2019年5月15日水曜日

「Made in China」が米国市場から消える日―【私の論評】米国は中国が図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家になるまで制裁をやめない(゚д゚)!

「Made in China」が米国市場から消える日

立花 聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)

対中制裁第4弾が発動される。トランプ米政権は5月13日、年間の輸入総額約3000億ドル分の中国製品に最大25%の追加関税を課す詳細案を公表した。米中の戦いは本格化する。

トランプが狙っている「戦勝」とは?

 トランプ大統領は5月1日のツイッターでこう語った――。

「Such an easy way to avoid Tariffs? Make or produce your goods and products in the good old USA. It’s very simple!(高い関税を避けたければ、非常に簡単な方法がある。アメリカに戻ってきて製品を生産することだ。とても簡単だろう)」

 人間(企業)は往々にして退路を断たれなければ、なかなか重い腰を上げようとしないのだ。トランプ氏は中国からのほぼすべての輸入品に対して関税を引き上げることにより、中国との「全面戦争」を宣告し、企業の退路を断った。

 多くの在中国外資系製造企業に残される道は、米国や台湾、日本など本国への引き揚げ、あるいはベトナムなどアジア第三国への移転にほかならない。要するに、中国からの転出である。この大移動は、移動する個別の企業の単純総和だけではない。最終的にサプライチェーンの移動であり、つまり「量」の積み上げにより、「質」の根本的変化を遂げることである。

 昨年12月9日付けの寄稿「休戦あり得ぬ米中貿易戦争、トランプが目指す最終的戦勝とは」にも書いた通り、いわゆる交渉は、休戦でも停戦でもなく、激戦の先送りに過ぎず、トランプ氏が目指しているのは、最終的な「戦勝」である。さらに、この「トランプを読み解く」シリーズで何度も繰り返しているように、トランプ氏の交渉は妥結を目的としていない。交渉は最終的な「戦勝」を得るための小道具にすぎない。

 では、トランプ氏が描いた「戦勝」とは、どんなものであろうか。氏の胸中を推し量ることは難しいが、本シリーズの初回寄稿「1ドルで働く大統領の欲求とは?」に、私はマズローの欲求5段階説を根拠に、トランプ氏は「歴史を創る」あるいは「歴史に名を残す」というような最高次欲求である第5段階の頂上に立とうとしているのではないかと仮説を立てた。

「歴史を創る」というキーワードから引き出される「戦勝像」とは、「新たな秩序を創り上げる」辺りにたどり着く。その内実は、米国はあらゆる勢力の台頭や挑戦を排除し、世界で唯一のスーパーパワーとしてその地位を維持し続けることではなかろうか。

 パワーの保有を裏付ける指標は、「ルールの制定権」にほかならない。国家最大のパワーは何と言っても法律の制定権であるのと同じように、世界のルールを決める王者は1人(1国)しかあり得ないのである。

米中妥結があり得ない理由

 この辺、中国は米国と非常によく似た考え方を持っている。「一山容不下二虎」(1つの山に2頭の虎を収容する空間はない)という中国のことわざがある。さらに、「一決雌雄(勝負を決する)」(『史記』項羽本紀、『三国演義』第31回)という形で最終的に勝敗、上下の位置を決める。

 歴史を見ても、中華中心の朝貢制度の下で、「皇帝」の唯一性は中国にとって譲れない一線だった。周辺属国に「王」がいても良いが、「皇」は許されない。皇帝は「天子」であり、天からミッションを託され、世界の中心に存する唯一の最高権力だったからだ。そこで、日本に「天」を戴く「皇」たる「天皇」が存在することは、中国にとってまったく面白くない話であった。

 天が広くても1つしかない。同じ天を戴く複数の「皇」が存してはならない。それこそ、漢語成語の「不共戴天」があるように、同じ天を共に戴くのは敵にほかならないという歴史の経緯を見れば、今日に至るまで日中関係に抜本的な改善が見られないことも理にかなっているといえる。

 中国が考えている他国との友好関係は、基本的に上下の位置を明確にしたうえでの平和親善に過ぎない。対等の友好関係と勝手に思い込んで中国と付き合おうとする日本には理解できない本質なのかもしれない。友好関係の構築にはまず、中国に頭を下げて「臣服」する必要があったからだ。米国にも同じことが言える。ついに力が付いたと自認する中国は、米国との勝負に出て上下を位置づけようとしていた。米国に残される道は1つしかない――勝負を決する。


 中国は一旦他国との上下関係が確定すれば、経済的利益を多少は度外視してもよいというスタンスであり、これも歴史的に検証可能である。属国の地位を認めた時点で中国から若干の経済的利益を引き出すことはさほど難しくない。要するに、「量」と「質」の関係を明確に切り離し、「量」は相談可能だが、「質」は原則の問題で一歩も譲ることができないということだ。

 トランプ氏はこれをよく理解しているようだ。対中交渉の過程を見ても分かるように、中国は米国からの輸入をどんどん増やしてもよいという条件をアピールし続けてきた。ところが、トランプ氏は一点張りで中国に構造的改革を迫った。まさに「量」と「質」の議論で噛み合うはずがない。

時間は誰の味方か?

 貿易交渉の席では、一連の妥結を引き出した後、米国側が中国に約束の執行(実施)の担保を求めた。その要求には数多くの国内法の改正も含まれていたであろう。国内法の改正は主権問題であり、外圧に屈しての国内法改正はまさに負けを意味する。これは政治的に断じて受け入れられないことである。すると、米中交渉の実質的決裂はいずれ不可避になる。

 トランプ氏はもしや、これを知っていたのか? この辺は、拙稿「悪人よりも悪魔を目指すトランプ、毒は猛毒をもって制す」で述べたように、トランプ氏の中国との戦い方は、洗練された紳士ルールよりもむしろ無頼漢らしきものが目立つ。「以其人之道,還治其人之身」(朱熹『中庸集注』第13章)。「その人のやり方をもって、その人を倒す」という意味で、俗にいえば、「毒をもって毒を制す」という策略だった。

 面白いことに、「無毒不丈夫(情に引かれめめしい振る舞いをせず、毒をもって、容赦なく徹底的に相手を叩きつぶす者こそ真の男だ)」という中国のことわざがあり、こうした「仁義なき戦い」のできる猛毒男トランプ氏は逆に、中国人から尊敬されているのではないだろうか。

「サプライヤー、製造施設の中国外移転を加速―米中交渉結果待たずに」。5月8日付けのブルームバーグ記事が報じているように、企業はもう動き出した。トランプ氏が狙っていたところだ。ここにも中国の誤算があった。

 中国は対米交渉で従来の「引き延ばし」戦略を使った。トランプ氏が次期大統領選で落ちれば、局面を挽回できると考えていたのだろう。これに対してトランプ氏はあえて、「交渉は急がない」と微笑んで対応した。理由は簡単だ。企業はもうこれ以上待てない。交渉が引き延ばされている間に、製造業はどんどん中国から逃げ出している。次期大統領選まではもたない。

 時間は誰の味方か? これを考えれば分かる。中国は経常収支が赤字に転落し、数千万人あるいは億単位の失業者が路頭に迷う。一方、米経済は好調だ。

「ゼロ和ゲーム」の仕掛け

 ゼロ和ゲーム(「ゼロサムゲーム」とも言われる)とは、一方の利益が増せば、その分だけ他方の損失が増え、参加者の得点と失点の総和(サム)がゼロになるゲームを指す。これに対し、非ゼロ和ゲームでは両方(全員)が勝者となる場合や、両方(全員)が敗者となる場合を指している。

 中国は盛んに「米中の戦いは、両方が敗者となるから、止めよう」と呼び掛けている。つまり中国は両敗の非ゼロ和ゲームと主張している。しかし、トランプ氏はどう思っているのだろうか。この辺、彼は明言しない代わりに、新冷戦下の「take sides(どちらか一方の側につく)」、つまり米中のどちらかの陣営を選ばざるを得ないムードを漂わせている。

 米ジャーナリストのトーマス・フリードマン氏は東西冷戦について、「It was also a zero-sum game, in which every gain for the Soviet Union and its allies was a loss for the West and NATO, and vice versa.(あれはゼロ和ゲームだ。ソ連とその同盟国のあらゆる『得』は、西側諸国やNATOにとっての『損』になる。逆もまた然り)」と指摘した。この法則は米中の「新冷戦」に適用するかどうか、これからの見所だ。

 イデオロギー対立に基づく対決の姿勢も度々示唆された。

 トランプ大統領が2018年9月25日、第73回国連総会演説で、ベネズエラのマドゥロ社会主義政権を例に引き、「少し前までベネズエラは世界で最も豊かな国の1つでした。今日、社会主義は石油資源に恵まれた国を破産させ、国民を赤貧に至らせました。事実上社会主義や共産主義が試みられたところではどこでも、苦悩、腐敗、そして衰退を生んできました。社会主義の権力への渇望は、拡張、侵略、そして抑圧へとつながります。世界の全ての国は、社会主義とそれが全ての人にもたらす悲惨さに抵抗すべきです」と社会主義や共産主義を痛烈に非難した。

 さらに、2018年11月7日、ホワイトハウスは「共産主義犠牲者の国民的記念日」(ロシア・ボルシェビキ革命101周年記念)に際してトランプ大統領の声明を発表した。「今日、私たちは共産主義によって生命と自由、そして幸福を追求する祝福を奪われた方々のことを偲び、共産主義の下でこれだけ多くの人たちが蒙った耐え難い損害を悼みますとともに、あらゆる人のために自由と機会を求め続けることを改めて誓います」

「Made in China」が米国市場から消える日

 米陣営側で注目すべきは、共産主義に背を向けたベトナムと、中華圏の民主主義老舗である台湾、そしてこれからの出方が注目される日本である。

 先の米朝ハノイ会談で、なぜベトナムが会談地に選ばれたかといえば、トランプ氏が意図的に社会主義の行方を示唆しようとしたのではないだろうか。社会主義や共産主義に対する明確な変節宣言がなくとも、米陣営側に立った時点で、現にベトナムは中国からの産業移転の受け入れ先として莫大な利益を手に入れようとしている。

 さらに台湾。中国からの産業移転先として、労働集約型のベトナムと並んで、台湾は高度な電子部品の生産などハイテク産業の受け皿になる。明確な役割分担があって都合が良い。米国が米台FTA、日本はTPPとそれぞれ台湾を後押しすれば、アジア地域のサプライチェーンの脱中国的な再編が加速化する……

 というのが、トランプ氏の描いている将来像ではないだろうか。

「トランプを読み解く」と題して10回連載してきたが、一旦ここで筆を擱きたい。トランプという人物は総じて言えば、決して日本人が好むようなタイプではない。政治というものは将来のある時点に立てば、歴史になる。歴史的視点から人物像を評価する場合は、結果を折り込んだ包括的なパースペクティブが可能になり、また評価される歴史的時点にかかわる種々の利害関係から脱することも可能になる。そうした意味で、もう少し客観的かつ公正な評価もできるようになろう。

 とは言っても、数十年数百年経っても、悪人は相変わらず悪人であり続けることもある。善人として歴史から消えるのと、悪人として歴史に残るのと、選べるとすれば、どっちを選ぶか、トランプ氏に聞いてみたい。答えは恐らく後者だろう。

 米中の戦いはどうなるか分からないが、もし、「Made in China」(の大部分)が米国市場から消えるのなら、トランプ氏は間違いなく「名君」として歴史に名を残すことになろう。

【私の論評】米国は中国が図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家になるまで制裁をやめない(゚д゚)!

冒頭の記事にある、サプライチェーンとは、日本語で「供給連鎖」と訳され、原材料・部品等の調達から、生産、流通を経て消費者に至るまでの一連のビジネスプロセスのことです。

サプライ・チェーン・マネジメント(英: supply chain management、SCM)、供給連鎖管理とは、物流システムをある1つの企業の内部に限定することなく、複数の企業間で統合的な物流システムを構築し、経営の成果を高めるためのマネジメント手法です。

なお、この場合の「複数の企業間」とは旧来の親会社・子会社のような企業グループ内での関係に留まらず、対等な企業間で構築される物流システムもサプライ・チェーン・マネジメントと呼ばれます。しかし、実際には企業間の取引は対等であると限らず、現実と理論との乖離があり、その隙間(gap)分析が重要になります。


米議会の米中経済安全保障調査委員会(USCC)は年次報告書を公表し、米国は中国からのリスク増大に直面しているとして、テクノロジー企業のサプライチェーンに対する脅威や中国のインド太平洋地域における軍備拡大、対北朝鮮制裁を弱める中国の取り組みなどを列挙した。

USCCは昨年11月14日公表の報告書で、重要な技術開発への中国政府の支援や「米国と中国のサプライチェーンの密接な統合、米国に対する経済的軍事的な競争相手としての中国の役割が、米国にとって経済や安全保障、サプライチェーン、データプライバシーの面で非常に大きなリスクをもたらす」と分析しました。

2000年に議会が設置したUSCCは、中国の経済的・軍事的台頭に関して通常、批判的な評価を行い、貿易制裁などの対抗措置を勧告しています。

中国が米国の追加関税引き上げに対して、600億ドル相当の米国製品の関税を5~10%から最大25%に引き上げる報復措置を取ることを発表しました。これは、米国が2000億ドル分の中国製品に対する追加関税を10%から25%に引き上げたことを受けての報復関税で、6月1日に発動するといいます。



米国が強硬姿勢に出たことで、中国も対抗せざるを得ないという事情はよくわかります。しかし、600億ドル分の内訳を見ると、中国の厳しい現状が浮き彫りになっています。

報復措置の対象となるのは5140品目。液化天然ガスや大豆、落花生油、石油化学製品、冷凍野菜、化粧品など2493品目に対する追加関税は25%に、そのほかの1078品目は20%となる一方で、原油や大型航空機などは追加関税の対象外だといいます。

関税が上がる製品のほぼすべてが生活必需品であり、代替手段が取りづらいものです。そのため、関税引き上げは中国の消費者物価を直撃することになる可能性が高く、メンツを重視した中国は自分で自分の首を絞めることになりかねないです。また、この動きを見て、企業の投資計画などが変更される可能性も高く、冒頭の記事にもあるように、サプライチェーンの切り替えが進むことになります。

また、米国による対中輸出の規制も強化され始めている。米商務省は、中国企業6社、パキスタン企業1社、アラブ首長国連邦(UAE)が本拠の企業5社による、米国からのハイテク製品などの輸出を禁止したことを5月13日に発表した。同省によると、中国企業のうち4社は、米国の輸出規制に違反するかたちでイランの大量破壊兵器と軍事プログラムに転用可能な米国のコモディティを調達しようとした疑いがあり、ほか2社は制限されている技術の輸出に関与し、中国人民解放軍の関係団体に供与した疑いがあるといいます。

さらに、近いうちに米国輸出管理改革法(ECRA)も発動すると見られています。これは昨夏に米国防権限法に盛り込まれて成立した新法であり、米国の安全保障にとって必要な新興技術や基盤技術を輸出規制の対象とすることなどを定めたものです。

これまでも兵器転用可能な技術に関しては規制が設けられていたのですが、それに「バイオテクノロジー」「人工知能および機械学習技術」「測位技術」など14分野が新たに加えられました。これは、習近平国家主席が掲げる「中国製造2025」に指定されている分野とほぼ同じであり、中国に対する強烈な牽制です。

また、この分野や品目は今後も対象が拡大すると思われ、米国は先端技術に関しても、国家の安全保障にかかわるものとして「中国に渡さない」という意思を明確にしています。

かつて、主に旧ソ連をターゲットにした対共産圏輸出統制委員会(COCOM)という規制がありましたが、ECRAは中国を狙い撃ちにした現代版COCOMといえます。これは日本にとっても他人事ではなく、そのため今後は中国向け全般の投資と輸出計画の変更を余儀なくされるケースが増えるでしょう。


加えて、米通商代表部(USTR)は対中関税の「第4弾」として、3805品目3000億ドル分の中国製品に対し、最大25%の上乗せを検討することを発表しました。従来は対象外だったスマートフォンなども含まれ、中国からの輸入品のほぼすべてに制裁関税が発動されることになります。

品目や税率は6月の公聴会を経て調整される可能性がありますが、いずれにせよ、ここ数日の進展で米中貿易戦争の落としどころはさらに難しくなったといえます。

ちなみに、「中国は最後の手段として保有する米国債を売ればいい」などという主張も見かけるが、それはあり得ません。まず、中国の外貨準備には日本とは異なり、国有銀行保有分も含まれています。

中国の国有銀行の対外債務は1.6兆ドル(3カ月以内の短期1.1兆ドル)で、米国債は1.1兆ドルとなっています。つまり、ドルだけで見れば債務超過の状態であり、米国債を売れば国有銀行が破綻することになります。

また、米国はその気になれば米国債の売買そのものを無効化することもできます。米国は国際緊急経済権限法(IEEPA)や米国自由法により、米国の安全保障に重要な影響を与えると判断される経済活動を制限することができ、その対象となる資産を凍結することなどもできるためです。

さらに、現在の米国債は債券の現物がなく、米財務省に登録されている電子データにすぎないため、中国が不穏な動きを見せれば、米国側はボタンひとつで無効化することも可能です。

これらの事情に鑑みても、やはり中国のほうが分が悪いのははっきりしていますが、対立の妥協点はなかなか見つけることはできないでしょう。

以前から、このブログにも掲載しているように、米国をはじめとする先進国は中国が先進国並みに、民主化、政治と経済の分離、法治国家をして、まともな取引ができる状態にしたいと考え、過去には中国が経済発展をすれば、そうなるだろうと考えてきましたが、それはことごとく裏切られました。

中国が体制を変えない限り、いくら米国が厳しい措置をとったにしても、何も変わりません。しかし、中国にとって体制を変えるということは、中国共産党が統治の正当性を失うということを意味します。そうなれば、共産党一党独裁体制は崩れます。であれば、中国共産党は体制は変えないでしょう。

であれば、米国はこの対立を、中国が経済的に弱体化し、他国に影響力を及ぼせなくなるまで続けるしかありません。私としては、どの程度まで弱体化させるかといえば、今日のロシアと同程度か、それ以下ではないかとみています。

現在のロシアのGDPは、東京都よりも若干小さな規模です。無論ロシアは、旧ソ連の核や軍事技術の継承者であり、軍事的には侮れない存在ですが、それにしても経済に関しては、取るに足らない存在に成り果てました。

これを考えると、いくらロシアが頑張って他国に覇権を及ぼそうにも、経済的な裏付けがないため、せいぜいクリミア・セバストポリの併合くらのことしかできません。ロシアが超大国に返り咲くことはもはや不可能です。

米国は、中国の経済をロシア並みもしくは、それ以下になるまで、対立を続けると思います。もしそうなれば、ロシアの人口は1億4千万人で、中国の人口は13億人ですから、一人あたりのGDPはロシアの1/10くらい、日本の1/100くらいになることになります。

こうなると、中国は図体が大きいだけで、他国には何の影響も及ぼせないアジアの凡庸な独裁国家となるわけです。そうなると、中国は自国を守るだけで精一杯になります。ロシア、中国国境間紛争がまた再燃することでしょう。その時には、北方領土の変換交渉ははじめて、日本に有利になります。中国共産党が統治し続ける限り、中国に残された道はこれしかありません。

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2019年5月14日火曜日

『女系・女性天皇』6割超賛成の危険性… 八木秀次教授、皇統は「男系の血筋を継承すべき」 産経・FNN世論調査―【私の論評】血筋は大河の流れのよう、これを活用すれば皇統は絶えない(゚д゚)!


八木秀次教授

産経新聞社とFNNが11、12両日に実施した合同世論調査で、極めて深刻な結果が出た。「女系天皇」に賛成が64・2%で、「女性天皇」に賛成は78・3%だったのだ。女系天皇の誕生は「皇統の終わり」を意味するものだが、その危険性が明確に理解されていないようなのだ。皇室制度に詳しい麗澤大学の八木秀次教授に聞いた。

 「万世一系とされる皇統は一貫して男系継承で、天皇の正統性の根拠といえる。126代の天皇はこの原理を外れたことはない。皇位継承を、感情論や女性活躍といった次元で論じてはならない」

 八木氏はこう語った。

 まず、「女性天皇」と「女系天皇」はまったく違う。女性天皇は過去に8人10代存在したが、すべて男性の天皇や皇太子の皇女だった女性が即位されたもので、「男系女子」の天皇である。

 一方、女系天皇は、女性天皇と民間出身の夫の間に生まれたお子さま(男女問わず)が即位する場合であり、その時点で男系の皇統は終わる。男系を簡単にいうと、父方だけをさかのぼれば皇室と血のつながりがあることである。

 八木氏は、皇位継承の基本を次のように示す。

 (1)皇統は一貫して男系継承(2)過去の女性天皇は「男系の女子」(3)女性天皇は、次期天皇(男系の男子)が幼少などの理由で中継ぎ役(4)女性天皇のお子さま(女系)が天皇になったケースはない(5)過去の皇統断絶の危機には、別の男系の血筋から天皇となっている(6)皇位は直系継承ではなく、あくまで男系継承である。

 こうした基本を踏まえて、八木氏は総括する。

 「GHQ(連合国軍総司令部)占領下だった1947年、皇籍離脱を余儀なくされた旧11宮家の系統の男子に皇籍に戻ってもらうべきだ。初代天皇以来の男系の血筋を引く家系だ。その男系の男子を、男性の継承者が存在せずに廃絶する可能性がある宮家に『養子』として迎え、宮家を存続できるように皇室典範を改正するのも一案だ。いずれにせよ、万策尽きるまで、男系継承の道を探るべきだ」

【私の論評】血筋は大河の流れのよう、これを活用すれば皇統は絶えない(゚д゚)!

多くの人々は、女系天皇、女性天皇、男系女性天皇などの区別がついていないのではないかと思います。ましてや、126代の天皇はこの男系継承の原理を一度も外れたことはないということも知らないのではないでしょうか。

実際、産経新聞社とFNNが11、12両日に実施した合同世論調査においても、女性天皇と女系天皇の違いに関しては「理解していない」との回答が過半数で、問題の所在はまだ国民に十分周知されていません。このときに行われた、自民党支持層の皇室に関する回答があります。その結果を以下にグラフで掲載します。


このグラフからみても、女性天皇と女系天皇の違いを理解している人は少ないです。私自身としては、「ある程度理解している」という35.3%にしても、本当は良くは理解していないのではないかと思います。

男系天皇に関しては、このブログでも以前解説したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【新元号】安定的な皇位継承の確保を検討 男系継承を慎重に模索―【私の論評】なぜ皇位は男系によって継承されなければならないのか?


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に確信部分をあげておきます。
皇室が民間の男性を皇族にしたことは、かつて只の一度の例もありません。男系継承とは、女性を締め出す制度ではなく、むしろ男性を締め出す制度なのです。民間の女性は皇族との結婚で皇族となる可能性がありますが、民間の男性が皇族になる可能性はありません。 
皇室の歴史は、『古事記』『日本書紀』の神話にさかのぼります。初代天皇神武天皇の伝説にさかのぼれば、皇室は公称二千六百年の歴史を誇ります。なぜそれほど皇室は続いてきたのか。神話や伝説の時代から変わらぬ伝統を保持してきたからです。 
だから皇室では、先例が吉、新儀は不吉なのです。なぜ? と言われても、そういう世界だからとしか言いようがありません。 
そのもっとも重要な伝統は、歴代天皇はすべて父親をたどれば天皇に行きつきます。父親が天皇でなければ、その父親、さらに父親とたどりつけば必ず歴代天皇の誰かにたどりつく。これを男系と言いますが、歴代天皇はすべて男系です。天皇になる資格がある人を皇族と言いますが、二千六百年間、皇族全員が男系です。
このことを本当に理解すれば、女系天皇、女性宮家などに賛成する人はあまり存在しなくなると考えます。

もともと女性・女系天皇容認論は平成17年、当時の小泉純一郎首相が設置した皇室典範有識者会議が打ち出しました。若年の男性皇族がいなくなっていたためです。

小泉首相もそのため、典範改正を急ぐ姿勢を示していましたが、秋篠宮家に男系男子である悠仁さまが誕生されたことで、立ち消えとなりました。

小泉政権時を振り返ると、当初は国会議員もマスコミも女性・女系天皇の相違や男系継承の歴史などをよく知らずに賛意を示したこともありました。事実関係を知るにつれ、徐々に慎重論や反対論が強まっていきました。

今回の世論調査結果をみると、女性天皇と女系天皇の区別がよくついていない実態が浮き上がりました。こうした理解の浅さや、過去に女性・女系天皇容認論が後退した経緯が忘れられたことも、調査結果に表れているのでしょう。

また、設問によってこれらとは矛盾するような結果も表れています。男系男子の皇族を増やすため、戦後に皇籍離脱した旧宮家の復帰を認めてもよいかとの質問に対しては、「認めてもよい」(42・3%)が「認めない方がよい」(39・6%)を上回りました。

旧宮家をはじめとする男系男子の血統を持つ人々の皇籍復帰や養子縁組案については従来、「長年民間で暮らしていることから国民の理解は得られない」との指摘が有識者や政府、マスコミらから出ていました。ところが、国民意識は必ずしもそうだとはいえません。

もっとも、男系男子の皇籍復帰への賛否は支持政党のカラーが出ており、自民の賛成50・7%(反対35・2%)に対し、立憲は賛成31・3%(反対57・0%)だったのは特徴的でした。


いずれにせよ、男系継承が女性差別をするものでないことなどを多くの人々が理解すれば、男系天皇への理解、宮家復活の道もひらかれのではないかと期待しています。

一般の家庭でも、家系図をたどると、まるで大河の流れのように血筋が脈々と受け継がれていることがわかります。

以前、ある独身女性が家系図をたどり、自分の血筋が脈々と受け継がれていることを知り、自分が独身でいることをあまり気にしなくなったというネット上の記事をみたことがあります。

このこと自体の是非は別にして、確かに血筋は大河の流れのようなものです。その大河においては、中途で誰が早死しようが、独身であったとしても、大河の流れは誰にもとめることはできないのです。この流れをとめる何かがあるとすれば、地球の崩壊以外にありません。

まさに、男系継承も、この大河の流れを活用すべきなのです。そうすれば、男系継承であっても皇統が絶えるということもなくなります。

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2019年5月13日月曜日

米中貿易戦争の激化が「消費増税延期判断」に与える本当の影響―【私の論評】今年の10月にわざわざ消費税増税をする必要はない(゚д゚)!

米中貿易戦争の激化が「消費増税延期判断」に与える本当の影響

リーマン級は、いたるところに…?







米中貿易戦争、日本経済への影響は?

先週のコラムで、これから日本の景気に関する悪い統計数値が出てくると予測したが、ここ一週間で発表された統計をみても、おおよその傾向は変わりないようだ。

5月10日に発表された3月の毎月勤労統計では、「実質賃金」が2015年6月以来の下げ幅となったことが報じられた。これひとつでも景気の悪さを印象付けるが、この数値は、景気動向指数の一致指数を算出する個別系列には指定されていない。

指定されているのは「事業所規模30人以上の季節調整値の所定外労働時間指数(調査産業計)」だ。その数字をみると、3月は95.3と前月比▲2.6の大幅減である。ということは先週に予測した景気動向指数より悪い数字が出るかもしれない。となると、20日に公表されるGDP一次速報も、予想よりさらに悪い数字になることが予想される。

また、海外経済環境もさらに悪くなりつつある。米中貿易戦争の先が見えなくなっているからだ。アメリカは、対中追加関税を25%に引き上げた。それまで米中交渉には楽観的なムードが出ていたが、土壇場で中国が外国企業への技術移転強要を是正する法整備の約束を反故にしたようで、一気に先行きは暗くなった。

筆者の本コラムを含め、いろいろな著作を読んでいただければ、米中貿易戦争は貿易赤字減らしという単なる経済問題ではなく、背景には米国が軍事覇権を保つために技術優位を維持しようとする戦略があることがわかるだろう。今回の米国の姿勢は、その米国技術を盗み取るような中国の行為を許さないという強い意志の表れであり、究極的には中国の国家体制そのものを問題視しているということだ。

米国が怒りを示している中国の行為とは、中国の国家体制に由来するもの。すなわち、①知的財産の収奪、②強制的技術移転、③貿易歪曲的な産業補助金、④国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行である。

なぜ、アメリカがこの4つを問題視していることが明確に分かるかというと、中国とは名指しされていないが、なんと昨年9月の日米共同声明(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000402972.pdf)に、これらを許さないとすることが盛り込まれているからだ。これらの文言は、米交渉担当者が対中戦略としてこれまでも語ってきたものだが、それが公式の外交文書にまで登場していたのだ。

このアメリカの戦略を理解していれば、米中貿易戦争の抜本的な解決にはかなりの時間を要するということは、前から分かりきっていた。その意味で、「米中貿易戦争はどこかで歯止めがかかる」という市場関係者の楽観的な見方は、単なる希望的観測だったと言わざるを得ない。

政治的にみても、来年11月にはアメリカ大統領選が控えている。中国に対して厳しい姿勢をとることは、おおむねアメリカ国民に支持され、トランプ大統領に有利に働いているようだ。トランプ大統領の支持率は、現時点で45%程度と、歴代大統領の再選時に比べて遜色のない高い数字を維持していることから、それがわかる。

トランプ大統領の支持率(ギャロップ)

では、今後はどうなるか。米中の関税報復合戦は、貿易量を考えても中国に不利だ。特に、中国からアメリカへの輸出品はほとんどが代替可能なものであるので、これにアメリカが関税を課しても、米国国内物価への転嫁が難しくなり、結果として中国の輸出企業が苦しくなるのだ。

こうして中国経済が悪くなると、中国国内の消費や輸入が減る。となれば中国に依存している国ほど経済が落ち込むだろう。無論、日本への影響も避けられないが、それはどの程度のものか。中国向けの輸出業は大変になるだろうが、アメリカで中国製品にかわる代替需要も出てくるので、一部は負の影響が帳消しされるかもしれない。問題は、そのプラスマイナスが国全体でどうなるかだ。

リーマンショック級だらけ

こうしたトランプ大統領およびアメリカ政府の対中戦略について、安倍総理はかなり以前からつかんでいたに違いない。その結果、世界経済への悪影響もある程度は読んでいたはずだ。

そのため、日本は今のところ、世界の中では比較的米中貿易戦争の影響の少ない国であると言えるだろう。

ただし、いずれにしても経済二大国の戦争が、世界経済にとってよくない結果をもたらすことは明白である。その上、欧州のブレグジット問題はいまだに先行きが不透明である。

このようなことを鑑みると、世界経済を見渡せば「リーマンショック級の出来事」を探すのは容易な状況なのである。

さて、安倍総理は、6月28・29日に大阪で開かれるG20サミットの議長である。世界経済が問題山積の中、日本だけがぬけぬけと「10月から消費増税します」と言えるかどうか。国内経済と海外経済事情から考えたらわかることだ、と筆者は思う。

それでも、財務省は「財政再建が遠のくから、消費増税延期なんて許されるはずがない」というだろう。「社会保障の問題も、消費増税が先送りされると大変なことになる」ともいうだろう。

本コラムで何回も繰り返している「消費税を社会保障目的税としている国はない」という事実だけで、いかに「社会保障整備のための消費増税」という主張がセオリーから外れたものであるかが分かるのだが、消費増税によって、本来なら労使折半である社会保険料負担を企業が免れることになるので、経済界は消費増税を推進している。

財務省は経済界をさらなる味方にするたために、社会保険料負担だけではなく、消費増税のタイミングでの法人税減税という「おまけ」も付ける気でいる。また、財務省のポチ学者も「財政再建のためには消費増税が必要」という間違ったロジックを相変わらず唱えている。マスコミも、新聞の軽減税率を受けたいから、消費増税推しである。

バランスシートをみれば一目瞭然だが…

これら経済界、学会、マスコミはすべて「日本の財政危機」をすり込まれている。確かに「財政危機」は、国家の財布を握っている財務官僚が言うので、学者を含めた部外者がこれに疑問を抱くのは難しい。

そこで、筆者は日本の財政状況を分かってもらうために、きちんとした財務諸表(とりわけバランスシート)を作り、それで説明するしか方法はないと思い、25年前ほどにバランスシートを作成した。これは財務省(大蔵省)の部内者以外に作りようがないので、筆者が担当していた財投改革の一環として作成した。

これらの経緯は、2018年10月15日付け本コラム<IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する>にも書いた。筆者がいつも言うのは、「国の財政状況をバランスシートでみれば(つまり、負債だけでなく資産も見れば)日本の財政に問題がないことは分かる」というものだ。



ところが、財務省は相変わらずバランスシートの右側の負債(の一部)のみを発表して、日本の財政危機を訴えている。たとえば去る10日にも、こんな報道発表をしている(https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/3103.html)。

上に掲げたIMFの記事のなかにある資料は、基本的には、筆者が大蔵省時代に作った、日銀を含めた連結バランスシートの数字だ。しかし、現在公表されている連結バランスシート(https://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2017/20190328houdouhappyou.html)には、日本銀行が含まれていない(筆者の主張は、当然日銀を連結バランスシートに加えたうえでのものだ)。

なぜこんなことになったのか、その経緯はちょっとわからない。このバランスシートを公表しはじめた当時、筆者は財務省を離れ内閣府、内閣官房に在籍していた。

小泉政権の時、財務諸表を公表するまでの段取りはつけた記憶があるが、その中身まではチェックできなかった。結果として、後で連結バランスシートに日銀が含まれていないことに気がついたが、後の祭りだ。

おかしな言い分

財務省が作成したガイドブック(https://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2017/guidebook.pdf)には、「日本銀行については、省庁の監督権限が限定されているうえ、政府出資はあるもののその額は僅少であり、補助金等も一切支出していないことから、連結対象としていません。」と、日銀をバランスシートから除外した理由が書かれている。

今もその当時と同じ考えであるようだが、いま読んでもこの理由は噴飯ものだ。①監督権限が限定的、②出資額が僅少、③補助金なしというが、どれも的外れだ。

まず①について。財務省の日銀への監督権限が限定的、とはいえない。財務省は日本銀行法を所管(金融庁共管)している。日本銀行の独立性に配慮した必要最小限のものというものの、総裁などの国会同意人事、内閣の任命権(24条)、他業の認可(43条)、経費予算の認可(51条)、決算の承認(52条)、剰余金の処分(53条)、財務大臣又は内閣総理大臣の求めによる監査(57条)など、かなり広範にわたっている。これで「監督権限が限定的」と言うのは無理がある。

次に②出資額は僅少というが、出資割合は50%超だ。もちろん出資割合が50%超だからといって、株式会社における議決権のようなものはないが、政府による広範な監督権限であるので、日銀が政府方針とまったく別の業務を営めるはずない。

最後に③補助金なしというが、事実上、日銀には各種の優遇措置がある。日銀の利益の源泉は通貨発行益である。そして負債は基本的に無利子無償還の日銀券である。毎年負債見合いの資産の収益が利益になり、その将来の現在価値は発行した日銀券総額になる。これが通貨発行益だ。

その利益処分は、財務省の裁量の範囲だ。例えば、日銀職員給与を「(公務員並みではなく)銀行員並みにする」とすれば、収益(通貨発行益)の一部は日銀職員のものとなるが、これは裁量的な「補助金」ということもできる。つまり、補助金が一切ないというなら、日銀職員の給与その他の待遇も公務員並にしなければいけない。

そうした均等扱いがない以上、日銀は「補助金がない」とはいいがたいだろう。やっぱり財務省の言い分には、無理があるのだ。

さて、日銀を含めた連結ベース(これを統合政府という)は、いろいろなことを見やすくする。財政危機だという財務省の言い分も、標準的なファイナンス理論を知っている人が統合政府のバランスシートをみれば、そのウソが一発でわかる(これは、2018年10月15日付け本コラム<IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する>を読んでほしい)。

そして、「日銀が量的緩和して大量に国債を資産として購入すると、金利が上昇したときに国債価格が低下し、評価損が出て、日銀が債務超過に陥る」と煽る話も、統合政府から見れば、デタラメとわかるのだ。バーナンキ元FRB議長が言っていたのは、日銀の資産が評価損ということは、発行者の国からみれば評価益であり、統合政府でみれば両者は打ち消し合って何も問題ではない、ということだ。

日本のみならず世界経済が悪い方向に向かおうとするなか、消費増税について、どんな判断が下されるのか。そのときには、今回述べたようなことも議論の材料とすべきだろう。
【私の論評】今年の10月にわざわざ消費税増税をする必要はない(゚д゚)!

内閣府が3月の景気動向指数で基調判断を6年2カ月ぶりに「悪化」に引き下げたことで、国内の景気後退の可能性が一段と高まりました。米中貿易摩擦などを背景とした想定以上の中国経済の減速で、国内の輸出や生産が打撃を受けました。政府は今年1月で今回の景気拡大期が戦後最長になったとみられるとしていましたが「幻」だった可能性もあります。



内閣府によると、一致指数の基調判断の公表を始めた平成20年4月以降、基調判断が「悪化」とされた期間は、平成20年6月~21年4月の11カ月間と、24年10月~25年1月の4カ月間の2回。ともに、事後で認定された景気後退期(20年3月~21年3月の13カ月間、24年4月~24年11月の8カ月間)と一部重なります。

景気拡大期のピークである「山」や、景気後退期の底となる「谷」を判断する上では、さまざまな経済データの蓄積を待つ必要があります。山や谷と推測される時点から1年~1年半程度後に、有識者でつくる内閣府の景気動向指数研究会の議論を踏まえて決めます。

 政府は今年1月の月例経済報告で、24年12月に始まった景気拡大の期間が「いざなみ景気」(14年2月~20年2月、6年1カ月)を超え、戦後最長になったとみられるとしていました。ただ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「恐らく昨年10月が『山』で、11月から後退局面に入った可能性がある」と指摘していました。こうした見方は民間の有識者の間に多く、実際にそうであれば、1月の「戦後最長の景気拡大」は達成できていなかったことになります。

ただ、小林氏は「短期間で回復すれば、景気後退ではなく、(拡大期の)一時的な落ち込みと評価されることもある」とも話しています。

政府の正式な景気判断となる5月の月例経済報告は下旬に発表されるほか、安倍晋三首相に近い萩生田光一自民党幹事長代行が先月言及した6月の日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)も7月1日に公表されます。

政府は「月例経済報告」で、国内の景気回復は続いているという判断を維持しています。

しかし、貿易摩擦をめぐる米中の攻防激化などで、先行きに不透明さが増す中、戦後最長の景気回復を続けているとされる日本経済は、正念場を迎えることになります。

今の景気回復は、平成24年12月から始まりました。

デフレ脱却を目指した「アベノミクス」と呼ばれる経済政策のスタートとほぼ時を同じくしています。

政府は、先月の月例経済報告でも「景気は緩やかに回復している」という判断を維持し、今の景気回復の期間は戦後最長となった可能性が高いという見方を変えていません。

しかし、ことしに入って日本にとって最大の貿易相手国、中国の経済の減速で、中国向けの輸出が落ち込むようになりました。

ことし3月の日本から中国への輸出は、金属加工機械や液晶部品などを中心に去年の同じ月より9.4%減りました。

さらに懸念されているのが、激化する一方の米国と中国との貿易摩擦です。

米政府が2000億ドル相当の中国製品に対する関税を25%に引き上げることで、中国の成長率が0.3―0.5%ポイント引き下げられます。現在は関税を課していない3250億ドル相当分にも拡大した場合、加えて0.5%ポイント低下することになり、合計で1%ポイント低下します。



中国の成長率は明確に6%を割り込み5%に近付いてしまうため、相当大きなインパクトになるでしょう。欧州や台湾、日本は中国経済に対する感応度が高いため、大きな影響が出てきます。

今後、協議を続けて何らかの合意に達したとしても、米国が中国に対して輸出を増やすことになります。これによって、欧州や日本が割を食う可能性が高いです。こうした問題も時間を経て出てくることになるでしょう。

中国の成長率が低下してしまう場合、中国政府は何らかの政策を発動する可能性があります。インフラ関連投資などの財政拡大かもしれないですが、余地は限られています。預金準備率引き下げなど金融緩和を行う可能性や、人民元下落を容認する可能性が出てきます。

国内のデフレ圧力を人民元の下落で相殺することを容認することで、秩序ない形で人民元が下落すれば、日本でもドル安/円高が加速度的に進む可能性があります。

今後短期間で急ピッチに円高が進行する可能性もあります。日銀は「金融政策でとる手段はありません」などと、対岸の火事に備えることを怠ることも十分ありえます。

どのような手段をとるかは、どの程度緊急性があるかによりますが、日銀としては大々的な金融緩和にはもって行きたくないでしょう。フォワードガイダンスの強化など緩和色をかもし出すことで何とか対応していくことになる可能性が高いです。

日本でデフレが顕著になったのは、バブル崩壊直前の時に、確かに土地や株価は上昇していましたが、一般物価が上昇していなかったにもかかわらず、日銀が金融引き締めをしたことでした。その後も、日銀は引き締め状況を崩さす、さらにそれに消費税増税が追い打ちをかけ、日本はデフレスパイラルのどん底に沈むことになりました。

現状では、日本経済は回復しておらず、いつデフレに舞い戻ってもおかしくない状況です。この状況で増税してしまえば、米中の貿易戦争ともあいまって、上でも述べたように、とんでもないことになってしまうかもしれません。

消費増税をベースに教育無償化などの政策が組み立てられていますが、これをもって、増税を見送ることはできないと主張する人もいますが、そんなことはありません。最悪の場合も想定して、今回は消費税増税を見送るか、できれば凍結もしくは減税をすべきです。

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2019年5月12日日曜日

誤算?無策?習政権、トランプ氏“逆鱗”読み切れず… 中国「報復」示唆も米側は切り札投入―【私の論評】「大幅な譲歩」か「強行路線」か?いずれに転んでも、習近平は過酷な状況に直面せざるを得ない(゚д゚)!


ワシントンで言葉を交わすライトハイザー米通商代表(右)と、
              中国の劉鶴副首相(左)=10日

ドナルド・トランプ米政権は、中国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)分に課している追加関税率を10%から25%に引き上げた。習近平政権も報復を示唆するが、米国側は「全輸入品への追加関税」という切り札を出してきた。貿易戦争が長期化すれば深い傷を負うのは中国側であることは明確で、習政権の「誤算と無策」がハッキリしてきた。

 米通商代表部(USTR)は10日、中国からの輸入品約3000億ドル(約33兆円)分に25%の追加関税を課す手続きに入ると発表した。実施すれば中国からの全輸入品が25%の対象となる。

 トランプ大統領は10日、ツイッターで、追加関税について「交渉次第で撤回するかもしれないし、しないかもしれない」と中国に譲歩を迫った。一方で「交渉は良い雰囲気で続けており、急ぐ必要はない」と記すなど、脅したりすかしたりの老獪(ろうかい)さをみせた。

 10日の閣僚級協議も合意に至らず、次回協議について、スティーブン・ムニューシン財務長官は米CNBCテレビに「予定されたものはない」と語った。一方、中国の劉鶴副首相は、米国との貿易協議を早期に北京で開催することで合意したと強調するなど、決裂ではないことを強調するのに懸命の様子だった。

 中国商務省は10日、「必要な対抗措置を取らざるを得ない」との報道官談話を発表したが、関税競争は中国に分が悪い。2018年の対米輸出額が4784億ドル(約52兆5900億円)だが、輸入額は1550億ドル(約17兆400億円)にとどまり、報復関税にも限界がある。

 関税が引き上げられた対米輸出品についても、中国側が価格を引き下げて対応しているのが実情で、トランプ氏は「米国製品のコストへの影響はごくわずかで、ほとんど中国が負担している」と勝ち誇っている。

中国全人代の閉幕式に臨む習近平国家主席=3月5日、北京の人民大会堂

 中国は論点も見誤った。

 米国側は、外国企業からの強制的な技術移転や産業補助金などを最重要課題としているが、中国側は貿易赤字の問題にすぎないと軽視していた節もある。

 習政権はメンツにこだわり、米国と対等であるかのように交渉に臨んだ。閣僚級協議でも、習国家主席がトランプ氏に書簡を送ったが、効果はなかった。習氏とトランプ氏との電話協議など直接交渉で打開を図るが、展望は見いだせない。

【私の論評】「大幅な譲歩」か「強行路線」か?いずれに転んでも、習近平は過酷な状況に直面せざるを得ない(゚д゚)!

ロイター通信8日付は、米政府関係者らの話として、中国当局は今までの交渉で知的財産権保護や技術の強制移転、為替などの事項に関して、国内法の改正を約束したにもかかわらず、今月3日に米政府に送った合意文書案で約束を撤回したそうです。

中国当局が突如態度を変えた理由について憶測が飛び交っています。

今年に入ってから、中国経済がやや回復の兆しが表れていました。中国税関総省が発表した3月の貿易統計では、同月ドル建て輸出は、市場予想を大幅に上回り、前年同月比14.2%増加しました。5カ月ぶりの高水準といいます。中国当局によるテコ入れ策で、3月の新規人民元建て融資や社会融資総量が予想外に急増し、投資の拡大が示されました。中国当局は、景気が上向きになったことで、強気に出た可能性があります。

今年4月までは、株価も回復していたが・・・・・・

しかし、中国経済の好調が、約束を反故した主因ではないようです。中国当局の最高指導部が「政治的な賭けに出た」という見方が、最も説明がつきます。

国際社会は、中国共産党政権が真に構造改革を行うと信じていません。構造改革を行い、市場を開放してインターネット封鎖を解除し、情報の自由を認めるためには、単に掛け声をかけて投資をすれば成就するという簡単なものではありません。

それを実行したとしても、現実には何も変わらないです。それを実行して根付かせるためには、一定以上の民主化、政治と経済の分離、法治国家化をする必要があります。

それを本当に実行すれば、中国共産党政権は統治の正当性を失い、崩壊することになります。

さらに、ここまで米の要求を受け入れると、党内から「弱腰外交」と習氏への批判が沸き立つことでしょう。

中国共産党の本質を見極め、強硬姿勢を示すトランプ政権は、貿易戦を通じて、中国当局に2つの究極の選択肢を突きつけました。中国共産党一党独裁を捨てても中国経済を守るのか、それとも中国共産党政権を維持するのかです。

約束の撤回は、中国当局からの返事だと見てもよいです。「一強体制」を築いたように見える習近平国家主席は、政権維持に拘れば、難しい政権運営を強いられることになります。

江沢民(左)と曽慶紅(右)

4月下旬、江沢民派の主要人物である曽慶紅氏が久しぶりに公の場に姿を見せました。習近平氏は近年、反腐敗キャンペーンで江派の高官を次々と失脚させ、江沢民派の勢力は衰退しました。その一方で、江沢民氏、曽慶紅氏2人の摘発を放置しました。専門家は、習近平氏は中国共産党体制の崩壊を避けるために、江沢民氏らに譲歩したとみてきました。

インターネット上に投稿された動画によると、4月20日、曽慶紅は江西省トップの劉奇氏とともに、故郷の同省吉安市を視察しました。劉奇氏は、習近平氏が浙江省トップを務めた際の部下で、習氏の側近です。曽と劉の両氏の組み合わせは、習派と江派が「仲良くやっている」というメッセージを送り、党内の団結をアピールしているように見えます。しかし、習近平氏が政権維持に拘り、江沢民派に譲歩しても、団結は長く続きません。

トランプ大統領が5日のツイッターで対中追加関税の引き上げを発表したのを受け、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは6日、情報筋の話を引用し、貿易交渉で中国側が約束した内容の一部に対して習近平氏が認めず、交渉が失敗すれば「自分がすべての責任を負う」と述べたと報じました。

サウスチャイナ・モーニング・ポストは、2015年にアリババグループに買収され、親江沢民派メディアとして認識されています。

劉鶴副首相は、9日と10日の米中通商協議に予定通り参加しました。渡米前、劉氏は「圧力下での渡米」とメディアに語りました。習近平氏の政敵は、今回の交渉を「米国の圧力に屈した侮辱的な交渉」と捉え、習氏への批判を強めるでしょう。この交渉でどんな結果が生じても、敵対勢力に攻撃の口実を与えることになります。

劉副首相の訪米は、米国の圧力に屈したというよりも、親江沢民派メディアの報道への対応と言えます。

実にトランプ米大統領の5日のツイッター投稿を受けて、中国人民銀行(中央銀行)は6日株式市場の取引開始前に、中小銀行を対象に預金準備率の引き下げを発表しました。これによって、市場に2800億元(約4兆5174億円)の資金を供給するといいます。中国当局が、トランプ大統領の発言で、中国経済や株式市場が受ける影響を予測したことが読み取れます。

しかし、中国当局はサウスチャイナ・モーニング・ポストの報道を予測できませんでした。

今後の見通しとして2通りの展開があります。一つは中国側が大幅に譲歩し、米側と合意するというものです。しかし、こうなった場合、江沢民派が必ず、「主権を失い国を辱めた」として、習近平氏に反撃するでしょう。党内闘争が一段と激しくなり、政権の不安定さが高まることになります。

もう一つは、中国当局が引き続き意図的に貿易交渉を先延ばし、米中両国が物別れに終わることです。これが起きれば、中国経済が壊滅的な打撃を受けることになります。

輸出、投資、個人消費の低迷が深刻化するほか、中国当局が最も不安視する債務危機もぼっ発する可能性が高いです。これに伴う企業の倒産、労働者の失業が急増し、中国当局への社会不満が一気に爆発することになります。

中国当局は、この最も恐れる状況に、どう対処するのでしょうか。習近平氏が政治手腕を発揮し、反対派の攻撃を圧制することができたとしても、経済崩壊を迎えた中国共産党政権は末路をたどるしかありません。

米中貿易戦、中国国内および共産党の現情勢を分析すれば、米中貿易交渉で勝負に出た中国当局は、初めから失敗に向かっていることが分かります。米中通商協議の結果がどうであれ、中国共産党体制の崩壊が加速化します。

10日、2日間の米中閣僚級協議を終え、トランプ大統領は同日、今後も交渉を続ける方針を表明しました。ロイター通信は10日、情報筋の話として、劉副首相は国内法の改正を拒む立場を変えておらず、国務院令や行政命令で対応すると提案したと報じました。米側はこれに拒否したといいます。

前国家経済会議(NEC)副委員長のクリート・ウィレムス(Clete Willems)氏は米メディアに対して、トランプ氏は交渉チームに「満足できる内容でなければ、いつもで立ち去れ」と告げた、と話しました。

「強国路線」を掲げてきた習氏にとって、米側への大幅な譲歩は国内の求心力を失いかねないですが、強硬姿勢を貫いて貿易摩擦がエスカレートすれば、経済成長の減速に拍車がかかるというジレンマに陥っているのです。

どちらに転んでも、習近平は過酷な状況に直面せざるを得ないのです。

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2019年5月11日土曜日

絶望的な日本。自民・二階幹事長を反米媚中にした中国の浸透工作―【私の論評】日本も、米国のように超党派で中国に対抗する体制を整えるべき(゚д゚)!

絶望的な日本。自民・二階幹事長を反米媚中にした中国の浸透工作

二階氏

これまでも「中国の浸透工作に豪が陥落寸前。日本にも伸びる習政権の魔の手」等で、強大な影響力を手に入れるためには手段をいとわない「中国という国のやり口」を紹介した、AJCN Inc.代表で公益財団法人モラロジー研究所研究員の山岡鉄秀さん。その矛先は、当然ながら日本にも向いているようです。山岡さんは今回、無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』で「自民親中派筆頭」とも揶揄される二階幹事長の習近平政権への見事な絡め取られ振りを批判的に伝えるとともに、二階氏にはもはや政治家を続ける資格もない理由を記しています。

二階さん、拉致被害者救出は眼中になさそうですね?

全世界のアメ通読者の皆様、山岡鉄秀です。

アメリカで中国人産業スパイが捕まったようですね。日テレNEWS24(4月24日)では次のように報じられました。「アメリカの司法省は23日、GE(=ゼネラル・エレクトリック)の企業秘密を中国側に渡した産業スパイの罪で、中国系アメリカ人と中国人の男2人を起訴したと発表した。中国政府が支援したと主張している」

GEと言えば、有名なジャック・ウェルチさんの時代に家電製品から完全撤退し、ハイテク分野に特化したアメリカ有数の企業です。

容疑者のうち、中国系アメリカ人はGEの元技術者で、GEから企業秘密のタービン技術を盗み出し、おいの中国人実業家に渡した疑いが持たれているとのこと。

二人は「中国企業を通じて中国政府から経済的支援などを受け、中国の当局者と連携していた」ことが疑われているそうです。

アメリカから留学生や産業スパイ経由でハイテク技術を吸い出し、ついには自国のハイテク産業を世界No1にしようと目論む中国に警戒を強めるアメリカ。両国の対立は決定的なものとなりました。

一方、その23日、自民党の二階幹事長は翌日からの訪中を前に記者会見を開き、次のように語りました。

「日中関係は双方の努力によって、だんだん良い方向に進展しつつある。さらに強力に取り組んでいけるように努力していこうということを、中国側と十分話合いたい」

そして、中国が進める「一帯一路」のフォーラムにも出席することを明らかにし、こう言い放ちました。

「米国の機嫌をうかがいながら日中関係をやっていくのではない。日本は日本として、独自の考えで中国と対応していく。米国から特別な意見があれば承るがそれに従うつもりはない」

二階さん、ここまで言ったら、もはや親中のみならず、反米と見做されても仕方がないですね。

きっと忘れているか、まったく関心がないんでしょうね。日本が北朝鮮による拉致問題を自力では解決できず、トランプ大統領のアメリカにすがっている事実を。

拉致された自国民を自国の軍隊で取り返しに行けない日本は、同盟国で超大国のアメリカに泣きついています。これ、はっきり言って恥ずかしい状態ですが、憲法の制約もあり、仕方ありません。

トランプさん、安倍首相のお願いを聞き入れて、シンガポールでもハノイでも金正恩委員長に日本の拉致問題解決の必要性を強調してくれました。

安倍首相も気を使って、トランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦しました。
これも情けない感じがしますが、はっきりいって、これが日本の置かれた立場であり、実力なわけです。

アメリカを筆頭とする自由主義陣営が共産主義独裁国家に敗れることがあれば、日本という国も消滅し、倭人自治区となるでしょう。

そのアメリカが、中国の覇権主義とスパイ行為に警戒して対立姿勢を強め、世界中で「一帯一路」がその露になった体質ゆえに警戒されているときに、「アメリカの意見に従うつもりはない」と啖呵を切る二階さん。

習近平主席にお願いして拉致問題を解決する秘策をお持ちなんですか?それとも、拉致問題なんて眼中にないのでしょうか?

そして、二階さんが中国へ渡った24日、尖閣諸島の接続水域で中国海警局の船4隻が航行しているのが海上保安庁の巡視船により確認されました。これで13日連続となりました。

二階さん、これを止めろと要求するどころか、6月に大阪で開催されるG20に習近平主席来日の確約をもらって大喜びのようです。「正常な関係に戻った!」と。

私は、中国がオーストラリアやニュージーランドで今なお繰り広げている浸透工作(サイレント・インベージョン)の凄まじさを知っているので、中国が「中華帝国再興の夢」というスローガンの元に進める覇権主義をあきらめない限り「正常な関係」などあり得ないことを確信しています。

二階幹事長のこのような言動を許しながら、安倍首相はまたトランプ大統領に拉致問題で支援してくれるように頼むつもりなのでしょうか?

あからさまな二股外交が破綻するとき、塗炭の苦しみを味わうのは日本国民です。

今回の二階幹事長の言動に違和感と危機感を感じない国民が大多数を占めるのであれば、オーストラリアやニュージーランドの心配をしている場合ではなく、日本に対する工作はすでに完了していると判断すべきでしょう。

これだけははっきり言っておきましょう。

「拉致された自国民を救い出す決意がない人間に政治家を続ける資格はない」と。

山岡鉄秀 Twitter:https://twitter.com/jcn92977110

【私の論評】日本も、米国のように超党派で中国に対抗する体制を整えるべき(゚д゚)!

それにしても、なぜ二階氏はこのようにすり寄るのでしょうか。ヒントになりそうなことが過去にありました。

以下に過去のZAKZAKの記事から一部を引用します。詳細は元記事をご覧になってください。
二階俊博・自民党幹事長が中国人ビジネスマンに脅されていた
 事件が弾けたのは2017年9月26日、折しも衆院解散の2日前で、小池百合子・東京都知事の「希望の党」結党宣言で政界に激震が走り、国民もメディアに視線を釘付けにされていたタイミングだった。 
 その日、警視庁捜査一課の捜査員10数人が中国籍の会社経営者・王俊彦氏の自宅や関係先に捜査に入り、王氏を逮捕した。
 王氏は上海出身で1988年に来日。不動産コンサルティング会社などを経営し、中国政府が関わる日中間の大規模ビジネスを展開、中国国営企業の日本法人や大手投資会社の顧問などを務めている。在日中国人社会では名の通った“大物”だ。「駐日中国大使館とも太いパイプを持つ」(公安関係者)とみられている。 
 事件のカギを握るのは王氏の会社が買収した静岡県小山町のセミナーハウス「東富士リサーチハウス」の倉庫から押収された段ボール約40箱分の資料だった。捜査一課の「押収品目録」にはこんな記載がある。 
〈段ボール箱(「衆議院議員二階俊博」等と記載のある封筒在中のもの) 2箱〉
〈段ボール箱(「新しい波」の契約書類等在中のもの) 1箱〉
〈段ボール箱(「金銭出納帳」等と記載のある書類等在中のもの) 1箱〉
 --など。「新しい波」とは旧伊吹派と合併する前の二階派の正式名称であり、派閥の経理資料などが保管されていたことが読み取れる。この段ボール資料が強要未遂事件の“材料”になった。
 捜査令状(勾留状)に添付された被疑事実の要旨に事件の概略が書かれている。
 〈被疑者は、株式会社〇〇の取締役であるが、自由民主党幹事長二階俊博が同派閥事務所の閉鎖に伴い、同事務所の書類等を△△株式会社が管理していた倉庫であるMother Village東富士リサーチハウス内に保管依頼していたところ、平成26年10月17日、株式会社〇〇が同倉庫の所有権を取得し、前記書類等も同時に入手したことを奇貨として、平成28年11月4日午後1時頃、二階俊博の二男である二階直哉(当時44歳)を被疑者が顧問を務める××に呼び出し、「東富士リサーチパークを買い取った。そこにあった荷物は大変なものだった。これを流せば大変なことになる。」「まだまだ大変なものがある。」などと同派閥「新しい波」名義の通帳の写しや事務連絡メモ等を示して、同人の父である二階俊博の名誉に害を加える旨を告知して脅迫し、(中略)政治家である同人の父親に働きかけさせて義務のないことを行わせようとしたが、同人がこれを拒否したためその目的を遂げなかったものである〉(要旨内では〇〇、△△、××は実名が記されている) 
 王氏が段ボール箱の書類を「奇貨」として二階氏に何らかの“口利き”してもらおうとした。それが強要未遂にあたる--とする内容なのである。 
 要旨の中には、王氏が二階氏サイドに求めた具体的なビジネス案件として、都内ターミナル駅周辺の大規模再開発事業が記されていた。運輸大臣(現国土交通大臣)を務め、国交族の大物として知られる二階氏の影響力を期待した形跡がうかがえる。
私は、これは中国政府も関与した工作であると認識しています。このようなことが、一度ならず過去にも何度か行われていたとしたら、二階氏の行動もある程度理解できなくもありません。

さらには、二階氏のこの事件はたまたま表に出ただけであって、他の政治にも同じような工作が行なわれていても、表に出ていない可能性もあります。野党の政治家の中にも、かなり工作をされている者も多いでしょう。

なぜこのようになるかといえば、やはり日本は他国のスパイなどを取り締まるスパイ防止法などがないため、政治家に対する他国からの籠絡に対して無防備なところがあるからでしょう。ただし、政治家が籠絡されることを防止するということは、籠絡ずみの政治家も厳しく罰するということになります。


ただし、政治家のほうにも問題がないとはいえません。たとえば、イスラエルとパレスチナの度重なる衝突について、日本の国会で議論されたという話を聞くことはまずないです。

「シリアのアサド政権はどうして化学兵器を使うのか。被爆国の日本は化学兵器の使用を容認していいのか」と発言する日本の政治家もほぼ見掛けないです。

遠いアラブ世界について勉強する意欲もないし、ユダヤ教やらイスラム教やら、ましてやイスラム教の宗派などを区別するのも面倒くさい、と思っているのでしょう。日本の国会議員は世界的に高い報酬を国から保障されていますが、野党議員の最大の関心事は現政権を打倒するのにあらゆるスキャンダルを探すことのみのようです。

当時「もりかけ問題」で窮地に追い込まれた安倍政権に助け舟を出すかのように、中国の王毅外相が昨年4月15日、約8年ぶりの日中経済対話のために日本を訪問しました。同年3月の全国人民代表大会で晴れて国務委員に昇格して出世を果たした後の再訪でした。

04~07年に駐日大使を務めていた頃は、王は日本の政財界の有力者らを低姿勢でゴルフに誘い、日本人以上に深々と頭を下げていました。今や、その彼自身が日本風のお辞儀も「中国人のくず」がやる行動で、「精日(精神的日本人)」だ、と激しい言葉で批判しています。

昨年3月8日,北京で記者会見後、「精日」に関するメディアの質問答える王毅

王は同年5月の日中韓首脳会談について、日本側と李克強首相訪日の詰めの調整を行ったといいます。日程で注目すべきは李が東京で首脳会談を終えた後、北海道を訪れ、高橋はるみ北海道知事との面談や経済視察をしたことでした。

一国の首相がどこを訪問しようととやかく言う筋合いはないかもしれないです。しかし中国は日本や米国と異なり、独裁体制を敷く専制主義国家で、日米の共通の脅威でもあります。李は沖縄にも足を運びたかったでしょう。尖閣諸島を中国領と主張しており、沖縄県への介入も諦めていません。

故翁長雄志知事を北京に誘っては「中国と琉球王朝との伝統的な絆」を持ち出し、親中派に期待を寄せてきました。沖縄県もかつて琉球が中国帝国に恭順を誓った印である龍柱を建ててまで、中国人観光客を歓迎しています。ところが結局、李は日本を刺激する沖縄県ではなく、北海道を訪問しました。

北海道はリベラル派が強く、道南を中心に人口の少ない各地の土地が知らぬ間に中国資本に買収されていても、特に警戒する姿勢を見せていません。沖縄では国境地帯の自衛隊施設付近に外国資本が進出している昨今、北海道は無防備だとみていいです。

また米国で複数の孔子学院がスパイ活動容疑でFBIから捜査を受ける一方、釧路では孔子学院を誘致する話も出るなど米同盟国の日本は鈍感で、国際的な潮流と逆行しています。

程永華駐日大使(当時)

昨年5月21日、中国の程永華駐日大使が釧路市を訪問、7カ月後の12月9日には張小平1等書記官(経済担当)も足を運びました。大使は蝦名大也釧路市長との会談で、「釧路市が民間・地方外交を積極的に進め、中日関係の改善と発展を後押しするためにさらなる努力をされるよう期待している」とラブコールを送りました。

その後、中国大使としては初めて、中国人らの研修生を受け入れている石炭生産会社、釧路コールマイン本社(釧路市興津)を訪問。「交流を強化し、両国の経済協力に力を注ぎ続けてほしい」と要望しました。

市長には大使館関係者から直接、中国政府系の文化機関「孔子学院」開設の打診があり、開設計画が現実的に検討されています。

道東は自衛隊の基地も密集する、国防上の要衝でもあります。釧路市は「中国が北極海航路に関心を持っているのは聞いているが、中国資本が急に活発化したという実感はない」と悠長に構えていますが、防衛省関係者らは、「国防面でも経済面でも海洋進出をもくろむ中国がまず、中央突破しなければいけないのは、太平洋に出ることでありその拠点として釧路を押さえるのが狙いだ」と分析、「すべて習主席の指示を受けた国家戦略なのは間違いない」と危機感を隠していません。

日本は、この頃の甘い対中国認識が現状でもほとんど変わっていないようです。それは、二階幹事長の行動をみても良く理解できます

このブロクでも以前も述べたように、安倍政権自体は、政府調達からファーウェイを排除したり、中国にサイバーセキュリティの基準の遵守を求めるなどして、リスクの高い5G企業を移動通信インフラから排除しようとしていますし、中国に一定の厳しい措置をしています。

これは、二階幹事長などの古いタイプの政治家や勉強しない政治家には理解ができない分野なので、このようなこともできるのかもしれませんが、それにしても、その二階氏が安倍内閣の幹事長というのが、現状の日本の政治状況を象徴しています。

日本も、他国と同じように、スパイ防止法を成立させて、国民は無論のこと、政治家を守る体制も整えた上で、米国のように、国会内で中国問題を議論する委員会などを設置するなどして、超党派で中国に対抗する体制を整えるべきです。

米国と同じように超党派で自国の国益のために、中国と対抗しなければならないという使命感を、政治家に持たせるべきです。

しかし、そのようなことは不可能と思う方々もいらっしゃると思いますが、トランプ政権誕生前の米国の絶望的状況を考えると、日本でもできると私は思います。

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2019年5月10日金曜日

米中貿易戦争「中国のボロ負け」が必至だと判断できる根拠を示そう―【私の論評】中国は米国にとってかつてのソ連のような敵国となった(゚д゚)!

米中貿易戦争「中国のボロ負け」が必至だと判断できる根拠を示そう

永田町もそれを見越して動き出した








トランプは、最初から決めていた

米国のトランプ政権が5月7日、中国からの輸入品2000億ドル相当に対する制裁関税を10%から25%に引き上げる方針を表明した。これを受けて、世界の株式市場は急落した。米中貿易戦争の行方はどうなるのか。

トランプ大統領

実際に関税を引き上げるのは10日なので、このコラムの公開後、土壇場で米中の合意が成立し、引き上げが撤回される可能性はゼロではない。だが、中国が大幅譲歩するとは考えにくい。そうなれば、中国の屈服が世界に明らかになってしまう。

私は結局、関税が引き上げられる、とみる。

日本のマスコミは「楽観的見通しを語っていたトランプ大統領が突如、強硬路線に転じた」とか「大統領得意の駆け引きだ」などと報じている。交渉なので駆け引きには違いないが、大統領の方針転換とは思わない。

トランプ氏は当初から、中国に厳しい姿勢で臨んでいた。楽観論を流していたのは「オレは甘くないぞ。だが、中国が折れてくるなら歓迎だ。だから、交渉している最中に『妥結は難しい』などとは言わない。よく考えてくれ」というメッセージだったのだ。

なぜ、そうみるか。そもそも「中国の知的財産窃盗行為を止めさせるために、制裁関税を課す」という目的と手法自体がまったく異例である。乱暴とさえ言える。大統領がそこまで踏み切ったのは、泥棒の中国があまりにひどすぎたからだ。

つまり、制裁関税という非常手段に訴える腹を決めた時点で、大統領の硬い姿勢は明らかだった。そうであれば、中国が窃盗を止める確証を示さない以上、トランプ氏にとって、制裁を強化するのは当然である。

ビーター・ナバロ氏の発言はヘイトではない

日本のマスコミは中国に対する批判よりも、トランプ政権を批判する傾向が強い。たとえば、朝日新聞は5月8日付け社説で「米国は大国としての責任を自覚しなければならない」「世界貿易機関(WTO)ルール違反の疑いがある制裁関税を自らがふりかざすことは厳に慎むべきだ」などと上から目線で指摘した(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14005072.html?iref=editorial_backnumber)。

自由貿易の守護神といえる米国が、保護主義的な手段を講じたことに当惑している面はある。だが、昨年7月の時点でホワイトハウスと通商代表部(USTR)はそれぞれ報告書を発表し、中国の泥棒行為を厳しく批判していた(2018年7月13日公開コラム、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56527、同9月21日公開コラム、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57602)。

昨年7月以来の流れを素直に見れば、トランプ政権が簡単に妥協しそうもないのは読み取れたはずだ。

ルール違反を言うなら、中国の方がはるかに悪質なのに、そこは「冷静に説得してほしい」などとキレイゴトを言っている。説得で片付くくらいなら、こんな騒ぎにはなっていない。中国が言うことを聞かないから、貿易戦争になってしまったのではないか。

朝日は「トランプ批判」のバイアスがかかっている。これでは、トランプ氏の真意を見誤るのも当然だ。ついでに言えば、朝日はどんな問題でも、最初に自分たちのスタンスを決めて報じる傾向が強い。事態を客観的に眺めるよりも、まず主張が先にありきなのだ。

中国が抱く「覇権奪取」の野望

脱線した。

トランプ氏にとって、問題は「泥棒の中国にどう対処するか」という話である。そこで決断したのが、前例のない制裁関税という手段だった。最初から「多少乱暴であっても、中国には断固として対処する」という方針を確立している。

背景には「中国は米国を倒して、覇権の奪取を目指している」という判断がある。

そうであれば、窃盗行為が止まる確証がないのに、制裁関税をあきらめて中途半端に妥協する選択肢はない。そんなことをすれば「これまでの制裁は何だったのか」という話になってしまう。繰り返すが、大統領の意思は最初から硬かった。これが1点だ。

加えて、私は直前に開かれた安倍晋三首相との首脳会談の影響もあったのではないか、とみている。私は3月29日公開コラムで「トランプ氏は中国に妥協しない」という見方を前提にして「安倍首相は大統領に『中国に安易に妥協するな』」と助言するのではないか」と指摘した(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63795)。

安倍首相は4月26日、欧米歴訪の途中で米国を訪問し、トランプ氏と2日間にわたってじっくり話し合った。その日米首脳会談を受けて、今回の制裁強化がある。時間軸でみれば、安倍首相とトランプ氏が対中強硬策で一致し、関税引き上げに至ったと考えるのが自然だろう。

なぜかといえば、先のコラムで紹介したが、そもそもトランプ政権の対中政策は、大統領就任前の2016年11月に会談した安倍首相の助言に基づいているからだ。トランプ氏は中国の扱いを判断するのに「シンゾーの話を聞いてから考えよう」と思ったはずだ。

外務省のホームページでは、日米首脳会談で「中国が話題になった」とは一言も書いていないが、日中関係が改善しつつある中、中国を刺激するのを避けるために、あえて触れなかったのかもしれない。

それはともかく、ここまでは私がコラムで予想した通りの展開である。

一方、先のコラムで、私は「安倍首相はトランプ氏の対中強硬路線を背中から押すためにも『日本経済は大丈夫』と請け合う必要がある。それには当然、増税延期が選択肢になるだろう」と書いた。こちらはどうか。おそらく、これもその通りになるだろう。

米国が対中制裁関税を引き上げれば、もちろん中国には一層の打撃になる。それでなくても、景気が落ち込んでいる中国はマイナス成長に陥ってもおかしくない。消費の落ち込みや輸入減少を見れば、もしかしたら、すでにマイナスになっている可能性もある。

習近平体制「大打撃」の予感

そうなると、世界経済はそれこそ「リーマン・ショック級」の危機に見舞われる公算が高い。日本も影響は免れない。すでに日本の対中輸出は落ち込んでいるが、さらに減少するだろう。そんな状況で、消費税引き上げはますます難しくなった。

5月13日に発表される3月の景気動向指数と、同じく20日に発表される1−3月期の四半期別国内総生産(GDP)速報の数字がそれぞれ「悪化」「前期比マイナス」と出れば、いよいよ増税延期の決断に踏み切る材料がそろってくる。

増税延期を決断するなら、安倍首相はそれを大義名分に衆参ダブル選に打って出るだろう。自民党の甘利明選挙対策委員長は5月8日、テレビ収録で「麻生太郎副総理兼財務相が4月30日、安倍首相を私邸に訪ねて、ダブル選を勧めた。首相は言質を与えなかった、と伝わっている」と語っている。

中国は経済的打撃を被るだけではすまない可能性がある。習近平体制そのものを揺るがすかもしれない。今回の制裁強化について、中国は国内で報道管制を敷いているのが、その証拠だ。当局は制裁関税が引き上げられる事実を報道させず、伏せたままにしている。

なぜ、そこまで過敏になっているのかといえば、まさに習近平国家主席がトランプ大統領にやり込められている事態を国民に知られたくないからにほかならない。主席の権威がぐらつくのを心配しているのだ。

これは「主席のメンツが丸つぶれ」という話だけではない。いくら主席のメンツが潰れようと、生活に影響がないなら、国民にとってたいした話ではないが、制裁関税は中国経済を直撃して国民生活にも必ず響く。すでに企業の倒産と失業も加速している。

制裁強化で一段と苦しくなると「習近平は何をしているんだ」という声が高まるだろう。それを事前に抑え込むために、徹底した報道管制を敷いているのである。だが、上海株式も暴落した。投資家は何が起きているのか、水面下で正確な情報を得ているに違いない。

米中貿易戦争は「米国の圧勝、中国のボロ負け」状態でヤマ場を迎えている。日本の永田町も風雲急を告げてきた。

【私の論評】中国は米国にとってかつてのソ連のような敵国となった(゚д゚)!

冒頭の記事では、トランプ政権とトランプ氏の対中国戦略を語っています。もし中国に対して、トランプ政権だけが厳しいというのであれば、習近平としてはトランプの任期が終わるのをひたすら耐え忍ぶことによって、米国の制裁をいずれかわせると考えたかもしれません。

しかし、このブログでも従来から指摘してきたように、それは大きな間違いです。もはや、米国議会も中国と対決する腹を決めていました。これは、トランプ政権が続こうが続くまいが、もう米国の意思となったのです。はっきり、言ってしまえば、米国にとって中国は敵国となったのです。

そうしてその動きは沈静化するどころか、ますます顕著になりつつあります。米国はソ連と正面対決した東西冷戦時代、議会に特別な危機委員会を設置しました。その対中国版がついに立ち上げられたのです。

戦略、外交、軍事などの専門家や元政府高官が約50人、加えて上下両院の有力議員たちが名を連ねたこの新委員会は、中国が米国の存続を根幹から脅かすとして断固たる反撃を宣言し、「共産党政権の中国と共存はできない」とまで断言しています。

中国に対する最強硬派ともいえるこの委員会の発足は、米中両国の対立がいよいよ全世界規模の新冷戦の様相を強めてきた現実を示しています。

委員会の名称は「Committee on the Present Danger: China(CPDC)」、直訳すれば「現在の危機に関する委員会:中国」です。組織としては3月末に設立され、実際の活動は4月から始まりました。

その活動の内容や目的については以下のように発表されています。
・この委員会は、中国共産党の誤った支配下にある中華人民共和国の実存的な脅威について、米国の国民と政策立案者たちを教育し、情報を与えるための自主的で超党派の努力を進める。 
・その目的は、加速する軍事拡張や、米国の国民、実業界、政界、メディアなどを標的とする情報工作と政治闘争、サイバー戦争、経済戦争などから成る中国の脅威を説明することにある。
以上の文中の「実存的な脅威」とは簡単にいえば、「米国の存在に関わる脅威」という意味です。つまり、中国の脅威は米国という国家や国民の存在そのものを脅かしている、という認識なのです。

ブライアン・ケネディ氏

同委員会の会長にはブライアン・ケネディ氏が就任しました。ケネディ氏は「クレアモント研究所」という保守系の戦略研究機関の所長を長年務めた長老的論客です。副会長はフランク・ギャフニー氏が務めます。レーガン政権や先代ブッシュ政権の国防総省高官を務め、民間のシンクタンク「安全保障政策センター」の創設所長となった人物です。

同時に発起人としてジェームズ・ウールジー元CIA(中央情報局)長官、スティーブン・バノン前大統領首席戦略官、ダン・ブルーメンソール元国防総省中国部長、ジェーズ・ファネル元米太平洋統合軍参謀、クリス・ステュワート下院議員ら約40人の安全保障、中国、外交などの専門家が名を連ねました。この委員会は4月9日に米国議会内で初の討論集会を開催しました。

3月25日設立発表では、委員会は最初に、当時合意間近と言われていた米中貿易交渉について警告を発しました。「トランプ政権が交渉中の米中貿易協定は、米国の知的財産を盗むという中国共産党の長年の慣行に対応することが期待されている。知財は経済と国家安全保障の生命線だ」「しかし、この(知財窃盗という)慣習が止むという約束はまだ見られない」

ブライアン・ケネディ委員長は、共産党支配の中国による脅威について、米国民や政策立案者に教示し、情報提供していくと述べた。副委員長のフランク・ガフニー氏は、共産主義の脅威に言及する。「われわれは、最終的に共産主義体制の性格から生じるこれらの問題に対処しなければならない。共産党体制をとる中国では、残酷な全体主義に支配されている」



クリントン政権の中央情報局長だったウールジー委員は、中国は古代中国の戦略家・孫子の理論に基づいて、大きな紛争を発生させることなく、米国を敗北させようとしていると述べました。

ブッシュ大統領政権の防衛情報官だったボイキン委員は、通信機器大手・華為科技(ファーウェイ、HUAWEI)による5G通信技術の拡大に注目し「中国によるインターネットの占拠を見逃してはいけない」と警鐘を鳴らしました。

ボイキン氏によると、米国に対する中国共産党の戦略は、人民解放軍が1999年に発表した書籍・超限戦で概説されているといいます。戦争に勝つためには、あらゆる手段、軍事、外交、経済、金融、さらにはテロも辞さないとする理論です。また、超限戦に基づいて、現在は中国共産党が米国を全面的に実行支配するための過程にあるとしました。

さらにボイキン氏は、米国の国防総省や大学、ハイテク企業は中国政府の代理人により何らかの浸透工作を受けていると述べました。たとえば中国から派遣された研究員は、米国の技術を入手することに注力しています。

米国を弱体化させようとする中国の行動は「非常に洗練されている」と、国防総省の核政策立案者だったマーク・シュナイダー委員は述べました。中国の核兵器は新型ミサイル、爆撃機、潜水艦など急速に最新化していると述べました。

シュナイダー委員によれば、中国の核兵器は「地下の万里の長城」と呼ばれる長さ36,000キロのトンネル複合施設に建設され、保管されているといいます。実際の兵器庫内の弾頭数はわかっていません。

元民主党議員で現ハドソン研究所研究員であるリャンチャオ・ハン委員は、中国共産党政権は米国に深刻な脅威をもたらしているが、多くの米国人は気付いていないとしました。

「だからこそ彼ら(中国共産党)が何をしているのか、何をしようとしているのか、なぜそれほど危険なのかを、アメリカの国民や政策決定者に知らせたり、教示することが私たちの義務だ」とハン委員は述べました。

冷戦時代の元海軍パイロットであり1970年代版の対ソ連危機委員会の委員でもあったチェト・ネーゲル委員は、中国共産党について「この実際的な脅威は、最終的に、全世界を支配する野心的な計画の一つだ」と述べました。

ネーゲル委員は「過去のソビエト連邦と同様に、共産主義の中国は、米国と自由主義に対立するイデオロギーの脅威がある」としました。

このように同委員会の活動は、議会で主に共和党議員たちが中心となってトランプ政権との協調を図りながら影響力を広げると予測されます。

この委員会の発想は、東西冷戦が激化した1950年代に結成された「現在の危機に関する委員会」を基礎としています。「現在の危機に関する委員会」は、ソ連共産党政権との対決のために、米国議会やメディア、一般国民など広範な分野で団結を呼びかけることを目的に結成されました。

危機委員会は、米国が直面する危機に応じて設置され、この度は4回目となります。1回目はトルーマン政権の1950年代に、2回目は「力を通じた平和戦略」を掲げるレーガン政権の1970年代に、それぞれソ連に関する危機委員会が設立されました。2004年の3回目となる設立は反テロを目的としていました。

「現在の危機に関する委員会:中国」もやはり中国共産党政権との対決姿勢を鮮明にしています。委員会の使命や活動目的などに関しては、以下のように打ち出していました。
・共産党政権下の中国は米国の基本的な価値観である民主主義や自由を否定する点でもはや共存は不可能であり、米国官民が一致してその脅威と戦わねばならない。 
・中国政権は東西冷戦中のソ連共産党政権と同様に米国の存在自体に挑戦する危機であり、米国側は軍事、外交、経済、科学、文化などすべての面で対決しなければならない。 
・中国のこの脅威に対して米国側ではまだその危険性への正確な認識が確立されていないため、当委員会は議会やメディア、国民一般への広範で体系的な教宣活動を進める。
同委員会は以上のように「現在の共産党政権下の中国との共存は不可能」と断じており、中国との全面的な対決を促し、中国共産党政権の打倒を目指すという基本方針までも明確にしています。

同時に同委員会はトランプ政権が昨年(2018年)10月のマイク・ペンス副大統領の演説で発表した対中政策への全面的な支援も打ち出しており、今後、同政権と連携して、中国との対決姿勢を一層強めるキャンペーンを推進することが予測されます。

同委員会のこの姿勢は、米国が現在の中国への脅威認識を東西冷戦中のソ連に対する脅威観と一致させるに等しいです。つまり、中国との対決をグローバルな規模での新冷戦と捉えているのです。

この委員会が継続される限り、米国は中国との対立をやめることはありません。米国は、中国が体制を変えるか、変えないなら中国経済を他国に影響を及ぼせないほどに弱体化させるまで冷戦を継続することでしょう。

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サイバー防衛でがっちり手を結ぶ日米―【私の論評】一定限度を超えたサイバー攻撃は、軍事報復の対象にもなり得る(゚д゚)!

2019年5月9日木曜日

サイバー防衛でがっちり手を結ぶ日米―【私の論評】一定限度を超えたサイバー攻撃は、軍事報復の対象にもなり得る(゚д゚)!

サイバー防衛でがっちり手を結ぶ日米

岡崎研究所 

 日米の外務・防衛担当4閣僚(河野外相、岩屋防衛相、ポンペオ国務長官、シャナハン国防長官代行)は4月19日、ワシントンで日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開催、日米両国が協力して「自由で開かれたインド太平洋」の実現に取り組むことを柱とする共同発表を発表した。

 共同発表では、とりわけ領域横断(クロス・ドメイン)作戦のための協力の重要性が強調されたことが目を引く。具体的には、宇宙、サイバー、電磁波である。以下、共同発表の当該部分を抜粋紹介する。


 閣僚は、宇宙、サイバー及び電磁波を含む新たな領域における急速に進化する技術進歩に懸念を表明した。

 戦闘様相が変化していることを認識し、閣僚は、従来の領域と新たな領域の双方における能力向上及び更なる運用協力の重要性を強調した。閣僚は、日米同盟が領域横断作戦により良く備えるべく、宇宙、サイバー及び電磁波領域を優先分野として強調した。

 サイバー空間に係る課題に関し、閣僚は、悪意のあるサイバー活動が、日米双方の安全及び繁栄にとって、一層の脅威となっていることを認識した。この脅威に対処するために、閣僚は、抑止及び対処能力を含む、サイバーに係る課題に関する協力を強化することにコミットしたが、優先事項として、各々の国が国家のネットワーク及び重要インフラ防護のための関連能力の向上に責任を負っていることを強調した。

 閣僚は、国際法がサイバー空間に適用されるとともに、一定の場合には、サイバー攻撃が日米安保条約第5条の規定(注:各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動する)の適用上武力攻撃を構成し得ることを確認した。

 閣僚はまた、いかなる場合にサイバー攻撃が第5条の下での武力攻撃を構成するかは、他の脅威の場合と同様に、日米間の緊密な協議を通じて個別具体的に判断されることを確認した。

出典:『日米安全保障協議委員会共同発表(仮訳)』(外務省、2019年4月20日)

 上記発表を一読すれば、中国(およびロシア)の宇宙空間、サイバー空間における能力、活動の活発化を念頭に置いていることは明らかである。共同発表では国名を具体的に名指ししてはいないが、共同記者会見でポンペオ国務長官は中国を、シャナハン国防長官は中ロを名指しした。

 国内の報道で最も焦点を当てられたのは、サイバー攻撃に対して日米安保条約第5条が適用され得るとされた点である。このことの意義は、日米同盟の枠組みにおいても、サイバー攻撃をその規模や態様によっては武力攻撃と同視し得る、従って自衛権の対象となり得る、と明確に位置づけた点にある。

 サイバー攻撃の国際法上の位置づけについては、2011年には米豪2プラス2で、米豪の安全保障を脅かすようなサイバー攻撃は、ANZUS条約(事実上の米豪同盟条約)の集団的自衛権行使の対象であると確認されている。

 画期となったのは、2013年にNATOの専門委員会がまとめた「タリン・マニュアル」である。同文書によれば、「動力学的武器」による攻撃と同視し得るような被害を出すようなサイバー攻撃は自衛権の対象となり得る。国際的な認識、取り組みは、そうした方向に向かいつつある。 

 2014年のNATOサミットでは「サイバー防衛は NATO 集団防衛の中核的任務の 1 つである」と明言されている。今般の2プラス2で、日米安保条約第5条の適用が明記されたのもそうした流れに沿ったものである。

 日米がサイバー防衛の協力を強化するとして、サイバー攻撃の抑止というのは技術的に困難が大きい。今後、さらなる共同研究が必要となろう。そうであっても、日米がサイバー防衛での協力強化を明言したことは、同盟の強化にも、サイバーセキュリティをめぐる国際規範の流れの強化にもつながり、意義深いと言える。

ファーウェイを排除するか否か

 ファーウェイを排除するか否かが国際的な問題となっている5G(第5世代移動通信システム)の構築は、当然、サイバーセキュリティの最大の課題の一つである。5Gについて、共同発表では触れられていないが、シャナハン国防長官代行は、共同記者会見で「情報安全保障は我々の防衛関係のまさに中核に位置している。

 日本が、政府調達から排除したり、サイバーセキュリティの基準の遵守を求めるなどして、リスクの高い5G企業を移動通信インフラから排除しようとしていることを、我々はよく認識し感謝している」と述べている。

 欧州諸国は、米国と情報を共有するファイブ・アイズ(米、英、豪、加、NZ)のリーダーの一つである英国も含め、5Gからのファーウェイの完全な排除に消極的であり、米国は神経を尖らせている。そうした中で、日本の一貫した態度は、米国にとって貴重なものと映っていることは想像に難くない。

【私の論評】一定限度を超えたサイバー攻撃は、軍事報復の対象にもなり得る(゚д゚)!

国家が関与するサイバー攻撃がますます高度化し、強力になっている中、一部の専門家は、意図的か偶然かはともかく、遅かれ早かれそうした事故で死者が発生するのではないかと恐れています。

国家によるサイバー攻撃によって別の国の国内で人命が失われた場合、何が起こるのでしょうか。

北大西洋条約機構(NATO)は2014年に方針を改定し、重大なサイバー攻撃は、条約の集団防衛に関する条項である第5条の対象になり得ると決定しました。また、冒頭の記事にもあるように日米の外務・防衛担当4閣僚は、4月19日サイバー攻撃は、米安保条約第5条の規定の適用上武力攻撃を構成し得ることを確認しています。

日米の外務・防衛担当4閣僚の共同声明の発表

法律の専門家も、重大なサイバー攻撃は武力攻撃に等しいと見なすことができると明確に述べています。しかし、実際に何が起こるかははっきりしないです。

Flashpointのアジア太平洋研究ディレクターJon Condra氏は、「政策コミュニティーの中でも、少なくとも10年以上前から、どの程度のサイバー攻撃になったときに軍による物理的な報復が必要になるかが議論になっている」と述べています。

「現在の戦争に関する法体系は古くなっており、必ずしもこの種の問題をうまく取り扱えるわけではない。サイバー空間の境界は実際の国境よりもずっと可変性があり不明確なため、どのような場合に、国家が強硬な手段で報復する道徳的、あるいは倫理的な権利が発生するかは完全には明確になっていない」(Condra氏)

攻撃の1つで大量の死者が発生し、明確に特定の国家によるものだと特定できた場合は、極めて重大な報復を行う必要がある、とCondra氏は言います。「倫理的および道徳的な要因を別にしても、被害国はおそらく、相応の対応を求める国内からの政治的圧力によって、報復を行うことを強いられるだろう」と同氏は述べています。

もっと率直な見方を示す専門家もいます。

カリフォルニア大学教授のGiovanni Vigna氏は、問題は単純だと主張します。「それは実際の戦争だ」と同氏は言います。

また、現在Illumioのサイバーセキュリティ戦略責任者を務めているJonathan Reiber氏は、「そのような事態は敵意を呼び起こす可能性が非常に高い」と述べています。

「なぜなら、それは他の領域における攻撃と同じようなものだからだ」と同氏は続けます。

サイバー戦争に関する問題の1つは、多くの場合、攻撃を実行したのが誰かを証明するのが難しいことです。どのようなレベルで活動している攻撃者も、痕跡を隠蔽し、責任を問われるのを避けるために全力を尽くしています。

Tritonの事件の場合、攻撃は国家関与のグループによるものだと指摘する研究者はいたが、公式には攻撃者は特定されなかった。

「攻撃者の特定は難しい作業だ。攻撃者の特定にはかなりの無理がある」とReschke氏は言います。

昨年開催された冬季オリンピックの最中に、韓国を標的とする攻撃に使用されたマルウェア「Olympic Destroyer」の例を見れば分かります。攻撃の発生後に各調査会社が発表したレポートに書かれていた攻撃者の正体はまちまちでした。攻撃を行った可能性がある国として、中国や北朝鮮、ロシアの名前が挙がっていました

昨年開催された平昌五輪韓国を標的とするサイバー攻撃がなされた

「攻撃者を特定することの問題は、それが極めて困難で、ほとんど当てずっぽうのようになってしまう場合があることだ」とVigna氏は言います。

「特定の犯人であることを示唆するような痕跡が見つかった場合でも、それは誰かが偽装のために残したものかもしれない。ロシア人に責任を押しつけるために、誰かがロシア語のメッセージを残した可能性もある。従って、なんらかの別のルートで事実を確認できない限り、誰が何をやったかを判断するのは非常に難しい」(Vigna氏)

しかし時には、攻撃者がミスを犯して、当局が攻撃の実行者を特定できる場合もあります。WannaCryは北朝鮮のものだと言われており、「NotPetya」はロシア軍の手によるものだとされています。サイバー攻撃で死者が発生し、実行した国が特定できた場合、被害者は報復を望む可能性が極めて高く、その報復は必ずしも別のサイバー攻撃の形を取るとは限らないです。

米国にはすでに、サイバー攻撃に関与したことに対する報復としてロシアに制裁を科した実績があり、攻撃で死者が発生すれば、より強い報復が求められるでしょう。

もっとも極端なケースでは、国土に対するサイバー攻撃への唯一の報復措置は、軍事的な報復だと判断する国が出てくるかもしれないです。そのような報復が行われるとすれば、かなりの人命が失われた場合である可能性が高いですが、複雑な国際地政学の世界では、小さな火花が前例のない反応を引き起こす可能性もあります。

「わたしには、どの時点から物事が破壊的な方向に進み、どこが分岐点になるのかは分からない。国家がこれ以上は我慢できないと判断する分岐点を知ることは、いつでも困難だ」とReschke氏は言います。

Hannigan氏は、ロンドンで開催された国際会議「Infosecurity Europe」の場で、攻撃で市民に死者が出れば、物理的な報復が行われるだろうと述べました。

「攻撃の1つで米国の患者に死者が出たり、重大な被害が出たりすれば、米国政府に物理的かつ決定的な行動を求める圧力は極めて大きなものになるだろう。これは西側諸国の政治家全般に言えることだが、特に米国では大きな圧力になると思われる」と同氏は言います。

米サイバー軍の一翼を担うコロラド州の空軍基地のサイバー部隊

幸いまだ、国家が後援するサイバー攻撃で、他国の市民に直接的に危害が及んだり、死者が出たりした例はないと見られています。これは、そのような事態が起こった場合に、どのような対応が適切かを合意する余地が残っていることを意味します。

「国際社会は、この種の行動に対してどのように対応し、攻撃者にどのような責めを負わせるべきかについて、何らかの合意を形成する必要がある」とCondra氏は言います。

Reiber氏は、事態の悪化を止めるための方法の1つは、サイバー攻撃を常に罰することで抑止力とすることだという意見を持っています。

「発生したどのようなサイバー攻撃にも、それが50ドルの盗難であるか、破壊的な攻撃か、選挙結果の操作かを問わず、何らかの懲罰的なコストを行為者に負わせる必要がある」と同氏は言います。

「もし行為者が一定の行動が許されると考えれば、いずれ想像を超えるような幅広い行動を取ってくるだろう。しかし、それらの行動すべてに代償を負わせれば、世界が攻撃者の行動に一丸となって対抗し、阻止しようとしていると示すことになる」

しかし、攻撃に対して懲罰を科すというこの議論は、国家による死者が出るような破壊的サイバー攻撃を抑止する唯一の方法である可能性が高いです。

「技術は人を殺さない。人を殺すのは人だ。ある程度は、一歩引いて国家間、あるいは国家内の人々の間の争いを、政治レベルで解決するような政治的条件を整える必要がある」とReiber氏は言います。

「そうすればいずれは、一方のグループが敵対する相手に対してサイバー空間での攻撃を使用する可能性は減るだろう。国家間の関係が平和であれば、攻撃の可能性も減ることは明らかだ」(Reiber氏)

サイバー攻撃の対処については、様々な考え方がありますが、ある一定限度を超えたサイバー攻撃は、軍事報復の対象にもなり得ることで、米国と日本は合意しているという点については記憶にとどめておく必要がありそうです。

確かに、手段は何であれ、人が大勢なくなったり、危害を受けた場合、あるいはそうなりそうな場合は軍事攻撃の対象になりうるのは当然といえば、当然だと思います。

その意味では、国際法がサイバー空間に適用されることは、当然といえば当然です。

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