2022年5月31日火曜日

中国はウクライナ戦争で台湾戦略を変化させるのか―【私の論評】米軍による台湾防衛は実は一般に考えられている程難しくはないが、迅速に実行すべき(゚д゚)!

中国はウクライナ戦争で台湾戦略を変化させるのか

岡崎研究所

 バーンズ米中央情報局(CIA)長官は、5月7日に行われたフィナンシャル・タイムズ紙とのインタビューで、ウクライナ情勢は中国指導部の台湾統一戦略に何らかの影響を与えているだろう、と述べた(CIA director says China ‘unsettled’ by Ukraine war, FT, May 8)。バーンズは以下の諸点を指摘する。


・習近平がロシアによるウクライナ侵略の残忍性との関連により中国にもたらされる可能性のある評判の低下に少々動揺し、戦争がもたらした経済的な不確実性にも不安になっているとの印象を強く受ける。

・中国は「プーチンがやったことが欧州と米国を接近させた事実」にも失望しており、台湾につき「どんな教訓を引き出すべきか慎重に検討している。

・プーチンのロシアからの脅威を過小評価することは出来ないが、習の中国は「われわれが国家として長期的に直面する最大の地政学的課題」だ。

 上記のバーンズの発言は、慎重な言い回しのなかにも、米CIA当局の判断が的確に示されている、と言って良いだろう。

 プーチンと習近平は、オリンピックの開会式に合わせて北京で会談し、両者の間の連携には「限界」はない、と宣言した。しかし、ロシアのウクライナ侵攻後、欧米各国の間で反ロシアの同盟関係が急速に進んでいることを見て、習近平は不安の色を隠せないようだ。

 バーンズの見る通り、習近平にとっては、ロシアの侵略がはじまってから、10~12週間がたち、中国にとっては、台湾問題との関係で、自分たちの計算が狂ってきたと思っているのではないか。習近平にとっては、ロシアの無謀な侵略とロシア経済が制裁によって受ける不確実性を中国としては今後どのように考えればよいのか、という点も重なっているだろう。

 いまだ台湾に残る米国が助けてくれるかの懸念

 ウクライナのケースと台湾のケースを比較することには慎重でなければならないが、「台湾関係法」という国内法をもち、台湾の防衛に事実上コミットしている米国としては、台湾を「準同盟国」として扱う以上、もし将来、中国から台湾への一方的な軍事侵攻があれば、台湾を如何に支持、防衛するか、について、今回のバーンズ発言からは、今一つ明瞭な答えは出ていないといえよう。

 現在、台湾住民たちにとっての最大の関心事は、依然として「いざとなったとき、米国は助けにきてくれるだろうか」という一点に尽きるといえよう。これは、現在のバイデン政権の一大課題である。

 なお、バイデン大統領は5月23日、クワッドの首脳会合のために訪日した際、岸田文雄首相との首脳会談後の共同記者会見で、台湾が攻撃された際の米国の台湾防衛の意思を問われ、「一つの中国」政策を維持するとしつつ、「イエス」と答えた。

【私の論評】米軍による台湾防衛は実は一般に考えられている程難しくはないが、迅速に実行すべき(゚д゚)!

ヘインズ国家情報長官

バーンズ米中央情報局(CIA)長官が上記のような見解を示す一方、米国の情報機関を統括するヘインズ国家情報長官は10日、議会上院の公聴会で、台湾統一を目指す中国について「彼らは、われわれの介入を押し切って台湾を奪えるように懸命に取り組んでいる」と述べて、軍備の増強を進めているとの見方を示しました。

ただ「中国は武力衝突を避ける形で強制的に統一することを望んでいる」と述べて、軍事力を行使せずに統一を実現するため、外交、経済、軍事面で圧力を強めているとの考えを示しました。

さらにヘインズ長官は、中国がロシアによるウクライナへの侵攻について分析を続けているとの見方を示し「中国は欧米各国が一致して制裁を打ちだしたことに驚いている。彼らは台湾の文脈でもこのことを考えるだろう」と述べました。

そのうえで「ロシアで起こったことを見て、中国の自信は揺らいでいるかもしれない」と指摘し、苦戦が伝えられるロシア軍の状況を踏まえ、台湾への侵攻について、より慎重になっている可能性があるとの見方を示しました。

ロシアのウクライナ侵攻の失敗は、中国が想像するほど台湾攻略は容易ではないというシグナルを中国に送るもので、自国より小さかったり軍事的に弱かったりする相手をミサイルで負かすことができるという誤った通説を打ち砕くことにもなるのは間違いないようです。

ウクライナで破壊されたロシアの戦車

米空軍の上級戦略顧問であるエリック・チャン氏はVOAに対して「ロシアのウクライナ侵攻が迅速な軍事行動によってウクライナ占領という『既成事実』を作ることを目的としていたように、中国も迅速な軍事行動によって台湾占領の既成事実を作ることを望んでいた。しかし、ウクライナ戦争が長引いていることで、中国の最高指導部は、これまでの作戦よりもさらに迅速で破滅的な戦略が必要だと考えるようになっている」と指摘しています。

つまり、艦船を多数遊弋(ゆうよく)させ時間をかけて台湾封鎖を実行する余裕はなく、いきなり台北などの台湾本土の重要都市へのミサイル攻撃や空爆、艦船による艦砲射撃などで主導権を奪い、米国などの外国勢力の支援が入る前に、多数の空挺部隊などを台湾に上陸させて、台北や高雄などの重要都市を占領し、1週間程度で中国の制圧下に置くという作戦です。

ある専門家は「そのために、台湾の物資、指導部、通信施設など、開戦当初はより強力に台湾を叩くことを検討するのではないか」と予測しています。

そのうえで、「中国は台湾に対する『法戦』を強化し、『台湾は中国の一部』であり、この戦いは『中国の内政問題』であることを国際的に強調し、米国やその他の国がウクライナと同じように台湾を援助することを警告・抑止する方式をとり、より長い時間をかけて、台湾の中国化を既成事実化するだろう」と指摘しています。

ただ、ロシア軍もこうしたようなことを実行しようとして、露軍が首都キーウ(キエフ)近郊のアントノフ国際空港を一時占拠したのですが、その目論見は失敗しました。そうして、制空権すら掌握できず、苦戦しています。

中国軍も、様々な企てをしつつ台湾に侵攻するかもしれませんが、それがすべて思い通りに進むとは限りません。

中国が一番簡単に間違いなく台湾に進行できる確実な方法があります。それは、恐ろしい話で書きたくもありませんが、全くの仮の話として書かせていただきますが、台湾に核ミサイルを打ち込み、全土を破壊し、その後に台湾に侵攻することです。そうなれば、中国は全く抵抗を受けずに台湾に侵攻することができます。

しかし、このことに意味があるでしょうか。そもそも、中国が台湾を侵攻する目的は何なのでしょうか。それには、遠大な計画があるのかもしれません。ただ、それを実現するためにも、まずは台湾を併合するというのが、中途の目標になるのは間違いないでしょう。

併合するためには、併合されるべき人達がいなければ無意味です。併合すべき、産業や物資などがあれば、なお良いです。しかし、台湾が核で完全破壊されたとすれば、人もほんどいなくなり、産業も何もありません。そんなところに人民解放軍が上陸したとしても、何の意味もありません。仮に生き残っている人がいたとしても、敵愾心に燃えているでしょうから、こう人たちを納得させ併合するのは至難の技です。

ただ、そうなる前に米国は中国に反撃するでしょう。そうして、その反撃は大方の人が想像するように、空母などの艦船や航空機、あるいは海兵隊によるものではないないでしょう。なぜなら、それには大きな犠牲が伴うからです。空母やその他の艦艇や、海兵隊員を載せた揚陸艦も、中国のミサイルの格好の標的になるだけです。

ですから、それはこのブログでも過去に掲載したきたように、攻撃型原潜による反撃になるでしょう。従来から述べているように、中国海軍はASW(対潜水艦戦)能力が、米軍よりも段違いに劣っているからです。

米攻撃型原潜は、大型になると1隻で100発以上ものトマホークを搭載できます。これらを台湾近くの海域に交替しつつ常時2〜3潜ませれば、米軍は台湾を常時包囲できます。台湾の近くには、日本があり、日本には米潜水艦隊の基地もあり、交替はスムーズにいくでしょう。

それに加えて、米軍は最近潜水母艦フランクケーブルを日本に寄港させたりしていますが、これにより、台湾付近の原潜は緊急時には、交代せずとも、ミサイル、食糧、水などの補給をうけて長い期間台湾包囲の任務につくことができます。

潜水母艦「フランクケーブル」

中国軍はこの包囲を容易に破ることはできません。対潜哨戒能力に優れた米軍は、まずは中国の潜水艦を台湾付近から追い払うか、撃沈するでしょう。その後、中国が台湾に艦艇で上陸部隊を送れば、これを撃沈するでしょう。

仮に上陸させるることができても、台湾は米原潜に包囲されていれば、これを突破することができず、補給線や航空機による補給ができなくなります。そうなれば、台湾に上陸した人民解放軍はお手上げ状態になってしまいます。

米軍の台湾防衛というと、すぐに空母だのイージス艦だの、航空機や海兵隊がどうのなどと思い浮かべるから防衛が難しいと思うのかもしれませんが、攻撃型原潜で台湾を包囲して防衛すると考えれば、これはかなりやりやいです。何しろ、現在の攻撃型原潜は、様々な大量兵器の格納庫と化しています。

対艦ミサイル、魚雷、巡航ミサイル、SLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)、核も通常型も搭載できます、まさに、現代の潜水艦は、水中のミサイル基地なのです。しかも、敵はなかなか発見されにくく、原潜ならほぼ無限に近いくらい潜航できます。水も、酸素も生成することができます。ただし、従業員の休養や物資、武装の補充のために、定期的にいずれかの港に寄港する必要はあります。

ただ、心配なのは、米軍がどのタイミングで、台湾封鎖をするかです。私は、もし中国が台湾に核先制攻撃をかけて台湾を崩壊させた場合は、確実に台湾を包囲すると思います。確かに、これをしてしまえば、中国が台湾を併合する意味はなくなりますが、それでも台湾を軍事拠点として利用できます。

中国軍がこれを目指して、中国軍を上陸させようとした場合、米軍はこれを阻止するために、台湾を潜水艦で封鎖するでしょう。

もし、台湾危機がバイデン、もしくはバイデン以降でも、バイデンのような大統領であれば、核戦争になることを恐れて、なかなか包囲に踏み切れず、それこそ台湾が核攻撃を受けたあとに重い腰をあげるということになるかもしれないです。

ただこのようなことだけは、避けていただきたいです。中国が台湾侵攻の素振りをみせれば、できるだけ早い時期に実行すべきです。どの時点で米軍が決断しても、中国の台湾侵攻を防ぐことができます。たとえば、仮中国軍が台湾にかなり上陸してしまったとしても手遅れにはなりません。封鎖してしまえば、補給ができなくなり、中国軍はお手上げになるからです。

そうして、これは比較的やりやすいです。なぜなら、同じ原潜でもSLBM原潜(核兵器搭載原潜)ではないので、核戦争を招く可能性は低いからです。それに、米軍は中国軍より、ASWでは格段に優勢なので、犠牲者もほとんど出ません。

それに、原潜を台湾近海に潜ませておけば、それだけで抑止力になります。中国海軍が、台湾侵攻の素振りをみせた場合、攻撃型原潜が何らかの形で威嚇をすれば、中国は台湾侵攻を思いとどまるかもしれません。

トランプ氏は、黒海に核武装した原潜を派遣せよと述べたことがありますが、これはアイディアとしては悪くはないですが、あまり実用的ではないと思います。

なぜなら、黒海に米原潜を派遣すれば、黒海艦隊は沈黙するでしょうし、ウクライナは穀物を輸出できるようになるかもしれませんが、軍事的にはロシア軍が黒海艦隊の行動を封じられたとしても、ロシアとウクライナは陸続きなので、ロシア軍の補給を絶つことはできません。

やはり、ウクライナと台湾では状況が全く異なります。米政権としては、このようなことを踏まえて、台湾有事が懸念された場合は、迅速に行動していただきたいものです。はやく行動することが台湾の安全保障により多く貢献することになります。

台湾が核兵器で完全破壊されてしまってから動くようでは、中国が台湾を軍事基地化することを防ぐことはできますが、国際的にかなり非難されることになるでしょう。アフガンの撤退で失敗し、ウクライナの安全保障で失敗し、台湾でも失敗と評価されることになるでしょう。

日本としても、中国との有事があった場合は、米国は日本が焦土と化してからでないと、米国は助けに来ないと判断せざるを得なくなるでしょう。米国の国際的な地位はかなり下がることになります。

中国軍が台湾に侵攻しようとし、それに米軍が対抗して攻撃型原潜で台湾を包囲すれば、台湾近海の、すべての中国の艦艇は撃沈され、航空機も甚大な被害を受けることになるでしょう。

仮に台湾に、上陸部隊を送り込めたとしても、補給ができずに、陸上部隊はお手上げになりことになります。しかも、ASWに劣る中国軍はこれに有効に反撃する手立てはないのです。予想されるのは、ほとんど無傷の米軍と、壊滅的打撃を受ける中国軍です。

その後は、米潜水艦隊が国際的非難を受けることもなく、中国近海を遊弋し、中国海軍は港を一歩も出ることができなくなるでしょう。それどこころか、南シナ海を現在でも遊弋している米潜水艦隊は余勢をかって南シナ海の中国の軍事基地を吹き飛ばすことになるでしょう。

上記のような展開が予想されるからこそ、ヘインズ国家情報長官は、「ロシアで起こったことを見て、中国の自信は揺らいでいるかもしれない」と指摘し、苦戦が伝えられるロシア軍の状況を踏まえ、台湾への侵攻について、より慎重になっている可能性を指摘したものと思います。

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2022年5月30日月曜日

コロナで時短「命令」必要?東京都VS飲食店判決を読む―【私の論評】日本の緊急事態宣言やマスクの本質は「自主規制」以外の何ものでもない(゚д゚)!

 コロナで時短「命令」必要?東京都VS飲食店判決を読む

グローバルダイニング「カフェ・ラ・ボエム麻布十番」

 都内を中心に飲食チェーンを展開しているグローバルダイニング社が東京都に対して、新型コロナウイルスによる営業時間短縮の命令が違法であるとして損害賠償を求めた訴訟について、2022年5月16日、都の対応に違法があると判断する判決が出された。

 東京都は、新型コロナによる緊急事態宣言下で飲食店に営業時間短縮を「要請」していたところ、グローバル社はこれに応じることなく、むしろ緊急事態宣言下でも平常通り営業することをウェブサイト上で宣言していた。

 これに対して東京都は、緊急事態宣言が解除される4日前になって、同社を含む6社に新型インフルエンザ等対策特別措置法(「特措法」)に基づく営業時間短縮の「命令」を発した。グローバル社はこの「命令」が違法であったとして訴訟を提起したものだ。

 グローバル社は都の「命令」が違法であると主張するにあたり、憲法違反の問題を含めていくつかの理由を挙げていた。そのひとつに、都による「命令」が出されたのが緊急事態宣言解除直前であることから、時短営業の要請に応じないことを宣言していた同社を狙い撃ち・見せしめにしたという主張が含まれる。

 判決は、結論として都の損害賠償責任は否定したが、他方でグローバル社に対する「命令」には違法があったと判断した。

営業時間短縮の「命令」は適切だったのか

 特措法は、新型コロナや新型インフルエンザなど法律で定める感染症が、全国的かつ急速な蔓延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼしていると判断される場合に、緊急事態宣言を発出して感染拡大防止に向けた措置を講じることを定めている。

 緊急事態宣言の対象となった都道府県の知事は、感染拡大防止のため、不特定多数が利用する一定の施設に対し、期間を定めて、使用制限等の措置を講ずるよう「要請」することができる。今回、都が飲食店に要請した営業時間短縮の要請は、この規定に基づいてなされたものだ。この段階の「要請」は、あくまでも要請であり、応じない場合であっても罰則等の適用はない。

 もっとも要請の対象となった飲食店等が「正当な理由がなく」要請に応じない場合には、都道府県知事は感染拡大防止等のため「特に必要があると認めるときに限り」、要請に応じることを命令することができる。この「命令」には強制力があり、従わない場合には罰則が課される。

 東京地裁は今回の判決で、時短営業の要請に応じなかったグローバル社に対して都が時短営業の「命令」を出したことについて、違法性があると判断した。

 特措法の「命令」は、単に飲食店が「要請」に応じなかったというだけでは出すことができない。「命令」を出すには、(1)要請に応じないことに正当な理由があることに加え、(2)感染拡大防止等のため特に必要があると認められることが必要だ。

合理的な説明はなされていない

 このうち(1)「正当な理由」について、グローバル社は、要請に応じた場合の補償の仕組みが著しく不十分であり、漫然と要請に応じた場合に経営に支障がきたされるので、要請に応じないことに正当な理由があると主張していた。

 しかし判決は、特措法上、事業者に対する支援が予定されており、対象期間も一時的であることなどからすると、経営状況等は「正当な理由」にはならないと判断した。飲食店ごとの経営状況を考慮すると、要請の目的の達成に支障を来すというものだ。

 他方で判決は、都による命令に(2)「特に必要があると認められること」を否定し、都の対応に違法があると判断した。グローバル社が換気の強化や消毒、検温などの感染防止対策を行っていたことを前提に、緊急事態宣言の解除まで残り4日という中であえて命令を出すことについて合理的な説明がないというものである。

 なお、判決は、都の対応に違法があったとしながらも、損害賠償責任は認めなかった。特措法に基づく命令が出されたのは今回が初めてのことであり、前例がないため、適切な判断できなかったというのがその理由だ。

 新型コロナの感染拡大はこれまで社会が直面したことのない問題であり、国や自治体には難しいかじ取りを求められた。特措法に基づく「命令」の制度も新型コロナの問題が起きてから行われた法改正によるもので、都にも試行錯誤があったことは否めない。

 とはいえ、緊急事態宣言の解除まで残り4日の時点で、敢えて命令に踏み切った都の姿勢は、見せしめ的な目的があると受け止められても仕方がないだろう。

 判決は、都が狙い撃ちや見せしめの目的で命令を出したとまでは認めがたいとするものの、命令に必要性がないと判断する理由の一つに、営業時短の要請に従っていない店舗が2000店舗以上ある中で、グローバル社の店舗を含む6店舗に対してしか命令が出されていないことは不公平であることを挙げている。

経営状況を考慮しないでよいのか

 判決は、経営状況等は原則として要請に応じないことの正当な理由にならないと判断した。飲食店にとって時短営業による売上減は死活問題だ。自主的な協力を建前とする「要請」に応じるうえで、経営状況の問題が正当な理由にならないというのは、一抹の疑問が残る。

 この点について、特措法の改正に際して見解を表明した内閣官房は、経営状況等は「正当な理由」にならないとしたうえで、正当な理由がある例として「地域の飲食店が休業等した場合、近隣に食料品店が立地していないなど他に代替手段もなく、地域の住民が生活を維持していくことが困難となる場合」を挙げる。しかし、地域の食生活の問題は行政が解決すべき課題であり、個々の飲食店が自主的な判断で解決する問題ではないだろう。

 感染症の拡大という社会全体の問題に対処するため、一部の業界に不利益を求めるのであれば、そのコストは公的資金による支援金などの形で、社会全体で負担するのが本来の姿のはずだ。

 いずれにせよ、場当たり的な対応は、経済活動を疲弊させた挙句、感染拡大防止も不十分な結果に終わったということになりかねない。

 今回の判決は、残り4日のみの営業時短命令という場当たり的とも思える措置に対して警鐘を促した格好になるが、飲食店に不利益を求める以上、明確な方針に基づく措置が必要だろう。そうしなければ、〝新常態〟という中での起業の新たな挑戦の芽も摘みかねない。

河本秀介

【私の論評】日本の緊急事態宣言やマスクの本質は「自主規制」以外の何ものでもない(゚д゚)!

高橋洋一氏は、今回の判決の対して、以下のような論評をしています。


日本の緊急事態宣言といっても、欧米から見れば、戒厳令でもなく行動制限は弱いです。日本の緊急時での法規制は心許ないです。その根本原因は、普通の国なら当然存在する「戒厳令」が日本には存在しないことです。「戒厳令」は私権を制限するものですから、上で高橋洋一氏も述べているように、憲法上の規定である緊急事態条項がないとその根拠となる法律を作れないのです。

そもそ新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)は、かなり腰の引けた法律です。正々堂々と私権制限が出来ないので、「に必要があると認めるときに限り」といった制限が付いています。

東京都としては、飲食で事実上規制下にあり、やりやすい業種で命令を出したのでしょう。それでも違憲にはかろうじてならなかったのですが、特措法の基づく命令が違法とされたので、今後命令を出しにくくなったのは事実です。緊急事態条項を設ける憲法改正と、それに基づく私権制限を、平時においてまともに議論しないといけなったともいえます。

私権制限といえるかどうかはやや疑問なしとはしないが、「マスク問題」も、しっかりしたルールがないことに混乱の一因があると考えられます。

6月1日から、入国者数について1日上限を1万人から2万に引き上げます。また、6月10日から団体ツアーに限り、98の国と地域からの観光客の受け入れを再開します。

これについて、岸田首相は5月27日の衆院予算委員会で、外国人観光客については旅行会社などを通じてマスク着用の徹底を求め、ビジネス関係者や留学生に関しても、受け入れ先の企業などに「日本のルールに従う」ように促すとしました。

そもそもマスクについて、政府が「推奨する」としたのは、2年前の2020年5月からです。海外ではマスク着用は法的義務となっていたところが多いですが、日本では法的根拠がなく、あくまで政府推奨、つまり「お願い」ベースです。しかも海外では、マスク着用の義務は現在は解除されているところがほとんどです。

いずれにしても、日本でマスク着用するかしないかは個人の判断です。それが、いつの間にか社会の「ルール」になっているのは、違和感があります。国会で首相が「ルール」というからには、その根拠を質問しないといけないところだと思うのですが、27日のやりとりを見る限り、その形跡はありません。

外国人観光客については、国交省が許認可を握っている旅行会社が政府の意向を代行するが、旅行会社はマスク着用に「努めた」という形を取るでしょう。その他のビジネス関係者や留学生に関しても、受け入れ先の企業がやはり「努めた」という形でしょうが、旅行会社よりも緩い形になるでしょう。法的根拠もないのに「お願い」しても、外国人にどこまで通用するのか。「お願い」する人も大変です。

こんな姿も過去のものになるのか・・・・・・

今年はすでに全国的に5月だというのに、すでに30度を超えたところが続出しています。暑い夏を控えて、日本でのマスク着用には限界も来ています。現時点でも、外でマスクをしない日本人は増えています。

にもかかわらず、今でも厚生労働者は子どもたちへのマスクの「推奨」をしています。

こうした「推奨」が政治主導で決まり、マスコミ報道ではそれをあたかも社会的な「ルール」のように報道しているが、あくまで、時と場合に応じて個人が判断すべき事柄です。

給食を前に、マスクをしたまま手を合わせる子どもたち

要するに、日本の「ルール」とは、「時と場合」で自ら判断してもいいといえば、外国人にも納得できるはずだ。「自粛」を英語で言うと、”voluntary restraint(直訳:自主規制)”となるので、それと同じと言えば良いでしょう。

今回の判決は、それを明確にしたともいえます。

憲法に緊急事態条項がないと不都合が起こることは、コロナの感染症だけではありません。阪神・淡路大震災や東日本大震災の時にも不都合が生じていました。

いちばん大きかったのは財産権の問題でしょう。例えば、津波でクルマが流されてきた。しかし、所有者が分からないので撤去できない、ということがありました。ご遺体の処置に困ることもありました。ご家族の元に届けることができればよいのですが、破損が激しいとどなたか特定できない場合があります。

ただ、災害対策基本法が「災害緊急事態」を定めているので、それで十分という議論もあります。例えば、特に不足している生活必需物資を配給にするためや、国民生活の安定に必要な物の価格を統制するため、政令を定める権限を内閣に与えています。

しかし法律で決められていることは、それに従えばよいでしょう。しかし、すべての事態を想定して法律を事前に整備することはできません。既存の法律で対処できない時に、国民の生命、身体及び財産を保護する目的で、政府に権限を与えるのが緊急事態条項ともいえます。

緊急事態条項がないと、政府は、法律のないまま、国民の生命、身体及び財産を保護する措置を講じなければなりません。何もしなければ憲法13条が定める国の義務を果たさないことになります。法令上の根拠のない措置は超法規的、超憲法的な措置になってしまう。緊急事態条項は憲法秩序を守るための手段でもあるのです。

ちなみに憲法13条は以下のようなものです。
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
ただ緊急事態条項があっても、それに基づいて、様々な法律を制定する必要があります。どんな法律でも、それを定めるには時間がかかります。緊急事態条項は迅速に対応することを重視しています。もし衆議院や参議院がそれぞれ、あるいは同時に選挙期間中にある時に緊急事態が生じた場合、国会として何らの対応もとれません。

やはり緊急事態条項を定めておいて、法律を迅速に定めておく必要があります。

なお、憲法に緊急事態条項を定めて、それにもとづき様々な法律を定めれば、政府の権限が強くなりすぎてとんでないことになるのではと心配するむきもありますが、別な方向からいえば、緊急事態条項がないと恐ろしいことになりかねません。

大津波で流された車両の処分はどうするのか?

緊急事態条項に基づく法律もなければ、それでも政府や地方自治体が必要に迫られ、自然災害や伝染病が発生したときに、法律もないのに、曖昧なままで、なし崩し的に様々な「ルール」を適用するのが当たり前になってしまうかもしれません。そうなると、恣意的に何でもできるような状況になりかねません。こちらも本当に恐ろしいです。

このような恐ろしさもありますし、緊急事態条項がなくて法律も整備されていなけれは、政府は何をするにしても国民などにお願いするしかなくなります。これでは、国民の生命や財産を守ることは難しいです。

日本でも、憲法に緊急事態条項を定め、法律も整備して緊急事態に対処できるようにすべきです。今回の裁判は、このように重要な問題を提起しているともいえます。

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2022年5月29日日曜日

穀物2200万トン輸出出来ず、港湾封鎖で ウクライナ大統領―【私の論評】ウクライナが穀物が輸出出来ないから世界も日本も大変だと思えば、プーチンの術策にはまるだけ(゚д゚)!

穀物2200万トン輸出出来ず、港湾封鎖で ウクライナ大統領

ロシア軍の攻撃によって破壊された穀物の貯蔵施設=25日、ウクライナ・ドンバス地方

 ウクライナのゼレンスキー大統領は29日までに、侵攻したロシア軍によるウクライナの主要港湾の封鎖で本来なら黒海やアゾフ海を通じて輸出されるはずの穀物の約半分の量が貯蔵庫内に滞留している状態にあることを明らかにした。

 【映像】元米特殊部隊員、ウクライナでの戦いを語る

 インドネシアの外交問題のシンクタンクがオンライン形式で開いた会合で述べた。輸出出来ず滞っている穀物は2200万トン相当と指摘。世界規模での食糧の安全保障の確保にとって大惨事となりかねない要因になっているとも訴えた。

 また、飢餓の被害者が今年は新たに5000万人増える可能性に言及した国連の分析に触れ、「低く見積もった数字」とし、実際はより多くなるであろうことを示唆。今年7月には多数の国で昨年の収穫分の在庫が尽きるだろうとし、「大惨事の現実的な到来が明白になるだろう」と予想した。

 ゼレンスキー大統領はインドネシアが今年11月に同国バリ島で開く主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)への招待を受け入れる意向も表明。その上で同サミットには「友好国家」だけ集まるべきだとし、ロシアを除外するよう主催国に暗に促した。

【私の論評】ウクライナが穀物が輸出出来ないから世界も日本も大変だと思えば、プーチンの術策にはまるだけ(゚д゚)!

ロシアのプーチン大統領は28日、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相と電話協議した。ロシア側によるとプーチン氏はウクライナ侵攻に伴う食料問題の解決に向けて、黒海の港からウクライナ産を含む穀物輸出などを検討する用意があると表明。同時に米欧の対ロシア制裁の解除が必要だと主張しました。

プーチン氏は独仏首脳に対し、穀物価格の高騰など世界的な食料危機を「西側諸国の誤った経済政策や対ロ制裁の結果だ」と批判しました。米欧による制裁が強化されるなか、食料供給への協力と引き換えに制裁解除を促したかたちです。

確かに、ロシアもウクライナも小麦の大輸出国(それぞれ国としては第1位と第5位)となっている。ただし、EU諸国をまとめると、EUが6100万トンで首位、続いてロシア(3700万トン)、アメリカ(2600万トン)、カナダ(2600万トン)、ウクライナ(1800万トン)と続きます。

1973年の食料危機が旧ソ連の穀物大量買い付けによって引き起こされたように、かつてロシアは世界最大の小麦輸入国だったのであり、輸出国となったのは、2000年代以降です。このため、黒海周辺の両国は、新興輸出国と言われます。

また、両国の小麦は、品質的には、米国等に劣り、仕向け先としては中東が主です。ただし、両国が、戦争による物流の混乱などにより小麦を輸出することが困難になると、世界全体の小麦供給量が減少し、高品質な小麦を含めて、価格水準は上昇します。


また、ロシアのウクライナ侵攻後、原油価格が大きく上昇している。トウモロコシからエタノールというガソリンの代替品が作られます。原油価格が上がってガソリン価格が上がると、代替品であるエタノールへの需要も高まり、その価格も上がります。そうなると、エタノールの原料であるトウモロコシの価格が上がり、その代替品である他の穀物価格に波及していきます。2008年には、このような事態が起きました。このように、原油価格と穀物価格が連動するようになっています。また、ウクライナは世界第4位のトウモロコシ輸出国でもあります。

何人かの民間エコノミストが、テレビに出演して、小麦の用途は裾野が広く、パン、ラーメン、うどん、スパゲッティなどさまざまな食品の原料なので、家計が影響を受けると指摘していました。

しかし、これは本当なのでしょうか。今回と同様、2008年小麦の国際価格が2~3倍に上昇し、パンなどの価格も上がったとき、食料品全体の消費者物価指数は、2.6%上がっただけでした。2012年ころ穀物価格が騰貴したときも、食料品の消費者物価指数はほとんど変化していません。4月の消費者物価指数は、2.1%の上昇に過ぎません。

大きな理由は、小麦の輸入額は、日本全体の飲食料費支出の0.2%に過ぎないことです。我々が払う飲食料費の9割は、加工、流通、外食に帰属します。農産物への帰属はわずかで、特に小麦を含めた輸入農産物への支出は2%です。

さらに、先ほどの、原油と穀物(ガソリンとエタノール)のように、消費には代替性がある。牛肉の値段が上がると、豚肉の消費を増やそうとする。我々は、パンやラーメンなどの小麦製品だけを食べているのではない。パンの値段が上がれば、その代替品である米の消費が増える。2008年には、それまで減少していた米の消費が増加した。さらに、最近は米粉も普及しており、これによってパンなどもつくることができます。

財やサービスに代替性があり、消費者が、一定の所得を前提に、財やサービスの相対価格を考慮して、適正な財の組み合わせを決定することは、ミクロ経済学の初歩です。食料の消費や需給を検討する際に、「代替性」は重要なキーワードです。

なお、2008年米の消費が増えたのは、スーパーの棚にフリカケが並んだからだという(珍)説が、農水省の中でもっともらしく伝わり、かなりの職員が信じていたようです。実際にはパンなどの小麦製品の価格が上がったから、相対的に価格が低下した米の消費が増えたのです。

米の消費が増えたのでスーパーはフリカケの販売を増やしました。因果関係は逆です。この説が正しいなら、フリカケをたくさん売れば米の消費は簡単に増やせることになります。残念ながら、農水省の職員のほとんども、経済学を知らないで、農業政策を作っているようです。

これは、このブログでもよく取り上げているように、経済学を知らないで、財政政策を作る財務省職員と似たりよったりです。日本の省庁の職員に共通するのは、経済学を知らないといことかもしれません。

以下の図は、小麦輸出国の生産と輸出の関係を示しています。主要な輸出国において、輸出が生産に占める割合が大きいことに気づかれるでしょう。この割合は、ロシアで43%、ウクライナでは73%にも達します。アメリカ、カナダ、オーストラリアなど日本が輸入している国も同様です。

100万トン

これらの輸出国が、小麦を輸出できなかったとすると、国内で小麦があふれることになります。小麦価格は大幅に低下すると同時に、サイロに収納できない小麦が農家の庭先に野積みされることになります。

かつて手痛いダメージを受けたアメリカが輸出制限をすることはないでしょう。1979年アフガンに侵攻したソ連を制裁するため、アメリカはソ連への穀物輸出を禁止しました。しかし、ソ連はアルゼンチンなど他の国から穀物を調達し、アメリカ農業はソ連市場を失いました。あわてたアメリカは、翌年禁輸を解除したのですが、深刻な農業不況に陥り、農家の倒産・離農が相次ぎました。

最近の米中貿易戦争で、中国がアメリカ産大豆の関税を大幅に引き上げたときにも、輸出できなくなったアメリカの中西部の農家は多額の政府援助に頼らざるを得なくなりました。

輸出できなくなったり、輸出制限を行ったりすると、アメリカが経験したと同様のことがロシアやウクライナに起きることになります。

しかし、これまでロシアは国際的な穀物価格が高騰した際、輸出制限を行ってきました。自由に輸出が行われると、価格の低い自国から国際市場に穀物が供給され、国内の供給が減少し、価格も国際価格と同水準になるまで上昇します。

このとき、所得の高いアメリカやカナダなどと異なり、ロシアのように、所得が低く(年収100万円前後)、そのかなりを食料品に割いている国では、穀物価格上昇に国民が耐えられなくなるからです。輸出を制限すると、国内価格を国際価格よりも低く抑えることができます。

ロシア政府は3月14日、ベラルーシやカザフスタンなどの近隣諸国への小麦など穀物の輸出を一時的に制限することを決めました。大幅なルーブル安で生活物資の価格が高騰しています。自給できる小麦などの穀物価格は低く抑え、国民生活の負担をできる限り少なくしようとしたのでしょう。

ロシアにとってベラルーシは、ウクライナ侵攻の直前まで共同軍事演習を行い、またウクライナへの派兵を要請したという報道がなされるくらいの同盟国です。そのベラルーシへの輸出を制限しなければならないことは、ロシアの国民生活が相当厳しい状況に追い込まれていることを示唆しています。

一方ウクライナは、たしかにせっかく戦争下で小麦を作っても輸出できないですから、小麦農家は大変でしょうが、できれば政府が買い取って備蓄用に保存するような措置が望ましいと思います。ただ、戦争によって農家だけではなく、他の職業の人々も、酷い目にあっているのですから、農家だけに手厚い保護をすることは難しいでしょう。

こうなった責任はすべてロシアにあるわけですから、農家も含めて、戦後にはロシアに賠償させるなどのことをすべきでしょう。ただ、ロシアに請求してもそのようなことはしないでしょうから、世界中の国々が制裁で凍結したロシアの資産をそれに用いるべきと思います。

フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相も当然のことながら、自国のインテリジェンスを通じてこの位のことは理解しているでしょう。

先にも掲載したように、プーチン氏は、米欧による制裁が強化されるなか、食料供給への協力と引き換えにフランス、ドイツに対して制裁解除を促したかたちですが、プーチン氏もこのような状況については、当然ドイツも、フランスも知っていると認識しているでしょうから、試しに言ってみたくらいのことなのだと思います。

それにひきかえ、上でも述べたように飢餓の被害者が今年は新たに5000万人増える可能性に言及した国連は分析しているようで、これは「低く見積もった数字」とし、実際はより多くなるであろうことを示唆しているというのですから、これは一体どうしたことなのでしょうか。

そもそも2018年時点で、世界では9人に1人、約8億もの人々が飢餓に苦しんでいます。もともとこのような状態なのに、ウクライナの小麦の輸出が滞ったことだけにより、急激に飢餓被害者が増えるとも考えられません。

そもそも、最近の国連は中国等の影響が強まっているとされています。最近でも、28日まで6日間の日程で行われたバチェレ国連人権高等弁務官の新疆(しんきょう)ウイグル自治区訪問に、人権活動家などは早くも厳しい目を向けています。これについては、アメリカのブリケン国務長官も批判しています。

バチェレ国連人権高等弁務官

これには、同自治区への訪問を「調査ではない」とする中国側の意向に同調するようなバチェレ氏の発言が報じられ、実効性への疑念が強まったためです。中国側は、強権的な少数民族政策を正当化すべくプロパガンダを積極化させるとみられます。

日本では、経済も世界情勢もよくわかっていないような民間エコノミストがテレビに出演して、語ったり、国連関係機関などか何かを公表すると、無条件で信じる傾向が強いです。特に、ワイドショー民といういわれる、高齢でテレビなどが主な情報源の人たちには、そういう人か多いようです。

やはり、自ら統計などを見たりすれば、そのようなことは防げると思います。インターネットが発達した現在、そのようなことはさほど難しいことではありません。

それをしないで、ウクライナが穀物2200万トン輸出出来ないから世界が大変だー、日本も大変だーなどと信じ込んでしまえば、それこそロシアのプロパガンダに加担することになります。

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2022年5月28日土曜日

中国の申し入れ「受け入れられず」 日本大使館が反論、クアッド巡り―【私の論評】中国がインド太平洋で新たな枠組みを作っても大きな脅威にはならないが、習に勘違いだけはさせるな(゚д゚)!

中国の申し入れ「受け入れられず」 日本大使館が反論、クアッド巡り

 日米豪印首脳会合に臨む(左から)オーストラリアのアルバニージー首相、バイデン米大統領、
 岸田文雄首相、インドのモディ首相=24日午前、首相官邸

 中国外務省は24日、東京で開かれた日米首脳会談や日米豪印による協力枠組み「クアッド」首脳会合で中国に関する後ろ向きで間違った言動があったとして、日本側に厳正な申し入れを行い強烈な不満と重大な懸念を表明したと発表した。北京の日本大使館は「中国側の申し入れは受け入れられないと反論した」と25日未明に公表した。

 中国外務省アジア局長が24日夜、日本の駐中国特命全権公使を呼び出した。

 日本側は「一方的な中国側の行動に対して懸念を表明し、適切な行動を強く求めた」と明らかにした。また中国とロシアの爆撃機が24日に日本周辺を共同飛行したことに対し重大な懸念も伝えた。中国側は「正常な活動で、どの国も対象にしていない」と応じたという。

【私の論評】中国がインド太平洋で新たな枠組みを作っても大きな脅威にはならないが、習に勘違いだけはさせるな(゚д゚)!

今回のQuadの共同声明に対する、中国側の発言は、日本に対する「内政干渉」以外の何ものでもなく、日本側の駐中国特命全権公使が、上記のような反応をしたのは当然のことです。

それに、この共同声明では中国を名指しもしていませんでした。なかったのは問題だと思います。また、クアッドの枠組みができてから数年経ちます。そろそろNATOのような、安全保障の枠組みに具体的に進めるべきです。このままでは形式的なもので終わる恐れもあります。

にもかかわらず、これに対して中国がなぜこのような反応を示すのでしょうか。

それは、中国がQuadがいずれNATOのような軍事同盟になることを恐れているからでしょう。一方で中国は、バイデン大統領が日本に来てからの一連の動きや、台湾問題も含めて、クアッドに対しては神経を使っています。 

中国は、バイデン大統領の台湾問題に対する発言に関して、中国はそれほど激しく反応しませんでしたが、クアッド首脳会合の開催当日にロシアと爆撃機の共同飛行をしたり、日本大使館に対して異議を申し立てるなど、かなり過剰に反応しています。クアッドという枠組みがNATO的な軍事連携に発展していくことを、中国が恐れているからです。

中国と共同飛行した爆撃機と同型のロシアのTU95爆撃機

中国は、以前は日本を見下していました。実際に、1994 年中国の当時の李鵬首相が、オーストラリアを訪問した時に、当時の オーストラリアのジョン・ハワード首相に向かって 「い まの日本の繁栄は一時的なものであだ花です。 その繁栄を創ってきた世代の日本人がもう すぐこの世からいなくなりますから、20 年もしたら国として存在していないのではないで しょうか。 中国か韓国、 あるいは朝鮮の属国にでもなっているかもしれません」 という 発言をしました。 

ところが安倍政権が誕生して以降、気がつけば日本が中国包囲網の中心になっていたのです。 
安倍総理大臣が「自由で開かれたインド太平洋戦略」を2016年8月の第6回アフリカ開発会議(TICADVI)の場で提唱してから5年以上が経過し、アジア太平洋からインド洋を経て中東・アフリカに至るインド太平洋地域において、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を実現することの重要性が、国際社会で広く共有されてきています。

当時の安倍首相がこの構想を出したとき、中国はほとんど気にしていませんでした。しかし、その枠組みが目の前にでき上がってしまったということが、彼らの誤算でした。しかも「AUKUS(オーカス)」、「ファイブ・アイズ」という2つ枠組みがあり、アジアのなかでは日本だけが枠組みの一部に入るような事態も招いたともいえます。

しかし、習近平政権がこの数年間、戦狼外交や覇権主義戦略を進めた結果、このようなことを招いてしまったということに彼らは気が付いていなようです。

 そもそもわずか数年前まではオーストラリアもインドも、中国との関係は悪くありませんでした。 中国は戦狼外交や覇権主義戦略を進めてしまったのために、インドもオーストラリアも、自分たちの方から敵に回してしまったのです。クアッドができ上がったいちばんの功労者は習近平といえるかもしれません。

米戦略問題研究所(CSIS)の上級顧問であるエドワード・ルトワック氏は、著書『ラストエンペラー 習近平』の中で「大国は小国に勝てない」と主張しています。この論理の重要な点は、「1対1では戦わない」という点です。

1対1では大国が勝利するのは当然です。片方が大国の場合、周辺諸国は、次は自分かも知れないと恐怖を感じ小国に肩入れするであろうことから、大国が目的を達することが難しくなるという理屈です。理屈としては理解しても、実際の国際情勢ではどうだろうかという疑問があらりましたが、まさにその通りの状況が展開されています。それは、中国と台湾の関係です。

習近平政権がこの数年間、戦狼外交や覇権主義戦略を進めた結果、当の台湾がこれを脅威に感じ、周辺諸国の日本、オーストラリア、インドが台湾に肩入れするようになったのです。それ以外の英米等もそうするようになったのです。

最近では、オーストラリアは政権が変わりました。労働党になっても、中国に対しての反応は変わりはないようです。 新たな首相が就任してからクアッドに参加しています。オーストラリアの新首相が就任してすぐに、李克強首相が祝電を送ったのですが、何の反応も示していません。

ただ、インド太平洋地域には、懸念材料もあります。

中国の王毅外相は、4月に安全保障協定を締結した南太平洋のソロモン諸島を訪問し、両国関係を強化し「中国と島しょ国との協力の手本にしたい」と強調しました。

王毅外相は今月26日、8カ国歴訪の最初の訪問国となるソロモン諸島でソガバレ首相らと会談し「ソロモン諸島の主権と安全、領土保全を断固支持する」と述べ、「できる限りのあらゆる支援を行う」とアピールしました。

また、マネレ外相との会談では両国関係を「中国と島しょ国との協力の手本にしたい」と強調し、ソロモンとの協力関係を他の南太平洋の島しょ国にも広げる考えを示しました。「中国の軍事基地を建設する意図はない」と強調しました。また、協定はソロモン諸島の治安能力を高めるのが目的で、他の国と対抗するためのものではないと説明しました。

ソガバレ首相は中国国営テレビのインタビューで、安全保障協定は暴動鎮圧などのためで基地建設の意思はなく、中国側からも提案はないと強調しました。

周辺国などからの中国の軍事拠点化が進むとの懸念をあえて否定した形です。

ソガバレ首相はまた、「一つの中国」原則を堅持すると述べ、台湾問題で中国政府の立場を指示する姿勢を示しました。


オーストラリアやインドが中国から離れて、クアッドやAUKUSもできました。中国はそれに対抗する新たな枠組みをつくらなければなりません。しかし、ついてくる国が少ないので、結局、中国の経済援助なしでは成り立たないような国々を束ねて対抗することになります。

中国の経済援助なしで成り立たない国々というところに注目していただきたいです。中国がいくら大国になったからといって、一人あたりのGDPは未だに10000ドル前後(日本円で約100万円前後)です。その中国がクアッドなどに対抗するために新たな枠組みを作るのには限界があります。

これについては、以前もこのブログで述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ソロモン諸島、中国が治安支援 警察関係者受け入れ―【私の論評】一人ひとりの国民が豊かになるために、ソロモン諸島は、民主的な道を歩むべき(゚д゚)!

ソロモン諸島の海岸

中国は、国全体では、GDPは世界第二といわれていますが、個人ベース(個人所得≒一人あたりのGDP)ではこの程度(10000ドル、日本円で100万円程度) です。そのため、以前このブログで中東欧諸国と中国の関係に関して述べたように、中国が、他国の国民を豊かにするノウハウがあるかといえば、はっきり言えば皆無なのです。
そもそも、中国が「一帯一路」で投資するのを中東欧諸国が歓迎していたのは、多くの国民がそれにより豊かになることを望んでいたからでしょう。

一方中国には、そのようなノウハウは最初からなく、共産党幹部とそれに追随する一部の富裕層だけが儲かるノウハウを持っているだけです。中共はそれで自分たちが成功してきたので、中東欧の幹部たちもそれを提供してやれば、良いと考えたのでしょうが、それがそもそも大誤算です。中東欧諸国が失望するのも、最初から時間の問題だったと思います。

ただ、中国は独裁者やそれに追随する一部の富裕層が儲けるノウハウを持っているのは確かであり、ソロモン諸島の為政者が、独裁者となり自分とこれに追随する富裕層が大儲けするという道を選ぶ可能性はあります。

ただ、一人ひとりの国民が豊かになる道を選びたいなら、やはり民主的な国家を目指すべきです。その場合は、急速に民主化をすすめた台湾が参考になります。このブログにも何回か掲載したように、先進国が豊かになったのは、民主化をすすめたからです。民主化をすすめなかった国は、たとえ経済発展しても、10000万ドル前後あたりで頭打ちになります。これは、中進国の罠と呼ばれています。

Quadが今より軍事的な色合いを深めたり、日豪印などが、NATOに加入するようなことがあったとすれば、中国もソロモン諸島などと構築する枠組みを軍事的なものにして、ソロモン諸島に中国の軍事基地をつくるかもしれません。

しかし、考えてみてください。Quadに比較すれば、中国がたとえこれに対抗するするためにインド太平洋で新たな枠組みを作ったとします。それにいくつかの国が加入するかもしれません。たとえば、仏領ニューカレドニアが独立して、この枠組みに参加するかもしれません。しかし、ニューカレドニアの一人あたりのGDPは中国を超えており、東欧諸国がそうであったように、結局中国からはなれていくことでしょう。

そうして、残るは一人あたりのGDPが10000万ドル前後以下の貧乏国にばかりになります。これはロシアなど旧ソ連6カ国でつくる軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)に所属している国々を想起させます。これらの国々の首脳会議が16日、モスクワで開かれました。

ザシ事務局長によると、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻について説明したのですが、CSTOの侵攻への参加は議論されなかったといいます。同盟強化を目指すロシアに対し、加盟国間の思惑の違いも取りざたされており、ロシアの孤立が浮き彫りになりました。

ちなみに、CSTOの加盟国はロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、アルメニアです。これらの国々の共通点は、ロシアも含めて一人あたりのGDPが10000万ドル前後よりも低いということです。ロシアだけが、10,126.72ドルですが、それにしてもこれからは、これを下回ることはあっても伸びる見込みはありません。

結局貧乏国の集まりでは、いざ戦争になってすら、協力することすらままならないですし、したくてもできないというのが本音でしょう。中国の新たな枠組みもそういうことになるでしょう。有利な点としては、国連などの国際会議の決議で、貧乏国であっても、国連加盟国であれば投票する権利があり、一票の重みとしては大国とは変わらないというくらいなものです。

ロシアの人口は1億4千万人であり、中国の人口はその10倍の14億人です。ただ、人口が10倍なので、国単位としてのGDPでは中国はロシアの10倍です。ロシアは国単位では、GDPは韓国や東京都なみです。

ただ一人あたりのGDPでは、ロシアも中国も10000ドル(100万円)台なので、両国とも一人ひとりの国民を豊かにするノウハウなど持ち合わせていません。

中国が仮に、Quadに対抗できるような新たな枠組みを作ったにしても、CSTOくらいのものしか作れません。

しかし、中国は、先に述べたように、習近平政権がこの数年間、戦狼外交や覇権主義戦略を進めた結果、このようなことを招いてしまったということに彼らは気が付いていなようです。

であれば、中国が何らかの新しい枠組みをつくれば、Quadに対抗できるると思い込む可能性はあります。その挙げ句の果に、プーチンのように、勘違いして、NATOに対抗するためにウクライナに侵攻すれば、短期間で制圧できると思い込んだように、中国も勘違いし、台湾などを含むインド太平洋地域の国々に侵攻しないという保証はありません。

そうなっても、結局習近平は、プーチンが明らかにウクライナで失敗したように、インド太平洋で簡単に軍事作戦を遂行しても具体的な成果をあげることはできないでしょう。結局失敗するでしょう。

それに、ソ連は中東欧諸国まで衛星国や属国にしていたことはありますが、中国はインド太平洋地域全域を一度たりともそのようにしたことはありません。台湾に関しても、清朝が一時的に統治したことがあるのみです。

ムスリム系出身の鄭和がインド太平洋地域に大航海をしたという記録がありますが、それは古代の話ですし、鄭和艦隊は後のヨーロッパ人による大航海時代とは対照的に、基本的には平和的な修好と通商を目的とし、到着した土地で軍事行動を起こすことはあまりありませんでした。

中国がインド太平洋地域に侵攻する大義は、ほとんどありません。現代の中国が、これらの地域に武力攻撃を行えば、ロシアのウクライナ侵攻と同じく、国際法違反になるのは間違いありません。しかし、南シナ海を実行支配したことを国際司法裁判所で不当なものと判決されても、中国はそれを無視しました。

習近平が誇大妄想に陥りこの地域で軍事作戦を遂行すれば、取り返しはつきません。結局その中国のその試みは失敗する可能性が高いですが、甚大な被害を受ける国がでてくる可能性は否定できません。それが日本ではないという確実な保証もありません。

このようなことは絶対避けるべきです。そのためにも、Quadは、これからも習近平にプーチンのような勘違いをさせないように、緊密に連携し、中国に対応していくべきですし、ロシアのウクライナ侵攻に対しては、習近平に勘違いさせないためにも、厳しい対処を継続すべきです。


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就任490日目:バイデン支持率が現代の全大統領を下回る―【私の論評】 バイデンの支持率の低さの本質は、大統領としての行動がより「戦略的曖昧さ」を強調するものだから(゚д゚)!

就任490日目:バイデン支持率が現代の全大統領を下回る


<引用元:ワシントン・エグザミナー 2022.5.25>ポール・ベダード氏によるワシントン・シークレット論説
ジョー・バイデン大統領がついにやった。精彩を欠く指導者の支持率は、現代のどの大統領の政権の同時期よりも低下した。

ファイブサーティエイトは1945年のハリー・S・トルーマンにまで遡った支持率を引用し、政権490日目の支持率がバイデンの平均40.9パーセントを下回る大統領はおらず、それに並ぶ大統領もいなかったと述べた。

歴代大統領の中でドナルド・トランプ、ビル・クリントン、ジェラルド・フォードは、政権初期にもっと低い平均支持率だったこともあったが、バイデンは追い上げて、現在の平均支持率がトルーマン以降の全ての大統領を初めて下回っており、民主党が中間選挙を控える中で厄介な傾向となっている。

また同日、ロイター世論調査会社のイプソスは、バイデンの支持率が過去最低の36パーセントとなったと判定した。

「民主党ではまだ72パーセントがバイデン大統領を支持しているが、共和党では10パーセントのみ、無党派では28パーセントが支持している。だが民主党の中でバイデンの支持率は2週間前の82パーセントから10ポイント低下しており、総合支持率低下の主要な要因となっている」とイプソスは分析結果を説明した。

有権者にバイデン離れを起こす要因となったのは、インフレ、ガソリン価格の高騰、壊滅的な株式市場に対する無策のようだ。

例えばイプソスは、70パーセントもの人が米国は間違った方向に向かっていると考えていると述べた。


「10人に7人(70%)の米国人は、この国の状況は間違った方向に向かっていると考えており、正しい方向に向かっていると考えている米国人は5人に1人(20%)のみだ。これは、26パーセントの米国人が正しい方向に向かっていると答えた2週間前から6ポイント低下したことを意味している。共和党(90%)と無党派(70%)の圧倒的多数は、状況は間違った方向に向かっていると考えており、民主党の約半分(49%)もその感情に同意している」と調査会社は述べた。

もちろん長い4年間の中の1日に過ぎないが、バイデンの支持率は大統領就任からこれまでの中間点以降、着実に低下している。

ファイブサーティエイトによる490日目の大統領支持率のリスト:
ジョー・バイデン 40.9%
ドナルド・トランプ 42.7%
バラク・オバマ 48%
ジョージ・W・ブッシュ 72%
ビル・クリントン 50.9%
ジョージ・H・W・ブッシュ 65%
ロナルド・レーガン 45%
ジミー・カーター 43.1%
ジェラルド・フォード 44.2%
リチャード・ニクソン 57.1%
リンドン・B・ジョンソン 68.7%
ジョン・F・ケネディ 74%
ドワイト・アイゼンハワー 61.3%
ハリー・S・トルーマン 43.1%

【私の論評】 バイデンの支持率の低さの本質は、大統領としての行動がより「戦略的曖昧さ」を強調するものだから(゚д゚)!

バイデン大統領がTwitterで公開した映像には、“兵士”が積み荷を飛行機の中へ運び込む姿が映し出されていた。 

まるで軍事作戦のような名前がついた「空飛ぶミルク作戦」。その正体は、航空機を海外に送り、粉ミルクを受け取るというものです。 


実は今、米国では深刻な「赤ちゃん用の粉ミルク不足」に陥っているのです。粉ミルクが置かれたスーパーの棚は空っぽに。人々が粉ミルクに殺到する事態に発展しています。 

粉ミルク不足のきっかけは今年2月、国内最大手メーカーの粉ミルクを飲んだ乳児2人が細菌感染症で死亡したことです。これにより工場が長期間閉鎖となりました。ミルクの不足は、バイデン政権の支持率低下の要因になっていて、事態の打開に躍起になっています。 

バイデン政権はこの外遊中も連日対応に追われています。日本に協力を求める、いわば「ミルク外交」もあるのでしょうか。 

テレビ朝日は粉ミルクを製造する日本の複数のメーカーに取材。すると、政府から粉ミルクを輸出できる状況か問い合わせがあったことがわかったそうです。 

明治ホールディングスとアサヒグループ食品は「前向きに支援する方針」で、森永乳業もどんな支援が必要か社内で確認中だといいます。

バイデン大統領は、イラン人質救出作戦を強行して失敗したカーター政権が、2期目の選挙で惨敗したようなケースに陥るかもしれません。また、それ以前に、現職大統領でありながら出馬断念に追い込まれたジョンソンのような状況に追い詰められる可能性もあります。

とにかく、現在のバイデン政権の苦境は、アメリカの世論に渦巻いている不満が爆発しそうになっているからです。そして、その不満のほとんどは異常なまでの物価高から来ています。

「ガソリンが以前の倍になった」

「ベビー用のミルクが品不足で、親たちは気が狂いそう」

「中古車が値上がりして新車並みに。新車も手に入りにくい」

「卵が暴騰して、最低でも1ダース3ドル40セント(440円)」

「外食が暴騰して、ファストフードに毛が生えた程度でも一食20ドル」

「衣料品も生活用品も、人気商品に限って品不足」

とにかく、アメリカの世論は怒っています。そして、こうした問題のほとんどが中国との経済関係、そしてウクライナでの戦火から来ています。

ウクライナもそうですが、中国は現在ゼロコロナ政策の失敗でとんでもないことになっている上に、米国との対峙は続いています。この2つの問題はすぐには収まりそうにもありません。

そうして、バイデン政権の人気のなさは、台湾に対する米国の戦略のように、やはり曖昧さからきているのではないでしょうか。

台湾防衛は潜水艦隊が決め手

台湾有事になると、米国の反撃を止めるため、沖縄本島から西を中国は、自ら軍事影響下に入れようとするでしょう。すなわち台湾有事は日本有事なのです。

「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のいずれをとるにせよ、台湾有事のリスクがゼロになるわけではありません。バイデンの「台湾防衛発言」真意がどこにあるのか、多くの人がその真意がどこにあるのか結局判然としていないようです。

バイデン発言の後に、米ホワイトハウスは即座に「われわれの政策は変わっていない」とバイデン発言のトーンを弱めました。例によってバイデン氏のアドリブ発言か否か、意図は何か、真相は藪の中です。

ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となりました。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返すことになります。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切ったようにみえます。

バイデン氏は昨年10月、米ボルチモアでのタウンホールイベントでも、中国から攻撃された場合、アメリカは台湾を防衛するのかと問われ、「イエス。われわれはその約束をしている」と発言しました。中国は台湾を祖国にとって欠かすことのできない一部とみなしており、そこに米国が安全保障を拡大することは不必要な挑発と訝る声もありました。

 英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマイケル・クラーク前所長は当時、「台湾の将来を決めるのは台湾の人々だけだという理由で米国が台湾の防衛に尽力していると明確に表明することは道徳的に正しいことだが、中国に対するアメリカの抑止力の信頼性を高めることにはならない」という道徳的な正義とリアルポリティクスのジレンマに言及しています。

道徳とリアルポリティクスの間には大きな隔たりがあるのです。その隔たりがあることを忘れて、失敗する政治家はバイデン以外にも大勢います。

トランプ氏もその例外ではありません。実際選挙戦では「アメリカ・ファースト」などと言って、世界中を困惑させましたが、実際に大統領になってからは、国際政治や外交にも様々な関与をしました。

トランプ氏は、様々な公約や発言をしつつ、決して現実からは目をそらさなかったようです。現実とは、実際に目の前で起こっている事柄です。現実に対処するには、様々な原理を適用する必要があります。無論、現実の中には、原理を適用することでは解決できないものもあります。

しかし、実はそれはわずかです。多くの人が、組織に属していて、そうして組織を巡って様々な問題に出会うことになります。そうして、そうした問題のほとんどは、先達がすでに経験しており、その対処法は原理・原則として継承されています。

経営学の大家、ドラッカー氏が記した言葉に「現実に原理を適用する」というものがあります。

例えば、組織は実は道具にすぎません。人が社会に何らかの役割を果たすために組織は存在し、個人が成長し成果を上げるための道具だというのです。

まずは目の前で起きていることが、いったいどういうことかを認識すべきです。それができないと、対処するのにどういう道具(原理)を使うべきかが分からないからです。自分の中にどれだけたくさんの道具があるかというのは、成果を上げるためには重要な要素となります。

これは、例えば自動車が動く原理を知らなくても、方法を知っていれば自動車は運転できます。しかし、自動車の原理を知っているほうが、よりうまく運転ができるのです。F1のドライバーは当然自動車が動く原理を知っていて、あのような運転ができることになります。

それは大統領の執務でも同じで、閣僚やブレーンの中には、How Toと原理を知るものも多数いますが、それらを利用しつつも、最終的には大統領が現実を把握して、どのノウハウや原理を適用するのか判断しなければなりません。

原理を踏まえた実践こそが難しいのです。ノウハウ・原理を学ぶだけでなく、あるいはそれらを他者から聴いたにしても、それを正しく実践してこそ初めて成果を得られるのです。原理・原則を誰よりも多く知ったからといって、それだけで、それらを実践して具体的な成果を得られなければ、学者としては一流になれるかもしれませんが、優れた大統領にはなれません。

この点においては、バイデンよりはトランプのほうが優れていると思います。バイデンもトランプも数々の失敗をしていますが、トランプはより現実的、バイデンは理想主義的であると私は思います。

対照的なトランプ氏とバイデン氏


ここが、両者の分かれ目になっていると思います。バイデンは現実とじっくりと対峙する前に、まずは理想、理念、原理、ノウハウなどに着目し、それをすぐに現実に適用しようとします。ただ、大きな失敗をすれば、これらを見直すということをします。

トランプ氏の場合は、最初に主義主張をしながらも、現実と対峙して、主義主張や、適応した原理、ノウハウが現実に即していないと判断した場合には、すみやかにこれを変えます。

この違いはどこからでてくるかといえば、やはりバイデン氏は生粋の政治家であり、トランプ氏はそうではなく、企業経営者であるという違いでしょう。

経営者は、民間企業で日々現実世界と対峙して、様々なノウハウや原理を現実に適用します。それが、成功すれば良いですが、失敗すればすぐに売上や利益は激減して、失敗が白日の元にさらされます。いくら、善良であり、道徳的であり、理想を語ったにしても、経済的な利益を出さなければ、経営者は無能の烙印を押されてしまいます。

そのため、嫌がおうでも現実的にならなければなりません。

こうした経験を積んできたトランプ氏は、既存の政治家にはみられないような型破りな大統領になりました。

そうして、結果としてバイデン氏の大統領としての行動は、より「戦略的曖昧さ」が強いものとなり、トランプ氏の大統領としての行動は、より「戦略的明確さ」がより強いものになったのでしょう。

無論、バイデンもトランプも多くの失敗を重ねています。両者とも、曖昧な部分も、明確な部分もあります。ただ、失敗を重ねたにしても、その失敗の背景は両者で全く異なります。

そうして、「戦略的明確さ」がより強いほうが、失敗を重ねたとしても、相対的により国民の支持は高くなるのだと思います。

バイデンの支持率の低さは、大統領としての行動がより「戦略的曖昧さ」を強調するものになっているからだと思います。

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2022年5月26日木曜日

河瀬直美監督に今度は殴打パワハラ疑惑 撮影助手への腹蹴りに続き…優秀な男性職員の退職申し出に「怒りをぶつけたよう」 週刊文春報道―【私の論評】仕事等で激しいストレスに見舞われ他者に暴力を働くようになれば、仕事を辞めよ(゚д゚)!

河瀬直美監督に今度は殴打パワハラ疑惑 撮影助手への腹蹴りに続き…優秀な男性職員の退職申し出に「怒りをぶつけたよう」 週刊文春報道

河瀨直美監督

 映画スタッフへの暴行が報じられた河瀨直美監督(52)に新たなパワハラ疑惑か。2015年10月に奈良市内の所属事務所内で、男性職員の顔面を殴打したと、26日発売の「週刊文春」が報じたのだ。

 河瀨監督は映画の撮影中だった19年5月、激怒して撮影助手の腹を蹴ったと同誌で報道されていた。この件については、事務所の公式サイトで「当事者間で解決をしている」とコメント。

 現在開催中のカンヌ国際映画祭で、総監督を務めた東京五輪の公式記録映画が公式上映されるために現地入りしており、どのようなコメントを出すかが注目される。

 同誌では、英語が堪能で優秀な男性職員が退職を申し出たため、殴りつけたと伝えており、「怒りをぶつけたようです」という関係者の証言も掲載している。殴られた男性職員の顔ははれ上がり、二度と事務所に戻ることはなかったという。

【私の論評】仕事等で激しいストレスに見舞われ他者に暴力を働くようになれば、仕事を辞めよ(゚д゚)!

上の記事では、映画スタッフへの暴行が報じられた河瀨直美監督とされていますが、それはどういう事件だったのか以下に掲載します。

4月27日、映画監督の河瀬直美氏(52)に暴行疑惑が「文春オンライン」によって報じられました。

記事によると暴行があった時期は’19年5月、永作博美(51)主演の映画『朝が来る』の撮影現場でのこと。河瀬監督は出演者の蒔田彩珠(19)が浅田美代子(66)と広島駅前で落ち合うシーンを撮影していたといいます。

映画「朝が来る」のポスター

そのシーンを撮り終えた後、カメラをカチンコに向けるべきところを河瀬監督は方向を見失っていた様子。その際、後ろに控えていた撮影助手のAさんが、方向修正を伝える意図で河瀬監督の体に触れたといいます。ところが、その瞬間に河瀬監督が「何するの!」と激高し、Aさんの腹を蹴り上げたと伝えられています。その後、Aさんが所属していた撮影チームは降板したといいます。

河瀬監督は「週刊文春」の取材に、トラブルはすでに解決済みとした上で、「当事者同士、および組のスタッフが問題にしていない出来事についての取材に対して、お答えする必要はないと考えます」と回答しています。

河瀨直美氏といえば、今年の東京大学の入学式で、祝辞を述べており、その内容が物議を醸していました。


典型的なリベラルメディアであるハフィントンポストさえこれについて報じていました。

河瀬監督はウクライナ侵攻について「ロシアという国を悪者にすることは簡単」「悪を存在させることで安心していないだろうか?」と新入生に問いかけたそうです。 この祝辞について、国際政治学者から批判の声が相次いでいました。

東京大学の池内恵(いけうち・さとし)教授は「侵略戦争を悪と言えない大学なんて必要ないでしょう」と大学の存在意義への疑問を呈するほどでした。

河瀬監督の祝辞は、東京大学公式サイトに全文が掲載されています。それによると河瀬監督は、奈良県吉野町の金峯山寺(きんぷせんじ)の管長と対話した際のエピソードを紹介。管長が本堂の蔵王堂を去る際に「僕は、この中であれらの国の名前を言わへんようにしとんや」とつぶやいたと明かしました。

この言葉の真意を正したわけではないとした上で、河瀬監督は菅長の思いについて以下のように想像していると話しました。 

<例えば「ロシア」という国を悪者にすることは簡単である。けれどもその国の正義がウクライナの正義とぶつかり合っているのだとしたら、それを止めるにはどうすればいいのか。なぜこのようなことが起こってしまっているのか。一方的な側からの意見に左右されてものの本質を見誤ってはいないだろうか?誤解を恐れずに言うと「悪」を存在させることで、私は安心していないだろうか?> 

こうした見方を紹介した上で「自分たちの国がどこかの国を侵攻する可能性があるということを自覚しておく必要がある」と新入生たちに訴えた。「自制心を持って」侵攻を拒否することを促していました。

この祝辞に関して国際政治学者からは批判の声が相次いでいる。 慶應義塾大学の細谷雄一教授は、ロシア軍がウクライナの一般市民を殺戮している一方で、ウクライナ軍は自国の国土で侵略軍を撃退していると解説。 

河瀬監督の祝辞を念頭に「この違いを見分けられない人は、人間としての重要な感性の何かが欠けているか、ウクライナ戦争について無知か、そのどちらかでは」と厳しく批判しました。

 今回の祝辞があった東京大学の池内恵教授も「通俗的な理解するとこうなるという例。新しい学生が変えていってください」とTwitter上で批判。

「侵略戦争を悪と言えない大学なんて必要ないでしょう」と、東京大学の入学式のあり方にも疑問を投げかけました。 東京外国語大学の篠田英朗教授は、前述の池内教授のツイートを引用した上で「『どっちもどっち』論を、超越的な正義として押し付けようとする人々が、この社会で力を持っている」とTwitterで警告を発しました。

こうした川瀬監督の不可解な行動に関して、評論家の上念司氏は、川瀬監督が「ナチュラル・オーガニック系陰謀論にはまっている可能性を指摘しました。


まずは、ナチュナル・オーガニック系陰謀論とはなにかというと、思い浮かぶのは、「世田谷自然左翼」というネットスラングです。なんで世田谷?と思う人も多いでしょうが、世田谷区は東京きっての豊かな住宅街。ここに住んでいる裕福な人が社会主義に賛同したり、豪勢な生活をしてるのに環境問題に関心があるかのように語ったりすることを揶揄するスラングです。これは、最初は上念司氏が言い出したものだと思います。

実際に世田谷区に住んでいるかどうかは別として、環境問題に関心を持つ裕福な人がやたらとオーガニック野菜にこだわる傾向というのは、前世紀の終わりごろから確かにありました。

しかしこのオーガニック信仰というのも、20世紀の神話です。神話であるだけでなく、陰謀論やエリート主義に容易に結びつきやすいという厄介な問題も抱えています。これについて、詳細は以下の記事をご覧ください。
特集 なぜオーガニック信仰の人たちは容易に陰謀論を信じてしまうのか
〜〜「20世紀の神話」は今こそ終わらせるとき(第4回)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、まさに、日本映画界の重鎮的存在河瀨直美氏は、東大を卒業しただけではなく、2009年、第62回カンヌ国際映画祭で、映画祭に貢献した監督に贈られる「黄金の馬車賞(フランス語版)」を、女性、アジア人として初めて受賞したエリート中のエリートと言っても良いくらいの人です。

しかし、陰謀論にはまってしまうと、このような人が、先の東大での祝辞のような発言をしてしまうのです。

現在は様々な陰謀論があります。陰謀論にはまってしまった人たちは、人格が変わったようになり、周囲の人を困惑させることになることが多いようです。誰にでも陰謀論にはまる危険性はあります。

もちろん、陰謀論であろうとなかろうと、どの情報を「正しい」と信じるかは個人の自由です。人に話すのも問題はないとは思います。しかし、自分が陰謀論を眉唾ものだと思っている場合に、身近な人が陰謀論にのめり込んでしまうと、どう接していいか困惑するでしょう。家族や友人が陰謀論にハマっている場合、どのように接したら良いのでしょうか。

結論からいうと、話をしてくるだけなら、否定も肯定もせずにただ聞いてあげるべきと思います。突き放してしまうと、主張を受け入れてくれる仲間同士でしか話せなくなり、ますます思考が偏ってしまいます。話を聞きつつ、ときどき「だけど、こういう意見もあるみたいだよ」と陰謀論以外の話を差し向けると、相手も極端な思考に偏りにくくなるのではないでしょうか。

注意すべきは「あなたも陰謀論を信じないとダメ」と、強要してくる人です。陰謀論にのめり込みすぎるあまり、個人の自由を無視して陰謀論を信じるよう周囲に強制する人は、最終的にカルトに近い存在になってしまいます。

今は様々な報道がなされるととも、ロシア擁護派に対する厳しい批判がなされるようになり、親露的発言をしていた人も思考が切り替わってきています。少数派になってきた今、ウクライナ戦争の陰謀論を吹聴する人は、より自分の論を強固にしていかないと立場が保てなくなってきています。そうして中には、どんどん先鋭化していく人もいるのです。

その発露が河瀨直美氏の東大の祝辞だったという可能性は高いです。そもそも、「ナチュナル・オーガニック系陰謀論」を信奉したことにより、ストレスがたまり、一緒に働く人達に対して殴る蹴るの乱暴狼藉を働いたとすれば、これは許されるることではありません。

これに近いことは、最近もありました。それは、財務省総括審議官の小野平八郎容疑者(56歳)が、5月20日逮捕された事件です。小野氏も次の次官候補であり、財務省の中ではエリート中のエリートでした。


《20日午前0時すぎ、東京都内を走行中の東急田園都市線の車内で他の乗客を殴ったり蹴ったりしたなどとして、暴行の疑いがある》(NHKニュース)

ただ、小野平八郎氏は、河瀨直美氏のように陰謀論にはまっていたわけではありません。ただ、陰謀論に近いことを主張していたのは間違いありません。これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
財務省の超エリート「次官候補」は何に追い込まれたのか?逮捕劇までに財務省で起こっていたこと―【私の論評】柔軟性がなくなった異様な日本の財政論議に、岸田政権の闇が透けて見える(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、財務省が財政破綻を長い間主張してきたこと、岸田政権においては、財政再建派と積極財政派の対立を意図的に作り出し、両者の言い分をききつつ、財政政策を決めようとしていることを批判しました。

無論財務省は財政再建をすべきと主張しているのですが、積極財政派もかなり理論武装をしており、しかもこちらのほうが、世界的にみれば標準的でまともな政策です。マクロ経済を理解した上で、様々な統計値などを根拠に理詰めで反論されると、反論のしようがありません。それ故、小野平八郎氏は相当のストレスに晒されていたことは間違いないです。

財務省の主張する財政が破綻するから財政再建すべきという主張にはかなり無理があります。このまま主張し続けていれば、それこそ、陰謀論どこかカルトと言われても仕方ない状況になりかねません。

このような状況に対して、高橋洋一氏は財務省に対して警告しています。詳細は以下の記事をご覧ください。
独断的に財政危機をあおる財務省の論法は通用しない 省益より国民の利益重視を
この記事において、高橋洋一氏は以下のような結論を述べています。
 財政健全化推進本部は19日、従来の財務省方針どおりの「財政健全化の旗を降ろさず」という提言案としたが、異論が出たこともあって、決定には至らなかった。その後、本部長預かりとなって、政府の骨太の方針に取り込まれる予定だという。

 財政健全化推進本部が19日示した案のドラフトは、どうやら小野氏がとりまとめの事務責任者だったようだ。

 自分が作った案が財政政策検討本部の提言とならなかったことは、かなりのストレスになったとしてもおかしくない。ただ、現時点では事件の詳細は不明で、暴力は言語道断であることは強調しておきたい。
 いずれにせよ、財務省は、会計に関する無知に基づく、独断的な財政危機をあおるのをやめるべきだろう。でないと、本当の財政の姿を国民は理解できない。

 財務省職員に言っておきたいが、財務省論法を通用させるのはもう無理だ。それでも省益のために働けと言われたら、仕事を考え直すのが、国民のためになるのではないだろうか。
小野氏も仕事を考え直すべきなのです。それがどうしても財務省内でできないというのなら、辞めるべきなのです。無論他の財務官僚もそうするべきなのです。このまま、陰謀論やカルトになるような組織は、その仕事内容を改めさせるか、それがかなわないというのなら、辞めるしかないのです。それは、ブラック会社など辞めるべきであるのと同じ理屈です。

そうして、河瀬直美氏のように何が原因であろうが、ストレスを抱えて、仕事関係で暴力を振るうようになった場合も辞めるべきと思いますし、一時休止してても良いと思います。ただし、回復し、それだけではなくストレスの本当の原因がわかり、今後ストレスを起こすことがないという自信があれば、また仕事を再開しても良いと思います。

ただ、その原因がナチュナル・オーガニック系陰謀論であれば、回復するのは相当難しいと思います。

いずれにしても、陰謀論にはまったり、陰謀論で人を騙して、激しいストレスで他者に暴力を働くようになれば、まずは仕事を辞めるべきです。そのような人に、まともな仕事はできません。

ドラッカーは仕事を辞めるべきタイミングについて以下のように語っています。
組織が腐っているとき、自分がところを得ていないとき、あるいは成果が認められないときには、辞めることが正しい選択である。出世は大した問題ではない。
― P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』

 小野氏は、そもそも財務省という組織が腐っているのですか、やめるべきです。組織が腐っているのてに辞めなかったから、今回のような暴力沙汰に繋がったともいえます。河瀬監督の場合は、ドラッカーの語る原則はどれもあてはまらないですが、それにしても、仕事上のストレスで他者に暴力を働くというのなら、これは他者と仕事することなどできません。辞めるべきです。

ドラッカー氏もこれには反対しないでしょう。そもそも、仕事上のストレスか陰謀論が原因なのか、あるいはその両方で激しいストレスを抱えた挙げ句に他者に暴力を働くというのは、仕事人である前に、社会人として失格です。

そうして、これは何もこの二人だけにあてはまるのではなく、社会人がわきまえておくべき基本的な原則であると思います。この原則に従っていれば、この二人は暴力沙汰をおこさなくてもすんたかもしれません。

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2022年5月25日水曜日

中国の台湾侵攻を阻止する4つの手段―【私の論評】海洋国家台湾の防衛は、潜水艦隊が決め手(゚д゚)!

中国の台湾侵攻を阻止する4つの手段

岡崎研究所

 ロシアのウクライナ侵略を受け、中国による台湾侵攻の可能性について種々の論議が戦わされるようになっている。4月23日付の英Economist誌の社説は、ウクライナ情勢から得られる最も重要な「教訓」は、中国の台湾への「脅威は現実のもの」であり、今すぐにこれに対応するための準備が必要であるとし、台湾がより良い準備をすればするほど、中国が台湾へ侵攻するという危険を冒す可能性は低くなる、と述べている。


 ロシア軍のウクライナ侵略は目下進行中であり、それが如何なる終結を迎えるのか、いまだ予断を許さない状況にある。ただ、はっきりしてきたことは、プーチンの当初の思惑通り事態は進行していない、ということだろう。そのような状況下で、エコノミスト誌の社説も、中国の将来考え得る台湾への侵攻がそれほど容易であるとは見ていないようであり、特に中国が「台湾統一」への行動をとることには、二つの大きな障害がある、と述べている。

 一つは、幅180キロメートルに及ぶ台湾海峡の存在であり、ロシアと地続きであるウクライナの場合と大きく異なっていることである。二つ目は、「台湾関係法」という国内法を持ち、台湾に防禦用の武器を供与し、台湾の安全にコミットしている米国が有する軍事力である。

 なお、ウクライナの場合には、バイデン政権はロシアが核兵器を使用し、「第三次世界大戦になる可能性がある」として、ウクライナへの武器支援を限定したことがある。将来、台湾海峡をめぐって、中国が台湾に対し、いかなる恫喝を行うか、それに対し、米国が如何に対応するかいまだ予想することが困難な点はある。

 現在までのところ、習近平指導部はウクライナ情勢から「教訓」を得るために状況を子細に観察しているものと見られ、ロシア側の度重なる誤算、ウクライナ国民の強固な抵抗力や欧米諸国の反応などに衝撃を受けているものと見られる。そして、将来有りうべき中国の台湾侵攻のハードルは、これまで一般に考えられていたよりもはるかに高くなった、と見てよいのではなかろうか。

やはりいつ来てもおかしくない台湾侵攻

 中国の台湾侵攻がいつ頃になるのか、予断を許さないが、エコノミスト誌の社説の主張するとおり、台湾側としては、いざという時のために警戒心を緩めることなく準備を進め、中国の侵攻を思いとどまらせる方策を講じることは、理にかなっているといえよう。

 エコノミスト誌の述べる台湾防衛の手段には、次のようなものがある。

(1)徴兵制に頼らず、より専門的な部隊を創設する。

(2)防衛費を現在の国民総生産(GNP)比2%は低すぎるので、増額する。

(3)台湾にはいたるところに「ハリネズミ戦法」が必要である。特に、敵の戦艦、軍用機に対する精度の高いミサイル攻撃が出来る武器が必要になる。

(4)台湾は、米国や日本を含むパートナー国との間で合同軍事演習を行う必要がある。中国による台湾海峡封鎖や有りうべき侵攻に対抗できるように準備を整える。

 ロシアのウクライナ侵略前には、数年以内にも中国が台湾に限定的な軍事侵攻をする可能性があるのではないか、との見方が米国の専門家の間で強まったことがある。しかし、ウクライナ危機以降は、中国としても、そう簡単に台湾に対し、軍事行動をとりにくくなったように思われる。しかしながら、習近平指導部にとって、台湾問題の重要性が基本的に変わらない以上、台湾としては警戒心を弱めることなく、準備できるものから準備するという覚悟が必要であろう。

【私の論評】海洋国家台湾の防衛は、潜水艦隊が決め手(゚д゚)!

台湾情勢となると、多くの人が思考停止したように、潜水艦の話題はたくみに避けることか多いです。上の記事もその例外ではありません。潜水艦の行動は昔からどこの国でも隠密にするが普通であり、それ故になかなか公開されることもないので、このようになってしまう傾向は否めないのですが、それにしてもバランスを欠いていると思います。

エコノミスト誌の述べる台湾防衛の手段には、上記の4つですが、その中には潜水艦という言葉が一つでできません。(1)〜(4)の台湾防衛手段は、悪くはないですし、そうすべきとは思いますが、もっと具体性を増すなら、特に(3)は以下のようにすべきです。

(3)台湾にはいたるところに「ハリネズミ戦法」が必要である。特に、敵の戦艦、軍用機に対する精度の高いミサイル攻撃が出来る武器として潜水艦が必要になる。

潜水艦は、海の下に潜り、なかなか発見できない「ハリネズミ」になりえます。

なぜこのようなことをいうかといえば、中国海軍には明らかな弱みがあるからです。中国海軍のASW(対潜水艦戦闘)能力は、日米に比較するとかなり弱いです。まずは、対潜哨戒能力がかなり弱いです。そうして、潜水艦の能力でも、ステルス性(静寂性)では日本にはかなり劣ります。

攻撃能力は米国の原潜と比較すると弱いです。その結果どうなるかといえば、中国の潜水艦は日米にとってはかなり発見しやすく、中国はそうではないので、中国の潜水艦は日米の潜水艦には歯が立ちません。

現代海戦についてルトワックも語っていた、昔から言われていることがあります。それは艦艇には2種類しかないということです。一つは空母やイージス艦のような、水上艦です。もう一つは、海の中に潜む、潜水艦です。

現代海戦においては、水上艦は空母でなんであれ、大きな目標でしかありません。これらは、すぐにミサイルや魚雷で撃沈されてしまいます。実際ロシアのバルチック艦隊の旗艦でもあってミサイル巡洋艦「モスクワ」は脆弱な海軍しか持たないウクライナ軍のミサイルによつて撃沈されてしまいました。

一方潜水艦は、水中に潜み、敵を攻撃することができます。すぐにミサイルや魚雷で撃沈されることはありません。だからこそ現代の海戦における本当の戦力は潜水艦なのです。ただ、これも対潜哨戒能力などによるASWが物を言う時代になっています。これが弱ければ、いくら潜水艦を多く持っていても、海戦において勝利することはできません。

これは、すでにフォークランド紛争(1982年)で実証されていたことです。この紛争では、ASWに長けていた英軍が結局勝利しています。

現代海戦においては、日米のほうがはるかにASWでは中国に勝っているため、中国が多数の水上艦艇を持っていたにしても、それは日米にとっては「政治的メッセージ」に過ぎず、海戦では日米の敵ではありません。

だからこそ、台湾は最新型の潜水艦をもつことにしたのです。これについては、以前このブログでも紹介しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
台湾が建造開始の潜水艦隊、中国の侵攻を数十年阻止できる可能性―【私の論評】中国の侵攻を数十年阻止できる国が台湾の直ぐ傍にある!それは我が国日本(゚д゚)!

自前の潜水艦の着工式に出席した蔡英文総統=2021年11月24日、高雄市

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、専門家は、台湾がもし高性能潜水艦の製造に成功すれば、台湾は中国の侵攻を今後数十年にわたって防ぐことができるとしています。

実際そうなのだと思います。先にあげたルトワック氏は、台湾有事になりそうになったら、米国は台湾に大型攻撃型原潜を2〜3隻派遣すれば良いとしています。なにしろ米国の攻撃型原潜の攻撃力は凄まじいですから、トマホークを数百発も発射できますし、対空・対艦ミサイルもかなり搭載できますから、2〜3隻のこれらの潜水艦で台湾を包囲してしまえば、そもそ中国海軍は台湾に近づくこともできません。

それでも無理やり近づき、仮に人民解放軍を台湾に上陸させたとしても、補給ができず、上陸部隊はお手上げになります。

日本の潜水艦も貢献できるでしょう。何しろステルス性に優れていますから、中国海軍に発見することなく、台湾の近海を自由に航行して、情報収集にあたり、その情報を米台と共有することができます。

台湾が最新鋭の潜水艦8隻を就航させることができれば、自前でこれができることになります。これに、日米が加勢すれば、中国海軍が台湾向けて事を起こせば、壊滅することになります。

2021年11月29日、ロイターは「As China menaces Taiwan, island’s friends aid its secretive submarine project」という記事を配信しました。その内容は、2017年から開始された台湾の潜水艦建造に、米国、英国が主たる役割を果たしていることに加え、オーストラリア、韓国、インド、スペイン及びカナダが関わっているとするものです。

米国は、戦闘システムやソーナー等の核心技術を、イギリスは潜水艦用の部品や関連するソフトウェアを提供し、その他の5カ国は技術者募集に応じたものであると伝えています。

それぞれは、台湾海軍及び潜水艦建造を請け負っている台湾国営企業「台湾国際造船」に、政府の許可を得て技術的支援を行っているとしています。韓国大統領府は、この記事に関し政府の関与を否定した上で、個人のレベルで情報を提供しているかどうかは調査中であると述べていました

記事では、米国の同盟国であり最も進んだ通常型潜水艦を保有する日本の関与について、防衛省関係者の発言として、非公式に検討したものの中国との関係悪化を懸念し、検討を中止したと伝えていました。また、日本企業は中国との取引を失うことを懸念し、台湾への関与は消極的であるとの海上自衛隊退職将官の発言を紹介していました。

台湾海軍は現在4隻の潜水艦を保有しています。2隻は第2次世界大戦中に米海軍が建造したグッピー級であり、もう2隻はオランダのスバールトフィス級潜水艦を元に1980年代に建造され、海龍級と呼称されています。

当初、海龍級は6隻取得する計画であったのですが、中国がオランダに圧力をかけ、残り4隻の建造は取りやめられました。グッピー級は言うに及ばず、海龍級も旧式化しており、台湾海軍はその更新を希望していました。

しかしながら、潜水艦建造能力を持つ各国は、中国の反発を恐れ台湾の潜水艦取得に協力することには消極的でした。米国は、2001年にブッシュ政権が、台湾関係法に基づき通常型潜水艦の提供を決定したのですが、米国国内には通常型潜水艦建造のノウハウが無く、宙に浮いた形となっていました。

これらの状況から、台湾の蔡政権は潜水艦国産化の方針を決定、2017年から建造が開始されました。1番艦の就役は2025年に予定されており、8隻が建造される計画です。

国産化にあたっては、米国を始めとした潜水艦保有国の技術協力が不可欠と見なされていましたが、それまで具体的な名前は明らかにされていませんでした。現時点で、韓国政府以外の反応は報道されていないですが、各国の協力を得て台湾潜水艦建造が進みつつあることが確認できたと言えます。

台湾の潜水艦勢力が充実することは、日本周辺の安全保障環境にも大きな影響を与えますが、軍事的観点から見ると、それにはプラスの側面とマイナスの側面があります。

プラスの側面としては、中国の台湾軍事侵攻に対する大きな抑止力となることです。当時、中国は台湾周辺における活動を活発化しつつありました。爆撃機がバシー海峡を経由し台湾南東部を飛行することに加え、同年11月中旬には中国海軍揚陸艦2隻が台湾と与那国島の間を南下し、台湾東部沖で活動したことが確認されています。

台湾は南北にわたって3,000m級の山脈が連なっていることから、その攻略には台湾海峡正面からの攻撃では不十分との指摘があります。当時からの中国艦艇及び航空機の活動は、台湾海峡方面からの侵攻に加え、太平洋方面からの侵攻能力を検証しているものと推定できます。

3,000m級の山脈が連なっている台湾

台湾潜水艦がバシー海峡周辺及び台湾東部海域で行動することにより、これら中国艦艇の台湾東部への進出を抑制することができます。潜水艦が行動しているという情報だけで、その脅威を排除するために行わなければならない作戦の負担や艦艇へのリスクを意識させ、最終的に中国が台湾への軍事侵攻というオプションを選択する可能性を低下させることが期待できます。

一方、マイナス面、懸念事項としては次の2点があげられます。

潜水艦の最大の特徴は、隠密裏に海中を行動することである。これを捜索するためのセンサーとして、現時点では音波が主流です。音波による捜索は、自ら音を出すアクティブ、相手の音を聞くパッシブともに、潜水艦であるかどうかの類別、そしてそれが潜水艦であった場合の識別(どこの国の潜水艦か)に多大の労力が必要です。

バシー海峡から西太平洋にわたる海域では、日米、状況によっては韓国、そして将来的にはオーストラリア潜水艦が活動し、これに台湾海軍潜水艦が加わった場合、潜水艦らしい目標を探知した場合の識別は非常に困難なものとなります。台湾を巡る紛争が生起した場合、台湾海軍潜水艦の存在は、日米艦艇の作戦を阻害する可能性があります。

次に、台湾の潜水艦の事故に対する備えが不十分であることが指摘できます。2021年4月、インドネシア海軍潜水艦がロンボク海峡付近で沈没しました。更には同年10月、米海軍原子力潜水艦が南シナ海において、海山と推定される海中物体と衝突し損傷しています。

潜水艦を運用する国が増加するにつれ、このような潜水艦の事故が増加すると考えられ、潜水艦を運用する国には捜索救難体制の整備が必須と言えます。他国との訓練が実施できない台湾は、潜水艦救難のノウハウが十分とは言えない状況にあります。

インドネシア潜水艦が消息を絶ってから発見されるまで4日間を要したことから分かるように、沈没潜水艦の位置特定には時間を要します。沈没潜水艦の救難は時間との勝負であり、距離的に近い日本はこれに積極的に協力すべきでしょう。

懸念事項を解消するためには、台湾潜水艦の運用状況に関する日台間の情報共有が不可欠です。潜水艦運用に係る情報の全てを共有する必要はないですが、少なくとも、事故の発生の通知や、探知した潜水艦が台湾所属である可能性があるかないかという判断を速やかに下せる程度の情報交換は必要です。これは、台湾の対潜戦兵力が日本の潜水艦を探知した場合も同様です。

日本の各企業が中国との取引を重視し、台湾の潜水艦建造に消極的であることは、民間企業として当然のリスク管理です。しかしながら、実際に台湾潜水艦の絶対数が増加し、活動海域が重複した場合のリスク管理は国の責任です。台湾の国産潜水艦が就役する2025年までに、日本政府としてリスク管理の体制を整えておく必要があります。関係国との調整を考慮すれば、残された期間は長いとは言えないです。

ただ、日米ともに以上のようなことを実施すべきです。台湾が自前で潜水艦を8隻持ち、シフトを組んで、24時間、台湾を包囲する体制を築いた場合、中国は台湾侵攻を断念せざるを得ないでしょう。

だから、2025年より前に、中国が台湾を武力侵攻する可能性は捨てきれません。そもそも、このブログでは、中国軍の兵員海上輸送能力は現在でも低く、台湾に一度に数万の陸上部隊しか送れないこと解説しました。そうなると、台湾に上陸した中国は侵攻部隊は、何度かに分けて輸送せざるを得ないことになります。そうなると、その度に台湾軍に個別撃破されることになります。

これを考えると、中国が台湾を武力侵攻することはあり得ないと考えるのが普通だと思います。もし、中国が台湾に侵攻した場合、台湾は当然戦うでしょうが、ロシアがウクライナに攻め入るのとは違い、圧倒的台湾のほうが有利であり、侵攻する中国はウクライナのロシア軍よりも、さらに破滅的な損害を被ることになります。

しかし、ロシア軍もウクライナに侵攻すれば、破滅的な損害を被るのは目にみえていました。しかも、侵入軍が当初19万人ともいわれ、これではとてもウクライナを制圧できないのは明らかでした。それでも、プーチンは明らかに勘違いをしてすぐに制圧できると高を括って侵攻したわけですから、中国が台湾に侵攻しないという保証はありません。

台湾を第二のウクライナにしてはならない

ただ、そうすれば、中国軍は破滅的な被害を受け、いずれ退却しなければならくなるでしょう。習近平はプーチンのように大赤恥をかくことになります。いや、それ以上かもしれません。しかし、それでも台湾は大きな被害を被る可能性があります。それだけは絶対に避けなければなりません。

そうならないためにも、台湾は潜水艦の建造を急ぐべきですし、日米としては、台湾有事は日米有事であることを中国に知らしめるべきでしょう。

その意味では、23日の日米首脳会談後の共同記者会見で、バイデン大統領が「台湾防衛への軍事的関与」を明言したのは時宜にかなった適切な措置だったと思います。

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