2025年3月4日火曜日

日中の通貨安誘導を批判 関税引き上げ示唆―トランプ米大統領―【私の論評】トランプの相互関税が日本を直撃!消費税撤廃で米国製品輸入増か、関税戦争で景気後退か?

日中の通貨安誘導を批判 関税引き上げ示唆―トランプ米大統領

まとめ
  • トランプ大統領が日本と中国の通貨安誘導を批判し、不公正な貿易条件を是正するために追加関税を課す可能性を示唆したこと。
  • 関税を簡単かつ効率的な解決策と位置づけ、発言後に円買い・ドル売りが進み円相場が上昇したこと。

 トランプ米大統領は3日の記者会見で、日本や中国が通貨安を誘導していると批判し、これによる不公正な貿易を是正するために関税を活用すると述べた。日本からの輸入品にも追加関税を課す可能性を示唆し、関税が「簡単かつ効率的で公正さを生む」と強調。

 中国の習近平国家主席や日本の首脳に通貨安をやめるよう伝えたと明かし、必要なら商務長官に指示して関税を引き上げると語った。この発言を受け、ニューヨーク外国為替市場では円買い・ドル売りが進み、円相場が1円以上上昇した。

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【私の論評】トランプの相互関税が日本を直撃!消費税撤廃で米国製品輸入増か、関税戦争で景気後退か?

まとめ
  • トランプ前大統領は「相互関税」導入を指示し、日本の消費税を非関税障壁と問題視した。
  • 日本の消費税撤廃はGDPを3~5%押し上げ、米国からの輸入増加につながる可能性がある。
  • しかし、輸入増加が米国製品に集中するとは限らないが期待はできる。
  • 一方、米国の対日関税引き上げは、日本経済に打撃を与え、米国の輸出や供給網にも悪影響を及ぼす。
  • 石破政権は迷わず消費税を撤廃し、日本経済の復活を図るべきである。


2025年2月14日、NHKや日本経済新聞が報じたところによると、トランプ大統領は「相互関税」の導入を指示する文書に署名した。これは、貿易相手国が米国製品に課す関税や規制と同等の関税を課すという方針である。その中で、日本の消費税が非関税障壁として問題視された。ホワイトハウス高官は「日本の関税は比較的低いものの、構造的な障壁が高い」と指摘した。トランプ氏はEUの付加価値税(VAT)を例に挙げ、「関税と本質的に同じ」と主張しており、同じ論理が日本の消費税にも適用される可能性がある。

日本の消費税撤廃が景気を刺激し、米国からの輸入を増やすか、それとも米国が日本製品に関税を課し、日本の景気が悪化することで米国製品の売上が落ちるのか。どちらのシナリオも経済理論上、成立しうる。

まず、日本の消費税撤廃の影響を考える。日本で消費税が撤廃されれば、消費者の可処分所得が増え、購買意欲が高まる。2025年3月時点で日本の消費税率は10%。これがゼロになれば、家計の実質的な購買力は大きく向上する。2014年に消費税が5%から8%に引き上げられた際、個人消費が落ち込み、GDP成長率がマイナスに転じた。逆に、消費税を撤廃すれば、内閣府の試算によるとGDPは3~5%押し上げられる可能性がある。

景気が回復すれば輸入需要も増し、米国産の農産物やエネルギー、工業製品の需要が拡大するかもしれない。日本は米国農産物の主要輸出先であり、年間約150億ドルを輸入している。消費税撤廃で日本の消費が活性化すれば、米国の農家にとっても追い風となる。結果として、米国の対日貿易赤字(2024年で約600億ドル)も縮小する可能性がある。

しかし、輸入増加が米国製品に集中するとは限らない。為替レートや中国、EUとの競争が影響し、米国製品が割高なら効果は限定的だ。さらに、日本の消費税は国家歳入の約20%(2024年で約22兆円)を占めている。撤廃による財政赤字の拡大が景気回復の足を引っ張るリスクも無視できない。2019年の消費税10%引き上げ時、政府は財政健全化を理由に増税を正当化した。今度はその逆の議論が巻き起こるだろう。

一方、米国が日本製品に高関税を課した場合、日本経済は深刻な打撃を受ける。日本の輸出産業はGDPの15~20%を占め、米国は最大の輸出先の一つだ(2024年時点で約20%)。日本経済新聞の試算では、米国が25%の追加関税を課した場合、日本の対米輸出が年間約5兆円減少し、GDP成長率は0.8~1%低下するとされる。

1980年5月10日、米ミシガン州で日本の乗用車にハンマーを振るう自動車工場をレイオフ(一時解雇)された男性。

1980年代の貿易摩擦の際、米国は日本車の輸入を制限し、日本の自動車メーカーは苦境に立たされた。しかし、現地生産を増やすことで対応した歴史がある。だが、今回は関税が広範囲に及ぶ可能性があり、日本全体の景気後退が避けられない。そうなれば、日本の消費が冷え込み、米国からの輸入、特に高価格帯の消費財や資本財の売上が落ちる。2020年のコロナ禍でも、日本の消費が低迷し、米国産農産物の輸入が一時的に減少した例がある。

さらに、日本が報復関税を検討する可能性もある。2025年2月の報道では、日本政府がその準備を進めているとの情報がある。そうなれば、米国の輸出産業は二重の打撃を受ける。日本からの部品供給が滞れば、米国のサプライチェーンにも混乱が生じる。2021年の半導体不足の際、米国の自動車生産が遅延した事例を思い出せば、その影響の深刻さは明らかだ。

短期的には関税の引き上げが米国の歳入を増やし、国内産業を保護する効果があるかもしれない。しかし、日本経済の悪化が波及すれば、米国の輸出減少や供給網の混乱を招き、長期的にはマイナスの影響が避けられない。

日本の長期停滞の原因は金融政策の失敗にある。1990年代以降、日本銀行はマネタリーベースを十分に拡大せず、デフレ期待を払拭できなかった。2023年にインフレ率が一時2%を超えたが、これはエネルギー価格上昇などのコストプッシュ型であり、需要拡大によるインフレではなかった。

日銀植田総裁

FRBは2021年、大規模な金融緩和を実施し、インフレ率を一時10%近くまで押し上げた。これにより消費と投資が刺激され、米国のGDP成長を支えた。しかし、日本銀行の慎重な姿勢が続いた結果、日本では同様の効果が見られなかった。

ユーロ圏では、ECBがマイナス金利政策と資産購入を進め、インフレを回復させた。中国は為替介入と信用統制で通貨安を維持しつつ、インフラ投資で内需を補完している。これらの国と比較すると、日本の金融政策の停滞が際立つ。

総合的に見れば、日本の消費税撤廃による景気刺激が、米国からの輸入増加につながる可能性が高い。関税の引き上げは短期的な効果しかなく、日本経済の縮小が米国にも跳ね返るリスクがある。伊藤忠総研の試算では、関税戦争がエスカレートすれば、米国のGDP成長率は0.5~1%低下する可能性がある。

石破政権は迷うことなく消費税を撤廃すべきだ。トランプ大統領のように、ドラスティックな政策も厭わない相手には、こちらもそれ相当の政策をすべきだ。それに、財政再建などという言い訳で国民を苦しめるべきではない。日本経済の復活には、思い切った決断が必要なのだ。

先日も当ブログに掲載したように、安全保障面では、海自護衛艦台湾海峡初の単独通過という政治決断をした石破首相だが、経済面では同様なドラスティックな決断ができるのだろうか。

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2025年3月3日月曜日

海自の護衛艦が台湾海峡を通過 単独での通過は初 中国をけん制か―【私の論評】あきづき、パシフィック・ステラー、トランプ談話が一本の糸で共鳴!インド太平洋地域の団結を誇示

海自の護衛艦が台湾海峡を通過 単独での通過は初 中国をけん制か

まとめ
  • 海上自衛隊の護衛艦「あきづき」が初めて単独で台湾海峡を通過、その後南シナ海やフィリピン海域でアメリカなどと共同訓練を実施。
  • 台湾海峡は国際水域とされるが中国が反対しており、日本による通過は中国の軍事圧力をけん制する狙い。
海上自衛隊の護衛艦「あきづき」

海上自衛隊の護衛艦「あきづき」が先月上旬、初めて単独で台湾海峡を通過したことが判明した。通過後、南シナ海やフィリピン海域でアメリカや他国との共同訓練に参加した。

台湾海峡は国際水域とされるが、中国はこれを否定し、日本の通過に反発している。今回の行動は、中国の軍事圧力をけん制する狙いとみられる。

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【私の論評】あきづき、パシフィック・ステラー、トランプ談話が一本の糸で共鳴!インド太平洋地域での団結誇示

まとめ
  • 中国が昨年12月に沖縄周辺で軍艦と海警船を共同航行させ、尖閣諸島近辺で武装した海警船を展開するなど挑発を強めており、石破首相は危機感から「あきづき」の台湾海峡通過を極秘裏に決断したとみられる。
  • 「あきづき」は通過後、2月5日に南シナ海で日米豪比共同訓練、2月8日から18日にフィリピン東方で日米仏の「パシフィック・ステラー」に参加し、フランス空母の参加や沖縄寄港で三カ国の結束を示した。
  • トランプ大統領は2月19日、「硫黄島の戦い」80周年談話で日米同盟を称賛し、中国への対抗姿勢を打ち出し、2月7日の石破首相との会談で確認した「台湾海峡の安定」を補強した。
  • 「あきづき」の行動とトランプの談話は直接関係ないようだが、中国への対抗と日米連携の強化という共通目標で間接的につながり、タイミングの近さがその意味を増幅させた。
  • 日米仏の協調が「あきづき」の通過、「パシフィック・ステラー」、トランプ談話で一体となり、インド太平洋での団結を誇示し、中国に強いメッセージを突きつけた。


中国が昨年12月から今年の1月にかけて、沖縄本島と宮古島の間で軍艦3隻と海警船3隻を初めて一緒に走らせたり、尖閣諸島周辺で76ミリ砲を積んだ海警船4隻をうろつかせたりと、挑発をエスカレートさせているのは見逃せない事実だ。石破首相はこれに危機感を募らせ、「あきづき」を送り込む対抗策を決断したようだ。

関係閣僚の声を聞き、最終的にGOサインを出したが、その計画は極秘裏に進み、事前に一言も漏らさなかった。日本の動きに目を光らせる中国に悟られないよう、緻密に仕組まれた作戦だったのだろう。親中的ともみられた、石破政権にも抗えない何かがあったものとみられる。

「あきづき」は台湾海峡を抜けた後、2月5日に南シナ海で日米豪比4カ国の共同訓練に飛び込み、息つく間もなく2月8日から18日にフィリピン東方で日米仏の「パシフィック・ステラー」に参加した。この訓練は2月10日から18日にかけて繰り広げられた大軍事演習である。

アメリカの空母「カール・ヴィンソン」が2月17日、Facebookで「かが」やフランスの「シャルル・ド・ゴール」と並ぶ訓練の写真を公開した。そこには「スーパーホーネット」「ライトニングII」「ラファールM」といった戦闘機が勢揃いし、「あきづき」も含まれる艦隊が堂々と海を切り裂く姿が映し出されている。何とも迫力のある光景だ。

カール・ビンソンの公式Facebookで公開された写真の一枚

フランス空母が太平洋に姿を見せたのは1960年代以来初めてで、インド太平洋への本気度を世界に示す出来事である。2月13日には「シャルル・ド・ゴール」の艦隊が沖縄の米海軍ホワイトビーチに堂々と寄港し、「クレマンソー25(パシフィック・ステラー参加を含む、仏の空母打撃群の太平洋での行動作戦の仏の呼称)」の一環として三カ国の絆をこれでもかと見せつけた。

さらに、トランプ大統領は2月19日、「硫黄島の戦い」80周年を祝う談話をぶち上げ、2万人の負傷者と6000人以上の死者を出したあの戦いをアメリカの誇りと讃え、日米が敵から盟友へと変わった軌跡を熱く語った。「自由を守る未来を築く」と締めくくり、中国に対する結束を鮮明に打ち出している。2月7日の石破首相との会談で「台湾海峡の安定」を確認した流れともしっかりとつながる力強いメッセージだ。歴史を盾に今を語る、トランプらしい豪快な一撃である。

「あきづき」の動きは日本が独自に決めたもので、トランプの談話とは別物と見られている。アメリカと事前に相談した可能性はあるが、確かな証拠はない。それでも、両者は中国への対抗と日米の結束という同じ旗の下に立っている。「あきづき」の件は、トランプは日米首脳会談の直前においてすでに了解していただろう。このことがあったから、トランプは石破に対して塩対応はできなかったのだろう。ゼレンスキーとの会談とは対照的だった。

「あきづき」が海峡を抜け、日米首脳会談で方向性が固まった直後、トランプが談話で歴史を引き合いに出して補強した形だ。中国はこれを連続したプレッシャーと受け止めたかもしれないし、タイミングが近かったことでその意味はさらに大きく響いた。

硫黄島80年で、談話を発表したトランプ大統領

結局、直接の因果関係はないかもしれないが、戦略的には深い結びつきがあるのだ。日米仏が中国との対決を見据え、「あきづき」の台湾海峡通過、「パシフィック・ステラー」、そしてトランプの談話がまるで一本の糸でつながったように響き合い、インド太平洋での団結をこれでもかと誇示する流れができた。意図を超えたところで、このつながりは戦略の文脈で生まれ、歴史と今を結ぶ力強いメッセージとして、世界のリーダーたちに轟くものとなったことだろう。中国に対しては、これまでないくらいの力強いメッセージとなったのは間違いないだろう。

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2025年3月2日日曜日

次世代電池技術、機微情報が中国に流出か 潜水艦搭載を検討中 経産相「調査したい」―【私の論評】全樹脂電池の危機:中国流出疑惑と経営混乱で日本の技術が岐路に

次世代電池技術、機微情報が中国に流出か 潜水艦搭載を検討中 経産相「調査したい」

まとめ
  • 情報漏洩の疑い: APB社の全樹脂電池技術が、中国と関係の深い日本企業(TRIPLE-1)経由で中国企業(ファーウェイ)に流出した可能性がある。
  • 経済安全保障リスク: 福島伸享議員が、潜水艦への転用で軍事バランスが逆転する危険性やスパイ行為の可能性を指摘し、政府に調査を要求。
  • 技術の重要性: 全樹脂電池は安全性と容量に優れ、次世代潜水艦への搭載が検討される日本発の先端技術で、NEDOから75億円の補助金が投じられている。

APB創業者の堀江英明氏

 全樹脂電池の機微情報が中国企業に流出した可能性が浮上した。APB社(福井県越前市)が中国と関係の深い日本企業に経営権を握られ、情報漏洩が疑われている。武藤容治経済産業相は経済安全保障の観点から調査意向を示した。

 衆院議員の福島伸享氏は、政府に実態調査を求め、特にAPB社の筆頭株主がTRIPLE-1(T社)に変わり、中国企業との接点が増えた点を問題視。T社取締役が主導したファーウェイ技術者による工場見学や技術情報問い合わせが漏洩の具体例とされた。

 福島氏は潜水艦への転用で軍事バランスが逆転するリスクを警告し、スパイ行為の可能性も指摘。警察庁は先端技術流出対策の重要性を認め、公安調査庁も関心を寄せている。全樹脂電池は安全性と容量で優れ、次世代潜水艦への搭載が検討されている日本発の技術である。

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【私の論評】全樹脂電池の危機:中国流出疑惑と経営混乱で日本の技術が岐路に

まとめ
  • 技術の有望性: APBが開発する全樹脂電池は、安全性と容量に優れ、次世代潜水艦への搭載が検討される先端技術。
  • 経営権争い: 2024年夏に創業者の堀江英明氏が解任され、TRIPLE-1出身の大島麿礼氏が新代表に就任したことで、資金調達が停滞している。
  • 情報漏洩疑惑: TRIPLE-1が中国企業と接触し、2023年3月にファーウェイの技術者がAPB工場を見学したことで、技術流出が疑われている。
  • 技術の重要性とリスク: NEDOから75億円の補助金を受けたこの技術は、経営混乱により量産化が不透明となっている。
  • 経済安全保障の懸念: 政府と関係機関は、日本の技術保護のため状況を注視し、対策が求められており、日本ではやはりスパイ防止法を制定すべきである。

福井県越前市に拠点を置く日本のスタートアップ企業APB

APBは福井県越前市に拠点を置く日本のスタートアップ企業だ。全樹脂電池を開発している。この電池は次世代潜水艦への搭載が検討されるほど有望な技術である。全樹脂電池は電極に金属を使わず樹脂を採用することで、発火や爆発のリスクを大幅に減らす。容量は従来型の約2倍だ。生産コストは半減できるという特徴を持つ。

2018年に日産自動車出身の堀江英明氏によって設立されたAPBは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から75億円の補助金を受けている。川崎重工業と共同で潜水艦向けの研究を進めてきた。しかし、現在この企業は経営危機と情報漏洩疑惑に直面している。経済安全保障上の懸念が高まっている。

2024年夏、創業者の堀江氏は代表取締役を解任された。福岡のスタートアップTRIPLE-1出身の大島麿礼氏が新代表に就任した。これにより状況が大きく変わった。経営権争いが激化している。資金調達にも影響が出ている。2023年に北国フィナンシャルホールディングス(FHD)傘下のQRインベストメントから調達した12億円の資金は、堀江氏の続投が条件だった。追加融資が止まった可能性がある。

大島麿礼氏

さらに、FHDの投資子会社が東京地裁に会社更生法の適用を申請した。その後取り下げた一連の動きは、TRIPLE-1との争いの激しさを示している。

一方で、TRIPLE-1と中国企業との関係が注目されている。TRIPLE-1は半導体設計・開発を主とする企業だ。ビットコイン採掘用のチップ「KAMIKAZE」を開発している。ユニコーン企業とも称される。2022年に三洋化成からAPBの株式を取得した後、中国企業との接触が増加した。

特に、2023年3月にTRIPLE-1派遣の取締役が主導した。中国通信機器大手のファーウェイの技術者4人がAPB工場を見学したことが問題視されている。見学前には「全樹脂電池の素材に興味がある」とのメールが交わされた。その後も技術情報の問い合わせが続いたと報告されている。衆院議員の福島伸享氏は、「潜水艦に転用されれば日中間の軍事バランスが逆転する」と警告している。

TRIPLE-1の中国とのつながりは、ディレクターのZhongxin Panという人物の存在からも推測されている。Zhongxinは中国語で「忠信」と表記される。Panは中国で一般的な姓だ。ただし、この人物の国籍や背景は明らかではない。証拠は間接的である。

表:TRIPLE-1と中国との関連エピソード
エピソード詳細証拠の強度
Zhongxin Panのディレクター就任名前から中国とのつながり推測間接的
ファーウェイの工場見学(2023年3月)技術者4人がAPB工場を見学、技術情報の問い合わせが続いた直接的、報告済み
中国企業との提携提案堀江氏が大島氏から中国企業との業務提携を提案されたと証言証言ベース
北村報告書の指摘取締役に「中国との密接な関係」が見受けられると記されている報告書ベース

北村滋元国家安全保障局長が代表を務める北村エコノミックセキュリティ合同会社の報告書では、TRIPLE-1の取締役について「中国との密接な関係が見受けられる」とされている。具体的な裏付けは不明だ。堀江氏は「大島氏が中国企業と秘密保持契約を結んだ。技術情報を共有した形跡がある」と証言している。懸念を表明している。

TRIPLE-1は華々しい看板を掲げつつ、その裏で何かを隠しているような気配が濃厚だ。実態の曖昧さ、中国との不自然な接近、経営の不透明さ。これらが絡み合い、ただの企業とは言い難い怪しさを放っている。真相が明らかになるまで、疑いの目は離せない。

こうした状況の中、TRIPLE-1の行動が意図的なスパイ行為なのか、単なるビジネス上の接触なのかははっきりしていない。警察庁は「先端技術流出対策は極めて重要」と強調している。公安調査庁も強い関心を示している。情報漏洩の直接的な証拠は限定的だ。それでも、全樹脂電池が中国に流れ、潜水艦に転用されれば、日中の力関係の変化のリスクは無視できない。

無論、中国が全樹脂電池を搭載した潜水艦を製造して配備したからといって、それだけではすぐに日中の軍事バラランスが崩れるということはない。潜水艦は、日本の高度な対潜水艦戦(ASW:Anti Submarine Warfare)能力の要ともなる重要な要素だが、潜水艦の動力源だけが優秀なものに変わったとしても、それだけでASWの能力が飛躍的に伸びるわけではないからだ。ASW能力は、様々な要素がからむ、総合的であるだけではなく統合的な能力だからだ。それにしても、この技術が中国側にわたり、それが実用化されれば中国を利することは間違いない。

それにこの技術だけではなく、他の機微な技術も中国の手にわたれば、現在は圧倒的に日本が強い海戦能力が中国に逆転される可能性もある。そうなれば、由々しき事態だ。

TRIPLE-1の会社概要

APBの全樹脂電池は日本が誇る先端技術である。経営権争いと情報漏洩リスクにより、量産への道は不透明だ。堀江氏はこの状況について、「トリプルワンは半導体技術などに出資をしている会社だが、技術が分かる人はいないようだ。43億円の資金をAPBに入れるとの約束も事前にしていたが、一向に何も実行されることもない。実態が不明な会社に株を引き渡してしまったことは、私の責任だ」「今回のように技術の価値が分からない人の手に渡るような事態は想定していなかった。わなにかかったと言われても仕方ない」と悔やんでいる。

裁判所の判断や新たなスポンサー探しが注目されている。政府と関係機関は、この状況を注視している。日本の技術を守るための適切な対策を講じる必要がある。これだけ警鐘が鳴り響いているのだ、もはや月並みと言っていいくらいだが、やはり日本は、スパイ防止法を制定すべきだろう。
主要引用元 

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2025年3月1日土曜日

予算案修正案「財務省の勝ち、予備費1兆円以内の枠ありき」 嘉悦大教授・高橋洋一氏―【私の論評】3野党が結託したら予算はどうなった? 財務省の裏ワザと特例公債法の闇

予算案修正案「財務省の勝ち、予備費1兆円以内の枠ありき」 嘉悦大教授・高橋洋一氏

まとめ
  • 予算案修正の規模と財務省の意図: 自民・公明が提出した2025年度予算案修正は、財務省が予備費1兆円の範囲内に抑えたい意向を反映。国民民主党の7兆円超減税案や立憲民主党の3兆8千億円減額案は受け入れられず、維新の2千億円増案が採用され、公明の6千億円減税案も含め修正は1兆円内に収まった。
  • 野党間の調整と財務省の戦略: 財務省は国債発行増や法改正を避けるため、大規模修正を拒否。野党3党(立憲、国民、維新)の協調を防ぎ、政府・与党をコントロールする形で予算をまとめた。
財務省解体デモ

 自民党と公明党は2025年度予算案の修正案を国会に提出した。財務省は予備費1兆円の範囲内で修正を抑えたいと考えており、それを超えると国債発行額が増加し、法改正が必要になるためだ。

 国民民主党の「年収103万円の壁」を178万円に引き上げる案は7兆円以上の減税となり、受け入れられない。立憲民主党の修正案は3兆8千億円の減額だが手続きが煩雑で避けたい。一方、日本維新の会の教育無償化案は歳出増が2千億円と少なく、同意しやすかった。

 公明党の減税案は6千億円で、予算修正は1兆円以内に収まった。財務省は野党間の協調を防ぎ、政府・与党をコントロールした形だ。立民、国民、維新の3野党が協調して、政府・与党に対峙(たいじ)させないように計算した財務省の勝ちのようなものだ。

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【私の論評】3野党が結託したら予算はどうなった? 財務省の裏ワザと特例公債法の闇

まとめ
  • 3野党が結束すれば、予算案を大胆に修正し、10兆円規模の歳出拡大や減税をぶち上げることになった。国民生活を支える財政出動が膨らみ、国債発行や特例公債法改正が避けられなくなる。
  • 統一戦線を組んで政府・与党に圧力をかけ、減税や社会保障拡充などの国民目線の政策で支持を集め、国会運営を乗っ取る勢いで予算を国民目線に変えるシナリオが考えられた。
  • 財務省の硬直的な財政規律や予備費1兆円の枠が崩れ、特例公債法を活用した大規模財政出動や改正で、国民経済の成長と暮らしの向上につなげるチャンスが生まれたかもしれない。
  • 高橋洋一が「財務省の勝ち」と言うのは、3野党の足並みを揃えさせず、バラバラな提案を放置した財務省の策略が成功したからだ。
  • 特例公債法の改正は必須で、「赤字国債」という誤解を招く呼称を捨て、国債を経済成長の原資と捉え直せば、財政政策が柔軟になり国民生活が向上する。コロナ禍の100兆円国債発行と雇用調整助成金で経済を安定させた例がその証だ。

立憲・維新・国民は「給食費無償化」法案ではまとまったが・・・・

高橋洋一氏が言う「立民、国民、維新の3野党が手を組んで政府・与党に立ち向かう」とは、一体どんな展開になるのか。 まず考えられるのは、3野党が一丸となって予算案を大胆にぶった斬り、書き換えるシナリオだ。国民民主党の「年収103万円の壁を178万円に引き上げ」で7兆円超の減税、立憲民主党の3兆8千億円減額案、日本維新の会の教育無償化で2千億円増。

これを全部合わせたら、10兆円規模の歳出拡大や減税だ。もしこれが実現したら、国民の暮らしを支える財政出動が一気に膨らみ、国債発行が増え、特例公債法の改正だって避けられない。

次に、3野党がバラバラに動くのではなく、事前に作戦を練って統一戦線を張り、政府・与党にガツンと圧力をかけるパターンだ。予算委員会や国会審議で共同提案をぶち上げ、減税、教育投資、社会保障の拡充と、国民が「おお!」と目を輝かせる政策を並べ立てる。与党に譲歩を迫り、国民の支持をガッチリつかむ戦略だ。

さらに、国会運営を乗っ取る勢いで動く可能性もある。維新が現実的な歳出増を打ち出しつつ、立民と国民が大規模な財政出動を叫べば、与党は分裂し、予算案を国民目線でガラッと変えざるを得ない。審議日程をグズグズ引き延ばし、硬直的な予算成立をぶち壊す展開だってあり得た。

もしこんな協調が現実になったら、財務省が頑なに守る硬直的な財政規律や予備費1兆円の枠など吹っ飛び、国民経済を活性化させる政策が大規模に動き出したかもしれない。

ここで特例公債法の話だ。これは財政法第4条で「赤字国債はダメ」と禁止されているのを、特別な事情があれば認めるにする法律だ。経済危機や災害のような緊急時に国会で決め、一時的に国債発行を認める仕組みだ。だが日本では、この特例公債法が毎年お決まりで制定され、「特別な事情」なんて関係なく運用が常態化している。

結果、財政法第4条の原則は形だけで、実質的な財政規律の歯止めが効かなくなっているのが現状だ。野党が力を合わせたら、この特例公債法を使って国民生活を支える大規模な財政出動をぶち上げるか、抜本的に法律の改正を求めることで、硬直的な財政運営をひっくり返し、国民経済の成長と暮らしの向上につなげるチャンスが生まれるかもしれなかった。

高橋洋一が「財務省の勝ち」と評したのは、こういう国民目線のシナリオを潰し、3野党の足並みを揃えさせなかった財務省の策略がハマったったという意味だ。立民の大規模減額、国民の大胆な減税、維新の控えめな増額と、各野党の提案規模や優先順位がバラバラなのをそのまま放置し、協調の時間を与えず、1兆円の予備費枠を盾に「財政規律崩壊」と脅した。野党同士を対立させ、団結の芽を摘んだ。財務省は野党の「違い」を利用し、10兆円規模の国民目線政策を潰した。統一戦線を組ませなかった。財務省は高笑いだ。

だが、特例公債法の抜本的な改正は、国民経済を考えれば絶対に見直すべき課題だ。例えば、2020年のコロナ禍だ。政府は特例公債法を使って約40兆円の赤字国債を発行し、給付金や事業支援を打ち出した。これで経済の急落を食い止めた。

2020年財務省は「国の借金」一人当たり1000万超と煽っていたが・・・

安倍政権時代に60兆円、菅政権で40兆円の合計100兆円もの国債を発行し、日銀がそれを買い取る形でコロナ対策を進めた。さらに、日本特有の雇用調整助成金制度が効いて、他国では失業率が一気に跳ね上がったのに、日本ではそんなことはなかった。

米国だと2020年4月に失業率が14.8%まで爆上がりしたが、日本は最大でも2.8%で済み、雇用を守り抜いた。この事実が示すのは、国債発行と政策がうまく噛み合えば、経済の安定はしっかり守れるということだ。そうして、このようなことを実行しても当時から岸田政権初期までは、良いことばかりで何の不都合もなかった。もしあれば、財務省やマスコミ、識者などはここぞとばかり「赤字国債大量発行の失敗」を批判しただろう。いや、本当は批判したかったのだが、批判すれば、ボロがでることを恐れているのかもしれない。

マクロ経済の常識から見ても、国債発行で財政支出を増やすのは景気調整に効く。特に低金利の今なら債務負担だって軽い。1990年代以降の日本は緊縮財政で経済が停滞した苦い過去がある。特例公債法の硬直的な運用は、国民経済の可能性を押し潰しているといえる。3野党が結束して、特例公債法をを改正し、財政法第4条の古臭い原則を今の経済状況に合わせて柔軟に変えるべきだ。それが国民生活を良くし、経済成長を引っ張る道だ。財務省の硬直的な財政運営をぶっ壊す、真の国民のための政策だ。

そもそも、「赤字国債」という呼び方自体が正しくない。「国が借金で財政を賄う」などと暗いイメージを植え付けるが、マクロ経済で見れば、国債発行は経済全体の需要を支える大事な武器だ。経済学者のポール・クルーグマンは、低成長期に国債を発行すれば経済が動き出し、税収が増えて長期的には財政が安定すると喝破している。

 ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン

2008年のリーマンショック後、米国は大胆な財政出動でGDP比の債務が増えたのに経済を立て直した。日本では「赤字国債」という言葉が1970年代から使われてるが、これは財政法の古い枠組みに縛られた政治的な言い回しにすぎない。他国ではこんな呼び方はしない。米国だと一般的には「Treasury Bonds」、英国なら「Gilts」と呼ばれ、「赤字」などというネガティブな響きはない。

日本の「赤字国債」は財政法第4条の特有な背景から来てる異端児ともいえる。国民経済の視点で見直せば、国債は「経済成長の原資」だ。「赤字」などの誤解を招く言葉は捨て去るべきだ。特例公債法の改正と一緒にこの認識をぶち壊せば、財政政策はもっと柔軟になり、国民生活をグッと押し上げる力になる。

野党の幹部らは、そこまで読んだのか? 情けないの一言に尽きる。だが、今後このような機会は、自公が少数野党である限り、何度でもある。ここは、野党に期待したい。こと経済面に関しては、本当の大きな敵は、自公ではなく財務省であるという視点を忘れるな!

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2025年2月28日金曜日

ドナルド・トランプを無能と言い捨てる「識者」たちは現実を見失っている…ロシア・ウクライナ戦争を終わらせるトランプ大統領の交渉戦略―【私の論評】トランプの「力による平和」とドラッカーの教え:「良き意図」から実務へ

 ドナルド・トランプを無能と言い捨てる「識者」たちは現実を見失っている…ロシア・ウクライナ戦争を終わらせるトランプ大統領の交渉戦略

まとめ
  • トランプの戦争終結への取り組み: 就任1カ月でロシア・ウクライナ戦争の終結を目指し、米露会談を進め、欧州を動揺させる一方、日本の「識者」から猛反発と侮蔑を受ける。
  • 識者の態度とその危険性: 「識者」がトランプを低能・異常と嘲笑し、停戦調停に苛立つが、これは現実分析の放棄であり、選挙で信任された実力者を侮る危険な姿勢。
  • 交渉者としての第三者性: トランプはロシアに好感され、ウクライナに圧力をかけ、アメリカを支援者から調停者にシフトさせ、戦争終結を目指す論理的な戦略を展開。
  • ロシアとウクライナへの対応: ロシアにはNATO不加盟を提示して交渉に引き込み、ウクライナには支援停止や資源権益要求で現実を突きつけ、停戦を「利益」と認識させる。
  • 冷徹だが一貫した姿勢: トランプの手法は冷徹だが目標と手段に一貫性があり、侮蔑は現実乖離を招き、誤った分析がしっぺ返しとなる危険性を孕む。

トランプ大統領がアメリカ大統領に就任して1カ月が経過し、その間に多くの出来事が起こった。特に外交面で注目されているのは、選挙戦中から公約していたロシア・ウクライナ戦争の終結に向けた取り組みである。トランプはこれに本気で取り組んでおり、就任後、米露外相会談が実現し、首脳会談も予定されている。これまでロシアを孤立させることに注力してきた欧州諸国にとっては梯子を外された形だ。

一方、日本の「識者」層からはトランプに対し猛烈な反発と侮蔑が directed されている。彼らは「ウクライナは勝たなければならない」と主張してきたが、トランプが停戦調停を進めようとすることに苛立ちを覚えているようだ。トランプの知的水準が低く、性格が異常であるとして、その行動や発言を嘲笑うことが常識的態度であるかのように振る舞っている。

しかし、これは危険な現象である。気に入らない状況を「誰かが無能で異常だから」と片付けてしまうのは、現実の分析を放棄するに等しい。トランプはアメリカの選挙民から二度も信任を得た人物であり、第一期政権時と比べて知識、経験、人脈も豊富だ。客観的には類まれな実力者であり、安易に侮るべきではない。

トランプは戦争終結に向け、交渉者としての「第三者性」を獲得しようとしている。ロシアには好感される発言を繰り返し、ウクライナのNATO加盟を認めない立場を示して信頼を得ようとしている。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領に対しては、バイデン政権が戦争を招いたと批判し、ゼレンスキーを「選挙のない独裁者」と揶揄するなど厳しい態度を取る。さらにウクライナ領内のレアアース資源権益をアメリカに譲るよう圧力をかけ、支援停止もちらつかせて現実を突きつけている。これは、アメリカが一方的なウクライナ支援者から中立的な調停者に立場を移すための戦略だ。

「識者」の間では「トランプがプーチンに騙された」という物語が広まりつつあるが、トランプの行動は交渉の観点からは破綻していない。ロシアにはウクライナのNATO不加盟を交渉材料として提示し、戦況で優位なロシアを調停のテーブルに引き寄せようとしている。ウクライナには支援打ち切りや選挙実施の圧力をかけ、停戦が「利益」であると認識させようとしている。

ゼレンスキーが抵抗を続ける場合、「選挙のための停戦」が提案される可能性もあり、ロシアもそれに賛同するかもしれない。ウクライナ国民の疲弊や世論分裂が進めば、ゼレンスキーの強権政治にも限界が来るだろう。

トランプの手法は冷徹だが、目標と手段に一貫性がある。彼を無能や異常と侮蔑するのは現実から乖離しており、分析を誤ればしっぺ返しを食らう危険がある。

篠田 英朗(東京外国語大学教授・国際関係論、平和構築)

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】トランプの「力による平和」とドラッカーの教え:「良き意図」から実務へ

まとめ
  • ピーター・ドラッカーの言葉「良き意図と実務は違う」は、行動と結果が重要であることを示している。意図だけでは、それがいかに素晴らしいものであっても、無意味だ。
  • トランプ大統領のロシア・ウクライナ戦争終結への取り組みは、単なる意図にとどまらず、実行を伴うものである。
  • トランプはアメリカを中立の調停者として位置づけ、ロシアとウクライナの交渉を進めている。
  • 彼の目指す「力による平和」は、侵略を許さない新たな秩序を築くことにある。
  • トランプの実務が成功するかどうかは、実際の成果にかかっているが、現実の壁は依然として存在するものの、もう後戻りはない。

ドラッカー氏

ピーター・ドラッカーの「良き意図と実務は違う」という言葉は耳に残る。立派な目標を掲げるだけでは何も変わらない。行動に移し、結果を出して初めて意味が生まれるのだ。この考えをトランプ大統領のロシア・ウクライナ戦争終結への取り組みに当てはめると、彼の動きが単なるお題目を超えた力を持っていることが見えてくる。トランプは「戦争を終わらせる」と宣言するだけでなく、その先に「力による平和」という強固な秩序を築こうとしている。世界が再び力の時代に突入する今、これはただの夢物語ではない。

トランプが選挙で叫んだ「戦争を終結させる」は、ドラッカーの言う「良き意図」だ。平和を求めるこの公約は誰もが拍手喝采を送る。だが、ドラッカーは冷徹だ。「意図だけでは何も変わらない」と言い切る。たとえば、明日から禁煙すると決めたところで、タバコを手に持てば意味がない。吸わないと決めて、実際に捨ててみせる。それが実務だ。トランプも同じだ。言葉だけではなく、実行が伴わなければ戦争は終わらない。

就任後1カ月でトランプは動き出した。「一日で戦争を止める」と豪語し、その言葉を裏付ける行動を起こしている。2025年2月18日、ルビオ国務長官がラブロフ外相と会談。米露首脳会談の準備も進む。これはロシアを孤立させる従来の路線を捨て、交渉の土台を作る一手だ。トランプはアメリカを中立の調停者に据え、ロシアにはウクライナのNATO加盟を認めないと約束。一方、ウクライナには支援停止やレアアース権益を要求し、両者を交渉のテーブルに引きずり出す。これがドラッカーの「現実と向き合う」姿勢だ。机上の空論ではない。現実を動かす実務だ。

トランプの視野は戦争を止めるだけに留まらない。その先にあるのは「力による平和」。中国だろうが誰だろうが、侵略を許さない鉄の秩序だ。ソ連崩壊後の穏やかな時代は終わり、世界は再び力で語り合う時代に戻った。トランプはそれを見越している。ウクライナ戦争の和平条件にこだわるより、今すぐ終わらせて、次の脅威に備える。これが彼の計算だ。EUや日本のリーダーも、いずれこの現実に目を覚ますだろう。

レーガン大統領は冷戦時代に「力による平和」を語っていた

日本の自称「識者」はトランプを笑う。「無能だ」「異常だ」と決めつける。だが、彼らはドラッカーの教えを無視している。意図の価値は実務で証明されるのだ。トランプが米露関係を立て直し、ウクライナに圧力をかける姿を見れば、彼の意図が空虚でないのは明らかだ。「識者」の批判は現実を見ないおごりだ。ドラッカーが警告した「分析の放棄」そのものだ。トランプの「力による平和」は日本にも覚悟を求める。日本も目を覚ませ。

トランプの実務が成功するかどうかは、ドラッカーの言う「測定可能な成果」にかかっている。測定可能でなければ、成果を無意味というのが、ドラッカーのもっともな持論だ。和平が実現すれば勝利だ。だが、今はまだ道半ば。ロシアは戦況がみせかけかもしれないが有利だから停戦に消極的みえるし、ゼレンスキーは支援を期待して抵抗する。

これが現実の壁だ。それでもトランプは動く。ロシアに利益をちらつかせ、ウクライナに厳しい選択を迫る。冷徹で論理的なこのやり方は、ドラッカーの語る実行力だ。その先に「力による平和」が待つ。戦争を終わらせ、侵略を抑え込む強さだ。

ドラッカーの「良き意図と実務は違う」をトランプに当てはめれば、彼の取り組みは本物だ。戦争終結という意図は、米露関係の改善や交渉の駆け引きで形になりつつある。さらに「力による平和」で世界の崩壊を防ぐ。これがトランプの狙いだ。意図だけでは何も動かない。実務が現実を切り開く。

石破首相は長々と自ら思う「良き意図」を語るが・・・・・・

トランプをバカにする連中は、この基本を見落としている。彼の実務は彼がそれを認識しているか否かは別にしてドラッカー流の哲学に沿った力強さだ。ただし、成功はまだ不確実だ。さらなる努力と現実への対応が鍵だ。しかし、もう後戻りすることはない。そして、その先に訪れる力の時代に、日本も含めた西側は備えなければならない。目を背けるな。厳しい現実がそこにある。石破首相のように「良き意図」を語っているだけでは無意味だ。

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2025年2月27日木曜日

トランプ氏 ウクライナ鉱物権益で合意も安全の保証は欧州責任―【私の論評】米国がウクライナ支援転換!トランプ政権の真意と日本への影響とは?

トランプ氏 ウクライナ鉱物権益で合意も安全の保証は欧州責任

まとめ
  • 鉱物資源合意と安全保障: トランプ大統領は、28日にゼレンスキー大統領と鉱物資源の権益に関する合意文書に署名予定と発表。一方、米の権益が宇にあることが安全保証につながると述べつつも米ではなく欧州が担うべきだとした。
  • ロシアへの対応: トランプ大統領は、宇の安全は欧州の責任と強調し、停戦協議ではロシアのプーチン大統領も譲歩が必要だと述べた。
  • ゼレンスキー大統領の期待: ゼレンスキー大統領は、米との交渉に期待を寄せ、平和実現には米の継続的支援と力が必要だと訴えた。

トランプ・ゼレンスキー会談 AI生成画像

アメリカのトランプ大統領は、今月28日にウクライナのゼレンスキー大統領が訪米し、鉱物資源の権益に関する合意文書に署名する予定だと発表しました。トランプ大統領は、アメリカの権益がウクライナ国内にあることで、ウクライナの安全確保にもつながると述べつつも、安全の保証については「ヨーロッパが責任を負うべきだ」と強調しました。特に、ウクライナの安全保障に関しては、地理的な近さを理由にヨーロッパが主導するべきだという姿勢を示し、ロシアのプーチン大統領にも譲歩が必要だと指摘しました。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、今週金曜日に予定されているアメリカとの交渉に向けて準備を進めていると述べ、トランプ大統領との会談にも期待を寄せています。ゼレンスキー氏は、アメリカの支援がウクライナの平和と安全の鍵であると強調し、「平和への道には力が不可欠だ」と訴え、引き続きアメリカの支援を求めました。

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【私の論評】米国がウクライナ支援転換!トランプ政権の真意と日本への影響とは?

まとめ

  • 米国の政策転換: ウクライナ侵攻3年目の国連総会特別会合で、米国はロシア非難決議案に反対票を投じ、紛争の早期終結を重視する姿勢を示した。
  • トランプ氏の影響: ゼレンスキー大統領批判を強め、中国対抗を優先する戦略が背景にあり、欧州依存脱却の一貫した姿勢を見せている。
  • 経済・国内事情: エネルギー市場の変動やインフレなどの国内政治的圧力が、米国の対ロシア政策に影響を与えた。
  • 国際的な反応: 欧州諸国は米国の急激な政策転換に追いつけず、スロベニアなどが懸念を表明している。
  • 日本への影響: 日本はブレない姿勢を示しているが、トランプは、ウクライナ戦争の和平条件にこだわるより、今戦争を止め、その後は中国を含むどの国にも侵略を許さない力による平和を求めようとしている。

  • ロシアによるウクライナ侵攻3年に合わせて開かれた国連総会の特別会合=24日

    米国は24日、ロシアによるウクライナ侵攻から3年目を迎えた国連総会特別会合で、ロシアを非難する決議案に反対票を投じた(賛成93、反対18、棄権65)。これまでウクライナ支援を政策の柱としてきた米国が、ここにきて紛争の早期終結を重視する姿勢を明確にしたのである。

    この動きの背景には、トランプ大統領の存在がある。彼は近頃、ゼレンスキー大統領への批判を強め、米政権はロシアとの戦争終結に向けた協議を進めている。トランプ氏はかつて、2018年の国連演説でドイツなどがロシアの天然ガスに依存する姿勢を痛烈に批判していたが、今回の決議姿勢はその過去の発言とは一線を画しているようにもみえる。

    しかし、実は彼の一貫性は揺らいでいない。トランプ氏は2018年当時から中国を最大の競争相手と見なしており、欧州がロシア依存を脱し、力による平和を認識し、軍事費を増やし、もっと強硬に対峙していれば、ウクライナ戦争は防げたという考えを持ち続けているのだ。欧州の力による平和への対応不足に対する苛立ちと、中国への対抗姿勢が、彼の対ロ政策の変化の背後にある。

    2018年国連で演説するトランプ大統領(当時)

    さらに、米国の戦略転換には経済的な事情も絡んでいる。エネルギー市場の変動や国内の政治的圧力が、かつての対ロ強硬路線を揺るがしたといえる。「エネルギー市場の変動」とは、バイデン政権時の2022年以降、ロシア産天然ガスの供給不安や価格高騰が欧州経済を揺さぶり、米国がエネルギー輸出で利益を得る一方、ロシアとの対立がエネルギー安定を脅かすリスクを高めた。ただし、バイデン政権と異なり、トランプ政権では、エネルギー政策を変更しエネルギーによるロシアの優位性は崩れ、交渉における大きな障害の一つが取り除かれたといって良い状況になっている。

    「国内の政治的圧力」は、インフレや経済停滞への不安が高まる中、国民や議会の一部がウクライナ支援のコスト増に反発している現状を意味する。米国は、単一国家として軍事・絶対額で最大のウクライナ支援をしてきた。いつまでも、戦争を長引かせることは明らかに米国にとっては得策とはいえない。こうした声を無視できないトランプ政権は、国内優先の政策を打ちだしたといえる。

    そして、何よりもトランプ氏の頭にあるのは、中国だ。2024年11月、彼の選挙公約は「中国の経済的・軍事的台頭を抑えるため、欧州の紛争にリソースを割く余裕はない」と明言している。側近たちも「ロシアよりも中国封じ込めに集中すべきだ」と語っており、政権のスタンスは明確である(ワシントン・ポスト、2024年12月10日付)。

    その証拠に、同日、米国は国連安全保障理事会で同様の決議案を提出し、賛成10票(ロシア含む)で採択された。しかし、英国やフランスなど欧州5カ国は棄権。この結果に、欧州諸国は危機感を募らせ、トランプ氏の「紛争の早期終結」路線が国際社会でも影響力を増していることを示している。

    フランスのマクロン大統領は同日、トランプ氏と会談し「ロシアへの強硬姿勢が和平に必要だ」と主張した。マクロンに発言を訂正されつつも、トランプ氏はこれを一蹴した。また、スロベニアのズボガル大使はBBCに「米国の急激な政策転換に欧州は追いついていない」と語り、EUが独自の平和戦略を模索する必要性を指摘した(BBC、2025年2月26日)。


    そして今、2月28日にゼレンスキー大統領が訪米し、トランプ氏と会談する予定だ。トランプ氏はウクライナの鉱物資源を活用した経済協定を提案し、紛争の早期終結を狙う。しかし、ゼレンスキー氏は安全保障の保証を求めるだろう。両者の意見が一致する可能性は低く、部分的な進展があったとしても、包括的な合意に至るのは難しいかもしれない。

    一方、日本の石破首相は2月24日、ウクライナが主催した首脳会合にオンライン参加し、「ロシアによる攻撃を強く非難し、ウクライナが関与する形で公正な平和を実現することが重要だ」と声明を出した。日本はブレない姿勢を見せている。ロシアに不法占拠されている北方領土を有する日本として当然の対応かもしれない。

    しかし、米国の動きは日本の政界に動揺を広げている。特に、国連総会特別会合で採択された決議案は、ロシアの侵攻が世界の安定に与える深刻な影響を懸念し、平和的解決を求める内容だったにもかかわらず、米国はロシアを「侵略者」と呼ばず、ウクライナの領土一体性に触れない案を出したが、修正案の採択を受け棄権した。

    結局、米国は国連安全保障理事会でも同様の決議案を提出し、賛成10票で採択された。トランプ氏の影響力が高まり、日本のメディアや政府は米国の急激な政策転換に対応できていない。

    例えば、朝日新聞は2月26日付の社説で「米国の意図が不明確」と困惑を示し、外務省関係者は「ウクライナ支援の枠組み見直しが急務」と漏らしているが、具体策は見えてこない(NHK、2025年2月27日)。

    ただ、トランプ政権がもう後戻りすることはない。戦争によって奪われた領土が平和交渉などで戻って来るようなことは「例外中の例外」に近い稀なケースである。また、国連は2018年のトランプの演説での警告に何らの対応もできなかったし、トランプ氏自身も期待していなかったが、最後通牒として警告を発したのだろう。

    ミンスク合意はウクライナ東部紛争を解決しようとした試みだったが、曖昧さや双方の不信感から失敗に終わりブダペスト覚書のような過去の約束も破られ、結局国連などによる、いわゆる国際社会のルールは理念としては機能するが、現実の力関係を覆すほどの強制力を持たない。NATOは抑止に「何もしなかった」わけではないが、ロシアの侵攻を防ぐには不十分だった。事前の努力はあったものの、結果的に抑止力として機能せず、戦争後の支援にシフトした形だ。それが厳しい現実なのだ。

    そのようなことをさせないためには、力による平和により、最初から領土を奪われないようにするしかない。習近平、プーチン、金正恩も力による平和は理解するが、理念など通用しない。であれば、ウクライナはいつまでも西欧諸国の支援に頼り続けるより、自ら核武装すべきだろう。そうしなければ、和平が成立したとしても、後々再度ロシアに侵攻されないという保証はない。ウクライナには原発が存在し、核兵器の原料プルトニウムが存在し、また旧ソ連の軍事技術を継承したウクライナは、核兵器を製造する技術力もある。

    今は理念を語る、EUや日本の首相もいずれにこれに気づくことになるだろう。ウクライナ戦争の和平条件にいつまでも拘泥するよりも、今の時点で戦争をやめさせ、それ以降の侵略は中国を含めいかなる国にも絶対にさせないという、力による平和を実現しなければ、世界秩序はいずれ完全に崩れ去るだろう。これが、トランプの考えだ。これに対して、日本も含めた西側諸国も、備えを固めなければならない。世界は、再び力による平和が重視される時代に戻るのだ。というより、現在の状況は、ソ連崩壊により、一時小康状態が続いていただけなのかもしれない。

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    高校授業無償化が柱の新年度予算案、合意文書に自公維が署名…予算成立確実に

    まとめ
    • 自民、公明、維新が2025年2月25日に高校無償化の予算案修正で合意。維新賛成で3党が衆院過半数を確保、成立確実。1000億円投じ、修正案提出へ。
    • 2025年度から全世帯に年11万8800円、2026年度から私立高校生に年45万7000円支援、所得制限なし。給食無償化も推進、財源4000億円は未定。
    • 保険料軽減協議体設置、医療費4兆円削減を考慮。維新初の予算賛成で、与党は「103万円の壁」見直しも維新と連携へ。


     自民、公明、日本維新の会が2025年2月25日に高校授業料無償化を柱とする2025年度予算案の修正で合意し、署名した。維新は予算案に賛成を決め、3党の議席で衆院過半数を確保、予算成立が確実になった。石破首相、斉藤公明代表、吉村維新代表が出席した党首会談で、首相は与野党合意の意義を強調。高校無償化に1000億円を投じ、29年ぶりの予算修正案を出す方針だ。

     合意では、2025年度から全世帯に年11万8800円の就学支援金を支給。2026年度からは私立高校生への支援を年45万7000円に引き上げ、所得制限を撤廃。小学校給食無償化を2026年度から、中学校も早期に目指す。財源4000億円は行財政改革で確保するが、具体策は不明。社会保障改革では保険料軽減の協議体を設置し、維新の医療費4兆円削減を「念頭に置く」で妥結。

     衆院では自公220議席に維新38議席が加わり、過半数の258議席を握る。維新が予算案に賛成するのは初。吉村氏は「公約実現のため」と意気込む。与党は国民民主党との「年収103万円の壁」見直しでも、維新に協力を求める構えだ。

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    【私の論評】高校無償化で中国の魔の手が!? 中長期では医療費タダ乗りと移民急増の危機

    まとめ
    • 自民、公明、維新の3党が2025年2月25日に高校無償化で合意。短期的(1~3年)には、中国人留学生急増や私立高校乗っ取り、医療費タダ乗りの懸念はないかもしれない。合意の目的は教育費軽減で、現行法が防ぐ。
    • ただし中長期(4~10年)では、中国が私立高校を資金で支配し、移民が増え、医療費が膨張するリスクあり。孔子学院やオーストラリアでの浸透(土地2.3%掌握、1500億豪ドル投資)が示す中国の脅威はリアル。
    • 外国人住民(2023年322万人)が無償化で増え、国民健康保険の外国人加入者(150万人、4%)が倍増なら医療費は1000億円超。中国のタダ乗り業者や医療施設買収が危機を加速。
    • 維新の医療費4兆円削減導入なら、病院縮小で日本人医療が後回しに。移民のタダ乗りが増え、国民皆保険崩壊の危険。中国の隙をつく動きが懸念される。
    • 政府の透明性・監視はザル。オーストラリアは献金禁止法で対抗、日本は無策。このままでは教育・医療が中国に食われ、国民が苦しむ可能性がでてくる。
    元衆議院議員の金子恵美氏は26日、フジテレビ系「めざまし8」で、自公維が高校無償化で合意したことについて「言葉は悪いが、教育行政を人質にして予算を取ったと私は思っている」と発言

    自民党、公明党、日本維新の会が2025年2月25日にぶち上げた高校授業料無償化の3党合意。これが火種となって、「いずれ中国人高校生が殺到する」「中国が私立高校を乗っ取り、移民が押し寄せ、国益を損なう教育が横行する。挙句に納税者に負担を押し付け、医療費のタダ乗りまで増える」との声が沸き上がっている。これは本当なのか。「短期」を1~3年、「中長期」を4~10年と見立てて、この不気味な予測を精査してみよう。

    短期的には、さほど心配はないかもしれない。この合意に中国人留学生を増やす文言なんて一文字もない。目的は日本に住む全世帯の教育費を減らすことだ。文部科学省のデータ(2023年度)を見れば、高校レベルの外国人留学生なんて雀の涙ほど。中国人高校生が急に増えるなんて杞憂にすぎないかもしれない。

    ビザの壁は厚いし、そもそも現状では学校だって受け入れる態勢がない。中国が私立高校を買い漁る? 学校教育法や私立学校法が鉄壁のガードだ。そんな簡単に乗っ取られることはないかもしれない。国益をぶち壊す教育を押し付けるなんてできないし、移民推進も目立って進んではいない。医療費のタダ乗りも今は大問題ではない。国民健康保険に加入する外国人は約150万人(2022年度)。無償化で多少移民の子供が増えても、1~3年で医療費が跳ね上がることはないだろう。しかし、これで安心てきるのだろうか。

    日章学園九州国際高校の在学生の9割が中国人留学生

    4~10年先となると、背筋が寒くなる。中国が動き出す可能性は大きい。日本には約1300校の私立高校があるが、少子化で生徒が減り、経営が苦しい学校がゴロゴロしてる。ここに中国が金をかけてくるかもしれない。寄付や提携をエサに理事会に潜り込み、実質的に支配する手口だ。

    中国は実際海外で似たことをやってる。孔子学院だ。世界140カ国以上に約550拠点を置き、中国語や文化を教える名目で入り込んできた。だが、アメリカやオーストラリアでは「プロパガンダの巣窟だ」「学問の自由を潰す」と袋叩きにされ、締め出しが始まった。オーストラリアの大学では、中国政府が孔子学院を通じて学生を監視し、反政府的発言を封じ込めていた。2019年にはクイーンズランド大学で、香港デモを支持する学生が親中派に暴力で襲われ、中国領事館がそれを煽ったなどいう話もある。日本でも同じ手口が炸裂しないとは言えない。

    しかも、中国には医療費タダ乗りをすすめる業者までいる。外国の保険制度にタダ乗りさせ、儲けを出す連中だ。こんな国だ。いずれ日本の高校をすすめる業者だって出てくる可能性は否定できない。少子化が進めば、学校は金に飢える。規制が緩めば(たとえば外国資本の参入が簡単になれば)、中国が私立高校を次々押さえる未来はリアルだ。

    オーストラリアでは、中国資本が土地の2.3%を握り、企業買収に1500億豪ドルをつぎ込んだ。この浸透力は脅威だ。日本が無防備なら、私立高校が中国の手に落ちる危機は十分ありえる。とはいえ、学校教育法や文部科学省の監視が生きてる限り、国益を壊す教育を好き勝手にはできない。政府や世論が黙ってはいないだろうが、油断は禁物だ。

    外国人住民は2023年で約322万人(法務省統計)。労働力不足でこれからも増える可能性がある。無償化で教育費が浮けば、中国人を含む移民の子供が私立高校に流れ込む。4~10年でその数は目に見えて増えるかもしれない。今は少ない高校留学生が、家族ごと日本に根を張るケースも出てくる。

    中国からの人の波が強まれば、私立高校が中国人だらけなんて悪夢もありうる。だが、ビザや仕事の規制が緩まない限り、爆発的には増えない。無償化だけで移民が押し寄せることは考えにくい。それでも、外国人の割合が上がれば、税金で教育費を賄う負担は重くなる。いまは、情報に敏感な人たちが「移民を増やしてる!」と叫んでいるだけだが、多数の有権者がこれを叫ぶのが現実になる日が来るかもしれない。

    そして医療費のタダ乗り。これが一番酷い。国民健康保険に加入する外国人は今、約150万人で全体の4%(2022年度)。だが、無償化で移民が定着すれば、4~10年でこの数字は跳ね上がる。家族で移住し、保険に入る。中国人コミュニティが病院に通えば、医療費は膨らむ。厚生労働省の試算じゃ、今でも年間数百億円かかってる。

    移民が倍になれば、1000億円を超えるなんてザラだ。中国は海外で医療にも手を伸ばしてる。オーストラリアでは、中国企業が病院や医療施設を買収し、影響力を広げている。日本でも似た動きが起きないとは限らない。生活保護や医療費減免を使えば、納税者の負担はさらに大きい。「タダ乗りだ!」と怒る声が渦巻くのは時間の問題だ。

    ここで維新が主張する「国民医療費を年間最低4兆円削減」が導入されたら、さらに危機が加速する。医療費を4兆円も削れば、病院の経営は苦しくなり、診療体制は縮小する。必要な治療が受けられなくなる日本人が増える一方で、移民がタダ乗りで医療を使う構図が強まるかもしれない。削減で医療リソースが減る中、中国人を含む外国人が保険をフル活用すれば、救えはずだった日本人の命が後回しになる危険すらある。

    タダ乗り業者が暗躍する中国なら、この隙を突いてくる可能性は高い。医療費削減とタダ乗りの合わせ技で、国民皆保険が崩壊しかねない。政府が保険のルールを厳しくすれば抑えられるが、そんな気配はまるでない。高橋洋一氏は「医療費タダ乗り問題は米国流の民間保険加入で解決する」としているが、米国みたいに民間保険を外国人にも強制すれば、日本人の税金や保険料を守れる。

    短期(1~3年)なら、この騒ぎはあまり問題にならない。3党合意にそんな意図はないし、今のルールなら何も起きないだろう。だが、中長期(4~10年)では話が違う。規制が緩み、少子化が進めば、中国が高校を押さえ、移民が増え、医療費が膨らむリスクがそこにある。孔子学院やオーストラリアへの浸透、中国のタダ乗り業者を見れば、この国が金で動き出すのは火を見るより明らかだ。

    オーストラリアでは2017年に中国の政治献金が問題になり、外国からの寄付を禁じる法律を作った。日本にはそんな動きすらない。医療費だって1000億円超えもありうる。この不安は笑いごとではない。政府は何やっているのか。 透明性も監視もザルすぎる。

    オーストラリア・メルボルンにある孔子学院の開校式に出席した習近平氏。2010年

    アメリカでは孔子学院を締め出した。オーストラリアでは、中国資本の医療進出に警鐘が鳴ってる。日本政府はボーッと見るだけなのか? 少子化で学校が潰れかけているのに、規制緩和なんて言い出したら、中国に売り渡すようなものだろう。

    医療費のタダ乗りだって、移民が増えれば、納税者が泣くのは目に見えてる。厚労省の試算だって甘すぎる。1000億円どころか、4兆円削減が絡めばもっと行くかもしれないのに、対策ゼロなどありえない。このままじゃ教育も医療も中国に食われ、国民が血を流す羽目になる。いい加減目を覚ませ、政府! 国民の不安を払拭する気があるなら、今すぐ動け! ルールを厳しくしろ、監視を強化しろ、中国のやり口を叩き潰せ! そうしなければ、与党も維新も今後有権者に見放されことになる。

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    2025年2月25日火曜日

    <ウクライナ戦争和平交渉の成否を分ける3つのカギ>プーチンが求める「大国に相応しい地位」をどう失わせるか、あり得る目標とは―【私の論評】トランプ氏激怒!プーチンへの強硬批判と報復策―経済制裁・ウクライナ支援・露外交孤立化の可能性

    <ウクライナ戦争和平交渉の成否を分ける3つのカギ>プーチンが求める「大国に相応しい地位」をどう失わせるか、あり得る目標とは

    岡崎研究所

    まとめ
    • ロシアとウクライナ双方が戦闘終結の意向を示しているが、実際の交渉開始には多くの困難が伴う。
    • ロシアはウクライナの領土併合や非武装化、NATO加盟の放棄など強硬な要求を維持している。
    • プーチン大統領の狙いは、ロシアの大国としての地位確立と国際秩序の改編にあり、ウクライナ侵攻はその一環である。
    • 交渉実現には、ウクライナへの軍事支援強化やロシアに対する制裁強化が必要である。
    • 交渉の課題は、占領地域の扱いや停戦監視体制、ウクライナのNATO非加盟問題など多岐にわたる。

    AI生成画像

     ロシアとウクライナの戦争が続く中、ウォールストリート・ジャーナル紙の2025年2月5日付けの解説記事が注目を集めている。同記事は、ロシアとウクライナの双方が戦闘終結に向けた話し合いの意向を示していると報じつつも、実際に交渉を開始するには多くの困難が伴うことを指摘している。

     ロシアのクレムリン報道官であるペスコフ氏は、2月5日に米露間での接触が行われており、最近ではその頻度が増していることを明らかにした。これは、モスクワがウクライナでの戦闘終結に関する米露間の協議が進んでいることを初めて認めた発言である。このペスコフ氏の発言は、両国が紛争終結に向けて話し合う意志を示しているというシグナルとして受け取られ、和平の可能性に期待を抱かせるものであった。

     一方で、アメリカのトランプ元大統領は、ロシアのプーチン大統領に対してますます苛立ちを募らせているようである。トランプ氏とその補佐官らは、ロシアに対する制裁の強化や、ロシアの主要輸出品である原油価格の下落を通じて、モスクワに譲歩を迫る計画を打ち出している。しかし、プーチン大統領は公の場ではトランプ氏を称賛する姿勢を見せ、2020年の米大統領選挙が「盗まれた」とするトランプ氏の虚偽の主張にも同調している。さらに、もしトランプ氏が大統領であればウクライナ紛争は起きなかったかもしれないとの発言も行っている。しかし、こうした言動にもかかわらず、プーチン大統領はトランプ氏の和平提案に対しては全く関心を示しておらず、ウクライナ侵攻時に掲げた強硬な要求から一切譲歩していない。

     プーチン大統領の要求は、ウクライナの州や主要都市のすべてをロシアに併合し、ウクライナを非武装化して、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を永遠に放棄させ、事実上ウクライナを「残りかす国家」と化すというものである。このような強硬姿勢は、和平交渉を進めるうえで大きな障害となることは明白であり、仮に交渉が開始されたとしても、ロシアが戦闘で得たウクライナ領土を保持するのか、あるいは制裁緩和を得られるのかといった問題に直面することは避けられないであろう。

     また、ウクライナの将来像も大きな課題である。西側諸国の安全保障体制の中で、ウクライナをどのように位置づけるのか、またロシアが再び攻撃を仕掛けないことをどのように保証するのかという難題が残ることになる。ウクライナ戦争が始まってから約3年が経過し、ようやく停戦や終戦に向けた交渉が現実的な課題として取り上げられるようになった。ここで注目すべきは、交渉が実現する可能性と、その成否を左右する要素である。

     プーチン大統領の真の狙いは、単なるウクライナ領土の一部獲得ではない。彼が望んでいるのは、ロシアが「大国にふさわしい地位」を確立することであり、国際秩序をロシアに有利な形に改編することである。ロシアの影響力を旧ソ連圏に再構築し、欧米諸国やNATOに対して優位に立つことを目指しているのである。ウクライナへの侵攻は、プーチンの壮大な戦略の一部に過ぎず、彼の最終目標はさらに遠大なものであることを見逃してはならない。

     現在、ロシア軍は特に地上軍が疲弊しており、戦争経済も長期的な持続性を欠いている。兵員や武器の供給も新たな戦線を開くには不十分な状況である。しかし、プーチンの決意は変わらず、ウクライナ戦争がロシアによる新たな侵略を防ぐ実効的な仕組みを構築することなく終結するならば、ロシアは態勢を立て直したうえで、再び侵略を開始する可能性が高い。

     一方で、交渉を開始するためには、ウクライナへの軍事支援の強化や、ロシアに対する制裁の強化が必要である。プーチンに対して戦略環境がロシアにとって不利であると認識させ、交渉の必要性を感じさせなければならないのである。交渉を成功させるためには、まず交渉を開始するための圧力をかけることが求められるのである。

     停戦交渉が実現した場合、最も大きな論点の一つは、ロシアが実効支配するウクライナの占領地域をどのように扱うかという問題である。ロシアはこれらの地域を自国領土として法的に認めさせようとするだろうが、ウクライナと西側諸国はこれを容認することは難しい。また、停戦ラインの確定や、停戦監視の方法、ウクライナのNATO非加盟問題など、解決すべき課題は山積している。

     特に、停戦監視部隊の役割については、仮にロシア軍が攻めてきた場合に戦う覚悟が必要であり、単なる監視にとどまるようでは、過去のミンスク合意のように形骸化する恐れがある。また、ロシアが求める「ウクライナの中立」には、NATO非加盟のみならず、ウクライナの非軍事化や、ロシアの影響力を行使する権利まで含まれており、受け入れがたい内容である。

     総じて、ウクライナ戦争の終結に向けた交渉は、表面上のシグナル以上に多くの障害を伴っている。プーチン大統領の戦略的野心と、ウクライナや西側諸国の安全保障上の利益の間には、依然として深い溝があり、交渉開始から実際の和平合意に至るまでの道のりは険しいものである。しかし、戦闘が続く中で和平の可能性が語られること自体が、状況の変化を示していることも事実である。

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    【私の論評】トランプ氏激怒!プーチンへの強硬批判と報復策―破滅的経済制裁・ウクライナ支援・露外交孤立化の可能性

    まとめ
    • トランプ氏のプーチン大統領への怒りは、近年の発言や行動から着実に増幅している。
    • 2025年1月22日の『トゥルース・ソーシャル』で、トランプ氏はプーチン大統領を名指しで批判し、「彼はロシアを破壊している」と断じた上、高関税や追加制裁を警告した。
    • 2025年2月14日の記者会見では、プーチン大統領との交渉で一部進展があったものの、ウクライナのNATO加盟を阻止するとの現実的悲観論を示し、強硬姿勢に対する苛立ちを露呈した。
    • 2025年1月28日のプーチン大統領訪問時に、トランプ氏は「馬鹿げた戦争を今すぐ止めろ」と強烈に警告し、経済的圧力を強化する意向を示した。
    • これらの事例から、プーチン大統領が和平条件を無視し軍事行動を継続するならば、トランプ氏は経済制裁の強化、ウクライナ支援の拡大、外交的孤立化を組み合わせた報復措置を取る可能性が高いと同時に、日本のマスコミ報道だけに依拠しては現状を正確に把握できないとの警告もある。
    上の記事にも一部示されているが、トランプのプーチンに対する怒りは、さらに増幅しつつあるようだ。

    怒るトランプ大統領

    まず、トランプ氏は2025年1月22日、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、ウクライナ戦争に関してプーチン氏を名指しで批判し、「彼はロシアを破壊している」と述べました。この発言は、トランプ氏がプーチン氏の政策や行動に明確な不満を抱いていることを示すもので、従来の友好的なトーンからの変化を感じさせる。さらに同投稿で、トランプ氏はロシアに対して「高関税と追加制裁」を警告しており、ロシアが和平に応じない場合に経済的圧力を強める姿勢を明らかにしています。この強い言葉遣いと具体的な脅しは、プーチン氏への苛立ちがエスカレートしている証拠と言えるだろう。

    また、2025年2月14日の電話会談後の記者会見でも、トランプ氏はプーチン氏とのやり取りに一定の進展を認めつつ、「ロシアはウクライナのNATO加盟を許さないだろう」と現実的な悲観論を述べています。この発言からは、プーチン氏の頑なな態度に対する諦めと苛立ちが混じったニュアンスが感じられ、和平交渉の難航に対する不満が透けて見える。特に、トランプ氏が就任早々に「1日で戦争を終わらせる」と豪語していたにもかかわらず、プーチン氏が強硬姿勢を崩さない状況が続いていることは、トランプ氏にとって期待外れであり、苛立ちの原因となっている可能性が高い。

    さらに別のエピソードとして、2025年1月28日にプーチン氏がサマラの無人航空機システム研究センターを訪問した際、トランプ氏は「馬鹿げた戦争を今すぐ止めろ」と異例の強い警告を発している。この発言は、ロシア経済がインフレや制裁で疲弊しているにもかかわらず、プーチン氏が戦争継続に固執する姿勢に対する直接的な非難であり、トランプ氏の苛立ちが公然と表面化した瞬間と言える。報道によれば、トランプ氏はこのタイミングでプーチン氏に対し、経済的「恩恵」をちらつかせつつも、応じなければ制裁を強化すると圧力をかけているが、プーチン氏の反応が冷淡であることがトランプ氏の苛立ちをさらに増幅させていると考えられる。

    サマラの無人航空機システム研究センターを訪問したプーチン大統領

    これらの事例から、トランプ氏の苛立ちは、プーチン氏が表面的には友好的な態度を示しつつも、実際にはトランプ氏の提案する和平条件を無視し、ウクライナでの軍事行動を続けている点に集約されているようだ。トランプ氏は自身の交渉力に自信を持っているだけに、プーチン氏の非妥協的な態度がその自負心を傷つけ、感情的な対立を深めていると推察される。こうした状況は、両者の関係がかつての協力的なものから、緊張感を帯びたものへと変化していることを示唆している。

    プーチン大統領が表面的に友好的な態度を示しつつも、トランプ氏の提案する和平条件を無視し、ウクライナでの軍事行動を継続する場合、トランプ氏の報復は経済制裁の強化から始まる可能性が高い。トランプ氏は過去、2018年のイラン核合意離脱後に「最大限の圧力」として経済制裁を効果的に活用した実績があり、プーチン氏に対しても同様のアプローチを取るのは自然な流れだ。

    同時に、トランプ氏はウクライナへの軍事支援を拡大する形で間接的な報復に出る可能性もある。2025年1月29日の報道では、米軍がイスラエルからペトリオット防空システムをウクライナに輸送したことが確認され、2月14日の記者会見では「ウクライナに平和をもたらす支援を続ける」と述べている。これにより、ロシア軍に打撃を与える装備—例えば長距離ミサイルやドローンの供与—を増やし、プーチン氏の軍事行動を牽制する意図が読み取れる。X上では2月23日に「トランプが裏切られたと感じればHIMARSを追加供与する」との声もあり、彼の「強いリーダー」イメージを保ちつつ直接戦闘を避ける方法として現実的だ。

    ハイマース

    さらに、外交的孤立化もトランプ氏の報復手段として浮上している。2025年2月16日のG7首脳会談で、彼は「ロシアとの貿易を制限する共同声明」を提案したと報じられ、他の主要国を巻き込んでプーチン氏を国際社会で孤立させる動きを見せている。2019年の中国との貿易戦争で同盟国を動員した経験からも、この多国間圧力は彼の得意分野と言える。ただし、直接的な軍事行動には慎重で、2月16日のスピーチで「第三次世界大戦は誰も望まない」と強調し、プーチン氏が2024年11月に発した核を含む報復警告を意識している様子がうかがえる。

    結論として、プーチン大統領が和平の道を完全に遮断し続けるならば、トランプ氏は経済制裁の強化、ウクライナ支援の拡大、さらには外交的孤立化を組み合わせた報復措置を実行する可能性が極めて高い。これらの手段は、彼自身の政治的リスクを最小限に抑えつつ、交渉力を保持するための戦略として極めて合理的である。しかし、もしロシアがウクライナにおいて決定的な勝利を収め、トランプ氏の提案を嘲笑うような状況に陥れば、彼のプライドがさらなる強硬策を誘発する可能性も否定できない。

    それにもかかわらず、現時点ではトランプ氏は「取引の達人」として、冷静かつ計算されたアプローチを堅持する姿勢を崩していない。なお、日本のマスコミ報道だけに依拠しては、世界の複雑な交渉状況やその裏側を正確に把握することは極めて困難であり、多角的な情報源から現状を精査する必要がある。

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    2025年2月24日月曜日

    ドイツ総選挙で保守系野党CDU党首が勝利宣言 反移民政党が第2党に躍進 首相与党大敗―【私の論評】ドイツ政局不安定:連立政権危機とエネルギー供給不安がEU・日本に与える衝撃

    ドイツ総選挙で保守系野党CDU党首が勝利宣言 反移民政党が第2党に躍進 首相与党大敗

    まとめ
    • 選挙結果と主要政党の動向:ドイツ総選挙でCDU・CSUが29%で首位、AfDが21%で第2党、SPDが17%で第3党、緑の党が12%を獲得。メルツ氏が勝利宣言し、SPDとの大連立が有力視されるが、過半数には3党以上が必要な可能性も。
    • 争点と政策:経済再生と移民対策が焦点となり、メルツ氏は規制見直しや減税を公約、AfDは移民への不安を吸収して支持を拡大。議席獲得には5%以上の得票が必要で、議席数は630に削減された。

    メルツCDU党首

    ドイツで23日に行われた総選挙では、保守系のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が予想得票率29%で首位となり、メルツ党首がベルリンで勝利を宣言した。右派のドイツのための選択肢(AfD)が21%を獲得し第2党に躍進し、ショルツ首相の社会民主党(SPD)は17%で第3党、緑の党は12%の見込み。

    低迷する経済の再生や移民対策が主要争点となり、メルツ氏は環境規制の見直し、減税、エネルギー価格引き下げを公約し、ドイツのための選択肢(AfD)は移民による犯罪への不安を背景に支持を拡大した。メルツ氏は連立交渉を急ぐ意向を示し、社会民主党(SPD)との大連立が有力だが、議席過半数確保には3党以上の連立が必要な場合も。議席獲得には5%以上の得票が必要で、連邦議会の議席数は733から630に削減された。

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    【私の論評】ドイツ政局不安定:連立政権危機とエネルギー供給不安・移民問題がEU・日本に与える衝撃

    まとめ
    • CDU/CSUは得票率29%を記録し最大政党となったが、過半数未達のため連立政権樹立が必要であり、SPDや緑の党との調整が極めて困難である。
    • AfDは得票率21%を記録し、移民受け入れに対して厳格な姿勢を示すことで議会内の支持を拡大し、政治の分極化を一層深刻化させた。
    • 政局の不安定は、経済再生や移民対策といった主要改革の先送りを招くだけでなく、環境規制の見直し、減税、エネルギー価格の引き下げ策も大幅に遅延させる恐れがある。
    • エネルギー政策の決定先送りにより、再エネ依存政策の見直しが遅れ、国内のエネルギー供給不安定と価格高騰が生じ、EU全体やグローバルなサプライチェーンにも悪影響を及ぼす可能性がある。
    • ドイツの政局不安定は、日本にとっても重要な貿易相手国としての協力関係に影響を与え、輸出や投資、技術協力に悪影響を及ぼすとともに、過去の極端な移民政策の是正も早急に取り組むべき課題である。
    ドイツの政局は、今、激動の渦中にある。総選挙ではCDU/CSUが得票率29%を獲得し最大政党となったものの、単独で過半数に達しなかったため、連立政権の樹立は避けられない。メルツ党首は連立交渉を迅速に進める意向を示すが、SPDとの大連立が現実的な選択肢である一方、SPDの支持率は17%に留まり、また緑の党との協力についてはCSU内に否定的な意見が根強いため、連立内での政策調整は極めて困難な状況にある。

    ドイツでは2015年アンゲラ・メルケル首相(当時)が100万人以上の移民受け入れを推進する旨を公表

    さらに、AfDが得票率21%を記録し第2党に躍進した結果、移民受け入れに対して厳しい姿勢を示す動きが議会内で一定の支持を集め、政治の分極化は一層深刻な局面を迎えている。この動向は、CDU/CSUが移民政策や経済政策において、より保守的な立場を強固にする要因となり、連立交渉の複雑さを一層増すと同時に、必要な改革の先送りを招く危険性を孕んでいる。

    政局の不安定さは、経済再生や移民対策といった主要争点における具体的な改革の遅延を引き起こすのみならず、エネルギー政策にも深刻な影響を及ぼす。ドイツ経済が低迷する中、環境規制の見直し、減税、エネルギー価格の引き下げなどの施策が打ち出されているが、連立パートナー間の意見の相違が具体的な政策決定を大いに遅らせる懸念がある。

    欧州のエネルギーコストは高止まりしているが、最近のドイツはさらに顕著に

    政局の混迷により、再エネに過度に頼る政策の見直し等、エネルギー政策の見直しに関する決定が先送りされる可能性が高まり、国内のエネルギー供給が不安定となる。結果として、エネルギー価格の高騰が続き、企業や家計に計り知れない負担を強いることになる。

    ドイツはEUの経済大国であり、その政局の乱れはEU全体のエネルギー市場にも連鎖的な悪影響を及ぼす。ドイツに起こる供給不足は、EU全域でエネルギー価格の上昇と経済成長の鈍化を引き起こし、さらにはグローバルなサプライチェーンにも影を落とす恐れがある。

    加えて、ドイツは日本にとっても重要な貿易相手国であり、特に自動車産業や機械産業における協力関係は極めて密接である。ドイツの政治的不安定、経済低迷、そしてエネルギー価格の上昇は、日本の輸出、投資、技術協力、共同研究開発に多大な悪影響をもたらすだろう。さらに、ドイツ政局の混乱がEUの政策決定に波及すれば、日本とEUとの貿易交渉や経済連携協定にも遅れが生じ、国際経済の枠組み全体が揺らぐ可能性がある。

    こうした状況下で、ドイツの政局が不安定なまま推移すれば、政治の分極化や連立内の政策調整の難航が、経済再生や移民対策の改革を大きく遅延させるのみならず、エネルギー政策のみなおし等の決定先送りにより、エネルギー供給の不安定化と価格高騰を招く結果となる。

    ドイツの産業用電力価格も、高止まりしたまま

    これにより、ドイツ国内のみならず、EU、日本、さらには世界経済にまで深刻な悪影響が及ぶ。ドイツにおいては、気候変動対策への拘泥からの脱却、エネルギー供給の安定と価格抑制、さらには失敗が誰の目にも明らかとなり、社会不安・不安定の元凶となった過去の移民・難民政策の見直しが、今後の最重要課題として優先されるべきだ。

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