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2020年1月29日水曜日

新型肺炎が日本経済に与える影響、SARSと比較、訪日客減少で7760億円押し下げか―【私の論評】インバウンド消費の激減は、消費税減税で補うどころかありあまる効果を期待できる(゚д゚)!

新型肺炎が日本経済に与える影響、SARSと比較、訪日客減少で7760億円押し下げか

中国の空港の国内線のゲート

新型肺炎の世界的な感染拡大が懸念されているなか、野村総合研究所(NRI)はインバウンド需要の減少による日本経済への影響について、2002年11月に発生が確認されたSARSとの比較をもとに、その試算を公表した。

新型肺炎と2003年に拡大を見せたSARS発生時と現在との大きな違いは、中国及びその他地域からの訪日観光客の急増。2002年と2019年の間に、中国からの訪日観光客数は21.2倍、訪日観光客数全体では6.1倍にも増加しているため、NRIでは、新型肺炎によって訪日観光客が減少し消費額が落ち込んだ場合、日本経済に与える悪影響はSARSの発生時よりも格段に大きくなる可能性があるとしている。

SARSの影響による訪日観光客数の減少分として2003年1月時点での訪日観光客数の前年同月比と2003年全体の訪日観光客数の前年同月比との差を比較すると、訪日中国人観光客数は-13.0%、訪日観光客全体では-15.4%となる。

新型肺炎の影響によって、2020年の訪日観光客数がこれと同じ割合で減少すると仮定した場合、中国からの訪日観光客数の減少は2020年の日本のGDPを2650億円押し下げ、訪日観光客数全体では7760億円押し下げると試算した。後者については、GDPを0.14%押し下げる計算になる。

2003年5月単月の数字を見ると、中国からの訪日観光客数は前年同月比-69.9%、訪日観光客数全体では同-34.2%とかなり深刻な影響が生じたが、SARSが訪日観光客数に影響を与えたのは数か月程度と比較的短期間にとどまった。仮にそれと同程度の影響が1年間続くと仮定し、同様に計算をしてみると、新型肺炎の影響で日本のGDPは2兆4750億円、0.45%も押し下げられる計算となる。

この試算は2020年1月27日に発表されたもの。 NRIでは、日本人の個人消費悪化の影響、企業の生産活動停滞の影響、海外経済減速の影響なども加わってくる可能性があるとしている。

新型肺炎がインバウンド需要の減少を通じて日本経済に与える影響試算

【私の論評】インバウンド消費の激減は、消費税減税で補うどころかありあまる効果を期待できる(゚д゚)!

インバウンド消費を過大に評価する人がいて、中には日本経済の発展≒インバウンド消費の拡大などと言い出す識者もいて、本当に噴飯ものといわざるをえないところがあります。

これについては、以前のこのブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
消費税10%ショック! やはり「景気後退」が始まったかもしれない―【私の論評】インバウンド消費等元々微々たるもの、個人消費に勝るものはない(゚д゚)!
麻生財務大臣
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、旅行の経済に関わる部分をこの記事より引用します。
平成29年の日本人国内旅行消費額は、21兆1,130億円(前年比0.8%増)となり、うち宿泊旅行が16兆798億円(前年比0.3%増)、日帰り旅行が5兆332億円(前年比2.3%増)です。 
日本人国内延べ旅行者数は、6億4,751万人(前年比1.0%増)となり、うち宿泊旅行が3億2,333万人(前年比0.7%減)、日帰り旅行が3億2,418万人(前年比2.8%増)です。

なぜか、インバウンドばかりに目がいきますが、やはり日本人の旅行者のほうが圧倒的に実数も、消費もはるかに大きいです。現状のインパウンドの4.5兆円と比較すると、20兆円規模です。

少子高齢化の影響もあってか、日本人の延べ旅行者数は、減る傾向にはありますが、消費額の推移をみると、だいたい20兆円台で推移しています。インバウンド消費(18年で4.5兆円)よりもはるかに大きいことがわかります。 
インバウンド消費停滞の経済全体へ影響は限定的である一方、日本経済の成長をはっきり押し下げるのは消費増税による緊縮財政政策の悪影響です。当然日本人の国内旅行での消費も減ることになるでしょう。 
インバウンド消費は、GDPの1%に過ぎないのですが、日本人による個人消費はGDPの60%を占めます。個人消費が冷え込めば、インバウンド消費がかなり増えたとしても、それは帳消しになります。
新型肺炎の問題が起こるまでは、インバウンド消費が徐々に増えるだろとうということで、観光産業などを中心にこれに期待するむきも多かったのですが、もはやその期待は打ち砕かれたとみるべきです。

こちらは、札幌です。もう少しで「さっぽろ雪まつり」が開催されます。今年は、2月4日から開催の予定ですが、今年は新型肺炎により、観光客が大幅に減ることが予想されます。

「さっぽろ雪まつり」にも毎年、海外から観光客が訪れていますが、今年は期待できないでしょう。

「さっぽろ雪まつり」に限らず、今年は様々なイベントで国内外の観光客が激減するのは、はっきりしています。

最近の新型肺炎の広がりかたのスピードは、増しているようです。そうして、どうなら人から人への感染も広がっているようです。今のところとどまるところを知らないようです。

であれは、わたしたちとしても、最悪を想定しておくべきです。最悪の場合は、中国の習近平の国賓としての訪問は当然のことながら、中止されるか延期されるでしょう。オリンピックもそうなる可能性は否定できません。

札幌では、東京オリンピックのマラソンが観戦できるものと、期待していましたが、それもなくなるかもしれません。

インバウンド消費が、かなり冷え込むことは最早明らかです。

そうして、これに対する最も単純ですぐにできる対策があります。それは、昨年10月に10%にあげた消費税を元に戻すか、5%に減税すことです。

現状は、危急存亡の時と言ってもよいくらいです。このときくらいは、このような手段を用いるべきです。そもそも、日本では税金というものは、増税の一方方向しかないと思われているようですが、それ自体が間違いです。

その時々の経済の状況に応じて、増税(景気が加熱した場合)したり、減税(景気が悪くなった場合)するというのが、まともなやり方です。

そうなると、個人消費は回復するどころか、伸びます。インバウンド消費の減少を補ってあまりあるほどになるはずです。

無論、日本国内でも新型肺炎の脅威が消えさらなければ、減税しても当初は消費の伸びは鈍いかもしれませんが、少なくとも日本国内での感染が終息すれば、景気はもりもり回復することでしょう。

今の日本にとって重要なのは、国内での新型肺炎の感染を終息させ、海外からの感染者をシャットアウトし、減税により、経済を良くすることです。

インバウンド消費が倍になるよりも、日本国内個人消費が数%でもあがったほうが、日本経済への影響はよほど大きいです。

さらに、個人消費があがれば、当然のことながら、日本の国内旅行での消費額や、旅行回数なども増えることが予想されます。新型肺炎前に、海外にいっていた人たちが、国内旅行に回帰する可能性が大きいからです。そうなると、観光業も日本人観光客により潤うことが予測されます。

SARSと、今回の新型肺炎により、私達は、インバウンド消費に頼ることが、いかに脆いことが学んだはずです。外国からの観光客は、来るもの拒まずという姿勢は崩さなくてもよいですが、まずは国内の消費を拡大し、国内観光客数や消費額を増やすことが先決です。それによって、安定した基盤をつくり、海外で今回の新型肺炎のようなことがあっても、余裕をもって対処できるようにしたいものです。

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2019年8月5日月曜日

日本経済には漁夫の利も、英国のEU離脱―【私の論評】英国はブレグジットで緊縮策を捨て去り、新たな経済モデルを樹立するかもしれない(゚д゚)!

日本経済には漁夫の利も、英国のEU離脱

塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

英国の新首相は、EU離脱を強行する方針なので、欧州経済は混乱しそうです。しかし、日本経済への悪影響は限定的だろう、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は考えています。



失われる「自由貿易のメリット」は限定的

 EUは「人・物・資本・サービスの移動の自由」を基本理念としていますので、英国がEUを離脱すれば、大陸との間での様々な移動に支障が出る事になるでしょう。

 その中で、日本経済に影響しそうなのは、物の移動すなわち貿易でしょうから、本稿は貿易に焦点を当てましょう。

 経済学は、「自由貿易によって国際分業が促進され、それぞれの国が得意な物を作って交換し合うことで、双方にメリットがある」と教えています。それはその通りなのですが、工業国と農業国のような場合はともかく、産業構造も得意分野も似通っている先進国同士の場合には、そのメリットは限定的でしょう。したがって、EU離脱の悪影響も限定的です。

 イギリス人が「フランス産ワインに関税がかかるので国産スコッチで我慢しよう」と考えると、フランスのワインメーカーにとっては輸出が減ってしまいますが、一方でフランス人が「英国産スコッチに関税がかかるので国産ワインで我慢しよう」と考えれば、ワインメーカーの国内販売が増えるので、トータルの影響は限定的なのです。

 悲観論の好きな評論家やマスコミが「ワインメーカーは輸出が減って困るだろう」と書き立てるかもしれませんが、物事は多面的に見る必要があるので、要注意です。

 物の移動以外でも、たとえば金融業は英国から大陸への大量脱出が起こりそうですが、それによって英国のGDPが減った分は大陸のGDPが増えるわけでしょうから、欧州全体のGDPも、したがって日本から欧州への輸出も、それほど影響を受けないと思われます。

日本企業の英国工場は英国企業

 日本企業が英国に生産子会社を持っているケースは多いでしょう。したがって、英国経済が混乱したり、工場から欧州大陸への輸出が難しくなったりした場合、親会社の日本企業が痛手を被ることになりかねません。

 しかし、本当に痛手を被るのは英国企業である生産子会社であって、仮に失業するとしたら英国人従業員です。日本の本社は、海外子会社からの配当が減るだけです。これは、日本の景気にほとんど影響しません。

 日本企業は海外子会社から配当を受け取っても、それを日本人従業員のボーナスとしたり日本国内の設備投資に使ったりせず、手元資金として貯めておくか銀行に借金を返済するために使う場合が多いでしょう。それならば、配当が増えても減っても日本の景気には影響がない、というわけですね。

 親会社から生産子会社への部品の輸出が減るかも知れませんし、親会社の株価が下がれば株主の消費が減るかも知れませんが、いずれも影響は限定的でしょう。

合意なき離脱だと短期的には混乱するだろうが……

 英国のEUからの離脱が「合意なき離脱」になると、短期的には混乱が生じるでしょう。たとえば、税関が混乱して荷物が届かない、といったことが起きるかもしれません。しかし、時が経てば混乱も収まり、荷物も届くでしょう。

 部品が届かないから生産が止まる、ということもありそうですが、その場合にも部品が届き始めてから遅れを取り戻すべくフル生産が始まるでしょうから、少し長い時間軸で見れば、影響は限定的でしょう。

 そもそも、合意なき離脱の可能性が高まってから実際に離脱するまでに時間がありましたから、各企業が十分な準備をしていると考えてよさそうです。

日本経済には漁夫の利も

 欧州のGDPはそれほど減らず、英国子会社の損失も日本経済には響かず、合意なき離脱の影響も少し長い時間で考えれば影響が小さいとすれば、上記を見る限り、日本経済への影響は、限定的でしょう。

 一方で、日本経済が漁夫の利を得ることも期待されます。いままで「ドイツ車は関税がかからないから、日本車よりドイツ車を買おう」と考えていた英国人が、「どちらも関税がかかるなら日本車を買おう」と考えるかもしれません。

 もしかすると、英国と日本の自由貿易協定が締結され、「ドイツ車には関税がかかるけれども日本車はかからないから、日本車を買おう」ということになるかもしれませんね。

EUの崩壊は起きない

 悲観論を述べたがる評論家の中には、英国がEUを脱退すると、次々に脱退する国が出てきてEUが崩壊する、と言う人がいるかも知れませんが、それは杞憂です。

 まず、英国経済は今回のEUからの離脱で少なからぬ痛手を被るでしょうから、それを真似ようという国は多くないはずです。

 それ以上に重要なのは、英国がEUを離脱したのは、ユーロを使っていなかったからであって、ユーロを使っている国がユーロ圏から離脱するのは大変な労力が必要です。

 特に、対外純資産がマイナスの国がユーロ圏から離脱するのは、大きなリスクを伴います。海外の債権者が返済を求めて来たときに、今ならユーロを返済すれば良いのですが、自国通貨を使うようになると、自国通貨をユーロに替えて返済する必要が出て来ます。

 最初の返済は良いのですが、最初の返済のためにユーロを買うと、自国通貨安ユーロ高になりますから、次の返済は少し大変です。次の返済のためにユーロを買うと、3回目の返済はさらに大変です。こうして、最後の返済は非常な負担となるかもしれないわけです。

 そのことは、外国の債権者も予想ができますから、ユーロ圏を離脱した対外純債務国に対しては、高い金利を要求するようになるでしょう。今はユーロ圏にいるから安い金利で借りられているのだ、と考えれば、離脱はリスクというより明白なコストと言うべきかもしれませんね。

世界経済への影響は限定的

 英国が離脱しただけでEUの経済が大混乱をすることは考えにくいですから、仮に大混乱するとしても英国経済だけでしょう。それであれば、英国の輸入が落ち込む程度ですから、世界経済への影響は限定的なはずです。

 かつてのように英国ポンドが基軸通貨であったならば、世界中の投資や貿易等に使われている通貨の流動性が低下したりすれば大問題となりかねませんが、今は概ね英国国内だけで使われている通貨ですから、対外的な影響は小さいでしょう。

 リーマン・ショックが基軸通貨である米ドルの流動性を著しく低下させて世界経済に甚大な打撃を与えたのとは、その面でも大きく異なるわけですね。

 本稿は、以上です。

【私の論評】英国はブレグジットで緊縮策を捨て去り、新たな経済モデルを樹立するかもしれない(゚д゚)!

ロンドンではなぜか、ジョンソン氏への懸念がさほどでもないようです。それは以下の2点に集約されるようです。

1、強硬派のジョンソン氏も、首相になれば現実路線に転じて円滑な離脱を目指すはずだ
2、「合意なき離脱」でも悪影響は案外大きくないだろう
です。

1について、もう少し詳しく説明すると、党首選におけるジョンソン候補の「合意なき離脱も辞さない」とする主張は、あくまでもEU離脱派の保守党議員向けであり、首相になり離脱派と残留派が拮抗する国民世論を前にすれば、より現実的な道を選ばざるを得ないだろう、というのです。

ボリス・ジョンソン英国首相

実際、党首選が進むにつれ、ジョンソン氏は10月末の離脱を目指すという目標は変えないものの、「合意なき離脱」ではなく、EUとの交渉による円滑な離脱の可能性を探る姿勢を強めています。

ジョンソン氏は、ロンドン市長時代の左派的なスタンスからEU強硬離脱という右派的なスタンスへと立ち位置を変化させており、特定の主張に固執せず、柔軟だという指摘もあります。こうした彼の特徴が、やや根拠に欠ける安心感を国民に与えているのでしょう。

2の「合意なき離脱」でも影響はないという見方の根拠としては、

1、悪影響の試算がマイナス面だけであり過大
2、予測不能な部分が多いため、思ったほど悪くならない可能性がある
3、事前に悪影響をある程度織り込んでいるため、事後に反動でプラスとなるものがある
の3点が挙げられる。

確かに、1の過大推計はこの手の試算によくあることです。たとえば大イベントの経済効果試算などでは、プラス要因ばかりを積み上げ、消費者がイベント参加で使うお金を捻出するために、実は節約するといったマイナス面を十分に考慮しないことが多いです。

2の予測不能に関しても、予想から大きく上振れすることも下振れすることもあるということであり、上振れにのみ注目すれば、そういう考えもできるのでしょう。

3の反動についても、不透明感から投資は抑制気味のようであり、離脱後に動き出すものもあるでしょう。とすれば、思ったほど悪くはならないという程度は言えるのでしょうが、希望的観測の域を脱していないようにも見えないではありません。

ある大手会計系コンサルティングファームによると、2千社のCEOに対して行った調査で、英国は最近もなお、投資対象国としての人気ナンバーワンを維持しているといいます。ポンド安が投資の魅力を高めている面があり、こうした結果を踏まえ、ブレグジット後もイギリスへの投資が加速するのではという見方もあります。

また、ブレグジットはそもそも英国が抱える課題を解決するために実施するのですから、一時的に混乱しても、長い目で見れば悪いはずがないという声もありました。これは、日本人など部外者が見落としがちな視点なのかもしれないです。

もともと英国がブレグジットを目指した背景には、移民の流入で生活が圧迫される層の存在があり、移民流入をもたしたと彼らが考えるEUルールへの根強い反発があります。裏返せば、EUルールから解放されることが自らの生活改善につながるという期待感が、ブレグジットの原動力になっています。

ロンドンの移民

こうしてみると、楽観論の根底に、ブレグジットによってもたらされるであろう環境改善への期待があるのは確かです。離脱やむなしとなったからには、それを信じるしかありません。円滑な離脱であればなお良しということなのでしょう。

そうして、これは以前のこのブログにも掲載したのですが、ジョンソン新首相は、これまでの英国の緊縮財政を変える可能性が高いです。ジョンソン氏は以前から積極財政に舵を切ることを国民に約束しています。

金融政策に関しては不透明なところもありますが、イングランド銀行(英国の中央銀行)は、以前から果敢な金融緩和政策をおこなつてきました。ブレグジットで景気が落ち込んだ場合も、おそらく大規模な緩和に踏み切るでしょう。

これと、ジョンソン氏の積極財政が結びつけば、ブレグジットによる悪影響はかなり緩和される可能性があります。

英国で19世紀の「ディケンズ病」が再燃、猩紅熱などの患者急増

そもそも、英国の最近の保守党による緊縮策は像像を絶するところがあります。英国で19世紀から20世紀初頭にかけて流行した猩紅熱(しょうこうねつ)や栄養不良など「ディケンズ病」と呼ばれる疾病が再燃し、患者数が急増しています。

専門家が英国民保健サービス(NHS)の統計をもとにまとめた調査によると、2010年以来、猩紅熱や栄養不良、百日咳、痛風のために病院を受診した患者は、年間3000人(52%)のペースで増加しました

1900年代初頭に乳幼児の死亡の筆頭原因だった猩紅熱については、2010~11年にかけて429人だった患者数が、17~18年にかけては1321人と208%増加ししました。

百日咳は、1950年代に英全土で予防接種を推進した結果、英国ではほぼ根絶されたはずだったのですがが、患者数は2010~18年にかけて59%増となりました。

同じ期間に栄養不良の患者は54%、痛風の患者は38%、それぞれ増えています。

今回の調査結果を発表した野党労働党は、こうした疾患が増えているのは政府による緊縮策が原因だとして政府を非難しました。

労働党の影の内閣保健相、ジョナサン・アシュワース議員は、「緊縮策のために我々の社会が病んでいる」「これは貧者が若くして死亡するということだ」と強調しています。

英看護協会の専門家ヘレン・ドノバン氏も、緊縮策の影響で検査や予防対策などの予算が削減されたと述べ、「過去のものと思われていた疾患は今後も見過ごされ、国民が危険にさらされる」と指摘。「我々は、健康の不平等拡大が国土を荒廃させる国家非常事態に直面している」と危機感を募らせています。

ボリス・ジョンソン英国首相は7月25日午前、初の閣議を開催。昼前には首相として初めて議会で演説しました。

ジョンソン首相は演説の中で、英国のEU離脱(ブレグジット)を10月31日までに実現する決意を重ねて強調。EUに対しては「離脱協定に変更を加えることを一切受け付けない姿勢を再考するよう期待する」と述べました。EUがこれを拒否すれば、合意なき離脱(ノー・ディール)を選択するとし、離脱期限までにその準備を最大限加速させると力説しました。

ブレグジット以外の政策課題については、医療、治安、インフラ整備などを重視する姿勢をにじませました。演説で言及した主な方針は以下の通りです。
●国営医療サービス(NHS)の予算拡大。20の病院で施設改修を実施。かかりつけ医師(GP)の診察待ち時間の短縮。
●路上一般犯罪の抑制。2022年までに警察官2万人を増員。職務質問権限の拡大。
●初等・中等教育機関における児童・生徒に係る予算の引き上げ。今国会閉会までに教育費支出を過去の水準まで増加。
●全国の地方自治体への支援強化。各地における機会不平等の是正。
●道路、鉄道、光ファイバー、第5世代移動通信システム(5G)、住宅など社会インフラの整備。
●移民諮問委員会(MAC)によるオーストラリア型ポイント制移民政策の検証。
●(メイ前政権が発表した)2050年までの温室効果ガス(GHG)純排出ゼロ実現に向けた政策の推進。蓄電池技術開発などによる電気自動車(EV)産業や航空機産業の集積強化。
●バイオ産業、衛星や地球観測システムなどの強化。
●全国各地で自由貿易港(特区)を設置。通商交渉を加速。
演説では触れませでしたが、ジョンソン首相は保守党の党首選を通じ、個人への減税にも取り組む姿勢を明言してきました。英国では年収5万ポンド(約675万円、1ポンド=約135円)以上の所得がある居住者は40%の最高税率が適用されますが、これを8万ポンドに引き上げると約束。社会保険料の支払いが免除される所得基準も引き上げる方針を打ち出していました。

しかし、英国のシンクタンク、財政研究所の試算によると、政府はこれらの減税策を実現すれば、社会保険料免除の基準の引き上げ幅に応じて年間120億ポンドから200億ポンド超の歳入を失うことになります。

減税をうたう一方で、演説で述べたような積極財政を伴う政策を打ち出していることについて、実行を疑問視する声も聞こえています。ロンドン市長時代に見せた行政手腕を発揮できるか、注目が集まります。

ただ、財政研究所などの試算は、日本の財務省の官僚のように、緊縮脳に凝り固まった人間が算出している可能性が大であり、ジョンソン新首相が過去の緊縮財政から決別して、国債などを大規模に発行して、減税などの積極財政に取り組んだ場合は、これまでとは全く話が違ってきます。

そうして、英国にとってこれがブレグジットの最大の利点となります。自国の考えで、全く制約を受けることなく、金融緩和や積極財政ができるのです。

これが実現すれば、英国は短期ではブレグジットの悪影響を最小限にとどめ、長期的にはかなり発展することになるかもしれません。

そうなれば、緊縮という呪縛から免れることがいかに素晴らしいことなのか、多くの国々が理解するかもしれません。

それが、緊縮に凝り固まっているEUや日本にも良い影響を及ぼすかもしれません。そうして、英国が新たな経済モデルとなるかもしれません。

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2019年8月1日木曜日

韓国「ボイコットジャパン」はブーメラン…韓国側のLCCなど直撃! 日本経済への打撃は限定的か ―【私の論評】日本ボイコットで国民大挫折を招き政権支持率を劇的に下げる韓国(゚д゚)!


ソウルの日本大使館前で日本製品の不買運動をする韓国の高校生ら=7月26日

 日本政府の輸出管理強化を受けて、韓国では日本製品をボイコットしたり、日本行きの旅行をキャンセルしたりする動きが出ていると報じられている。日本に対する反撃として、どこまで有効なのだろうか。

 韓国のSNSで「ボイコットジャパン」がトレンドとなっている。ある調査によれば、半数近くの人が賛同しているという。これを高いとみるかどうかだ。

 SNSでは、日本製品の代替物として韓国製品のリストも出回っている。ただし、リストに出ている日本企業の売上高に占める韓国市場の比率は数%以下であり、不買運動の影響は限定的だろう。

 日本への旅行を控えるというボイコットもある。これは、実際に影響が出ているようだ。

 まず、基本的なデータを押さえておこう。2018年の韓国からの日本への訪問者は753・9万人と、中国からの838・0万人に次いで2位。3位は台湾からの475・7万人だ。しかし、18年の訪日外国人旅行消費額でみると、韓国は5881億円と、中国の1兆5450億円に次ぐ2位だが、3位の台湾の5817億円と大差ない。

 ちなみに、1人あたりの消費額でみると、中国18・4万円、台湾12・2万円なのに対し、韓国は7・8万円と低い。

 最近の状況は、韓国から日本への訪問者は減少している。昨年6月から今年5月までの毎月の訪問者数を対前年同月比で平均してみると、韓国は4・6%減だ。ただし、中国は10・2%増、台湾は0・3%減なので、韓国からの訪問者の減少は中国が補って余りがある。中国からの訪問者の消費単価は大きいので、全国平均であれば、韓国からの訪問者数減が日本の消費に与える影響は、あまり大きくないだろう。

 むしろ、韓国からの訪問者数の減少は、韓国の旅行業者やLCC(格安航空会社)事業者など韓国側の企業に悪影響が出ているというリポートもある。先行きの業績悪化を懸念して韓国LCC各社の株価も低迷している。

 韓国からの日本への訪問者は九州や関西など西日本地方が中心なので、地域によっては多少の影響はあるかもしれない。今後は韓国からの訪問者がさらに減少する可能性もあるので、注意は必要である。

 もっとも、過去にも竹島問題などで韓国はこうしたボイコット運動をしてきたが、長続きせず、効果はなかったという見方が多い。

 過去に日本製品を良いと判断して購入したはずで、その購買行動は習慣依存があるので、外部からのボイコットの刺激を受けても、抜本的に変えるのは難しい。日本製品の代替物としての韓国製品が本当に優位なら、とっくに日本製品は飽きられていたはずで、わざわざボイコットの対象にする必要はない。

 また、日本への訪問でも、日本の消費に影響を与える前に、韓国国内の旅行業者やLCC事業者のほうが先に悪影響を受けてしまうだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本ボイコットで国民大挫折を招き政権支持率を劇的に下げる韓国(゚д゚)!

上の記事では、韓国の最近の状況を述べていますが、もっと根本的な観点から韓国の日本に対するボイコットなどが限定的になることをあげてみます。

日本と韓国

まずは、韓国の国土面積は約10万200平方キロと、約37万8000平方キロの日本の3分の1以下です。そのうえ2016年の国内総生産(GDP)は韓国が1兆4110億ドル、日本が4兆9390億ドルでした。GDPでは規模でも1人あたりGDPでも日本のほうが韓国を上回っています。

韓国は香港やシンガポール、台湾と並んで「アジア四小龍」と呼ばれ、その経済力が評価されていますが、「小龍」が存在するということは「大龍」も存在するということです。小龍に日本が入っていないのは「日本は『小龍』ではないからです。日本と中国の経済力は「大龍」と呼ぶにふさわしいものだからです。

確かに、今では国全体では、日本のGDPは中国以下ですが、一人あたりのGDPということでは中国や、韓国よりもはるかに上です。

韓国のGDPは東京都のGDPと同次元という状況です。東京都が日本全体と争い、特に不買運動をしたとしても、どの程度の効果があるのか甚だ疑問です。

そもそも、製品やサービスのボイコットが効力を持つのは、経済規模が同程度かもしくは自国のほうが大きい場合に効果を出すことができるのであって、自国よりはるかに経済規模の大きい国に対して経済制裁などしても無意味です。

しかも、韓国と日本の場合産業構造が似通っており、日本の製造できないもので韓国が製造できるものはありません。であれば、韓国から輸入できなくても日本で製造を増加すれば良いだけです。

さらに韓国に輸出できなくなっても、もともと韓国のGDPが小さいことから、それによる不利益も少なく、現在経済のをかなり伸ばしつつあるベトナムやインドなどに振り向ければそれで良いです。

それに日本の場合デフレ続きで、さらに消費増税などするから、個人消費が減るのであって、今後減税などすれば、個人消費が上向き、経済規模の大きい日本なら、それだけで韓国への輸出よりはるかに大きな内需を見込むことができます。

高麗大学経済学科の教授は新聞社の取材で、不買運動の対象となっている消費財が日韓貿易に占める割合は15%しかなく、日本に影響に与えることはないと述べています。

さらに、日本はこれまでに自然科学分野でノーベル賞受賞者を数多く輩出し、米医学界最高の賞とされるラスカー賞の受賞者も日本は複数輩出しています。他にも日本は世界的権威のある賞の受賞者を多数輩出していますが、韓国には自然科学分野のノーベル賞受賞者はおらず、世界的権威のある賞の受賞者も日本人より圧倒的に少ないのが現状です。

韓国の自然科学分野でのノーベル賞受賞者は未だに0人

現状では、韓国の製造業はディスプレイパネルや半導体などの分野で日本を上回る競争力を持つのですが、これすらも日本の技術がなければ成り立たないことが最近あきらかになりました。国全体の国際競争力ではやはり日本のほうが韓国を上回わってています。

世界経済フォーラムが発表している「世界競争力報告」のデータによれば、年によって変動はあるものの日本のランキングは一桁台であるのに対し、韓国は20位台です。現状では、韓国と日本を比較すること自体が間違いであり、日韓の競争力は同じ次元にあるものではありません。



以上のようなデータからも韓国で日本製品やサービスのボイコット運動をしたとしても、日本への影響は限定的でしょう。

日本のビール会社の韓国でのもうけが減ろうと、トヨタ車が韓国で売れなくなろうと、韓国人観光客が減ろうと、日本政府が「安全保障に絡む国策」を変えることはありません。

だから不買運動の行きつく先は、国力大浪費の揚げ句の果てに“国民的大挫折”でしかないです。それは政権浮揚力の劇的低下に直結することになります。

そうした見通しが立つ中で、不買運動は日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の延長阻止運動と結びつき、「トータルな反日運動」の色彩を強めつつあります。北朝鮮も「韓国はGSOMIAを破棄しろ」と“指令”しているようです。

従北ポピュリズム政権にとっては、「GSOMIAの自動延長を拒否して日本に大打撃を与えてやった」と喧伝することが唯一の逃げ道かもしれないです。しかし、それでも韓国にとって何のメリットもありません。結局のところ、韓国は「国民的大挫折」に向かってまっしぐらで、それはとりもなおさず、政権の支持率の劇的低下につながるのみです。

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2019年6月27日木曜日

米中貿易戦争より大きい日本経済のリスクとは―【私の論評】日本では、「リーマン・ショック」に続いて「コールドウォー・ショック」という和製英語ができあがるのか?

米中貿易戦争より大きい日本経済のリスクとは

先進国では日本だけ「異常な状態」が続く

米欧の金融緩和は市場の想定以上。ひるがえって日本は「緊縮政策」でいいのだろうか?

 前回のコラム「
今のままでは大幅な円高ドル安になりかねない」では、
5月からFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利下げへの転換など、各国中央銀行の緩和スタンスが強まっていることを強調した。

米欧中銀のハト派姿勢は市場予想を上回る

 その後、市場の想定を上回るペースで米欧中銀のハト派姿勢が強まっている。6月18日に、ECB(欧州中央銀行)のマリオ・ドラギ総裁は、今後の景気下振れリスクに応じて利下げを行う可能性だけではなく、量的金融緩和政策再開の可能性に言及した。6月理事会でフォワードガイダンス強化のみが決定された直後だっただけに、早々に利下げ再開に踏み出したのは意外だった。

 ドラギ総裁の発言の2日後に結果が公表されたアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)において、FRBも市場の想定を上回る緩和強化姿勢を示した。政策金利は想定どおり据え置かれたが、FOMCメンバーの政策金利見通しにおいて、半数近い7人が年内0.5%の利下げを想定していることが判明。

 筆者はこの中にジェローム・パウエル議長が含まれる可能性が高いと見ているが、3月までは金利据え置きを想定していた中立派メンバーの多くが、年内に1~2回の利下げを想定していることが明らかになった。

 実は、FOMCメンバーの政策金利見通しこそ変わったが、2020年までの経済成長率、インフレ率の想定はほぼ変わっていない。米中貿易戦争の激化、インフレ期待の低下基調など、潜在的リスクへ対処するために、早期に複数回の利下げを行う必要があるとの考えが広がった。

 ECB、FRBによる緩和姿勢の強化をうけて、アメリカの長期金利は2%を一時下回り、ドイツの長期金利も史上最低金利を下回り、-0.3%台まで低下する場面があった。

 目先は、28~29日のG20で行われる見通しの米中首脳会談の結末が注目されている。これがどのような結果になっても、筆者はアメリカの中国に対する強硬な通商政策が続く可能性は高いとみており、関税引き上げが続くことを踏まえると、今後の世界経済に下押し圧力がかかるだろう。

 一方、最近起きている金利低下が示唆するのは、世界的な景気後退とそれに伴う先進国のデフレリスクの高まりである。ただ、各国中銀の緩和姿勢強化によって足元で進む金利低下が、アメリカなどの国内需要を高める方向に作用するため、今後の景気減速は緩やかなものになると筆者は予想している。

 米中貿易戦争による緊張は続くが、予防的かつ積極的な米欧中銀の利下げ転換によって、世界経済の深刻な後退が回避されるというシナリオである。

 アメリカの株式市場はFRBなどの金融緩和姿勢を好感し、6月20日にS&P500は最高値を再び更新した。長期金利の大幅低下で相対的な株式の魅力度が高まっていることが、年初からのアメリカ株市場反発のドライバーとなっている。

 では同国の株高は続くだろうか。金融緩和や財政政策の下支えで、同国経済の減速が限定的となり、株高は十分正当化できると筆者はみている。さらに、低金利環境が長期化するとの見方がより広がることで、PER(株価収益率)の上昇によって2019年後半に一段の株高となりうるだろう。
日本だけが緊縮的な財政政策に踏み出すという「異常」
 一方、日本株はどうだろうか。筆者は「アメリカの株市場は好調でも、それに置いていかれる状況が続く」と、当連載で繰り返し指摘してきたが、この状況はまったく変わっていない。先に述べたとおり、FRBの金融緩和強化によるアメリカの金利低下によって、為替市場ではドル安が進みドル円相場は一時107円を割り込んだ。金利が大きく低下しても、現時点ではドル円相場において小幅なドル安円高にとどまっている。

 しかし、FRBは市場の想定を超えるピッチで金融緩和姿勢を強める一方、日本銀行は現行の政策フレームワークに固執し、副作用を理由に挙げて新たな対応を講じるには至っていない。FRBはインフレ期待の低下を大きなリスクとして重視しているが、2%インフレ目標実現がみえていない日本銀行の中で、過去1年以上続くインフレ期待の低下を強く問題視しているのは、一部の審議委員だけである。

 当面「金融緩和に踏み出さなくても、日銀の黒田東彦総裁は円高進行などいざという局面になれば金融緩和を強化する」との思惑が大幅な円高を防いでいるのだろう。

 だがアメリカではMMT(現代貨幣理論)に関する議論が注目されるなど、世界的な経済成長率の低下のもとで拡張的な財政政策の必要性が高まっている、との見解は経済学の世界では広範囲に認められつつある。
世界の中で日本だけが緊縮財政

 そうした中で、日本では10月に消費税が引き上げられ、先進国の中でほぼ唯一緊縮財政が始まることになる。脱デフレの途上にある中で、安倍政権は他国とは反対に緊縮的な財政政策に踏み出すわけである。さらに財政政策によって国債購入金額が決まる制約から離れ、日本銀行が積極的な緩和政策を講じなければ、「日本は政府・中銀ともに脱デフレ完遂に背を向ける政策を行っている」との評価になることを覚悟すべきだ。

【私の論評】日本では、「リーマン・ショック」に続いて「コールドウォー・ショック」という和製英語ができあがるのか?

ブログ冒頭の記事で、「米中貿易戦争による緊張は続くが、予防的かつ積極的な米欧中銀の利下げ転換によって、世界経済の深刻な後退が回避される」というシナリオに、もうひとつ付け加えたいことがあります。

それは端的にいうと、米中貿易戦争は、供給過剰で疲弊している世界経済を救うかもしれないということです。それに関してはこのブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本の外交立場が強くなる米中新冷戦―【私の論評】米国の対中「制裁」で実利面でも地位をあげる日本(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を引用します。

"
現在の低金利、供給過剰の世界では、中国が生産しているコモディティの供給などどのような発展途上国でもできます。簡単な工場なら半年もかからないし、大規模・複雑な工場でも1~3年程度で完成します。

むしろ、米中貿易戦争は、供給過剰で疲弊している世界経済を救うかもしれないです。なぜなら現在世界経済が疲弊しているのは、中国を中心とする国々の過剰生産の影響だからです。

「供給過剰経済」については、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!
野口旭氏

世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。 
各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。 
このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。
ここで、貯蓄過剰は、生産過剰と言い換えても良いです。生産過剰の世界では、貯蓄が増えるという関係になっているからです。新興国、特に中国の生産過剰が問題になっているわけです。

競争力を持たない中国製品の貿易戦争による関税増加分を負担するのは、中国企業であり中国経済です。中国社会はその経済的圧力によって内部崩壊するでしょう。値上げによって米国消費者の負担が増えることは全くないとはいいませんが、あまりありません。他の発展途上国の商品を買えばよいだけのことだからです。実際、中国では明らかに物価の上昇がみられますが、米国はそうでもありません。
"
以上の話をまとめると、もともと現在の世界は中国の過剰生産などによって、供給過剰によって貯蓄過剰になっており、そのような状況で米中貿易戦争で中国の輸出が途絶えたところであまり影響はないですが、短期的には悪影響もあり得るので、予防的かつ積極的な米欧中銀の利下げ転換によって、世界経済の深刻な後退が回避されるということです。

さらに、中国からサプライチェーンが撤退して、インド、バングラデシュ、韓国、台湾、ASEAN諸国などの周辺国に移行するということも考えられます。中国では新素材やハイテク部品も製造できなくなるため、それを日本が担うということも考えられます。

ただし、米中貿易戦争は、貿易戦争等という次元を超え、冷戦の次元まで高まったため、終息するまでには、時間がかかるとみられます。そうなると何が起こるのかわかりません。その中にあって、日本だけが増税という緊縮に走って、大失敗するというのはなんとも異様です。なんて愚かなことでしょう。これは、いわゆる「リーマン・ショック」の失敗を繰り返すということです。

ご存知のように「リーマン・ショック」という言葉は和製英語です。この言葉は英米にはありません。欧米で「リーマン・ショック」と同意語は「リーマン・ブラザース破綻を期に発生した世界同時不況」などと言う以外にありません。

もしくは、先に文書の中でこのようにのべておいて、その後は"the crisis"などとするのが一般的です。ただし、ほんの一部のメディアではリーマン・ショックと表記しているものもありますが、それは圧倒的小数であることと、英米豪などの公式文書には見当たらず、やはり和製英語と理解すべきです。

なぜこのようなことになってしまつたのでしよう。欧米ではいわゆる「リーマン・ショック後」に、世界中の国々の中央銀行が積極的な量的緩和を行い不況から比較的はやく回復したのですが、日銀だけが実施せず、さらには緊縮財政を続けました。そのため超円高・超デフレを招いてしまって大失敗したため、日本だけが一人負け状態になってしまったためです。

震源地である米英は比較的はやく不況から回復したにもかかわらず、日本だけがその後も被害が甚大だったため、「リーマン・ショック」という固有名詞ができあがったのです。


上のグラフをご覧いただくと、現状の国債商品価格はリーマン・ショックのときよりもさらに下がっており、これは中国などの過剰生産が寄与しています。何しろ、中国は過剰生産は、想像を絶します。

鉄鋼製品などもかなりの過剰生産で巨大な在庫があります。これをさばくため、中国はかなり価格を安くして輸出していました。そのため、何度も米国からダンピングであるとの警告をうけていました。さらに、住宅などもかなりの過剰生産で、中国各地に巨大な無人住宅が存在し、鬼城と呼ばれています。

少し前まで、地方政府は鬼城ができあがると、その鬼城の脇に、10倍規模の住宅街を築くため投資するというような信じられないようなことをしていました。このようなことをしているから、ゾンビ企業が生き残り、中国経済の足を引っ張っているのです。それでもGDPだけは伸びました。

このような状況の中で、中国が過剰生産をできないような状態になれば、世界経済にとっては決して悪いことではありません。ただし、短期では何が起こるかはわかりませんし、長期でみても、懸念材料は多々あります。

それに対して身構えているのと、日本のように、自ら手足を縛るような真似をするのとでは、何かあったときの対処にかなりの違いがでてくるのは当然です。

今回の米中貿易戦争においても、日本以外の国々では、中国も含めてこれが長期の冷戦になることを見越して、予防的かつ積極的な中銀の利下げ転換によってこれに対処しようとしているのです。

日本以外の国々では、冷戦がさらに深刻化して利下げしても、経済が悪化するなら、躊躇せずに、世界中の中銀が量的緩和、政府は積極財政を行うでしょう。

その中にあって、日本だけが緊縮財政の一手法である、増税をするのは、Anomaly(異常)というほかないです。日本では「コールド・ウォー・ショック」等という和製英語が再びできあがるのでしょうか。

今のままだと、「リーマン・ショック」を反省することなく、緊縮財政をしてしまい自ら「コールドウォー・ショック」招いてしまうのは必定です。

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2019年5月28日火曜日

最低賃金引き上げの「公式」 韓国のやり過ぎは反面教師! 日本経済に有効な3%路線 ―【私の論評】驚くべきことに、政府財政諮問会議、文韓国大統領、枝野立憲民主党代表の頭の中には、NAIRUという概念がない(゚д゚)!


経済諮問会議に参加した安倍総理

最低賃金について、政府は毎年3%程度を目途に引き上げる方針を掲げているが、14日の経済財政諮問会議では、内需の下支えに向けて、それを上回る5%程度を目指すべきだという意見が出たという。現状の日本でどの程度引き上げるのが妥当なのだろうか。

 最低賃金の水準については、「あるべき論」が強調されがちだ。最低賃金が高ければ、その分消費支出が増えるので、経済成長にプラスだという意見すらある。

 もっとも最低賃金の引き上げによる消費増の恩恵がどの企業に還元されるかは定かではない。引き上げは企業のコスト増だが、それが企業収益増に直結するかどうかも分からない。

 このため、最低賃金引き上げは労働の逼迫(ひっぱく)に対応する程度にとどめた方が経済全体には好都合なことが多い。最低賃金も賃金の一種であるので、労働市場の状況と無関係に決めるのは無理だという、至極妥当な話だ。

 この原理を具体的にいえば、最低賃金は前年の失業率を受けた無理のない水準にし、賃金は雇用確保の後からついてくるという経済原則を曲げないようにさえすればいい。大ざっぱな計数であるが、最低賃金の上昇率は、5・5から前年の失業率を差し引いた数値程度が結果としていい。

 この点、安倍晋三政権はかなり狡猾(こうかつ)だといえる。雇用を増やし、失業率が下がるような環境を作っておき、最低賃金は失業率の低下に合わせて、毎年上がっていくように調整してきた。

 3%程度というこれまでの最低賃金の引き上げ方針も、NAIRU(インフレ率を加速しない失業率。事実上最低の失業率)が2%台半ばから考えると経済合理的である。

 安倍首相は、このメカニズムを「政治的」にうまく利用してきた。「政労使会議」を利用し、あたかも首相主導で最低賃金を引き上げたように見せ、政治的なプレゼンスを高めているようだ。

 要するに、最低賃金の引き上げは、雇用創出の成果であるが、その果実を安倍政権は政治的に生かしたといえる。

 この観点からみると、経済財政諮問会議での5%引き上げの議論には首をかしげざるを得ない。今の諮問会議は事実上、霞が関の役人が主導しており、消費増税も賛成だし、そもそもマクロ経済を理解しているのか疑問だ。最低賃金の議論でもマクロ経済オンチの部分が出たようにみえる。

     文在寅大統領による最低賃金の引き上げすぎで古窯が激減した韓国の
     テレビ報道。しかし、なせか金融政策については全くふれない

 隣国の韓国で、文在寅(ムン・ジェイン)政権は最低賃金を引き上げすぎて雇用の創出に失敗した。最低賃金を野放図に上げる失政は、マクロ経済学が分からないまま政治的な成果を求める左派政権によくある話だ。

 この程度の経済政策を分からない経済財政諮問会議はもはや不要ではないか。存在感が少なかったのでパフォーマンスに必死なのかもしれないが、「5%」の議論は無視し、これまでの安倍政権による政治的・実務的な「3%」の方が、日本経済のためになるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】驚くべきことに、政府財政諮問会議、文韓国大統領、枝野立憲民主党代表の頭の中には、NAIRUという概念がない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、NAIRU(インフレ率を加速しない失業率。事実上最低の失業率)という言葉がでてきていますが、これに対する解説がでていませんので、簡単にこれを補っておきます。

この言葉については以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
完全失業率2・4%の意味 異常値ともいえる大幅下落、賃金本格上昇はこれから 高橋洋一 日本の解き方―【私の論評】日本経済にはまだまだ、まだ!量的緩和と積極財政が必要(゚д゚)!
NAIRUを理解するには、この記事にも掲載した以下のグラフを理解することが必須です。労務ではなくて、雇用のことがわからないのは下のグラフが頭に入っていないからです。これを理解すれば、マクロ的な雇用に関しては、大概のことは理解できます。


 

経済財政諮問会議のメンバーは、このグラフが頭からすっかり欠落しているのだと思います。だから、最低賃金のことでも、増税のことでも頓珍漢なことをいい、存在意義をなくしているのでしょう。

このグラフからは、NAIRU(2.5%)並びにインフレ目標2%を達成するためには、積極財政と金融緩和が必要であることがわかります。

韓国の分在寅大統領は、金融緩和をせずに最低賃金を上げるというとんでもないことをしたため、雇用が激減したのです。韓国でも、日本とは経済のファンダメンタルズなどが異なるので、NAIRUやインフレ目標の値そのものは異なるかもしれませんが、それにしても、韓国でもインフレ率、失業率、NIRU、インフレ目標の関係は変わりません。このような関係は、どこの国でも変わりません。

そのことは、まともなマクロ経済学のテキストで当たり前に教えていることです。雇用が悪化したときには、まずは金融緩和と積極財政をして、NAIRU、インフレ目標を達成すべきなのです。金融感をせず、最低賃金だけを増やせば、雇用が激減するのは当たり前のことです。

金融緩和をしないで、最低賃金だけをあげるというのは、同じパイの中で賃金を上げるというのと同義です。そうなれは、雇用が減るのは当然の理屈です。

最低賃金をあげるのは、やはりブログ冒頭の高橋洋一の言っている通り、まずは金融緩和をしつつ、前年の実績をみながら、決めるというのが妥当です。現状では、3%が妥当です。

3%というと誤差のように感じる人もいますが、デフレでなかった他の国々もこのようなものです。ただし、これが20年、30年と続くと給料が2倍から、3倍になるという当たり前の状態になるのです。

韓国の大失敗の事例があるにも関わらず、政府の財政諮問会議は、最低賃金5%アップを低減しているだけではなく、消費税にも賛成というのですから、本当に首を傾げざるを得ません。

立憲民主党代表枝野氏

そうして、このようなことは不幸なことに日本では与党だけではなく、野党もおなじようなところがあります。たとえば立憲民主党の枝野氏も、韓国で文在寅が大失敗した後の今でもあいかわらず、金融緩和などお構いなしに最低賃金をあげることを主張しています。

彼の頭の中には、NAIRUなどはないのでしょう。ひたすら、最低賃金の上昇だけ主張して、文在虎の主張する雇用悪化への道を提唱しています。

それにしても、経済諮問会議、文在虎大統領、枝野代表の頭の中にもNAIRUという観点が全くないということは驚くべきことです。これは、政治家なら当然わきまえていないければならないことのはずです。

雇用と労務は、違います。多くの政治家は、労務のことを雇用と勘違いしているのでないでしょうか。そもそも、雇用の主務官庁はどこと聴かれて、厚生労働省と答えるのは間違いです。厚生労働省は労務の主務官庁です。この質問には「日銀」と答えなければなりません。このように答えられる政治家が一体日本には何人いるのでしょうか。

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高橋洋一 日本の解き方 物価目標2%は実現できる 黒田日銀の壁は消費再増税、財政出動で景気過熱が必要だ―【私の論評】次の総理はやはり安倍晋三氏しか考えられない(゚д゚)!


2018年8月5日日曜日

中小企業の深刻な人手不足が示す、日本経済の「現時点」―【私の論評】直近の経済指標をみれば、企業経営者が先行き不安になるのも当然!政府・日銀はこれを払拭せよ(゚д゚)!

中小企業の深刻な人手不足が示す、日本経済の「現時点」

景気回復。このチャンスをどう生かすか

ドクターZ

日本の99.7%は中小企業

アベノミクスが5年半以上継続中の日本経済において、中小企業の「人手不足」が深刻化しているという。

その現状を厚生労働省の加藤勝信大臣に訴えたのは、日本商工会議所(日商)の三村明夫会頭である。年々深刻化する人手不足や、若者の流出による地方の疲弊を理由に、中小企業に対する政策的な配慮を求めたのだ。

日本商工会議所(日商)の三村明夫会頭

中小企業の声を取りまとめ、代弁するのが日商の最大の役割であるが、どれほど窮地に立たされているのか、なかなか実感しづらいものがある。

そもそも中小企業とはなにか。

中小企業基本法において、製造業は資本金3億円以下または従業員数300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員数100人以下、サービス業は資本金5000万円以下または従業員数100人以下、小売業は資本金5000万円以下または従業員数50人以下などと定められている。

その合計数は日本企業の99・7%にあたる380万社にのぼる。日商はこのうち約125万社の中小企業を傘下に従えているのだ。

中小企業とひとくちにいっても多種多様だが、たしかに人手不足で困っているところもあるだろう。ただし、これは景気が回復したことによる「嬉しい悲鳴」で、不況で仕事がなく、それでも人を解雇できない状況に立たされているのとはまったく次元が異なる。

成長がなによりの薬

むろん、失業率が改善していることは日本経済にとって好材料だ。だからあえて苦言を呈せば、中小企業はこのタイミングで賃上げを図り、人材を確保するほかない。20年以上続いたデフレを言い訳にして、労働者に負担を強いるのはもはや限界だろう。

もっとも、中小企業の経営者のこうした弱音は何度も飛び出してきている。特に高度経済成長期には、中小企業は大企業に人材を取られ、大企業からの下請けでも十分な利益が上げられないと悲観した。

だが、日本経済の成長とともにこうした声は小さくなった。要するに、成長がなによりの薬なのだ。

もちろん、下請けという関係性は、どうしても大企業が有利になりがちなので、政府には下請法などの法運用をしっかり行う必要がある。もっとも、最近ではインターネットでの営業など、大きな資本を持たない中小企業でもうまく立ち回る術は増えてきている。人手や資金不足を嘆く前に、考えることはたくさんあるだろう。

これからの時代、大企業ではAI・ロボット化が加速度的に進み、大量の労働力は必要とされなくなっていく。だからこそ、優秀な人材が中小企業に回るチャンスも増えていくだろう。機械化された雇用環境より、中小企業ならではのフェイス・トゥ・フェイスに新たな商機を見いだす人もいるかもしれない。

要するに、いつの時代も同じであるが、チャンスを生かすも殺すも経営者次第である。マクロ経済の調子が良ければ、ミクロ経済で勝者になるのは、中小企業でも難しくない。

もちろん日商の三村会頭はそうした事情を十分に承知しているだろうが、それでも上手く対応できない経営者のために言い訳を述べたのだろう。中小企業の経営者たちのもう少しの努力があれば、デフレ脱却は近いはずなのだが。

『週刊現代』2018年8月11日号より

【私の論評】直近の経済指標をみれば、企業経営者が先行き不安になるのも当然!政府・日銀はこれを払拭せよ(゚д゚)!

茂木敏充経済再生担当相

茂木敏充経済再生担当相は3日、2018年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を閣議に提出しました。12年末から約5年半に及ぶ景気回復は「戦後最長に迫る」と評価し、持続に向け、経済の実力を示す「潜在成長率」の引き上げが課題だとしました。経済成長の制約となる人手不足の悪影響が一部の産業で表れていると警戒し、社会人教育や技術革新による生産性向上が重要だと説きました。

米国発の貿易摩擦や原油高を注意点に挙げつつも、総じて政策運営の成果を強調する内容でした。

確かに、経済の長期トレンドをみれば、そのような状況であるともいえます。それは、以下のグラフをみても明らかです。


一方短期のトレンドをみてみると以下のような状況です。




名目、実質GDPともに1月―3月期は、対前期比でマイナス成長です。


これらの数値をみれば、雇用は劇的に改善はしていますが、肝心の経済はそうではないことがわかります。このような状況では、中小企業経営者は景気は良くならないのに人手不足感は強く感じるということになるのは当然のことです。

消費者物価指数も6月では対前年比はプラスにはなっていますが、伸び率はわずか0.8%です。

これは、まともな人が見れば、デフレ一歩手前であり、何か世界情勢が変わったりすれば、デフレに舞い戻る危険すらあると受け取るのが当然と思います。

このような状況であるにもかかわらず、来年10月には消費税が現状の8%から10%にあげられるかもしれません。

これを考えると、中小企業が先行き不安になるのは当然のことです。このブログでは、お隣韓国では金融緩和をせずに最低賃金を上げたために、雇用状況がかなり悪くなったことを掲載しました。

日本では、金融緩和をしている(金融緩和策は雇用対策でもあります)のでそのようなことはなく、雇用は良くなっています。特に、若年層の雇用は劇的に良くなっています。

ところが一方日本では、消費税を2014年4月から8%に増税しました。そのため個人消費がかなり落ち込み、来年10月からの消費税を10%にするということも決まっていることもあり、それが消費を押し下げている可能性もあり、GDPは伸びていないどころか、一歩間違うとデフレに舞い戻る危険すらあります。

お隣韓国では、金融緩和しないまま最低賃金をあげたため、雇用状況は悪くなり、特に若年層の雇用は最悪の状態にあります。ただし、増税はしていないので、GDPの伸びは日本よりは大きいです。日本は、未だに韓国よりもGDPの伸び率が低い状態です。

このような状況では、まともな企業経営者であれば、誰もが先行きに不安を感じるのは当然のことです。この状況で、積極的な設備投資や人材獲得、賃上げに積極的になれないのは無理もないと思います。

現状では、人手不足だからこそ、人材獲得・育成に幾分力を入れ、他に関しては未だ様子見をするというのが、まともな経営者の姿勢であると考えられます。

この不安を払拭するには、政府は10%増税を少なくと2年は先延ばしにし、日銀は物価目標を達成するために、再度強力な追加金融緩和をすることを宣言し、実施すべきです。

日商の三村明夫会頭も、労務の主務官庁である厚生労働省に人手不足がどうのこうのと訴えるのではなく、政府や日銀に対してもっと景気を良くするように、消費増税などの緊縮財政はやめて、積極財政を推進するように、さらに日銀には、物価目標を一日でもはやく達成するように、訴えるべきなのです。

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日銀で飛び交う「消費の低下はネット通販のせい」というトンデモ論―【私の論評】物価目標未達成の理由は単純!まだまだ量的緩和が不十分なだけ(゚д゚)!

国会公聴会で話した「アベノミクス擁護」の理由―【私の論評】雇用の主務官庁は厚生労働省だと思い込む人には、雇用も財政も理解不能(゚д゚)!


2018年3月24日土曜日

安倍首相退陣なら日本経済は悪化する…石破or岸田政権発足→景気悪化の悲観シナリオ―【私の論評】ポスト安倍政権がまともな経済政策を実現するには財務省完全解体が必須(゚д゚)!

安倍首相退陣なら日本経済は悪化する…石破or岸田政権発足→景気悪化の悲観シナリオ


 森友文書書き換え問題を受け、安倍晋三首相の自民党総裁三選に赤信号が出たと指摘する声が、海外からも出てきた。いつも安倍政権に対して辛口の米紙ニューヨーク・タイムズからだ。

 筆者は、安倍首相の三選に赤信号が出たと思わないが、日本の事情を知らずに日本の新聞報道を真に受けている海外メディアでは、ときどきびっくりするような報道がある。特に株式市場では気の早い人ばかりなので、一部ではあるが安倍首相の退陣シナリオを語る人もいる。

 そういう人々の間では、安倍政権下のアベノミクスによって各種経済統計、企業業績データにおいて好景気・景気回復が維持されてきたため、もし安倍政権が終了した場合、日本経済にとって悪い影響を与えてしまうのではないかという懸念も出ている。そこで、“すぐ”という可能性は低いものの、安倍政権後の日本経済がどうなるかを考えてみよう。

唯一の救い

 ポスト安倍としては、自民党の岸田文雄政調会長と石破茂元防衛相が下馬評に上がっている。

岸田政調会長

 岸田氏は21日、香港で投資家らに講演した。その場で、財政再建の必要性や、金融緩和をいつまでも続けられないことを強調したという。ポスト安倍を意識して安倍政権との違いを見せたのだろうが、はっきり言えば、海外の投資家向けとしては出来の悪い講演だ。

 こうした海外投資家向けの場では、いかに日本株を買ってもらうかというのが相場であるが、国内の政局向けの話をしてしまった。事実認識としても、日本政府の中央銀行を含めた連結のバランスシートを見れば明らかであるが、急いで財政再建するような状況ではない。連結バランスシートで財務状況を判断する投資家から見れば、岸田氏は財務がわからない政治家に見えただろう。そうした人が日本のリーダーになったら、誰も日本株を買おうとしないだろう。

 岸田氏は温厚な性格で人柄もいいと評判であるが、なにしろ親戚縁者には財務省関係者が多い。伯父として宮澤喜一元首相を持つ、財務官僚出身の宮澤洋一自民党税調会長は従兄である。やや大げさに言えば、財務省キャリア官僚関係者に囲まれて生活しているといってもいい。

 このため、今の財務省不祥事に対して、財務省解体や消費増税中止とはいえない立場である。実際、香港の講演でも2019年10月の10%への消費増税は予定通り行うと言っている。

石破茂氏

 一方、石破氏はどうだろうか。筆者はしばしば石破氏から批判されている。これでわかるだろうが、石破氏は反アベノミクス論者である。詳しくは、筆者が書いた昨年7月10日付「現代ビジネス」記事『「安倍降ろし」で石破総理が誕生すれば、日本経済は大失速間違いナシ』をご覧いただきたい。

 この意味で、マクロ経済政策としては、財政再建路線、金融緩和否定というアベノミクスの真逆であり、岸田氏も石破氏も変わりはない。そのマクロ経済政策が実際に行われれば、アベノミクスで達成できた雇用や株高は失われ、デフレ脱却もかなわず、デフレに逆戻りになる可能性がある。

 これでは悲観シナリオだけになってしまうが、唯一の救いがあるとすれば、世論が財務省批判一色となって、ポスト安倍は財務省解体などの荒療治や、世論の後押しで消費増税中止をせざるを得なくなるような場合だ。

 増税指向の財務省が解体され、「政治力」が弱くなれば、それは日本経済にとって長期的にプラスである。財務省の擁護である岸田氏や石破氏が、泣いて馬謖を斬る状況になれば、ポスト安倍でも一定の経済パフォーマンスを発揮できる可能性はややあるだろう。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)

【私の論評】ポスト安倍政権がまともな経済政策を実現するには財務省の完全解体が必須(゚д゚)!

岸田氏や石橋氏が泣いて馬謖を斬る状況とはどのような状況でしょう。以上のような経過を踏まえれば、これまでに明らかになったことからでも、政治が対処すべき課題は明白です。

まず、公文書管理の抜本的見直しは当然です。そもそも、いったん決裁された公文書を書き換えることが可能になったのは、文書原本が所管官庁に残されていたからです。

そんな所業を根本から防止するには「全省庁共通の公文書を保管する」ような官庁を作って、決裁済みの原本は所管官庁ではなく、一括して保管する仕組みを作る必要があります。そうして、保管だけではなく、各省庁の文書が文書規程などにもとづき、まともに運用できるかを監査するようにすべきです。

公文書の書き換えは刑法上の犯罪

公文書は国民が歴史を検証するための公的資産です。決裁後は自動的に原本を公文書館に収め、その後は二度と所管官庁が手を出せないようにすべきです。所管官庁は必要ならコピーをとっておけば良いです。所管官庁が原本そのものを保存する理由はありません。

そうして、それよりも重要なのは、財務省の実質的解体です。今回は本省の理財局が近畿財務局に指示して書き換えさせた事実が明らかになりました。しかし、本来、国有財産をめぐって政策立案する理財局と現場で国有財産を管理する財務局の仕事は、まったく性格が異なります。

現場の執行部門の仕事は民間と密接に関わっています。そこでは当然、利権も絡むことになります。そのような現場の仕事を、政権中枢で政策を立案する官僚が指揮監督しなければならない理由などありません。

財務省の組織
内部部局大臣官房
主計局
主税局
関税局
理財局
国際局
審議会等財政制度等審議会
関税・外国為替等審議会
関税等不服審査会
施設等機関財務総合政策研究所
会計センター
関税中央分析所
税関研修所
地方支分部局財務局
税関
沖縄地区税関
外局国税庁

利権が絡む現場の仕事に政治的裁量が働く余地があってはならないはずです。必要なら、法に従って淡々と資産を売り払っていけば良いだけです。そうであるなら、理財局を財務省から切り離したうえで、財務局の担当部署と統合し「国有財産管理部局」にして、国土交通省などに統合すべきではないでしょうか。

同じように、税制の企画立案をする主税局と徴税執行業務を担う国税庁が同じ財務省の組織にある理由はありません。国税庁は外局とはいえ、事実上、財務省と一体です。かねて指摘されてきたように、年金保険料の徴収業務と国税庁の徴税業務を一体化した「歳入庁」の設立をすべきです。

理財局といい国税庁といい、そもそも現場の執行業務をする財務局や税務署を政策立案を担う高級官僚が指揮監督する仕組み自体がおかしいです。政策立案と現場が一体となっているからこそ、政権の意向を官僚が忖度して現場が振り回されるような疑惑が生じてしまうことになります。

以上のような改革を断行すると、財務省は予算編成をする主計局と税制の企画立案をする主税局、関税制度の企画立案をする関税局、通貨政策を担う国際局、大臣官房だけになります。全部、政策立案部局です。そのほうが現場と切り離されて、よほどすっきりします。

そうして、以前からこのブログにも掲載してきたように、大蔵省という官庁は、単純に分割すると、時間をかけて他省庁を植民化するという性癖があるので、主計局、主税局、関税局、国際局、大臣官房(内閣官房に吸収)はすべて内閣府の中に吸収してしまうという方法が有効であると考えます。

会計検査院については、他省関連団体への天下りを徹底的に監視し、やめさせなければなりません。こちらも抜本改革は避けられないです。

麻生太郎副総理兼財務相の責任をどうすべきでしょうか。監督責任は免れないでしょう。ただ、財務省解体の荒行を考えると、首相経験者である麻生氏の力量に期待する面もあります。一段落するまで組織に残って蛮勇を奮うべきです。責任問題はその後で自ら判断すべきです。

消費増税はどうなるのでしょうか。これほどひどい財務省のウソがバレた以上、だれが財務省が言う財政再建の必要性や、社会保障と税の一体改革などを信用するでしようか。増税は延期するしかありません。一から出直しです。

以上のうち、少なくとも、財務省が予算編成をする主計局と税制の企画立案をする主税局、関税制度の企画立案をする関税局、通貨政策を担う国際局、大臣官房だけになるという抜本的な改革が行われなければ、岸田氏や石破氏が、泣いて馬謖を斬る状況とはいえないでしょう。

このような方向に動いていけば、ポスト安倍でも一定の経済パフォーマンスを発揮できる可能性がでてきます。そうして、主計局、主税局、関税局、国際局が内閣府の一部となり、大臣官房が内閣官房に吸収されるというようドラスティックなことが実現できれば、必要もない増税が行われたり、デフレ・円高なのに金融引締めが行われるということもなくなるでしょう。

このくらいの改革を実現できれば、どのようなポスト安倍政権がどのような政権になったとしても、日本ではデフレのときには、金融緩和と積極財政を、緩やかなインフレを超えたインフレの場合には、金融引締めと緊縮財政を実施するというまともな政策ができるようになるでしょう。

さらに、一歩すすめると、自民党や他の政党でもある一定規模のところには、政党系の複数のシンクタンクを設置し、政策を立案させるようにさせ、政党の近代化をはかるべきです。現在のように、役人が政策を立案するという方式は、官僚優位を招きやすいです。官僚は本来は、目標、方針が決まったことを間違いなく実施することに専念すべきです。

立憲主義に必須の政党の近代化については、ここで述べていると長くなってしまうので、また機会をあらためて掲載します。

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2018年3月8日木曜日

完全失業率2・4%の意味 異常値ともいえる大幅下落、賃金本格上昇はこれから 高橋洋一 日本の解き方―【私の論評】日本経済にはまだまだ、まだ!量的緩和と積極財政が必要(゚д゚)!

完全失業率2・4%の意味 異常値ともいえる大幅下落、賃金本格上昇はこれから 高橋洋一 日本の解き方

1月の完全失業率が2・4%と24年9カ月ぶりの低水準となった。この失業率が意味するものは何か。賃金の本格上昇には、低い失業率がどの程度続く必要があるのか。

 本コラムで、NAIRU(インフレを加速しない失業率)がマクロ経済政策、とりわけ金融政策において重要だと指摘してきた。一般的に、インフレ率と失業率は逆相関であり、NAIRUを達成する最小のインフレ率をインフレ目標に設定するからだ。ここから導かれる金融政策は、失業率がNAIRUに達するほど低くない場合、インフレ率もインフレ目標に達しないので金融緩和、失業率がNAIRUに達すると、その後はインフレ率がインフレ目標よりも高くなれば金融引き締めというのが基本動作である。


 そして、筆者の推計として、NAIRUを「2%台半ば」としてきた。国会の公聴会でも説明したが、経済学は精密科学でないので、小数点以下に大きな意味はないが、あえてイメージをハッキリさせるために、「2%台半ば」を2・5%ということもある。これは、2・7%かもしれないし2・3%かもしれない。2・5%程度というと数字が一人歩きするので、普通は「2%台半ば」といっている。

 今回、2・4%という数字が実際に出たわけなので、NAIRUに達したかといわれるが、筆者の答えはまだ否である。

 なにしろ、前月の昨年12月は2・7%だったので、0・3%もの大幅な下落となった。一方、1月の有効求人倍率は1・59倍と前月と同水準である。

失業率は、失業者を労働人口で除した数字である。失業者は働く意思があるが失業している人をいうので、1月には大雪があり、職探しを中断して、結果として失業者が減った可能性もある。

 過去のデータを見ても、失業率はあまり上下しない数字である。過去1953年1月から、前月との差をみると、平均0・00064、標準偏差0・11である。ほぼ変動しないのが当たり前だ。これではイメージしにくいかもしれないので、今回のような0・3%下落を探すと、780回のうち今回を含めてわずか7回である。しかも、最大の下落幅だったのだ。


 統計的に見ると、今回の下落はほとんど起こりえないことが起こったわけで、統計的に異常値であるといってもいい。NAIRUになっているかどうかは、あと数カ月間の動向を見なければ判断できない。

 もちろん、失業率が一時でもあれ下落したのは悪いことではない。しかし、これで、金融政策の出口と早計したら、間違った政策になってしまう。

 というわけで、今回の数字だからNAIRUになったとはいえないが、仮にNAIRUになったら、その半年から1年以内に本格的な賃金上昇が来るはずである。なぜなら、人手不足なので、企業は賃金を払わないと人の確保ができなくなり、企業活動に支障が出てしまうからだ。今がNAIRUとは決していえないが、それが目前に迫っていると筆者は思っている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本経済にはまだまだ量的緩和と積極財政が必要(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では触れられていませんが、失業率が一時2.4%になったからといって、インフレ目標2%が達成されない限りは、金融緩和政策をやめるわけにはいきません。

失業率に関しては、このたとえが適切かどうかはわかりませんが、失業率を健康の問題などにたとえると、血圧のようなもので、何かの原因で血圧があがって病院に入院したとして、血圧が下がったからといって、すぐに退院ということにはならないでしょう。


やはり、しばらく様子を見るはずです。血圧が安定して、下がっているかをみるのと同時に、血圧が上がった原因が取り除かれたかどうかを検査することになると思います。その結果、大丈夫だということになれば、退院ということになるでしょう。

ただし、その後もしばらく通院して、様子をみて、その後特に変化がなければ、通院もなしということになると思います。

失業率も同じことです。一時、失業率が下がったことをもって、金融緩和をする必要はなしということにはなりません。

さらに、失業率が上がった原因である、デフレ状況が取り除かれ、緩やかなインフレになっているかも調べる必要があります。

インフレ目標は2%ですが、この2%が恒常的にクリアされている状態にもっていく必要があります。

日銀の現在の政策は、市場に供給するお金の量(マネタリーベース)を年間80兆円ペースで増やすとしていますが、これを年100兆円ペースに増やせば、かなりの確率でデフレから完全脱却できます。

ただ、日銀は市場から買う国債の量を年80兆円から年約50兆円程度まで減らしてきています。国債の購入量を拡大するのが難しくなっているのであれば、政府がそれを埋めるだけの財政拡張をして、合計で100兆円にするべきです。財政拡張自体に景気拡大の効果もあるので、実際に増額するマネタリーベースの量はあと10兆円程度でも良いかもしれません。

具体的には、建設国債など新規の国債を増発し、それを日銀が買い上げる方法をとるべきです。その際、日銀のイールドカーブ・コントロール政策は効果的です。政府が財政出動すると景気が刺激されます。金利が上がりそうになれば、イールドカーブ・コントロール政策で長期金利の水準が一定の値に保たれるように日銀が国債を買うので、金利の上昇は止められることになります。日銀が国債を買うことで、量的金融緩和の効果もあります。


日銀が大規模な「量的・質的金融緩和」を導入した2013年4月以降、「予想インフレ率は着実に上昇していましたが、消費税率引き上げと原油価格の下落を契機に弱まってしまいました。

このため、2019年度の消費税引き上げについては消費低迷を通じて予想インフレ率が弱含み、物価が下がることになるでしょう。海外経済のリスクも19年度までに顕在化する可能性があります。その場合、日本経済は相応に下振れることになります。

要するに、今の日本では失業率が2.4%になったからといって、おいそれとすぐに金融引締めや、緊縮財政をするような状況にはとてもないということです。

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