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2019年2月11日月曜日

韓国、通貨危機への警戒感高まる…日本と米国は支援せず、北朝鮮と経済逆転も―【私の論評】日米にとってどの程度韓国を飼い殺しにするかが重要な課題(゚д゚)!

韓国、通貨危機への警戒感高まる…日本と米国は支援せず、北朝鮮と経済逆転も

軍事境界線を越え、北朝鮮側に入る金正恩氏(左)と文在寅氏=4月27日、板門店

米中貿易戦争で中国経済はおろか、徐々に日本経済への影響も懸念され始めているが、日本よりも先に韓国経済が大きなダメージを被っており、1997年に韓国を襲った通貨危機再来への警戒感が高まっている。

 かつて韓国の経済危機では、米国や日本が助けの手を差し伸べたが、文在寅政権に対して日米両政府は抜きがたい不信感を抱いているという構図は、97年の通貨危機の際の日米韓3国関係と同じ状況だけに、韓国が経済的に没落するなか、今月27、28日の米朝首脳会談の結果次第では、米国の経済支援を受けた北朝鮮が経済的に韓国を凌駕する可能性も出てきている。

悪化する日韓・米韓関係

 韓国産業通商資源部が今月1日に発表した2019年1月の貿易統計(通関ベース)によると、輸出は463.5億ドルで前年同月比5.8%減となった。輸出の20%前後を担う半導体の市況悪化に加え、米中貿易戦争のあおりを受けて総輸出の4分の1を占める中国向けの輸出額減少が大きな要因だ。

 しかも、輸出の減少は2カ月連続だけに、マーケットでは再び通貨危機への懸念が高まっているようだ。韓国は97年の通貨危機以外でも、2008年の貿易赤字の際も経済危機が囁かれたほか、11年にも輸出不振と欧州の金融危機の2つの大きな要因が重なり、通貨危機に陥りかけている。

 しかし、韓国が08年と11年に通貨危機を回避できたのは、日米両国が韓国にドルを融通したことが大きい。逆に97年の通貨危機では、「米韓関係が悪化していたため、米国は日本にもドルを貸さないよう指示し、韓国はIMF(国際通貨基金)に救済されるという不名誉を被った」と元日本経済新聞の鈴置高史が著書『米韓同盟消滅』(新潮新書)のなかで指摘している。

 今回も日米の支援は期待しにくい。なぜならば、日韓、米韓関係が悪化しているからだ。
 
 米国のトランプ大統領は韓国の文大統領が北朝鮮の核放棄を待たずに経済支援を急ごうとする姿勢を強く批判しており、米政権内では場合によっては米韓同盟の打ち切りを主張する声も出ているほどだ。
 
 また、日本は米国以上に文政権に強い不信感を抱いているが、これは言わずもがなだろう。文氏は1月の年頭の記者会見で、徴用工をめぐり韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた判決について、「徴用工問題は韓国がつくったものではなく、不幸な歴史のため生じた問題」などと断じており、1965年の日韓請求権協定を度外視しており、まさに一国の大統領が2国間協定を無視するという極めて無責任な態度を示したからだ。

 さらに、ここにきて韓国の文喜相国会議長が米メディア「ブルームバーグ通信」のインタビューで、従軍慰安婦問題に関して「日本を代表する首相か、あるいは間もなく退位する天皇が(謝罪するのが)望ましいと思う」と述べたうえで、「(天皇は)戦争犯罪の主犯の息子ではないか。その方が一度(慰安婦だった)おばあさんたちの手を握って『心から申し訳なかった』とひとこと言えば(慰安婦問題による確執は)すっきり解消されるだろう」と指摘したのだ。まったく日本の国民感情を理解していない暴言といえるだろう。

 日本の自民党内では駐韓大使の一時帰国や訪日ビザの免除停止、韓国製品の輸入関税引き上げ、日本にある韓国企業の資産差し押さえなどの対抗措置を求める声も出ているのだが、さまざまな制限があり、実行は難しい。

 現在、文政権の支持率は低迷しており、その最大の原因が景気低迷だ。さらに先にも指摘したように、通貨危機の可能性も出ている。
 
 だが、日本国民の対韓イメージは確実に悪化しており、韓国が通貨危機に陥ろうが、かつてのように支援の手を差し伸べようとは思わないだろう。それはトランプ米政権も同じだ。

北朝鮮の経済成長

 トランプ氏は今月27、28日にベトナムのハノイで、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談を行う予定で、自身のツィッターで「北朝鮮は金委員長のリーダーシップのもとで経済大国になるだろう。北朝鮮は経済のロケットになるだろう」と書き込んだ。これは会談が順調に進めば、米国が北朝鮮への経済支援を進める可能性を示唆したものとも受け取れよう。

 そうなれば、韓国が景気低迷状態をさまよっているうちに、北朝鮮の経済成長が進展すれば、南北経済の逆転現象が現実のものとなることも考えられる。それは、社会主義国の中国、ベトナムが急成長をした例からも否定できない。そして、もし逆転が現実のものとなれば、北朝鮮による韓国併呑もまったく可能性がないとはいえないだろう。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

【私の論評】日米にとってどの程度韓国を飼い殺しにするかが課題(゚д゚)!

海上自衛隊のP1哨戒機が韓国海軍の駆逐艦に火器管制用レーダーを照射された問題は、日本国民を激怒させただけではなく、米国との関係悪化にもとどめを刺し「韓国崩壊」を決定づけました。

2015年に起こった、リッパート駐韓米国大使襲撃事件は、あと1~2センチ傷がずれていれば死に至ったかもしれないという深刻なものであり、入院先の病院で大使は「これは私個人への攻撃ではなく米国への攻撃である」と語りました。

2015年のリッパート駐韓米国大使襲撃事件

そもそも、この事件の犯人は10年に日本の駐韓大使だった重家俊範氏襲撃事件で捕まっていました。しかし、同行していた女性が負傷したにも関わらず、収監されずに野放しにされました。韓国政府(裁判所)の責任です。

当時はオバマ政権であったため、穏便な処理が行われましたが、今回のレーダー照射事件はトランプ政権下での事件です。

少なくとも安倍晋三首相とトランプ大統領のコンビになってからは、日本は米国にとっての最重要同盟国の一つであり、ドイツや、マクロン政権になってから急速に関係が悪化しているフランスよりも戦略的に重要です。

その米国の最重要同盟国に「攻撃」を仕掛けたのですから、米国と韓国の同盟関係は事実上終了したといえまう。「現場の暴走」と思われますが、その背景には北朝鮮あるいは共産主義者の工作活動があるはずです。日米韓の絆に亀裂が入って一番得をするのは共産主義国家です。

この韓国の悲惨な様子を見ていると、ベトナム戦争時の南ベトナム・サイゴン政権の姿と重なります。米国がベトナム戦争で「負けた」理由はいくつかあります。

サイゴン政権の腐敗・堕落ぶりが激しく、米国の若者の命を犠牲にして助けることが疑問視されただけではなく、サイゴン政権よりは共産主義・北ベトナムの方がまだましだという南ベトナム国民が多数を占めたのです。彼らの破壊工作活動によって内部から崩壊せざるを得なかったのです。

韓国で北朝鮮を賛美する人々が多いのも、自国の大統領が代わるたびに敵対勢力によって投獄・処刑されるような南米の軍事政権と大して違わない国情があります。

さらに、米国の機密情報が韓国を通じて北朝鮮にダダ漏れであったり、平気で制裁破りをしたりなど、米国の若者の血を流して守るに値しない国とみられるのは当然といえば当然です。

それよりも、北朝鮮の「悪の帝国」である金王朝の方が、きちんと仕込めば共産主義中国に対する番犬としては役に立つと米国は考えるでしょう。番犬は獰猛(どうもう)で主人に忠実なほうが役に立つし、実際米国は、南米や中東では、民主主義政権よりも独裁政権を飼いならすことが多いです。

それに以前からこのブログにも掲載しているように、韓国は元々中国に従属しようとする国ですが、北朝鮮はあくまで中国からの独立を希求しています。これは、様々な筋から明らかです。

そうして、結果として北朝鮮と北朝鮮の核が、朝鮮半島全体に中国の影響が浸透するのを防いでいます。これは逆に考えると、良く理解できます。北がもし、核を開発していなかったとしたらどうなっていたでしょう。

おそらく、朝鮮半島に対する中国の浸透は今よりももっと深く広範囲に行われ、今頃北朝鮮は中国の傀儡政権が樹立されていたかもしれません。金一族は抹殺されていたかもしれません。そうして、もうすでに朝鮮半島は中国の自治区か省になっていたかもしれません。

「ムスダン」発射直後

しかし、北朝鮮があることで、朝鮮半島はそうならないで現在に至っているのです。これを考えると、北朝鮮がすぐに核を全部放棄することは考えられません。

であれば、米国が韓国はあきらめて、北を中国に対する番犬にする可能性は十分あります。ただし、北朝鮮は人権問題が深刻であり、金正恩は権力を掌握するため、叔父や血の繋がった兄を殺すということまでしています。

その意味では、北朝鮮は番犬どろこから、猛獣です。この猛獣を使いこなすのは、容易なことではありません。トランプ大統領はそれこそ、猛獣使いにならなければ、北朝鮮を容易に従わせることはできないでしょう。

しかし、それでも、米国が対中経済冷戦を挑んでいる最中にも、中国に従属する韓国は、米国にとっては全く当てにならない存在です。それでも、韓国が存在する事自体は、日米にとって有利なことにはかわりありません。

ただし、韓国自体はあくまで、中国に従属しようとしています。しかし、韓国のすぐ北には、中国に対する敵愾心をむき出しの北朝鮮が控えていて、中国はなかなか韓国に対して直接影響力を及ぼすことはできません。最早、韓国は安全保障上では日米にとって単なる空地に過ぎなくなっています。

北朝鮮側も、あくまで中国従属しようとする韓国や文在寅を心の底では軽蔑しているでしょう。ただし、制裁を受けている現在、韓国を自分たちにとって都合の良いように利用しているだけです。

しかし、いずれサイゴンのようにソウルが北朝鮮によって陥落させられた後、当然生まれるであろう難民は、日本にとって脅威となるでしょう。日本を含めた世界中の国々には必ず一定割合の犯罪者が存在し、彼らも当然、というよりは、たぶん善良な人々よりも我先に、日本にやってくるかもしれません。

「韓国が崩壊したのは日本のせいだ!」と主張し暴れる人も出てくるかもしれないです。

韓国の人口は約5000万人であり、その1%でも50万人、5%なら250万人である。大挙して日本に押し寄せてきた際の対応策を真剣に考えるべきです。

やはり、一番良いのは、韓国が日米にとって安全保障上の空地になっていることが最上だと思われます。北をうまく御して、韓国は生かさず殺さず程度にして空地を維持することが、今の日米にとっては最上の戦略だといえます。

日本に関しては、米朝交渉で米国に到達するICBMの撤去が先に行われ、短・中距離核ミサイルの撤去が廃棄されるのが、後回しされるととんでもないことなると騒ぐ人もいますが、こういう人はすでに中国の核ミサイルが日本を照準にしていることを忘れています。

中国の核ミサイルは日本を照準にしている

いずれにせよ、今更ながら北朝鮮の核が恐ろしいなら、中国の核もその数倍恐ろしいのであり、日本も何らかの形でこれに対処すべきなのです。これについては、以前もこのブログで触れています。以下にそこから引用します。
ドイツには、昔から米国が置いている「戦術」核弾頭が今でも数十発ありますが、これはDual Keyと言って、実戦に使用する時にはドイツ、米国両国政府の合意が必要になっています。ドイツ政府も、これの使用を積極的に米国に発議できるようになっているのです。そして米政府はドイツ政府の了解なしには、これを使用できないです。日本もこのような権利を得ることを検討すべきです。 
そして将来的には、日本も核兵器を開発する可能性の余地を残すのです。その「可能性」自体が抑止力になります。インドが、核ミサイルを保有していながら米国と原子力協力協定を結んでいることを念頭に置くべきです。
このようなことを検討する事自体が、中国や北朝鮮に対する牽制になります。それとともに、日米にとって、どの程度に韓国を飼い殺しにするかが重要な課題となります。言葉はエゲツないですが、そう仕向けたのは韓国ですから、これは致し方ないです。

現在、中国は米国の経済冷戦を真っ向から受けているので、韓国を支援することはほとんどできないでしょう。そうなると、かなり低い水準で良いのかもしれません。

冒頭の記事では、北朝鮮と経済逆転とありますが、これもあながち有りえないことではないかもしれません。実は、大東亜戦争直後からしばらくは、北朝鮮のほうが経済は良かったということがあります。

日本の統治時代に、北には様々な産業があり、それを北は受け継いだのですが、南のほうはさしたる産業もなく農業地帯でした。韓国のほうが経済が良くなったのは、1960年代に日本の支援で、韓国が漢江の奇跡を成し遂げ、経済的に発展してしばらくしてからの1970年代に入ってからです。日米の手によってこれを元に戻すのは意外とたやすいのかもしれません。

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2019年1月18日金曜日

習近平が大々的に発表した「包括的な台湾政策」―【私の論評】今年は日米が韓国から台湾に大きく軸足を移す年になる(゚д゚)!

習近平が大々的に発表した「包括的な台湾政策」

岡崎研究所 

 中国の習近平国家主席は1月2日、台湾政策に関する包括的な政策演説を行ない、台湾への「一国二制度」導入を含む5項目の方針を示した。演説の主要点は以下の通り。


 中国は統一されなければならないし、されることになるだろう。中国の統一は、70年の両岸関係の歴史の帰結であり、中華民族の偉大な復興にとり不可欠である。

 平和的な国家統一に向けた両岸の共同的な取り組みを求める。長年の懸案を世代から世代へと先送りにするわけにはいかない。

 「平和的統一」と「一国二制度」の原則は、再統一を実現するための最善のアプローチである。再統一が実現された後、中国の国家主権が確保されることを前提に、台湾の安全、発展、社会制度、生活様式は十分に尊重され、台湾同胞の私有財産、信仰、正当な権利、利益は十分に保護される。

 我々は同じ家族である。中国人は中国人と戦わない。しかし、軍事力の行使を放棄することは約束しない。必要なあらゆる選択肢を留保する。こうした措置の対象となるのは、外部勢力による干渉、ごく少数の台湾独立を掲げる分離主義者とその行動だけである。

 我々は、中台の経済協力を進める。社会的インフラを連結し、エネルギーの共同利用を行う。

 台湾の独立は歴史の趨勢に反しており行き詰まることになろう。両岸の平和的で安定的な発展、両岸関係の進展は時流に沿っており、誰にも、いかなる勢力にも止められない。

 台湾問題は中国の内政問題であり、いかなる外部の干渉も許さない。中国人の問題は中国人によって解決されるべきである。台湾問題は中国の核心的利益と中国人の国家的紐帯に関することである。

 中国の再統一はいかなる国の正当な利益をも害せず、他国にさらなる発展の機会を与えるものである。

 今回の演説は、1979年1月1日に全人代常任委員会が「台湾同胞に告げる書」を発表して40周年という節目の記念式典に行われたものである。「台湾同胞に告げる書」、1995年の江沢民による台湾政策演説、2008年の胡錦涛による台湾政策演説、に続く包括的演説である。習近平が提示した5つの原則は、(1)平和的統一、(2)一国二制度の導入、(3)一つの中国、(4)中台経済の融合、(5)同胞意識の促進、である。これら一つ一つは目新しいものではないが、包括的な台湾政策として大々的に発表したことに意味がある。各項目を細かく見ていくと、平和的統一と言っても、武力行使を辞さないと明言したり、一国二制度についても、統一後も台湾人の権利を十分に尊重するとしつつ、中国の国家主権が確保されることを前提条件とするなどしている。

 5つの原則のうち「一国二制度」は、香港での形骸化に鑑み、台湾人を警戒させる可能性はあるかもしれない。「中台経済の融合」、「統一意識の促進」は、経済的取り込み、人的交流、蔡英文政権の頭越しに行われる台湾の地方政府への接触などにより、ますます強化されることになろう。習近平の演説は、蔡英文政権を相手にしない姿勢を明確にし、同政権への圧力強化、国民党への後押しを狙っていると思われる。

 習近平演説は、台湾側、特に蔡英文政権としては、当然、強く反発するような内容である。蔡英文総統は、1月2日には、「我々は『1992コンセンサス』(注:中国側は「一つの中国」「一国二制度」と解釈)を決して認めない。台湾人の大多数は一国二制度に反対している」、「我々は両岸問題につき交渉する用意はあるが、台湾は民主主義であるから、台湾人の授権と監視を受けたものでなければならず、両岸の政府同士の交渉でなければならない」、「中国は台湾が人口2300万の民主国家であるという現実を直視し、台湾の自由と民主主義を否定すべきでない、両岸の相違を台湾人を服従させようというのではなく平等に扱い平和的に対処すべきである」などとする談話を発表している。

「一国二制度」は受け入れら内と表明する蔡英文総統

 蔡英文総統は、さらに1月5日に外国の記者とのレセプションで、台湾は民主主義を実施し国際的価値を共有してきたとして、台湾が中国の圧力に直面している状況に対して国際社会が何も言わず支援しなければ、「次はどの国が同じような目に遭うだろうか」と、台湾への支援を要請した。この呼びかけは、蔡英文の最近の決まり文句であるが、真理をついている。

 習近平が今回のような包括的演説をした以上、中国の台湾政策は圧力を一層増すことになろう。台湾人、そして国際社会の対応が試されている。米国の台湾支持の姿勢が続くか、さらには強化されるか、注目される。

【私の論評】今年は日米が韓国から台湾に大きく軸足を移す年になる(゚д゚)!

日本は安倍総理がリードして、対中国封じ込め政策を実行してきました。一方米国は対中国冷戦Ⅱを挑んでいます。それによって、中国経済がかなり悪影響を受けていることはこのブログにも掲載しました。

米国は昨年3月に台湾を中国の好きにさせない強い意思を示しています。それは、「台湾旅行法」の発効です。これについては、このブログにも掲載しことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【トランプ政権】米で「台湾旅行法」成立、政府高官らの相互訪問に道 中国の反発必至―【私の論評】アジアの脅威は北朝鮮だけではなく台湾を巡る米中の対立もあり(゚д゚)!
トランプ大統領

  米ホワイトハウスによるとトランプ大統領は16日(ブログ管理人注:昨年3月16日)、米国と台湾の閣僚や政府高官の相互訪問の活発化を目的とした超党派の「台湾旅行法案」に署名し、同法は成立した。 
 同法は、閣僚級の安全保障関連の高官や将官、行政機関職員など全ての地位の米政府当局者が台湾に渡航し、台湾側の同等の役職の者と会談することや、台湾高官が米国に入国し、国防総省や国務省を含む当局者と会談することを認めることを定めている。 
 また、台湾の実質的な在米大使館である台北経済文化代表処などの台湾の組織や団体に米国内での経済活動を奨励する条項も盛り込まれている。 
 米国は1979年の米台断交と台湾関係法の成立後、米台高官の相互訪問を自主的に制限してきた。台湾旅行法の成立で、トランプ大統領の訪台や蔡英文総統のワシントン訪問が理屈の上では可能になる。
 法案は1月9日に下院を通過し、2月28日に上院で全会一致で可決された。今月16日がトランプ氏が法案に署名するかどうかを決める期限となっていた。
 米国務省は、台湾旅行法が米台関係の変化を意味するものではないと説明しているが、台湾を不可分の領土とみなす中国が米台の接近に危機感を抱き、「一つの中国」原則に反するとの理由で猛反発してくるのは確実だ。
さて、この記事だけだとあまりピンと来ない方もいらしゃると思いますので、「台湾旅行法」について若干説明を加えます。

米中国交樹立以降も台湾の国防の後ろ盾であり続ける米国ですが、しかしその一方で、台湾を中国領土の一部だとする「一つの中国」原則を掲げる中国への配慮により、米台政府高官の相互訪問を自主規制してきました。

たとえば台湾の総統、副総統、行政院長(首相)、外交部長(外相)、国防部長(国防相)のワシントン訪問を許さず、米国の経済、文化部門以外の高官の台湾訪問も差し控えて来たのですが、トランプ大統領は3月16日、台湾旅行法案に署名し、これまでの台湾泣かせの規制を撤廃したのです。

同法は「あらゆるレベルの米政府当局者が台湾を訪問し、相応の台湾政府当局者と会談すること」や「台湾の高官が米国に入国し、尊重を受けながら国務省や国防総省及びその他の政府当局者と会談すること」を認めるとし、さらには「駐米台北代表処(大使館に相当)などが米国で公式に活動すること」も奨励するとも規定しています。

この法律の施行により、中国との国交樹立以降、自粛されてきた米台高官の相互訪問を解禁し、ドナルド・トランプ大統領の台湾訪問、蔡氏のワシントン訪問も可能にしたとの宣言に等しいです。

この法律の成立について台湾紙自由時報は当時、「中国の台湾への脅威が日増しに拡大するのに伴い、台米関係も深まり行く趨勢だ。トランプ大統領の署名は台米関係正常化への重要な一歩である」「台湾海峡両岸の軍事バランスは崩れつつある。台湾が第一列島線のアキレス腱なれば、周辺情勢も不穏になる。台米の協力関係の強化は待ったなしだ」」と論評していました。

実は2000年にも下院は、台湾安全強化法案なるものを可決したことがありました。1995年、1996年の台湾海峡におけるミサイル演習で、中国が従来になく台湾侵略の野心を剥き出しにしたのを受けてのものでしたが、しかし当時のクリントン政権は中国の反撥と更なる緊張の高まりを恐れ、上院に圧力を掛けて法案を審議保留へと追いやりました。ところが今回の法案は、下院では圧倒的多数(発声投票)で、上院では全会一致で可決され、大統領の署名も得られたのです。

もちろんこれを受け中国は、一中原則違反だなどと大騒ぎしました。同法案がまず下院で可決された翌1月十日、人民日報系の環球時報は「台湾旅行法は台湾破壊法だ」と題する社説を掲げ、次のような恫喝宣伝を行いました。
「中国はすでに強大なパワーとなっており、台湾海峡での対峙では、さまざまな手段と優勢を擁している。もし米国がホワイトハウスで台湾総統のためにレッドカーペットを敷くというなら、それはストレートに台湾を害するだけである。中国は必ず公館相互訪問を行う台米に代価を支払わせることとなろう」
「台湾旅行法の規定が台湾に適用されれば、必ず大陸は台湾問題解決のための決断を下すことになり、台湾海峡情勢は新たな段階に入ることになろう」
そして同法成立の翌3月17日には、外交部報道官が次のようなコメントを発し、米国に警告を発しました。
「一中原則と中米間の三つのコミュニケに違反し、台湾独立勢力に早まったシグナルを送るものだ。我々はこれに断固反対する。米国に対しては、米台当局間の交流と実質的関係のレベルアップを停止し、慎重、妥当に台湾関連の問題を処理し、中米関係と台湾海峡の平和と安定に厳重な損害を与えないよう求める」
同日、国防部報道官も「台湾は中国の一部で台湾問題は中国の内政に属する」として米側の「一中原則」違反だと批判。「米台当局間の交流停止や米台軍事連絡の停止、台湾への武器売却の停止を行い、中米両国両軍の関係発展の雰囲気に重大な損害を与えないよう求める」とコメントしました。

当初、中国の猛反発がありますが、それも「貿易戦争」でのトランプ氏の攻勢により押さえ込まれた格好です。
中国は「一中原則違反」だと中国は噛み付ついていますが、そもそもこれは事実捏造の印象操作です。

そもそも米国はこれまで一中原則への配慮は見せても、それを承認(台湾を中国の一部と承認)したことは一度もありません。「三つのコミュニケ(「上海コミュニケ (ニクソン米大統領の訪中に関する米中共同声明)」でも、そのような表明はありません。

米国はいよいよ、中国がアジア太平洋地域に及ぼす脅威の増大を前に、いつまでも一中なるフィクションに附き合いながら、台湾との関係強化を遠慮し続けることができなくなってきたのです。つまり、中国の軍事大国化は、もはや放置できないレベルにまで達してしまっているというわけです。

日本もまた一中原則を受け入れたことはないですが、それでも中国との国交樹立後は、あの国への配慮で台湾の総統、副総統、行政院長、外交部長、国防部長の訪日は遠慮してもらっているし、政府高官の公務での台湾訪問も自粛し続けています(一昨年副大臣が初めて訪台しましたが)。

一中原則に反対する台湾の人々

台湾と共に第一列島線上の国である日本のこうした弱腰姿勢もまた、今後は列島線のアキレス腱となりかねないです。

ここは勇気を出して米国に倣い、無用かつ不条理な自主規制は撤廃するなどで、台湾との関係強化を図るべきです。

日本も、米国と同じような「台湾旅行法」などを制定して、 台湾との交流を深め、いずれ日米英仏などの艦艇が頻繁に台湾の港に寄港する、航空機が台湾の空港に寄港するなどのことをすべきです。

また、日米ともに、韓国に対する支援などはそこそこにして、台湾に対する支援を強化すべきです。

台湾をいずれ、強力なシーパワー国に成長させるべきです。トランプ大統領は韓国にはほとんど興味がないようですし、日本としてはもう昨年で韓国を相手にしても時間と労力の無駄であることがはっきりました。日本としては、韓国の異常ぶりを国際社会に晒し続けるにしても、もう韓国には一切深入りすべきではありません。今年は、日米両国とも韓国から台湾に軸足を移す年になるでしょう。そのほうが日米としては、対中封じ込めに余程効果を期待できます。

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2019年1月5日土曜日

中国は「月の裏側」の着陸探査で世界をリードする―【私の論評】中国が、ジオン公国妄想を夢見て月面の裏の探査活動を続けるなら日米にとって歓迎すべきこと(゚д゚)!


地球の前を横切るの「裏の顔」を、NASAの宇宙
天気観測衛星「DSCOVR(ディスカヴァー)」が捉えた様子

世界で初めての裏側への着陸を目指していた中国の無人月探査機「嫦娥4号」が、着陸に成功したと発表された。これから探査ミッションが本格化することになるが、中国の最終的な目標は、将来の有人宇宙探査に利用する月面基地の建設にある。まだ知られざる月の裏側の探索において、中国が世界をリードし始めた。

月の裏側は、実は「ダークサイド」ではない。それがわかっているのは月面車だけでなく、月を周回するアポロのカプセルに搭乗した人間たちも多くの写真を撮ってきたからだ。しかし、間もなくわれわれは、これまで地球から詳しく観測することができなかった月の裏面を見られるようになるだろう。

それは、12月8日に打ち上げられた中国の月探査機「嫦娥4号」のおかげだ。嫦娥4号は、四川省にある西昌衛星発射センターから、「長征3号B」ロケットによって打ち上げられた[編註:記事初出は2018年12月だが、「嫦娥4号」は1月3日夜に月の裏側に到着したことが発表された]。

ランダー(着陸船)と月面車を搭載したこの月探査機は、地球に最も近く忠実に寄り添ってくれる仲間である月の、まだ誰も足を(あるいはタイヤを)踏み入れたことのない裏側に着陸する初めての探査機となる。月面車が周囲を巡回し、月の表面や、表面に近い層を調査することになるのだ。

嫦娥4号は、27日間にわたって探検に挑戦する予定だ。月面に着陸する宇宙船としては、13年の「嫦娥3号」に続いて中国で2機目となる。嫦娥3号の月面着陸は、1976年に月面に着陸してサンプルリターンのミッションを果たしたソ連の「ルナ24号」以来だった。

最終目標は月面基地の建設

今回のミッションの目的は各種の実験を行うことだが、中国の最終的な計画は、将来の有人宇宙探査に利用するための月面基地の建設だ。ただし中国国家航天局(CNSA)は、今回のミッションがその実現に向けた計画を先導するものであるかどうかについては明らかにしていない。

一方でこのミッションは、国際的な月探査科学界で複雑な感情をあおる可能性がある。12年にパリ地球物理研究所のマルク・ウィチョレックは欧州宇宙機関(ESA)に対して、月の裏側を探査する「Farside Explorer」計画を主張したが却下された。

セントルイス・ワシントン大学のブラッド・ジョリフも、17年に「MoonRise」と呼ばれるミッションを米航空宇宙局(NASA)向けに提案したが、残念ながら採用されなかった。

「NASAとESAが選択しなかったミッションを中国の研究者たちが実現することについては、嬉しさ半分悔しさ半分という思い、あるいはもっと強い感情があるかもしれません」と語るのは、テネシー大学地球惑星科学科のブラッド・トムソンだ。

月面の巨大クレーターに着陸

軌道上を回る人工衛星からの遠距離観測によると、月の裏側の表面は表側よりもはるかに古いもので、衝突クレーターの数も多く、地殻も厚い。表側と裏側で状況が異なる理由は謎だ。嫦娥4号の月面車によって、何らかの手がかりが見つかる可能性がある。

ブラウン大学の地質科学教授ジェームズ・ヘッドは、「ランダーによるミッションが行われるたびに、多くの新しい驚きが生まれます。月のどの部分を訪れても、何らかの新しい、根本的なことを学ぶことができます」と話す。

前回のミッション(嫦娥3号)で13年12月に月面に軟着陸した「玉兔号」は、予定されていた3カ月よりもはるかに長い31カ月間にわたってデータを送り続けた。16年7月31日に稼働を停止したが、月の表側に永遠に留まることになっている。

嫦娥4号は、直径180kmのクレーター「フォン・カルマン」の内側に着陸する予定とされていた。ESAの月探査用技術試験衛星「スマート1」のミッションを率いた科学者バーナード・フォーイングによると、このクレーターは、直径2,500km、深さ12kmという巨大クレーター「南極エイトケン盆地」にあるという。

この巨大クレーターは月面上で最も古い地形で、太陽系全体でこれまでに知られている最も大きな衝突クレーターのひとつだ。南極エイトケン盆地をつくった衝撃によって「月の地殻が剥ぎ取られ上部マントル物質がむき出しになった可能性があります。岩や土といった鉱物的特徴と共にです」とフォーイングは説明する。

月面車は、可視光と近赤外光の画像分光計を使って、月表面の鉱物組成の測定を試みる計画だ。

ジャガイモなどの栽培実験も実施

多分野にわたる航空宇宙科学のコンサルティング会社であるスペース・エクスプロレーション・エンジニアリングの最高経営責任者(CEO)マイク・ロウクスによると、南極エイトケン盆地には、クレーター内に永久に影になる部分があるとする説もあるという。「そうした地域には氷が堆積している可能性があり、そうだとすれば月面基地には非常に便利です。そのような氷の堆積する場所が特定されたら、その近くに月面基地が置かれる可能性は高くなります」

作業はそれだけではない。ミッションの目的の詳細を説明する論文によると、ほかにも月面の地図の作成や、地中探知レーダーを使った表面に近い層の厚さや形状の測定などで、小さな月面車は大忙しだ。月の形成から間もないころのプロセスを理解するために、月面から100mほど内部の画像化も試みることになっている。

嫦娥4号には、ジャガイモとシロイヌナズナの種も積み込まれた。地球の6分の1とされる月面の低重力下で、温度と湿度が調節された密閉環境で育つことができるかどうかを調べるためだ。有効であることがわかれば、人類による宇宙探査の出発点として、月に基地を建設することにつながるかもしれない。

低周波での電波天文学の実験も行われる予定だ。地球では、電離層や人工的な無線周波数、オーロラからの放射ノイズといった干渉があるが、月の裏面ではこうしたものは遮断されている。

地球との通信は中継衛星経由

嫦娥4号には、低周波受信機が搭載されている。18年5月に中国によって打ち上げられ、現在は月の周囲を回っている通信中継衛星「鵲橋」にも受信機が1台搭載されている。さらに、鵲橋から月の軌道上に発射された超小型衛星にも、3台目の受信機が搭載されている(4台目を搭載していたもうひとつの超小型衛星は、地球との連絡がとれなくなっている)。

太陽の電波バーストや、ほかの惑星のオーロラ、最初の星の形成につながる原始の水素ガスなどから発生する信号を検出することが目的だ。

月の裏側が地球のほうを向くことは決してないため、月面車と直接通信することは不可能だ。月面車は、鵲橋を中継局として使う必要があるが、これがミッションの重大な部分だとブラウン大学のヘッドは述べる。

「アポロ計画の最中に、わたしたちは裏側での着陸について話し合いました」とヘッドは述べる(有力候補に挙がったのは「ツィオルコフスキー」クレーターだった)。「しかし、当時は通信を中継できるものがなかったうえ、コミュニケーションのチェーンがどうしても複雑になり、それはあまりにも安全性が低いと考えられました」
「中国のリードは明らか」

中国が月の調査を行うのは最近のことではない。中国の月の女神にちなんで名付けられた「嫦娥計画」は、2000年代初期に始まった。CNSAが「嫦娥1号」と「嫦娥2号」を打ち上げたのは、それぞれ07年と10年だ。

「月の裏側の探査について中国がリードしているのは明らかです」とヘッドは話す。「わたしたちは中国が今後、裏側からのサンプルリターンのミッション、特に南極エイトケン盆地からのサンプルリターンによって、調査をさらに進めてくれることを期待しています」

【私の論評】中国が、ジオン公国妄想を夢見て月面の裏の探査活動を続けるなら日米にとって歓迎すべきこと(゚д゚)!

宇宙空間で制御不能となり、世界の少なからぬ人たちを心配させた中国の軌道上実験モジュール「天宮1号」は、昨年4月2日午前9時すぎ(日本時間)、南太平洋上で大気圏に再突入し、すべて燃えつきたと発表されました。大惨事は回避され、ほっとしている方もいらっしゃたと思います。

「天宮1号」は、昨年南太平洋上で大気圏に再突入し、すべて燃えつきた

しかし、本当に懸念すべきなのはこれからかもしれません。「天宮1号」は宇宙空間での宇宙船とのドッキングをテストするための、いわば"宇宙実験室"でした。いったいなぜそんな実験をする必要があるでしょうか。

そこを掘り下げていくと、中国の戦慄すべき宇宙開発への野望が見えてきます。そうして、今回は月の裏側の探査をはじめました。地球からは絶対に見えない前人未到の領域で、中国は何を狙っているのでしょうか。

まずは、なぜ月の裏側が地球から見えないのかを簡単に説明します。月が地球の周りをくるりと1回、公転する間に、月自身もちょうど1回、自転します。そのため、月はいつも同じ面(表側)を地球に向けることになります。これは偶然ではありません。

裏側より少し重い表側がつねに地球の重力に引っぱられているので、「起き上がり小法師」が自然に立ち上がるように、表側が自然と地球を向くのです。木星の4つのガリレオ衛星や、火星の2つの衛星(フォボスとダイモス)も、同じ面を惑星に向けています。

さて、この地球からは見えない、月の裏側ですが、過去にも観測された事例はあります。最初に月の裏側を観測したのは旧ソ連のルナ3号で1959年のことでした。そのため月の裏側は、ロシアの偉人にちなんだ地名がたくさんついています。

その後も、月の周回軌道に入った探査機の多くが月の裏側を観測しています。日本の大型月周回衛星「かぐや」も、月の裏側を含んだ全球(つまり月の地表すべて)を観測して、詳細な地形図や重力異常図をつくりました。

月の表側にはおなじみの、ウサギが餅をついているような黒い模様があります。これは月の火山活動で溶岩が流れた跡で、「海」と呼ばれています。しかし裏側には、この海がほとんどありません。つまり表のほうが裏よりも火山活動が激しかったのです。

また、表に比べて裏のほうが、地殻が厚いらしいこともわかっていますが、なぜ表と裏で地下構造が異なっているのかは、よくわかっていません。地球もできたての時期は場所によって地下構造が異なっていたかもしれませんが、地球は初期の地殻がプレートテクトニクスによって失われているので、月の研究が、地球の初期地殻を知る手がかりとなるかもしれません。

次に、月裏側への着陸の難易度などについ説明します。月の裏側には、地球の電波が直接届きません。しかし現代の無人探査機は基本的に自動操縦なので、着陸そのものは月の裏側でもさほど難しいことではありません。

ただし、少し難しいのは、観測したデータを地球に送るときです。普通は月周回衛星を同時に打ち上げて、中継させます。月の裏側で探査機から衛星にデータを転送して、さらに衛星が表側から地球に転送するのです。

しかし、中国はさらに高度な技術を使っています。月の裏側の上空に、中継局を飛ばしています。地球と月の周辺にはラグランジュポイントといって、重力がつりあうため一定の場所で止まっていられるポイントが5つ存在します。そのうち、月の裏側にある「L2」に中継局を飛ばして、途切らせることなくつねに電波を中継しようというわけです。

ラグランジュポイント。中心の黄色い円が地球、
右の青く小さい円が月、地球から見て月の裏側に「L2」がある


では、中国はなぜ、このように裏面着陸に力を入れているかを説明します。月の裏側以外にも、科学的に興味のある場所はたくさんあります。しかし中国は、単なる科学探査としてだけでなく、L2に電波中継システムをつくるという技術開発を重要視しているのです。

1回の探査だけなら、周回衛星に中継させたほうがローコストでできますが、中国は長い年月での月開発を視野に入れて、インフラ技術の整備を着々と進めているのです。

いずれは、L2に有人宇宙ステーションをつくるはずです。4月2日に落下した「天宮1号」によるドッキング実験も、宇宙ステーション建設のためだったのです。世界で最もまじめに月に取り組んでいる国、それがいまの中国です。

話は少し飛びますが、L2とは、アニメ作品「機動戦士ガンダム」で、ジオン公国がつくられたスペースコロニー群「サイド3」のある場所です。

アニメ作品「機動戦士ガンダム」で、ジオン公国がつくられたスペースコロニー群「サイド3」のある場所

そうして、中国はこれを実現するつもりかもしれません。近い将来、中国の宇宙ステーションに1億人以上が移り住んでコロニーとなり、中国がL2にジオン公国をつくるということもありえるかもしれません。

L2は月の裏側との通信のためにはどの国も使いたい場所ですから、中国一国が独占するということはないでしょう。でも巨大なコロニーができたら、それが国家のようなものになることはあるかもしれません。

中国が今回月裏側の着陸に成功したことにより、学術面、軍事面、資源の面などの観点から様々な収穫がありました。

中国はこれまで月について、科学的な成果では一歩遅れをとっていました。欧米や日本は月の石や隕石を使った宇宙物質研究の蓄積があるので、探査データを科学的成果に結びつけるアイデアが豊富なのに対し、中国は探査ができても、データをうまく科学成果に結びつけられませんでした。

しかし裏側の岩石の詳細なデータがとれれば、間違いなく新しい科学的発見につながるでしょう。

軍事面では、いますぐ直接に私たちの脅威になる要素はないです。ただ、L2に有人宇宙ステーションがつくられれば、国際宇宙ステーションに代わる新しい国際宇宙秩序の中核施設となる可能性はありますね。

資源の面では、現在のところ、裏にしかない物質というのはとくに見つかっていませんが、裏側に関して優位に立てば、資源採掘でも中国が有利になるでしょう。また「場所」も資源と考えれば、地球の反射光や電波にさらされない月の裏側は、深宇宙の天体観測に最適な場所となります。
今回の月の裏側着陸の成功によって、しばらくは、月の裏側と常時通信ができるのは中国だけ、という状態になるでしょう。他国が月の裏側を探査・開発するときは、中国の通信設備に依存するようになるかもしれません。

機動戦士ガンダムに登場するシャア・アズナブル

しかし、L2に宇宙ステーションを設置する構想はアメリカやロシアなどにもあり、いつまでも中国に独占させることにはならないでしょう。ただし、現在のロシアのGDPは東京都を若干下回る程度なので、一国だけではむりかもしません。

宇宙開発においては、中国が重力天体への着陸やローバー(天体探査用の探査車)の運用も成功させているのに対して、日本はいま計画中の「SLIM」が成功してやっと重力天体への着陸技術を得ることになります。現時点では、大きく遅れていると言わざるをえません。

また、中国は30年間使用可能な原子力電池を探査車に搭載しているので、2週間も続く極寒の夜の間も、機器が低温で壊れないよう温めることができます。昨年10月には嫦娥3号から発進した月探査車「玉兎号」が684日稼働し、月面の稼働日数最長記録を更新しました。

ところが日本は放射性物質に対して厳しい国なので、原子力電池を使うという選択肢が最初からないのです。これは宇宙探査において非常に不利な条件となっています。

さらに気になるのは、宇宙探査についての日本の考え方です。日本はどうしても、低予算で最大の成果をあげようとして、特色のある探査をしようとします。自動車産業にたとえると、フェラーリやランボルギーニのようなスーパーカーで勝負しようとするメーカーのようです。しかし自動車大国になったのは、地味でもきちんと役に立つ大衆車をつくるメーカーがある国です。

科学探査だけなら日本の戦略もアリなのですが、本当に宇宙で活躍できる国になるためには、宇宙開発の基盤技術を着実に育てていく戦略が重要です。そういう意味で、重力天体の着陸実証をするSLIM計画や、H-IIIロケットの開発は大変重要で、ぜひ成功させなくてはなりません。
世界の宇宙開発トップを走っていた中国が、さらに前進しています。アメリカは月上空の宇宙ステーション「深宇宙ゲートウェイ」の構築を検討していますが、実現するのは早くても2025年になりそうです。

日本は中国に大きく遅れをとっていましたが、アメリカの「深宇宙ゲートウェイ」への参加を表明し、SLIM計画やインドと共同の月極域探査計画が現実味を帯びてくるなど、ようやく国内に「月への風」が吹きはじめています。「かぐや」で得た優位を保てるか、ここが踏ん張りどころです。

ここまでは、宇宙開発に関してのみ掲載してきましたが、ご存知のように現在は、米国による対中冷戦が激化しています。

これにより、中国は経済的にも窮地に追い込まれつつあります。これについては、このブログでも過去に何度も掲載してきていますし、他のメディアでもかなり報道されています。

昨日のブログでは、以下のような内容を掲載しました。
中国の習近平国家主席は昨年12月14日に開かれた政治局会議で、反腐敗との戦いに「圧勝を収めた」と宣言しました。2012年の共産党大会後に同運動が始まって以来の「勝利宣言」となりました。 
同発言について、貿易問題に端を発した米中対立が先鋭化するなか、中国共産党政権は執政の危機にさらされ、「内部の団結」を優先させた、と専門家は分析しています。
要するに、米国の制裁に対抗するため、「内部の団結」を優先し、反腐敗の戦いは二の次にするということです。

私自身は、今すぐに利益を産まず、ここしばらくは長期にわたって資金を要する、宇宙開発は「腐敗撲滅」と同様に二の次にされる可能性があると思っています。

もし、そうしなかったとすれば、米国は喜ぶべきです。なぜなら、金食い虫の宇宙開発は、中国の経済をさらに疲弊させるだけであって、何の益も中国にもたらさないからです。

かつてのソ連の崩壊の大きな要因として、通常の軍拡、通常の宇宙開発、先の2つにまたがる戦略ミサイル防衛構想(スターウォーズ計画)への対抗がありました。

これらの実施にはいずれも途方もないほどの天文学的な資金を要しました。これらへの投資でソ連経済は疲弊し崩壊しました。

ジオン公国の国旗

中国が、ジオン公国を夢見て月面の裏の探査活動を続けるなら、さらに経済的に疲弊し、中共の崩壊が早まることになります。これは、日米にとって歓迎すべきことです。

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2018年12月31日月曜日

米国が韓国・文政権を見放す日は近い―【私の論評】日米が韓国・文政権を見放すにしてもその前にやるべきことがある(゚д゚)!

米国が韓国・文政権を見放す日は近い

北朝鮮にひたすら接近する韓国、トランプ政権の政策を骨抜きに

文在寅大統領

 韓国の文在寅政権は北朝鮮との融和を最優先し、米国が求める北朝鮮の非核化を真剣に考えていない。トランプ政権内外では、文政権に反対する韓国内の保守派への期待が急速に高まってきた──。

 米韓関係のこうした不穏な現状が、アジア報道で実績のある米国のベテラン記者によって報じられた。

 韓国海軍が海上自衛隊の哨戒機にレーダー照射した問題で日韓関係はさらに悪化する気配を見せているが、亀裂が広がりつつあるのは米韓関係も同様だ。北朝鮮への対応を巡る米韓のギャップは、日本の安全保障にも複雑な影響を及ぼしそうである。

米国の政策に反する文政権の融和政策

 ワシントンを拠点とするネット新聞「デイリー・ビースト」は12月19日に掲載された長文の記事で、米国において文在寅大統領への不信が広がっている状況を伝えた。記事の筆者は米国メディア界でアジア報道の最長老として信頼度の高いドナルド・カーク記者だった。

ドナルド・カーク氏(写真はブログ管理人挿入 以下同じ)

 カーク記者は1960年代のベトナム戦争報道を出発点として、朝鮮半島、日本、東南アジア、中国などのアジア情勢を一貫して報じてきた。ロサンゼルス・タイムズ、USAトゥデイ、シカゴ・トリビューンなど米国主要新聞の特派員を務め、多数のジャーナリズム賞を受賞した。現在はフリーとしてアジアとワシントンを往来して、活発にアジア関連報道を続けている。

 そのカーク記者が最近、韓国発の記事を執筆した。見出しは「韓国の右派が台頭し、トランプ大統領と金正恩の平和を崩しそうだ」と付けられていた。

 この記事でカーク記者は、韓国の文在寅大統領が金正恩政権への経済協力など融和政策を進めており、その政策は北朝鮮の非核化を目指すトランプ政権の政策を骨抜きにすることになると指摘する。韓国内では、文政権に反対する右派が米韓同盟の重要性を主張して、同政権への抗議を強めているという。

 カーク記者による本記事の根幹は、韓国の文政権が米国の超党派の政策に反する行動を取っているとする厳しい糾弾でもあった。

トランプ政権が文政権に抱く不信の念

 カーク記者の報道の骨子は以下のとおりである。

・現在、韓国の首都ソウルで毎週、開かれる文在寅大統領への抗議デモは数千人から万単位へと広がり、金正恩政権との融和を求める文政権のリベラルな政策に対して、右派、中道派からの批判の勢いが高まっている。文政権への支持率も2017年の同政権発足以来、初めて50%を割り、これまでで最低となった。

文在寅大統領への抗議デモ

・文大統領は、米国が最優先する北朝鮮の完全非核化という大きな目標を軽視して、南北開通鉄道の開設など北の経済を利するプロジェクトを推進しようとしている。だが、南北鉄道構想に関わる韓国側の当事者たちは誰もが、北朝鮮の技術やインフラは南北鉄道開設を可能にする状態にはなく韓国側の一方的な持ち出しになると指摘する。

・文大統領のこの態度はトランプ政権の政策への事実上の反対であり、北朝鮮への甘い幻想の産物だともいえる。このまま文政権の対北政策が進めば、北朝鮮は非核化を実現することなく韓国との融和や韓国からの経済支援を獲得し、トランプ政権の政策を骨抜きにしてしまう。そのためトランプ政権側にはすでに文政権への強い不信や批判が生まれている。

 カーク記者は、ソウルだけでなく、北朝鮮との国境の非武装地帯に近い京畿道の南北鉄道開設計画の拠点も訪れて、文大統領の北朝鮮への経済協力がきわめて非現実的だという判断が文政権周辺にも広がっている状況を報告していた。その結果、文政権はトランプ政権の北朝鮮政策を骨抜きにして、米韓同盟の基盤までを侵食する危険があるという警鐘を鳴らしていた。

朝鮮半島を分断する南北軍事境界線上の共同警備区域で警備に就く朝鮮人民軍の兵士たち

韓国の保守派・右派の動きに要注意

 さらにカーク記者によると、韓国内部で、文政権の北朝鮮に対する政策や認識に反対する右派・中間派の動きが米国の政策にも影響を及ぼす可能性があるという。同記者は次のように述べる。

・文政権への反対派は、北朝鮮の金正恩国家委員長を残虐な人権弾圧の独裁者として非難し、金委員長のソウル訪問にも強く反対する。同時に米国との連帯を強調し、米韓同盟の重要性を改めて訴える。トランプ政権は、北朝鮮の完全非核化を主張する韓国の保守派の主張が拡大し、文政権にも影響を及ぼすことを期待している。

・だが韓国の保守派は、金委員長をあくまで敵視する点でトランプ政権の対北認識に合致しない部分もある。つまり、トランプ政権は、金正恩氏が非核化を公約どおりに進めることを条件として協調姿勢をとるのに対して、韓国内の保守派は金政権との協調自体にも反対する。その保守派のパワーの広がりは、トランプ政権の対北政策の土台をも崩しかねない。

 以上のように、韓国内の保守派・右派は、文政権の対北融和政策に激しく反対すると同時に、米韓同盟の堅持を主張する。ただし、金正恩委員長とその政権をどうみるかについては、トランプ政権の政策が甘すぎるとする傾向もみられる。そのため、仮に保守派・右派が韓国民の支持を高めた場合、米国政府の対北政策を一部否定する動きにまでつながる可能性がある、ということになる。

 韓国内部における文政権への支持の状況は、日本にも大きな余波をぶつけることになる。韓国内の保守派・右派の動向には十二分の注意が必要だといえよう。

【私の論評】日米が韓国・文政権を見放すにしてもその前にやるべきことがある(゚д゚)!

冒頭の記事に、「韓国海軍が海上自衛隊の哨戒機にレーダー照射した問題で日韓関係はさらに悪化する気配を見せている」とありますが、この事件は米韓関係を悪化させる可能性もあります。

そもそもこの事件の真相に関して、様々な筋がいろいろ分析していますが、なかなかしっくりきません。

実は、韓国以外にも似た事例は過去にありました。1987年の「対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件」です。日本の領空を侵犯したソビエト軍偵察機に対して、自衛隊が実弾警告射撃を行いました。日本はソ連に抗議し、「ソ連は計器故障による事故」として関係者を処分しました。その後もろもろのやり取りはあったのですが、基本的にはソ連側の処分をもって終わった話です。

ソ連軍偵察機に実弾警告射撃を行った第302飛行隊所属のF-4EJ(同型機)

ここからもわかる通り、今回の事件もおそらく韓国が「偶発事故」として関係者を処分していれば、それで終わった案件です。もしも韓国側が、「日本が映像記録を残していないだろう」と考えていたなら、現状認識不足は致命的です。

そうではなく「日本政府はまさか映像を公開しないだろう」というような、日本に対する甘えが、現場にも政府上層部にもあるのかもしれません。これは、決して友好国として望ましいものではありません。

もしもこのほかに、韓国側に「正直に言えない理由」があるのだとすれば、それは日韓関係においてかなり重症であるといえると思います。
そのことについて、28日の読売新聞で、興味深い記事がありました。それは、韓国が日本海周辺で密漁していたと思われる北朝鮮の漁船を日常的に救助していたからというものです(https://www.yomiuri.co.jp/politics/20181228-OYT1T50096.html?from=tw)。これは、確定的証拠はない仮説にすぎないですが、確かに防衛省が公表した動画とも整合的です。
現場の能登半島沖は、好漁場の「大和堆」の周辺で、北朝鮮漁船によるイカの密漁で問題になっているところです。「大和堆」は、平均1750メートルと深い水深の日本海にあって、浅いところで、好漁場になっていますが、ここは日本の許可なしでは漁ができない排他的経済水域内です。
しかし、この数年、大和堆の海域には中国や北朝鮮の漁船が大量に押し寄せ、密漁をしているのは周知の事実です。水産庁の取締船や海上保安庁がそれらの漁船を追い出していますが、手が回らない状態です。
北朝鮮は、現在国連の経済制裁を受けているので、石油は手に入りにくいですが、大和堆にやって来る漁船は、北朝鮮軍からの石油割当を受けているはずなので、軍の指揮下にあるとみて良いでしょう。
その北朝鮮の密漁漁船を韓国軍が(日常的に)救助していたとすれば、国連の制裁決議を北朝鮮に課している国際社会は「韓国が北朝鮮の国連制裁決議の尻抜けを手助けしていた」というように見ることでしょう。
そうして、これは北朝鮮に対して前のめりの文在寅大統領の行動をみていれば、本当に尻抜けを手助けしているということも十分に考えられます。
実際、韓国の東海地方海洋警察庁(大韓民国海洋水産部隷下の沿岸警備隊)が6月11日早朝、エンジンの故障と浸水により北東部の江原道・束草沖を漂流していた北朝鮮の小型漁船の乗組員を救助したと発表しています(WOWKOREA)。
同庁によると午前6時20分ごろ、束草の東方約218.5キロの海上で韓国漁船が漂流中の北朝鮮の小型漁船を発見し、関係機関に通報しました。

海洋警察は艦艇を派遣して漁船の乗組員5人を救助し、関係機関と共に事故原因などを調べたとしています。

この出来事自体は、無論韓国が北朝鮮の尻抜けを手伝ったものとはいえないですが、それにしても何度もこのようなことが重なった場合、予め韓国の艦艇が北朝鮮の艦船が出没する近くに出動し手助けするのが恒常化しているおそれもあります。

ひょっとしたら、韓国がひた隠しにしたいのはこのことなのかもしれないです。日本の海上自衛隊に見られたくないものを見られたから、そのシラを切り続けるために、日本に強硬な態度をとり続けているのではないかと疑ってしまいます。

さらにこの海域には、中国の潜水艦が行動する水域でもあり、韓国駆逐艦の行動は、(日米連携での)中国潜水艦の探査活動を妨害し、日米連携を分断し中国を利するものともいえます。

こうしたことから、韓国がもし北朝鮮の制裁尻抜けに大きく関与していたとすれば、米国の韓国に対する態度も一気に硬化することになります。

真相の解明は翌年に持ち越されましたが、日本は毅然とした態度を取り続けることが重要です。

そうして、韓国が南北統一にまっしぐらに進むということがわかった場合には、このブログでも前に掲載したように日米がすぐに韓国を見放すということではなく、その前に、日米が韓国に対して金融制裁等を実行して、経済的にも科学技術的にも徹底的に疲弊させるべきです。

現在のままの韓国をわざわざ、北朝鮮に引き渡し、金正男を喜ばせ、韓国の経済力をもとにさらに軍事力を強化させるようなことはすべきではありません。それどころか、韓国が金正恩の負担になるようにすべきです。

現在のロシアのGDPは、韓国を若干下回るくらいの規模です。南北が統一されれば、ロシアの経済規模を上回る独裁国家が半島に生まれることになります。韓国の経済規模は、東京都と同規模です。

絶対にそのようなことをさせるわけにはいきません。そもそも、現在の体制のままの南北統一はさせない、最悪させてしまうにしても、韓国の経済を徹底的に潰しておいてから統一させるべきです。

さて、今年も最後になりました。皆様、昨年中は大変お世話になりました。良いお年をお迎えください。

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2018年12月29日土曜日

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レーダー映像公開…日米、韓国に金融制裁の可能性も? 米政府関係者「われわれが離れるとき韓国は焦土化する」 


文在寅大統領

 韓国海軍の駆逐艦が、海上自衛隊のP1哨戒機に、攻撃寸前の火器管制用レーダーを照射した問題は、米トランプ政権が水面下で進める「米韓同盟消滅」の決定打となるのか。北朝鮮への制裁緩和を訴える文在寅(ムン・ジェイン)政権に対し、日米共同の金融制裁という報復措置がありうると専門家は指摘。米政府関係者は「われわれが離れるとき、韓国は焦土化する」と不気味な予告をしている。

 レーダー照射について「韓国では、日本とのもめ事を起こす文政権に対する批判がある一方、『日本の哨戒機を撃墜すべきだった』と、日本との対決を求める声もある」。長年の韓国ウォッチャーとして知られ、『米韓同盟消滅』(新潮新書)などの著書がある元日本経済新聞編集委員の鈴置高史(すずおき・たかぶみ)氏はこう解説する。

 「もともと韓国軍が『親日』だったことはない。『日本撃滅』のスローガンがかかっている海軍基地もあると聞く。北朝鮮との緊張が緩和する中、韓国海軍が日本海に目を向けるのは当然だろう」というのだ。

 ハリス駐韓米大使は11月、韓国誌『月刊朝鮮』で「米韓同盟は確固として維持されているが、当然視してはいけない」と異例の警告を発した。レーダー照射問題は、米政権側に募った韓国に対する不信感を一段と際立たせることになる。

 文大統領は、9月に米国、10月中旬に欧州を歴訪し、一貫して対北制裁の緩和を呼びかけるなど、「親北」姿勢を強めてきた。これを受けて米政府関係者のヒアリングを受けた鈴置氏は「米政府関係者は『なぜ韓国はわれわれをいらつかせるのか』と聞いてきた」と振り返る。

 「特に米国を怒らせたのは、欧州に制裁緩和を持ちかけ、米国を孤立させようとしたことだ。当然、欧州各国も応じるわけはなく、『韓国は何を考えているのか』と驚いた。世界中の専門家が韓国をけげんな目で見るようになっている」

 鈴置氏以外の日本人の専門家と情報交換した米政府関係者から、「われわれが韓国を離れるときは、このままでは離れない。焦土化する」といった発言があったという。

 「経済面でボロボロにするということだろう。韓国が北朝鮮の別動隊だということを世界中の人が見抜いており、韓国も北に連座する形で制裁対象になってもおかしくないという見方が強まっている」という鈴置氏。文大統領は南北統一という野心を隠しておらず、「南北共同の核保有は、米国以上に日本に脅威となる。日米共同の制裁もあり得る」というのだ。

 ここにきてレーダー照射問題が浮上。日本が韓国に「制裁」に出るとの見方もある。その場合、「韓国に報復するならまずは経済、なかでも金融に即効性がある。米国も韓国への『お仕置き』のタイミングを見計らっている」(鈴置氏)。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを進めることで、韓国から資本が流出する懸念が一段と強まっている。景気や雇用が低迷するなかで、韓国銀行(中央銀行)は11月末、政策金利を引き上げたが、米国も今月、追加利上げした。米国に追随して利上げを進めると、韓国が抱える家計負債などの問題が再燃する恐れもある。

 韓国に対する金融制裁について鈴置氏は、「米国系の銀行が韓国から資金を引き揚げるという情報をマーケットに流す、日本が半導体製造装置を売らない、日米の銀行が一緒に、韓国がドル調達をできないようにするなど手口はいくらでもある。韓国国債の格付けが下がるようなことがあれば、市場は資本逃避(キャピタルフライト)に直面するとみるだろう」と話す。

 「ロックオン」されているのは韓国の方かもしれない。

【私の論評】日米で韓国に対して金融制裁を発動し金融面で焦土化することも視野に(゚д゚)!

防衛省は28日、火器管制レーダーの照射問題で映像を公開しました。韓国側が照射をかたくなに否定しているためです。日本の主張の正当性を訴えるとともに、真相の解明を迫る狙いがあります。以下がその映像です。



「海上自衛隊が適切な行動をとったことを国民に理解してほしい」

岩屋防衛相は28日の記者会見でこう述べ、映像公開の意義を強調しました。

火器管制レーダーの照射は20日、日本海の能登半島沖で発生。防衛省は21日に公表しましたが、韓国国防省は記者会見で火器管制レーダーの照射を否定しました。27日に日韓の防衛当局間で行ったテレビ会議でも、韓国側は事実だと認めませんでした。

約13分間の映像は冒頭、韓国海軍の駆逐艦や海洋警察の警備救難艦、北朝鮮漁船とみられる遭難船などに、海上自衛隊のP1哨戒機が近づく様子から始まっています。映像開始から6分すぎ、駆逐艦から約5キロ離れた地点で、哨戒機が火器管制レーダーの電波を初めて探知しました。

哨戒機の乗員の一人は「避けた方が良いですね」と緊迫した様子で声を上げ、機長が駆逐艦の大砲の向きを確認するように指示した。哨戒機が回避行動をとった後、探知音を聞いていた乗員が「めちゃくちゃすごい音だ」と強い電波に驚く場面も記録されています。

その後、乗員は韓国駆逐艦に対し、三つの周波数で「行動の目的は何ですか」などと英語で問い合わせましたが、韓国側からの応答はありませんでした。

現場は好漁場の「大和やまと堆たい」の周辺で、大量の北朝鮮漁船によるイカの密漁が問題となっています。日本政府関係者は「韓国軍は北朝鮮漁船の救助に普段から関わっている可能性があり、日本に知られたくなかったのではないか」と分析しています。

しかし仮にそうだったとしても、ではなぜこのような常識はずれの事案が起きたのでしょうか。事案発生当時、問題の韓国艦は日本海中央部の大和堆に近い日韓中間水域(11月15日に起きた日韓漁船衝突事故の現場付近)にいたとされます。韓国艦は当該海域で、北朝鮮の木造漁船(しばしば工作船としても使われる)の監視と、通常の訓練を行っていたと思われます。韓国側が主張する「北朝鮮漁船の救難活動」も、あったとすればその中で行われたのでしょう。



一方、海上自衛隊のP‐1は能登半島沖の、日本の排他的経済水域(EEZ)の上空にいたとされています。当該機は厚木の第4航空群の所属で、こちらも厚木航空基地から日本海側へ進出し、そこから日本の領海線に沿って回る通常の哨戒活動をしていたと思われます。

具体的には目視(光学式観測)と対水上レーダーによる、海上哨戒活動です。P‐1の水上レーダーは非常に高性能で、海上に浮かぶ多数の船舶の大きさや形、動きなどをすべて把握できます。

軍事秘密なので公表はされていませんが、一説には、水面から数センチほど顔をのぞかせた潜水艦の潜望鏡さえも探知できるらしいです。そうした性能を使って、北朝鮮船による沖合での安保理決議違反である瀬取り行為の監視も行っていたでしょう。

韓国艦も自衛隊機も、お互いに通常の任務中であったといえます。その中でなぜ、あのような事案が発生したのでしょうか。

おそらくは韓国艦が何らかの監視活動、あるいは救難活動を行っているときに、P‐1哨戒機の航路に過剰に反応したのではないでしょうか。軍艦は常に、周辺の航空機の動きを対空レーダーで監視しており、軍用の敵味方識別装置(IFF)や民間用のトランスポンダを用いて、レーダーでとらえた航空機がどこに所属するのか、友軍か否かも把握できます。ここまでは、どんな艦でも行う問題のない行為です。

ところが、火器管制レーダーの照射は違います。ビームが目標に照射された時点で、いわゆる「ロックオン」という、艦の射撃指揮システムが目標を正確に把握した状態が成立します。照射された航空機では、システムが画面表示と警告音によって、ロックオンされた事実を乗組員に伝えます。

2013年に中国海軍のフリゲート艦が海自の護衛艦に火器管制レーダーを照射したときもかなりの騒ぎになりましたが、このときは敵からのものであり、あり得ることであると多くの国民が考えたかもしれません。

しかし、今回は「友軍」から照射されたということで、現場では意味不明としか言いようがない状況だったと思います。そういう状況のもとでも、防衛省が公開した動画ではP‐1の乗組員は終始冷静で、レーダー波の周波数確認を含む必要な任務を高い確度で遂行していたのが印象的できした。

もっとも、実際にミサイルを発射できるシークウェンス(手順)にまで入っていた可能性は低いです。艦のシステムがIFF(敵味方識別装置)で友軍機と認識した航空機を、ミサイル攻撃の目標に設定することは基本的にできない仕組みになっているからです。

しきかしそもそも、友軍機に火器管制レーダーを照射する段階で、途中のシステムの警告(味方だが大丈夫か、といった確認を求められる)を手動でオーバーライド(上書き)する必要があり、そこに何らかの「人為」が働いたことは間違いないです。その人為を、一体誰が行ったのでしょうか。




火器管制レーダーを操作するのは、艦のCIC(戦闘指揮所)の射撃管制員ですが、通常は艦長あるいは副長の命令がなければ照射は行われないです。少なくとも、自衛隊で言えば砲雷長や砲術長など火器管制に関わる幹部の指示が必要です。

さらに火器管制レーダーを使用しているという事実は、CICの全員に伝わります。末端の人間がこっそりやれるような行為ではないですし、誤って照射した場合はすぐに制止が入るはずです。もしそのような事象であれば、「レーダー員のミスだった」と韓国側が公表して謝罪すれば済む話であったはずです。

おそらくは、もっと上の階級の人間が関わっているために、そうした簡単な処理ができなかったということでしょう。交戦規則などの武器使用に関する規定をここまで無視できるのは、やはり艦長か副長クラスなのではないかと思われます。

「のぞきやがってけしからん、ひと泡吹かせてやれ」と、そのクラスの人間が命令したというのが、一番ふに落ちるシナリオです。

国際的な慣習において、公海上の軍艦は旗国(帰属する国家:今回の事例では韓国)以外のいずれの国の管轄権も及びません。一つの独立国と同等の扱いを受けます。その艦長の権限と責任は、いわば一国の主に等しいのです。もし艦長あるいは副長クラスの上級幹部が今回のような暴走を行ったのだとすれば、韓国軍には指揮統制上の重大な問題があるということの証明になってしまいます。

実際、韓国側のこれまでの対応を見る限り、韓国国防部も大統領府も、何が起きているのかを把握する能力がないように見える。文民統制や軍の指揮統制という面から見れば、末期的症状をきたしているといって良いでしょう。

韓国海軍士官学校の若者たち 2009年12月13日


クァンゲト・デワン」級のような旧型艦は一般に、若手艦長の最初の任官先になることが多いです。そして今の韓国の若手の職業軍人は、反日教育の「毒」が回った世代です。

今回の事案の背景には、文在寅政権のもと韓国国内でますます高まっている「日本には何をしてもいい」という韓国国内の空気感の影響もあるでしょう。そして西太平洋の安全保障体制の中で日本と韓国のつなぎ役を果たしてきた米国は、韓国との同盟関係を加速度的に細らせつつあります。韓国が軍事政権から民政に移行して以来、長年にわたってありとあらゆる工作活動を韓国で展開してきた北朝鮮にとって、これら日韓/米韓の離間はまさに望み通りの結果のはずです。

そして当の韓国軍は、本来なら優先順位がはるかに高いと思われる北朝鮮軍の南侵やミサイル攻撃に備える装備より、強襲揚陸艦やイージス艦、弾道ミサイルや巡航ミサイルを発射可能なミサイル潜水艦、射程500キロ以上の新型弾道ミサイルといった、日本への対抗を主眼とするかのような装備の充実に力を入れています。日本にしてみれば、朝鮮半島への軍事侵攻などもはやありえない選択肢なのですが、韓国国民の認識は異なり、それが軍内部にも反映しているのでしょう。

韓国海軍は、12月13日に島根県の竹島の周辺海域で、島の防衛を想定した定例の合同訓練を14日までの日程で行っていました。島の防衛というからには仮想敵国は日本です。その延長線上に今回の「ロックオン」があるのでしょう。

韓国の女子中学校の生徒名で、日本の竹島教育を批判するハガキ41通が島根県内の中学校に届きましたが、まるでカルト教団のように反日教育を洗脳される生徒たちが哀れです。反日教育を受けて入隊すれば、自衛隊機に向け「ロックオン」くらい、彼らの愛国精神からやるのは当然なのかもしれません。

日米韓の協調関係が終わり、核武装した南北統一軍が成立する可能性への備えを、わが国はそろそろ真剣に考え始めるべきなのかもしれないです。

それ以前に、今回の事件に関して韓国側がいつまでも、謝罪や遺憾の意を評さないというのであれば、この記事の冒頭の記事にもあるように日米で韓国に対して金融制裁を発動して、それこそ韓国を金融面で焦土化するということも視野にいれるべきです。

南北統一が成立したときには、韓国は経済的には何の価値もない状況にしておくべきです。韓国など経済的に手助けして、経済を良くした状態で、南北が統一されてしまえば、意味もなく敵に塩を送ることになります。

金正恩や習近平を喜ばせる必要はありません。

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2018年7月24日火曜日

中国は入れない日欧EPA 中国に“取り込まれる”ドイツを牽制した安倍外交 ―【私の論評】「ぶったるみドイツ」に二連発パンチを喰らわした日米(゚д゚)!

中国は入れない日欧EPA 中国に“取り込まれる”ドイツを牽制した安倍外交 

高橋洋一 日本の解き方

記者会見を終え、トゥスク欧州理事会議長(右)と握手を交わす
ユンケル欧州委員会委員長。中央は安倍晋三首相=17日午後、首相官邸

 日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の署名は、安倍晋三首相が西日本豪雨で訪欧できなかったため、欧州側が来日する形で行われた。日欧EPAは、早ければ来年3月までに発効する見通しだ。これによって何が変わるのか。

 マスコミがこの件を報道する際、分かりやすくするために物品の関税で説明することが多い。日本はEUからのワイン、チーズ、チョコレートなどに関税を課している。ワイン関税は即時撤廃となり、750ミリリットル入りのボトルで最大約94円安くなる。チーズはEU産に優遇枠を設けて、段階的に無税枠を拡大する。チョコレートは関税を段階的に引き下げて、将来は撤廃する-といったものだ。

 これは間違いではないが、EPAの一面に過ぎない。協定全体は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)のように大部である。外務省のウェブサイトに協定の原文が掲載されているが、本文だけで500ページ弱、これに附属書が加わり、全体で1200ページを超える。目次は、第1章総則、第2章物品貿易などあり、最終規定まで23章もある。

 第2章の物品貿易には、物品貿易に関し関税撤廃・削減のほか内国民待遇等の基本的なルール等が規定されている。関税の話はここに記載されている。

 具体的な中身は、附属書に書かれている。関税率表というものがあるが、興味があれば一見しておくといい。世の中のありとあらゆるものが全て記載され、その一つ一つに関税率が定められている。筆者は役人時代に関税率表を見て、そのボリュームに感動した覚えがある。今では、税関のサイトで誰でも見ることができるし、書籍としても販売されている。ちなみに本の関税率表は1200ページを超える分厚いものだ。

 いずれにしても、附属書の中に、関税率表がどのように変わるかが記載されている。マスコミがその中身を確認することはできないだろうから、役所に聞いて、その中の2、3品目を選んで報道しているわけだ。

 23章のうち1章だけ、しかも何千品目もある中から2、3品目では全体像の理解はできない。筆者は、今回の日欧EPA協定の中で、第8章サービス貿易、投資の自由化及び電子商取引、第13章国有企業、特別な権利または特権を付与された企業及び指定独占企業、第14章知的財産、第15章企業統治などに着目している。これらの規定は、資本主義国であれば当然のルールであるが、社会主義国では適用困難なものだ。

 EPAはこれらの規定を含む点で、自由貿易協定(FTA)と異なっている。逆にいえば、中国はFTAはできるが、EPAはできないのだ。

 安倍首相は「自由民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値をEUとともに力強く発展させ、世界の平和と繁栄に貢献する」と述べた。このEPAには中国は参加できず、中国主導の国際秩序ではないと宣言したようなものだ。中国に取り込まれるドイツを牽制し、EUを資本主義体制に戻している。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】「ぶったるみドイツ」に二連発パンチを喰らわした日米(゚д゚)!

経済連携協定(英: Economic Partnership Agreement、EPA)とは、自由貿易協定(FTA)の柱である関税撤廃や非関税障壁の引き下げなどの通商上の障壁の除去だけでなく、締約国間での経済取引の円滑化、経済制度の調和、および、サービス・投資・電子商取引などのさまざまな経済領域での連携強化・協力の促進などをも含めた条約です。

自由貿易協定(FTA)は、特定の国や地域の間で,物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定です]。

一方、経済連携協定(EPA)は、貿易の自由化に加え、投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定です。

日本ではEPAを軸に推進しており、GATT(関税および貿易に関する一般協定)およびGATS(サービスの貿易に関する一般協定)に基づくFTAによって自由化される物品やサービス貿易といった分野に加え、締結国と幅広い分野で連携し、締約国・地域との関係緊密化を目指すとしています。

近年世界で締結されているFTAの中には、日本のEPA同様関税撤廃・削減やサービス貿易の自由化にとどまりません。様々な新しい分野を含むものも見受けられるようになっているため、国によってはFTAとEPAを区別せずに包括的にFTAに区分することも少なくないです。

2018年6月時点で日本政府が外国または特定地域と締結した協定(発効ずみのもの)はすべてEPA(経済連携協定)となっています。2018年2月に署名した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)及び2018年3月に署名した環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)は、いずれも内容的にはEPAです。協定名は「パートナーシップ協定」となっています。

外務省によると、日本はFTAだけでなくEPAの締結を軸に求めています。理由として、関税撤廃だけでなく、投資やサービス面でも、幅広い効果が生まれることを期待していることによります。

以下に、日本が締結したEPAの一覧を掲載します。
日本・シンガポール新時代経済連携協定:2002年11月30日発効(改正議定書2007年9月2日発効) 
日本・メキシコ経済連携協定:2005年4月1日発効(改正議定書2012年4月1日発効) 
日本・マレーシア経済連携協定:2006年7月13日発効 
日本・チリ経済連携協定:2007年9月3日発効 
日本・タイ経済連携協定:2007年11月1日発効 
日本・インドネシア経済連携協定:2008年7月1日発効 
日本・ブルネイ経済連携協定:2008年7月31日発効 
日本・ASEAN包括的経済連携協定:2008年12月1日より順次発効し、2010年7月1日に最後のフィリピンについて発効し、すべての署名国について発効となった。ただし、インドネシアについては、国内の実施のための手続きが遅れ、インドネシアの財務大臣規定が2018年2月15日に公布され、2018年3月1日より施行されたことにより、2018年3月1日より、協定の運用が開始され、日本とインドネシアとの間ではAJCEP協定に基づく特恵関税率が適用されることになった。 
日本・フィリピン経済連携協定:2008年12月11日発効 
日本・スイス経済連携協定:2009年9月1日発効 
日本・ベトナム経済連携協定:2009年10月1日発効 
日本・インド経済連携協定:2011年8月1日発効
日本・ペルー経済連携協定:2012年3月1日発効 
日本・オーストラリア経済連携協定:2015年1月15日発効 
日本・モンゴル経済連携協定:2016年6月7日発効 
環太平洋パートナーシップ協定(TPP):2016年2月4日署名[8]、日本は2017年1月20日締結。未発効。 
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP、TPP11):2018年3月8日署名、日本は2018年7月6日締結。未発効。 
日本・EU経済連携協定:2018年7月17日署名。未発効。
TPPも、EPA(経済連携協定)に含まれます。日本が最後に署名した「日本・EU経済連携協定」の効果についてまとめた表を以下に掲載します。

クリックすると拡大します

ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事に、EPAには中国は参加できないと掲載されていますが、これはなぜでしょうか。それは、EPAには貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含むからです。

中国においては、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家がなされていません。


わかりやすい事例をだすと、たとえば戸籍です。すべての中国人の戸籍は、農村戸籍(農業戸籍)と都市戸籍(非農業戸籍)に分けられています。農村戸籍が約6割、都市戸籍が約4割で、1950年代後半に、都市住民の食糧供給を安定させ、社会保障を充実させるために導入さました。

以来、中国では農村から都市への移動は厳しく制限されていて、日本人のように自分の意思で勝手に引っ越ししたりはできないです。ちなみに都市で働く農民工、いわゆる出稼ぎ労働者がいるではないか、と思われるでしょうが、彼らは農村戸籍のまま都市で働くので、都市では都市住民と同じ社会保障は受けられません。これでは、民主的とはいえず、EPAには入れないのは当然です。

株価が急落したため落ち込む中国の個人投資家
株価が急落すると政府が介入して株式取引を中止することもある
さらに、中国は国家資本主義ともいわれるように、政治と経済が不可分に結びついており、先進国にみられるような、政府による経済の規制という範疇など超えて、政府が経済に直接関与することができます。実際中国の株式市場で株価が下落したときに、政府が介入して株式を売買できないようにしたこともあります。

中国にも司法組織なるものが存在するが、
その組織は中国共産党の下に位置している

中国は30年にわたる「改革開放」政策により、著しい経済発展を成し遂げました。ところが、依然として法治国家ではなく「人治国家」であるとの批判が多いです。それに対して中国政府はこれまでの30年間の法整備を理由に、「法制建設」が著しく進んでいると主張しています。

確かに30年前に比べると、中国の「法制」(法律の制定)は進んでおり、現在は憲法、民法、刑法などの基本法制に加え、物権法、担保法、独占禁止法などの専門法制も制定されています。それによって、人々が日常生活の中で依拠することのできる法的根拠ができてはいます。

その一方で、それを効率的に施行するための施行細則は大幅に遅れています。何よりも、行政、立法、司法の三権分立が導入されていないため、法の執行が不十分と言わざるを得ないです。中国では、裁判所は全国人民代表会議の下に位置づけられている。つまり、共産党の指導の下にあるわけです。 

このような中国は、とても日米をはじめとする先進国と、まともな自由貿易などできません。検討するまでもなく、最初から経済連携協定(EPA)など締結できないのです。

しかし、このような国中国と貿易を推進しようとする愚かな国がありました。それがドイツです。

ドイツはEU随一の経済大国ですが、EU設立・加盟後は単独での自由貿易協定は締結せず、EUとして通商協定の交渉や締結を行っていました。

そのドイツのメルケル首相と同国を訪問した中国の李克強首相が今月の9日、会談を開き、200億ユーロ(235億1000万ドル)規模の取引で合意したのです。ただし、これは、FTAではありません。

ただ、この会談の席上で、李克強は「自由貿易」という言葉をしきりに使っていました。しかし、これは、噴飯ものでしょう。元々中国は上記で掲載したように、まともに自由貿易などできるような状態ではありません。

民主的でもなく、政治と経済が分離されてもおらず、法治国家ですらない中国が、他国と普通に貿易したとしても、これらを守っている国と貿易をすれば、不平等条約にならざるを得ません。

ドイツが中国と貿易を続ければ、最初は儲けることができるかもしれませんが、いずれ中国から富を収奪される結果となります。

これについては、すでにこのブログでもとりあげました。その記事のリンクを以下に掲載します。
なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い―【私の論評】国防を蔑ろにする「ぶったるみドイツ」に活を入れているトランプ大統領(゚д゚)!
メルケルと李克強
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、ドイツは緊縮財政で主力戦闘機であるユーロファイターが4機しか稼働しない状態にあり、さらに中国とは貿易を推進しようとしてまいます。

以下にこの記事の結論部分だけを引用します。
いくら中国から地理的に離れているとはいえ、ドイツも含まれる戦後秩序を崩し世界の半分を支配しようとする中国に経済的に接近するとともに、緊縮財政で戦闘機の運用もままならないという、独立国家の根幹の安全保障を蔑ろにするドイツは、まさにぶったるみ状態にあります。ドイツの長い歴史の中でも、これほど国防が蔑ろにされた時期はなかったでしょう。 
このような状況のドイツにトランプ大統領は活をいれているのです。ドイツにはこのぶったるみ状態からはやく目覚めてほしいものです。そうでないと、中国に良いように利用されるだけです。

そうして、ドイツを含めたEUも、保護主義中国に対して結束すべき時であることを強く認識すべきです。
しかも、これはあまりにタイミングが悪すぎます、トランプ政権の米国が中国に対して貿易戦争を開始したときとほぼ同時にメルケルは李克強と会談し、貿易を推進させることを公表しているのです。

この状況はトランプ大統領からみれば、まさにドイツは「ぶったるみ」状態にあると写ったことでしょう。だから先日のNATO総会でも「NATO諸国が国防費の目標最低値として設定しているGDP比2%はアメリカの半分であり、アメリカ並みに4%に引き上げるべきである」とトランプ大統領は主張したのです。

安倍政権はドイツの「ぶったるみ状況」とは対照的です。そもそ、日本の安倍総理ははやい段階から「安全保障のダイヤモンド」により、中国を封じ込めようと提唱しています。その日本がEUとEPAを結ぶことにより、これに入れない中国に対して、先進国の結束ぶりを誇示することができました。

ドイツの企業も、EUもドイツも、EPAすら締結していない中国と貿易をすることに危険性に目覚めることになったと思います。ドイツ企業が中国に肩入れすれば、知的財産権も蔑ろにされ、中国に取り込まれる可能性が大です。

一方、EUとEPAを締結している日本となら、そのあたりは厳格に守られることになります。

これから、ドイツ国内でも企業によって明暗が別れることになると思います。目先の利益に目がくらみ中国に過度に肩入れした企業は衰退し、そうではない企業は繁栄の道を歩むことになるでしょう。

さらに、ドイツを見習い中国に肩入れをしようとしている他のEU諸国にとっても、かなりの牽制になったことでしょう。

米国は、本格的に中国に貿易戦争を挑んでいます。そうして、トランプ政権は、中国が現在の体制を変えるか、あるいは米国を頂点とする、戦後秩序に対抗心むき出しの中国を経済的に疲弊させ、二度と戦後秩序に対抗できないくらいに弱体化するまで、戦争を続けます。まさに、天下分け目の大戦に突入したのです。

そうして、この戦争は中国には全く勝ち目はありません。中国は、現在の体制を変えて、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めるとすれば、現状の共産党独裁体制を崩さざるを得ません。しかし、それはなかなかできそうにもありません。

それができないとすれば、米国から経済が完璧に弱体化するまで、貿易戦争や、金融制裁で経済戦争を挑まれ、最終的にはこれに敗北し、図体が大きいだけの、凡庸なアジアの独裁国家に成り果てることになります。

そのような中国に肩入れしようとする「ぶったるみドイツ」にまさに日米は、二連発でパンチを喰らわしたといえそうです。

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2018年6月19日火曜日

安倍首相&トランプ氏の“罠”にはまった正恩氏 トランプ氏「拉致解決拒否なら経済発展はない」―【私の論評】北を屈服させつつある日米の次のターゲットは中国(゚д゚)!


安倍首相

米朝首脳会談を受け、日本政府は「拉致問題」解決のための日朝首脳会談の実現に向けて動き出している。これに対し、北朝鮮の国営ラジオ「平壌放送」は「(拉致問題は)すでに解決された」「(日本は)稚拙かつ愚か」との論評を流すなど、いつもの揺さぶりをかけてきた。ただ、水面下では、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮の関係者が、安倍晋三政権への接触を図ってきているという。ジャーナリストの加賀孝英氏が最新情報に迫った。  

 「私は北朝鮮にダマされない」「(米朝首脳会談で、ドナルド・トランプ大統領が、正恩氏に拉致問題を提起した)次は私の番だ」「日本が北朝鮮と直接(日朝首脳会談で)向き合い、拉致問題を解決していく」

 安倍晋三首相は14日、首相官邸で、拉致被害者家族に、断固たる決意をこう表明した。

 さらに、安倍首相は16日、読売テレビ系「ウェークアップ!ぷらす」に生出演し、「(拉致問題は)すべての拉致被害者を日本に帰国させたとき、初めて解決する」「拉致問題が解決しなければ、経済支援は行わない」「正恩氏が、大きな決断をすることが求められる」と断言した。

 いまが拉致被害者全員奪還の最大のチャンスだ。

 驚かないでいただきたい。米朝首脳会談(12日)以降、「北朝鮮の完全非核化」を含め、北朝鮮が生きるか死ぬかのカギは、日本が握っている。

 旧知の米情報当局関係者は「すべては、安倍首相とトランプ氏が綿密に仕組んだ罠(わな)だ。正恩氏は完全にはまった。逃げられない」といい、続けた。

 「米朝首脳会談の席上、トランプ氏は『戦争か、非核化か』と決断を迫り、『完全非核化すれば、北朝鮮に素晴らしい経済発展がある』とバラ色のビデオを見せた。正恩氏は大喜びだった。そのうえで『完全非核化後、経済制裁は解く。だが、米国は1セントもカネは出さない。中国や韓国もほぼ同じだ。頼れるのは日本だけだ。拉致問題を解決すれば安倍首相は応じる。解決拒否なら経済発展はない。いま決めろ!』とやった。正恩氏は震えながら『(安倍首相と)会いたい』といった」

 米朝首脳会談後の夜、トランプ氏は安倍首相に次のように電話している。

 「今後は非核化と同時に、拉致問題を交渉して進めていかなければならない。シンゾー、ビッグ・プレーヤーとして関わってほしい」「100%、シンゾーを信頼している」

 トランプ氏の勝利宣言ではないか!

 現時点で、官邸が検討している日朝首脳会談の候補は以下の3つだ。

 (1)8月中に、安倍首相が電撃訪朝し、平壌(ピョンヤン)で開催する。

 (2)9月11~13日に、ロシア極東ウラジオストクで国際会議「東方経済フォーラム」が開かれる。ウラジーミル・プーチン大統領が、正恩氏を招待し、フォーラムの合間に安倍首相と会談する。

 (3)9月中~下旬、米ニューヨークでの国連総会に合わせて設定する。

 衝撃情報がある。水面下で、北朝鮮はとんでもない行動に出ている。以下、日米情報当局から入手したものだ。

 「米朝首脳会談から帰国後、正恩氏は幹部らに『日朝首脳会談の早期実現』を命令した。幹部らは『このままでは、正恩氏と北朝鮮のメンツが立たない』と頭を抱え、日本国内の北朝鮮協力者に『正恩氏礼賛、安倍潰しの世論工作をやれ!』と秘密指令を出した」

 「首相官邸や自民党の周辺に、北朝鮮関係者とされる人々が秘密接触している。彼らは『(拉致被害者を帰したら)安倍首相は本当に北朝鮮を支援するのか。信用していいのか』『拉致被害者を帰して、日本で激しい北朝鮮バッシングが起きたら、抑えられるのか』と泣きついている」

 日本はこのチャンスを絶対に逃してはならない。何度でもいう。拉致被害者全員の帰国は日本人全員の悲願だ。日本の主権がかかっている。

 だが、問題は左派野党の方々だ。

 政府・与党が「国会会期の1カ月延長」を申し入れたら、断固拒否したのだ。

 はぁ? 能天気もいい加減にしろ! 現状が分かっているのか。ゴールデンウイーク前後には職場放棄の「18連休」で、国民からは「税金ドロボウ!」と批判された。反省すらない。あきれてものが言えない。

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】北を屈服させつつある日米の次のターゲットは中国(゚д゚)!

この記事の冒頭の記事で、"米朝首脳会談(12日)以降、「北朝鮮の完全非核化」を含め、北朝鮮が生きるか死ぬかのカギは、日本が握っている"というのは間違いないでしょう。

これは、トランプ大統領が意図的にそのように仕向けたのだと思います。何しろ、米国は北朝鮮に長年にわたって騙され続けてきたという経緯があります。

その米国がまた北朝鮮に援助などの面で直接関われば、また同じことを繰り返す可能性が大きいです。だからこそ、トランプ大統領は援助の部分は安倍総理に任せたのでしょう。

実際安倍総理なら、かなり前から北朝鮮と交渉してきたという経緯があります。北朝鮮との交渉ということでは、各国首脳の中では最も経験のあるうちの一人であることは間違いありません。

長年北と交渉をしてきた経験のある安倍総理

まさに、日本が北への支援にあたるということになれば、拉致問題の解決に関して北に譲ることはないでしょうし、拉致問題は、核の完全放棄に対する正確なリトマス試験紙なる可能性が高いです。

拉致問題を積極的に解決しようとしない北が、核の完全放棄だけを積極的にするなどということは考えにくいです。

このブログでは、米朝首脳会談後すみやかに、中朝首脳会談が開催されるか否かが、リスマス試験紙になるのではないかという見方をしていましたが、それよりも、拉致問題のほうがより正確なものになることでしょう。

実際、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が19日、空路で北京に到着し、2日間にわたる訪中日程を開始しています。中国の習近平国家主席は金氏の滞在中、3月と5月に続き3度目となる首脳会談を実施。朝鮮半島の非核化や平和体制構築を巡る米朝間での協議本格化を見据え、中国の立場を伝え、積極的に関与する姿勢を強調する構えのようです。

6月12日の米朝首脳会談で北朝鮮は完全な非核化を約束しました。ただ米側は対北朝鮮制裁解除は完全非核化実現後になるとの立場で、非核化の行動ごとに北朝鮮が見返りを得る「段階的措置」を求める北朝鮮側の主張とは隔たりがあります。

この隔たりを埋めなおかつ、拉致問題を解決しなければ、日本は北朝鮮を支援することはありません。というより、日本の国民感情を考慮すればそのようなことはできないでしょう。



日本だけが、拉致問題を北朝鮮に迫っても、日本は北朝鮮に憲法の制約上軍事オプションを用いることは難しいので、たとえ援助をするという約束をしても、北が拉致問題解決に応じることはなかなかないと考えられますが、同時に米国の強大な軍事力を背景にすれば、話は違ってきます。

拉致問題を解決しなければ、日米による制裁はさらに強化され、それても北が応じなければ、次の段階では、機雷封鎖や一部爆撃をして、北朝鮮を完璧に孤立させることもできます。最後の段階では米国が軍事オプションを用いることになります。その時は、金正恩がこの世から姿を消すことになります。

これだと、北朝鮮は結局日本の経済支援を受け入れざるをない状況になります。

現在、トランプ政権は中国と貿易戦争を行っています。これに関しても、米国だけではなく、日本も絡めばかなりのことができるはずです。

いずれにせよ、トランプ大統領としては日米の協力のもとに北を早い段階で屈服させ、中国に対してさらに激しい締め付けを行い、いずれ屈服させたいと考えていることでしょう。


トランプ大統領は15日に、中国からの輸入品500億ドル相当への25%の追加関税措置を発表したばかりで、その際、中国が報復措置を講じた場合は追加関税を課すと述べていた。中国は直ちに報復措置を発表しました。

トランプ米大統領は18日、中国が発表済みの報復措置を実施すれば、同国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)相当に追加関税を適用すると警告した。中国側は直ちに対抗する姿勢を打ち出し、このまま行けば米中貿易摩擦の一段の激化は必至の様相です。

この貿易戦争、以前もこのブログでも掲載したように、中国には全く勝ち目がありません。この貿易戦争、いずれかの段階化で日米が協力して、中国に対する制裁という形にもっていけば、中国はかなり窮することでしょう。

中国も、北朝鮮も、まともに先進国などと貿易をしたいのなら、民主化、政治と経済の分離、法治国家化することを迫られることになります。

しかし、これを実行するとすれば、両国とも現体制は崩壊するしかなくなります。

その日が来るのは案外近いかもしれません。

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