2023年6月29日木曜日

税収上振れ3年連続 「菅内閣レガシー」岸田首相に刺さった中西質問―【私の論評】岸田首相は現状では、「増税しない」選択肢を持っていることはだけは間違いない(゚д゚)!

税収上振れ3年連続 「菅内閣レガシー」岸田首相に刺さった中西質問

岸田首相

 日本の税収は、新型コロナウイルスの影響にもかかわらず、3年連続で過去最高を更新し、2022年度は初の70兆円台に達する見通しです。岸田文雄首相は、この好調な税収の動向を踏まえ、防衛力の強化や少子化対策に充当する考えを示しています。また、菅義偉前首相の内閣の功績として評価する声もあります。この上振れ分の使途を巡っては、与野党間で論争が活発化することが予想されます。

 2022年2月4日、衆議院財務金融委員会で、自民党の中西健治議員は、菅内閣下の20年度の税収が上振れ、21年度も同傾向の見通しとなることを指摘し、政府に対して「巣ごもり需要で好調な製造業と、対面抑制で苦戦しているサービス業との二極化を認識し、対応してほしい」と求めました。

中西健治議員

 中西議員は、菅前首相が懇意にする小此木八郎元国家公安委員長の地盤を引き継いで参院からくら替えを果たし、麻生太郎副総裁の派閥で財政金融政策を取り仕切っています。そのため、官僚の間には「菅、麻生両氏が予算先議権を持つ衆院へ移った中西議員を介して『ちゃんと手を打て』と岸田首相へサインを送った」との観測が広がりました。

 首相に近い自民党議員によると、答弁した鈴木俊一財務相が中西議員の指摘を岸田首相に伝えたとのことです。岸田首相は、中西議員の指摘に心を打たれたようで、財源策の一つとして上振れを念頭に置くようになったとのことです。また、2022年6月16日に閣議決定された骨太方針で、防衛増税の先送りを示唆したのも、直近の税収見通しを見極めるためだったとのことです。

これは、神奈川新聞の元記事を要約したものです。詳細を知りたい方は元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】岸田首相は現状では、「増税しない」選択肢を持っていることはだけは間違いない(゚д゚)!

上の記事で中西議員が発言した内容は、2022年2月4日、衆議院財務金融委員会のものであり、税収が増えていることにはかわりがありませんが、その後状況は随分変わっています。最近では、円高が亢進して、輸出産業には有利、輸入産業には不利な状況になっています。ただ、全体としては、企業の収益は上がっています。

輸出産業は、いわゆる優良大企業が多く、輸入産業は中小企業が多いです。この状況は今後も続くことになりそうです。そのため、税収も伸びていることですから、それを活用しつつ、中小企業対策も実施していくべきでしょう。

それと、中西議員は菅内閣レガシーと言っていますが、現在の日本経済の好調は、安倍・菅内閣のときに合わせて100兆円の補正予算を増税なしで組むことを決断した結果によるものであり、正しくは安倍・菅内閣レガシーと呼ぶのが正しいと思います。ただ、神奈川新聞の記事なので、やはり地元の菅義偉氏を持ち上げたいという気持ちもあるのでしょう。

ただ、安倍首相の経済政策を継承した菅氏も、素晴らしいと思いますし、岸田首相には是非安倍政権の経済政策を継承して頂きたいです。ただし、無論消費税増税はのぞき、100兆円の補正予算の財源を増税ではなく、国債としたことなどを継承していただきたいです。

22年度一般税収が、70兆を超すとみられるのは、4月時点ですでにこのブログに掲載しています。その記事のリンク以下に掲載します。
防衛財源確保法案のカラクリ 本当は「増税なしでも手当可能」だ 透けてみえる財務省の思惑―【私の論評】確実に税収が上ブレする現状で防衛財源確保法案は、財務省の増税の意図を隠す表看板に過ぎない(゚д゚)!
この記事は、4 月29日のものです。この記事より結論部分を以下に引用します。
さらに足元の月次税収の趨勢を踏まえ、2022 年度は 72 兆円程 度への着地を予想されています。22 年度税収は当初予算時点で 65.2 兆円のところ、昨年 11 月の補正予算時点 で 68.4 兆円と上方修正がなされましたが、ここから更なる上振れ着地が予想されます。
一般会計税収(4~翌 2 月の累計値)
背景にはインフレ・円安、賃金・雇用の回復などがあります。足元で特徴的なのが景気の振幅に影響 されにくい消費税が大きく伸びている点です。およそ 40 年ぶりの物価急上昇は、税収にもこれまでに ない変化をもたらしています。

このような状況でも、わざわざ防衛財源確保法案を出すのは、これを財務省は増税の隠れ蓑にするためだと判断するのが妥当だと思います。
この状況で、いずれ増税することになれば、反発は必至とみられます。

天下り先でスーパーリッチな生活をする財務官僚たち AI生成画

さて、本当に増税されるかどうか、これには財務省人事がヒントを与えてくれそうです。

政府は6月27日、国税庁の阪田渉長官が勇退し、後任に住沢整主税局長を充てる人事を正式発表した。 

主税局長には青木孝徳官房長を起用。首相官邸で少子化対策に携わった宇波弘貴首相秘書官が財務省に戻り、官房長に就きます。

28日の人事では、 理財局長には奥達雄総括審議官が就き、後任には坂本基官房審議官が就任。関税局長には江島一彦財務総合政策研究所長を充て、後任には渡部晶政策立案総括審議官が就任します。 

茶谷栄治事務次官、神田真人財務官、新川浩嗣主計局長、三村淳国際局長は留任します。人事の骨格を維持し、防衛力強化や異次元の少子化対策を巡る財源問題、ロシアによるウクライナ侵攻への対応などに注力する。この人事は何を意味するのか、特に財務省の権力の観点から解説します。

2023年度の日本の財務省人事異動は、岸田政権が、防衛力強化や異次元の少子化対策を巡る財源問題、ロシアによるウクライナ侵攻への対応などに注力することを示唆しています。また、この人事異動は、岸田政権が、財務省の権力構造を変更し、財務省をより効率的に運営しようとしていることを示唆しています。

具体的には、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財務省の権力構造に変化をもたらす可能性があります。斎藤理財局長は、安倍政権時代に理財局長を務め、財政政策の立案に大きな影響力を持っていました。奥総括審議官は、財務省の官僚であり、財政政策の立案に携わってきました。

しかし、奥総括審議官は、斎藤理財局長ほど財政政策の立案に影響力を持っていないと考えられます。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財務省の財政政策の立案に影響を与える可能性があります。

また、奥総括審議官は、安倍政権の財政政策に対して、より柔軟な姿勢をとってきたと考えられます。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財政政策の方向性に変化をもたらす可能性があります。

方向性の変化とは、財政出動の拡大や増税の抑制につながる可能性があります。

斎藤理財局長は、財政出動よりも増税を重視していました。一方、奥総括審議官は、財政出動を重視していると考えられます。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財政出動の拡大や増税の抑制につながる可能性があります。

ただし、これらの変化が実際に起こるかどうかは、今後の情勢次第です。

また、岸田政権は、財政政策の方向性について、まだ明確な方針を示していません。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任が、どのように財政政策に影響を与えるかは、今後の政権の動向を見守る必要があります。

そうして、斎藤理財局長は、財務省の省内序列で2番目のポストである理財局長を務めていました。奥総括審議官は、財務省の省内序列で3番目のポストである総括審議官を務めていました。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財務省の省内序列に変化をもたらす可能性があります。

ただ、これらの人事異動が、実際に財務省の権力構造にどのような影響を与えるかは、今後の情勢次第です。

一方、自民党内の積極財政派は、近年、勢力を拡大しています。その背景には、次のようなものがあります。
  • 少子高齢化や人口減少による経済成長の鈍化
  • 中国の台頭による安全保障環境の悪化
  • 新型コロナウイルス感染症による経済の混乱
積極財政派は、これらの課題に対応するために、財政支出を拡大し、経済を活性化させることが必要だと主張しています。また、財政赤字を心配する声に対しては、将来の成長への投資として、赤字を容認すべきだと主張しています。

増税に反対する自民党積極財政派議員 AI生成画

積極財政派の勢力拡大は、岸田政権の財政政策にも影響を与えています。岸田首相は、当初は財政再建を重視する姿勢を示していましたが、積極財政派の支持を獲得するために、財政支出の拡大に転換する可能性が高まっています。

積極財政派の勢力拡大は、日本経済にどのような影響を与えるでしょうか。積極財政派の主張通り、現状では、このブログで指摘した通り、財政支出の拡大が経済を活性化させ、成長につながるのは間違いありません。一方、需給ギャップがある現場で、増税してしまえば、経済は沈滞し、低成長どころか、縮小することになります。

これについては、過去20年以上にもわたって、多くのまともな世界標準のエコノミストが繰り返し主張してきました。このブログでも、同じくらいの期間、これを主張してきました。

今や20年前とは異なり、マクロ経済を理解する政治家も増えてきています。財務省も、20年前と同じ感覚で、簡単に「増税」とはいえない雰囲気になってきているのは確かです。

税収の上振れは以前から予想されたことであり、自民党内では防衛費の増額に伴う増税の先送りを求める声が一層強まっていました。政府は6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」でも、自民党内の積極財政派の声に配慮して従来は「24年以降」としていた増税開始時期を「25年以降も可能となるよう、柔軟に判断する」と先送りを示唆していました。

岸田首相は現状では、「増税しない」とはっきり意思決定はしてはいないでしょうが、「増税しない」選択肢も持っていることはだけは間違いないと考えられます。


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2023年6月28日水曜日

中国核軍拡で危惧される中印パ3国の核軍拡スパイラル―【私の論評】核に関する論議は、日本を本気で守ろうとした場合避けて通ることはできない(゚д゚)!

中国核軍拡で危惧される中印パ3国の核軍拡スパイラル

岡崎研究所

大型ミサイルの発射実験の光景 AI生成画像

 5月26日付の米国の外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」は「南アジアでの核兵器を巡る衝突」との米ハドソン研究所シニアフェローのアンドリュー・クレピネビッチによる論説を掲げ、米カーネギー国際平和基金のアシュリー・テリスが新著で論じた、中国の核軍拡がインドとパキスタンの核軍拡と地域の緊張増大を誘発する可能性につき解説している。

 中国の核軍拡は、インドとパキスタンの核軍拡と地域の緊張増大を誘発する可能性がある。中国は、米国との世界的競争に関心を移し、その結果大規模な核軍拡に踏み切った。インドに対し通常戦力で大幅に劣るパキスタンは、中国の支援を得て、最小限の抑止から段階的な抑止に舵を切ろうとしている。

 この2つの核軍拡に挟まれ、中国との対抗を主な関心事項とするインドは、コストも念頭に最小限の抑止を維持する可能性が高いが、中国の核兵器が大幅に拡充し、早期反撃のために警戒レベルが上がることや、精密攻撃能力の改善も相まったインドの残存核能力への脅威が増大し、更には防空・ミサイル防衛能力が強化されインドの核反撃の防止などが進めば、そのままではいかなくなるかもしれない。

 現状でも、中国とパキスタンの双方の核威嚇に対抗するためには、インドは一定の核軍拡が必要と言うのがテリスの見立てだ。が、そうなると当然パキスタンも核軍拡に走るので、中国の核軍拡が3カ国全てに核軍拡のスパイラルを起こすということになる。あまり見たくない世界である。

 そして、この状況へのインドの対応策として、米国によるインドへの戦略的協力の可能性を示唆していることが、正にテリスの慧眼の素晴らしいところだと思う。核実験数が十分でないことからインドの水爆の信頼性には限界がある。水爆の実証のためにインドが核実験を再開すれば、各国からの制裁は免れないし、日米豪印4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」の崩壊にまで繋がりかねない。

 逆に、中国のパキスタンへの各種核兵器関連技術の協力に対応する意味からも、米国が、水爆の設計情報や、インドの核兵器の残存能力を高めるために必要な核搭載原潜建造に不可欠な海軍原子炉設計情報をインドに提供する可能性をテリスは示唆している。正に、AUKUSのインド版だ。

 インドがAUKUSに入るというのはあまりありそうにないが、インド用に新たな米国他との協力の枠組みを作るという可能性は排除されないだろう。この論説が指摘するように、そのためにインドが戦略的自律性を放棄する必要があるかどうかは、その枠組みの内容次第かもしれない。ともかく、極めて大胆で貴重な問題提起であることは間違いない。そして、米国が自身の戦略的優先度を真剣に考え抜くことができれば、これは、一つのあり得る選択ではないかと思う。

【私の論評】核に関する論議は、日本を本気で守ろうとした場合避けて通ることはできない(゚д゚)!

中国、インド、パキスタンの核軍拡は「核のトリレンマ」ともいうべき状況を生み出しています。

「核のトリレンマ」という言葉は、アシュリー・J・テリスが2013年に出版した著書『インドの核政策』で初めて使用した。テリスは、南アジアの3つの核保有国(中国、インド、パキスタン)が、それぞれの核政策において「トリレンマ」と呼ばれる課題に直面していると主張しました。

インド、パキスタン、中国は互いに国境を接しており国境紛争もある

 核抑止力:これらの国は、互いに、あるいは他国からの攻撃を抑止するために、信頼できる核抑止力を維持する必要がある。

核の安全性: 事故や不正使用を防ぐため、核兵器や核物質の安全性とセキュリティを確保する必要がある。

核不拡散: これらの国々は、核兵器が地域の他の国々に拡散するのを防ぐ必要がある。

テリス氏は、これら3つの課題はしばしば相反すると主張しています。例えば、信頼できる核抑止力を維持するためには、その国の核兵器の規模を拡大し、高度化する必要があるかもしれないです。同様に、域内の他国への核兵器の拡散を防ぐ努力は、これらの国々が自国の核戦力を制限することを必要とするかもしれないです。

核のトリレンマは、これらの国々が自国の安全保障と地域の安全保障を確保するために慎重に管理しなければならない複雑な課題です。

核のトリレンマは、これらの国が協力して取り組むべき深刻な課題です。協力することによって、これらの国々は軍拡競争や事故、核兵器拡散のリスクを軽減することができます。また、この地域により安定した安全な核環境を発展させるために協力することもできます。

テリスのほかにも、南アジアにおける核のトリレンマについて執筆した学者がいます。
  • ヴィピン・ナラン『印パ紛争における核戦略』(2014年)
  • マイケル・クレポン『安定性と不安定性のパラドックス:南アジアにおける核兵器と抑止力』(2003年)
  • スコット・セーガン『動く標的 変化する世界における核の安全と核セキュリティ (2009)
核のトリレンマは複雑で困難な問題ですが、南アジアの安全保障を確保したいのであれば、理解することが不可欠です。

以下に、核のトリレンマも踏まえた上で、上記の様な米国の動きがなかったとすれば、インド・パキスタンは中国の核軍拡に対してどのように考えどのような動きをするかについて考察した内容を掲載します。


中国の核軍備増強がインドやパキスタンの核軍備増強の引き金となり、地域の緊張が高まる可能性は確かにあります。中国の最近の核兵器増強は著しく、インドとパキスタンが自国の安全保障への影響を懸念するのは理解できます。

もしインドとパキスタンが、自国の核兵器が中国を抑止するには不十分だと感じれば、自国の核戦力を増強したくなるかもしれないです。そうなれば、この地域での軍拡競争につながりかねず、緊張を高めるだけです。

重要なのは、これはひとつの可能性にすぎないということです。インドとパキスタンが、中国の核兵器増強がもたらす課題に対処するために、互いに協力する方法を見つけることができる可能性もあります。しかし、軍拡競争のリスクは無視できず、国際社会が認識しておく必要があります。

以下は、軍拡競争の可能性を高めるいくつかの要因です。
中国が急速なペースで核兵器を増やし続ける場合。

インドとパキスタンが、安全保障を米国やその他の国に頼ることができないと感じた場合。インドとパキスタン、あるいは中国との間で大きな紛争が発生した場合。
以下は、軍拡競争の可能性を低くするいくつかの要因です。
インドとパキスタンが核安全保障に関して互恵的な合意に達することができた場合。

米国やその他の国が、インドとパキスタンに安全保障を提供できる場合。

インド、パキスタン、中国の関係が全般的に改善すれば。
南アジアで軍拡競争が起こるかどうかを断言するのは時期尚早です。しかし、軍拡競争のリスクは国際社会が認識すべきものであり、その防止に積極的に取り組むべきものです。

確かに、軍拡競争の可能性を高める要因のなかに、インドとパキスタンが安全保障を米国やその他の国に頼ることができない場合や、中国のとの間で大きな紛争が発生した場合、軍拡競争の可能性を高めることになります。

上の記事では、インドの安全保障に対して、米国が何らかの形で関与することを示唆しています。その一つの方法が、インドがAUKUSに入るというものですが、これあまりありそうにないですが、インド用に新たな米国他との協力の枠組みを作るという可能性はあり得るとしています。そうすることにより、南アジアにおける軍拡競争を制限できる可能性は十分にあると思われます。

結局重要なのは、そのような可能性を検討しておくことです。検討しつつ、実際に軍拡競争が起こり、地域のバランスが崩れそうになれば、その検討事項を実際に試してみることができます。しかし、検討しておかなければ、軍拡競争が激しくなっても、おろおろするしかありません。その場しのぎで何かをしたとしても、あまりうまくいくとは考えられません。

そこで、不安なのが日本です。上の記事でも、中国の急速な核軍拡が日米同盟の抑止力に対して持つ意味についての議論は多々されてきたとされていますが、実際にどのような議論がされてきたのか、以下に掲載します。

第一に、中国の核兵器保有量は、ほんの数年前よりもはるかに増大しています。これは、中国が米国やその同盟国からの攻撃を抑止する能力をはるかに高めていることを意味します。

第二に、中国は極超音速ミサイルや原子力潜水艦など、新しいタイプの核兵器を開発しています。これらの新型兵器は、中国の攻撃を抑止する日米同盟の能力にとって大きな挑戦となる可能性があります。

第三に、中国は核兵器運搬能力を拡大しています。これは、中国が米国と日本のより多くの標的に核兵器を運搬できるようになったことを意味します。

中国の急速な核軍拡が日米同盟の抑止力にとってどのような意味を持つのかについては、まだ議論が続いています。しかし、中国の核兵器が日米同盟にとって、ほんの数年前よりもはるかに大きな脅威となっていることは間違いないです。

中国の核拡大の脅威を日本ではタブー視すべきではありません。リスクを理解し、効果的な対応策を練るためには、この問題についてオープンで率直な議論をすることが重要です。

日本が中国の核拡大の脅威について議論することに消極的な理由はいくつかあります。そのひとつは、日本には長い平和主義の歴史があり、多くの日本人が核兵器について議論することに抵抗を感じていることです。もうひとつの理由は、日本は貿易面で中国に大きく依存しており、日本企業のなかには、その関係を危うくするようなことをしたがらないところもあるだろうということです。

しかし私は、中国の核兵器拡大のリスクは無視できないほど大きいと考えています。日本は、この脅威に対処するための包括的な戦略を策定するために、この問題について率直でオープンな議論を行う必要がります。

以下は、中国の核拡大の脅威に対処するために日本ができることです。

日本は米国との同盟関係を強化することができます。米国は世界で最も強力な核兵器保有国であり、日本は米国との同盟関係によって、中国の攻撃に対する強力な抑止力を得ることができるはずです。この議論の中で、安倍元総理が主張していた、日米の核共有に関しては、有効な手立てとして、十分議論すべきと思います。

首相の時の安倍晋三氏

安倍元首相は、旧ソ連崩壊後にウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンの旧ソ連諸国3カ国が核兵器保有を放棄する代わりに米英露の核保有3カ国が主権と安全保障を約束した1994年の「ブダペスト覚書」に言及し、ウクライナが「もしあの時、戦術核を一部残し、活用できるようになっていればどうだったかという議論も行われている」ことを紹介していました。

ウクライナが核を全部放棄していなければ、今日ウクライナ戦争はなかったかもしれません。そのウクライナは今日、ロシアによる核攻撃の脅威にさらされています。

「被爆国として核廃絶という目標は掲げなければいけないし、それに向かって進んでいくことが大切だ。日本は核拡散防止条約(NPT)の加盟国で非核3原則があるが、世界ではどのように安全が守られているかという現実について議論していくことをタブー視してはならない。現実に国民の命、国をどうすれば守れるか、様々な選択肢を視野に議論すべきだ」と述べました。

日本は独自の核兵器を開発することもできます。これは賛否両論あるでしょうが、日本が自国の安全保障をより高度に管理できるようになります。

日本は、中国の核の脅威に対抗するために、インドやオーストラリアのような国々と協力して、地域の核安全保障の枠組みを構築することができます。

重要なことは、中国の核の脅威に対する簡単な解決策はないということです。しかし、この問題についてオープンで誠実な議論を行うことで、日本はこの脅威に対処するための包括的な戦略を策定することができます。

核に関する論議は、日本を本気で守ろうとした場合避けて通ることはできません。

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2023年6月27日火曜日

日本経済の大敵 不況を放置する「緊縮主義」のゾンビ理論 学者たちの関心は自分たちのムラ社会の話題だけ―【私の論評】ゾンビ企業の駆逐を叫ぶ輩はすでに、自らがゾンビであると認識せよ(゚д゚)!

ニュース裏表

ゾンビによる経済再生諮問会議 AI生成画像

 緊縮主義が日本経済に悪影響を及ぼす。緊縮主義とは、景気が悪い時や、あるいは十分に経済が回復していない段階で、増税や社会保障の負担などを増やす政策だ。しかし、緊縮主義は不況を深め、失業や倒産を再び増加させる。また、経済が失速すれば税収が悪化することから、緊縮主義者は、「財政再建が必要だ」とまた不況の中で増税しようとする。このように、緊縮主義は不況と増税の悪循環を招くことになるため、良い政策ではない。

 緊縮主義には、「ゾンビ企業退治論」というバージョンがあり、政府や日本銀行が不況を解消してしまうと、いいかげんな経営をしているゾンビ企業が生き残ってしまい日本の成長を妨げることになる。不況はできるだけ放置して、ゾンビ企業を撲滅するのがいい、という理論だ。だが、不況を放置すれば、経営努力が実を結ぶ可能性は低い。

 緊縮主義は日本の経済学者やエコノミストたちに大人気である。日本の経済学者たちの大半は、テレビのワイドショーなどを見て「岸田さんはダメだねえ」と愚痴を言っているレベルであり、日本経済や国民の生活のことは考えていない。また、日本の経済学者たちは、ツイッターで「僕の論文が一流ジャーナルに掲載されました!」という自慢話に花を咲かせているだけであり、自分のムラ社会の話題にしか関心がない。このように、日本の経済学者たちは、緊縮主義に偏った考えを持っており、日本経済の改善には貢献していない。

 緊縮主義は不況の時に不況をさらに悪化させる政策であり、良い政策ではない。緊縮主義は日本の経済学者やエコノミストたちに大人気だが、彼らは日本経済や国民の生活のことは考えていない。(上武大学教授・田中秀臣)

 これは元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ゾンビ企業の駆逐を叫ぶ輩はすでに、自らがゾンビであると認識せよ(゚д゚)!

緊縮財政は、財政赤字を減らすために政府支出を減らし、増税することを目的とした一連の経済政策です。これらの措置は、投資、消費、雇用の減少を招くため、経済成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

長期間にわたる緊縮財政と金融引締による、経済停滞の長い歴史を持つ日本の場合、さらなる緊縮財政は特に悪影響を及ぼす可能性が高いです。日本経済はすでに伸び悩んでおり、緊縮財政は景気回復をさらに困難にする可能性が高いです。

緊縮財政がいつまでも続けば、日本経済は長期不況に陥る可能性が高いです。この不況は税収の減少につながり、政府はさらなる緊縮策を実施せざるを得なくなります。不況と緊縮財政の悪循環を断ち切るのは難しくなるでしょう。

日本における無期限の緊縮財政の最終結果は、高い失業率と貧困を伴う経済の停滞となるでしょう。日本国民は大きな被害を受け、日本の国際的地位は低下するでしょう。

緊縮財政で経済が低迷し、貧乏になった日本の目抜き通り。途方にくれた人々が、水や食料を求めてさまよい歩いている。AI生成画像。

以下は、日本における無期限の緊縮財政の具体的に予想し得る悪影響です。

失業の増加: 緊縮財政は政府支出の減少につながり、公共部門の解雇につながります。また、投資の減少も民間部門の解雇につながります。
経済成長の低下: 緊縮財政は投資、消費、雇用の減少につながります。これは経済成長の低下につながります。
貧困の増加: 緊縮財政は失業率の上昇と経済成長の低下を招く可能性があります。これは貧困の増加につながります。
社会不安: 緊縮財政は、人々が政府の政策に不満を募らせ、社会不安を引き起こす可能性があります。抗議行動や暴動、その他の市民不安につながる可能性があります。

結論として、日本における無期限の緊縮財政は、日本の経済と国民に壊滅的な影響を与えるでしょう。緊縮財政によらない経済問題の解決策を見つけることが重要です。

緊縮財政を続けて大失敗した古今東西国の例をいくつか挙げてみます。

古代ギリシャ: 紀元前4世紀、アテネは財政危機に対応して一連の緊縮策を実施しました。これらの措置には、増税、歳出削減、公共資産の売却などが含まれました。その結果、経済活動は急激に落ち込み、貧困が蔓延し、社会不安に陥りました。

古代ギリシャの極貧人 AI生成画像

アイスランド :2008年、アイスランドは深刻な金融危機に見舞われました。これを受けて政府は、増税、歳出削減、公的資産の売却など一連の緊縮策を実施しました。その結果、経済活動は急激に落ち込み、失業が蔓延し、深刻な不況に陥りました。

ギリシャ :2010年、ギリシャは欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)から救済を受けるため、一連の緊縮財政を余儀なくされました。これらの措置には、増税、歳出削減、国有資産の民営化などが含まれました。その結果、経済活動は急激に落ち込み、貧困が蔓延し、深刻な不況に陥りました。

アルゼンチン:2001年、アルゼンチンは債務不履行に陥り、一連の緊縮財政を実施しました。増税、歳出削減、銀行口座の凍結などです。その結果、経済活動は急激に落ち込み、貧困が蔓延し、深刻な不況に陥りました。

アイルランド :2008年、アイルランドは深刻な金融危機に見舞われました。これを受けて政府は、増税、歳出削減、国有資産の売却など一連の緊縮策を実施しました。その結果、経済活動は急激に落ち込み、失業者が蔓延し、深刻な不況に陥りました。

これらは、緊縮財政を続けて大失敗した国のほんの一例にすぎません。緊縮財政が必ずしも失敗とは限らないことに注意する必要があるかもしれません。場合によっては、政府債務や財政赤字の削減に成功することもあります。しかし、緊縮財政はあくまでも最後の手段として用いるべきであり、経済成長を刺激するための他の措置を伴うべきです。

日本では、江戸時代に景気が落ち込むと、質素・倹約令などを幕府が出して、さらに景気を落ち込ませるなどのことをしました。

江戸時代の極貧生活をする人々 AI生成画像

しかし、多くの国で過去から現在に至るまで、緊縮財政が行われ失敗した事例は枚挙に暇がありません。

失敗の実績があるにもかかわらず、緊縮財政が繰り返されてきたのにはいくつかの理由があります。

経済音痴: 多くの政策立案者やエコノミストは、緊縮財政がもたらす経済的悪影響を理解していません。彼らは、たとえ短期的に経済的苦難を招くことになっても、政府の債務と赤字を減らすためには緊縮財政が必要だと信じています。

政治的圧力: 緊縮財政は、銀行や債券保有者など強力な利益団体によって支持されることが多いです。緊縮策は政府支出を減らし、政府歳入を増やすので、これらのグループは緊縮策から利益を得ることができます。

イデオロギー: 政府の規模を縮小し、個人の責任を促進するために緊縮財政が必要だと考える政策立案者もいます。緊縮財政によって人々は貯蓄を増やし、支出を減らすことができ、それが経済成長につながると信じているのです。

恐怖: 経済危機の時代には、政策立案者はリスクを取ることを恐れるかもしれないです。政府の財政を安定させるには緊縮財政しかないと考えるかもしれないです。

日本だけではなく、緊縮財政が有効な場合もあると考えるエコノミストも海外には存在することに注意する必要があります。しかし、こうしたエコノミストたちは、緊縮財政は最後の手段としてのみ用いるべきであり、経済成長を刺激するための他の措置を伴うべきであるという点でおおむね一致しています。

緊縮財政の繰り返しは深刻な問題です。多くの国で経済的苦難と社会不安を引き起こしています。政策立案者は緊縮財政がもたらす悪影響を理解し、緊縮財政を実施する圧力に抵抗することが重要です。

それにしても、緊縮財政にこだわる、多くの経済学者らや財務省の官僚、多くの政治家、識者らや、マスコミ等は一体何を考えているのでしょうか。

自分だけ、あるいは自分たちの一派だけが良ければ、それで良いのでしょうか。自分たちの子どもや孫、ひ孫、あるいは何代か先の子孫など、自分が属している一派に入れるとは限りません。そう人たちが、緊縮財政で苦しんでも、どうでも良いとでもいうのでしょうか。

やはり、まともな財政政策、金融政策によって、日本経済を強くし、将来の人たちが希望を持って生きられるようにすべきではないでしょうか。どのような人でも、努力さえすれば、その努力が報われ、生計を立て、普通に生きられる社会を構築し、若者に希望が持てる社会にすることこそ重要だと思います。

そういう社会でこそ、いわゆるゾンビ企業は消えていくでしょう。緊縮ばかり実施していれば、その逆になります。いわゆるブラック企業やゾンビ企業が生じやすくなり、継続しやすくなります。

なぜなら、景気が良ければ、新たな雇用先が多く生じ、ゾンビ企業やブラック企業で働いていたひとたちの再就職の間口が広がり、転職する可能性が高まるからです。逆に不景気であれば、雇用が悪化し、ゾンビ企業やブラック企業で働いている人たちも、仕方なしにそこで働き続けることになる可能性が高まります。

さらに、ゾンビ企業撲滅論には欠陥があると言わざるを得ません。

ゾンビ企業は必ずしも非効率的ではないです。ゾンビ企業の中には、単に衰退産業で経営しているものもあります。利益を上げているかもしれないですが、成長はしていません。これらの企業は、その業界が回復すれば、長期的には存続可能です。

ゾンビ企業は雇用と経済活動を提供することができます。ゾンビ企業が利益を上げていなくても、雇用や経済活動を提供することはできます。なぜなら、ゾンビ企業は他の企業から商品やサービスを購入する必要があるからです。

ゾンビ企業はリストラ(クビを切るという意味ではなく、元々の意味でリストラ)して復活させることができます。コスト削減、効率化、新市場の開拓などです。

ゾンビ企業の破綻を許すと、マイナスの結果を招く可能性があります。ゾンビ企業の倒産を許すと、雇用が失われ、経済が不安定になる可能性があります。というのも、ゾンビ企業にはサプライヤーや顧客もゾンビ企業であることが多いからです。これらの企業が同時に倒産すれば、経済全体にダメージを与える波及効果が生まれる可能性があります。

ゾンビ企業撲滅論は、ゾンビ企業は非効率であり、経済の足を引っ張るという仮定に基づいています。しかし、この仮定を裏付ける証拠はありません。実際には、ゾンビ企業が長期的に存続可能であり、雇用や経済活動を提供できることを示唆する証拠があります。

日本銀行の調査によると、日本のゾンビ企業は平均10年間存続しています。これは、これらの企業が必ずしも非効率的ではなく、長期的に存続可能であることを示唆しています。

欧州中央銀行の調査によると、欧州のゾンビ企業は雇用と経済活動を提供しています。同調査によると、ゾンビ企業はその国の労働人口の平均10%を雇用しています。

国際通貨基金(IMF)の調査によると、ゾンビ企業はリストラによって再生することができます。この研究では、リストラはゾンビ企業がより効率的になり、市場で競争するのに役立つことがわかりました。

これらの研究は、ゾンビ企業が必ずしも経済の足を引っ張るものではないことを示唆しています。実際、長期的には存続可能であり、雇用や経済活動を提供することができます。

ただ、注意すべきは、本当に非効率で経済の足を引っ張るゾンビ企業が存在することです。しかし、このような企業はむしろ例外です。ほとんどの場合、ゾンビ企業は単に衰退産業で経営しているか、リストラが必要なだけなのです。

ゾンビ企業駆逐論は、日本経済に悪影響を及ぼす欠陥政策です。ゾンビ企業を再生させ、新たな雇用を生み出す政策に焦点を当てることが重要です。

それに、ゾンビ企業を撲滅するために、不景気にすれば、ゾンビ企業でない企業まで悪影響を受けてしまいます。真のゾンビ企業とそうではない企業を見分けるのは至難の技です。これらを区分して、経済政策を行うことなどできません。

私は、町でみかける、良心的な飲食業や、100年以上も続く老舗で現状は経営状態が悪い企業など、条件が整えば、存続可能だと思います。これらの企業を単なるゾンビ企業と切って捨てるような真似はすべきでありません。

私は、経営コンサルタント会社でコーディネータをしていたこともありますので、多くの企業が再生したことを現実に目にした経験があります。財務諸表上ではすでに潰れたと思われるような企業でも再生している事例はあります。

「お前はすでに死んでいる」 AI生成画像

そもそも経営の本質もわからないような、役人やエコノミストが何を根拠にゾンビ企業と定義するのか、理解できません。そのようなバカ真似をするような人たちこそ、ゾンビなのではないかと思います。こういう人達には、「おまえはすでに死んでいる」と言いたいです。

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2023年6月26日月曜日

マイナンバー反対の落とし穴 トラブルめぐり「大きな数字」強調するマスコミ 移行しないデメリットに注意、保険証一体化は不正使用防ぐ―【私の論評】元々導入すべきという前提での批判なら理解できるが廃止せよというなら、一体誰の味方なのか(゚д゚)!




 マイナンバーカードに関する議論では、野党やメディアから保険証の廃止に反対する声が多く上がっています。マイナンバーのデジタル化と用途拡大の進展に対して、反対派の意図はどのようなものがあるのか疑問視されている。

 トラブルの類型化によると、①公金口座の誤登録や別人登録②マイナポイントの誤付与③マイナ保険証の誤登録④別人の証明書が発行される、という問題がある。

 ①~③の問題は本来避けるべきだが、これらは従来からの人為ミスであり、対処方法も存在する。公金口座の誤登録は13万件あるが、全体の公金受け取り口座数の0.2%に過ぎない。誤登録の件数である748件は0.001%だ。

 問題となるのは④であり、これはマイナンバーを所有する人には責任がなく、システム会社や地方自治体が責任を負うべきミスだ。どちらにせよ、マスメディアはミスを大きく報道する。ミスは避けるべきだが、新しいことに取り組む際には避けられないものだ。

 筆者は、マスメディアが数字を報じる際には注意を払っています。大きな数字を強調する場合は、比率も確認するべきです。逆に、大きな比率を強調する場合は元の数字も見るべきです。つまり、13万件といった大きな数字を提示する場合は、0.2%の比率も同時に考慮すべきですが、この比率はほとんど報道されません。

 また、新しい制度に移行する際には一時的なミスに注目が集まりがちだが、移行しないことによるデメリットを忘れがちだ。例えば、コロナ禍で他の国では迅速に行われた給付金の国民への即時振り込みなどの政策ができないといった永続的なデメリットもある。一時的なミスと永続的なデメリットの両方を比較検討すべきだ。

筆者自身は、約20年前に

 私は官僚としてe-Taxシステムの構築に関与した。このシステムは国民からの税金徴収に利用される仕組みであり、一部改良すれば国民への資金配布も可能だった。しかし、税金徴収システムの構築は早く行われ、資金配布システムの構築には20年もの時間がかかったた。これは筆者にとって、新しいシステムへの移行を行わないことによるデメリットだと考えている。

 保険証の廃止(マイナンバーへの一本化)に反対する理由は理解しづらい。現行の保険証は通名で利用することができ、本人の写真も含まれていない。そのため、不正利用が行われ、善良な国民が損害を被っているとされている。例えば、健康保険の資格を失っているにもかかわらず、自身の保険証を使用して日本の医療機関で診察を受ける人も存在する。

 現行の保険証は通名で使用可能であり、顔写真も含まれていないため、こうした不正利用を徹底的にチェックすることはできない。マイナンバーカードと保険証が一体化したマイナ保険証がなければ、根本的な対策を取ることはできない。

 報道によれば、マイナ保険証に別人の医療情報が登録された事例は7000件以上あるが、これは全人口の約1.8万人に1人程度であり、年間交通事故死亡率の2倍程度の少ない数だ。一方、健康保険の不正利用は善良な国民にとってデメリットとなる。

これは元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】元々導入すべきという前提での批判なら理解できるが廃止せよというなら、一体誰の味方なのか(゚д゚)!

上の記事にある、健康保険の不正利用にはどのようなデメリットがあるのか以下に列挙してみます。

保険料の値上げ: 政府は、不正請求に対してより多くの保険金を支払わなければならなくなると、すべての人の保険料を値上げせざるを得なくなります。つまり、制度を悪用していない善良な市民は、より多くの保険料を支払わなければならなくなります。

補償範囲の縮小: 不正行為のコストを相殺するために、政府は提供する補償額を減らしたり、特定のサービスの料金を引き上げざるをえなくなることがあります。その結果、善良な市民が必要な医療を受けることが難しくなる可能性があります。

待ち時間の増加: 政府が不正請求を調査しなければならない場合、正当な請求の処理に時間がかかることがあります。その結果、医療を受けるまでの待ち時間が長くなり、緊急の医療が必要な人にとっては特に困難となることもあり得ます。

医療制度の評判を落とす: 健康保険の不正利用が蔓延すると、医療システム全体の評判を落とすことになります。その結果、人々が医師や病院を信頼することが難しくなり、必要な治療を受けることが難しくなる可能性がります。

マイナンバーカードと健康保険との紐づけにより、政府が不正の兆候に気づき、不正の疑いが確認しやすくなり、善良な市民は健康保険制度を守り、誰もが必要な医療を受けられるようにすることができるようになります。

外国人による国民健康保険(国保)の不正利用については、在留資格の真偽を医療機関や保険者である自治体では把握しづらいことや、すでに国保に加入している家族や知人になりすましても医療従事者が加入者本人かどうか識別するのは困難など、解決に向けたハードルはかなり高いものでしたが、マイナンバーの登場により、これが一気に解決される可能性がでてきたのです。

マイナンバーの制度を導入しないことのデメリットを以下に掲載します。

行政コストの増加: 単一の識別子がなければ、政府機関や企業は個人ごとに個人情報を収集し、保管しなければならないです。そのため、行政コストが増大し、情報の追跡や管理が困難になります。

効率の低下: 単一の識別子がなければ、政府機関と企業の間で情報を共有することが難しくなる。これは、サービス提供の遅延や非効率につながります。

不正行為の増加: 単一のIDがなければ、犯罪者によるなりすましや詐欺が容易になります。これは個人を危険にさらし、政府や企業に損失を与えることになります。

日本の評判の低下: 日本がセキュリティーやプライバシーに真剣でない国とみなされれば、日本の評判が落ち、海外からの投資を呼び込むことが難しくなる可能性があります。

マスコミは、マイナンバー制度はプライバシーを脅かし、政府の監視に利用されかねないという批判を繰り返していますが、しかし日本政府は、マイナンバー制度はプライバシーを保護するためのものであり、合法的な目的にのみ使用されると述べています。

結局のところ、マイナンバー制度を導入するかどうかの決定は複雑なものかもしれません。考慮すべきメリットとデメリットの両方があります。しかし、効率性の向上や不正行為の減少といったシステムの潜在的なメリットは、リスクを上回る可能性のほうが大きいと考えられます。

メディアは、マイナンバーが危険だとと騒いでいますが、ビッグデータの売買や個人情報の持ち出し規制こそ必要なはずなのに、民間の持つビッグデータや「EU一般データ保護規則」(GDPR:General Data Protection Regulation)の議論は見て見ぬふりです。本当に不思議です。

マイナンバーは、ビッグデータの国有化とは全く異なるものです。実は、政府は繰り返し説明しているのですがメディアはまともに報じず、ミスリードを繰り返しています。マスコミは、財務省や日銀の発表は、ほとんど吟味もせず間違っていようが、正しかろうが関係なく、ほぼそのまま掲載するのに、マイナンバーに関しては、そうはしません。

AI生成画像

マイナンバーやマイナンバーカードは、新しいシステムなのですから、まずは、政府の発表をそのまま公表すべきでしょう。そのうえで、批判するならすれば良いのに、最初から批判ばかりしています。

 そもそもマスコミは、マイナンバーで得られるのは特定分野の情報のみであり、それぞれはリンクされていないし、それを集約することは不可能に近く、仮に無理にやろうとすれば、コスト的にも合わないことをほとんど報道しません。

マイナンバーは、国内での分野別分散管理です。マイナンバーは鍵で番号と暗証番号で各サーバから呼び出し、横の紐付けはされていません。使い勝手は悪いですが、セキュリティは担保されています。ビッグデータ化した方が効率は良いのですが、法的にできないように縛られているのです。


民間企業の持つビッグデータの方がよほど危険です。Twitterでツイートしている時点で情報は流れています。

 AppleかAndroid でプラウザを使って、アマゾンのクレジットカード決済するほうが、はるかに危険です。クレジットカードやスマホ決済、ネット取引等のデータはビッグデータになっており、売買されています。利用履歴で位置情報や利用パターンも解析され、信用情報で年収や購買額まで丸見えなのです。

マイナンバーでプライバシーが心配というほうが、変です。マスコミはそもそも、セキリティーというものを理解していないようです。

お馬鹿なことをしそうなマスコミ AI生成画像

マイナンバーカードを嫌がる人もいますが、これも理解不能です。希望者にはマイナンバーカードの代わりのカードも発行されます。どうしてもいやなら、代わりのカードを申請すれば良いだけです。マイナンバーは義務ですが、マイナンバーカードは義務ではありません。カードは利便性を高めるもの、便利な道具でしかありません。

マスコミのいう、マイナンバーの弊害と何なのでしょうか。貸し借りができなくなる事や不正が難しくなる事でしょうか。だとすれば、本末転倒です。それどころか、不正を誘発しかねません。

岸田政権は、LGBT法案の導入を急ぐという、とんでもないことを仕出かしましたし、増税することを決めているようなのに、それを先延ばしして支持率の低下を防いでいるようにもみえます。だからといって、岸田政権のやることは何もかも間違いとするのは間違いです。

マイナンバー制度は岸田政権であろうが、何政権であろうが、元々導入すべきものです。これを正面から批判しているマスコミや、一部の識者や政治家など、マイナンバー制度が廃止になれは、良いとでも思っているように見受けられます。

だとしたら、異常です。本来ならば、元々導入すべきものだという前提で、批判するのならわかりますが、そうでないとしたら問題です。とても、日本国民や日本国の味方とは思えません。

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2023年6月25日日曜日

「中国人の中国離れ」で遠のく習政権の強国復権の夢―【私の論評】海外移住と資産逃避が続く、中国の現実(゚д゚)!

「中国人の中国離れ」で遠のく習政権の強国復権の夢

習近平

 中国の幸福度ランキングは、政府の宣伝によってトップに位置付けられています。しかし、実際には、中国人の生活は厳しいものとなっています。社会保障制度は整備されておらず、失業率も上昇しています。また、所得格差も拡大し、低所得層の生活レベルは大きく落ち込んでいます。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するために実施されたゼロコロナ政策は、人々の生活を大きく制限し、多くの苦しみをもたらしました。そのため、中国人の幸福度は低下していると考えられます。

 中国のネットスラング「潤」は、中国語で「潤い」を意味する「潤」と英語で「run」を組み合わせた言葉で、「海外に逃げる」ことを意味します。中国では、インターネット上に禁止用語が数多く設定されており、これらの用語を書き込むと罰せられることがあります。そのため、中国人は「潤」を隠語として使用しています。

 「潤」という言葉は、中国の若者の間で広く使用されており、SNS上で挨拶代わりに使われることもあります。中国人の若者は、中国の社会や経済状況に不満を持っており、海外移住を希望する傾向にあります。そのため、「潤」という言葉は、中国人の若者のアイデンティティを反映した言葉であると言えます。

 中国系歴史家、余英時氏は、1949年に中国共産党が成立した際に香港に移住し、その後、アメリカで学び、教鞭をとりました。同氏は、1978年に中国を訪れた際に、かつての中国とは大きく変わってしまったと感じたと語っています。同氏は、中国の社会がより物質的になった一方で、人々の間の信頼や善意が失われ、すべてが利益のために計算されるようになってしまったと指摘しています。同氏はまた、中国の若者や富裕層の多くが、中国の現状に失望し、海外移住を希望していると述べています。

 中国は、1978年以降、経済改革を進め、経済成長を遂げてきました。しかし、その一方で、社会の格差が拡大し、人権問題が深刻化しています。また、政府のゼロコロナ政策は、人々の生活に大きな制限をもたらしています。これらの状況から、多くの中国人は中国の現状に失望し、海外移住を希望しています。

 1970年代半ば、中国大陸から香港への移民が急増しました。これは、当時の中国が社会主義体制にあり、経済的に困窮していたためです。中国政府は、この状況を改善するために経済改革を進め、1980年代以降は経済成長を遂げました。しかし、その一方で、社会の格差が拡大し、人権問題が深刻化しています。また、中国政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するために、都市封鎖や移動制限などの厳しい措置を実施しています。これらの状況から、多くの中国人は中国の現状に失望し、海外移住を希望しています。

 中国から海外へ移住する中国人は、富裕層と低所得層に分かれています。富裕層は、自由と人権が尊重されている国への移住を希望しています。低所得層は、経済的なチャンスを求めて移住しています。中国政府は、中国人の海外移住を抑制するために、様々な施策を講じていますが、効果は十分ではありません。

 中国の習近平政権は、国内向けに「強国復権」の夢を掲げていますが、現実には中国の国力はむしろ弱体化しています。新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するために実施されたゼロコロナ政策は、中国経済に大きな打撃を与えました。中国政府は、企業や家計を助ける有効な措置を講じることができず、中国経済は逆回転しています。

 こうした中で、中国の富裕層と低所得層の海外移住が加速しています。富裕層は、自由と人権が尊重されている国への移住を希望しています。低所得層は、経済的なチャンスを求めて移住しています。中国政府は、中国人の海外移住を抑制するために、様々な施策を講じていますが、効果は十分ではありません。

 中国経済は、習近平政権の政策失敗によって弱体化しています。習近平政権が掲げる「強国復権」の夢は、絵に描いた餅になってしまう恐れがあります。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】海外移住と資産逃避が続く、中国の現実(゚д゚)!

世界的に有名な市場調査会社イプソスは3月に、世界の幸福度指数に関する調査報告書を発表しました。その結果によると、調査対象となった32ヶ国の平均値を見ると、成人の約4分の3近く(73%)が「自分は幸せだ」と考えていることがわかったそうです。調査を受けた国の中で、幸福度が最も高かったのは中国で91%、以下、サウジアラビアの86%、オランダの85%、インドの84%、ブラジルの83%が続きました。

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イプソスの調査で中国の幸福度が高かった理由には、いくつかの可能性が考えられます。ひとつは、調査方法に欠陥があった可能性です。例えば、すでに幸せな人だけを対象にするなど、調査結果に偏りが出るような方法で調査が行われた可能性があります。

もう1つの可能性は、調査結果は正確でが、中国における幸福の認識が他国における幸福の認識とは異なるというものです。例えば、中国では幸福は社会的調和や集団的幸福と他国よりも強く結びついているのかもしれないです。

また、イプソスの調査が2022年に実施され、その時期は中国がまだCOVID-19の流行真っ只中であったことも注目に値します。2022年というと、中国のゼロコロナ政策の真っ只中であり、この頃はその弊害が指摘されていた頃です。この時期に、まともに調査ができたとは考え難いです。中国政府は「ゼロコロナ」政策を完全に放棄する旨を発表したのは、2022年12月26日であり、 実施は2023年1月8日からでした。

感染者に隔離措置は取られず、濃厚接触者の判定も行わず、高リスク地区・低リスク地区の区分も行われなくなりました。

結局のところ、調査方法に問題があったかどうかをはっきり言うことは難しいです。しかし、イプソスの調査で報告された中国の幸福度の高さは、いくつかの疑問を投げかけています。中国の幸福度の本質を理解し、他国の幸福度と比較するためには、さらなる調査が必要でしょう。

以下は、調査手法の問題点に関する補足的な考察です。

調査はオンラインで行われたため、回答者がより若く、より高学歴に偏っている可能性があります。

調査が中国語に翻訳されたため、誤訳や誤解が生じた可能性があります。

回答者が否定的な感情を表明しにくい方法で調査が行われた可能性があります。

また、イプソスの調査は1つの調査に過ぎず、他の調査では異なる結果が出た可能性があることに注意することも重要である。中国の幸福度をより深く理解するためには、さらなる調査が必要です。

ただ、国民の多くが幸福感を感じているような国では、海外に旅行にでかけることはあっても、海外に移住することはないもの考えられます。しかし、中国人の海外移住は最近加速しています。

国連によると、2020年時点で海外に住む中国人は推定1050万人。この数は近年増加傾向にあり、今後も増え続けると予想されています。

海外に移住する中国人富裕層の数は、その多くが合法・非合法を問わず移住しているため、推計するのは難しいです。しかし、毎年数万人の中国人富裕層が海外に移住していると推定されています。

海外に移住している低所得の中国人の数も見積もるのは難しいですが、毎年数十万人の低所得の中国人が海外に移住していると推定されます。

以下は、中国人の海外移住先として人気のある国々です。
  • アメリカ
  • カナダ
  • オーストラリア
  • ニュージーランド
  • イギリス
  • シンガポール
  • 香港
  • 台湾
  • タイ
中国からの移民がこれらの国を選ぶ理由は様々ですが、最も一般的な理由には以下のようなものがあります。

①経済的機会、②政治的自由、③教育の機会、④生活の質、⑤家族の再統合

最近、富裕層と低所得層の中国人の海外移住が加速しているのには、いくつかの要因があります。

締め出しや渡航制限を広げた中国政府のゼロCOVID政策は、多くの中国人にとって中国での生活や就労を困難なものにしています。

中国のゼロコロナ政策で閉じ込められた人々 AI生成画像

中国における貧富の差の拡大が、多くの中国人、特に生活苦にあえぐ人々の不満やフラストレーションにつながっています。

中国では言論や表現の自由に対する規制が強まっており、多くの中国人は自国ではもはや自由に自分を表現できないと感じるようになっています。

公害、交通渋滞、その他の問題の増加に見られるように、中国における生活の質の低下が認識されています。

こうした要因の結果、多くの中国人がより良い生活を求めて海外に移住しようとしています。裕福な中国人にとっては、経済が発展し生活水準の高い国への移住を意味することが多いてす。低所得の中国人にとっては、生活費が安く、より多くのチャンスがある発展途上国への移住を意味することが多いです。

中国人の海外移住の加速は、今後数年間、中国の経済と社会に大きな影響を与える可能性が高いです。人材やスキルの喪失は中国の経済成長に悪影響を及ぼしかねないし、海外に住む中国人の増加は政府の国民管理に対する挑戦となりかねないです。

そうして、その中でも中国政府が、もっとも悪影響があるとみていると考えられるのが、資産の海外逃避です。中国人が海外移住ということになれば、特に富裕層は、当然資産を海外に移すことが考えられます。

パリに移住した中国人一家が自宅のプールでくつろいでいる(AI)生成

毎年中国から海外に流出する資産額を推計するのは難しい。しかし、いくつかの推計がなされており、その推計によれば、資産フライトの額は相当なものです。

調査会社のロジウム・グループによる推計のひとつによると、2020年の中国からの資本逃避額は1200億ドルに上る。この試算は、対外投資フローに関するデータと、金融機関や弁護士からの逸話的証拠に基づいています。

中国社会科学院による別の推計では、2020年の中国からの資本逃避額は3,000億ドルです。この推計は、中国国民による海外資産の購入に関するデータや、中国国民によるオフショア金融センターの利用に関するデータなど、より広範なデータに基づいています。

重要なのは、これらの推計はあくまでも推計に過ぎないということです。報告されていない資本逃避がかなりあるため、中国からの資産逃避の実際の額は、これらの推計値よりも高くなる可能性が高いです。

中国からの資産逃避の理由は複雑ですが、最も一般的な理由には以下のようなものがあります。
  • 政情不安への懸念
  • 政府による収用から資産を守りたいから
  • 海外により良い投資機会を得たい
  • 海外で子供により良い教育を受けさせたい
中国からの資産逃避は、中国経済に多くの悪影響を及ぼすため、重要な問題です。資本逃避の損失は経済成長の低下につながり、中国の通貨価値の下落にもつながります。中国政府は資産逃避の流れを食い止めようとさまざまな措置を講じてきましたが、その成果は限定的でした。中国からの資産逃避は今後も続くでしょう。



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2023年6月24日土曜日

中国、地方政府の「隠れ債務」明らかにする全国調査開始-関係者―【私の論評】LGFV問題は、一筋縄ではいかない、中国こそ抜本的構造改革が必須(゚д゚)!

中国、地方政府の「隠れ債務」明らかにする全国調査開始-関係者

 中国当局は、地方政府の債務を把握するため、新たな全国調査を開始した。調査は少なくとも5月から始まっており、財政省が主導している。調査の目的は、政府の全レベルの債務をより正確に把握し、いわゆる「隠れ債務」の公表を余儀なくさせることだ。調査の結果を受けて、当局は債務問題に対処するための具体的な措置を講じるとみられる。

 中国の地方政府の多くは、公的予算では賄いきれないインフラなどのサービスのために「地方融資平台」(LGFV)と呼ばれる事業体を使って資金調達を行っている。地方融資平台は地方当局の管理下にあるが、公式には政府の一部でないため、その債務は公式のバランスシートに記載されず、地方財政が実際よりも良好な状態にあるように見えるという事情がある。

 当局は、地方融資平台の債務を含めた地方政府の債務を正確に把握することで、債務問題の根本的な原因を突き止め、効果的な解決策を講じることができると期待している。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】LGFV問題は、一筋縄ではいかない、中国こそ抜本的構造改革が必須(゚д゚)!

上の記事にでてくる、LGFVは通常、有限責任会社として設立され、多くの場合、持株会社を通じて地方自治体が管理します。

債券の発行、融資、資産の売却など、様々な方法で資金を調達することができます。道路、橋、発電所などのインフラ・プロジェクトの資金調達によく利用されます。また、教育や医療といった社会サービスの資金調達にも利用されます。

中国の鬼城と呼ばれる、人の住まない住宅は、主にLGFVの資金で地方政府が建設した

たしかに中国の多くの地方政府は、LGFVを通じてインフラやその他のサービスに資金を調達しており、LGFVは公式には政府の一部ではないため、その債務は公式のバランスシートには記載されません。このため、地方財政は実際よりも良好に見えます。

例えば、2020年には、LGFVの負債総額は約54兆元(8.2兆米ドル)になると推定されていました。ところが、地方政府の公式債務は約25兆元(3.8兆米ドル)に過ぎませんでした。つまり、地方政府の債務の本当の水準は、公式に報告されているものよりもはるかに高いのです。

中国では近年、インフラやその他のサービスの資金調達にLGFVを利用することがますます一般的になっています。これは、地方政府が経済成長目標の達成を迫られているにもかかわらず、従来の方法ではそのための歳入を確保できなかったためです。LGFVは、地方政府が政府借入の正式な承認手続きを経ずに資金を調達する方法を提供してきました。

しかし、LGFVの利用は、地方財政の持続可能性に対する懸念にもつながっています。LGFVは多額の負債を抱えていることが多く、採算の合わないプロジェクトの資金調達に使われることも多いです。これは、LGFVが債務不履行に陥るリスクがあることを意味し、地方政府の財政健全性に悪影響を及ぼす可能性があります。

2021年、中国政府は地方政府の債務問題に対処するための多くの措置を発表しました。これらの措置には、LGFVが発行できる債務額を制限することや、LGFVの債務について地方政府が責任を負うことを義務付けることなどが含まれていました。しかし、これらの措置が地方政府の債務残高を減らすのに効果的かどうかはまだわからないです。

中国における地方政府金融公社(LGFV)の多額の債務は、政府が対処すべき深刻な問題です。この問題は1990年代の日本の不良債権問題と似ていますが、中国特有の課題もあります。

不良債権問題で倒産した直後の北海道拓殖銀行本店の建物、看板が撤去されている

そのひとつは、債務の実態が十分に把握されていないことです。LGFVはその財務について透明性を欠くことが多く、政府も債務負担の全体像を明確に把握できていません。このため、効果的な解決策を打ち出すことが難しいです。

もうひとつの課題は、中国経済が減速しているため、地方政府が歳入を確保するのが難しくなっていることです。つまり、支出を賄うための借金への依存度が高くなり、問題を悪化させているのです。

中国政府がLGFVの高債務問題に対処する方法はいくつかあります。ひとつは、LGFVの透明性と開示要件を高めることです。そうすれば、債務問題の実態がより明確になり、投資家もリスクを評価しやすくなります。

もうひとつは、地方自治体への財政支援です。補助金や融資を提供することもできるし、債務負担の一部を肩代わりすることもできます。そうすることで、地方自治体の負担を軽減し、債務の返済を容易にすることができます。

最後に、政府は経済成長を刺激することもできます。そうすれば地方自治体の歳入が増え、債務の返済が容易になります。

最善の解決策は、おそらくこれらの対策を組み合わせたものになるでしょう。成功させるためには、政府はこの問題に対して包括的なアプローチをとる必要があります。

LGFVの債務問題が解決できなければ、以下のような深刻な結果を招く可能性があります。

金融危機: LGFVが債務不履行に陥った場合、金融危機につながる可能性があります。これは、投資家がLGFVの債務返済能力に対する信頼を失ったり、流動性への需要が急激に高まったりした場合に起こり得ます。金融危機は、経済活動の急激な落ち込みや中国政府への信頼喪失につながる可能性があります。
経済成長の減速: LGFVの債務問題はすでに中国経済を圧迫しています。この問題が解決されなければ、経済成長の鈍化につながる可能性があります。これは、地方政府が支出削減を余儀なくされたり、投資が減少したりした場合に起こり得ます。経済成長の鈍化は、雇用の喪失や社会不安につながる可能性があります。
中国政府に対する信頼の失墜: 中国政府が債務問題を管理できないとみなされれば、政府に対する信頼が失われる可能性がある。その結果、政府の資金調達が困難になり、政情不安につながる可能性もあります。

ただ、中国にはこれらの問題を解消するための大きな障害があります。それは、中国人民銀行が独立した金融政策を実行できない状況にあるということです。

国際金融のトリレンマとは、ある国がいかの3つを同時に実行することはできす、2つしかできないという、事実です。これは、経験則ても数学的にも確かめられています。
  • 固定為替レート
  • 自由な資本移動
  • 独立した金融政策
中国は固定為替レートと自由な資本移動を実施しています。そのため、中国は独立した金融政策ができない状況になっています。つまり中国政府は、債務問題の軽減に役立つはずの外資を呼び込むために金利を引き上げることができないのです。

また、LGFVの負債問題を解消するために、公金を注入しようとして、仮に中国人民銀行(PBoC)が大規模な量的緩和政策を実施した場合、超インフレ、資産バブルのさらなる膨満、政府債務の増加、キャピタルフライトのさらなる深刻化などが予想されます。
日本では、変動為替レートを採用しており、自由な資本移動と独立した金融政策を実行できます。当時日銀が量的・質的緩和を大規模に実行、できるにもかかわらず、しなかったことが、不良債権問題をより深刻にしたわけですが、小泉政権のときにいっとき緩和に踏切り、2013年移行は緩和に転じており、様々な副作用はあったものの、不良債権問題は解消したといえます。

ただ、中国ではどうなるか不透明です。LGFVの利用は複雑な問題であり、様々な見方があります。LGFVは地方自治体が重要なプロジェクトの資金を調達するために必要な手段だと主張する人もいます。また、LGFVは政府支出を賄うためのリスキーな手段であり、財政危機を招きかねないという意見もあります。

LGFVの利用が今後どのようになっていくかはまだわからないです。ただ、これを解消するには、変動相場制に移行するなどの、大胆な構造改革が必要だと思われ、一筋縄ではいかないことは確かだと思われます。

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2023年6月23日金曜日

中国の「地方政府債務」再考―【私の論評】もう一つの中国の大問題、国際金融のトリレンマを克服すれば、中国の改革が始まるかもしれない(゚д゚)!

中国の「地方政府債務」再考

上海の目抜き通り AI生成

 中国の地方政府の債務は、2022年末時点で37.07兆元(約734兆3600億円)に達し、過去最高を記録しました。これは、中国のGDPの約25%に相当する金額です。地方政府の債務は、インフラ整備や公共事業の資金調達のために借り入れられたもので、そのほとんどが国有企業や金融機関からの借入です。地方政府の債務は、中国の経済成長を支える一方で、財政赤字の拡大や金融システムのリスク要因となっています。

 中国政府は、地方政府の債務を削減するために、財政支援や債務再編などの対策を講じていますが、効果は限定的です。地方政府の債務は、中国経済の大きなリスク要因であり、今後も注視が必要です。

以下は、中国の地方政府の債務に関する主なポイントです。
  • 中国の地方政府の債務は、2022年末時点で37.07兆元(約734兆3600億円)に達し、過去最高を記録した。
  • 地方政府の債務は、インフラ整備や公共事業の資金調達のために借り入れられたもので、そのほとんどが国有企業や金融機関からの借入である。
  • 地方政府の債務は、中国の経済成長を支える一方で、財政赤字の拡大や金融システムのリスク要因となっている。
  • 中国政府は、地方政府の債務を削減するために、財政支援や債務再編などの対策を講じているが、効果は限定的である。
  • 地方政府の債務は、中国経済の大きなリスク要因であり、今後も注視が必要である。
この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】もう一つの中国の大問題、国際金融のトリレンマを克服すれば、中国の改革が始まるかもしれない(゚д゚)!

中国人のツイッターで引用されていた日経の記事

中国で地方政府の借入が増えた要因はいくつかあります。それらは以下の通りです。

中央政府による財政分権政策:1990年代、中国政府は地方政府への財政権限の分散を開始しました。これにより、地方政府は自らの財政をよりコントロールできるようになりましたが、同時に地方政府は歳入を増やす必要に迫られました。地方政府が歳入を増やす方法のひとつに、借金があります。

インフラ整備のための資金調達の必要性:中国は近年、インフラ整備に多額の投資を行っています。そのため、地方政府がこれらのプロジェクトの資金を借り入れるため、地方政府の借入金が急増しました。

地方政府の歳入が減少していること:近年、経済成長の鈍化や租税回避行為の増加など、さまざまな要因で地方政府の歳入が減少しています。このため、地方自治体は歳入の不足を補うために、より多くの借金をせざるを得なくなっています。

国有企業(SOEs) :国有企業(SOE)は、地方政府が資金を借りる際によく利用されます。これは、国有企業が信用を得ることができ、地方政府よりもリスクが低いと見なされるためです。

金融機関:金融機関も地方政府に資金を貸し出します。これは、地方政府が安全な投資先とみなされるためです。

中国における地方政府の借り入れの増加は、多くの危機を生み出しています。以下にそれを列挙します。

金融危機のリスク:地方政府が借金を返せなくなった場合、金融危機につながる可能性があります。

経済成長の低下:地方政府の債務が増加すると、経済成長の低下につながる可能性があります。これは、地方自治体がインフラ整備などの支出を削減せざるを得なくなる可能性があるためです。

格差の拡大:地方政府の債務の増加は、不平等の増加につながる可能性があります。債務返済の負担が貧困層や中産階級に及ぶ可能性が高いからです。

近年、中国政府は債務負担を軽減しようとする措置を講じています。これらの措置は以下の通りです。

地方政府が債券を発行できるようにする:これにより、地方自治体はより持続可能な方法で資金を調達することができるようになります。

地方自治体の債務について、より多くの情報を開示する :これにより、透明性と説明責任を向上させることができます。

インフラプロジェクトの数を減らす :これにより、地方自治体の借金の必要性を減らすことができます。

中国政府が地方政府の債務負担を減らすことに成功するかどうかは、まだまったく見通しが効かない状況です。


中国のインフラ開発投資は、地方政府のインフラ開発計画で予測することができます。現在のインフラ計画は昨年対比で減っており、昨年の積み残しを消化した後は減速基調に入る可能性が高いでしょう。

中国の地方政府が財政破綻した場合、中国経済に大きな影響を与えることになります。地方政府がインフラ整備などの支出を削減せざるを得なくなり、経済成長の低下につながる可能性が高いです。また、中国政府の債務返済能力に対する投資家の信頼が失われ、金融危機に発展する可能性もあります。

このブログで以前から掲載しているように、現在中国は国際金融のトリレンマにより独立した金融政策が実施できない状況になっています。これは、政府による危機管理をより困難にします。中央銀行は金利や量的緩和などの金融政策ツールを使って、経済を刺激したり、インフレを防いだりすることができなくなります。そうなれば、金融崩壊による被害を抑えることがより難しくなります。

地方政府の財政破綻が中国経済に与える影響は、破綻の規模や展開のスピード、政府の対応など、さまざまな要因によって異なるでしょう。しかし、そのような破綻が中国経済に大きな負の影響を与えることは明らかです。

ここでは、中国の地方政府の財政破綻が中国経済に与える具体的な影響について掲載します。

経済成長率の低下 経済成長の低下:中国では、地方政府が多額の支出を担っている。地方政府が破綻した場合、この支出は減少し、経済成長の低下につながります。

失業率の上昇: 地方政府は、中国の雇用の大部分を担っています。もし地方政府が崩壊すれば、失業率の上昇につながります。

個人消費の減少: 中国の財政が不安定になれば、消費者は支出を減らすでしょう。そうなれば、経済成長はさらに鈍化することになります。

インフレ率の上昇: 政府は地方政府を救済するために大規模な金融緩和策を余儀なくされるかもしれません。これはマネーストックを増加させ、インフレを引き起こすでしょう。

金融危機: 地方政府の財政破綻が中国政府の信頼失墜につながれば、金融危機が引き起こされる可能性があります。これは、中国経済に大きな悪影響を及ぼすでしょう。

中国政府は、地方政府の財政破綻に伴うリスクを認識しています。近年、政府は地方政府の債務負担を軽減しようとする措置を講じています。しかし、これらの措置が破綻を防ぐのに十分であるかどうかは、まだわかりません。

何と言っても、中国人民銀行が独立した金融政策を実施できないことが痛いです。これを改善するには、このブログにも何回か掲載したように、人民元を固定相場制から変動相場制に移行すれば、国際金融のトリレンマから逃れ、独立した金融政策ができるようになります。

中国が人民元を固定相場制から変動相場制に移行させない理由はいくつかあります。

資本流出のリスク:人民元が変動すると、投資家が人民元を売却して他の通貨を購入するリスクがある。その結果、人民元が急落し、中国の輸出企業に打撃を与える可能性があります。

輸出競争力の維持の必要性:中国の輸出志向の経済は、安定した為替レートに依存しています。もし人民元が変動すれば、中国の輸出品が割高になり、輸出の伸びを阻害する可能性があります。

インフレ抑制の欲求:中国政府は、インフレを抑制したいという強い願望を持っています。為替レートが変動すれば、マネーストックをコントロールできなくなるため、政府がインフレをコントロールすることが難しくなります。

金融の安定を維持する必要性:変動相場制は、政府が通貨市場を管理することが難しくなるため、金融の不安定化を招く恐れがあります。

中国政府は、変動相場制の利点を認識しています。しかし、政府は変動相場制のリスクがメリットを上回ると考えているようです。その結果、政府は近い将来、人民元を固定相場制から変動相場制に移行させる可能性は低いです。

上記の理由に加えて、中国が変動相場制に移行することを妨げている政治的な考慮もあります。例えば、中国政府は、変動相場制を導入すると、国内外への資本の流入流出をコントロールすることが難しくなることを懸念している可能性があります。これは、政府が経済成長を管理し、社会の安定を維持する能力に影響を与える可能性があります。

結局のところ、変動相場制に移行するかどうかの判断は、複雑なものではあります。中国政府が決断を下す前に考慮しなければならない要素はいくつもあります。しかし、独立した金融政策が実施できなければ、結局、金融だけではなく財政もコントロールできなくなります。

そうなれば、中央政府は何もコントロールできなくなり、ただ漂流するしかなくなります。そうして、経済が落ち込み、数十年前の毛沢東時代の水準に戻ることになりかねません。

日本を始めとする、西側諸国も、固定相場制から変動相場制に移行を決断しなければならい時がありました。様々な問題がありつつも、将来のことを考え移行したのです。中国もまさにそのときです。変動相場制に移行すれば、様々な問題がおこることが考えれますが、それをせずに毛沢東時代の経済に戻るのとどちらが良いかという習近平による選択の問題になります。


変動相場制に移行するためには、それだけではなく様々な改革をしなければならなくなります。中国の改革は、意外とこうしたところから始まるかもしれません。

しかし、今までのように固定相場制を維持するなら、中国経済はいずれ毛沢東時代の水準に戻り、中国は図体が大きいだけの他国に影響力を及ぼせないアジアの凡庸な専制国家の一つに成り果てることなるでしょう。

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2023年6月22日木曜日

ゼレンスキー氏「欧州で何十年も成長の源になる」と協力呼びかけ…ウクライナ復興会議が開幕―【私の論評】ウクライナは、ロシアとの戦いだけではなく、国内でも腐敗・汚職との戦いに勝利を収めるべき(゚д゚)!

ゼレンスキー氏「欧州で何十年も成長の源になる」と協力呼びかけ…ウクライナ復興会議が開幕


 ロシアの侵略を受けるウクライナの復興を話し合う「ウクライナ復興会議」が21日、2日間の日程でロンドンで開幕した。61か国の政府や民間の代表、世界銀行や欧州連合(EU)など国際機関の代表ら1000人以上が参加。巨額の復興費用の調達や、戦闘終結を待たずに経済を活性化させる方法などが議題となる。

 復興会議の開催は昨年7月にスイスで開かれて以来で、今年は英国とウクライナが共催した。初日は日本の林外相を含む各国の首脳・外相級が演説。スナク英首相はウクライナに3年間で30億ドル(約4200億円)の融資保証を発表し、ブリンケン米国務長官は13億ドル(約1800億円)以上の追加支援を約束した。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はオンラインで演説し、「ウクライナは欧州で何十年にもわたって経済、産業、技術の成長の源となるだろう」と述べ、協力を求めた。世銀の試算では復興費用は4110億ドル(約58兆円)に上り、経済基盤の再構築も求められる。英政府によると、会議を通じ、米シティグループ、英ヴァージングループなどの大手企業が復興への協力を表明する。

【私の論評】ウクライナは、ロシアとの戦いだけではなく、国内でも腐敗・汚職との戦いに勝利を収めるべき(゚д゚)!

ウクライナ戦争が終結すると、戦後のウクライナが急速な経済発展を遂げる可能性を裏付けるいくつかの事実があります。

ウクライナ戦争が終わり、経済発展で幸せになった人々 AI生成画像

まずは、他の途上国と比較すれば、かなり発達した産業基盤があることがあげられます。

農業:ウクライナは主要な農業生産国で、小麦、トウモロコシ、ヒマワリ油の産地として知られています。2021年、ウクライナは278億ドル相当の農産物を輸出し、世界第10位の農産物輸出国となりました。

 製造業: 鉄鋼、機械、化学製品などの製造業が盛ん。2021年、ウクライナは143億ドル相当の製造品を輸出し、世界第47位の製造品輸出国となった。

航空宇宙産業:ウクライナは宇宙産業で実績があり、戦争前まではロシアに部品を供給していました。また、航空産業でも実績があり、世界最大航空機An-225「ムリヤ」はソ連時代のウクライナで製造されたものです。

IT:ウクライナはITセクターが成長しており、多くのハイテク新興企業が進出しています。2021年、ウクライナのITセクターは68億ドルの収益を上げました。

ウクライナには優れた学術の長い歴史があり、その大学は世界的に高く評価されています。実際、ウクライナはQS世界大学ランキングで2022年、高等教育システムの質で世界40位にランクされました。

ウクライナ戦争の前までは、ウクライナは中国人学生にとって手頃な留学先になっていた程です。その背景を以下に述べます。

授業料:ウクライナの大学の授業料は、ヨーロッパの他の国に比べて比較的安いです。例えば、ウクライナの公立大学の1年間の平均授業料は約2,000ドルです。これは、米国の国公立大 学の1年間の平均授業料(約35,000ドル)よりもかなり低 いです。

生活費: ウクライナの生活費も、ヨーロッパの他の国々と比べると比較的低額です。ウクライナの学生の1ヶ月の平均生活費は約500ドルです。これには宿泊費、食費、交通費、その他の費用が含まれます。

奨学金: ウクライナへの留学を希望する中国人学生には、数多くの奨学金が用意されています。これらの奨学金は、授業料、生活費、旅費までカバーすることができます。

こうしたことから、ウクライナは留学を希望する中国人学生に人気の留学先となっていました。戦争前の2021年には、2万人以上の中国人留学生がウクライナで学んでいました。

さらに、ウクライナの教育の質に関して掲載します。

ウクライナの教育制度はヨーロッパのボローニャ・プロセスに基づいており、ウクライナの大学の学位はヨーロッパ中の大学に認められています。

また、ウクライナの大学は、学部課程、大学院課程を含む幅広いコースを提供していますし、研究に力を入れており、教員 の多くは各分野で国際的に有名な専門家です。

ウクライナの大学で学ぶ学生 AI生成画

産業基盤を持ち、人口も四千万人台と、ヨーロッパの国々と比較すると多い方であり、さらに、ウクライナはヨーロッパとアジアの交差点に位置し、黒海とバルト海の両方にアクセスできます。

 こうしたことから、戦争が終結すれば、ウクライナは急速な経済発展を遂げる可能性を秘めています。ただし、戦争がウクライナ経済に与えたダメージは大きく、回復には時間がかかることに留意する必要があります。

一方ウクライナにおける、 汚職は長年にわたりウクライナの経済発展の大きな障害となってきました。トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数によると、ウクライナは2022年に180カ国中122位となり、世界で最も腐敗した国のひとつとなりました。これは、ロシアとあまり変わらない水準です。

ウクライナの腐敗には多くの例がりますが、代表的なものをいくつか挙げます。

贈収賄:贈収賄はウクライナで広く見られる問題です。例えば、企業は許認可を得るため、あるいは罰金や営業停止を避けるために役人に賄賂を贈らなければならない場合があります。

縁故主義:縁故主義もウクライナにおける大きな問題のひとつで、政府との契約やその他の利益を、その資格に関係なく友人や同盟国に与える慣行を指します。これは非効率と浪費を招き、新規事業の競争を困難にします。

脱税: ウクライナでは脱税が大きな問題となっており、政府は毎年数十億ドルの税収を失っていると推定されています。その結果、公共サービスのための資金が不足し、政府がインフラや経済発展に投資することも難しくなっています。

汚職はウクライナ経済に多くの悪影響を及ぼしています。外国からの投資を抑制し、企業の経営を困難にし、政府に対する国民の信頼を失墜させました。その結果、ウクライナはその経済的潜在力を十分に発揮できずにいます。

ウクライナの汚職・腐敗 AIイメージ画像

近年、ウクライナ政府は汚職に対処するために一定の措置を講じていますが、まだ道のりは長いようです。政府は汚職の取り締まりを継続し、より透明性が高く、説明責任を果たせる政府システムを構築する必要があります。そうして初めて、ウクライナはその経済的潜在力をフルに発揮できるようになるでしょう。

ウクライナは戦争を終わらせるだけではなく、国内でのこうした深刻な腐敗・汚職を撲滅する必要があります。もしそれができなければ、EUには加盟できないでしょうし、NATOへの加入もできなくなるかもしれません。TPPに加入の意思を示しているようですが、これもできなくなる可能性もあります。

当初はウクライナに好意的で、多額の投資をしようとしていた、各国政府や民間企業なども、投資をしなくなり、ウクライナへの投資をためらうようになるかもしれません。

ウクライナは、ロシアとの戦いだけではなく、国内でも腐敗・汚職との戦いに勝利を収めていただきたいものです。

そうすれば、ロシアの西隣に、経済発展した国、経済に裏打ちされた軍事大国ができあがることになり、経済的にも安全保障的にも良い結果を生むことになります。

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2023年6月21日水曜日

岸田政権の「少子化対策」は成功するのか さすがにまずい保険料上乗せ、国債を財源とするのが筋 扶養控除見直しは政策効果を損なう―【私の論評】新たな未来を築き、ハイリターンが期待される「子ども」や「若者」対する投資は、国債を用いるべき(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」
岸田政権の「少子化対策」は成功するのか さすがにまずい保険料上乗せ、国債を財源とするのが筋 扶養控除見直しは政策効果を損なう


 岸田文雄政権の少子化対策には、児童手当の拡大、出産費用の保険適用、育休給付率の引き上げなどが含まれている。

 少子化の逆転に期待されているが、少子化対策は難しく、他の国の政策を参考にしながら効果的な手法を模索している。

 先進国では、所得制限のない一定額の児童手当と税控除の組み合わせが一般的であり、一般財源から資金が提供されることが通例となっている。

 しかし、岸田政権の少子化対策では、「こども金庫」という特別会計を使用することが提案されている。これには育児休業給付などが含まれており、保険とは言えないため、別の特別会計に組み込む必要があるとされている。

 しかし、特別会計の財源として社会保険料の増額は問題視されており、実質的に保険料の引き上げになってしまう可能性がある。

 代わりに、特別会計に国債発行機能を持たせることで、少子化対策に対する投資として国債を利用するべきだとの意見もある。

 ただし、効果が高く確実な投資に限定する必要があり、扶養控除の見直しや縮小は政策効果を損なう可能性があり、先進国の税控除が少子化対策の主流となっている現状とも一致しないと指摘されている。

 児童手当で所得制限をなくすとともに、扶養控除を見直すとどうなるか。一般的には児童手当が定額なのに対し、扶養控除の見直しは高額所得者には不利に働くので、一定所得以上の人はネットでマイナスになる。全体としてみると、政策効果をかなり損ない、本来の少子化・子育て支援には程遠いだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】新たな未来を築きハイリターンが期待される「子ども」や「若者」対する投資は、国債を用いるべき(゚д゚)!

扶養控除の廃止はかなり評判が悪いです。以下にそれに関する金子洋一氏のツイートをあげておまきます。

先進国における少子化対策は、扶養控除が大きな役割を果たしています。ただ、これが本当に少子化対策になっているかは未知です。

扶養控除(Dependent Care Tax Credit、DCTC)とは、保育料(養育費)を支払った納税者が請求できる税額控除です。この税額控除は、働いている親も専業主婦の親も利用でき、13歳未満の子供の保育料を相殺するために使うことができます。

DCTCは出生率に悪影響を与えるという批判もあります。その論拠は、DCTCがあることで親が働きやすくなり、少子化につながるというものです。例えば、全米経済研究所(National Bureau of Economic Research)の調査によると、DCTCは米国の既婚女性の出生率の低下と関連しています。

しかし、DCTCは出生率に影響を与える要因のひとつに過ぎないことに注意することが重要でです。生活費、保育の利用可能性、子供を持つことの社会的受容性など、他の要因も一役買っていると考えられます。

以下は、DCTCが出生率に及ぼす潜在的な悪影響について論じたソースの一例です。
「扶養控除と出生率」Jane Waldfogel (2009)
この研究は、DCTCが米国の既婚女性の出生率の低下と関連していることを明らかにしました。また、DCTCはすでに働いている女性の出生率を下げるのに特に効果的であったとされています。

ただ、この研究は、このテーマに関する研究の1つに過ぎず、DCTCが出生率に与える影響を完全に理解するためには、さらなる研究が必要であることに注意することが重要です。しかし、この研究は、DCTCが出生率にマイナスの影響を与える可能性を示唆しており、政策立案者が出生促進政策を立案する際に考慮すべきことです。

ただし、先進国の多くの国々において、扶養控除が少子化対策として用いられているのは事実です。

カナダ政府は養育費を支払った納税者が請求できる養育費控除(CCED)と呼ばれる税額控除を提供しています。CCEDは米国のDCTCに類似しており、カナダの出生率向上に役立っていると評価されています。

フランス政府は、Allocation de garde d'enfant(AGPE)と呼ばれる税額控除を提供しています。APGEはカナダのCCEDよりも手厚く、フランスを世界で最も家族思いの国にした一因と評価されている。

ドイツ政府はKindergeldと呼ばれる税額控除を提供しています。これは、18歳未満の子供がいる家庭に毎月支給されているものです。

イタリア政府はAssegno al nucleo familiare (ANF)と呼ばれる税額控除を提供しています。ANFはミーンズ・テスト制を採用しているため、所得の低い家庭しか利用できません。

英国政府は保育税額控除(Childcare Tax Credit)と呼ばれる税額控除を提供しています。育児税額控除は米国のDCTCに似ており、英国の出生率向上に貢献していると評価されています。

これらの国が少子化対策として行っている政策は、扶養控除だけではないことに注意する必要があります。その他の政策としては、有給育児休暇、養育費、家族に優しい職場などがある。しかし、扶養控除は、親が子供を持つことをより安価にするのに役立つ重要な政策であります。

上記の情報の出典は以下の通りです。
「扶養控除と出生率」ジェーン・ウォルドフォーゲル(2009年)
「養育費控除」(カナダ歳入庁)
「L'Allocation de garde d'enfant」(サービス・パブリック)
Kindergeld" (Bundesamt für Finanzen) "幼稚園税" (Bundesamt für Finanzen)
「家族手当」(INPS)
「育児税額控除」(歳入関税庁)
扶養控除が、本当に少子化対策に役立っているかどうかは、なんとも言えないところがあります。扶養控除に限らす、様々な少子化対策が功を奏していないことが明らかになりつつあります。これについては、以前このブログでも述べたことがあります。

G7での中では、少子化対策がうまくいっていると言われてきたフランスでさえも、最近は少子化が進んでいます。フランスの出生率は長年低下し続けており、現在は女性一人当たりの出生数が1.848人と過去最低を記録しています。つまり、フランス人女性の平均出産数は2人以下ということなのです。

無論、フランス政府も様々な手を打ってはいますが、うまくはいっていません。そもそも、「少子化の原因」に関しては、これだと言い切れる決定打がないのが現実です。

それでも、なぜ多くの国々が「こども」に投資をするかといえば、やはりリターンが大きいからでしょう。

引用記事の中でも述べましたが、政府の子どもへの投資がハイリターンであるという主張を支持する多くの情報源は多々あります。

だからこそ、多くの国々で、「少子化」に効果は薄いとされながらも、政府が様々な「子ども」に対する投資を行っているのでしょう。「少子化」に効果があるかどうかは分からなくても、「ハイリターン」ということでは、効果が高く確実な投資を積極的に行うべきでないでしょうか。

「子ども」や「若者」に対する政府による投資はハイリターンであることが知られている

「子ども」に限らず、もっと大きな、若者に対する投資もハイリターンであることが知られています。

「子ども」が平等にスタートを切ることができるように、支援し、さらに努力して高等教育にふさわしい学力をつけた若者には、教育投資をして、家庭の経済的都合等により、高等教育を受ける資格が十分にもあるにもかかわらず、受けられない若者を支援するなどのことも考えられます。

子どもたちが、基礎的な体力や学力を身に着けられれば、子どもたちが大人になって優れた働き手となって富を生み出すことになります。さらに、高等教育を受けた若者は、日本の未来を変える研究や貢献をしてくれることになります。

そうして、このようなハイリターン投資には、当然のことながら国債を用いるべきです。増税してしまえば、それこそ子育てにも支障が出かねないので本末転倒ですし、まだ需給ギャップがあるとみられる日本経済にとっても大きなマイナスになります。それにすでに支給されている扶養控除をカットするというのも、マイナスです。

扶養控除が少子化対策にあまり効き目がないかもしれないという情報は、財務省が扶養控除をカットするために用いようとするかもしれません。しかし、これには、多くの国々が未だに扶養控除を行っていること、そうして「少子化」に役立っているか否かは別にして、子ども投資はハイリターンであることから実施しているとみられることを主張して、財務省の目論見をくじくべきです。

ただ、そうなると、少子化対策はどうなるの、という考えもあるでしょうが、これは引用記事にもあげたように、AIとロボット化により少子化の弊害を取り除くことで解決できるはずです。

具体的なアイデアをいくつか挙げてみます。

AIやロボットを使って、現在人間が行っている作業を自動化します。これにより、人間の労働者はより創造的で戦略的な業務に専念できるようになる可能性があります。

また、ある業務を遂行するのに必要な労働者の数を単純に減らすこともできます。例えば、AIを搭載したロボットが、部品の組み立てや溶接など、製造業における繰り返し作業を行うことができます。これにより、人間の労働者は新製品の設計や生産ラインの管理など、より複雑な作業に集中できるようになります。


高齢者の介護にAIやロボットを活用します。高齢の親族を介護する家族の負担を軽減し、高齢者が必要なケアを受けられるようにすることができます。

例えば、AIを搭載したロボットは、高齢者の自宅での付き添いや介助に利用できます。また、高齢者の健康状態を監視し、何か問題があれば早期に警告を発するために使用することもできます。

さらに、AIやロボットを活用して新たな雇用を創出することもできます。AIやロボットの普及が進めば、これらの技術の開発、製造、メンテナンスに関わる新たな雇用が創出されます。例えば、新しいAIアルゴリズムを開発する人、ロボットを設計・製造する人、ロボットを保守・修理する人などが必要とされるでしょう。

AIを使って、子どもから大人まで使える新しい教育方法を開発します。これにより、年齢や場所に関係なく、誰もが質の高い教育を受けられるようになります。

AIを活用して、あらゆる年齢の人々の生活の質を向上させる新しいヘルスケア技術を開発します。これには、新薬や治療法の開発、病気の新しい診断・管理方法などが含まれます。

AIを使って、人々の移動を容易にする新しい交通技術を開発します。これには、自動運転車やバスの開発、交通渋滞を管理する新しい方法などが含まれます。

AI"Dream Studio"で生成された画像

これらは、日本の少子高齢化に対応するためにAIやロボットをどのように活用できるかというアイデアのほんの一部に過ぎません。これらの技術が発展し続けるにつれて、この課題に対処するための革新的な活用方法がさらに増えていくことが予想されます。

これらは、日本における少子高齢化がもたらす課題に対処するためにAIやロボットが利用できる方法のほんの一部に過ぎません。これらの技術が発展し続ければ、日本だけでなく世界中の人々の生活を向上させるために、さらに革新的な活用方法が登場することが期待されます。

これらの革新を行うのは、AIやロボットではなく、人です。子どもや青年に対する投資により、多くの人々がこのような変革に携わることができるようになっていれば、文字通りこの投資は、ハイリターンになっているはずです。

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