2019年10月7日月曜日

台湾問題だけでない中国の南太平洋進出―【私の論評】海洋国家を目指す大陸国家中国は、最初から滅びの道を歩んでいる(゚д゚)!

岡崎研究所

 10月1日の中華人民共和国建国70周年を前に、中国は南太平洋の島嶼国、ソロモン諸島、キリバスの二か国に対し、立て続けに台湾と断交させ、中国との国交を樹立させた。ソロモン諸島と台湾の断交は9月16日、キリバスは9月20日であった。台湾を承認している国は今や世界中で15か国のみとなってしまった。蔡英文政権成立時の22か国から3年半の間に、実に、7か国が減少したことになる。


 台湾との外交関係の切り崩しは、中国の建国70周年に合わせて行われた。その意図は、習近平体制にとっては、米中貿易紛争の出口がはっきりしない上に、香港をめぐる大規模デモの継続に収束のめどが立たない状況下で、何とか自らが「核心的利益」と位置付ける台湾問題に対し、効果的な圧力を加え、台湾を追い詰めていることを、内外に誇示したいというのが本音であろう。

 中国としては、来る1月11日の台湾総統選において民進党・蔡英文に対する圧力をますます強化し、台湾の生存する国際空間をどんどん狭めたいところであろう。蔡英文自身は、ソロモン諸国の決定は中国が1月の総統選挙に介入しようとする新たな証拠であるとして、「ここ数年、中国は金銭や政治的圧力で台湾の国際社会での場を抑圧してきた」と批判した。

 ソロモン諸島が台湾と断交し、中国と国交を樹立した直後、一週間もたたずしてキリバスも台湾と断交した。この時の断交について、蔡英文政権の呉外相は「キリバスは最近、台湾の民用機の購入費用の贈与を要求し、台湾側が提案した商業ローン方式を拒否した。中国は複数の航空機や船舶の贈与を約束したという」と述べた。これは、中国の南太平洋諸国に接近する場合の台湾切り崩し策の典型例であろう。

 台湾の国家安全会議は9月25日、中国が来年1月の総統選挙に影響を与えるべく今後取ると想定される措置・策略について報告書を公表したが、その中で、年末までにさらに1~2カ国との断交に追いやられる恐れがある、としている。今回の台湾と断交しなかった太平洋の島嶼国の中から、総統選の直前のタイミングで外交関係を台湾から中国に切り替える国が出てくるということは、あり得そうな話である。中国による「金銭外交」の形をとった圧力強化が、台湾の総統選挙において、民進党、国民党、その他政党のいずれに有利に働くかは予断を許さないところである。

 なお、南太平洋のバヌアツは中国承認国であるが、最近、ここに中国が軍事拠点を作るのではないかとの噂が絶えない。もしそのような動きが加速されるようになれば、それはオーストラリアの裏庭に当たる場所であり、中国の言う「第2列島線」の中での軍事拠点化になり得るものである。「自由で開かれたインド太平洋」の構想に賛同する米国、豪州、日本などの国々にとって、そのような中国の動きは断じて無視できないものである。中国の太平洋島嶼国への浸透は、台湾外交の問題にとどまるものではなく、はるかに広範な地政学的意味を持っている。

【私の論評】海洋国家を目指す大陸国家中国は、最初から滅びの道を歩んでいる(゚д゚)!

「一帯一路サミット」が4月25~27日に北京で開催されました。今年のサミットは、150カ国以上が参加し、出席する首脳の数も増えました。

興味深いのは王毅国務委員兼外相の発言でした。サミットを前にした19日、記者会見を行い、「一帯一路は、地政学的なツールではなく、参加国に債務危機をもたらすものではない」とわざわざ断ったのです。

敢えてこうした発言をしたのは、「地政学上のツール」でしかなかったということが誰の目にも明らかになってきたからでしょう。

地政学者で海軍戦略家のマハンは「海を制する者は世界を制する」と述べましたが、マハンのシーパワー論に学ぶ中国は、西はジブチ、ギリシアのピレウス港、東はスリランカのハンバントタ港、オーストラリアのダーウィン港など、着々と海洋進出を固めています。

今後中国の触手が伸びていきそうなのが、南太平洋島嶼諸国です。

ハドソン研究所のシニア・フェローであるジョン・リー氏がこの問題を論じているので、そのレポートの要点を紹介します。



南太平洋島嶼諸国は貧しい国が多く、外部からの商業ベースでの投資を呼び込むのが難しいです。このため海外のODAに依存する国が多いのですが、そのなかでも中国のODAに依存するケースが後を絶たないのです。

たとえばフィジー共和国の人口は85万人。同国に対して2006から2013年の間に提供されたODAのうちの約50%が中国からのものです。

中国は、フィジー共和国、クック諸島、サモア独立国、トンガ王国、バヌアツ共和国等の島で、軍事的にも使用可能なインフラ施設を建設しています。

中国は、日本列島から台湾、フィリピン、南シナ海に至る第一列島線を絶対防衛ラインとし、東シナ海、南シナ海を聖域化し、いずれは伊豆・小笠原諸島からグアム・サイパンなどを結ぶ第二列島線まで進出し、第二列島線の外にアメリカを追いやることを目標としていますが、この列島線上に親西側諸国が並んでいると、第一列島線、第二列島線を突破できません。

このため、第二列島線上に位置する南太平洋島嶼諸国に軍事拠点をつくることで、ここから西側の影響力を排除し、第二列島線を突破することを考えています。

島嶼諸国の中でもバヌアツ共和国のケースは深刻です。中国とバヌアツは、ルーガンビル埠頭に軍事基地を造ることを協議しているといいます。この埠頭は、中国が54万ドル(約6000万円)の政府ローンを組み、2017年の半ばに建設されています。

冒頭の記事にもあるように、中国の島嶼諸国に対する援助によって、台湾との国交を断絶する国も増えました。
昨年11月に行われたAPECで、日米豪の3カ国は、アジア太平洋地域に対して民間資金による投資推進を行う覚書を結びました。こうした民間資金に加えてODAも重要です。

米国は、2017年の国家安全保障戦略、2018年の国防権限法で示された目標を実現するために、ODAを戦略に組み込むべきです。

中国は「先民後軍」の戦略で、ひも付きのインフラ整備を行い、債務の罠に陥れて、その国の港湾などを横取りする作戦を行ってきました。

ペンス副大統領やポンペオ国務長官らが幾度となく「中国の借金に頼るのは危ない」と警告しても、南太平洋島嶼諸国にとって、中国のお金はのどから手が出るほど欲しいものとなっています。島にはこれといった製造業もなく、若者の流出は続いているためです。逆に言えば、最貧国の足元に付け込む戦略を持っているのが中国です。

このまま放置すれば、ジブチのように中国によって軍港が築かれる日も遠くないです。

日本は、外務省と防衛省との縦割り行政で、安全保障の観点からODAを戦略的に運用する発想に欠けています。

フィジーの人口は約85万人で、南太平洋島嶼国で最大の人口を擁していますが、これは東京の世田谷区よりも少ないです。日米豪で戦略的なODAの支援を行えば、南太平洋島嶼国に軍港が築かれるのを防ぐことができるはずです。ODAを戦略的に運用することは、日本が最初に提唱したインド太平洋戦略を推進するものとなりえます。

ODAは人道的な支援に限定されるべきではないです。2018年のアメリカの国防総省の年次報告で、一帯一路は、「グローバルな覇権戦略」と言われています。いま必要なのは「挙国一致」で、中国の覇権戦略を先回りして阻止することです。

ただし、中国の南太平洋進出が吉と出るか、凶と出るかということになれば、凶と言わざるを得ません。

中国の未来を地政学的に見てみると、国家方針たる一帯一路(海陸のシルクロード)はランドパワーとシーパワーの確保があって初めて可能になることに注意しなければならないです。思い出されるのは『海上権力史論』を唱えたアルフレッド・マハンのテーゼです。彼は「大陸国家であることと海洋国家であることは両立しない」と述べ、両生国家の在り方を否定しています。

このテーゼは、他の史家も唱えるところで、大陸国家たるモンゴル帝国の経済的弱点は陸上輸送のコストは海上輸送のそれよりもはるかに大きいことでした。大陸国家は陸続きであるために、必然的に強大な陸軍が求められ、現中国を例にとっても115万もの陸上兵力を有しています。これを日本の14万、アメリカの49万と比較すると膨大な数です。しかもこの数は、近年の兵力削減を済ませた後の数なのです。

他方で、海上国家は防衛にかけるコストが少ないです。また、膨張する場合でも、大陸国家に見られるような他国領をすべて治める必要はなく、シーレーンのチョーク・ポイント(要衝)のみを押さえておけばそれで済みます。とりわけ、地政学的な要衝と物資の集まる集積地を押さえれば、相手の死命を制することが可能となります。大英帝国はこのようにして7つの海を支配しました。現在の中国はまさに、これを狙っているのです。

では、大陸国家と海洋国家が衝突すれば、どうなるのでしょうか。 両国家がきわめて相性が悪いことは、ハルフォード・マッキンダーの次の言葉からもよく分かります。「人類史は、ランドパワーとシーパワーの衝突の歴史である」 と。

このテーゼは、両者(海洋国家と大陸国家)の性格傾向から見て正鵠(せいこく)を射ているように思われます。そのテーゼをさらに深めたのが、ニコラス・スパイクマンのリムランド論です。「リムランドを支配するものがユーラシアを制し、ユーラシアを支配するものが世界の運命を制する」とした上で、スパイクマンはこう述べています。


「自分たち(米国)の安全を守るためにはヨーロッパとアジアの政治に積極的に協力しなければならない」(『平和の地政学』)と。海洋国家は、リムランド制圧に動く大陸国家の動向を見過ごすことはできないのです。日米が中国の海洋進出に対抗して「開かれたインド太平洋自由構想」をぶつけている現状は、まさにそのことを示しているのです。

そもそも、中国にはこれといった同盟国がいません。とりわけ、大国は皆無です。ロシアが唯一それに当たりますが、そのロシアは軍事的には侮れないとはいいながら、現状のGDP は韓国なみであり、とても大国とはいえません。

そのロシアを離反させれば、ほぼ同盟国は皆無となります。EUは中国と経済的利害をもってつながっていましたが、2012年あたりから関係が冷え込み始めました。

中国の弱点は、他国に輸出できるソフトパワーを持っていないことです。人民中国が思想的に唯一輸出できたものは毛沢東思想であったのですが、その毛思想は中国の伝統をことごとく壊してしまい、かつその毛思想も自ら放棄したため、今や文化的に誇れるものは皆無です。かつてのローマ帝国と比較すれば、さらに実態が明らかになります。

「ローマは3度世界を征服した。1度は武力で、1度はキリスト教で、1度は法で」(ドイツの法学者イェーリングの言葉)。では、現中国はどうでしょうか。上の言葉で言えば、武力しか持っていません。キリスト教(宗教・思想)や法(普遍的法体系)に当たるものがまるでないのです。これは、他国を真に魅了するものがまったくなく、経済と軍事のみで自己アピールしなければならないことを意味しています。

ここが、過去の中華帝国とまったく違います。かつての中華帝国も周辺国への恫喝と侵攻を繰り返したのですが、その高度な文明の故をもって尊敬も勝ち得ていました。それが現中国にはないのです。これは、世界帝国として台頭するには致命的な欠陥となるでしょう。

現在の中国は鄧小平が劉華清(中国海軍の父)を登用し、海洋進出を目指した時から両生国家の道を歩み始めました。そして今、それは習近平に引き継がれ、陸海併せ持つ一帯一路戦略として提示されるに至っています。しかしこれは、マハンの「両生国家は成り立たない」とするテーゼに抵触し、失敗に終わるでしょう。

劉華清(中国海軍の父)

事実、両生国家が成功裏に終わった例はありません。海洋国家たる大日本帝国は、大陸に侵攻し両生国家になったため滅亡しました。大陸国家たるドイツも海洋進出を目指したため2度にわたる世界大戦で滅亡しました(ドイツ第2、第3帝国の崩壊)。ソビエト帝国の場合も同じです。よもや、中国のみがそれを免れることはないでしょう。一帯一路を進めれば進めるほど、地政学的ジレンマに陥り、崩壊への道を早めてゆくことになります。

とはいいながら、先にも述べたように、日米はやはり南太平洋の国々に対して、OADなどで支援をするべきでしょう。日米がこれを実行すれば、中国はさらにこれらの国々への支援を増やさなければならないことになります。それは、中国の崩壊への道を早めることになります。

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2019年10月6日日曜日

ダライ・ラマ継承「本人が決定」 チベット人会議決議、中国介入を拒絶―【私の論評】驕り高ぶりの頂点に達した中共指導者習近平主席は国賓に値しない(゚д゚)!

ダライ・ラマ継承「本人が決定」 チベット人会議決議、中国介入を拒絶 

インド北部ダラムサラで法話を行うダライ・ラマ14世=2月

 インド北部ダラムサラで世界の亡命チベット人の代表を集めた特別会議が3日間の日程で開かれ、5日閉幕した。会議ではチベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世(84)の継承のあり方はダライ・ラマ本人が決めるとする決議を採択。中国が後継者の選出に介入することを明確に拒絶した。

 特別会議は2008、12年に続き3回目。今月3日から始まり、世界24カ国から約340人が参加した。

 チベット仏教では「輪廻転生(りんねてんしょう)」の考えに基づき、高僧らが死去した際、生まれ変わりを探し出す伝統がある。ダライ・ラマが世を去った場合、中国政府は自らの影響下にある「ダライ・ラマ15世」を擁立し、チベット統治に利用することが懸念されている。ダライ・ラマは中国の介入とチベット人の混乱を避けるため、伝統とは異なるものの、生前の後継指名の可能性などに言及している。

 決議では「チベット人が存続する限り輪廻転生の伝統は存在するだろう」として、制度の継続を要求。その上で、継承の方法やあり方に関する決定権はダライ・ラマ本人にあることを強調した。中国政府が07年に決定した「チベット仏教における輪廻転生には(中国)政府の承認が必要」という規定については「チベット人の総意」として明確に拒絶した。

 ダラムサラでは11月中にもチベット仏教の高僧による会議が予定されており、同様の意見表明がなされる見通しだ。

 ダライ・ラマは1959年3月のチベット動乱後、ダラムサラに亡命。インド国内や海外で精力的に活動をこなすが、今年4月には肺の感染症と診断されて入院しており、亡命チベット人からは体調を心配する声が上がっている。

【私の論評】驕り高ぶりの頂点に達した中共指導者習近平主席は国賓に値しない(゚д゚)!

ダライ・ラマ継承「本人が決定」とチベット人会議が決議決議したということは、当然のことながら、中国共産党が現ダライ・ラマ逝去後の後継者に偽の転生化身の指名を計画しているということが発覚したからです。"Bitter Winter"誌はこの事実を本日伝えていました。

Bitter Winterは、中国の 信教の自由人権 について報道するオンライン雑誌として2018年5月に創刊されました。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(Center for Studies on New Religions、略称CESNUR)が、毎日8言語でニュースを発信しています。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えています。

その記事を以下に引用します。
チベットの指導者がダラムサラに集結し、中国共産党が現ダライ・ラマ逝去後の後継者に偽の転生化身の指名を計画しているとして全世界に警告を発した。
ダラムサラで行われた第3回特別総会の開会式。チベット政策提言機関提供。

10月5日、インドのダラムサラで開かれていたチベット人の第3回特別総会が閉会した。この会議を招集したのはカシャグ、すなわちチベット亡命政権とチベット亡命議会である。会議では緊急課題である 中国共産党 の計画に焦点があてられた。在位中のダライ・ラマ14世は84歳で健康上の問題を抱えており、彼の逝去後には北京が統制する偽のダライ・ラマを新たに指名しようとする動きがあるのだ。 
Bitter Winterは過去に2005年の異様な第5命令について報じている。これは仏教徒のラマのうち誰が化身であるかを決定し、化身を選定を行う手順を管理し、化身を本物として認めることについて、中国共産党が独占的な権限を持つことを定めた中国の規制である。無神論主義の党が、転生者を選定するという事態に西洋諸国は冷笑するかもしれないが、この措置の政治目的はあまりにも深刻だった。化身ラマはチベット(とモンゴル)仏教の最上位を占める。中国のチベット侵攻以前に亡くなった高僧の化身と認められた僧のうち、存命者は全員高齢になっている。彼らが次々と死去する中、中国共産党は少年たちを彼らの化身に認定して後継者を選び、党の操り人形として教育することを望んでいる。 
中国共産党は、チベット仏教ゲルク派においてダライ・ラマに次ぐ高位のパンチェン・ラマ11世の認定の際に、実際に行っている。パンチェン・ラマ10世が1989年に死去すると、現在のダライ・ラマは1995年に6歳の少年、ゲンドゥン・チューキ・ニマ(Gedhun Choekyi Nyima)を10世の転生として認定した。この少年は中国政府に誘拐され、中国共産党とダライ・ラマは彼が生きていると主張しているものの、消息は不明のままである。その後、中国共産党は当時5歳だったギェンツェン・ノルブ(Gyaincain Norbu)の認定を進めた。彼は中国共産党認定のパンチェン・ラマ11世、および中国における中国共産党に忠実な仏教徒の公式の代表になるよう育てられた。この偽のパンチェン・ラマは世界を回り、中国に盾突くことのできない団体や国々からは本物として扱われている。

真のパンチェン・ラマの支持を表明するポスター。 (John HillCC BY-SA 4.0)

1995年のパンチェン・ラマ問題以降、ダライ・ラマ14世が亡くなった後に自らダライ・ラマを任命することが中国共産党の最終目的であることが明らかになった。総会には24か国から離散中のチベット人の代表340人が出席し、親北京の外交員が世界各地に散在していて、中国共産党の計画は既に整っているとして注意を促した。在位中のダライ・ラマが亡くなれば、中国共産党はすぐさま自ら転生者を選定するだろう。 
実際、総会が指摘したとおり、現在のダライ・ラマが住むインドでは、中国共産党の選んだダライ・ラマ15世を受け入れさせようとする説得が既に始まっている。中国の「専門家」はインド政府に対し、「中国政府が正当なダライ・ラマ(の継承者)を認定した際にインド政府がそれを認めなかった場合、中印関係に影響を及ぼすほど政治的不和となるであろう。ダライ・ラマの転生は中国の重要問題であり、中国の盟友ならば本件について中国への介入や干渉を行うべきではない」と警告している。中央チベット亡命政府の首相、ロブサン・センゲ(Lobsang Sangay)博士は総会で「次期ダライ・ラマの選定に介入させないため、中国はインドに対して脅迫を続けています。インドのような新興の超大国を脅かすことができるならば、他の小国が受ける影響の大きさは言うまでもありません」と語った。 
現状、中国が偽のダライ・ラマを選ぶことに断固抵抗する気配があるのは1か国のみである。米国では、2019年9月に、超党派の中国問題に関する連邦議会・行政府委員会の議長と副議長をそれぞれ務める、ジェームス・マクガバン(James McGovern)下院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とマルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員が、2002年のチベット政策法を更新、強化する規制「2019年チベット政策および支援法」(H.R. 4331S.2539)を提出した。この法案は、中国共産党がダライ・ラマの転生に関わる判断に介入することは チベット仏教 徒とチベットの人々の基本的な信教の自由を侵害していると述べている。さらに偽のダライ・ラマ15世の指名、任命に加担した中国政府の高官に対する制裁措置を呼びかけ、米国の公的機関に中国共産党が管理する偽の転生者を真のダライ・ラマとして一切認めないよう命じてもいる。 
しかし、中国共産党による偽のダライ・ラマ15世任命計画に反対する世界的な世論形成キャンペーンを今すぐに始め、十分な勢いをつけない限り、アメリカ以外の国々や仏教団体は中国に抵抗するだけの独立性や資力をもちえない可能性がある。
中国共産党が現ダライ・ラマ逝去後の後継者に偽の転生化身の指名を計画しているということは、由々しきことです。

これを日本にあてはめれば、日本に米軍が進駐したときに、司令官のマッカーサーが昭和天皇の次の天皇を任命するようなものです。そのようなことは、マッカーサー元帥は全く考え及びもつかなかったでしょうし、当時の米国の幹部もそのようなことは考えなかったでしょう。

チベットの精神的最高指導者であるダライ・ラマの化身認定についての中国の主張に対し、米国議会も、ダライ・ラマ法王の化身認定はダライ・ラマ法王のみが正当な権限を有することに議論の余地はないとしたうえで、ダライ・ラマによる指針のみに従うと発表しました。

「ここに明言します。米国議会は中国が選んだダライ・ラマを認めることは決してありません」 コリー・ガードナー上院議員は、上院外交委員会の東アジア太平洋・国際サイバーセキュリティ政策問題小委員会の公聴会で、こう述べました。同小委員会は、アジアにおける米国の政策を監督する重要な議会機関であり、カードナー議員が委員長を務めます。

コリー・ガードナー上院議員

米国議会は、中国の不当な主張に対抗する形で、ダライ・ラマの化身制度についてはダライ・ラマ法王が示す指針のみに従うことを宣言しました。「ダライ・ラマ法王はご自身の転生者について指針を示された。アメリカはそれに従う」

チベットの現状とそのインド太平洋地域への影響に関する公聴会で証言した「チベットのための国際キャンペーン(International Campaign for Tibet、ICT)」副会長ブチュン・K・ツェリン氏は、中国によるダライ・ラマ化身認定を管理する計画は、チベット本土内外ともにチベット仏教徒には受け入れられないものであると述べました。

ダライ・ラマ法王14世は、2011年にチベット仏教の伝統である化身認定制度の歴史とご自身の転生者について、次のように声明を発表しています。

「明確なガイドラインがないがゆえに、ダライ・ラマの化身認定制度が継続されるべきであるという声が高まっており、政治的目的を達成するためにこの制度が誤用されてしまうおそれがあるのは明らかです。したがって、私が身体的、精神的にいたって健康である今のうちに、次のダライ・ラマを認定するためのガイドラインを作り、問題や策略などが将来的に決して起こる余地のないものとすることが大切であると思われるのです」

「もし引き続きダライ・ラマの転生者が必要であるということになり、第15世として再臨者を認定しなければならない時期が来たときには、その任務の責任は主としてダライ・ラマのガンデン・ポタン基金財団の役員たちにあります」

ダライ・ラマ法王はさらに、こう述べている。「このように正しく、論争の余地なしに認定される化身以外には、たとえ中国人民共和国の権力者などの如何なる政治権力を有する人物が政治的必要性を満たす目的で次の化身を選出することがあったとしても、その人物をダライ・ラマの化身と認定する必要はありませんし、それを受け入れて信仰する必要もありません」

声明文の全文サイトへ

最近の NHKジャパンのインタビューの中で、ダライ・ラマ法王は、ダライ・ラマの化身認定が今後行われるかどうかは、チベット人が決めることであると1969年にすでに明言したと述べた。「次期ダライ・ラマをどのように選ぶかよりも、それを決めるのが先なのです。」

日米をはじめ、先進国は信教の自由を当然の権利として認めています。先進国でない国々も、ほとんどの国が信教の自由を認めています。中国が現ダライ・ラマ逝去後の後継者に偽の転生化身の指名をしたとしたら、チベット族は反発するのは当然のことながら、全世界から反発されるのは必至です。

特に米国における信教の自由とは他国とは異なった特別な意味を持っています。これについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「信教の自由」でも衝突する米中―【私の論評】米国政治で見逃せない宗教という視点(゚д゚)!
ドナルド・トランプ大統領と共に祈るためにホワイトハウスの大統領執務室を
訪れた米国の福音派指導者ら=2017年12月11日
以下のこの記事より、米国の信教の自由に関する部分を引用します。

ご存じの方も多いと思いますが、米国では大統領が就任式で宣誓するとき、聖書に手を置いてこれを行います。日本では絶対にありえない光景です。日本では首相が般若心経やコーラン、あるいは仏典の上に手を置いて就任式をする光景はないです。
トランプ大統領は就任式で、左手を聖書に置き、右手を挙げて恒例の宣誓をした

ところが、米国ではこれは当たり前のことになっています。それは、米国において「宗教(主にキリスト教)」は政治に関与することが大いに奨励されているからです。そもそもWASP(白人でプロテスタント信仰を持つアングロサクソン系民族)と呼ばれる人々は、キリスト教信仰に基づいた国家を建設しようとして、米大陸に乗り込んできたやからです。だからキリスト教精神に則って政治が行われることは、至極まっとうなこととなのです。そのため、彼らの意識としては、政治と宗教は親和性の高いものとなっているのです。 
これを端的に表しているのが、「Separation of Church and State」という考え方です。これは詳訳するなら「特定教派と政治の分離」となります。一方、日本をはじめ他の先進諸国が使用している形態は、「Separation of Politics and Religion」です。同じく詳訳するなら「政治と宗教の分離」です。この土台が異なっているため、日本では、当福音派クリスチャンですら二重の意味で混乱を来すことになるのです。そうして、非キリスト教以外の人々にも誤解や混乱をもたらしてるのです。
一つは、日本国民として「政治の中に宗教性を持ち込んではダメ」と思っていることです。もう一つは、「キリスト教はあくまでも心や精神的癒やし(解放)を目指すものであって、政治とは相いれない」と思い込んでいることです。 
しかし米国においては、このいずれも決して自明なことではありません。もちろん政治的発言を控えるという風潮や、そういう考え方を訴える福音派の牧師もいます。しかし同じ「福音」の捉え方にしても、やはり国が違えばその強調点、濃淡に差異が生じやすくなるのです。 
多くの日本の福音派教会は、米国の宣教師からのDNAを受け継いでいます。宣教師になるくらいですから、米国にいながらどちらかというと政治よりも個々人の精神性に重きを置く傾向がある人々であることは否定できないでしょう。
日本的な「政教分離(政治と宗教の分離)」の原則と、日本にクリスチャンが1パーセント未満であるということ、そして海外からもたらされた形而上学的側面を強調する「キリスト教」が相まって、米国の「政教分離(特定教派と政治の分離)」を理解しにくくしているという一面があることは、覚えておく必要があります。
この記事には、米国福音派についても述べてあります。興味のある方は是非ご覧になってください。

このように米国においては、政治と宗教は親和性の高いものとなっています。その米国からみれば、ダライ・ラマの後継者を中国が定めるなど驚天動地の蛮行であり、これは絶対に許せるものではないと考えるのが当然のことです。米国は、ますます対中国冷戦を完遂する意思を固めたことでしょう。

そうして、日本人からしても、中国のこの蛮行は、日本でいえば先程も述べたように、天皇の後継者を中国が定めるようなものであり、とてつもない蛮行と受け止められるでしょう。

他の「信教の自由」を認める国々でも、蛮行として受け止められるでしょう。このようなことを計画する中国は、驕り高ぶりの頂点に達したと言っても過言ではないです。

このようなことを平気で実行しようとする中国共産党はもはや人類共通の敵です。日本では、来年習近平を国賓として迎えようとしていますが、とんでないです。

7月発表の中国国防白書でも「自国の軍事力は防衛と平和のため」だと主張し、「アジア太平洋諸国は運命共同体」で、「南シナ海は安定している」と述べています。

世界一の軍事強国を目指し覇権国家を確立すると言いながら、自国は平和勢力で運命共同体だと言い募る欺瞞を真に受けられるでしょうか。さらには、ダライ・ラマの後継者を中共が定めるなどとは、傍若無人以外のなにものでもありません。

こうした虚言で言いくるめた中共の真意を見逃して、日本が習政権を歓迎するようなことがあっては、国際社会の指弾を受けること必定でしょう。

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2019年10月5日土曜日

韓国騒然!反文デモに“300万人”集結 「文氏を大統領の座から引きずり下ろす!」声を上げた退役軍人 識者「文政権の実態がバレ始めた」―【私の論評】文在寅政権は早急に雇用を改善しなければ、朴槿恵政権と同じく崩壊!その後の政権も同じ(゚д゚)!


 「反文在寅政権」を掲げる大規模デモ。ソウル中心部の青瓦台周辺を人の
 波が埋め尽くした=3日クリックすると拡大します

 韓国の首都ソウルで、想像を絶する大規模集会が開かれた。最大野党「自由韓国党」が3日、チョ国(チョ・ググ)法相の辞任や、文在寅(ムン・ジェイン)政権の打倒を訴える集会を開いたところ、「300万人以上」(同党広報室)が集まったというのだ。退役軍人会や、キリスト教団体、大学教授、学生らも参加した。チョ氏周辺のスキャンダルや、韓国経済の危機的現状、北朝鮮主導の「赤化統一」への警戒・拒否感から、文政権への批判が一気に高まっている。識者は「文政権崩壊の時限爆弾に火を付けた」と語る。隣国はまた動乱期に突入した。 


 「むいてもむいても(疑惑が)出てくる『タマネギ(男)』に、法相の資格があるのか!」

 自由韓国党の黄教安(ファン・ギョアン)代表は3日の大規模集会で、チョ氏絡みの疑惑が次々と浮上していることを受け、こう辞任を要求した。

 文政権が、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を一方的に決定したことについても、黄氏は「氏から関心をそらすためだったのではないか」と訴えた。北朝鮮が当日朝、新型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射するなど、国民が自国の安全保障に不安を感じていることを踏まえた発言といえる。

 大規模集会は、ソウル中心の光化門(クァンファムン)広場で行われた。韓国の建国記念日「開天節」で祝日だったこともあり、中央日報(日本語版)などによると、光化門からソウル駅まで続く、長さ約2・1キロの10~12車線道路が開放され、「文政権打倒」「チョ法相辞めろ!」などを訴える人々で埋め尽くされたという。

 「300万人」といえば、茨城県(約290万人)や大阪市(約270万人)の人口より多く、実際より過大に見積もったとの見方が大勢だ。ただ、集会の写真を見る限り、日本では考えられない規模なのは確かだ。

 この大規模集会に、元韓国国防省北韓分析官で、拓殖大学主任研究員の高永チョル(コ・ヨンチョル)氏は「退役軍人」として参加した。

 高氏は「地元の左派系テレビは『3000人程度』と報じたが、とんでもない。150万人はいた。全国からバスが連なり、家族ぐるみで参加していた。人々は『文在寅、打倒!』を叫び、大統領府(青瓦台)まで行進した。800人程度が『決死隊』を名乗り、『命をかけて、文氏を大統領の座から引きずり下ろす』と声を上げていた。退役軍人も高齢者ばかりではなく、3分の1は兵役を終えて間もない20~30代だった。現場では『文氏が戒厳令を敷くかもしれない』と噂が流れたほどだ」と振り返る。

◆文政権の実態がバレ始めた

 ソウルでは先月28日、文政権が進める検察改革を支持する左派の大規模集会も開かれた。主催者は当時、参加者を「80万人」と発表した。中央日報は、今回の保守派集会の方が人数が多いと報じている。

 これまで、「反日」が目立った韓国だが最近、デモや集会の様相が変わってきているという。

 これは、文大統領が先月9日、娘の不正入学疑惑や、息子の兵役逃れ疑惑、私募ファンド投資疑惑などが連続炸裂(さくれつ)していたチョ氏を法相に強行任命してからだという。

 先月後半、ソウルのデモ・集会を取材してきたフォトジャーナリストの山本皓一氏は「超学歴中心社会や、兵役制度に苦しんでいる学生や若者たちの神経を逆なでし、激怒させたようだ」「赤化統一を進める文政権の実態もバレ始めた」という。

 山本氏は、ソウルの日本大使館前で、日韓関係の悪化を懸念する70~80人の中年女性によるデモも目撃したという。山本氏が撮影した写真を見ると、女性たちは「文政権は日本政府に謝れ!」と書かれた横断幕を掲げており、参加者が持つ紙には「文在寅は責任をとれ!!」「韓米日三角同盟解体するな」「亡国的反日扇動はもうやめろ」という言葉も踊っていた。

 保守派が3日の大規模集会を成功させたことで韓国は大きく動くのか。

 前出の高氏は「文政権は、今回の大規模集会で相当参ったはずだ。これまで文政権を支持していた人々も、『ウソつき政権』『詐欺政権』と言い出すなど大きく変わってきた。毎週土曜日には『反文』デモ・集会が行われており、今後も勢いを増すだろう。3日の大規模集会は、文政権崩壊の時限爆弾に火を付けたターニングポイントになった。朴槿恵(パク・クネ)前大統領が倒れたときと同じで、国民は『文政権もいずれ崩壊する』と肌で感じた」と語っている。

【私の論評】文在寅政権は早急に雇用を改善しなければ、朴槿恵政権と同じく崩壊!その後の政権も同じ(゚д゚)!

今日このようなことになることは、結構多くの人たちが予め予想していたのではないでしょうか。私もその一人です。実際このブログでも早い時期からそれを予想していました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【韓国新政権】文在寅政権の最重要課題は経済や外交 韓国メディア「対日政策、全般的に見直し」と展望―【私の論評】雇用を創出できない文在寅もスキャンダルに塗れて自滅する(゚д゚)!

大統領に就任したばかりの頃の文在寅氏
この記事は、文在寅氏が大統領選挙に勝利して間もない2017年5月10日のものです。私は、この頃から文在寅氏はいずれスキャンダルに塗れて自滅すると予想していました。

これは、当てずっぽうではありません。なぜそのような予想をしたかといえば、当時発表した文政権の新経済対策を読んだところ、朴槿恵政権時代と変わらず、めぼしい金融緩和政策をしないということとを理解したからです。

金融緩和をしないということは、雇用を拡大しないと宣言しているのと同じです。日本でも、雇用=金融政策ということを理解しない政治家も多いですが、文在寅大統領も同じく全くそれを理解していません。

韓国では朴槿恵政権の頃から雇用がかなり悪化していたわけですから、新政権としては、いちはやく大規模な量的金融緩和を実行すべきでした。そうすれば、雇用は改善されたはずです。

であれば、韓国では根本的な雇用の改善は期待することもできず、結局それを実現できなかった朴槿恵政権といずれ同じ運命をたどるということは、予め予測できました。

ところが、文在寅政権は、その予測をはるかに上回りました。なんと、文在寅大統領は、金融緩和をしないどころか、最低賃金を上げるという政策を始めたのです。これは、さすがの朴槿恵政権も実施しなかったことです。

これは、金融緩和はせずに、再分配を拡大するという、日本でいう立憲民主党代表の枝野氏と同じ政策です。

この政策を実行したため、韓国では、雇用が回復しないどころか、激減してしまいました。こうなることは、最初からわかりきっていました。それについては、このブログでも何度か警告を発しました。

冒頭の記事では、金融政策などについては一言も触れず、今日の事態を招いた原因を、文政権の実態がバレ始めたからとしていますが、私はそのようなことよりも、文政権が雇用政策に大失敗したことが真の原因だと思います。

特に、朴槿恵政権でもみられなかった、金融緩和をせずに最低賃金をあげて、雇用を最悪にしてしまったことが最大の原因だと思います。

韓国では最低賃金そのものは本年も上昇しているが、引上げ率は引き下げざるをえなくなった

上のグラフは、韓国の最低賃金(時給)の推移です。2019年は引き上げ率はマイナスになってますが、最低賃金額そのものは上がっています。

これでは、最悪の事態を招くだけです。本来金融緩和をすれば、最初はパート・アルバイトや新人正社員の雇用が増えるので、最低賃金は下がることになります。韓国では逆になっています。金融緩和をしないというなら、最低賃金を下げたほうが多少は雇用は改善するはずです。

このようなことになるのは、何もマクロ経済理論を持ち出さなくなても、経済状況が何も変わらないのに、最低賃金だけをあげたらどうなるか理解できるでしょう。企業としては、売上を変えずに賃金だけ上げざるを得ないというのなら、何をするかといえば、新規採用を控えたり、リストラするしかなくなります。

日本では、金融緩和をはじめてから少しの間は、賃金が下がったので、立憲民主党の枝野代表などの野党の面々は「最低賃金ガー」などといって大騒ぎしていました。これでは、経済政策は文在寅と同レベルを言わざるを得ません。

いずれの国でも、他の政策がどうであれ、経済政策がうまくいっていれば、大多数の国民は政府を支持します。特に経済政策の中でも、雇用がある程度良い状態にあれば、多くの国民は政府を支持します。

雇用状況が満足できる状況であれば、他の政策が一切駄目でも、政府の成績は60点くらいにはなるでしょう。しかし、逆に雇用が駄目であれば、他の政策がどんなに良くても、国民にとっては落第点しかつけられません。

それは、まともに考えれば誰にでも理解できるはずです。雇用情勢がある程度良ければ、若者は先に希望が持てます。逆に雇用情勢が悪ければ、民主党政権時代の日本のように、悲惨な就職活動でいくら頑張っても内定がとれずに、多くの若者が希望を失ってしまいます。

そうして、このように雇用がかなり悪化していると、多くの人々が他の勢力によって容易に扇動されやすくなります。日本も戦後間もなく、雇用や経済状況が悪い時には、当時のソ連にかなり影響を受けましたが、経済・雇用がよくなってからは、ソ連の勢力は日本から一掃されました。

雇用を改善できなかったために、朴槿恵政権は様々な反朴槿恵勢力(当然北朝鮮の工作員やそのシンパを含まれる)によって崩壊しました。文在寅も雇用を改善しない限りそのような運命が待っているでしょう。

朴槿恵大統領退任要求の大規模デモ。主催者推定10万人を超える人数が集まり収拾付かなくなった。

それほど雇用は重要なのです。現在日本では、10月1日より消費税があがり、日銀はイールドカーブコントロールを導入して以来、金融引き締め気味ですが、それにしても緩和していることには変わりがなく、雇用情勢は悪化していません。そのためもあってか、安倍政権の支持率は悪化していません。

これからは、どうなるかわかりませんが、少なくとも文在寅政権のように、金融緩和せずに最低賃金だけあげて雇用を破壊するという馬鹿真似はしないでしょうから、文在寅政権や、日本の民主党政権の末期のようなことにはならないでしょう。

もし、文在寅政権が、政権設立直後から、金融緩和策を積極的に推し進めていれば、このようなことにはならなかったと思います。

そうして、今後いかなる政権が樹立されようとも、雇用を改善できない政権であれば、朴槿恵政権や文在寅政権と同じ運命をたどることになります。

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2019年10月4日金曜日

【有本香の以読制毒】「表現の不自由展・その後」に“補助金詐欺”の疑い 津田大介氏も知っていた「隠して出す」中垣氏の出品経緯説明が事実なら大問題―【私の論評】隠して出品が本当なら、明確な「補助金適正化法違反」(゚д゚)!

【有本香の以読制毒】「表現の不自由展・その後」に“補助金詐欺”の疑い 津田大介氏も知っていた「隠して出す」中垣氏の出品経緯説明が事実なら大問題
公費支出は…「表現の不自由展」


展示物をめぐって大村愛知県知事(右)に反発する河村名古屋市長(左)

昨日、北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射や、中国の軍拡について関係者を取材している最中、別のとんでもない情報が聞こえてきた。

 8月に本コラムでお伝えした、愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展「不自由展・その後」についてである。

 本件では最近、文化庁が補助金の不交付を決め、これに愛知県の大村秀章知事と、一部の文化人とマスメディアが色をなして噛みついている。大村氏は中止していた企画展を再開すると鼻息を荒くする一方、主催者側の一人、名古屋市の河村たかし市長は知事の方針に大反対、と一見、泥仕合の様相だ。

 だが、この件への一般国民の評価は意外なほど明確である。

 夕刊フジが実施したツイッター上のアンケートでも、マスメディアの誘導とは真反対の「河村支持9割以上」という結果が出た。

 筆者は職業柄、「表現の自由」を大事と考える者だが、多くのツイッター民と同様、国の補助金不交付の決定と河村市長の考えを支持している。理由は本紙で幾度も述べたとおり、本件が実は「表現の自由」の問題ではないからだ。

 筆者含む日本国民の多くは、国や県、市の補助金などもらわずとも「表現の自由」を十二分に謳歌(おうか)している。そして、その自由は、自分とは価値観の異なる人にも等しく保障されるべきものと認識している。

 だから、昭和天皇の写真をバーナーで焼き、その灰を足で踏み潰すような、筆者にとっては不快極まる映像でも、それを誰かが作り見せることを阻止しようとまでは思わない。

 ただし、そこへ公金が注ぎ込まれるとなれば、話はまったく別である。

 こんな当たり前、至極簡単な話が、大村知事と彼を擁護する文化人、そして一部マスメディアにかかると、ひどく難しい問題にされる。

 彼らの欺瞞(ぎまん)にイライラしながらも、本件の「決め手」となる情報はないかと、この2カ月、ウオッチしてきた。

 ところが、実はその「決め手」が8月7日、すでに世に出ていたのだ。

 名古屋市が9月20日、大村知事宛てに出した「公開質問状」に、次のとおり書かれている。

 「7 実行委員会が本件企画展の内容を『隠して出す』と言って、作者に出品を勧誘したのは事実か」

 これは、企画展中止4日後の8月7日、出品者の一人である中垣克久氏(造形作家)のネット番組でした発言について、知事に質した部分だ。中垣氏は出品の経緯について、番組で以下のように説明していたのだ。

 「最初、表現の不自由展実行委員会から私のところに(作品を)出してくれと。ただし、普通には出さない。隠して出す。そう言われたときに、『それはおかしいんじゃないか。堂々と出したらどうか』と言ったら、『中に慰安婦の像がある。これは今出したら問題だから』と言われた」

 納得いかなかった中垣氏は、芸術監督の津田大介氏に電話をし、津田氏から「後で必ず出す」と確約を取り付けたことも明かしている。

津田大介氏

 中垣氏のこの発言は筆者もノーマークだったが、経緯が事実なら大問題だ。表現の自由どころか、“補助金詐欺”の疑いすら出てきはしないか。

 この2カ月、「被害者」のごとき風情を醸し出し続けてきた芸術監督の津田大介氏と、実行委員長の大村秀章知事には、ぜひともこの「疑惑」について、真摯(しんし)なお答えをいただきたいものである。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』(産経新聞出版)など多数。

【私の論評】明らかな「補助金適正化法違反」か?

「表現の不自由展」に関しては、今までこのブログにはあえて掲載してきませんでした。それは、やはり、展示内容が極めて不愉快なものであり、とても論評などする気になれなかったからです。

特にも問題は以下の動画にもあるように、昭和天皇の写真を焼く動画という展示があったからです。これについては、今にいたるまで、ほとんどの大手マスコミが報道しません。

この動画を掲載するのは、非常に不愉快なのですが、そのあまりの酷さをご理解いただくため、あえて掲載させていただくこととしました。


国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」に関連し、国が愛知県への補助金を交付しないことを決定しました。

愛知県が文化庁に対し、安全面に対する懸念を事前に申告しないなど、交付申請の手続きが不適当だったことが理由です。これについて、左派マスコミを中心に「検閲に当たる」との批判があり、愛知県の大村秀章知事も、補助金打ち切りについて、「係争処理委員会で理由を聞く」としています。

本当に、狂っているとしか思えません。上の有本さんの記事で主張しておられるように、だから、「昭和天皇の写真をバーナーで焼き、その灰を足で踏み潰すような、筆者にとっては不快極まる映像でも、それを誰かが作り見せることを阻止しようとまでは思わない。ただし、そこへ公金が注ぎ込まれるとなれば、話はまったく別である」としています。

まさに、そのとおりです。芸術と公金のあり方は、どうあるべきなのでしょうか。左翼計の評論家等は、これを検閲としていますが、「検閲」とは発表前に精査し不適当なものを発表禁止にすることを指すのですから、今回は発表後なので「検閲」とはいえません。

愛知県は9月25日、中間報告を出したましたが、その内容はお粗末といわざるを得ないものでした。

91ページの報告書の中で、肝心の芸術と公金との関係については、「アートの専門家がアートの観点から決定した内容であれば、政治的な色彩があったとしても、公立美術館で、あるいは公金を使って行うことは認められる(キュレーションの自律性の尊重)。これは、国公立大学の講義で、学問的な観点からである限り、政府の批判をすることに全く問題がないことと同じである」と簡単な言及しかありませんでした。

一般論として、芸術文化は、純粋私的財ではないので、最適な社会的供給のためには公的支援の必要性が正当化されます。しかし、社会的な判断をも要求されます。

表現の自由があるから、公費支出が当然というわけでありません。特定の芸術作品を公金による助成の対象にしないということは、必ずしも表現の自由の侵害にはならなりません。

報告書は、公費で問題ないとする論拠として、国公立大学の講義を持ちだしていますが、これらは「準公共財」や「価値財」の典型例で、その背後には当然国民の納得・了解につがなければなりません。報告書は、これについては何も言及していません。

すべての公費は民主主義プロセスが必要であり、そのためには国民の納得・了解が必要になってくるはずです。こうした公費の大原則について、中間報告では考慮されておらず、公費支出は当然という立場で書かれています。

公費支出が民主主義プロセスを経て行われる以上、国民がその内容を理解してしておく必要があります。左派マスコミは、公費支出を当然といいますが、芸術とされ、展示されていた昭和天皇の肖像が燃える映像作品などについてはほとんど映像を流していません。こうしたものを不快と思う国民が多ければ、公費支出が認められなくても当然です。

芸術文化への公費支出が容認されるのは、いい絵画を金持ち1人が見るよりも、多くの人が見て幸福感を味わうという「外部性」があるからです。逆に、多くの人にとって不愉快な作品は「外部不経済」なので規制してもいいくらいです。

なお、愛知県の中間報告は、昭和天皇の肖像が燃える映像作品について、作者の意図が伝わっていないなどと言い訳ばかりで、国民の批判に応えていません。まるで、芸術利権の代弁者のようです。

この報告の正式名称は、『あいちトリエンナーレのあり方検証委員会 中間報告書』といい、以下のリンクからご覧になることができます。

山梨 俊夫 (あいちトリエンナーレのあり方検証委員会座長)
独立行政法人国立美術館 国立国 際美術館長

今回は補助金適正化法違反のおそれすらあります。上の有本さんの記事にある「中垣氏は出品の経緯の、

「最初、表現の不自由展実行委員会から私のところに(作品を)出してくれと。ただし、普通には出さない。隠して出す。そう言われたときに、『それはおかしいんじゃないか。堂々と出したらどうか』と言ったら、『中に慰安婦の像がある。これは今出したら問題だから』と言われた」

というのが、本当であれば、これは完璧に「補助金適正化法違反」です。

補助金を申請するには、補助事業の目的や内容、補助事業に関わる経費に内訳などを記載し、その書類を各省庁の長に決められた時期までに提出します。そして、各省庁の長は申請内容が正しいか、適切であるか、金額の算定に誤りがないか調査をして上で補助金の交付の決定をします。

中垣氏の作品や、慰安婦像、さらに他の作品も、出品することを隠していたとすれば、これは完璧に法律に違反した行為です。


2019年10月3日木曜日

プーチンの国ロシアの「ざんねんな」正体―【私の論評】将来の北方領土交渉を有利に進めるためにも、日本人はもっとロシアの実体を知るべき(゚д゚)!

プーチンの国ロシアの「ざんねんな」正体

外交官の万華鏡河東哲夫


こわもてで鳴らすプーチンだが、実は「愉快な」人かも

<独裁者が君臨するこわもてロシアの素顔は実は「ずっこけ」――この国に振り回されず、うまく付き合う方法は?>

ロシアと言うとすぐ「おそロシア」とか、もろ肌脱いだこわもてのウラジーミル・プーチン大統領といった話になるが、まじめくさった議論はもう飽きた。実はこの国の人たちはかなりずっこけた「ざんねんな」存在。ロシアを知る者には、それがまたたまらない味なのだ。

世界を席巻する人工知能(AI)やロボット技術について、プーチンの腹心である元財務相アレクセイ・クドリンは、「この開発に遅れれば、ロシアは永遠に遅れることになる」と決まり文句のように言う。奇想天外なことを考えるのが好きなロシア人だから、AIやロボットの開発には向いている。だが経営・技術要員の致命的な不足や製造技術、品質管理、サプライチェーンの遅れによって、多くはアイデア倒れに終わってしまう。

2013年には角速度センサーを逆向きに付けたため、ロケットが発射直後に反転して地上に激突した。開発中のロボットが研究所から迷い出て、大通りの真ん中でバッテリー切れになったこともあった。プーチンは「原子力で長期間、空中待機する巡航ミサイル」を造ると豪語していたが(簡単に撃墜されると思うのだが)、今年8月にはそれが開発中に爆発して技術者を5人も殺し、放射能をまき散らした。

プーチンはじめロシア政府のお歴々は口をそろえて、「いつまでも経済・財政を石油に依存していてはいけない。製造業を何とかしないとロシアはやっていけない」と言うのだが、製造業はロシアのアキレス腱であり続ける。数年前、プーチンは友人の実業家が開発した国産乗用車の試乗会に招待された。ハンドルを握る友人の隣に乗り込むプーチンは冗談半分、「おい、君。大丈夫だよね。この車バラバラにならないよね」と聞いたのだった。

プーチンは独裁者にあらず

ロシア人は契約や規則より、まず自分の都合を優先する。きちんと仕事をしてもらいたかったら、いつも電話で友情を確認し、月に1度は飲みに行くくらいでないといけない。

知識層の地金は西欧のリベラリズムだが、人間の常でロシア人も汚いところは、どうしようもなく汚い。例えばモスクワの墓地は利権の塊だ。「いい場所」は、顧客から袖の下を巻き上げる黄金の小づちでもある。今年6月には、警察幹部が絡む墓地利権の調査をしていた新聞記者が警官からポケットに麻薬を突っ込まれ、麻薬密売未遂の容疑で逮捕される事件があった。非難の声が巻き起こり、事件を仕組んだ警察幹部2人が懲戒免職になっている。

12年前のある日、ビクトル・ズプコフ首相は閣議で部下を叱り飛ばした。「サハリンの地震復興予算は既に送金したはずなのに、現地からはまだ届いていないと言ってくる。調査して是正しろ」。ところが、2カ月たっても問題は解決されなかった。どうも予算は送金の途中で、何者かによって「運用に回されて」しまうらしい。

この国では悪い意味での「個人主義」がはびこっていて、国や国民、会社や社員全体のことまで考える幹部は数えるほどもいない。多くの者にとって公共物は、自分の生活を良くするために悪用・流用するものだ。

そんなわけだから、14年3月、介入開始からわずか2週間ほどでクリミア併合の手続きが完了したとき、プーチンは冗談半分で部下に言った。「本当かい、君たち。これ本当に、われわれがやったのかね?」

プーチンはこのようなロシアにまたがる騎手のような存在だ。公安機関という強力な手綱はあるが、馬が暴れだせば簡単に放り出される。「独裁者」とは違うのだ。ドナルド・トランプ米大統領と同じく、(まがいものの)ニンジンで馬をなだめているポピュリストの指導者なのだ。

そして18年10月、年金支給年齢を5年も引き上げる法案に署名したことで、プーチンは国民の信頼を裏切った。男性の平均寿命が67歳のロシアで、年金支給を65歳から(女性は60歳から)にするというのだから無理もない。

それから1年がたち、プーチンの顔色は冴えない。老いの疲れも見える。ロシアの国威を回復しようと、家庭も犠牲にして20年間頑張ってきたのに、できたことはボリス・エリツィン時代の大混乱を収拾し、ソ連時代のようなけだるい安定を取り戻しただけ。プーチンが政権を握った00年当時に比べると、モスクワは見違えるほど美しく清潔になり、スマートフォンを活用した利便性は東京を上回るほどだ。だが、ロシアに上向きの勢いはない。24年にプーチン時代は終わるので、彼の周辺は利権と地位の確保を狙ってうごめき始めている。

2つの「ソ連」を生きる人々

プーチンはロシアを復活させるに当たって、西側の影響を受けたいわゆる「リベラル」分子を政権から遠ざけた。そのため彼の時代には、エリツィン時代に冷や飯を食わされたソ連的なエリートが復活した。彼らは昔の共産党さながらの万年与党「統一ロシア」に糾合され、その硬直した官僚主義と腐敗は国民の反発を買っている。

政権の柱である公安機関と軍も利権あさりが目に余る。今年4月には、連邦保安局(FSB)の銀行担当の複数の幹部が拘束された。銀行から賄賂を受け取って、中央銀行による免許停止措置を免れさせていたためだ。

7月にモスクワで起きた民主化要求デモをきっかけに、プーチンは公安機関への依存を強めている。約1カ月半の間に全国で3000人が一時拘束され、首謀者の自宅には深夜に公安が踏み込んで逮捕する。まるでスターリン時代のような取り締まりだ。


ロシアは高齢者が少なく、35歳以下の若い世代が人口の約半数を占める。彼らの多くは自由な西側文化に染まり、強い権利意識と上層部の汚職に対する厳しい意見を持ち、SNSの呼び掛けで集会・デモを繰り広げる。何ともちぐはぐだが、現在のロシアでは上層部と政府依存体質の大衆が「ネオ・ソ連時代」を、知識人層は「ネオ・ペレストロイカ時代」を生きている。

ロシアの歴史は繰り返す。支配と富の分配構造が固まって70年もたつと、ひずみと不満が増大して暴力的な革命が起きる。1917年のロシア革命、そして1991年のソ連崩壊がそれだ。ソ連崩壊の結果生まれた現在の構造は、今また破断する定めなのかもしれない。ただロシアの場合、革命は進歩をもたらさない。特権階級が交代するだけだ。

このような国とは、「適当」に付き合うべきだ。極東ロシアは政治・経済両面で日本にとって大きな意味を持たない。極東ロシア軍は人員、装備とも手薄で、日本の脅威ではない。北方領土は当面返さないだろうから、この問題でこちらから譲歩することは避ける。諦めて平和条約を結んでも、見返りに得られるものはない。

ロシアに反日感情はない。むしろ自らの対極とも言える日本文化、日本人に憧れている面もある。きちんとしていないロシア人に振り回されないように気を付けさえすれば、ロシアは「愉快な」相手なのだ。

<ニューズウィーク日本版2019年10月01日号:特集「2020サバイバル日本戦略」より>

【私の論評】将来の北方領土交渉を有利に進めるためにも日本人はもっとロシアの実体を知るべき(゚д゚)!

日本では、ロシアを未だにに超大国と見るむきも少なくないですが、やはり等身大にみるべきでしょう。このブログでは過去に、ロシアの実体を何度か掲載してきたことがあります。

ロシアの経済力は、現状では韓国と同程度です。韓国と同程度とは、どのくらいなのかということになりますが、詳しくはGDPを調べていただくもとして、大体東京都と同じくらいです。

東京都のGDPは日本全体の1/3くらいです。ロシアの経済の現状はこの程度です。この程度の国ができることは、経済的にも軍事的にも限られています。

さらに、人口は1億4千万人程度と、あの広大な領土に比較すると、人口では日本よりもわずかに2千万人しか多くないのです。人口密度がいかに低いのか、よく理解できると思います。

中国と国境を接する極東では、さらに人口密度が低いので、中露国境をまたいで、著しい人口密度の差があります。

この人口密度の極端な違いから、多くの中国人が国境を越境して、物販はもとより様々なビジネスを行い、まるで国境がなきがごとくの状態になっています。これを国境溶解と呼ぶ人もいるくらいです。

ただし、最近では変化も見られます。最近では、ロシア人も中国に出稼ぎにでかけるといいます。情勢は驚くほどに変化しているのです。ただ、国境溶解がより鮮明になっていることは確かです。

このように、現在のロシアは、中国ともまともに対峙できる状況ではありません。かつての中ソ国境紛争など信じられないくらいです。

とはいいながら、ロシアはソ連の核兵器と、軍事技術の直接の継承者であり、あなどることはできません。

特にICBM、SLBMなど、これは軍事技術的にはすでに米露では、数十年前から、成熟した技術であり、両国とも40年も前の核兵器が今でも現役です。

たとえば、米国防総省によると初期のフロッピーディスク規格となる8インチフロッピーディスクが未だに現役だといいます。大陸間弾道ミサイル、戦略爆撃機、空中給油・支援機など一連の核兵器を運用、調整する指揮統制系統だとしており、現場では今から40年前に発売された1976年「IBMシリーズ/1」や当時普及し始めていた8インチフロッピーディスクが運用に用いられているといいます(2017年現在)。

弾道ミサイル発射管制センターで撮影された写真。8インチフロッピーディスクが使用されている

ロシアでも同じ状況です。ソ連時代に開発された、核兵器が未だに現役なのです。それを考えると、確かに軍事的には未だにロシアは侮れない相手であるのは確かです。

とは、いいながら、ICBMやSLBMなどは、実際にはなかなか使用できない兵器であるのも確かです。しかし、ソ連時代の軍事技術を継承したロシアはいまでも、軍事的には侮れないことは確かですが、経済的には見る影もありません。

考えてみてください、仮に東京都が日本から独立して、軍事国家に豹変したとして、世界に向かってどの程度のことができるでしょうか。米国あたりが本気になれば、あっという間に潰されます。さらに、将来的にも経済が伸びる要素はほとんどありません。今のロシアはまさにそのような状況なのです。

経済的にみても、プーチンの国ロシアは、まさに「ざんねんな」国なのです。この、ずっこけた「ざんねんな」ロシアと付き合うには、たしかにもっと鷹揚に構えたほうが良いのかもしれません。

日本では目を疑う熊の散歩もロシアでは日常風景の一つ

北方領土交渉についても、このブログにも過去に掲載しているように、現在帰ってこないからといって、慌てる必要は全くないと思います。

中国が経済的に弱体化してくれば、今は表面化していない、ロシアの中国に対する不満が爆発します。そうなると、過去の中ソ対立のように、中露対決が再現することになります。

経済的に弱体化した中露が激しく対立すれば、ますますロシアの経済力は落ち込みます。そのときこそ、日本は北方領土交渉を強力に推し進めるべきなのです。今は鷹揚にかまえるべきです。とはいいながら、北方領土に関しては、ロシアに一切譲歩すべきではありません。

日本としては対ロシアでは、北方領土が最重要ですが、その他では、経済的にも技術的にもロシアに頼ることはないです。北方領土以外はもっと鷹揚に構えてつきあって行くべきと思います。

ただし、ロシアというと、日本人は強面の「おそロシア」を思い浮かべたり、ロシアマフイアの凄惨さを思い浮かべたり、第二次世界大戦末期や、その後の日本に対する卑劣極まる振る舞いが忘れられない面もあります。確かに、ロシアにはそういう一面はあります。かといつて、それが全部というわけでもありません。

北方領土交渉を将来日本に有利にすすめるためにも、日本人はもっとロシアの実体を知るべきと思います。少なくとも、かつてのソ連時代の超大国のイメージは早々に捨て去るべきです。

北方領土は、一昔前なら戦争して取り返すしかありませんでした。しかし、現在では戦争に変わる方法もありますが、一昔前の戦争と同じくらいの、気構えと機知がないと到底叶うものではありません。それを実行するためにも、現在のロシアを熟知する必要があるのです。

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2019年10月2日水曜日

中国、建国以来最大の危機…香港「独立」問題が浮上、年末に米中貿易戦争が最悪の状態に―【私の論評】ソ連と同じ冷戦敗北の軌道に乗った中国(゚д゚)!

中国、建国以来最大の危機…香港「独立」問題が浮上、年末に米中貿易戦争が最悪の状態に

文=渡邉哲也/経済評論家



中国が10月1日に建国70周年を迎えた。北京では国慶節にあわせて過去最大規模の軍事パレードが行われ、国力および自身の権力を内外に示したい習近平国家主席の思惑が透けて見える。しかし今、中国は建国以来最大の危機を迎えているといってもいい。

ひとつは、香港で起きている抗議デモだ。香港のデモ隊は10月1日の国慶節を「国難の日」として大規模な抗議活動を行い、デモ参加者が警察に実弾で撃たれる事態となった。かねて「第2の天安門事件になるのでは」と危惧されている香港デモは収束の気配が見えず、習主席は9月30日に「いかなる勢力も祖国の完全統一を阻むことはできない」「一国二制度を堅持するべきだ」「香港が大陸と共に発展、進歩することを信じている」などと述べている。

一方、国際社会は中国に圧力をかけている。国連総会では、アメリカのドナルド・トランプ大統領が中国の人権問題や通商慣行を批判し、マイク・ペンス副大統領も人権問題や宗教弾圧について踏み込んだ発言を行った。これは、香港デモなどの問題を視野に入れたものと考えられる。また、アメリカ議会は香港の「特別な地位」に関する「香港人権・民主主義法案」を上下院の外交委員会で可決し、中国による香港の自由や人権に対する侵害に強い警告を与えている。

さらにいえば、香港デモの様子は日本ではあまり報じられていないが、同じく中国の脅威にさらされている台湾や元宗主国であるイギリス、アメリカの報道機関が生中継で伝えるなど積極的に報じており、中国のデモ弾圧を伝えている。

デモのきっかけとなった「逃亡犯条例」改正案については、香港のトップである林鄭月娥・行政長官が撤回を表明したが、そもそもデモ隊は同案の撤回のほかに普通選挙の実施なども含めた「5大要求」を打ち出しており、残りの4つについては解決されていない。というより、それらを認めれば将来の独立運動につながりかねないため、中国政府としては到底のめる要求ではないのが現実だ。

今後、香港の独立問題で最大のネックとなるのが水問題だろう。香港は多くの水を中国本土から引き込んでおり、これを止められれば香港の経済活動は停止してしまい、人々の生活も成立しない。これが、香港と台湾の最大の違いであるともいえるわけだ。

米中貿易戦争が迎える最悪の展開

もうひとつは、米中貿易戦争のゆくえだ。9月に約2カ月ぶりに通商協議が再開され、次回は10月第2週にも閣僚級協議が開かれる予定だという。アメリカはすでに発動している中国からの輸入品2500億ドル(約27兆円)分に対する制裁関税引き上げ(25%から30%)を当初の10月1日から15日に延期しており、次回の通商協議のゆくえが注目されるところだ。

トランプ大統領は9月に対中制裁関税第4弾を発動しているが、一部製品の関税は12月に延期している。9月1日から10%の追加関税が科されたのは、スマートウォッチ、スマートフォン部品、半導体メモリなど対中依存度が低い3243品目だ。一方、12月15日に延期したのは、ノートパソコン、スマホ、ゲーム機など対中依存度が高い555品目で、これは自国のクリスマス商戦への影響を考慮して先送りされた。しかし、これはタイムリミットが延びたにすぎず、今後の通商協議で進展がなければ延期分の関税が発動し、米中貿易戦争は年末に最悪の状態を迎えることになる。

また、8月に人民元が1ドル=7元台と11年ぶりの安値を記録したことを受けて、アメリカは中国を「為替操作国」に認定した。アメリカが貿易相手国を為替操作国に認定するのは25年ぶりだ。トランプ大統領は選挙期間中から中国の為替操作国認定をうたっており、いわば選挙公約を実現しただけにすぎないが、18年7月から米中間で制裁関税のかけ合いが続くなか、米中経済戦争は貿易摩擦から通貨戦争という新たなフェイズに突入したといえる。

01年の世界貿易機関(WTO)加盟以来、中国経済は急激な発展を遂げてきたが、その綻びがあらゆる面で健在化してきたことは周知の通りだ。これまで、欧米をはじめとする資本主義社会は「中国も、やがては共産主義から資本主義に移行するだろう」という前提で付き合ってきた。しかし、グローバリズムの恩恵を受けて発展してきたはずの中国は、習主席が「新時代の中国の特色ある社会主義思想」を打ち出し、建国100年となる49年には「社会主義現代化強国」を目指すと宣言するなど、いわば“先祖返り”をしている。

そして、中国は産業政策「中国製造2025」を成長の旗印にすると同時に、南シナ海に建設した人工島の軍事拠点化を加速させ、今夏には初めて南シナ海で対艦弾道ミサイルの発射実験を断行するなど、経済的にも軍事的にも覇権国家の地位をアメリカから奪おうとしている。一方、アメリカは政府および議会が一丸となって中国潰しに注力しており、その過程で勃発したのが米中貿易戦争だ。

米中貿易戦争については短期的視点と中長期的視点の両面で見る必要があり、短期的な融和があったとしても、中長期的には中国の共産党独裁体制が崩壊しない限り、完全な融和はあり得ない。そして、共産党独裁体制の崩壊=中国の繁栄の崩壊であるため、中国共産党が認めるわけがないという構図になっている。今後、香港問題の悪化や偶発的な軍事的衝突がない限り、アメリカとしては自国の経済への影響を見ながら、ゆるやかに市場の分断を図っていくのだろう。

【私の論評】ソ連と同じ冷戦敗北の軌道に乗った中国(゚д゚)!


ソ連崩壊を伝えるテレビ報道

今後の米中冷戦の行方については、やはりソ連崩壊が参考になります。ソ連の崩壊はどうして起きたのか、以下に著名な学者等の主張を要約して掲載します。

1.原油価格と非効率な経済


「ソ連崩壊の日はよく知られている。 それは『ベロヴェーシ合意』(ソ連の消滅と独立国家共同体(CIS)の設立を宣言)の日でもなく、1991年の8月クーデターの日でもない。それは1985年9月13日だ。サウジアラビアのアハマド・ザキ・ヤマニ石油鉱物資源相が、サウジアラビアが石油減産に関する協定を終了したと宣言し、石油市場におけるシェアを拡大し始めた、その日だった」。こう書いているのは故エゴール・ガイダル。ソ連崩壊後の1990年代の急進的な経済改革を主導した人物です。

ハマド・ザキ・ヤマニ石油鉱物資源相(当時)

ピョートル・アーヴェン氏も、こうした説を支持しています。彼は、ロシアの新興財閥(オリガルヒ)の「アルファ・グループ」の最高幹部で、ガイダル内閣でロシア連邦政府の対外経済関係相を務めました。「1986年に原油価格が下落したことが大きな転機となり、(ソ連にとって)収益を生み出すためのあらゆる可能性が崩れた」

アーヴェン氏の指摘によれば、原油収入は、穀物の購入に必要な資金をもたらしました(ソ連における穀物の17%が輸入されていました)。

原油収入は、ソ連が西側から消費財を買い、エリート層に使わせるのにも当てられました。つまりそれは、実質的には「エリートへの賄賂」でもあったのです。

アーヴェン氏によると、原油価格の下落は、経済の減速と軌を一にしていました。それは1960年代に始まりました。この長期的な傾向は、原油収入の減少でさらに悪化し、ソ連の経済モデルの崩壊をもたらしたというのです。

その一方で、何人かの専門家は、ソ連経済の非効率性、最も基本的な消費財の、悪名高き品薄にもかかわらず、状況はそれほど悪くなかった考えています。ソ連の、そして後にアメリカの社会学者、故ウラジーミル・シュラペントフはこう語りました。

「…なるほど、(ソ連時代)の最後の数十年には、経済成長率は確実に低下し、商品の品質は悪化し、技術の進歩は鈍化した…。だが、これらすべての欠点は、かなり慢性的な性質のもので、致命的に重大ではなかった。病に侵された人間や社会は、ときに長い間生き続けることがある…」

確かに、ソ連の公式統計によると、国内総生産(GDP)は、1990年に、つまり崩壊の1年前に初めて減少しています。

2.民族間の緊張

1980年代後半、ペレストロイカの時代には、各ソ連構成共和国では、民族主義がぶつかり合って生じる対立、紛争がますます激しくなっていきました。民族主義による暴力の最初のケースは、1986年末にカザフスタンの首都アルマトイで起きました。カザフ人の若者は、共和国の首長としてロシア人が任命されたことに失望しました。やがて、不穏な状況を鎮めるために軍隊が派遣されました。

それから、アゼルバイジャンの都市スムガイトでポグロムが発生し、グルジアの首都トビリシでも暴力的事件があり、またアゼルバイジャンの首都バクーその他でも暴力沙汰、そしてバクーその他でも、同様の事件が起きました。

最悪の流血をともなった紛争は、アゼルバイジャンとアルメニアの間でカラバフで生じました。これはしばしば、「ソ連崩壊の引き金となった主な政治的誘因の一つ」と呼ばれています。1980年代後半までに、民族紛争は新たな、そして致命的な転機を迎え、何百、何千もの命を奪ったのです。

しかし、1990年の時点でも、ソビエト共和国の大多数はソ連を離脱することを望んでいませんでした。ロシアの歴史家アレクサンドル・シュビンによれば、状況は「比較的静穏に見えた」。バルト三国とグルジア(ジョージア)だけがはっきり分離主義的な道に踏み出しただけだったといいます。

「民族の分離主義の運動がソ連の国家の構造にもたらしたあらゆる危険にもかかわらず、それだけではソ連を崩壊させるには足りなかった」。この歴史家はこう主張しています

3.ゴルバチョフの改革

ここで間違えないでほしいのは、脆弱な経済状況と高まりつつあったナショナリズムは確かに重要ですが、本当に「赤い帝国」の崩壊を引き起こした要因は、ゴルバチョフのペレストロイカとともに1980年代半ばに始まった、この国の指導部の行動だと考えられます。

ゴルバチョフが故意に社会主義とソ連を破壊しようとしたという、ロシアで広まっている陰謀論さえあります。ところが、これは取るに足りない憶測です。彼が自分の支配を本当に弱体化させたがっていた兆候などまったくありません。

ゴルバチョフ氏

それどころかペレストロイカは、それまでに悪化の兆しが見られたソ連の体制を改革しようとしたものでした。彼の最初の改革、いわゆる経済の「加速」は、「現代化された社会主義」の可能性を解き放つはずでした。

シュラペントフはこれらの改革を「新スターリン主義」と呼んでいます。改革が、ゴルバチョフの冷酷な前任者の政策と同様のパラダイムで行われたからだというのです。

ゴルバチョフの最善を目指した意図にもかかわらず、経済は「加速」に失敗し、それとは反対に、彼の非効率的な政策は、国家を弱体化させる下方スパイラルにつながったのです。

ゴルバチョフ以前のソ連システムはうまくいっていなかったのですが、彼の改革のせいで、それは機能停止に陥ったのです。シュラペントフによれば、「経済を現代化する方法を必死に探し求めて…ゴルバチョフは、民主化の過激なプロセスを始動させたが、これがソビエト体制と帝国の死を必然的なものにした」

それというのも、舞台に新たな人物が登場し、そのなかにはボリス・エリツィンもいたからです。彼は、独立したロシアを創ろうとしていました。これはつまり、「ソ連の終焉が不可避であること」を意味したのです。

私は、この3つないし他の要素が絡み合って、ソ連が崩壊したと思います。
さて、ここで話を中国に戻します。

ソ連共産党が91年に崩壊したとき、もっとも衝撃を受けたのが中国共産党でした。彼らはただちにソ連崩壊の理由を調べ、原因の多くをゴルバチョフ大統領の責任とみました。

そのため、中国にはゴルバチョフ氏のような人物が出てこない可能性のほうが高いです。しかし、党指導部はそれだけでは不安が払拭できず、3つの重要な教訓を導き出しました。

中国はまず、ソ連が失敗した経済の弱点を洗い出し、経済力の強化を目標とした。中国共産党は過去の経済成長策によって、一人当たりの名目国内総生産(GDP)を91年の333ドルから2017年には7329ドルに急上昇させ「経済の奇跡」を成し遂げました。

他方で中国は、国有企業に手をつけず、債務水準が重圧となり、急速な高齢化が進んで先行きの不安が大きくなってしまいました。これにトランプ政権との貿易戦争が重なって、成長の鈍化は避けられな恒久的しかも、米国との軍拡競争に耐えるだけの持続可能な成長モデルに欠いています。

第2に、ソ連は高コストの紛争に巻き込まれ、軍事費の重圧に苦しみました。中国もまた、先軍主義の常として軍事費の伸びが成長率を上回っています。

25年に米国の国防費を抜き、30年代にはGDPで米国を抜くとの予測まであります。ところが、軍備は増強されても、経済の体力が続きません。新冷戦に突入すると、ソ連と同じ壊滅的な経済破綻に陥る可能性が否定できないのです。

第3に、ソ連は外国政権に資金と資源を過度に投入して経済運営に失敗しています。中国も弱小国を取り込むために、多額の資金をばらまいています。ソ連が東欧諸国の債務を抱え込んだように、習近平政権は巨大経済圏構想「一帯一路」拡大のために不良債権をため込んでいます。

確かに、スリランカのハンバントタ港のように、戦略的な要衝を借金のカタとして分捕っているのですが、同時に焦げ付き債務も背負うことになります。これが増えれば、不良債権に苦しんだソ連と同じ道に踏み込みかねないです。

国際投資の常識として、自国よりはるかに成長している国に投資した場合は、利益を得られますが、成長率が自国と同等もしくは、それ以下の国に投資した場合、利益を得られることはありません。

中国の成長は落ちたといえ、公式には6%程度の成長は一応していることになっています。現在世界を見回してみると、10%以上の成長を維持している国などほとんどありません。中国の「一帯一路」はかつてのソ連のように不良債権の山を生み出すことになりそうです。

以上を考えると、米中冷戦がはじまったばかりですが、中国はすでに敗北の軌道に乗っていると考えるべきです。

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2019年10月1日火曜日

消費増税なぜ止められなかった? 財務相の顔立てた政治的決定も…社会保障の制度設計をないがしろに―【私の論評】安倍総理は、いずれ「5%減税」を公約として、衆院解散総選挙の道を選ぶことになる(゚д゚)!

消費増税なぜ止められなかった? 財務相の顔立てた政治的決定も…社会保障の制度設計をないがしろに

高橋洋一 日本の解き方

安倍総理

10月1日から消費税率が10%に引き上げられた。「3党合意」で増税が決まった経緯や、その後2回増税を延期した安倍晋三首相が今回は延期しなかった理由などをあらためて振り返っておこう。

 3党合意とは、2012年6月、民主党、自民党、公明党の3党間における「社会保障と税の一体改革」に関する合意を指す。消費増税、子ども・子育て支援、最低保障年金などが盛り込まれるなかで、消費増税だけが先行、子ども・子育て支援はその後制度化されたが、最低保障年金などは実現していない。

 社会保障と税の一体改革といえば、世界的な潮流は税と社会保険料を一体として徴収する「歳入庁」の設置が主要な鍵になるが、民主党は歳入庁を公約して政権交代しながら、その後取り下げた。一方、消費税を社会保障目的税化するという世界にも例のない無謀な社会保障改革だったことは、筆者は繰り返し指摘してきた。

 世界の社会保障運営は保険方式であり、その財源は社会保険料である。ただし、低所得者の保険料は高所得者の所得税から充てられている。

 社会保障運営を保険方式とするのは、社会保障を「施しもの」と考えると支出基準が曖昧になり、結果としてひどい財政運営になってしまうためだ。保険原理であれば、機械計算で給付額が決定され、給付が可能になる。残念ながら、保険方式以外の社会保障運営で成功した例は寡聞にして知らない。

 こうした社会保障の運営を保険方式にする以上、支出段階では、所得再分配機能はあまりない。年金は死んだ人から長生きの人への再配分、医療は健康な人から病気の人への再配分でしかないからだ。かろうじて所得再配分になっているのが、社会保険料を低所得者人から取らずに、高所得者の所得税で充てている点だ。この意味からも、消費税が社会保障財源にならないのが世界の常識だ。

 3党合意は社会保障運営の大前提で間違っている。これは3党合意を主導した財務省のロジックの破綻でもある。財務省は、単に社会保障を人質とすれば消費税を上げやすいと考え、社会保障の長期的な制度設計をないがしろにしたのだ。

 しかも、11年の東日本大震災後に、連帯といいながら、震災復興増税、8%への消費増税、さらに10%への消費増税という恐ろしい「ホップ、ステップ、ジャンプ増税」を、政権運営が不慣れな民主党に押しつけた。自民党もそれに乗り、まんまと成功したわけだ。

 安倍首相はそうした経緯を知っていたはずで、2回増税をスキップしたが、盟友の麻生太郎財務相の顔にこれ以上泥を塗ることはできないという政治的な理由で今回増税を決定したのではないか。

 経済政策としてまずいのは承知の上なので、臨時国会などで適切な経済対策を打ち、消費増税の悪影響を極力回避しようとするだろう。

 だが、米中貿易戦争や英国の欧州連合離脱問題、ホルムズ海峡問題、日韓問題の影響は大きく、日本経済がどうなるのか、不安は消えない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍総理は、いずれ「5%減税」を公約として、衆院解散総選挙の道を選ぶことになる(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事では、過去の増税を阻止できなかった状況について様々な分析をしています。この分析は総合的でありながら、かなり緻密で簡潔にまとまっています。

これに対して何かを付け足すことはできませんし、付け足したにしても冗長になるだけなので、それはやめて、私としては今後のことについて掲載しようと思います。

今後のことを考えるには、やはり衆院選の行方を考えるとわかりやすくなると思います。
今年に入って、まことしやかにささやかれていた衆参同時選挙。ふたを開けてみると、7月に行われた「第25回参議院議員通常選挙(以下、参院選)」は、参院選だけで行われ、衆議院解散総選挙(以下、衆院選)は行われませんでした。では、2017年10月に前回選挙が行われた衆院選は、いつ行われるのでしょうか?

衆議院議員の任期は4年間ですが、歴史を紐解いても、任期を満了したのは1度だけ。ほかは、すべて任期の途中での解散総選挙となっています。衆議院の解散権が時の内閣総理大臣の専権事項となっている以上、安倍首相の解散「カード」の切り方が今後の政局の焦点となってきています。

安倍首相は7月の参院選が終わった直後、「迷わなかったといったら嘘になる」と衆参同時選挙の可能性も考えたことを否定しませんでした。これは、自民党が65議席を獲得して大勝した2013年参院選の当選組が改選を迎え、当初大幅な議席減が予想されたためですが、情勢調査などにより危機は小さいとの判断が党内でなされ同時選挙の可能性がなくったとみられています。参院選の結果も自民党は56議席を獲得したように、大幅な減少とはなりませんでした。

今後、それでも2021年9月の自民党総裁任期満了までに、衆議院の解散総選挙が行われると見るべきです。日本国憲法制定後、これまで衆議院の任期満了まで解散がなされなかったのは、1976年の三木武夫内閣の際の1度だけしかありません。

三木武夫氏

解散はいずれある、と考えるのが現実的です。そして、そのタイミングですが、大きく分けて3つあでしょう。1つ目が年内。2つ目が来年。3つ目が再来年です。そして、3ついずれも首相にとってはネガティブな要素がつきまといます。

年内をみてみると、10月1日に消費税が10パーセントに引き上げられました。この増税では、与党の中でも公明党が主張した軽減税率も導入されますが、導入前から制度の複雑さに先行きが危惧されている制度だけに、国民からの不満が政府に向かう可能性もあるとみられています。また、同22日には、天皇陛下の即位の「即位礼正殿の儀」が行われます。

来年2020年になると、増税の影響で、景気が落ち込む可能性があります。同年の7月から9月にかけては、東京五輪・パラリンピックも開催されます。同年7月30日には、東京都知事が任期満了を迎えるため、それまでに都知事選も行われることになります。慌ただしいスケジュールの上に、景気批判が高まっているかもしれません。

再来年2021年になると、自民党の党総裁選が9月、衆議院議員の任期満了が10月、と大きな政治日程が続くことになり、追い込まれた形での解散を首相が選択する可能性も高まります。

こういった中で、自民党関係者や経済界の方々の間では「消費税がやはりカギなのではないか。安倍首相も簡単に、負ける選挙はしないと思われる」という声が大きいようです。

消費増税でも、国民の消費が下がらず、成果が上がるということは14年の増税の時でも明らかなように、あり得ません。バブル崩壊後、現在まで続いているデフレーションですが、さらにデフレスパイラルの底に沈む可能性が高いです。

それは、以下のグラフをみても明らかです。消費税を増税すると消費税税収自体は「安定」的ですが、税収全体は消費税の影響でそれまでの税収の伸びから大きくダウンすることが観測できます。影響は複数年に及びます。さらにその後も経済全体のコントロールをきちんとしないと税収は伸びず、消費税はまったく安定に寄与しません。

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来年の秋頃には、消費税10パーセントに上げた影響で、景気がどうなっているかはっきりします。悪い数字が出た直後に、首相は『消費増税は成功とは言えなかった。責任を持って、消費税を(5パーセントあたりまで)下げます』といって、それを理由とした解散をすすべきです。

これは私の憶測ですが、これについては案外麻生副総理と安倍総理は合意しているのではないかと思います。麻生氏は義理堅いですから、安倍首相にあらがってまで、財務省の肩を持つことはないでしょう。

財務省の増税シフトはかなり強く、彼らにとっては、10%増税は中途経過に過ぎなく、いずれ15%、20%それ以上を増税をする腹です。

おそらく、一度10%増税に踏み切らないと、財務省の抵抗は凄まじいものなると予想されたのだと思います。日本の官庁としては、最低といわれるような文部省ですら、加計学園問題では、前川元事務次官をはじめかなりの抵抗を示したわけですから、財務省の抵抗はそれを遥かに凌駕した凄まじいものになるでしょう。

安倍総理としては、日本の将来を考えた場合、10%を超える増税は望ましくないと考えているようです。実際、安倍晋三首相は7月の参院選に先立つ記者会見で、追加増税について「今後10年間くらいは必要はない」と述べています。

であれば、10%以上の増税をさせないためにも、国民の信を問うために、総選挙を実施する必要があります。時期としては、東京五輪・パラリンピック後、来年の晩秋から年末にかけての頃が効果的です。

そうして、この時に5%への減税を公約にすれば良いのです。消費税を下げた場合、長期的にはインフレーションになっていくことが見込まれますが、現在の20年以上続くデフレ状況と違って、モノは売れるようになることが想定されます。そうして、日本はデフレから完璧に脱することになります。そうなると、日銀の物価目標2%も達成しやすくなります。

さらには、安倍総理の念願である、憲法改正もやりやすくなるはすです。何もしなければ、そもそも、景気が低迷し、内閣支持率が低下し、選挙をしても改憲勢力が2/3を占めることも叶わず、憲法改正は遠のくことになるでしょう。

そうして、物価目標2%超えて、4%にでもなった場合には、今度は財務省が大好きな増税をすれば良いのです。これに抵抗する勢力は今の日本では皆無でしょう。

増税して、減税して、また増税するという一連のサイクルを実施すれば、財務省の何がなんでも、一方的に増税する、何が何でも緊縮するという世界の財政政策からみれば、かけ離れた馬鹿げた政策は打ち砕かれることになります。

それこそ、必要に応じて機動的に増税、減税を実施するというまともな財政政策が日本でも当たり前にできるようになります。

減税導入当初は、市場が活気を帯びることが予想され、そうなると、2021年に予定されている自民党総裁選の行方も違った形でみえてくるのでは、と考えられます。さらに、その後、景気が加熱したときに、タイミングを逃さず増税すれば、大多数の国民の中にも、日本でも機動的財政政策が当たり前になったとの確信を持つことができるのではないでしょうか。

いずれにせよ最終的な解散の判断は、安倍首相の意向ひとつです。与党も、野党も、衆議院の解散時期に関しては首相の動向に油断できない状態が続きそうです。

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