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2023年3月26日日曜日

中国で拘束男性はアステラス社員 国内法違反か―【私の論評】中共による邦人拘束等では牽制できなくなった、岸田政権による日本の対中国構造変化(゚д゚)!

中国で拘束男性はアステラス社員 国内法違反か


 中国の国内法に違反したとして北京市で今月、当局に拘束された日本企業幹部の50代の日本人男性が、アステラス製薬の社員であることが26日、分かった。アステラスの広報担当者が共同通信の取材に「拘束されたのは当社の社員で間違いない」と明らかにした。

 男性の肩書や年齢、拘束に至る経緯といった詳しい内容は「個人情報の観点に加えて、分かっていないことも多い」として明らかにしなかった。アステラスは「外務省を通じて情報収集をしていく」と説明している。

 男性は反スパイ法などの疑いをかけられた可能性もある。日本政府は早期解放を中国政府に求めている。

【私の論評】中共による邦人拘束等では牽制できなくなった、岸田政権による日本の対中国構造変化(゚д゚)!

昨日は、このブログで、岸田政権が中国に対峙する姿勢をとってきたことを述べました。

岸田首相は、昨年9月安倍元総理の国葬の時に、台湾は献花の際、国名や国際機関名などを読み上げる「指名献花」の対象とし、今年1月には新日英同盟を締結、2月には岸田文雄首相に対する孔鉉佑(こう・げんゆう)中国大使の離任あいさつの申請を断り、その後今月は丁度習近平がロシアを訪問していた時の、インド訪問直後にウクライナ訪問をしていました。

日本人が中国で拘束されたニュースは今月25日ですが、実際に拘束したのは、ウクライナ訪問の前であったと考えられます。絶好のタイミングの岸田首相のウクライナ訪問で、中国はメンツを潰された形になりました。

中国としては、中国大使の離任挨拶を断った日本に対して、意趣返し、もしくは牽制のため、日本人を拘束した可能性があります。こうした圧力にも屈せず、岸田首相はウクライナ電撃訪問を果たしたと見られます。

ただし、日本政府関係者は「首相と大使は対等ではない。外交儀礼上は何ら問題ない」と説明。日本の前駐中国大使の離任時に習氏ら最高指導部との面会が実現しなかったため日本側には「相互主義の対応を取る必要がある」との判断もあったといいます。

令和元年(2019年)6月11日、当時の安倍総理は、総理大臣官邸で中華人民共和国の着任したばかりの孔鉉佑(こう・げんゆう)駐日大使による表敬を受けました。孔鉉佑大使の大使着任目的の一つには、2020年春に予定されていた中国の習近平国家主席の国賓としての日本訪問を実現させることがあったと考えられます。

孔鉉佑駐日大使の表敬訪問を受けた安倍総理(当時)

2019年7月2日、孔鉉佑大使夫妻は東京のホテルニューオータニで盛大に着任パーティーを開催しました。日本の福田康夫、鳩山由紀夫両元首相、世耕弘成経済産業大臣、吉川貴盛農林水産大臣、西村康稔官房副長官、阿部俊子外務副大臣、和泉洋人首相補佐官ら政府高官、自民党の二階俊博幹事長、公明党の山口那津男党首、日本維新の会の片山虎之助共同代表ら与野党の首脳および衆参両院の百名近い国会議員、友好団体、経済界、主要メディア、シンクタンクの学者ら各界の人々、各国駐日使節および在日華僑華人、留学生、中国系企業の代表ら1000人余りが出席しました。

しかし、2020年3月に安倍政権は、コロナ感染症の拡大などを理由にし、習近平来日を断っていました。それ以来、日本政府は未だ、習近平の国賓待遇での来日を実現させていません。

習近平の国賓待遇での日本への招待が実現していれば、中国の国際社会の復帰への拍車がかかった可能性があります。さらに、この後に天皇陛下が中国訪問ということになれば、1996年の天皇(元上皇)中国訪問の再来になりかねませんでした。

当時は、1989年6月4日の天安門事件に対する西側諸国による厳しい対中経済制裁が行われていましたが、天皇訪中を皮切りに、西側諸国は制裁を解除したのです。

ところが、安倍元総理の国葬が執り行われた、9月27日のわずか2日後の9月29日、日中国交正常化50周年記念レセプションが、都内のホテルで開催され、林外相をはじめ、二階俊博元自民党幹事長(日中国交正常化50周年交流促進実行委員会最高顧問)、福田康夫元総理(同委員会最高顧問)、河野洋平・元衆院議長など、自民党の「親中勇士」たちが顔を揃えたのです。

いずれも日中友好を讃え、「中国なくして日本の経済は成立しない」というトーンの中で祝い合ったのです。

以下の写真は、日中国国交正常化50周年レセプションで乾杯する(右から)林芳正外務大臣、二階俊博衆議院議員、河野洋平日本国際貿易協会会長、福田康夫元内閣総理大臣、十倉雅和・日中国交正50周年交流促進実行委員長、孔鉉佑・中国駐日大使です。


当然のことながら、これには多くの保守派が憤り、林外務大臣の参加を放置したともみられた岸田政権にも批判が集まりました。

しかし、今回の一連の岸田総理の動きで、これらの動きはことごとく葬り去られたといえます、中共はもとより自民党内の親中派議員も、ことごとく梯子を外され、地面に叩きつけられたと言って良い状況になりました。

中国で邦人がスパイ容疑で逮捕された場合、日本が普通の国であれば、国内の中国人スパイをスパイ容疑で逮捕、身柄交換をします。ただし日本でまともなスパイ防止法がないので、今後は、これをまともに整備すべきです。

特定秘密保護法やセキュリティクリアランスはそのための前提です。このような制度改革が行われたとしても、普通に生活している人には、何の関係もありません。にもかかわらず、これに反対する人はどういう人なのか、誰にもでも理解できます。


岸田文雄首相は24日の参院予算委員会で、放送法の「政治的公平」を巡る総務省の行政文書を「捏造(ねつぞう)だ」と主張した高市早苗経済安全保障担当相について、野党から要求された罷免を拒否しました。立憲民主党の石垣のりこ氏への答弁において「いきなり更迭うんぬんはあまりに論理が飛躍している」と述べました。

セキュリティー・クリアランスを推進している高市大臣がこのような扱いを受けたことに対して、岸田首相がこのような発言をするのは当然のことだと思います。

先日このブログでは、岸田首相がキーウを訪問した2023年3月21日は、21世紀の世界において、日本と中国が真逆の立場を鮮明にして、別の道を進み始めた「運命の日」として記憶されることになり、 これから、日中関係が大きく変わることになると記しました。

しかし、説明が足りなかったので、何のことかご理解いただけない部分もあったと思います。本日は中国での邦人拘束を題材としながらも、この補足説明もさせていただきました。

もうこの方向性は、岸田首相によって誰も変えられない次元にまで変えられてしまい、構造変化を起こし、親中・媚中派議員が、今後何をしても、騒いでもほとんど意味を持たなくなりました。中国も日本人拘束などで、日本に牽制をしたとしても、尖閣で暴れても、その他の戦狼外交等を仕掛けたとしても、この流れは変えられなくなりました。

来るG7サミットにおいても、岸田首相はこの路線を固辞し、G7広島サミットに臨み、中国への対峙の姿勢を明確にし、日本はかつての安倍政権の時のように、世界をリードする可能性が高まったといえます。

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2022年9月29日木曜日

短命に終わった「麻生政権・菅政権」と、いまの岸田政権の“ヤバすぎる共通点”―【私の論評】危機管理能力が欠如した岸総理に対し、自民党保守派には不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力に(゚д゚)!

短命に終わった「麻生政権・菅政権」と、いまの岸田政権の“ヤバすぎる共通点”

“最悪の自民党政権”と呼ばれた政権

 岸田文雄政権の支持率が急落している。岸田政権の前の菅義偉内閣は1年1か月で崩壊した。岸田政権はまもなく1年を迎える。岸田政権は大丈夫なのだろうか。永田町では「政権の存続の指標」と言われる“青木方程式”で分析した。なお、内閣支持率、政党支持率はすべてNHK世論調査による。

 “青木の法則”とも呼ばれる「青木方程式」は、自民党の青木幹雄元参院議員会長が経験に基づき提唱したもので、「内閣支持率と政党支持率の合計が50%を下回ると政権は倒れる」という法則だ。

 確かに、近年の政権が倒れた時の状況を見ると、青木方程式が当てはまるケースは多い。(表1)


 第1次安倍政権以降、8人の首相が誕生しているが、このうち5人の政権は青木方程式が50%を下回り倒れている点を考えれば、青木方程式はある程度は信頼に値すると考えられる。

 ただ、福田康夫政権は青木方程式が50%を下回ってから4か月間生き延びたし、麻生太郎政権は月1度の世論調査で4回も青木方程式が50%を下回り、“最悪の自民党政権”と言われた。

 菅直人政権は4か月連続で50%を下回った後で倒れ、野田佳彦政権は1年4か月の政権期間のうち、12か月も50%を下回っていたことから、青木方程式は50%を下回ったからと言って、すぐに政権が倒れるというものではない。

 一方で、第1次安倍晋三政権以降で青木方程式が50%を下回らなかったのは、安倍政権(第1次から第4次まで)と菅政権だけだが、それでも政権は倒れる。青木方程式が50%を下回っていないから“安泰”というものでもない。

 安倍元首相の長期政権を引き継いだ菅政権は、不十分な新型コロナウイルス対策とワクチン接種対応への遅れに加え、衛星放送関連会社「東北新社」に勤務していた長男と総務省幹部らとの接待会食が明らかになったことが“引き金”となり、支持率の低下を招いた。

 菅政権を引き継いだ岸田政権は、新型コロナ対策以外の政策に対して不満や批判が多く、加えて、旧統一教会と自民党議員の関係に対する説明不足や対応不足を指摘する声、安倍元首相の「国葬実施」に対する反対意見が支持率低下の原因となっている。

 では、岸田政権の支持率と自民党支持率、青木方程式はどのように推移しているのだろうか。

 内閣支持率がもっとも高かったのは、22年5月と6月の59%。自民党支持率がもっとも高かったのは、22年2月の41.5%だった。内閣支持率と政党支持率の合計である青木方程式がもっとも高かったのは、22年6月の99.1%だ。(表2)


青木方程式が急落

 安倍元首相が銃撃によってお亡くなりになったのは7月8日。その後、7月16日から18日にかけて行われたNHKの7月世論調査では、内閣支持率は59%、自民党支持率は38.1%、青木方程式は97.4%だった。

 調査時点ではすでに、安倍元首相を襲撃した犯人と旧統一教会との関連が報道され、さらに、複数の自民党議員と旧統一教会の関連も報道され始めていたことで、自民党支持率は6月世論調査の40.1%から38.4%へ1.7ポイント低下した。

 だが、8月調査では自民党議員と関係が大きく広がり、岸田首相や自民党の対応に対する批判が強まった。加えて、安倍元首相の国葬が決まったことへの批判もあり、内閣支持率は7月の59%から一気に46%へ13ポイントも低下し、自民党支持率も38.4%から36.1%に2.3ポイント低下したことで、青木方程式は97.4%から82.1%へと15.3ポイントと大幅低下した。

 青木方程式が1か月で15ポイントを超えて低下することは“非常に稀”で、菅政権では一度もなかった。ただ、麻生政権では31.0ポイント低下したケースがある。

 そして、直近の9月世論調査では、内閣支持率は46%から40%に6ポイント低下、自民党支持率は36.1%から36.2%に0.1ポイント上昇し、青木方程式は82.1%から76.2%に5.9ポイント低下した。

麻生・菅政権はどうだったか

 安倍元首相襲撃事件が引き金となって、自民党議員と旧統一教会との関係、安倍元首相の国葬が内閣支持率、自民党支持率の低下に結び付いたことは明白だ。

 とは言え、岸田政権の9月世論調査での青木方程式は76.2%と危機ラインの50%を上回っている。それでも、政権が “安泰”ではないことは前述した。加えて、筆者には何点か気にかかる点がある。

 第1次安倍晋三内閣以降、ほとんどの政権が1年程度、長くても約1年半で政権が崩壊している。福田康夫政権は365日、麻生太郎政権は358日、鳩山由紀夫政権は266日、菅直人政権は452日、野田佳彦政権は482日、菅義偉政権は384日といった具合だ。そして、岸田政権は21年10月4日発足なので、まもなく1年を迎える。

 そこで、過去の政権の青木方程式を見ると、青木方程式が当てはまった典型例の麻生政権は、青木方程式がもっとも高かったのが発足時の08年9月の85.3%で、この時の内閣支持率は48%で自民党支持率は37.3%だった。

 その後、内閣支持率、自民党支持率とも急激に低下し、政権発足の4か月後の09年1月に青木方程式は危機ラインの50%を割り込み、48.4%に低下した。麻生政権の1年1か月の間に青木方程式の50%割れは6か月もあった。(表3)


 一方、青木方程式が50%を割り込むことなく倒れた菅政権の青木方程式は20年9月の発足時の102.8%がもっとも高い。この時、内閣支持率は62%。自民党支持率は40.8%で、共にもっとも高かった。

 その後、菅政権は支持率を下げ続け、21年9月には内閣支持率が29%と発足時から33ポイントも低下、自民党支持率も33.4%と発足時から7.4ポイント低下し、青木方程式も62.4%と発足時から40.4ポイント低下して最低となった。(表4)


3つの政権の共通

 この麻生、菅、岸田の3つの政権の青木方程式には、何の共通項もないように見える。そこで、3つの政権の発足後の青木方程式の動きを1つのグラフにまとめてみた。(表5)


 各内閣の青木方程式の水準は違うものの、1つの共通する動きは政権発足から9か月、10か月で青木方程式の数値が低下し始めることだ。この共通項は安倍政権を除く、多くの政権でも見られている。

 そして、麻生、菅の両政権では、内閣支持率が自民党支持率を下回ると、青木方程式が大きく低下を始めている。前述のように、岸田内閣の直近9月の内閣支持率は40%、自民党支持率は36.2%と両者はかなり接近している。

 さらに、麻生、菅政権とも、政権期間中に青木方程式が前月よりも“7回低下”した後に倒れている。他の政権でも同様の傾向が見られ、どうやら青木方程式の7回の低下というのは、政権にとっては一つの“鬼門”のようだ。現在、岸田政権の青木方程式は“6回低下”している。

 このように、岸田政権は(1)10月に発足1年を迎える、(2)政権発足10か月目から青木方程式が低下している、(3)内閣支持率と自民党支持率が接近している、(4)青木方程式が6回低下している―という状況にある。

 従って、10月の世論調査で内閣支持率、自民党支持率、そして青木方程式がどのように変化するのかは、岸田政権の存続を占う上で大きな意味を持ちそうだ。

鷲尾 香一(ジャーナリスト)

【私の論評】危機管理能力が欠如した岸総理に対し、自民党保守派には不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力に(゚д゚)!

上の記事、青木率の部分は非常に参考になります。その他の部分では、あまり参考にはならないです。ただ、青木率については詳しく分析し、グラフにしていたため、ブログに掲載することになしました。

まず、麻生政権のときの状況はどうだったかといえば、この頃からすでに日銀は金融引締を継続し、政府は緊縮財政を繰り返し、日本はいわゆる「失われた30年」に突入していました。


日本経済はデフレあったにも関わらず、日銀は金融引き締めを行い、政府は緊縮財政を継続していました。そのため、日本経済は低迷するばかりで、これでは自民党の誰が総理大臣になって新たな政権をつくっても、短期で終わったことでしょう。麻生政権崩壊の原因は、これが第一の原因ですし、他の原因もあるかもしれまんせんが、それは大勢に影響はなかったと思います。

これは、その後民主党政権になっても、日銀の金融政策、政府の財政政策は変わりなく、結局民主党政権も崩壊し、安倍政権に変わりました。民主党政権の崩壊も、失われた30年を終わらせるために、金融政策や財政政策を変更しなかったことが原因でしょう。

このことは、十年くらい前までは、なぜかマクロ経済的な考え方が日本では普及していなかったので、このようなことを語ってもほとんど顧みられなかったのですが、多くの心ある経済学者らが、日本でもマクロ経済的な見方を普及してきたので、最近ようやっと理解されるようになってきました。ただ、いまなお政治家の中には、昭和の頭で、経済対策=公共工事だと思いこんでいる古いタイプの政治家も多いようです。

その後、安倍政権になってから、日銀は、黒田総裁により異次元の包括的金融緩和に取り組みました。政府も、積極財政に転じました。そのため、雇用も改善し、経済も良くなりつつありました。これも、以前には理解されなかったのですが、マクロ経済学上では、当たり前すぎる雇用=日銀の金融政策という考え方も随分普及してきたようです。

ただ、さすがの安倍政権でも三党合意を崩すことはできず、2度の消費税増税を実施することになりました。そのため、デフレから完全脱却するには至りませんでしたが、安倍政権は二度にわたり消費税増税を延期したことと、日銀による金融緩和は継続されたので、雇用は劇的に改善されました。

この雇用の劇的な改善は、安倍長期政権の原動力になったことはいうまでもありません。他にも、安倍政権が長期となった原因もあるでしょうが、もし雇用の劇的な改善がなければ、安倍政権は長期政権にはなり得なかったことでしょう。ただ、この考えは、今でも理解されいないようで、特に民主党の議員らは全くこれに対して理解を示してないようです。

二度の増税によってデフレから完全脱却をしていなかった日本は、その後コロナ禍に襲われました。これに対して安倍・菅政権は、両政権において合計で100兆円の真水の経済対策を実施し、他国にはない日本独自の雇用調整助成金も活用して、大型の経済対策を実施して、他国ではコロナ禍によって、失業率が大幅に上昇したにも関わらず、日本では失業率を現在に至るまで、2%台で推移させるという大偉業を達成しました。

これは、大偉業なのであるにもかかわらず、マクロ経済に疎い、野党やマスコミはほとんど評価しませんが、実際に就職などで、雇用の劇的改善したことを身を以て体感した、若い人たちや、就職に関わった学校の先生や、企業の人事に関わった人たちは、これを高く評価しています。無論、市場関係者もこれを好感し、株価なども上がりました。

評価していないのは、野党とマスコミ関係者、リベラル派、左翼などだけだと思います。

菅政権に関しては、このブログでも指摘した通り、ワクチン接種は公約通りに実現し、日本に巣食う、鉄のトライアングル医療版である、尾身会長ですら抗えない医療村の大抵抗にあったために、病床確保には失敗したものの、医療崩壊も起こすことなく、大勢では大成功したと思います。

それに先程指摘したとおりに、失業率も上昇させることはなく、そのため失業が深刻な社会問題にもなることはありませんでした。実際、皆さん、思い返してください、 2008年あたりから見られた、派遣村のような、コロナ派遣村のようなものが設営されたといことは、聴いたことがないです。

無論、相談の受付とか、食料などの援助というものはありましたが、大規模な年越し村のようなものは設営されませんでした。

菅政権が崩壊した理由など後付でいろいろいう人がいますが、私はこれはほとんどが間違いだと思っています。一番の理由は、自民党内で、菅政権の支持率が下がっているので、菅政権では次の選挙では、戦えないという声が巻き起こり、菅総理はもともと一年の短期政権と決まっていたので、総裁選に出ずに自ら政権を終わらせたというのが主な原因だと考えられます。

そもそも、菅政権を続けようという意思があれば、続けられた余地は十分あったと思います。私としては、続けたほうが、岸田政権になるよりは、はるかにまともだったと思いました。そうして、テレビの印象操作などで漠然と菅総理では駄目だなどと考えていた人たちの多くも、今「どうして菅氏に反対したのか」と問われれば、満足に答えられない人も多いのではないかと思います。実際、少し前から、菅前総理の見直しの動きがあるそうです。何を今更という気がします。

ただ菅氏が政権を自ら終わらせることができた背景としては、安倍元総理という、実績もあり最大派閥のトップという強力な政治家が存在していたということが大きいでしょう。誰が次の総理大臣になっても、派閥の均衡が大きく崩れることはないし、政策の大きな変更もないだろうという安心感からか、結局総裁選で岸田氏が勝ち、総理大臣になりました。

ただ、安倍元総理が暗殺された、後の内閣改造は、酷いものでした。露骨な安倍派の排除でした。この内閣改造は、論評にも値しない酷いものでした。

しかも、内閣改造の前には、「統一教会に関係があった人は閣僚から外す」として、旧統一教会と比較的関係が強いとみられていた、安倍派を外す旨を公表しての人事でした。

安倍派という多数派をないがしろにする岸田総理の人事をみて、他派閥も反発を強めたことでしょう。

しかも、内閣改造で頭がパンパンだったとみられる、岸田首相は、中国にミサイルを発射されても、国家安全保障会議 (NSC)を開催しませんでした。

旧統一教会に関しては、厳密な法律の適用や、新たな法律の検討などを飛び越して、憲法や法律に抵触するおそれさえある統一教会排除を宣言し、それこそ、魔女狩りに等しいような批判をした、野党やマスコミの土俵にみずから乗ってしまうようなことをやらかしてしまいました。

この2つのことによって、岸田総理には「危機管理能力」が欠如していることが明らかになりました。これは、歴代内閣の中でも最悪かもしれまません。

そうして、無派閥の議員や、各派閥にも多く存在する保守派の議員は、財務省に近く、親中派でもある宏池会に対して、安倍元首相が亡くなった現在では、何をやらかすかわからないと疑心暗鬼になり反発していることでしょう。

実際、無派閥で保守派の高市早苗経済安保担当相は「FNNプライムライン」で不満を公表しています。
このようなことを、外部に漏らしてしまうということは、自民党内で相当不満が鬱積していることを示しているものと考えられます。そうでなければ、このような発言はできないと思います。

安倍元総理の「国葬儀」までは、こらえてきたのでしょうが、こらえきれなくなって高市氏は、このような発言をしたのでしょう。そうして、これは無論高市氏一人ということではないでしょう。

自民党の大勢は、統一教会関連のことが今後どのように推移していくのかを見守った上で、自民党を毀損しないようにしたうえで、どのように岸田政権を短期政権にするかという方向で政局が動いていくものと思います。

このような動きを理解したうえで、青木率の推移をみていけば、次の政局の動きがみえてくると思います。

ただ、安倍元総理が亡き現在、安倍元総理の政策を継承できる有力政治家は限られています。高市氏や安倍派の幹部たちも残念ながら、今はまだ非力です。

岸田総理は、「国葬儀」で安倍路線を引き継ぐことを約束しましたが、残念ながら先に述べたように、党内政治においても、党外政治や、外交・安全保証に関しても、危機管理能力が欠如していることがはっきりしました。このような人が、総理大臣を長く続けていれば、日本はいつ、どのような危機に見舞われるかわかったものではありません。

自民党には、危機管理を適切に行い、安倍路線引き継ぎつつ、若手を育ている政治家が必要です。ただ、これは一人の政治家では無理だと思います。複数の政治家が協力して、このようなことを実行していくべきです。改めて、安倍元総理の偉大さが理解できます。

そうして、数の力を知る自民党は、今回は、慎重に自民党を毀損しない形で政局をすすめていくでしょう。そのため、現在は自民党内には目立つた岸田おろしの動きはみえていません。

ただ、自民党保守派には相当不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力になるのは、間違いないようです。

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2022年8月26日金曜日

複雑化する安倍氏不在の政界 旧統一教会問題追及、主導権争いが見え隠れする謀略も…真の後継者は政策論で浮かぶ―【私の論評】安倍元総理の真の後継者は、岸信夫氏と菅義偉氏か(゚д゚)!



 25日に安倍晋三元首相の四十九日を迎えた。安倍氏が暗殺されて以降、政界の動きに変化は生じているのか。

 自民党議員なら、表立って聞かれれば、ほとんどの人が「安倍さんの遺志を継いでいきたい」と答えるだろう。ただし、安倍さんの不在はあまりに大きく、まさに余人をもって代えがたかったことが改めて痛感された。

 もっとも、時は動いており、現実はかなり複雑になっている。その典型は安倍派の後継だ。当面は集団運営体制しかありえないが、裏を返せば、誰もが認める後継者がいないということだ。

 安倍さんの葬儀を仕切っていた安倍派幹部に対してさまざまな批判が出ていたが、これは水面下でさまざまな動きが渦巻いているということで、事態がただならないことを示していた。

 岸田文雄政権は事前の予想に反し、四十九日の前に党人事・内閣改造を急いだ。そして、党幹部・閣僚として、萩生田光一政調会長、西村康稔経済産業相、松野博一官房長官を指名した。安倍派のパワーバランスを効率した人事だろう。

 だが、内閣改造は岸田政権にとって逆風になっている。これまで内閣改造では、サプライズやご祝儀もあり、内閣支持率が上昇するのが常であったが、今回は各種世論調査で支持率が低下した。

 筆者の見るところ、以前の本コラムで書いたように改造人事がひどかったのが主因であるが、世界平和統一家庭連合(旧統一協会)との関係も足を引っ張っている。

 あらかじめ断っておくが、マスコミが政治家と旧統一教会との接点を問題視するというアジェンダ設定はまったくばかげている。宗教との関係は、あくまで憲法で規定された政教分離にとどまるべきだ。

 宗教からみれば、その政党を支持しようと自由だ。政治の方からみても、内面の自由である宗教の自由があるので、事前に相手に宗教を聞くのは不適切だ。なので、結果として接点を持っても構わないだろう。政教分離は、国(政府)が特定宗教をサポートすることを禁じているだけだ。ただし、接点を持った相手が法令違反をしていれば別だ。

 旧統一協会との接点に関するマスコミの追及では、特定の政治家だけが叩かれるというイメージ操作が行われているように感じる。その背後には、「ポスト安倍」についての政治家の主導権争いも見え隠れして、各種の謀略的なリークが横行しているのかもしれない。

 ポスト安倍は混沌(こんとん)としているが、これから安全保障と財政について、安倍さんの先見の明が見えてくる。そのときに真の後継者が政策論の中で浮かび上がってくるだろう。ただちに、世界のリーダーからも認められることはないだろうが、国内での政策論争によりずぬけた人が出てこないと日本にとっても困ってしまう。

 誰なのかはいまの段階では分からないが、しっかり政策を継承し、国民からの支持もあり、政界内でも実力を発揮できる人を期待したい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍元総理の真の後継者は、岸信夫氏と菅義偉氏か(゚д゚)!

自民党の安倍晋三元首相の「四十九日」を迎えた25日、安倍派(清和政策研究会、97人)は党本部で総会を開き、約60人が出席して安倍氏を追悼しました。

出席者は冒頭、安倍氏の写真を前に黙禱(もくとう)をささげ、会長代理の塩谷立元文部科学相は「安倍会長の遺志を継いで、心を一つにして政治を進めていくことを誓いたい」とあいさつしました。山口県下関市で10月15日に予定される安倍氏の県民葬について「基本的には全員で出席したい」と述べました。

7月21日に自民党本部で集会を開催した安倍派

総会に先立つ幹事会で、先の内閣改造・党役員人事を受けた派内の人事を決めました。安倍氏の実弟である岸信夫首相補佐官らを副会長、萩生田光一政調会長を常任幹事、西村康稔経済産業相の入閣に伴い高木毅国対委員長を事務総長に充てました。

事務総長代理ポストが新設され、柴山昌彦元文科相、福田達夫前総務会長、野上浩太郎参院国対委員長が就きました。塩谷氏は記者団に「結束を固めるため事務的にもう少しきめ細かくする」と狙いを説明しました。

9月27日の安倍氏の国葬(国葬儀)後、同派は新体制への移行が必要か否かも含め、派の在り方について検討する予定です。

岸氏は股関節を患われているとされていますが、私自身股関節の手術をしたことがあるので、その大変さはよくわかります。ただ、私自身も含めて、骨密度が低くない限り、手術するなどして、療養すれば、ほぼ元の状態に戻ります。私自身も現在では、松葉杖も杖もつかず、歩いて、普通の生活をしています。

ただ、リハビリなども含めて完治するには3ヶ月程度はかかります。病状が悪い場合には、人工股関節を入れるのですが、現在では医療も相当進んでいて、この場合でも骨密度が低くない限り、普通に歩き生活できるまでに回復する例が多いです。実際、そのような方を何人か知っています。

岸氏、股関節の本格的治療には、相当期間を要するため、一旦療養に入ると長期間入院することになるため、今までは治療を避けてきたのではないかと思います。股関節を患っていたにしても、たとえば骨の癌などではなく、ヒビが入ったとか、削れたなどの場合は、命に全く別状はないので、無理をすれば、仕事は続けられますが、それにしても、人によっては相当の痛みを伴う場合あります。

私の時も、手術の順番待ちがあったので、それまでの間は会社に松葉杖を突いて行って、業務をこなしました。一ヶ月くらいしてからようやっと手術が受けられるようになりました。

手術後の痛みも特になく、ただ長期間ベッドに股に三角形の形の枕のようなものを挟み、寝ていなくてはならず、しかも寝返りをうつときもそれを股に挟んだままで寝返りをうたなければならず、これは大変でした。

岸氏の股関節の状況は、細かなことは報道されませんが、今回防衛相を退いたといことで、今が根治のチャンスなのではないかと思います。

病院に長期入院というと、マイナスのイメージばかり思い浮かべる人もいると思いますが、そうとばかりもいえません。私自身は、比較的若い頃に入院しましたので、病室に書籍を持ち込み、かなり読書をしました。そうして、その時に読んだ書籍などその後の人生に随分役に立っています。

さて話しは変わりますが、菅氏が首相になったときに、岸氏を防衛大臣に抜擢した理由は何だったのでしょうか。 

それは、安倍前首相に気を遣うと同時に、同盟国アメリカの当時のトランプ政権に、「安倍政権の継承」を示すためだったと考えられます。その頃の、トランプ政権は、「台湾シフト」を鮮明にしており、今後は日本にも役割を求めてくるとみられていた次期でした。そうした日米台の連携に、最もふさわしいのが台湾にパイプを持つ岸氏の起用だったと考えれます。

当の岸防衛大臣(当時)は、2020年9月16日の就任会見で、官僚が用意したペーパーを読み上げて、こう述べました。

「今月11日に発表された(安倍)総理大臣の談話や菅総理大臣の指示を踏まえ、憲法の範囲内で国際法を順守し、専守防衛の考えのもとで厳しい判然保障環境において、平和と安全を抜く方策を検討していきたいと思います」

11日の総理談話」とは、次のようなものです。

<迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか。そういった問題意識の下、抑止力を強化するため、ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針を検討してまいりました。今年末までに、あるべき方策を示し、わが国を取り巻く厳しい安全保障環境に対応していくことといたします>

いわば安倍前首相の「遺訓」とも言うべき「敵基地攻撃能力の保有」です。「敵」とは表向きは北朝鮮ですが、実際には中国です。


当時から、日本の目の前には大きな地政学的リスクが横たわっていました。このことをしっかり認識していなければ、まともな「政策論」もできず、安保や経済政策について、何を話しても、何を考えても、浮いたような浅薄な内容になってしまいます。

そのようなことを考えると、岸氏こそ、高橋洋一氏の言う「しっかり政策を継承し、国民からの支持もあり、政界内でも実力を発揮できる人」なのではないかと思います。

ただ、高橋洋一は、政界にも一定の影響力があり、岸氏こそ安倍元総理の真の後継者であるなどと言ってしまえば、岸氏の芽を摘むことにもなりかねないので、敢えて言わなかったのだと思います。

菅前首相は、仕事師であり、安倍元総理の政策を着実に進めることはできると思いますが、新たな政策をつくり提唱するということになれば、やはり今では、岸氏に並ぶ人はいないのではないかと思います。

私は、菅氏も立派な安倍元総理の後継者ではあるとは思いますが、将来のことを考えれば、岸氏が一番だと思います。

菅総理(当時)と岸防衛大臣(当時)

菅氏と岸氏との良い協力関係ができ、それによって、安倍元総理の政策が確実に継承されることを期待したいです。

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2022年7月11日月曜日

自民大勝「安倍元首相が力くれた」 内閣改造・人事 政界への影響―【私の論評】「黄金の3年間」に安倍元総理の遺志を引き継ぐ議員と国民がとるべき行動(゚д゚)!

自民大勝「安倍元首相が力くれた」 内閣改造・人事 政界への影響

開票センターで当確者の名前に花を付ける自民党総裁の岸田首相(右)と高市政調会長=10日午後9時50分、東京・永田町の党本部

 参議院選挙での自民党大勝を受け、安倍元首相が銃撃され死亡した事件が、今後の政界に与える影響について、国会記者会館から、フジテレビ政治部・門脇功樹記者が中継でお伝えする。  今回の自民党の勝利について、安倍派の幹部は、「安倍元首相が力をくれた結果だ」と語っている。  参議院選挙の選挙運動の期間中、安倍元首相は、北海道や新潟など接戦区を中心に応援演説に入ったが、FNNが調べたところ、安倍氏が入った14選挙区全てで勝利を収めていた。  事件は投票日の2日前に起きたが、ある関係者は「弔い選挙の様相を帯びた最終日に岸田首相が入った大接戦の山梨・新潟は大差での勝利となった」と話している。  一方、党内からは「安倍元首相が、保守派のよりどころになって意見をまとめ、岸田政権とのバランスを保っていた。それが大きく崩れた」と、政権への影響を懸念する声も出ている。  岸田首相は参院選を受けて、内閣改造や党役員人事に向けた調整を進めるが、これまで以上に、党内への配慮が必要になるとみられる。

【私の論評】「黄金の3年間」に安倍元総理の遺志を引き継ぐ議員と国民がとるべき行動(゚д゚)!

参院選から一夜明けた11日、岸田首相は自民党本部で党総裁としての記者会見を行い、内閣改造や党役員人事について「党の結束を大事にしていかなければらならない」と述べました。

岸田首相は会見で内閣改造や党役員人事について「タイミングや内容を考えていかなければいけないが、今の時点では具体的なものは何も決めてはいない」と述べました。

その上で、岸田首相は「厳しい様々な課題を前にして党の結束を大事にしていかなければならない。そういった思いで人事等についても考えていきたい」と述べました。

安倍元総理が亡くなった直後なので、今後の安倍元総理が亡くなったことを受けて、今後の政局の動きなどを考えるのは、まだ時期尚早かもしれません。ただ、やはりかんがえて置かなければならないでしょう。

特に、安倍総理の遺志を引き継ぎ継承していくという観点からもこれはなおざりにできません。

安全保障や物価高について舌戦が繰り広げられるなか、選挙戦最終盤で安倍晋三元首相が暴漢に銃撃され、死去する衝撃的な事件が起きました。自民党の勢いを加速させたのは、「安倍氏の喪失」に危機感を募らせた岩盤保守層が、自民党に〝保守政党〟としての自覚を促した一押しだったとの見方があります。

岸田政権の基盤は強固になりましたが、「憲法改正」や「防衛力強化」を着実に推し進められるのでしょうか。9月までに実施する方向の「内閣改造・党役員人事」を含めて真価が問われることになるのは間違いないです。

「大勝の決め手は、岸田政権への信任ではない。安倍元首相が象徴する『保守・自民党への期待』であり、『野党への圧倒的不信任』だろう。岸田首相は、有権者、国民が期待する国家運営、政策実現に全身全霊を尽くすべきだ」

政治学者の岩田温氏は選挙結果について、こう分析しました。


報道各社の世論調査では、序盤から「自公与党優勢、野党苦戦」が伝えられてきました。だが、自民党が激戦区も含めて多くの小選挙区で競り勝ち、比例も上積みを見せたのは、安倍氏の「非業の死」を受けた、保守系有権者の投票行動だという見方です。

岩田氏は「国家観、安全保障、経済政策など、各政策で自民党を『真の保守』たらしめていたのは、『安倍晋三』という存在だった。その存在を失い、自民党の未来は大いに不安だ。安倍氏の後継者といえる人物も今のところ、見当たらない。安倍氏が実現できなかった政策がある。『憲法改正』と、国防を確かにする『防衛費増額』だ。岸田政権はこれを実現する責務がある。そうでなければ、安倍政権の継承は名乗れない」と指摘します。

岸田政権は今後、衆院を解散しなければ、3年間は国政選挙がなく、国家運営に専念できる「黄金の3年」と呼ばれる時期を迎えます。自民党と公明党、改憲に前向きな日本維新の会、国民民主党の合計議席は憲法改正の国会発議に必要な参院3分の2を大きく超えています。

国政の焦点である「憲法改正」への条件は整っています。これへの取り組みで、岸田政権の真剣さが、はっきり見えてくることになります。近く行われるであろう自民党役員人事・内閣改造が、岸田政権の試金石となるでしょう。

安倍晋三元首相の遺体を乗せた車を待つ自民党の高市早苗政調会長(右から2人目)と福田達夫総務会長(同3人目)=9日午後、東京都渋谷区

憲法改正の推進力は紛れもなく、安倍氏でした。政策が近い高市早苗政調会長をどう処遇するるでしょうか。仮に、高市氏を外し、後任を清和政策研究会(安倍派)からも取らなければ、憲法改正や防衛強化への岸田政権の決意は、極めて疑わしくなります。

ウクライナに侵攻したロシアや、覇権主義を強める中国は、日本周辺で協調して軍事活動を活発化させています。核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮の脅威も深刻です。

参院選では、泉健太代表の立憲民主党などが議席を減らし、松井一郎代表(大阪市長)の日本維新の会が躍進しました。「憲法9条への自衛隊明記」などの憲法改正に反対し、「護憲」に固執する左派政党に、有権者は厳しい審判を下したといえます。

岸田首相が領袖(りょうしゅう)を務める宏池会はリベラル色が強く、選挙後の岸田政権の対応には懸念も指摘されます。安倍氏の積み上げた、「憲法改正」や「防衛力強化」に向けた基盤を、岸田首相は前進させられるのか。厳しい視線が注がれることになります。

それと、もう一つ考えておかなければならないことがあります。安倍元総理は凶弾に倒れました。しかし、日本は終わっていません。円高を求めるあまり、需要不足の真っ只中で、金利を上げ、また財政の辻褄合わせの為に緊縮財政を目指すようなことがあれば。安倍総理が心配していた「失敗への道」を繰り返すことになります。

「失敗への」道を繰り返せば、自民党はまた短期で政権交替がおこることになるでしょう。岸田政権は民主党による政権交代直前の麻生政権のようになりかねません。

安倍元首相がご存命であれば、このようなことは起こらないかもしれません。しかし、今後はそのようなことが起こりかねません。

自民党の安倍元総理の遺志を引き継ごうという人たちは、安倍元総理の行動をよく研究すべきです。ただし、研究して、ある事象があったときに安倍元首相はどのような対応をしてどう成功したなど因果律だけに注目するので終わらせることなく、安倍元首相の行動を原理原則にまとめるべきです。

原理原則とは原理原則については以前このブログにも掲載したことがあります。経営学の大家であるドラッカー氏はマネジメントにおける原理原則を論じています。

そのためでしょうか、因果律を重んじる現在の米国の経営学においては、ドラッカーの原理原則を論じる経営学はほとんど忘れ去られているそうです。残念なことです。

さて、原理原則とはどのようなものか、以前書いた記事から引用します。
原理原則とは誰もが単純に理解できるものでなければ、原理原則になり得ません。ただし、原理原則が成立するまでには、科学的検証はもとより、様々な経験や失敗があり、その上に原理原則が成立し、高校や大学の教科書などにも記載されているのです。

そうして、財政政策の原理原則も簡単です。景気が悪ければ、積極財政と金融緩和を、景気が良ければ、緊縮財政と金融引締をするというものです。

そうして、景気の状況を見分ける原理原則も簡単です。一番重要なのは、失業率です。たとえば、景気が悪い時には失業率があがります。そうなれば、積極財政や金融緩和を行います。それで失業率が下がり始めますが、ある時点になれば、積極財政や金融緩和をしても、物価は上がるものの、失業率は下がらなくなります。その時点になったことが、はっきりすれば、積極財政や金融緩和をやめれば良いのです。

反対に景気が過熱してはっきりとしたインフレ状況の場合は、緊縮財政、金融引締を行います。そうすると、物価が下がり始めます、しかしこれも継続していると、やかで物価は下がらず、失業率が上がっていく状況になります。そうなれば、緊縮財政、金融引締をやめます。

基本的には、政府の財政政策と日銀(日本の中央銀行)の金融政策の基本です。さらに、もう一つあげておきます。それはデフレへの対処です。日本人は平成年間のほんどとはデフレであったため、デフレと聴いてもさほど驚かなくなってしまいましたが、デフレは景気・不景気を繰り返す通常の経済循環から逸脱した状況です。デフレが異常であるというのは、疑う余地のない原理原則です。

これは、財政・金融政策に関する原理原則です。あまりにも当たり前の原理原則です。しかし、経済関してはこの原理原則を踏襲していれば、ほぼ間違いはありません。

ただ、この原理原則を曲げて、隙きあらば増税しよう、緊縮しようというのが財務省です。そうして、アベノミックスを掲げて、積極財政をしようとした安倍元総理ですが、財務省の抵抗にあり、結局在任中に2度も消費税増税をせざるを得なくなりました。

ただ、安倍総理は在任中には、2度消費税増税の引き上げを延長しています。さらに、コロナ対策においては、安倍・菅両政権で合計100兆円の補正予算を捻出し、様々な対策を行い、両政権期間中の失業率は2%台で推移しました。これは、大いに参考にすべきです。この時の安倍元総理の行動など仔細に分析して、財務省への対処法を原理原則としてまとめておくと良いと思います。

外交でも、Quadの設立や、インド太平洋戦略などに尽力されました。これらも参考にすべきです。

マスコミや野党などは、安倍総理の功績を無視して、批判ばかりしますが、こうした論調に引きずられることなく、様々な成果に至ったその行動を学び、そこから原理原則を導くべきです。

原理原則化することにより、その内容を誰にでも伝えられます。原理原則にあてはまることなら、 すぐに解決できます。そうして、原理原則を多数つくっておけば、そこから外れる例外的な問題に集中することができます。

そうして、原理原則はきちんと文書にまとめ、勉強会などで公表できる形にすれば、さらに効率的になります。

そうして、例外的な問題に関しても、それを解決した後にその対処法など、原理原則化すれば、さらに例外は少なくなります。

こうすることにより迅速に行動できます。このようなやり方で、岸田総理がモタモタしたり、安倍元総理の遺志を引き継ごうとするたちに対して障害になるようであれば、素早く動いて、機先を制することなどができると思います。

「黄金の3年間」には、保守派は、安倍元総理の遺志を成就させるべく、反対派の自民党有力議員に陳情し、賛成派にまわるようにし、安倍元総理の遺志を引き継ごうとする議員たちは、原理原則に基づいて行動し、安倍元総理の遺志を実現すべきです。

特に、現在はSNSでも陳情できる便利な世の中になりました。これを利用しない手はないと思います。そうすることにより、安倍元総理の遺志を引き継ぐ議員たちを実質的に応援することにもなります。野党・マスコミ批判をするなとはいいませんが、批判ばかりしていても、得るところは少ないです。それよりも、自民党大物議員で意見が異なるひとたちに陳情しましょう。

そうして、この3年間を文字通り私たちの「黄金の3年間」にすべきです。

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2022年6月7日火曜日

岸田内閣の支持率が高い理由 論争なくマスコミも批判せず…参院選後に「緊縮」の嫌な予感―【私の論評】参院選自民大勝の後の「黄金の3年間」に私達がなすべきこと(゚д゚)!

日本の解き方

読売新聞の調査では内閣支持率64%、3回連続上昇


 各種世論調査で岸田文雄内閣が高い支持率を記録している。

 自民党の福田達夫総務会長は5月31日の記者会見で「傾向は各社あるが一番厳しくても50%、高いところは70%で正直あり得ないと思っている」「指導力や政策がどうこうでなく首相の人柄が大きい」と述べた。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は「安倍(晋三)政権は良くも悪くもいろいろなことをやって支持率も上下したが、リスクを取らず何もしないほうが支持率を一定に保てる」と分析した。

 岸田政権は、政治的な論争を避けるためか、問題となる案件について議論すらしない傾向がある。

 その一つが核の問題だ。ロシアのような核保有国が核を威嚇に使う時代となり、5大国が核を保有し他国は保有しないのを原則とする核不拡散体制が大きく揺らいでいる。

 そこで「核シェアリング(共有)」の議論もしていいはずだが、その議論すら封じてしまった。岸田首相は、核を使用された広島出身であることを理由としたが、二度と核を使用されないためにも、日本こそ議論する資格があるにも関わらずだ。財務省でよくいわれる「雉も鳴かずば撃たれまい」という戦略にみえる。

 野党も巻き込んだ争点がないので、マスコミは岸田政権を批判しない。もともと左派色のある岸田政権なので、左派系メディアは批判しにくい。一方で、岸田政権に近いメディアも当然、批判しない。首相の個人的なスキャンダルもなく、マスコミの出番はなくなっている。

 そうしたなかで外遊や各国首脳との会談でメディアへの露出は多いことが、政権の高い支持率につながっている。

 これを裏付けるデータもある。安倍政権とその後の菅義偉政権は若者の支持率が高く、マスコミ報道に左右されやすい傾向がある高齢層の支持率が低かった。岸田政権はその逆だ。岸田政権は、マスコミで批判がなく露出度が高いので、高齢層ほど支持率が高いという見方ができる。まさに、政策より人柄のなせるものだろう。

 これだけ政権支持率が高く、いわゆる青木率(政権支持率+自民党支持率)は100を超える勢いなので、7月に実施される参院選はかなりの確率で勝てるだろう。野党のふがいなさもあって、岸田政権は今のところ楽勝ムードだ。自民党は緩んではいけないと引き締めに躍起になっているほどだ。

 問題は、参院選後、大きな国政選挙がない「黄金の3年間」で何か仕掛けてくるか、これまで通り何もしないのかだ。

 筆者の嫌な予感だが、何か仕掛けてくるとすれば、「安倍・菅政権で緩んだ財政を立て直す」という理由で、コロナ増税など緊縮措置を行うことが考えられる。来年の日銀総裁人事でも「緊縮派」を持ってくるかもしれない。

 逆に世間の反発を恐れて選挙後も何もしないという場合、日本に本当に必要な改革も進まなくなるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】参院選自民大勝の後の「黄金の3年間」に私達がなすべきこと(゚д゚)!

財務省管理内閣ともいわれて揶揄されている、岸田政権ですが、参院選後の「黄金の3年間」で、確かに増税を仕掛けてくるかもしれません。

ただ、現実にはそう簡単ではないでしょう。岸田政権には安倍政権にはなかった良い点もあります。安倍菅政権ならメディアと野党にぶっ叩かれてなかなか進まなかった案件が進んでいます。


原発再開、憲法改正、防衛費拡大、安倍政権なら蜂の巣を突いた状態で、官邸前で大騒ぎして反対する人たちが大勢いました。岸田政権ではそのようなことはありません。やはり安倍総理にはファンも多かったものの、アンチファンも多かったのでしょう。とにかく、やることなすこと、些細なことでも話題となりました。

一方岸田首相は確たる信念もないようですから、叩けば転びます。叩いて動かせば良いのです。

そうして、叩いて動かす急先鋒が安倍元総理といえるかもしれません。最近安倍晋三元首相のメディア露出が際立っています。

保守系月刊誌の「正論」「月刊Hanada」「WiLL」の毎号にインタビューか、対談が掲載されています。テレビでは5月6日のBSフジの看板番組「プライムニュース」に生出演しました。

一方で、情報誌「選択」も安倍氏について毎月取り上げるが、こちらはほとんどがこき下ろす記事です。

双方のタイトルを比較すると分かりやすいです。

▼正論(7月号)「いまこそ9条語るべき」(古森義久氏との対談)▼WiLL(6月号)「プーチンは力の信奉者」(北村滋氏との対談)▼Hanada(5月号)「私が会ったプーチンとゼレンスキー」(インタビュー)▼選択(6月号)「安倍晋三『妄言』と暴走の理由」(記事)―。

次は安倍氏の政治講演、参院選自民党候補の応援ですが、これがすごいです。

3月26日=北海道千歳市。4月2日=福岡市、3日=山口市、8日=福井市、17日=福島県郡山市、23日=那覇市。5月9日=大分市、15日=松山市、18日=福岡市、29日=富山市。6月1日=東京、といった状況です。

産経新聞(6月2日付朝刊)が「派閥領袖(りょうしゅう) 再び夜動く―参院選へ結束と探り合い」と報じたように、夕食のメンツもまた興味深いです。

5月19日、麻生太郎自民党副総裁、茂木敏充幹事長と東京・赤坂のうなぎ料理店「重箱」。この3人の会食は3月14日以来です。

5月31日、菅義偉前首相と東京・松濤のフランス料理店「シェ松尾」。それぞれ夫人同伴で、安倍氏お気に入りのフレンチ。

松濤のフランス料理店「シェ松尾」

6月1日、二階俊博元幹事長と都内ホテルのアンダーズ東京。安倍派の西村康稔前経済再生相、稲田朋美元政調会長、二階派の林幹雄元幹事長代理、武田良太元総務相が同席。この会食が最も生臭いです。

大型連休中の安倍氏はゴルフ三昧でした。〝コロナ明け〟ということでしょうか、河口湖の別荘に首相秘書官経験者、友人を夫人ともども招き、バーベキューとゴルフを楽しみました。

男子ツアー「フジサンケイクラシック」の競技会場である富士桜カントリー倶楽部、富士ゴルフコースなどで4ラウンドプレーしたといいます。

側聞したところでは、ハーフで50を切った日の夜は、富士吉田市の焼き肉屋まで出向いて大いに食べ、飲んだといいます。要するに、最近は元気いっぱいなのです。

岸田文雄首相に政策上の注文は少なくないはずですが、この露出の意図するところはただ一つ。参院選後の内閣改造・党役員人事です。「最大派閥を忘れるな」ということです。


このようにして、安倍元総理は、岸田首相を叩くことができますから、かつて安倍氏が総理だったときに、二階派を人事でも政策でも一定の配慮をせざるを得なかったように、岸田総理も安倍派を配慮しないわけにはいきません。それも、安倍氏が二階氏を配慮した以上に配慮さぜるを得ないでしょう。

そうして、私達も岸田首相を叩くことはできます。もちろん、直接叩くことはできませんが、間接的に叩くことはできます。もちろん叩くというのは、本当に叩くとか、罵詈雑言を浴びせるということではありません。駆け引きなど、あらゆる手段をつかって、岸田政権の行動を変えることです。

ただし、原発を再稼働させたければ、原発反対派の自民党議員に対して、再稼働させるべきであると陳情すべきです。防衛費を2%にしたいなら、防衛費をあげることに反対している議員に陳情すべきです。積極財政をさせたいなら、緊縮派の議員に陳情して、積極財政の必要性を理解してもらうべきです。それも、できるだけ多数派で力のある議員にそうすべきです。そうして、最近ではツイッターでも陳情ができるようになり、陳情の敷居は従来から比較するとかなり敷居が低くなりました。これを利用しない手はありません。

民主党の政権交代で、野党が政権につけば、政治は官僚主導になることは多くの人が理解したと思います。これは最悪です。結局政権は何もできず、財務官僚の言いなりでした。当時のみななの党の代表渡辺喜美氏は、「野田政権は、財務省に頼らないと何もできない政権」と批判していました。実際、民主党政権は、増税をすることを確実にした他は、三年半重要なことは何も決められず、漂流していたといっても良い状況でした。

ただし、これは民主党政権に限らず、他の自民党以外の政党が政権の座についたとしてもほとんど変わらないでしょう。そもそも、他の政党では省庁とのパイプもなく、話しあいをしたり、コミュニケーションをはかるシステムがありません。その結果、官僚主導の政治にならざるをえないのです。だから、政権交代は官僚にとっては、大喜びすべきことなのです。

しかし、岸田政権であっても、自民党政権であれば、まだ相当ましです。安倍元総理や、まともなマクロ経済観を持った議員、外交や安保でもまともなセンスを持った議員も多いです。こういう人たちが、岸田氏を叩くとともに、私達も様々な議員に対して陳情することによって、こうした勢力に対して間接的にでもかなり応援できます。

このブログては、ロシアが変えたパランス・オブ・パワーについて述べたことがあります。日本の政治は、総理大臣や政権のみによって動くわけではありません。動く要素は多くありまずか、野党がそれに関われることはほとんどありません。

ましてや野党が政権与党になった場合、野党政権はほとんど力はなく、政治は官僚主導で動くことになります。自民党が政権与党である限り、自民党議員の派閥と、財務省などの官僚によるパランス・オブ・パワーで具体的な政策が決まり、実行されることになるのです。

この仕組には問題があります。特に、役人がバランス・オブ・パワーの一角をしめているのは大問題です。これは、いずれ是正されなければなりません。ただ、現在はそのような時ではありません。

現状では、日本はコロナ禍から立ち直っておらず、新たにウクライナ問題もあります。このような時期には変革よりも、既存のシステムにおいて、リアルに政治を変えていく地道な努力が求められます。この時期に構造改革のようなウルトラCをやろうとしてもうまくはいかないどころか、後退することになりかねません。

私自身は、保守であり、現実主義者です。その立場からすれば、いかなるウルトラC もすべきではなく過去に実証された確実な方法で着実に改革を実行すべきと思いますが、それにしても、「黄金の3年間」は、特に政権交代や、政治システムの大幅な改定などの毒薬、劇薬になりかねない事柄は実施すべきではないと思います。

良くしようとして、かえって破壊する後退するということはありがちなこどです。私はウルトラCはすべきではないと思いますが、どうしてもやりたければ、政治的、経済的、外交的にも安定した時に実施すべきものと思います。

ただし、すでに誰の目からみても明らかな、現時点での現実的な積極財政、安保の見直し、憲法の見直しなどは、現実的に着実に実行すべきと思います。パランス・オブ・パワーを保守派、積極財政に傾かせるように動くことが肝要だと思います。

大きな国政選挙がない「黄金の3年間」に私達がなすべきことは、これだと思います。

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2021年5月15日土曜日

【日本の解き方】経済成長のカギ握るワクチン接種状況 高齢者の接種が順調に進めば4~6月期GDPの追い風に―【私の論評】マスコミは森叩きのホップで成功したが、ワクチン叩きのステップ、オリンピック叩きのジャンプでコケて8月にはお通夜状態に(゚д゚)!

【日本の解き方】経済成長のカギ握るワクチン接種状況 高齢者の接種が順調に進めば4~6月期GDPの追い風に



 5月18日に1~3月期国内総生産(GDP)速報値が公表される。緊急事態宣言の影響はどの程度になるのか。そして3度目の宣言が延長されたことによる4~6月期への打撃はどの程度大きくなると考えられるだろうか。

 1~3月期GDPについては、既に終わっているので予想しやすい。1月からの緊急事態宣言の影響で前期比年率5%減程度となるというのが多くの民間エコノミストの予想だ。

 4~6月期については、まだ半分以上残っているので、現段階では予想が難しい。3、4月の時点では多くの民間エコノミストがV字回復するとみていて、前期比年率5%増程度とする予想が多かった。

 しかし、連休前に緊急事態宣言が出され、5月末まで延長されることになったので、4~6月期も前期比年率で若干のマイナス成長になる可能性も排除できない。

 当面の課題は、緊急事態宣言を5月末で解除できるかどうかだ。これは新規感染者数の予測次第で大きく結論が左右される。新規感染者数自体の予測は、これまでのデータもあり、予測者によりそれほど大きな違いはないが、ワクチン接種状況によりブレが大きくなる。日本では本格的なワクチン接種が4月から始まったばかりなので、今後接種がどのように行われるかや、その効果について不透明な部分もあるためだ。

 効果についてはある程度分かるが、どのように接種率が高まるかを見込むのは簡単ではない。政府は7月末までに約86%の自治体で65歳以上高齢者(約3600万人)の接種が完了すると見込んでいる。

 海外の例をみると、高齢者のワクチン接種が終われば医療崩壊という最悪の事態はなくなり、ある程度の経済活動はできる。その意味で、まさに高齢者のワクチン接種がカギになる。

 日本でワクチン接種がうまくいくのか懸念されている主要な問題はワクチンの打ち手不足だ。

 菅義偉首相の訪米により海外からの供給にはメドがたったが、看護師不足は事実だった。

 ところが、本コラムで指摘したが、政府は4月26日に歯科医師にもワクチン接種を認めるという超法規措置を出した。

 これはほとんど報じられていないので、民間予測の前提にも盛り込まれていない。しかし、実際には、超法規的措置は思わぬ効果を呼んでおり、看護師協会にも好影響を与えているようだ。看護師の供給が潜在看護師の職場復帰を容易にする政府の措置の効果と相まって実際にはかなり増えそうだ。

 となると、緊急事態宣言の動向も変わってくる。ワクチン接種がうまくいかないという前提では、7月にまた感染者数が増加することが予測され、5月末の解除は難しく、長期再延長というストーリーになるが、接種がうまく進めば5月末解除、または短期の再延期ですむこともあり得るだろう。

 前述したように4~6月期GDPがどうなるかもワクチン接種状況に依存するので、現段階で確たることは言い難いが、幾分の明るい兆しもある。もっとも30兆円以上のGDPギャップは残っており、対策は必要だ。 (内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】マスコミは森叩きのホップで成功したが、ワクチン叩きのステップ五輪叩きのジャンプでコケて8月にはお通夜状態に(゚д゚)!

厚労省が4月26日に日本医師会へ歯科医医師によるワクチン接種への協力を求める通知を出していまずが、これは実は、かつてない超法規的措置です。そもそも、ワクチンを注射できるのは、医師法によって医師と看護師しかできないと定められています。

しかし、歯科医もできるとしたのです。これは、上の記事にもあるように、超法規的措置です。これは、現行の法律では、医師法違反ということになります。過去にもインフルエンザやその他の病気でワクチンを集団接種することはありましたが、このような超法規的措置は過去に一度あったきりです。

ポリオ生ワクチン(経口式)の接種をうける子どもたち(1961年)

それは、1960年(昭和35年)のポリオ大流行時にソ連やカナダから超法規的措置で生ワクチンを緊急輸入し、大流行を終息させた誇るべき先例です。

超法規的措置とは、法治国家において、法令が想定していない緊急事態などの場合に、法令に規定されていない非常の措置を行うことを言います。国家緊急権とはやや異なる概念です。

戦後日本において行われた事例は、上記を含めて以下に述べる事例も「超法規的措置」というより「超実定法的措置」が適切な表現となされ、憲法に反する行政権の行使ではなく、違憲ではないとされています(第183回通常国会衆議院内閣答弁書)。

戦後の日本においては、ポリオの生ワクチン輸入を除いては、日本赤軍が人質を取り獄中のメンバー釈放を要求した日本赤軍事件(クアラルンプール事件とダッカ日航機ハイジャック事件)があります。その結果、獄中にいる11人のメンバーが釈放されました。

ダッカハイジャック事件 開放されたよど号の乗客たち

ダッカ事件では、犯人グループの要求に応じた際に時の内閣総理大臣・福田赳夫が「人命は地球より重い」と述べました。この措置に対し、一部諸外国から「(日本から諸外国への電化製品や日本車などの輸出が急増していたことを受けて)日本はテロリズムまで輸出するのか」などと非難を受けたといわれています。

ただし、当時は欧米各国においても、テロリストの要求を受け入れて、身柄拘束中のテロリストを釈放することが通常であり(例、PFLP旅客機同時ハイジャック事件ハーグ事件、ルフトハンザ航空615便事件などを参照)、日本政府のみがテロに対して弱腰であったわけではありませんでした。1970年代後半は、このような無謀な要求をするテロに対処するために、世界各国で対テロ特殊部隊の創設が進められるようになりました。

さて、話をワクチンに戻します。いまでこそ、ポリオ(小児まひ)は、日本で自然発生はなく、世界でもパキスタンとアフガニスタンの2カ国以外では根絶されました。しかし約60年前、1960年の日本では大流行し、報告されただけでも5000例以上に達しました。ポリオウイルスは運動神経を冒し、一生残る手足のまひを引き起こすこともあります。ポリオが大流行した当時、幼い子供を持つ親たちの不安はさぞや大きかったことでしょう。

既に当時、海外ではポリオワクチンは実用化されていましたが、日本では開発途上で供給量はきわめて不足していました。国策としてワクチンの国産を目指すのは間違っていませんでしたが、対策が遅れていたという一面があったのは否定できませんでした。大流行の翌年、1961年にも流行の兆しがあった時点で、世論にも押され、ソビエト連邦から緊急にワクチンを輸入しました。

海外で実績があるワクチンであっても国内で使用するには、本来は承認の手続きが必要ですが、当時の古井喜実厚生大臣は「責任はすべて私にある」と言って、超法規的措置をとったそうです。1300万人分のワクチンが輸入され、日本全国で接種され、流行はおさまりました。以降、グラフに示すように、日本ではポリオの報告件数は急速に減少しました。



このようなことは、前例を踏襲するのが通例となっている官僚にはできない意思決定です。菅総理大臣が意思決定したからこその、超法規的措置です。 これと同じ考え方をすれば、実は薬剤師もワクチンを打てるし、獣医も打てるということになります。

まだ通達は出していませんが、本当は法改正しなければこれはできないことです。しかし、法改正をまともに行っていては、とても間に合わないことがはっきりしたので、超法規的措置を発令したということです。

法律に従って人の命を諦めるか、法律を無視しても人の命を守るかという究極の選択としてみれば、4月26日の超法規的措置は理解できます。

このような超法規的措置は先にも述べたように過去にはありません。これは、政府が本気で7月末までに約86%の自治体で65歳以上高齢者(約3600万人)の接種が完了させるつもりであることを示していると考えられます。

それにしても、60年前の、生コロナ緊急輸入の超法規的措置や、クアラルンプール事件とダッカ日航機ハイジャック事件での超法規的措置に関しては報道したのに、なぜマスコミは今回の超法規的措置を報道しないのでしょうか。

日本では、「超法規的措置」は滅多にあるものではありません、今回も含めて戦後三回しかなかった大事件です。

報道するのが当たり前であり、しないのはかなり異常です。これは、私の類推ですが、クアラルンプール事件とダッカ日航機ハイジャック事件での超法規的措置に関しては、時の政権を弱腰であると、批判することができたので報道したのでしょう。

ポリオワクチンに関しては、当時の国民の大きな関心事であり、これを報道しないなどということは、常識的に全く考えられなかったのでしょう。

しかし、それは現在でも同じです。コロナワクチンに関しては、今の国民の大きな関心事です。

それでもなお、報道しないというのは、マスコミはこれを現政権のプラスになると考え、プラスになることは、報道の自由という権利を行使して、報道しなかったのでしょう。

このブログでは、以前からマスコミの最終目標は、森叩きのホップワクチン叩きのステップオリンピック叩きのジャンプで、菅政権を退陣に追い込むことだと指摘してきましたが、今回の超法規的措置報道のスルーは、この通りに動いていることの証左であるといえると思います。

特に、ワクチン叩きや、オリンピック叩きに関しては、それがうまくいっても、失敗しても叩く腹だったのでしょうが、現状ではオリンピック開催阻止と、ワクチン接種の遅れを徹底的に叩く方向に定まったようです。

しかし、実際には、オリンピック開催中止はよほどのことがなければ、ありえないでしょう。小池知事は中止するかもしれないなどという噂がながれていますが、小池知事が中止するというなら、政府はIOCへの賠償金は、東京都が負担せよということになるでしょう。

そうなると、東京都は財源がかなり豊富であるにもかかわらず、コロナ病床を増やさなかったほどドケチな小池知事は中止に固執することはできなくなります。結局五輪は開催されるのです。

実際に日本国内では、様々な国際大会なども開催されています。五輪だけが例外になることはほとんど考えられません。

さらに、コロナワクチン接種は現在まで、日本の感染者数や死亡者がかなり低いということから、世界的にみてワクチン接種が遅れていましたが、これは、感染者数や死者数がかなり多いところから、接種を始べるべきという防疫上の常識から考えて当然だったといえます。

しかし、超法規的な措置までとって、政府は本気で接種の拡大をはかろうとしています。7月に入れば、状況はかなり改善されることになります。

8月に入れば、8日にはオリンピックは他の国際スポーツ大会と同じく、さしたる混乱もなく閉会し、その後はコロナ死者数はかなり減り、9月あたりには、誰の目から見ても、コロナの収束は近くなるでしょう。そのときには、マスコミは嫌々ながら、コロナが収束に近づいたことを報道するでしょうが、特にテレビのワイドショーはお通夜のような雰囲気になるでしょう。

そうして、その頃に解散総選挙が行われることになるでしょう。その後しばらく、野党もマスコミもお通夜状態のショックから立ち直れないことになるでしょう。

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2020年9月17日木曜日

「岸信夫防衛相」に中国が慌てふためく理由―【私の論評】岸氏は軍事面では素人かもしれないが、安保に関しては素人ではないし、確たる信念を持っている(゚д゚)!

 「岸信夫防衛相」に中国が慌てふためく理由

                           

岸信夫氏

 アンシンフ――この日本人の名前に、早くも「中南海」(北京の中国最高幹部の職住地)がザワついている。昨日発足した菅義偉新政権で、新たに防衛大臣を拝命した岸信夫氏(61歳)、安倍晋三前首相の実弟である。

 中国最大の国際紙『環球時報』(9月17日付)は、岸防衛大臣に関する長文の記事を発表した。そこでは、生まれて間もなく岸家に養子に出された岸信夫氏の数奇な半生を詳述した上で、次のように記している。

 <岸信夫は、二つの点において注目に値する。第一に、岸信夫は日本の政界において著名な「親台派」である。現在まで、岸信夫は日本の国会議員の親台団体である「日華議員懇談会」の幹事長を務めている。第二に、岸信夫は何度も靖国神社を参拝している。2013年10月19日、岸信夫は靖国神社を参拝したが、これは兄(安倍首相)の代理で参拝したと見られている。安倍晋三本人も、2013年12月26日に参拝している>

 このように、中国は警戒感を隠せない様子なのだ。

当初、「菅政権」を楽観視していた中国だったが・・・

 今月の自民党総裁選の最中、ある中国の外交関係者は、私にこう述べていた。

 「菅義偉新首相が誕生しそうだということよりも、その際に二階俊博幹事長が留任するだろうことが大きい。極論すれば、日本の次の首相が誰になろうと、二階幹事長さえ留任してくれればよいのだ。

 二階幹事長は、日本政界の親中派筆頭で、わが王毅国務委員兼外交部長(外相)も、二階幹事長と会った時だけは、まるで旧友と再会した時のように両手を差し出し、相好を崩すほどだ。習近平国家主席にも面会してもらっている。

 安倍首相は、二階幹事長の進言を聞かず、対中強硬外交に走った。だが菅新首相は、『後見人』の二階幹事長の声を無視するわけにはいかないだろう」

 このように中国政府は当初、菅新政権を「楽観視」していた。だが「岸信夫新防衛大臣」の発表は、冷や水を浴びせられたような恰好なのだ。

 実際、岸防衛大臣は、中国政府が「民族の三逆賊」と呼ぶ台湾の政治家(李登輝元総統、陳水扁元総統、蔡英文現総統)のうち、少なくとも二人と親友だ。李登輝氏とは長年にわたって親交があり、8月9日には、森喜朗元首相とともに、李元総統の弔問のため、台北を訪れた。

  その際、蔡英文総統にも面会している。蔡総統に関しては、総統就任直前の2015年10月に日本に招待し、自分と安倍首相の故郷である山口県下関市まで、わざわざ案内している。

 安倍政権下では「中国担当は兄、台湾担当は弟」で役割分担 

 この時、ある首相官邸関係者はこう述べていた。

  「蔡英文氏の宿泊先を、首相官邸から一番近いザ・キャピトルホテル東急に決めたのも岸信夫氏だった。10月8日昼、ホテル特別室のランチの場に、岸氏は安倍首相を連れてきた。日台合わせて10数人のランチだったが、安倍首相が自分がいかに台湾ファンかを熱く語ったりして、大変盛り上がった。

  だがこのランチは、安倍首相の首相動静からは削除され、日本側も台湾側も、一切極秘とした。それは、中国政府に配慮したからだった」 

 このように、安倍政権の7年8カ月、安倍首相が中国を担当し、弟の信夫氏が台湾を担当するという役割分担をしてきた。だが菅新政権になって、「台湾担当者」が表舞台に登壇したのである。しかもその役職は、中国政府が最も敏感な防衛大臣とあっては、中国側が穏やかでないのもむべなるかなだ。

  一方、台湾(中華民国)総統府は、日本の国会で菅氏が首相に選出されるや、直ちに祝賀コメントを発表した。

  <日本では今日、臨時国会が開かれ、自民党党首に選出された菅義偉官房長官を、第99代首相に選出した。これに対し、総統府の張惇涵報道官は、蔡総統はわが国の政府と国民を代表して、菅義偉首相に祝賀を表し、合わせて日本政府が菅首相のリーダーシップのもとで、順調に各種の国政を進め、国家が発展繁栄していくことを祝う。

  張惇涵報道官はこう述べた。「菅首相は過去に複数回、わが国公開の場で支持している。そして双方が、自由、民主、人権、法治などの基本的価値を共有していると認めている。また、わが国が国際組織に加盟することへの支持を唱えており、台湾にとって重要な海外の友人と言える。

  かつ日本と台湾との往来は密接で、日本はわが国の重要なパートナーだ。わが国はこれからも継続して、日本と多様な協力を進めていき、台日友好のパートナーシップ関係を深化させていく。それによって両国の国民の福祉を共同で推進し、地域の繁栄と発展、平和と安定を維持、保護していく> 

 このように、「岸信夫新防衛大臣」には触れていないが、菅新政権を手放しで歓迎するムードである。

岸氏の防衛相起用は「安倍政権の継承」の証 

 菅新首相が、岸氏を防衛大臣に抜擢した理由は何だったのか?  安倍政権時代の官邸関係者に聞くと、こう答えた。

 「それは、安倍前首相に気を遣うと同時に、同盟国アメリカのトランプ政権に、『安倍政権の継承』を示すためだ。このところのトランプ政権は、『台湾シフト』を鮮明にしており、今後は日本にも役割を求めてくる。そうした日米台の連携に、最もふさわしいのが岸氏の起用だったというわけだ」  当の岸防衛大臣は、16日の就任会見で、官僚が用意したペーパーを読み上げて、こう述べた。

 「今月11日に発表された(安倍)総理大臣の談話や菅総理大臣の指示を踏まえ、憲法の範囲内で国際法を順守し、専守防衛の考えのもとで厳しい判然保障環境において、平和と安全を守り抜く方策を検討していきたいと思います」

 「11日の総理談話」とは、次のようなものだ。

 <迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか。そういった問題意識の下、抑止力を強化するため、ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針を検討してまいりました。今年末までに、あるべき方策を示し、わが国を取り巻く厳しい安全保障環境に対応していくことといたします>

 いわば安倍前首相の「遺訓」とも言うべき「敵基地攻撃能力の保有」である。「敵」とは表向きは北朝鮮だが、実際には中国だろう。

 「米台vs中国」――岸防衛大臣の就任で、この米中新冷戦の「断面」に、日本も組み込まれつつある。「まずはコロナウイルスの防止に全力を尽くす」と述べた菅新首相だが、その先には、大きな地政学的リスクが横たわっている。

近藤 大介

【私の論評】岸氏は軍事面では素人かもしれないが、安保に関しては素人ではないし、確たる信念を持っている(゚д゚)!

中国の習近平国家主席は16日、菅義偉新首相に祝電を送り、「中日は友好的な隣国で、長期的な(関係の)安定発展は両国人民の根本的な利益にかなう」と述べ、関係強化を呼び掛けました。これは、異例なことです。李克強首相も祝電を発出。日本の新首相への国家主席と首相による祝電は「珍しい対応」(外交筋)で、習指導部は日本重視の姿勢を鮮明にしました。

汪文斌外務省副報道局長は記者会見で「菅氏が中国と安定した外交関係を構築すると表明していることを高く評価する」と強調しました。

菅首相が7年8カ月にわたり安倍晋三前首相の下で官房長官を務めたことから、中国では「中国に一定の配慮を見せた安倍氏の路線を受け継ぐ」(日本専門家)という見方が強いです。15日付の共産党機関紙・人民日報系の環球時報は社説で「(新政権は)日米同盟を基軸として中国との関係も発展させ、利益の最大化を図る」と予想しました。

一方で、沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題などで、日中の立場の隔たりは大きいです。中国は、安倍前首相の実弟で、台湾との関係が深い岸信夫防衛相を警戒しています。汪氏は会見で、岸氏について「防衛部門の交流を強化し、『一つの中国』原則を守り、いかなる形でも台湾との公式往来を避けるように希望する」と語りました。

産経新聞社が発行する雑誌「正論」1月号増刊には岸氏は「日米台の安全保障対話を」と題した文章を寄せました。蔡氏が日本との安保対話を呼び掛けたことに言及し、「日台の安保対話はぜひ進めていくべき」と言明。それには米国の関与が重要だとし、日米台で安保対話ができるようにしていくべきだとの考えを示しました。

台湾への訪問を重ねてきた岸氏。今年1月の総統選で蔡氏が再選を果たした翌日の12日には、台北市の公邸を訪れ蔡氏と面会しました。日本は台湾や米国と同様、自由で民主的なインド太平洋戦略に着目しているとの考えを示し、台湾が「日本との関係をより緊密にし、共に地域の平和と安定を維持していけることを期待する」と述べていました。

岸信夫氏(左)と蔡英文台湾総統(右)

一方米有力シンクタンク、ヘリテージ財団が16日に開催した日本の安全保障を巡るオンライン会合で、米識者から菅政権の閣僚起用法に疑念を示す意見が出ました。岸信夫防衛相は「初心者だ」として、敵基地攻撃能力保有の是非や軍事力を強める中国への対応など課題が山積する中、厳しく評価されました。

米軍が創設に関わり安全保障分野の研究に定評があるシンクタンク、ランド研究所のジェフリー・ホーナン研究員は岸氏は新参者や未熟者などを意味する「ノービス」だと指摘。その上で「菅政権が敵基地攻撃能力など微妙な問題のある安保分野で大胆な措置を取るとは思えない」との見方を示しました。

安倍氏の下で、7年8カ月間、官房長官を務めた菅氏は、就任前から「安倍政権継承」を旗印に掲げていました。日本では、今回の岸入閣はこのような意志を示すものという見方があります。

安倍氏は辞任を控えて防衛政策関連の談話を発表するなど意欲を見せていました。岸氏を防衛相に起用することによって『敵地攻撃能力』など、安倍氏が完遂できなかった政策を最後まで成しとげるというメッセージを伝えようとしたとの見方です。

 米国は短期間に終わる可能性がある菅義偉体制にまだ信頼を持てずにいると思います。そうした中岸氏を防衛相に据えたことは、安倍氏の下の日本の安全保障路線、強力な日米同盟を継承していくというメッセージとみることができます。

 岸氏は上でも述べたように、「日本・台湾 経済文化交流を促進する若手議員の会」を率い、台湾関係法を推進するなど議会内の「親台湾派」としても知られています。

安全保障と軍事は、イコールではありません。それは、石破氏をみていればわかります。石破氏は軍事オタクではありますが、安全保障に関しては現実的には素人以下だったかもしれません。

朝日新聞などのオールドメディアで「国民世論第1位」と紹介されていた石破茂氏は得票数がなんと最下位で終わりました。結局オールドメディアは事前に調査等せずに、印象や願望で報道するということが暴露されたと思います。

この石破氏の転機は、集団的自衛権の限定行使を容認した、いわゆる安全保障法制を巡る氏の対応だったと思います。

集団的自衛権の限定行使で戦争になると安保法制改正に反対する人々

石破氏は安倍首相から安全保障法制担当大臣の就任を要請されながらも、これを辞退しました。

氏は安全保障政策に精通し国会答弁能力も高く、過去に防衛庁長官として有事法制の成立に尽力しました。日本の安全保障政策は国会審議で停滞、混乱するのが常でしたから石破氏の国会答弁能力の高さは貴重でした。

だから安倍首相による安全保障法制担当大臣への就任要請も政局的要素が皆無とは言えないですがやはり石破氏の能力を評価しての話ではなかったと思います。

ご存知のとおり安全保障法制の国会審議は大変、混乱しました。混乱の直接的原因は自民党による参考人の人選ミスでしたが、これを差し引いても「石破安全保障法制担当大臣」ならば国会審議も大分落ちついただろうし、変わらず混乱したとしても石破氏の政治的威信は著しく高まったでしょう。

そしてこの政治的威信を背景に自民党が大敗した2017年の都議選直後に安倍首相に辞任を迫ることもできたかもしれませんし、同年9月に起きた民進党の分裂騒動にも多大な影響を与えることもできたかもしれません。

この「石破安全保障法制担当大臣」という「歴史のif」は色々な想像を掻き立ててくれます。

石破氏の表す言葉として「軍事オタク」があります。否定的なニュアンスも含む言葉だと思いますが氏自身は、まんざらでもなかったように思えます。

総裁選で地方遊説をした石破氏

軍事オタクという言葉に動揺しない石破氏の姿は正真正銘の政治家でした。「自分は知識をひけらかすだけで終わっていない」という自信がみえました。実際、氏は防衛庁長官として活躍しました。

しかし、安全保障法制を巡る氏の対応はリスクを避け知識をひけらかすだけの軍事オタクでした。そして今なお軍事オタクの状態にあります。

だから自民党総裁選に出馬した石破茂とは政治家ではなくただの軍事オタクだったのです。ただの軍事オタクが政党代表、内閣総理大臣になれないのは当然です。

端的に言えば石破茂氏は勝負所を間違えました、彼にとって勝負所は最大の総裁選ではなく安全保障法制だったのです。

石破は政治家にとって「決断」がいかに重要なのか身をもって証明したと言えます。もちろん、歴史に彼の名は残らないでしょう。

一方、安倍総理とともに歩んだ岸信夫氏は、少なくとも軍事オタクではありません。福田改造内閣~麻生内閣では防衛大臣政務官、第2次安倍内閣では、衆院外務委員長、外務副大臣、衆院安全保障委員長などを歴任しました。

岸氏は、沖縄県・尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突し、那覇地検が船長を「わが国国民への影響や、今後の日中関係を考慮して」釈放した問題で、当時の民主党政権の対応の不十分さをたびたび非難しています。例えば10年10月8日の参院本会議では、

 「中国が反応してくることが容易に想像できたにもかかわらず、すべてを地検に押し付けた形にして、自ら前向きに対処しようという気構えが全く見られない。むしろ早く厄介払いしたかったようにしか思えない」 

「この度の尖閣諸島での漁船衝突は、その間隙(編注;岸氏は演説の中で、基地問題の迷走が日米同盟を危うくさせたと主張)をついて中国が仕掛けてきた海洋進出の結果じゃないですか」

 「後々、中国の圧力に屈し我が国の領土、領海について日本が譲歩したことが日本外交最大の敗北の日として歴史に残るかもしれない」 などと述べています。

岸氏は、国会で中台関係に言及したこともあります。日米安全保障協議委員会が05年2月に発表した共同声明で「地域における共通の戦略目標」のひとつとして「台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決を促す」ことを挙げ、中国が反発した問題です。

岸氏は05年3月16日の参院予算委員会で、 「我が国と米国が台湾問題に関して平和的解決を促して、また中国の軍事分野における透明性を高めることを通して中国がアジアの、アジア太平洋地域で責任ある役割を果たしていくよう求めることは、これは我が国としても当然のことだと思う」 などと述べています。

岸氏は、現在のところは、確かに純粋な軍事面では素人に近いかもしれません。しかし安全保障については素人ではないし、確たる信念を持っているようです。軍事面に関しては、これから学んでいけば良いことだと思います。

信念がなく、オタクになる政治家には明日はありません。

そうして、政治家は何と言っても結果を出せなければ、無意味です。岸信夫氏が防衛大臣として立派な成果を残されることに期待したいです。

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2020年9月8日火曜日

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高橋洋一 日本の解き方

菅義偉氏


 8日告示、14日投開票の自民党総裁選は、菅義偉官房長官が有利な情勢だ。菅氏が首相になった場合、霞が関の官僚、とりわけ財務省との関係はどのようなものになるだろうか。

 菅氏は、官僚ににらみが利くといわれている。官房長官というポストは、諸々の情報が官僚機構から上がってくるという事実があるとともに、独自のネットワークにより、官僚機構からの情報をチェックして、必ずしも官僚の言いなりになっていないことも意味している。

 しかも、菅氏は、第2次安倍晋三政権で創設された内閣人事局のシステムをうまく使った。もともと、内閣人事局の構想は、第1次安倍政権の時の公務員制度改革に盛り込まれていたものだ。それが、福田康夫政権での2008年の国家公務員制度改革基本法の成立につながった。

 同法11条では、「政府は(中略)内閣官房に内閣人事局を置くものとし、このために必要な法制上の措置について(中略)この法律の施行後一年以内を目途として講ずるものとする」と定めていた。

 しかし、その後の民主党政権を経て、施行後6年となる14年、第2次安倍政権において内閣人事局は設置された。菅氏は、こうした経緯を熟知しており、人事によって官僚を巧みに管理している。

安倍政権で生まれた内閣人事局(右端は菅氏)

 官僚側からの意見が反映されているのだろうが、しばしば内閣人事局については、マスコミで批判的に取り上げられる。

 内閣人事局のできる前は、各省で幹部人事が行われていた。各省には経験の浅い政治家大臣がいるだけで、幹部官僚の名前と顔を覚えるにも精いっぱいで、とても独自人事を行う余裕はなかった。

 それが、内閣人事局で、官邸でのチェックが入ることで官僚の勝手な人事には一定の歯止めがかかった。どんな企業でも幹部人事は「各事業部」ではなく「本社中枢」が行うが、ようやく霞が関でもそれと同じ仕組みになったのだ。

 これによって、都合のいい従来の「事業部」で人事を決める仕組みに安住していた官僚から不満が出て、それをマスコミは記事にしたのだろう。

 一方、財務省も、官邸など政府内の重要ポストを握っており、他省庁に追随を許さない情報ネットワークを持っている。政治家なら誰しもそのネットワーク情報を入手したいはずだ。当然、菅氏もそれを承知しており、それを活用しないはずはない。その意味では、菅氏と財務省は共存関係だ。

 財務省も先月の定例人事で、菅氏の秘書官だった矢野康治氏を主計局長に起用するなど、「菅内閣」を予見しているかのようだ。矢野氏は菅氏の信頼も厚いので、一定の影響力を行使できるだろう。

 問題は、消費税に関する方向性だ。当面、減税しないという従来方針と思われる。

 ただし、秋に衆院選が行われた場合、その方針は、世論次第によって変わりうるのではないか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授)

【私の論評】菅官氏が総理になった場合、減税も公約として、解散総選挙となる確率はかなり高い(゚д゚)!

菅官房長官は9月3日の定例会見のなかで、新型コロナウイルス対策に関連し、消費喚起策の一環としての消費税減税には否定的な見解を示し「消費税自体は社会保障のために必要なものだ」と強調しました。 

社会保障や、教育の無償化などの理由で消費税減税等は全く不可能にも見えます。

世間には様々な誤解があり、消費税増税がアベノミクスの一部であると理解している人も多いです。ところが、本来のアベノミクスの目的は、あくまでも消費を喚起、投資を喚起して取引を活発化する、企業にとっては売り上げを上げ、製造量も増やす、そういう積極的で前向きな、明るい将来展望を描けるような社会をつくろうというものです。

消費税の増税、特にデフレから脱却する途中で増税をしてしまうと、将来に対する明るい希望が萎えてしまいます。ですから、アベノミクスと消費税増税はもともと対立する運命にありました。

この対立する消費税をどうするかという問題は、もともと運命的に仕組まれたものだったのです。しかし、最終的には財務官僚と自民党によってがんじがらめに構築された政治体制に抗えないということで、2014年に8%に上がったのです。それはいまでも続いているわけで、菅官房長官がアベノミクスを継承すると語っていますが、本来アベノミクスに消費税の増税は含まれておらず、本来は消費税減税を主張すべきです。


現在コロナ禍で、経済が落ち込み今年(2020年)の第2四半期、4~6月期でGDP年率換算を28.1%%も落としています。これはリーマンショックの直後よりも、はるかに深刻です。

2019年10月に消費税を増税したとき、「リーマンショック級のショックがあれば増税はしない」と、安倍首相をはじめ政権の多くの方が語っていました。ですから、消費税は1度元に戻すべきです。少なくとも8%にはすべきです。

さらに8%だと軽減税率の品目については変わらないので、低所得者にも恩恵が及ぶという意味で、時限的に5%に減税すべきです。それによって経済を成長させ、経済の規模を大きくすべきです。

それが現在の最優先課題であって、財政の健全化ではありません。財政のことを考えるのはその後で、まずは経済を大きくするべきです。優先順位を間違えると、アベノミクスは必ず失敗します。 

まずは積極的な財政出動、大規模な金融緩和と、1本目の矢、2本目の矢をもう1回放って行く。そのために消費税減税は欠かせません。

これがアベノミクスの本質です。本質は変わりません。菅氏は、それを継承されるとおっしゃっています。しかし、おそらく自民党の候補者の方々は、将来の解散総選挙も念頭においているのでしょう。

その場合は、早々に減税とは言わないのかもしれません。やはり効果からすると、従来路線を引き継ぐと言って、最後の最後で決断されるした、方が、国民に対するインパクトは大きいです。

ですから、菅氏が減税に現在消極的な発言をしているかといって、絶対に減税はないと決めつけてしまうのは早計です。 

今回の総裁選挙は任期途中の辞任に伴うものであるため、新総裁の任期は安倍の残任期間である2021年9月までとなりますあと1年後には新総理の任期がせまっていることから、どこかで解散を総選挙となるのは確実とみるべきです。

安倍総理も、2回も増税を延期しました。それならば、なぜ昨年の10月に増税したのかと言いたくなりますが、様々な事情があったのでしょう。特に、幼児教育の無償化は安倍総理の目玉政策でしたので、その財源として国債を財源にするのが当然なのですが、財務官僚の凄まじい抵抗が予想されたので、消費税を財源ということになったのだと思います。

昨年の9月あたりには、「もりかけ」問題等で、内閣支持率がかなり下がっていましたし、ここで消費税増税見送りを公約し解散総選挙を実施して財務省に対峙するのは得策ではないと考えた安倍総理は、増税見送りを断念せざるを得なかったのでしょう。


安倍総理が辞任を公表した後には、支持率が上がっています。菅氏が新総理になった場合、この内閣支持率はあまり変わらないと考えられます。

安倍内閣の支持率はは各メディアの世論調査でも急上昇しています。安倍内閣の最終支持率はJNN世論調査では、62.4%と史上最高になりました。 自民党の支持率も上昇している一方、野党の支持率は総じて低下しています。もうネット時代に突入した現代では、マスコミの印象操作は通じなくなりつつあるようです。

安倍一次内閣が崩壊(2007年)したときには、安倍氏の辞任をさんざん揶揄したマスコミは、現在ではそのようなことはできないようです。当時もインターネットがありましたが、SNSは今日のように興隆していませんでした。そのようなことをすれば、たちまち、ネットで袋叩きに合う昨今です。その面では、日本は転換点を迎えつつあるようです。

あのトヨタですら、テレビCMはやめようかと模索しています。これに対して批判するむきもあるようですが、トヨタが成功すれば、他の企業も追随する可能性があります。印象操作で、減税阻止をするとか、改憲論議を阻止、安保問題の論議を阻止するということは、不可能になりつつあります。マスコミもそのことにはやく気づくべきです。

マスコミの印象操作が効果をもたなくありつつあることと、この高い支持率を背景として、基本的には安倍路線を踏襲することとその中には、消費税減税も含むこととと、菅氏の独自の政策もあわせて公約として、解散総選挙を実施することになる可能性はかなり高いです。

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2019年8月4日日曜日

財務省がいまひっそり仕掛ける「10月の消費増税」へのヤバい裏工作―【私の論評】下卑た財務官僚はすでに10%超増税、年金減額、その他大緊縮路線に向けて動いている(゚д゚)!


関係者はほくそ笑んでいる

財務省にとっての参院選

7月21日に行われた参院選の結果にいちばん安堵したのは、財務省だろう。10月の消費増税を確定的なものにしたからだ。

今回の参院選では、山本太郎氏の「れいわ新選組」が消費税廃止を訴えたのをはじめ、野党は増税反対の方向で一致した。

一方、自民党も「当面10%以上に消費税を増税することはない」と明言して選挙を進めていた。


安倍政権という長期政権のうちに消費増税を達成しておかないと、次の政権になったらいつ実現できるかわからない。そして安倍総理が財務省に対して、ある程度の警戒心を抱いていることも知っていたので、様々なルートを駆使して「攻略」することに腐心していた。

まず、安倍総理の「盟友」である麻生太郎財務大臣を徹底して財務省の味方につけた。消費増税は、憲法改正とともに麻生氏の政治的な使命だと、本人に言及させたのだ。

麻生氏を懐柔したことで、増税のみならず、戦後有数の「財務省危機」を乗り切ることに成功した。ここ数年で相次いだ、森友学園への国有地売却に関する決裁文書の書き換え問題や、福田淳一財務事務次官によるセクハラ問題は、下手をすると財務省の解体にまで発展しかねない、未曽有の懸念材料だった。

そのような状況で、麻生氏を軸に、永田町と霞が関の距離をうまく調整することで、財務省の組織解体を免れ、あくまで役人の個人的な問題として処理させたのだ。

おまけに今回の参院選により、財務省悲願の消費増税まで実現間近だ。福田氏の後任事務次官である岡本薫明氏は今年7月末から2期目に突入するが、これらの「偉業」により、省に名を残す次官となるだろう(あくまで省内目線での話だが)。

今回の参院選の大義名分が「増税選挙」であったとはいえないが、結果的に安倍政権は2度の消費増税に耐えたことになる。'89年の消費税創設(竹下内閣)、'97年の5%への増税(橋本内閣)では、それぞれ政権が倒れた。'14年の8%、そして10月の10%への増税でも政権が倒れなかったわけだから、財務省にとっては「希望の政権」に見えるのだろう。

「4選」の噂がないわけではないが、ひとまず'21年9月に安倍総理は任期満了だ。財務省としても、安倍政権での消費増税は「10%」でもう十分だと考えているはずだ。消費税は、30年間で3回増税した。均せば10年に1回で、参院選期間中、「今後10年くらいは消費税率を上げることはないだろう」と総理が発言したことにも符合する。


今後、財務省は消費税「10%超」を狙うための「10ヵ年計画」を仕込んでいくだろう。総理交代で財政方針も転換するかもしれないが、緊縮財政が進んで歳出がカットされるくらいなら、増税でも構わないと国民が納得するのを財務省は待つことになる。

緊縮財政を「ムチ」とすれば、「アメ」は軽減税率だ。実際、新聞は軽減税率の兼ね合いから、消費増税を争点化できなかったと見受けられる。ほかにも、一時的な財政支出が「アメ」として機能する。参院選後、安倍総理は増税後の景気対策で一時的な財政支出に言及している。緊縮路線での「アメ」は、さぞかし甘いことだろう。

『週刊現代』2019年8月3日号より

【私の論評】下卑た財務官僚はすでに10%超増税、年金減額、その他大緊縮路線に向けて動いている(゚д゚)!

上の記事には掲載されていませんが、財務省の人事をみても、財務省の今後の目論見が透けて見えてきます。

財務省はここ数年、異例とも呼べる人事が続いてきました。一般的に官僚組織というのは、人事に関する外部干渉を嫌うものですが、官庁の中の官庁と呼ばれた同省は特にその傾向が強く、終戦の混乱期においても基本的な人事パターンを変えなかったといわれています(当時は大蔵省)。

そんな財務省が、異例の人事を行ってきたのは、何としても消費増税を実現するためです。

同省は「10年に1度」の大物次官と呼ばれた勝栄二郎氏(75年入省)を3期も続投させ、消費税対策に奔走しました。その結果、勝氏の後任だった真砂靖氏(78年)が1年で退任し、その後、木下康司氏、香川俊介氏、田中一穂氏と79年入省の人物が連続して次官に就任するという異常事態が続きました。田中氏の後任として次官に就任した佐藤慎一氏(80年)も、35年ぶりの主税局長からの昇進だったので、やはり異例の人事といってよいでしょう。

官僚組織がひとたび人事のパターンを崩すと、政治の介入を招きやすくなり、組織の弱体化につながります。実際、一連の変則人事には官邸の意向が強く作用したともいわれており、結果的に財務省は、森友学園問題では自殺行為ともいえる文書改ざんに手を染め、立て直しを期待された福田淳一次官は(82年)は何とセクハラ問題で辞任してしまいました。

福田氏の辞任直後から、後任人事をめぐって様々な怪情報が飛び交いましたが、3カ月の空白期間を経て、2018年7月にようやく本命の岡本薫明氏(83年)が次官に就任し、2019年7月の人事では続投が決定しました。岡本氏の就任と続投は、消費増税を実現した財務省が、定常パターンに人事を戻し、次の施策にシフトするための布石と考えられます。ナンバー2、ナンバー3の人事を見ると、その意図はさらに明白になってきます。

岡本薫明氏

岡本氏は入省後、一貫して予算を扱う主計局を歩み、秘書課長、主計局次長、主計局長という重要ポストをすべて歴任しています。財務省的には文句なしのエリートといってよいでしょう。同省の場合、次官候補者はかなり前から絞られていることが多く、今回の人事が定常モードへの回帰だと考えれば、「次」の人物もすでに想定されている可能性が高いです。その人物とは、今回、官房長に就任した茶谷栄治氏(86年)です。

茶谷氏は、岡本氏と同様、秘書課長や主計局次長など、次官になるための主要ポストを歴任していまは。政治的な動きは見せず、典型的な財務官僚タイプと評されており、同省的にはまさに王道といってよいです。

茶谷氏が次官の最有力候補と仮定すると、来年の人事において官房長から主計局長に転じ、2021年に次官に就任する可能性が高いです。岡本氏が3期続投するとは考えにくいので、そうなると、来年の人事では、現在、主計局長の太田充氏(83年)が、1年だけ次官を務めるというシナリオが有力です。

岡本氏と太田氏は同期であり、太田氏は文書課長や秘書課長を経験していません。もし太田氏が次官に就任した場合、これも異例人事のひとつと見なせるかもしれないですが、その後、茶谷氏が次官に昇進すれば、勝氏以来、続いてきた変則的な人事はすべて終了となります。

本来の姿に戻った財務省は、これでようやくポスト消費税の施策に専念できるわけですが、同省の次の狙いが社会保障制度改革、つまり簡単に言ってしまえば、年金の減額であることは明白です。加えて言うと、安定財源を確保するため、10%以上への消費増税についてもすでに検討に入った可能性が高いでしょう。

今回の参院選では、年金2000万円問題という想定外の事態が発生したものの、このブロクでも以前解説したように、元々年金は保険制度であり、これは日本は及ばずどの国でも政治上の争点になりにくい制度です。そのため、今回の選挙でも結局大きな争点とはなりませんでした。

選挙後に記者会見に臨んだ麻生財務大臣は、消費増税について「消費税率の引き上げは最初から申し上げてきた。その意味では信任をいただいたと思う」と、増税しないという選択肢はなかったとも受け取れる発言を行っています。

また、今回の参院選で228万票を獲得した「れいわ新選組」が消費税廃止を訴えたことについては、「福祉は負担と給付のバランスの上に成り立っているが、給付が増えて負担を減らすことが成り立つと思っているのだろうか」と否定的な見解を示しています。

社会保障の財源を消費税とする議論は元々おかしな議論なのですが、その論議はおいておき、実は選挙前にも、財務省が主導する社会保障の財源である消費増税の見通しについて微妙なやり取りがありました。

7月3日に開催された党首討論会では、安倍首相が「(10%への増税を実現できれば)今後10年は消費増税は必要ないと思う」と述べたのですが、翌日には公明党の山口那津男代表が「責任ある発言とは受け取れない」とこれを否定したのです。政府内部の実務レベルでは、10%以上への増税がすでに既定路線となっていることを伺わせる出来事といってよいでしょう。

参院選に先立つ党首討論会でも、首相は今後10年は消費税増税は必要ないと明言した

では、今後、財務省主導で実施されようとししている社会保障改革とは、どのようなものになるのでしょうか。

来年、国会への提出が検討されている社会保障制度改革法案の内容は明らかにされていないのですが、マクロ経済スライドの強化が盛り込まれる可能性が高いです。現在のマクロ経済スライドは、物価上昇時にそれを打ち消す形で年金を減額する仕組みだが、政府内部では物価の上下にかかわらず、年金給付額を削減するプランが検討されています。

もう一つは、70歳からが上限となっている年金支給年齢の引き上げです。

現在、標準的な年金の支給開始年齢は65歳ですが、本人が希望すれば、年金を増額した上で70歳まで支給を遅らせることができます。これを75歳以上まで引き上げることで、稼ぎのある高齢者への支給を抑制したい意向です。

あくまで本人の希望ということですが、この施策の最終的な狙いは、標準的な年金支給開始年齢についても70歳まで引き上げることです。近い将来、年金は70歳からしかもらえなくなる可能性が高いです。

政府は参院選への影響を配慮したのか、本来、選挙前に出るはずだった「年金財政検証」の結果公表を遅らせています。今回の財政検証でどの程度までの減額が明記されるのか要注目です。従来よりも踏み込んだ数字が記載された場合、給付削減と消費再増税の確度は高まったと判断してよいでしょう。

財務省はすでに10%超増税、年金減額に向けて動いているのです。そうして、彼らの頭の中には、日本経済を伸ばして税収を増やすという考えはなく、とにかく緊縮で日本がデフレになってもおかまいなしで、財務省の配賦権益をできるだけ強化し、その結果として高級官僚の天下り先を確保し、老後のハーピーライフをより豊かで確かなものにしようと日々努力しています。それが彼らにとっての省益なのです。

省益にしたとしても、なんとスケールの小さいものなのかと言わざるを得ないです。国民の幸福と引き換えにするには、あまりに小市民的で下卑たものであると言わざるを得ません。こうしたことが見透かされているからこそ、最近は東大生もこの卑しい省を目指さなくなったのでしょう。

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