2018年9月10日月曜日

台湾「慰安婦像」の即時撤去要求 中国側のプロパガンダ工作の可能性指摘 慰安婦の真実国民運動・藤井実彦氏―【私の論評】一日もはやく、そうして中共よりもはやく、台湾をシーパワー国に(゚д゚)!


台南市に設置された慰安婦像と、見つめる台湾の馬英九前総統
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

日本の複数の保守系民間団体で作る「慰安婦の真実国民運動」(加瀬英明代表)は6日、台湾南西部・台南市で、台湾初の「慰安婦像」を設置を主導した中国国民党台南市支部に、像の即時撤去を求めるとともに、碑文の内容を問う文書を手渡した。親日的な台湾で、何が起こっているか。現地に出向いた同運動幹事の藤井実彦(みつひこ)氏が緊急寄稿した。

藤井実彦(みつひこ)氏

 問題の慰安婦像を初めて見たとき、正直ぞっとした。像は台南市の繁華街の交差点のすぐ脇に設置されており、とても目立つ場所にあった。向かいには日本のデパートがあり、真横には国民党台南支部があった。

 像の後ろには、日本語と中国語、英語、韓国語の4カ国語で、「20万~40万人の慰安婦」「強制徴用」などと、日本の保守系団体による調査・研究とまったく異なる内容が記されていた。

 日本と日本人の名誉を著しく貶めた、朝日新聞の大誤報など伝わっていないのだろう。

 私(藤井)たちは、像設置を主導した、国民党台南支部の主任委員である謝龍介・台南市議と面会し、像の即時撤去に加え、「事実と異なる内容の碑文」に強く抗議し、根拠となる資料の提出を求める文書を手渡した。台湾での公開討論会の開催も求めた。

謝龍介

 これに対し、謝氏は碑文の誤りは認めず、「台湾慰安婦の苦しみを知るべきだ。反論には憤りを覚える」などと語った。ただ、公開質問状には1カ月以内に答えるとし、公開討論会にも前向きな姿勢を示した。

 親日的な台湾に、慰安婦像が設置された背景として、「自由」と「民主主義」「人権」「法の支配」という理念を共有する日本と米国、台湾の連携を阻止する、中国側のプロパガンダ工作の可能性が指摘されている。

 現に、一般の台南市民は「台湾を好きな日本人がたくさん訪れる台南に、このような政治的な像が立ってしまうと本当に観光に影響がある。すぐにでも撤去してほしい」と語っていた。

 「慰安婦の真実国民運動」では、国民党台南支部の回答を踏まえて、公開討論会などを通じて、慰安婦問題の真実や、万死に値する朝日新聞の大誤報について、広く世界に発信していく。

【私の論評】一日もはやく、そうして中共よりもはやく、台湾をシーパワー国に(゚д゚)!

慰安婦問題をめぐり抗議するデモの参加者=10日、台北の日本台湾交流協会前

日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会台北事務所前で10日、抗議活動が行われました。日本の民間団体が7日、台湾初の「慰安婦像」を設置した南部・台南市の中国国民党支部を訪れて撤去を要請した際、代表者が像を蹴るような動作をしていたことが、監視カメラの映像で判明したとして、約100人が謝罪を求めるなどしました。

抗議には、像の設置を主導した同党の台南市議や立法委員(国会議員に相当)2人、中台統一派の政党「新党」の党員らが参加。大声を上げ、代表者が職員に抗議文を手渡しました。

抗議中、数人が事務所ビルに卵を投げつけたほか、像のレプリカを掲げて規制線を突破しようとするなどして警察から警告を受けました。

慰安婦像のレプリカを掲げて規制線突破を試み、警察と押し
合いになるデモの参加者=10日、台北の日本台湾交流協会前

昨日もこのブログに掲載したように、日米英同盟と、中国の対立はシーパワー国と将来シーパワー国になろうとするランドパワー国である中国との必然的なせめぎ合いであり、これら慰安婦をめぐる対立もその一環であると認識すべきです

中国としては、日本と接近をはかる蔡英文政権にかなり危機を感じているのでしょう。日本と接近をはかるということは、日米英同目のシーパワーに接近することを意味しており、台湾が日米英同盟に取り込まれることは脅威です。

もし完璧に取り込まれてしまえば、日米英の艦艇が台湾に自由に出入りし、中国台湾は中国のものなどという認識は吹っ飛んでしまい、中国が台湾を取り込むことはかなり困難になります。

そうして、最も恐れるのは、日米英の協力によって、経済を発展させ、台湾がシーパワー国になることでしょう。そうなれば、台湾をとられただけではなく、新たな軍事的脅威が生まれ、中国の国家戦略はかなりの変更をせまられることになります。

昨日も掲載したように、シーパワーとは単に地理的条件によって生じるものではありません。そもそも、シーパワーはランドパワーの上位互換です。

アメリカは本来陸軍国でしたし、日本もそうでした。ランドパワー国家が資本を蓄積して海軍を充実させ得た状態がシーパワーなのです。

ランドパワーも無論ある程度資本の蓄積が必要です。大陸にあるからといって、ただそれだけでランドパワー国になるわけではありません。やはり、ある程度資本を蓄積して、軍備も増強して周囲に対して影響力が行使できるほどの陸軍をもって、はじめてランドパワーとなります。

さらにランドパワー国だった国でも、海に面した領土があり、がさらに資本を蓄積が進んで、海軍力を強化し、周辺に影響力を及ぼすことができるようになれば、シーパワー国となるのです。

現在は中国がそれを目指して努力を続けています。昨日も掲載したように、中国はそうなれるかどうかは、現在は定かではありません。現在の中国は資本を蓄積し、さらにテクノロジーならびにノウハウを蓄積しないとシーパワーにはなれません。



この中国が、台湾が日米英同盟に取り込まれることをかなり脅威に感じるのは、台湾が他のアジアの諸国と比較すれば、経済的にも発展してるため、経済をさらに発展させ、資本を蓄積し、中国よりも先にシーパワーになる可能性があるからです。

無論これは、数十年後か、あるいは100年後かもしれません。しかし、中国はそのくらい時間をかけてもいずれ自らがシーパワー国になるつもりです。

しかし、その前に台湾がシーパワー国になっていれば、中国は日本と台湾という2つのシーパワー国に囲まれ、中国の海洋進出は完璧に封じ込められます。

それは、かつてのランドパワー国のソビエト連邦が結局のところ、日米というシーパワー国に封じ込められ、それに米国と英国というシーパワー国が協力することにより、経済的にも軍事的にも疲弊して冷戦に負けた後に崩壊してしまったのと同じようなことになると考えられます。

ソ連軍が行った最も大規模かつ重要な軍事演習 ザーパト'81

冷戦時の日本は、オホーツク海や日本近海の、対潜哨戒能力を大幅に改善させ、米国にソビエト連邦封じ込めで、かなり貢献をしています。このことはもっと評価されても良いと思います。この日本の貢献がなければ、ソ連の崩壊はかなり遅れたかもしれません。

日本としては、こうした大きな枠組みの中で、物事を考え、慰安婦問題にも対処していくべきでしょう。慰安婦問題は、完璧に韓国による偽造であり、中国はこれを利用しているだけです。

中国は米国内でも、米国内の識者が「日本悪魔化計画」と呼ぶ、慰安婦問題により日本を貶め、それによって日米を離反させようと試みました。しかし、それは結局のところトランプ政権による対中国法益戦争のはじまりにより、結局のところ有名無実になりました。

これは、結局のところ、シーパワー国である日米両国の結束によるものと考えられます。今後日米英同盟と台湾が協力して、台湾を一日もはやくシーパワー国になれるようにすべきです。

とは、いいながら、直近では日本政府も慰安婦問題虚構に関しては、米英台に主張していくべきでしょう。

米国に関しては、先日もこのブログでも掲載したように、保守派の中には単純な「日本悪玉論」は間違いであることが認識されています。慰安婦問題に関しては、それが今後の日米関係に悪い影響を及ぼすことはないでしょう。

英国については、中国のやり口などを説明しつつ、慰安婦問題は中国が「日本悪魔化」のために、利用していることを納得させていくべきです。

台湾に関しては、日本が台湾をシーパワー国になれるように、徹底的にサポートしていくべきでしょう。それには、資金援助だけではだめです。台湾が自力で経済を発展させられるようになるのは無論のこと、独自のテクノロジーとノウハウが持てるようにならなければなりません。

いずれにしても、慰安婦問題などは、台湾がシーパワー国になり、中国が永遠のランドパワー国になるか、消滅したときには、この世から消えることでしょう。なぜなら、中国がそうなれば、慰安婦問題などで日本を追求したとしても、何のメリットもなくなるからです。

そのようなときに、韓国一国が慰安婦問題を叫んだとしても、日本は韓国に抗議をしたり、他国の誤解を説いたりする必要はあるでしょうが、何の影響も不利益もないでしょう。

しかし、台湾が中国の手に落ちるようなことがあった場合には、慰安婦問題はくすぶり続けることでしょう。まさに、台湾は日本のそうして日米英同盟の生命線でもあるわけです。

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2018年9月9日日曜日

南シナ海でイギリス海軍揚陸艦「アルビオン」航行…米国主導の「中国包囲網」に英参戦か―【私の論評】日米英同盟と、中国の対立はシーパワーとランドパワーとの必然的なせめぎ合い(゚д゚)!

南シナ海でイギリス海軍揚陸艦「アルビオン」航行…米国主導の「中国包囲網」に英参戦か

8月3日晴海埠頭に入稿した英海軍揚陸艦「アルビオン」写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 南シナ海での軍事的覇権を強める中国に対し、国際的圧力が強まっている。中国が一方的に領有権を主張する南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島付近で、英海軍が最近、揚陸艦「アルビオン」を航行させたのだ。ドナルド・トランプ米政権は南シナ海で「航行の自由」作戦を展開し、「中国包囲網」を強化している。英国の動きは対中包囲網に参戦するサインなのか。

 アルビオンの行動は6日、ロイター通信が関係筋2人の話として報じた。同艦は、地上部隊を洋上から上陸用舟艇やヘリコプターを使って展開させる揚陸艦。国連安保理決議に基づき、北朝鮮の密貿易「瀬取り」を阻止するため、5月から極東展開していた。

 記事によると、アルビオンは日本周辺での活動を終え、ベトナムのホーチミンに向かう途中、パラセル諸島近くを航行し、3日にホーチミンに到着した。関係筋は、中国が警告のため、フリゲート艦1隻とヘリコプター2機を派遣したと明らかにした。

 英海軍報道官は「アルビオンは国際法・規範に完全にのっとり、『航行の自由』について権利を行使した」と説明したが、中国は反発を強めている。

 中国外務省の華春瑩報道官は6日の記者会見で、「中国の主権を侵害する行為であり、断固として反対する」と述べた。

中国外務省の華春瑩報道官

 習近平国家主席は2015年10月、英国を公式訪問した。この際の高圧的な態度に、英国内で中国への批判が高まったとされる。

 英国の狙いについて、国際政治学者の藤井厳喜氏は「現在のメイ英政権は、中国にべったりだった前のキャメロン政権に比べると、少し距離を取るようになっている。英国は世界中に小さな領土があるため、『航行の自由』という問題については米国寄りのスタンスを取り、中国に『国際法を守れ』という圧力をかけているのではないか」と解説する。

 昨年から、日英防衛協力は確実に進んでいる。2020年までには、英空母「クイーン・エリザベス」の太平洋展開も予定されている。米国主導の「中国包囲網」に英国も加わるのか。

【私の論評】日米英同盟と、中国の対立はシーパワーとランドパワーとの必然的なせめぎ合い(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、藤井厳喜氏が「英国は世界中に小さな領土がある」と述べていましたが、実際どの程度あるのか以下に地図を掲載します。


上の地図で赤い部分が、イギリスの海外領土、緑はイギリス本国、青はイギリスの王室属領です。全部が島嶼です。太平洋にはイギリス領はありません。

太平洋にはイギリスの領土がないにも関わらず、イギリスは、わざわざ揚陸艦を航行させたわけですから、やはり『航行の自由』を守れという無言の圧力を中国にかけるためであったと判断するのが妥当だと思います。

以前このブログでも述べたように、日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っています。

ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本

日本は中国の海洋進出を警戒していますし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙(たいじ)しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのす。

また、日英はともに米国の重要な戦略的パートナーです。日英はそれぞれ米国と深い同盟関係で結ばれ、情報や軍事、外交などあらゆる分野で深い協力関係にあります。つまり、日英が今、同盟関係に進もうとするのは歴史の偶然ではなく、地政学的な必然です。

日本と英国は事実上すでに同盟関係にあります。その同盟関係にあるイギリスが今回南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島付近で、揚陸艦「アルビオン」を航行させたことには、大きな意義があります。

日米はともに英国と同盟関係にあります。これは事実上日米英の同盟が出来上がってると言っても良いです。

現在の世界情勢は第二次世界大戦直前の様相を呈しています。つまり英を軸としたシーパワー同盟側に味方するのか、それともドイツを中心とするランドパワー側につくかという状況に似てきたということです。

国の構成は違いながら、シーパワーかランドパワーに別れているということでは、非常に似ています。

現在のシーパワー側は、まずは日米英が同盟を結んでいます。ランドパワーは中国です。ロシアは、日米が味方に引きずり込もうとしています。米露首脳会談で、すでにロシアはシーパワー側についたという見方もあります。

ドイツは、元々はランドパワーの国であったためか、つい最近までは、中国に接近していましたが、今後どうなるかはわからない状況です。ただし、ドイツがシーパワー側に完璧に離反し、中国と軍事同盟を結ぶことはないと考えられます。

英国はEU離脱で、ドイツ欧州大陸側にはつかず日本と米国を選びました。昨年、英国首相が、日本国にやってきて、安倍総理と会談し、実質的に日英は実質的に同盟関係に入りました。南シナ海に英国空母の派遣は、この同盟関係に基づくものです。

さて、大東亜戦争直前の日本は、シーパワーの国出会ったにも関わらず、ランドパワー側のドイツについて、結局敗北しました。

今回は、シーパワーである日米英同盟の結束をさらに深め、さらにロシア・フランスなどのランドパワーの国々も味方につけ、ランドパワーからシーパワーの国になろうとする中国を完全に封じ込め弱体化させていくべきでしょう。

ただし、シーパワーとランドパワーは地理的条件で決まってしまうかといえば、そうではありません。そもそも、シーパワーはランドパワーの上位互換です。

アメリカは本来陸軍国でしたし、日本もそうでした。ランドパワー国家が資本を蓄積して海軍を充実させ得た状態がシーパワーなのです。

かつてのソ連、現在のロシアは、結局現在の中国の航空母艦「遼寧」の原型である空母しかつくれなかったことが象徴するように、ランドパワーの国からシーパワーの国になることはできませんでした。

現在は中国がそれを目指して努力を続けています。シーパワー国家は海軍より先に、他国に比し突出した資本が存在しています。中国はそうなれるかどうかは、現在は定かではありません。

もし、中国がシーパワーの国になったとすれば、これは中国が主張していたように、世界の半分を支配する覇権国家になるかもしれません。

そうなれば、日本の北海道の釧路は、中国の一帯一路の拠点港とされることになるかもしれません。釧路からどこへ向かうかと言えば、北極海を通過して、欧州大陸へ向かい、ランドパワーとしての中国と、ランドパワーの欧州大陸を結びつけ世界の半分を支配することになるのです。

現在のシーパワーの国々である、日米英はとてもそのようなことは、許容できるものではありません。中国が新たなシーパワー国になることを阻止し、ロシアのように、ランドパワーの国から一歩も出られないようにするため、日米英が同盟関係になり、中国を囲い込もうとするのは、当然といえば当然です。

日米英同盟と、中国の対立はシーパワー国と将来シーパワー国になろうとするランドパワー国である中国との必然的なせめぎ合いなのです。このあたりを理解しておかないと、世界情勢は理解できないでしょう。

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2018年9月8日土曜日

【田村秀男のお金は知っている】中国のマネーパワーは「張り子の虎」 「一帯一路への支援」の裏にある真の狙いとは?―【私の論評】中国は結局中所得国の罠から抜け出せない(゚д゚)!

【田村秀男のお金は知っている】中国のマネーパワーは「張り子の虎」 「一帯一路への支援」の裏にある真の狙いとは?

 「本当は火の車なのに、よく言うね」。そう思ったのは、中国の習近平国家主席の大盤振る舞い発言だ。習氏は自身が提唱してからまる5年経つ新シルクロード経済圏構想「一帯一路」について、北京で開かれた「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会合で、今後3年間で600億ドル(約6兆6000億円)をアフリカ向けに拠出すると発表したのだ。

 「一帯一路」は中国のマネーパワーによって推進される、とは一般的な見方なのだが、だまされてはいけない。本グラフを見ればそのパワーは張り子の虎同然であることがはっきりする。



 外貨準備など中国の対外資産は外貨が流入しないと増えない。流入外貨をことごとく中国人民銀行が買い上げる中国特有の制度のもと、中国当局は輸出による貿易黒字拡大と、外国からの対中投資呼び込みに躍起となってきた。ところが、2015年以降は資本逃避が激しくなり、最近でも3000億ドル前後の資本が当局の規制をかいくぐって逃げている。

 そこで、習政権が頼るのは債券発行や銀行融資による外国からの資金調達である。対外金融債務はこうして急増し続け、外国からの対中投資と合わせた対外負債を膨らませていることが、グラフから見て取れる。主要な対外資産から負債を差し引いた純資産は今やゼロなのだ。

 今後は「債務超過」に陥る可能性が十分ある。米トランプ政権は年間で3800億ドルの対中貿易赤字を抱えており、少なくてもそのうち2000億ドル分を一挙に削減しようとして、中国からの輸入に対し矢継ぎ早に制裁関税をかけている。中国の海外との全取引によって手元に残るカネ(経常収支)は縮小を続け、ことし6月までの年間で683億ドル、昨年年間でも1650億ドルである。対米黒字が2000億ドル減れば、中国の対外収支は巨額の赤字に転落してしまう。しかも、外国からの投資も大きく減りそうだ。米中貿易戦争のために対中投資が割に合わなくなる恐れがあるからだ。

 習氏が一帯一路圏などへの投融資を増やそうとするなら、外国からの借り入れに頼るしかないが、それなら高利貸しかサラ金並みの金利でないと、自身の負債が膨張してしまう。現に、中国による一帯一路圏向けの借款金利は国際標準金利の数倍に達しているとみられる。

 そればかりではない。習氏は外貨が手元になくても、「資金拠出します」と言ってみせるからくりを用意している。港湾や高速道路、鉄道などインフラを融資付きで受注する。受注者は中国の国有企業、それに融資するのは中国の国有商業銀行、従事する労働者の大半は中国人である。

 とすると、受注側の資金決裁はすべて人民元で済む。そして、負債はすべて現地政府に押し付けられ、しかも全額外貨建てとなる。中国はこうして「一帯一路への支援」を名目に、外貨を獲得するという仕掛けである。安倍晋三政権も経団連も「一帯一路に協力」とは、甘すぎる。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】中国は結局中所得国の罠から抜け出せない(゚д゚)!

中国はブログ冒頭の記事のような有様ですが、では日本はどうなのかといえば、財務省は5月25日、2017年末における対外資産負債残高を発表し、日本は27年連続で世界最大の債権国となったことがわかっています。発表によれば、対外資産残高は前年比2.7%増の1012兆4310億円、対外負債残高は同5.2%増の683兆9,840億円となり、対外純資産残高は同2.3%減の328兆4470億円となりました。


中国メディアの快資訊は5月25日、日本が27年連続で世界一の純債権国となったことに対し、「日本が失われた20年に陥っているなんて、大嘘だ」と主張する記事を掲載しました。

これは、実際には大嘘ではありません。日本は過去においては、国内では金融政策、財政政策において大失敗しました。デフレ傾向なのに、日銀は金融引締め的な政策ばかり実施し、財務省は緊縮財政を行いました。そのため、日本の国内経済は手酷い停滞を余儀なくされました。

記事は、中国人は近年、日本に対して大きな誤解を抱いているとし、それは、日本の経済成長率が低迷していることを「日本衰退」と思い込んでいることだと指摘。日本は国内の経済成長は確かに低迷しているが、海外への投資を通じて、海外で大きな利益を得ているのだと伝え、「中国の対外純資産残高および海外での投資活動は日本の足元にも及ばないのが現状なのだ」と指摘しました。

続けて、日本が海外に大量の資産を保有しているのは、「日本は国土が小さく、天然資源も少ないうえ、国内市場は縮小傾向にあるため、日本企業が海外に活路を見出したため」であると主張。海外での経済活動はGNPには含まれるが、GDPには含まれないと伝え、中国もGDPばかりではなく、GNPも強化していくべきだと論じました。

先にも述べたように、国内経済は疲弊しましたが、日本の大手企業などは、失われた20年より前から、そうして失われた20年中も、海外投資で手堅く稼いできたというだけのことです。

ただし、失われた20年で国内はすっかり疲弊してしまいまい、国民にとってはとんでもないことになってしまいましたから、これは日本国政府がどうしようもなくボンクラであり、民間企業が賢かったということであり、決して褒められたことではありません。

ただし、中国政府としては、人民のことなどどうでもよく、自分たちが儲かれば良いということからすれば、これは本当に羨ましいことなのかもしれません。

中国の対外純資産残高は16年末は日本に次ぐ世界第2位となりましたが、17年末はドイツに抜かれて再び3位に転落しました。財務省によれば、中国の17年末の対外純資産残高は約204兆円であり、日本と中国の差はまだ大きいものの、中国も近年は海外進出を積極化していることから、この差は縮小していく可能性もあるとしていますが、それは甚だ疑問です。

なぜなら、国内でデフレ時に緊縮財政を行うような、日本の財務省の分析、しかも中国の分析など到底信用できないからです。

以下、中国の公表するGDPなどの統計数値が正しいものとして分析してみます。現在、中国の対外純資産(対外資産-対外債務)の規模は、日本、ドイツに続く世界3位となっていますが、対外資産が生み出す収益である第1次所得収支は、恒常的な赤字となっています。


ここで、米国が断トツのマイナスになっていますが、これは当然といえば、当然です。なぜなら、米国は基軸通貨国でもあるからです。このあたりの詳細は本題とは直接関係ないので説明しません。

中国の、第1次所得収支が、恒常的な赤字その理由には以下の2つがあります。まず、中国の成長率ひいては投資収益率は海外平均に比べ高いです。2015~17年平均の名目経済成長率は、米国やドイツの3.6%、日本の2.1%に対し、中国は7.9%と高い。外国から中国に対して行う投資の収益率は高く、国際収支上は中国の対外支払額が大きくなる一方、相対的に利回りの低い先進国などに投資する中国側の受け取りは小さくなります。

これは、たとえ7.9%が嘘であったとしても、中国の経済の伸び率がある程度高いというのならあてはまることです。

2番目に、中国では外国への直接投資や証券投資での運用は相対的に小さく、大規模な外貨準備で運用する点が特徴となっています。外貨準備は国債などの外国資産で運用されるため、安全性が高いですが、収益率は一段と低くなります。

中国では、所得収支が赤字を続けるほか、海外渡航や知的財産権使用に関連したサービス収支の赤字も拡大しています。貿易収支はこれらを上回る黒字を計上してきたが、所得水準の向上などによる輸入増で黒字幅が縮小し、全てを合計した経常収支の黒字が縮小しています。

今後も経常収支の黒字を維持するためには、日本やドイツと同様に所得収支を黒字化する必要があります。中国内外の利回り格差の解消は難しいですが、対外資産の運用を政府の外貨準備から企業による直接投資・証券投資にシフトしていくことが考えられます。その実現には、為替管理の緩和などを通じて企業の海外投資を自由化する政策が求められるだけでなく、米国をはじめ、諸外国における中国の投資への警戒感を和らげることも課題となってくるでしょう。

対外資産の運用を政府によって実行すれば、最初から大失敗するのは明らかです。日本でいえば、財務省が一手に対外資産の運用を引き受けるようなものであり、官僚が運用して成功する見込みは全くありません。

多数の経験豊富な、民間企業がしのぎを削って競争しながら、実施するからこそうまくいくのです。その中には失敗するものもあれば、成功するものもあります。日本の場合は、成功する企業の割合がたまたま多いということです。

一帯一路圏への直接投資は、いくら投資したとしても、利回りが低くすぎで、たとえ習近平が狡猾に、中国企業に受注させたにしても、元々利回りが低いことには変わりはなく、実際は収益性が乏しいということです。それに、当該国の政府や企業にも、ある程度は儲けさせてやらなければ、長続きするプロジェクトにはなりません。そうなれば、ますます利回り率は低くなります。

かつて、中国が国内に投資して発展したように、国内投資に回帰すれば良いとも思うのですが、それも無理のようです。

なぜなら、中国では、大きなインフラ投資は一巡してもうめぼしいものはないからです。今更、たとえばさらに鬼城をたくさんつくるというわけにはいかないからです。それなら、人に投資するとか、産業構造を変えることに投資すれば良いと思うのですが、それも無理なようです。

中国の全国各地にみられる鬼城(ゴーストタウン)

なぜなら、産業構造を変えるには、中国の民主化、政治と経済の分離、法治国家化がどうしても必要不可欠なのですが、それを実行するとなると、中共の本質を変えなければならないからです。

現在先進国といわれる国々は、これらを実施して、いわゆる多数の中間層を輩出し、それらが活溌な政治・経済活動をすることにより、富を築いて先進国のなったのですが、現在の中国はまだその前の段階であり、しかも中共が体制を変えようとしません。

変えれば、自分たちの統治の正当性を失い崩壊してしまうことを恐れているので、結局何もできず、一帯一路でお茶を濁しているのでしょうが、それもうまくはいきそうもありません。

結局中国はミンスキー・モーメント、てっとりばやくいうとバブルが膨らむだけ膨らんで、崩壊する時の瞬間のことですが、これ迎えるしかないのでしょう。その瞬間の後には中国は中進国の状態から抜け出すことができずに、永遠に中所得国の罠から抜け出すことができなくなることでしょう。

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2018年9月5日水曜日

統一選前に台湾で政治不信増大 中国共産党もアプローチに困惑―【私の論評】台湾に限らず、日本も含めてアジアの政治家はマクロ経済政策を疎かにすべきではない(゚д゚)!

統一選前に台湾で政治不信増大 中国共産党もアプローチに困惑

民進党党首蔡英文氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 台湾の政治が迷走している。

 今年11月24日、台湾では統一地方選挙(「九合一」)が行われる。投票まで100日を切ったとあって、メディアの報道も熱を帯びているので、ここで一度触れておこうと思う。

 ただ、取り上げようと思う反面、気になるのが、肝心な台湾の有権者の政治への関心が一向に高まっていないことだ。

 その理由は、有権者の“政治離れ”に歯止めがかからないからである。

 中国との関係で政策が対立する台湾では、台湾独立の受け皿となる与党・民主進歩党(民進党)と大陸との統一を掲げる国民党という二大政党の対立の構造が定着している。

 互いに象徴するカラーを定め、民進党の緑に対して国民党が青。有権者の選択はずっと、緑か青かという単純なものであった。

民主進歩党(左)のシンボル・カラーは緑、国民党(右)のそれは青

 しかし、ここにきて顕著になりつつあるのが緑にも青にも「ノー」という空気である。いわゆる「無色」勢力の伸長と呼ばれる傾向だ。

 いったいなぜこんなことになったのか。

 日本では、台湾の選挙といえば、緑か青のどちらが勝ったかで、台湾の人々の対中国観をはかろうとするのだが、対外政策が選挙の中心に来るケースは極めて稀で、実際はそうではないことの方が多い。

 では、人々は何を気にしているのかといえば、当然のこと自分たちの生活の改善である。

 その意味で蔡英文総統が誕生した当初には、民進党政権に大きな期待が寄せられた。

 だが、結果的に民進党は人々の期待に応えられなかったといってもよいだろう。

 そのことは各種の世論調査に顕著だが、その一つ、台湾民意基金会の調査結果によれば、7月の政党支持率は、民進党が25・2%、国民党が20・7%だった。

 2016年に行われた同じ調査では、民進党への支持が51・6%であったことを考慮すれば、緑に対する失望の大きさは明らかと言わざるを得ない。

 ちなみに国民党の支持率は18・9%だったので、2ポイント程度伸びた計算になるが、民進党が失った支持を取り込めたとはとても言えないのが現実である。

 緑と青に代わって拡大したのは無党派で、49・6%となった。

 焦った民進党は選挙を前に慌てて基本月給や時給を引き上げる政策を打ち出したが、効果を期待する声は少ない。

 台湾住民の貯蓄率はずっと下降傾向にあるが、昨年は過去5年間で最低になるなど、家計の厳しさを示す数字は枚挙に暇がない。

台湾の個人消費の伸び率


 だが、繰り返しになるが国民党にも決め手がない。かねてから指摘される人材不足と内紛で満身創痍状態だからだ。

 興味深いのはこうした台湾の状況に中国共産党も戸惑っていることだ。

 かつて民進党の支持基盤の南部の農家から果物を“爆買い”して揺さぶりをかけたり、観光客を制限して蔡政権のプレッシャーをかけてきたが、いまは何処に向けて何を発して良いのか分からなくなっているという。

 なんとも皮肉な話だ。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

【私の論評】台湾に限らず、日本も含めてアジアの政治家はマクロ経済政策を疎かにすべきではない(゚д゚)!

上の記事を読んでいると、民進党も、国民党も結局のところマクロ経済音痴なのではないかと思います。上の記事を書いている富坂氏もマクロ経済音痴なのではないかと思ってしまいます。

なぜなら、富坂氏も台湾のマクロ経済には全く触れないからです。こういう人は、なぜかアジアに多いです。一国の経済が、マクロ経済政策すなわち、政府の財政政策と中央銀行の金融政策に全く関わりがないなどということはありません。

それどころか、大きく関与しているというか、国の経済対策といえば、財政政策と金融政策であり、それが大部分を占め、ミクロ政策などは国にとってはあまり関係のないことです。

この基本中の基本を、民進党党首蔡英文も国民党党首呉敦義氏も、理解していないのではないかと思われます。さらには、民進党や国民党の議員のもこれを理解していないのではないかと思われます。

なぜそのようなことを言うかといえば、台湾の経済対策などみていると、どうもマクロ的な政策はみあたらず、ミクロ的なものばかりが散見されるからです。

2016年に馬英九総統に代わり、蔡英文氏が台湾総統として就任しました。

蔡政権の経済政策として特徴的なのは、「新南向政策」です。これは、蔡総統就任後の2016年に打ち立てられた政策で、経済発展が著しいASEAN10ヵ国、南アジア6ヵ国、オーストラリアとニュージーランド、計18ヵ国との関係を強化し、台湾の経済発展を目指すといった政策です。この政策では、下記4つの軸を主軸として、経済成長を目指すとしています。

(1)経済貿易協力
(2)人材交流
(3)資源の共有
(4)地域の連携


経済貿易協力では、ターゲット国のインフラ建設協力や、スマート医療、IoTシステムの輸出、さらにはEコマースでの台湾製品の発信、教育やヘルスケア分野での輸出の推進を目指しています。

人材交流では、専門性の高い人材を育成・交流を図るとしています。具体的には、台湾の大学の海外分校の設立、台湾専門のクラスの設立をすることで、台湾の専門家の育成の強化を目指します。また、交流促進の為にビザ申請等の手続きを簡素化する計画があります。

台湾で働いている外国人専門家や技術者には、評価制度を設け、一定の基準を満たした場合にビザの延長許可措置が可能になる施策も盛り込まれています。

資源の共有では、文化や観光、医療等のターゲット国の生活の質向上を目指すとしています。

文化面では、メディアやゲームを利用した台湾のブランディングの向上、観光分野では、ターゲット国からの旅行者へのビザ規制緩和、医療分野では、医薬品の認証、新薬、医療機器の開発の協力を目指しています。

最後に地域の連携では、ASEANやインドとの経済連携協定締結を積極的に図るとしています。これにより、台湾からのターゲット国への投資を期待しています。また、南アジアへの進出も第三国との連携で目指すとしています。

結局、貿易を伸ばして経済成長しようということであり、国の経済の基本である、財政政策や金融政策について具体的には何の方針もありません。

金融緩和というと、蔡英文氏は貿易に何の関係もないと思っているのでしょうか、仮にいずれかの国への貿易を増やそうとして、いくら人材育成や資源の共有、地域の連携などミクロ的な努力を重ねたとしても、台湾の中央銀行が金融引締めばかりしていて、貿易相手国が徹底的に金融緩和をしていたとしたらどうなるでしょうか。

結局台湾元高になってしまい、いくら努力をしたとしても貿易では不利になってしまいます。しかし、だからといって、今度は台湾中央銀行が金融緩和に走ったとして、際限なく金融緩和を続けたとすれば、今度は台湾国内が過度のインフレになってしまいます。

そんなことにならないように、様々な方法を駆使して、金融緩和で貿易では不利にならないように、国内では、インフレが過渡に進行しないようにしなければなりません。

この仕事を行うのは、無論台湾中央銀行ですが、それにしても方針・目標は台湾政府が定めなければならないです。

また、いくら貿易に力をいれるからといって、国内をおろそかにするわけにはいきません。国内では、まともな財政政策を実施して、経済成長を実現する必要があります。

財政政策の目玉としては、2017年に台湾政府が定めた「前瞻(せん)基礎建設計画」では、次世代インフラの建設を行うことで、投資の強化を目指しています。具体的には、

(1)風力発電や太陽光発電等のグリーンエネルギー
(2)ネットやITインフラ
(3)治水、水供給等の環境インフラ
(4)高速鉄道や台湾鉄道の高度化、都市MRT等の鉄道インフラ
(5)駐車問題の改善、道路の改善等の都市・農村インフラ


を挙げています。その中でも特に金額的に大きいのは、鉄道インフラの整備となっており、訪台した観光客や現地の住民の生活の高めることを優先としていることが考えられます。

台湾の経済対策なるものは、貿易振興のための投資計画がほとんどのようです。これによって、確かに経済が良くなることは良くなりますが、あまりに投資にばかり頼ると、クラウディング・アウトに見舞われることもあります。

クラウディング・アウトとは、行政府が資金需要をまかなうために大量の国債を発行すると、それによって市中の金利が上昇するため、民間の資金需要が抑制されることをいいます。

公共投資と、同じ財政政策でも減税や、給付金などは大規模に行ってもクラウディング・アウトがおこることはありません。

減税、給付金といっても、盲滅法に行うのではなく、その時々で最も効果の上がりそうなものを選択して行う必要があります。これを行うのが、日本でいうところの財務省ですが、それにしても目標は政府が定めなければなりません。

さらに、財政政策、金融政策など、いずれの手法をとっても、効果が出てくるまでにラグがあり、このラグも考慮しながら、財政政策と金融政策をうまく組み合わせていく必要があります。

それに、金融政策は雇用政策でもあります。インフレ率を数%あげると、日本や米国では、それだけで他に何もせずとも、一夜にして数百万の雇用が生まれます。台湾では、人口のなどの規模が違うので、ここまではとはいわずとも、雇用が大量に生まれることには変わりないです。

などと、いろいろと述べましたが、台湾経済そのものは、さほど悪くはないものの、かなり良いとか、かなり伸びているともいえるような状況ではありません。それについては、みずほ銀行の資料にうまくまとめられているので、そちらをご覧になってください。以下にリンクを掲載します。
台湾経済の現状と展望2018年6月
 ただし、台湾の経済政策は上記にあげたように、貿易によって成長しようとしているようです。しかし、その前にマクロ経済政策によって内需拡大をすべきです。マクロ政策によって前途有望であると思われるような、政策を打ち出していないので、上滑り観はまぬがれず、台湾の国民は納得していないのでしょう。それは、国民党も同じことなので、国民の政治離れが進んでいるのでしょう。

それにしても、米国の経済対策など、政府は必ず財政政策や金融政策などをあげるのが常識ですが、日本をはじめとして、アジアの国々ではそうではありません。無論米国の場合は、世界経済に影響を与えるほど、米国の国内事情は重要です。だからかこそ、米国内のマクロ経済に関しては政府も公表する姿勢を貫いているのでしょう。

しかし、米国とアジアでは経済対策が異なるなどということはありません。アジアの国々も、本来政府の経済対策といえば、まずはマクロ経済政策というのが正しいありかたのはずです。

日本も、金融政策、財政政策などを政府の方針としてあげたのは、安倍政権による3本の矢においてが初めてではなかったかと思います。

お隣の韓国では、朴槿恵政権はまともなマクロ経済政策を実行せず、文在寅大統領にかわってからは、金融緩和はせずに、最低賃金をあげるという政策を実施し、これは見事に失敗して雇用が激減しています。そうして、これは金融緩和等のマクロ政策には全く関係なく、とにかく再分配を重視すべきと主張する立憲民主党の枝野氏が主張する経済政策と同じものです。

文在寅韓国大統領

このようなアジアの国々実体をみると、やはりアジアの諸国にはそのような共通点があると思ってしまいます。

ただし、中国だけは例外かもしれません。中国の場合、とにかく経済が悪くなれば、積極財政で巨額の投資をする、それでも足りなければ、金融緩和策として巨額の元を刷り増すという具合で、景気が加熱すると逆に、緊縮財政と金融引締めに転じるという具合に、単純にマクロ経済政策を実行しています。

ただし、中国の体制はそもそも、民主化、政治と経済、法治国家化がなされておらず、様々な矛盾が蓄積しているのも事実です。そのため、結局自ら他国に対して貿易戦争を仕掛けたにも等しいことをしてしまい、最近では米国から本格的に貿易戦争を挑まれるという手痛いしっぺ返しを食らっています。

日本も、ふりかえってみれば、総裁選に出る石破氏も、経済対策に関してはマクロ経済対策はあげていません。希望の党の小池氏もマクロ経済対策はあげていませんでした。

日本では、多くの政治家には、マクロ経済政策などはないものと同じようです。自民党の政治家の多くも、経済対策というと公共工事のことと思っているようです。

このようなマクロ経済政策を無視するような台湾を含めたアジアの政治は、結局うまくいかないのは確かです。

日本でも、マクロ経済的にみれば悪手中の悪手がある10%増税を来年10月からそのまま実施してしまえば、経済が停滞するのは必定です。

もし、そうなれば、台湾のような政治不信に日本も見舞われることでしょう。さらに、まかり間違って、日銀が金融引締めにでも転ずることでもあれば、韓国のように若者雇用が最悪となることでしょう。

安倍総裁の3選は間違いないようですが、予定通りに10%増税を実行してしまえば、次の任期のときに、自民党内で本格的な安倍おろしがはじまるかもしれません。ただし、安倍さんに変わって誰かが総理大臣になったとしても、まともなマクロ経済対策を実行しなければ、短命政権に終わることでしょう。

その後どの党の誰が、総理大臣になったとしても、経済政策を根本的にあらためなければ、どの政権も短命で終わることになるでしょう。

それだけ、マクロ経済政策は重大事なのです。アジアの政治家はこれをおろそかにすべきではありません。

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2018年9月4日火曜日

米中貿易戦争はアメリカ絶対有利…感じ取った“老獪”マハティール首相「中国突き放し」― 【私の論評】マハティールは貿易戦争を開始したのは、元々中国だということを見抜いている(゚д゚)!

米中貿易戦争はアメリカ絶対有利…感じ取った“老獪”マハティール首相「中国突き放し」 

高橋洋一 日本の解き方
8月20日、北京の人民大会堂で硬い表情を浮かべる
中国の李克強首相(右)とマレーシアのマハティール首相

 90歳を超えて首相に返り咲いたマレーシアのマハティール首相が、中国の「一帯一路」戦略の高速鉄道建設中止や、消費税廃止などの政策を打ち出している。

 8月下旬にマハティール首相が中国を訪問したことに対して、中国を牽制(けんせい)するものだとの見方がある一方、両国は関係修復をし「一帯一路」でも協力するという報道もあった。

 前政権が中国政府系企業と契約した「東海岸鉄道」など個別プロジェクトを中止することは明確だ。マハティール首相の訪中時の報道が分かれているのは、個別プロジェクトの中止に力点を置くか、「一帯一路」全体ヘ協力すると言ったことを重視するかの差であろう。

 筆者としては、マスコミ報道の前者と後者の差について、中国経済の今後の見方に関係していることが興味深い。

 前者は、それぞれ中国経済の拡張が頭打ちになっていることを示唆しているが、後者は相変わらず中国経済が発展することを前提にしている。

 これは、米中貿易戦争をどのように報道するかにも関わっている。前者は、トランプ政権が仕掛けた貿易戦争によって中国が追い込まれるというシナリオであり、後者はトランプ政権は保護主義であり、WTO(世界貿易機関)ルールに反する不公正なものだとトランプ政権を糾弾する。

 たしかに、モノだけをみればトランプ政権の関税引き上げ戦略は自由貿易に反するが、筆者は、トランプ政権のやり方は政治的にかなり賢い戦法だと思っている。

 まず、トランプ政権は単純に米中間の経常赤字だけを問題にしていない。米国が対中経常赤字になると、複式簿記の原理で対中資本黒字になりやすい。つまり、米国が対中経常赤字ということは、それだけ中国からの対米投資になっているというわけだ。

 トランプ政権は、この点について中国は自由に米国に投資して、その中で知的財産権を盗み、米国に損害を与えているという論法だ。これに対抗するためには、中国は対米経常黒字を少なくするか、さもなければ、米国にも対中経常黒字の可能性を残し、中国が資本取引を自由化するしかない。

 前者は中国経済の鈍化になるし、後者は本コラムで再三繰り返しているように、中国の一党独裁・共産主義体制の崩壊にもつながりうる。つまり、米国は対中貿易戦争では負けないような手を打ってきているのだ。

 米国の対中の仕掛けをつぶさにみると、中国経済の先行きには楽観的になれない。おそらくマハティール首相もそれを感じ取って、前政権よりやや突き放したスタンスなのだろう。

 もちろん、マハティール首相は老獪(ろうかい)な政治家なので、中国にも一定の配慮を見せている。そして、今回の米中貿易戦争の際に、前政権の対中スタンスを少し変更し、消費税廃止で内需振興に転じたのは、政治的に巧妙な判断だといえる。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】マハティールは貿易戦争を開始したのは、元々中国だということを見抜いている(゚д゚)!

米中間での貿易戦争を始めたのはトランプ米大統領であるかのように、一般に誤解があるようですが、これは正しくはありません。なぜなから、トランプ氏が大統領に就任するかなり前から、中国は事実上米国に対して貿易戦争を仕掛けていました。

自由貿易主義者や国際主義者でさえも、米国企業に重要なテクノロジーの移転を強要する、中国市場へのアクセスを制限するなどの中国の略奪的な通商慣行は、貿易相手国と貿易システムの両方を阻害するとの認識で一致することでしょう。

トランプ氏による中国たたきには、法律、政治、経済的な観点からみて有力な根拠があります。

自由貿易の典型的な比較優位論では、各国はそれぞれ比較的な優位性を持つ分野を専門とし、コストを引き下げ、全員の収入を増やすと見込まれています。仮に中国が米国への鉄鋼輸出に補助金を与えれば、理論的には米国はなお恩恵を受けます。

米国の消費者や鉄鋼を原料とする産業のコストを低減するほか、鉄鋼の雇用は一部消失する一方で、一段と生産的な雇用が取って代わるためです。

ところが、1980年代頃から、エコノミストはこの比較優位では、商用機や半導体、ソフトウエアなどの成功を説明できないことに気付き始めましたた。

これらの産業では、競合の参入が難しいです。巨額の研究・開発(R&D)費用や、すでに確立した技術標準、規模に関する収穫てい増(売れば売るほどコストは下がるという規模の原理)、ネットワーク効果(顧客の製品利用が増えるほど重要性を増す)がその理由です。

このような産業では、少数の企業が他社を犠牲にして、賃金や利益(エコノミストはこれを「レント(rent)」と呼ぶ)の大部分を握る可能性があります。中国は2025年までに、これらの産業の多くで、このような支配を手に入れることを目指しています。

「中国はわれわれの利益の一部を阻害する、または奪おうとしている。そのため、われわれの暮らしは相対的に悪化する一方、中国の暮らしは上向く」。こう指摘するのは「貿易を巡る衝突:米国の通商政策の歴史(仮題)」の著者、ダグラス・アーウィン氏です。

同氏は、輸入鉄鋼・アルミニウム関税とは違い、「エコノミストの多くは、トランプ氏の対中制裁措置への批判を控えるだろう。中国が過去数年にわたり、知的財産権を侵害し、技術移転を強要してきたことを誰も擁護することはできない」と述べています。

ダグラス・アーウィン氏

中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した2001年当時、支持派の多くは、国内企業を優先し他国の企業に打撃を与えることを禁じた国際規定に中国が従うだろうと考えていました。ところが、中国はWTOでは容易には解決できないようなやり方で、自国の企業を優遇しています。

情報技術・革新財団(ITIF)のロバート・アトキンソン理事長は、WTO訴訟では通常、打撃を受けた企業からの証拠提示が義務づけられます。ところが外資系企業の多くは、中国での不当な扱いを訴えることに消極的です。

提訴すれば、中国政府から、反トラストや不正、スパイ、消費者への不当な扱いなどの疑いで調査を受けるといった報復措置のほか、政府系企業に販売を奪われることを恐れているためです。

力の均衡、または独立した司法制度がない中で、「中国当局者による恣意的で、気まぐれな重商主義政策の実施に歯止めをかけるような法の支配はない」といいます。アトキンソン氏は1年前、他の2人と共同で、中国を厳しく批判した著作本を執筆しました。

また中国の制度は極めて不透明なため、WTOで定められた義務について、中国に責任を負わせることは困難です。アトキンソン氏は、差別的な措置の多くは明らかになっていないか、中国語のみでしか発表されていないと指摘しています。外部からの圧力を受けて、中央政府が一部の差別的な措置を撤廃しても、省や地方のレベルで、こうした措置が再び講じられるというのです。

ロバート・アトキンソン氏

トランプ氏の鉄鋼・アルミ関税は、中国とともに、法律を順守するカナダや西欧諸国にも打撃を与えるため、大きな批判を集めました。

対照的に、トランプ氏が抱く中国への怒りは広く共有されています。エマニュエル・マクロン仏大統領は、中国企業による買収を禁止する、統一の欧州連合(EU)政策を求めています。

ピーター・ナバロ国家通商会議委員長は22日、記者団に「中国と貿易を行う国はすべてこの問題に直面する」と指摘。「われわれはこれまでの過程の一環として、米国に同調する同盟国や貿易相手国との連携を探ってきた」と述べています。

日本は何十年も、現在の中国のように、外資への市場アクセス制限や直接的な産業支援の提供、欧米企業に技術のライセンス供与を迫ることで、国内企業を優遇しようとしてきました。

日本企業は自動車、電子機器、コンピューターなどの分野で追いついきましたが、米国はソフトウエアやサービスなど、新たな産業で大きく飛躍しました。日本経済はその後1992年、長い停滞期に入り、今でも完全には抜け出せていません。一部では、中国に関する現在のパニックは、日本のケースと同様に見当違いだとの指摘もあります。

しかし日本と中国は根本的に異なります。日本は米国の軍事同盟国であり、そのため貿易に関して、米国の圧力に対し敏感です。中国は戦略地政学上のライバルであり、民事・軍事両面で米国の機密を追い求めており、時には盗もうとします。日本は民主主義国家で透明であるのに対し、中国は独裁国家で不透明です。

規模も違います。前出のアーウィン氏は、ロナルド・レーガン元大統領が1987年、日本は米半導体企業に市場を開放しなかったとして、3億ドル相当の日本からの輸入品に100%の関税を課した点を指摘します。トランプ政権の当局者が中国の貿易慣行により500億ドル規模の損害を受けたとしているのに比べて、はるかに小さいです。

経済戦略研究所のクライド・プレストウィッツ所長は、「新作の演劇やミュージカルはブロードウェイで上演される前に、まずはフィラデルフィアやボストンなどで試されることが多い」とし、「日本はフィラデルフィアだった。中国は、ブロードウェイにあたる」と話しています。

日本は政治・戦略面で米国との関係を重視しているため、米国に対する報復措置には後ろ向きでした。ところが、中国は習近平国家主席の下で、一段と国家主義的で敵対的な姿勢を強めており、日本よりも報復措置に前向きです。

しかしながらこれは、貿易戦争による巻き添え被害、それ故にトランプ氏の戦略に伴うリスクが一段と大きいことを示しています。広範にわたるトランプ氏の行動により、米国の消費者、サプライチェーン(供給網)、輸出業者に対する潜在的な打撃は増大するでしょう。

アーウィン氏はトランプ氏の戦略が正しいかどうかは分からないと話しています。中国をWTO提訴する方がより危険の少ない方法かもしれないです。しかし、こう加えました。「何も手を打つべきではないとは、誰も言っていない」

中国による世界に対する貿易戦争には、いずれ世界の誰かが何か対抗措置を打たなければならなかったのです。それが、たまたまトランプ大統領だったということです。

中国への高関税措置に署名したトランプ大統領

このブログでも、以前から述べているように、現中国は民主化、政治と経済の分離、法治国家がなされておらず、そもそも自由貿易などできる体制にはなっていないのです。

これらの体制ができていない、発展途上国と、先進国の貿易をすることもありますが、その場合発展途上国の経済規模は小さく、ほとんど問題になることもありません。

しかし、中国の実体は、発展途上国もしくは中進国の集合体(発展途上国的な省の集合体という意味)です。ところが、これらを一つにまとめる中共が、多額の外資を得て、集合体の生産力を増し、内需(先進国では、GDPの60%以上を占める、中国は35%)を拡大するよりも前に、貿易に力を入れたことから、様々な矛盾が発生するようになったのです。

国内でまともな体制ができていない中国が、外国相手の様々な規制や禁止事項のある、自由貿易だけはできるということはあり得ません。

中国が中国の国内と同じような感覚で、貿易をすれば、国内と同じく恣意的でルールなど守らなくなるのが、当然の帰結です。

発展途上国でもあるマレーシアの現マハティール首相がこのあたりのことを見抜いているのは当然のことです。

日本を訪問中だった、マハティール首相は6月11日、環太平洋連携協定(TPP)のような貿易協定には反対ではないが、再交渉する必要があるとの見解を明らかにしました。同国など成長中の国々には、異なる貿易保護が必要だと主張しました。米国や中国といった大国と公平に競争できるよう、国の成長段階に応じてそれぞれ異なるルールが必要と強調しました。

発展途上国の首相として、これから経済発展をしていこうとするマハティール首相にとっては、実体は発展途上国と中進国の集合体である中国の考えることは良く理解できるでしょう。

国の産業を保護しつつ、貿易も発展させたいところですが、これは二律背反的であり、国の産業を保護したいなら、なかなか自由貿易はできないです。ところが、保護貿易的体質のまま、中国は貿易を拡大させ、世界中の国々に対して結果として、貿易戦争を挑んでしまったのです。

最近のマレーシアは、経済成長率が低下していました。その主因が個人消費の減少でした。その「元凶」は、ナジブ前政権が2015年に導入した物品サービス税(消費税)です。マハティール氏は、6月1日に税率を0%にすることで事実上これを廃止し、早速公約を実現しました。

一方金融政策は、マレーシア中銀は、今年1月25日、政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き上げ3.25%としました。利上げは3年半ぶり。中銀は、経済が着実な成長軌道を進む中で「金融緩和の程度を正常化することを決定した」と発表しました。その後は、再び金利を上げることなく、緩和的政策を継続しています。

マハティール氏は中国とは対照的に、まずは内需を拡大することが正しいやり方であると判断したのでしょう。

今後もマレーシアはしばらくは保護主義的な政策をとりつつまずは内需を拡大させていくことでしょう。

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2018年9月3日月曜日

ウイグル問題が米中の新しい火種に 200万人拘束情報も―【私の論評】米中経済冷戦は悪魔中共の現体制が崩れるまで継続すべき(゚д゚)!

ウイグル問題が米中の新しい火種に 200万人拘束情報も

日本で講演をしち世界ウイグル会議のドルクン・イサ代表
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

中国の新疆ウイグル自治区では「中国からの独立」を叫ぶ少数民族のイスラム教徒ら200万人が身柄を拘束されており、自治区内に巨大な収容所が数十カ所も建設されていることが明らかになった。収容所建設は数年前から始まっており、収監者は自治区の全人口である800万人のうちの25%にも達している。英紙「フィナンシャル・タイムズ」が、ドイツのミュンヘンに拠点を置く世界ウイグル会議のドルクン・イサ代表の話として報じた。

 イサ氏は収容者数について、「今年初めには100万人ほどが収容所にいると聞いた。釈放された人がいるという話を聞いていない。いったん収監されたら、一生出られない。半年以上経ったいまも連行は続いており、いまや200万人以上だが、正確な数字は私たちにも分からない」と答えた。

 同紙によると、同自治区では、中国当局による「反テロ対策」により両親と親戚が拘束され、子供が孤児状態になったケースが何千件にも上っている。

 正確な収容所数は不明だが、米ワシントン大学に留学し、修士課程を修了した中国人留学生の張肖恩氏が米国の衛星監視システムで撮影した同自治区の画像を解析した結果、いまのところ21カ所の収容施設を発見している。そして、いまも建設中の収容施設が数カ所分かっているという。

新疆ウイグル自治区の中部にあるコルラ市の近辺にある、中国の再教育施設をとらえた衛星画像。
この施設を訪れたことがあるウイグル人亡命者が、GPS座標を提供してくれた。

 張氏は北京大学卒業後、ワシントン大に留学後、いまはカナダのブリティッシュコロンビア大学の博士課程で人権問題を解決するため、法学を専門に研究している。

 張氏は1989年6月の天安門事件に関するドキュメンタリー映画を観て、中国共産党政権による人権無視の実態を痛感。同自治区での独立運動やチベット問題などに関心を持ち、法律の知識が中国の人権問題に立ち向かう力になると考え、研究を続けている。

 張氏が今年3月、中国版ツィッター「微博(ウェイボ)」で、反共産党の論文を発表すると、数時間後には中国内在住の両親が警察に呼び出されるなどの圧力が加えられたという。

 中国外務省は、6年間北京に駐在してウイグル問題などを報じてきた、米ニュースサイト「バズフィード」のメーガ・ラジャゴパラン支局長の記者ビザの更新を拒否。同支局長は国外退去を余儀なくされている。

メーガ・ラジャゴパラン支局長

 これに対して、在中国外国人記者協会は同氏へのビザ更新不許可について、「遺憾で受け入れられない」との声明文を発表するとともに、中国外務省に対して説明するよう求めている。また、北京の米国大使館も「中国に在住する記者の活動が著しく制限され続けている」として懸念を表明。

 これを受けて中国外務省報道官は8月下旬の記者会見で、「内政に干渉してはならない」と強く反発するなど、ウイグル問題は貿易問題に次いで、米中間の新たな外交問題に発展しつつあるようだ。

【私の論評】米中経済冷戦は悪魔中共の現体制が崩れるまで継続すべき(゚д゚)!

このブログでも何度か掲載してきたように、新疆ウィグル自治区は、元々は東トルキスタンという独立国であり、現在の中華人民共和国が建国した後に侵略されたものです。

トルコ・イスタンブル在住の亡命ウイグル人組織によって運営されているインターネットテレビ『イステクラルTV』は今年2月14日、「信頼できる現地の公安筋から入手した」として、新疆ウイグル自治区の強制収容施設に収監されているウイグル人やカザフ人の数を公表しました。

この表は県単位で収容者数が記されており、ウルムチ市、ホタン市、イーニン(グルジャ)市など、市単位での数値が欠けています。中国の行政単位としては県が市より下となります。おそらく、大きな行政単位の中心市レベルと末端の県レベルでは管轄部署が異なり、このデータをリークした公安警察は、県レベルのデータ管理者だったのでしょう。

漏洩した拘束者数がいつの段階のものかはわからないですが、収容が大々的に始まった17年に作成されたと考えて間違いないです。データは1212万人いるウイグル人口の71%をカバーしているが、県レベル以外のデータが明らかになれば、収監者数はおそらくさらに増えることでしょう。

89万人を超す拘束者数は新疆全域のデータではないとはいえ、この数値からは多くを読み解くことができます。色で囲ったアクス地区、カシュガル地区、ホタン地区はいずれも住民に占めるウイグル人の割合が極めて高い土地で、データ上で明らかになった収監者数の約8割は、こうしたウイグル人密集地域から連れ去られています(アクス地区合計12万6306人、カシュガル地区合計24万8747人、ホタン地区合計31万5755人、ウイグル人密集地域合計69万808人)。


とてつもない数字なので、言葉を失ってしまいます。

このような中国の非道に対して、米国議員団は怒りを露わにし、トランプ大統領に対して制裁を要求しています。

米議会の超党派議員団は29日、中国の新疆ウイグル自治区で少数民族ウイグル人の強制収容に関わっているとして、中国当局者らに制裁を科すようドナルド・トランプ政権に要求しました。フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員が明らかにしました。

マルコ・ルビオ上院議員

米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、議員団はマイク・ポンペオ国務長官とスティーブ・ムニューシン財務長官に宛てた書簡の中で、中国当局者7人と監視装置を製造する2社に制裁を科すよう求めましたた。

ルビオ議員はツイッターで、「私と超党派議員16人から成る議員団は本日、新疆ウイグル自治区の収容施設にイスラム教徒を大量収容した中国当局者らの資産を凍結し、同当局者らの入国を禁止するためにグローバル・マグニツキー法を利用するよう大統領に要求した」と明らかにしました。

ウイグル人の女性 Mahire Emet / Mayire Ametjan ( Chinese:马 依 热 ・ 艾 买 提 江)  
ダンサー 女優 歌手 1987年5月24日生まれ 身長173cm

イスラム教徒を中心とする100万人近いウイグル人を収容施設で拘束しているとの疑惑について中国当局は真っ向から否定しており、中国共産党幹部は今月13日、ジュネーブで行われた国連の自由権規約委員会でウイグル自治区における厳しい治安対策は過激派やテロリストとの戦いに不可欠であり、特定の民族を対象にしたものでも宗教の自由を制限するものでもないと主張しました。

また中国政府はこうした収容施設に関する報道について「全くの事実無根」と断じており、施設は未成年犯罪者の社会復帰支援を目的とした「教育・訓練センター」だと主張しています。

しかし、複数の非政府組織(NGO)や中国の専門家たちは施設の実態はかなりひどいものとみており、政治的・文化的な教化が大規模に実施されていることを示す元被収容者の証言や公式文書もあるといいます。

フィナンシャル・タイムス7月11日付によると、新疆ウイグル自治区では、中国当局による「反テロ対策」により両親と親せきが拘束され、子供が孤児状態になったケースが、何千例もあるそうです。

とんでもないの一言につきます。このようなことをする悪魔中共と、世界の他の国々とは、ごく一部の例外的な国を除いて、もはや価値観を共有することは不可能でしょう。米中冷戦は中国の現体制が崩壊するまで継続すべきです。日本も他の国々も協調して、中共を追い詰めるべきです。

日本もそうすべきです。それにしても、日本の左派・左翼はポリコレなどで、「人権!人権!」と言うにもかかわらず、中共のこととなると口をつぐんでしまい誰も何もいいません。本当に不思議です。

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2018年9月2日日曜日

種子法廃止に反対している人たちが、誤解しているかもしれないことむしろメリットのほうが多い可能性も―【私の論評】4月に種子法が廃止されて以来何も不都合は起こっていないし、起こるはずもない(゚д゚)!。

種子法廃止に反対している人たちが、誤解しているかもしれないことむしろメリットのほうが多い可能性も

ドクターZ

奨励品種はなくらならい

今年4月に廃止された種子法(主要農作物種子法)が、'19年の参院選に影響するのではないかと、にわかに話題になっている。

種子法は1952年、戦後の食糧の安定供給を図るために制定された8条からなる比較的短い法律だ。米・麦・大豆の3種類を対象に、奨励品種の選定や原種の生産に都道府県が責任を持つことが定められた法律である。

これが廃止されると、海外から遺伝子組み換えの種子が流入し、海外に日本の食が乗っ取られるとして、一部の農家からは強い批判がある。ひいては与党支持にも影響が出るのではとされているのだが、政府としては種子法が「役割を終えた」ものとして廃止を決めたわけで、今後はどうなっていくのか。

種子法廃止に反対しているのは、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に猛反対していた層とほぼ一致するが、農協などの農業関係者のなかでは冷静な見方をする向きも多い。

まず、彼らが懸念する遺伝子組み換えの種子については、厚労省管轄の食品衛生法の問題で、同法による安全性審査で規制されている。なお種子法が廃止されても、食品衛生法の規制は変わりない。


また、いろいろな食物の種子ビジネスに外資が入ってくるという理屈も不明瞭で、種子法に指定された3種だけでなく、対象外の野菜などの種子でも日本のメーカーのシェアは大きい。

種子法の「奨励品種」とは、たとえば「あきたこまち」のような都道府県でブランド化された作物になるが、たしかに地方としてはこの指定がなくなれば困るかもしれない。だが、じつは種子法廃止とともに、各地方自治体では、種子法と同様な条例や要綱を作った。これで、各地方自治体において奨励品種がなくなることは避けられたのだ。

種子法では、国が地方自治体に奨励品種の義務を課していたが、これからは地方自治体が独自に行うとしている。要するに、奨励品種は、国(中央政府)の仕事から地方自治体(地方政府)の仕事に変わっただけであり、やる主体が政府であることは変わりない。

昔よりも作物の生産量に差が広がった大都市と農業県では、農業への取り組み方が違うのは当たり前のことだ。国主体では、たとえば米の減反など、非効率的な政策しか取ることができないため、むしろ農業従事者のためには種子法廃止のメリットは大きいはずだ。

では、なぜ一部の人が反対するのか。しかも、種子法の廃止だけを強調し、同じ内容の各地方自治体の条例が同時に制定されていることを言わないのは、あまりにバランスを欠いている。

その理由としては、やはり一部でTPP反対論を引きずっている人がいるからだろう。

このときも日本の農業は外資に乗っ取られるとしてきたが、アメリカが抜けたことで枠組みは大きく変わり、反対論者の説得力は失われた。そのタイミングで種子法廃止が俎上に載り、TPPのときとまったく同じ絵を描いたのだ。

だが、これまで述べてきたように、日本の農業を守る枠組みはきちんと維持される。事が事だけに早とちりしている人も多いかもしれないが、正しく事情を理解しておけばその間違いに気づくはずだ。

【私の論評】4月に種子法が廃止されて以来何も不都合は起こっていないし、起こるはずもない(゚д゚)!

日本の食の安全を脅かす種子法廃止がなぜ問題にならないのか、なぜ話題にならないのかと疑念を抱いている方がいます。答えは簡単です。問題では無いからです。なにか陰謀があるからだ、などと言っている人いますが、そんなことはありません。

何の問題も無い些末な事を針小棒大に煽って、アジって自らのビジネスにしている輩が居る。ただそれだけのことです。

 以下にその例をあげます。
日本の農業をぶっ壊す種子法廃止、なぜほとんど話題にならない?
田中優 (MONEY VOICEより 2018年2月25日)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
ならば「安全な種から育てた食品を選ぼう」と思ったとしても、主要農産物の種を守ってきた「主要農作物種子法」が2018年の今年から廃止されて、種は入手が困難になっていく。種は遺伝子組み換えのものに入れ替わり、それから育てた作物しか選べなくなる。
一見すると私たちに関係なさそうな「主要農産物種子法の廃止」が、私たちの選択の余地をなくし、健康を維持できない可能性が高まるのだ。
この記事の内容は、本当に酷いです。冒頭からデマ全開です。種子法が廃止されても種が遺伝子組み換えのものに入れ替わる事はありません。

種子法は元々別に遺伝子組換え作物を規制しているわけではないので、種子法が廃止されたからといって、種が遺伝子組換えのものに替わる事はないです。

 国内での遺伝子組換え作物の栽培は、特別に許可され隔離された圃場での実験栽培だけです。現在承認されているのはトウモロコシ、ダイズ、セイヨウナタネ、ワタ、パパイヤ、アルファルファ、テンサイ、バラ、カーネーション9作物だけです。また、商業栽培が行われているのはバラのみです。

 これもTPPのISD条項で訴えられて、外国から種子無秩序にがはいってくることになるような、主張をしている人を見かけますが、ISDは他国の法律を変える事はできませんし、もともとあった法律で規制されているのに外国企業が日本に乗り込んできて損をしたなどとして、訴えるなどということはできないですし、仮に訴えたとしても完全に非があるのは企業側なので、100%企業側が負けます。

また、上記の記事中では自閉症の増加とラウンドアップの普及に相関性があるから、ラウンドアップの成分、グリホサートに自閉症の原因があるに違いないとしていますが、なぜか記事では途中でネオニコチノイド系殺虫剤の話になっています・・・)グリホサートと自閉症に因果関係があるかどうかについては、色々調べてみましたが、それを裏付ける様な研究や論文をありませんでした。


ラウンドアップ

それに、遺伝的な要因が強いというとする論文はありますが、近年自閉症が増加している原因についてはまだ科学的にはっきりと解明されていません。

それをグリホサートの増加と相関があるから因果関係もあるはずだと結論付けるのは乱暴すぎるのではないかと思います。

このやり方ならば、自閉症増加と同時期に増えたものはなんでも因果関係があると結論付けてもいいと言うことになってしまいます。

 また、グリホサートはあまりに性能的に優れた除草剤であるため、現在グリホサートの代替となる除草剤が存在しません。

グリホサートを使用すると不耕起での栽培が可能になるので、農業生産性が大きく向上し、且つ土壌が流出しないため周囲の河川汚染のリスクが減るという報告があります。

この様な状況で、下手にグリホサートを規制すると、農家は他の毒性が強く、環境に負荷を与えやすい除草剤を使うことになってしまうため、意味がないどころかかえって事態の悪化を招きかねません。これでは本末転倒です。

そういった背景もあり、EUではグリホサート規制の声が大きかったものの、使用許可期限を5年間延長する決定が下されました。代わるものが無いのですから仕方がありません。グリホサートなしでは農業生産性が著しく低下しますので、農作物価格の高騰を招く可能性が大です。

 ネオニコチノイド系の殺虫剤も然りです。今の農業はネオニコチノイド系の殺虫剤前提で成り立っていますので、規制されたら別の有害な有機リン系の殺虫剤を使わざるを得なくなり、周辺の生態系に与える影響は必然的に大きくなりかねません。また、農業生産コストを増大させて農作物の価格は高騰するでしょう。

 では、農薬不使用の有機栽培をやればいいじゃないかという意見もあろうかと思いますが、農薬不使用で農作物を栽培するのはかなり困難です。
さらに、農薬が防ぐのは虫だけではありません。有毒なカビや病気も予防します。

自閉症誘発というハザードがある(この記事では完全なこじつけですけど)から廃止しろ
と言うのはかなり乱暴な議論で、きちんと経済利便性や、リスクを評価して総合的な判断を下さなければならないでしょう。

「危険性又は有害性(ハザード)」と「リスク」の違いとは ライオンは固有の危険性をもっているのでハザードにあたりますが、左の図はライオンのそばに人がいないので、ライオンに襲われる危険性はありません。 ... 「危険性・有害性(ハザード)」とリスクを明確に区別して理解をする必要があります。



車は交通死亡者を増やすハザードがあるからといって車の生産や利用が規制されないことと同じです。車がなければ現在の生活が成り立たないのと同様に、今の農業は農薬がなければ成立しないものになっています。

 農薬無しでできないことはないのですが、農作物価格の高騰は覚悟しなければなりません。日本はまだ先進国だから大丈夫かもしれませんが、途上国の貧しい人たちの中では餓死してしまう者が増えるかもしれません。

 何やら、話が飛んでしまったかのような印象をうけますが、上で引用した記事は元々は、種子法廃止の話だったはずです。グリホサートとネオニコチノイド系の殺虫剤とか、種子法とは種子法とは、一切関係ないはずです。

 ホームセンターいくとわかりますが、グリホサート系除草剤、殺虫剤など、大量に売られてます。それにJAが積極的にラウンドアップの拡販普及に力を入れています。本当に害があれば、そんなことをするはずもないです。

このような主張をする記事に煽られる必要はありません。一番はっきりしていることは、すでに4月に種子法が廃止されていますが、具体的に何か不都合が起こったでしょうか。

種子法廃止に反対する人々は、まともなエビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)をあげてほしいです。エビデンスなしに、不安を煽るのはやめるべきです。

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