バイデン大統領 |
「バージニアはどんどん青色(民主党のイメージカラー)に変わっている」。外遊先の英国で記者団に知事選の情勢を聞かれたバイデン氏は余裕をみせた。確かに同州は昨年11月の大統領選でバイデン氏が10ポイント差をつけてトランプ氏を破った。
だが1年で形勢が逆転したのはバイデン氏自らの支持低迷と、「トランプ色」を薄めたヤンキン氏の選挙戦略が奏功したからだ。トランプ氏本人から支持を得ながら選挙戦では終始、同氏から距離を置いた。
ヤンキン氏は1日夜の住民集会でも前大統領の名前を一切口にせず、教育、税金、治安など「食卓の話題」に集中した。学校教育で「批判的人種理論(CRT)」の導入禁止を訴えると歓声は一気に高まった。
CRTは人種差別や白人至上主義が教育や司法などの社会制度に構造的に組み込まれ、差別や格差を固定化させたとする理論だ。進歩的な教師らが学校教育に浸透を図っているとの批判を保守層が強め、その是非が全米の論争となっている。
教育と人種問題をからめた主張は、トランプ氏に不信感が拭えない無党派層と同時に、トランプ人気が根強い共和党支持層を取り込むためだ。CNNの出口調査によれば、ヤンキン氏は共和党支持者の96%、無党派層の54%、トランプ支持層の95%を獲得。狙いは的中した。来年の中間選挙で共和党がどう戦うか、その処方箋を示した形だ。
民主党候補のマコーリフ氏はヤンキン氏への攻撃で「トランプ批判」を連呼したが効果なく、その敗北はバイデン氏の不人気ぶりをかえって印象付けてしまった。
政権の看板法案が党内の路線対立で難航し直近の支持率は43%に低下。バイデン氏は外遊出発直前の先月末、大型経済対策法案の予算規模を1兆8500億ドルに半減させる妥協策を発表して打開を図ったが、穏健派の重鎮議員から合意を得られなかった。大型インフラ整備法案も、財政拡大に固執する下院の民主党左派の条件闘争に遭い棚上げ状態だ。
気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)首脳級会合でバイデン氏は「米国は世界中の国々を助ける義務がある」と指導的立場をアピールしたが、最初の信任投票の敗戦は今後のかじ取りに暗い影を落とす。米国が再び内向きに転じる兆候を同盟諸国は警戒するだろう。
民主党 マコーリフ候補:「みなさん、こんにちは。バージニアを愛しています」登場したのは、知事選の民主党候補マコーリフ氏。多くのメディアが駆けつけ、全米に生中継される中、そこに現れたのは・・・
記者:「民主党の候補者の応援に大物が駆けつけました。バラク・オバマ元大統領です」
オバマ元大統領:「バージニアをより良い将来に導きましょう。みなさんを信じていますよ。自分を信じて投票に行き、やるべきことをやりましょう。YES WE CAN!」退任後も人気を誇るオバマ元大統領がわざわざ応援に駆けつけたのには訳がありました。
共和党 ヤンキン候補:「我々が勝利するこの選挙は、バージニアの私たち全員のためのものです」共和党の知事候補のヤンキン氏。新型コロナワクチンやマスク着用の義務化に反対するなどバイデン政権の政策に批判的な立場で、着実に支持を伸ばしてきました。バージニア州では過去5回の知事選で民主党候補が4回勝利してきましたが、今回は支持率がほぼ並んでいます。
民主党にとってはバージニアでもし負ければ、来年の中間選挙でも厳しい戦いを迫られるとの危機感があったのです。そんな知事選の“陰の主役”とも言われているのが、この人でした。
民主党候補の選挙CM(トランプ前大統領):「ヤンキン氏はバージニアをまともにし、我々が知事に求める全てのことをやってくれるでしょう。全部取り戻すぞ、バージニアを取り戻せ」
民主党候補の選挙CM:「グレン・ヤンキン氏、トランプ氏の考えが一番
日本時間の27日午前にはバイデン大統領も応援に入り、こう強調しました。
バイデン大統領:「ヤンキン候補は人格検査で不合格だ。『大統領選挙が盗まれた』というトランプの嘘を市民に広げて回っている」勝敗を左右するのは無党派層の投票はどう動くのか。トランプ氏の存在が有権者にどんな影響を及ぼすのか。全米が注目しましたが、結局ランキン氏が勝利ました。その勝因は、上の記事にもある通り、ヤンキン氏が、トランプ前大統領の支持層を手放さず無党派層も取り込む勝利の方程式を編み出したことによるものでしょう。
8月4日にヤフーが発表した調査では、共和党支持者の66%が本当の大統領はトランプだと信じています。依然として、共和党で最大の支持者を持つ存在です。
いっぽう、バイデン大統領の支持率は急落していました。
バイデンは就任以来、50%以上の支持率を維持してきました。8月13日の金曜日、ロイターの世論調査では53%がバイデンの仕事ぶりを評価していました。それが、週明けの17日火曜日には46%にダウンしました。その間に何があったのでしょう。
8月15日、アフガニスタン全土がイスラム武装勢力タリバンの手に落ちたのです。20年間、24万の犠牲者を出し、3兆ドルを投じたアフガン戦争は米国の敗北に終わりました。
バイデンは米軍撤収について、「自国を守るために戦おうとしないアフガンの人々のために、米兵が命を落とすべきではない」と正当化しました。それは同盟国との結束を強めると言っていたバイデンが言ってはいけないセリフでした。
さらには、バイデンが最も力を入れてきたコロナ対策も行き詰まってきました。
バイデンは就任から破竹の勢いでワクチン接種を進めました。5月いっぱいまでで全人口の5割が少なくとも1回の接種、4割が2回接種を受けることができました。
ところがその後、接種率は伸びませんでした。8月になっても接種を2回受けた国民は6割しかいません。トランプは7月17日にバイデンのワクチン接種の遅れを揶揄しました。
「ワクチン接種を拒否してる人々が多いからだ。なぜなら、彼らはバイデン政権を信じていない、選挙の結果を信じていないからだ」
現在、米国のコロナ感染による死者は再び増えています。その99%は1回もワクチンを受けていない人々です。でも、未接種者が全人口の4割もいるので、収束にはまだほど遠いと言わざるを得ません。死者が増えれば、経済の立て直しもまたスローダウンし、バイデンの支持率もさらに下がるでしょう。
コロナ対策をめぐってトランプと戦ったニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事もその後、セクハラで辞任に追い込まれ、民主党は失点が続いています。
クオモ知事の性的ハラスメントを告発した、アナ・ラッチ氏の友人が撮影した写真 |
トランプのほうは、2024年の大統領選挙に向けて、着実に捲土重来の準備を固めています。支持者の熱狂度だけでなく、彼が大統領選から現在までに集めた寄付の額は1億ドル(約100億円)を超えます。
最新世論調査によると、民主党の大多数は、バイデン大統領以外の人物なら2024年大統領選で民主党が勝利する最善のチャンスが与えられると考えています。
バイデンは、大統領の座について1年足らずですでに支持率が低迷していますが、最新のマリスト世論調査で民主党が次期大統領選挙でどれだけバイデンを信頼しているかが明らかになりました。
同調査によると、民主党・民主党寄りの無党派の36パーセントは、バイデンが2024年の候補者のトップとなるべきだと考えています。
実に民主党と民主党寄り無党派の約半数は、バイデンが候補者のトップとならずに別の人物に出馬して欲しいと望んでいます。これはバイデン大統領が自身の党の信頼を維持しようと四苦八苦している状況を示す明快な数字です。
一方、共和党と共和党寄り無党派の50パーセントは、トランプ前大統領が2024年に共和党の候補者のトップになって欲しいと考えています。
共和党の35パーセントは、次期大統領選挙でトランプが共和党の候補者トップとなることに反対でした。
さらに、民主党と無党派左派の5人に1人は、バイデンが2024年に候補者トップとなることについてどちらともいえないと答えましたが、共和党でトランプについて同様の回答をしたのはわずか14パーセントでした。
バイデンの大統領就任1年目は、サプライチェーン危機、何万人もの不法越境移民、そしてアフガニスタン陥落を含む複数の危機によって打撃を受けました。
その上、インフレ増大によって冬の休暇前に経済が落ち込み続け、冬に近づきある現状でエネルギー価格が高騰しています。
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