2022年10月22日土曜日

習氏、3期目へ権威確立 李首相は最高指導部退く 中国共産党大会が閉幕―【私の論評】習近平の独裁体制構築までには、まだ一波乱ある(゚д゚)!

習氏、3期目へ権威確立 李首相は最高指導部退く 中国共産党大会が閉幕

22日、中国・北京で開かれた共産党大会の閉幕式に出席した習近平総書記(国家主席)

 中国共産党の第20回党大会は22日、北京の人民大会堂で、習近平総書記(国家主席)の権威を確立する文言を盛り込んだ党規約改正案を採択して閉幕した。

  今後5年の指導部を構成する中央委員に習氏を含む205人を選出。これにより、習氏の3期目入りが確実となった。李克強首相は同委員から外れ、最高指導部を退くことが決まった。次期最高指導部は、23日の第20期中央委員会第1回総会(1中総会)で発足する。

  李氏は、来年3月に任期切れで首相を退任した後も別のポストで最高指導部にとどまるという観測が出ていた。完全引退せず、名誉職などに就く可能性は残っている。

 党規約改正案の説明では、習氏の地位と思想に忠誠を誓うスローガン「二つの確立」について、「党が新時代に収めた重要な政治的成果」と強調。全党がその決定的意義を把握しなければならないと指摘しており、新たな党規約に盛り込まれるという見方が強い。また、党規約に「『台湾独立』に断固反対し、食い止める」と明記することも決まった。 

 党規約全文は後日、公表される。かつて建国の父、毛沢東に使われた呼称「領袖(りょうしゅう)」を習氏に適用したり、習氏の思想を「毛沢東思想」に並ぶ形で「習近平思想」に格上げしたりする案は見送られたもようだ。個人崇拝につながるという批判が強く、習氏が譲歩したことも考えられる。 

【私の論評】習近平の独裁体制構築までには、まだ一波乱ある(゚д゚)!

中国の党大会を、日本のマスコミなどは日本の国会のようなものと報道したりしていますが、それは全く違います。中国の党大会は、民主的であるかのようにみせかけていますが、ほとんどの内容が中国共産党の中で、派閥争いの結果決まっていることを公表しているにすぎません。


そのため、中国共産党にとっては、ただのイベントのようなもので、政治的にはほとんど意味を持ちません。このようなイベントをしなくても、中国の政治は中国共産党が派閥争いの結果決めたとおりに動くだけです。しかし、あたかも民主的に決めているかのように装うために、わざわざ少数民族まで集めて党大会を開催するのです。

実際、中央委員名簿も発表されますが、それは中国共産党が決めたものを発表するだけで、選挙によって選ばれているわけではありません。そういう意味では、中国にはに日本をはじめとする民主国家における政治家など一人も存在しません。すべてが官僚だともいえます。日本でも官僚は選挙で選ばれるのではなく、人事によって定められます。

では、なぜこれに多くの報道機関が注目するかといえば、本来派閥争いで決まったこと、特ににその機微に触れるようなことなど、表には出てきませんが、党大会で発表されたことによってその片鱗を知ることができ、中国の数年以内の将来をある程度予見できるからです。

今回の党大会では、党最高指導部の政治局常務委員(現行7人)のうち 李克強リークォーチャン 首相以外にも、 栗戦書リージャンシュー 全人代常務委員長、 汪洋ワンヤン 人民政治協商会議主席、 韓正ハンジョン 筆頭副首相の4人の名前が中央委員名簿になく、退任が明らかになりました。李克強が名簿から姿を消したことにより、李克強は失脚したとみるのが妥当です。

「68歳定年」が適用された場合、中央委員を退くとみられていた 王毅ワンイー 国務委員兼外相(今月69歳)は中央委員として留任しました。

23日にも開かれる党の重要会議・第20期中央委員会第1回総会(1中総会)で、総書記を含む最高指導部の政治局常務委員(現行7人)の顔ぶれが正式に決まり、3期目政権が始動する。

今回の退会では、理由は謎ですが、胡錦濤氏が退席させられる以下のシーンもあり、これ中国共産党大会の象徴的な場面になるかもしれないです。


以下に22日の党大会の主な出来事やポイントをまとめました。

胡錦濤氏が退席:閉幕式の途中、習近平(シーチンピン)総書記(国家主席)の前任者、胡錦濤(フーチンタオ)氏が男性2人によって会場から連れ出される予想外の一幕があった。退席の状況は不明だが、胡氏は不本意なように見えました。胡氏は近年、公の場で体調不良の様子を見せることが増えていました。

新たな中央委員会:党大会では党の主要指導機関である中央委員会の新たな顔ぶれが発表された。名簿に記載された205人のうち、女性は11人のみでした。全体に占める割合は約5%にとどまりました。

李克強氏が退任へ:新中央委員会の名簿には習氏に次ぐ序列2位の李克強(リーコーチアン)首相の名前がありませんでした。これは李氏が党の役職から退くことを意味します。専門家の間では、これにより権力のバランスが習氏優位に大きく傾く可能性があるとの声があります。

党規約改定:党大会では党規約の改定が承認され、「闘争」や「闘争精神」など習氏の支持する表現が複数盛り込まれました。中国の指導者は対外的な課題や脅威とみなす事象に言及する際、しばしばこうした表現を使います。富の再分配や大企業の引き締め強化を掲げる習氏の国家キャンペーンを反映して、「共同富裕」の表現も加わりました。

台湾への言及:党規約の文言を「台湾独立に断固として反対し、抑え込む」とする改定も行われました。中国共産党は台湾を実行支配したことは一度もないものの、自国の領土だと主張しています。

新たな称号なし:習氏に新たな称号などは付与されず、既に規約に明記されている習氏の政治思想にさらなる重要性が与えられることもありませんでした。専門家の間では党大会に先立ち、このどちらかが行われ、習氏の権力固めが一層進むとの見方も出ていました。

指導部の顔ぶれ:中央委員会は23日に初会合を開き、政治局員25人やさらに少人数の政治局常務委員を指名する。政治局常務委員会は中国の最高意思決定機関。習氏は党トップとして3期目入りを果たし、終身統治に道を付けるとみられている。

毛沢東に使われた呼称「領袖(りょうしゅう)」を習氏に適用したり、習氏の思想を「毛沢東思想」に並ぶ形で「習近平思想」に格上げしたりする案は見送られたということで、習近平の権力掌握は未だ完璧とはいえない状況のようです。ただ、それに向けて大きな一歩を進めたのは明らかなようです。

「習近平思想」の書籍は日本語版も出ているが、党規約にその言葉は掲載されていない

以前このブロクでも述べたように、党規約の中の習近平の思想が「習近平思想」と書かれるようになれば、そうして習近平が現役のうちにそうなれば、習近平の独裁体制が成立したとみなせるでしょうが、まだそうはなっていません。

習近平の独裁体制が確立できるかどうか、それまでにはまだ一波乱ありそうです。また、習近平が権力を握るにしても、握れないにしても、中国経済は以前このブログでも述べたように、国際金融のトリレンマと、米国による半導体の〝対中禁輸〟という2つの構造要因でこれから、従来のように伸びることありません。それどころか、かなり落ち込むことになります。

中国経済が誰の目からみても、かなり落ち込み続けることが明らかになる前までに、習近平が独裁体制を整えなければ、それは不可能になるでしょう。期限は来年中でしょう。

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2022年10月21日金曜日

トラス英首相が辞任を表明―【私の論評】今回の首相辞任は実は経済政策はあまり関係なし、純粋に政治的な動き、日本でもあるかも(゚д゚)!

トラス英首相が辞任を表明

つい一日前辞任を否定していたトラス首相

英国のトラス首相は20日、与党保守党の党首を辞任すると表明した。党首選を行い、後任を決めた後、首相を辞任する。金融市場の混乱を招いた大型減税策を撤回したものの、党内からは辞任圧力が高まっていた。トラス氏はジョンソン前首相の後任として9月6日に就任したばかりだった。

【私の論評】今回の首相辞任は実は経済政策はあまり関係なし、純粋に政治的な動き、日本でもあるかも(゚д゚)!

経済失策をめぐり批判の集中砲火を浴びるイギリスのトラス首相は10月17日夜、政策上の「過ち」を認めて謝罪する一方、首相として引き続き職務を果たすと宣言しました。

市場の混乱を招いたとされる政府の大型減税案は、首相が責任を取らせ更迭したクワーテング前財務大臣の後任であるハント財務大臣によって、ほぼすべて撤回されました。

ハント財務大臣

トラス政権が発足から約1ヵ月ですが、窮地に陥り、崩壊してしまいました。

その裏で再登板を狙うジョンソン前首相が動いていたようです。

ジョンソン氏自身は、辞めるつもりはないのに辞めました。そのときから、次の首相が「仮の首相」になるように動いていた形跡もあります。

それに嵌められて、トラス首相は経済通というわけではないので急に富裕層優遇の税制を実施したというような陰謀論までは言いませんが、「あり得るな」という感じはします。

ジョンソン前首相は、少なくとも経済の話は嫌いではありません。人脈も非常に広いので、「こうしたらこのようなことになる」と読んでいた節もなくはないです。保守党のなかでも首相擁護論はほとんど出ていません。

トラスさんに人望がないからだと言われたら、その通りなのかも知れませんが、保守党内の底を流れるものとして、ジョンソン氏の議論ががあります。その根回しは間違いなく実施されていたと考えられます。


それがアングロサクソン流のやり方です。トラス氏は、もともとジョンソン政権を最後まで支えた人という、その忠臣ぶりがありましたが、ジョンソン氏は、そのようなことは全然気にしていないようです。

それがアングロサクソン流といえるかもしれません。だからこそ、英国にはチャーチルのような人物は出てきたともいえます。あれだけ嫌われていても、戦争の危機になれば急に首相として登場し、終戦直前にになって用済みになったら首相選で落選しました。

これが英国なのです。だから生き延びてきたのです。

イギリスの現状をみて「日本も減税などしたらインフレになってしまうのだ」という意見も多く見られます。

特に、財務省はそう言いたいでしょう。おそらく、財政制度等審議会でその話をするでしょう。英国経済で言うと、EUから離脱してしまったあとに、安い労働力が入らなくなってしまったため、供給力が落ち気味になってしまったことも事実です。さらに、ウクライナ戦争で、エネルギー・資源価格が高騰しています。だから、元々インフレになりやすい状況になったのです。そこに今回のようなことがあったので、インフレになってしまったことは間違いありません。

ただ、積極財政をするにしても、減税や様々な支援策によって、エネルギー・資源価格の高騰を和らげるという政策は、決して悪い政策とはいえません。いかにも保守らしい政策ともいえます。にも関わらず、今回の辞任劇になってしまったのは、やはり政治的動きが強かったとみるべきです。

そのため、私はこれからエネルギー・資源価格がさらに高騰すれば、英国はトラス首相と同じような政策をとらざるをえなくなる可能性も十分あると思います。

そうして、インフレになってしまえば、金利高、債券安、株安になるのは当たり前です。これを日本のマスコミ等はトリプル安などと騒ぎたてていますが、実はさほどのことではありません。

現在の英国の通貨安は米国との関係があります。米国が強烈に金融引き締めをしているので、英国も日本と同じように通貨安になったのです。そうして、この通貨安は日本にとっては良いことですが、英国にとっても悪いことではありません。通貨安は近隣国窮乏化ともいわれるように、経済を伸ばすことが知られています。そのため、インフレの英国にとっては、通貨安で救われている部分はあります。

この通貨安によって、トラス首相の経済対策は、功を奏したかもしれない可能性はあります。

この通貨安でも、トラス首相は、いろいろ仕掛けられた面もあると思います。日本のように通貨安を悪い事のように吹聴することもできます。今回の辞任劇は、政治的な要素が大きいと思います。

現状では、英国は確かに金利高、債券安、株安とはなっていますが、英国の破綻確率は変わっていません。

そういう意味では、マーケットもこのような売り仕掛けが政治的であることはわかっているので、提灯がたくさんくっついて、トラス卸しが実行されたのでしょう。財政懸念がどうのというほど、実はデータ的にはそうなっていません。

破綻確率を示すクレジット・デフォルト・スワップは、少し高くなりましたが、さほどではなく、何か動きがあれば変化する程度です。それに、すぐ戻りました。破綻するという話がまことしやかに出ているわけではないのですが、マーケットへの噂などでやられたのではないでしょうか。

中長期的には、エリザベス女王2世という社会の重石を失って、かつてスキャンダルがあった国王になり、政治にもおかしな動きがありました。

スコットランドはEUに戻りたいので、分離論がまた出てきます。もし英国が分裂したら、世界の破綻要因です。

ただ、トラス氏が日本のマスコミが語るポピュリスト的経済政策で、英国経済を極度に落としたとか、落とすだろうという見方は正しいとはいえないです。高橋洋一もこの点について、少し前の動画で語っています。その動画を以下に掲載します。


経済政策がどうのこうのということよりも、政治的な動きがトラス氏を追い込んだというのが正しい見方でしょう。それにジョンソン氏だけが、政治的な動きをしたわけではないことも事実でしょう。おそらく、複数の筋が動いていたことでしょう。

今後、英国経済が極端に落ち込むこともなく、政局だけが動いているという形になるでしょう。そうして、トラス辞任劇の裏側も新首相が決まってから、しばらくすれば表に出てくることでしょう。

トラス首相は日本にとっても良い首相になるはずでしたが、今後首相が変わったにしても、日英の関係はこれからも強化されていくことでしょう。

日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っています。

ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本

日本は中国の海洋進出を警戒していますし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙(たいじ)しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのです。

その両国が、TPPとクアッド+英国で、協力しあうのは、まさに理にかなっているといえます。さらには、ファイブアイスとの関係を強化していくこともそうだと思います。

今回のトラス首相の辞任劇は、純粋に英国内の政治的な動きであり、それが日英関係に悪影響を及ぼすことはないとみられます。

そうして、日本でももう少しすると、同じような動きがあるかもしれません。

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2022年10月20日木曜日

岸田政権に「防衛増税」の懸念 有識者会議も「国民負担」の議論、財務省の息のかかった人多く意見は増税一色 民主党の〝愚策〟が再現されるのか―【私の論評】異様なカルト集団 「財務真理教」に与する岸田政権は短期で終わらせるべき(゚д゚)!

日本の解き方

 防衛費の増額をめぐり、財源論や、海上保安庁の予算を含めて計上するといった議論が出ている。「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の第1回会合の議事要旨が公表されたが、防衛力の強化を適切かつスピード感をもって進めることができるのか。

 16日放送されたフジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」で、「日本はどれほどの反撃能力を持つべきか」との問いに対し、「強力な反撃能力が必要」が87%、「必要最小限でいい」が10%、「保持すべきでない」が3%だった。視聴者投票なので一定のバイアスはあるが、大きな差がついた。


 同日放送のNHK「日曜討論」では、「反撃能力」保有の是非をめぐり各党が激論した。自民党と日本維新の会は、持つべきだという立ち位置が明確だった。立憲民主党、国民民主党、公明党は、総じてやや専守防衛という範囲内で行うべきだとしており、共産党とれいわ新選組は否定的だった。

 こうした世論を反映し、有識者会議の議論も、防衛力を高めるという点で意見は一致しているようだ。ただし、有識者会議のメンバーをみて、財務省の息のかかった人が多いと思ったが、案の定だった。防衛力について「NATO(北大西洋条約機構)基準を参考」など、国内総生産(GDP)比2%目標との関係で、数字のかさ上げにつながるNATO基準が当然のように扱われていた。

 NATO基準は、海上保安庁予算や軍事関連の研究開発予算を防衛省予算と合わせて防衛費とするものだ。ただし、厳密なNATO基準では、海保に相当する湾岸警備隊が軍隊の組織下で活動できることが必要だが、日本では海保は国土交通省の機関であり、そうなっていない。

 NATO基準というなら、海保を自衛隊傘下の組織とする法改正が必要だ。そうでなければ、NATO基準なら国防関連費から外れるというべきだ。

 さらに財源となると、有識者会議は一致して増税志向で、財務省のまさに思うつぼだ。「現在の世代の負担が必要」「財源を安易に国債に頼るのではなく、国民全体で負担する」「自分の国は自分で守るのだから、国民負担」「恒久的な財源」などと、有識者の意見は増税一色だった。

 そのロジックは、国防だから国民負担というもので、11年前の東日本大震災後の「復興増税」をほうふつさせる。あの当時、復興増税が財務省主導で行われたが、震災時の増税は古今東西前例のない愚策だった。

 防衛の便益は将来世代にも及ぶので、国債も選択肢としてあり得るのに、財務省は増税ありきだ。

 NATO基準で海保予算を合算したいなら、海保の船の財源は国債であるので、増税だけをいうのは、財務省のご都合主義と言わざるを得ない。復興増税と同じで「特別会計」や「つなぎ国債」と言い出したら要注意だ。

 今は外国為替資金特別会計(外為特会)などで埋蔵金もある。当面は埋蔵金でしのぎ、その後、成長軌道に乗せ対応するという戦略もあるが、財務省は増税一本やりだ。

 復興増税は財務省の言いなりだった民主党政権で行われたが、防衛増税はどうなるのか。岸田文雄政権も民主党政権と同じなのではないか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】異様なカルト集団 「財務真理教」に与する岸田政権は短期で終わらせるべき(゚д゚)!

政府が6月31日に公表した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」の原案には、子育て支援、防衛力強化、脱炭素投資など長期的な歳出拡大につながる項目が並んでいました。一方で、政策継続に不可欠な安定財源の確保については軒並み議論を先送り。岸田文雄首相も参院選を控え、国民や企業の負担増に口をつぐんていました。

口をつぐむ岸田総理

財源のあいまいさは成長戦略にも及んでいました。脱炭素社会の実現に向け、原案は10年間に官民で150兆円超の投資を実現するとし、そのための政府資金を「将来の財源の裏付けを持った『GX経済移行債』により先行して調達する」としました。

「GX経済移行債(仮称)」としては、将来の償還財源を明確にして発行する「つなぎ国債」としての発行が議論されているとされ、そうであれば、政府債務残高を中長期的に一段と悪化させることは回避できますが、これは財源確保の手段を事実上先送りするものであり、償還財源が十分に確保できずに将来にわたって国民の負担となり、実質増税となってしまいます。

首相は必要な政府資金の額を20兆円規模と表明していました。ただ、GX移行債の償還財源などの詳細は夏以降に首相官邸に設置する「GX実行会議」で議論するとしており、参院選後に先送りされた形でした。

この頃から、増税を懸念する人たちも多かったのですが、この頃には安倍元総理もご存命で、岸田総理に対して睨みをきかしていたので、まだ安心感がありました。

安倍元総理が亡くなられてから、しばらくたってから状況は変わりました。まるでタガが外れたように岸田政権内で、増税論議がなされています。

自民党税制調査会は11日に「インナー」と呼ばれる幹部の非公式会合を開き、2023年度税制改正に向けた議論を始めました。会長は岸田派の宮沢洋一氏が続投することに決定しました。

宮沢洋一会長は17日、共同通信などのインタビューに応じ、年末の検討課題となる防衛費増額の財源について、歳出削減で賄えない場合は増税が選択肢になるとの認識を示しました。税目は「所得税、法人税を含め白紙で検討する」と述べました。2023年度税制改正で、株式投資などを対象とする金融所得課税の強化を議論する意向も表明しました。

自民党税制調査会宮沢洋一会長

防衛費については今後5年で国内総生産(GDP)比2%以上に倍増させる議論があり、単純計算で11兆円に迫る予算が必要になる。政府内では赤字国債の発行で当面つないで、法人税やたばこ税を念頭に将来的な増税で財源を確保する案が浮上しています。

赤字国債の発行で当面つなぐとは、つなぎ国債のことを意味すると思われるのですが、つなぎ国債は3年の償還が必須で、実質増税と同じです。これとともに、「防衛費を上げるために消費税を12%にする」などという観測も出てきているようです。

増税で防衛費を賄うということなれば、日本経済はまた低迷して、防衛費が増大したにしても、日本の国力は落ち、いざ有事というときに戦費を賄うこともできず、まさに本末転倒と言わざるを得ないような状況に追い込まれるのは間違いありません。

宮沢洋一氏は、自民党税制調査会に再選されたためか、意気揚々と意気軒昂に、増税・緊縮の権化が前面に出てきました。この見解は防衛増税への布石ということでしょう。社会保障を人質に増税を迫るという姑息な手法ですが、宮沢氏は、単にお金のプール論、金本位制脳に囚われているだけです。上の記事で高橋洋一氏が語っているように、社会保障を現状維持したまま防衛費増は可能です。

安倍・菅政権のときには、安倍政権のときには2回の消費税増税をしましたが、その他の増税は抑制気味でした。三党合意のためさすがの安倍総理も防げなかった、消費税2回の増税に成功で満足すれば良いものを、とにかく増税で各省庁や外郭団体、民間企業への差配の強化で財務省の権力を増大すること、こそが、省益と考える財務省の増税や緊縮への欲望は未だ旺盛です。

その彼らの目的は、財務省を引退後天下り先で、超ウルトラリッチな生活を満喫することだけです。官僚としての矜持も何もありません。日本経済が良くなろうが、悪くなろうが、国民のことなど全く関心がありません。


以上の表で、複数の企業に天下りしていますが、これは天下りした後に別の会社に移っていることを示しています。他社に移るときには、無論高額な退職金も得ることができます。

岸田政権下で実施済みと、これから実施される可能性のある緊縮財政を以下に列挙します。
75歳以上医療費1割→2割
たばこ税増税
雇用保険料0.2%→0.6%引き上げ
防衛増税
炭素税導入
高額医療負担政府はゼロへ
長期脱炭素電源オークション、費用は国民
東西の電源融通増強、一部国民負担という方向
相続税、贈与税の見直し、中間層からの徴収強化
金融所得課税
実質増税と同じ「つなぎ国債」

本当に驚くばかりです。現在のような状況なら、普通なら減税、積極財政をするのが当たり前です。しかし、財務省に逆らえないとみられる、岸田政権はこれだけの増税・緊縮を一部は実行し、さらに俎上に載せているのです。

これを全部実施されてしまうと、日本はまた確実に「失われた30年」に突入することになります。岸田政権が長期政権になれば、これらを全部実現する可能性は十分にあります。

この状況について、高橋洋一氏は動画で以下のように述べています。


この動画簡単にまとめると、防衛増税には党内の保守派が難色をみせるのは当然であり、いずれ自民党内の政局になる可能性がでてきたということです。

このブログでも、何度か岸田政権が財務省との関係性と、派閥の力学だけで動けば、短期政権で終わると主張してきましたが、岸田政権はまさにその通りの動きをしています。

一連の増税・緊縮財政の動きは、まさに財務省との関係性で動いていることを示しています。

内閣改造では、正式の公表の前にほとんどの人事が漏れており、これは昭和時代によくあったことで、人事のほとんどが派閥との話し合いの中で行われたことを示しています。これは、まさら、派閥の力学で動いているということです。

さらに、悪いことに内閣改造は露骨に安倍派外しをしたということがわかる内容であり、これは、派閥第4位の弱小派閥がこれを行ったということで、安倍派以外の主流派派閥からも反発をかったのは間違いありません。

これでは、党内政局で、岸田政権は長期政権にはなりえないことがはっきりしたものと思います。

特に、防衛増税では自民党内の保守派は無論のこと、それ以外の保守派からかなりの反発を買ったのは間違いないです。

野田政権による消費税増税の動きに賛成の意思を示して、保守派内でも物議を醸していた、あの櫻井よしこさんですら、防衛増税にははやばやと反対の意見を公表しています。保守派にとっては、防衛増税は寝耳に水であり、とうてい受け入れられないです。

財務省で出世するにはできるだけ、多くの緊縮・増税をするかが決め手になります。これこそ、「財務真理教」です。彼らは国益よりも省益、自分の出世と天下りが大事なのです。財務省入省後に厳しい洗脳が始まります。円安で政府が儲かった分を防衛費に廻すなどのことはせずに、防衛増税をしてその結果日本が再び失われた30年に見舞わて、国民が苦しもうが、全く頓着しないのですから、異様なカルト集団といわざるをえないです。

岸田政権は、長期政権にしてしまえば、自民党はもとより、日本国そのものを毀損することが明白になりました。日本国、日本国民のために短期で終わらせるべきです。

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2022年10月19日水曜日

北朝鮮が法令で定めた核兵器使用で高まる戦争の可能性―【私の論評】実は北も多いに脅威に感じている中国に対処することこそ、日米韓が協力していくべき理由(゚д゚)!

北朝鮮が法令で定めた核兵器使用で高まる戦争の可能性

岡崎研究所

 9月22日付の英Economist 誌が「金正恩が彼の核兵器への権限を委譲することを考えている。この政策は抑止力を強化するが、事故のリスクを高める」と論じている。

 尹錫悦韓国現大統領は、繰り返し自国の「kill chain」計画(攻撃が差し迫ったと考えられたら、北朝鮮のミサイル施設とその指導部を先制打撃するシステム)について言及した。

 金正恩は9月8日の演説で「核兵器が地上にある限り、かつ帝国主義が残る限り、決して核を手放さない」と述べた。彼は北朝鮮がいつ核を使うかを明らかにする法令を公布した。核兵器は指導部と核司令部が「危険に晒された」ときに、「自動的かつ即時に」発射されうることになった。

 この動きは北朝鮮の抑止力が相当成熟したことを示す。以前は金が核を使う唯一の権威であった。新法は金が核兵器に関する唯一の指揮を持つとするが、彼がその権限を委譲する可能性を開いている。法令は、金の命や彼の政権を支えている兵器へのいかなる攻撃も核戦争になり得るとした。

 核のボタンに指を置いている人は、兵器が常に必要な時に使えると同時に、適切な許可なしには決して使われないことを欲するが、核についての権限移譲は、無許可使用と事故による使用のリスクを高めることになる。

 金王朝は70年間続き、軍がクーデターをできないようにしてきた。部下に核コードを引き渡すと、彼らに金正恩を不安にする力を与えることになりかねない。核攻撃を始める権限を前もって与えることは技術的、人間的エラーの可能性を増やす。間違った攻撃探知システムからの情報に基づいて司令官が攻撃を命じることはありうる。

 このようなリスクは韓国と米国に注意深く行動する動機を与えるかもしれない。金が新兵器を開発するのを止めるものはほとんどない。金政権には脅しや制裁は効かない。

 尹大統領の非核化への「実質的進展」と引き換えに北朝鮮経済への協力をするとの提案は全くの軽蔑で迎えられた。金の妹は尹を「ナイーブな子供」と呼んだ。

 核の脅威は金政権の存続を助けている。しかし彼の許可なしに核兵器が発射されれば、彼は究極的な敗者になろう。米国と韓国は核使用は彼の政権の破滅になると明言してきた。

* * * * * *

 北朝鮮の最高人民会議は9月8日、核兵器の使用の原則や条件を盛り込んだ法令を採択した。この法令は11項目からなる。

 金正恩国務委員長が核兵器に関するすべての決定権を持つとしつつ、「指揮統制システムが敵の攻撃の危機に瀕した場合、自動的かつ即時に敵への核攻撃を断行する」としている。具体的には「核兵器や大量殺りく兵器による攻撃のほか、国家指導部と核兵器の指揮機関、国の重要戦略対象に対する攻撃が、行われたり差し迫ったりしたと判断した場合、核兵器を先制攻撃に利用する」としている。

 この法令が金正恩から部下に核兵器に関する権限を委譲するものかどうかは明確ではないが、「自動的かつ即時に敵への核攻撃を断行する」ためには、このエコノミスト誌の解説記事が指摘するように核兵器に関する権限の委譲が必要なように思われる。そしてそれは人間的、技術的エラーによる核戦争の開始の可能性も高めるだろう。

日本を取り巻く国際戦略環境は悪化するばかり

 金正恩は「核兵器政策の法制化により、(北朝鮮の)核保有国としての地位が不可逆的になった」と演説で述べた。松野博一官房長官は「北朝鮮の完全な非核化に向け、日米や日米韓で緊密に連携していく」と述べたが、完全な非核化は当面達成できない目標であると思われる。願望の表明は政策にはならないことを踏まえ、対北朝鮮政策を今一度日米韓3カ国でレビューする必要があるのではないか。

 特に北朝鮮の首脳を標的にする「kill chain」計画を声高に話すことにはあまりメリットがないと思われる。核兵器の使用については、米国は permissive action link というものを開発してきた。これは要するに大統領が特定の暗号を特定の器具に入力しないと米国の核兵器は起爆しないというものである。

 北朝鮮も類似の技術を開発し、持っていると思うが、その詳細は分からない。今度の法令についても、慎重に対応すべきであり、より詳細かつ正確な情報を日本として確保、分析し、対処の方針、政策を立てる必要がある。

 最近、特に本年(2022年)の北朝鮮のミサイル発射の頻度と、その性能向上の現実に鑑みると、核保有国としての北朝鮮の動向は、相当危険な方向にあり、日本を取り巻く国際戦略環境は、悪化するばかりであり、改善していない。日本政府の対北朝鮮政策の方針は、「核、ミサイル、拉致」問題の包括的解決であるが、北朝鮮からのミサイル発射の状況を見るだけでも、包括的解決が遠のいているように感じられる。

 日本政府が凍結させたイージス・アショアの代替案を、日本政府から米国に提案することも含め、日本自ら日米同盟を強化し、独自の防衛を強化する具体策を実行して行かなければ、現在の国際戦略状況が改善することは難しいだろう。

【私の論評】実は北も多いに脅威に感じている中国に対処することこそ、日米韓が協力していくべき理由(゚д゚)!

北朝鮮のミサイル発射をマスコミなどは挑発と言っていますが、北は安全保障のために核ミサイルの戦力化を図っていると見るのが正しいです。日米韓が北の核廃絶に努力したとしてもそれは不可能です。北の核武装を前提に我が国も安全保障を考えるべきです。北の核廃絶が出来るとは米も考えておらず、さらにはそれが良いこととも思っていないでしょう。

このブログでは、何度か掲載してきたように、朝鮮半島に北朝鮮とその核があるということ自体が、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいる面があることは否めません。

金正恩は、明らかに中国を嫌っています。それは、中国に近いとされる血を分けた金正男を 2017年に暗殺、これまた中国に近いとされた叔父の張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長を2013年に処刑しています。

金正恩が中国を嫌うのは、北朝鮮の実体は、金王朝であり、金正恩の使命は、金王朝を守り抜くことであり、中国に浸透されれば、王朝の存続が危うくなるからです。

金正恩は、中国の朝鮮半島への浸透を防ぐためにも、核ミサイルの戦力化を図っているのです。

それは、米国も理解していることでしょう。米国にとっては、朝鮮戦争の休戦ラインの現状維持をすることが、朝鮮半島情勢においては最も重要なことです。これは、中国もロシアも変わらないです。

中国にとっては、北が核を放棄することは、好ましいことであり、そうなればすぐに北に浸透し、韓国にも浸透を開始し、ある程度の年月をかけても、いずれ朝鮮半島全体を中国の朝鮮人民による自治区にするか、完全に中国に取り込み朝鮮省にする腹でしょう。

下に、中国外務省から流出したとされる極東の地図をあげておきます。この地図、どうやら偽物のようですが、それにしても、日本を中国領にすることは、米軍も駐留しておりかなり難しいと考えられますが、朝鮮半島が中国の領土となることはあり得ると思います。

無論、それに対して米国はこれに徹底的に抵抗するでしょうが、朝鮮半島全体が中国に浸透されるということは多いにあり得ると思います。北朝鮮はこれを脅威と捉えていることは間違いないでしょう。

であれば、米国にとっても、ロシアにとっても、現状維持のためにも、北に核ミサイルがあることを許容せざるをえないというのが、基本的な立ち位置でしょう。ただ、北がさらに核ミサイルの開発をすすめて、米国やロシアの脅威になることは避けたいでしょう。

最近では、ロシアはウクライナ侵略で、朝鮮半島どころではないというのが正直なところでしょう。米国としても、ウクライナの対応にかなりの労力を割かざるを得ません。そのため北朝鮮は、特に中国の脅威に対して対抗しなければならなかったと考えられます。

北としては、こうしたこともあり、朝鮮半島での軍事バランスが崩れることを恐れて、米中に向けても、一連のミサイル発射実験をしたという側面は否めないと思います。中国に対しては、現在の情勢を利用して、朝鮮半島に浸透することを牽制するためと、米国に対して、半島から目を離さないようにさせるという意味合いもあったでしょう。

北朝鮮にとって日本の位置は丁度ミサイルの実験場のようなものです。本当にグアム方面に撃って米国を激怒させれば、自国が崩壊するので、東にしか撃てないです。日本では、報道されないだけで、北朝鮮はロシアなどに向けておびただしい数のミサイルを撃っています。東方向への発射はかわいいくらいの数です。ただ、中国に対しても黄海などに控えめにときたま打っています。

何しろ、北朝鮮は中国と国境を接しています。ロシアとも国境を接していますが、国境線は長くありませんし、中国にはすぐ近くに、大部隊が存在します。これになだれ込まれれば、北にはなすすべもありません。

台湾も中国の脅威にさらされているといいながら、台湾は島嶼国であり海に囲まれていまます。北にとって中国の脅威は、台湾などよりもより切実で、切羽詰まっているところがあります。

国境を接していることから、中国の陸上部隊は、すぐに北に侵攻できます。ウクライナに国境を接しているロシアのようです。だからこそ、北としては現在核ミサイルを打って、中国に対する牽制を行う必要があったとみられます。日本では、こうした視点はほとんど語られません。米国でも語っていたのは、ルトワック氏くらいなものです。

そうして、北の安全保証の仕上げが、北朝鮮がいつ核を使うかを明らかにする法令を公布したことと、これから実行されるとみられる核実験であると見られます。これにより、金正恩はたとえ自分が暗殺されても、報復する構えであることを表明したともいえます。

それまでもそうだったのですが、ウクライナ戦争後、北朝鮮は完全に孤立している状態です。戦力的には、ミサイル以外の通常兵器は、第2次世界大戦末期のものですから、米中と戦えば5日で完敗するでしょう。

それをわかっているので、日米韓中露の演習に大反発するのです。米国のミサイルを備えた『B-2』戦略爆撃機が北朝鮮の付近を飛ぶだけでもかなり脅威を感じているはずです。この爆撃機に搭載されているミサイルは、北朝鮮のどこにでも届くからです。空母打撃群による演習もにもかなり神経を尖らせていることでしょう。

それは、中国の演習なども同じことです。台湾向けの演習であっても、すぐ近くの北朝鮮は気がきでないというのが実状でしょう。

米国の研究グループ「38ノース」は、9月下旬に北朝鮮北東部の核実験上で、クレーンを搭載したとみられるトラックの近くで高さ約11m、幅約1mの白い物体を確認したとして、7回目の核実験の準備を進めている可能性を指摘しています。 

北朝鮮は、次に小型化に関する実験をするだろうという見方は、6回目が終わった時点で強く指摘されていました。今年に入っての多様なミサイル、それらに小型化された核弾頭を積める可能性というものを示すための実験になるでしょう。

小型化に成功すれば、“火星12の性能と合わさった時にどうなるかわかるだろう”ということを振りかざしてくる可能性があるので、非常に注目していかなければならないです。

一方、核を保有しているのは北朝鮮だけではありません。日本政府は「北朝鮮のミサイル防衛」と言いますが、いい加減、ごまかすのはやめたほうがい良いでしょう。


中国軍は北朝鮮軍の数倍数十倍の対日攻撃用弾道ミサイルや長距離巡航ミサイルを取りそろえ、日本全土を焦土と化す態勢を整えているのです。

本当の脅威は中国の核ミサイルです。そこがすっぽり抜けて「北朝鮮は~」と言っているのは滑稽としか言いようがありません。米国は、北朝鮮も最大の脅威を感じている中国を見ているからこそ、日米同盟、米韓同盟の強化、日米韓も含めての安全保障協力を進めています。

北朝鮮のミサイル発射実験を注視していく必要はありますが、北も脅威を感じる中国に対する対処こそ日米韓が協力していくべき理由であることを忘れるべきではありません。

そうして、日本が中国の脅威に対抗するためには、もはや抑止力の強化しなかないことを認識すべきです。

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2022年10月18日火曜日

姑息な〝GDP隠し〟習政権が異例の3期目 経済の足引っ張る「ゼロコロナ」自画自賛も 威信を傷つけかねない「粉飾できないほど落ち込んだ数値に」石平氏―【私の論評】習近平が何をしようが中国経済は、2つの構造的要因で発展しなくなる(゚д゚)!

姑息な〝GDP隠し〟習政権が異例の3期目 経済の足引っ張る「ゼロコロナ」自画自賛も 威信を傷つけかねない「粉飾できないほど落ち込んだ数値に」石平氏

中国共産党大会の活動報告で実績を強調した習氏=16日、北京の人民大会堂

 習近平国家主席率いる中国の経済に異変が起きているのか。18日に予定していた7~9月期の国内総生産(GDP)や、それに伴う工業生産や消費など経済指標の発表が延期となったのだ。習氏は、開会中の第20回共産党大会で「異例の3期目」を確実にし、貧困脱却を果たしたなどと自画自賛したが、「ゼロコロナ」政策の長期化は、中国経済の停滞を招いているとの見方は強い。実際、4~6月期のGDPは急減速した。「覇権拡大」や「人権弾圧」を理由とした欧米諸国の制裁も続いている。識者からは、習氏の権威を傷つけないよう、党大会中の発表を避けたとの見方が出ている。

 中国で、異例の出来事が頻発している。

 国家統計局は17日、翌日に予定していた「7~9月期のGDP」の発表を延期すると発表した。新たな日程も示さなかった。2017年の前回の党大会の際には、統計局は開幕翌日にGDPを発表していた。

 GDP発表に伴う、「工業生産や消費などの経済指標」や、19日に発表予定だった「主要70都市の新築住宅価格指数」も延期となる。国の主要統計の公表が、突如延期となるとは尋常ではない。

 それだけではない。中国税関総署も14日に予定していた「9月の貿易統計」の公表を事前通知もなく見送っている。

 GDP公表延期について、「統計局の仕事上の都合」と説明されているが、相次ぐ異常事態の背景として、党大会の最中に、習政権の威信を傷つけかねない数値の公表を見送った可能性がありそうだ。

 実際、習政権が推進してきた、新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策は、中国経済の停滞を招いている。

 国家統計局が7月に発表した「4~6月期のGDP」は前年同期比0・4%増と急減速した。上海市のロックダウン(都市封鎖)など、強権的な感染対策が景気悪化を引き起こしたとみられる。

 現に、4~6月期、中国の工業生産は3・4%増で、1~3月(6・5%増)から鈍化した。投資動向を示す固定資産投資は6・1%増で、上昇率は1~3月(9・3%増)から縮小。規制強化の影響が残る不動産開発投資は5・4%減だった。

 習政権が強力に推し進める「ゼロコロナ」政策に対しては、国民の不満が形となって現れている。北京市内の高架橋に今月13日、習政権を批判する横断幕が掲げられ、「PCR検査は不要、食事が必要」というメッセージが記されていた。

 ところが、習氏は16日の中央委員会活動報告(政治報告)で、総書記就任後の2期10年で貧困脱却などを果たしたとして、「中華民族発展史に輝く歴史的勝利」を収めたとアピールした。批判を集める「ゼロコロナ政策」についても、「感染症対策と経済、社会発展の両立において重要で前向きな成果を収めた」と主張した。

 こうした状況での経済統計公表の見送りを、識者はどう見るのか。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「経済状況がかなり悪くなっているのだろう。そこそこ悪い程度なら、延期せずに成長率を1、2%上乗せして発表したはずだ。粉飾できないほどの数字になっているのではないか。中国経済が落ち込んだ直接の理由は『ゼロコロナ』政策で、誰から見ても経済の足を引っ張っている。習氏が党大会で自画自賛したから、発表したら習氏の顔に泥を塗ることになる。GDP発表の延期は政治的な意味合いが大きい」と話す。

 ゼロコロナ対策に加え、不動産バブル崩壊の影響を指摘する声もある。

 評論家の宮崎正弘氏は「7~9月期のGDPは、各工業生産地がロックダウンした時期で、一番深刻な数字が出るとみられている。さらに、不動産不況に地方での銀行取り付け騒ぎもあって、中国経済は何もいいことはない。それにもかかわらず、まだ『ゼロコロナ』政策をやっている。悪循環が続いており、経済状況が相当深刻ということが発表を遅らせた主な原因だろう。党大会が終わって、新人事を華々しく発表する陰で、こっそりとGDPを発表するのではないか」と指摘した。

【私の論評】習近平が何をしようが中国経済は、2つの構造的要因で発展しなくなる(゚д゚)!

中国の経済の停滞の原因は、ゼロコロナ、不動産バブルだけではありません。これだけであれば、この2つの不況原因を取り除けは、中国経済は再び発展することになりますが、そうではないのです。

この他に2つの構造的な要因があります。一つは、国際金融のトリレンマによるものであり、もう一つは、ごく最近新たに付け加わった、ジョー・バイデン米政権が打ち出した、「半導体技術の対中国禁輸」です。
まずは、国際金融のトリレンマによる構造的要因です。この理論によれば、独立した国内金融政策、安定した為替相場(固定為替相場制)、 自由な資本移動、の三つは同時に実現できません。実際、日米を含め殆どの国は上記三 つのいずれかを放棄しています。

これに対して中国は、金利・為替・資本移動の自由化を極 めて漸進的に進める過程において、国内金融政策の自由度を優先しつつ、状況に応じ て為替と資本移動に関る規制の強弱を調整することで、海外の資本・技術を取り入れて 成長し、グローバルな通貨危機等の波及を阻止できました。 

しかし、資本移動を段階的に自由化した結果、最近では人民元相場と内外金利差の相 互影響が強まっています。これにより、国内金融政策が制約を受けたり、資本移動の自由 化が一部後退するなど、三兎を追う政策運営は難しくなりつつあります。

中国は、グローバル経済に組み込まれた今や世界第2位の経済大国であり、こうした 国は最終的に日米など主要国と同様の変動相場制に移行することで、国内金融政策の 高い自由度を保持しつつ、自由な資本移動を許容することが避けられません。

移 行が後手に回れば国際競争力が阻害されたり、国内バブルが膨らむ恐れがあります。一方で、 拙速に過ぎれば、大規模資本逃避や急激な人民元安が懸念されます。中国は今後一層難 しい舵取りを迫られることになります。

ただ、はっきりいえば、段階的にでも変動相場制にするか、自由な資本移動を禁止して、すべての国際金融の流れを政府が一元的に管理するかいずれかを選択しなければならないです。

前者にすれば、中国による独立した金融政策、資本自由な移動はできます。

後者にすれば、自由な資本移動はできなくなるものの、固定相場制、独立した金融政策は実施できます。

後者にすれば、中国はほぼ国際金融から切り離されることになります。ほとんど資本移動がなかった一昔前の中国に戻るしかなくなります。ただ、これでは中国の経済発展は望めません。

中国がこれからも経済発展をするつもりなら、やはり日本をはじめとする先進国のほとんどがそうしているように、変動相場制に移行するしかないのです。すぐに移行するのが無理でも、少しずつそちらのほうに舵を切るしかないのです。

このようなことは、まともなエコノミスト等なら誰でも知っていることです。これを言わない識者は国際金融に関しては、似非識者とみて間違いないです。

さて、もう一つの構造的要因は、ジョー・バイデン米政権が打ち出した「半導体技術の対中国禁輸」です。バイデン米政権は7日、半導体製造装置の対中輸出規制の適用対象を大幅に拡大する一連の包括的な措置を発表しました。これには米国の半導体製造装置を使って世界各地で製造された特定の半導体チップを中国が入手できないようにする措置が含まれました。

このバイデンの公表は、明らかに中国の党大会の直前のタイミングで、意図して意識して出したものでしょう。これによってさらに、習近平政権を追い詰めることを意図しているものみられます。

この措置の中国に対する破壊的な悪影響については、以前このブログに述べました。その記事のリンクを以下に掲載します。
米が半導体で衝撃の〝対中禁輸〟バイデン大統領、技術仕様した第三国製も規制対象に 「中国の覇権拡大人権弾圧許さない意思表示」識者―【私の論評】最新型半導体を入手できない中国のスマホは、かつての日本のショルダーホンのようになるか(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、まずはこの記事の元記事から引用します。
 米商務省は7日、半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表した。最先端半導体を扱う中国企業の工場への製造装置販売を原則禁止し、スーパーコンピューターなどに使われる関連製品の輸出も制限した。

 米国は以前から、先端の半導体分野で中国包囲網を強化してきた。

 半導体の小ささや精密性は、「プロセス(製造工程)」という指標で優秀性が示される。米国はこれまで、「10ナノメートル」レベルのプロセスで半導体を製造する中国企業への装置輸出を原則禁じていた。新規制では、現行の主力世代である「14ナノメートル」未満のプロセスを用いる先端半導体を製造する中国企業まで装置輸出が原則禁じられる。

 一連の措置が正式適用されれば、中国の半導体製造業がストップするだけでなく、米国の半導体技術を使って中国で生産をしてきた世界各国の企業の事業継続が不可能となる。
以下にこの記事の【私の論評】から引用します。
今回の制裁は中国半導体産業の終焉であり、トランプ政権下の恫喝的ながらも、致命傷ではなかったようなやり方とは違う致命的なものです。

生き残る中国企業がいるとすれば最後まで制裁を受けなかった企業だけであり、最後まで制裁を受けた企業は死亡率100%です。

今回の制裁の是非について、中国の半導体製造に関与していた米国人やグリーンカードを保持者のほとんどは米国に戻るか移住して、11月8日の米中間選挙には、自分たちの足で投票所に出向き投票することになるでしょう。これが民主党にとって有利に働くかどうかは、未知数です。今後の推移を見極める必要があるでしょう。 

中国はもはや29nm以下の半導体製造能力を持たず、リソグラフィ(写真の現像技術を応用して作られた微細パターン作成技術のこと)に関する全ての技術を完全に失いました。
この記事では、今後中国が5G対応の新型スマホ等を開発するとすれば、一昔前の日本のショルダーホンのようなものに、iPadのモニタースクリーンのようなものなるのではないかと予想しました。過去の4Gは許容されるようですから、実際4Gまでの技術で5Gのスマホを製造した場合、半導体の集積度が全く異なりますから、実際にそのようなことになってしまいます。

5G技術の最も大きな特徴は、「超高速・超低遅延・多数同時接続」です。 「超高速」は、現在の第4世代の移動通信技術であるLTE(Long Term Evolution)との最も大きな違いです。 5Gは理論上、LTEより最大20倍速い20Gbpsのスピードを実現できるとされています。

今後実現するARやVRのようなコンテンツを楽しむには、より速い速度で膨大なデータを転送する必要があります。

「超低遅延」は、途切れのないサービスを意味します。 端末から基地局までの通信にかかる時間を大幅に短縮し、リアルタイムにより近づきます。 そのため、超低遅延の実現は安全な自動運転を可能にするための必須条件となります。

「多数同時接続」は、同時に接続できるデバイス数が多くなることを意味します。 5G時代には、1㎢以内で同時に接続できるモノのインターネットとスマートデバイスが4Gの10倍の100万程度まで増えると予想されています。 これは、ワイヤレス(Wireless)なスマートシティが可能になることを意味します。

となると4Gの技術で、5Gの技術を実現するとなると、素人考えでもとてつもないことになることは十分に予想できます。

ただこれは、あまり現実的ではないですから、中国においては、一般の人が使うスマホは既存の4Gタイプのようなものになると考えられます。

ただ、軍事的な目的で用いられるようなものは、4Gの技術で5Gを実現するために、ショルダーホンのようなものが用いられることになるかもしれません。

ただ、一般の人のコンピュータやスマホなどはそれで対処できるかもしれませんが、新しい5G 対応の半導体は手に入れられなくなるので、これから中国が新しい技術に対応するとすれば、かなり大きな半導体を開発して新たなものに入れ、古いタイプの取り替えには、外付けで巨大な箱の中に大きな半導体を入れたボックスなどで対応するということになるかもしれません。

ただ、そのようなことが本当に可能かどうかは、疑問ではあります。

中国は5Gに関する特許を多数取得しているともいわれますが、5G対応の半導体を入手できなけば、このようなことになってしまうのです。

イギリスでは、エリザベス朝の時代にすでにコンピュータ理論の基礎的な理論は出来上がっていたのですが、それを実現するための素材や技術がなかったので、コンピュータを実現することはありませんでした。コンピュータの実現は、1946年のENIACの登場等まで待たなければならなかったのです。

それと似たようなことが、今後の中国で起こるのです。それでも、中国は独自の半導体製造技術を開発するかもしれません。しかし、それには10年以上の年月を要することになるでしょう。

ただ、それを実現したとしても、半導体の開発速度はかなり速いですから、日本を始めとする先進国の技術は、さらに異なる次元(たとえば5Gから6G)に移っていることでしょう。

中国経済は以上2つの構造的な要因で、発展する見込みはなくなりました。そうして、これはあまりにもはっきりしていて、疑いの余地はありません。

私自身は、習近平は以上のことを糊塗すために、あえてゼロコロナ政策を推進しているのではないかとさえ思っています。

そもそも、現在中国のコロナ政策はダイナミック・ゼロ・コロナ政策とも呼ばれています。「ダイナミック・ゼロコロナ」政策の「ゼロ」は、国内の感染者を常にゼロに抑えるという意味ではなく、「ある特定の地域において感染が起きたら、小規模なうちに徹底的に抑える」ことを指します。そうしていれば、コロナによる「社会的な影響」はゼロにできるということです。

しかし、これは感染力の強いオミクロン株が出てきてからは、明らかに通用しない政策だと考えられます。


にも関わらず、実行するのはなぜかといえば、これまでの徹底的な対策・指導による「成功体験」が強いからとか、中国の医療体制が脆弱であるからともされていますが、ここまで固執するのには他にも原因があるとみて良さそうです。

上で述べてきたように、中国の経済の停滞は、構造的なものではなく、コロナや不動産バブルのせいであると見せかけ、この停滞は構造的なものであることを隠すためなのではないかという疑念は払拭できなくなってきました。

習近平としては、この経済の構造的な発展阻害要因を隠蔽する腹であると考えるのが妥当でしょう。だからこそ、経済統計も公表しないのでしょう。それによって、「異例の3期目」を実現するだけでなく、権力基盤を固めたいのでしょう。

権力基盤が固まるまでは、ゼロコロナ政策を維持し、経済停滞をそのせいにして、国民を懐柔する腹積もりなのではないでしょうか。

来年になって、ゼロコロナ政策が解除されれば、習近平の権力基盤は固まったとみるべきでしょう。そうでなければ、基盤が固まっていないとみるべきです。ただ、いつまでも、ゼロコロナ政策を維持することはできないでしょう。少なくとも来年の後半には、いずれにしても、この政策は放棄せざるを得なくなるでしょう。

ただ、中国共産党指導部はずっと前から習氏をナンバーワンの座に維持すると決めています。習氏とその一派は、彼を守ってすべての弱みや失敗を下級官吏のせいにするためになら、どんな理由や言い訳でも見つけることでしょう。

ただし、中国共産党が何を取り繕うと、習近平が何を言おうと、中国経済はこれから先に上げた2つの構造的要因で発展しなくなることは確かです。

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2022年10月17日月曜日

「テレビ朝日社長が辞任すべき事態だ」 玉川徹氏「虚偽・政治的意図」発言問題 「日本のジャーナリズムの危機」 自民・和田参院議員に聞く―【私の論評】コロナ禍を根拠もなしに煽った玉川と、それを許容したテレビ朝日社長はずっと以前に辞任すべきだった(゚д゚)!

「テレビ朝日社長が辞任すべき事態だ」 玉川徹氏「虚偽・政治的意図」発言問題 「日本のジャーナリズムの危機」 自民・和田参院議員に聞く

〝玉川発言〟の責任を問われるテレビ朝日

 テレビ朝日系の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」のコメンテーターを務める同社社員の玉川徹氏の「虚偽・政治的意図」発言問題が収まらない。出勤停止中の玉川氏は19日にも復帰予定だが、放送法第4条違反の疑いで、総務省やBPO(放送倫理・番組向上機構)に徹底調査を求める動きが出ている。テレビ放送やジャーナリズムに詳しい、元NHKアナウンサーで自民党の和田政宗参院議員に聞いた。

 「放送やジャーナリズムの信頼性や根幹を揺るがす事態だ。テレビ朝日は責任の重大性を認識していないのではないか」


 和田氏は冒頭、玉川氏の問題をこう語った。

 玉川氏は、安倍晋三元首相の「国葬(国葬儀)」翌日(9月28日)の放送で、菅義偉前首相の弔辞について、「僕は演出側の人間ですから、テレビのディレクターをやってきましたから、それはそういう風につくりますよ。当然ながら」「政治的意図がにおわないように制作者としては考えますよ。当然これ(広告大手の)電通入ってますからね」と語った。

 テレビ朝日は今月4日、「虚偽発言」の部分について「出勤停止10日間」の懲戒処分とした。

 和田氏は「丁寧に事実を取材して、裏付けを重ねて報じるのは報道のイロハのイだ。少し取材すれば電通が関わっていないことは確認できる。社員コメンテーターが番組で堂々とウソを拡散した。『事実をまげない』という放送法第4条違反に該当する。断片的な思い込みで発言したなら『ジャーナリスト失格』であり、自ら職を辞する責任がある」と断じる。

 「政治的意図」を持って番組制作をしてきた疑惑については、自民党内にも「令和の椿事件」と問題視する声がある。放送行政を所管する総務省にも多数の意見が寄せられている。

 和田氏は「その点(=『政治的意図』発言)の事実関係を知りたいが、テレビ朝日社長の4日の記者会見では、組織として明確な説明がなかった。社長は再発防止に取り組むとしているが、トップの社長が辞任すべき事態だ」と語る。

 日本のテレビ報道にも一因がありそうだ。

 和田氏は「米国の大手テレビ局で報道番組を仕切るキャスターは、特ダネや深層リポートなどで実績を認められた人物だ。専門家のコメンテーターと、厳格に役割分担して正確な報道に徹する。一方、日本では専門外のコメンテーターが取材もしないでコメントする。玉川問題は、日本のジャーナリズムの危機だ」と語っている。



【放送法第4条】

①公安及び善良な風俗を害しないこと

②政治的に公平であること

③報道は事実をまげないですること

④意見が対立する問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること

【私の論評】コロナ禍を根拠もなしに煽った玉川と、それを許容したテレビ朝日社長はずっと以前に辞任すべきだった(゚д゚)!

玉川徹

玉川徹が、事実に反する発言を行って訂正・謝罪したのはこれが初めてではありません。小さなことだと無数と言ってよいくらいありますし、謝罪もしなかったこともあります。

大きなところでは、やはりコロナ関連のコメントでしょう。2020年4月の放送では、新型コロナをめぐって「東京都は土日に検査を行っていない」と発言しましたが、後日の放送で「土日に関しても行政の検査機関は休んでいなかったというふうなことも、わかりました」と訂正しまし。

22年6月の放送では「帯状疱疹のワクチンが保険適用される」と発言し、「保険適用はされません。ただ自治体によって費用を助成するところもある」と訂正し、「補助」を「保険適用」と勘違いしていたことを謝罪したこともありました。

玉川はワイドショーのディレクター職などが長く、記者として報道の現場に携わった経験がないためか、以前から単なる憶測に基づく発言が目立っていたのは事実です。

疑問なのは、玉川徹氏の動機です。多少の理性があれば、自分の言説が多分に一面的なものであり、ミスリーディングなものであることには気が付くに違いないです。

要は八百長であり、確信犯です。

視聴率はイコール広告費・利益であり、その差は莫大です。確かに身内の論理で言えば、玉川氏はヒーローなのかもしれません。番組が終われば「今日もブチかまししましたね」とゴマをするスタッフとか、「おいおい飛ばし過ぎるなよ」とまんざらでもない顔でたしなめる風情の幹部社員から声がかかるのかもしれないです。

そんな中、こと玉川氏で言えばモチベーションは確かに利益、出世ではないかもしれず、単なる高揚感や持論をブチかます満足感ではあるのでしょう。

玉川徹ファンは、同調圧力や権力に屈せず論陣を張る体の氏を頼もしく感じたり、スカッとしたりして支持するのでしょう。

ただ玉川のあまりに一面的、短絡的な言説は、公共性の高い放送事業としては一線を超えていました。まして未曾有の国難で無用の混乱や損害を巻き起こしていました。

コロナウイルス流行以来、玉川徹は危機感を煽りに煽ってきました。ある種のテレビ的分かりやすさやカタルシスを演出してきたともいえます。

コロナ報道には、冷静さや科学的視点が重要なわけで、自分が比較的に安泰な立場だからといって、玉川に日本を混乱の巷に落とし込む権利などあるはずもありません。もっと衝撃を和らげる手段があったかもしれないのに、間違いなくこの番組や主要なワイドショーの煽りによって、多くの人は本来は諸外国に比較すれば、被害はかなり少なかったにも関わらず、かなり被害が大きと思い込まされた面は否めません。

菅政権におけるコロナワクチン接種の速度はすさまじく、日本はあっと言う間に他の先進国の接種率を上回ってしまいました。にもかかわらず、玉川などの煽りで、菅政権はコロナ対策に失敗したかのような印象操作で多くの人々を惑わしたといえます。

当時は、テレビ局を支えるスポンサー企業の事業にも深刻なダメージが及んでいる事態にも無頓着という、根本的な職業倫理に欠ける姿勢も理解に苦しむところがありました。

最後に、完璧に一線を超えていたと思われたのが、医薬品に対する軽薄なコメントをして憚らなかったことです。「こんな新薬が有望だ」とか「こんな良い薬があるんです」など、新聞やネットの記事に出ていたレベルの情報をあたかもすぐにも臨床使用できるかの勢いで語っていました。

さすがに医薬品に対して生かじりのスタンスが許されるわけはありません。万一誤った受け取られ方をすれば深刻な健康被害や後遺症につながりかねないです。

さすがに2020年8月9日の放送では、アビガンの解説に医療の専門家が登場し、田崎氏もサリドマイドの例を出して特効薬の開発が待たれながら、一方で慎重であるべき理由を述べていました(写真下)が、すでに何度もフライング発言が行われた事実を消し去るものではありませんでした。


人類的な災厄に際し、生かじりの浅はかさと自らはすべて棚にあげる特権意識で全知全能の神のごとく公共の電波で吠えまくり、あげく日本を混乱の極みに落とし込もうとなんだろうが知ったこっちゃないというのが玉川のスタンスでした。

私には、動機がなんであろうと許されざる所業とは、思えませんでした。そのような玉川が、今回のような発言をしたのは当然の帰結ともいえます。

コロナ禍を根拠もなしに煽った玉川と、それを許容したテレビ朝日社長は辞任すべきでした。そうすれば、今回のような事態も生じなかったでしょう。

ここまで、酷い煽りを許容し続けてきたテレビ朝日には問題がありすぎです。まさに、和田氏が語るように、「テレビ朝日社長が辞任すべき事態だ」ということができると思います。

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2022年10月16日日曜日

米が半導体で衝撃の〝対中禁輸〟バイデン大統領、技術仕様した第三国製も規制対象に 「中国の覇権拡大人権弾圧許さない意思表示」識者―【私の論評】最新型半導体を入手できない中国のスマホは、かつての日本のショルダーホンのようになるか(゚д゚)!

米が半導体で衝撃の〝対中禁輸〟バイデン大統領、技術仕様した第三国製も規制対象に 「中国の覇権拡大人権弾圧許さない意思表示」識者


 ジョー・バイデン米政権が打ち出した、「半導体技術の対中国禁輸」が波紋を広げている。米国で製造された半導体や製造装置だけでなく、米国の技術で第三国で製造された半導体も規制の対象で、「中国の半導体製造業の壊滅」につながりかねない厳格さだという。民生用から軍事用まで幅広く使われている半導体は、今や国家の命運を左右する「戦略物資」となっている。米国は「安全保障」や「人権弾圧」を理由としているが、日本を含む同盟・友好国も対策が急務となりそうだ。

 バイデン米大統領は、中国への半導体規制を強化した(AP)


 「米国の規制強化は、『中国の覇権拡大や先端技術力の向上、人権弾圧を許さない』という明確な意思表示だ。中国の工業生産は半導体に依存しており、『焦土化』される衝撃は極めて大きい」

 経済評論家の渡邉哲也氏は、新規制の重大性について、こう指摘した。

 米商務省は7日、半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表した。最先端半導体を扱う中国企業の工場への製造装置販売を原則禁止し、スーパーコンピューターなどに使われる関連製品の輸出も制限した。

 米国は以前から、先端の半導体分野で中国包囲網を強化してきた。

 半導体の小ささや精密性は、「プロセス(製造工程)」という指標で優秀性が示される。米国はこれまで、「10ナノメートル」レベルのプロセスで半導体を製造する中国企業への装置輸出を原則禁じていた。新規制では、現行の主力世代である「14ナノメートル」未満のプロセスを用いる先端半導体を製造する中国企業まで装置輸出が原則禁じられる。

 一連の措置が正式適用されれば、中国の半導体製造業がストップするだけでなく、米国の半導体技術を使って中国で生産をしてきた世界各国の企業の事業継続が不可能となる。影響は幅広い商品に及びそうだ。

 米国内では、半導体関連企業などの株価が下落している。日本の業界関係者からも「過去最大級の強烈な規制となる」との観測が浮上している。

 前出の渡邉氏は「半導体関連で、米国技術を含まない製品は皆無だ。AI(人工知能)による自動運転技術を用いた自動車、スマホ、パソコンなど、さまざまな製品に活用されている」と話す。

 新規制の対象は、最先端技術だけでなく、現行技術も含まれており、生活に密着した製品の製造・流通が途絶し得るのだ。半導体枯渇で、電子製品が前世代に「先祖返り」すれば、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの利用や、クラウド構築も不可能となる。

 渡邉氏は「米国の〝ブラックリスト〟にも注目すべきだ」と強調する。米当局は、自国技術や製品を最終的に手にする組織・個人の目的、用途がはっきり確認できないケースを「未検証エンドユーザーリスト(EL)」として集約しており、ここにもメスを入れる構えだ。

 リスト対象に製品を送る場合、対象を調査して許可を得る必要がある。新規制では、対象が「米国の国家安全保障または外交政策に反する重大なリスクがある者」に拡大された。調査に協力しないと、ELに追加されることになる。

 米商務省は、措置を強化した理由として「中国の脅威」を挙げる。中国はIT技術などを急速に発展させ、情報網を世界に急拡大させているが、最先端技術が中国の軍事力増強に直結する懸念があるのだ。さらに、新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧が深刻化するなか、ITが監視や追跡に悪用されているとも主張した。

 米国の対応に、中国外務省の毛寧副報道局長は8日の記者会見で、「科学技術をめぐる典型的な覇権主義的やり方。断固反対する」「中国企業への悪意ある封じ込めと抑圧」と猛抗議したが、米国は断行する構えだ。

日本は供給網内製化の好機

 日本はどう対応すべきなのか。

 岸田文雄政権は「経済安全保障」を最重要政策に掲げ、サプライチェーン(供給網)の内製化を重視している。米中対立による供給途絶リスクも想定し、工場や営業拠点を日本国内に回帰させる動きは加速している。半導体事業で世界基準に水をあけられていたが、世界的な大手の「台湾積体電路製造(TSMC)」の工場誘致にも成功した。米国の対中規制は、日本の政策に合致しているともいえる。

 渡邉氏は「米国は、半導体に限らず、バイオ技術や、特殊素材など、他の先端分野でも同じように対中規制を広げていく可能性がある。中国が絡む生産活動は今後、極めて困難になる。米国は『台湾有事』を強く懸念し、その備えと、中国への警告を込めて規制を打ち出したのではないか。日本も対応を急ぐべきだ」と分析している。

【私の論評】最新型半導体を入手できない中国のスマホは、かつての日本のショルダーホンのようになるか(゚д゚)!

米政府による半導体関連製品の対中輸出規制の影響を評価するため、米国の複数の半導体製造装置メーカーは中国の半導体大手に派遣している人員を引き揚げ、事業活動を一時停止している。事情に詳しい関係者らが明らかにしました。

米国の半導体製造装置メーカーが長江存儲科技の工場に派遣している数十人の従業員は、同工場の運営や生産能力の拡大で重要な役割を果たしています。事業活動の停止が長引けば、長江存儲科技をはじめとする中国の半導体メーカーは設備のアップグレードやメンテナンスに関する専門知識に加え、チップ開発に必要な次世代技術から切り離されることとなります。

バイデンの新しい制裁はおそらく中国半導体産業の終焉を意味していると考えられます。

多くの人は7日に何が起きたか本当には、理解していないかもしれません。

簡単にいえばバイデンは中国で働く全ての米国人(半導体産業)に即刻ビジネスを止めるか、米国籍を失うかという選択を迫ったのです。

すると中国にある全ての半導体製造企業の米国人幹部やエンジニアはほぼ全員辞職し、中国の半導体製造は一夜にして麻痺状態になったのです。

バイデンの今回の制裁は、トランプ4年間の12回の制裁を合わせたよりも致命的です。

トランプ時代の制裁では半導体供給にはライセンス申請が必要だったものの申請すれば1か月以内に通過していました。

一方バイデンは米国の全てのIPプロバイダー、部品サプライヤー、サービスプロバイダーをほぼ一晩で全て撤退させ、あらゆるサービスを断ち切りました。

大惨事とはまさにこのことです。中国の半導体産業の半分が価値ゼロになって完全に崩壊します。

制裁の対象となる中国の半導体企業は上から下まで生産を全て拒否されることになります。

制裁の出発点は完全に遡及されあらゆる米国製品・技術の使用を排除することを保証しています。

制裁に違反した企業や個人は米国司法省によって直接逮捕です。

中国は2020年以降、韓国や台湾よりも多くの半導体製造装置を購入しています。ところが、2021年の中国の生産キャパシティは154万枚/月で、1位の韓国の221万枚/月、および、2位の台湾の202万枚/月に大きく及んでいません。

なぜこのようなことになっていたのでしょうか。論理的に考えれば、その答えは明らかです。おそらく、中国の半導体工場においては、半導体製造装置の多くが稼働していないか、または稼働していてもその稼働率が極めて低いということです。

要するに、中国の半導体メーカーは、「中国IC産業ファンド」をなどからの手厚い助成金を受け、手当たり次第に半導体製造装置を購入したのですが、それらを有効に活用することができていないのでしょう。

その結果、地域別の生産キャパシティで韓国や台湾に劣り、半導体の自給率も向上しないと思われます。カネだけあっても半導体はできないということである。

そこで、中国は米国人技術者などを雇い、半導体製造装置の稼働率を高めようとしていたのでしょうが、そこにきて、半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表したのです。

この意味するところをもう一度強調します。

今回の制裁は中国半導体産業の終焉であり、トランプ政権下の恫喝的ながらも、致命傷ではなかったようなやり方とは違う致命的なものです。

生き残る中国企業がいるとすれば最後まで制裁を受けなかった企業だけであり、最後まで制裁を受けた企業は死亡率100%です。

今回の制裁の是非について、中国の半導体製造に関与していた米国人やグリーンカードを保持者のほとんどは米国に戻るか移住して、11月8日の米中間選挙には、自分たちの足で投票所に出向き投票することになるでしょう。これが民主党にとって有利に働くかどうかは、未知数です。今後の推移を見極める必要があるでしょう。 

中国はもはや29nm以下の半導体製造能力を持たず、リソグラフィ(写真の現像技術を応用して作られた微細パターン作成技術のこと)に関する全ての技術を完全に失いました。

中国の次のトレンドは 大型化、重量化です。これからの中国の最新型スマホは、A4サイズの4Gスマホ 重さ3kとなるでしょう。

これだと、何のことかわからないかもしれませんが、日本にも過去に参考になるものがありました。

『ショルダーホン』です。これは重量が約3kgで、文字どおり、肩から下げて持ち運ぶことができ、自動車から離れても利用できる車外兼用型自動車電話でした。

ショルダーホンを背負って会話する女性

これは、昭和60年(1985年)にNTTから発売されたものです。昭和40年代、50年代と比べると技術面の進歩などは目ざましいものがありました。パソコンやワープロなども、パーソナルユースを意識した比較的低価格の製品などが普及しはじめ、あの登美丘高校ダンス部の「バブリーダンス」にも登場します。

NTTの「ショルダーホン」が発売されたのもこの年でした。4月に電電公社から民営化され、新会社となったNTTは技術面でもその先進性を打ち出していました。

もともと車外兼用型自動車電話という位置づけなので、「車載電話だけど、持って歩くこともできます」というような感覚でした。本体価格は2万6,000円と安価ですが、保証金が20万円と高いうえに、当時は通話料もかなり高かったので、まだ誰もが持てるというものではありませんでした。

無論この「ショルダーホン」は会話しかできませんでしたが、今後中国で販売される「ショルダーフォン」は、4G対応のスマートフォンと同程度のことができるものとなるでしょう。

そのため、本体部分にはiPadのような液晶のパネルがつくことになるでしょう。これは、一つの例ですが、今後航空機、船舶、いやありとあらゆる製品が大型化することになるでしょう。

中国海軍などは、文字通り「大艦巨砲の大艦隊」となるかもしれません。ただ、すぐに沈められてしまいそうです。

イギリス戦艦「ロドネイ」の主砲(1940年)

これでは、中国の台湾統一の夢は、ますます遠のきそうです。

宇宙開発は十分できると思います。なにしろ、1970年の技術で米国は人類を月に送り込んだわけですから、中国だって十分できるはずです。ただ、最先端の半導体が手に入らないので、半導体が大きくなる部分のペイロードは少なくなることになります。

それと、もうひとつ朗報があります。今後5GやAIによる監視体制などが進展すれば、さらにデーターセンターがいくつも必要になり、電力が逼迫することも予想されたのですが、そんな心配をする必要もなくなりそうです。

中国はロシアから天然ガスなども輸入できるようなので、今後中国国民は冬の燃料代高騰にも悩まされることなく、AI技術の進歩も止まるどころか後退するかもしれず、監視社会が今以上に強化されることもなく、軍事技術も急速に進歩することもなく、戦争の不安にも怯えることなく、安寧な生活を享受できるかもしれません。国民にとっては過去よりは、良いかもしれません。

ただ、全体主義への不満はさらに高まることになるかもしれません。

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2022年10月15日土曜日

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日本の解き方

米連邦準備制度理事会(FRB)元議長のベン・バーナンキ氏

 今年のノーベル経済学賞に、米連邦準備制度理事会(FRB)元議長のベン・バーナンキ氏、シカゴ大学栄誉教授のダグラス・ダイヤモンド氏、ワシントン大学教授のフィリップ・ディビッグ氏の3人が選ばれた。

 バーナンキ氏の受賞理由は、1930年代の大恐慌の原因を探った研究成果、つまり銀行危機が大きな金融危機につながることが、その後のリーマン・ショックやコロナ・パンデミック(世界的大流行)時の政策運営でも生かされたというものだ。ダイヤモンド氏、ディビッグ氏は、社会にとって重要な銀行の危機時の脆弱(ぜいじゃく)性を示したことがバーナンキ氏の大恐慌研究に大いに関係しているとされている。

 筆者は、1998~2001年まで米プリンストン大に客員研究員として留学していた。当時はバーナンキ氏のほか、08年にノーベル経済学賞を受賞するポール・クルーグマン氏、スウェーデン中央銀行副総裁となるラース・スベンソン氏、元FRB副議長のアラン・ブラインダー氏ら世界一流の金融政策の大家が多く在籍していた。毎週のセミナーでは、なぜ日本がデフレなのかなど、興味深い話題を活発に議論していた。

 筆者は当時、経済学部長だったバーナンキ氏に公私ともにお世話になった。本コラムは連載して12年がたつが、バーナンキ氏を引用したのは288回にも達している

 バーナンキ氏の研究によると、大恐慌の研究で、金本位制に固執した国では十分な金融緩和策がとれず、デフレが深刻化した。一方、金本位制から早く離脱した国は思い切った金融緩和が可能となり、世界大恐慌から早く抜け出した。

 FRB理事時代の03年、バーナンキ氏は名目金利ゼロに直面していた日本経済の再生アドバイスを行い、国民への給付金の支給あるいは企業に対する減税を国債発行で賄い、同時に中央銀行がその国債を買い入れることを提案した。中央銀行が国債を買い入れると通貨が発行されるわけなので、中央銀行と政府のそれぞれの行動を合わせてみれば、中央銀行の発行した通貨が給付金や減税を通じて国民や企業にばらまかれていることになる。これが、いわゆる「ヘリコプターマネー」だ。

 米国はバーナンキ氏のおかげでリーマン・ショックもコロナ危機も乗り切れた。しかし、日本では、リーマン・ショック時は日銀が白川方明(まさあき)総裁体制で金融緩和は不十分だった。東日本大震災では民主党政権の復興増税など「悪夢」の連続だった。筆者はバーナンキ氏の提言を日本で実行するように主張したが無駄だった。

 第2次安倍晋三・菅義偉政権でやっと「政府・日銀連合軍」ができ、コロナ対策でバーナンキ氏の教えが実行できた。その結果、雇用確保は世界トップの出来だった。

 アベノミクスの理論的基礎はバーナンキ氏にあるといってもいい。ただし、消費増税は財務省の横やりで、アベノミクスの足を引っ張った。安倍さんが生きていたら、今回のバーナンキ氏の受賞をさぞかし喜んだだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】日本人は、バーナンキの理論を裏付け、ともに暗殺された高橋是清、安倍晋三の二人の偉業を称えるべき(゚д゚)!

高橋洋一氏は上の記事で「金本位制から早く離脱した国は思い切った金融緩和が可能となり、世界大恐慌から早く抜け出した」と語っています。では、いずれの国が最もはやく世界恐慌から抜け出したのでしょうか。

実は、それは他ならぬ我が国日本なのです。

1931(昭和6)年12月、犬養内閣(蔵相高橋是清たかはしこれきよ)は成立後ただちに金輸出再禁止を断行し、兌換だかん制度を停止したので、日本経済は管理通貨制度の時代に入りました。

金輸出再禁止の結果、円の為替相場が大幅に下落し、1932(昭和7)年には一時100円が約20ドルと金解禁時代の半分以下に下がったのですが、不況のなかで合理化を推進しつつあった諸産業は、円安を利用して輸出振興をはかりました。

このあたりのことは、以下のサイトが平易に解説しています。興味のある方は、是非ご覧になってください。
このサイトより、以下にいくつかの図を引用します。




まさに、高橋是清は金融緩和策と積極財政を行ったがために、当時の日本は素早く世界恐慌(日本では昭和恐慌)から抜け出すことができたのです。

金本位制を離脱し、管理通貨制度にして、円安をそのままにしたのは、金融緩和策です。

一方、赤字国債を発行して、軍事と農村救済にお金を投入したのは、積極財政です。

高橋是清は、1932年の時点で、まさに、「ヘリコプターマネー」の先駆けと言っても良いようなことを実行したのです。

1936年、ケインズは彼の代表作となる『雇用・利子および貨幣の一般理論』を発表し、激しい論争を呼び起こしたましたが、この書に端を発するケインズ経済学はまもなく経済学の主流となりましたことから考えると、その前に行われた偉業はあり得ないくらいの素晴らしいことだと思います。

高橋是清は、恐慌から脱却するために、当時の経済学者の言うことなどは参考にせず、自らの知見や常識などをフル動員して、金融財政政策を進めたのでしょう。

上の記事にあるように、安倍元総理は、第2次安倍晋三・菅義偉政権でやっと「政府・日銀連合軍」ができ、コロナ対策でバーナンキ氏の教えが実行できました。その結果、コロナ禍の時期における雇用確保は世界トップの出来でした。

そうして、高橋是清と安倍元総理には、共通点があります。

一つは、不況から抜け出すために、二人とも積極財政、金融緩和を実施したことです。

そうして、悲しいことにもう一つの共通点があります。それは、両方とも暗殺されたということです。

ご存時のように、安倍元総理は、山上容疑者によって暗殺されたとされています。まだ、裁判もされていないような状況なので、様々な疑問が残りますが、それにしてもお亡くなりになっているのは事実なので、暗殺されたこと自体は間違いありません。

高橋是清は、赤坂表町三丁目の私邸で叛乱軍襲撃部隊に胸に6発の銃弾を撃たれ、暗殺されました(二・二六事件)。享年83(満81歳没)でした。

他にも共通点があります。高橋是清の行った、金融財政政策は、その後のケインズやバーナンキをはじめとする、経済学者の研究を裏付けるような大偉業であったにもかかわらず、日本においては、教科書にその事実が淡々と記載されて継承されるのみで、その本質が理解されていません。

安倍元総理の金融財政政策も、ほとんど理解されていません。理解しているのは、ほんの一部の人です。

日本では、金融財政政策を正しく行った政治家は、正しく顧みられないどころか、暗殺されてしまったのです。

安倍晋三氏(左)と高橋是清氏(右)

暗殺されてしまったことは、悲しいことにもう変えようはありません。

ただ、二人の偉業を称え、この二人が実施したように、これから不況時にはその対応を間違わないようにはできます。

日本は、これからは経済対策の面で方向を間違わないようにするためにも、二人の偉業を称えるべきです。

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2022年10月14日金曜日

焦点:ロシア核部隊が近く大規模演習、西側に必要な「正確な意図」見抜く目―【私の論評】現実的な脅威は、露軍がウクライナの原発を暴走させ核汚染でウクライナを軍事的緩衝地帯にすること(゚д゚)!

焦点:ロシア核部隊が近く大規模演習、西側に必要な「正確な意図」見抜く目

10月13日、ロシアのプーチン大統領が核兵器使用の可能性をちらつかせる中で、同国の核戦力運用部隊が近く大規模演習「グロム」を行う見通しだ。

 ロシアのプーチン大統領が核兵器使用の可能性をちらつかせる中で、同国の核戦力運用部隊が近く大規模演習「グロム」を行う見通しだ。このため米国やその同盟国は、ロシアが本気で動くつもりか、それとも単なる演習の範囲内の行動にとどまるのかを確実に見分けるという重要な課題を背負わされることになる。

 ロシアは毎年この時期に核戦力の大規模演習を実施するのが恒例で、西側の専門家によると今年も数日中に始まるとみられる。複数の米政府高官は、演習にはさまざまな弾道ミサイルの発射実験も含まれる公算が大きいと述べた。

 ただ今年はプーチン氏が、長引くウクライナでの戦闘を背景にロシア領土を守るためには核の使用も辞さないと公言している中で、一部の西側当局者はロシアが演習を通じてわざと自分たちの意図をくらませようとする可能性があると警戒している。

 西側当局者の1人はロイターに「だからこそロシアは核戦力の演習を行おうという時期に、あえてことさら過激な言い回しはしたがらない。なぜなら、そうする(過激な言葉を避ける)ことでわれわれ側は、目にする彼らの行動や実際に起きる出来事について、通常の演習かそれとも別の何かなのかを確かめるという余計な負荷がかかるからだ」と説明した。

 それでもこの当局者は、西側のそうした判断力には「高い自信」があると言い切った。

 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長はブリュッセルにおける会見で、今回のロシアによる年次演習もこれまで数十年と同じように、NATOがしっかり監視していくと請け合った。

 米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官は、グロムではミサイルの実射を含めてロシアの戦略核運用部隊が大々的に展開することになるとした上で、それらはあくまで「ルーティーン」だと指摘。「ロシアは恐らく、この演習が特に最近の事象に照らして自らの戦力投射能力を向上させると信じているだろう。だがわれわれは、ロシアの核運用部隊が毎年この時期に大規模な訓練をすると承知している」と語り、米国は状況を「注視する」と付け加えた。

 ある米国防総省高官は、ロシアの演習はNATOが計画し、来週開始する核抑止のための演習「ステッドファースト・ヌーン」と同じタイミングで実施されると予想するとともに「ロシアがウクライナで戦争しながら核に言及し、この演習を決めたのは無責任極まりない。核兵器をふりかざして米国や同盟国を威嚇するというのも無責任だ」と憤りをあらわにした。

 プーチン氏が具体的な核攻撃の準備に入った形跡は今のところ見当たらない。しかし過去1カ月でウクライナの反撃が功を奏してきたのに伴い、ロシアから発せられる核兵器に関する言い回しはだんだんと強い調子になってきた。

 最近ではプーチン氏がウクライナの4州併合を一方的に宣言し、「ロシア領」防衛には核を使うと脅している。一方NATO高官の1人は12日、ロシアが核攻撃すればNATOは「物理的に対応」すると述べた。

 オースティン米国防長官は13日のNATO国防相会合後に、米国の核戦力態勢に変化を促す「兆候や警報」は目にしていないと発言した。

【私の論評】現実的な脅威は、露軍がウクライナの原発を暴走させ核汚染でウクライナを軍事的緩衝地帯にすること(゚д゚)!

昨年の12月21日のロシア国防省拡大理事会の会議において、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、ボストークとグロムの軍事演習を2022年に開催すると述べていました。

ロシア国防省に近い情報筋は、2022年のはじめに実施するとしていました。ただ、これは、ウクライナ侵攻のための準備などで延期されたものとみられます。

ロシアの戦略核戦力の戦略的指揮と要因の演習「グロム」は、毎年定期的に開催され、3つの枠組みからなっています。

まず第一は、北方艦隊の地下ミサイル発射基地からは、カムチャツカ半島のクラ試験場の標的に対して大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射します。

第二に、太平洋艦隊の原子力潜水艦は、ロシア北部のチザ試験場で標的に対してICBMを打ち上げます。

第三に、ロシア戦略ミサイル軍は、以上に加えて、空軍の長距離爆撃機によるICBMと巡航ミサイル発射に関する戦闘訓練も行っています。

 過去のグロムで用いられた長距離爆撃機

今年もこのような演習を行うものとみられています。この演習が例年と同じであれば、問題はないと思うのですが、ロシア側がこれをことさら恫喝に使うことになれば、問題です。

欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)は13日、ロシアのプーチン大統領がウクライナに対し核兵器を使用すれば、米欧の軍事的対応によって、ロシア軍は「壊滅」に至ると警告しました。

欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)

ボレル氏は、ブリュッセルの外交アカデミーで「プーチン氏は(核使用が)脅しではないと言っているし、彼にはったりを言う余裕はないだろう」と発言。「ウクライナを支援する人々とEU、米国と北大西洋条約機構(NATO)もはったりを言っていないと、はっきりさせなければならない」と強調しました。

その上で「ウクライナに対するいかなる核攻撃も返答を伴う」と指摘。「核ではないが、ロシア軍が壊滅するような強力な対応」が取られると語りました。

米国家安全保障担当大統領補佐官のジェイク・サリバンは9月25日にアメリカの三大ネットワークに次々と出演し、ロシアによる核の威嚇に対する政権の対応を明らかにしました。

まずABCニュースでは、「ウクライナで核兵器を使えば壊滅的な結果を招くぞと、極めて高いレベルでロシア側に直接、内々に伝えてある」と語りました。

またNBCの報道番組『ミート・ザ・プレス』では、「ロシアがこの一線を越えたらアメリカは断固として対応する」と述べました。そしてバイデン政権はロシア側とのやりとりの中で「これが何を意味するのか、より詳細に説明している」としました。

その「断固として」が何を意味するのかは明かされていません。しかし2人の軍人は米ニューズウィーク誌に、原子力潜水艦や航空機の移動、B52爆撃機の訓練など、核の脅威に対応する微妙な動きがあると明かしました。ただし、あくまでも本筋は核以外の軍事オプションだと言います。

つまり通常兵器での対応や特殊部隊の投入、サイバー攻撃や宇宙戦などであり、プーチン暗殺のシナリオも含まれるようです。 バイデン大統領は核以外のオプションでプーチンを抑止できると考えているのでしょうか、またこの点で政権と軍のコンセンサスはあるのでしょうか。

同誌はこの点をホワイトハウスに問いただしたそうですが、具体的な回答はなく、「わが国のロシアに対するメッセージについては、ジェイク・サリバン補佐官が9月25日に語ったとおりだ」との返事のみだったそうです。

バイデン米大統領は11日のCNNの単独インタビューで、ロシアによる威嚇は壊滅的な「誤り」や「誤算」につながりかねないと語った。ただ、ロシアのプーチン大統領がウクライナの戦場に核兵器を配備した場合、米国がどのように対応するかは明言を避けた。バイデン氏は先週、「核のアルマゲドン(世界最終戦争)」の危険性が過去60年間で最も高まっていると警告していた。

私は、おそらくロシアが核兵器を用いることは無いと思います。ただ、それで安心はできません。それよりも、ロシアはウクライナのいくつかの原発をコントロールできない状態にする可能性はあるでしょう。

原発はコントロールしているから、安全なのですが、一切コントロールをやめてしまうと、安定を失い、自爆します。そうして、相当量の核物質を撒き散らすことになります。

ロシアが原発にミサイルを打ち込んで破壊ということになれば、国際社会からかなり反発されることになりますが、コントロールさせないという方式であれば、やってもあまり反発されないのではと、ロシア側が勘違いする可能性は多いにあります。

核廃棄物が撒き散らされれば、チェルノブイリ原発事故のようになり、付近一体に人が住めなくなります。それでも完全コントロールしなければ、核物質はチェルノブイリのときよりも広範にまきちらされることになります。


これをいくつかの原発で実施すれば、ウクライナのかなりの広い部分に人が住めなくなります。住民は避難を余儀なくされることになります。

そうなると、ウクライナの広大な地域が非武装地帯となり、ロシアにとってNATOとの緩衝地帯になります。

ロシアがウクライナに侵攻した目的は、ゼレンスキー政権を崩壊させ、ウクライナに傀儡政権を樹立して、ウクライナをNATOに対峙する緩衝地帯とするつもりだったようです。

この目的は、達成できないことは、もう明白です。ただ、原発のコントロールをやめさせれば、その一帯は、核物質で汚染され、人が住めなくなりますし、軍隊も駐留できなくなります。これで、方法は異なるものの、ロシアの当初の目的は達成されることになります。

私は、こちらのほうがより現実的な脅威だと思います。EUや米国は、このようなことに対しても対応すべきです。もし、ロシア軍がそのようなことを始めれば、米軍を含むNATOがすぐにも直接介入するとロシア側に認識させるべきです。

このようなことを述べると、原発反対派の方は、「それみたことか、原発は危険だ稼働を止めてすぐ廃炉にしてしまえ」などと考えるかもしれませんが、その考えは甘いです。

実は原発の稼働をとめたら、すぐそれで安全ということはないのです。やはりコントロールしなければなりません。一切コントロールしなければ、自爆の危険があります。コントロールすらから安全なのです。廃炉にするにも数十年という時間がかかり、その間もコントロールし続けなければ安全ではありません。

稼働を止めていても、テロリストが攻撃すれば、ノーコントロールになり危険です。だから、テロリストなどを防止する方法も真剣に考えなければならないです。

このような現実を踏まえたのか、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは12日夕に放映された独公共放送ARDのインタビューで、気候保護のために原発は現時点でよい選択かと問われ、「それは場合による。すでに(原発が)稼働しているのであれば、それを停止して石炭に変えるのは間違いだと思う」と答えています。

すでに稼働している原発を停止したからといって、安全になるということはないのです。廃炉することにして、稼働を停止させても、廃炉になるまでの長い間、コントロールし続けなければ安全とはいえないのです。

であれば、コントロールしながら安全を保ちつつ、稼働させるというのが最も合理的な方法です。日本では動かせる原発を全部動かせば、電気料金の高騰を防ぐことができますし、それで浮いた天然ガスをEUにまわすということもできます。まさに、一石二鳥です。

岸田政権には、是非とりくんでいただきたいです。

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