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岡崎研究所
ザカリアは、論説の冒頭で、バイデン大統領の次の言葉を引用した。「もしロシアにその行動に重い対価を払わせないならば、それは他の侵略国に彼らも領土を取得し、他国を従属させられるとのメッセージを送るだろう。それは他の平和的民主国の生き残りを危険にさらす。そしてそれは規則に基づく国際秩序の終りを意味し、世界全体に破局的結果をもたらす侵略行為に扉を開く」。
その上で、論説の最後の方で、今、最善の対中戦略はロシアをウクライナで敗北させることであるとした。それは、ロシアを強く支持した習近平にとって、同盟国ロシアが敗北することは、自らの痛手ともなるからである。逆に、プーチンが生き残れば、習近平も、西側諸国は規則に基づく国際秩序を十分に守れなくなっていると思い、攻撃に出る危険も増すと述べる。
ザカリアの論説は、良く考えられた的を射た論説である。
ロシアのウクライナ戦争を失敗に終わらせること、ロシアがこの戦争で弱い国になってしまうことを確保することは、今後の世界情勢がどういうように発展していくかを決めると思われる。
中国は、米国を主敵と考え、対米関係で対抗的姿勢をとっており、ロシアのウクライナ戦争を非難していない。経済制裁によるロシアの苦境を和らげるように、欧州が輸入することをやめようとしている石油を買っている。
中国は、ロシアへの武器供与はしていないようであるが、それ以外には総じてロシアと協力的関係を維持している。習近平が個人的にもプーチンを支持しているからであろう。
ロシアの侵攻前、2月4日、北京五輪開会式の日に行われた習近平とプーチン会談で、プーチンがウクライナ侵攻計画を習近平に話したかどうかについては、断言できない。在ウクライナ・中国大使館は侵攻まで、首都から退避する措置を何らとらなかったからである。
求められる日本の不退転の姿勢
今はウクライナでのロシアの敗北は、中国に大きな影響を与える。
ザカリアがロシアのウクライナでの敗北を確実にすることが対中戦略上も決定的重要性を持つというのはその通りであろう。ロシアは衰退しているが、衰退する大国は危険でもあることを第一次世界大戦のオーストリア・ハンガリー帝国を例に指摘しているのもその通りだろう。
日本は、南を中国、北はロシアと国境を接している。かつて安倍晋三政権時代、日本は、対中戦略において、ロシアと接近することも必要だとした。
それは、冷戦時代に米国が対ソビエト戦略において中国と接近したのと似ている。しかし、ウクライナへのロシアの侵攻や北朝鮮のミサイル発射に対する中露の協力的姿勢を目の前にした今日、もはや、そのやり方は通用しないことがわかった。
日本にとっては、より厳しい国際環境にあるが、自国の国防力を強化するとともに、日米同盟の緊密化、さらに価値観を共有する友好国と共に、より協力して行動することが必要だろう。
韓国の人口は、5178万ですから、一人あたりのGDPで韓国を多少上回ることで、ウクライナのGDPはロシアを上回ることになります。
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G20の状況をまとめると、高所得国はもともとG7諸国とオーストラリアであった。それに1万ドルの壁を破った韓国、サウジ。残りは中所得国で、1万ドルの壁に跳ね返されたアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコの6ヶ国、まだそれに至らないインドとインドネシア。それに1万ドルになったと思われる中国だ。
さらに、世界銀行のデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、上の民主主義指数を組み合わせてみると、面白い。中所得国の罠がきちんとデータにでている。
民主主義指数が6程度以下の国・地域は、一人当たりGDPは1万ドルにほとんど達しない。ただし、その例外が10ヶ国ある。その内訳は、カタール、UAEなどの産油国8ヶ国と、シンガポールと香港だ。現状のロシアの一人あたりのGDPは、中国と同程度の1万ドル前後です。中国の人口は14億人で丁度ロシアの人口の十倍なので、国単位では中国のGDPはロシアの十倍になっていますが、両国とも、バルト三国や台湾よりも一人あたりのGDPは低いのです。
ここでシンガポールと香港の民主主義指数はそれぞれ、6.03と5.57だ。民主主義指数6というのは、メキシコなどと同じ程度で、民主主義国としてはギリギリだ。
もっとも、民主主義指数6を超えると、一人当たりGDPは民主主義度に応じて伸びる。一人当たりGDPが1万ドル超の国で、一人当たりGDPと民主主義指数の相関係数は0.71と高い。
さて、中国の一人当たりGDPはようやく1万ドル程度になったので、これからどうなるか。中国の民主主義指数は2.27なので、6にはほど遠く、今の程度のGDPを20年間も維持できる確率はかなり低い。
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ロシアとの関係を断ち切りたいウクライナにとって、EU加盟で域内諸国との人、物、金の移動が自由になればメリットは大きいです。各国との通商がより活発になり、企業誘致やEUからの助成金も見込めます。外交上もロシアに対抗する後ろ盾ができ、国力の底上げにつながります。
ただ、今回の動きがロシアの侵略で大勢の命が失われた結果であることも忘れてはならないです。EU加盟には法の支配や人権など多くの項目でEU基準をクリアする必要があります。ウクライナは加盟に向けて国内法や規制を変更してきたが、それでも候補国になれていなかったのが実情です。
新興財閥(オリガルヒ)が政権と癒着する、裁判官や検察官の試験に賄賂で合格する、大学教授が授業の単位を金で売るなど、ウクライナは有数の汚職国家といわれてきました。
EU加盟は社会が変わるということです。汚職や腐敗体質が浸透しているウクライナは、急激な変化が生む負の側面も想定しておかなくてはならないです。
通常、加盟手続きには10年前後かかります。EUも1カ国を特別扱いするわけにいかず、他の候補国よりも先に加盟することはないです。道のりは長いですが、西側諸国の全面的支援もあります。焦らずに課題を着実に解決すれば加盟が早まる可能性もゼロではないです。