- 4月17日、慶應義塾大学の竹中平蔵氏と数量政策学者の髙橋洋一氏がラジオ番組に出演し、子ども・子育て支援法の改正案について議論した。
- 竹中氏は、この改正案が保険制度の目的外使用であり、隠れ増税につながると指摘した。また、野党がこの点を国会で追及しないことを疑問視した。
- 髙橋氏は、この支援金が本来の保険制度とは異なるものであり、法案自体に問題があると述べた。
- 番組司会者の質問に対し、髙橋氏は自動車保険の「偶発的なリスク」と子育て支援は全く異なると反論した。
- 今後の国会審議に注目が集まっている状況だと締めくくられた。
https://www.youtube.com/watch?v=ws8llLwliX0 |
この日の番組では、少子化対策を強化した子ども・子育て支援法の改正案について、前日の衆議院特別委員会での質疑が取り上げられました。
竹中氏は、この改正案が保険制度の目的外使用であり、隠れ増税になる可能性があると指摘しました。そして、なぜ野党がこの点を国会で追及しないのかを疑問視しました。野党だけでなく、与党の内部でもこの問題を認識している人がいるはずだと述べました。
一方の髙橋氏は、この支援金は本来の保険制度の枠組みから外れたものであり、保険の目的とは異なると批判しました。仮に国民の負担が増えないのであれば、すぐにでも制度を改めるべきだと主張しました。
番組司会者が、自動車保険の例を挙げて質問を重ねると、髙橋氏は、自動車保険の「偶発的なリスク」と子育て支援は全く異なるものだと明確に反論しました。
この議論を受けて、今後の国会審議に注目が集まっている状況だと締めくくられました。
- 「異次元の少子化対策」の財源について、当初の見積りより大幅に増加し、国民負担が大きくなることへの批判
- 理想の子ども数と実際の出生数のギャップを解消するため、政府が手厚い少子化対策を講じようとしているが、その方針には問題があるとの指摘
- 保険特別会計から子育て支援の財源を捻出しようとすることについて、本来の保険制度の目的と矛盾するため、事実上の隠れ増税になる可能性があるとの指摘
- 消費税の社会保障財源化と保険特別会計の流用は、財務省主導の既存制度の枠組みを利用した新たな財源確保の手段であり、国債発行を避ける意図が反映されているとの分析
- このような財務省主導の隠れ増税策を許容すると、複雑怪奇な税制・社会保障制度が構築され、透明性と理解が失われる可能性があるため、早期の十分な議論と国民合意が必要
加藤こども政策担当相 |
日本総研の2月14日の国民調査では、平均して理想の子ども数は2.25人と高い一方で、実際の出生数は減少傾向にあり、2023年は前年比4万人以上減の72.6万人、合計特殊出生率は1.20程度になる見通しです。
しかし近年の報告では、この政府の方針では少子化問題を解決できないという指摘がなされています。このブログにも従来手厚い少子化対策で成功してきたフランス、イスラエル、北欧などでも、少子化傾向にあり少子化には具体的な手立てはないと指摘してきました。
- 1950年以来すべての国で減少している世界の出生率は、今世紀末まで急落し続け、その結果、深刻な人口動態の変化が起こる。出生率は、1950年の4.84から2021年には2.23となり、2100年には1.59まで下がり続ける。
- 育児補助金、育児休暇の延長、税制優遇措置など、一部の国が実施している出産促進政策の効果も調べた。その結果、出産促進政策が実施された場合、女性1人当たりの出生数の増加は0.2人以下であり、強力で持続的な回復を示唆するものではなかった。
- 子育て支援政策は、他の理由からも社会にとって有益かもしれないが、現在の人口動態の変化の軌道を変えるものではない。
子ども・子育て支援法の改正案では、この支援制度の財源を社会保険の特別会計から拠出することが盛り込まれています。
竹中氏の指摘は以下のような意味合いです:
- 本来、社会保険制度は特定の偶発的なリスク(病気、事故など)に備えるためのものです。
- ところが、この改正案では保険制度の目的とは異なる子育て支援に保険財源を充てようとしている。
- これは保険制度の目的外使用であり、本来の保険料の使途とは異なるため、事実上の隠れ増税になる可能性がある、という趣旨です。
- 子育て支援は保険制度の対象とは本質的に異なるものである。
- したがって、保険特別会計から支援金を支出するのは適切ではなく、法案自体に問題がある、というのが高橋氏の主張です。
子育て支援のための財源を社会保険の特別会計から捻出することについて、保険制度本来の目的と異なるため、事実上の隠れ増税になる可能性があるという指摘があります。保険料を本来の目的以外に流用するのは適切ではないという指摘です。
さらに、国民の負担が大幅に増加する可能性についても、批判が強まっています。当初の300-500円程度の負担が、1000円を超える可能性があることが明らかになり、国民の反発を招いています。 経済的負担の増大は、少子化対策の目的に反する結果を招きかねません。
また、こうした大幅な国民負担の増加に対して、国会での十分な議論と国民合意が得られていないことも問題視されています。 少子化対策は重要な政策課題ですが、制度設計や財源措置については慎重な検討と理解が必要不可欠です。
「社会保障財源」:内閣府「経済財政白書」)。
この背景には、日本が先進国の中で唯一、消費税を社会保障目的税として位置づけていることがあります。一方で日本には歳入庁がなく、社会保険料の徴収が効率的に行われていないのが実情です。
本来は税と社会保険料の一体的な徴収体制を整備することが先決です。しかし、財務省の反対もあり、歳入庁の創設は容易ではありません。日本の社会保障制度には、根本的な制度設計の問題があるのです。
茶谷財務次官 |
国民の新たな負担増加を招く一方で、制度の信頼性を損なう可能性もあるこの動きは、財務省の国債発行忌避の姿勢が強く反映されているものと理解できます。
国民の負担増加を伴う一方で、制度の信頼性を損なうリスクもあることから、こうした財務省主導の動きは大問題です。
これらの動きを野放しにしておくと、財務省がさらに創造的な隠れ増税策を編み出していく可能性があります。既存の制度の枠組みを利用しながら、国民の負担を増やしていくような手法が増えていくかもしれません。
そうなると、全体としての税制や社会保障制度が非常に複雑化し、不透明になっていきます。国民にとっても、自分がどのような負担をしているのか把握するのが難しくなっていきます。
現状の特別会計のように、本来の制度目的とは関係ない資金が積み増しされ、財政全体が非常に複雑化していく危険性があります。結果として、財政の透明性が失われ、国民の理解や信頼を損なう可能性が高まるでしょう。
特別会計に金を溜め込む財務官僚 |
少子化対策の強化に向け、財源として「支援金制度」の創設を盛り込んだ子ども・子育て支援法などの改正案は、衆議院の特別委員会で、自民・公明両党の賛成多数で可決されました。改正案は19日、本会議で可決され、参議院に送られる見通しです。
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