2019年4月4日木曜日

北朝鮮『4・15ミサイル発射』に現実味!? 「絶対に許さない」米は警告も…強行なら“戦争”リスク―【私の論評】北がミサイル発射実験を開始すれば、米・中・露に圧力をかけられ制裁がますます厳しくなるだけ(゚д゚)!


金正恩氏は東倉里から“人工衛星”を発射するのか

 北朝鮮が「人工衛星」と称して弾道ミサイルを発射する可能性が現実味を増してきた。北西部・東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場の準備が完了したとの分析があるのだ。「Xデー」として、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の祖父、金日成(キム・イルソン)主席の誕生日(15日)などが予想されている。米朝首脳会談の決裂を受け、北朝鮮は再び「瀬戸際外交」に戻るのか。朝鮮半島の緊張が高まっている。

 「北朝鮮が東倉里長距離ミサイル発射場の整備を事実上終えた」「最高指導部が決心すればいつでも発射できる状態を維持中」

 韓国紙、中央日報(日本語版)は2日、韓国政府当局者がこう伝えたと報じた。

 記事では、北朝鮮が3月27日にドイツ、同29日にフィンランドで予定されていた会議への出席を、ドタキャンしてきたことも伝えた。こうした状況から、国会に当たる最高人民会議が開かれる今月11日や、日成氏の誕生日などに、「人工衛星打ち上げ」を強行する可能性もあると指摘した。

 北朝鮮は2017年11月29日を最後に、弾道ミサイルを発射していない。だが、2月末にベトナムの首都ハノイで行われたドナルド・トランプ米大統領と正恩氏による首脳会談が決裂してからは、ミサイル発射施設を整備する動きが、たびたび確認されている。

米政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)と、北朝鮮分析サイト「38ノース」は3月7日、衛星画像に基づき、東倉里にあるミサイル発射場の構造物の再建が完了し、稼働状態に戻ったとの分析を発表した。

 北朝鮮は緊張を高めることによって、交渉相手に譲歩を迫る「瀬戸際外交」を得意としてきた。ただ、この手法が、トランプ氏や、北朝鮮が「死神」と恐れるジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に通用するかは不明だ。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「北朝鮮が弾道ミサイル発射や、ロケットエンジンの燃焼実験をする可能性は十分ある。発射までの経緯や打つ方向によって、その後の展開は変わってくるだろう。例えば、北朝鮮が『人工衛星』として発射予告をした時点で、米国が『絶対に許さない』と警告したにもかかわらず強行すれば、『戦争のリスク』を孕むことになる」と語った。

【私の論評】北がミサイル発射実験を開始すれば、米・中・露に圧力をかけられ制裁がますます厳しくなるだけ(゚д゚)!

さる2月27、28日に行われた2回目の米朝首脳会談ですが、ドナルド・トランプアメリカ大統領と金正恩北朝鮮労働党委員長の会談は、事実上の物別れに終わり、共同声明すら出されませんでした。

なぜこのようになったかといえば、そのキーワードは、Status quo(ステイタス・クォー)です。この一言さえ意味が分かっていれば、今回の会談を読み解くなど、たやすいです。さらに、北朝鮮がミサイルの発射実験を開始したり、それら継続することになれば、どうなるかを予測するのもたやすいです。ラテン語の原語の意味では「現状」ですが、現代では「現状維持」とも訳されます。


米朝首脳会談に関係するアクターの中で、Status quoを望まない国はどこだったのでしょうか。そもそも誰がアクターなのかを理解していれば、愚かな報道には惑わされることはありません。

「朝鮮戦争が終結する」「日本人拉致被害者が帰ってくるかもしれない」「朝鮮半島の新時代に向けて、日本は巨額の資金供出をしなければならないのか」などなど。はっきり言いいますが、この状況で北朝鮮が日本人拉致被害者を一人でも帰してくるならば、何かの嫌がらせ以外にあり得ないです。

現代の情勢を分析する前に、Status quoを望まない国、すなわち現状打破勢力の歴史を知っているほうが、急がば回れで米朝会談の真相が見えてきます。

第二次世界大戦直前。1939年の時点で、現状維持勢力の代表はイギリスでした。しかし、大英帝国は既に絶頂期の勢力を失い、新興大国の米国が覇権を奪う勢いでした。英米の関係では、イギリスが現状維持国で、米国が現状打破国でした。

だが、両国には共通の敵のソ連がいました。ソ連は共産主義を掲げる、現状打破を公言する国でした。共産主義とは「世界中の国を暴力で転覆し、世界中の金持ちを皆殺しにすれば、全人類は幸せになれる」という危険極まりない思想です。

ソ連に対して、英米は共通の警戒心を抱く現状維持国でした。ここに、ナチスドイツが現れまし。アドルフ・ヒトラー率いるナチスは、第一次大戦の敗戦国としてのドイツの地位に甘んじないと公言する現状打破国でした。

英独ソの3国は主に東欧での勢力圏をめぐり抗争しました。現状維持を望む英国に対し、ドイツが東欧を侵略して第二次世界大戦がはじまりました。イギリスは米国を味方に引き入れドイツを倒したと思ったのも束の間、東欧を丸ごとソ連に併合されました。辛抱強く現状を変更できる戦機を待った、ソ連の独裁者・スターリンの悪魔のような慧眼の勝利でした。

ソ連の衛星国となった東欧諸国


さて、現代も現状維持勢力と打破勢力の相克で動きます。ただし、世界大戦のように劇的に動く時はめったにありません。では、東アジアにおいて、誰が今この瞬間の現状打破を望んでいるでしょうか。

昨年の米朝会談で、北朝鮮は核兵器の全面廃棄と今後の核実験の中止を約束しました。約束を履行した場合の経済援助も含みがありました。

北朝鮮の望みは、体制維持です。金正恩とその取り巻きの独裁体制の維持、労働党幹部が贅沢できる程度の最小限度の経済力、対外的に主体性を主張できるだけの軍事力。米国に届く核ミサイルの開発により、大統領のトランプを交渉の席に引きずり出しました。間違っても、戦争など望んでいません。

この立場は、北朝鮮の後ろ盾の中国やロシアも同じです。習近平やウラジーミル・プーチンは生意気なこと極まりない金一族など、どうでも良いのです。ただし、朝鮮半島を敵対勢力(つまり米国)に渡すことは容認できないのです。

だから、後ろ盾になっているのです。結束して米国の半島への介入を阻止し、軍事的、経済的、外交的、その他あらゆる手段を用いて北朝鮮の体制維持を支えるのです。

ただし、絶頂期を過ぎたとはいえ、米国の国力は世界最大です。ちなみに、ロシアの軍事力は現在でも侮れないですが、その経済力は、GDPでみると東京都を若干下回る程度です。

ロシアも中国も現状打破の時期とは思っていません。たとえば、在韓米軍がいる間、南進など考えるはずはないです。長期的にはともかく、こと半島問題に関しては、現状維持を望んでいるのです。少なくとも、今この瞬間はそうなのです。

では、米国のほうはどうでしょうか。韓国の文在寅政権は、すべてが信用できないです。ならば、どこを基地にして北朝鮮を攻撃するのでしょうか。さらに、北の背後には中露両国が控えています。そんな状況で朝鮮戦争の再開など考えられないです。

米・中・露とも朝鮮戦争の再開など望んでいない

しかも、文在寅は在韓米軍の撤退を本気で考えています。そうなれば、朝鮮半島が大陸(とその手下の北朝鮮)の勢力下に落ちます。ならば、少しでも韓国陥落を遅らせるのが現実的であって、38度線の北側の現状変更など妄想です。

しかも、以前からこのブログにも掲載しているように、現状をさらに米国側から検証してみると、北朝鮮およびその核が、朝鮮半島全体に中国の覇権が及ぶことを阻止しているのです。北の核は、日米にとって脅威であるばかりではなく、中国やロシアにとっても脅威なのです。

さらに、韓国は中国に従属しようとしてるのですが、韓国は中国と直接国境を接しておらず、北朝鮮をはさんで接しています。そうして、北朝鮮は中国の干渉を嫌っています。そのため、韓国は米国にとってあてにはならないのですが、かといって完璧に中国に従属しているわけでもなく、その意味では韓国自体が安全保障上の空き地のような状態になっています。

この状況は米国にとって決して悪い状態ではないです。この状況が長く続いても、米国が失うものは何もありません。最悪の自体は、中国が朝鮮半島全体を自らの覇権の及ぶ地域にすることです。これは、米国にとっても我が国にとっても最悪です。

昨年の米朝合意は特に期限を設けていません。「本気で核廃絶する気があるのか?」「あるから制裁を解除しろ。金寄越せ」「順序が違う!」と罵りあっていて、何も困ることはありません。成果など不要なのです。

さて、米中露北の関係4か国の中で、今この瞬間の現状打破を望む国はゼロです。関係者すべてがStatus quoを望んでいるのです。「米朝会談成果なし」など、外交の素人の戯言に過ぎません。

そもそも、外交交渉における「成果」とは何でしょうか。自らの何らかの国益を譲歩することです。仮に一方的に要求をのませるとしたら相手の恨みを買います。それは降伏要求であって、外交ではありません。北朝鮮は中露を後ろ盾にしている限り米国に譲歩する必要もないし、逆に米国だって同じなのです。

今回の交渉は、続けること自体に意味があったのです。さて、わが日本はどうでしょうか。安倍晋三首相は、トランプ大統領に拉致問題の解決を要請したとされています。

そして、拉致問題の解決なくして1円も北に資金援助はしないとの立場を伝えたそうです。当たり前です。これまでの外交では、その当たり前のことを毅然とできなかったからと安倍外交を称賛しなければならないとしたら、本当に情けないことです。

今の日本は現状打破を望む必要はないです。交渉で被害者を取り返せば良いのです。全員奪還が我が国是です。だが、北は何人かを帰して幕引きにするカードをちらつかせています。日本に独自の軍事力がないから舐められているのです。日本の道は、防衛費増額しかないのです。

さて、北朝鮮が核実験や核ミサイルの発射実験を開始したらどうなるかということですが、先に述べたように、北朝鮮も現状維持を望んでいます。であれば、せいぜい人工衛星の打ち上げ実験程度にとどめて、あとは核実験や、ミサイル発射実験などはしないでしよう。

もし従来のようにミサイル発射実験や核開発をすれば、どうなるでしょうか。現状維持を望む、米国、中国、ロシアから圧力を加えられ、制裁がますます厳しくなるだけのことになります。そのようなことは、北朝鮮自身が望んでいないでしょし、余計なことをすれば、現状が崩れることを金正恩は理解していることでしょう。

にもかかわらず、北がミサイル発射実験や核開発を継続すれば、米国が軍事攻撃する可能性もでてきます。さらに、米国が中露にたとえ北朝鮮の体制が変わったとしても、現状維持することを約束するとともに、中露も現状変更をしないことを米国に約束すれば、中露は米国の北に対する軍事攻撃を許容する可能性も十分あります。そうなった場合には、米国は北を軍事攻撃することでしょう。

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2019年4月3日水曜日

次世代の米国の安全保障を担うのは海軍なのか―【私の論評】米軍はインド太平洋地域を重視しており、海軍を中心に中国に対峙しようとしている(゚д゚)!

次世代の米国の安全保障を担うのは海軍なのか

岡崎研究所

米国は、中東で顕著なように、陸上軍による対外介入を大きく縮小しようとしている。こうした中、どこが米国の安全保障を担う中心となるか、議論が出て来るのは自然である。これに関して、ユーラシア・グループ専務理事のロバート・カプランは、「次世代の米国の安全保障は海軍が支配的地位を占めるだろう」と題する論説を3月13日付でワシントン・ポスト紙に書いている。以下に、論説から注目点をいくつか抜き出してみる。

米海軍

・米国は、ブッシュ(父)大統領による1991年のクウェート解放から始まった、中東における陸上の介入の時代を終わらせようとしている。それは繰り返されるべきでない。

・地上軍による介入をしないということは孤立主義を意味しない。米国は、地球の広大な地域に力を投射すべきである。世界中に常時力を投影できる海軍は、米国の主要な戦略手段である。ここで海軍とは海、空、ミサイルのあらゆる側面を含む。海軍は空軍の支援を受け、泥沼に陥ることなく関与し、圧倒的な影響を与えることができる。

・もし例えばイランと中東でもう一度戦争をするとなれば、米国は海軍、空軍、サイバー司令部、それにミサイルと衛星の展開を重視するだろう。中国との戦争は主として海軍とサイバーだろう。ハイテク戦争の性質と技術で地球が小さくなることから、ミサイル、大気圏の力、海軍のプラットフォームの抽象的な領域が生まれ、その世界では紛争は一つの危機圏から他の危機圏に容易に移り得る。

・地上軍の展開は、ロシアのバルト3国併合や北朝鮮の崩壊など、最も重要な国益が関わっている場合に限られることになろう。政治のみならず軍事でもトランプ以前の時代に戻ることはできない。海軍の世紀がやってくる。それはグローバル化がコンテナ船の航行の安全にかかっている時代である。とはいえ、海軍の世紀が平和的であるとも言えない。

参考:Robert D. Kaplan,‘The coming era of U.S. security policy will be dominated by the Navy’(Washington Post, March 13, 2019)
https://www.washingtonpost.com/opinions/2019/03/13/coming-era-us-security-policy-will-be-dominated-by-navy/

論説は、米国が中東における地上軍の介入の時代を終わらせようとしている、と述べている。そして地上軍による介入に代わるものは、海軍による力の投射であるという。海軍の世紀がやってくるとまで言っている。

 地上軍による介入が原則行われなくなるのはその通りだろう。米国はイラクとアフガニスタンで大々的な介入を行い、多大な犠牲を払ったが、それに見合う成果は上げていない。地上軍による介入が割に合わないのは、レジーム・チェンジの後の国造り、治安の維持が極めて困難で、介入の対象となった国が自力で対処できないからである。アフガニスタンがそのいい例だろう。アフガニスタンでは、政府を辛うじて維持していくのに依然として米軍の駐留を必要としている。アラブの春でチュニジアを除いて民主化に成功しなかったのは、独裁者を排除した後の国を管理する能力が無かったためである。

 地上軍の介入の時代が終わるのは別に中東に限らない。しかし、これまでの米国の地上軍による介入の最たるものが、イラク、アフガンと中東であったこと、中東地域は不安定で米国の介入が望まれるような事態が発生しやすいことから中東が特記されている。

 地上軍による介入に代わるものは海軍による力の投射とされるが、論説も指摘しているように、厳密に海軍だけというのではない。空軍、ミサイル、サイバー、宇宙などが含まれる。要するに地上軍以外ということである。これらはいずれもハイテク関連で機動性に富んでいる。論説は中国との戦争は主として海軍とサイバーだろうと言っているが、今後とも大国間の全面戦争は考えられないのではないだろうか。

 なお、中東ではイランに注意を要する。今トランプ政権はイランを厳しく非難し、イラン包囲網を作ろうとしている。トランプ政権がイランを攻撃するのではないかとの憶測が飛び交っている。イスラエルがイランの脅威を盛んにトランプ政権に吹き込んでいる事情もあり、トランプ政権にイラン攻撃をけしかけているのではないかと推測される。もし万一戦争になった場合には、米国の地上軍の派遣は考えられない。海、空軍による空爆、ミサイル攻撃、サイバー攻撃などが行われることになるのだろう。仮にイランとの戦争が始まれば、どこまでエスカレートするか予測がつかない。

【私の論評】米軍はインド太平洋地域を重視しており、海軍を中心に中国に対峙しようとしている(゚д゚)!

実質的に、次世代の米国の安全保障を担うのは海軍というのは、確かなようです。なぜなら、米国最大の米インド太平洋軍(米太平洋軍から昨年改称)の司令官が引き続き海軍となったことによって裏付けられているからです。

米軍の統合軍は全部で九つあります。地域が割り当てられているのは、6つの統合軍であり、以下に地域別の統合軍の名称と、担当する地域を示した地図を掲載します。



それぞれに司令官がおり、作戦上は、大統領、そして国防長官に次ぐ地位になります。大統領は米軍の最高司令官であり、それを国防長官が支えます。

統合参謀本部は、米国においては作戦上の指揮権を持っていません。米国の統合参謀本部は大統領と国防長官に助言をする立場です。

統合軍の司令官を動かすことができるのは大統領と国防長官だけです。それだけ大きな権限が統合軍の司令官には与えられているのです。

米軍といえば、多くの日本人にとって、陸軍、海軍、空軍、海兵隊というのが普通のイメージであり、実際にそうなのですが、戦闘においてはそれぞれが独自に作戦を行うわけではありません。各軍が必要に応じて連携し、統合作戦を担わなくてはならないのです。それを担うのが統合軍です。

九つの統合軍のうち、六つが地域別になっており、三つが機能別になっています。機能別の統合軍は、戦略軍、特殊作戦軍、輸送軍です。戦略軍は核兵器やミサイル、そして宇宙を管轄し、隷下にはサイバー軍も有しています。特殊作戦軍は文字通り特殊作戦を担います。輸送軍は米軍の人員・物資を輸送することを専門にしています。

地域別の統合軍は、北米を管轄する北方軍、中南米を担当する南方軍、中東を担当する中央軍、アフリカを担当するアフリカ軍、欧州を担当する欧州軍、そしてインド太平洋軍です。

こうした地域分割は国連その他の機関によって米軍に委任されているものではなく、いわば勝手に米国政府が世界を分割し、それぞれの地域における米国の権益を守るために軍を置いていることになります。

インド太平洋軍は九つの統合軍のうちで最大規模であり、地球の表面積で見ても52%という広大な地域を担当します。米国西海岸の映画産業の拠点ハリウッドから、インドの映画産業の拠点ボリウッドまで、北極熊から南極ペンギンまでが担当地域なのです。

ところが、一昨年11月に、米海軍が過去70年にわたって手にしてきた米太平洋軍司令官のポストが、米海軍太平洋艦隊艦艇が立て続けに重大事故を引き起こしてしまったことの影響により、アメリカ空軍の手に移りそうな状況に直面していました。

太平洋軍時代のハリー・ハリス氏

その後、現在米太平洋空軍司令官を務めているテレンス・オショネシー空軍大将が、前米太平洋軍司令官ハリー・ハリス海軍大将の後任の最有力候補でした。しかし、「伝統ある重要ポスト」を失いたくない米海軍側、とりわけ米海軍の擁護者である故ジョン・マケイン上院議員らの強力な巻き返し工作が功を奏して、米海軍はなんとか米太平洋軍司令官のポストを失わずにすむことになりました。

米太平洋艦隊所属の軍艦がたて続けに民間船との衝突事故を起こし、多数の死者まで出すという醜態を晒すこととなったアメリカ海軍ではありましたが、結局のところは、人望が高かった太平洋艦隊司令官スウィフト海軍大将をはじめ、米太平洋艦隊の幹部たちを更迭することで、事態の収束がはかられ、「米太平洋軍司令官のポストを海軍から取り上げられてしまう」というアメリカ海軍にとっては極めて重い「お灸を据えられる」措置までには立ち至らなかったのです。

トランプ政権により韓国大使となったハリス提督の後任として、2018年5月30日に米太平洋軍から名称変更された米インド太平洋軍の司令官に、前米艦隊総軍司令官のフィリップ・デイビッドソン海軍大将が指名されました(米艦隊総軍:かつては米大西洋艦隊司令官と兼務されるポストでたが、現在は米艦隊総軍に統合された。直属の部隊は第2艦隊です。ちなみに米太平洋艦隊直属の部隊は第7艦隊と第3艦隊です)。

もっとも、行政府であるトランプ政権や海軍をはじめとする軍部が賛同していても、日本と違ってシビリアンコントロールの原則が正常に機能している米国では、連邦議会の承認がなければ政権によって指名されても自動的に司令官のポストに就くことはないです。一昨年4月26日、連邦議会上院はデイビッドソン大将の指名を承認しました。

先に述べたように、担当領域が広大なだけでなく、米インド太平洋軍司令官は、米国にとっては依然として油断のならない北朝鮮や、北朝鮮の比ではない軍事的外交的脅威となっている中国に最前線で向き合わなければならないのです。

太平洋軍からインド太平洋軍へと名称変更をしなければならなくなった最大の要因は、太平洋郡時代に中国海洋戦力が飛躍的に強力となってしまったという現実があるからです。

中国海洋戦力は、中国本土の「前庭」に横たわっている東シナ海や南シナ海で軍事的優先を拡大しているだけでなく、中国本土からはるかに離れたインド洋へもその影響力を及ぼしつつあるからです。

とりわけ、中国は、トランプ政権が一昨年末から昨年の1月に公表した「国家安全保障戦略」「国家防衛戦力」などで明確に打ち出した「大国間角逐」という国際情勢認識の最大の仮想敵国と名指しされています。

また、ロシア領土(とその上空)は米太平洋軍の担当区域外である(米ヨーロッパ軍の担当)が、ロシア太平洋艦隊が日常的に活動するオホーツク海や北太平洋それに西太平洋は米インド太平洋軍の責任領域です。

要するに米インド太平洋軍司令官は、トランプ政権の軍事外交政策の根底をなす「大国間角逐」の相手方である中国とロシアのそれぞれと直面しているのです。そのため、世界を六つの担当エリアに分割してそれぞれに設置されている米統合軍司令官のなかでも、米インド太平洋軍司令官は極めて重要なポストと考えられています。

それだけではありません。米インド太平洋軍の担当地域には、日本、韓国、フィリピンそれにオーストラリアなどの同盟国や、米国にとっては軍事的に支援し続ける義務がある台湾、それに中国に対抗するためにも友好関係を維持すべきベトナムやインドといった軍事的、外交的あるいは経済的に重要な「味方」も数多く存在しています。

つまり、米国だけで危険極まりない強力な仮想敵である中国に立ち向かうのでなく、同盟国や友好国を活用して「大国間角逐」に打ち勝つことこそが米国にとっての良策なのです。

そのため、米インド太平洋軍司令官には、とりわけ現状では、軍事的指導者としての資質に加えて、外交官的役割をも果たせる資質が強く求められています。実際にデイビッドソン氏は米連邦議会上院公聴会で次のように述べています。

「中国には、(米国政府内の)あらゆる部署が協力し合い一丸となって立ち向かう必要を痛切に感じております。そのために(米インド太平洋軍)は国務省とも密接に協働するつもりです。……それに加えて、これは極めて重要なのですが、われわれ(米インド太平洋軍)は同盟諸国や友好諸国と連携して中国に対処していかなければならないのです」

この公聴会に先だって、指名承認のための基礎資料としてデイビッドソン大将は連邦議会からの「インド太平洋軍司令官に任命された場合に実施すべきであると考えるインド太平洋軍の政策や戦略に関する質問」に対する回答書を提出しました(50ページにわたる、詳細な質疑回答書は公開されています)。

現米インド太平洋軍司令官の

当然のことながら、次期太平洋軍司令官として、トランプ政権が打ち出した安全保障戦略や国防戦略と整合したインド太平洋軍の戦略をどのようにして実施していくのか?という国防戦略レベルの質疑応答から、軍事的リーダーとしてだけでなく外交的役割をも担う米インド太平洋軍司令官として国務省はじめ様々な政府機関や連邦議会などとどのような関係を構築していくのかに関する詳細な方針、それに責任地域内でインド太平洋軍が直面している軍事的、外交的、経済的諸問題のそれぞれに対してどのような方針で対処していくつもりなのか?に対する具体的対応策まで、質疑応答は多岐にわたっています。

デイビッドソン大将が連邦議会に対して公式に陳述した以上、それらの回答内容は、米インド太平洋軍司令官として着実に実施していく義務が生ずるのは当然です。要するに、今後重大な地政学的変動が生じないかぎり、上記「質疑回答書」は、少なくともデイビッドソン大将が指揮を執る期間中は、米井戸太平洋軍の基本路線なのです。

そのデイビッドソン次期米インド太平洋軍司令官の対中国戦略、対北朝鮮戦略、そして日米同盟に関する所見などの詳細については稿を改めなければ紹介できないが、デイビッドソン海軍大将が陳述した米インド太平洋軍司令官にとっての最優先責務とは次のようなものです。
1:米国の領域を防衛する
2:米インド太平洋軍担当領域での米軍戦力を再調整する
3:同盟諸国や友好諸国との二国間関係や多国間協力を強化発展させる
4:多様な脅威に対処するために米政府内そして同盟国の軍事部門以外の諸部門との協力を推進する
われわれは、日本を含むアジア太平洋の安定を考える際、在日米軍だけではなく、日本ではあまり知名度が高くはない、インド太平洋軍全体に対する理解を深める必要があります。

在日米軍司令部のある横田の向こうにあるのは、国防総省のあるワシントンDCだけではない。その間にあるハワイ(インド太平洋軍の司令部がある)にも注目しなくてはならないです。

インド太平洋軍が統合軍で最大であること、その司令長官が海軍出身であるということから、私達は、米軍はインド太平洋地域を重視しており、海軍を中心に中国に対峙しようとしていることを前提にものを考えなければならないのです。

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2019年4月2日火曜日

【新元号】安定的な皇位継承の確保を検討 男系継承を慎重に模索―【私の論評】なぜ皇位は男系によって継承されなければならないのか?


平成最後の一般参賀に臨まれる天皇、皇后両陛下と皇族方=1月2日、宮殿・長和殿

 新元号が「令和(れいわ)」と決まり、皇太子さまが5月1日に新天皇に即位されることで、政府は「そんなに時間を待たないで」(菅義偉(すがよしひで)官房長官)安定的な皇位継承を確保する検討に入る。これまで125代にわたり一度の例外もなく受け継がれてきた皇室の伝統にのっとり、父方の系統に天皇を持つ男系の男子による皇位継承維持を慎重に模索する。

 「(旧11宮家の皇籍離脱は)70年以上前の出来事で、皇籍を離脱された方々は民間人として生活を営んでいる。私自身が(連合国軍総司令部=GHQの)決定を覆していくことは全く考えていない」

 安倍晋三首相は、3月20日の参院財政金融委員会でこう述べた。これが首相が旧宮家の皇族復帰に否定的な見解を示したと報じられたが、首相は周囲に本意をこう漏らす。

 「それは違う。私が言ったのは『旧宮家全部の復帰はない』ということだ」

 また、首相が女性宮家創設に傾いたのではないかとの見方に関しても「意味がない」と否定している。

 そもそも皇室典範は「皇位は男系の男子が継承する」と定めており、女性宮家を創設しても皇位継承資格者は増えないからだ。典範改正で女性宮家の子孫も皇位継承資格を持つようにするというのなら、それは女系継承容認につながり、皇室の伝統の歴史的な大転換になる。

 首相官邸筋は「天皇陛下の周りも、女系天皇をつくろうという気は全くない」と明言し、政府高官もこう指摘する。

 「女性宮家は(女性皇族の)みなさんもそれは避けたいのではないか」

 現在、男系の男子である秋篠宮家の長男、悠仁さまが皇位継承順位3位だが、仮に女系天皇を認めた場合にはどうなるか。現在は継承権のない皇太子さまの長女、愛子さまとの間で「どちらにより正統性があるかが問われ、とんでもない事態になる」(別の政府高官)との懸念もある。

 一方、戦後にGHQの皇室弱体化の意向で皇籍離脱した旧宮家の復帰に関しては、現皇室との血の遠さを強調する意見がある。だが、皇位はこれまで直系ばかりで継承されてきたわけでは決してない。

 「旧皇族から適格者に何人か皇族に復帰してもらい、その方自身には皇位継承権は付与せず、その子供から継承権を持つというのはどうか」

 首相官邸内では、こんなアイデアもささやかれている。(阿比留瑠比)

【私の論評】なぜ皇位は男系によって継承されなければならないのか?

神宮式年遷宮

天皇の皇位がなぜ男系によって継承されてきたのでしょうか。これに答えるのは容易ではありません。そもそも、人々の経験と英知に基づいて成長してきたものは、その存在理由を言語で説明することはできません。

なぜなら、特定の理論に基づいて成立したのではないからです。天皇そのものが理屈で説明できないように、その血統の原理も理屈で説明することはできないのです。

しかし、理論よりも前に、存在する事実があります。男系継承の原理は古から変更されることなく、現在まで貫徹されてきました。これを重く捉えなくてはならないです。

例えば、神宮式年遷宮は、神宮(伊勢神宮)において行われる式年遷宮(定期的に行われる遷宮)です。神宮では、原則として20年ごとに、内宮(皇大神宮)・外宮(豊受大神宮)の二つの正宮の正殿、14の別宮の全ての社殿を造り替えて神座を遷します。

このとき、宝殿外幣殿、鳥居、御垣、御饌殿など計65棟の殿舎のほか、装束・神宝、宇治橋[なども造り替えられます。

記録によれば神宮式年遷宮は、飛鳥時代の天武天皇が定め、持統天皇の治世の690年(持統天皇4年)に第1回が行われました。その後、戦国時代の120年以上に及ぶ中断や幾度かの延期などはあったものの、2013年(平成25年)の第62回式年遷宮まで、およそ1300年にわたって行われています。

このような儀式が、1300年にわたって継承されてきたことに大きな意味と意義があります。これほどの継承が繰り返されてきたことは日本以外に世界に類をみません。これも、継続することに意味があるのです。

同様に、天皇は男系により継承されてきた世界最古の血統であり、これを断絶させることはできないです。

もはや理由などどうでもよいのです。特定の目的のために作られたものよりも、深く、複雑な存在理由が秘められていると考えなくてはいけないのです。

男系継承は女性蔑視の制度ではない

男系継承は男女の性別の問題と勘違いされますが、そうではありません。いうなれば家の領域の問題であり、男女は関係ないのです。男系継承とは、「天皇家の方に天皇になってもらう」ことに尽き、それは天皇家以外の人が天皇になるのを拒否することに他ならないです。

民間であっても、息子の子に家を継がせるのが自然で、娘の子たる外孫に継がせるのは不自然です。愛子内親王殿下の即位までは歴史が許しますが、たとえば鈴木さんとご結婚あそばしたなら、その子は鈴木君であって、天皇家に属する人ではありません。

もし鈴木君が即位すれば、父系を辿っても歴代天皇に行きつくことのない、原理の異なる天皇が成立することになります。

民間ならば、継承者不在でも、外孫を養子にとって家を継がせることもあるでしょう。しかし、天皇はそれをやってはいけないのです。継承者がいなくなる度に養子を取るようなことがあれば、伝統的な血統の原理に基づかない、天皇が成立することになり、それは既に天皇ではないのです。

また、男系継承は女性蔑視の制度だという人がいます。これも大きな間違いです。歴史的に天皇は民間から幾多の嫁を迎えてきました。近代以降でも明治天皇・大正天皇・今上天皇の后はいずれも民間出身であらせられます。

ところが、皇室が民間の男性を皇族にしたことは、かつて只の一度の例もありません。男系継承とは、女性を締め出す制度ではなく、むしろ男性を締め出す制度なのです。民間の女性は皇族との結婚で皇族となる可能性がありますが、民間の男性が皇族になる可能性はありません。

皇室の歴史は、『古事記』『日本書紀』の神話にさかのぼります。初代天皇神武天皇の伝説にさかのぼれば、皇室は公称二千六百年の歴史を誇ります。なぜそれほど皇室は続いてきたのか。神話や伝説の時代から変わらぬ伝統を保持してきたからです。

だから皇室では、先例が吉、新儀は不吉なのです。なぜ? と言われても、そういう世界だからとしか言いようがありません。

そのもっとも重要な伝統は、歴代天皇はすべて父親をたどれば天皇に行きつきます。父親が天皇でなければ、その父親、さらに父親とたどりつけば必ず歴代天皇の誰かにたどりつく。これを男系と言いますが、歴代天皇はすべて男系です。天皇になる資格がある人を皇族と言いますが、二千六百年間、皇族全員が男系です。

女性の皇族も、全員が男系です。つまり父親が天皇・皇族です。しかし、民間人と結婚された女性皇族が、その子供を皇族にした例は一度もありません。


ところで、「愛子さまが天皇になれないのは可哀そう」という主張もあります。皇位の継承は、その星に生まれた者の責務なのであって、あたかも甘い汁を吸うかのような権利などでは毛頭ありません。

皇后陛下が失語症になられたこともありました。しかし、見事に克服あそばし、立派に皇后としてのお役割を全うされていらっしゃいますが、皇后だけでも大変なお役割であって、一人の女性が天皇と皇后の両方のお役割を担われるとしたら、それは無理というべきでしょう。

男系継承の原理は簡単に言語で説明できるものではありませんが、この原理を守ってきた日本が、世界で最も長く王朝を維持し現在に至ることは事実です。皇室はだてに二千年以上も続いてきたわけではないのです。

歴史的な皇室制度の完成度は高く、その原理を変更するには余程慎重になるべきです。今を生きる日本人は、先祖から国体を預かり、子孫に受け継ぐ義務があります。何でも好き勝手に変えてよいということはないのです。

以上のことを考慮すると、冒頭の記事にあるように、「旧皇族から適格者に何人か皇族に復帰してもらい、その方自身には皇位継承権は付与せず、その子供から継承権を持つというのはどうか」という考え方が最も理にかなった方法であると思います。

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2019年4月1日月曜日

韓国の「行き過ぎた北朝鮮宥和政策」を懸念する米国―【私の論評】米国の本音はどこにあるのか?


 韓国の文在寅大統領の北朝鮮に対する宥和政策の行きすぎに関して、最近、同盟国の米国内で懸念の声が上がっている。ポンペオ国務長官やボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、北朝鮮の非核化がなされるまでは国連制裁の手を緩めないと述べているのに対し、文在寅大統領は、北朝鮮に対する制裁を解除して南北協力を早急に進めたいようである。

平城市内をパレード中に笑顔をみせる韓国の文在寅大統領(左)と
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長 昨年9月18日

 このような文在寅大統領の姿勢には、韓国内のメディアでも疑問を呈するものが出て来た。例えば、3月10日付のコリア・ヘラルド紙(韓国の英字紙)の社説がそれである。同社説は、文在寅は、南北協力や制裁解除に対する米国の懸念を直視し、より対米協力をするべきであると述べている。

 この社説は、常識的な正論を述べたものであるが、このような意見は、野党や大手メディア等の少数派である。文在寅政権は、必要な対北朝鮮の制裁解除を行い、金剛山観光、開城工業団地の再開や鉄道共同プロジェクトなどを促進させ、早期に北朝鮮の金正恩労働党書記長のソウル訪問を実現させたいと考えている。それ故、ハノイでの第2回米朝首脳会談が決裂に終わったことには、衝撃を受けたようだ。文在寅政権は、南北という狭い視野しか持たず、世界を知らない人々が多すぎるように見える。文正仁特別補佐官(延世大学教授)は英語も喋れ、世界のことも知っている面白い人だが、左派志向が強い。

 文在寅政権に対する米国の態度が硬化していることは、コリア・ヘラルド紙の社説でも指摘されている。当然であろう。主たる理由は、韓国の南北融和一辺倒の立場と制裁解除の主張である。3月上旬に訪米した韓国の国会議長訪問団に参加した元野党大統領選挙候補の鄭東泳氏もペロシ下院議長等からいろいろ言われたことを明らかにしている。鄭東泳氏は、これは日本の工作の結果だと、日本を批判している。とんでもない話である。

 なお、文正仁大統領特別補佐官は、最近の講演会で、ハノイでの米朝首脳会談の失敗の原因は、米国と北朝鮮、そして日本にあると述べたと言われる。一方、今、ワシントンには、「韓国責任論」といった感じもあるようだ。昨年3月、金正恩委員長の非核化の意図をいわば「保証」し、首脳会談を米国に働きかけたのは韓国だった。が、注意深い検討もなく、それに飛びついたのはトランプだったことも事実である。

 文在寅大統領は、最近、内閣改造を断行した。南北関係を所掌する統一部長官の趙明均氏を替え、金錬鉄統一研究院長を後任に指名した。同人は、極端な考えや発言で知られ、承認公聴会はもめるであろうが、それでも文在寅は強行任命するだろう。大手メディアは康京和外相、鄭義溶安保室長こそ交代すべきだと主張している。

 国連制裁は対北朝鮮交渉の重要な梃子であり、大事にしていかなければならない。米韓作業部会でも、韓国は、開城団地再開などの問題を提起する。3月12 日、国連制裁委員会の年次報告書が公表されたが、制裁の確実な実行こそが重要である。

 米韓両国は、3月2日、合同軍事演習「フォール・イーグル」と「キー・リゾルブ」の廃止を発表した。昨年夏に実施を取りやめた「乙支フリーダム・ガーディアン」を含めて、三大軍事演習がすべて打ち切られ、新たな小規模の演習に代わることになった。トランプ大統領は、国防省の説明と違い、理由に予算節約をあげている。が、米国が只でかかる大きな譲歩をするのは良くなかったのではないか。一方的廃止ではなく、少なくとも何らかの約束事にして、北朝鮮から相応の措置を取るべきではなかったか。最近の東倉里実験場の再整備のように、一方的措置は撤回可能である他、米国がそれをやれば、北朝鮮は益々一方的措置で非核化を済まそうとするであろう。

【私の論評】米国の本音はどこにあるのか?

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が米国にケンカを売りました。核を手放そうとしない北朝鮮に対し、堂々と経済援助に動き始めたのです。

金剛山観光をする人々

2月27、28日にベトナムの首都ハノイで行われた米朝首脳会談で、「非核化せずに、制裁だけ緩和させよう」との北朝鮮の本心が露わとなりました 。会談と前後して、北朝鮮が破棄したと称していた弾道ミサイル基地の復旧の兆候 があることも明らかとなりました。

にもかかわらず韓国は、制裁破りの援助に動いています。当然、米国も世界もそんな韓国に驚きの目を向けています。文在寅政権の暴走は止まるのでしょうか。

米朝首脳会談の翌3月1日、「3・1節」記念演説で文在寅大統領は「金剛山観光と開城工業団地との再開も米国と協議します」と宣言しました 。いずれも北朝鮮に多額のドルが渡る、南北の経済協力事業です

もちろん米国は一蹴しました。3月7日、匿名を条件にブリーフした国務省高官は「金剛山観光と開城工業団地に対する(国連)制裁を解くのか」との質問に対し、たった一言「NO」と答えました 。

韓国の保守系紙は「北朝鮮に非核化意思がないことが明らかになった後も制裁緩和を求める文在寅政権に、米国が怒り出した」と一斉に懸念を表明しました。

朝鮮日報は社説「文の『金剛山・開城工団の提案』に『NO』と一言だけ答えた米国」(3月9日、韓国語版)で以下のように書きました 。
  • (「NO」との答弁は)同盟国のトップが公に言及した提案を米国が即座に拒否したということだ。米国の方針はすでに決定済みなので、韓国は邪魔するな、との意味だろう。 
  • 米国の官民全体が北朝鮮に核放棄を決心させるには圧迫だけであるとの共感で1つになった。 
  • だが、韓国の統一部は「金剛山・開城工団再開案を用意して米国と協議する」と言い、与党関係者は「それらを利用して米朝仲介を牽引せよ」と要求しました。 
  • 大統領だけでなく、集団的に分別を失ってしまったのだ。こんな韓国の動きを見て米国の関係者らは「ジョークでやっているのだろう」と言っているという。

ところが、こうした批判に文在寅政権は馬耳東風。3月8日には南北関係の責任者である統一相を交代する人事を発表しました。国連制裁を念頭に置いて対北政策を進めたとされる官僚出身の趙明均(チョ・ミョンギュン)氏を更迭。新たに指名したのは学者出身の金錬鉄(キム・ヨンチョル)氏です。 同氏はこれまで「開城工団の閉鎖は自殺行為」 「(米国が)大韓民国を主権国家と見なしているか疑わしい 」などと親北・反米発言を繰り返してきた人物です。

中央日報は社説「韓国、北東アジアの除け者にならないよう米国との『政策すれ違い』に警戒を」(3月12日、日本語版)で、ワシントンでは「(韓米関係の悪化により)このままだと韓米首脳会談も難しい」との空気が高まったと報じました 。

米韓同盟が破壊されると危機感を高めた保守系の最大野党「自由韓国党」のナンバー2、羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)院内代表 は3月12日、国会で「大韓民国の大統領は金正恩(キム・ジョンウン)の首席報道官だと、顔から火が出るような恥ずかしい話を聞くことがないようにしてほしい」と演説しました。この発言に与党「共に民主党」の議員らは猛反発し、演説が中断されるなど国会は紛糾しました。

同日、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会・専門家パネルは年次報告書を発表。北朝鮮が政府機関主導のサイバー攻撃で仮想通貨を5億7100万ドル(約630億円)不法に取得しなどと指摘、制裁逃れの実態を明らかにしました。

この報告書は、制裁により輸出が禁じられているはずの高級車を北朝鮮が使っていると写真付きで指摘。その1枚は、2018年9月、平壌で金正恩委員長と文在寅大統領が一緒にメルセデス・ベンツに載っている写真でした (報告書の47ページ )。韓国では「南北経済協力の名称で制裁を破ろうとする韓国への警告」と受け止められています。

平壌で金正恩委員長と文在寅大統領が一緒に乗ったとされるメルセデス・ベンツ

それでも文在寅政権は、米国と全面対決する構えを崩しません。3月14日、文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官が、統一相の人事について「米国とは関係なしに、朝鮮半島政策を推し進める大統領の意向の表れだ」と述べました。

大統領の本音を語ると韓国で見なされる文正仁氏は「(統一相に指名された)金錬鉄氏は主張通り仕事を進めていくだろう」「(それに対し)米国も何もできないはずだ」とも語りました。

ついに文在寅政権は、北朝鮮を助けるためなら米国との決別も辞さない、と言い出したのです。「ルビコン河を渡った」のは、このままでは一心同体の金正恩政権がじり貧となるとの判断からでしょう。

ハノイでの米朝首脳会談が物別れに終わったため、国連の対北制裁が緩む見通しは立たなくなりました。制裁により北朝鮮は、石炭、繊維、水産物の輸出が激減、外貨不足に陥っています。

朝鮮日報のアン・ヨンヒョン論説委員 は「今や金正恩は『通貨危機』を心配することに」(3月6日、韓国語版)で「制裁が続けば北朝鮮は2~3年後に(外貨が枯渇し)通貨危機に陥る可能性が高い」と書きました。

北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は3月15日に平壌で会見し、金正恩委員長が米国との非核化交渉に関する声明を近く発表すると明らかにしました。

その内容は、米国の非核化要求を拒絶、交渉中断や大陸間弾道弾の試験再開を表明する可能性が高いと見られています。 じり貧の道から脱し、米国を再交渉の場に引き戻すには、「放っておけば危険な北朝鮮」とのイメージを打ち出すしかないとの思惑でしょう。

朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン) 主筆は「文政権、金正恩と運命共同体になっている」(3月7日、韓国語版)を書きました。「北朝鮮との関係改善」というカードに全てをかけた文在寅政権は、世界中を敵に回した金正恩政権とスクラムを組むしかなくなった、との分析です。



では韓国は、北朝鮮との連帯をやめ、米国との同盟を堅持する路線に戻るのでしょうか。確かに保守系紙は、そうすべきだと主張しています。ところが、普通の人々がこぞって「北朝鮮よりも米国」を選択するかは分からないです。「米朝の仲介役として米国からも大事にされている韓国」といった幻想を、保守も含め多くの韓国人が信じ込んでいるからです。

トランプ政権は、情報機関同士のパイプを通じて、北朝鮮と首脳会談の開催にこぎつけました。その際、疎外感から韓国が駄々をこねないよう、韓国の仲介もあって会談が実現したかのように演出しました。

文在寅政権はこれを利用し「朝鮮半島では韓国が主導権を握っている」と大々的に宣伝しました。すると「自分たちは疎外されている」と不満を溜めていた韓国人のほとんどが、「我々が運転席に座っている」と信じ込んだのです。

朴槿恵(パク・クネ)政権は、米中等距離外交を展開 、「2大国を操り、それを背景に日本と北朝鮮を叩く偉大な韓国」との妄想を国民に植え付けました。

前政権と同様に、文在寅政権も「妄想作戦」に出たのです。ちなみに今回の妄想は、「米国と一定の距離を置いてこそ、北朝鮮を会談に引き出すなど仲介が可能になる」との含意があります。

もしここで米国の側に完全に戻れば、韓国は仲介者の資格を失うことになります。運転席の座から降りたくない韓国人が、「米国側に戻ろう」とは言いにくい仕組みとなっています。

2017年3月に実施された米韓合同演習「フォールイーグル」

もちろん妄想に生きる韓国人も、世界中から向けられる冷たい視線に、次第に気が付いていくでしょう。ただその時になって米国側に戻ろうとしても、米国から突き放される可能性が高いです。

ハノイでの米朝首脳会談で非核化に何の進展もなかったというのに、米国は3月2日、例年2~4月ごろ実施していた大型の米韓合同軍事演習の廃止を発表しました。野外機動訓練「フォールイーグル」と、シミュレーション中心の指揮所演習「キー・リゾルブ」です 。

合同軍事演習を実施しない同盟は脆弱です。日米の安保専門家の間では「トランプ政権は韓国との同盟維持の意欲を失った。米韓同盟の廃棄を北朝鮮の非核化と交換するカードにするつもりだろう」との観測が一気に高まりました。

米政界の動向に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は産経新聞・正論欄に「在韓米軍を非核化の梃子にせよ」(3月6日)を寄稿。「すでに日本の防衛線は(朝鮮半島の軍事境界線から)対馬海峡まで後退している」と書きました。

東亜日報の社説「トランプ氏『米軍駐留費150%賦課』…韓米『形ばかりの同盟』になるのか」(3月11日、日本語版)も「(米韓同盟が)外形だけが残る道に進んでいる」と危機感を表明しました。その理由として、大型の合同軍事演習の廃止に加え「米軍ではなく韓国軍が司令官を務める韓米連合司令部体制」に近く移行することを挙げました。

米軍は、ある程度の規模以上の部隊は、外国軍に指揮されないとの原則を持っています。「韓国人を指揮官に抱く在韓米軍」は、極めて小規模の部隊にならざるを得ないのです。

北朝鮮の核ミサイル

韓国は米国との同盟、つまり“核の傘”を、失う可能性が高まっています。その際、韓国は「誰の核に頼るのか」を決めねばならないです。中国かロシアか、それとも自主開発か。最も手っ取り早いのが、北朝鮮の核を頼る手です。

北朝鮮から核弾頭を全て除去する完全な非核化は難しいです。仮にそれが実現しても、核弾頭の開発に携わった人材は残り、核の潜在保有国ではあり続けます。

その事実に直面する韓国人のうち、かなりの人々が「北朝鮮と和解すれば、その核は自分たちに向くどころか民族の核として活用できる」と信じるでしょう。韓国で「民族の核」に反対するのは、極めつけの保守だけとなるでしょう。

朝鮮日報の楊相勲・主筆は「南北の政権が野合し、運命共同体になった」と書きました 。だが、現実はもっと厳しいものになるでしょう。南北の政権だけではなく国同士である韓国と北朝鮮という2つの国が、運命共同体になっているのです。

だからこそ、世界からどんなに冷笑されようと、国内からどんなに批判が高まろうと、文在寅政権は「勝算あり!」とばかりに、ますます北とのスクラムを固く組むのです。

現状は米国にとってどうなのでしょう。私は現状は最悪の状況ではないと思います。そもそも、北の核は米国だけを標的にしたものではありません。中国も標的となっています。

韓国の文在寅というより、歴代の政権、特に朴槿恵あたりから、韓国は中国に従属する姿勢を露わにしています。

北朝鮮は、中国の過度の干渉を嫌っています。金正男氏や、張成沢(チャン・ソンテク)氏の殺害はそれを如実に示しています。

そのため、北朝鮮とその核は、中国が朝鮮半島に浸透することを防いでいます。韓国は中国に従属しようとしつつ、北朝鮮との接近をはかっています。ただし、北朝鮮をはさんで、中国に接している韓国は、中国に完璧に従属することができないでいます。

これは、たとえ、韓国が全くあてにならなくなったにしても、安全保証上の空き地があるようなもので、この状況は、米国にとっては決して悪い状態ではありません。

最悪の状況は、中国が朝鮮半島全域を掌握し、覇権の及ぶ範囲とすることです。

米国としては、北・韓国の両国とも様子見というところでしょう。中国の覇権が朝鮮半島で強まることがあれば、米国は具体的に動きはじめるでしょう。また、北朝鮮が核実験、ミサイル実験を再開したときにも、具体的な動きをみせるでしょう。

韓国に関しては、文在寅の支持率も下がっていることですから、長期政権にならず、次の大統領が比較的まともであれば、米韓合同演習を再開する可能性もあります。

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2019年3月31日日曜日

中国・李首相が「バラマキ型量的緩和」を控える発言、その本当の意味―【私の論評】中国が金融緩和できないのは、投資効率を低下させている国有ゾンビ企業のせい(゚д゚)!

中国・李首相が「バラマキ型量的緩和」を控える発言、その本当の意味

「独裁国家」のひずみが見えてくる
ドクター Z

全国的にすすむ「景気の落ち込み」

 2019年に入り、中国の景気減速がしきりに報じられるようになった。今年1~2月の小売売上高の伸び率は前年比8・2%となり、'03年並みの水準に逆戻りしたという。

こうしたなか、李克強首相は「量的緩和(QE)や公共投資の大幅な拡大などの措置を講じようという誘惑に抵抗する」と発言した。緩やかな減税は継続するが、景気拡大を狙った量的緩和は控える、という判断である。このような発表に至ったのは、なぜなのか。
 

 まず、マクロ経済政策には、「財政政策」と「金融政策」の2種類があることを押さえておこう。

 財政政策の選択肢はさらに、「公共投資を増やす」「税金を減らす」と分けられる。減税は続けると言っている中国は、財政政策を取りやめるわけではないことがわかる。

 ただし公共投資と減税は、その効果を受ける対象が異なっている。公共投資の場合は、波及効果を受ける地域は限定される。官製企業の多い中国ならなおさら、恩恵を受けるのは官とつながりのある地域や企業ということになる。

 一方、減税は全国に波及し、民間消費を促す。今回、中国が減税路線を明確にしたのは、景気の落ち込みが全国的に進んでいるのが大きな原因だろう。

 また公共投資の場合、自治体も負担分があるが、中国は地方自治体単位で深刻な債務問題を抱えているところが多い。そもそも公共投資に耐えられる経済状況ではない地域もあるのだ。

 では、量的緩和や引き締めといった金融政策に中国政府が言及しなかったのはなぜか。これは、中国の政治経済の基本的な構造が関係している

 先進国が採用するマクロ経済政策の基本モデルとして、マンデルフレミング理論というものがある。これはざっくり言うと、変動相場制では金融政策、固定相場制では財政政策を優先するほうが効果的だという理論だ。

 この理論の発展として、国際金融のトリレンマという命題がある。これも簡単に言うと(1)自由な資本移動、(2)固定相場制、(3)独立した金融政策のすべてを実行することはできず、このうちせいぜい2つしか選べない、というものだ。


 先進国の経済において、(1)は不可欠である。したがって(2)固定相場制を放棄した日本や米国のようなモデル、圏内では統一通貨を使用するユーロ圏のようなモデルの2択となる。もっとも、ユーロ圏は対外的に変動相場制であるが。

 共産党独裁体制の中国は、完全に自由な資本移動を認めることはできない。外資は中国国内に完全な自己資本の民間会社を持てない。中国へ出資しても、政府の息のかかった国内企業との合弁経営までで、外資が会社の支配権を持つことはない。

 ただ、世界第2位の経済大国へと成長した現在、自由な資本移動も他国から求められ、実質的に3兎を追うような形になっている。現時点で変動相場制は導入されていないので、結果的に独立した金融政策が行えなくなってきているのだ。

 中国の中央銀行である中国人民銀行は、政府の政策に強い影響力を持っているとは言えない。停滞気味の中国がバラマキ型の量的緩和を行えない理由は、急激に発展した一党独裁国家のひずみにあるのだ。

【私の論評】中国が金融緩和できないのは、投資効率を低下させている国有ゾンビ企業のせい(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事には、「停滞気味の中国がバラマキ型の量的緩和を行えない理由は、急激に発展した一党独裁国家のひずみにある」としていますが、そのひずみは具体的にいかなるものなのか、本日はそれを掲載します。

結論からいうと、中国では金融緩和を実施すれば、投資効率の低下、資産負債比率の上昇という構造問題が深刻化することが見込まれているからです。債務の株式化も低調であるため、政府はリスクに配慮した慎重な金融政策をせざるを得ないのです。
中国は、長い間、過剰債務状態にありながらも、金融システムが不安定化することはなかったため、政府はもちろん、国外でも先行きを楽観する見方があります。しかし、現状の中国で金融緩和を実施すれば、中国の債務水準は前人未到の領域に入る可能性が高いです。

国際通貨基金(IMF)は、2018年2月に発表した報告書で、過剰債務抑制に向けた抜本的な政策を打ち出さなければ、家計と政府を含む非金融部門の与信残高は2017年のGDP比255.7%からさらに上昇し、2020年に290%に上昇するとの試算を示しました。過去の経験から今後も安泰と考えるわけにはいかないでしょう。

投資効率が低下していることからも、緩和はリスクの高い政策といえます。中国では投資をけん引役とする成長が続いてきたこともあり、収益率の高い投資案件はそれほど残っていないとされています。

政府のシンクタンク国務院発展研究センターによれば、中国はGDP1元を生みだすために6.9元の投資を必要とするのです。1998~2007年、2008~17年はそれぞれ4.0元と5.7元であったことから、投資効率は著しく低下しています。緩和によって非効率な投資が助長されれば、投資効率は一段と低下することになります。

投資効率を低下させている国有ゾンビ企業

投資効率を低下させているのは国有企業です。国有企業は政府が主導するプロジェクトの担い手であることから、民間企業よりも銀行融資を受けやすいです。これは国有企業の投資効率を引き下げると同時に、資産負債比率を引き上げる要因になっています。

鉱工業分野の企業の資産負債比率をみると、私営企業がほぼ一貫して低下しているのに対し、国有企業は60%超で高止まりしており、サービス業を含む国有企業全体では65%を上回っています。国有企業の資産負債比率は緩和によってさらに上昇し、債務不履行が頻発する事態を招来しかねないのです。

株式債権化(デッド・エクイティ・スワップ)の仕組み

政府は企業の債務が積み上がっていくことを警戒していないわけではありません。債務を削減するため、金融引き締めと同時に導入されたのが債務の株式化です。債務の株式化とは、債務を株式に転換することで利払い負担を軽減し、企業の再建を促そうとするものです。

しかし、実績は低調です。銀行と企業は2017年末までに1.5兆元の債務の株式化について合意したものの、実行に移されたのはその1割強にとどまっています。

この背景には銀行が債務の株式化に消極的なことがあります。中国では、1990年代に債務の株式化が実施されたものの、政府主導で進められたことから、銀行と企業の当事者意識が希薄になり、期待されたほどには企業の再建は進まなかった経緯があります。

このため、政府は今回の債務の株式化は市場主導で進める、つまり、企業の選定や債券の取引価格など、個別の事案に政府は介入せず、銀行と企業の自主的な協議に委ねるとしました。

しかし、2017年6月までの実績をみると、債務の株式化を実施した企業の98%を国有企業が、産業別にみても過半を過剰生産能力が問題視される鉄鋼と石炭企業が占めることから、政府は依然として対象企業の選定に関与している模様です。

再建ではなく、救済を目的に対象企業が選ばれれば、配当や株式売却益を得ることが困難になります。銀行が債務の株式化に慎重な背景には、一方的にリスクを負わされることに対する警戒感があるとみられます。

債務の株式化は政府が期待するほどには進まないことから、金融緩和の余地はそれほど大きくないです。また、政府は投資効率や国有企業の財務体質だけでなく、足元で進む人民元安への影響にも配慮する必要があるため、慎重に緩和を進めざるを得ないのです。

成長減速を緩和で回避するという従来型の政策対応のリスクは明らかに高まっています。経済の持続可能性を高めるためには、やはり非効率な国有企業を市場から退出させるといった抜本的な構造改革が避けて通れません。

国営ゾンビ企業のほとんどは、先進国であれば、倒産した企業です。

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2019年3月30日土曜日

緊迫する南シナ海:中国の進出阻止に本気の米国―【私の論評】本気の米国、南シナ海で比に攻撃あれば米が防衛するとポンペオ氏明言(゚д゚)!

緊迫する南シナ海:中国の進出阻止に本気の米国

米軍、中東のテロ対策から対中戦略へ本格シフト

南シナ海で軍事拠点化を進める中国に対し、米軍が対中政策により力を入れ始めている。

 3月19日、ハワイのフォート・シャフター陸軍基地で開かれた会議で、米太平洋軍司令官のロバート・ブラウン陸軍大将が中国に対抗するため、本土から数千から万単位の兵士をアジアに配備する用意があると述べたのだ。

米太平洋軍司令官のロバート・ブラウン陸軍大将

 「南シナ海で問題(有事)が起きた時には陸海空および海兵隊の兵力が協力し合って対処していくことになります」

 この発言が海軍大将ではなく陸軍大将から出たところに注目したい。

 中国が南シナ海で人工島を造成し、軍事基地化を進めている中で、ブラウン大将は陸軍の出動も念頭に入れているということだ。

 米軍準機関紙『星条旗新聞』によると、実際の有事になった時にはハワイ州、ワシントン州、アラスカ州などから陸軍兵士を短期間、アジアに配備することになるという。

 同大将は具体的な兵数を口にしていないが、準備を整えている。

 「誰も紛争を望んでいません。我々も望みませんが、有事の際にはどんなシナリオにも対応できる体制を整える必要があります」

 海洋でも最終的には陸軍の出動が必要になるとの見方だ。さらにブラウン大将は同会議で「最優先は中国です」と明言した。

 これは過去20年ほど、米軍が第一義として精力を注いできた中東でのテロリズムとの戦いから、対中政策へと戦略がシフトしてきたということでもある。

 特にイラクとアフガニスタンに派遣していた兵力を世界の別地域に向かわせる中で、中国がプライオリティーになったのだ。

B52戦略爆撃機


 今月に入ってから、米軍は南シナ海上空に「B52」戦略爆撃機を3回も飛行させている。

 「定例訓練」であるが、米軍はわざわざ公表する義務がない。しかし3回とも公式発表している。

 最初は3月4日で、2機が米領グアムのアンダーセン空軍基地を飛び立ち、1機は南シナ海上空を「定例訓練」し、もう1機は航空自衛隊と共同訓練をして帰還した。

 14日にも2機のB52戦略爆撃機が、さらに19日にも同様に2機を飛ばしている。

 米太平洋軍報道官は「米航空機は同盟国や友好国、さらに自由で開かれたインド・太平洋地域を守るために恒常的に同地域で作戦行動を行う」と述べて、南シナ海での中国の行動をけん制した。

 さらに米第7艦隊は11日、イージス駆逐艦「スプルーアンス」と「プレブル」を南シナ海に派遣。これは「航行の自由」作戦の一環で、今後も定期的に行っていく予定である。

 作戦の目的は中国が南沙(スプラトリー)諸島で過度な海洋進出をしていることへの「異議申し立てと国際法に準拠した航路を維持するため」だ。

 今月の米軍によるこうした動きを見ると、前述したブラウン大将の「陸海空および海兵隊の兵力が協力し合って対処する」プランは着実に前に進んでいるかにみえる。

 米軍のこうした行動に中国はすぐに反発。

 外務省報道官は米イージス駆逐艦の派遣直後、「米軍艦が中国の許可なく海域に進入したことは中国の主権を侵す行為」と嫌悪感を露わにした。

 さらに「米国は南シナ海で挑発し、緊張を生み出し、平和と安定を脅かしている」と挑発した。

 しかし中国こそが挑発を繰り返す平和と安定の破壊者であるとの見方は、米国では広く支持されている。

 首都ワシントンにある新アメリカ安全保障センターのイーリー・ラトナー副所長は、米国が南シナ海を含めたインド太平洋地域で効果的な防衛体制を維持することは中国の拡張をけん制する意味で重要であると説く。

 「米国の抑止力が同地域でなくなったら、台湾をはじめとする所地域に政治的不安定がもたらされることになる」

 いますぐに南シナ海で有事が勃発する可能性は低いが、文字どおり万難を排して準備しておく必要性は高い。

 ただやっかいなことは、中国は南沙諸島の人工島を軍事基地だけでなく非軍事基地としても使用する意図がある点だ。

 民生基地としての併用であれば、米軍は民間人をむやみに殺傷できないとの思惑がある。

 南シナ海は地政学的に重要な場所であると同時に、海洋資源の宝庫であることは広く知られている。

 中国の貿易額の64%の貨物は南シナ海を通過しているし、南シナ海経由の原油のうち23%は日本にも来ている。

 海洋資源という点に目を向けると、原油と天然ガスの埋蔵量が豊富である。

 米エネルギー情報局(EIA)の調査によると、原油の未発見埋蔵量は112億バレル。ところが中国政府が見積もる埋蔵量はさらに多い。

 中国海洋石油総公司が算出した埋蔵量は、EIAの10倍以上にあたる1250億バレルに達する。

 また天然ガスの埋蔵量はEIAの調査では190兆立方フィート。一方の中国海洋石油総公司の見積もりは500兆立方フィートで、やはり中国の方が2倍以上も多い。

 埋蔵量を正確に算出することは難しいが、大量の天然資源が埋もれているとことは間違いない。

 世界の他地域と比較しても、原油と天然ガスは中東、ロシアの埋蔵量にはかなわないが、天然資源の宝庫と呼んで差し支えない。

 中国政府がそれを狙わないわけがない。地政学的、資源的、軍事的に南シナ海を内海したいとの野心は強まる一方なのだ。

 米専門家からは、南シナ海が「中国のクリミア半島」になりつつあると危惧が聞こえてくる。

 ロシアが2014年、力ずくでクリミア半島を併合した手法を中国は手本にしているとの見方だ。

 中国による明らかな国際法違反を、米国だけでなく関係国がともに異議として唱えると同時に、圧力を加えていく必要がある。

 前出のブラウン陸軍大将は「すべての領域でいいポジショニングを得るために、陸軍が果たす役割もある」と、米軍はすでに普段から南シナ海を眺め、陸海空および海兵隊が総合的に対中国戦略を練っていることを示唆した。
【私の論評】本気の米国、南シナ海で比に攻撃あれば米が防衛するとポンペオ氏明言(゚д゚)!


フィリピン・マニラで同国のテオドロ・ロクシン外相(左)と握手するマイク・ポンペオ米国務長官

以前のこのブログでも掲載したように、南シナ海に関しては、ポンペオ米国務長官も最近重大な発言を行っています。これも、南シナ海への中国の進出阻止に本気の米国の姿勢を示すものです。

ポンペオ米国務長官は、中国の南シナ海への覇権拡張をけん制するために、南シナ海におけるフィリピン軍等への攻撃が米比相互防衛条約の対象になると明言し、以下のように述べました。
島国としてフィリピンは、自由な海洋へのアクセスに依存している。南シナ海における中国の人工島建設と軍事活動は、米国だけでなく貴国の主権、安全、したがって経済的活動に脅威を与えている。南シナ海は太平洋の一部をなしているので、同海域におけるフィリピンの軍、航空機、公船に対する如何なる攻撃も、米比相互防衛条約第4条の相互防衛義務発動の引き金となる。
この発言は3月1日、訪問先のフィリピンでドゥテルテ大統領、ロクシン外相と会談、同外相との共同記者会見において行われたものです。

2017年末に発表された国家安全保障戦略(NSS)、2018年の8月に成立した国防権限法でもフィリピンや台湾防衛の強化が謳われており、既定路線だったと言えます。また昨年のマイク・ペンス副大統領の東アジア首脳会議(EAS)で、「中国による南シナ海の軍事化と領土拡張は違法で危険だ」との発言を一層具体化するものとなりました。

なぜポンペオ氏はこうした発言をしたのでしょうか。

米比相互防衛条約第4条では、「各締約国が太平洋地域におけるいずれか一方の締約国に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の手続きに従って、共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と規定しています。

これまでは南シナ海が「太平洋地域」に入るのかどうかが不明であったため、「南シナ海は太平洋の一部である」と発言することで、その曖昧さを払拭したのです。これによって、以前もこのブログで掲載したように、南シナ海問題、米国とフィリピンの「温度差」を解消しようとしているのでしょう。

米国の政府高官がこうした発言をしたのは数十年ぶりです。オバマ政権下では、同種の規定のある日米安保条約が尖閣に対して適用されるという宣言があった一方で、米比相互防衛条約の適用は注意深く避けられてきました。つまり中国が着々と南シナ海において、人工島を造り、軍事基地化していた時期にこのような発言はなかったため、フィリピンの米国に対する不信は募っていました。

もし、米国が日本に与えたのと同じような確証を私達にも与えてくれるなら、フィリピンは米国に頼ることができ、ドゥテルテ大統領は、中国に対して独自の外交政策を進めようとは思わなかったでしょう。

しかし、フィリピンはすでに、2つの島を失っています。その時米国は、フィリピンを助けに行きませんでした。米国は、国際法のもとで解決されると考えており、領土問題でフィリピンの味方はしませんでした。

中国に対して独自の外交政策をすすめてきたドゥテルテ大統領

一方、米国が4条の適用を宣言してこなかったのは、その適用を宣言すれば、アメリカが望まない戦争に巻き込まれる危険や、中国がアメリカの「レッドライン」を試す可能性が高まるからです。

それにもかかわらず、米比相互防衛条約の適用を宣言したのは、着々と進む南シナ海の中国の内海化の動きです。

中国は、東シナ海、南シナ海を聖域化していく方針で、中国は2010年代半ばに南シナ海を「核心的利益」と呼び、戦争をも辞さないという姿勢を示しています。

この方針は、1989年から1997年まで中国共産党中央軍事委員会副主席であり、人民解放軍海軍の司令官であった劉華清氏(1916~2011)によって出されたものです。

劉氏は、中国の軍隊が陸軍中心に編成されていることに不満を持ち、近代的な海軍を保有するよう主張。中国は1992年に「領海法」を施行し、海洋での資源や戦略拠点といった海洋権益の確保が、中国の安全保障にとって死活的に重要だと規定しました。

その中で中国は、東シナ海、南シナ海、南沙諸島を自国の領土だと一方的に宣言しています。つまり第一列島線から南シナ海を中国の内海として支配することを決めたのです。

中国は南シナ海を中国原潜の聖域にすることを狙っている

中国はすでに西沙諸島や南沙諸島において岩礁等を埋め立てて人工島を造り、軍事基地化しています。さらにフィリピンの隣に位置するスカボロー礁の埋め立てを完成すれば、戦略的トライアングルができ、南シナ海の内海化が完成します。

南シナ海は水深が深いため、ここに中国の原子力潜水艦が潜み、海南島の三亜海軍基地から南シナ海を通り、バシー海峡から太平洋に出ていくことができれば、アメリカ本土に核弾頭を打ち込むことができるようになります。

つまり米国に王手を打つことができるわけです。それは、米国が世界の警察官から撤退することを意味し、日本がアメリカの核の傘を失う時でもあるのです。

米比相互条約の適用について、「取引(deal)」が得意なトランプ大統領も、何のディールも持ち出していません。フィリピン防衛の表明は、アメリカは「覇権から降りない」という意志の表明そのものでもあるためでしょう。


南シナ海は、日本に輸送される石油の9割がこの海域を通過するなど、日本にとっても生命線ともいえる海域です。

この海域を護るために、日本は現在2つのことをしています。1つは、フィリピンやベトナムといった沿岸国に教育訓練を施したり、防衛装備を供与したりすることであり、もう1つは、南シナ海で潜水艦が訓練し港に寄港するなど、訓練と寄港で「中国の自由にさせない」というプレゼンスを示しています。

しかし、南シナ海に戦力を投じれば、東シナ海が手薄になるため、いずもを空母化したり、シーパワーを増やしていかないと、これ以上のことはできないでしょう。

政治とは未来を変えるために現在意思決定をすることです。海軍力の増強には時間がかかるため、日本も海軍力の増強に本腰を入れるとともに、米、英、仏とともに海洋の自由を守ることが不可欠となってきています。

このような準備をすすめる一方で、現在米国が行っている対中国冷戦も大きな意味を持ちます。これによって、中国共産党一党支配をやめ、中国が民主化、政治と経済の分離、法治国家し体制を変えるならば、新中国は国際法を遵守することになり、問題は解決します。

もし、中国が体制を変えないというなら、経済冷戦をさらに強め、米国のみならず世界の先進国がこれに協力し、中国経済を弱体化させ、その後自滅を待つか、軍事的に弱体化したとき、米国およびその他同盟国は、南シナ海の海域で何らかの軍事行動を起こすことになるでしょう。

中国は、現在の体制と、南シナ海の軍事基地をなんとしても守り抜くことになるでしょうから、米国は中国が他国に影響力を行使できなくなるくらいまで、経済を弱体化させ、軍事行動にでることになるでしょう。それは、いますぐということではなく、はやくても10年後くらいになることでしょう。

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2019年3月29日金曜日

【主張】欧州の対中戦略 結束乱れる危うさ認識を―【私の論評】日欧ともに最早お人好しであってはならない(゚д゚)!

【主張】欧州の対中戦略 結束乱れる危うさ認識を

     欧州で自らの勢力圏拡大を図ろうとする中国にどう対応するか。欧州の対中戦略は世界の経済や安全保障にも影響する重要な意味を持つ。

 だが、中国の習近平国家主席による訪欧で明確になったのは、対中国で足並みをそろえられない欧州の現実である。

対中接近をはかる中・東欧諸国(16カ国)

 欧州連合(EU)の欧州委員会は、中国を貿易や技術開発の「競争相手」とする見解をまとめ、中国への警戒感をあらわにした。実際、フランスやドイツではそうした見方が多い。ところがイタリアや中・東欧諸国は、むしろ対中接近を図っている。

 EUの結束どころか、分断が深まるようでは危うい。経済、軍事上の覇権を追求する中国が、EU各国を切り崩しながら膨張主義を強めることに懸念を覚える。

 欧州に求めたいのは、目先の経済利益に踊らされず、日米と連携して中国に厳しく対処する姿勢である。その認識を共有し、結束を取り戻せるかが問われよう。

 マクロン仏大統領は習氏に「EUの結束を尊重するよう望む」と求めた。イタリアが中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に協力する覚書を結んだためである。EU内の旧共産圏諸国なども覚書を結んでいるが、先進7カ国(G7)ではイタリアだけだ。対米関係で苦境に立つ中国には成果である。

 問題は、これを機に一帯一路が再び勢いづきかねないことだ。一帯一路は、相手国を借金で縛る手法への批判が世界中で相次いでいる。欧州でも中国の手に落ちたギリシャ港湾などが軍事利用されることに警戒がある。そうした懸念が強まることにならないか。

 反EU機運が高まる中、イタリアのように経済が停滞する国が中国に傾斜する流れが強まれば、EUの求心力は一段と弱まることにもつながりかねない。

 域内では第5世代(5G)移動通信システムでも対応に温度差があり、欧州委員会は米国が求める中国の華為技術(ファーウェイ)の一律排除を見送った。それが米欧の溝を際立たせてもいる。

 留意すべきは、EU域内のみならず、日米欧がばらばらに動けばどこを利するかである。日本は一帯一路に前のめりとなる一方、ファーウェイ製品の政府調達を事実上排除した。国ごとの違いを乗り越え対中戦略でどう連携できるか。G7の場で深めるべき重要なテーマだと認識しておきたい。

【私の論評】日欧ともに最早お人好しであってはならない(゚д゚)!

上の記事では、「日本は一帯一路に前のめりとなる一方、ファーウェイ製品の政府調達を事実上排除した」としています。しかし、「一帯一路にまえのめり」は事実ではないと思います。特に日本政府、安倍首相はそうではありません。それについては、以前このブグにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
安倍首相、中国の一帯一路協力に4つの条件 「全面賛成ではない」―【私の論評】日本には中国および習近平政権の今後の行方を左右するほどの潜在能力がある(゚д゚)!

参院予算委員会で答弁を行う安倍晋三首相。右は麻生太郎副総理兼財務相、
左奥は根本匠厚生労働相=25日午後

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、安倍晋三首相が25日の参院予算委員会で、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に日本が協力するには、適正融資による対象国の財政健全性やプロジェクトの開放性、透明性、経済性の4条件を満たす必要があるとの認識を示した。「(4条件を)取り入れているのであれば、協力していこうということだ。全面的に賛成ではない」と述べたことを掲載しました。

そうして、安倍総理は「一帯一路」に対して両手をあげて賛成しているどころか、牽制しているという趣旨の主張をしました。それに関する部分を以下に引用します。
安倍総理が、条件づきで一帯一路への協力の可能性を述べたのは、何も今に始まったことではありません。以前から何度か述べています。
たとえば2017年都内で行われた国際交流会議の席上、安倍総理は中国の経済構想「一帯一路」に初めて協力の意向を表明しています。これを受け一部メディアはあたかも日本が中国に屈したかのように報じるなど、「中国の優位性」が強調され始めました。
安倍首相は同年6月5日に国際交流会議「アジアの未来」の夕食会で講演し、中国の経済圏構想「一帯一路」について、「(同構想が)国際社会の共通の考え方を十分に取り入れることで、環太平洋の自由で公正な経済圏に良質な形で融合し、地域と世界の平和と繁栄に貢献していくことを期待する。日本は、こうした観点からの協力をしたい」と述べました。
新聞各紙は、初めて安倍首相が「一帯一路」への協力を口にしたということをポイントとして強調しています。これだけ見ると、いよいよ日本も「一帯一路」に参加するかのような印象を与えました。
当時は、米国のTPP離脱で窮した安倍政権が、「一帯一路」に尻尾を振り始めたと見る向きもありました。しかし、その後日本は自らTPPの旗振り役となり、米国を除いた11カ国で昨年末に発効しています。
ただし、産経新聞は「安倍晋三首相、中国の『一帯一路』協力に透明性、公正性などが『条件』」という見出しで、中国が支援する国の返済能力を度外視して、インフラ整備のために巨費を投じることが問題化しつつあることを踏まえた発言だという内容となっています。むしろ中国を牽制する狙いがあるという論調です。私もそう思います。

本日の安倍総理による4条件①対象国の財政健全性、②プロジェクトの開放性、③透明性、④経済性も同じことであり、これは中国を牽制する狙いをより明確にしたものです。
安倍総理の対中戦略は一貫したものであり、要するに中国がまともになれば、協力することもあり得るが、そうはなりそうもないので、当面は協力はあり得ないということを表明しているのです。

中国の習近平国家主席は27日、イタリア、モナコ、フランスの欧州3カ国への歴訪を終えて帰国しました。巨大経済圏構想「一帯一路」についてイタリアと先進7カ国(G7)で初となる覚書を交わすなど、習指導部は「中欧関係の発展に新たな推進力を注入した」(耿爽外務省報道官)と成果をアピールしています。ただイタリアの対中傾斜で欧州連合(EU)内部の警戒感はさらに高まり、人権問題をめぐる溝も埋まっていません。

米国との貿易摩擦が長期化する中、習指導部は巨額投資と巨大市場の開放をテコにEUとの関係強化を図っていますが、期待したほど一帯一路への支持は拡大できていないのが現状です。

中国共産党は27日、収賄容疑で調査していた国際刑事警察機構(ICPO、本部・仏リヨン)前総裁の孟宏偉前公安省次官を党籍剥奪処分にしたと発表しました。同事件をめぐってはフランスにとどまる孟氏の妻がマクロン仏大統領に、中仏首脳会談で待遇改善を提起するよう求める書簡を送付。訪仏後まで処分の発表を遅らせたのは、事件に注目が集まるのを避ける狙いがあったようです。

中国外務省は習氏が外遊に出発した21日、EUの駐中国大使らに新疆ウイグル自治区へのツアーを提案しました。100万人以上のウイグル族らを強制収容しているとの批判に反論するのが狙いとみられますが、EU側は「準備が必要」だとして拒否しました。中国側の政治的主張に利用される懸念があったとみられます。

EU首脳会議後の会見で笑顔を見せるユンケル欧州委員長=22日、ブリュッセル

陸のシルクロードと呼ばれる「一帯一路」では、中国は欧州において、すでに旧共産圏16カ国との間で協力の枠組み「16プラス1」を持っています。バルト3国、旧東欧諸国、バルカン半島の国々が参加し、大規模なインフラ整備事業ではこれらの国々の対中依存度は高まりつつあります。

問題は、このうちポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、バルト3国など11カ国がEU加盟国であることです。これに加えて、中伊の急速な接近に対し、フランスのマクロン大統領やEU執行機関・欧州委員会のユンカー委員長らが強く反応したのも無理はないです。

マクロン氏は22日にブリュッセルで行われたEU首脳会議の場で記者団に、「中国に関して欧州がお人好しでいる時代は終わった。長い間、われわれは対中政策で共同歩調を取らず、中国は欧州の分断から利益を吸いあげてきた」と警戒感を直截に表現した。ユンカー氏の中国に関する発言は「トランプ米大統領並みだった」との報道もあります。

EU首脳らは会議で、欧州委員会による対中戦略の見直し計画を承認しました。この文書は中国について「全体的なライバルである」と明記し、気候変動対策や核不拡散問題では従来型の協調維持を掲げつつも、「お人好し」一辺倒の路線とは明確に決別するトーンで貫かれている点が目新しいです。

中国の対欧投資を規制することや、中国に市場開放をより厳しく求めること、中国が積極的に輸出する次世代通信5Gの通信網整備については安全保障上の脅威の有無について検討すべきことなども盛り込んでいます。

ある欧州外交官は「中国による分断工作をはねつけるための対策だ」と語っています。首脳会議では、サイバー分野についてはコンテ伊首相も「懸念を共有する」と述べ、この分野で中国と協力する場合には、透明な形でEUに情報提供すると約束しました。EU内で高まる懸念に一定の配慮を示さざるを得なかったのです。

マクロン仏大統領

マクロン氏は26日、習氏が国賓として滞在中だったパリにユンカー氏とメルケル独首相を呼び、4者会談を行いました。EUの中軸をなす独仏と欧州委員会の共同歩調をアピールするために設定したものです。この場でもマクロン氏は「中国はEUの一体性と価値観を尊重しなければならない」と述べ、カネにものを言わせて欧州の分断を図る試みを率直に批判したのである。

問題の一因は、EU加盟国が自国の国家安全保障政策に関する主権をまだEUに移譲していない制度にもあるでしょう。例えば、中国の通信大手「華為技術(ファーウェイ)」を5G通信網整備に関与させるか否かについての最終的な判断は、EUではなく、加盟国が下すのです。

安保政策の「統合不足」は、中国による分断工作を許す弱点でしょう。マクロン氏が中国に注文をつける一方で、300機のエアバス機売却について習氏の同意を得たことが示すように、対中関係は是々非々のバランスも難しいです。

マクロン氏はさる3月5日、EU加盟国の28のメディアに寄稿し、「欧州の再生」を呼びかけました。ドイツを怒らせるユーロ圏の共通予算構想など従来の主張は封印し、米国が強く求める国防費の増額をEUが義務化することや、内実の伴う共同防衛計画の策定、EUから離脱するであろう英国を取り込んだ「欧州安全保障理事会」の創設、相互防衛条約の締結をなど提唱しました。

通商政策では、租税、データ保護、環境などのEU基準や戦略的利益を無視した商取引を禁じることや、米中並みの産業・調達政策を導入すべきことも主張しました。

EUが今後、マクロン氏の問題提起をどこまで議論するかは不透明です。28カ国の総意で重要案件を決めていくEUの意思決定は確かに時間がかかります。しかし、こうした大手術が必要であることは間違いないです。

第2次大戦後の欧州は「平和構築」「繁栄の共有」「民主制度の改革」という発展指向の試みによって運命共同体を築きました。その欧州はいま、文明を共有する一体的な空間の「防衛」、つまり自らの浮沈をかけた闘いに直面しているのです。

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2019年3月28日木曜日

5月20日が消費増税停止期限か 政権目標のデフレ脱却道半ば…日本も「リーマン級」混乱懸念―【私の論評】安倍総理は消費税増税の空気に抗え(゚д゚)!

5月20日が消費増税停止期限か 政権目標のデフレ脱却道半ば…日本も「リーマン級」混乱懸念
 
 
   2月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は昨年2月と比べて0・7%上昇した。総合指数は0・2%上昇、「食料及びエネルギーを除く総合」は0・3%上昇だった。   これらから、生鮮食品は下落しているが、エネルギー価格が上昇しており、全体としては極めて緩やかな上昇にとどまっていることが分かる。ただし、エネルギーのうちガソリンについては、これまで上昇していたが、2月には2年3カ月ぶりにマイナスに転じたため、エネルギーの上昇への寄与が低下し、総合指数と「生鮮食品を除く総合」で伸び率が鈍化した。   もともと、季節要因と海外要因で影響を受けやすい総合指数と「生鮮食品を除く総合」でみるよりも、「食料及びエネルギーを除く総合」で見たほうが傾向が見やすい。それの対年同月比でみると0・3%なので、物価はほとんど上がっていない。   これでは、デフレから完全に脱却していない。デフレ脱却は安倍晋三政権の一丁目一番地といえる目標である。   こうしたなかで行われる消費増税はデフレ脱却に支障が出るばかりか、名目経済成長を阻害し、財政当局が主張する財政健全化のためにも逆効果である。   安倍首相はこれまで「リーマン・ショック級のことがない限り消費増税を行う」と言ってきたので、消費増税見送りの可能性はある。   中国経済は米中貿易戦争のために急減速している。英国と欧州連合(EU)もブレグジット(EU離脱)の混迷により経済変動が不可避の状況だ。それに加えて、インフレ目標2%を下回るほど、日本の経済活動は不活発である。   日本国内経済がさえないのは、事実上の金融引き締め政策であるイールドカーブコントロール(長短金利操作)を日銀が堅持し、同時に財務省も緊縮財政路線から脱していないからだ。今の景気は既に下降局面に入っている。    もっとも今年度予算が成立する3月中は予算成立が安倍政権の最優先なので、消費増税は予定通りとしかいえない。しかし、4月以降、安倍首相が君子豹変(ひょうへん)することはあり得る。     これまで消費増税は2度見送られた。1度目は2014年11月で、衆院解散・総選挙が行われた。15年10月からの消費増税を世論に問うものだった。     2度目は、16年5月の伊勢志摩サミット。その時、17年4月からの消費増税はリーマン・ショック級の経済変動があり得るとして見送られた。    二度あることは三度あるなのか、三度目の正直なのか。    こうした状況の中、いつまでに安倍首相が最終決断するかというと、常識的には5月20日の1~3月期国内総生産(GDP)速報公表までだろう。7月の参院選の公約は6月上旬までに取りまとめる必要があるからだ。 リーマン・ショック級というなら、3年前の伊勢志摩サミット時より今のほうがその確率は高い。震源地となる候補として、中国、英国に加えて、日本も挙げておこう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
 
【私の論評】
 
 
 
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2019年3月27日水曜日

トランプ大統領「再選」の目に韓国&北朝鮮が震撼! 日本は拉致問題解決の追い風に―【私の論評】トランプ再選の可能性はかなり高い(゚д゚)!安倍四選も?


ロシア疑惑を乗り切ったトランプ氏

 ドナルド・トランプ米大統領に「再選」の目が出てきた。2016年の大統領選をめぐるロシア疑惑をめぐり、特別検察官が提出した捜査報告書で、トランプ陣営とロシアの共謀は認定できないと指摘されたのだ。来年の大統領選に向けた「最大の障害」がなくなり、トランプ氏は続投に意欲を見せる。一方、韓国と北朝鮮には震撼(しんかん)が走りそうだ。トランプ氏は韓国への不信感を強め、北朝鮮にも制裁を緩める気配がない。日本にとっては、悲願の拉致被害者奪還に追い風となりそうだ。

 「2年間もかけて、証拠が1つも出なかった。米民主党としては、ロシア疑惑しか、トランプ氏の再選を阻む手段はない。経済政策はうまくいっているし、外交でも米中新冷戦でポイントを挙げている。民主党の大統領候補は極左ばかりで、トランプ氏の再選の可能性がさらに強まった」

 国際政治学者の藤井厳喜氏はこう語った。

 ウィリアム・バー司法長官は24日、ロバート・モラー特別検察官の捜査報告書について議会に概要を報告した。そのなかで、「特別検察官の捜査は、トランプ陣営や関係者らが、大統領選に影響を及ぼすためロシア側と共謀したり協力したりしたということを見いださなかった」と指摘した。

 司法妨害についても、バー氏は「特別検察官の捜査による証拠は、大統領の司法妨害への関与を立証するには不十分」と結論づけたとする意見を記したという。

 こうした動きを受け、トランプ氏は同日、ツイッターに「共謀も(捜査)妨害もない。完全かつ全面的に疑いが晴れた。米国を偉大にし続けよう!」と投稿した。「偉大にし続ける」という部分から、続投への強い意欲が感じられる。

 米議会下院を握る民主党は報告書全文の公開を要求したが、トランプ氏にとっては「再選への追い風」となったのは事実のようだ。

 これらは、韓国と北朝鮮には「最悪の事態」を意味する。トランプ氏と両国との関係悪化が顕在化しているからだ。

 米国の同盟国である韓国だが、文在寅(ムン・ジェイン)政権の誕生後、米韓関係は悪化の一途をたどっている。

 北朝鮮の「核・ミサイル」問題をめぐり、文政権が「仲介者」となって始まった米朝交渉だが、北朝鮮の「見せかけの非核化」が明らかになり、2月末の米朝首脳会談は決裂した。世界各国で、対北制裁緩和を主張し続けた文大統領に対し、トランプ政権は「北朝鮮の代弁者」とみなして不信感を強めている。

 韓国の保守系メディアは最近、「米韓関係の悪化」を懸念する記事を掲載している。

 米朝首脳会談から1カ月近くがたった25日にも、中央日報(日本語版)は《「文大統領の仲裁論に米国務長官が不快感、韓米外相会談はないと…」》と伝えた。記事では、ワシントンの情報筋の話として、マイク・ポンペオ国務長官と、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相の会談が、今月中にはないとの見方を紹介している。

韓国海軍駆逐艦による、海上自衛隊哨戒機への危険な火器管制用レーダー照射事件についても、米国側は「韓国側の暴挙」について、日本側から詳細な情報を得ているという。

 北朝鮮にとっても、トランプ政権の継続は歓迎すべき話ではない。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は昨年6月と今年2月、トランプ氏との首脳会談に臨んだが、何の成果も得られなかった。列車で3日近くかけて大宣伝しながらベトナムに乗り込んだものの、経済制裁も緩和されず、最高指導者の権威に傷がつくだけの結果に終わった。

 先週、正恩氏のロシア訪問を示唆する動きがあったが、米朝首脳会談の決裂を受けて、米国の譲歩を引き出そうとした可能性がある。

 前出の藤井氏は「トランプ氏が強くなるということは、『親北』の文政権にはマイナスだ。北朝鮮としても、『もう少し柔らかい民主党の大統領になれば、くみしやすい』とみているだろう。トランプ政権が続けば『核・ミサイル』問題で妥協せざるを得なくなるはずだ」と解説する。

 逆に日本にとって、トランプ氏の続投は追い風といえる。



 安倍晋三首相とトランプ氏との信頼関係が強固で、先月の米朝首脳会談でも、安倍首相が最重要課題と位置づける拉致問題を、会談冒頭を含めて2回も提起したのだ。

 藤井氏は「北朝鮮は首脳会談で、米国が経済制裁を解除してくれると甘く踏んでいたようだが、そうはならなかった。『(拉致問題を解決して)日本から金を引き出さないと厳しい』という考えになっているようで、水面下で日本に接近してきたと聞く。トランプ政権は対北強硬路線を取っており、日本にとって、トランプ氏の再選は良い事態だ」と語っている。

【私の論評】トランプ再選の可能性はかなり高い(゚д゚)!安倍四選も?

トランプはおそらく再選されることでしょう。それには以下のような理由があります。

第一に米国の現職大統領は再選される可能性が高いことがあります。第二次大戦後米国では11人の現職大統領が再選選挙に臨みましたが、8人が再選を果たしました。

再選できなかった3人は、フォード、カーター、父ブッシュですが、この内フォード大統領は任期途中で辞任したニクソン大統領に代わって副大統領から繰り上がって就任し選挙を経ていないので除外すると、現職大統領の再選の可能性は80%以上ということになるります。

それもイラン問題でしくじったカーター大統領や、景気不振を招いた父ブッシュ大統領の場合と違い、トランプ大統領には今のところ政策的に大きな間違いは犯してていません。

第二に相手候補のことがあります。民主党側では2ダース以上の候補者の名前があがっていて乱立気味です。

2020年のアメリカ大統領選挙は、まだ1年以上先なのですが、すでに公式に出馬を表明したのは、ジュリアン・カストロ(元住宅都市開発省長官)、リチャード・オジェダ(ウエストバージニア州上院議員)、ジョン・デレイニー(メリーランド州選出下院議員)等3人だですが、この他にコーリー・ブーカー(ニュージャージー州選出上院議員)、カマラ・ハリス(カリフォルニア選出上院議員)などですが、彼らは実は米国内でも知名度は低いのです。

ジュリアン・カストロ

そこで、バイデン元副大統領やヒラリー・クリントン前大統領候補の出馬が取りざたされているが「新味がない」との声も高いです。

民主党の場合、党内の候補者の最初の討論会が今年6月に開催され、党内の候補者選びがスタートするが、今年は全ての日程が早まり有力州の予備選は12月に始まります。つまり、6月までには一年半の選挙戦を戦い抜く組織と資金を確保しておく必要があるわけですが、今のところそこまで準備できそうな候補は見当たらないです。

ちなみに、前回の大統領選でヒラリー・クリントンは2015年4月までに組織と資金の準備を終えて正式な出馬表明をしていました。

一方のトランプ大統領は、昨年2月の大統領就任時にすでに2020年への出馬を連邦選挙委員会に届け出て公式に選挙運動を始め、昨年(2018年)2月には選挙参謀を指名しました。資金的にもすでに3500万ドル(約40億円)を集めたとされています。

最後に、トランプ大統領に有利にはたらく要素があるとすれば、意外と思われるかもしれないが下院での弾劾の動きです。

中間選挙で過半数を獲得した民主党は、新議会でトランプ大統領への弾劾を目指していわゆる「ロシア疑惑」について厳しく追求してきました。

しかし、1998年にクリントン大統領のインターンとの不倫問題で共和党が弾劾に向けて激しく追求した時に行われた中間選挙では、その共和党が議席を失うということになりました。有権者は議会が弾劾にばかり熱をあげることには反対するのです。

さらに、モラー報告書によって過去2年間も調査を実行したのに「ロシア疑惑」なるものには、何の実体もないことが明らかになったわけですから、これは当然トランプ大統領に有利に働くのは当然のことです。これ以上弾劾の動きがあれば、さらにトランプ大統領に有利となるでしょう。



日本では、安倍総理四選の噂もでています。そうして、それはあながち否定できないところがあります。これは、自民党の党則を変えれば実現できるものだからです。

こういった噂が出る背景には、安倍氏の後継候補がなかなか見えてこないという事情がああります。石破氏は先の総裁選の地方票で健闘して「ポスト安倍」レースで一歩抜けた印象がありますが、肝心の国会議員票では2割にも達していませんでした。

その他は岸田氏、加藤氏、茂木敏充経済再生担当相らの名が上がりますが、政治的力量、知名度、人望ともに心もとないです。特にこれら候補すべてが、増税派であるということも気になります。

さらに石破氏も含めて4人は、いずれも60歳代。64歳の安倍氏とほぼ同世代です。これでは、対外的に世代交代したというアピールができません。

自民党の若手が、経験を積むまでの間、安倍氏に続けてもらったらどうか。そういう考えを抱く議員も多いようです。

安倍・トランプ続投で日米にとって朝鮮半島問題、中国への対処などかなりやりやすい状況になるのは間違いないと思います。

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