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2019年1月19日土曜日

TPP「拡大」打ち出して米国と中国を牽制―【私の論評】世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいる(゚д゚)!

TPP「拡大」打ち出して米国と中国を牽制


TPP協定発効記念式典で各国の関係者と談笑する安倍晋三首相
(中央右)と茂木敏充経済再生担当相(同左)=19日午後、首相官邸

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加11カ国が19日、新規加盟の拡大を目指すことで一致したのは、米中による貿易戦争が激化する中で、世界経済の先行きに不透明感が強まっているからだ。広い分野の関税撤廃と高水準のルールを共有する“仲間”を増やすことで、米国の保護主義的な動きや中国の不公正な貿易慣行を牽制(けんせい)する狙いだ。(大柳聡庸)

 現在、新規加盟に最も近いとされるのがタイ。近隣のベトナムに比べ農産品分野などで競争力が低下することに危機感を抱いているからだ。タイの加盟申請は総選挙後になるとみられる。2月末と想定されていた総選挙は延期の公算が大きいが、早ければ今年前半にも新規加盟に向けた交渉が始まる可能性がある。3月に欧州連合(EU)からの脱退を予定する英国も加盟に強い意欲を示す。

 TPPを離脱した米国の産品は関税が下がらず輸出競争力が低下するため、TPPに復帰を促す契機になる可能性がある。閣僚級会合で議長を務めた茂木敏充経済再生担当相は19日の記者会見で、「多くの国・地域の参加を期待している。米国も同様だ」と述べた。

 また、TPPは知的財産権の保護で模倣品などに対する厳格な規律をもうけるなど、高水準のルールを定めており、不公正な貿易慣行を続ける中国に対する抑止効果も期待できる。

 米中の貿易戦争は、中国による知財侵害に対し、米国が追加関税といった保護主義的な動きで対抗したのがきっかけだ。

 安倍晋三首相は会合で「不満が保護主義への誘惑を生み出し、国と国との間に激しい対立を生み出すが、私たちは時計の針を決して逆戻りさせてはならない」と述べ、米中の貿易戦争を念頭に、自由貿易体制の重要性を訴えた。

【私の論評】世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいる(゚д゚)!

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の発効後、初めて参加11か国の閣僚らが集まり、本日加盟国の拡大に向け共同声明を発表しました。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐっては、冒頭の記事にあるインドネシアやタイだけではなく、台湾、コロンビアといった国や地域が新規加盟に関心を示しています。「TPPは世界とアジア太平洋地域の経済・貿易の発展に重要な意義を持つ」(台湾)などと、新規メンバーの早期受け入れを求める声も上がっています。

中でも注目されるのが、3月末に欧州連合(EU)からの離脱を控える英国です。離脱後は、米国などEU以外の国々との貿易関係の強化が急務となりますが、メイ英政権は各国との自由貿易協定(FTA)締結に加え、TPPへの加盟に意欲を見せています。

英国メイ首相

フォックス国際貿易相は先月30日のTPP発効に際し、「(英国が)TPPに参加すれば、カナダや日本のような古くからの友人との強い経済的な結びつきを固めることになるだろう」とする声明を出しました。今月10日の日英首脳会談で安倍晋三首相は、英国がTPPに加盟意欲を示していることを歓迎しています。

加盟希望国に共通しているのは、巨大な経済圏内に入ることによる輸出拡大など経済的な恩恵への期待感です。また、TPPの枠内で新たな国際ルールの整備が進めば、自国が取り残されるという警戒感もあります。

一方、TPP加入の積極論と慎重論がせめぎ合っている国もあります。

「TPP参加で板挟みにある韓国」

韓国の英字紙、コリア・タイムズ(電子版)は今月上旬、同国でTPP参加の可否が割れていると報じました。

TPPに入らないことで加盟国と比べて貿易面で不利な立場に置かれる恐れがある一方、加盟すれば関税の引き下げで自動車など日本製品との激しい競争に国産製品がさらされるとの懸念を指摘。そのため韓国政府は「取引に積極的に参加すべきかどうか迷っている」のが現状だといいます。

TPPの最大の意義は、米国の保護主義的な動きや中国の不公正な貿易慣行を牽制(けんせい)できる可能性が大きいことです。これに関しては、以前のこのブロクにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
TPP12月30日発効 世界GDPの13%経済圏誕生へ―【私の論評】最終的にはTPPのルールを世界のルールに(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 トランプ大統領が「TPPは正しい考え方ではなく、我々は貿易でTPP以上の成果を得られる」とTPPを否定する理由は、関税自主権を行使して、中国などとの貿易不均衡を是正したいからです。昨年のアメリカの対中貿易赤字は3470億ドル(約40兆円)。これを関税などによって解消しようというのが、米国の対中貿易戦争です。 
「弱いアメリカ」がTPP参加国とともに中国経済に対抗する方針から、「強いアメリカ」として二国間交渉で中国に臨む方針に変わったということのようです。そうして、米国は実際に対中国貿易戦争を開始しました。これは、もうトランプ政権による貿易戦争の次元から、超党派の米国議会による経済冷戦の次元にまで高まっています。
昨年1月23日、トランプ米大統領は選挙公約通り、TPPからの正式離脱に関する大統領令に署名した

おそらく、中国の体制が変わるまで、かなり長い間、米国は対中国制裁をやめないどころか、あらゆる手段を講じて、中国を追い詰めるでしょう。 
中国は、アメリカを抜いて世界の覇権を握ることを目指していますが、まだ米国と全面対決できるほどの力はありません。 
米国が問題視している国際貿易機関(WTO)で規定されていない、知的財産権や技術移転要求については、日本は米国に協調できます。その手段として考えられるのがTPPの活用です。米国が中国に対して懸念していることのすべてはTPP協定でカバーしています。 
タイ、インドネシア、台湾、英国、コロンビアなどを加入させてTPPが拡大し、また米国がTPPに復帰するなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。そうなると、中国もTPPに参加せざるを得なくなります。その時、中国に知的財産権や投資についての高度な規定を課すことができます。努力すべきはTPP参加国の拡大です。 
ただし、中国はTPPに加入するということになれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化という構造改革を実施しなければなりません。これを実行しなければ、TPPには加入できません。 
この構造改革を実施することになれば、中国共産党は、統治の正当性を失うことになるでしょう。それは中共の崩壊を意味します。 
最悪、米国や中国がTPPに参加しない場合でも、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。 
TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国も反対できないでしょう。 
この段階まで来ると、中国は中共を解体してもTPP協定を含むWTOに入るか、中共を解体せず新WTOにも入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国が待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。
米国が中国に対して懸念していることの全てはTPP協定がカバーしています。これは、当然米国も理解しているでしょう。だから、TPPから脱退したトランプも、良い条件が得られるならという留保を付けたにせよ、TPPに復帰してもよいという発言をしたのでしょう。

タイ、インドネシア、韓国、台湾、イギリス、コロンビア等を加入させてTPPが拡大し、また、米国がTPPに復帰して来るなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。そうなると、中国もTPPに参加せざるを得なくなるか、参加せず(参加することは中国社会の構造改革をすることを意味する)に米国の制裁を受け続け経済的にかなり弱体化し他国に対する影響力を失うことになります。

農地の視察をする習近平(中央)

いずれにせよ、TPP「拡大」は、米国と中国を牽制するだけではなく、混沌とする世界に新たな秩序をもたらし、世界を救うことにつながることになります。

このTPPを日本という軍事的・経済的覇権によらない国が旗振り役を務めたということが大きいです。

最早世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいるのだと思います。ここに、日本が世界でリーダーシップを発揮できる好機が訪れたともいえます。

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2021年10月15日金曜日

台湾のTPP加盟後押しは日本の「喫緊の課題」―【私の論評】1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOが採用すれば、中国は香港をWTOに加入させるか、世界から孤立するしかなくなる(゚д゚)!

台湾のTPP加盟後押しは日本の「喫緊の課題」

岡崎研究所

 9月16日の中国に続き、台湾は9月22日にTPP(環太平洋経済連携協定)への加盟申請を行った。中国は、台湾が加盟申請したことに対し、ただちに、「台湾は中国の不可分の一部であり、もし台湾が中国との『統一』を拒否し続けるならば、中国は台湾に侵攻する」と威嚇した。この言い方は台湾についての中国の最近の常套句そのものである。

 TPPへの加盟資格は、11の現メンバー国が賛成することであり、現段階では、11カ国が中台双方の申請に対し、如何なる対応を取ることになるのか明白ではない。中国がいずれかの加盟国に対し台湾の加盟に反対するよう呼び掛けたり圧力をかけることは、いかにもありそうなことである。

 TPPの加盟申請について議論をする時には、約20年前の世界貿易機関(WTO)加盟のことが想い起こされる。WTOへは中国、台湾がほぼ同時期に加盟することが認められた(中国は2001年12月、台湾は2002年1月)。

 中国としては、今日の中国の経済力、軍事力から見て、20年前のケースは今回のTPPのケースには当てはまらない、と言いたいところなのだろう。台湾に対する、中国からの威圧は最近特に強まっており、中国は「報復」と称して、輸入を禁止したり、軍事力を見せつけるために、台湾周辺海域を軍機が威嚇飛行を行ったりしている。

 台湾外交部(外務省)は、中国からの非難に対し、台湾は台湾であり、中華人民共和国の一部ではないと述べ、中華人民共和国は一日たりとも台湾を統治したことはない、と反論した。そして、台湾の人民が選んだ政府だけが、台湾を代表して国際機関や地域経済連携協定に参加できると牽制した。

 それに加え、台湾としては、今日の中国の貿易体制がはたしてTPPの要求する高いレベルの条件を満たすことが出来るのか、強い疑念を抱かざるを得ないとして、中国に反撃した。なお、蔡英文総統は台湾としてはTPPの「すべてのルールを受け入れる用意がある」と述べている。

 日本は、これまで高度の経済力、技術力をもち、民主主義の価値観を共有する台湾を、日本にとっての「重要なパートナー」として位置づけ、台湾がTPPに加盟することを支持するとの立場を維持してきた。茂木敏充外相は台湾の加盟申請の発表に対し、直ちに「歓迎」の意を表明したが、その際、「中国の加盟にとっては、高いレベルの条件を満たすだけの用意が出来ているかどうかしっかり見極める必要がある」旨発言している。

 今年は日本がTPPの議長国の年にあたっており、日本としてアジア太平洋における台湾の占める位置を考えた際、台湾のTPP加盟を支持・歓迎するのは当然であろう。日本が台湾のTPP加盟を実現するよう主導することは日本にとっての「喫緊の課題」である。

中台ともに短期間で結論は出ない

 トランプ政権下でTPPを離脱した米国がTPPに復帰することは、日本を含め、メンバー国の等しく期待するところである。バイデン政権は、中国、台湾の加盟申請については、民主主義の価値を共有する台湾の加盟を支持する、と述べた。他方、中国の加盟については、「非市場的な貿易慣行」を持つ、として、中国が加盟のハードルを簡単に超えられないのではないか、との疑いをもっているようである。

 最近、米国の主導する「クアッド(QUAD)」や「AUKUS」というアジア・太平洋地域の新しい安全保障の枠組みがその活動を開始した。このような環境下で、アジア太平洋全体の経済、安全保障を考えるとき、米国がTPPに出来るだけ早期に復帰することが望まれることはいうまでもない。しかし、バイデン政権としては、これまでのところ、米国のTPPへの復帰については、沈黙を守っている。

 中国の貿易慣行、国営企業に対する優遇措置、知的財産権の処理などを勘案すれば、TPPの高いレベルの条件を満たすことは極めて難しく、中国の加盟申請が簡単に認められることは想定しがたい。今回の中台双方の申請には、多くの難問があり、今後行われるであろう各メンバー国による具体的交渉のことを考えれば、短時間に結論の出るようなものではないかもしれない。

 しかし、TPP加入を長年の課題としてきた蔡英文政権にとっては、中国と対比される形で、基本的価値を守り、ルールや秩序を維持する台湾の役割が世界に再認識される上で、一つの好機到来と考えているかもしれない。

【私の論評】1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOが採用すれば、中国は香港をWTOに加入させるか、世界から孤立するしかなくなる(゚д゚)!

上の記事では「中国がいずれかの加盟国に対し台湾の加盟に反対するよう呼び掛けたり圧力をかけることは、いかにもありそうなことである」としていますが、それは現実に起こっています。

それは、チリです。茂木敏充外相は15日の記者会見で中国の環太平洋経済連携協定(TPP)加盟を支持したチリに不快感を示しました。「他人のことよりも自分の国内手続きをしっかり進めてほしい。非常に遅れている」と語りました。チリは国内手続きが進んでおらず、まだTPPを批准していません。

茂木敏充外相

中国外務省はチリの支持を取り付けたと発表していました。TPP加盟には全ての参加国の同意が必要となります。チリのほかにマレーシアなどが中国を歓迎するとし、オーストラリアやカナダなどは慎重な姿勢です。

自民党は衆院選の公約に台湾のTPP加盟申請を「歓迎する」と盛り込みました。中国については触れていません。

中国は現在のままであれば、上の記事にもあるように、到底TPPに加入することなどできません。にもかかわらず、加入の意思を示すのは、まずは台湾に圧力をかけることです。そうして、二番目には、あわよくばTPPに加入して、TPPを自分の都合の良いようにつくりかえてしまうという魂胆でしょう。

WTOの規則も守らない中国を、TPPに加入させるなどもってのほかです。それについては、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国がTPP正式申請も…加入できないこれだけの理由 貿易摩擦、領有権問題などなど門前払いの可能性―【私の論評】英国は加入でき、中国はできないTPPは、世界に中国の異質性をさらに印象づけることに(゚д゚)!

習近平

詳細は、この記事をご覧いただくものとして以下に一部を引用します。
"
2018年、米国通商代表部(USTR)は「中国のWTO加盟支持は誤りだった」と する年次報告書を出しています。その趣旨を以下に掲載します。
中国は、2001年にWTOに加盟後、加盟議定 書に定められた条項で要求されるように、 WTOの義務に従うために何百もの法律や規制 などを改正する予定であった。 
米国の政策立案 者は、中国の加盟議定書に定められた条項が、 開放的で市場主義的な政策に基づいており、無 差別、市場アクセス、相互性、公平性、透明性 の原則に立脚した国際貿易体制と両立しない既 存の国家主導の政策と慣行を解体することを望 んだ。 
しかし、その希望は失われた。中国は現在、 国家主導経済のままであり、米国や他の貿易相 手国は、中国の貿易体制に深刻な問題に直面し 続けている。一方、中国はWTO加盟国として の承認を、国際貿易の支配的プレーヤーにするために利用してきた。これらの事実を踏まえ て、中国の開放的な市場指向の貿易体制が確保 されないことが証明された以上、米国が中国の WTOへの加盟を支持したことが誤りだったこ とは明らかである。
中国はWTO加盟国として の承認を、国際貿易の支配的プレーヤーにするために利用してきました。もし、仮にTPPに入れたとしても、TPPを同じように利用するだけです。
"
TPP加入国は、WTOの愚を繰り返すべきではないです。上の記事では、TPP加入に関しては「中台ともに短期間で結論は出ない」などとしていますが、もう結論はでています。

中国は入れないし、台湾はTPPの約束事を守れるように国内の法律等を変える努力をすれば加入できます。

日本としては、このブログにも書いたようにTPPを大いに発展させ、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。 

TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国も反対できないでしょう。

TPPのルールがWTOのルールとなれば、中国は中共を解体してもTPPルールを含む新WTOに入るか、新WTOには入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国を待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。


いずれにせよ、TPPは加盟国だけではなく世界にとって、有用な協定になる可能性が高まってきたのは事実です。日本は、TPPのルールを世界の自由貿易のルールとするべくこれからも努力すべきです。

そうして、TPPの加盟諸国ができることがあります。それは、中国にTPP加入できるチャンスを与えることです。中国が間接的にでも、TPPに加入できるとすれば、すれば、香港の一国二制度を復活して、香港を元の状態に戻し、その上で香港をTPPに加入させることです。

中国が間接的にでも、TPPに加盟したいなら、このくらいしか方法はないでしょう。そうして、香港がTPPに加入できたとしても、その後中国がまた香港の「一国二制度」を廃止する動きにでれば、すぐにでも加入を取り消すようにすべきです。

しかし、そもそも中国はこの条件を飲んで香港を加盟させるようなことはしないでしょう。

1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用することができれば、中国をWTOから脱退させることも視野に入ります。

そうなれば、中国の選択肢は香港の「一国二制度」を復活させ、香港をWTOに加入させるか、世界から孤立するか、二つに一つしかなくなります。日本は、台湾、英国、カナダ、オーストラリア等の国々とともに、強力に推進すべきです。

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2018年1月28日日曜日

トランプ大統領がTPP復帰検討「有利な条件なら」 完全否定から大転換した理由―【私の論評】トランプはTPPが中国国内の構造改革を進めるか、中国包囲網のいずれかになることをようやく理解した(゚д゚)!


ダボス会議で演説したトランプ大統領は、「米国でビジネスを行うには最良の時期だ」と訴えた
 ドナルド・トランプ米大統領は、米CNBCテレビのインタビューで、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への復帰を検討する用意があると表明した。復帰を完全否定していた従来の政権方針を大転換する発言といえる。米国の復帰が実現すれば、アジア太平洋地域をカバーする貿易・投資ルール確立という、TPPの本来の目的が達成されそうだ。

 「米国にとってより有利な条件になるならば、TPPをやる」

 トランプ氏は25日、スイス・ダボスで行われたインタビューでこう語った。トランプ氏がTPP復帰に言及したのは初めて。復帰を検討する具体的な条件には言及しなかった。

 トランプ氏は大統領就任直後の昨年1月、TPPから永久に離脱するとの大統領令に署名した。通商政策では2国間交渉を重視し、日本とは自由貿易協定(FTA)も視野に経済対話を始めた。

 通商政策の柱とする2国間交渉が思うように進まないなか、米国を除くTPP参加11カ国が新協定に合意し、早ければ2019年に発効する見通しになったことが、復帰検討の背景にあるとみられる。

 ただ、トランプ氏は「現在のTPPはひどい協定だ」と従来の認識を改めて強調し、離脱を決めた昨年の政権の判断を肯定した。

 TPPを推進する安倍晋三政権としては、米国の再加入に向け、関係が良好なトランプ政権への働きかけを強める方針だ。

 トランプ政権はこれまで、TPPや、気候変動に関する国際的枠組み「パリ協定」などの多国間協定に敵対的な姿勢を示してきた。ところが、トランプ氏は今月中旬、パリ協定についても「ことによっては復帰も考えられる」と復帰の可能性に言及していた。

 トランプ氏は現在、スイスでの世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に参加している。

【私の論評】トランプはTPPが中国国内の構造改革を進めるか、中国包囲網のいずれかになることをようやく理解した(゚д゚)!

TPPといえば、ひところTPP芸人と呼ばれる「TPPに加入すれば日本は完璧に米国の属国になる」という極論を吐く一団がいました。

そもそも、TPPとは何かといえば、通商交渉です。戦後の通商交渉の歴史を少しでもかじれば、どういう流れかわかるはずですが、なぜかこれら芸人たちは大騒ぎを繰り返しました。私も、一時この大騒ぎに取り込まれそうになりました。

そうして、これらの芸人たちは、トランプ氏が大統領になった直後TPPから離脱することを公表して以来誰も信用しなくなりました。

TPP芸人らによれば、TPPはアメリカが日本を再占領する亡国最終兵器だったはずです。

一時期、善良な人の無知に付け込み、恐怖で人を煽る「TPP商法」がかなり流行っていました。
不可思議なTPP芸人の主張
TPP芸人の主張は、「TPPは日本の国体を破壊する」、「TPPに交渉参加を表明した瞬間、日本は抜けられなくなりアメリカの言いなりになる」、「TPPにはISD条項と言う恐ろしい条項があり、関税自主権が無くなる」等など、とてつもないデマを飛ばしていました。
TPPなどという国際的な行政問題などに普通の人間が関心を持つはずもないですし、その実体についても知らないのが当たり前です。TPP芸人どもが悪徳商法として成功したのは、単なるマイナー問題を、さも国際政治的な大問題の如く信じ込ませたという一点につきると思います。
その人たち、今はどんな言論をしているのでしょうか。涼しい顔をして、何もなかったような顔をしています。

私は、TPPに関してはこのブログにはあまりとりあげませんでした、というのも反対論者の語ることが胡散臭いと思ったからです。

通商交渉の歴史をたどれば、TPPのような交渉は賛成の立場の側が通すのに苦労する条約だからです。にもかかわらず、反対派はすべての戦力をTPP反対に注げと煽っていました。

この有様は、戦前、「英米の世界支配に対抗せよ」と言いながら、ソ連の存在を華麗にスルーした偽装転向右翼と同じような臭いを感じさせました。

戦前日本にはスターリンのソ連を華麗にスルーした偽装転向右翼が存在した
TPPは成長市場であるアジア地域で遅れていた知的財産保護などのルールを作りました。社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れました。TPPが棚上げとなれば各国の国内改革の動きも止まってしまうことになります。

TPP合意を機に、日本の地方の中小企業や農業関係者の海外市場への関心は高まっていました。電子商取引の信頼性を確保するルールなどは中小企業などの海外展開を後押しするものです。日の目を見ないで放置しておくのは、本当に勿体無いです。

さて、米国が離脱したままTPP11が発効して、それに対して中国が入りたいという要望を持つことは十分に考えられます。

ただし、中国はすぐにTPPに加入させるわけにはいかないでしょう。中国が加入するには、現状のように国内でのブラックな産業構造を転換させなければ、それこそトランプ氏が主張するようにブラック産業によって虐げられた労働者の労働による不当に安い製品が米国に輸入されているように、TPP加盟国に輸入されることとなり、そもそも自由貿易など成り立たなくなります。


このあたりのことを理解したため、トランプ大統領は、TPPに入ることを決心するかもしれません。そもそも、政治家としての経験のないトランプ大統領は、これを理解していなかっただけかもしれません。だからこそ、完全否定から大転換したのかもしれません。

そうして、これを理解して、それが米国の利益にもなると理解すれば、意外とすんなり加入するかもしれません。

中国がどうしても、TPPに参加したいというのなら、社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れたのと同じように、中国国内の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めなければならないでしょう。

それによって、中国自体の構造改革が進むことになります。こうして、TPPにより、中国の体制を変えることにもつなげることも可能です。

しかし、改革を実行しない限りTPPは中国抜きで、自由貿易を進めることになり、結果として環太平洋地域において、中国包囲網ができあがることになります。

大統領に就任した直後のトランプ大統領は、このような可能性を見ることができなかったのでしょう。しかし、最近はその可能性に目覚め、完全否定から大転換したのでしょう。

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2018年10月31日水曜日

TPP12月30日発効 世界GDPの13%経済圏誕生へ―【私の論評】最終的にはTPPのルールを世界のルールに(゚д゚)!


TPPの年内発効が決まり、記者会見する茂木敏充経済再生担当相=
31日午前、東京外千代田区の中央合同庁舎第8号館

茂木敏充(としみつ)経済再生担当相は31日、東京都内で記者会見し、米国を除く11カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP11)について、日本時間の12月30日午前0時に発効すると発表した。域内の工業製品や農産品の関税は段階的に引き下げられ、投資や知的財産権保護など幅広い分野で高水準のルールを定めた。世界の国内総生産(GDP)の約13%を占め、総人口で約5億人を抱える巨大な自由貿易圏が誕生する。

 茂木氏は会見で「保護主義が強まる中、自由で公正な21世紀型のルールが確立するという強いメッセージの発信になる」と、発効の意義を強調した。

 また、茂木氏は新規加盟を希望する国の手続きなど今後の運営の詳細を協議する閣僚級の「TPP委員会」を来年1月にも日本で開催する方針も明らかにした。参加国の拡大により、保護主義の対抗軸となる経済圏づくりを目指す。



 日本は自動車など工業製品の輸出で追い風となるが、牛肉など安い農産品の流入で国内農業は打撃を受ける可能性もある。

 昨年1月にTPPから離脱した米国の製品は域内で関税引き下げの恩恵を受けられず、不利になる。日本は米国との関税交渉を来年1月中旬以降に開始する見通しで、引き続き米国にTPP復帰を促す考えだ。

 TPP11は6カ国以上の国内手続きが終了してから60日後に発効する。6カ国目となるオーストラリアが手続きを完了したため、年内に発効することになった。

 参加国で手続きを終えたのはオーストラリアのほか、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダの6カ国。ベトナムも11月半ばに手続きを終える見通しで、残るブルネイ、チリ、ペルー、マレーシアも手続きを進める。

【私の論評】最終的にはTPPのルールを世界のルールに(゚д゚)!

オバマ前政権が推進してきたTPPには、「中国包囲網」という裏の目的がありました。

中国は、日本、韓国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の締結を主導して進めています。RCEPは「中国版TPP」ともいえる通商協定です。日本政府がTPP協定に固執し続けたのも、RCEPがアジアの通商ルールとして定着することを阻止するためでした。


TPPには、「国有企業の優遇禁止」や「知的財産の保護」などのルールが盛り込まれていますが、これはこのルールを守っていない中国を念頭に置いています。つまり今のままでは中国はTPPに参加できないため、こうしたルールを守るよう、中国に暗に迫っていたということです。

ところが、アメリカがTPPを離脱したことで、「中国包囲網」としてのTPPの有効性は、かなり毀損されました。

トランプ大統領が「TPPは正しい考え方ではなく、我々は貿易でTPP以上の成果を得られる」とTPPを否定する理由は、関税自主権を行使して、中国などとの貿易不均衡を是正したいからです。昨年のアメリカの対中貿易赤字は3470億ドル(約40兆円)。これを関税などによって解消しようというのが、米国の対中貿易戦争です。

「弱いアメリカ」がTPP参加国とともに中国経済に対抗する方針から、「強いアメリカ」として二国間交渉で中国に臨む方針に変わったということのようです。そうして、米国は実際に対中国貿易戦争を開始しました。これは、もうトランプ政権による貿易戦争の次元から、超党派の米国議会による経済冷戦の次元にまで高まっています。

1月23日、トランプ米大統領は選挙公約通り、TPPからの正式離脱に関する大統領令に署名した

おそらく、中国の体制が変わるまで、かなり長い間、米国は対中国制裁をやめないどころか、あらゆる手段を講じて、中国を追い詰めるでしょう。

中国は、アメリカを抜いて世界の覇権を握ることを目指していますが、まだ米国と全面対決できるほどの力はありません。

米国が問題視している国際貿易機関(WTO)で規定されていない、知的財産権や技術移転要求については、日本は米国に協調できます。その手段として考えられるのがTPPの活用です。米国が中国に対して懸念していることのすべてはTPP協定でカバーしています。

タイ、インドネシア、台湾、英国、コロンビアなどを加入させてTPPが拡大し、また米国がTPPに復帰するなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。そうなると、中国もTPPに参加せざるを得なくなります。その時、中国に知的財産権や投資についての高度な規定を課すことができます。努力すべきはTPP参加国の拡大です。

ただし、中国はTPPに加入するということになれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化という構造改革を実施しなければなりません。これを実行しなければ、TPPには加入できません。

この構造改革を実施することになれば、中国共産党は、統治の正当性を失うことになるでしょう。それは中共の崩壊を意味します。

最悪、米国や中国がTPPに参加しない場合でも、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。

TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国も反対できないでしょう。

この段階まで来ると、中国は中共を解体してもTPP協定を含むWTOに入るか、中共を解体せず新WTOにも入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国が待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。

いずれにせよ、TPPは加盟国だけではなく世界にとって、有用な協定になる可能性が高まってきたのは事実です。
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2023年3月30日木曜日

英のTPP加盟、31日にも合意 発足11カ国以外で初―【私の論評】岸田首相は、TPPの拡大とそのルールをWTOのルールにすることで、世界でリーダーシップを発揮すべき(゚д゚)!

英のTPP加盟、31日にも合意 発足11カ国以外で初

2018年3月8日、日本やカナダを含む11カ国は、環太平洋連携協定(TPP)に修正を加えた「包括的および先進的環太平洋連携協定(CPTPP)」に署名した

 環太平洋連携協定(TPP)に参加する日本など11カ国が31日にもオンライン形式で閣僚会合を開き、英国の加盟に大筋合意する見通しであることが分かった。複数の日本政府関係者が29日、明らかにした。発足時のメンバー以外では初となる。年内に、各国の閣僚がルールや新規加盟を議論する最高意思決定機関「TPP委員会」で正式に承認する見込みだ。


 TPPは、関税撤廃や知的財産などの統一的ルールにより自由貿易を推進する枠組み。今後は、英国と同様に加盟申請している中国や台湾の扱いが焦点となる。

 中国がアジア太平洋地域で影響力を拡大し、ルールの順守にも懸念があることから、日本は中国の加盟に慎重な立場を取っている。中国は台湾の加盟に反対している。一方、日本は英参加を足掛かりに、トランプ政権時代に離脱した米国の復帰に向けて機運を高めたい考えだ。

 英国は2021年2月にTPPへの加盟を正式に申請し、中国と台湾のほかウルグアイなどが続いた。英国の審査はこうした国々に対しての試金石となるため、加盟国が慎重に協議していた。

【私の論評】岸田首相は、TPPの拡大とそのルールをWTOのルールにすることで世界でリーダーシップを発揮すべき(゚д゚)!

TPPは、域内の関税撤廃・削減や投資の共通ルール策定などを行う協定。最終的な関税撤廃率は95~100%と高いうえ、知的財産の保護など広い範囲をカバー。例えばデジタル分野でソフトウエアの「ソースコード(設計図)」の開示を求めることを禁止し、巨大ITなど多国籍企業の活動への進出先の政府の介入を防ぐ内容を含みます。

日中韓豪や東南アジア諸国連合(ASEAN)などが参加する自由貿易圏「地域的な包括的経済連携(RCEP)」の関税撤廃率が平均91%にとどまるのに比べ、「TPPは通商・投資ルールとしての水準が高い」(経産省筋)です。

TPPはもともと、シンガポールやニュージーランドなど4か国の協定をベースに交渉国を拡大し、日米豪、カナダ、マレーシアなどアジア太平洋地域の12か国で15年10月に合意した。しかし、米トランプ政権が「米国第一」を掲げて17年1月に離脱したため、18年末に11か国の「TPP11」として発効しました。

現在のTPP加盟国

英国が加われば、TPP加盟国の国内総生産(GDP)が世界のGDPに占める比率は現状の13%から16%超に高まります。

規模拡大効果は限定的ですが、欧州からの参加は高いレベルの国際貿易・投資ルールを、アジア太平洋を越えて広げる第一歩であり、日本としては、トランプ政権時代に世界的に後退した自由貿易の機運を再び盛り上げるきっかけとなります。さらに、米国の復帰に向けた呼び水にもなる可能性があります。

英国にとっては、欧州連合(EU)から2020年末に完全に離脱し、EU外と自由に通商交渉できるようになったばかりで、21年1月に発効した日英包括的経済連携協定(EPA)とともに、EU離脱のメリットを国民に分かりやすく示す目玉政策となります。

同時に、中国をにらんだ思惑も指摘されます。

そもそも、TPPは米オバマ政権時代、日米を中心に、高い自由化を掲げ、計画経済、統制経済が色濃く残る中国を牽制することも狙って合意した経緯がある。

関税引き下げや、外国企業の活動への介入の規制など高い目標を中国に突き付けることで、中国が受け入れれば中国の経済改革を進められるし、受け入れなければASEANなど他のアジア諸国との関係で中国に対して日米が優位に立てる――という狙いだった。

ところが、その後、状況は一変しました。2国間協議による「取引」を重視したトランプ政権がTPPを離脱し、後を継いだバイデン政権も、「自由貿易で国内の雇用が奪われた」という声が国内で根強いことから、TPP復帰には当面、消極的です。

他方、米国の混乱のスキを突くように、中国が動きました。20年11月、習近平主席がTPPへの参加を「積極的に考える」と表明しました。中国がにわかにTPPの厳しい条件を受け入れるのはこんなんですが、米国の方針が定まる前に手を挙げ、加入交渉で有利な条件を引き出したいとの思惑との見方が一般的です。

そのほか、韓国、台湾、タイも参加に関心を示すなど、英国の加入申請を含め、動きがあわただしくなっていました。

中国など1か国のためにTPPのルールを変えることは、ありえず、資本の自由な移動が制限されている中国は現在のままだと加入できる見込みは全くありません。

一方台湾については、TPPに加入することについて反対する国はありません。呉釗燮(ごしょうしょう)外交部長(外相)は昨年11月21日、台湾の環太平洋経済連携協定(TPP)加入を推進する過程で、公開または非公開の場で台湾を支持しないと表明した国は「今のところない」と明らかにしました。立法院(国会)外交・国防委員会での答弁。

呉釗燮(ごしょうしょう)外交部長(外相)

台湾のTPP加入申請を巡り、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席したオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相が同年同月18日、台湾のTPP加入を支持するか取材陣に聞かれ、「承認された国家しかTPPに加入できない」と発言。これを受け、野党や無所属の立法委員(国会議員)から関心が寄せられました。

最大野党・国民党の温玉霞立法委員から、台湾のTPP加入に対して支持を表明した国の数について聞かれた呉氏は、具体的な数字は挙げられないとしつつ、今のところ、ほぼ全ての参加国が台湾との非正式協議に応じていると説明。当初は台湾のことを理解していなかった国や台湾の加入に比較的冷ややかな態度を示していた国も、台湾側の努力によって支持する姿勢を見せるようになったとしました。

呉氏は、台湾の加入審査が進められるのは、英国の加入審査が完了した後になるとの見方を示しました。

外交部(外務省)は同年同月18日、アルバニージー氏の発言の直後にオーストラリア政府から「台湾のTPP加入に対する立場に変更はなく、台湾を含め、TPPの高いレベルを満たす全てのエコノミーの加入を歓迎する」との弁明を受けたことを明らかにしていました。

台湾がTPPに加盟することで日本と世界には、以下のようなメリットがあります。

まずは台湾市場の拡大です。台湾のTPP加盟によって、TPP加盟国との間で関税が撤廃され、自由貿易が促進されることで、日本企業や世界の企業が台湾市場にアクセスしやすくなります。

また、台湾のTPP加盟によって、日本と台湾の企業間で技術的な相乗効果が期待できます。両国の企業が協力し、製品開発や生産技術の向上に取り組むことで、世界の製造業にとってもプラスの影響を与えることができます。特に、半導体の分野では、それが期待できます。

以前このブログでも指摘したように、米国が中国に対して懸念していることの全てはTPP協定がカバーしています。これは、当然米国も理解しているでしょう。だから、TPPから脱退したトランプも、良い条件が得られるならという留保を付けたにせよ、TPPに復帰してもよいという発言をしたのでしょう。

英国、台湾に続き、タイ、インドネシア、コロンビア等を加入させてTPPが拡大し、また、米国がTPPに復帰して来るなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。

最悪、米国がTPPに参加しない場合でも、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。

TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国もあからさまに反対できないでしょう。

この段階まで来ると、中国は中共を解体してもTPP協定を含むWTOに入るか、中共を解体せず新WTOにも入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国が待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。

いずれにせよ、TPP「拡大」は、米国と中国を牽制するだけではなく、混沌とする世界に新たな秩序をもたらし、世界を救うことにつながることになります。

このTPPを日本という軍事的・経済的覇権によらない国が旗振り役を務めたということが大きいです。

最早世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに随分前から倦んでいるのだと思います。ここに、日本が世界でリーダーシップを発揮できる好機が訪れたともいえます。

TPP協定発効記念式典で各国の関係者と談笑する安倍晋三首相(中央右 当時)と茂木敏充経済再生担当相(同左)

安倍元総理は、米国が加入しなくてもTPPを発効させることに成功しました。しかし、安倍元首相には、この方面で積み残したことがたくさんあります。

TPPの参加国を増やして、拡大すること。TPPの規定をWTO、すなわち世界の貿易ルールにすることなどです。私は、故安倍元総理は、この両方が成就することを望んていたと思います。

岸田政権は、こうした安倍政権の積み残しを実現して、世界でリーダーシップを発揮していただきたいです。


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2023年7月16日日曜日

英TPP加盟を承認 発効後初の拡大、12カ国に―【私の論評】日本が旗振り役となって、TPPのルールをWTOのルールとすべき(゚д゚)!

英TPP加盟を承認 発効後初の拡大、12カ国に



 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に加盟する日本やオーストラリアなど11カ国は16日、ニュージーランド・オークランドでの閣僚級会合で、英国の新規加盟を正式に承認した。12カ国体制となる。協定が2018年に発効して以来、加盟国が増えるのは初めて。

 今後は同じく新規加盟を申請している中国や台湾、ウクライナなどの取り扱いが焦点となる。

 英国の加盟でTPPの経済圏がアジア太平洋から欧州に広がり、参加国の国内総生産(GDP)の合計は世界全体の12%から15%に高まる。英国と経済連携協定(EPA)を締結済みの日本にとって直接的な恩恵は限定的だが、先進7カ国(G7)の一角が新たに加わることでTPPの影響力が増すことが期待される。

【私の論評】日本が旗振り役となって、TPPのルールをWTOのルールとすべき(゚д゚)!

英国の TPP 加盟は日英にとって重要な進展です。 英国にとっては、5億人以上の人口を抱える市場へのアクセスと、EU離脱後の経済の活性化をもたらすことになります。 日本にとって、英国における貿易と投資の新たな機会が開かれます。

TPPは、オーストラリア、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ペルー、シンガポール、ベトナム、ニュージーランドを含むアジア太平洋地域の11か国間の自由貿易協定です。 この協定は、商品やサービスの貿易、投資、知的財産、政府調達など幅広い問題をカバーしています。

英国のTPP加盟により、日英間の貿易が促進されることが期待されています。 2021年の両国間の貿易額は145億ポンドに達しました。 TPPにより、この数字は年間最大25億ポンド増加すると予想されています。

TPPは英国と日本双方で雇用を創出することも期待されています。 英国政府は、この協定により英国で最大6万5,000人の雇用が創出される可能性があると試算しています。

TPPは経済的利益に加えて、英国と日本との関係を強化することも期待されている。 両国はすでに緊密な同盟関係にあり、TPPによってさらに協力が深まることが期待されます。

安倍氏の英国TPP参加表明の歓迎から5年越しで英国加入の実現。安倍外交がまた一つ大きなレガシーを残した格好となったといえます。以下は、安倍氏が英国訪問時の写真、右は当時のメイ英首相。


英国が TPP に参加することによる英国と日本にとっての具体的な利点は次のとおりです。

貿易の増加:TPPにより、英国と日本の間の貿易は年間最大25億ポンド増加すると予想されています。 これにより両国の経済成長が促進され、雇用が創出されることになる。
投資: TPP は日本から英国へのさらなる投資を呼び込むことが期待されています。 これは雇用を創出し、英国経済を成長させるのに役立ちます。
新しい市場へのアクセス:TPPにより、英国企業はアジア太平洋地域の新しい市場へのアクセスが可能になります。 これは、ビジネスを成長させ、世界経済で競争するのに役立ちます。
法の支配の強化:TPPには法の支配を促進し、知的財産権を保護する条項が含まれています。 これは、英国と日本の企業にとって、より予測可能で安定した環境を構築するのに役立ちます。

全体として、英国の TPP 加盟は両国にとって前向きな進展である。 これにより、貿易が促進され、雇用が創出され、英国と日本との関係が強化されることが期待されている。

TPPの拡大は更に大きな意味を持つことになります。私自身は、TPPルールをWTOルールにすべきと思います。 TPPWTO よりも包括的かつ現代的な貿易協定であり、デジタル経済や国有企業など、21 世紀の経済の課題の一部に対処する条項が含まれています。 TPPのルールをWTOのルールにすれば、すべての国の競争条件を平等にし、誰もが同じルールに従うようにするのに役立つでしょう。

TPP ルールが WTO ルールになれば、次のような多くのメリットが期待できます。

貿易の増加:TPPのルールは企業にとってより予測可能で安定した環境を生み出し、企業の貿易の増加を促すでしょう。 これにより、世界中で経済成長が促進され、雇用が創出されるでしょう。
保護が強化される知的財産: TPP ルールは知的財産権のより強力な保護を提供します。 これはイノベーションと創造性の促進に役立ち、企業と消費者の両方に利益をもたらすでしょう。
貿易障壁の軽減:TPPルールは、関税や割り当てなどの貿易障壁を削減します。 これにより企業は商品やサービスを輸出しやすくなり、経済成長が促進されるでしょう。

WTOのルールを必ずしも遵守しない中国にとっての影響は重大でしょう。 TPPのルールがWTOのルールになれば、中国はそれに従うよう圧力を受けることになります。 これは中国の貿易政策の変更につながり、世界経済にプラスの影響を与える可能性があります。

もちろん、TPP ルールが WTO ルールになった場合に対処しなければならない課題もいくつかあります。 たとえば、一部の国は TPP ルールのすべてに同意することに消極的になる可能性があります。 さらに、TPPルールをWTOに導入するには時間と労力がかかります。

全体として、私は、TPPルールをWTOルールにすることの利点が課題を上回ると信じています。 TPP ルールは、世界中の貿易と経済成長の促進に役立つ貴重なルールです。特に、これは中国に対して厳しいものになるでしょう。

2001年11月10日、中国WTO加盟の調印式

中国は、2001年にWTO加盟しました。1978年の改革・解放以来、鄧小平の活躍によって、1997年の香港再譲渡・返還にこぎつけた共産主義中国が、「繁栄への切符」を手に入れたのです。 

この時には、共産主義中国は「WTOの公正なルール」に合致するような状態ではありませんでした。 ところが、米国を始めとする先進国は「今は基準を満たしていないが、貿易によって豊かになれば『公正なルール』を守るようになるだろう」と考え、共産主義中国も「将来はルールを守る」という「約束」をしたことで加盟が認められたのです。 

ところが、加盟後20年以上経っても、共産主義中国は自国の(国営)企業を優遇し、外資系いじめを連発するだけではなく、貿易の基本的ルールさえまともに守る気があるのかどうか不明です。

WTOに提訴される件数自体は、中国よりも他の国のほうが多いです。これをもって、中国はWTOのルールを遵守しているなどと言う人もいますが、それは正しくはありません。確かに件数だけみれば、そうみえるかもしれませんが、中国の不遵守にはかなり深刻な事例が多いのです。

件数だけでみるのは、たとえば犯罪において重犯罪と、軽犯罪を同次元にみるのと同じようなものであり、明らかな間違いです。

以下にに中国の WTO ルール不遵守の深刻な例をあげます。

輸出補助金:中国は、鉄鋼、アルミニウム、その他の産業に輸出補助金を提供していると非難されています。 これらの補助金により、中国企業は自社製品を原価以下で販売することができ、世界市場で不当な優位性を得ることができます。
知的財産の盗難: 中国は広範な知的財産の盗難で告発されています。 これには、衣料品や電子機器などの商品の偽造や、外国企業から企業秘密を盗むことが含まれます。
市場アクセス:中国は外国企業に公正な市場アクセスを提供していないと非難されています。 これには、外国投資に対する制限や外国企業に対する差別的慣行が含まれます。
国有企業: 中国の国有企業 (SOE) は政府から優遇措置を受けています。 これにより、国内外の民間企業に対して不当な優位性が得られます。

これらは中国がWTOルールを遵守していない例のほんの一例にすぎません。 これらの違反は他国に重大な影響を与えており、中国と他のWTO加盟国との間で多くの貿易紛争を引き起こしています。

私は、TPPのルールをWTOのルールにすることで、まずはルールを守れない国には、WTOから抜けてもらうべきです。無論、猶予期間は設けることとし、その期間に守ることができる状態にできない国々には加盟取り消しなどの措置をすべきです。

このようなことを考えると、今回TPPに環太平洋諸国ではない英国が加盟したことは、将来TPPのルールをWTOのルールにすることに、一歩近づいたともいえる出来事だと思います。

今後さらに、TPPを拡大し、TPP加盟国がが大きく繁栄し、WTOのルールへと昇格させるための、下地作りをすべきと思います。

旗振り役日本 AI生成画像

そうして、日本こそTPPルールをWTOルールにする旗振り役となるべきです。日本はTPPを強力に支持しており、すでに国内で協定を履行するための措置を講じています。 日本は、WTOの加盟国であり、WTOの紛争解決機関の一員となっています。 これにより日本はWTOで強い発言力を持ち、TPPルールの採用を主張できる有利な立場にあります。

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2013年3月18日月曜日

【産経・FNN合同世論調査】TPP交渉参加表明「支持」64% 内閣支持率続伸70%台に―【私の論評】TPPを正しく理解していようがいまいが、現実を見つめだした日本人!!今更安部政権が崩壊して誰が一番得するか?少なくとも俺たち日本人じゃない!!

【産経・FNN合同世論調査】TPP交渉参加表明「支持」64% 内閣支持率続伸70%台に:



 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が16、17両日に実施した合同世論調査で、安倍晋三首相が15日に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への交渉参加を正式表明したことについて「支持する」との回答は63・8%で、「支持しない」の28・3%を大きく上回った。安倍内閣の支持率は前回調査(2月23、24両日)から0・8ポイント増の70・4%に達し、昨年12月の政権発足以来、3カ月連続の上昇となった。「内閣を支持しない」は19・1%(前回比1・1ポイント増)だった。

この記事の続きはこちらから!!


【私の論評】TPPを正しく理解していようがいまいが、現実を見つめだした日本人!!今更安部政権が崩壊して誰が一番得するか?少なくとも俺たち日本人じゃない!!

TPP交渉参加を発表する安倍総理
上の記事で、大方の人が安倍首相のTPP交渉参加に上のアンケートでは大方の人たちが賛成していることがわかります。私自身は、大反対です。現在私のように大反対する人は少数です。

マスコミも、政治家のほとんども、それどころか、多くの国民も賛成なのです。しかし、私たちは、その背景は良く知っておく必要があります。そもそも、このブログでも掲載したように、TPP交渉参加と、TPP参加とは異なります。それに、施政方針演説でも、安倍総理は、TPP参加には積極的ではありませんでした。それについては、以前のこのブログでも掲載しだことがあります。そのURLを以下に掲載します。

TPP 安倍総理の施政方針演説の真意と偏向報道―【私の論評】安倍首相がTPP参加に積極的と思い込む前に疑ってみよう!!強烈な反対派の印象操作に惑わされていないかい?


詳細は、上の記事をご覧いただくものとして、要点のみ以下に掲載させていただきます。
野田政権ならまだしも、安倍自民党政権が、TPP交渉に参加したらかといって、それがすぐさま参加に結びつくわけではありませんし、それに、国会で確か民主党の議員が安倍総理に、TPPに今から参加して間に合うのですかなどという質問をしていて、それに対しては、安倍総理は適当にいなしていました。今のままでは、おそらく時間切れになると思います。 
TPP交渉に参加したとしても、日本側のやり方によっては、TPPを原型とどめないぐらい骨抜きにしてしまうとか、あるいはTPP交渉を離脱した後に、その交渉過程を下地として、日米や日豪などと個別FTAEPAを結んでしまうという流れなども十分考えられます。
また、このブログでは、安倍首相のTPP交渉参加の表明は、未だ戦後体制にある日本による、宣戦布告のようなものであることも掲載しました。

首相がTPP交渉参加を正式表明―【私の論評】安倍総理のTPP交渉参加表明は、宣戦布告だ!!今度負けたら、ますます戦後体制からの脱却は遠のく!!そんなことにならないためにも、国民は安倍政権に最大限の支援すべき!!


これも、詳細は、上の記事をご覧いただくものとして、以下に要点だけコピペさせていただきます。
さて、なぜこのようなことになっているのか、もう一度整理します。日本としては、日本の国体をさらに壊すTPP交渉など最初からしたくないわけです。しかし、先ほども掲載したように、日本は未だ戦後体制のなかにあります。要は自主防衛できない我が国家の弱さです。核保有もしておらず、自国を自国の手で守れない状況にあります。ですから、日本は、少なくともTPP交渉に参加する姿勢を示さなければならないのです。 
守るは日本の国体であり、国柄です。それを破壊するTP­Pには最後まであきらめず反対・警鐘を鳴らしていきましょう。大­東亜戦争、ウルグアイラウンドでは負けましたが、今度はそうはい­きません。大東亜戦争では、戦争に負け多大な被害を被りながらも、アジアの自主独立を勝ち取ることができました。しかし、あれから、戦後体制にどっぷりと漬かった日本では、多くの人がそれが当たり前となり、ゆでガエルのようになり、未だ日本は戦後体制から抜け出せていないことを自覚していない人も増えています。今回は、この戦争に負けるわけにはいきません。 
TPP交渉参加は「第二次太平洋戦争」みたいなものです。今度負けたら、日本は、さらに戦後体制からの脱却は遠のきます。どこまで、日本の国体の維持ができるか!!実は、今回の安倍総理のTPP交渉参加の発表は、戦争でいえば、宣戦布告したようなものです。もう布告してしまったのですから、この戦いに負けるわけにはいきません。そのために国民は一致団結して安倍内閣を支えるべきと思います。私たちは、今でも周りは敵だらけの、安倍政権が、この戦に勝てるように最大限の支援を惜しむべきではありません。一体このような認識を持っている日本人がこの日本にはどれほどいるのでしょうか?そう思うのは私だけでしょうか?皆さんは、どう思われますか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
TPPはこうしたマスコミなどに、うまく利用されているとみるべきです。まずは、多くの人達に受け入れられやすい「TPPには大反対」である意見を表明し、心配を煽り日本米国追随論をぶちあげ、 徐々にトーンを上げ、交渉は参加と同じで、オバマと話したら売国奴とあおり、 さらにトーンを上昇させて、いきつく先は、あわよくば日米国交断絶、そうなれば、中国は大喜びです。こんな連中の術中にむざむざとはまる必要はありません。
こんなことから、安倍首相が、TPP交渉参加表明をしたことにより、マスコミは安倍首相を糾弾することなどできなくなり、いわば、肩透かしを食ったような形です。マスコミはTPP参加に大賛成ですから、ここで大反対しては全くおかしなことになります。

一部に、上記のように「TPP大反対」を煽り、安倍政権をなきものにしようとする勢力も間違いなく存在するようですが、これらの勢力も、このブログの冒頭の記事のように、本当に少数派で、完璧に肩透かしをくった形です。それだけ、日本の多くの国民も、惑わされなくなっているのだと思います。

本来ならば、なぜ私がこのような考えを抱くに至ったのか、詳細を記載する必要があると思いましたが、実はこれに関しては本当に秀逸なブログ(ひめのブログというタイトル)がありましたので、以下のそのブログURLを掲載させていただきます。


■安倍首相のTPPをよく見てみる(・∀・)

このブログをご覧いただければ、私がなぜ上記のような考えを持つに至ったのか、ご理解いただけるものと思います。

これに関して、あのSakurasoTVの水島社長も似たような考えを持っています。そレが良く理解できる動画を以下に掲載します。


この動画は三本あるうちの一番最後のものです。この動画で、水島氏は、TPPに反対だからといって、参加交渉に参加する安倍総裁、安倍自民党を排斥したとして、仮にそれが成功したとして、本当にそんなことになったとして、それでどうするのかという疑問を投げかけました。そうして、これには上のディスカッションに参加していた人たちは、最初は反対していたひとたちも、だんだんと水島氏の考えに納得して、最終的には真っ向から反対する人はいなくりました。

そうして、最終的には、TPP参加交渉に参加した日本政府に対して、世論形成をして、絶対に反対である旨を伝え、結局参加拒否まで持っていくべきであるとの結論となりました。

TPP反対だからといって、短絡的にTPP交渉に参加している安倍政権を排斥したとしても、結局何にもならず、かえって、「戦後体制から脱却」が遅れることになるだけだと思います。

しかし、このような結論は、少し考えれば、すぐに理解できます。TPP参加反対という世論をもりあげ、マスコミも大方の国民も安倍政権に反対して、本当に安倍政権が空中分解してしまえば、一番喜ぶのは、アメリカ(それも多国籍企業のような巨大企業)であり、中国であり、大方のマスコミです。そんなことは、絶対にさせるべぎてはありません。TPPに関しては、かなり難しい交渉ですから、この本質をしっかり理解している人は少ないと思います。しかし、今の段階で、多くの国民が、安倍政権をなきものにしたとしても、何ら良いことはないことは明らかなので、まずは安倍政権にまかせておこうと考えているのだと思います。私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2013年3月15日金曜日

首相がTPP交渉参加を正式表明―【私の論評】安倍総理のTPP交渉参加表明は、宣戦布告だ!!今度負けたら、ますます戦後体制からの脱却は遠のく!!そんなことにならないためにも、国民は安倍政権に最大限の支援すべき!!

首相がTPP交渉参加を正式表明


安倍晋三首相は15日夕、官邸で記者会見し、高いレベルの貿易自由化を目指す環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を正式表明した。

これにより、わが国はアジア太平洋地域の自由貿易圏に加わる。しかしコメを始めとする農産品などでは関税撤廃の例外扱いを狙っており、参加各国との交渉が当面の課題となる。

日本はこれまでに13の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を結んでいるが、大部分は2国間協定ばかり。通商目的を主とする広域経済協定は事実上、今回が初めてとなる。

政府の試算によると、TPPに参加した場合の国内への影響は、農業分野の生産額が3兆円減少する一方で、消費や工業製品の輸出は増加し、全体では実質国内総生産(GDP)を3兆2千億円(0・66%)押し上げる効果があるという。


 【私の論評】安倍総理のTPP交渉参加表明は、宣戦布告だ!!今度負けたら、ますます戦後体制からの脱却は遠のく!!そんなことにならないためにも、国民は安倍政権に最大限の支援すべき!!



安倍自民党は、選挙のときにTPPには反対である旨を公表していたため、今回のTPP交渉に参加する発表に関して、れそこそ、自民党はもとより安倍首相も裏切りものであるかのような論調があちこちでみられています。これは、本当でしょうか?

私は、以前のブログでも掲載したように、安倍首相自身は、TPP参加に積極的ではないです。しかし、この日本は未だ戦後体制の中にあるということをあまりに多くの人が忘れています。戦後体制にある日本においては、TPP交渉に参加すること自体を拒否できる立場にはありません。だからこそ、今回参加表明をしているのです。これについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。そのURLを以下に掲載します。

TPP 安倍総理の施政方針演説の真意と偏向報道―【私の論評】安倍首相がTPP参加に積極的と思い込む前に疑ってみよう!!強烈な反対派の印象操作に惑わされていないかい? 

上の記事の要点のみ以下に掲載します。
TPP交渉に参加したとしても、日本側のやり方によっては、TPPを原型とどめないぐらい骨抜きにしてしまうとか、あるいはTPP交渉を離脱した後に、その交渉過程を下地として、日米や日豪などと個別FTAEPAを結んでしまうという流れなども十分考えられます。
詳細は、上の記事をご覧いただくものとして、この記事では、TPP参加と、TPP交渉参加とは根本的に異なることを掲載しました。

上念司氏
TPP交渉参加したからといって、必ずTPPに参加しなければならないなどということは全くありません。それに関しては、このブログでもしばしば登場する経済評論家上念司氏が、良くまとめています。

「TPP交渉参加したら抜けられない」はデマです

この中で、上念氏は、大平三原則により、TPP交渉に参加しても、国益にあわない場合は、抜けられれることを合理的に説明しています。私が、くだくだと説明するよりも、こちらをごらんいただければ理解しやすいので、是非ご覧になってて下さい。

下の動画は、国を想う国会議員達が、国会中継だけでは伝えられない政治の動きを、ビデオレターで国­民の皆様にお伝えするシリーズです。今回は西田昌司参議院議員から、TPP交渉参加に対す­る安倍総理の戦略と覚悟と、自民党慎重派が主体となった決議内容についてお話しされています。


さて、なぜこのようなことになっているのか、もう一度整理します。日本としては、日本の国体をさらに壊すTPP交渉など最初からしたくないわけです。しかし、先ほども掲載したように、日本は未だ戦後体制のなかにあります。要は自主防衛できない我が国家の弱さです。核保有もしておらず、自国を自国の手で守れない状況にあります。ですから、日本は、少なくともTPP交渉に参加する姿勢を示さなければならなのです。

今回の安倍首相のTPP交渉参加表明は、宣戦布告である!!

守るは日本の国体であり、国柄です。それを破壊するTP­Pには最後まであきらめず反対・警鐘を鳴らしていきましょう。大­東亜戦争、ウルグアイラウンドでは負けましたが、今度はそうはい­きません。大東亜戦争では、戦争に負け多大な被害を被りながらも、アジアの自主独立を勝ち取ることができました。しかし、あれから、戦後体制にどっぷりと漬かった日本では、多くの人がそれが当たり前となり、ゆでガエルのようになり、未だ日本は戦後体制から抜け出せていないことを自覚していない人も増えています。今回は、この戦争に負けるわけにはいきません。

TPP交渉参加は「第二次太平洋戦争」みたいなものです。今度負けたら、日本は、さらに戦後体制からの脱却は遠のきます。どこまで、日本の国体の維持ができるか!!実は、今回の安倍総理のTPP交渉参加の発表は、戦争でいえば、宣戦布告したようなものです。もう布告してしまったのですから、この戦いに負けるわけにはいきません。そのために国民は一致団結して安倍内閣を支えるべきと思います。私たちは、今でも周りは敵だらけの、安倍政権が、この戦に勝てるように最大限の支援を惜しむべきではありません。一体このような認識を持っている日本人がこの日本にはどれほどいるのでしょうか?そう思うのは私だけでしょうか?皆さんは、どう思われますか?

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2024年5月8日水曜日

【中国の偽善が許されるのはなぜ?】GDP世界第2位の大国がWTOで“途上国扱い”され続ける理由―【私の論評】中国はTPP参加に手をあげたことにより墓穴を掘りつつある

【中国の偽善が許されるのはなぜ?】GDP世界第2位の大国がWTOで“途上国扱い”され続ける理由

岡崎研究所

まとめ

  • 中国が自国の保護主義政策を講じながら、米国の産業支援策を非難しているのは偽善である。
  • 現行のWTO制度は、多くの国が「途上国」と自称できるため、中国の保護主義政策を見過ごされがちになっている。
  • WTO加盟国の約3分の2が「途上国」を自称しており、経済規模が大きい国々も含まれる。
  • この状況を改善するには、現行制度を抜本的に見直し、新たな多国間の制度を構築する必要がある。
  • 新制度は、各国が自国の利益を追求できると同時に、公平なルールの下で紛争を処理できるようにすべきである。


 中国は一方で自国の経済を保護するための産業政策を講じながら、他方で米国のインフレ抑制法などの経済支援策をWTO規則違反だと非難している姿勢を取っており、その態度は偽善的だとフィナンシャルタイムズ紙のコラムニストが指摘している。

 中国は、クリーンエネルギーや人工知能など戦略的な産業分野で長年にわたり補助金や保護主義的な囲い込み政策を実施してきたが、これらの保護主義政策は隠されてきた。一方で、中国は米国や欧州が気候変動対策や雇用確保のために自国産業を支援する関税・補助金措置を「保護主義」だと問題視している。

 しかし、このような中国の態度が許されているのは、現行のWTO制度が抱える問題があるからだ。WTO加盟国の約3分の2が「途上国」と自称できるルールがあり、中国をはじめとする多くの経済大国も「途上国」扱いを受けている。そのため、中国の保護主義的な産業政策は見過ごされがちになっている。

 このような事態に対し、コラムニストは現行WTO制度を抜本的に見直し、新たな多国間の制度を構築すべきだと提言している。新制度では、各国が自国の経済的・政治的安定を追求しつつ、明確なルールの下で紛争を処理できるようにすべきだ。自由貿易重視の従来のアプローチでは限界があり、転換が必要だ。

 新制度の規律は、国によって異なる政治経済体制を許容し、世界貿易に参加しつつ自国の利益も守れるようなバランスの取れたものでなくてはならない。これは中国の発展の過程から得られる教訓であり、その原則は普遍性があるべきだ。

 現行の制度はすでに機能不全に陥っており、単に安価な労働力を求める従来の経済モデルにも限界が来ていると指摘する。国民の不信感も高まっており、新たなアプローチが必要不可欠だ。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】中国はTPP参加に手をあげたことにより墓穴を掘りつつある

まとめ
  • 現行のWTOルールでは中国を含めた加盟国の3分の2が「途上国」と称し、実態と合わないため機能不全に陥っている
  • 中国などは「途上国」地位を利用し、保護主義策を取りながら他国政策を非難する不公平な状況が生じている
  • TPPの厳格なルールをWTOに取り入れることで制度改革を行い、中国の保護主義政策を認めなくすべき
  • TPPルールは発展途上国と先進国の実情を反映したバランスの取れたルール集大成だ
  • TPPルールの導入により、中国を始めとする一部国の特権的措置を是正し公平なルール運用を実現できる
私は従来からこのブログで中国などが自国の保護主義的な産業政策を講じながら、他国の政策を非難するといった振る舞いに対し、TPPのようなより厳格なルールをWTOに導入すべきだと主張してきました。

現行のWTOルールは、加盟国の約3分の2が「途上国」と自称できるなど、既に実態と合っておらず、機能不全に陥っています。中国などが「途上国」の地位を利用し、保護主義的措置を講じながら、他国の政策を非難するなどの不公平な状況が生じています。

このような状況が長く放置されれば、先進国のみならず、発展途上国からも不満が高まるでしょう。WTOが公平な自由貿易のルールを担保できなくなれば、制度そのものの存在価値が揺らぎかねません。

そこで、TPPのようなより厳格なルールをWTOに取り入れ、制度の抜本的改革を行うべきだと主張する意見があるのです。TPPでは国有企業規制などが盛り込まれており、中国の保護主義政策は認められなくなります。環境や電子商取引などの新分野のルール作りも行われ、WTO協定の現代化が図れます。

TPPには発展途上国から先進国まで、多様な国々が参加しています。その中で、現在の世界経済の実態を踏まえた上で、真に自由で公平な貿易ルールが策定されました。単なる関税撤廃にとどまらず、国有企業規制、環境、電子商取引など、グローバル経済における様々な課題に対応するルール作りが行われています。

つまり、TPPのルールは、途上国の実情を考慮しつつ、先進国の利益も反映させた、バランスの取れた現代的な自由貿易のルール集大成となっているのです。自由貿易を推進しつつ、必要な制限や例外措置なども盛り込まれています。

このようにTPPは、単なる理念ではなく、現実的な視点から作られた具体的で実行可能な自由貿易ルールであると評価できます。そのため、TPPのルール水準をWTOに取り入れることで、WTOを時代に適ったより公平な制度に生まれ変わらせられるという主張につながるのです。

TPPに参加国の実情を反映したバランスの取れたルール集大成であるという点は、WTOへの取り入れを主張する大きな根拠となっていることは間違いありません。

つまり、TPPルールの導入によって、加盟国が「途上国」と自称できる例外規定の撤廃や、国有企業への補助金規制など、中国を始めとする一部国の特権的措置を是正し、真に公平なルール運用を実現できると考えられているのです。

ただし、TPPルールをWTOに組み入れるには、多数国の合意が必要で課題は多いことは確かです。経済連携協定での実践を経ながら、徐々にWTOへの影響を与えていく現実的なアプローチが必要不可欠でしょう。

ただし、中国がTPP参加に名乗りを上げていることは、WTOへのTPPルール導入の可能性に影響を与える重要な要素になり得ます。

中国がTPP参加を表明した背景には、台湾をけん制する狙いがあるとの指摘もあります。しかし一方で、TPPの高い水準のルールに基本的に同意し、自国にもその規律を受け入れる用意があることを示しているとも受け取れます。

もし仮に中国が、TPPルールをWTOに導入することに強く反対するようであれば、大きな矛盾が生じてしまいます。TPPのルール許容を前提に参加を表明しておきながら、同じルールをWTOに持ち込むことに異を唱えるのは整合性を欠くからです。

そういった矛盾を中国自身がおかしたくないと考えるのであれば、WTOへのTPPルール導入を表立っては反対できなくなる可能性は高まります。重要な貿易相手国である中国の賛同があれば、WTO改革のための多数国間合意形成が現実味を帯びてくるでしょう。

中国はTPP参加に手をあげたが・・・・・

TPPの交渉に当初は最大12か国(アメリカを含む)が参加していました。しかし、アメリカがTPPから離脱を表明したため、残りの11か国でCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)が2018年に発効されました。

5か国がTPPへの新規加盟交渉に参加している、または参加を申請している状況です。

・英国 ・中国 ・台湾 ・エクアドル ・コスタリカ

台湾は、中国が台湾のTPP参加を牽制する狙いがあるとの指摘もある中で、加盟を強く希望しています。

しかし、中国がTPPに加盟することは現実的にはまったく無理があると考えられます。TPPのルール水準は非常に高く、国有企業への補助金規制や労働者の権利保護、環境基準の遵守など、中国の現体制とは相いれない部分が多くあるからです。

中国が本当にTPPのルールを全て受け入れるつもりであれば、国有企業改革や労働法制の大幅な見直しが不可欠になります。しかし、そこまでの大改革に踏み切る可能性は極めて低いと見られています。

そうしたTPPの高いハードルを考えると、中国のTPP加盟表明は本気度に欠けるのではないかと指摘される所以です。台湾を牽制する狙いや、協定の内容を把握する意図があるのかもしれません。


しかし結果的に、そうした表明により、TPPのルール受入れを追及される立場に自らを追い込んでしまった形になっています。TPPへの本格的な関与は現実的でない中で、このジレンマを抱えつつあるということが言えそうです。

つまり、中国はTPP加盟を口にした時点で、国内の抵抗勢力を押し切れず、実際には対応できない高いハードルに自らを追い込んでしまった可能性が高いと言えます。

TPPの旗振り役の日本としては、TPPの加盟国をさらに増やしつつ、いずれTPPをWTOのルールにすることを実現すべきでしょう。

世界もこうした動きに同調すべきです。特に米国はそうです。そうして、最悪は中国を一時的、あるいは恒久的にでもWTOから除外してでも、WTO改革をすすめる覚悟を持つべきです。そのための準備を今からすべきです。


米国内でも湧き上がるバイデンのTPP加盟申請の必要性―【私の論評】CPTPP加盟申請で、実は危険な領域に足を踏み入れた中国(゚д゚)!〈'21 10/18〉

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