲間として、他のアジアの諸国とともに新生支那を迎え入れるべきです。

しかし、支那が現在の体制をさらに引き継ぐというのなら、日米と周辺諸国とが協力しつつありとあらゆる手を使い徹底的に追い込み、経済を徹底的に弱体化させ、二度と周辺諸国などに侵略しようにもできないくらいに弱体化すべきです。

その結果支那は図体がある程度大きいだけの、アジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。それは、周辺諸国や南シナ海、尖閣諸島付近で悪さをした支那の自業自得というものです。世界の国々を舐めた、結果です。

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2018年1月11日木曜日

中国共産党が恐れる郭文貴を直撃 「宿敵・王岐山を絶対潰す」―【私の論評】郭文貴氏未報道は、日本メディアの偏向を暴露(゚д゚)!


郭文貴
 「ニイハオ、ニイハオ。我是郭文貴」--マンハッタンの五番街に面し、セントラルパークを見下ろす高級コンドミニアムの18階。そのフロアをまるごと所有する男が、合掌をして笑顔で出迎えた。

 男の名は郭文貴(かくぶんき)。身体は筋肉質で、胸元に山吹色のネクタイが輝く。不動産開発業や投資によって180億元(約3054億円、一昨年時点)の資産を築いた大富豪だが、初対面では礼儀正しい印象の人物だ。

 だが彼の素顔は、かつて北京五輪がらみの公共事業に食い込み、中国の情報機関である国家安全部(国安部)や公安部とも協力してきた筋金入りの政商である。2014年、親交のある国安部元副部長・馬建の失脚を前に海外へ逃亡した。

 やがて昨年春、自身が中国政府に国際指名手配を受けた前後から、郭文貴は様々なメディアや自身名義のYouTubeなどで多数の党高官のスキャンダルの「爆料」(暴露)を開始。中国政界に激震をもたらしはじめた。

 特に苛烈な攻撃を加えたのは、習近平政権第1期に党中央紀律検査委員会(中紀委)を率いて汚職摘発の辣腕を振るった王岐山(おうきざん)と、公安・司法部門のトップだった孟建柱(もうけんちゅう)だ。

王岐山(おうきざん) 写真はブログ管理人挿入
 郭は王岐山について、大手エアライン海南航空との一族ぐるみの癒着、隠し子の存在や女優との醜聞を暴露。また孟建柱についても、愛人と隠し子問題、江沢民派による権力奪取目的の秘密会合「南普陀会議(※注1)」への出席などを明らかにした。

 【※注1/習政権の成立前、江沢民派が開いたと郭が主張する秘密会議。胡錦濤の腹心・令計画の息子の暗殺が決定されたという(公的には事故死とされる)】

 内容の信憑性に疑問の声も上がるが、稀代の梟雄・郭文貴の弁才がフルに発揮されたネット動画には独特の魅力もあり、国内外の多数の中国人を惹きつけている。

 中国共産党が最も恐れる男・郭文貴。2018年、彼が採る次の一手は何か? ニューヨークで2時間にわたり本人に直撃した。

孟建柱(もうけんちゅう)
 --一連の暴露で、王岐山と孟建柱への攻撃が特に激しい理由は何でしょうか?

 「3点ある。第一は法治に反した王岐山らへの反抗だ。中紀委を握った王の権力は肥大し、反腐敗を口実にやりたい放題だった。孟建柱も警察機構・検察院・裁判所を押さえていた。連中は強大な権力を背景に国家を盗み取った「盗国賊」だ。こうした悪人どもに打撃を与えるには、秘密の暴露こそ最強の攻撃なのだ。

 第二は、私自身や大事な人たちへの迫害だ。王岐山らは私の帰国を要求し、家族と200人余りの従業員を脅迫した。彼らを守らなくてはならない。また、私の中国国内の資産の差し押さえも不当で、断固抗議する。

 第三に、私は中国の情報機関に長年協力してきたので、王岐山や孟建柱の過去を知っている。2000年代後半、馬建と当時の中紀委はすでに王や孟の乱倫や汚職を調査していたのだ」

 --仮に弱みを握られていたなら、壮絶な逆襲を受けるのは明らかなのに、王岐山らはなぜ郭さんの摘発を考えたのでしょう?

 「ここまでの逆襲は予想外だったのだろう。普通、中紀委や公安に逆らう中国人は皆無だからな。

 しかも、私は2006年の劉志華(※注2)の失脚の際も、当時の北京市長だった王岐山とやり合っている(笑)。まさか2度も逆らうとは思わなかったに違いない」

 【※注2/北京市元副市長。五輪インフラ整備に携わったが失脚。郭が籠絡していたとの説がある】

 --習政権第2期、王岐山は常務委員(党最高幹部)に残留せず、孟建柱も中央委員を外れました。暴露の影響はあると思いますか?

 「当然だ。なかでも王岐山は海南航空との癒着問題、孟建柱は彼の隠し女児と南普陀会議への参加が決定的なダメージになった」

 --他にも様々な党幹部の醜聞を公開しています。次のターゲットは?

 「それは言えない(笑)。大事なのは、私の家族や従業員や資産に害を与えているのは誰かということだ」

 --習近平の一族にも汚職疑惑があります。従来、習を直接批判していないのはなぜでしょうか?

 「習主席に善悪の評価を下すのはまだ早い。仮に彼がヒトラー式の独裁をしたり、世界の平和を乱すなら問題だが、そうではないから。私は習主席が中国の法治・民主・自由にどのような姿勢を示すか注目している」

習近平
 --一連の暴露行為の情報ソースは何ですか?

 「多くのチャンネルがある。王岐山の海南航空癒着問題を例にすれば、国安部の馬建が以前から調べ上げていた。また富豪ゆえの人脈もある。

 私は海航の幹部何人かと親しく、また日米を含めた各国に、同社の関係者と私の共通の友人が何人もいる。王ではつかみ切れない世界だろう(笑)。ただ、最も重要なソースは国安部経由で得ている」

 --党幹部が政敵の失脚を目的に情報提供する例は?

 「無数にある。習主席のスキャンダルが最も多いが、他にも様々だ。党高官の99%は問題を抱えているからな(笑)。ただ、私は他人の政争の道具にされるのはゴメンだから、それらはほぼ使わない。

 なにより、連中のリークは正義が目的ではないので嘘が交じる。私は過去の暴露において嘘を言ったことはなく、不確かな情報は使っていないのだ」

 --あなたが暴露した情報に、嘘は一切ないと?

 「ない。(昨年5月)中国の国安部の連中が私に「これ以上暴露をするな」と交渉に来たのが何よりの証拠だ。仮に私の話が嘘なら、彼らはそんなことを言わない」

范冰冰(ファン・ビンビン)
 --郭さんは昨年7月、王岐山が有名女優でハリウッドにも進出した范冰冰(ファン・ビンビン)の性接待を受けたことを匂わせ、ツイッターに「ハメ撮り現場」の写真を投稿しましたが、それは彼女の映画の一場面を切り取ったものでした。あれは嘘ではありませんか。

 「一種の「釣り」だ。画像には彼女の特徴が写っており、見る者が見れば意味がわかる。私はその証拠動画を持っている」

 --ならば、なぜ動画を公開しないのですか?

 「流せばアメリカでは犯罪になる。これはポルノの流出だ。范冰冰は(権力者の毒牙にかかった)被害者であり、加害者ではない。彼女を傷つけるに忍びない」

 --そうなのでしょうか?

 「多くの人が虚々実々の印象を受けることは理解する。だが、私が動画を持っていることは事実。それ以上に、王岐山が強大な権力を有し、傍若無人に好色にふけったことは事実なのだ。私の主張は、結論から見ればなんら間違ってはいない」

 --暴露を9か月間も続けていると、ネタ切れをしたり情報の質が下がる恐れはありませんか?

 「いくらでも語るべき情報はある。なにより、党の上層部には真の『パンドラの箱』が存在するのだが、私は現時点でそれを開けていない。彼らが最も恐れる情報はまだ公開していない」

 --公開する予定は?

 「各国の政府がそれを知りたいと言うならば、協力して答える気はある」

■取材・文/山久辺参一(ジャーナリスト)

※SAPIO2018年1・2月号

【私の論評】郭文貴氏未報道は、日本メディアの偏向を暴露(゚д゚)!

ブログ冒頭のSAPOの郭文貴氏に対するインタビューの動画の掲載されたTweetを以下に掲載しておきます。


中国外交部スポークスマン陸慷の定例会見によると、昨年4月18日、北京政府は、国際刑事警察機構(INTERPOL)を通じて、米国へ逃亡中の中国の大富豪、郭文貴(別名、郭浩雲。1967年生まれ)を指名手配しました。

郭文貴氏は、平成26年(2014年)の長者番付で、個人資産155億元(約2500億円)を所有し、それでも中国では74位の富豪です。中国共産党の金まみれの闇は深いです。

郭の「爆料」は中国内外で爆発的な注目を集めていますが、その評価に対しては真っ二つに割れています。中後の若者に多い否定派は「暴露の内容はまるでスパイ小説のよう。現実離れしている。ウソも多い」「耳目を引く話やもったいぶった言い方で注目を集めているだけだ」と疑いの目を向けています。

実際、彼の暴露には不正確なものも含まれているのでしょうが、全てを虚偽と否定することは難しいです。例えば中国の大手航空会社、海南航空が王が私腹を肥やす手段になっているという暴露です。

海南航空はこれを否定しましたが、その後、経歴不詳の「神秘の投資家」が大株主にいることが判明しました。これだけでも怪しさ満点ですが、その後の展開はさらに不可思議でした。郭の暴露後、この神秘の投資家は保有株を慈善団体などに贈与したのです。その結果、中国で最も成長力のあるこの航空会社は慈善団体が筆頭株主となっているのです。

この一事をもってみてもわかるとおり、郭の暴露がすべて現実離れしているわけではないことがわかります。中国の現実こそが現実離れしているのです。

郭を批判する者は「中国に荒唐無稽な現実があるとしても、批判者までもがそれに乗っかる必要はない」と言っているようですが、では彼らは中国に何らかの変化をもたらすことはできたのでしょうか。

米国や欧州には無数の中国民主化団体がありますが、天安門事件以来約30年間、亡命した民主活動家たちは内輪で盛り上がるだけで何の成果も上げることはできませんでした。一方、郭はたった1人でこのムーブメントを作り上げたのです。

郭文貴氏にとってはTwitterも強力な武器だ
先進国の民主主義社会において、フェイクニュースを駆使するのは許されることではありません。しかし、一党独裁の強大国に立ち向かおうとする時、きれいごとだけで勝てると思うのは愚か者でしょう。

そうしてあの魯迅も「フェアプレーには早すぎる」と喝破しています。こと中国に限っては、相手がフェアな土台に乗って初めてこちらもフェアプレーをするべきと考えるのが妥当です。

郭は「習近平には反対しない、敵は王岐山だ」と言い続けてきたましたが、これも巧妙な分断工作とみるべきでしょう。ただし、昨年8月18日のネット番組で郭は新たな姿勢を示しています。すなわち、「今秋の十九大後に習近平は政治改革を行うべきだ」。もし習近平が政治改革を行わなければ、郭の矛先は習に向かう、としていました。

怪しげな暴露とゴシップを駆使して中国の体制転換を促そうとする郭文貴。果たして今後、どのような結末を迎えるのでしょう。

このように中国内外では注目の的なのに、中国の現指導部に配慮する日本のメディアは郭文貴を全く取り上げません。日本では、昨年は「もりかけ」騒動であけくれましたが、これによって結局安倍首相が関与したという物証はいまだにあがっていません。

中国の現体制の闇は、安倍首相や現政権などとは比較の対象ともならないくらい、巨大なものです。そうして、調べればそれなりの物証があがってきます。

というより、現在の中国の体制は、民主化、政治と経済の分離、法治国家がなされておらず、この点から腐敗や悪がはびこるのは必然です。

私は、今や中国政府の報道するニュースソースよりも、郭文貴氏を含めた、ネットからの情報のほうがよほど正確だし、現実に即していると思います。

そうして、日本以外のメデイアはこれらも報道しています。かといって、中国政府からニュースソースを遮断されたという話はききません。

しかし、日本のマスコミは現指導部に対する配慮からでしょうか、これらをほとんど報道しません、このことからも日本のメディアはかなり偏向していることがわかります。

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