2020年12月8日火曜日

吉村府知事vsヒゲの隊長 “自衛隊便利屋”に反論―【私の論評】「自衛隊は便利屋ではない」発言は、平時というぬるま湯に長年浸かってきた日本人への警告でもある(゚д゚)!

吉村府知事vsヒゲの隊長 “自衛隊便利屋”に反論

府庁で取材に応じる大阪府の吉村洋文知事

大阪府の吉村洋文知事(45)が8日、府庁で取材に応じた。陸上自衛隊出身で、「ヒゲの隊長」で知られる自民党の佐藤正久参院議員(60)が自身のツイッターで「自衛隊は便利屋ではない」との投稿に対し、吉村知事は自身のツイッターで反論したことについて説明した。

新型コロナウイルス感染者の治療に当たる医療従事者を確保するため、吉村知事が7日、自衛隊看護師の派遣を「岸信夫防衛相に要請した」と明かしたことに、佐藤氏は同日午後、「自衛隊は便利屋ではない。それを理解した上で緊急対応の必要性から要請内容を具体化して要請するのが基本。何人でもいいからではなく、この病院に看護師約何人とか、施設消毒等具体的なものが必要。自衛隊OBが府庁にもいるはず」と投稿した。

 この発言に対し、吉村知事は「便利屋と思ったことは一切ありません」と反論。要請までの経緯として「かなり防衛省と水面下で協議調整した上で要請致しました。自衛隊担当の職員も府庁内にいます。便利屋と思ったことは一切ありません。今回の派遣数や内容も確定してます。僕がメディアにむかって言ってないだけです。本日、別件で呉地方総監海将ともお会いしました。自衛隊の皆様に感謝してます」とツイートした。

 この日、吉村知事は「僕が自衛隊を便利屋のように思っているツイートだったので、それは違いますよと申し上げただけです」と反論の理由を説明した。

 「佐藤議員ではなく、僕らは自衛隊にお願いしている側なので、どういう思いで要請しているのか、誤解があってはいけない。きっちり、考え方をお伝えしたほうがいいと思い、ツイートしました」と述べた。

 医療体制が逼迫(ひっぱく)する中、吉村知事への風当たりも強まっている。「いま、いろんな批判があるが、僕は当然、受けます。ネット上の1つ1つの意見に個別の反応することはないが、(便利屋との)意見についてはきっちり伝えたほうがいいと思った」と強調した。

【私の論評】「自衛隊は便利屋ではない」発言は、平時というぬるま湯に長年浸かってきた日本人への警告でもある(゚д゚)!

吉村知事と、佐藤正久参院議員のツイートがどのようなものであったか以下に掲載します。


確かに、佐藤氏は具体的な要請にすべきと語っていて、吉村知事は佐藤氏が意図した具体的な要請をしたようではあります。そうして、その後のツイッターの内容を見ていると、佐藤氏はそれを理解したようではあります。ただし、「便利屋」という言葉には、それだけではない意味を含ませていると、私には思えてなりません。

佐藤正久参院議員

コロナ以前より、近年、日本列島では台風や地震や大雪などさまざまな災害が起こっています。台風19号は各地で記録的な豪雨を降らせ、多くの人が不自由な避難生活を余儀なくされました。  

災害規模が大きくなればなるほど、「自治体」「警察」「消防」「自衛隊」「ボランティア」等、さまざまな人たちが被災地に召集されます。  

東日本大震災の大規模な自衛隊の災害派遣で、自衛隊への評価はガラリと変わりました。自衛隊は国を守る「防衛」を担う組織です。しかし、平和な時代が長かった日本人は「国を守る」ことの重要さを認識している人は少なく、自衛隊は災害派遣や人命救助をやっていればいいという人さえいます。 

確かに、東日本大震災のような原発事故も含む広大な範囲の災害に対しては自衛隊を投入するしかなかったと思います。しかし、自治体だけでも対処できそうな「口蹄疫」や「鳥インフルエンザ」など家畜の疫病対策にも“便利”に自衛隊が使われています。

最近でも、鳥インフルエンザの感染が確認された香川県三豊市の養鶏場で今月3日、作業にあたっていた自衛隊員がフォークリフトから落下し、足の骨が折れるけがをしました。

香川県三豊市養鶏場で今月3日、作業にあたっていた自衛隊員ら

都道府県には警察や消防があり、地元の業者もたくさんいます。自衛隊を投入する以外にほかに方法がない事例でなくとも、安く迅速に動いてくれる自衛隊を“便利屋”のように使っているのではないか危惧してしまいました。

土砂災害の現場では倒壊した家屋や川から流れ込んだ土砂など「災害ゴミ」が発生します。通常では考えられない量のゴミと土砂ですから、各自治体では特別なごみの収集を行っているはずです。 

自衛隊の本来の任務は「機能回復までの応急的な復旧」で、活動範囲は「幹線道路や公共施設のみ」と定められています。でも、お年寄りが家から運び出せない粗大ごみを、規定通りに出せと言われて途方に暮れています。優しい自衛官がそれを見過ごせるわけがありません。見るに見かねたある自衛官は、そんな困っているお年寄りに代わって、災害ゴミを分別し集積場まで運んでいるそうです。

自治体によっては、分別してないと絶対に受け取らないところもあります。一方、明らかに災害ゴミではない廃棄物を「これ幸い」と捨てに来る輩もいるようです。やっと大量のゴミを分別して片付けたら、見知らぬゴミが軽トラでドサッと置かれることもあるそうで、これには屈強な自衛官でも心が折れてしまうそうです。

自衛隊は、基本的には食料も野営も用具一式、お風呂まで持っている自己完結型の組織です。だから、派遣要請した自衛隊のためには何も用意は必要ないと自治体は考えています。たしかに、時間が経てば自衛隊独自の輸送方法を使って野営のための物品は運ばれてくるのですが、輸送用車両に隊員用の寝袋が積み込めず、最初の数日は下の写真の状態の派遣になる場合もあるそうです。


写真をご覧ください。特定されないように、背景の色彩や自衛官の顔などは目隠しを入れていますが、現実の災害派遣で疲れ切った自衛官が「寒い夜にひと時の休息をとっている」時の画像です。暖房もない冷たい体育館の床に雑魚寝です。  

自衛隊員が震えながら雑魚寝をしている様子を見るに見かねて、毛布や貸布団などを先に用意する担当者もいるようですが、このケースのように全く気にかけることなく放置する場合もあるのです。それどころか、被災者には温かい食べ物を提供して、自らは冷たい缶詰を食べている自衛隊員もいるとの噂もあります。

防衛省および自衛隊関係者に聴いてみたところ、「状況や現場の指揮官の判断によるので一概には言えない」と前置きしつつも、「基本的に被災された方々にお渡ししているものと自衛隊員が食べるものは一緒」との回答。炊き出しを振る舞っている場合は隊員も同じものを食べる場合が多いとのことでした。

とはいえ「被災者の方々が第一なので、配給が行き渡っていない場合はレーションを食べる場合もあります」とも。また「被災者の方々よりも豪華なものを食べるということはありえません」とのことでした。

自衛隊に対する酷い扱いは、たとえば何と公務であっても、高速道路の料金を支払わないと通れないというわけのわからないものもあります。予算が少なくて、トイレットペーパーを節約とか、小銃発射訓練も節約で、日本の陸自隊員は、米国の軍楽隊と同程度の訓練しかできないなどという笑えないような話まであります。

缶詰を食べる自衛隊員

このようなことが、コロナ対策の医療現場でも繰り返されるのではないかと、佐藤氏は危惧しておられるのではないでしょうか。私もそのような危惧を感じます。

大阪や旭川のような要請が、全国至るところで起こるようになってしまった場合、自衛隊の看護師のほとんどがコロナ対策の便利屋になってしまう可能性も危惧しているのではないでしょうか。それどころか、今後似たようなケースが発生した場合、自衛隊の看護師が恒常的に便利屋のように使われるような事態を招きかねないです。

土砂災害に備えた「ダムや堤防」は効果的でした。転ばぬ先の杖です。この事例のように、感染症対策においても、自衛隊をなるべく呼ばなくても良いようにすべきです。自衛隊は便利屋ではないですし、すべての現場ですべての患者さんを救助できるわけでもありません。自衛隊の看護師にも任務や訓練があって、そのために自衛隊に所属しているのです。

コロナから「命を守る」のはまずは「自助」です。私たち一人ひとりが自分でできることはするのです。つまるところ、民度とか国力というのは国民のそういう姿勢から始まる問題ではないかと思うのです。

ただし、自助だけでは防ぎきれないこともあることは事実です。最近は、コロナ感染者が拡大していると連日マスコミが大騒ぎです。医療崩壊寸前だというのです。しかし少なくとも日本の10倍以上もの感染者や死亡者がいる欧米諸国で医療崩壊が起きているという話は聞いたことがありません。我が国とは何かが違っているのでしょうか。我が国の対応は何か間違っていることはないのでしょうか

日本には海外の経験やデータから学ぶ余裕も、考えて準備する時間もありました。しかし、緊急事態宣言後から宣言解除に至るまでの「甘い」「緩い」対策には海外からも驚きの声が多いです。

そこで提案です。自衛隊員は50代前半で定年を迎えます。その後、僅かな若年給付金だけでは定年まで生活ができませんから再就職します。その再就職先に自治体に退職自衛官をあてるということもできるのではないでしょうか。災害対応、感染症対応など様々な対応が考えられます。

それと海外の軍隊では、予備役の制度があります。無論自衛隊にもあります。予備役 とは、軍隊における役種の一種です。一般社会で生活している軍隊在籍者や、軍隊に就役していた艦艇・航空機のことを指し、有事の際や訓練の時のみ軍隊に戻ります。在郷軍人とも呼ばれます。ほとんどすべての軍隊に存在し、自衛隊の場合は予備自衛官と称されています。これを活用する手もあります。

日本でも、河野太郎前防衛相は今年2月13日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大に対応するため、普段は企業などで働く「予備自衛官」の招集命令を出しました。予備自衛官のうち医師や看護師の資格を持つ約50人を集めるというものでした。中国湖北省武漢市から帰国した邦人やクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客で陽性反応が出た人の健康管理にあたりました。

   クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の感染対策に携わった
   自衛隊員。一人の感染者もでなかった

招集は同年同月13日の持ち回り閣議で決めました。自衛官OBらで構成する「即応予備自衛官」の招集も承認しました予備自衛官と即応予備自衛官は2019年秋の台風19号に伴う被災地対応でも招集しました。予備自衛官の招集は8年ぶりでした。

予備自衛官と即応予備自衛官はともに非常勤の特別職国家公務員で、災害などの緊急時に招集されます。即応予備自衛官は自衛官OBが原則で、現役自衛官と同様の任務に就きます。予備自衛官は自衛官らの後方支援が任務の中心で、自衛官の経験のない人も登録できます。

これは、自衛隊内部の対応ですが、これを地方自治体のレベルでも行うのです。ただし、予備役制度は現在の危機にはすぐには役立たないかもしれません。では、どうすれば良いのかということになりますが、これは海外の事例も役立つでしょう。

日本の場合は現在「ヒト」が足りないことが問題になっていますが、イタリアでは今年、医師試験を免除して医学生を招集し、約1万人を現場に投入しました。スペインでも、1万4000人の引退した医師や看護師を含む5万2000人の医療従事者を集めました。このようなことは、今の日本では平時を想定した規制に阻まれなかなかできないようです。

しかし日本でも、感染爆発を想定した人材確保を真剣に考えなくてはならないです。不要不急の診療や処置などが減ったことで、時間の余裕ができた医療従事者もいると聞きます。そのような人々が支援に参画できるメカニズムも検討すべきです。

ただ、新型コロナの集中治療、人工呼吸器やECMOの操作などができる医療従事者は限られています。しかも通常、日本では重症者2人を看護師1人で見ていますが、新型コロナの重症者の管理には個人防護具が必要で、さまざまな制約が伴うため、重症者1人に看護師2人が必要になるといいます。感染爆発を想定して、できる限りの人材確保と適正配置を考えるべきです。

医療に関わる「モノ」づくりでも、工夫をすべきです。通常のモノづくりの範疇で物事を考えるのではなく、例えば、3Dプリンターによるモノ作りをすべきです。PCR検査用の綿棒状の検体採取キット、フェイスシールド、マスク、人工呼吸器用の部品など、3Dプリンターで製造可能なものは多く、しかも速いです。ある会社は700以上の医療用部品などをわずか1週間でイタリアの医療施設に提供し、なかには要請を受けてから病院への納入まで8時間で完了したケースもあるといいます。

さらに、医療崩壊を防ぐために「データ」の重要です。特に、自治体ごとの新型コロナの重症者数、使用可能なICU病床数、人工呼吸器・ECMO数などの重要な情報は可視化して公開し、リアルタイムにモニタリングする必要があります。

現状は、コロナ対策のために戦時のような対応をすべきなのです。それは、何も強制的な隔離などを意味するものではありません。ヒトの確保でも、モノの生産においても、現在を平時と考えず、戦時と考えて行動するのです。それは、無論、私達だけではなく、地方自治体も政府も、緊縮財政一点張りの財務省もそのように考えて行動すべきなのです。

それには、コロナ対策に邪魔になるような規制を時限的でも良いから撤廃等をすることです。そうして、何よりも今の日本に欠けているのは、あまりにも長い間国内の平時に慣れてきた私達の多くが、危機に立ち向かうという気概を失ってしまったことではないかと思います。

ここで、敢えて「平和」ではなく、「平時」という言葉を使います。日本は、拉致問題をみてもわかるように、戦後から現在まで「平和」であったわけではありません。あくまで、「平時体制」というか、戦時体制をとらなくても何とかなってきたというだけです。本当は、中国・北朝鮮から軍事的挑発も受けて、とても「平和」といえるような状況ではありません。

「自衛隊は便利屋ではない」発言は、平時に長年浸かってきた日本人への警告だともいえます。

ただし、この危機はさほど続かないという見解もあります。しかし、最悪の事態には備えるべきでしょう。その備えをした実績が、次に似たようなことが起きたときに、役にたつはずです。今回日本人が考えを変えられなければ、次はないでしょう。


2020年12月7日月曜日

はやぶさ2、カプセルからガス回収 試料採取は成功か―【私の論評】海洋だけではなく、「はやぶさ2」軍事転用で宇宙でも劣勢となる中国(゚д゚)!

はやぶさ2、カプセルからガス回収 試料採取は成功か


光跡を引っ張りながら地球に帰還する「はやぶさ2」の試料カプセル=6日未明

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7日、探査機「はやぶさ2」がオーストラリア南部の砂漠に着陸させた小惑星リュウグウの試料が入ったとみられるカプセルから、ガスを回収したと発表した。岩石の破片などの試料から生じた可能性があり、リュウグウでの試料採取が成功した公算が大きくなった。 

 JAXAの現地チームが日本時間7日午前、カプセルに針状の装置を刺して回収した。簡易分析を行ったが、ガスの量や成分は明らかにしていない。岩石の破片などが入っているかどうかも公表していない。

  リュウグウは約46億年前に太陽系が誕生した頃、惑星に成長できなかった小天体の残骸で、生命をつくる材料である有機物や水を多く含むとみられる。有機物はガスを発生させるため、生命の成り立ちの解明につながる有機物が採取できた可能性も高まった。

  カプセルは7日夜、チャーター機でオーストラリアを出発、8日に相模原市のJAXA宇宙科学研究所に到着する。その後は地球の大気に触れない厳重な密閉装置内で開封し、試料の有無を確認。入っていれば現地で採取したガスとともに詳細な分析を行う。

【私の論評】海洋だけではなく、「はやぶさ2」軍事転用で宇宙でも劣勢となる中国(゚д゚)!

昨日は、海上自衛隊は南シナ海からインド洋にかけての海域で行っている訓練に、潜水艦を追加で参加させると発表したのは、なぜかということを掲載しましたが、結論からいえば、海洋戦術・戦略においては、中国は日米に到底及ばないことを誇示するためというものでした。

この記事の案内をtwitterに掲載したところ、西村幸祐氏にも引用され、多くの人に反響があったようです。そのせいでしょうか、普段よりも倍以上の方々にこの記事を読んでいたたげたようです。中国に対する日米の優勢に関しては、ほとんど一般には報道されていないので、日米はすぐにも中国に負けてとんてもないことになると悲観する方も多いのではないでしょうか。

そんなことはありません。海洋でも宇宙でも、日米は犠牲を出さずに中国を阻止することができます。

さて、本日は「はやぶさ2」について書きますが、これについては他のサイトでも様々な解説がされているので、「はやぶさ2」そのものについてはそちらをあたっていただきたいです。このブログは「はやぶさ2」に用いられている技術のうち軍事転用できるものについて解説します。

「はやぶさ2」はミッションンを遂行する上で、以下の7つの世界初を成し遂げています。



これらの世界初はどれも素晴らしく、何らかの形で軍事転用できるものと思います。この中で特に私が着目したのは、「4.人口クレーターづくりとその詳細観測」です。

これは、直径10メートルの人工クレーターを開けて地下の物質をさらけ出して星のかけらを採取したことです。

「はやぶさ2」は2019年4月、小惑星「リュウグウ」に衝突装置「インパクタ」から発射した金属の塊を衝突させて、世界初となる人工クレーターをつくることに成功しました。

以下に「はやぶさ2」衝突装置「インパクタ」を発射下際の爆点の様子の動画を掲載します。


そうして、上空から撮影した画像を詳しく分析した結果、クレーターの大きさは直径は10メートル余り、深さは2メートルから3メートル程度あることが分かったと、5月9日に発表しました。

クレーターから少し離れた場所には、衝突装置の破片が飛び散ってできたと見られる直径1メートル前後の小さなクレーターも10個程度見つかったということです。

衝突体の詳細のスペックがJAXAから公示されています。それを以下に掲載します。


こで、注目は炸薬や薬莢などの付属部ではなく、目標に衝突して破壊力を生む弾頭部に相当する衝突体の重量は2kgとなっています。

弾頭2kgは105mm戦車砲の徹甲弾の一つ、105mm離脱装弾筒付翼安定徹甲弾M735の弾芯重量2.18kgに匹敵します。大きく注目すべきは、2km/s(2000m/s)という弾速です。

機関砲、戦車砲、艦砲は弾速は1000m/sくらいで頭打ちになっています。これは、火薬の性能、砲身や砲弾の強度、摩擦や空気抵抗など物理的制約を受けます。特に高性能とされている戦車砲のラインメタル 120 mm L44で、弾速は1700m/s。はやぶさ2の2000m/sは火薬を使った砲では最高レベルの夢のスペックだと言えるでしょう。(自衛隊の最新の10式戦車の弾速は2000m/sに達しているという噂もあります)

2kgの弾頭は74式戦車や開発中の機動戦闘車の主砲の105mm砲の水準で、西側諸国の主力戦車の多くに採用されているラインメタル 120 mm L44の砲弾に比べると小さいものですが、実体弾が持つエネルギー(破壊力)は重量には正比例、速度には二乗に比例する事から、最新の戦車並みの威力だと言えるでしょうか。

装甲を貫く砲弾と、岩石を砕く衝突体の威力を単純比較するのは難しいですが、西側諸国の主力戦車の戦車砲をしのぎ、世界最高の10式戦車の砲に相当する弾速を、惑星間探査機に搭載するのは驚異的技術です。これは、国際宇宙ステーションをも一撃で粉砕できます。小さな衛星も一撃できます。

10式戦車

「はやぶさ2」は兵器ではなく、科学探査機です。しかし、非常に強力な砲を正確に撃ちだす機能を持ち、軍事衛星や弾道弾の破壊といった軍事転用への可能性は否定できません。

事実国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が幕張メッセで昨秋開かれた「防衛・セキュリティ総合展示会 DEFENCE & SECURITY EQUIPMENT INTERNATIONAL (DSEI) JAPAN 2019」の協賛団体となり、会場に陸域観測技術衛星「だいち2号」を展示しました。JAXAは昨年6月に同じく幕張メッセで開催された「防衛装備技術国際会議/展示会 MAST Asia 2019」にも出展しています。

「はやぶさ」が成功させた、再突入カプセルの目標への正確な着陸とサンプルの回収は、弾道ミサイルの弾頭設計と誘導技術そのものであり、同様に潜在的な軍事技術です。

さらに米国をはじめ世界中の国々が喉から手が出るほど欲しがっている「はやぶさ」の潜在的軍事技術もあります。それは、イオンエンジンです。

はやぶさの長距離長時間の航行を実現した基幹技術です。推力はロケットエンジンに比べると非常に小さいですが、長距離長時間の航行を実現したように、燃料の消費量が非常に小さく長期間の運転が可能になります。

小推力を長時間維持するイオンエンジンは、上層大気の空気抵抗を受ける低高度のスパイ衛星の軌道高度と速度の維持に最適であり、現在は非常に短い衛星の寿命を飛躍的に向上する事が可能になります。

高度な技術の擦り合わせと、品質と性能の極限の追求、少量生産や受注生産が前提となる、宇宙航空、軍事技術は日本の製造業の躍進の余地が大きな分野です。

現実にも、国産の対潜哨戒機(P-2)と輸送機(C-2)、H2Bロケット、イプシロンロケット、HTV(こうのとり)、10式戦車など、比較的低予算での開発と実用化が成功しています。
基幹技術であるロケットエンジンの米国への供給も検討されています。

停滞している日本の製造業は、実は世界最強となる潜在力を持っています。そうして、その製造業を有する日本は、軍事的にも大きな潜在能力を持っていることは明らかです。

民生技術を軍事に転用することを悪いようにいう、左巻きの人たちもいますが、世界で中国共産党が傍若無人に振る舞っている現状では、当然のことと思います。民生技術でも、何でも、中国共産党の宇宙空間での野望を阻止するためには、何で使うべきです。

そうして、中国はさらに宇宙でも劣勢になることが予想されます。昨日は、このブログで海洋戦術・戦略においては、陸上国中国は海上国日米に到底及ばないことを解説しました。

海洋国にもなりきれていない中国が、宇宙に軍事的な進出をしたとしても、うまくはいかないようです。それにしても、膨大な投資が必要です。いまのままだと、中国はかつてのソ連のように、軍拡・宇宙開発競争で疲弊し米国に負けて疲弊し崩壊したように、崩壊への道を真っ直ぐに進むことになるでしょう。

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2020年12月6日日曜日

海上自衛隊 訓練に潜水艦の追加派遣 事前公表は異例の対応―【私の論評】事前公表の本当の目的は、海洋戦術・戦略においては、中国は日米に到底及ばないことを誇示するため(゚д゚)!

海上自衛隊 訓練に潜水艦の追加派遣 事前公表は異例の対応

海自の「そうりゅう型」潜水艦

海上自衛隊は南シナ海からインド洋にかけての海域で行っている訓練に、潜水艦を追加で参加させると発表しました。中国が海洋進出を強めるこの海域への潜水艦の派遣を事前に公表するのは異例の対応で、専門家は中国海軍の出方を伺うねらいがあると指摘しています。

海上自衛隊は今月7日から1か月余りの日程で、最大の護衛艦「かが」などを南シナ海からインド洋にかけての海域に派遣し、各国の海軍などと共同訓練を行うことにしています。

海上自衛隊は15日、この訓練に潜水艦1隻を追加で参加させると発表しました。

訓練の詳しい内容は明らかにされていませんが、防衛省関係者によりますと、海中に潜って航行する潜水艦を相手に見立てて追尾する、「対潜水艦」の訓練などを南シナ海で行う予定だということです。

潜水艦は相手に居場所を知られず警戒監視を行うのが任務で、中国が海洋進出を強めるこの海域への派遣を、事前に公表するのは異例の対応です。

軍事専門家「中国海軍の出方をうかがうねらい」

海上自衛隊の元海将で潜水艦の艦長も務めた、金沢工業大学虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授は、今回、潜水艦の派遣を事前に公表したねらいについて「アメリカや日本と比べると、海中を探索する技術のレベルがまだ低い中国にとって、近くにいても見つけることができない潜水艦は、最もいやな存在だ。訓練への参加を事前に公表することで、中国海軍がこれまでとは異なる動きをして戦術の一部が見える可能性があり、海上自衛隊としてはどんな出方をするのかをうかがうねらいがあると思う」と話しています。

そのうえで「南シナ海では軍事拠点化を進める中国に対し、日本やアメリカだけでなく、イギリスやフランスなども軍艦を派遣し、互いにけん制しあうことで、力の均衡が保たれて平和が維持されている。ただ、こうした状態が続けば、南シナ海の平和を保つための海上自衛隊の負担は、今後も増えるのではないか」と指摘しています。

【私の論評】事前公表の本当の目的は、海洋戦術・戦略においては、中国は日米に到底及ばないことを誇示するため(゚д゚)!

海上自衛隊の各国の海軍との共同訓練において、潜水艦を追加派遣したことは今回がはじめてということではなく、以前もありました。

海上幕僚監部は今年9月15日、当時実施中の「2020(令和2)年度インド太平洋方面派遣訓練」に、潜水艦1隻を追加派遣すると発表しました。

20年度インド太平洋方面派遣訓練は、第2護衛隊群司令の今野泰樹海将補を指揮官として、護衛艦「かが」、「いかづち」、搭載航空機3機の編成で9月7日から10月17日まで実施することになっていたましたが、参加人員は潜水艦1隻の参加により、当初より約70名増えた約580名となりました。


令和2年度インド太平洋方面派遣訓練に参加した護衛艦「かか」と「いかづち」


海幕広報室は、「かが」と「いかづち」が出発した後に潜水艦の追加派遣を発表したことについては、「部隊運用の都合上」とし、インド太平洋方面派遣訓練への潜水艦の参加は、2年前の「ISEAD2018」において参加実績があると回答していました。


また、潜水艦1隻が加わることで訓練計画に変更が生じるかについては、「寄港予定国についてはスリランカのほかは現在調整中であり、訓練については各種戦術訓練に加えて対潜戦訓練を行う予定」と述べていました。


この時の潜水艦1隻の訓練への追加の公表も異例中の異例でした。海上自衛隊の元海将で潜水艦の艦長も務めた伊藤俊幸教授は、上の記事で、「アメリカや日本と比べると、海中を探索する技術のレベルがまだ低い中国にとって、近くにいても見つけることができない潜水艦は、最もいやな存在だ。訓練への参加を事前に公表することで、中国海軍がこれまでとは異なる動きをして戦術の一部が見える可能性があり、海上自衛隊としてはどんな出方をするのかをうかがうねらいがあると思う」と話しています。


このことについては、このブログでは過去に何度か述べています。繰り返しになりますが、日米の対潜哨戒能力はともに世界トップ水準ですが、これに比較すると、中国の対艦哨戒能力がかなり劣っています。元々この能力はロシアから輸入したものですが、そもそもロシアの哨戒能力が現在でも相当劣っているので、中国の能力も劣っているのです。


中国軍の哨戒能力かかなり劣るY8哨戒機


一方、日本の潜水艦は静寂性においては、「無音」と言っても良いくらい水準です。これを中国海軍が探知することはできません。


米国の原潜というか、一般に原子力潜水艦は、長期間に渡って潜航し続けることができるのですが、難点があります。それは騒音です。原子炉で発生させた蒸気を使ってタービンを回し、その力でプロペラ軸を回しますが、この時に使う減速歯車が騒音の原因といわれています。

タービン自体は高速で回転させるほうが効率も良いのですが、そのまま海中でプロペラを回転させるとさらなる騒音を発生させるために、減速歯車を使ってプロペラ軸に伝わる回転数を落とす必要があります。

ほかにも、炉心冷却材を循環させるためのポンプも大きな騒音を発生さるといいます。このポンプは静かな物を採用することによって、かつてに比べ騒音レベルは下がってきているといいますが、頻繁に原子炉の停止・再稼動をさせることが難しい原子力潜水艦においては、基本的にこのポンプの動きを止めることはできません。

ただし、米国の原潜は、中国の原潜よりは、静寂性が優れているので、対潜哨戒能力に劣る中国にはなかなか発見できませんが、全く発見できないということではありません。

対する通常動力潜水艦は、原子力潜水艦が不得意とする静粛性に優れています。なぜならば、ディーゼル機関を止めてバッテリー駆動に切り替えることによって、艦内で発生させる音をほぼ皆無にすることができるからです。そうして、日本の潜水艦は世界でもっとも静寂性に優れています。

この場合、唯一の音の発生源は乗員の発する音なので、例えば海上自衛隊の潜水艦の艦内には多くの場所に絨毯が敷かれ、艦内を歩く隊員の足音すら発生させないような工夫が施されています。

さらに、今年3月に進水した「たいげい」は初のリチウムバッテリーで駆動する潜水艦であり、
その静寂性は無音と言っても良いくらいです。これは、中国が探知するのは不能です。

そうして、米国の原潜にも長所があります。それは、一般に巨大で、ミサイルや魚雷などの装備も豊富で量も多く搭載しており、単純比較はできませんが、その破壊力は空母に匹敵するほどです。

これは、日米にとっては軍事秘密なので、未だ公表はされていないのでしょうが、この日米の潜水艦の利点を活用すると次のようなことが可能になります。

たとえば、南シナ海で、米中が中国海軍の基地を包囲します。米国の原潜は、食料水を除いて、エネルギーは原子力なので、補給の必要はありません。米原潜は要所要所に長時間潜み、近づく中国の補給船や補給の航空機を威嚇するか破壊して、中国軍基地に近づけないようにします。

日本の潜水艦は、中国海軍に発見されないため、中国軍の基地の周りを自由に航行して、情報を収集しそれを米原潜に伝えます。米原潜は近づく中国の潜水艦等を威嚇するか破壊して、任務を継続します。最初に潜んでいた場所が中国軍に知られた場合には、日本の潜水艦の情報にもとづき発見されないような位置に移動して、任務を継続します。

以上のようなことが考えられます。これに対して、中国海軍はなす術がありません。たとえ、超音速対艦ミサイルがあっても、探知できない敵に対してこれを用いることはできません。空母や、艦艇も意味をなさなくなります。中国のすべての艦艇は自らを防御できないばかりか、空母を護衛することもできません。

わかりやすくいうと、日米の潜水艦が南シナ海の中国軍基地を包囲した場合、中国は中国軍基地に対して補給ができず、お手上げになるということです。それでも、中国が無理やり基地に補給を強硬した場合、米国の原潜により、ことごとく破壊されてしまいます。

私は、今回の南シナ海からインド洋にかけての海域に、わざわざ日本が潜水艦を追加派遣することを公表したのには、「中国海軍がこれまでとは異なる動きをして戦術の一部が見える可能性」があるというだけではなく、中国海軍に対して、日本の潜水艦が中国側が探知できず自由に航行できること、米軍の原潜の強大な破壊力を示して、海洋戦術・戦略においては、日米に対して中国には到底勝つことはできないことを誇示するためにも公表したのだと思います。

このブログではすでに何度か掲載していますが、実は米軍も原潜の行動を公表していました。これは異例中の異例です。これも何度かこのブログに掲載しています。

米軍はすでに5月下旬に潜水艦の行動に関して公表しています。潜水艦の行動は、通常どの国も公表しないのでこれは異例ともいえます。

この潜水艦群の動きは太平洋艦隊司令部のあるハワイ州ホノルルの新聞が同司令部からの非公式な通告を受けて今年5月下旬にマスコミで報道されました。太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋に出動中であることが同司令部から明らかにされました。

太平洋艦隊所属でグアム島基地を拠点とする攻撃型潜水艦(SSN)4隻をはじめ、サンディエゴ基地、ハワイ基地を拠点とする戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)など少なくとも合計7隻の潜水艦が5月下旬の時点で西太平洋に展開して、臨戦態勢の航海や訓練を実施しているといいます。

米バージニア級原潜

その任務は「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿っての「有事対応作戦」とされています。この構想の主眼は中国のインド太平洋での軍事膨張を抑えることだとされるため、今回の潜水艦出動も中国が覇権を目指す南シナ海や東シナ海での展開が主目的とみられます。

無論、当時空母でコロナが発生したという事情もからんでいるでしょう。空母打撃群が水兵のコロナ罹患で出動できない間隙をぬって中国が不穏な動きを見せないように牽制したものと思います。逆に、米軍は空母打撃群でなくても潜水艦隊があれば、中国の動きを牽制できると考えているともいえます。

このように考えると尖閣防衛はこのブログでもすでに述べているように、意外と簡単です。何隻かの潜水艦で、尖閣諸島を包囲して、補給を絶てば良いだけです。中国側は日本の潜水艦を探知できないので、犠牲も殆ど出ないでしょう。犠牲が出ないということで、米軍も加勢しやすいでしょう。米軍もこの海域に原潜を派遣すれば良いということになります。というより、本当はもう日米とも派遣していると思います。軍事気密なので、公表しないだけでしょう。

台湾も同じことです。米国の原潜で台湾を包囲して、上陸する中国軍を攻撃し、それでも上陸した場合には、補給を絶てば良いのです。そうして、日本の潜水艦は、中国側に探知されないので、台湾の周辺を自由に航行して、米国に情報を提供することで貢献できます。

台湾や尖閣では、中国軍はこれら島嶼に兵を上陸させて、確保しその状況を維持しなければなりませんが、日米はそこまでせずとも、補給を絶つだけで、中国軍を阻止できるので、犠牲はほとんど出ません。中国人民解放軍もしくは民兵は、降伏するか餓死するかのいずれの選択肢しかありません。

私自身は、このブログで何度か同じことを主張してきましたが、今日すでに島嶼を奪われたときに、空母打撃群や艦艇や海兵隊等を派遣するという考えは、時代遅れです。それはいたずらに犠牲者を増やすだけです。そんなことをせずとも、犠牲をほとんど出さず中国軍を排除することは十分可能です。

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2020年12月5日土曜日

【日本の解き方】コロナショックによる物価下落の要因を見極める 30兆円の需要不足に対応を 経済運営の手腕が問われる―【私の論評】コロナ対策を過てば、日本経済は韓国やタイに追い抜かれかねない(゚д゚)!

【日本の解き方】コロナショックによる物価下落の要因を見極める 30兆円の需要不足に対応を 経済運営の手腕が問われる

旅行会社の店頭に掲げられた「Go To トラベル」キャンペーン予約開始の案内(10月18日、東京都千代田区)


 総務省が発表した10月の消費者物価指数(CPI、2015=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101・3と、前年同月比0・7%下落し、下げ幅は9年7カ月ぶりの大きさとなった。「Go To トラベル」の影響で宿泊代が下がった影響とされている。

 一般論を考えよう。各種の経済ショックで国内総生産(GDP)が落ち込むが、それが「供給ショック」なのか「需要ショック」なのかを見極めるのは、経済政策のイロハのイである。

 言い換えるとマクロ経済分析での総供給曲線のシフトなのか、総需要曲線のシフトなのかだ。しかし、実際にはどちらのタイプであるかを判断するのは簡単ではない。ほとんどの場合、総供給も総需要も共にシフトするからだ。

 そこで、どちらのシフトがより大きいのかを見極めることが重要になる。これによって処方箋としての経済対策も全く異なってくる。

 供給ショックの場合、財政出動や金融緩和を使うと、インフレが高まり、スタグフレーション(不況下のインフレ)になってしまう。この場合、基本的には供給曲線を元に戻すような施策が必要であり、総需要管理政策として増税や金融引き締めも必要になってくる。

 これに対し、需要ショックの場合には、財政出動や金融緩和によって有効需要を増やす政策になる。

 歴史を振り返ると、1970年代の石油ショックは供給ショックだったし、2008年のリーマン・ショックは需要ショックだった。11年の東日本大震災の際、日本の主流経済学者の多くが復興増税を主張したが、その背景として供給ショックという見立てがあった。サプライチェーン(流通網)の寸断があったので、供給ショックと見たのだが、それは誤りだった。
 今回の世界的なコロナショックでも、オリヴィエ・ブランシャール氏など一流経済学者の中にも供給ショックと見る向きもあったが、間違いだと言わざるを得ない。

 筆者は早くから財政政策と金融政策の同時発動を主張していたが、これは、コロナショックがロックダウン(都市封鎖)などで旅行、飲食などの需要が蒸発するような需要ショックであると見ていたためだ。

 どちらのショックなのかは、その後の物価の動きでわかる。コロナショックの当初、マスクなどの個別価格の上昇があり、それが供給ショックの見立てにもつながったが、問題なのは個別物価ではなく、全体の一般物価の動きだ。

 その後の消費者物価指数などの一般物価の動きをみると、やはり今回のコロナショックは需要ショックだった。つまり、需要ショックで、需給ギャップが拡大し、それとともに物価が下落したのだ。これはその後、失業率の増加という筆者の予測とも関連している。

 これらは需要不足に起因するものなので、第3次補正予算などで30兆円以上もあるGDPギャップを埋めないと、物価の下落と失業の増加は避けられなくなる、マクロ経済運営の手腕が問われている。 (内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

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2020年12月4日金曜日

米民主党、トランプ政権にクーデタ―【私の論評】必ずしも大統領選で、トランプ氏不利とは言えない状況になってきた(゚д゚)!

 米民主党、トランプ政権にクーデタ


 

【まとめ】
・トランプ大統領側は不正選挙を暴く重要なデータを得た可能性あり。
CIAがトランプ政権に反旗を翻し「クーデター」を起こしたか。 
・一部では、投票数が登録有権者数の100%をはるかに超え、不正は明らか。
今年(2020年)11月14日、米大統領選挙関連の裁判で活躍しているシドニー・パウエル(軍事)弁護士は「クラーケン(海の怪獣)を解き放て」という意味深長な言葉を口にした。

シドニーパウエル弁護士

 同弁護士の言う「クラーケン」とは国防総省のサイバー戦争プログラムの事を指すという。もしかして、トランプ大統領側がバイデン前副大統領(以下、バイデン候補)ら「反トランプ派」の違法行為を見つけ出し、犯罪の決定的な証拠を得たのだろうか。

 実は、パウエル弁護士が「クラーケン」を口にする前、米軍はドイツ政府の協力を得て、フランクフルトにあるサイトル(Scytl)社(スペイン)のドミニオン(Dominion)のサーバーを没収したと言われる。その際、CIAと米特殊部隊デルタフォースの間で銃撃戦が行われ、CIA側1人、デルタフォース側5人が死亡したという。この銃撃戦が事実ならば、大統領側は不正選挙を暴く重要なデータを得た公算が大きい。

 更に、同月30日、パウエル弁護士は、不気味な言葉を吐いた。「私が判事にすべての証拠を渡す前に、バイデン候補に最後の忠告をします。すぐに選挙を辞退しなければ、あなたは人生最期を刑務所で送らなければなりません」と。 

パウエル弁護士の警告は刺激的である。おそらく同弁護士はバイデン候補を刑務所送りにできるだけの十分な証拠を持っているのではないか。

 目下、パウエル弁護士は、ジョージア州とミシガン州で大規模な訴訟を起こしている。訴状には、数人の証言が添付され、そのうちの1人がサイバーセキュリティ専門家のナビッド・ケシャワルズニア(Navid Keshavarz-Nia)である。不正選挙の実態(主に投票集計ソフト)を暴いた同氏による宣誓証言は興味深い。

 ただ、裁判所がパウエル弁護士の思惑通り、バイデン候補に対し「国家反逆罪」のような厳しい判決を下すかどうか不明である(場合によっては、裁判に時間がかかりすぎて、来年1月20日、バイデン新大統領が誕生してしまうかもしれない)。

前述のドイツでの銃撃戦が真実ならば、なぜCIAが(票集計の不正が疑われている)ドミニオンのサーバーを秘匿しようとしたのか。CIAが「反トランプ派」へ回ったという事なのだろうか。

ならば、CIAがトランプ政権に反旗を翻し「クーデター」を起こしたと言える。一説には、FBI・米軍・司法省の大半も「反トランプ派」で、トランプ政権に対する「クーデター」に参加したという。 

一般に、「ディープステート」(「影の政府」)の存在を唱えている人達は“陰謀論者”だと決めつけられる。だが、仮に、「反トランプ派」が「ディープステート」とイコールだとしよう。そして、彼らがトランプ政権に対し「クーデター」を仕掛けたとする。もし、これが本当ならば、「ディープステート」の存在は“陰謀論者”の“妄想”と簡単に切り捨てる訳にはいかないだろう。 

さて、トランプ大統領は、共和党やQアノンに代表される“右翼”(保守派)に支えられている。一方、民主党系「反トランプ派」はANTIFA(“anti-fascist”の略称)に象徴される“左翼”(リベラル派)が支持層だろう。だとすれば、「反トランプ派」は、中国・ベネズエラ・キューバと近い理由がよくわかる。全面的ではないにせよ、お互い共鳴し合う部分があるに違いない(なお、イランやロシアの米大統領選挙関与説もある)。

昨今、米マスコミには、トランプ大統領を何が何でもその座から引きずり降ろそうという意図が窺える。そして、彼らは民主党による不正投票をまったく報じない。Facebook、Google、Twitter等も、それに追随している。不思議ではないか。

実際、激戦州の一部の郡では、投票数が登録有権者数の100%をはるかに超えている。少なくても郵便投票に関して不正があった事は火を見るよりも明らかだろう。

選挙前、米マスコミは、バイデン候補の息子、ハンター・バイデンのスキャンダルをほとんど報道しなかった。Facebook、Google、Twitterも、その隠蔽工作に加担している。選挙後、CNNは、バイデン候補が選挙で3.2億米ドル(約334億円)のブラックマネーを受け取ったと報じた。

これでは、まるで中国共産党が情報を隠匿しているのと同じではないか。いつから、米国はこのような情報統制国家に成り下がったのだろうか。面妖である。

選挙後に行われた“Biden Voter Messaging Survey Analysis”(2020年11月9月~18日)という調査結果は刮目に値する。バイデン候補に投票した16%の有権者が「もし、バイデン一家のスキャンダルを知っていたら、同候補に投票しなかった」と答えている。

最後に、12月2日現在、まだ勝者(トランプ大統領かバイデン候補)が決まっていない激戦州の状況を記しておこう。 

ペンシルベニア州(選挙人20人)では、選挙が公明正大とは言えないため、州議会が勝者を決定する事になった。他の激戦州―ウィンスコンシ州(同10人)、ネバダ州(同6人)、アリゾナ州(11人)、ジョージア州(同16人)―での法廷闘争の行方は、依然、微妙な情勢にある。

澁谷 司(アジア太平洋交流学会会長)

【私の論評】必ずしも大統領選で、トランプ氏不利とは言えない状況になってきた(゚д゚)!

澁谷 司氏

やっと Yahooニュース にこの分野の情報が掲載されました。すでに多くのネット放送局が報道していて感度の高い多くの人には周知の情報が発信されました。この記事を書いた澁谷司氏は現代支那学、安全保障専門の学者です。

澁谷 司(しぶや つかさ、1953年 - )氏は、アジア太平洋交流学会会長。元 拓殖大学 海外事情研究所 附属華僑研究センター長、元拓殖大学海外事情研究所教授です。

専門は、現代中国政治、現代台湾政治、東アジア国際関係論[。中国語が堪能で、現代中国の情報を駆使して、多数のメディアで中国共産党の崩壊への過程を論評している。

澁谷氏といえば、中国分析では定評があり、このブログでも澁谷氏の中国に関する論評を何度か取り上げたことがあります。

その澁谷氏が、以上のような文章を公にしているわけですから、確かな筋から様々な情報を得ての上でこのような記事を書いているのでしょう。私自身はこれを全くの妄想として、否定することは到底できません。

"当確"のはずのバイデン前副大統領側の不正選挙疑惑が、払拭できていません。わかりやすい例をあげると、バイデン候補自身は大勝したにもかかわらず、なぜか上下両院の議会選挙では、民主党候補が振るいませんでした。

一般的に、大統領選挙で勝利した候補の党が、議会選挙でも票を伸ばします。過去はほとんどがそうでした。ここで、民主党が躍進していれば、私自身も米国大統領選挙で今だに抱いている消化不良のような状況は払拭されていたかもしれません。

11月24日時点で、トランプ大統領側が一部の激戦州で選挙不正の訴えを起こしているため正確には、未だ大統領選挙は終わっていないのです。

それにもかかわらず、なぜバイデン陣営は政権移譲を急かすのでしょうか。無論、政権移行がスムーズに行われるべきではあります。ただし、大掛かりな不正選挙がない場合に限るのはいうまでもありません。

経営コンサルタント・鈴木貴博氏の「米大統領選でやはり『不正』があったかもしれない、ちょっとした状況証拠」(ダイヤモンド・オンライン)というコラムでは、鈴木氏は、1938年に米物理学者のフランク・ベンフォードが提唱した「ベンフォードの法則」を使って、大統領選挙の結果が不自然だと指摘しています。これに関しては、ここでは詳細は説明しませんが、興味のある方は、是非ご覧になってください。こうした不自然さもあります。

そもそも、バイデン氏、8000万票獲得した初の候補者になったということ自体が俄に新しじらません。

今回の大統領選挙では、ドミニオン社製の投票集計マシンが、全米28州で使用されました。ドミニオン社はカナダ発の投票機器製造および集計ソフトウェア開発企業ですが、そのソフトはスマートマティック製のものを使用しています。このソフトウェアは、ベネズエラの指導者が選挙の際、投票集計を操作し、権力を保持するために開発されたと言われています。

ドミニオン社製の投票集計マシン

なお、スマートマティック社会長ピーター・ネフェンジャー氏は、バイデン政権移行チームのメンバーとなっています。

トランプ大統領の顧問弁護士、ルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長によれば、2020年1月、ドミニオン社のジョン・プロスCEO(ナンシー・ペロシ米下院議長の元側近)は米議会の公聴会で、同社が製造する投票機は、中国製のLED液晶ディスプレイ、チップコンデンサ、可変抵抗器などの部品を使っていると証言したといいます。このプロス証言で、ドミニオン社が中国と繋がっていることが明らかになりました。

おそらく、中国共産党は、バイデン当選を渇望しているのではないでしょうか。なぜなら、習近平政権は、対中強硬策をとるトランプ大統領を最大の脅威と捉えているはずだからです。そのため、北京政府が米民主党と組んで、トランプ降ろしを画策したとしても不思議ではないです。

バイデン候補には認知症の疑念が生じています。選挙直前(10月24日)、同候補が「私たちはアメリカ政治史上最も広範囲で包括的な"不正投票組織"を作り上げた」と口を滑らせました。実に、"意味深長"な発言です。

上記を含むさまざまな状況証拠と合わせれば、「バイデン候補が認知症のため、思わず"真実"を暴露した」と勘ぐりたくもなります。

もしそれが真実であり、トランプ大統領が再選すれば、民主党も中国も不正選挙を暴かれて窮地に陥ることになります。そこでバイデン候補は、不正が白日の下に晒されないうちに政権移譲を完了しなければならないのでしょう。

さもないと、大統領選挙での大規模な不正行為という前代未聞の"犯罪"が明らかになってしまいます。だからこそ、バイデン候補は、盛んにトランプ大統領に政権移譲を迫っていたのではないでしょうか。

今回の大統領選を巡る不正疑惑を巡り、既にトランプ陣営と軍法弁護士のシドニー・パウエル氏による訴訟は本格化してきています。当初は門前払いのように敗訴ばかりだと言われていたのですが、最近は受理されるケースもあり、かなり通常の裁判になってきています。

ジョージア、アリゾナ、ウィスコンシンの3州では、トランプ陣営がどう少なく見積もっても確実と言える不正投票数が、現在のバイデン候補のリード数を上回るまでになりました。こうした流れは、必ずしもトランプ大統領に不利と言い切れない状況だと言えます。

米司法省パー長官

同時に、選挙不正について宣誓供述をした証言者が200人を超す中で、これまでは憶測としか言われなかった事実も表面化してきました。司法省のバー長官も、現段階では大統領選挙の結果を変えるような情報を米中央情報局(CIA)も米連邦捜査局(FBI)も持っていないと発言しのですが、後にFBIには新たな情報提供があったことも認めています(バー長官の発言段階では未確認)。

仮に時間的な面においても最高裁判決を仰ぐことが可能となるならば、どんな事態となるかは徐々にわからなくなりつつあります。それが、足元の状況です。

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2020年12月3日木曜日

「やっぱり」のCNN報道、中国の公式発表に真実なし―【私の論評】日本政府は、GOTOキャンペーン自粛等の前に中国とのビジネス関係者などの往来を再度封鎖すべき(゚д゚)!

「やっぱり」のCNN報道、中国の公式発表に真実なし

コロナ感染者数を過少発表、この先も治らない中国政府の隠蔽体質


   中国・武漢で開かれた、新型コロナウイルス感染症との戦いを振り返る展覧会
   (2020年10月15日、写真:新華社/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 12月に入った。中国湖北省武漢市で新型コロナウイルス感染症の最初の患者が確認されてからこれで1年がたったことになる。

 世界で最も感染者が多い米国は、新規感染者だけで1日20万人以上を数える。欧州最多の感染者が出ているフランスでは、中国人を「コロナ感染源」とみなしてSNSで暴行を呼びかける者が現れるなど、日本人を含むアジア系全体へのヘイトクライムが増大している。日本でも感染者が急増中でこのままではクリスマスや正月に緊急事態宣言が再び出るかもしれないと不安が広がっている。

中国の感染コントロールは「信じがたい」

 こういう中で、中国は感染をほとんど制圧しコントロールできている、というのが中国自身を含め世界の専門家たちの認識であろう。

 だが先日、長年、仕事や報道で中国と関わってきた“中国通”の人たちとの会合の席で「中国は本当に感染をコントロールできていると思うか」という話になったとき、ほとんどの人が「信じがたい」と声を揃えていた。

 彼らの指摘は“印象”でしかなく、根拠らしい根拠を挙げることはできない。だが、たとえば10月に新疆ウイグル自治区カシュガルで集団感染者が急増し、最終的に80人近い入院者、約350人の無症状感染者の存在が公表されたが、現地にいる何人かの友人から聞いた「親戚に〇〇人の感染者が出た」「△△人の友人が入院した」というような話を総合すると、公表された人数よりもずっと深刻な感染状況が起きているのではないか、と思われる。

 中国の地方の医療システムや医療資源の配置、人々の暮らしの習慣や衛生観念、官僚の仕事に対する基本姿勢、中国のプロパガンダ政策やその歴史、「虚偽情報」を事実として発表する共産党政治の情報コントロール能力、世論誘導力、そしてこれまで何度も中国共産党が発してきた嘘、などを深く知り、経験している人ほど、1月、2月の武漢の状況と春節移動による影響などを踏まえて、いくら徹底的なPCR検査と非人道的とさえ言えるような移動制限を実施したとしても、そんなにたやすく感染を制圧してコントロールできるわけがない、という疑いを持つようになる。

 これは理屈ではなく、長らく中国と関わって仕事をしてきた人たちならではの肌感覚であり危機管理能力の1つである。そして実は、ある一定の立場以上の中国人、つまり中国の知識人や官僚自身がこういう「疑う」感覚を一番持っている。そうした知識人や官僚と友だち付き合いをして、本音に近い部分で情報交換ができる一部外国人がそういう感覚を共有するようになるというわけだ。

世界への感染拡大はいつ始まったのか

 なので、12月1日に米CNNが「2月の段階で中国当局が国内感染者数を大幅に隠蔽していたことが内部文書からわかった」と報じても、まったく意外感はなく、「やっぱり」という感想しか出てこない。

 CNNが入手した内部文書は117ページにわたるもので、この文書によれば、新型コロナ感染症発生当初、感染の確診判定が出るまで平均23日の時間がかかっており、公表されている数字と医療現場が把握している数字に大きな差があったことが明らかにされている。

 たとえば、2月10日、中国の公式発表では新たな新型コロナ感染確診数は2478例で、うち2097例が湖北省となっていた。しかし湖北省の現場で実際に把握されていた数字は5918例で、うち1772例が臨床診断、1776例が感染疑い例と記録されていた。

 また中国当局は3月7日の湖北省内の累計死亡数は2986人と発表していたが、CNNが入手した文書によれば実際は3456人であるという。

 さらに当初、診断に時間がかかり、発症から確診にいたるまで平均23.3日の時間がかかっていたことも明らかにされた。

 個別の症例の追跡や公共衛生措置の推進にも深刻な障害があった。たとえば2019年12月2日、湖北でインフルエンザが前年同期比で2059%増という異常な増加率を示したが、現地の医療人員はインフルエンザと新型コロナ感染症との判別がつかず、また当時は検査薬も不足していた上、検査薬の精度も50%以下の低さであり、実際の状況を把握できていなかったという。

 湖北省の医療体制は、これだけの患者の急増によって、12月の段階ですでにぎりぎりであったか、あるいは崩壊が始まっていたと考えられる。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、米疾病コントロールセンター(CDC)の専門家が11月30日にある研究リポートを発表しているが、それによれば2019年12月中旬、米国にはすでに新型コロナウイルス感染者が現れていたという。つまり中国が正式に新型コロナ感染確診を発表するより数週間早く、そして米国の公衆衛生当局が米国発の感染例を発表するより1カ月早く、米国内で感染例が出ていた、ということになる。

 米誌「臨床感染疾病雑誌」(Clinical Infectious Diseases)に寄稿された論文では、米国赤十字が米国9つの州から集めた住民7398人分の血液サンプル中、106人から感染の痕跡が見つかり、最初の米国における感染は米国西海岸だという。つまり、中国が感染を確認するかなり以前から、実は世界に感染拡大が始まっていた。フランスやイタリアでも2019年末にすでに感染が発生していたという指摘があるのも、こう考えると納得できるのだ。

素直に信じてはいけない中国の公式発表

 さてこのCNNの特ダネから改めて言えることは、中国の公式発表というのはまず鵜呑みにはできない、ということである。

 その背景には、中国共産党(中共)官僚システムの構造自体に問題が多いということもある。悪意ある隠蔽や陰謀などもあるが、そもそも問題が発生したときに現場の判断で正確、的確な対応をとって上に報告するというシステムが機能しない。官僚システムが厳密なヒエラルキー構造の独裁体制に基づいているので、上から下への一方通行だけであり、下から上への報告や現場のフィードバックによる上層部の計画や方針の修正、改変が事実上不可能なのだ。この体制である限り、中国から出てくる情報は素直に信じてはならない。

 残念なことに、日本人の中には、中国当局が発表する数字に対して、少なくとも今の時点で隠蔽はない、ウソはないと信じて疑わない人が多く、そういった人たちが日本の感染症対策への発言権や影響力を持っていたりする。

 しかし、中国は習近平政権になってから恐怖政治的な「(習近平を核心とする)共産党中央が一切を指導する」(逆らったら失脚、冤罪逮捕)という方針が徹底され、「下部組織は上部組織に絶対逆らえない」という中国共産党のトップダウン構造がさらに強固なものになっている。世論やメディアが正確な情報が精査することが許されない社会では、公式発表は最初から信じられないという前提を持たねばならない。中国通のほとんどの人は「中国の公式発表はとりあえず疑う」という習性が身についているが、今の日本の政権担当者や専門家にはそういう感覚がなさそうで心配である。

「犯人は輸入冷凍品」世論誘導を目論む中国

 経済が切迫しているという理由もあるのだろうが、たとえば日中ビジネス関係者の往来について早々に再開してよかったのかどうか。

 中国は日本からの渡航者に対し二重の陰性証明(登場前2日以内のPCR検査陰性証明と血清特異性IgM抗体検査)を求めているが、日本は中国からの渡航者に対する検査は求めていない。これは、日本政府が「中国はほぼ完全にウイルスを制圧できている」と信じ切って安心しているからだろうが、本当に安心しきっていいのか?

 上海の浦東国際空港周辺で発生している感染者数も公式発表通りでない可能性があると疑うべきだろう。11月22日に空港の職員1万6000人にPCR検査を一斉実施し大混乱になった様子の写真などがメディアで取り上げられていたが、なぜこんなに慌てて措置をとるかというと、上海当局者自身が慌てているからだ。おそらく現状を把握できておらず、ひょっとすると上海市中感染も疑っているからこその慌てぶりではないか。

 中国はこうした感染再発生の理由をこれまでは「海外から持ち込まれた」と説明してきたが、上海の感染はそういう説明ができなくなってきた。そこで、感染者が冷凍物流チェーン周辺に集中していたり、大連、天津、青島などの輸入冷凍食品の包装から新型コロナが検出されたことなどを根拠に、「海外からの輸入冷凍品から人が感染した」可能性を主張し始めている。冷凍食品輸出国のドイツやニュージーランドはこの見方を否定している。

 もし、本当に「モノ→人」感染の可能性があるとしたら、それこそ予防対策のあり方の根本的な見直しが必要な事態である。この中国の主張は無視してはいけないが、鵜呑みにしてもいけないだろう。

 独立系華字ニュースサイト「明鏡」が掲載した「中国最新版新型コロナ神話」という記事によると、中国共産党は新型コロナの起源が中国以外の外国であるという印象を国内外に喧伝しようとしているという。そして、その最新の世論誘導策が、海外から輸入した冷凍品によって武漢に持ち込まれたウイルスが新型コロナウイルス感染症を発生させたというストーリーの定着を図るということらしい。

 いずれにしても、中国の公表する情報をそのまま受け止めて政策決定の基準にしてはならない、ということだ。

 2021年の春節(2月12日)は、中国で「民族大移動」が解禁されるのかどうか。中国としては大々的に春節旅行を推進して、「ポストコロナ」をアピールするかもしれない。世界のなかで比較的感染規模の小さい日本の観光地は、中国人観光客の来訪を心待ちにしているかもしれないが、ここで誤った対応をすると、東京五輪が吹っ飛ぶくらいの後悔では済まないかもしれない。

【私の論評】日本政府は、GOTOキャンペーン自粛等の前に中国とのビジネス関係者などの往来を再度封鎖すべき(゚д゚)!

私自身は、中国共産党が発表する内容をそのまま文字通りに受け取ることは一切ありません。わざわざ発表するには、何らかの意図が必ずあるとみなし、その意図を探ろうとします。

たとえば、中国のGDPの発表は、ほとんど出鱈目です。なぜなら、中国の輸出・輸入データと整合性がないからです。通常は、どこの国でも景気が良くなると輸入が増えるのですが、なぜか中国にはこの原則があてはまりません。

李克強氏もこの事実を認めています。李克強氏は李克強指数という、中国の本当のGDPを知るための指数を開発しているくらいです。

そもそも、過去には中国の全省の合計のGDPよりも、中国全体のGDよりも大きいという信じがたいことが何度かありました。これは、中国内でも指摘されていて、中国のSNS微博などで囁かれていました。無論、そのような指摘は現在では削除されているようです。

最近では、中国の王毅国務委員兼外相が、24日の日中外相会談後、茂木敏充外相と行った共同記者会見で、大暴言を連発しました。

茂木氏は記者発表で、「尖閣周辺海域に関する日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と強調しました。

これに対し、王氏からは、次のような看過できない発言が飛び出しました。

「ここで1つの事実を紹介したい。この間、一部の真相が分かっていない日本の漁船が絶えなく釣魚島(=尖閣諸島の中国名)の周辺水域に入っている事態が発生している。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。われわれの立場は明確で、引き続き自国の主権を守っていく。敏感な水域における事態を複雑化させる行動を避けるべきだ」

この発言に関しても、私はそののまま文字通り受け取りはしませんでした。これについては、このブログでもとりあげ、その真意を分析してみました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国外相、あきれた暴言連発 共同記者会見で「日本の漁船が尖閣に侵入」 石平氏「ナメられている。王氏に即刻帰国促すべき」―【私の論評】王毅の傍若無人な暴言は、中共の「国内向け政治メッセージ」(゚д゚)!
王騎外相

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事から結論部分を引用します。
王毅や中国のタカ派がよく見せる過激な発言は、必ずしも国際情勢に合わず、時には中国の利益にも反するものですが、ただその主要目的は国内宣伝にあるのです。

政権の対外強硬姿勢を見せなければ、怒りを沸騰させる愛国ネットユーザー等や権力闘争には対処できないのです。そしてそうした憤怒のマグマを、特に習近平政権には向けたくないのです。

以前中国は自分の都合て動く国だということをこのブログにも掲載したことがあります。このような中国は日中外相会談すら、中共の「国内向け政治メッセージ」を発信する場にするということも珍しくないてす。
そもそも、中国の軍事力は増強されているのは間違いないですが、それにしても歪な成長をしています。マスコミは宇宙兵器や超音速対艦ミサイルなどで大騒ぎしていますが、その実、基本的な能力はまだまだです。

対潜哨戒能力を含めた、哨戒能力は日米のほうがはるかに上回っていますし、潜水艦のステルス性ということでは、日米に劣っていますし、日本の潜水艦のように無音に近いような通常型潜水艦を製造できません。これに比して中国の潜水艦は最新型でもかなり騒音がするので、日米に簡単に探知されますが、日本の通常型潜水艦は無音に近く中国には探知できません。

米国の原潜は中国の原潜よりは静寂性がありますが、それでも原潜はある程度は必ず騒音が出るのて、中国にも探知できるチャンスはありますが、それにしても、米軍の対潜哨戒能力は世界一で中国を遥かに凌駕しています。それに米軍の原潜はかなりの破壊力を持ちます。さらには、兵站でも劣っています。いずれにしても、中国は海洋戦では日米に比較するとかなり不利なのです。

潜水艦で勝てないと、他にどのような艦艇を持とうが、空母を持とうが、すぐに潜水艦に攻撃されて沈没するだけで、現代の海洋戦では勝てません。

そのため、中国海軍のロードマップでは、今年2020には第二列島線まで確保することになっていますが、未だに台湾、尖閣諸島を含む第一列島線すら確保していません。さらに、台湾は自前で高性能潜水艦を作ることを公表しました。

この絶望的な状況を習近平政権は理解しているからこそ、王毅にあのような暴言を吐かせて、国内の人民や権力闘争の相手方の憤怒のマグマを自分たちからそらす必要があったのでしょう。

この記事では書き忘れましたが、この暴言によって、日本側としては習近平の国賓来日を断るか延期することができるようになりました。

中国としては、習近平の来日が駄目になっても、国内向けにプロパガンダをする必要があったものと思われます。

「中国がコロナの発生源でないというのは不確かな推測だ」したWHOのマイク・ライアン氏

最近中国で、輸入冷凍食品から新型コロナウイルスが相次いで検出され、政府は輸入を一時停止したり、全面消毒を義務付けたりして警戒を呼び掛けています。この事実も全く信用できませんウイルスの「武漢起源説」を否定する材料にしようとしているとしか思えません。さらには、最近中国ではコロナ再発の兆候があるので、もし再発した場合は外国のせいにしようとしているのかもしれません。

そもそも、環境表面やモノに触れた際にウイルスが付着した手で口、鼻、眼に触れて感染することはおこり得ますが、頻度としては低いという世界の医学的共通認識は変わっていません。

アルゼンチン産牛肉(江蘇省南京市)、ブラジル産牛肉(武漢市)、マレーシア産タチウオ(山東省臨沂市)…。輸入冷凍食品の主に包装からコロナウイルスを検出したとの発表が11月だけでも30件近くに上ったといいます。

6月に北京市で広がった感染「第2波」については、市の研究員らが「卸売市場で処理された輸入冷凍サーモンが感染源だった可能性が極めて高い」との分析結果を発表。10月に山東省青島市の病院で発生した集団感染では、入院していた青島港の貨物作業員2人が扱っていた輸入冷凍タラの包装から「生きた」ウイルスが検出されたといいます。

こうした事例を受け、中国疾病予防コントロールセンターの呉尊友首席専門家は、中国紙に対し「武漢の感染も最初は海鮮市場で始まった。輸入された水産品が引き起こした可能性もある」と指摘しました。

ただ、中国当局は冷凍食品からのウイルス検出について「現段階の陽性率は1万分の0.48」(国家食品安全リスク評価センター)と、極めてまれなケースであることを認めています。世界保健機関(WHO)は冷凍食品からの感染に懐疑的で、緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は11月27日の記者会見で、中国メディアの質問に「中国が発生源でないというのは不確かな推測だ」と答え、海外から中国にウイルスが流入したとの見方にくぎを刺しました。

11月30日成田空港では感染を防ぐ対策として防護服を着用した中国人の姿も見られた

新型コロナウイルス対策の入国制限措置をめぐり、政府は、11月30日から中国との間でビジネス関係者などの往来を再開させました。成田空港では感染を防ぐ対策として防護服を着用した中国人の姿が多く見られました。

政府は、入国制限措置を緩和する一環として30日から、中国との間で、短期滞在と長期滞在双方のビジネス関係者などの往来を再開させました。

中国各地とを結ぶ便が現在、週に20便ほど運航されている成田空港には、30日午後、160人余りが乗った便が浙江省杭州から到着し、感染を防ぐ対策として白い防護服や、代わりの雨がっぱを身につけた中国人の姿が多く見られました。

一方、成田から中国に向かう便でも搭乗する前に防護服などを着用する人の姿が目立ちました。

上で指摘したように、中国は外国まで自国内のプロパガンダに利用する国です。自国内でコロナを制圧したということも実は「国内向け政治メッセージ」とも考えられます。

この「国内向け政治メッセージ」に沿った形で、各地方政府がコロナ撲滅に努力したのは確かだと思います。とにかく、コロナ患者は暴力を用いても強制的に隔離して、撲滅に邁進したとは思います。

しかし、そもそもコロナウイルスは、CPR検査でも正しく判定できるのは、70%止まりです。偽陰性者も大勢出ることから、いくら隔離を完璧にしようとしてもできないです。しかし、地方政府は完璧に撲滅したと中央政府に報告するでしょう。

そのような中国共産党中央政府によるコロナ撲滅の公表など、そもそも信用できません。日本政府としては、GOTOキャンペーン自粛等の前に中国とのビジネス関係者などの往来を再度封鎖すべきです。

少なくとも来年の春節前には、完全封鎖すべきです。いずれは再開することになるでしょうが、それは他国の封鎖を解除した一番最後にすべきです。

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2020年12月2日水曜日

イエレン氏の財務長官起用で米国は積極財政と緩和両立へ 日本は無策なら円高で苦境に…半年後に120万人超の失業者出てもおかしくない ―【私の論評】予備費すらまともに使わず「医療崩壊」の危機を招いた現状では、失業や自殺の増加は不可避か(゚д゚)!

 イエレン氏の財務長官起用で米国は積極財政と緩和両立へ 日本は無策なら円高で苦境に…半年後に120万人超の失業者出てもおかしくない 

高橋洋一 日本の解き方

イエレン氏

 バイデン次期米大統領は、イエレン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長を財務長官に指名すると発表した。

 イエレン氏は、オバマ政権でバーナンキ氏の後任としてFRB議長になった。トランプ政権はイエレン氏を再任せず、現パウエル議長を指名した。バイデン政権では、トランプ政権と逆をやるのだろう。

 イエレン氏は、クリントン政権下の1994年からFRB理事、97年から大統領経済諮問委員会委員長、ブッシュ政権下の2004年からサンフランシスコ連邦準備銀行総裁、オバマ政権下の10年からFRB副議長-と実務に長く関わってきた。民主党政権での中央の実務経験が多いので、民主党の財務長官としては格好の人物だ。

 FRB副議長時代には、バーナンキ議長と長年の共通の考えであったインフレ目標政策を公式採用させたのが大きな貢献だ。FRBに長く関わってきたイエレン氏は2%のインフレ目標を理事時代から主張しており、暗黙のものとして事実上採用されていた。

 雇用の最大化と物価の安定、金融システムの安定というFRBの使命にも理解を示すだろう。実務経験も長く、しかも学問的な素養も十分なので、安定感がある。イエレン氏の予測の精度は高いことで有名だ。思いつきで発言せず、十分な調査を行っているからだ。

現在は跡形もなく消えた、米国のティーパーティー運動

 FRB時代に、議会共和党の一部にいる緊縮財政論者の茶会派(ティーパーティー)ともうまく対処してきた。ただし、マクロ経済重視で雇用重視なので、緊縮財政とは一線を画している。現在、コロナで米経済がズタズタなので、かなり思い切った財政政策を行うだろう。コロナはデフレ傾向を加速するので、国債発行を伴った積極財政で、その国債を中央銀行が購入しても、ひどいインフレにならないので、積極財政は金融緩和と両立しうる。

 となると、日本が第3次補正予算でショボい追加対策だと、追加国債もあまり発行されず、日銀の金融緩和に要する国債も市中に不足するので、結果として十分な金融緩和ができなくなる。米国で金融緩和、日本で緩和せずとなると、円高になり日本経済は苦しくなる。しかも、ショボい追加対策だと、筆者によるGDPギャップ(潜在GDPとの乖離)推計は40兆円程度なので、半年後の失業者は120万人、自殺者6000人以上が出てもおかしくない。

 にもかかわらず日本の財政当局は、残り7兆円もある予備費を3次補正の一部に組み込み、さらに、民間需要が出てくるという考えにくい前提をとることで、3次補正を小さくしようとしている。

 民間需要が出てくるというのは考えにくい。ちなみに、内閣府モデルでは政府支出乗数は1・1もない。これは政府支出に対して誘発される民間需要が1割にも満たないことを意味しており、GDPギャップを公的需要で埋めないと、失業や自殺の増加は不可避だ。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】予備費すらまともに使わず「医療崩壊」の危機を招いた現状では、失業や自殺の増加は不可避か(゚д゚)!

大統領選挙の結果はまだ出ない状態ですが、バイデン氏が大統領になった場合の人選においては、他の人選はたとえば、中国問題の専門家がほとんどいないなどの問題点が指摘されていますか、財務長官の人選は良かったと思います。

トランプ政権も、経済を良くしてきたのですが、イエレン氏が財務長官になれば、少なくと誤った政策に翻弄されることはなく、それどころか的確な政策運営ができると思います。カマラ・ハリスを副大統領に指名するようなバイデン政権としては、かなりまともな人選だと思います。

さて、上の高橋洋一氏の記事では、日本のショボい経済政策で、現状のままなら、とんでもないことになりそうなことを指摘していますが、その状況はすでに露見しています。

それは、最近テレビのワイドショーで盛んに指摘されている「医療崩壊の危機」です。本当はこのような状況は完璧に防げたことのはずでした。

テレビでは毎日コロナ第三波と「医療崩壊」

事前に予測ができて、財源があれば、ほとんど対応可能のはずです。冬に入ると、またコロナが蔓延する可能性については以前から、複数の専門家が指摘していました。

それに財源もありました。その財源とは、2次補正において計上された、10兆円の予備費です。この予備費が少しは使われたようですが、未だに7兆円も積まれたままになっているといいます。

これを使って5月までにコロナ専門病棟をつくるとか、それにあてる人員を確保したり、足りなければ養成したりすることも十分に可能なはずでした。

多くの問題は事前に対応策がわからないことがあります。それは対応できません。さらに、対応策がわかっていても、それを実行するための財源がなければ、対応できないです。

ところが、事前にわかっていて財源もある事柄には対応策は簡単に実行できるはずです。今回の医療崩壊への対応はまさしくこの範疇にあてはまるものです。「第3波が来る」ということは、確実なことで、4~5月のときにわかっていました。

「いつ来るか、どの大きさか」は正確にはわからないことでしたが、来事自体確実でした。4月に1次補正をして、5月に2次補正をしました。その2次補正をしたときの、10兆円の予備費はそのこの十分に予測できる事柄に臨機応変に対応するためにつくったのです。

医療崩壊の危機の問題の本質は、あの予備費がどうなったかということです。予備費が検討されていたときにのは野党が、「大き過ぎる」と批判しました。そのため、執行停止しているような状態だったのです。そちらの方が大問題です。コロナ専門病棟をどこかに建てておけば、少なくとも病床は確保できていたはずです。5ヵ月あれば十分建てられます。人員も足りなければ、養成もできたはずです。

最悪でも、応急処置でプレハブを設置し、機械を入れれば問題ないですし、諸外国はそうやっているところもあります。

それに日本は感染者の数、重症者の比率は海外に比べて桁違いで低いです。1桁、2桁違います。それでなぜ対応できないのか、全く理解できません。そういうようなところをきちんと見て、いまからでも対応することが国民のためになるはずです。

それに当初はコロナは感染症法上の扱いで、特に最初の方で感染した方々は、厚生省の感染分類で2類相当の扱いで、全員入院しなくてはいけなかったのですが、10月の終わりくらいに変えました。基本的には5類相当で扱って、即入院でなくて自宅や宿泊施設での療養も可能になりました。そのためホテルを借り上げることでも対応できるはずです。そのための財源も十分ありました。

それを考えると、「厚生労働省は何をやっている」ということになります。野党も「桜を見る会」よりもそういうところを議論したほうが、国民にとってより意味があると思います。桜の話をされても一部野党は盛り上がりますが、いまのこのコロナには関係ありません。

それに、すでに検察当局がすでに介入しているわけですから、「桜問題」など国会で少し話すくらいなら良いですが、それで野党が審議時間のほとんど使ってしまうことは、多くの有権者は到底容認できないでしょう。そもそも、国会とは立法府であり、人を裁く場ではありません。

桜を見る会

ただ野党としては、「予備費」については積みすぎであると批判していた手前国会で審議することには抵抗があるのでしょう。しかし、元々厚顔無恥な野党なのですから、反対したことなどおくびにも出さす「せっかく積んだのだから使え」と批判する手もあったと思います。

いままで、野党はは恥ずかしいことを散々繰り返してきたのですから、いまさら恥の上塗りをしたところで、何も失うものはないはずです。今回は国民を救うことにもなる「予備費」で政府を責めてほしかったです。

5月に、「2波、3波のときにどう対応するのか」ということで予備はがつくられたはずですが、「なぜこんなに積むのか」という批判も相当あります。この補正予算の名称は、「新型コロナウイルス感染症対策予備費」です。

「資金使途をどうのこうの」と言っていた人もいましたが、第二波、三派波が来るのは確実視されていたのですから、それを使うしかないかったはずです。もし、使って第二波、第三波が来なかったとしても、誰も批判する人はいないでしょうし、批判するような人がいたとしても逆に多くの人から批判されることになったと思います。

予備費は第三波事前に使うべきというのは、当然のことであり、なぜそうしなかったのか、あまりに不思議ですし、異様だともいえます。

政府、その中でも特に厚労省は、「いままで一体何をしていたんだ」ということになります。幸いなことに、日本では諸外国に比較して、重傷者、死者ともに桁違いに少ないですし、コロナ感染の過去の状況をみていれば、1月、2月あたりにはある程度落ち着くとは思われますが、それにしても今からでも遅くないので、予備費を使って感染症対策を十分に行うべきです。

第三波対応でもこの有様ですから、日本の財政当局は、本当に残り7兆円もある予備費を3次補正の一部に組み込み、さらに、民間需要が出てくるという考えにくい前提をとることで、3次補正を小さくしてしまうかもしれません。

完璧にできることですら、できないのですから、今のままだと3次補正も小さな規模になり、失業や自殺の増加は不可避となる可能性が大です。菅政権はこの問題を何とかすべきです。

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2020年12月1日火曜日

中国が輸出管理法を施行 梶山経産相「企業はしっかり備えを」―【私の論評】先進国が中国から唯一学べることは、統治と実行を分離しない政権はいずれ崩壊すること(゚д゚)!

  中国が輸出管理法を施行 梶山経産相「企業はしっかり備えを」

梶山弘志経済産業相=1日午前、首相官邸


 中国が、国家安全に関わる戦略物資や技術の輸出を規制する「輸出管理法」を1日に施行した。中国の安全保障に害を及ぼすとみなした企業をリスト化して禁輸措置をとることが可能となり、対中圧力を強めている米国に対抗する狙いがある。施行までに管理対象となる品目を公表していないなど、運用をめぐる不透明さに海外で懸念が強まっている。

 同法は、安全保障に関わると判断した物資や技術などを当局がリスト化して輸出を制限する。対象品目を輸出する際には、事前に輸出先や使い道を中国当局に申請し、許可を得ることが必要になる。特定の外国企業をリスト化して輸出を禁止できるようにするなど、米国などに対する報復措置を整える狙いが鮮明だ。




 管理対象品目には、中国が世界の生産シェアの6割強を占めるレアアースが入るとの見方があり日本企業も警戒している。

 梶山弘志経済産業相は1日の閣議後記者会見で、同法については「どのように運用され、どんな品目が対象になるのか依然として明らかでない」と指摘。日本企業に「米中それぞれの市場における事業が阻害されないよう、しっかりと備えてほしい」と求めた。問題が起きれば政府が支援する意向も示した。

【私の論評】先進国が中共から唯一学べることは、統治と実行を分離しない政権はいずれ崩壊すること(゚д゚)!

安全保障上の問題を理由とする輸出規制のための法律は多くの国がすでに制定しています。輸出品が核兵器などの武器開発に使われた結果、自国の安全保障が危うくなることを防ぐためで、日本にも「外国為替及び外国貿易法」などがあります。中国が同様の法律を整備することも当然です

ところがその内容を詳しく見ると、伝統的な安全保障に関する世界の常識とはかけ離れた中国の異様な考え方が見えてきます。


この法律はまず、戦略物資など管理品目を決めて輸出を許可制にするとともに、自国の安全保障などを理由に禁輸企業のリストを作り、これら企業への輸出を禁止するとしています。管理品目や禁輸対象企業のリストは年内にも策定すると伝えられています。

米国が大統領選と政権移行期というタイミングでのこうした動きは、中国に対する米国のさまざまな輸出規制への対抗措置手段を法的に整備し、次の大統領がトランプになろうがバイデンになろうが、新政権の出方次第では厳しい措置を発動するという構えを見せる意図があるのでしょう。

しかし、この法律にはそれ以外に注目すべき点があります。法案作成の最終段階でこの法律には「域外適用規定」が追加されました。その内容は「中国国外の組織と個人が、本法の規定に違反し、拡散防止などの国際義務の履行を妨害し、中国の国家安全と利益に危害を及ぼした場合は、法に基づいて処理し、その法的責任を追及する」となっています。こうした条文は主要国の法律にはありません。

この条文が何を意味しているのか、実はよくわかりません。「中国国外の組織と個人」「中国の国家安全と利益」「危害」などのキーワードの定義が書かれていないからです。「中国の国家安全」は漠然とながら想像できますが、その次に出てくる「利益」や「危害」は幅広い意味を持つ言葉です。

「利益」は軍事にとどまらず、政治、経済、社会などあらゆる分野に拡大解釈できます。その判断は中国共産党しかできないでしょうし、特定国の特定企業を意図的に排除しようと思えばいくらでも恣意的に法律を執行できます。一方、企業にとってはリスクを回避しようのない規定です。

さらに続く部分で「法に基づいて処理」と書かれているが、ここでいう「法」はその前に出てくる「本法」とは明らかに区別されており、輸出管理法以外の法が適用されそうです。ただ、どの法律が適用されるのか不明です。そうして最後の「法的責任の追及」も何を意味しているのかわかりません。

意図的に抽象的な言葉を並べることで、中国当局が好きなように解釈し、幅広く適用できるようにしているとしか考えられないです。日米欧の主要産業団体は法律の草案が公表された段階で危機感を持ち、中国政府に対して「外国企業を著しく不安にさせる」などとして同条項の削除を求めたのですが、要求は受け入れらませんでした。

中国の習近平国家主席が昨年5月20日、江西省内のレアアース企業を視察した


さらに、この条項とともに注意深く分析しなければならないのが、中国の安全保障についての考え方です。

中国の国家安全についての考え方は習近平国家主席が2014年に打ち出した「総体国家安全観」によく示されています。その内容は日米欧など主要国の伝統的安全保障の概念とはかなり異なっています。

まず、国家安全の対象に「国土の安全」「軍事の安全」など10余りの領域を列挙していますが、その冒頭に挙げているのは「政治の安定」です。さらに習氏は「対外的安全保障と対内的安定維持を同時に重視する」とも語っています。

中国憲法の前文には「中国の各民族人民」が「中国共産党の指導の下」にあることが明記されています。さらに習氏は2017年の党大会で、「党政軍民学、東西南北中、一切の活動を党は領導する」と発言しています。

これは共産党はもとより、政府、人民解放軍、民間部門、学術部門などすべての分野において、また地理的にも中央を含め中国全土で共産党指導部が主導権を持つという権力集中を意味しています。つまり、中国における政治の安定とは、中国共産党の一党支配の維持・継続を意味しているのです。

近年、安全保障という言葉は軍事に限定されず、経済や地球環境など幅広く使われることが増えてきました。伝統的には軍事的な面が中心で、外国軍の侵略などから領土、主権、国民を守ることなどを意味しています。そのため各国は自国の軍事力を整備するとともに、貿易面では武器に転用されかねない製品や技術の輸出を規制しています。

ところが中国共産党の安全保障の考え方は、習近平主席が強調しているように政治の安定が最優先であり、また「外からの脅威」とともに「国内の安定」も安全保障政策上、重要な課題になっているのです。

対内的安定がなぜ重要なのでしょうか。中国共産党は、新疆ウイグルやチベット、内モンゴルなど各自治区での少数民族の独立運動や香港の民主化運動、さらに台湾問題など中国は国内に深刻な問題を抱えています。また、人民が政府や企業を相手に集団で諸要求の実現を求めてデモや暴動を起こす「群体性事件」も深刻な問題となっています。正確な数は公表されていないが1年間に10万件以上起きていると言われています。

群体性事件は、中国社会が抱える地域格差、所得格差などさまざまな矛盾が解決できないため、人民に不満がたまっていることを示しています。そうして、これらの運動が政府批判、反体制運動に広がっていくと、共産党一党支配の正統性を揺るがしかねません。中国共産党にとってこうした運動を抑え込むことが対内安定維持であって、最も重要な安全保障上の課題となっているのです。

問題は中国流の安全保障観では、中国国内の安定と対外的安全保障が不可分となっていることです。少数民族の独立運動や香港の民主化運動について、中国政府は中国共産党の統治の正統性に傷をつけないため自らの非を一切認めず、一貫して「外国勢力が国内勢力と裏で連携、結託している」として暴動などを取り締まっています。そうして米国などが人権問題であると非難すると、「内政干渉である」と激しく反発しています。

こうした観点から輸出管理法の域外適用規定を読めば、そこに込められた政治的意図が透けて見えます。つまり、中国政府は国内の民主化運動などに関与した国があれば、本来の輸出管理の目的を外れてこの規定を自由に使い、その国の企業などを制裁対象にすることができるのです。

同じような内容は6月に成立した香港国家安全維持法の条文にも盛り込まれています。同法には「国家安全保障を脅かす外国または域外勢力との共謀罪」が規定され、香港に住んでいない外国人もこの法律によって処罰すると書かれています。

つまり、中国の安全保障の最大の目的は共産党支配を安定させることであり、それは国外の脅威への対処だけでなく国内の反政府運動などを抑え込むことも意味しているのです。そうして、国内政策の矛盾に対する批判の矛先が共産党に向かわないようするため、「内政干渉」などを理由に国外に批判の対象を作って制裁措置をとるのです。それを正当化するための法律の一つが今回の輸出管理法なのでしょう。

よく言われることですが、日本や欧米諸国は、法によって権力を拘束する「法の支配」(Rule of Law)が定着しています。これに対し中国のシステムは法が権力者である中国共産党に奉仕する「法による統治」(Rule by Law)となっています。今回の輸出管理法も明らかにこの規則が当てはまっています。

ドラッカー氏は、政府の役割である統治について、以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。「統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い」というのです。

しかし、ここで企業の経験が役に立ちます。企業は、これまでほぼ半世紀にわたって、統治と実行の両立に取り組んできました。その結果、両者は分離しなければならないということを知りました。現在の上場企業等は、両者が分離されているのが普通です。

たとえば、最近は「○○ホールディングス」等という持株会社の名前を聞くことがありますが、これら持株会社は株を所有して管理するだけの会社ではありません。様々な事業会社グループの中で、この持株会社が本部として、グループ全体の統治の役割を担っているです。

セブン・アンド・アイ ホールディングスの取締役会

企業において、統治と実行の分離は、トップマネジメントの弱体化を意味するものではありませんでした。その意図は、トップマネジメントを強化することにありました。実際、統治と実行を厳密に区分した企業は、大企業となっても成長しています。

憲法や人民解放軍を中国共産党の下に位置づけ、経済運営にまで直接介入し、さらに法律に「域外適用規定」の規定を設けて海外にまで直接介入しようとする中国共産党は、会社の規模が大きくなっても、統治と実行の両方を無理やり実行しようとする、企業の経営者のようです。そのような試みは必ず失敗することが、過去の歴史が示しています。

そうして、中国共産党とて例外とはならないでしょう。早晩、統治不能となり崩壊します。中国が例外のように見えるのは、その図体があまりにも大きいからです。大きな会社が、無理をして統治と実行を分離せずに、旧態依然の経営をしていれば、しばらくの間は小さな企業よりは持つでしょうが、いずれ崩壊します。今の中国もそうなります。

ただし、中国以外の国々、それも先進国といわれる国々や国連などの国際組織も、統治と実行の分離がしかりなされていないところがあります。それが、今日政府や国際組織の機能不全を招いています。

日本でも、そのために財務省があたかも大きな政治グループのように振る舞い政治に関与し、「政治主導」というあたりまえのことが未だに実現されていません。

今後数十年で、中国共産党は崩壊するでしょうが、統治と実行が分離されていなければ、何が起こるのかを、我々も中国共産党の崩壊の過程から学ぶべきです。

ちなみに、ドラッカー氏は、政府は統治をすべきであって、それ以外は政府の外に出すべきと主張しています。先進国の政府もいずれ段階的にでも、そのようにすべきです。そうでないと、いずれ現在の中国のように、機能不全を起こし、政府が崩壊するということにもなりかねません。

先進国が中国から学べるとすれば、これだけかもしれません。

未だ米国大統領選挙の結果がでていませんが、トランプ政権は輸出管理法に対抗する措置を実施するでしょう。それもかなり厳しい措置になると思います。たとえ、バイデンが大統領になったとしても、就任前に取り返しがつかなくなるくらいの、厳しい措置を実行するのではないかと思います。

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