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岡崎研究所
7月22日付のワシントン・ポスト紙(WP)は、同紙インテリジェンス・国家安全保障担当リポーターであるシェーン・ハリスなどの「英情報トップが、ロシアはウクライナでまもなく〝勢いを失う〟と言う。MI6の長、リチャード・モアはまたロシアの侵攻を〝壮大な失敗〟と描写した」という記事を掲載した。
MI6の建物とウクライナ国旗 |
このアスペン安全保障会議でのモアMI6長官の発言は注目に値する。英国の情報機関は情報の収集および分析において一般的に優れており、かつ外部に対する発言には慎重であるからである。もちろん情報源については明らかにしていないが、ロシア軍内の情報も勘案し、総合判断したものであろう。
プーチンの病気については、パーキンソン病である、血液関係のガンであるなどのうわさがあるが、CIAもMI6も否定しているので、そういう噂は根拠がないと考えてよい。
ウクライナに対するロシアの攻勢が「勢い」を失う可能性はモア長官の指摘通りあろう。特に兵員の補充が困難になっているのではないか。ウクライナに投入された兵力は通常のロシア軍の兵力の相当な部分であった。例えば、わが国の北方領土、択捉島よりもかなりの数の将校や兵士が行っている。
ロシアの兵力、世論の実態は?
プーチンは当初から徴兵兵士はウクライナに送っていないと主張し、その真実性については疑問も提起されているが、契約軍人をふくめ職業軍人が主として派遣されているということであろう。戦争を宣言し、総動員令を発出すればこの問題は解決されるが、これまでの経緯に鑑みそうはできず、せいぜい予備役招集にとどまっている。
武器の枯渇の問題も、イランからの無人機入手に見られるようにある。ウクライナ側がロシアの領土内攻撃を自制しているので、ロシアが戦闘で敗北することはないが、ロシア国内での戦争反対論は経済制裁に起因する困難もあり、徐々に強まっていくだろう。
例えば、ロシアの大富豪、エリツィンの娘婿のデリパスカが経済的困難が大きすぎると戦争に反対している。世論調査会社レバダセンターの調査結果では、プーチン支持が80%くらいで非常に高いが、この結果に重きはおかない。何故なら、ロシアのような政治体制では世論調査に本音で答えることは、ロシア人はあまりしないからである。
大祖国戦争で2600万人の犠牲を出しつつ、ナチスドイツに勝利したロシアの粘り強さは、防衛戦争ではなく、かつ兄弟殺しの面もあるウクライナ戦争においては発揮されないだろう。モア長官が言及しているアフガン戦争が先例としての価値が大きいと思われる。
バーンズ長官は米西部コロラド州で開かれたフォーラムで推計について説明し、ロシア側にとって「重大な一連の損失だ」と指摘。さらに「ロシアよりはやや少ないかもしれないが、ウクライナ側も同様に被害に遭っている」と語りました。
ロシア側の死者数を巡っては、英国防省が5月、約1万5000人が死亡したとされる旧ソ連によるアフガニスタン侵攻(1979~89年)に匹敵するとの推計を公表。ウクライナメディアによると、ウクライナ軍は今月20日現在で「ロシア側の損失」が3万8750人だと発表しています。
一方、ロシア軍は、3月下旬にウクライナ戦線で1351人の自国兵が死亡したと公表した後、死者数の発表を控えています。
複数の筋から少なくとも1万5千人の死者が、出ているのは間違いないようです。
オルガ・カチューラ大佐 |
8月5日付『ザ・テレグラフ』紙(1961年創刊)は、「ウクライナ人殺害を“自慢”していたロシア軍女性将校が死亡」と題して、ウクライナ戦争で初めてロシア軍女性将校が死亡したと報じました。
ロシア地元メディアによると、“ウクライナ人を殺害するのは何と楽しいことかと自慢”していた一個師団司令官が、ロシア軍内で最初に死亡した女性将校となりました。
オルガ・カチューラ大佐(52歳)で、ウクライナ東部ドネツク州ホルリウカ市において車で移動中にウクライナ軍のミサイル攻撃を受けて死亡したといいます。
彼女はロシアの傀儡政権であるドネツク人民共和国(DPR、2014年一方的に独立宣言した親ロシア反政府組織)に所属する大佐で、DPRはウクライナ市民を狙って砲撃しているとして西側諸国から糾弾されていました。
ウクライナ軍の戦略通信部はかつて、ウクライナ軍に汚名を着せるため、彼女が率いる部隊がウクライナ軍の制服をまとって市民を攻撃していたと非難しています。
ドネツク州出身の彼女は、悪名高い親ロシア派の反乱軍指導者のイゴール・ベズラー少佐(56歳)が率いる部隊に所属するまでは、長い間警察官の職に就いていました。
そして今年1月、ウクライナ西部在の裁判所から、彼女が不出頭のまま、市民を巻き込んだテロ行為に加わった罪で禁固12年の有罪判決が出されました。
ウクライナ情報部によると、彼女が2014~2015年の間、ウクライナ東南部ドンバス地方で発生した大規模戦闘の際に市民に向けて大砲を撃ち込むよう命令を下し、多くの犠牲者を出したことが上記の有罪判決に繋がっているといいます。
彼女はかつて、ロシアのテレビ局のインタビューに答えて、“ウクライナ人との戦闘を楽しんでいる”と豪語していました。
しかし、亡くなる1週間前のインタビューでは、自分は“ウクライナと戦っているのではなく、北大西洋条約機構(NATO)軍と戦っている”と主張していました。
なお、ウラジーミル・プーチン大統領(69歳)は8月4日、ロシア軍の最高の栄誉となる“ロシアの英雄賞”を授けることを決めました。
8月4日付『ザ・サン』紙(1963年創刊)は、「プーチン、ロシア軍で初めて女性将校を喪失」と、“邪悪な女性将校”と呼ばれた一個師団女性司令官が死亡したと報じています。
プーチン大統領は8月4日、ウクライナ軍によるロケット弾攻撃で死亡したオルガ・カチューラ大佐に、ロシア軍の最高の栄誉となる“ロシアの英雄賞”を授けることを決定しました。
同大佐は、ウクライナ戦争で死亡した97人目の将校とされています。
ロシアはウクライナでまもなく〝勢いを失う〟可能性もあるなか、米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は23日の日次リポートで、ウクライナ軍は南部ヘルソン州ですでに反転攻勢を開始した可能性があると指摘。今月15日以降にドンバス地方の主要な前線でロシア軍の砲撃が著しく減ったのは高機動ロケット砲システム「HIMARS」の効果だとし、HIMARSがロシア軍の前線に武器を供給していた数十の兵器庫を破壊したと分析した。
HIMARS |
ゼレンスキー大統領は21日、安全保障担当幹部らとの会合後、「前線で軍を進軍させ、占領者に新たに重大な損失を負わせる大きな見込みがある」と述べた。さらにウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が22日に掲載したインタビューで同大統領は、5-6月には1日100-200人に上っていた戦場での死傷者数が最近は30人前後にまで減少したと説明。ロシアに領土の割譲を認める休戦協定は結ばないと、あらためて強調した。
英スコットランドのセントアンドルーズ大学で戦略研究を専門とするフィリップス・オブライエン教授は、戦争が新たな段階に入りつつあることをこれら全てが示唆していると指摘。ロシア軍が電撃的にキーウ占領を目指し失敗した第1段階、勝利への道を進もうと東部の一部で撤退したのを第2段階と位置付け、「ドンバス地方でロシア軍の軍事力低下が続き、基本的に戦線が膠着(こうちゃく)するなら、ウクライナ軍による撃退は可能になるのかが問われることになる」と語りました。
同盟国から弾薬や装甲車両、対空システムなどの供給をまず確保することなしにロシアの支配地域を奪還できる能力がウクライナ軍にあるのかは判然としません。ロシアの侵攻が2月24日に始まって以来、ウクライナは数多くの反撃を試みてきましたが、総じて小規模にとどまっています。
ザポリージャ原発は露軍が占拠し、要塞(ようさい)化を進めています。
ウクライナの国営原子力企業「エネルゴアトム」はSNSで、原発が5日午後2時半頃と夕方、原発を占拠している露軍の攻撃を受け、高圧線や一部施設が損傷したと発表。露軍が、原発に配備した地対空ミサイルで原発が立地するエネルホダル市の変電所なども破壊し、大規模な停電と断水が起きたと訴えました。
6日の投稿では原発の状況に関し、「火災発生や放射性物質飛散の危険性が依然ある」と説明しました。
一方、露国防省は5日、緊急声明で、一連の攻撃はウクライナ軍によるものだと発表し、ゼレンスキー政権による「核テロ」だと主張しました。ウクライナ国防省情報総局は7月下旬、原発付近の露軍駐屯地を自爆型無人機で襲撃したことを認めていました。露軍には反転攻勢をけん制しつつ、ウクライナ非難の世論作りにつなげる思惑があるようです。
ロシアの欧州逆制裁とプーチンの思惑―【私の論評】ウクライナを経済発展させることが、中露への強い牽制とともに途上国への強力なメッセージとなる(゚д゚)!