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2026年5月22日金曜日

高市政権316議席を軽んじるな—国力研究会347名こそ民主主義の数の力だ


まとめ
  • 高市政権が得た316議席は、自民党史上最多であり、安倍政権ですら到達しなかった大きな民意である。国力研究会347名は、その民意を党内の政策実行力へ変えるための器であり、自民党が再び「数で国を動かす政党」に戻りつつあることを示している。
  • 「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」は、安倍外交を自民党の政策ラインに戻す動きだった。今回の国力研究会は、その流れを外交・防衛・経済・技術・エネルギーまで広げ、高市政権の国力再建路線を支える動きである。
  • この動きを「大政翼賛会」などと呼ぶのは、歴史への無理解であり、民主的な数の力への不信である。問われているのは、選挙で示された民意を政策に変えられるか、そして我が国をもう一度強くする覚悟を持てるかである。

1年前、私は自民党内で保守派の動きが活発化していることについて書いた。

焦点は、安倍晋三元首相を支えた人々の再結集だった。特に重要だったのは、高市早苗氏も深く関わった自民党の「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」である。安倍元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」、すなわちFOIPを、自民党の政策ラインとして再確認する動きだった。

その流れを、私は2025年5月22日の記事「【自民保守派の動き活発化】安倍元首相支えた人の再結集—【私の論評】自民党保守派の逆襲:参院選大敗で石破政権を揺さぶる戦略と安倍イズムの再結集」で論じた。

その動きが、1年を経て次の段階に入った。

それが「国力研究会」である。

テレビ朝日は、国力研究会について、自民党所属議員有志による勉強会であり、「JiB=Japan is Back」という英語名も付けられたと報じている。さらに、自民党所属国会議員の8割を超える347人が入会したとも伝えている。

また、政治評論家の江崎道朗氏はFacebookで、「国力研究会第1回会合。発起人を代表して萩生田さんが挨拶。347名が加盟しているとのこと。会長は加藤勝信さん」と投稿した。

これは単なる勉強会ではない。高市政権を支える巨大な党内政策基盤である。

しかも、その背後には、高市政権が衆院選で得た圧倒的な数の力がある。自民党316議席、与党352議席。自民党公式も、316議席について1986年衆院選の300議席を上回る「過去最多の議席数」としている。

これは、選挙に勝ち続けた憲政史上最長の安倍政権ですら成し得なかった大勝である。

国民の声は明らかだ。高市政権に政策を実行させよ。国力を再建せよ。外交、防衛、経済、技術、エネルギー、食料を一体で立て直せ。官僚主導、マスコミのレッテル貼り、旧来の党内空気に負けるな。そういう信託である。

この数の力を軽視することは、単なる高市政権批判ではない。民主主義への挑戦である。

1️⃣FOIP戦略本部から国力研究会へ

画像はAIによるイメージ画像です 実物とは関係ありません 以下同じ

昨年の動きの中心にあったのは、自民党の「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」である。

これは、安倍元首相のFOIP構想を、自民党の外交・安全保障政策として改めて確認する意味を持っていた。

「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」は、自民党の正式な政策組織だった。一方、「国力研究会」は、現時点では正式な政策組織ではなく、有志議員による党内横断グループと見るべきである。

だが、正式組織でないから軽い、という話ではない。

正式な党組織は政策決定ラインに乗りやすい。だが、調整に縛られる。有志グループは政策決定権そのものは弱いが、党内の空気、人数、権力の流れをつくる力がある。

FOIP戦略本部は、安倍外交の旗を党の正式ラインに戻す装置だった。国力研究会は、高市政権の国力再建路線を、党内多数派の力で支える装置である。

役割は違う。だが、どちらも安倍レガシーの継承である。

安倍元首相が残したものは、単なる懐古ではない。自由で開かれたインド太平洋、経済安全保障、防衛力強化、強い経済、戦略的な国家運営。これらは、今も我が国が生き残るための条件である。

国力研究会は、その遺産を外交・安全保障だけでなく、経済、防衛、技術、エネルギー、食料、財政を含む国家総合力へ広げる器になり得る。

2️⃣自民党史上最多の数を軽視するな


ここで見落としてはならないのは、「数の力」である。

自民党がこの力を忘れ始めたのは、岸田政権や石破政権になってからではない。根はもっと深い。おそらく「日本列島総不況」と言われた1990年代末以降である。

バブル崩壊、より正確には「日銀ショック」以降、我が国は金融政策と財政政策を誤った。自然に泡が弾けたのではない。急速な金融引き締めと信用収縮によって、政策的に景気を壊したのである。この点は、以前の記事「理念では国家は動かない ──テクノロジスト国家・日本再設計論」でも論じた。

その後も、需要不足を埋めず、長期の国家投資も弱く、緊縮的な発想が政治の中枢に入り込んだ。そして「日本列島総不況」と言われた翌年、自公連立政権が発足した。

連立には政権安定という利点があった。だが同時に、自民党単独で国家の大きな方向を決める感覚は薄れていった。選挙で多数を取り、その数で政策を実行するよりも、連立相手への配慮、党内調整、世論への過剰反応、財務省的な財源論が前に出るようになった。

この頃から、自民党の中で「数を取って国を動かす」という政治の原理は、少しずつ力を失っていったのである。

岸田政権、石破政権期の自民党は、その延長線上にあった。安倍政権期と比べて議席数を減らし、政治基盤を細らせた。問題は、議席減だけではない。細った数を束ね、国家の大きな方向を示す迫力も弱まっていたことだ。

しかし、高市政権は違う。

自民党は316議席、与党全体では352議席を得た。自民党史上最多であり、戦後の単一政党としても最大級の議席数である。しかも、自民党単独で衆議院の3分の2に当たる310議席を上回る。

これは、憲政史上最大級の「民主的な数の力」である。

安倍政権ですら、自民党単独316議席には到達しなかった。高市政権は、それを成し遂げた。国民の声は明確である。高市首相の政策、国家観、国力再建路線に、かつてない規模の信託が与えられたのだ。

政治は、最後は数である。

いくら優れた政策を掲げても、数がなければ予算は通らない。法律も通らない。人事も動かない。憲法改正の発議もできない。

数があれば何をしてもよい、という意味ではない。だが、数がなければ何もできない。

だから、この数の力を軽視することは、民主主義への挑戦である。

選挙で示された国民の意思を、「危ない空気」だの「多数の横暴」だのと呼んで封じ込めようとするなら、それは国民の選択を否定しているのと同じである。民主主義とは、選挙で示された多数をもとに政治を動かす制度である。

高市政権と国力研究会の意味は、ここにある。

自民党は、ようやく数の力を取り戻したのである。それは、単なる高市人気ではない。1990年代以降、長く弱まっていた「数で国を動かす自民党」の復活なのである。

3️⃣「大政翼賛会」批判こそ民主主義への不信だ


ここで看過できない問題がある。

国力研究会の動きを「大政翼賛会」のように語る批判である。

これは、あまりにも雑である。

大政翼賛会とは、戦時下に政党政治を事実上解体し、国民を国家総動員体制に組み込んでいった組織である。自由な選挙で圧倒的な信任を受けた政権を、与党議員が政策面で支える国力研究会とは、根本から違う。

国力研究会は、野党を禁止していない。反対意見を封じていない。議員に参加を強制していない。国民を統制していない。選挙で信任された政権を、与党議員が支える。これは議会政治の本筋である。

それを「大政翼賛会」などと呼ぶのは、歴史への無理解であり、民主的な数の力への不信である。

さらに問題なのは、メディアがその言葉を検証せず、そのまま流す姿勢である。大政翼賛会という言葉は、戦時体制、政党政治の解体、思想統制を連想させる重い言葉である。それを、選挙で信任された政権の党内政策基盤に貼りつけるなら、国民に誤った印象を与える。

これは言葉の乱用である。

そして、民主主義への冒涜である。

そもそも高市政権は、先の衆院選で圧倒的な支持を受けた。自民党316議席、与党352議席。自民党史上最多であり、安倍政権ですら成し得なかった大快挙である。

その国民の信託を受けた政権が、政策を実行するために党内基盤を整える。これのどこが大政翼賛会なのか。

むしろ、この動きを頭ごなしに否定することこそ、国民の声を無視する行為である。選挙で示された民意を、「大政翼賛会」などという言葉で封じ込めようとするなら、それは民主的な数の力への挑戦である。

ここで問われているのは、単なる党内抗争ではない。

民主的な数の力によって国民の信託を受けた高市政権が、その信託に基づいて政策を実現できるのか。あるいは、選挙結果を軽んじる勢力、官僚、マスコミ、旧来の党内空気、「多数は危険だ」と叫ぶ勢力によって押し返されるのか。

この分岐点である。

前者なら、我が国は民主国家として再び強くなる。後者なら、選挙で政権を選んでも政策が動かない国になる。

それは、形式だけ民主主義で、実態は官僚とメディアと声の大きい少数者が政治を縛る国である。そんなものは、健全な民主国家ではない。

我が国はいま、剣ヶ峰にある。

国力研究会347名とは、単なる人数ではない。高市政権316議席という、自民党史上最大の民意を政策に変えるための装置である。

この数を軽んじてはならない。
この数を恐れてはならない。
この数を腐らせてはならない。

この数を、国力に変えなければならない。

結語

国力研究会347名の意味は、単なる党内グループの発足ではない。

高市政権は、先の衆院選で自民党316議席、与党352議席という圧倒的な信任を受けた。自民党史上最多であり、安倍政権ですら到達しなかった大快挙である。

この数の力は、突然生まれたものではない。日本列島総不況と自公連立以降、自民党が忘れかけていた「数で国を動かす政党」としての力が、ようやく戻りつつあるということだ。

国民の声は明らかである。

高市政権に政策を実行させよ。国力を再建せよ。外交、防衛、経済、技術、エネルギー、食料を一体で立て直せ。官僚主導やマスコミのレッテル貼りに負けるな。

そういう信託である。

この数の力を「危険だ」と言い、「大政翼賛会」などという言葉で貶めるなら、それは高市政権への批判にとどまらない。選挙で示された国民の意思への挑戦である。民主的な数の力への挑戦である。

政治は、最後は数である。

いくら立派な政策を掲げても、数がなければ何もできない。逆に、数を持つ者が覚悟を持てば、国は動く。

高市政権には、その数がある。

国力研究会には、その数を政策に変える可能性がある。

もちろん、347名が集まれば自動的に国が強くなるわけではない。勝ち馬に乗るだけの議員もいるだろう。距離を置く議員もいるだろう。だが、それも含めて政治である。大切なのは、数を恐れず、数を腐らせず、数を国力に変えることだ。

問題は、誰が集まったかではない。

その数で、何を成し遂げるかである。

いま問われているのは、覚悟だ。

民主的な数の力を信じ、国民の信託に応え、我が国をもう一度強くする覚悟である。


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2025年参院選と自民党の危機:石破首相の試練と麻生・高市の逆襲 2025年6月25日
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【自民保守派の動き活発化】安倍元首相支えた人の再結集—【私の論評】自民党保守派の逆襲:参院選大敗で石破政権を揺さぶる戦略と安倍イズムの再結集 2025年5月22日
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2019年5月22日水曜日

【国家の流儀】日本企業の多くが中国に買収され、中国人経営者のもとで日本人が働き… それでいいのか? 今こそデフレ脱却に全力を―【私の論評】過去20年にもわたって世界で日本だけが経済成長しなかったことに国民はもっと怒りを顕にすべき(゚д゚)!


安倍総理は消費税増税を強行するのか

「10月に予定されている消費税率引き上げを実施すれば、デフレ脱却が難しくなるだけでなく、日本発のリーマン・ショック級の危機誘発になりかねず、増税凍結が適切だ」

 国際金融の専門家である本田悦朗前スイス大使は16日、ロイターとのインタビューの中でこう述べた。

 たった2%でも消費税増税は、景気に大きなダメージを与える。

 日本自動車工業会の豊田章夫会長(トヨタ自動車社長)は昨年9月20日、「消費税を3%から5%に引き上げた際は国内需要が101万台ほど減り、二度とそれ以前のレベルに戻っていない」と指摘したうえで、今年の消費税増税によって30万台の需要減、経済効果マイナス2兆円、9万人の雇用減につながる可能性があると訴えた。

 買い物をするたびに“罰金”を科すような消費税という制度は、日本のGDP(国内総生産)の6割を占める個人消費を縮小させてきたのだ。しかも、この個人消費の縮小とデフレが地方の衰退を加速させてきた。

 2014年の時点で、国内の企業数は382万社を数えるが、大企業は1万1000社に過ぎない。これまで380万社に及ぶ中小企業が地方経済を支えてきたのだが、このままだと、その3分の1にあたる127万社が25年までに廃業し、約650万人の雇用と約22兆円のGDP(国内総生産)が失われると言われている。実に、就業者の10人に1人が失業する計算だ。

 そこで、政府も事業承継に伴う税負担の軽減など、中小企業対策に力を入れている。アベノミクスに伴う緩やかな景気回復とともに廃業率は低下する一方、開業率は上昇して17年には5・7%と、1992年以来、25年ぶりの高水準に達した(2019年度版『中小企業白書』)。

 ところが、ここで消費税増税に踏み切ると、再びデフレ、つまり「消費税増税→個人消費の縮小→売り上げ減少→雇用や設備投資の縮小と中小企業の減少→地方経済の衰退→失業率の上昇」という悪循環が再発することになりかねない。

 しかも、このデフレの再発は「日本没落への道」なのだ。

 民主党政権の末期の12年4月、日本経団連は「グローバルJAPAN~2050年 シミュレーションと総合戦略」という報告書を出した。この中で、日本経済が今後も低迷するならば、50年時点で「中国、米国、次いでインドが世界超大国の座につく一方で、日本のGDPは中国・米国の6分の1、インドの3分の1以下の規模となり、存在感は著しく低下する」と指摘した。

 日本がデフレ脱却に成功しなければ、いずれ中国の6分の1の経済規模になりかねない。それは「日本の香港化」、つまり日本企業の多くが中国に買収され、中国人経営者のもとで多くの日本人が働くようになることを意味する。

 果たしてそれでいいのか。いまはデフレ脱却に全力を傾けるべきである。

 ■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障や、インテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞した。他の著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『天皇家 百五十年の戦い』(ビジネス社)など多数。

【私の論評】過去20年にもわたって世界で日本だけが経済成長しなかったことに国民はもっと怒りを顕にすべき(゚д゚)!

世界は過去20年で平均2.4倍の経済成長をしています。その中で20年以上全く経済成長をしなかった唯一の国が日本です。その結果、日本は世界の中で著しく存在感を低下させました。他国と比して国力を維持して行くためには、他国並みの経済成長は絶対に必要です。日本人は国力と経済成長の関係を軽視しているのではないでしょうか。以下国力と経済成長の関係を考えてゆくことにします。

国力とは

国力とは国際関係において、その国が持つ様々な要素を総合したものをいいます。要素として考えられるものは、自然、国民、軍事力、経済力、技術力等であると、ジョージタウン大学のレイ・クライン教授は次のような式を提唱しています。
国力=[(人口、領土)+(経済力+軍事力)×(戦略目的+国家意思)]
これら諸要素の中で経済力が最も重要であると私は思います。なぜなら軍事力の内訳を見ると軍の戦闘能力(兵員数、兵器の性能、兵站基盤等)は経済力と不可分です。最近、チャイナが軍事大国になっていますが、それはチャイナのGDPが急速に拡大し、その経済力が強大な軍事力を生み出していることからも分かります。

技術力について見ると、日本は従来から技術大国でしたが、これを支えていたのは経済力でした。20年間経済成長をしなかった日本は急速に技術力を低下させています。一例を挙げれば各大学への基礎研究費は文科省が決めるのですが、日本が20年間経済成長をしなかったため、その間日本の各大学の基礎研究費は増えることなくむしろ減少しています。

研究開発費の推移 国際比較

上のグラフは「主要国の研究開発費総額の推移:名目額(OECD 購買力平価換算)」を示しています。1996年から2016年までの推移を見ると、米国は35兆円から50兆円と約1.4倍、チャイナは3兆円から45兆円と実に15倍です。EU、ドイツ、フランス、イギリスも着実に増やしています。その中で日本のみが15兆円で殆ど増えていません。10年前の2006年と比べると減少していることがわかります。

この結果、基礎的な研究、例えば、国際的な論文数、特許件数等、国際的技術力評価で日本は劣勢となっています。


分かり易いのが上の表です。引用される頻度の高い論文数の推移ですが、2002年ごろまで日本は世界第4位であったのが、10年後チャイナだけでなくイタリアやスペインにまで抜かれ10位に転落しています。おそらく最近はもっと順位を落としているのではないかと、情けない気分になります。

論文の数に代表される日本の基礎的な技術力は急速に落ちているようです。精神力だけではどうにもならないのです。世界は平均で約2.4倍の経済成長をしており、各国の研究費は数倍に増えている。日本も他国並みに経済成長をして研究費を増やしていかなければ、早晩技術力を失い、先進国から脱落することになるでしょう。

国力とは経済力

誤解を恐れずに言えば、技術力の例でも分かるように、国力=経済力と言っても間違いはないと思います。政治力、外交力、軍事力、技術力、文化力もその根底には経済力があるのです。

つまり国力の最も基盤のところにあるのが経済力なのです。その大事な経済力が日本の場合、20年以上にわたり停滞していたのです。この責任は政治にあるのは当然ですが、一方で国民にもその責任があるのではないかと思います。

日本は民主主義国です。国民に主権があるのだから、政治が間違っていれば国民が声を上げそれを正さねばならないです。経済の本質を国民が理解していれば政府・財務省・日銀や誤れる経済学者らの誤りに気付いて、これを正すことが出来た筈です。

無論、一部の人たちは、これに対して意見を述べたり、抗議をしていました。私はそれを否定するつもりはありません。しかし多くの国民は20年以上声を上げませんでした。国民も経済の本質が分かっていなかったようです。それこそが本当の問題なのでしょう。

豊かさを取り戻そう

経済の目的は経世済民、即ち国民を豊かに幸せにすることです。憲法第13条にすべての国民は幸福追求の権利があり、政治はこれを最大限尊重すべしとあります。その観点から過去20年間の日本の政治を見ると、完全に失敗だったと言えます。

20年間経済成長をしなかったと言うことは、20年間日本国民の所得が増えなかったと言うことなのです。安倍政権になり多少持ち直していますが、それでもピークの時より国民の所得は減少しています。言い換えれば国民は貧乏になっているのです。このことを指摘する識者は少ないです。

国民が幸せに感じるのは、今日より明日、明日より明後日、所得が増えることで実感するのです。日本の政治は20年間、国民からこの豊かさを奪ってきたのです。今からでもよいプライマリーバランスの達成・緊縮財政などと言うインフレ対策をやめ日銀がさらなる金融緩和を実施し、財務省が財政支出を増やし需要を喚起するという正しいデフレ対策を実行すべきなのです。

今年の10月に増税などやっている場合ではありません。そうしてデフレを脱却すれば他国並みに経済成長が可能となります。国力の元は経済力、経済力の指標は経済成長・GDPの増加であることを認識し、財務省や経済学者のいう「国の財政赤字で財政破綻」という大嘘に騙されることなく、正しいデフレ対策を早く実施すべきなのです。一日も早く政治家は勿論のこと国民が目を覚ますことを願ってやまないです。

以下のグラフは世界主要国が過去20年間にどれだけ経済成長をしたか示したものです。チャイナは13倍、インドは5.7倍、イタリア、ドイツは1.4倍、日本は1.0倍であることが分かります。日本だけ全く成長していないのです。このグラフを見て怒りを感じない日本人が多いのには驚きです。



この期に及んで、未だに増税しようなどと言っている政治家や官僚に対して私達はもっと怒るべきなのです。多くの人々が、幸福をなかなか実感できないとすれば、そのほとんどは自己責任ではなく、実はデータが示すように、少なくとも過去20年間については、大部分が政府の責任なのです。日本人は奥ゆかしいところがあり、なかなかそのようなことはいいませんが、現実はそうなのです。

それは以下のグラフ自殺者数の推移からみてもうかがえます。


最近は、安倍政権が成立してから、自殺者数は2万人台ですが、デフレが深刻だった時期は、毎年の自殺者数のが3万人台で推移していました。

経済政策のまずさは、科学技術の発展を遅らせるだけではなく、人の命まで奪うです。これについては、以前このブログにも詳細に掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
“安倍辞めろ”の先にある「失われた20年」とデフレの再来 雇用悪化で社会不安も高まる―【私の論評】安倍首相が辞めたら、あなたは自ら死を選ぶことになるかも(゚д゚)!
自民党候補の応援演説を行った安倍晋三首相=17年7月1日午後
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、ソ連崩壊後のロシア政府の経済政策がまずすぎて、いっとき男性の平均寿命が、57.6歳にまで落ち込んだことがあります。これは、自殺者やアルコール依存症が増えたためです。経済政策のまずさは、人を殺すこともあるのです。

先に、国力=経済力と言っても間違いはないと書きましたが、経済はいっとき悪くなったにしても、極端に悪くならなければ、優秀な人が存在すれば、いずれ復活することはできます。しかし、人がいなくなれば、それもかないません。

ちなみに、冒頭の記事の江崎氏は、日本経済が今後も低迷するならば、50年時点で「中国、米国、次いでインドが世界超大国の座につく一方で、日本のGDPは中国・米国の6分の1、インドの3分の1以下の規模となり、存在感は著しく低下する」という事実をしてきしています。

この中にロシアはでてきません。どうしてかといえば、現在のロシアの経済規模は、かなり縮小して、GDPは日本の東京都を若干下回っているからです。これは、韓国を下回る水準です。このロシアが今後日本をしのぐような経済大国になることはないです。

やはり、人を大事にしなかったつけがまわって来たのではないかと思います。人を大事にするためにも、経済を落ち込ませせるとか、デフレにしてはいけないのです。

なにやら、日本では、デフレが当たり前になってしまっていますが、日本が過去にデフレでさえなけば、日本も他の国々の平均くらいの成長ができたはずなのです。デフレは、通常の経済循環を逸脱した経済の病です。

通常の経済循環では、良い時と悪い時が交互に訪れます。常時良い状態を保つことはできません。しかし、デフレは悪い状態ではなく、明らかに異常な状態なのです。デフレになっても、物価が下がるのは緩慢なので、多くの人々はなかなか気づきませんが、これは人間の病気でいえば癌のようようなものです。放置しておば、徐々に病気が進行して、取り返しがつかないことになります。

放置することは許されません。しかし、過去には放置するどころか、増税したり、金融引き締めをするというとんでもない対処法してきたのです。これは、病人や老人に対して、休みを与えないどころか、過度な運動を続けさせるようなものです。

こんなことをすれば、経済が伸びることはありません。もし少なくとも、日本が他国のような政策をとらなくても、増税や、金融引き締めなどの余計なことをせずに何もしなければ、日本はまだまだ成長していたはずです。日本はデフレから脱却さえできれば、これからかなり伸びるのは確実です。

これらのデータをみれば、これだけ、日本では過去の経済政策の失敗が明々白々なのに、また増税などと誤った政策を実行すれば、日本はまたデフレから脱却できず、同じことの繰り返しになってしまうことは明らかです。そのようなことをさせて良いはずはありません。

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2025年9月20日土曜日

ロシア・中国・日銀──我が国を脅かす三つの危機。我が国を守れる指導者は誰か

まとめ

  • ロシアの挑発エストニア上空でロシア戦闘機が領空侵犯、NATO第4条協議に発展。日本周辺でも同様の危険がある。
  • 中国の浸透豪州とパプアニューギニアの安全保障条約「Pukpuk Treaty」に中国が反発。南太平洋シーレーンを巡る覇権争いが激化。
  • 日銀の裏切りETF・REIT売却発表直後、日経平均は一時1.78%超急落。デフレ脱却前の金融引き締めは国力低下を招く。
  • 三つの脅威ロシアの軍事、中国の経済、日銀の内的失策。これらは相互に関わり、国家独立を揺るがす。
  • 高市自民総裁の役割防衛強化、積極財政、経済安全保障で一貫した姿勢を持つ高市自民総裁が誕生すれば、三つの脅威に立ち向かえる。

1️⃣ロシアと中国の外圧
 

2025年9月19日の朝、エストニア上空にロシア空軍のMiG-31戦闘機3機が突如侵入した。場所はフィンランド湾のヴァインドロー島付近。飛行計画は未提出、トランスポンダーは停止、航空管制との交信もなしという無法行為で、約12分間も領空に居座った。

迎え撃ったのは、NATOのバルト空域防衛任務に参加し、エストニアのエーマリ基地に展開していたイタリア空軍F-35Aだ。2機がスクランブル発進し、対象機を識別・追尾。ロシア機は領空を離脱し、事態は拡大せずに収束した。

トランスポンダーとは、航空機が識別コードや高度を自動送信する装置である。これを切って飛ぶ行為は、意図的に姿を消す挑発行為にほかならない。エストニアはこの事態を重大な脅威とみなし、NATO条約第4条協議を要請した。第4条とは、加盟国が安全や独立が脅かされると感じたとき、全同盟国に正式協議を求める条項である。軍事行動を義務づけるものではないが、同盟全体の危機意識を呼び覚ます仕組みだ。北海道や尖閣で同じ事態が起きても不思議はない。日本もまた、即応体制と政治の意思を持てるかが問われている。

一方、南太平洋でも緊張が走った。豪州とパプアニューギニアが「Pukpuk Treaty(クロコダイル条約)」と呼ばれる安全保障条約の文書に合意したのだ。内容は相互防衛、軍事協力、サイバー防衛など多岐にわたる。しかしPNGの閣議が署名承認に必要な定足数を欠いたため、今回は共同声明にとどまり、正式署名は後日に持ち越された。

この動きに中国は「PNGの主権を損なう」と強く反発した。だが狙いは明白だ。経済援助と債務で島嶼国を囲い込み、我が国の生命線たる南太平洋のシーレーンを握ろうとしているのである。ここが押さえ込まれれば、日本のエネルギーも交易も途絶し、経済は窒息する。豪州は立ち上がった。米国も支援を表明した。我が国も「自由で開かれたインド太平洋」を口先ではなく行動で示さねばならない。
 
2️⃣日銀の裏切りと国力の切り崩し
 
日銀植田総裁

同じ日、日本国内では日銀が新たな動きを見せた。ETF(上場投資信託)とREIT(不動産投資信託)の売却開始を決めたのである。ETFとは株価指数などに連動する投資信託で、REITは不動産収益を投資家に分配する仕組みだ。日銀は金融緩和の一環でこれらを大量に抱えてきたが、ここで出口を切った。

発表直後の2025年9月19日、東京市場は敏感に反応した。日経平均は高値圏から一気に崩れ、一時1.78%超の下落を記録。為替市場では円高に振れる場面が出た。市場は「緩和の終焉」という合図を読み取り、資金調達コスト上昇や資産価格の調整を織り込み始めた。

だが忘れてはならない。我が国はまだ完全にデフレを克服していない。ここで金融を締めれば、需要は冷え込み、投資は鈍る。再び「失われた30年」に逆戻りしかねない。経済がやせ細れば、外交も防衛も空虚な看板に成り下がる。戦闘機を飛ばし、艦艇を動かす力の源泉は経済にある。日銀の判断は、市場原理の仮面をかぶった国力切り崩しだ。
 
3️⃣我が国を守る指導者
 
空からはロシアの挑発、海からは中国の浸透、そして内側からは日銀の裏切り。これらは互いに無関係ではない。すべてが我が国の独立を揺るがす「三つの脅威」である。

戦いは銃弾だけで行われるのではない。為替と株価の乱高下も、シーレーンの封鎖も、国家を無力化する武器になる。経済の背骨を欠いた安全保障は虚構であり、外交は砂上の楼閣である。我が国はいま、この三つの脅威に同時に晒されている。

必要なのは、他国の顔色をうかがう政治ではない。断固たる意思と国民を守る覚悟である。強い意志を持つ国だけが生き残る。この真実を忘れてはならない。


では誰がこの三つの脅威に立ち向かえるのか。答えは明白だ。高市早苗総裁の誕生である。高市氏は防衛費増額と自衛隊強化を一貫して訴え、経済政策では積極財政を主張してきた。さらに総務大臣時代から経済安全保障を最重要課題に据え、通信や放送といった基盤を守るために実績を残してきた。

軍事・外交・経済を一体として捉え、国家の独立を守る覚悟を示す指導者――いま我が国に必要なのは、高市総裁誕生である。

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2025年12月2日火曜日

AIと半導体が塗り替える世界──未来へ進む自由社会と、古い秩序に縛られた全体主義国家の最終対決


まとめ
  • AIと半導体が21世紀の国力と安全保障の中心となり、米国は日米協力を軸に重要鉱物サプライチェーンを再構築し始めた。
  • 中国はGDPの見かけとは逆に国力の根幹が脆弱で、米国と同じ土俵に立ったことはなく、経済指標の悪化やAIによる監視強化が体制の限界を露呈している。
  • 中国・ロシア・北朝鮮は自由社会を意図的に狙って妨害するというより、自らの古い権威主義的秩序観によって国際秩序を組み替えようとし、その行動様式が自由社会の進歩に摩擦を生む構造になっている。
  •  NvidiaSynopsysの提携が象徴するように、自由社会は設計・素材・製造の三層構造の「上流工程」まで握りつつあり、AIを監視ではなく創造のために使う文明圏として次の段階へ進んでいる。
  • 日本はすでに正しい方向へ歩んでおり、課題は方向選択ではなく、外側からの摩擦を退け、自由社会の段階上昇を妨害させない構造的な強さを確保することにある。

世界はいま、AIと半導体を中心に、秩序そのものが組み替わりつつある。かつて軍事や石油が国家の強さを決めていた時代は過ぎ去った。21世紀に国力の核心を握るのは、技術と情報である。そして、最近の報道はその事実を見事に証明した。米国の戦略、衰退する中国、そしてAI文明へ踏み出す自由社会。この三つが交差し、未来の地図を描きつつある。

1️⃣米国は「AI・半導体時代の集団安全保障」を形成しつつある

トランプ大統領と高市早苗首相は、重要鉱物と希土類(レアアース)の供給確保に向けた枠組みに合意

最初の出来事は、米国が「技術と資源の安全保障同盟」を固め始めたことを示している。2025年10月27日、ホワイトハウスは日米による重要鉱物とレアアースの供給確保枠組みを公式に発表した(→ White House公式発表)。同内容は Reuters Japan でも確認されている。

この枠組みは、AIサーバーを動かすGPU、先端半導体の素材、軍需・宇宙技術に欠かせないレアアースまで、すべてを中国依存から切り離すためのものだ。採掘から精錬・加工まで、サプライチェーン全体を日米が一体で押さえる体制づくりに着手したということでもある。

冷戦期の核と石油が覇権の中心だったように、今世紀はAIと半導体が国家の生存を左右する。これは単なる産業政策ではない。21世紀版の集団安全保障である。

2️⃣中国は「米国と肩を並べたことがない国家」──そして弱体化しながら危険度を増す

第二の出来事は、中国の本質的な脆さを白日の下にさらした。長年「米中二大国」「覇権競争」という言説が幅を利かせてきたが、これは幻想である。中国は、軍事力の質、技術の自立性、通貨の信頼性、制度の強靭さ、人口構造など、国力の根幹において米国と同じ土俵に立ったことが一度もない。

GDP総額だけが膨らんだために誤解が生まれただけで、最初から比較の相手ではなかったのだ。

その“勢い”すら崩れつつある。2025年11月、中国の製造業PMIは49.9で、8か月連続の縮小となった(→ Reuters分析)。これは工業国家としての基盤が揺らぎつつあることを示す。

さらに、中国共産党はAIを監視統治の手段として徹底利用している。大手プラットフォーマーを“党の延長機関”として動員し、AIによる言論検閲、民族監視、司法判断への影響、国民のリスクスコアリング、さらには感情分析まで導入しようとしている(→ Washington Post調査報道)。


これは、AIを「創造のエンジン」とする自由社会とは正反対だ。ピーター・ドラッカーが語った「イノベーションとは社会のニーズを見つけ、新たな満足を生む体系的活動」だという定義とは正反対の方向へ進んでいる。

そして最も危険なのは、中国が弱体化すると外への攻撃性を増す構造があるという事実だ。しかし、ここで誤解してはならない。中国やロシア、北朝鮮が「日本や自由社会を狙って破壊しようとしている」という単純な話ではない。もっと深い構造問題がある。

彼らは前近代的な権威主義の秩序観に基づいて国際社会を動かし続けており、その行動様式が結果として自由社会の前進を妨害してしまうのだ。サイバー攻撃、影響工作、技術窃取、国際機関への介入は、彼らの体制から必然的に生まれる行動であり、これが自由社会の“段階上昇”を外側から鈍らせる摩擦となる。

3️⃣Nvidia × Synopsys が象徴する「自由社会の文明的飛躍」──日本はその中心へ

第三の出来事が示すのは、自由社会がAI文明の“上流工程”まで支配し始めたという事実だ。2025年12月、Nvidiaは半導体設計ソフト大手Synopsysに20億ドルを出資し、戦略提携を発表した(→ Reuters報道)。

SynopsysはEDAと呼ばれる半導体設計の中枢領域を支配する企業であり、半導体の“脳と設計図”を作る存在だ。AIの心臓部であるGPUを握るNvidiaが、その上流工程まで押さえに来た。これは、米国が「設計→素材→製造」という三層構造の最上位を固める動きそのものだ。


自由社会はこの技術を監視ではなく、医療、行政、教育、金融、産業といった社会のあらゆる領域を一段上へ押し上げる“創造のため”に使う。複数の試算で、AIは労働生産性を年率0.5〜3.4ポイント押し上げるとされ、これは産業革命に匹敵する。

産業革命級の技術を、主に軍事強化、監視、旧秩序維持に使った国家は、例外なく失敗 している。清朝(中国)、オスマン帝国、ロシア帝国、プロイセン(ドイツ帝国)、徳川幕府などだ。今回のAI革命でも同じことが繰り返されるだろう。

日本にとってAIは、人口減少と労働力不足を突破する最強のエンジンである。単なる効率化ではなく、社会そのものを高次へ押し上げる文明的転換をもたらす。

だが、その前進を外側から鈍らせる勢力がある。それは中国、ロシア、北朝鮮などの全体主義国家である。彼らは古い体制の論理・価値観のまま国際秩序を組み替えようとし、その行動が自由社会の未来に摩擦をもたらす構造にある。ただ、産業革命がそうだったように、結局新たな技術を主に社会変革に用いる国々が勝利を収めることになる。

自由社会が守るべきは方向性ではない。すでに正しい方向へ進んでいる。その前進を鈍らせない構造的な強さこそが、日本を含む自由主義国の最大の課題である。

結び

自由社会は、AIと半導体を創造のエンジンとして、社会を次の段階へ押し上げようとしている。これは単なる技術革新ではなく、文明の更新だ。米国はその基盤を固め、日本はその中心で役割を強めつつある。

しかし、その歩みには必ず外側から摩擦が生じる。中国、ロシア、北朝鮮という権威主義の古い秩序観が国際社会に持ち込まれるかぎり、自由社会は常に妨害を受ける。さらに国内では、これを理解しないマスコミ、古い頭の政治家、官僚など存在がある。しかし、その摩擦を退けたとき、自由世界は間違いなく新たな黄金期へ進む。そして日本は、その中心に立つことができる。

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EUの老獪な規範支配を読み解く──鰻・鯨・AI・中国政策・移民危機から見える日本の戦略 2025年11月28日
ウナギ・鯨からAI・中国政策・移民まで、EUが「規範」で世界を縛ろうとする構図を解剖し、日本が科学・外交・同盟の三本柱で対抗すべきだと論じた記事。AI規制と技術覇権をめぐる攻防という点で、本稿の「AIと半導体が決める新秩序」というテーマを外側から補強している。

我が国はAI冷戦を勝ち抜けるか──総合安全保障国家への大転換こそ国家戦略の核心 2025年11月27日
GPU・電力・データセンター・クラウドをめぐる「第二の冷戦」としてAI覇権競争を位置づけ、日米欧中の構図と、日本が素材・製造・信頼性で取りうる戦略を描いたロングピース。AIと半導体を「国家の神経網」として捉える視点が、本稿の問題意識と直結している。

半導体補助金に「サイバー義務化」──高市政権が動かす“止まらないものづくり国家” 2025年11月25日
半導体補助金にサイバー要件を組み込む高市政権の方針を通じ、日本の産業政策が「工場支援」から「安全保障インフラ」へと変質した過程を分析。AI時代の半導体支援を、単なる景気対策ではなく経済安全保障として位置づける文脈は、本稿とセットで読む価値が高い。

日本はAI時代の「情報戦」を制せるのか──ハイテク幻想を打ち砕き、“総合安全保障国家”へ進む道 2025年11月22日
AI・サイバー・無人兵器が戦争の構造を変える一方で、最終的に勝敗を決めるのは兵站と製造力だと指摘し、日本の精密製造・素材力を基礎にした「総合安全保障国家」構想を提示した論考。AIを“魔法の杖”ではなく、社会変革と国力強化のための道具として位置づける点で、本稿と世界観を共有している。

OpenAIとOracle提携が示す世界の現実――高市政権が挑むAI安全保障と日本再生の道 2025年10月18日
OpenAIとOracleの提携を手がかりに、米国のAIクラウド覇権構造と、それに連動する日本のAI安全保障戦略を読み解いた記事。AIインフラをめぐる米中欧の力学と、「技術主権」を取り戻そうとする日本の動きを俯瞰しており、本稿の「AIと半導体が決める新世界秩序」というテーマの国際的背景を補う一篇となっている。

2009年9月28日月曜日

世銀総裁:主要準備通貨としてのドルの地位は当然ではない-米国の衰退が始まったか?

世銀総裁:主要準備通貨としてのドルの地位は当然ではない(この内容すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください)

ドルが基軸通貨の役割を果たせなくなる日が来る?

 9月27日世界銀行のゼーリック総裁は28日、米ジョンズ・ホプキンズ大で講演し、米国が世界の主要準備通貨としてのドルの地位を当然のものと受け止めるべきではないとの考えをあらためて示した。

 世銀が事前公表した講演テキストの抜粋によると、総裁はまた、新興国の影響力が高まるなか、国際経済の秩序で「次の大きな変化」が進行中だとの見解を表す。

 中国やロシアは、ドルに代わる世界の主要準備通貨を繰り返し求めている。主要6通貨に対するインターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数は、オバマ米大統領が就任した1月以降これまでに11%下落した。米政府の景気対策に伴う財政支出が拡大するなか、今年度の財政赤字が1兆6000億ドルに達するとみられていることなどが背景にある。

 ゼーリック総裁は各国に対し、経済成長の持続確保のための協力体制の強化や、世界でなお16億人が電気のない生活をしている事実を認識するよう求める方針。

米国の衰退が始まったか?
戦後しばらくの間、英国のポンドは、機軸通貨であったことは現在ではほとんどの人が忘れていると思います。しかし、私の記憶では、すこしずつ地位を落としながらも1940年代までは、米国の$とともに、何とか基軸通貨であり続けていたと思います。1950年代には、完全に機軸通貨の役割を終えたと思います。そうして、経済的にも衰え続けていき、1950年代には、最悪の状況を迎えていました。

       【英】           【米】

金本位制確立   1816年          1919年    
↓        貨幣法          金本位制復帰  
↓                             
基軸通貨化    1850年頃         1944年    ─┐
↓                     IMF体制   |25年
↓                              |
転換       1870年          1971年     ─┘
↓        GDP米に抜かれた      ニクソンショック

凋落       1914年          2008年    ─┐
↓        第一次世界大戦      現在      |
↓                             |
≪共存≫     ≪ポンド・ドル共存≫           |30年
↓                             |
↓                             |
終焉       1944年                  ─┘
         IMF体制


その後も、経済は衰え続けました。その頃のイギリスはいわゆる落日という感じて、エリザベス朝の頃のと比較する見る影もないというありさまでした。しかし、その後サッチャーがビックバンを強行し手持ち直し、シティは世界の金融街として返り咲き、さらに、ブレアの時代にも働くための福祉など実施して、躍進しました。しかし、いくら躍進をしても、ポンドが機軸通貨に返り咲くことはありませんでした。

このポンドの動きなどからみても、ドルが今すぐに基軸通貨の役割を完全に失うということは考えにくいと思います。少なくともあと、10年から20年くらいは、じょじょにその勢いを失いつつも、機軸通貨であり続けると思います。

おそらく、10年くらいは実質上のドルの機軸通貨の時代が続き、その後は、EUROや円、人民元なども基軸通貨の役割を果たすかもしれません。

国力においても、ここ10年ではさほど衰退することもなく、世界一であり続けパクス・アメリカーナの地位を保つことでしょう。しかし、その後は、さまざまな要因で国力が衰えていきます。その背景には、アフガンなどにおける膨大な戦費や、グリーン・ニューデール計画などで無駄に費やされる膨大な経費も含まれると思います。

アメリカの国力の本格的な衰退までには、今後10年間のモラトリアム(猶予期間)があると見て間違いないと思います。しかし、その後は、アメリカの経済、軍事力などもあまりあてにできないことも十分考えられます。先立つものがなければ、いくら超大国とはいっても何もできません。ただし、今から10年たっても、すぐにアメリカの衰退など実感できず、30年くらいもたってから、今日のこの日が、衰退の始まりだったと後世の歴史家が伝えるかもしれません。いずれにせよ、今後10年以内にそうした兆候が見え始め、アメリカ一極の時代は終焉し、多極化を迎えることでしょう。

そのときに日本は、どのうような道を歩むべきでしょうか。経済は、内需をできるだけ大きくしておき、外需も増やし、軍事、安全保障の問題、外交の問題などは、日本独自の戦略をたてていく必要があります。今日本国内ではほとんど禁忌となっている、核武装の問題を含めて真剣に考えるべきと思います。10年たってから、なし崩してにいろいろなことを実施するというより、今からしっかり準備をして、10年後に悔いを残さないようにすべきだと思います。さて、民主党にはその度量があるのでしょうか?

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歴史に学ぶ-(1)ミュンヘン会議(1938年9月29日~30日)、チェコスロバキア解体(1939年)

最近の株価や円レートをみていて思うこと-パクスマリーナの時代は来るか?


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2026年4月13日月曜日

アベノミクスの次に来るもの 需要不足の時代を終わらせ、供給力と国力を立て直すときだ


 まとめ
  • アベノミクスとサナエノミクスは何が同じで、何が違うのか。需要不足の時代に効いた処方箋だけでは、いまの日本を立て直せない理由を明快に示す。
  • 我が国を弱らせた本当の原因は、単なる投資不足ではない。国内投資が細り、資本が海外へ流れ、設備の老朽化と供給力低下を招いた構図を解き明かす。
  • 日銀、財政、エネルギー、安全保障を別々に論じても、日本は再生しない。需要の安定と供給力・国力の再建をどうつなぐか、その国家戦略の核心を示す。

我が国の経済をいま論じるなら、比較の軸を間違えてはならない。アベノミクスと、現在の高市政権の経済路線は、断絶ではない。どちらも、強い経済をつくり、その成長で税収基盤と国力を立て直すという点では同じである。アベノミクスは「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の3本の矢として打ち出された。他方、高市政権は「責任ある積極財政」と「危機管理投資」「成長投資」を前面に掲げている。目指す方向は同じだが、処方箋は違う。なぜなら、相手にしている病気が違うからだ。 (首相官邸ホームページ)

アベノミクスが正面から相手にしたのは、長引くデフレ、弱い需要、しみついたデフレマインドであった。だから、まず金融と財政を前に出し、経済を動かす必要があった。これに対して、いま我が国の前にあるのは、物価高、供給網の脆さ、エネルギー制約、国内投資不足、そして安全保障環境の悪化である。IMFは、日本経済が足元で潜在成長率を上回る成長を続け、需給ギャップはプラス圏にあるとみている。つまり、いまはアベノミクス初期のように「まず何でもいいから需要を起こせ」という局面ではない。短期の需要安定化はなお必要だが、中長期の本丸は供給力と国力の再建へ移っているのである。 (IMF)

なお、本稿ではアベノミクス以降の他政権の経済論は論じない。論評に値しないからである。理論も弱い。思想も薄い。場当たり的な言い換えをいくら並べても、国は立て直せない。論じるに足るのは、需要不足の時代に対する処方箋としてのアベノミクスと、その次の段階として供給力再建を掲げる現在の路線だけである。

1️⃣アベノミクスとサナエノミクスは、同じ成長志向だが相手にしている病気が違う

 日銀本店

アベノミクスが合理的だったのは、需要不足が経済全体を凍らせていたからだ。企業は投資をためらい、家計は財布のひもを締め、物価も賃金も上がらなかった。そういう局面では、金融緩和と機動的財政で需要を起こし、空気を変えるしかなかった。だからアベノミクスの第1の矢と第2の矢には意味があったのである。 (首相官邸ホームページ)

しかし、いまの日本は同じ病状ではない。日本銀行は、資源輸入国である我が国では、エネルギーや食料などの供給要因による価格上昇が交易条件を悪化させ、企業収益と家計の実質所得を圧迫し、設備投資や個人消費を下押ししうると整理している。いま起きている物価高を、何でもかんでも「需要が強すぎるからだ」と片づけるのは乱暴である。供給ショックの重みを見なければ、現実はつかめない。 (日本情報処理開発協会)

だから、現在の路線はアベノミクスの否定ではない。むしろ、その次の段階である。アベノミクスが「需要不足の日本」を立て直す処方箋だったのに対し、現在の路線は「供給力が傷み、投資が細り、安全保障環境まで変わった日本」を立て直す処方箋なのである。ここを外すと、同じ成長志向の政策を、古い物差しで測ることになる。

2️⃣供給力を傷めたのは、長い期間にわたる需要不足と国内投資の空洞化である


ここで絶対に忘れてはならないのは、いま表面化している供給力の弱さが、天から降ってきたものではないという事実だ。内閣府の2023年度「日本経済レポート」は、1990年代終盤以降、企業収益が増える一方で、長引くデフレを背景に設備投資や賃金が抑制され、家計消費も弱く、その結果、需要の回復力の弱さが続いたと整理している。そのうえで、設備投資の停滞は資本ストックの蓄積を妨げ、資本の老朽化をもたらし、研究開発など無形資産による新しい価値の創造まで抑え、我が国の潜在成長率を押し下げてきたと明記している。日銀の2020年1月展望レポートBOX3も、建物・構築物の資本ストックのヴィンテージが、バブル崩壊後の建設投資の長期低迷を反映して上昇トレンドを続けていると示している。供給力の低下は、長い需要不足と低名目成長の傷跡なのである。 (内閣府ホームページ)

しかも問題は、単に投資が少なかったというだけではない。国内投資が弱い一方で、企業部門の貯蓄超過は長く続いた。内閣府は、1990年代末以降、日本の企業部門では投資が貯蓄を下回る貯蓄超過状態が恒常化し、その一貫性は主要先進国と比べても際立つと整理している。財務省の2024年末本邦対外資産負債残高でも、直接投資資産は351.8兆円に達する一方、直接投資負債は53.3兆円にとどまる。さらに2024年中だけでも、対外直接投資資産は31.6兆円の取得超である。海外投資そのものが悪いのではない。問題は、国内の資本ストックが老朽化し、潜在成長率の土台が傷んでいる局面でなお、国内再投資が相対的に弱かったことである。 (内閣府ホームページ)

要するに、我が国の問題は「投資不足」ではあるが、もっと正確に言えば「国内投資の弱さ」と「資本の海外偏重」である。だから、供給力再建の核心は、海外で稼ぐ力を保ちつつ、それに見合う規模で国内の設備、人材、研究開発、エネルギー基盤へ資本を呼び戻すことにある。ここまで踏み込まなければ、「供給力再建」という言葉はただの看板で終わる。

3️⃣日銀、財政、エネルギー、安全保障をつなぎ直せ


ここで抜かしてはならないのが、日銀は何をすべきか、という論点である。答えは明快だ。日銀の役割は終わっていない。短期の需要安定化を担う中核として、いまなお重要である。ただし、その役割を誤解してはならない。日銀副総裁の2026年3月講演は、物価上昇にはGDPギャップから来る部分と供給ショックから来る部分があり、供給ショックに機械的に金利をぶつければ、原因そのものには効かないままGDPを冷やす危険があると説明している。つまり、米やエネルギーのような供給要因の物価高に対し、日銀が性急に景気を押しつぶすような対応を取るのは筋が悪いのである。 (日本情報処理開発協会)

しかし同時に、「供給ショックだから日銀は何もしなくてよい」というのも誤りだ。日銀の2026年1月展望レポートは、緩和的な金融環境のもとで、設備投資が省力化投資、デジタル関連投資、研究開発投資を含めて増加基調を続けるとの見通しを示している。IMFも、日本では金融政策の正常化を段階的に進めつつ、物価と産出の安定を保つべきだとしている。要するに、日銀がやるべきことは、一時的な供給ショックに過剰反応して景気を壊すことではなく、基調インフレと需給ギャップを見極めながら、金融環境を不必要に壊さないことである。 (日本情報処理開発協会)

政府の仕事は、その土台の上で成長投資を一気に動かすことだ。高市首相は年頭会見で、「責任ある積極財政」を通じて「強い経済」を構築する成長の肝は「危機管理投資」だとし、その中身として経済安全保障、食料安全保障、エネルギー・資源安全保障、国土強靱化、サイバーセキュリティなどを挙げている。これは単なる景気対策ではない。供給能力と国家の生存条件を一体で立て直すという発想である。設備投資の即時償却のように、実際に国内投資した企業に強く報いる税制が重要なのも、この文脈で理解すべきである。 (首相官邸ホームページ)

その中でエネルギー政策は避けて通れない。資源エネルギー庁の2025年白書は、日本の2023年度エネルギー自給率が15.3%で、G7で最も低い水準にあると示している。輸入エネルギーへの過度な依存は、価格高騰局面で交易条件の悪化となって跳ね返り、企業収益も家計の実質所得も削る。だから、原子力を含む安定電源、送配電網、燃料調達の多角化を、経済安全保障の中核として位置づける必要がある。これは発電の話ではない。投資採算、実質賃金、国富流出、危機時の国家機能、そのすべてに関わる話である。 (日本情報処理開発協会)

さらに、対内投資や外資の議論でも、安保を無視した古いグローバリズムはもはや通用しない。財務省は、経済安全保障上の要請を背景に、2025年の制度改正で、外国の法令や外国政府との契約などにより情報収集活動への協力義務を負う投資家について、事前届出免除の利用を制限する方向へ制度を改めた。要するに、外資導入それ自体を無条件に善とみなす発想は、制度の現実そのものと食い違っているのである。外資は歓迎すべきだが、無条件ではない。国益と安保に資する形で選び、管理しなければならない。 (財務省)

政治の世界でも、その空気は無視できない。石丸伸二氏が率いた「再生の道」は、2025年東京都議選で42人全員が落選し、その後の参院選でも10人全員が落選した。もちろん、選挙結果を1つの理由だけで説明することはできない。だが、安全保障や国家の統治能力より、抽象的な改革論や開放論を前に出す政治が、有権者の確かな受け皿になりにくいことを示す象徴の1つとは言える。少なくとも、安保を脇に追いやって「外資導入」や「開放」だけを唱える路線が、国民的な説得力を持ちにくくなっていることは否定しにくい。 (毎日新聞)

結論

結論は明快である。アベノミクスと現在の路線は、目指す方向ではつながっている。どちらも、強い経済をつくることを目指している。だが、相手にしている病気が違う。アベノミクスが需要不足の日本を立て直す処方箋だったのに対し、現在の路線は、供給力が傷み、国内投資が細り、資本が海外へ厚く流れ、エネルギー制約と安全保障環境の変化が重くのしかかる日本を立て直す処方箋である。だから、同じ成長志向でも、政策の重心は当然変わるのである。 

だから、いま必要なのは、需要か供給かという空疎な二者択一ではない。日銀は短期の需要安定化を担い、基調インフレを見極めながら金融環境を急に壊さない。政府は危機管理投資と成長投資で供給力を引き上げる。国内投資を海外投資より魅力あるものに変える税制と制度を整える。エネルギー政策は経済安全保障の中核として組み直す。対内投資は安保と両立する形で選別する。財政はグロス債務の恐怖論ではなく、成長率と資金使途で評価する。これらをつなぎ直して初めて、需要の安定と供給力の再建が同じ方向を向く。 

我が国が本当に再生するのは、「供給力を高めろ」と叫んだときではない。企業が国内で投資したくなる需要環境を整え、その投資が生産性を押し上げ、賃金を押し上げ、成長率を押し上げる循環を取り戻したときである。必要なのは、気分のよい標語ではない。アベノミクスが起こした需要の火を、供給力と国力の再建へつなぐ、本気の国家戦略である。 

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2023年6月10日土曜日

「悪い円安論」がやはり下火に…株価は上昇、埋蔵金も増える マスコミも忖度、政府が儲かる「不都合な事実」―【私の論評】いわゆる「悪い円高」を主張した人々の言説は今後信じるべきではない(゚д゚)!

 最近、円安が進行しているにもかかわらず、「悪い円安論」は影を潜めている。その理由は、そもそも「悪い円安論」が間違っていたのではないかということだ。

 本コラムでは、為替がマクロ経済に与える影響を繰り返し説明してきたが、円安(自国通貨安)は、輸出関連・対外投資関連企業にはプラス、輸入関連・対内投資関連企業にはマイナスだ。

営業利益が高い企業は軒並み、輸出関連企業 表はブログ管理人挿入

 企業の生産性などの地力を見ると、一般的に国際市場で競争する前者の方が後者より高いので、前者にメリットを与えて後者にはデメリットを与えた場合、全体としてはメリットが大きくなる。自国通貨安による経済成長は、ほぼどこの国でも成り立つので、「近隣窮乏化」として知られている。

 ところが、日経新聞など国内メディアの多くは、円安による輸出増が見られないことから、円安による輸入価格アップによるデメリットのほうが大きいと考え、悪い円安論を展開したようだ。古今東西ある近隣窮乏化理論に無謀にも挑んだわけだが、最近の株高を目の当たりにすると、さすがに悪い円安論は言いにくくなったとみられる。株価指数を構成している企業は、円安メリットを享受しやすい輸出関連・対外投資関連企業が多いからだ。

 もちろん筆者の近隣窮乏化理論は、自国通貨安が国内総生産(GDP)増につながると定量的に主張するもので、株価上昇に直接的に言及するものではないが、GDP動向と株価には一定の相関があるので、株価上昇で悪い円安論が下火になったのは想定内だ。

 悪い円安論を好意的にいえば、輸入原材料やエネルギーに大きく依存する企業ではコストアップ要因になるという、ミクロ的な話です。マスコミのミスリーディングなところは、そのミクロがまるで日本経済全体の話のように書くところだ。

 円安の最大の利益享受者は、純資産が100兆円以上もある日本政府だ。いうまでもなく外国為替資金特別会計(外為特会)です。評価益のみならず円貨換算の運用益も大きくなる。なので、円安で苦しむ企業への対策は容易なはずだが、なぜかメディアは悪い円安論一辺倒で、日本政府が最大の利益享受者として容易に対策財源を捻出できることを言わなかった。

 悪い円安論が出るたびに、筆者の意見を含めて日本政府が円安で最も儲けていることがテレビやネットでしばしば流れた。筆者の邪推だが、それを政府が嫌い、忖度(そんたく)したマスコミが悪い円安論をあまり言わなくなった可能性もあるのではないか。外為特会はいわゆる「埋蔵金」なので、とりわけ財務省は隠したがるものだ。

 もっとも、「為替は国力であり、円安は国力低下だ」という経済学的には意味不明の意見もいまだに少なくない。為替は長い目で見れば単に二国間の金融政策の差で決まるのであって国力の差を表すものでない。為替の短期変動を説明する理論はないので、誰でも独自見解を主張できる。そのため、時々で「ご都合主義」が横行しがちだ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、是非元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】いわゆる「悪い円高」を主張した人々の言説は今後信じるべきではない(゚д゚)!


上の記事にでてくる「近隣窮乏化」とは、貿易相手国を犠牲にして自国の経済を改善することを目的とした経済政策です。通貨安、関税などの貿易障壁、国内産業への補助金など、さまざまな手法で行われます。英語では"Beggar thy neighbor(汝の隣人を乞え)"policyといいます。

ただ、「近隣窮乏化」策は、理念上の政策に過ぎず、これを実行し続ければ、超インフレを招くなどの状況を招くことになったり、あるいは当該国の通貨が基軸通貨出ない場合、基軸通貨のキャピタルフライトが起こったりするので、現実には実施できない政策です。

世界でこれに近い政策を取っているのは中国かもしれません。ただ、中国はこのブログで指摘したように、国際金融のトリレンマにより、独立した金融政策が実行しにくい状況に至っています。

中国は「近隣窮乏化」策に近い政策をとっているが・・・・・

「近隣窮乏化」策の目的は、他国が自国の商品やサービスを輸出するのを難しくする一方で、国内の生産者が自国の商品やサービスを販売しやすくすることです。その結果、他国は輸出よりも輸入の方が多くなり、貿易赤字になることがあります。

ただし、「近隣窮乏化」策は、短期的には効果的ですが、長期的にはマイナスの結果をもたらす可能性があります。例えば、他国からの報復を招き、貿易戦争に発展する可能性があります。また、国内生産者が関税やその他の貿易障壁のコストを消費者に転嫁するため、物価の上昇につながることもあります。

一般的に、近隣窮乏化策は良い経済政策とは考えられていません。世界経済にとって不公平で有害であると見なされることが多いです。

以下は、「近隣窮乏化」策の例です。

通貨切り下げ: 自国の輸出品を安くし、輸入品を高くするために、通貨を切り下げることができます。これにより、他国が国内生産者と競争することが難しくなります。

関税: 輸入品に関税をかけることができます。これにより、輸入品がより高価になり、国内生産者の競争力を高めることができます。

クォータ(割当): ある国は、輸入品に割当を課すことができます。これにより、国内に入ることができる輸入品の量を制限することができ、国内生産者の競争力を高めることができます。

補助金: 国は、国内産業に補助金を出すことができます。これは、国内の生産者がコストを下げ、より効果的に競争するのを助けることができます。

しかし、隣人窮乏化策が常に有効であるとは限らないことに注意する必要があります。例えば、ある国が自国の通貨を切り下げると、他の国も自国の通貨を切り下げて報復することがあります。その結果、各国が通貨安を競い合う「底辺の競争」に陥る可能性があります。これは、消費者の物価上昇や経済成長の低下につながるため、世界経済にとって有害です。

ただ、「底辺の競争」にはならないというか、いずれの国でもできなくなる可能性が高いです。本気で通貨安を競うとすれば、相対的に自国通貨の量を他国通貨の量より上回るようにする必要があるからです。それをどこまでも続けていれば、いずれ必ず超インフレになり、この政策を続けられなくなるからです。

為替は長い目で見れば単に二国間の金融政策の差で決まるのであって国力の差を表すものではありません。為替の本質は、ドルと円で示すと、以下の式で表すことができます。

(全世界で流通している円の総計)÷(全世界で流通している円の総計)≒(円ドル為替)(¥/$)

無論、中短期では、様々な要因があるので、このようにはならないですが、長期的にはこの方向で動いていくことになります。

全世界でたとえばA国が、通貨量を増やし、B国がそのままであれば、A国通貨、B国通貨に対して通貨安になります。

無論短期的には、為替介入である程度の操作はできますが、中期ではそろそろ効果がなくなり、長期では操作不能で、(円の総計/ドルの総計)の方向に動いていくことになります。為替介入は、せいぜい急激な変化を緩やかな変化にすることくらいしかできません。

通貨の価値は最終的にその通貨の需要と供給によって決まります。ある国の中央銀行が通貨の流通量を増やすと、その通貨の供給量が増え、通貨の価値が下がります。これは、通貨の流通量が増えたため、1単位あたりの通貨の価値が下がるからです。

一方、ある国の中央銀行が自国の通貨の供給を一定に保ち、別の国の中央銀行が自国の通貨の供給を増やした場合、最初の国の通貨の価値は2番目の国の通貨に対して高くなります。これは、最初の国の通貨が少なくなったため、その通貨の1単位の価値が高くなったためです。

そうして金融政策と為替レートの理論は、経験則に裏打ちされています。例えば、国際通貨基金(IMF)の調査では、マネーサプライが1%増加すると、為替レートは0.3%下落することが分かっています。

金融政策と為替レートの理論は、政策立案者にとって重要な意味を持っています。例えば、ある国の中央銀行が自国通貨の減価を防ぎたい場合、債券やその他の資産を売却することで通貨の供給量を減らすことができます。逆に、自国の通貨安を促したいのであれば、債券やその他の資産を購入することで、通貨の供給を増やすことができます。さらに、自国通貨を刷り増せば、さらに供給を増やすことができます。

しかし、先に述べたように、自国通貨安を促し続ければ、いずれインフレに、さらに促し続けれは、ハイパーインフレになります。そのため、通貨安競争にはおのずから限界があるのです。

通貨戦争は幻想に過ぎない

高橋洋一氏が「近隣窮乏化」策といったのは、無論日本がそのような政策意図的にとっているわけではなく、日本国内の都合で金融緩和策を行っているので結果として、そのような状況になっていることを言っているのです。

円安は、現状の日本にとってあたかも「近隣窮乏化」策を実施してGDPを増やす政策を実行しているようなものであり、これを「悪い円安」などと呼ぶのは間違いです。

これで、米国やEUさらに、日本の金融緩和策が多大な影響を及ぼす中国や韓国などが、日本の円安に関して、苦情を言うなら理解出来ますが、日本のメディアが円安を批判した理由が良くわかりません。

過去に日本の金融引締で、超円高になった日本で製造業が日本で部品を組み立てて輸出するより、韓国や中国で組み立てて輸出したほうがコスト安になったため、ぬるま湯に浸かったような状態になった中国や韓国ですらそのようなことをいわないのに、日本のメデイアが「悪い円安」などと批判するのは、私にはほとんど理解不能です。

最近は、さすがに「悪い円安論」はなりを潜めていますが、このような論を語る人々は、そもそも為替がどのように決まるのか、通貨安はどのような効果をもたらすのかを全く理解していないのでしょう。

そうして、高橋洋一氏が語るように、長期では為替は(円の総量/ドルの総量)できまり予測もできるのですが、中短期では多くの要素があり予測不能なので、これについては好き勝手なことがいえるので、これを利用して奇妙奇天烈、摩訶不思議な論を打ち出し、特定の意図への誘導をはかっているのでしょう。

いわゆる「悪い円高」を主張した人々の言説は今後も信じるべきではありません。

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2023年8月30日水曜日

中国、処理水問題で国内不満をガス抜きか 神田外語大教授、興梠一郎氏―【私の論評】同盟国等との同盟強化、経済的自由の強化、国力を強めることが、日本が中国に対抗し日本の未来を守る道(゚д゚)!

中国、処理水問題で国内不満をガス抜きか 神田外語大教授、興梠一郎氏

まとめ
  • 中国当局が福島原発処理水の海洋放出に反対し、反日感情を煽る。
  • 以前の尖閣諸島国有化と類似し、中国政府への不満は沈静化措置をとりつつ、日本を非難。
  • 中国経済悪化で政府批判広がる可能性あり、日本は中国依存軽減と輸出多様化に注力すべき。
 東京電力福島第1原発処理水の海洋放出をめぐって中国当局が強硬に反対し、庶民の反日感情を扇動している。その背景について神田外語大教授の興梠一郎氏に聞いた。

興梠一郎氏

 中国当局は東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に反対し、庶民の反日感情をあおっている。これは以前の尖閣諸島国有化の際の中国の行動と類似しており、中国は国内の経済的不満や政治的不満を抑えるために日本を批判する狙いがあるとされる。

 中国政府は社会メディアで不都合な情報を削除し、日本批判の投稿を黙認している。

 しかし、現在の抗議の動きは限定的であり、中国政府はこれが広がることを危惧している。中国経済の悪化や不満の高まりがあり、政府批判の動きが広がる可能性もある。

 中国は日本との関係を悪化させたくないため、処理水の抗議を増やすメリットは薄いとされている。今後は日本政府が中国依存を軽減し、外交カードとしてのリスクを減らすために中国依存の高い輸出品の販路を多様化する努力も必要だ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】同盟国等との同盟強化、経済的自由の強化、国力を強めることが、日本が中国に対抗し日本の未来を守る道(゚д゚)!

まとめ
  • 中国の日本からの、水産物輸入規制は、中国国内で塩の買い占め、中国国内水産業の衰退の兆しなどの思わぬ副作用をを生み出している。
  • 中国政府の選択肢不足と国内の憤り、共産主義の制約により国民の憤怒のマグマは高まるばかり。
  • 中国の政府に対する不満を抑えるための日本批判が続くが、これは沈静化する可能性も。
  • 日本は中国依存を減らし多様な国々との経済パートナーシップを強化すべき。中国に対抗し、国力強化のためには民主主義国家との同盟、自由貿易、国内基盤強化が必要。中国のプロパガンダに惑わされず警戒を。

私は、このブログの以下の記事(リンク)で、まさに興梠氏が語るのと同じようなことを掲載しました。
日本人「慎重な言動を」 北京の大使館が注意喚起―【私の論評】日本の水産物輸入規制で、思わぬ副作用に見舞われる中国(゚д゚)!

かつての中国の反日デモ

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に結論部分のみを掲載します。

選択肢の欠如と生活費の上昇に対する国民の憤り。共産主義の中央計画が失敗するのは、少数の官僚(中国には選挙がなく、西側諸国でいう政治家は存在しません)が何百万もの個人が市場で自由に選択するほどの知恵を持ち得ないからです。諺にもあるように、地獄への道は善意で舗装されているとされています。

いかなる動機があったとしても、他国を罰したいという願望は、しばしば高い代償を伴います。中国による日本の水産物輸入規制もその例外にはならないでしょう。予測のつかない事態が発生する可能性も十分あります。

この記事に掲載しましたが、すでに中国では、塩の買い占めや、水産市場などで一般顧客が激減するなどの副作用が起こっており、さらに予期せぬ副作用が起こる可能性もあります。

このようなことから、中国が国内で「処理水」を巡って国内で日本批判を継続し続けることはないとみられます。しかし、尖閣諸島への威嚇などのように、恒常可する可能背性がないと断言することもできません。特に、反日デモや反日サイトが禁止されたとしても、政府サイドによる嫌がらせは続くかもしれません。そうして、今回のような出来事は、水産物以外でも起こる可能性もあります。

日本固有の領土尖閣諸島

興梠氏が言うように「今後は日本政府が中国依存を軽減し、外交カードとしてのリスクを減らすために輸出品の多様化に努める必要がある」のは確かです。

中国の習近平政権は民主主義の価値観や自由市場の原則を共有しない権威主義政権です。このような国に過度に依存するのは賢明ではないです。

日本としては、台湾、韓国、インドなどのアジアの民主主義国家との経済・貿易関係を強化するべきです。これらの国々は、日本と同じく自由主義を共有し、経済大国として成長しています。

さらに、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ諸国など、欧米の同盟国との新たな自由貿易協定の交渉を推進すべきです。欧米の経済力と価値観の共有は、日本に大きな利益をもたらすことになります。特に、日本が主導で発効したTPPに米国に戻ってもらい、さらに多くの国々に参加してもらうべきでしょう。

緑はTPP加盟国、黄緑は加盟検討国もしくは加盟が決まった国

さらに、中国依存の割合が大きい国内産業を支援し、中国から自立できるようにすべきです。グローバルな貿易は重要ですが、いずれの国も強固な国内基盤を維持しなければならないです。特に、減税や規制緩和は、民間部門の成長をさらに促すことができます。

中国の覇権主義と拡張主義に対しては、強硬姿勢をとるべきです。尖閣諸島のような日本固有の領土を守るために一歩も譲らないことが肝要です。強さと決意を示すべきです。宥和的な態度は、さらなる要求を招くだけです。

中国の脅威に対抗するため、日本の他国との同盟を増やすとともに、強化すべきです。さらに、国防と安全保障に関する米国との緊密な協力が不可欠です。力の均衡による平和を目指すべきです。

中国のプロパガンダや誤った情報キャンペーンに振り回されてはならないです。中国の権威主義的な政府は信用できません。彼らは、常に日本のような民主主義国家を弱体化させようとしています。警戒を怠るべきではありません。

民主主義の同盟国との同盟の強化、経済的自由の強化、そうして国力を強めることが、日本が中国に対抗し、日本の未来を守る道です。

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2024年5月29日水曜日

【攻撃性を増す中国の「茹でガエル」戦術】緊張高まる南シナ海へ、日本に必要な対応とは―【私の論評】同盟軍への指揮権移譲のリスクと歴史的教訓:自国防衛力強化の重要性

【攻撃性を増す中国の「茹でガエル」戦術】緊張高まる南シナ海へ、日本に必要な対応とは

まとめ
  • アキリーノ米インド太平洋軍司令官は、中国が「茹でガエル戦術」で徐々に圧力を強めており、南シナ海や台湾海峡での軍事行動が一層攻撃的で危険になっていると指摘した。
  • 中国の沿岸警備隊によるフィリピンの排他的経済水域内でのサンゴ礁周辺での威嚇行為に強く懸念を示した。
  • 北朝鮮とロシアの脅威、中露の協力関係深化にも警戒を要すると述べた。
  • 同盟国との連携が重要であり、新たな軍事能力の強化と相互運用態勢の早期確立が課題だと指摘した。
  • 日本としては、同盟国との連携強化に伴う指揮命令系統の問題など、主権にかかわる課題が将来的に生じる可能性があるため、自らの防衛能力強化を急ぐ必要がある。

アキリーノ米インド太平洋軍司令官

 アキリーノ米インド太平洋軍司令官は、退任を前に、中国の南シナ海や台湾海峡における軍事的圧力の強化を「茹でガエル戦術」と表現し、強く非難した。中国は徐々に温度を上げることで相手に危険性を過小評価させ、いつの間にか危機的状況に陥らせるこの戦術を追求しており、行動は次第に攻撃的かつ大胆になり、地域の不安定化を助長していると指摘した。

 特に、フィリピンの排他的経済水域内のサンゴ礁周辺での中国沿岸警備隊の威嚇行為は一線を越えた新たな段階に入ったとの懸念を示した。放水砲を用いてフィリピン軍への補給を妨害するなど、これまで以上に攻撃的な姿勢を見せているからだ。

 アキリーノ司令官はさらに、北朝鮮の度重なるミサイル発射や、北朝鮮・ロシアの協力関係、中国・ロシアの関係深化にも危惧の視線を向けた。これらの動きは地域の緊張をさらに高める要因になりかねないと警鐘を鳴らした。

 そして、中国を始めとするこれらの脅威に対抗するには、同盟国との連携が不可欠であり、各国の新たな軍事能力の強化とそれらの早急な相互運用態勢の確立が喫緊の課題だと力説した。アキリーノ司令官自身、台湾有事の際にも指揮を執っており、中国の一方的な行動に強い危機感を抱いていたことがうかがえる。

 こうした現状認識を踏まえ、日本としても自らの防衛能力の強化を急ぐ必要があるだけでなく、同盟国との連携強化に伴い、将来的には指揮命令系統の一体化など、主権にもかかわる重大な課題が生じる可能性も想定されるため、十分な検討が求められよう。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】同盟軍の指揮権移譲のリスクと歴史的教訓:自国防衛力強化の重要性

まとめ
  • 軍隊の指揮権を他の同盟国などに移譲すると、現場の実情が正確に伝わらず、同盟国全体の利益が優先されることで、自国の利益が損なわれる可能性がある。
  • 自衛隊が米軍の指揮下に入ることで、日本の防衛任務や戦略的利益が適切に反映されないリスクが高まる。
  • 第二次世界大戦中の英国の例では、第二次世界大戦中の指揮権移譲により戦略的利益が損なわれ、戦後の国力低下にもつながった。
  • ソ連は指揮権を維持し続けた結果、戦中には最大の損害を被りながらも、戦後に領土拡大と国際的な主導権を獲得し、最も利益を得た国となった。
  • 自国の防衛力を自助努力で高めつつ、同盟国と対等な関係を保ち連携することが重要であり、軽々な指揮権移譲は避けるべきである。
上の記事の元記事の最後のほうでは、「古来、同盟軍の戦いでは指揮権を移譲した側の損害が大きくなるとの定評に鑑み、その観点からもわが国は自らの能力強化を早急に進めるべきだという声は傾聴に値する」としています。

これは、指揮権を移譲すれば、意思決定の場が離れた司令部に移ったとすれば、現場の実情を正確に伝えきれず、状況に適さない判断がなされる可能性があります。また、自国の利益よりも同盟国全体の利益が優先されがちになります。このような懸念から、自国の指揮権を最大限維持し、独自の能力を強化すべきだという主張がなされているものと思われます。

台湾有事の場合を想定して、より具体的に説明します。

頼清徳台湾新総統

仮に中国が台湾に武力侵攻した場合、日米同盟に基づき、自衛隊は米軍と共に対処にあたることになるでしょう。しかし、この際に自衛隊の指揮権を完全に米軍に移譲してしまうと、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
  1. 現場の実情が適切に伝わらない 台湾有事における自衛隊の活動は、日本の領土、領海、領空の防衛という自国の防衛任務と深く関わっています。しかし、指揮権を米軍に移譲してしまえば、そうした日本の主権的利益が必ずしも十分に反映されない可能性があります。
  2. 自国の戦略的利益が損なわれる 米軍の司令部は、同盟国全体の戦略的利益を最優先します。一方で日本は、例えば中国との関係修復などの将来的な国益を考慮する必要があります。指揮権を移譲すれば、そうした自国の長期的な利益が無視される恐れがあります。
  3. 現場の機動性が失われる 有事における自衛隊の機動的な活動には、政府の迅速な判断と指示が不可欠です。しかし指揮権を移譲してしまえば、意思決定のプロセスが遅延し、機動性が失われてしまう可能性があります。
こういった理由から、自国の防衛能力を強化し、最大限の主体性を維持することが重要であり、安易に指揮権を移譲すべきではないという主張が出てくるのです。台湾有事のように、自国の主権的利益が深く関わる事態では、この点は特に重要になってくるでしょう。

指揮権の移譲によって、不利益を被った国の例としては、英国があげられます。

第二次世界大戦中の英国首相 チャーチル

第二次世界大戦の欧州戦線において、英国と米国の間でこのような事態が生じました。
1942年にドイツ領内への本格的な侵攻を開始した時点で、英国よりも兵力と装備で優位にあった米軍が事実上の主導権を握りました。それにより英軍は以下の不利益を被りました。
 
作戦計画の立案段階から英国側の意見が尊重されない事態が生じました。米軍中心の作戦計画になり、英国軍の犠牲が無視される側面がありました。

航空機や戦車、兵員の割り当てで不利な扱いを受け、英国軍の戦力が十分に生かされませんでした。ノルマンディー上陸作戦では、英国軍の提案する上陸地点が米軍の希望で変更され、不利な展開を強いられました。

このように、同盟国内での指揮権の主導権を持った米軍が、自国の都合を優先する形で作戦を指揮したため、英国軍は戦略的利益を損ねる事態に陥りました。

戦後も同様です。インドをはじめ、連合国内で英国の植民地独立運動が活発化し、戦後に英帝国は瓦解に追い込まれました。他の連合国に比べ、植民地喪失の打撃が最も大きかったと言えます。

戦時下の莫大な費用と戦後の経済的疲弊により、英国は深刻な国力低下に見舞われました。この間、他の米ソなど連合国の国力は向上しており、格差が開きました。

このように、戦時中の連合国内での影響力喪失と、戦後の国力低下が相まって、英国は第二次世界大戦の連合国内で最大の損失を被った国と評価されているのです。

では、米国が第二次世界大戦でもっとも利益を得たかというと、そうとは言い切れないところがあります。

米国は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツと戦うソビエト連邦(以下ソ連と略す)に支援を行いました。

支援内容は以下の通りです。
  • 武器・軍需品の供与 米国はレンドリース法に基づき、ソ連に戦車、航空機、艦船、食料品、石油製品等の軍需品を大量に供与しました。金額にして現在の換算で1,800億ドル相当とされています。
  • 資金支援 ソ連への借款や信用供与を行い、戦費の一部を肩代わりしました。合計で109億ドル相当の資金援助がありました。
  • 戦略物資の提供 非鉄金属、燃料、機械類、車両など、ソ連が不足していた戦略物資を米国から供給を受けました。
  • 輸送路の開設 同盟国からソ連へのルートとして、北極海航路・ペルシャ湾ルート・極東ルートなどを開設し、物資の輸送を支援しました。
この大規模な軍事・経済援助によって、ソ連の対ドイツ戦線が物資的に支えられ、持久戦を可能にしたと評価されています。

しかし、結局のところ、もっとも被害の大きかった国でもある、当時のソ連が最大の利益を得たと言えます。その主な理由は、当時のイギリスとは異なり、ソ連は軍の指揮権を一片たりとも、米国に譲らなかったことにつきるでしょう。

これは、ソ連と米国は地理的、歴史的、文化的にも隔絶していたため、米国として指揮のとりようもなかったということに起因してはいるのですが、これが戦後に英国との大きな差を生み出すことになるのです。

第二次世界大戦中のソ連の指導者 スターリン

ソ連が東方戦線の作戦指揮権を完全に自国が掌握し続け、他国に決して権限を譲らなかったことが、戦後の勢力圏拡大と冷戦構造における主導権の獲得につながったといえます。

指揮権の一元的な維持が、戦後のソ連の"利益"獲得に大きく寄与したと言えるでしょう。

ソ連は戦後、日本の現在「北方領土」といわれる地域を領土とし、東欧諸国をソ連の影響下に置き、バルト3国などを事実上の一部領土化しました。領土を大幅に拡大することができました。

ソ連は、ナチス・ドイツ撃滅の最大の功労者となり、戦後は米国とともに超大国の座に着くことができました。東西冷戦構造の一方の中心的存在になりました。戦後設立された、国際連合では、中国とともに常任理事国となっています。

東欧を中心に社会主義圏が大きく広がり、ソ連の影響力が最大化しました。イデオロギー的にも大きな勝利を収めたと言えます。
 
ソ連は、連合国側で主導的な役割を果たし、戦後の東西ドイツ分割や東欧での影響力拡大などを主導できました。

このように、領土的・イデオロギー的な大幅な拡大と、戦後の国際秩序形成における主導権の獲得という意味で、ソ連が第二次世界大戦から最も利益を得た国であると評価できます。

このように、軽々な指揮権移譲は避け、自国の防衛力は自助努力で高めつつ、同盟国とは対等な関係を保ち、緊密に連携する。この二つの側面を両立させることが、軍事力の最大発揮につながるとともに、戦後に不利益を被らないための対策ともなるのです。

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2019年10月13日日曜日

自然災害大国ニッポン、災害で壊れたインフラ「そのまま放置」のワケ―【私の論評】令和年間は緊縮財政を捨て、公共投資に力を入れよ、現状ではそれが国富を高めることになる(゚д゚)!

自然災害大国ニッポン、災害で壊れたインフラ「そのまま放置」のワケ
もとは私たちのお金なのに…

財務省に気をつかって…

9月11日に発足した第4次安倍晋三第2次改造内閣の基本方針に、「国土強靭化」という文言が躍った。

「まず何よりも、『閣僚全員が復興大臣である』との意識を共有し、熊本地震、東日本大震災からの復興、そして福島の再生を、更に加速する。全国各地で相次ぐ自然災害に対して、被災地の復旧・復興に全力を尽くす」という。

千葉県を襲った台風15号など、自然災害による被害は枚挙に暇がない。

台風19号により一部結界した千曲川の堤防
'18年には「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」が閣議決定され、国土交通省の'20年度概算要求は7兆円を超えた。だが、どうも国交省には財務省に対して及び腰なところがある。

まず、財務省は引き続き緊縮財政一本槍で、'25年度の国・地方を合わせたPB(基礎的財政収支)の黒字化目標を譲らない。「国土強靭化」の軸はインフラ整備になるが、PB黒字化の前でこうした事業は悪者扱いになる。

インフラ整備は建設国債を財源とすることが一般的だ。赤字国債とは異なり、ただ使われるものではなく、長期的視点では社会に有用な資産を残すものだ。ところが、バランスシートの上では、建設国債もただの「借金」のような扱いになる。あくまで財務省の理屈では、インフラ整備のための建設国債発行はできるだけ避けたいのだ。

とはいえ、これだけの災害が頻繁に起こっているのだから、国交省もより強気で臨むべきなのだが、どこか財務省に遠慮がちだ。その一例が、国債マイナス金利という絶好の環境をうまく生かしていないことだ。

マイナス金利下では、国は国債を発行すればするだけ儲かる理屈だ。国債調達資金を塩漬けしてもいいが、インフラ投資にまわすのが現状では最上ではないだろうか。

国交省内には、公共投資の採択基準がある。公共投資による社会便益が費用を上回っていることが条件だ。これは先進国ではどこでも採用されている基準で、社会便益をB、費用をCとすれば、B/Cが1を超えるものが採用という数式だ。

ただし、これを計算するうえで、現在の価値と将来予測される価値を調整するために、「社会的割引率」が用いられる。詳しい説明は省くが、この割引率(4%が一般的)を適用すると、よほど計画性のない公共事業でないかぎり、B/Cは1を超える。計算上はだいたいのインフラ整備が採用されるのだ。

向こう4~5年は超低金利が続くと予想されている。それにもかかわらず、国交省は割引率を見直すことなく、一方で公共投資を「自主規制」し、財務省の緊縮財政に協力する格好になっている。国土強靭化に熱心な政治家や関係団体も、国交省役人が財務省の走狗となり、社会的に必要な投資を制限していることに気づかない。

防災のためのインフラ整備は待った無しだ。南海トラフ地震や首都直下型地震が、今後30年間で起こる確率は7割以上だという。これらに備えるうえで、マイナス金利環境は絶好のタイミングだ。

人命のかかった防災対策で財務省が緊縮を突き通す道理はなく、国交省も財務省に気を遣っている場合ではない。秋の臨時国会では両省がどのような態度を取るのか、注視する必要がある。

『週刊現代』2019年10月5日号より

【私の論評】令和年間は緊縮財政を捨て、公共投資に力を入れよ、現状ではそれが国富を高めることになる(゚д゚)!

こちらは、札幌市ですので、台風が直撃することもなく、今回の台風による被害はありませんでした。このブログの読者の方々は、全国にいらっしゃいますので、被害に遭われた方々もいらっしゃると思います。

被害に遭われた方々に、まずはお見舞い申し上げます。一日も早く復興されますことをお祈り申し上げます。
さて、振り返りますと「平成」(1989~2019年)は、“災害の時代”だったといえるのではないでしょうか。

10名以上の死者・行方不明者を出した主な自然災害だけに絞っても、その発生数は15件に上ります(下表)。


単純計算では、2年に1度は何らかの自然災害が発生し、10名以上の死者・行方不明者が出ていることになります。この数字を多いと見るか、少ないと見るかは、人によって判断が分かれるところかもしれないです。

全国の交通事故による死者数を見ると、毎年減少傾向にはあるものの、それでも3,500人以上に上ります。死者数だけを比べれば、交通事故死のほうがよほど深刻だといえるからです。

ただし、自然災害では、人が死ぬという人的な被害だけにとどまらず、建築物やインフラなどが破壊されるという物的な被害も発生します。その経済被害は、莫大な額に上ります。

東日本大震災の被害総額は16兆円以上(内閣府試算)、西日本豪雨では1兆円以上(国土交通省試算)にもなります。福岡県の年間GDPが19兆円ほど(16年県民経済計算)なので、2つの災害の経済被害は、福岡県経済が消滅するのと同等だといえます。

自然災害は国民の命を奪い、国民の経済力―ひいては国力までも根こそぎ奪います。平たくいえば、自然災害によって国民は死に、生き残った者は貧しくなるのです。
「激甚災害」に指定された九州北部豪雨(福岡県朝倉市など)による被害総額は、2,000億円(福岡県試算)近くに上りました。東日本大震災や阪神・淡路大震災(内閣府試算で約10兆円)に比べるとさすがにケタが違うのですが、ローカルな被害総額としては甚大なものです。

とはいえ、「2,000億円の被害が出た」と嘆いてばかりいても仕方がないです。取り戻さなければいけないのです。それが、災害からの復旧・復興の最も重要な中身の1つです。

復旧・復興には、被害総額と同等かそれ以上の投資が必要になります。阪神・淡路大震災には16兆円以上、東日本大震災には35兆円以上の復興関連予算がこれまでに投じられました。

「予算は国家の意思を示す」という言葉があります。国の予算を見れば、その国が何をしたいのかが見えるという意味を含んでいます。ときの首相が「内閣を挙げて復興に取り組む」などと宣言するのは単にパフォーマンスであって、実際に費用を予算に盛り込むことこそが、真の意思表示に当たります。

何をもって復興完了とするか定かではないですが、被災自治体などが策定した復興計画などが完了すれば、一応「復興は終わった」とみなすことができるようです。

それでいきますと、阪神・淡路大震災の場合は10年後の2005年度に復興が完了、東日本大震災も10年後の20年度に復興が完了する予定ということになります。九州北部豪雨の復興計画は、5年後の22年度中が目標年次です。

ちなみに、10万人を超える死者を出した関東大震災(1923年)では、発災から6年で復興事業が完了。7年後の1930年3月に帝都復興の勅語が出されています。

時間や場所、規模などが異なる災害を単純比較することはできないですが、平成の復興はスピーディーとはいえないようです。なぜ復旧に時間がかかるのかだが、単純に「国力が低いから」と考えて差し支えないと思われます。国力には、政治力、財政力、行政力を始め、危機管理能力なども含まれます。

緊縮に凝り固まった財務省

出典:国土交通省

「国力の低さ」の一例は、「公共投資額」の低さに見て取れます。上表は、1989年度から2018年度までの「平成の御世」の公共投資の推移を示すもので、しばしば引用される有名なグラフです。

これを見る限り、平成初期の投資額は増加傾向にあり、98年にピークの14.9兆円に達しました。その後は減少が続き、10年度以降は、ピークの3分の1である5兆円程度で推移しています。

なお10年度は東日本大震災が発生した年ですが、それ以降、基本的に投資を増やしていません。前半に阪神・淡路大震災、後半に東日本大震災を経験しながらも、平成年間を通して、公共投資を減らし続けてきたわけです。平成は、「災害の時代」であるとともに、「公共投資削減の時代」でもあったといえます。

日本政府は、自然災害が多発し、復旧復興や災害対策が必要なのにも関わらず、元手となる投資額を減らし続けてきたわけです。なぜ政府は、このような不可解なことをするのでしょうか。たとえば、財務省の財政制度等審議会の資料のなかに、こういう文言があります。

「公共事業については、『量』で評価する時代は終わり、選択と集中の下、より少ない費用で最大限の効果が発揮されているかという『質』の面での評価が重要な時代になっている」。

「人口減少社会の本格的な到来も踏まえれば、予算の総額を増やすということではなく、引き続き総額の抑制に取り組むなかで、日本の成長力を高める事業と防災・減災・老朽化対策への重点化・効率化を進めていく必要がある」。

この文章からは、「とにかく予算は減らす。メリットのある事業しかやらない」という強いメッセージが伝わってきます。防災関連はやらないとはいえないが、「重点化・効率化」という“クギ”を刺しています。

一見もっともらしいようにも思えますが、「本当に大事な事業で、かつ効率的にならなければ予算はつけないよ」という意図が見え隠れしています。

財務省のこうした意見は、「緊縮財政」の考え方に基づいています。財政規律(プライマリーバランス)を遵守し、いわゆる国の借金を増やさない(減らす)という政策的立場です。

この立場の是非について、このブログでは全く間違いであることをこのブログで過去に訴えてきました。それにしても、緊縮財政という明確な政策意図の下、公共投資額が減らされ続けてきたことは、多くの国民が知っておく必要があるでしょう。

「令和」を災害の時代にするな

自然災害は、前兆があれば予測はできるのですが、あらかじめ「いつ」「どこで」発生するかを予想することはできないです。そのため、災害対策は基本的に事後対応になります。今にも崩れそうな崖、ちょっと雨が降ったら溢水しそうな河川などは、予防保全的に対策を講じる必要があります。

上の記事にもあるように、政府は昨年、「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」として、人命とインフラを守るため、3年間で7兆円を投じることを決めました。何もしないよりはマシですが、事業効果は限定的だと言わざるを得ないです。

日本全国をカバーするには、事業規模が小さすぎるからです。かつての政府には「10年間で200兆円」を投資する「国土強靭化」の構想があったのですが、新たな政策は投資額比率にして約8.5%に過ぎないです。「インフラなどの機能維持」に成り果ててしまった感があります。

緊縮財政が続く限り、令和の御世でも、このような対症療法的な“行きあたりばったりな”災害対策は続いていくでしょう。それは「災害の時代」を繰り返すリスクを孕み続けていることを意味します。そのような状況下で起こった自然災害は「天災」ではなく、もはや「人災」といえるのではないでしょうか。

旧民主党、ならびにそこから派生した野党の議員などは、民主党が政権与党だった時代に「コンクリートから人」などというキャッチフレーズで、公共工事をどんどん減らしたという経緯があります。その象徴が八ッ場ダムだったともいえます。

八ッ場ダムは群馬と利根川流域の人々を救った

台風19号による河川の氾濫が相次ぐ中、国が来春の運用開始を目指し、10月1日に貯水試験を始めたばかりの八ッ場(やんば)ダムに称賛の声があがっています。

利根川水系の最上流にある八ッ場ダムは、2016年6月14日からコンクリート打設を開始し、2019年6月12日に打設完了式を開催。また、2019年10月1日には試験湛水(たんすい)が開始されたばかりでした。

本体工事がほぼ完成した群馬県長野原町の八ツ場ダム=6月12日午前9時48分

国土交通省関東地方整備局の速報によると、13日午前5時現在の水位は標高573.2メートルとなり、満水時の水位(標高583メートル)まで10メートルほどに迫ったそうです。台風によるダムの被害は確認されていません。

周辺では11日未明から13日朝までに累計347ミリの雨が降り、山間部から流れ込んだ水でダム湖の水位は約54メートルも上昇しました。水没予定地に残された鉄橋も11日時点では見えていましたが、完全に水の底に沈みました。

もし、八ッ場ダムがなかったら、群馬県が終わっていたという声もあがっています。ネット上には以下のような声が上がっていました。
「無駄な治水事業など無い」「民主党政権のままだったら下流は今頃大洪水か」「これで助かった命はたくさんあるんだろうな。現場の方、大変お疲れ様でした」
旧民主党政権が実施したパフォーマンス的事業仕分けのようなものは、百害あって一理なしといえると思います。

旧民主党の議員だった人たちは、巨大な投資をどう思っているのでしょうか。これは、私の推測ですが、ひよっとすると、巨大ダムなどに巨大な投資をすると、投資した資金はこの世から消えてしまうと思っているのではないでしょうか。

このブログの読者であれば、よもやそのような人はいないと思いますが、そんなことはありません。このような巨大なインフラ投資は、工事をすることにより、工事を請け負う会社にお金が入り、多くの人々に賃金がわたり、また政府に税金が戻ってきます。

さらには、こうした巨大インフラ工事をしたことにより地域がより安全となり、利根川水系付近にはさらに多くの人々が集まり、それまでなかった新たな事業機会が増えることになります。地域の人々がその機会を獲得して、様々な事業を展開すれば、これらの地域に新たな富が創造されることになります。

そうなると、政府が投資をしたよりもはるかに大きな富が創造され、政府も投資したよりも、さらに大きな富を税金として回収できることになります。

このようなインフラ投資を徹底して行って急速な経済発展をしたのが最近までの中国です。ただし、最近では国内のインフラ投資はほぼ一巡して、めぼしい投資先が亡くなっているのも事実です。そのため、中国政府は「一帯一路」というプロジェクトで、海外でも投資をして儲けようとしています。

「一帯一路」はこのブログでも過去に説明したように、中国政府の思惑通りにうまくいくことはないでしょうが、いずれにせよ、インフラ投資は条件を満たせば地域や政府を潤すのは事実です。習近平など現状の日本が国内に巨大インフラ投資案件がかなりあることを知れば、羨ましく思うことでしょう。そうして、単に羨ましがっているだけではなく、民間会社などを通じて北海道の土地を買い漁ったりしているようです。

昔の政治家など、マクロ経済政策に疎くて、経済対策というと公共工事によるインフラ投資だと思いこんでいる人も大勢いました。

しかし、このようなごうつくばりの政治屋たちが、利権を貪り、あまり必要もないような公共工事を行い過ぎたため、日本ではこれに対する批判が高まりました。

確かに無駄な工事などはする必要はないですが、社会便益をB、費用をCとすれば、B/Cが1を超えるもののみ採用するという方式を取り続けていれば、何も不都合は起きなかったのに、1を超えるものまで実施してこなかったというのが今日の姿です。

さらには、上にもあるように、国債マイナス金利という絶好の環境を活かしていないというのも問題です。国債はなせか、将来世代へのつけを回すものとして、忌み嫌われるようになりましたが、本来は自然災害などのときに、自然災害にあった世代だけではなく、インフラ投資の恩恵にあずかる将来世代にも応分に負担してもらい、世代間の公平を期して導入されたものです。

これも勘違いしている愚かな議員が大勢います。旧民主党の議員などは、馬渕氏や金子洋一氏などを覗いて、全員がそうです。自民党にも大勢いますが、若手で小泉進次郎などその典型例だと思います。

国債がマイナス金利であるという、絶好のタイミングを捉え、ゼロ金利になる程度までは、国債をどんどん発行し、それを財源として、令和年間は、公共投資を強力に推進すべきです。

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