2018年7月17日火曜日

お先真っ暗…韓国「雇用政策」大失態、貿易戦争も直撃、対中輸出3兆円減の試算も―【私の論評】金融政策=雇用政策と考えられない政治は、韓国や日本はもとより世界中で敗退する(゚д゚)!

お先真っ暗…韓国「雇用政策」大失態、貿易戦争も直撃、対中輸出3兆円減の試算も

経済政策で窮地に立つ文政権。そこに米中貿易戦争が直撃した

 「雇用拡大」を掲げる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、大ピンチに陥っている。雇用状況を示す数値が5カ月連続で低迷し、メディアでは「雇用大惨事」との指摘も上がる。雇用不振の背景には、最低賃金(時給)の大幅アップがあるが、労働界はさらなる引き上げを要求。人件費高騰に苦しむ小規模事業者からは悲鳴が上がり、コンビニ店主でつくる団体は「全国同時休業」も辞さない構えだ。米中の「貿易戦争」の余波も直撃し、韓国経済はお先真っ暗の状態だ。

 《「雇用大統領」文在寅政権下の「雇用大惨事」》(12日、朝鮮日報日本語版)

 《雇用不振に陥った韓国経済、成長最優先への方向転換を》(12日、中央日報日本語版社説)

 韓国の保守系メディアは最近、雇用の低迷ぶりを相次いで報じている。

 韓国統計庁が毎月発表している雇用動向を見ると、今年に入って雇用状況を示す数値は急激に下がっている。文氏が大統領に就任した昨年5月から今年1月までは、就業者数が前年同月比で20~30万人多かった。だが、それ以降は10万4000人増(2月)、11万2000人増(3月)、12万3000人増(4月)、7万2000人増(5月)、10万6000人増(6月)と5カ月連続で20万人台を割り、政権が目標としている32万人増を大きく下回った。

 急激な雇用不振の理由は、1月からの最低賃金大幅アップにあるとの見方がもっぱらだ。その賃上げ率はなんと16・4%に上る。

 前出の社説で、中央日報は雇用不振が消費沈滞につながり、米中貿易戦争で輸出も減少の危機を迎えるとして、「韓国経済が四面楚歌から抜け出すには、まず最低賃金の急激な引き上げを自制しなければいけない」と指摘する。さらに社説はこう続けた。

 「最低賃金委員会で労働界は来年の最低賃金を今年より43・3%増の1万790ウォン(約1070円)を提示した。同意できない。政府は急激な最低賃金引き上げの副作用を認める必要がある」

 大幅に最低賃金を引き上げる動きに対し、人件費高騰に苦しむ事業者は怒りを隠せないようだ。

 東亜日報(日本語版)は13日、《「最低賃金に不服」宣言、350万人の小規模個人事業主の絶叫虚しく》という記事を掲載した。

 記事によると、350万人の小規模個人事業主を代表する小商工人連合会が12日、緊急記者会見を開き、「国家が一方的に定めた来年の最低賃金は受け入れられない」と闘争宣言を行った。

 全国7万余りのコンビニ代表でつくる全国コンビニ加盟店協会も同日、「零細事業主の生活を根こそぎ摘み取る心算で、零細事業主を犯罪者や貧困層に追いやっている」と絶叫し、全国同時休業も辞さない考えを明らかにしたという。

 文氏は昨年6月の施政方針演説で、「雇用」という言葉を44回口にするほど、雇用拡大を売り物にしてきた。だが、行き過ぎた経済政策は零細業者らを破滅に追いやろうとしているようにしか見えない。

 今月に勃発した米中貿易戦争の影響も深刻だ。朝鮮日報(日本語版)は7日、《対岸の火事でない米中貿易戦争、韓国経済に飛び火も》という記事で、現代経済研究院経済研究室のチュ・ウォン室長の試算を紹介している。それによると、米国で中国製品の輸入が10%減少して中国経済全体が大きな影響を受けた場合、韓国からの中国向け輸出は282億ドル(約3兆1100億円)の減少が見込まれるというのだ。

 こんな惨状にもかかわらず、韓国ギャラップが13日に発表した文氏の支持率は69%と高水準を維持している。

 韓国に精通するジャーナリスト、室谷克実氏は「韓国社会の大勢は『積弊(旧体制の弊害)が残っているから、文大統領がやっている政策がうまくいかない。積弊をもっと潰さなければいけない』という認識だから、支持率が高い。今の流れでいくと、人民共和国化に向けて止まらない状況だ」と話す。

 今後、韓国経済はどうなるのか。

 室谷氏は「文氏のやっていることは反米、反資本主義で韓国はキューバ化が進んでいるように思える。世界のどこの国でも『富国強兵』政策をやっているが、韓国は『貧国弱兵』政策を行っている。経済はどうしようもないところまでいくのではないか」と予測した。

【私の論評】金融政策=雇用政策と考えられない政治は、韓国や日本はもとより世界中で敗退する(゚д゚)!

文在寅政権は「韓国経済のパラダイム見直し」との考え方に基づき、「所得主導」と「革新」という2つの軸で成長政策を推し進めようとしています。所得主導は需要の側、革新は供給の側を刺激することで成長動力を引き出そうとする構想です。

所得主導成長の逆説、韓国低所得層の所得が大幅減

しかしこの2つの軸は現政権発足からわずか1年で大きな危機に直面しています。最低賃金を16.4ポイントも大幅に引き上げたものの、低所得層では1年前に比べて所得が逆に8ポイントものマイナスを記録しました。年間30万以上増加していた雇用も7万と大幅にブレーキがかかりました。現政権は自分たちを「雇用政府」と自負していますが、実際は正反対の結果を招いているのです。

革新成長にいたっては成果が全くありません。文大統領は革新成長のコントロールタワーとしてキム・ドンヨン経済副首相を指名しはっぱをかけているようですが、実質的にさほど大きな権限のない経済副首相がやれるような仕事ではありません。

革新成長は何一つうまくいっていない
過去10年続いた保守政権は「グリーン成長」「創造経済」などの旗印で供給側に重点を置いた成長政策を推し進めたのですが失敗しました。営利を前面に出した病院や遠隔医療は医師団体から反対され、カーシェアリングはタクシー業界、スマートファームは農民団体の反対によって挫折しました。またネットバンクは銀行と企業の分離、フィンテック(ファイナンス・テクノロジー)は個人情報保護などの規制に阻まれ全く進んでいません。

このような状況では、雇用を経済を良くするために、まずは何をさておいても、金融緩和をすべきです。それ抜きに、単純に最低賃金をあげたり、構造改革をしても、過去の日本がそれで失敗して、失われた20年に突入したように、何も得るものはありません。

そうして、金融政策の大きな転換の意識は文政権にはありません。むしろ民間部門を刺激する政策として、財閥改革などの構造改革を主眼に考えているようです。しかし、このような構造改革はデフレ経済に入りかけている韓国経済の浮揚には結びつかないです。

韓国の歴代政権が、金融緩和政策に慎重な理由として、ウォン安による海外への資金流出(キャピタルフライト)を懸念する声がしばしばきかれます。しかし金融緩和政策は、実体経済の改善を目指すものです。特に、雇用状況を変えるものです。

金融緩和とはいっても、無制限ではなく、インフレ目標値を設定しての緩和を実施すれば良いのです。そうすれば、実際にキャピタルフライトしたアイスランドのように、政府は黒字だったものの、民間が外国から膨大な借金を抱え込んでいるようなことでもなければ、滅多なことで、キャピタルフライトが起こるようなことはありません。

日本でも日銀が2013年から金融緩和に転じる前には、「金融緩和するとハイパーインフレになる」「キャピタルフライトする」等といわれてきましたが、そうはなりませんでした。

むしろ最近では、このブログでも解説したように、5月の失業率は2.2%となり、昨年あたりにささやかれていた金融緩和出口論など全くの誤りであったことが明らかになりました。また、昨年まで黒田総裁が主張していた日本の構造的失業率が3%という見解も誤りであったことがはっきりしました。

ただし、この2.2%の失業率が日本の構造的失業率かどうかについてはもう少し様子をみてから判断すべきものと思います。

ただし、政策的には構造的失業率がどうのこうのなどということはあまり重要な問題ではなく、やはり2%物価目標に向けてさらに量的緩和を拡大していくべきでしょう。まだまだ、日銀の量的緩和は手ぬるいとみるべきです。

いずれにしても、日本では、2013年4月から日銀が金融緩和に転じ、現在も継続しています。そのため、雇用もかなり良くなっています。

そもそも、雇用情勢が悪ければ、まずは金融緩和すべきです。そうすれば、雇用が改善され、人手不足になり、黙っていても企業は賃金をあげます。そのような状況になってから、世間相場をみながら最低賃金を上げれば良いのです。

しかし、そもそも文政権は日本と同様のリフレ政策を採用する可能性はいまのところないに等しいです。雇用情勢を良くするには、単純に最低賃金を上げるなどという発想ではうまくいかないのは当然のことです。

経済が大きくなっていないのに、最低賃金だけを機械的にあげれば、雇用が減るのは当然のことです。こんな明白なことに気づかないようでは、韓国経済の長期停滞、特に雇用問題が本格的に解消する可能性は無いです。

そうして、金融緩和をせずに最低賃金だけ上げるという政策は、文在寅の独壇場というわけではありません。日本の野党も政権公約に掲げていたものです。日本の野党の頭には今でも、雇用=金融政策という考え方は、文在寅のように全く無いでしょう。

日本の野党は、2016年7月の参院選挙のときに、最低賃金の引き上げを争点にしました。無論、金融緩和を含む、アベノミクスには反対していました。

同年5月17日には、最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会が「最低賃金をいますぐどこでも時給1000円に!時給1500円をめざす院内集会」を衆議院第二議員会館で開催しましたた。労働組合の参加者や国会議員ら約80人が集まりました。下の写真がその時撮影されたものです。


彼らの、政策は文在寅と本質的に同じです。なぜか、金融政策はすっぽ抜けて、最低値賃金を機械的に上げれば、それで雇用が良くなると単純に信じているようです。

日本の野党は、韓国の単純な最低賃金上昇政策が大失敗に終わったことを他山の石として、真摯に反省すべきです。しかし、そのような様子は全くみられず、何かといえば「アベガー、アベガー」と反政府キャンペーンを繰り返すばかりです。この状況ですから、野党はいつまでも野党であり続けるしかないのです。

私は、いずれ文政権も雇用政策で大失敗して、敗退すると思います。韓国にも安倍総理のように金融緩和を提唱する政治家があらわれないと、いつまでたっても雇用は改善されないでしょう。そんなことでは、国民は絶対に納得しないでしょう。

金融政策=雇用政策と考えられない政治は、韓国や日本はもとより世界中で大失敗しているのです。

この事実に目覚めない、政治家は与野党に限らず必ず失敗することになるのです。


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2018年7月16日月曜日

習主席統治に不満噴出か 中国、党内に異変相次ぐ―【私の論評】習への権力集中は、習政権の弱さを露呈したものであり、個人的な傲慢さの表れでもある(゚д゚)!

習主席統治に不満噴出か 中国、党内に異変相次ぐ

2016年上海では習近平のポスターを張り巡らした家屋が出現・・・・・ 写真はブログ管理人挿入

中国共産党内で、権力集中を進める習近平国家主席の統治手法に不満が噴出しているとの見方が出ている。国営メディアが習氏への個人崇拝批判を示唆、習氏の名前を冠した思想教育も突然中止されるなどの異変が相次いでいるためだ。米国の対中攻勢に手を焼く習氏の求心力に陰りが出ている可能性も指摘される。

「習近平同志の写真やポスターを全て撤去せよ」。12日、習氏の宣伝用物品を職場などに飾ることを禁じる公安当局の緊急通知の写真が出回った。通知の真偽は不明だが、写真は会員制交流サイト(SNS)などで一気に拡散された。

同時期に国営通信の新華社(電子版)は、毛沢東の後継者として党主席に就任した故華国鋒氏が個人崇拝を進めたとして党内で批判を受けた経緯を詳述する記事を伝えた。党が80年に「今後20~30年、現職指導者の肖像は飾らない」と決定したことにも触れた。記事はすぐ削除されたが、習氏を暗に非難したと受け止められた。

【私の論評】習への権力集中は、習政権の弱さを露呈したものであり、個人的な傲慢さの表れでもある(゚д゚)!

2016年には、上海で強制解体に必死の抵抗を試みた家主が、建物全面に「習近平ポスター」を貼りまくるという事件が発生しました。それがこのブログ冒頭の記事の写真です。

習近平主席の写真やポスターなど無断で引き剥がしたりすれば、不敬罪にあたるとして、家主はこれで、強制撤去を免れると目論んだのですが、呆気なく 十数人の作業員が動員されポスターは引き剥がされてしまいました。

今月の、7月4日の午前6時ごろ、中国の湖南省出身、現在は上海に住むとされる女性、董瑶琼さん、29歳が、習近平国家首席を支持しないという内容の動画を生配信し、習近平のポスターに墨をかけるパフォーマンスを行いました。

董瑶琼さんとされる写真

動画の中で、董さんは「私は、習近平とその独裁主義に反対です」と発言。動画は、「みなさん、私は彼の写真に墨をかけました」「彼が私をどうするかみものです」と続き、まるで習近平を挑発するような内容でした。習近平と中国共産党を批判した約2分のこの動画はTwitterで大拡散され、中国の人気メッセージアプリWeChatでも、多くシェアされました。

同じく4日の昼、中国の活動家・華涌さんが、董さんの動画をシェアし、彼女の安否を気遣うツイートをしています。以下にそのツイートを掲載します。

私自身は、このような事件があった後に、「習近平同志の写真やポスターを全て撤去せよ」という公安当局の緊急通知が出回ったので、中国共産党当局としては、董瑶琼さんのような行為が全国各地で頻発することを懸念して、このような通知を出したのではないかと思います。

ただし、実際出してみたもの、これも異常といえば異常です。それこそ、習近平の権威を貶めることにもなりかねません。だから結局引っ込めたのでしょう。その事実を中国共産党内の習近平反対派閥に利用されたのだと思います。

このようなことは、中国では珍しくはありません。たとえば、2010年あたりには、中国政府は反日デモを奨励していました。デモを起こしても、「反日デモ」であれば、「反日無罪」ともいわれたように、あまり厳しく取締りなど行いませんでした。

それどころか、その後は政府のほうが、反日を煽って多くの人々を巻き込んで大規模デモを実施させるという、いわゆる官製反日デモが繰り広げられました。

ところが、2011年から12年かけては、反日デモが起きると、いつの間にか反政府デモになったり、反日デモとして届け出されたデモが、実はそれを隠れ蓑として本当は反政府デモだったという事例も多数でたため、政府は反日デモを強力に取り締まるようになり、2013年あたりからは、全くなくなりました。

2011年の中国での大規模反日デモ

中国共産党中央委員会は2018年2月25日、国家主席の2期10年の任期を撤廃する憲法改正案を発表しました。3月5日から始まった全国人民代表大会(全人代)で憲法改正が成立し、習近平(シー・チンピン)主席は3期目以降も現職にとどまれることになりました

この動きが歴史的に重要なのは、習の終身統治が第二次大戦後の世界秩序を葬り去る可能性があるからです。市場資本主義、民主主義、個人の権利を中心とした政治制度など欧米の価値観に基づく秩序が失われかねないです。

これからは中国が世界のリーダーになると、習は明言しています。つまり、個人より国家を優先する「中国モデル」の独裁的統治が、過去75年間近く各国の統治の模範として、また国際的な枠組みをつくる上でも、重要な役割を果たしてきた欧米型民主主義に取って代わろうとしているかもしれないのです。

中国が影響力を増す一方で、アメリカはドナルド・トランプ大統領は、中国の勝手はさせじと、中国に対して貿易戦争を挑んでいます。そうして、当の中国は未だトランプ氏の本気度を測りかねているようです。

「アジア型」開発モデルについては、78年の鄧小平(トン・シアオピン)の改革開放以降、さまざまに論じられてきました。鄧の市場経済導入も、リー・クアンユーの指導下でのシンガポールの経済成長も、独裁的な統治と市場ベースの経済開発を組み合わせた、いわゆる「開発独裁」です。

政治活動の自由や個人の権利が制限されても、経済が成長していれば、人々は政府を支持し、社会の現状に満足するといわれています。特にアジア人はその傾向が顕著だとの説もあります。

開発独裁は中国古来の儒教文化とも親和性が高いです。儒教の伝統では政治は政治家の専売特許で、民が口出しすべきものではありません。政府は自分たちがつくったり、改革したりするものではなく、天候のようにただ受け入れ、耐えるものとされてきました。

結局のところ長年にわたる共産党の支配をもってしても、中国に深く根付いた儒教の伝統はなくせませんでした。実際、今の中国の政治と経済にとって、共産主義思想は人民服のように時代錯誤なものにすぎません。共産党政権ですら、儒教の伝統を統治に取り入れています。

朝服は古代中国の役人が朝廷に出仕する時の服装。冠は地位を表す
大事なもの、笏(しゃく)はメモとして必要なアイテムだった。

古代高級官僚の朝服をまとったナショナリズムは独裁体制を支える柱であり、習はかつての皇帝のように絶対的な権限を掌中にしようとしています。

毛沢東時代に個人崇拝が進み、1人の人間に権力が集中し過ぎた苦い経験から、中国は2期10年の主席任期を設けました。今それを捨て去った理由については、2つの可能性が考えられます。

1つは、習への権力集中は、習政権の弱さの裏返しだという解釈です。中国当局は厳しいメディア規制を敷いていますが、中国全土で毎年、数十万件ものデモが起きていることは隠し切れないです。人々は汚職や環境汚染、地方政府の怠慢に怒り、抗議の声を上げています。

一党独裁の中国共産党には、政府批判を建設的な声と受け止める発想がありません。そのため抗議の声が上がれば反射的にそれを圧殺しようとします。そうしながらも彼らは、自分たちの支配は見掛けよりはるかに不安定で弱いのではないかとビクビクしています。

中国の政府の政治家なるものは、民主的な選挙で選ばれたわけではなく、政権の統治の正統性に疑問が付きまとうことも、彼らの不安を駆り立てています。

習政権は「中華帝国の再興」を掲げ、ナショナリズムをあおってきましたが、その目的は国民に誇りを持たせ、愛国心を育てることだけではありません。政権の正統性をアピールし、人々の不満を抑え付ける狙いがあります。

もう1つの可能性として、2期10年ルールの変更は個人的な傲慢さの表れとも取れます。78年以降、中国は政治、経済、社会、軍事と、あらゆる面で驚異的に力を付け、人々の生活も豊かになり、国際社会でも大きな発言力を持つようになりました。

中国は対米貿易黒字で稼ぐドルを原資にした金融の量的拡大によって、経済の高度成長を達成したばかりか、軍拡路線を推進し、沖縄県尖閣諸島奪取の機をうかがい、南シナ海の岩礁を占拠、埋め立てて軍事拠点にしました。

拡大する市場に日米欧企業を引き寄せ、先端技術提供を強制しました。周辺の弱小国に輸出攻勢をかけて貿易赤字を膨らませ、返済難になると、インフラを接収するという暴挙を繰り広げました。

そうして、何よりも中国は自由貿易の前提でもある、民主化、経済と政治の分離、法治国家化を不十分なまま放置し、改善しようという気が全くありません。この中国が主席の任期のルールをなぜ変更するのでしょうか。しかも、それによって中国の制度の欠陥がなくなるわけではありません。1人の人間に永続的な権力が与えられるだけです。

習自身が強権支配を求めたのなら、これはかなり危うい状況です。共産党のほかの指導者や官僚は国家ではなく、1人の男に忠誠を誓わなければ、その地位が危うくなります。つまり、国家の命運が1人の男に託されるということです。

しかし、仮に才覚ある人間であったとしても、一人の人間が国家を丸ごと背負うのは不可能です。しかも皇帝であっても人間は皆いつか死にます。いつか来るそのとき、権力をどう継承するのでしょうか。


羅貫中の肖像画
独裁国家では常に跡目争いが支配の弱体化を招いてきました。古代ローマ帝国も、羅貫中が『三国志演義』に描いた古代中国の群雄割拠の時代もそうでした。

ソーシャルメディア上で憲法改正案への批判が噴き出すなか、中国政府は「クマのプーさん」などのキーワードを検閲対象にした。なぜプーさんを? 中国のネット民はしばしば親しみを込めて、習の「プーさん体形」をからかうからだ。

くまのプーさん(左)と習近平(右)

1800年前、中国の三国時代に武将・劉備が極寒のなか諸葛亮に会いに行くと、酒場から歌声が聞こえてきました。地位や名誉に背を向けた諸葛亮をうたう歌だ。「永遠に続く名声など、誰が望むというのか」

習近平はもとより、中国共産党幹部は、プーさんを検閲したり、するより、『三国志』を読み直すべきです。

そうして、読み直すにしても真摯に読み直さなければ、本気で中国に貿易戦争を挑むトランプ大統領により中国はかなり弱体化されてしまうことになるでしょう。

トランプ大統領としては、米国を頂点とする、第二次大戦後の世界秩序を中国に壊させることなど、絶対にさせないでしょう。

貿易戦争を挑んでも中国の態度がかわらなければ、次の段階では、本格的金融制裁に踏み切ることになるでしょう。その時、中国にはなすすべもないです。トランプ大統領は完璧に習近平の首根を抑えてしまったようです。

習は、国内では人民の憤怒のマグマの標的となり、国外でトランプ政権から徹底的に追い詰められることになります。私は、習政権は長持ちしないと思います。

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2018年7月15日日曜日

出ては消えるアベノミクス批判 「GDP改竄説」はデマの一種 改訂基準は過去の値にも適用 ―【私の論評】常識に欠けた人々には、永遠に満足する機会は訪れない(゚д゚)!

出ては消えるアベノミクス批判 「GDP改竄説」はデマの一種 改訂基準は過去の値にも適用 

高橋洋一 日本の解き方

 ネットメディアで「アベノミクスに重大な疑惑」といった記事がある。「マネタリーベース(中央銀行が供給するお金)が増えてもマネーストック(金融部門から経済全体に供給される通貨)はほとんど増えていない」「実質賃金は下がっていて生活は苦しくなっている」「アベノミクスがもたらしたのは、円安による為替差益と株価の上昇だけ」「GDP(国内総生産)はかさ上げされている」といったものだが、こうした説に妥当性はあるのか。

 約5年半前のアベノミクス開始当初にもこうした言説は多かったが、その後の実績でほとんど消えていった。特に、エコノミストらプロの世界では既に勝負がついているので、今やこうした話はまず出てこない。あるとすると、安倍晋三首相批判のためにする政治的な言説であることが多い。

金子勝氏はアベノセイダーズの急先鋒

 こうした批判では、雇用という国民生活で最も重要なことが語られない。失業率や有効求人倍率が記録的な良好水準であることの理由の分析を間違え、「実質賃金が上がっていない」という。

 金融緩和すると、まず就業者数が増え人手不足になる。その過程で物価はやや上がるが、名目賃金の上昇は追いつけない。それまで失業者であった人が就業者になる場合、名目賃金は比較的安い。こうしたことから実質賃金は上がらず逆に下がるという現象がみられる。これは効果のラグ(時間のずれ)であり、そのうちに名目賃金が物価上昇を追い抜いて上がり出す。

 「マネーストックが増えない」というのはそもそも批判にならない。筆者は当初から、マネーストックは金融機関からの貸し出しなので、当分増えないと断定していた。

 金融緩和によって実質金利が下がり、雇用とともに設備投資が高まる。しかし、過去の昭和恐慌の際にもみられたが、企業は当初は内部留保で設備投資をするので、すぐには外部資金に依存しない。過去のデータでは2、3年遅れるのが普通である。こうした批判をする人は、金融緩和のメカニズムが分かっていないと言わざるを得ない。

アベノセイダーズ五人衆

 「円安と株高だけ」との主張も左派の人に多い。実質金利が下がったことで円安と株高になるのであって、実物経済が良好であることの副産物である。

 そして、「GDPはかさ上げされている」というのはデマのたぐいだ。日本のGDP統計は、5年ごとに基準改定されている。2016年にも基準改定が行われたが、その際、09年に国連で採択された国際基準も取り込んでいる。改訂された場合、過去の値も遡及(そきゅう)適用されるので、改訂自体で統計数字が混乱するわけではない。もしこの手順が改竄(かいざん)というのなら、政府の統計委員会などに膨大な議事録が公表されているので、ぜひ指摘したらいい。

 それまでGDPに計上されていなかった研究開発費について、改訂後は「知的財産生産物」という固定資本として扱われ、その増分は設備投資になる。そこで「かさ上げ」という批判が一時出たが、過去データも遡及すればいいだけだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】常識に欠けた人々には、永遠に満足する機会は訪れない(゚д゚)!

経済政策が効果出すまでにはタイムラグがあるというのは、経済学上の常識です。これは、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
高橋洋一 日本の解き方 物価目標2%は実現できる 黒田日銀の壁は消費再増税、財政出動で景気過熱が必要だ―【私の論評】次の総理はやはり安倍晋三氏しか考えられない(゚д゚)!
2期目に入った日銀の黒田東彦総裁
経済対策のタイムラグに関する部分のみを以下に引用します。
"
経済政策には以下のようラグがあります。

1)内部ラグ
経済情勢の把握から経済政策の実行迄
1-1)認知ラグ
経済現象を認知する迄
1-2)決定ラグ
政策当局が経済情勢を判断し経済政策の発動の決定を行う迄
1-3)実行ラグ
決定した政策を実行に移す迄
2)外部ラグ
 政策実行から経済に効果が生じる迄

金融政策は決定ラグ、実行ラグが財政政策に比べて短く、外部ラグが長くなります。これは、日銀の9人が金融政策決定会合(時には緊急開催もあり)で、即座に決定、実行することができます。過半数の5票を取ることが出来れば良いので、追加緩和が必要であれば、その政策提案に5人の賛成で決定・実行できます。

財政政策は、与党内の調整や国会での議論などを通じて法制化しないと実行できず、決定から実行までに時間がかかります。安倍晋三総理が消費増税延期のために(修正法案提出・可決に必須ではない)衆院解散したことを見ても、財政政策の決定から実行に時間とコストがかかることが分かります。

外部ラグですが、財政政策はどの部分にいくら、と直接的にお金を使うため効果が早く出ますが、金融政策は様々な波及経路を通じて経済に効果を及ぼすため、半年〜1,2年程度のラグがあります。


以上のようなラグがあるからこそ、金融政策と財政政策をうまく組み合わせる必要があるのです。世の中には、財政政策と金融政策を比較してどちらが良いとか悪いとか語る人もいますが、医療の分野では同じ病気を治療するにしても、患者のその時々の状況にあわせて、複数の薬を使い分けるのが普通です。金融政策と財政政策も同じようなものであり、どちらか一方というのでは、経済を速やかに立て直すことはできません。
"
経済政策のなかでも、特に雇用に密接に関連した金融政策は様々な波及経路を通じて経済に効果を及ぼすため、半年〜1,2年程度のラグがあるいうのは経済学上の常識です。

もし安倍政権がアベノセイダーズ等の批判に負けて、金融緩和政策を中途半端でやめていれば、現在のような雇用の改善はみられなかったはずです。

世の中には、アベノセイダースだけではなく、一般の人でも、マスコミのインタビューなどに応えて賃金が倍にならなければ、経済が良くなったという実感が得られないなどと応えている人もいるようですが、こんなことはいくら経済対策がうまくいったにしても、ありえないです。

どうしてもそうしたいというのなら、企業に居続けるなら、職位の階段を短期で上るしかありません。あるいは、会社をやめて消費者・生活者に支持される事業を起こすしかありません。

ハイパーインフレにならない程度の緩やかなインフレ下で経済が伸びている状況では、1年や2年では賃金があがったにしても、誤差程度にしか感じられませんが、20年〜30年たつと倍になっているという感覚です。

ただし、インフレによって物価が上がっているので、それを相殺すると1.5倍というところでしょうか。

そのようなことでは大したことはないと思われるかもしれませんが、デフレが続けばこれとは反対のことがおこるわけです。デフレでも1年や2年では誤差のような感じてあまり賃金が下がったという感覚はないでしょうが、5年、10年で絶望感が生まれてきます。

20年後には今よりは確実に賃金が上がるであろうと確信できることと、20年たっても賃金が同じが下がっているだろうと確信できることとの間には、天と地ほどの違いがあるのです。

特に若い世代にとってはそうです。20年後には現在の職位のままであっても、賃金は間違いなく上昇して1.5倍くらいにはなっているだろうし、職位がある程度あがれば、賃金が現在の倍になっている可能性は十分にあると考えられるのと、デフレで20年後にはリストラされている可能性すらあると考えるのは雲泥の差です。

若い世代は20年後の自分が今より確実に良い状況にいるであろうとかなりの確率で想像できれば、結婚も積極的にするだろうし、その後の様々なライフステージで結構な消費もするでしょう。車を購入するとか、子供部屋のある家を購入するとか、定年後のことも考慮に入れ様々ライフスタイルを模索するようになります。

しかし、デフレのさなかではそのようなこともままなりません。将来に対する絶望や、不安が支配するようになり、さしせまってとても大きな消費はできないと考えるようになります。とにかく自分の身を守ることで精一杯という状況に追い込まれます。

どちらが良いかといえば、デフレは絶対に駄目です。緩やかなインフレが良いに決まっています。

しかし、経済政策で緩やかなインフレにもっていくには、上記で述べたようにタイムラグがあります。タイムラグがあることを無視して、経済対策をはじめてすぐに効果があがらないとして、すぐに打ち切ってしまえば、元も子もなくなるのです。

こんなことは、何も経済を学ばなくても常識で考えればわかることです。たとえば、ある大企業が何らかの理由で一度業績を落としてしまえば、そこから回復するには少なくとも、3年以上はかかるでしょう。

にもかかわらず、企業が何か手を打ったからといって、打った途端に即座に回復しないのはおかしい、自分の賃金もあがらないなどと騒ぐ社員がいたら、それこそそのような社員はリストラの対象にされるかもしれません。

企業の対策も、政府の対策も、何か手を打ったからといって、すぐに効果が出て、回復などということはありえません。タイムラグの存在を認められない人は、何も成就することはできないでしょう。

「よーし勉強するぞ」と決意し、3日目で「効果が出ないからダメだ」などと思い込むのは、滑稽ですらあります。こういうのを世間では「三日坊主」といいます。

非常識なアベニクシーズのツイートの内容を打ち消す世耕大臣のツイート

いずれにしても、そもそも安倍憎しで、何でも安倍総理のせいする人々や、経済回復の兆しを感じるのは賃金がすぐに2倍にならないと感じられないなどというような人々は、常識に欠けていると言わざるをえないです。

常識に欠けた人々には、永遠に満足する機会は訪れないのは確かです。どんなに良い境遇に置かれたにしても、満足感は得られないでしょう。

安倍総理も次の総裁選では、勝ちそうですから、すぐに引退ということはないですが、いずれ引退の時期は必ずきます。総理が他の人に変わったとしても、常識に欠けた人たちは、今度は次の総理を憎んだり、相変わらず政策の効果が見えないままでいるだけ話です。こんな人たちに振り回されるべきではありません。

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ユーチューブの異変と現代版の「検閲」 背後に外国勢力の意向か…―【私の論評】我が国はスパイ防止法もない有様で、中国や北朝鮮を増長させ放題にしている(゚д゚)!

2018年7月14日土曜日

ユーチューブの異変と現代版の「検閲」 背後に外国勢力の意向か…―【私の論評】我が国はスパイ防止法もない有様で、中国や北朝鮮を増長させ放題にしている(゚д゚)!

ユーチューブの異変と現代版の「検閲」 背後に外国勢力の意向か…

ケント・ギルバート ニッポンの新常識

竹田恒泰氏

 ドナルド・トランプ米大統領が大統領予備選のときから、ツイッターを駆使して支持者を増やしたことは記憶に新しい。CNNやニューヨーク・タイムズなどの既存メディアを「フェイクニュース」と断罪し、歯に衣(きぬ)着せぬ言動で、対立候補の政策や経歴、容姿までこき下ろした。何度も物議を醸したが、そのたびに支持者は増えた。

 結局、選挙予測では常に優勢だったヒラリー・クリントン元国務長官が惨敗した。世論誘導をもくろむ既存メディアが、ネット民のメディアリテラシーに完敗した選挙だった。

 英国のEU(欧州連合)離脱の国民投票でも、SNS発信のネット情報が大きく影響した。今やツイッターやフェイスブック、ユーチューブなど、SNS発信のネット情報が社会に与える影響は計り知れない。

 ネット時代の到来で、メディアが報じない情報を入手しやすくなった。自由と民主主義を重視する人間にはうれしいが、世の中には都合の悪い情報を隠したい連中が必ずいる。ヤツらの「工作活動」はいつも卑怯(ひきょう)でしつこい。

 最近、ユーチューブに異変が起きていることを、ご存じの人も多いだろう。明治天皇の玄孫で、作家の竹田恒泰氏の公式アカウントなど、「保守系チャンネル」が相次いで利用できなくなった。約200件のアカウントが凍結され、動画は閲覧不能になっているとの情報もある。

 凍結されたチャンネルの共通点は、中華人民共和国(PRC)や韓国、北朝鮮に不都合な事実を発信していたことだ。

 私もいくつかのチャンネルは見たことがあるが、過激な差別表現を含む動画より、「日本軍の慰安婦強制連行はなかった」などの歴史的事実を伝える、普通の動画の方が多かったように思う。

 検閲とは本来、「公権力」が情報統制のために、出版物や放送、映画、郵便物などの内容を強制的に調べるものだ。

 しかし、現代版の検閲は違う。一般人を装った組織的クレーマーが、情報発信者本人とSNSサービスに大量のメールを送るなど、執拗(しつよう)な攻撃を仕掛けて屈服させているようだ。テレビ局の多くは同様の方法で20世紀にクレーマーに屈服し、今はSNSが標的になった。

 その背後に、外国勢力の意向がある可能性は高い。私はツイッターで、日本語が微妙に怪しい外国工作員らしき人間にいつも絡まれている。

 メディアが報じないPRCの内情を教えてくれる評論家、宮崎正弘氏のメルマガは、某ウイルスソフトが必ず「迷惑メール」に分類する。

 日本には憲法9条改正とともに、スパイ防止法が必要だと、経験から心底思う。

 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

【私の論評】我が国はスパイ防止法もない有様で、中国や北朝鮮を増長させ放題にしている(゚д゚)!

私自身は、動画を見るより、文字を読んだほうが圧倒的にはやく情報を入手できるので、「保守系チャンネル」は以前はかなり見たこともあるのですが、最近はほとんど見ていません。しかし、文字を読むことが苦手とか、保守系の文章はあまり読んだことのない人には、かなり有益なツールだと思います。

竹田恒泰氏のYouTubeチャンネルの凍結されたのは、今年の5月のことでした。竹田氏は、チャンネルを通報して潰した人達に宣戦布告しました。

竹田氏は公式ツイッターで「左翼活動家たちに狙い撃ちされ、竹田恒泰チャンネルのYouTube版が閉鎖に追い込まれました」と述べ、今回の攻撃は左翼活動家だと断定しました。

その上で、今夜20時から反撃を開始すると言及し、「これは戦争です。一日も早く回復し不当な攻撃が無意味であることを示しましょう」と呼び掛けていました。以下にそのツイートを掲載します。
これを受けて竹田氏のチャンネルを通報した5ちゃんねるユーザーからは、「やんのか?」「判断したのはYouTubeなんですけど」「サブチャンネルも潰せ」「玉音放送はよ」などとコメントが相次いでいました。

竹田氏と5ちゃんねる(なんJ民&嫌儲民ら)の全面戦争になってきたと言え、ツイッター掲示板の方も大盛り上がりになっていました。

結局、竹田氏のYouTubeチャンネルは再開されました。


ご覧になりたい方は、以下のリンクから入ることができます。
https://www.youtube.com/channel/UCTxDz8sXbnpYAfulQMRFNEQ
これは、当然の措置でしょう。竹田氏のYouTubeの動画上の発言は、以前何度か視聴したことがありますが、その内容のほとんどは過激なものでもなんでもなく、事実に基づいたことを淡々と話しているという内容のものです。

ただし、その内容は普段テレビや新聞などでは報道されていないことなどが多いので、テレビなどが主な情報源の人がみると、最初は、結構ショックを覚えるかもしれません。ただし、私のように保守系の文章などを読み慣れている人間にとっては、そのようなことはなく、ごく当然のことを語っているとしか思えません。

一度チャンネルが凍結されると、再開したとしても、登録者数は凍結前のカウントではなく、ゼロからはじまるようになっているようです。現状の登録数を確認してみると、4.6万人でした。これは、凍結以前を回復したか、それ以上になっていると思います。

なぜこのようなことが起こったかといえば、ブログ冒頭のケント・ギルバート氏の記事にもあるように、一般人を装った組織的クレーマーが、情報発信者本人とSNSサービスに大量のメールを送るなど、執拗(しつよう)な攻撃を仕掛けて屈服させているのでしょう。

今回、竹田恒泰氏のアカウントはすぐに再開されたので、あまり大きな被害はなかったとは思います。そうして、なぜすぐに再開されたかといえば、竹田氏が著名人だからだと思います。

竹田氏の普段の発言など、さほど過激ではないし、多くの発言が文献を丁寧に読んだ事による情報に裏打ちされていることなど、はっきりしているので、はやく回復されたのだと思います。

著名人ではない人のアカウントの場合はすぐには回復されないことも多いようです。私自身は、自分の意見が異なる人が動画を発信していたとしても、ときには参考のために見ることもありますし、普段はあまりみないです。

朝日新聞なども、わざわざ購入してまでは読みませんが、時々朝日新聞がどのような主張をしているのかを見るため、デジタル版を時々見ることがあります。

やはり、普通の人ならその程度であり、たまたま見ていたら過激な内容であれば、YouTubeに報告することもあるかもしれません。

ちなみに、すべてのYouTubeの動画には、動画の内容をYouTubeに報告することができるようになっていて、「報告」というリンクがついています。これをクリックすると以下のような画面がポップアップして、さらに詳細を報告できるようになっています。


竹田氏のアカウントはおそらくこの報告システムを悪用して行われたのでしょう。人によって同じ動画を見ても、反応は違います。大勢の人が不快とは思わないような内容でも、不快と感じて報告する人がいるかもしれません。しかし、一般の人が個人で報告する程度では、竹田氏のアカウントを凍結に追い込むようなことはできなかったでしょう。

やはり、クレーマーの背後に、外国勢力の意向がある可能性は高いと考えられます。そうして、これから外国勢力が日本国内で好き勝手ができないように、スパイ防止法が本当は必要なのです。

国家の安全保障を脅かすスパイにほ日本に限らず、どこにでも潜んでいます。そうして日本以外の国々では、どの国も厳罰で臨んでいます。

にもかかわらず、わが国はスパイ罪すら設けていません。スパイ行為そのもので逮捕できないのは、世界で日本一国だけなのです。

自衛権は国際法(国連憲章第51条)で認められた独立国の固有の権利で、国家機密や防衛機密を守り、他国の諜報活動を防ぐのは自衛権の行使として当然の行為です。それで世界ではどの国もスパイ行為を取り締まる法整備(スパイ防止法や国家機密法、あるいは刑法など形態は様々)を行っています。それが諜報対策の基本です。

ところが、わが国にはスパイ行為を取り締まる法律そのものがありません。それで他国ではスパイ事件であっても日本ではそうならないのです。

初代内閣安全保障室長を務めた佐々淳行氏は、警視庁公安部や大阪府警警備部などで北朝鮮やソ連、中国の対日スパイ工作の防止に当たってきましたが、次のように述べています。
我々は精一杯、北朝鮮をはじめとする共産圏スパイと闘い、摘発などを日夜やってきたのです。でも、いくら北朝鮮を始めとするスパイを逮捕・起訴しても、せいぜい懲役一年、しかも執行猶予がついて、裁判終了後には堂々と大手をふって出国していくのが実体でした。なぜ、刑罰がそんなに軽いのか――。 
どこの国でも制定されているスパイ防止法がこの国には与えられていなかったからです。…もしあの時、ちゃんとしたスパイ防止法が制定されていれば、今回のような悲惨な拉致事件も起こらずにすんだのではないか。罰則を伴う法規は抑止力として効果があるからです。(『諸君』2002年12月号)
佐々氏は「他の国では死刑まである重大犯罪であるスパイ活動などを出入国管理法、外国為替管理法、旅券法、外国人登録法違反、窃盗罪、建造物(住居)進入などの刑の軽い特別法や一般刑法で取締らされ、事実上、野放し状態だった」と言います。

佐々淳行氏

世界各国では、CIA(米中央情報局)やFBI(米連邦捜査局)、SIS(英情報局秘密情報部)などの諜報機関を設けて取り締まるのが常識です。ところが、わが国にはそうした法律や諜報機関が存在しないのです。

オバマ前米国大統領は、「戦略的忍耐」で中国を増長させてしまいましたが、トランプ政権に変わってから、果敢に中国に対して貿易戦争を挑み、中国に対して民主化、政治と経済の分離、法治国家化を迫っています。

一方我が国は現在に至るもスパイ防止法もない有様で、中国や北朝鮮を増長させ放題にしているといっても過言ではありません。

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2018年7月13日金曜日

コラム:貿易戦争でも世界経済が失速しない「3つの理由」=村上尚己氏―【私の論評】米国から勝ち目のない貿易戦争を挑まれても、自業自得としかいいようがない中国(゚д゚)!

コラム:貿易戦争でも世界経済が失速しない「3つの理由」=村上尚己氏
村上尚己 アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト

習近平(左)とトランプ大統領(右) 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

6月19日付の前回コラムで「市場心理はやや楽観方向に傾斜気味」と筆者は指摘したが、その後、中国などに対するトランプ米政権の関税引き上げ政策をきっかけに、世界経済の風向きが変わるとの懸念が高まっている。

政治・経済情勢への不確実性の高まりは、リスク資産の上値を抑え、米国債などへの投資を強める一因になっていると言えよう。実際、6月半ば以降、米国の長期金利は3%付近で頭打ちとなり、緩やかながらも低下。米国株市場も他国に比べれば底堅いとはいえ軟調に推移しており、ほぼ年初の水準にとどまっている。

確かに、米国などによる関税引き上げや投資制限措置は、グローバルで事業を展開する多くの企業の活動を抑制するため、個々のビジネスには大きな影響を与える可能性がある。一方で、保護主義的な通商政策の応酬が米国を中心に経済全体にどの程度ネガティブな影響をもたらすかについて見方はさまざまである。

率直に言って、トランプ政権がここまで強硬な関税引き上げ政策をとることは筆者にとって予想外であり、数カ月にわたり市場心理を圧迫する展開については、もっと慎重に見積もっておくべきだったことは認める。

7月10日には、追加で2000億ドル規模の中国からの輸入に関する関税リストが発表された。米国政府の強硬な姿勢に変化が現われるまでには、まだ時間を要するため、リスク資産は上下にぶれやすい状況が続く可能性がある。足元までの景気指標はサーベイ指標を含めて総じて堅調だが、関税引き上げへの備えで事業計画が滞るなど、製造業などのマインドが悪化するリスクもある。

<負のインパクトを相殺する要因>

経済指標の下ぶれは、当社にとってあくまでリスクシナリオだが、「貿易戦争」によって世界経済がソフトパッチ(景気の一時的足踏み)にとどまらず、米国を含めて景気後退に至るとの懸念が金融市場でさらに高まる可能性はある。

株式市場が調整した2016年前半にも米国経済の後退懸念が高まった局面があったが、今回も同様の市場心理の悪化があるかもしれない。

もっとも、現在想定されているように中国などへの関税引き上げの対象が広がり、世界経済の後退懸念が高まっても、米国経済の状況を踏まえると、実際には世界経済全体が景気失速に至るほどのショックは起きないと筆者は考えている。以下、3つの理由をあげる。

第1に、米国では減税政策などによる景気押し上げ効果が、関税引き上げによるネガティブインパクトをかなり相殺することが見込まれる。米議会予算局(CBO)の試算によれば、家計に対する減税政策だけで2019年までの2年間に年平均800億ドル、国内総生産(GDP)比0.5%相当の所得押し上げ効果がある。

すでにリストが発表された対中輸入2000億ドル規模まで関税引き上げが広がった場合は、累積的な関税負担は約435億ドルである。もちろん、これら以外にも、関税引き上げが製造業の活動を停滞させ、それが景気を押し下げる負の影響もある。ただ、米国経済全体でみれば、減税効果で家計部門の総需要が増え続けるため、潜在成長率を上回る経済成長が続く可能性が高い。

第2の理由は、政策金利サイクルと景気循環の経験則である。6月の米連邦準備理事会(FRB)による利上げで、政策金利がほぼ2%まで上昇したが、シンプルにインフレ率を控除した実質政策金利はほぼゼロだ。景気が後退局面に入る前には、多くの場合、実質政策金利が3%以上まで上昇、金融環境が景気抑制的に作用し、景気後退が訪れるのが経験則だ。

また、米国以外の中央銀行の金融政策が総じて緩和的な中で、長期金利は今年緩やかな上昇が続いているとはいえ低水準のままだ。金利サイクルと景気循環の観点からは、景気後退に至るにはまだ時間を要し、緩やかな利上げが続いても金融緩和的な状況はあまり変わらない。

<米景気後退の典型的パターンに合致せず>

第3の理由は、米国の景気後退をもたらす典型的なパターンと現状が合致していないことだ。米国が景気後退入りする前には、経済活動に何らかのブームや行き過ぎがあり、それが崩れることで需要縮小ショックが起きることが多い。

ところが、今の米国経済は失業率の低下こそ下限に近づいている可能性があるものの、景気後退をもたらすようなブームが起きている兆候はあまりみられない。例えば、米国の景気後退を招く典型的なケースは、住宅や自動車の総需要が増えて、金利上昇などでそれが大きく調整することだが、そこまでの総需要増が起きていることは確認できない。

住宅投資のGDP比率について、1940年代後半からの長期推移をみると、平均は4.6%。多くの場合、景気後退が発生する前には、この水準を超える住宅市場の盛り上がりが起きていたが、2018年初でこの比率は3.9%と、平均からかなり低い数値にとどまっている。2000年代半ばの住宅ブームの崩壊の余波がとても大きかったわけだが、住宅市場の回復は依然かなり遅れているように思われる。

同様のことは、自動車関連消費のGDP比率についても言える。家計の住宅・耐久財消費の状況から判断すれば、米国の景気後退入りはまだ遠いとみられる。

金融市場の値動きが、米国など各国の政治動向に起因する市場心理の揺らぎに支配される神経質な状況は、もう少し続くかもしれない。ただ、それがリスク資産の投資機会をもたらす可能性も十分あるのではないだろうか。

【私の論評】米国から勝ち目のない貿易戦争を挑まれても、自業自得としかいいようがない中国(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事中の、「貿易戦争により、米国経済が落ち込み、世界経済全体が景気失速に至るほどのショックは起きないことの理由」を以下に再度まとめて簡単に掲載します。
第1に、米国では減税政策などによる景気押し上げ効果が、関税引き上げによるネガティブインパクトをかなり相殺することが見込まれる。 
第2の理由は、政策金利サイクルと景気循環の経験則である。米国では景気が後退局面に入る前には、多くの場合、実質政策金利が3%以上まで上昇、金融環境が景気抑制的に作用し、景気後退が訪れるのが経験則である。 
第3の理由は、米国の景気後退をもたらす典型的なパターンと現状が合致していないことだ。米国が景気後退入りする前には、経済活動に何らかのブームや行き過ぎがあり、それが崩れることで需要縮小ショックが起きることが多い。
米国による、中国に対する貿易戦争がさほど米国経済に悪影響を及ぼさないことは、貿易依存度からもうかがえます。

貿易依存度とは、一国の国内総生産(GDP)または国民所得に対する輸出入額の比率(輸出依存度、輸入依存度)をいいます。一般にGDPの小さい国ほど、貿易依存度は大きいです。

これは、GDPが小さい国の場合、自国市場だけで全ての産業を自給自足的に成立させることは難しく、国外市場への輸出もしくは国外供給地からの輸入に頼らざるを得ないためです。戦後の世界貿易は世界経済の伸びを上回って拡大しており、世界的に貿易依存度は高まってきているといえます。

2016年の米国の貿易依存度は、19.66%です。そうしてこの数値は、貿易依存度はGDPに対する貿易額の比率です。貿易額は貿易輸出総額と輸入総額の合計値で国際収支ベース(FOB価格ベース・所有権移転ベース)です。貿易額にサービス輸出・輸入は含めていません。

これは、米国のGDPに対する輸出+輸入の比率です。この中で、対中国の輸出・輸入ということになるとさらに比率は小さくなります。輸出がGDPに占める割合は、数%にすぎません。米国は経済の大きな国ですから、内需大国ということです。だから、もともと貿易の依存度はかなり低いのです。その中でさらに中国への依存となると微々たるものでしかありません。

ただし、米国の企業で直接貿易にかかわる企業でさらに、中国にかなり依存している企業はかなりの打撃をうけることでしょう。それと、米国の国家全体ということでは別次元の問題です。

さらに、米国は中国から様々な物品を輸入していますが、これらの物品のほとんどが、中国からしか輸入できないというものではありません。であれば、自国で生産するより、他国から輸入したほうが安い場合、他国から輸入することになるでしょう。このように考えていくと、確かに貿易戦争による米国への影響はさほどでもないといえそうです。

テレビ報道では貿易戦争が世界経済に大きな影響を与えるとしているものも多いが?

しかし、中国にとってはそうではないでしょう。

トランプ政権は中国との貿易戦争に本気です。第1弾の制裁500億ドル相当に加え、6031品目、2000億ドルにも及ぶ今回の追加制裁により、中国からの輸入額(約5055億ドル)の約半分が対象となりました。トランプ大統領はほとんど全ての中国からの輸入品に関税をかける可能性もあるとしています

11日の上海市場や深セン市場の株価指数は軒並み急落、人民元も対ドルで下落しました。

世界貿易機関(WTO)は11日、中国を対象にした貿易政策審査報告書を発表。中国政府の経済活動への介入により市場は閉鎖的な状態にあるとしたうえで、知的財産権侵害について「知財保護関連の法律に大きな変更はなく、改善が不十分」との見解を示しました。

米国の第1弾制裁に対して中国が報復措置を打ち出したことについて、USTRのライトハイザー代表は、「正当化できない」と批判する声明を発表。さらに中国による知財権侵害は「米経済を危険にさらす」と強調しています。

ライトハイザー代表

ホワイトハウスが6月に公表した報告書では、「中国国家安全部の諜報部員が国外に4万人いる」とし、「企業の部内者や企業秘密にアクセスできる者による産業スパイ」が行われていると指摘しています。

これを裏付けるような事件が発覚した。米連邦捜査局(FBI)は、米大手アップルの自動運転車の開発に関連する情報を盗んだとして元社員の男をカリフォルニア州の裁判所に訴追しました。男は母親が中国在住とみられ、自動運転車開発の中国企業に転職予定でした。退職を申し出る直前、広範囲の企業秘密のデータベースを検索し、ダウンロードしていたことが判明。今月7日、中国に向かうところを米サンノゼ空港で逮捕されましたた。


中国は対米貿易黒字で稼ぐドルを原資にした金融の量的拡大によって、経済の高度成長を達成したばかりか、軍拡路線を推進し、沖縄県尖閣諸島奪取の機をうかがい、南シナ海の岩礁を占拠、埋め立てて軍事拠点にしました。

拡大する市場に日米欧企業を引き寄せ、先端技術提供を強制しました。周辺の弱小国に輸出攻勢をかけて貿易赤字を膨らませ、返済難になると、インフラを接収するという暴挙を繰り広げました。

そうして、何よりも中国は自由貿易の前提でもある、民主化、経済と政治の分離、法治国家化を不十分なまま放置し、改善しようという気が全くありません。

このような中国が、米国から全く勝ち目のない貿易戦争を挑まれても、自業自得としかいいようがありません。身の丈知らずにも程があるといえます。

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2018年7月12日木曜日

立憲民主に“ブーメラン”直撃! 猛批判の自民懇談会と同じ日にパーティー挙行、多数のビール瓶が…―【私の論評】与野党に限らず、国民を不幸にする経済センスのない政治家は要らない(゚д゚)!

立憲民主に“ブーメラン”直撃! 猛批判の自民懇談会と同じ日にパーティー挙行、多数のビール瓶が…



 安倍晋三首相は11日、岡山県を訪れ、未曾有の被害が出た「平成30年7月豪雨」の被災地を初めて視察。立憲民主党など左派野党は、災害の危険が迫る5日夜に、安倍首相や自民党議員が衆院議員宿舎で懇談会を開いたことを猛烈に批判しているが、実は、立憲民主党の衆院議員も同日夜、枝野幸男代表や、蓮舫副代表らも出席したパーティーを開いていた。ネット上は「ブーメラン直撃」と炎上している。

 「ライフラインの早期復旧へ、スピード感をもって取り組む。全力で対応する。自治体が安心して復旧に当たれるよう、財政措置を講じる」

 安倍首相は10日、自民党広島県連所属の国会議員と官邸で面会した際、被災地支援策について、こう強調した。11日の岡山視察に続き、広島県や愛媛県も近く訪問する方向だ。

 こうしたなか、他人の批判だけは天下一品といわれる立憲民主党の蓮舫氏は10日、「赤坂自民亭」と呼ばれる5日夜の懇談会に、安倍首相や小野寺五典防衛相ら約50人が参加したことを、「責任感が欠如している。気象庁が警戒を呼び掛けていた夜だ。まさかと思った」と、国会内で記者団に語った。

 政権・与党は常に緊張感を持ち続けるべきであり、批判は当然だ。

 ただ、立憲民主党が災害への危機感を持っていたのか、疑問を感じる事実がある。何と、「赤坂自民亭」と同じ日に、同党の手塚仁雄(よしお)衆院議員(51)=比例東京=が、東京・永田町の憲政記念館で「手塚よしお政治活動25周年感謝の集い」というパーティーを開いていたのだ。

 手塚氏のブログによると、来賓者には、枝野代表や蓮舫氏のほか、長妻昭代表代行、辻元清美国対委員長、野田佳彦前首相や菅直人元首相ら、旧民主党政権をほうふつさせる面々が名を連ねていた。

 出席者がネットにアップした写真には、壇上で挨拶する枝野氏らとともに、多数のビール瓶が写っていた。

 夕刊フジは11日朝、手塚氏を電話で直撃した。

 手塚氏は、5日夜にパーティーを開いた事実を認め、「乾杯用にビールとかは出ていると思う」と話した。ただ、ネット上で疑問・批判が出ていることなどについては、「文書で対応する」として詳細な回答を避けた。

 政治評論家の伊藤達美氏は「まさにブーメランだ。災害発生後に、政府・自民党の対応を批判する野党の理屈は、結果論に過ぎない。前のめりになって、いつものブーメランが直撃する事態になっている。大災害をここぞとばかりに政権批判に利用する姿勢はどうか。ここは与野党が結束して、被災者の救出と復旧、対策などに全力を尽くすべきだ」と話している。

【私の論評】与野党に限らず、国民を不幸にする経済センスのない政治家は要らない(゚д゚)!

こうした政治利用はどちらの側からみても見苦しく、やめるべきです。被災地の当事者の方がこうした懇談会などを不快に思うならやめた方が良いかもしれませんが、被災地ではそれどころではなく必死に対応しているはずです。こうした会合などを批判するのは、政治的に利用したい第三者でしょう。

そもそも、政治家には会合はつきものである。もし会合なしの政治家がいるなら、民の声を聞かないという意味で政治家たる職務を果たしていないともいえる。

   自民党や立憲民主党も、身内の会合を政治家が喜々としてSNSで発信することもいかがなものかという批判もあるでしょうが、今やそうした時代です。

「手塚よしお政治活動25周年感謝の集い」というパーティーはSNSで公開されていた

しかも、与党でも野党でも、もし政治家が会合をしていても、政府や官僚はきちんと動いています。今回の豪雨でも、特別警戒警報は早い段階で出されていました。こうした災害では、必ずしも政治家によるトップダウンは必要ではありません。

政治家は、政府がうまく機能していない場合に重要な決断をする役目であり、官僚のように災害対応の日常業務を行うわけではありません。かつての民主党政権のように、片手の脇に大量の資料を小脇に抱えもう一方の片手に電卓をもち政治家が官僚の仕事をして、政治家としてのパフォーマンスをアピールしていたのは滑稽以外の何ものでもありませんでした。

この滑稽さは、一般企業でいえば、取締役が資料と電卓を持って、財務部や経理部の仕事をしているようなものです。まともな企業のまともな取締役ならこんな滑稽なことなど決してしないでしょう。

そんなことをしても、取締役は仕事をしたとはいいません。取締役の仕事の本質は、企業にとって意味ある決定と方向付けを行うことです。企業のエネルギーを結集することでああり。問題を浮かびあがらせることです。

政治家の仕事も本来、国の統治にかかわることに集中すべきであって、官僚の仕事をすることではありません。


民主党政権時代の政策で治水対策が遅れを取ったことは否めない

しかし、旧民主党は結局、政治主導の名の下にするべきでない官僚の仕事をしてしまい、その挙げ句の果てに、財務省の掌(てのひら)で、政治的な事業仕分けを行ったために、公共事業費は大幅なカットとなって、必要な予算を付けられず、その後の治水対策で後れをとるはめになってしまいました。

そうして、治水対策の遅れは、90年代から続く財務省(旧大蔵省)の緊縮主義の継続にあります。特に、90年代真ん中からの名目公的資本形成(政府のインフラへの投資など)が急減してしまい、2010年代に入る直前にはほぼ半減してしまいました。しかし、民主党がこれを加速したことは否めないです。


政治家に限らず、被災地以外の人は、できるだけ平常の生活を維持する方が良いです。被災地への旅行を予定していたのであれば、一時的に延期するのはやむを得ないでしょうが、時期をみて延期していた旅行も実施したほうが良いです。

被災地以外で妙な自粛ムードが広がると、経済的な「二次被害」になる可能性すらあります。それは、自然災害を超えた「人災」にもなりうるので、注意すべきです。

そうして、震災や今回の水害などのときには、中央の政治家はなるべく現場に任せて、カネの問題に特化すべきです。さらに、中央であろうと地方であろうと、政治家は官僚の仕事が上手くいかいないときに意思決定するのが役目であると心得るべきです。

あまり災害時に現場の話にまでしゃしゃりでる必要はないです。今回の水害では、当面は予備費3,500億円で対応し、次が補正予算ということになるでしょう。

さて、その補正予算が問題です。防災のためには増税ではなく、長期の国債(復興国債など)を発行してお金を集めるのが経済学のすすめる常套手段です。その方が経済的負担を将来にまたがって分散することができて望ましいからです。

また長期国債を新たに発行すれば、それを日本銀行の現状金融緩和政策によって無理なく吸収でき、むしろ経済の安定化に大きく寄与するになるはずです。そうすれば「財政危機」などの心配もありません。

しかも、現状では日銀が金融緩和で国債を市場から大量に買い取ったため、品薄状態になっています。しかも、国債金利は最低の水準です。この状況では、どう考えても国債を大量に発行して震災や、水害対策にあてるべきです。

しかしかつて東日本大震災のときに、財務省と緊縮主義の政治家たちは、「復興税」を推進しました。今回はどうなることでしょうか。

自然災害の復興は国債で賄うのが普通。古今東西、日本の復興税だけが例外!

今回も政治家たちが、「復興税」などのような増税で防災対策などをするなどの愚かな意思決定をしてしまえば、彼らは政治家の仕事を放棄したとみなされても致し方ないでしょう。

こんな馬鹿なことを決定する、経済の根本が何もわかっていない政治家ならいりません。そのような政治家は、増税によってかつてのように、デフレ・円高で国民を塗炭の苦しみに追いやることになるなどにはまったく無頓着で、財務省のいいなりだからです。

与野党に限らず、懇談会がどうのこうのなどということは本当にどうでも良いことです。旧民主党の政治家は、「コンクリートから人へ」などとして、緊縮財政を先導しました。

自民党の経済オンチの政治家の中には、「経済対策といえば公共工事」と単純に思い込んでいるものも多いと聞き及んでいます。金融政策や、減税、給付金などの他の積極財政のことは頭に思い浮かばないようです。

いずれにしても、経済オンチの政治家は国民を不幸にするだけで、全く存在価値がありません。

無論経済オンチは駄目とはいっても、何も経済を詳細にいたるまで完璧に理解していなければならないなどということはいいません。それこそ、電卓を叩いて、細かい計算をするようなことは官僚がすべきです。ただし、経済において、何が正しいのか何が間違いかを理解できるセンスだけは持っているべきです。そうして、財務官僚の嘘を見抜けるくらいのセンスはほしいです。

そうして、それはそんなに難しいことではありません。3日でもあれば、理解できるマクロ経済の基本中基本を知ることと、短期と長期で統計をみて、財務官僚のいったことと、現実の経済の乖離をみるだけのことです。それで十分に経済センスは磨かれます。

それでも疑問が生じるなら、まともなエコノミストに聴くことです。本気で、経済センスを磨くつもりがあれば、まともなエコノミストの選択眼が養えるはずです。それでも、センスが身につかないというなら、そのような政治家には政治の世界から退場していただき、経済センスを持っている政治家だけで、政治をすべきです。それで、政治家が足りなくなるというのなら、経済を理解できる新たな人を政治家にすべきです。

しかし、そうなると10年〜20年はかかってしまうかもしれません。なぜなら、与野党に限らず、政治家のほとんどは経済センスがないからです。情けないです。

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2018年7月11日水曜日

ますます強固になりそうなトランプ政権の対中姿勢―【私の論評】トランプ氏の対中戦略の本気度は徐々に、他ならぬ中国に理解されていくことになる(゚д゚)!


共和党議員からの糾弾で「親中派」キャリア外交官が引退


トランプ大統領が直接くびしたわけではないが、トランプ政権では
キャリア外交官のスーザン・ソーントン氏が引退に追い込まれた

 トランプ政権から東アジア太平洋担当の国務次官補候補に指名されていたキャリア外交官のスーザン・ソーントン氏が、議会共和党から中国への姿勢が軟弱にすぎると非難され、引退へと追い込まれた。

 同氏はオバマ政権時代にも中国などを担当していた女性外交官だ。トランプ政権になってから中国政府に対して甘すぎるとして議会の共和党有力議員から激しく糾弾されていた。

 新たな候補には対中強硬派の名前が挙がっており、トランプ政権の対中姿勢がますます強固になることも予測される。

中国への融和的政策に関与していたソーントン氏

 この発表はやや意外に受け止められた。ソーントン氏が次期の国務次官補に正式に指名されていたからだ。同氏は今年(2018年)2月にはトランプ政権下の当時のレックス・ティラーソン国務長官により次の東アジア太平洋担当国務次官補に指名されていた。

 7月初め、米国務省報道官は「東アジア太平洋問題担当の国務次官補代行を務めるスーザン・ソーントン氏が7月末で外交職務から引退する意向を表明した」と発表した。

スーザン・ソーントン氏 写真はブログ管理人挿入

 ソーントン氏はキャリア外交官として1990年代から主に中国を担当する多数のポストに就いてきた。オバマ前政権下では2016年2月に東アジア太平洋担当の国務次官補の筆頭代理となり、同次官補だったダニエル・ラッセル氏の補佐を務めてきた。ラッセル氏がトランプ政権時代が始まってすぐの2017年3月に退任すると同次官補代行となり、国務省における日本や中国を含む東アジア地域担当の事実上の実務最高責任者となってきた。

 今年2月にはティラーソン長官の推薦で正式の国務次官補に指名され、連邦議会の承認を求めるプロセスに入っていた。

 だが、トランプ政権を支える共和党勢力からは、ソーントン氏はオバマ政権時代の中国への融和的な政策に関与しすぎたという批判が絶えなかった。

 連邦議会の上院外交委員会がソーントン氏の国務次官補指名を審議する一連の公聴会で、共和党有力メンバーのマルコ・ルビオ議員らがソーントン氏の対中姿勢はトランプ政権の政策には合わないという趣旨の批判を繰り返し述べた。その結果、同外交委員会での指名承認に必要な賛成票が得られない見通しが生まれていた。

トランプ政権下の中国との折衝には「不適格」

 ルビオ議員らが、公聴会での発言や国務省あての直接の書簡などで明らかにしたソーントン氏の人事への反対の理由は、以下のとおりである。

(1)ソーントン氏はオバマ政権下の国務省で対中政策に関わった際、いまのトランプ政権の中国への強い抑止や対決の政策とはあまりに異なる宥和策の推進に深く関与してきた。そのため、トランプ政権での中国との折衝には不適格である。

(2)米国に亡命して中国共産党を批判していた中国人実業家の郭文貴氏を帰国させるために、2017年5月、中国国家安全部次官の劉彦平氏らがニューヨークに到着した。FBI(連邦捜査局)が彼らを入国手続き違反で逮捕しようとした際、ソーントン氏は反対し、逮捕を阻んだ。

(3)ソーントン氏は国務省の公式ウェブサイトに掲載された台湾(中華民国)の国旗を中国政府の要請に応じる形で削除した。この措置は中国政府の圧力への屈服であり、トランプ政権の台湾政策に反する。

 以上のようなルビオ議員のソーントン氏批判は広範に公表され、共和党が多数を占める上院外交委員会でも同氏の指名に反対する動きが強くなっていた。

 こうした動きの中で、ソーントン氏はトランプ政権の意向も踏まえて、自ら指名を辞退する形をとったとみられている。

 この動きは、トランプ政権や議会共和党の中国に対する姿勢がますます強硬となり、オバマ政権が続けてきた対中関与政策の排除が一層進んだことを反映したといえる。ソーントン氏の引退で空席となった次期のアジア太平洋担当の国務次官補候補には、2代目ブッシュ政権で国防総省の中国部長を務め、現在は民間研究機関のAEIの中国研究部長のポストにあるダン・ブルーメンソール氏らの名前が浮上している。同氏は中国への抑止強化論者として知られる。

【私の論評】トランプ氏の対中戦略の本気度は徐々に、他ならぬ中国に理解されていくことになる(゚д゚)!

上の記事にもあるように、トランプ政権や議会共和党の中国に対する姿勢がますます強硬になりそうです。しかし、中国政府は未だ楽観的に構えているようです。

トランプ米大統領が中国の貿易慣行に対して厳しい措置を講じることを真剣に検討していたときに、中国当局者は真に受けておらず、首都北京では危機感がほとんど感じられていないようでした。

中国はこれまで、1992年と95年の場合も含め、米通商法301条による調査を交渉で乗り切ってきた経緯があります。

だから、今回も何とかなるであろうと考えているのかもしれません。しかし、今回の場合、中国が米国側と協議したりやWTOによる解決に頼ろうとする姿勢は、中国の計算ミスとなる可能性があります。

中国政府が理解していないのは、トランプ政権が「大真面目」だということです。トランプ政権)は小さなことで手を打つことはしないでしょう。

そもそも、トランプ政権の狙いは、貿易戦争により貿易赤字を減らすとか、中国の市場を開放させるとか、人民元自由化などということだけではないでしょう。無論これらも、中途の目標ではありますが、最終目標ではないと私は考えています。

トランプ大統領の最終目標は中国にたっぷり貯め込んだ外貨を散財をさせて、その国力を弱体化させることではないかと思います。それも、かなり弱体化させ、二度と米国に立ち向かうことができなくすることでしょう。米国は中国が呼びかけているAIIB(アジアインフラ投資銀行)に最初から冷たくあしらっていました。日本も参加する意思はありません。

トランプ大統領は、外貨がなくなるというか、自らなくそうとしている、国のインフラ投資銀行にわざわざ加盟することはないでしょう。日本もトランプ大統領の対中国戦略の最終目標を知りながら、これにわざわざ加入するような愚かな真似はしません。

トランプ大統領としては、本来ならば中国と戦争をして、中国を屈服させたいのでしょうが、これに関しては米国ドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)達も中国と武力衝突するのは現実的ではないと考えいます。

トランプ政権は、武力にかわるもので、中国を徹底的に弱体化する方策を考えていて、そのもっとも良い方法が、貿易戦争と厳しい金融制裁ということになったと考えられます。

なぜそのようになったかといえば、以下のような背景があると考えられます。

第一にトランプの戦略は中国国内の金利政策、外貨規制に静かに照準を合わせていると考えられます。中国の外貨準備が底をつけば、必然的に人民元は激安へ向かいます。このことは中国人民銀行中枢もよく理解しており、二年前から資本規制を強めて対応してきましたた。

外貨による送金が事実上不可能となり、海外旅行の持ち出し外貨も制限され、海外の不動産購入は認めなくなりました。例外的に海航集団などの欧米企業買収はみとめてきたが、金額ベースで比較すると減少していたという事実があります。

第二に中国の不動産バブル崩壊は必定ですが、それを早めることができます。つまりFRBが金利を上げると、投機資金は米国へ環流します。不動産価格を下支えしているのは、国有企業、国有銀行などが巧妙に公的資金を注入しているからです。中国の庶民がかかえる住宅ローンも、金利が高まれば個人破産が増え、すでに暴動が頻発しています。

第三に中国経済がかかえている難題は「株安」「債券安」「人民元安」と、三つの市場における連続的な下落です。ところが賃金高、物価高、金利高になって、その乖離は激烈になっています。

第四に中国は国内に鬼城と呼ばれるゴーストタウンを量産しましたが、くわえて週一便しか飛ばない辺地に飛行場を造成し、乗客が見込めない田舎にまで新幹線を建設し、あちこちに橋梁を架け、トンネルを掘り、都市部から離れた田圃に新駅を造り、50の地方都市では採算が合わないとされる地下鉄網をつくって、エベレストより高い借金の山をつくりました。

ちなみに中国の新幹線は、いまや25000キロ(鉄道の総延長は12万7000キロ)、とくに新幹線は2012年比較で2・5倍となって、最新鋭「復興号」は、北京上海を350キロ、四時間半で結んで世界一と自慢しました。中国は16両連結を自慢したが、従来は馬力の関係から8両連結をしていました。

第五に遅れて参入した生損保、とりわけ生命保険が迎えるインソルバンによる危機。また老人年金はすでに多くが基金を取り崩しています。悪名高い一人っ子政策により、少子高齢化の速度は日本より速いのですが、中国には介護保険制度はなく、老人ホームは富裕層しか入居できません。

そうして、全世界で展開中のBRI(一帯一路)は、もしすべて完成すると総額は8兆ドルなります。米国からみると、この中国の世界的規模の投資は、当該国経済を活性化させたかつてのマーシャルプランのような公共財の提供ではなく、まさに不良在庫処理と、労働力の輸出であり、相手国経済を収奪することです。


工事中断に至っている案件はニカラグア運河、ベネズエラ高速鉄道、インドネシア新幹線、ミャンマーの水力発電などで、最近ではマレーシア東海岸鉄道事業も中止に追い込まれています。目標通りに完成させたのはヨーロッパをつなぐ鉄道くらいです。大風呂敷のまま終わったのはラス-ロス間の新幹線プロジェクトほか、これまた山のようにあります。

親中派のチャンピオンであるパキスタンですら、現実には大判振る舞いのCPEC(中国パキスタン経済回廊)に570億ドルを投じていますが、随所で工事が寸断しています。パキスタンはIMF管理にはいるほど財政が悪化、中国は渋々10億ドルの追加融資を決めました。ほかにも中国の商業銀行は20億ドルを貸しているという情報もあります。2013年にパキスタン危機では67億ドルの負債を返済できずに、IMF管理となりました。

また中国は鼻息荒く全米の企業買収のみか、不動産を買いまくったのですが、これもかつての日本のように、堤清二、秀和の小林某、イアイアイの高橋某と、乗っ取り王といわれたバブル紳士たちは、高値を掴まされ、最後には底値で物件を手放し、馬鹿を見ました。

中国勢はハリウッド映画買収に失敗、ウォルドルフアストリアホテルを買い取った呉小暉は逮捕され、安邦生命は国有化という惨状をすでに露呈しました。

他方で、トランプ大統領は中国企業がアメリカに進出すると喜びを素直に表現しています。ウィスコン洲でFOXCOM(鵬海精密工業)の工場の起工式に、トランプはわざわざ出席し鍬入れセレモニーに参加しました。この式典には孫正義も参加しています。孫のファンドが出資しているからです。

トランプは起工式でこう語りました。「この工場は米国の美しい鉄鋼と、アルミ、そして部品を使う。素晴らしい工場になる。ウィスコンシン州で私は勝った。レーガン大統領も負けた土地(戦局)で私は勝ったのだ」と意気軒昂に吠えました。

かつて日本はスーパー301条発動に加えて「ローカル・コンテンツ法」によって、自動車メーカーは米国進出を余儀なくされました。それによって部品の下請け、孫請けもぞろぞろと米国へ進出したため、国内は空洞化を来しました。中国もいずれ、そうなるでしょう。

結局、米中貿易戦争とは、米国による中国貧窮化政策であり、次の段階では厳しい金融制裁に打って出て、中国の外貨を吐き出させ、中国の息の根を止めようとしているのです。

そうして、その背景にはやはり、トランプ氏が米国の保守を地盤としているということが大きく影響していると考えられます。

そうして、米国の保守派の間では近年、「真珠湾攻撃背後にソ連のスターリンの工作があった」とする「スターリン工作説」が唱えられるようになってきています。そうしてこれは、90年代に公表されたヴェノナ文書の裏付けもあります。

ベノナ文書 最近も研究が進み様々な事実が明らかにされつつある

本来日米は戦争をするようなことはあり得なかったにもかからず、スターリンの工作により、日米は戦うように仕向けられ、あのようなことになってしまったという考え方です。

この米国の誤りが、ソ連を台頭させ、ソ連は崩壊したものの、最近ではそれに変わって中国を台頭させ、北朝鮮による核の脅威に米国はさらされている。ソ連や中国など断じて許すわけにはいかない。

というのが、米国草の根保守のリーダーであった、故フィリス・シュラフリー女史の発言でもあります。

シュラフリー女史のこの発言に米国の保守層は多大な影響を受けています。トランプ氏も当然影響を受けています。トランプ氏にとって、中国は倒すべき敵なのです。

だから、トランプ氏は何としてでも、中国を徹底的に弱体化しようと日々行動しているのです。そうして、弱体化して中国を米国にとって無害な存在にし、あわよくば、中国の現体制を崩壊させたいと目論んでいることでしょう。

この背景を中国側は、良く理解していないようです。そうして、日本人の多くも理解していないようです。トランプ氏の対中戦略の本気度は徐々に、多くの人々そうして、他ならぬ中国に理解されていくことになるでしょう。

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