2023年7月14日金曜日

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ  岸田首相は「一発かますべきだった」 NATO東京事務所に仏大統領反対も...「食らいつく」べき理由―【私の論評】NATOは未だ東京事務所設置を諦めていない、岸田首相はマクロン大統領を説得すべき(゚д゚)!

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ  岸田首相は「一発かますべきだった」 NATO東京事務所に仏大統領反対も...「食らいつく」べき理由

バイデン米大統領 NATO首脳会議にて

 岸田文雄首相は、NATO首脳会議でジョー・バイデン米大統領からベタ褒めされました。しかし、フランスのエマニュエル・マクロン大統領からNATO東京連絡事務所の設置計画について、「インド太平洋は北大西洋ではない」といわれ、はっきり反対されました。その結果、NATOの決定は全会一致が原則でフランスが反対したため、今回のNATO首脳会議での東京連絡事務所の設置案は見送られました。

 ここで、岸田首相は、外交の岸田を世界にアピールしたいなら、一発かますべきでした。というのは、NATO事務局は中国を「体制上の挑戦」と位置づけているからです。中国は近年インターネット上のサイバー攻撃や偽情報の拡散、宇宙での安全保障での影響力拡大に関わっています。こうしたサイバー攻撃などは地理的な制約がないので、NATOの活動にも悪影響が出かねない。いずれにしても、NATOは中国に対し警戒感をあらわにしています。

 NATOは、日本を非常に緊密かつ重要なパートナーとしてとらえ、日本に加え、韓国、オーストラリア、ニュージーランドとの連携を広げようとしています。東京での事務所をその足がかりに、というのがアメリカやイェンス・ストルテンベルグ事務総長の構想だった。

 これは、日本にとっても、中国の影響力拡大に警戒を強めるなか、NATOが自由で開かれたインド太平洋地域の安全保障に貢献しようとするのは歓迎です。

 いずれにしても、サイバー攻撃などを考えると、今は安全保障は地域問題にとどまらず、世界規模の問題ととらえたほうがいい。この程度のことは、岸田首相も表の記者会見などではっきりとすべきだった。

 フランスの本音は、中国への配慮です。実際中国はNATOの東京事務所に猛烈に反対している。フランスは中国がエアバスを購入するので懐柔されたともいわれている。

 裏では、岸田首相はマクロン大統領に、日本はエアバスとワインを買うくらいの話をしてもいいだろう。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との首脳会談が流れたのは仕方ない。なにしろウクライナにとっては日本と会談しても武器が手に入らないからだ。

 それなら、岸田首相は、日韓首脳会談などやらずにマクロン大統領に食らいついて、NATO東京連絡事務所について色よい返事をもらわないといけない。事務方がせっかくいいところまで作ってきたのだから、最後の一押しをするのは政治家にしかできない役目だ。

【私の論評】NATOは未だ東京事務所設置を諦めていない、岸田首相はマクロン大統領を説得すべき(゚д゚)!

歴史上、ある国の指導者が、他国の指導者の反対に応じて行動を起こしたり、声明を出したりした例はあります。しかし、国と国との外交関係や相互作用は複雑であり、特定の結果を一国の指導者の行動のみに帰することは必ずしも容易ではないことに留意する必要があります。さらに、「食い下がる」という言葉は主観的なものであり、さまざまな反応を包含する可能性があります。

過去の例としては、1962年のキューバ危機における米国のジョン・F・ケネディ大統領とソ連のニキータ・フルシチョフ首相のケースがあります。米国は、ソ連がキューバに核ミサイルを設置していることを発見し、米国の安全保障に重大な脅威をもたらしました。

ケネディ大統領

ケネディ大統領はこれに対し、この発見を公に発表し、さらなる輸送を防ぐためにキューバ周辺に海上封鎖を敷きました。この危機は2つの超大国間の緊張をエスカレートさせ、ケネディはフルシチョフの行動に断固として反対しました。

最終的にフルシチョフは、アメリカがキューバを侵略しないという公約と、トルコからアメリカのミサイルを撤去するという密約と引き換えに、ミサイルの撤去に同意しました。この危機の解決は、ケネディの毅然とした態度がフルシチョフの反対運動の撤回につながった例と見ることができます。

偉大な経営学者ピーター・ドラッカーは、外交交渉において以下のことが重要であると述べています。以下に安倍外交と対比しながら述べます。

人間関係を築くこと。これは相手とその利害関係を知ることを意味します。また、信頼関係を築くことも重要です。これに関しては、安倍元総理は、米国のトランプ米大統領や、インドのモディ首相とも良い人間関係を築いていたと思います。

目標を明確にすること。交渉で何を達成したいのか。明確な目標を持つことで、集中力を維持し、より良い決断を下すことができます。
安倍元首相は、安全保証のダイヤモンドや、インド太平洋戦略などの概念を生み出し、これらに基づき、その時々で外交を展開していました。そのため、目標は明確だったと思います。

妥協する覚悟を持つ。完璧な交渉はあり得ません。見返りを得るためには、何かを諦める覚悟が必要です。これは、外交の基本です。ただし、妥協においても正しい妥協と、正しくない妥協があります。これはまた後で述べます。

忍耐強く。交渉は長く、難しいものです。目標を達成するためには、忍耐強く、粘り強く取り組むことが大切です。

これらの原則は、ドラッカーの著書『The Effective Executive』に概説されています。

以下は、外交交渉に関するドラッカーの補足です。

パワー・ダイナミクスを意識すること。交渉の中で最も力を持っているのは誰か?その力をどう使えば有利になるのか?

説得力と影響力を使え。すべての交渉が力によって勝利するわけではありません。多くの場合、説得力と影響力を行使して自分の望むものを手に入れる必要があります。

文化的背景を意識する。文化が異なれば、交渉スタイルも異なります。こうした違いを認識し、それに応じてアプローチを調整することが重要です。

外交交渉は複雑で難しいものです。しかし、これらの原則に従うことで、成功の可能性を高めることができます。

外交にも妥協は必要です。上の記事で、「裏では、岸田首相はマクロン大統領に、日本はエアバスとワインを買うくらいの話をしてもいいだろう」としていますが、まさにこれが妥協というものでしょう。

ただ、妥協にも正しい妥協と正しくない妥協があります。これは、先日意思決定に関して述べたばかりです。外交でも同じことだと思います。当該記事のリンクを以下に掲載します。
「ゼロリスク」思考の落とし穴 処理水やマイナンバー問題も…世の中に100%安全なし、身近な「確率」と比較すべき―【私の論評】まともな過程を通じて意思決定する習慣をもたなければ、重要な意思決定ができなくなる(゚д゚)!

外交においては、「ゼロリスク」思考は、考えるまでもなく全くありえないと思いますので、こちらには言及しません。そもそも、「ゼロリスク」思考で物事を考える人には、外交に携わることなどできないでょう。

この記事から、一部を引用します。
ドラッカーは、正しい妥協をすることがリーダーの重要なスキルであると主張しました。リーダーには、さまざまな利害関係者のニーズのバランスをとり、誰にとってもうまくいく解決策を見出す能力が求められます。正しい妥協をすることで、リーダーは信頼と協力を築き、目標を達成することができます。

ドラッカーは『エフェクティブ・エグゼクティブ』の中で「リスクゼロを目指す経営者は、成果もゼロだ。計算されたリスクを取ることを厭わない経営者は、大きな成果を上げるだろう。そうして、適切な妥協を厭わない経営者は、永続的な成果を達成する」と述べています。
詳細は、この記事を読んでいただくとして、妥協の事例として、ドラッカーはソロモン王の裁定を例に出しています。「半分のパン」は食用になるが、「半分の赤ん坊」は意味がないという有名な事例です。

「半分のパン」のような妥協ならしても良いですが、「半分の赤ん坊」のような妥協ならすべきではないということです。しかし、多くの人はしてはならない妥協をすることも多いです。これは、外交においては致命的なミスになるでしょう。

「NATO東京連絡事務所」に関して、NATOはすぐにこれを諦めるということないでしょう。NATOは、マクロン大統領を説得するでしょうが、 一方の当事者でもある、岸田首相も率先して説得すべきです。

NATOは2023年6月、NATO東京連絡事務所を設置する意向を発表しました。この事務所はNATOと日本およびアジア太平洋地域の他のパートナーとの関係を強化することを任務とします。

同事務所の意図は以下の通りです。

アジア太平洋地域に対するNATOの関与を強化すること。NATOは伝統的に欧州の安全保障に重点を置いてきたが、中国の台頭により新たなパートナーをアジア太平洋に求めるようになっている。東京リエゾンオフィス(連絡事務所)は、NATOが日本やその他の地域諸国との関係を深めるための手段となります。

安全保障問題での日本との調整。日本は米国の緊密な同盟国であり、NATOは安全保障問題でよりよい連携をとるために日本との関係強化に努めてきました。東京リエゾンオフィスはNATOと日本が情報を共有し、共通の課題に対して協力するための手段となります。

非伝統的な安全保障上の脅威に関する協力を促進する。東京リエゾンオフィスはまた、テロやサイバー犯罪といった非伝統的な安全保障上の脅威に関する協力を推進することも任務となります。これらは国境を越えた脅威であり、NATOと日本は協力して対処する必要があります。

しかし、NATO東京連絡事務所の設置決定には反対意見もあります。中国は、この事務所は「冷戦の遺物」となり、「地域の平和と安定を損なう」と警告しています。フランスのマクロン大統領はこれに配慮して、連絡事務所の開設に反対したのでしょう。また、日本の政治家の中にも、NATO東京連絡事務所について懸念を表明する者もいます。

2023年7月現在、NATO東京連絡事務所の設置決定は延期されています。7月12日NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、NATOはこの問題について "まだ議論中 "であり、"いずれ決定する "と述べました。

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長

マクロン大統領への具体的な反論をいくつか挙げます。

NATO東京事務所は、フランスの緊密な同盟国であり友好国である日本とNATOの関係を強化するのに役立つでしょう。

NATO東京事務所は、テロやサイバー犯罪といった非伝統的な安全保障上の脅威に対するNATOと日本の協力促進に役立ちます。

この事務所は、アジア太平洋地域における中国の攻撃的な行動を抑止するのに役立つでしょうが、同時に同事務所は軍事基地ではなく、中国を脅かすものでもありません。

この事務所は、マクロン自身の大西洋主義へのコミットメントに沿うものです。

このような議論は、マクロン大統領の特定の懸念に合わせることが重要でしょう。しかし、NATO東京事務所の利点を強く訴えることで、反対を撤回させることができるかもしれないです。

岸田首相は、仏マクロン大統領の説得にあたるべきです。岸田首相は、外交では安倍元総理の政策を継承しているようですが、ここが踏ん張り時と思います。マクロンを説得できれば、安倍外交と並び岸田外交も高く評価されることになるでしょう。

意外とこういうところから、国内政治への転機も生まれてくるのではないかと思います。

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2023年7月13日木曜日

墓穴を掘る中国 進む日米韓と日米比の結束―【私の論評】インド太平洋地域におけるミ二ラテラリズムの台頭は、安倍元総理が夢見ていたインド太平洋同盟の始まり(゚д゚)!

墓穴を掘る中国 進む日米韓と日米比の結束

岡崎研究所

サリバン大統領補佐官

 6月22日付の米ワシントン・ポスト(WP)紙は「米国のアジア同盟国は静かに中国への対抗に参加」との同紙コラムニストのジョシュ・ロウギンの論説記事を掲載し、中国と対峙する上で、サリバン大統領補佐官訪日と初の日米比韓高官のミニラテラル開催はブリンケン国務長官の訪中より重要だと指摘している。

 ジョシュ・ロウギンの論説記事の内容を要約します。

  • 中国の軍事力拡大、戦狼外交、経済的威嚇が、米国とその同盟国・パートナーの連携を深めている。
  • 米国とその同盟国・パートナーは、ミニラテラル(少数の有志国による枠組み)を構築し、中国に対抗しようとしている。
  • ミニラテラルネットワークは、地域の安全保障枠組みを大きく変貌させつつある。
  • 中国は、ミニラテラルネットワークを脅威と捉え、反発している。
  • 米国とその同盟国・パートナーは、中国の脅威に対処するため、ミニラテラルネットワークをさらに強化していく必要がある。

 ロウギンは、ミニラテラルネットワークは中国に対抗する有効な手段であると指摘しています。ミニラテラルネットワークは、米国とその同盟国・パートナーが、中国の軍事力拡大、戦狼外交、経済的威嚇に対抗するための強固な連携を構築する上で、重要な役割を果たすと考えられています。

 中国は、ミニラテラルネットワークを脅威と捉え、反発しています。中国は、ミニラテラルネットワークが、中国の覇権を脅かすものであると考えているからです。しかし、米国とその同盟国・パートナーは、ミニラテラルネットワークを、中国の脅威に対処するための有効な手段であると認識しています。そのため、米国とその同盟国・パートナーは、ミニラテラルネットワークをさらに強化していく必要があると考えられています。

 ジョシュ・ロウギンは、日本の駐米大使、ロバート・エドワード・ライト氏が、日米の同盟関係を「最も強固で不可欠な関係」と述べたことに触れ、日米同盟は、インド太平洋地域の平和と繁栄を支える基盤であると指摘しています。

 ロウギンは、米国とその同盟国・パートナーは、中国の脅威に対処するために、ミニラテラルネットワークをさらに強化し、日米同盟を強化していく必要があると主張しています。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】インド太平洋地域におけるミ二ラテラリズムの台頭は、安倍元総理が夢見ていたインド太平洋同盟の始まり(゚д゚)!

米国とそのアジアの同盟国・パートナーは、中国の軍事的、経済的、政治的パワーの増大に対抗するため、ミニラテラルを構築しようとしています。この枠組みは、これらの国がそれぞれの努力を調整し、中国の攻撃的な行動を抑止するために協力する方法です。

クワッド(米、日、印、豪が参加)やAUKUS安全保障協定(米、英、豪が参加)など、すでに数多くの多国間枠組みが存在していますが、これらの枠組みは、加盟国間の協力と協調を促進することに成功しており、米国とその同盟国/パートナーが構築しようとしている新しいミニラテラルのモデルとなり得ます。

インド太平洋地域におけるQUADとAUKUS  AI生成画像

新たな多国間枠組みには、インド太平洋地域の国々に加え、世界の他の地域の国々も参加することになるでしょう。具体的にどのような国がこの枠組みに含まれるかは、その国の戦略的利益、軍事力、米国との協力への意欲など、多くの要因によって決まるでしょう。 新たなミニラテラルの創設は、世界の安全保障の状況において重要な進展となるでしょう。それは、米国とその同盟国・パートナーが、中国の攻撃的な行動を抑止し、インド太平洋地域におけるルールに基づく秩序を促進することにコミットしていることの表れでしょう。

中国は、ミニラテラルを中国の台頭を封じ込めようとする試みと見ているため、脅威を感じているでしょう。この枠組みによって、米国とその同盟国・パートナーは、それぞれの努力を調整し、中国の攻撃的な行動を抑止するために協力することができるようになります。これにより、中国がインド太平洋地域で目標を達成することはより難しくなるでしょう。

中国自身の行動が孤立を招いているケースもあります。例えば、南シナ海における中国の攻撃的な行動は、多くの近隣諸国を遠ざけています。中国の米国との貿易戦争は、西側諸国との関係にもダメージを与えています。

中国がミニラテラルに脅威を感じる具体的な理由をいくつか挙げます。

この枠組みは、米国とその同盟国・パートナーがインド太平洋地域における軍事活動を調整することを可能にします。具体的には、たとえば超大国米国の軍事力にも限りがあり、場合によってはこの地域の米国の艦艇による監視が手薄になった場合、他国の艦船が代替することも考えられます。

この枠組みは、中国を排除するような新たな安全保障パートナーシップの構築につながる可能性があり、中国をこの地域でさらに孤立させる可能性があります。この枠組みは、将来NATOのような軍事同盟になる可能性を秘めています。

そうなれば、中国のアジア・太平洋地域において、同盟加盟国を攻撃した場合、軍事同盟自体に対して攻撃することになり、これは中国に対する強力な抑止力になります。

この枠組みは、インド太平洋地域におけるルールに基づく秩序を促進するために利用される可能性があり、それは、中国が自国の勢力圏を確立しようとする努力に挑戦することになるかもしれないです。

私達が、ここで想起しなければならないのは、安倍元首相のグローバルな視野に立った外交が、米国とその同盟国やパートナー諸国がミニラテラルを確立して中国に対抗することを可能にしたということです。

2007年、安倍首相は2000年以来初めてインドを訪問し日本とインドの間に「特別な戦略的グローバル・パートナーシップ」を構築することを提案しました。このパートナーシップは、安全保障、経済、文化など幅広い分野での日印協力を推進することを目的としていました。

2008年、安倍首相はオーストラリアを訪問し、日豪間の「包括的戦略パートナーシップ」の構築を提案しました。このパートナーシップは、安全保障、経済、文化など幅広い分野での日豪協力を促進することも目的としていました。

2012年、安倍首相は政権に復帰しましたた。彼は引き続き「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを推進し、この地域の同盟国やパートナーとの関係強化に努めました。

2017年、米国、日本、インド、オーストラリアは、初の四極安全保障対話(Quad)を開催しました。クアッドは、安全保障、経済、海洋安全保障の分野で4カ国間の協力を促進することを目的としたミニラテラルです。

これらは、安倍首相のグローバルな視点に立った外交が、米国にどのような基盤を築いたかを示すほんの一例にすぎないです。

インド太平洋地域でミニラ寺リズムの先鞭をつけた安倍元首相

「自由で開かれたインド太平洋」という安倍首相のビジョンは、今やこの地域の多くの国々に共有され、中国の攻撃的な行動を抑止するのに役立つ新たな安全保障パートナーシップを発展させる原動力となっています。

インド太平洋地域におけるミニラテラリズムの台頭には、上記の歴史的事実のほかにもさまざまな要因があります。これらの要因には以下が含まれます。
  • 中国による脅威の増大
  • 米中関係の将来に対する不確実性の高まり
  • この地域の国々が自国の安全保障をよりコントロールしたいという願望
ミニラテラルは新しく発展途上の概念ですが、インド太平洋地域の将来において重要な役割を果たす可能性を秘めています。米国とその同盟国やパートナーが協力することで、中国の攻撃的な行動を抑止し、この地域におけるルールに基づく秩序を促進することができます。


インド太平洋地域におけるミ二ラテラリズムの台頭は、安倍元総理が夢見ていたインド太平洋同盟の始まりともいえる出来事です。亡くなってもまだ、世界を動かし続ける安倍元総理、本当にありがとうございました。私達は、このアベのレガシーをより強固に充実したものにしていこうではありませんか!


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2023年7月12日水曜日

中国の罠にはまった玉城デニー知事、河野洋平氏ら訪中団 仕掛けられた「沖縄分断」に…米国とズレた甘い対応の日本政府―【私の論評】1980年代、中共は日本はやがて消滅するとみていた、それを変えたのが安倍元総理!この流れはもう誰にも変えられない(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

2019年 玉城デニー沖縄県知事と、安倍総理

 日本国際貿易促進協会(会長・河野洋平元衆院議長)の訪中団に参加していた沖縄県の玉城デニー知事は先週、中国共産党序列2位の李強首相と会談した。

 しかし、玉城知事は尖閣諸島の問題に触れず、海警局船の連日の周辺海域侵入を黙認したと受け取られかねる状況になった。

 玉城知事は中国訪問時の査証(ビザ)の手続き簡素化や直行便再開を要請したが、米国務省は中国への渡航を再考すべきだと警告し、意見の相違が浮き彫りになっている。

 訪中団を歓待した習近平政権の狙いは政府と沖縄県を分断し、中国の影響力を高めることだと指摘されている。中国にとって沖縄は海洋進出にとって重要な拠点であり、玉城知事の訪中はその戦略の一環とみられている。

 玉城氏が訪中団に参加するのは2回目であり、中国側からの待遇は相当なものです。今回の訪問は台湾有事に備えた中国側の策略の一環とも考えられます。

 松野博一官房長官は6日の記者会見で、今回の河野氏と玉城氏が訪中し、李首相と会談したことに関し「歓迎する」と述べた。本来は「地方知事の行動にはコメントしない」とすべきでした。

 政府の対応には疑問が呈されており、米国は中国渡航について警戒を強めている。

 これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になっって下さい。

【私の論評】1980年代、中共は日本はやがて消滅するとみていた、それを変えたのが安倍元総理!この流れはもう誰にも変えられない(゚д゚)!

地球儀を俯瞰する外交 AI生成画像

都道府県知事などの外国訪問は国際親善に限定されるべきものであり、外交は外務省、場合によっては総理大臣が行うべきものです。

これにはいくつかの理由があります。第一に、外務省は効果的な外交を行うために必要な専門知識と経験を持っています。彼らは国際関係や異文化のニュアンスを深く理解しています。また、関係を構築し、日本の国益を増進するために利用できますし、世界中に張り巡らされた人脈も持っています。

第二に、外務省は国際舞台で日本を代表する責任があります。つまり、外務省には日本を代表して約束する権限があります。都道府県知事が外国の元首と約束をしても、日本政府を拘束するものではないです。これは混乱や誤解を招きかねないです。

最後に、外交政策に関しては、統一見解を維持することが重要です。日本政府の異なる部分が異なる国に対して異なる約束をすることは、国際舞台における日本の立場を弱めることになりかねないです。

もちろん、都道府県知事が外交目的で外国を訪問することが適切な場合もあります。例えば、当該国の地域の首長(道府県の知事や、市町村・特別区の長が)集まるサミットに知事が招待された場合、日本の利益を有意義な形で代表することができるかもしれないです。しかし、こうしたケースは例外であって、ルールではありません。

一般的に、外交は外務省が担当するのがベストです。そうすることで、日本の利益が効果的に代表され、国際舞台での統一戦線が確保されます。

外交とは、国家間の関係を築き、紛争を解決する技術です。世界における自国の地位を向上させ、自国の利益を促進し、他国とのパートナーシップを構築するのに役立つため、どの首相にとっても不可欠な手段です。

首相にとって外交には多くの利点があります。第一に、国際舞台での国のイメージ向上に役立ちます。首相が世界の指導者たちと会談し、関係を築くことは、その国が尊敬され、世界の舞台で活躍しているというメッセージを送ることになります。これは投資、観光、貿易の誘致に役立ちます。

第二に、外交は国の利益を促進するのに役立ちます。首相が他国と交渉する際、自国に有利な合意を取り付けようとすることができます。例えば、より良い貿易取引、新市場へのアクセス、安全保障問題での協力などを得ることができるかもしれないです。

第三に、外交は他国とのパートナーシップの構築に役立ちます。首相が他の世界の指導者と良好な関係を築けば、共通の目標に向かって協力しやすくなります。これは、気候変動、テロリズム、核拡散といった世界的な課題に取り組む際にも役立ちます。

ここで、安倍首相の外交について振り返っておきます。

2013年の訪米ではオバマ大統領と会談し、環太平洋経済連携協定(TPP)などさまざまな問題について話し合いました。

2014年の訪中では習近平国家主席と会談し、両国関係改善の方策について話し合いました。

2015年のインド訪問では、ナレンドラ・モディ首相と会談し、両国間の経済関係を強化する方法について話し合いました。


これらは、首相にとって外交がもたらすメリットのほんの一例にすぎないです。関係を築き、利益を促進し、パートナーシップを構築することで、外交は世界における国の地位を向上させ、目標を達成するのに役立ちます。

1956年から1987年まで中華人民共和国の副首相を務め、中国政府で最も権力のある人物の一人とされていた中国高官「陳雲」はオーストラリアを訪問したときに、日本についてある発言をしました。

その発言は、「日本という国はいずれ消滅する」というものです。彼は1982年、オーストラリアを訪問した際にこの発言をしました。彼は中国と日本の経済的な対立について語ったとされ、日本は「紙の虎」であり、いずれ崩壊するだろうと述べたとされています。

陳氏の発言は日本に対する脅しと広く解釈され、日本国内で大きな怒りを買いました。しかし、陳氏は後に、日本が文字通り消滅するという意味ではなく、いずれ経済的な優位性を失うという意味であったと、自身の発言を明らかにしています。

陳雲氏の発言は、中国と日本の長年のライバル関係を思い起こさせるものです。両国には複雑な歴史があり、経済問題や領土問題でしばしば対立してきました。しかし近年、両国は関係改善に努めてきました。

2008年、日中両国は自由貿易協定に調印し、気候変動や核不拡散などの問題でも協力しています。両国が歴史的な対立を乗り越え、真に平和的で協力的な関係を築けるかどうかは、まだわからないです。

ただ、陳雲は、「日本という国はいずれ消滅」すると語っており、現在からみると当時の日本野与党自民党はかなりリベラル色が色濃く、そのままであれば、確かにいずれ中国に何らかの形で飲み込まれてもおかしくはない状態でした。陳雲はそのことを語ったとみられます。そうして、当時の自民党の主流であったリベラル派のお粗末ぶりをみて、彼らは与しやすく、御しやすく本気でそう思っていたことでしよう。

このことに脅威を抱いた、安倍晋三氏が首相になってから、特に第二次安倍政権においては、安倍首相は地球儀を俯瞰する外交といわれたように、様々な国を訪問し、あれよあれよという間に、中国包囲網を構築してしまいました。しかも、中国にこれに対抗する暇も与えず、急速に構築したのです。

この包囲網は現在では、米国をはじめとする西側諸国を中心として、他の地域も巻き込んだ大規模なものになっています。これは、構造的変化といっても良いようなものになっています。

この流れを変えることは難しく、中国はかなり脅威を感じていることでしょう。だからこそデニー知事の訪問は、渡りに船であったのでしょう。

渡りに船 AI生成画像

ただ、安倍総理は、在任中に日本の同盟国や、親しい国々と中国のとの関係を、完璧に変えてしまいました。それも、根底から、質的に完璧に変えてしまいました。今や、中国が世界秩序を変えて、自分たちに都合の良い秩序を樹立しようと試みていることは、世界中の国々が理解するようになりました。これは安倍外交の成果です。

この流れは、デニー知事などの努力で到底変えられるものではありません。それは、韓国の文在寅前大統領が、北朝鮮との関係を改善しようとしたものの、結局のところ文は、金正恩掌で転がされ続け、結局金づるにされただけで、最後にかえって関係が悪化したことをみても理解できます。仮にデニー知事に賛同して、自民党の現在の重鎮たちがそれを変えようとしても、多くの国々がそれを許さないでしょう。 

ただ、韓国で文在寅が台頭したように、自民党のリベラル派やデニー知事などが台頭すれば、結局大きな流れは変えられないでしょうが、それでもかなり後退することになる可能性があることには留意すべきでしよう。

まさに、中国はこれを狙っているのでしょう。文在寅時代の韓国のように時代の潮流に乗り遅れることだけは避けるべきです。

せっかく安倍晋三氏によって、日本は存在感を増し世界の中でリーダーシップを発揮できるようになったのですから、これからも世界の中で先頭を走り続けるべきです。

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2023年7月11日火曜日

「ゼロリスク」思考の落とし穴 処理水やマイナンバー問題も…世の中に100%安全なし、身近な「確率」と比較すべき―【私の論評】まともな過程を通じて意思決定する習慣をもたなければ、重要な意思決定ができなくなる(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

「ゼロリスク」思考の落とし穴

 ゼロリスク思考とは、リスクをゼロにすることを目指す思考のこと。この思考は、東京電力福島第1原発の処理水放出への反対や、マイナンバーをめぐるトラブル追及の背景にあると考えられている

 国際原子力機関(IAEA)は、福島第1原発の処理水について、日本による海への放出計画が国際基準に合致しているとする最終報告書を公表した。この報告書では、処理水の放出が人や環境に与える影響は無視できる程度だとしている。

 しかし、それでも処理水の放出に反対する人はいる。彼らは、「人や環境へのリスクはゼロでない」という言い方をする。筆者は、「今この場で隕石が降ってきて死ぬリスク(確率)はゼロでないが、無視しているではないか」と答えるようにしている。

 マイナンバーカードでも、保険証へのひも付けが7000件ほど間違っていたと報じられると、「あってはならない」「もし自分がそうなったらどうするのか」と言う人がいる。そういう時、筆者は「1.5万人に1人なのでめったに当たらない、宝くじを30枚購入して100万円が当たるようなものだ」と答える。

 それでも、リスクはゼロであるべきだという「ゼロリスク思考」の人は、はじめから確率を聞こうともしない。

 世の中に100%安全はなく、リスクは何%程度かという程度問題にすぎない。しかし、人はしばしばリスクを「有」「無」の二分法で考え、ゼロリスクを求める。

 というのは、筆者はリスクを数量的な確率で考えるが、一般の人たちはリスクを確率でなく、「恐ろしさ」と「未知なもの」という2つの因子で認識しがちだ。これは、米国の心理学者ポール・スロビック博士が提唱した考え方だが、その結果、リスクを「有」「無」の二分法で考えることに陥りがちなことをよく説明している。

 加えて、人は定量的な理性より「有」「無」の直感が優位に立つ。2002年ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマン博士のいうように、直感は「速い思考」であるのに対し、理性は「遅い思考」なのだ。筆者もその例外ではないが、遅い思考をできるだけ速く行い、速い思考を抑えているだけだ。

 リスクを「有」「無」の二分法で考えないようにするためには、リスクを定量的に日常で体感できるものと比較するのがいいだろう。筆者がよく使うのは前述の宝くじのほか、交通事故率や天気予報の降水確率だ。

 交通事故の死者・重傷者数は年間約3万人で、保険証のひも付けミスに遭う確率はそれより低い。降水確率は0%と表記するが、気象庁は「ゼロ」でなく「れい」と発音している。降水確率0%は0~5%の意味なので、「れい」(零)のほうが適切だ。この場合、ほとんどの人が傘を持たないが、まれに雨に降られることもある。保険証のひも付けミスに遭う確率は、降水確率0%で雨に降られるよりもはるかに低い。

 悪質なのは、リスクを確率で考えられない人の弱みにつけ込んで、「安全より安心」などという人たちが後を絶たないことだ。

 これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】まともな過程を通じて意思決定する習慣をもたなければ、重要な意思決定ができなくなる(゚д゚)!

上の記事では、高橋洋一氏は、心理学者の理論についてあげらていますが、私は、「ゼロリスク」思考の落とし穴を考える上で、ピーター・ドラッカーの意思決定論が非常に有用であると考えます。ドラッカーは、意思決定は直感や勘の問題ではなく、体系的なプロセスであると主張しました。彼は意思決定プロセスにおける5つのステップを挙げています。

ドラッカー

問題を定義する。リスクの高い決断に直面したとき、問題を明確に定義することが重要です。決断すべきことは何か?それぞれの決断がもたらしうる結果は何か?

ドラッカーは著書『エフェクティブ・エグゼクティブ』の中で、新製品に投資するかどうかの決断を迫られたマネジャーの例を挙げています。マネジャーは決断を下す前に、問題を明確に定義する必要があります。投資の目的は何か?潜在的なリスクと利益は何か?

選択肢を特定する。問題を定義したら、可能性のある解決策をすべて洗い出す必要があります。これは難しい作業かもしれないですが、徹底することが重要です。可能性のある解決策を見落とさないようにしたいです。

この場合、マネジャーは新製品に投資するか、別の製品に投資するか、まったく投資しないかの選択肢をあげます。

情報収集。代替案を特定したら、それぞれの代替案に関する情報を集める必要があります。この情報は、各代替案のリスクとベネフィットを評価するのに役立ちます。

情報を分析する。情報を集めたら、それを注意深く分析する必要があります。これには、各代替案のリスクとベネフィットを検討し、それらを互いに比較検討することが含まれます。

決断を下す。最後に、決断を下す必要があります。これは意思決定プロセスの中で最も難しい部分ですが、同時に最も重要な部分でもあります。組織にとって最善の利益をもたらす選択肢を選ぶ必要があります。

ドラッカーの意思決定理論は、「ゼロリスク」思考の落とし穴を避けるのに役立ちます。なぜなら、すべての選択肢を検討し、各選択肢のリスクとベネフィットを慎重に天秤にかけることを強いられるからです。また、感情や直感に基づく意思決定を避けるのにも役立ちます。

ドラッカーは著書『Efective Executive(邦題:経営者の条件)』の中で、「リスクゼロを目指す経営者は、成果ゼロを達成する」と書いています。そして、"計算されたリスクを取ることを厭わない経営者は、大きな成果を達成する "と述べています。

ドラッカーが言いたいのは、リスクを恐れるべきではないということでしょう。しかし、無謀であってはならないです。それぞれの決断のリスクとベネフィットを慎重に検討し、組織にとって最善の利益をもたらす決断を下すべきです。

ピーター・ドラッカーは、ゼネラル・モーターズ会長アルフレッド・スローンを例に、意思決定プロセスにおける反対意見の重要性を説きました。スローンは、会議で反対意見が出なければ、その決定は適切に検討されていないと考えていました。彼は、問題のあらゆる側面が検討されたことを確認するために、しばしば自分の提案に反対するよう人々に求めました。

アルフレッド・スローン氏

これは、意思決定の前に情報を集め、それを注意深く分析することの重要性を強調するドラッカーの意思決定論と一致しています。反対意見を求めることで、スローンは各決断の潜在的なリスクとベネフィットをすべて考慮するようにしていました。これにより、彼はより良い決断を下し、感情や直感に基づく決断を避けることができました。

スローンの意思決定に対するアプローチは、計算されたリスクを取る方法の良い例です。反対意見を求めることで、彼は各決断の潜在的リスクを確実に認識していたのです。しかし、彼は多少のリスクを伴う決断も厭いませんでした。それが大きな成果を上げる唯一の方法であることを知っていたからです。

意思決定のためには、正しい妥協をすることも重要です。なぜなら、大方の意思決定は、理想通りにはいかず、妥協を迫られることがほとんどだからです。しかし、妥協でも、して良いものとそうではないものがあります。

ソロモン王の裁き 半分のパンは食用になるが・・・・・・

ピーター・ドラッカーは、ソロモン王の統治を例に、意思決定において正しい妥協をすることの重要性を説きました。その物語の中で、二人の女性が赤ん坊の母親だと称してソロモンのもとを訪れました。

ソロモンは赤ん坊を半分に切り、それぞれの女性に与えるよう命じました。しかし、本当の母親は赤ん坊を助けてくれるようソロモンに懇願したが、もう一人の女性は無関心でした。ソロモンは、本当の母親は子供のために自分の利益を犠牲にすることを厭わない人だと悟ったのです。半分のパンは、食用になりますが、半分の赤ん坊は意味がありません。

しかし、多くの人は半分のパンのつもりで、半分の赤ん坊を選んで、意思決定を台無しにしてしまうのです。

この物語は、関係者全員にとって公平な妥協をすることの重要性を示しています。意思決定においては、両者が満足する中間点を見つけることがしばしば必要です。しかし、その妥協案が公平なものであり、一方の当事者に有利なものでないことを確認することが重要です。

ドラッカーは、正しい妥協をすることがリーダーの重要なスキルであると主張しました。リーダーには、さまざまな利害関係者のニーズのバランスをとり、誰にとってもうまくいく解決策を見出す能力が求められます。正しい妥協をすることで、リーダーは信頼と協力を築き、目標を達成することができます。

ドラッカーは『エフェクティブ・エグゼクティブ』の中で「リスクゼロを目指す経営者は、成果もゼロだ。計算されたリスクを取ることを厭わない経営者は、大きな成果を上げるだろう。そうして、適切な妥協を厭わない経営者は、永続的な成果を達成する」と述べています。

無論上記の例は、企業などで重要な意思決定をするためのプロセスなどを解説したものです。ただ、普段から、まともなプロセスを通じた意思決定の習慣をもたなければ、重要な意思決定などできません。

単に、テレビ等で報道された内容だけで、「ゼロリスク」思考で、処理水反対、マイナカード反対などの意思決定をする人には、正しい意思決定ができるようにはならないでしょう。

正しい意思決定のプロセスを経た上で、物事を決断する習慣をつけるべきです。そうでないと、リスクを確率で考えられない人の弱みにつけ込んで、「安全より安心」などという人たちに、操作され続けることになるでしょぅ。

処理水や、マイナカードに対して賛成する反対するにしても、正しい意思决定のプロセスを経て決定するべきです。そうして、正しい妥協をするべきです。まともな過程を通じて意思決定する習慣をもたなければ、重要な意思決定ができなくなります。

現状では、対話型AIが普及しつつあります。AIがさらに発達したにしても、最終的に意思決定するのは今でも将来でも人間が行うことになるでしょう。AIは一つの課題に関して、いくつかの答えを出せるかもしれません。そこから、答えを選択するのは人間です。AIが一つの答えを出したにしても、それを実行するしないは人間が判断することになるでしょう。最終的な意思決定こそ、人間に残された最後の領域となるでしょう。

現在ならば、正しい意思決定ができない人でも、マスコミなどで受け入れられる余地はあるでしょうが、あと10年もすれば、マスコミはますます衰退することと、AIが発展することから、それもなくなるでしょう。将来の生活を守るといった意味合いでも、多くの人が正しい意思决定のプロセスを学ぶべきと思います。


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2023年7月10日月曜日

「多臓器不全」に陥った中国経済―【私の論評】何度でも言う!中国経済の低調の真の要因は、国際金融のトリレンマ(゚д゚)!

「多臓器不全」に陥った中国経済


 2023年7月6日、米国のイエレン財務長官が中国を訪問しました。これは、約5年ぶりのこと。

 同月1日、中国は「対外関係法」を施行しました。これは、習近平政権が長年、蓄積してきた外交原則(「戦狼外交」)を合法化し、米国の「ロングアーム管轄権」(被告が当該州に所在していない場合であっても、被告がその州に最小限度の関連がある時、当該州の裁判所に裁判管轄が認められる)への対抗を目的としている。

 中国経済が低迷する中、李強首相は多くの経済学者を集めて会議を開き、経済を救うための助言を求めた。

 専門家らは、李強率いる国務院(内閣)が今の中国経済をどうすることもできないと匙を投げた。問題の根源は中南海にあり、習主席が米国に対抗しようと固執している限り、経済危機は相次いで発生し、救済策はないと分析している。

 台湾のエコノミスト、呉嘉隆によれば、現在の中国経済は、(1)不動産価格の下落、(2)地方政府の債務過多、(3)外資の受注撤回と逃避、(4)雇用悪化、と複数の危機が同時に噴出し、いわば“多臓器不全”の状況ではないかという。

 呉嘉隆が指摘した問題点を具体的に述べてみよう。

 まず、第1に、米不動産コンサルティング大手、戴徳梁行(Cushman & Wakefield)は、深圳のトップ商業オフィスビルの空室率が2023年上半期には24.5%にものぼるとの新たなレポートを発表した。

 空室率の高さから、大家はテナントを誘致するため値下げに踏み切り、今年上半期の賃料水準は、2018年同期比で28.6%も急落し、中国メディアもより悲観的な予測を発表している。

 第2に、海外メディアは中国の地方政府債務をアジアでナンバー1の金融リスクに挙げている。専門家は、同リスクが最大の地雷原であり、中南海はこの地雷原がどれほどの大きさで、いつ爆発するかわからないため、現状を「だらだら引き延ばす」しかないという。

 7月3日、公債発行データによれば、今年上半期の地方債発行額は約4兆4000億元(約86兆6800億円)だったと、中国メディア『第一財経』が報じました。前年同期の5兆3000億元(約104兆4100億円)を約17%下回ったものの、依然として高水準にある。

 このうち、新規発行が約2兆7400億元(約53兆9780億円)、借換債が約1兆6200億元(約31兆9140億円)で、全体の約37%を占め、古い借金の返済に充てられている。

 なお、今年、地方政府の債務返済額は3兆6500億元(約71兆9050億円)にのぼるとみられる。

 第3に、2021年から現在に至るまで、国際市場と技術、管理、受注、国際協力、国際分業などによる中国の輸出主導経済発展の契機は消えてしまった。

 サプライチェーンはまだ全部は移転されていないので、東莞の工場などはまだ一部残っている。問題の核心は、欧米市場からの注文が徐々に減っている点ではないか。

 注文がなくなり、労働者が解雇され、工場が倒産し、その機械設備や工場だけが残る。もし誰かがそれらを買収しなければ、スクラップとなって中国経済バブルの残骸となるだろう。
第4に、中国人力資源・社会保障部の予測によると、2023年の中国の大学卒業者は1158万人に達し、新記録を樹立するという。

 目を見張るのは、「BOSSダイレクト・リクルートメント」が第1四半期だけで1461万人の新規ユーザーを獲得し、前年同期比57.5%増と急増した。多くの人が仕事を失って転職市場に押し寄せている証とみられる。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】何度でも言う!中国経済の低調の真の要因は、国際金融のトリレンマ(゚д゚)!

私にとっては、上の記事は驚きです。多くの識者やマスコミ等は、中国経済の現象面だけを捉えていて、根本原因を述べません。国際金融のトリレンマは中国の経済政策にとって大きな制約であり、中国経済がこのような困難な状況に陥っている主なというか、最大の原因の一つです。

悪化する中国経済 AI生成画像

国際金融のトリレンマについては、このブログの読者であれば、過去に何度か説明させていただいたので、ご存知とは思いますが、ご存知ない方のために再度以下に説明します。国際金融のトリレンマとは、ある国が同時に以下の3つの政策を同時に実行することはできないという経済学の概念です。できるのは、せいぜい2つの政策です。概念とはいいながら、数学的にも経験則的にも証明されています。
  1. 固定為替レート
  2. 独立した金融政策
  3. 自由な資本移動
ある国が固定相場制を維持したいなら、独立した金融政策を持つことを諦めなければならないです。なぜなら、為替レートを固定したいのであれば、外国為替市場に介入して自国通貨を売り買いしなければならないからです。この介入は、その国の金融政策に大きな影響を与える可能性があります。

例えば、ある国が為替レートの固定を維持したいと考え、自国通貨の価値が下がり始めた場合、中央銀行は自国通貨を買って価値を下支えする必要があるかもしれないです。これによって国内の通貨供給量が増え、インフレにつながる可能性があります。

同様に、ある国が独立した金融政策を望むのであれば、為替レートを固定することをあきらめなければならないです。中央銀行が金利の上げ下げを可能にしたいのであれば、固定為替レートに縛られるわけにはいかないからです。

最後に、ある国が自由な資本移動を望むのであれば、固定為替相場制や独立した金融政策を実施す能力を放棄しなければならないです。資本が自由に出入りすれば、中央銀行は通貨価値や金利をコントロールできなくなるからです。

中国は、国際金融のトリレンマに直面している国の良い例です。

中国は、国際金融のトリレンマに直面している国の良い例です。中国は固定為替レートを採用していますが、同時に独立した金融政策を望んでいます。このことが、インフレや経済の不安定化など、中国にとって多くの問題を引き起こしています。

このトリレンマを解決するためには、中国は固定相場制を諦め返答相場制に移行するか、独立した金融政策を諦めるか、自由な資本移動を諦めるかのいずれかを選択する必要があります。これは難しい選択であり、簡単な答えはなです。

以下は、中国が考えうる解決策です。

固定相場制を放棄し、通貨価値の変動を認めるのです。そうすれば、中央銀行の金融政策の柔軟性は増すでしょうが、通貨の変動は大きくなるでしょう。

独立した金融政策を放棄し、通貨価値を米ドルなど他の通貨に連動させることです。そうすれば通貨価値は安定しますが、金融政策で経済を管理する能力も失うことになります。そうして、今の中国がまさにこの状態にあります。

資本規制を実施し、資金の出入りを制限します。これにより、中国は固定為替レートと独立した金融政策を維持することができますが、中国での企業活動はより困難になでしょう。

中国にとって最善の解決策は、国の経済目標や政治情勢など、さまざまな要因によって異なるでしょう。しかし、国際金融のトリレンマは、中国が直面する現実的な課題です。

メディアや識者は、不動産価格の下落や失業率の上昇など、中国経済問題の現象的な側面に焦点を当てることが多いです。しかし、これらの問題は、国際金融のトリレンマという深い問題の一症状に過ぎないのです。

中国がこのトリレンマから脱却する方法を見つけることができない限り、中国が経済を改善し、若者の雇用を創出することは難しいでしょう。

中国の現状を理解するためには、国際金融のトリレンマを理解することが重要です。これは複雑な問題ですが、中国の経済問題や直面している課題を理解するためには、この問題を理解することが不可欠です。

メディアや識者が国際金融のトリレンマについてほとんど言及しない理由をいくつか挙げてみましょう。

これは、複雑な問題であり、単純に説明するのが難しいです。特に、経済音痴のマスコミなどは、一つのことで頭がいっぱいになるのに、国際金融のトリレンマは、3つのことを同時に考えなければなりません。

さらに、これは新しい問題ではなく、何年も前から存在している問題ということもあるでしょう。

さらに、多くの人を耳目を引き付けるような問題ではないですし、見出しにもなりません。しかし、中国の経済問題や直面している課題を理解するためには、国際金融のトリレンマを理解することが重要だと私は思います。

それにしても、李強が集めた専門家たちが、国際金融のトリレンマについて一言も述べないのは不可思議です。問題の根源は中南海にあり、習主席が米国に対抗しようと固執している限り、経済危機は相次いで発生し、救済策はないと分析していますが、これは間違いです。


李強は専門家を集めたが、中国経済改善策はみつからなかった AI生成画像

根本要因は、国際金融のトリレンマにより独立した金融政策が実施できないことなのですから、たとえ米国が何の制裁を課さなかったとしても、中国経済はかなり落ち込んでいたでしょう。ただ、米国としては、中国がなにか事を起こした場合に、制裁するとい構えは維持しておきたいのでしょう。

イエレンもこのことは、知っていると思います。何もしなくても、中国経済は長いスパンでは、自滅すると踏んでいるでしょう。ただ、懸念しているのは、中国が変動相場制に移行するなどの大胆な改革をした場合、中国は人口が多いですから、内需だけでかなり経済を発展させることができますから、そうなれば、本当に米国の脅威になりえます。

ただ、今回の訪問でも、そのような話は一切でなかったのでしょう。イエレンとしては、様子見をしつつ、米国を毀損しない形で、効果のある中国制裁を模索していく腹でしょう。

ただ、私は習近平も、李強首相もこのことを知っているとは思います。しかし、中国が変動相場制への移行など、思い切った構造改革ができない理由は以下のことが考えられます。

政治的配慮。中国政府は、変動相場制は通貨をより不安定にし、金融市場の不安定化につながることを懸念しています。これはひいては社会不安につながりかねず、政府はこれを避けたいと考えているのでしょう。

経済的配慮。中国政府は、変動相場制によって輸出主導の成長モデルを維持することが難しくなることも懸念しているのでしょう。これは、変動相場制によって通貨が割高になり、中国の輸出競争力が低下するためです。

国内への配慮。中国政府はまた、変動相場制が経済のコントロールを失うことを懸念しているのでしょう。経済運営の重要な手段である通貨価値を政府が直接コントロールできなくなるからです。

こうした政治的、経済的、国内的な配慮に加え、中国が変動相場制に移行するために対処しなければならない現実的な課題も数多くあります。これらの課題には以下が含まれます。

強力な金融システムの必要性。変動相場制には、通貨の変動に耐えうる強力な金融システムが必要です。中国の金融システムはまだ比較的脆弱であり、これを強化する必要があります。

柔軟な労働市場の必要性。変動相場制には柔軟な労働市場も必要です。変動相場制は輸出入価格の変動につながり、それが労働需要の変動につながるからです。中国の労働市場はまだ柔軟性に欠けており、変動相場制を導入するには、より柔軟性を高める必要があります。

こうした課題を考えれば、中国が変動相場制への移行など、思い切った構造改革に踏み切れないのも理解できます。しかし、中国が長期的に成長と繁栄を続けたいのであれば、いつかは国際金融のトリレンマに対処する必要があります。これができない限り、中国は何をしようとも、弥縫策を繰り返すだけになり、何の解決にもなりません。

10年以上前の中国なら、以下のような多くの政策を実施することで、国際金融のトリレンマから逃れることができました。

過去の中国は国際金融のトリレンマから逃れることができた

為替レートの固定。中国は長年にわたり、自国通貨である人民元の価値を米ドルに対して固定してきました。これは経済を安定させ、企業にとって予測しやすくするのに役立ちました。

資本規制の実施。中国は資本規制を敷き、国内外への資金の出入りを制限しています。これは人民元の変動が経済に影響を与えるのを防ぐのに役立ちました。

独立した金融政策の利用。中国は独立した金融政策で経済を管理してきました。これによって、政府は金利やその他の金融政策ツールを調整し、経済状況に対応することができるようになりました。

こうした政策は、中国が国際金融のトリレンマから逃れ、不況から素早く立ち直るのに役立ってきました。しかし、状況は変わりつつあります。中国経済が世界経済との一体化を深めるにつれ、人民元を固定し、資本規制をかけることが難しくなっています。そのため、中国が独自の金融政策で経済を管理することが難しくなっています。

李強が集めたという専門家らは、固定相場制から変動相場制に移行するなどの、根本的な構造改革は抜きにして、当面の弥縫策を求められたのかもしれません。だとしたら、確かに匙を投げざる負えないです。

その結果、中国は多くの課題に直面しています。国際金融のトリレンマのバランスを取る方法を見つけなければ、将来的にさらなる経済の不安定化に直面することになるでしょう。これを防ぐには、金融システム改革等様々な改革をしつつ、段階的に変動相場制に移行するしかないでしょう。

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2023年7月9日日曜日

首相、中東とエネルギー協力深化 中国意識、3年半ぶり訪問―【私の論評】米国にとって原油調達先としての重要度が低下した中東は、日本にとってますます重要に(゚д゚)!

首相、中東とエネルギー協力深化 中国意識、3年半ぶり訪問

岸田首相

 岸田文雄首相は7月中旬の中東3カ国訪問を通じ、エネルギー分野の協力深化に向け、環境負荷の小さい新エネ技術を巡る連携を提起する方針を固めた。日本の首相による中東訪問は2020年1月以来、約3年半ぶり。中東で影響力を強める中国を意識し、環境関連を念頭に独自の貢献を推進する。現地での事業展開を検討している日本企業数十社の幹部らが同行する予定。複数の政府筋が6日、明らかにした。

 中東地域を巡っては、自国でシェールオイルを生産する米国にとって原油調達先としての重要度が低下。一方、中国が相対的に関与を強める構図となっている。

【私の論評】米国にとって原油調達先としての重要度が低下した中東は、日本にとってますます重要に(゚д゚)!

近年、中国の中東への関与が高まっています。

中国は世界最大の原油輸入国となり、中東はそのトップサプライヤーです。2022年、中国は中東から日量1,450万バレルの原油を輸入し、原油輸入総量の42%を占めました。

中国は中東のエネルギー・インフラに多額の投資を行っています。これには石油やガスのパイプライン、精製所、港湾などが含まれます。例えば、中国はイスラエルからヨーロッパに天然ガスを輸送する東中東パイプラインへの主要投資国です。

 中東の豪華な宮殿でくつろぐ中国人女性

中国は中東和平プロセスにより積極的になっている。2017年、中国はシリア内戦に関する中国、米国、ロシアの首脳による初の3カ国首脳会議を開催しました。中国はまた、イスラエルとパレスチナ間の調停活動にも関与しています。

中国は中東における軍事的プレゼンスを高めています。2016年、中国はアフリカの角に位置するジブチに初の海外軍事基地を開設しました。中国はまた、イランやサウジアラビアなど中東の国々と合同軍事演習を行っている。

これらは、中国の中東への関与が近年高まっている方法のほんの一部に過ぎません。経済成長が鈍化しつつある中でも中国が中東で果たす役割は、今後も拡大し続けるでしょう。

COVID-19のパンデミック、米中貿易戦争、中国自身の景気減速など、さまざまな要因により、先日このブログでも示した通り、中国の経済的プレゼンスは近年、東南アジア、中南米、アフリカで縮小しています。しかし、中東では中国の経済的プレゼンスが高まり続けています。

これにはいくつかの理由があります。第一に、中東は石油とガスの主要な供給源であり、中国は経済成長ためこれらを必要としています。第二に、中東は中国にとって戦略的に重要な地域であり、一帯一路構想(BRI)に沿っている地域でもあります。第三に、多くの中東諸国は、中国を経済成長と発展の源泉と見なしているため、中国からの投資の誘致を熱望していました。

こうした要因の結果、中東における中国の経済的プレゼンスは近年著しく高まっています。2019年、中国の対中東貿易額は2200億ドルに達し、中国は今や多くの中東諸国の最大の貿易相手国となっています。また、中国は中東に多額の投資を行っており、エネルギー、インフラ、通信などの分野で数十億ドル規模のプロジェクトを行っています。

こうした経済的プレゼンスの高まりは、中東における中国の発言力を高めています。中国はその経済的影響力を利用して、シリア内戦のような地域紛争を調停したり、BRIのような自国の利益を促進したりしてきた。中東における中国の経済的プレゼンスは拡大し続けており、今後数年間は中東でさらに重要な役割を果たすことになるでしょう。

ただ、中国は中東地域において米国に変わって安全保障体制を担うつもりはないようです。これにはいくつかの理由があります。

中東における中国の戦略的利益は、米国のそれとは異なります。中国は主に、石油とガスへのアクセスを確保し、この地域における経済的利益を促進することに関心があります。一方、米国は中東の安全保障と安定を重視しており、中東を世界的なパワー・プロジェクション(戦力投射:軍事力を準備・展開して軍事作戦を遂行すること)の重要な地域とみなしています。

中国は中東の紛争に巻き込まれることを警戒しています。中東は長い紛争の歴史を持つ不安定な地域です。中国はこうした紛争に巻き込まれることを望んでいないようです。経済的利益と国際システムにおける責任ある利害関係者としての評判を損ないかねないからです。

中国は中東で指導的役割を担う用意はないです。米国は何十年もの間、中東を支配してきました。中国はまだこの地域で指導的な役割を担う準備ができていないし、もしそうなったとしても歓迎されるかどうかもわからないです。

こうした要因の結果、中国は中東における安全保障上のプレゼンスについて、慎重かつ漸進的なアプローチを追求し続ける可能性が高いです。米国に合わせて安全保障の姿勢を変えることはないでしょうし、米国にとつて変わることも考えていないでしょう。

中東に展開する米軍の部隊が中央軍と呼ばれていますが、これはこの地域の安全保障に長年コミットしてきた証しです。「中央軍」という名称は、米国が中東を戦略的に重要な地域とみなし、その安全を確保するために多大な軍事資源をこの地域に投入することを厭わないという事実を反映しています。

中東に派遣された米軍中央軍の兵士たち AI生成画像

米国は何十年もの間、中東の安全保障に積極的に関与してきました。1990年代、米国は連合軍を率いてクウェートをイラクの占領から解放しました。2000年代に入ると、米国はイラクとアフガニスタンに侵攻し、これらの政権を打倒してこの地域の民主化を推進しようとしました。

中東における米軍のプレゼンスについては、賛否両論があります。米国はこの地域に関与しすぎであり、その介入はしばしば地域を不安定化させ、暴力につながったと主張する人もいます。また、米国は中東の安全保障に重大な関心を持っており、テロリズムと不安定化の拡大を防ぐために、この地域での米国の存在は必要だと主張する人もいます。

中東における米軍のプレゼンスについての見解がどうであれ、米国がこの地域の安全保障に長年コミットしていることは間違いないです。「中央軍」という名称は、そのコミットメントを思い起こさせるものです。

以上のような状況にある中東で、中国のプレゼンスの高まりに対して、日本はどのように対処、対抗すべきでしょうか。

中東における中国のプレゼンスの高まりに対処し、対抗するために、日本は以下の措置をとるべきです。

この地域への経済的・政治的関与を強める。日本は、貿易と援助の両面で中東への投資を増やすべきです。また、この地域の国々との政治的結びつきを強化すべきです。

中国の影響力に対抗するため、地域の他の国々と協力すべきです。日本は、中東における中国の影響力拡大に対抗するため、米国や欧州連合(EU)などの他国と協調すべきです。

この地域における自国の価値と利益を促進すべきです。日本は、中東における自国の価値と利益を促進するためにソフトパワーを活用すべきです。これには民主主義、人権、法の支配の促進が含まれます。

日本の支援で豊かになって喜ぶ中東の人々 AI生成画像

中国の強みと弱みを認識すべきです。日本は中東における中国の強みと弱みを認識する必要があります。これは、日本が中国の影響力に対抗するためのより効果的な戦略を開発するのに役立ちます。

以下は、日本が中東への関与を高めるための具体例です。

インフラ事業への投資。日本は、道路、鉄道、港湾などのインフラ・プロジェクトに投資することができます。そうすれば、中東諸国の経済が改善され、外国投資にとってより魅力的な国になるでしょう。

援助の提供。日本は、中東諸国に対して、金融支援、技術支援、人道支援などの援助を行うことができます。そうすることで、中東諸国の経済が改善され、外国からの投資がより魅力的なものとなり、中東の人々の生活を向上させ、日本への感謝の気持ちを高めることができます。

文化交流の促進。日本は日本と中東の文化交流を促進することができます。日本の芸術家、音楽家、その他の文化人を中東に派遣したり、中東の芸術家、音楽家、その他の文化人を日本に招いたりすることが考えられます。

このようなステップを踏むことで、日本は中東における中国のプレゼンスの高まりに対抗し、中東における自国の利益を守ることができます。

自国でシェールオイルを生産する米国にとって原油調達先としての重要度が低下しつつある現在、中東は日本にとってさらに重要な地域になりつつあります。

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2023年7月8日土曜日

首相、安倍氏死去1年「遺志に報いる」―【私の論評】日本はこの悲劇から立ち直り、世界の平和と民主主義の光であり続けるべき(゚д゚)!

首相、安倍氏死去1年「遺志に報いる」


 岸田文雄首相は7日、安倍晋三元首相が昨年7月、参院選の応援演説中に銃撃を受け、死去してから8日に1年を迎えることについて「この1年、安倍氏のご遺志に報いるためにも先送りできない課題に一つ一つ正面から取り組み、答えを出すという思いで職務に努めてきた。1年の節目を迎えるが、これからもこの姿勢を大事に職責を果たしたい」と述べた。官邸で記者団に答えた。

【私の論評】日本はこの悲劇から立ち直り、世界の平和と民主主義の光であり続けるべき(゚д゚)!

安倍元首相が暗殺されてから、本日でもう1年になります。時の流れる速さには驚かされます。私達は、この暗殺事件を風化させてはならないと思います。

安倍晋三元首相の暗殺は海外でも大きく報道され、多くの報道機関が衝撃と非難を表明した。以下は、暗殺事件が各国でどのように報じられたかの一例です。


米国では、暗殺事件は、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズなど、多くのアメリカの新聞で一面トップで報道されました。また、CNN、MSNBC、Fox Newsといったアメリカのテレビ・ニュース・ネットワークでも広く報道されました。
(出典 出典:ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズ、CNN、MSNBC、フォックス・ニュース)

英国でも、暗殺事件はトップニュースとなり、ガーディアン紙、テレグラフ紙、デイリー・メール紙などが一面トップで報道しました。このニュースはBBC NewsやSky Newsといったイギリスのテレビニュースでも大きく取り上げられました。
(出典:ガーディアン紙、テレグラフ紙、デイリー・メール紙、BBCニュース、スカイ・ニュース)

中国では、暗殺事件は国営メディアでも報じられたましたが、他の国に比べると控えめな論調でした。国営タブロイド紙『グローバル・タイムズ』は、暗殺を "テロ攻撃 "と呼び、"民主主義に対する暴力行為 "だと述べました。しかし、他の中国国営メディアは暗殺についてまったく触れていません。(出典:グローバル・タイムズ)

インドでは、 暗殺事件は大きなニュースとなり、『ヒンドゥー』紙や『タイムズ・オブ・インディア』紙が一面トップで報道しました。また、NDTVやTimes Nowといったインドのテレビ・ニュース・ネットワークでも大きく取り上げられました。(出典:ザ・ヒンドゥー、タイムズ・オブ・インディア、NDTV、タイムズ・ナウ)

安倍晋三暗殺は衝撃的な出来事であり、世界中で広く非難されました。このニュースは多くの国で一面のトップニュースとなり、テレビのニュースネットワークでも大きな話題となりました。暗殺は政治的暴力の危険性を再認識させるものであり、国際社会に衝撃を与えました。

安倍晋三元首相の暗殺は、日本と世界に甚大な影響を及ぼす悲劇でした。

安倍首相は日本のみならず世界でも尊敬を集めるリーダーでした。日本史上最も長く首相を務め、国家安全保障に対する強い姿勢と経済成長促進への努力で知られていました。彼の暗殺は日本にとって大きな損失であり、日本の政治状況に空白を残しました。

安倍首相の暗殺は、海外における日本のイメージにも打撃を与えました。日本は平和で安定した国として知られており、元首相の暗殺は日本の評判にとって大きな後退となりました。また、暗殺事件は日本の安全保障に疑問を投げかけ、政治的暴力の脅威に対する懸念の高まりにつながりました。

 安倍首相の暗殺はまた、日本の二極化を加速させました。安倍首相は良い意味で物議を醸す人物であり、暗殺によって政治的分裂が急激に進んだといえると思います。この二極化は、日本政府が重要な問題に対処することを困難にし、日本の民主主義の将来に対する懸念を引き起こしたといえます。

そうして、安倍首相の暗殺は、日本中に恐怖を拡散させました。暗殺は、政治的暴力が現実の脅威であることを思い起こさせ、多くの人々を不安にさせました。この恐怖は、日本が重要な課題に取り組むことを難しくしたといえます。

安倍晋三暗殺事件は、日本と世界に大きな衝撃を与えた悲劇的な出来事でした。暗殺によって日本と世界が被った損失は、今もなお続いています。

日本と世界がこのショックから立ち直り、さらに立ち上がることが重要です。そのためにできることをいくつかあげます。

安倍首相の暗殺により、わたしたちは、民主主義は脆弱であり、それを守らなければならないことを思い知らされました。日本と世界は、市民参加を促進し、自由で公正な選挙を支援し、法の支配を守ることによって、民主主義を強化すべきです。

 安倍首相の暗殺は、政治的暴力による恐ろしい行為でした。日本と世界は、過激化を防ぎ、暴力の根本原因に取り組み、加害者を裁く法執行の努力を支援することによって、政治的暴力と闘うべきです。

 安倍首相の暗殺は、日本の平和と安定にとって後退となったのは間違いありません。日本と世界は、紛争の平和的解決に努め、国家間の信頼を築き、国際機関を支援することによって、平和と安定を促進すべきです。

これらは、日本と世界が安倍首相暗殺のショックから立ち直り、さらに立ち上がるためにできることのほんの一部です。共に協力することで、私たちはより豊かな世界を築くことができるのです。


これらの一般的な措置に加え、日本は、日本の治安や政治情勢について提起されている懸念に対処するための具体的な措置を講じるべきです。具体的には、以下のような措置が考えられます。

治安部隊の強化、軍事力の増強、情報収集能力の向上、同盟国との緊密な連携により、治安部隊を強化すべきです。
 
日本は、さまざまな政党の協力を促し、市民社会組織を支援し、市民が政治プロセスに参加する機会を提供することによって、政治対話を促進すべきです。

日本は、教育や社会福祉プログラムへの投資、貧困や不平等への取り組み、寛容さを促進することにより、過激主義の根本原因に対処すべきです。

こうした措置を講じることで、日本は平和と安全保障にコミットしていること、そして強く活力ある民主主義国家であることを世界に示すことができます。


安倍晋三元首相のご遺族、ご友人の皆様に心よりお悔やみ申し上げます。安倍氏の暗殺は日本にとっても世界にとっても悲劇です。安倍氏は日本の経済と安全保障に多大な貢献をした尊敬すべき指導者でした。彼は平和と民主主義の強力な擁護者として長く記憶されることになるでしょう。

私は安倍氏暗殺のニュースを聞き、衝撃とともに深い悲しみを覚えました。一度だけお会いする機会がありましたが、安倍氏の知性、きさくな人柄、そして祖国への献身に感銘を受けました。安倍晋三氏は真の政治家であり、彼の死は日本にとっても世界にとっても大きな損失です。

日本がこの悲劇から立ち直り、世界の平和と民主主義の光であり続けることを願っています。

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2023年7月7日金曜日

岸田政権、今度は〝退職金増税〟勤続20年以上が標的!?「いまになって長期で安定した働き方否定…倫理的にも問題」識者―【私の論評】もはや財政に関する説明責任を先延ばしにしても、岸田政権の支持率は上がらない(゚д゚)!

岸田政権、今度は〝退職金増税〟勤続20年以上が標的!?「いまになって長期で安定した働き方否定…倫理的にも問題」識者

岸田首相

 岸田文雄政権は、サラリーマンの退職金への課税制度の見直しを検討している。これは、終身雇用や年功序列など日本型の雇用慣行の転換を図ることを大義名分としている。しかし、これはサラリーマンの定年後の生活に大きな打撃を与えかねない。

 現行制度では、退職金から控除額を引いた金額の2分の1に所得税と住民税が課せられる。控除額は、勤続20年以下の場合は「勤続年数×40万円」。勤続20年超になると、さらに「20年を超える勤続年数×70万円」が加わることで、支払う税金が目減りする。勤続30年の場合、退職金1500万円までは税金がかからない仕組みだ。

 政府税制調査会は、退職金の支給形態や労働市場の動向に応じて税制上も対応する必要が生じていると指摘している。しかし、これは単なる増税目的に過ぎないとの指摘もある。企業に30~40年勤め上げた50代には大きな打撃で、再就職しても所得が好転するケースはめったに考えにくいからだ。

 政府は、退職金以外の所得控除について、フリーランスなどと比べ会社員の負担軽減効果が大きい仕組みの検証も要請している。共働き世帯よりも専業主婦の世帯の方が優遇されている現状にも触れ、働き方に中立的な税制を求めている。

 終身雇用や年功序列といった日本の雇用慣行は、好況時の人手不足の際に企業のアピール材料として盛り上がり、不況時にはやり玉にあがる形が長年続いてきた。現在は増税したいがために問題視しているだけではないかという疑念もある。

 退職金課税の見直しは、サラリーマンの定年後の生活に大きな影響を与える可能性がある。政府は慎重に検討し、国民の理解を得た上で実施すべきです。

【私の論評】もはや財政に関する説明責任を先延ばしにしても、岸田政権の支持率は上がらない(゚д゚)!

長く会社に勤めている人たちに対して、長期的で安定した仕事を否定するのは倫理に反するとと考えられます。これらの労働者は、しばしば会社に多大な貢献をしており、その忠誠心と献身に報いる資格があります。

退職金課税の引き上げは、これらの労働者にとって特に不公平な負担となります。これは彼らの生活の質に大きな影響を及ぼしかねず、中には希望よりも長く働くことを余儀なくされる人さえ出てくるかもしれないです。

退職金課税でいかる人 AI生成画像

私は、政府は退職金増税計画を再考すべきだと思います。その代わりに、勤続年数にかかわらず、すべての労働者にとって税制をより公平にする方法を見つけることに焦点を当てるべきです。 以下は、政府が検討しうる具体的な提案です。 すべての労働者の標準控除額を引き上げるべきです。これにより、課税対象となる所得額が減少し、低・中所得労働者にとってはより大きな減税となります。

長期雇用者に対する新たな税額控除を設けるべきです。これにより、企業が労働者を長期雇用するための経済的インセンティブを提供するのです。

年金制度を改革し、より持続可能で公平なものにすべきです。これにより、勤続年数に関係なく、すべての労働者が確実な退職所得を得られるようになります。

これらの措置は、退職手当を引き上げるよりも公平で効果的だと考えられます。

さらに、 企業が従業員により多くの研修や能力開発の機会を提供するよう奨励すべきです。これにより、労働者の市場価値を高め、新しい仕事を見つけるチャンスを増やすことができます。

 新産業や新事業の開発を支援すべきです。これにより、労働者に新たな雇用と機会が創出されます。 これらの措置は、すべての労働者が21世紀の経済で成功するために必要なスキルと機会を確保するのに役立つでしょう。 私は、これらの措置は、雇用保険料を引き上げるよりも効果的だと思います。

これらの措置は、勤続年数に関係なく、すべての労働者が快適に引退できる公平な機会を確保するのに役立つでしょう。

増税が大好きな財務官僚 AI生成画像

岸田文雄政権は、結局増税のためにサラリーマンの退職金税制の見直しを検討しているのでしょう。政府は日本の雇用慣行を変えるために必要だと主張していますが、それは口実に過ぎないと考えれます。

岸田首相は、安倍・菅両政権合わせて増税なしで、100兆円の補正予算を組み、コロナ対策を実施したことが、現在の景気の良さの要因であること、これを実施しても、現在に至るまで何の問題も発生していません。何か問題があれば、すぐに財務省はこれを口実にし増税を言い出すでしょうが、今のところそのような動きはありません。

さらに、2022年度の一般税収がはじめて70兆円を超えるなど、税収が増えているにもかかわらず、岸田首相は、政府は財政赤字を減らすために増税を迫られているとの考えから、様々な増税策を考えているようです。

退職金への増税もその一環とみられます。これは、ほとんどの納税者に影響がないため、比較的痛みを伴わない方法とみられます。ただ、同じ会社に長く勤めている人にとっては大きな負担となります。

私は、政府はその意図に正直であるべきだと思います。増税したいのであれば、直接そうすべきです。日本の雇用慣行を変えると言って、その意図をごまかそうとしてはならないです。

政府が増税できる具体的なものをいくつか挙げてみます。

  • 退職金。これは、同じ会社に長く勤めている人への最も直接的な増税方法です。
  • キャピタルゲイン。株式や債券、その他の資産に投資している人に影響します。
  • 高額所得者の所得。これは少数の人々に影響を与えるだろうが、かなりの歳入を生み出すでしょう。
岸田首相は、いずれこれらを具体的に言い出すかもしれません。過去にこれらには、触れていますが、支持率の低下をおそれているせいか、その後は言及しなくなりました。退職金課税もそうなるでしょう。

政府はその意図を明らかにし、増税が必要だと考える理由を説明すべきです。

ただ、そうすれば、岸田政権の支持率は確実に落ちると認識しているのでしょう。だから、説明責任を果たすことなく、様々なステルス的な増税を考えたり、増税の意思決定の時期を意図的に先延ばしにしているのでしょう。

このようなことは、長続きしません。岸田首相は、増税の意図を明らかにして、説明責任を果たし、岸田政権を終焉させるか、先にあげた安倍・菅政権のときのように、増税なしで様々な施策を実行し、岸田政権を長期安定政権にするか、いずれかの道を選択すべき時が迫ってきたと思います。

政権支持率の低下 AI生成画像

これをはっきりさせないからこそ、支持率は低下しているのでしょう。私は、保守層の人は、LGBTがどうの、韓国都の関係がどうのと語っていますが(無論私もこれらには大反対)、生活に直結する増税の説明責任がないことこそが、現在岸田政権の支持率が下がっていることの最大要因だと思います。増税する旨の説明責任を果たせば、説明責任を果たしたことは評価されるでしょうが、さらに、増税することは、大きな反発を招き、岸田政権は終焉するでしょう。

岸田首相が、納得しようがしまいが、増税以外の方法で、様々な対策の実行を決断すれば、岸田政権が長期安定化する可能性が高まるのは確実だと思います。

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2023年7月6日木曜日

バイデン大統領、スウェーデンのNATO加盟に改めて全面的支持を表明 クリステション首相と会談―【私の論評】スウェーデンは、ロシアバルチック艦隊をバルト海に封じ込めることに(゚д゚)!

バイデン大統領、スウェーデンのNATO加盟に改めて全面的支持を表明 クリステション首相と会談

バイデン大統領

 NATO=北大西洋条約機構の首脳会議を来週に控え、アメリカのバイデン大統領は5日、NATO加盟の手続きを進めるスウェーデンの首相と会談し、改めて加盟への全面的な支持を表明しました。

 バイデン大統領「結論はシンプルだ。スウェーデンは我々の同盟(NATO)をより強くしてくれるし、同じ価値観を持っている」

 会談でスウェーデンのNATO加盟を全面的に支持したバイデン大統領に対し、スウェーデンのクリステション首相も、「我々はNATO全体に安全を提供するために貢献できる」と述べ、改めて加盟に意欲を示しました。

 スウェーデンのNATO加盟には全ての加盟国の承認が必要ですが、トルコとハンガリーが難色を示しています。

 こうした中、アメリカのブリンケン国務長官は5日、トルコの外相と電話で会談し、スウェーデンの加盟を支持するよう求めました。

【私の論評】スウェーデンは、ロシアバルチック艦隊をバルト海に封じ込めることに(゚д゚)!

北欧のフィンランドとスウェーデンは、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、NATOへの加盟を検討しています。フィンランドは、ソ連による1939年の冬戦争を経験しており、NATOへの加盟により、ロシアの侵攻を防ぐことができると考えています。スウェーデンも、NATOへの加盟により、軍事力を強化し、ロシアの脅威から身を守ることができると考えています。

NATOは、フィンランドとスウェーデンの加盟を歓迎しており、両国は、6月末のマドリードでのNATO首脳会議で加盟が招請される見通しです。しかし、ロシアは、NATOの北方拡大を強く反対しており、加盟手続きが完了するまでの期間に、軍事的な揺さぶりをかけてくる可能性があります。NATOは、平時のペースではない手続きの加速化が求められています。

フィンランドとスウェーデンのNATOへの加盟は、ヨーロッパの安全保障体制に大きな影響を与える可能性があります。NATOは、ロシアの脅威に対抗するための抑止力として機能していますが、フィンランドとスウェーデンの加盟により、NATOの軍事力はさらに強化されることになります。これは、ロシアにとって大きな脅威となるでしょう。

フィンランドとスウェーデンのNATOへの加盟は、ロシアとNATOの対立をさらに深める可能性があります。ロシアは、NATOの北方拡大を受け入れることはなく、加盟手続きが完了した場合、ロシアは軍事的な対抗措置をとる可能性もあります。NATOとロシアの対立がエスカレートした場合、ヨーロッパの安全保障は大きな危機に直面する可能性があります。


スウェーデンは潜水艦の建造と運用に長い歴史があり、その対潜水艦戦(Anti Submarine Warefare ASW)能力は世界でもトップクラスとされています。

スウェーデン海軍は現在3隻のゴトランド級潜水艦を運用しており、このうち2隻は、改修されてさらに強力になっています。これらは世界で最も先進的な通常型潜水艦のひとつです。さらにスウェーデンは最新型の潜水艦「A26」の開発も進めています。これらの潜水艦は、最先端のソナーシステム、魚雷、ミサイルを装備している。また、非常に静かなため、探知が難しいです。

スゥエーデンのゴトランド型潜水艦

2004年、ゴトランド級は対潜戦の研究のために当初1年間の予定で米海軍へ貸与されました 2006年、貸与は12ヶ月延長されました。

2005年の演習でゴトランドは空母ロナルド・レーガンと共に複数の写真に収まっています。米海軍はこの演習で通常動力潜水艦に対する作戦法を経験しました。

2007年7月、ゴトランドはサンディエゴからスウェーデンへ回航して返却されました。

スウェーデン海軍は潜水艦のほかにも、水上艦、航空機、センサーなど、数多くのASW資産を保有しています。これらの資産は、潜水艦を探知、追跡、破壊するために使用されます。

スウェーデンのASW能力は、その立地条件から特に重要です。スウェーデンは戦略的に重要な水路であるバルト海に位置しています。バルト海にはロシアの潜水艦も多く、スウェーデンにとって潜在的な脅威となっています。

その戦略的位置と高度なASW能力の結果、スウェーデンはASW大国とみなされています。スウェーデン海軍は定期的にNATO演習に参加しており、そのASW能力はNATO同盟国から高く評価されています

以下はスウェーデンのASW能力についての補足です。

スウェーデン海軍にはASW専門飛行隊があり、ASW資産の訓練と配備を担当している。まて、ASW専用射場を含む多くのASW訓練施設を有している。スウェーデン海軍は定期的にバルト海でASW演習を行っています。

スウェーデン海軍は、ASW作戦に特化した多国籍軍であるNATOの常設海軍部隊(STANAVFOR)のメンバーです。

全体として、スウェーデンは先進技術、訓練、経験の組み合わせに基づく強力なASW能力を有している。この能力は、バルト海におけるスウェーデンの安全を守るために不可欠です。

もしスウェーデンがNATOに加盟すれば、これらのASW能力を同盟にもたらすことになります。これにより、ロシアの攻撃からバルト海を防衛するNATOの能力は大幅に強化されることになります。ロシアはこのことを認識しており、スウェーデンのNATO加盟の可能性を批判してきた理由のひとつでもあります。

2014年、ロシアのプーチン大統領は、スウェーデンのNATO加盟はバルト海地域の「不安定化要因」になると述べました。また、"一定の報復措置を取らざるを得なくなる "とも述べました。

ロシアがスウェーデンのASW能力を脅威と見ていることは明らかです。スウェーデンがNATOに加盟すれば、ロシアがバルト海に力を投射することがより困難になります。ロシアがスウェーデンのNATO加盟に批判的なのはこのためです。

スウェーデンのASW能力は、西側諸国とロシアとの間で紛争が発生した場合、NATOにとって重要な資産になることでしょう。バルト海は比較的閉鎖的な水域であり、ASW作戦に理想的な場所である。スウェーデンには先に述べたようにステルス性の高い通常型潜水艦を持っいますし、ヴィスビー級コルベットは、ステルス性が高く発見されにくい設計になっているため、この種の戦争に特に適しています。

ヴィスビー級コルベット

ASW能力に加えて、スウェーデンはバルト海での紛争で貴重な資産を多数保有しています。長距離哨戒機を多数保有する空軍や、沿岸防衛のための十分な装備と訓練を備えた陸上部隊などです。

もしスウェーデンがNATOに加盟すれば、ロシアの攻撃からバルト海を防衛する同盟の能力が大幅に強化されます。スウェーデンのASW能力とNATOのその他の資産の組み合わせは、ロシアがバルト海に力を投射することを非常に困難にするでしょう。

簡単にいうと、ロシア海軍はバルト海に封じ込められることになるでしょう。

もちろん、欧米列強とロシアが衝突した場合に何が起こるかを断言することはできないです。しかし、スウェーデンがNATOに加盟することで、ロシアがバルト海で目的を達成することはより困難になるでしょう。


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