「派閥解消」岸田首相には好都合の理由 総裁選再選視野、派閥という〝緩衝材〟抜きで議員の直接統制が可能に
- 自民党派閥のパーティー収入不記載事件は、安倍派、二階派、岸田派の3派閥で不記載額が合計約13億5000万円に上ったが、東京地検特捜部は幹部議員は立件を見送った。
- 岸田首相は、派閥の解消を言い出し、安倍派、二階派、岸田派が解散を表明した。
- 派閥の解消は、個々の議員を直接統制できるため、党執行部にとって都合がいい。
- 岸田首相は、今年9月の自民党総裁選での再選を視野に入れており、ライバルの台頭を阻止するために、派閥の解消を言い出した。
- 派閥の解消は、議員の集結阻止を目的とした「したたか」な政治手法である。
これを受け、安倍首相は自身の出身派閥である岸田派の解散を表明。これに二階派と安倍派が続いた。麻生派は派閥解散を見送る意向を表明し、茂木派と森山派は党の政治刷新本部の中間報告を踏まえて最終判断するとしている。
不記載事件は、派閥パーティー券の販売による多額の政治資金を、収支報告書に記載しなかったことだった。罰則を強化すれば、記載させるようにすることは可能だ。しかし、岸田首相は派閥の解散を言い出した。
その理由は、派閥が中間団体として、個々の議員を守り、人材を見いだして育て、人事の際には推薦する役割を担っているからだ。
全体主義社会は、個人を孤立させ、権力に従順にする。
エーリッヒ・フロムは、ナチス・ドイツの例から、全体主義社会は、個人が属する中間団体を解体することで、個人を孤立させ、権力に従順にさせると主張した。
派閥がなくなり、個々の議員が執行部に相対することになる。緩衝材がなくなった存在は執行部に逆らうことができない。小選挙区制も手伝って従順にならざるを得ない。
岸田首相は、今年9月の自民党総裁選での再選を視野に入れている。ライバルの台頭を阻止するために、派閥の解消を言い出したのだろう。
しかし、国民受けもする「派閥の解消」を言い出した本当の理由は、ライバルの台頭につながる「議員の集結阻止」にあるのだろう。したたかと言わざるを得ません。その能力を政策や外交に向けられないものか。
- 派閥解散により、議員は小選挙区制での重要な派閥支援を受けられず、執行部への従順が求められる状況が生まれた。
- 岸田首相は派閥解散を通じて自民党の執行部権力を強化し、競争相手の台頭を防ぐ戦略を展開した。
- 派閥解散は岸田首相にとって、総裁選において競争相手を有利に封じ込め、党執行部への忠誠心を示す手段となった。
- 派閥解消により、特に岸田派のライバルは派閥支援を失い、総裁選での成功の難しさが増加する。
- 財務省にとっては派閥解散が大きな脅威となり、財政政策において財務省の影響力が弱まる可能性が高い。
派閥が解散されると、議員は特に小選挙区制において重要だった派閥の支援を受けることができなくなります。これにより、議員は執行部に従順であることで、引き続き幹部議員や支援団体からの支援を維持しようとします。
小選挙区制では、各選挙区ごとに1人の議員が選出されます。そのため、議員は選挙区内の有権者からの支持を得るために、執行部の方針に沿った政策を採る必要があります。
派閥が存在する場合、派閥は議員の政治活動を支援し、選挙区内の有権者からの支持を獲得するための活動を補完します。そのため、派閥の意向に従った政策を提案することで、議員は選挙での成功の可能性を高めることができます。
しかし、派閥が解散されると、議員は派閥の支援を受けられなくなります。その結果、議員は執行部の方針に従わなければ、選挙での成功が難しくなります。
派閥の解散は、岸田政権における自民党の執行部の権力強化につながります。これにより、岸田首相は総裁選における競争相手の台頭を防ぐことができるでしょう。
特に、岸田首相が自ら属していた派閥である岸田派の解散は、総裁選において有利な状況を整える意味もあります。岸田首相の政治的手腕が発揮された一例として挙げられます。
林芳正氏など岸田派内のライバルは、派閥の支援を受けずに岸田派のネットワークを失うことになり、総裁選での競争が難しくなります。これにより、岸田首相は林氏を含む競争相手を有利に封じ込めることができます。
また、岸田首相は、自らの派閥である岸田派を解散することで、党執行部への忠誠心をアピールすることにもなります。岸田派は党内で有力な派閥であり、その解散は党執行部への忠誠心の象徴となります。
これらの政治的な思惑が複雑に絡み合い、派閥の解散が実現したと考えられます。
岸田首相はこれまでの政治舞台で、緻密な戦略を展開してきました。例えば、2021年の自民党総裁選では、宏池会所属の岸田首相が外交・安全保障政策で安倍派、麻生派等他の派閥からの支持を取り付け、最終的に勝利を収めました。
同様に、2022年の内閣改造では、岸田首相が安倍前首相や麻生副総裁の派閥から閣僚を多く起用することで、政権の安定を図りました。
派閥解散においても、岸田首相は政治的に有利な状況を作り出すことで、岸田派を解体し、党執行部への忠誠心を示すと同時に、競争相手を牽制しています。
ただし、この派閥解散は一時的なものであり、岸田首相もその限定性を理解しているでしょう。そのため、秋の総裁選に向けての有利な状況作りが一因と考えられます。
また、財務省にとっては派閥解散が大きな脅威となります。派閥は財務省の官僚と政治家の結びつきを支える手段であり、その解散によって官僚が政治家との直接的なつながりを失うことが予想されます。
これにより、財務省の官僚の政治家への影響力が弱まり、税制や財政政策などの政策決定において財務省が持つ権力が低下するでしょう。
具体的には、以下の点が財務省にとって脅威となります。
- 財務省の官僚の政治家への影響力が弱まる。
- 財務省出身の政治家の影響力が減少する。
- 財務省の官僚による政治家へのロビー活動が難しくなる。
- 財務省の官僚と政治家とのつながりを維持する新たな手段を模索する。
- 派閥解散を阻止するために、政治家に働きかける。
結果として、財務省の権力が弱体化し、国民の声がより政策に反映される可能性が高まります。
岸田首相は、財務省に対して近しいとされていますが、その一方で財務省の抵抗に怒りを感じている可能性は高いです。財務省が政策に対して押し切ることが続く中で、国民からの不満が高まっている中、岸田首相は政治主導の方針を貫くべきでしょう。
このような政治的な状況の中で、派閥解散は岸田首相にとって戦略的な一手であり、その結果が秋の総裁選に大きな影響を与える可能性もあります。
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