2018年6月16日土曜日

日米、次の一手は“中国封じ” 台湾&マレーシアと連携、河添恵子氏「中国は四面楚歌になりつつある」―【私の論評】日本はやり方次第で経済により南北全体の生殺与奪の権を握ることができる(゚д゚)!

日米、次の一手は“中国封じ” 台湾&マレーシアと連携、河添恵子氏「中国は四面楚歌になりつつある」

マレーシアのマハティール首相(左)と安倍首相(右)

 世界が注目した米朝首脳会談(12日)と同じ日、日米両国が痛烈な「中国の牽制(けんせい)」姿勢を誇示していた。米国は、台湾の大使館に相当する「米国在台湾協会」(AIT)の新事務所をオープンし、安倍晋三首相は「親中路線」を見直したマレーシアのマハティール・モハマド首相と会談したのだ。これは偶然ではない。専門家は、北朝鮮を連携して取り込むだけでなく、台湾やマレーシアへの関与を強め、世界の覇権を狙う中国と対峙(たいじ)する「日米の意思表示」と分析する。

 「21世紀の強固な米台パートナーシップの象徴だ」

 マリー・ロイス米国務次官補(教育・文化担当)は12日、台北市内で開かれたAIT台北事務所の新庁舎落成式で、こう語った。
AIT台北事務所の新庁舎落成式 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 式には、台湾の蔡英文総統と、首相にあたる頼清徳行政院長が顔をそろえ、ジェームズ・モリアーティAIT理事長と固い握手を交わした。

 蔡氏は「(台湾は)自由で開放的な民主国家として、共通の価値観と利益を守るよう協力する義務がある」と述べ、米国との「価値観同盟」をアピールし、「1つの中国」原則への対抗姿勢を打ち出した。

 これに対し、中国はロイス氏が出席したことに反発した。中国外務省の耿爽副報道局長は「米国に間違ったやり方を正すよう促している」と記者会見で語ったが、傲慢な内政干渉ではないのか。

 米国は最近、覇権主義の中国を「脅威の本丸」とみなし、貿易問題で対立するとともに、南シナ海での「航行の自由作戦」を展開している。今回のAITの新庁舎整備は「台湾重視政策」の一環といえる。

 トランプ政権は以前から、台湾との関係強化を進めてきた。

 自主規制してきた米台高官(一定の地位以上)の往来を促す「台湾旅行法」を3月に成立させた。4月には、超タカ派のジョン・ボルトン氏を大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に起用した。ボルトン氏は昨年1月、米紙ウォールストリート・ジャーナルへの寄稿論文で「台湾への米軍駐留」を提言している。

 背景には、中国が台湾周辺や南シナ海で、示威的な軍事行動を活発化させ、「台湾統一」の野心を隠さないことがある。これを許せば、日本をはじめ、世界のシーレーンを、共産党独裁の中国が支配することになる。

 中国軍は4月にも南シナ海で、空母「遼寧」を含む艦艇や航空機による「史上最大規模」の演習を実施したほか、台湾海峡では、陸軍航空隊所属の攻撃ヘリ部隊が実弾射撃訓練を強行した。

 台湾は、米中双方の利害がぶつかる「発火点」として、戦略的重要性が高まっている。

 元航空自衛隊空将で、軍事評論家の佐藤守氏は、米朝首脳会談と新庁舎落成式が同じ日に重なったことについて「中国への牽制になっていることは間違いない」と指摘し、続けた。

 「AITの新庁舎整備は、米国の『台湾は死守する』というシグナルだ。台湾周辺と南シナ海を中国に制圧されれば、自由主義陣営が危ない。トランプ政権の戦略として、『反中国』の北朝鮮を取り込むと同時に、台湾を(自由主義陣営の)前進基地にしようとしているのではないか」

 わが日本も、米国と連携して「中国包囲網」の形成に動いている。

 安倍首相とマハティール首相の首脳会談では、「北朝鮮の非核化」だけでなく、南シナ海の岩礁を軍事拠点化している中国を念頭に、「海洋安全保障分野でも連携する方針」で一致した。

 共同記者発表で、安倍首相は「インド太平洋地域を平和と繁栄のための国際公共財としていくことが重要だ」と強調し、マハティール氏は「南シナ海、マラッカ海峡を含む公海を自由で開かれたものにしなければならない」と足並みをそろえた。

 マハティール氏といえば、2003年までの22年間、マレーシア首相を務め、日本の経済成長を手本にする「ルックイースト(東方)政策」を提唱した。野党連合を率いて今年の下院選を制し、92歳の高齢ながら首相に復帰した。復活の一因に、中国の対外膨張策「一帯一路」のプロジェクトにのめり込む、ナジブ・ラザク前政権への危機感があったという。

 日米と台湾、マレーシアの連携が、中国への対抗軸となるのか。

 中国情勢に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏は「トランプ政権は、12日の米朝首脳会談をもって、北朝鮮問題に1つの区切りをつけ、『中国との対峙』にかじを切ったといえる。台湾のAIT新庁舎も、マハティール氏の訪日も、すべてが連動し、自由主義諸国が中国と対決する新時代の幕開けを告げている。中国は四面楚歌(そか)になりつつあり、今後の火種は、朝鮮半島から台湾に移るだろう」と話している。
【私の論評】日本は経済により南北全体の生殺与奪の権を握ることができる(゚д゚)!
北朝鮮問題がある程度収束すれば、次は台湾を巡って米中対立があらわになるであろうことは、このブログでも以前から主張してきたことです。
北朝鮮問題の根底には、米中対立があり、米朝首脳会談はその前哨戦に過ぎないのです。米朝首脳会談の大きな目的一つは、今後金正恩が米国側につくか、中国側につくのか旗幟を鮮明にさせることだったのです。
トランプ大統領は、米朝首脳会談において北が、米国側につくというのなら、核廃棄と人権問題(拉致問題等)の解決などを条件に、北の現体制の存続を認めるが、もし中国側につくというなら、北の現体制を認めないということで金正恩に迫ったのです。
そうして、金正恩は中国側ではなく、米国側につくとトランプ大統領に約束したのです。そうして、その約束は、今後金正恩がすみやかに米朝首脳会談を開催しないこと、さらに核廃棄と人権問題の解決などで履行されているかどうかが検証されるのです。
トランプ大統領として、この約束が履行されるかどうかを検証する過程と同時進行で、対中国戦略をさらに強化していく腹です。
さて、このようなことは過去にもありました。
このトランプの戦略は70年代のキッシンジャーのものと似ています。当時は中国をソ連との対決に利用しました。今度は北朝鮮を米側に引き入れ中国共産党と対決するのです。

70年代のキッシンジャー(右)  周恩来(左)と食事をしている

そうして、米の中国包囲網は安倍首相が6年前の首相就任翌日12月27日に発表した戦略掛『安全保障のダイヤモンドhttps://www.project-syndicate.org/commentary/a-strategic-alliance-for-japan-and-india-by-shinzo-abe … と合致します。この偶然は歴史的必然なのかもしれません。

ただし、この戦略は注意を要します。米国は中国を利用したのですが、確かにソ連は崩壊してこの戦略は大成功だったのがですが、これには中国の増長という副作用を招いてしまいました。今や米国は、軒を貸して母屋をとられそうな状況になり、現在中国が海洋進出を強化して、南シナ海を我が物として米国に対抗しています。

トランプとしては、北朝鮮問題ではこのようなことは避けたいと考えたのでしょう。だからこそ、北の援助は米国が直接手がけるのではなく、日本と韓国に任せたのでしょう。特に、安倍総理は北の実情を知り抜いています。

日本と韓国の経済を比較すると、韓国の経済は日本の東京都と同程度です。であれば、北への援助のほとんどは日本によるものになるでしょう。

日本は最近北への援助の方式等の見解公表しています。

  「北朝鮮に現金を直接与えることはないはず。経済協力プロジェクト形式を取って支援することになるだろう」

最近、日本政府の関係者が記者に述べた言葉です。日朝交渉に関連し、北朝鮮は植民地支配および過去の清算による経済支援、すなわち現金支援を期待しているのですが、日本の構想は違うということです。実際、日本経済新聞は14日、日本政府の「3段階対北朝鮮支援」構想を紹介しました。
第1段階は国際原子力機関(IAEA)の核査察に対する初期費用の支援です。北朝鮮非核化の最初の段階といえるIAEAの査察に投入される人員と資機材の調達に必要な費用を日本政府が負担するという計画です。
菅義偉官房長官は13日の定例記者会見で「IAEAが北朝鮮の検証活動を再開する際は初期費用を支援する用意がある」と明らかにしました。2007年にIAEAが北朝鮮寧辺(ヨンビョン)にある核施設を査察した際、日本政府は50万ドル(当時約5700万円)の費用を支出しています。
第2段階は国際機関を通じた人道的支援です。これはコメや医薬品の提供を意味するもので、直接的な現金支援は含まれていません。2014年に拉致被害者の再調査を約束した「ストックホルム合意」では「適切な時期に北朝鮮に対する人道的支援を実施することを検討する」という内容が盛り込まれています。
菅官房長官は「引き続き北朝鮮に『ストックホルム合意』の履行を求めていく」と明らかにしていますが、北朝鮮は2016年に「ストックホルム合意」破棄を宣言し、拉致被害者に対する調査も中断した状態です。日本側は人道的支援をするには拉致被害者の帰国など目に見える成果がなければいけないという立場です。
第3段階はインフラ整備など経済協力です。2002年の日朝平壌(ピョンヤン)宣言では、国交正常化後に無償資金協力、国際協力銀行を通じた融資などの実施に言及しました。しかし今回は有無償借款のような現金支援方式でなく、経済協力を通じた投資形態で進める可能性が高いです。
安倍首相も11日、日本経済新聞社主催の国際交流会議「アジアの未来」に出席し、北朝鮮に対する投資形態の経済協力構想を明らかにしました。安倍首相は「北朝鮮には、手付かずの資源がある。勤勉に違いない豊富な労働力がある。北朝鮮が平和と法の支配と安定に向けた道へと踏み出すことの効果は、アジアを超越し、世界経済全体へ及ぶに違いない」と述べ、北朝鮮の非核化と経済協力を結びつけて述べました。

1965年の韓日国交正常化当時、日本は韓国政府に5億ドル(無償3億ドル、借款2億ドル)相当の経済支援をしました。したがって北朝鮮に現金支援でなく経済協力方式を選択する場合、北朝鮮の反発が予想される部分です。物価の変動などを勘案すると、北朝鮮に対する経済協力は1兆円を超えるという見方もあります。

日本政府が現金支援でない方式を考慮するのは国内の世論を勘案した選択でもあります。日本経済新聞は「巨額の資金拠出になれば、国内世論の理解も得なければならない」と分析しました。また「3段階目の経済協力のハードルは高い」と伝えました。

昨日のこのブログの記事では、北や韓国の経済援助に対して以下のような主張をしました。
日本が北に対して援助をするということになれば、韓国での失敗を反省して、援助にもさまざまな条件をつけるべきです。拉致問題の解決は絶対条件です。さらには、人権擁護に関しても、ある程度の基準を満たすようにさせるべきです。それと、いきなり巨大な額を一度に援助とするというのではなく、様子をみながら少しずつ援助し、約束を守らないなら、中止するというような方式をとるべきです。 
れと、韓国に対しては、援助にしても何にしても、目の前に北という協力なライバル現れて、慰安婦問題などでグズグズすれば、すべて北にかっさらわれてしまうという脅威を与えるべきです。 
また、北に援助をしてもなかなか約束など破らないなどのことがあれば、すぐに援助を打ち切り、韓国への援助を厚くするなどのことをすべきです。 
両方を拮抗させ、日本の国益にとって最も良くなるように、バランスをとって援助をしていくべきです。ただし、あまり長い間朝鮮半島にはかかわらないようすべきです。そもそも、ここしばらくは朝鮮半島には上で述べたような奇妙な状態が続くでしょうが、このような状態がいつまでも続くと考えるべきではありません。
まずは、日本が北に対して現金で援助することはないということは高く評価できるます。北に直接現金で援助した場合、北は密かにその現金で核開発を続ける危険があります。これは断じて避けなければなりません。

また、日本が様々な条件をつけて援助を始めるにしても、北朝鮮が約束を守らない場合はすぐにでも援助を中止する旨を最初から北朝鮮側に伝えて実行すべきです。

さらに、北朝鮮が約束を履行しているかどうかを監督するために、日本の監視団も受け入れさせるべきです。

これに加えて、上でも述べたように、韓国と北朝鮮を拮抗させ、日本にとって国益が最大限になるように管理しつつ、朝鮮半島への援助をすべきです。韓国も最近では経済は低迷し、雇用は最悪の状態です。韓国内では、通貨スワップなどを日本に求める声も大きくなっています。

一方、援助を外交カードとしてうまく立ち回れば、日本が半島全体に対して生殺与奪の権を握ることができるかもしれません。無論これは、米国の強大な軍事力を背景としてなりたつものです。だから、正確には日米が半島に対して生殺与奪の権を握るということです。

在韓米軍

しかし、深入りは禁物です。日本はもとより米国などの他国も、北が発展するとみて、民間企業が無制限に大規模な投資をするなどというようなことはやめるべきです。これは、しっかりと規制すべきです。

そんなことをすれば、民主化、経済の政治の分離、法治国家が不十分で潤沢な資金を手に入れ経済だけが発展した、小中国が半島生まれるだけです。中国と韓国に挟まれた小中国が、海洋進出などはじめたら、さらにアジアは緊張を強いられることになります。

北がさらに経済発展をすることを望むならば、すべての先進国がかつて歩んできたように、自力である程度の民主化と、法治国家化と政治と経済の分離を実行することにより、国内の中間層の活動を活発化させて経済を発展させるように仕向けるべきです。

それで、ある程度北の経済が良くなれば、その後は海外企業からの投資の規制も解くべきです。

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2018年6月15日金曜日

「在韓米軍撤退すれば日本が最前線」 安保パニックに陥った日本―【私の論評】日本は北と韓国を拮抗させ日本の国益を最大化せよ(゚д゚)!

「在韓米軍撤退すれば日本が最前線」 安保パニックに陥った日本

朝鮮日報日本語版

トランプ大統領は今年の3月にも在韓米軍の撤退について言及している

「ドナルド・トランプ米大統領が在韓米軍の撤退に言及したが、絶対に言ってはならないことだった。在韓米軍が撤退するということは韓国の軍事境界線が対馬海峡になるということで、日本の安全保障にとって計りしれない危機だ」(深谷隆司・元国家公安委員長)

 「(在韓米軍撤退の話を聞いて)目と耳を疑った。米国自ら将棋の駒を捨てたような行動だ」(香田洋二・元自衛艦隊司令官)

 トランプ米大統領が在韓米軍撤退の可能性に言及して以降、日本列島が「安保パニック」に陥っている。首相官邸、外務省、防衛省、それぞれが記者会見するたびに「在韓米軍が撤退すれば日本の安全保障にも影響が出るのではないか」との質問が相次ぎ、官房長官、外相、防衛相が「米国は今すぐ撤退すると言っているわけではない」と火消しに躍起になっている。

 菅義偉官房長官は14日の定例記者会見で「米国は現時点で在韓米軍の撤退・縮小を検討しているわけではない」として「韓米同盟に基づく抑止力が、北東アジアの安全保障に不可欠な役割を果たしている」と述べた。河野太郎外相は「韓米同盟と日米同盟はアジアの平和と安定を維持してきた『公共財』だ」と述べ、小野寺五典防衛相は「在韓米軍の縮小はあってはならない」と強調した。

 政界やメディア、官僚、安全保障専門家の間でも「韓米軍事演習の中止や在韓米軍の撤退はあってはならない」「中国と北朝鮮だけがホクホク顔だ」などという声が噴出している。

 日本経済新聞は「米朝会談の合意には、非核化のプロセスが北朝鮮ペースにはまりかねない三つのわながある」と指摘した。一つ目のわなは、米朝が非核化を段階的に進めるということを明言しなかった点だ。北朝鮮が非核化の措置に一つ着手するごとに、韓米日は「見返り」を支払わなければならない一方、北朝鮮は時間を稼ぐ上にカネももらえるというわけだ。二つ目のわなは、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は米国本土まで到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射を中止するとは言ったが、韓日を狙った短・中距離ミサイル1000基については一言も言及していない点だ。三つ目のわなは、米国が自国の利益だけを手にしたまま在韓米軍の縮小や撤退を実施した場合、北東アジアの勢力バランスが急激に中国側に傾きかねないという点だ。

 このような「安保パニック」の裏には「トランプ氏を信じすぎた」という自責の念もある。日本政府は今回の米朝首脳会談に合わせ「安倍首相の外交ブレーン」とされる谷内正太郎・国家安全保障局長をシンガポールに派遣した。朝日新聞は「谷内局長が米国の実務チームと接触した際『在韓米軍の話は出ないだろう』という話を聞いたため、日本政府が安心していた」と報じた。トランプ氏の口からどんな言葉が出てくるのか、日本も知らなかったというわけだ。

 これまで安倍首相は日本国民の前で「私とトランプ大統領は『ドナルド』『シンゾー』とファーストネームで呼び合う関係」「いつどんな話でもできる仲」と何度も強調してきた。しかし、いざ米朝首脳会談が近づくと、トランプ大統領は11月に行われる米国の中間選挙を意識してICBMの発射実験を中止させることに集中し、「(非核化の見返りである)北朝鮮への経済支援は韓国と日本がやるだろう」と韓日に請求書を突き付けた。今回の会談で、中国だけが今以上に強くなるとの分析も出ている。

米国の軍事力評価機関、グローバル・ファイヤーパワー(GFP)が発表した2018年の世界の軍事力ランキングで、日本は8位、中国は3位だったが、日本は中国に比べ人口は10分の1、兵力は9分の1、防衛予算は3分の1にすぎない。経済も既に中国に抜かれた。慶応大の渡辺靖教授は「今は北朝鮮について議論しているが、中長期的に見れば日本にとって問題の核心となるのは中国の存在」だとして「台湾と南シナ海での中国の振る舞いを考えると、(今回の米朝首脳会談によって)日本が中国と対峙(たいじ)する最前線の国になるか、日米同盟で今以上の負担を強いられる可能性がある」と指摘した。

【私の論評】日本は北と韓国を拮抗させ日本の国益を最大化せよ(゚д゚)!

今回の米朝会談ではっきりと分かったのは、米国が韓国を見捨てることであり、米韓合同演習も中止されて、在韓米軍も近いうちに撤退する可能性も出てきたことです。韓国政府や国民の反応が気になりますが、朝鮮日報では自国のことよりも日本を心配をしているようです。

在韓米軍

このように、米韓同盟が危機的状態にあるのに韓国のマスコミの動きは意外に小さな反応しかありません。米韓合同演習の中止は韓国にとっては、米朝会談よりも大きなニュースだと思うのですが、どうも韓国はそう受け止めていはいないようです。

米韓同盟はすでに空洞化しており、トランプ大統領は旗幟を鮮明にしない韓国を見捨てて、北朝鮮と手を組むつもりなのかもしれません。

このブログでも最近、トランプ大統領は金正恩が米対中国戦略の駒として動くつもりなら、北を存続させるだろうし、もしその気がないなら、制裁をさらに強化して北を自滅させるか、場合によって軍事オプションを使うこともあり得るだろうことを掲載しました。

そうして、米朝首脳会談においては、トランプ大統領は、そのことついて会談中に金正恩に対して因果を含めたであろうということを主張しました。さらに、トランプ大統領は、金正恩が、米朝首脳会談以降半年以内くらいに中朝会談が開催されれば、トランプ大統領は金正恩は米国の駒ではなく、中国の駒でいることを選択したとみなすであろうことも掲載ました。

まさに、今後すぐに中朝会談を開催するかしないかが、金正恩の踏み絵になるということを掲載しました。

すぐに中朝会談を開催すれば、金正恩はトランプに見限られるだろう

北朝鮮の外交は従来から、二つの大国をうまく操ってバランスをとるというスタイルでしたが、ソ連崩壊とともに中国一国に頼らざるを得なくなりました。それとともに北朝鮮は核とミサイル開発に全力を注いで、米国を挑発し続けてきました。ところが現実には、米国向けに核とミサイルを開発していると見せかけつつ、中国に対抗できる軍事力を身につけてきたという側面は否めません。

米国としては、北朝鮮が核とミサイルをほぼ手にした段階で、トランプが手を伸ばしてきたわけですが、中国にはバレないように金正恩とトランプは派手なプロレスを中国の前で演じてきました。北朝鮮は中国の鉄砲玉として振舞ってきたわけですが、このままでは米国に蹂躙されるとみせかけたのです。

金正恩は、米国に「どうか攻撃しないでください」とお願いするように会談を呼びかけました。これはトランプと金正恩の猿芝居であり、中国を騙すためのプロレスショーなのです。その状況は、現状も続いているのですが、そのようなことも知らず中国の習近平は今回の米朝会談で「よくやった」と喜んでいるに違いありません。なぜなら、金正恩はなんの具体的な約束も米国と結ばなかったからです。

しかし二人だけの秘密会談では、トランプと金正恩はがっちりと手を組んで、米国の対中包囲網に加わる事を合意したのでしょう。その為には米国は対北朝鮮への経済制裁を解除して、大規模な経済援助をしなければならないのですが、そのカネは韓国と日本に出させるつもりのようです。

中国の習近平はそのような動きを察知して見抜いているのでしょうか。中国は今頃その動きに気がついても、トランプと金正恩はすでにがっちりと手を組んでしまいました。中国が金正恩を何とかしようと思っても、殺してしまえば北朝鮮は大混乱して大量の難民が中国に押し寄せることになりかねません。

金正恩は、まさに中国と米国との間を綱渡りしているのです。中国に対抗できるのは世界の中では、現状では米国だけであり、米中との間の綱渡り外交で行くことを金正恩は決断したのでしょう。これからあらわになる米中冷戦体制の現実を目にして、金正恩はトランプに対中包囲網で協力をすることを約束したのです。金正恩は現在は冷戦においては、中国の勝ち目は全くないとみているのでしょう。


今回の米朝会談は、中国の一人勝ちと言う人もいますが、実際はそうではなく北朝鮮が米国に寝返ったと見れば、そうではないということが理解できます。韓国は韓国で米国から中国に寝返ったとも言えるような状況であり、実際に米国よりも中国の言いなりになっている部分があります。というより、どっちつかずで、米国からも中国からも信頼されていません。

このような状況から、トランプ大統領は、北朝鮮が対中包囲網に加入ることを引き換えに、日本からのカネを出させることを約束したのでしょう。無論、カネを出させる条件としては、核の完全放棄、拉致問題の完全解決を外せないことをしっかり伝えたのでしょう。

さらに南北統一についても言及する人もいますが、北朝鮮の核とミサイル廃棄と南北統一は別問題です。米国としては、本土に届き中東に渡る可能性がある核とミサイルは許せないわけです。日中を含めた、周辺諸国も北朝鮮の難民を望んでいません。

金正恩は、国の枠組みは変えたくはありません。金体制維持に最も邪魔なものは自由や人権です。南北統一で人の往来が始まれば政権が脅かされることになります。当面は、南北統一はないでしょう。平昌五輪で、北が南北統一を演出したのは単なる猿芝居に過ぎません。

そうなると、朝鮮半島は米国の駒となった北朝鮮と、中国の駒か米国の駒か良くわからない韓国が対峙するという奇妙な状況ができあがるわけです。北朝鮮が日本や韓国から資金援助を受けるということになれば、この奇妙な状態がしばらく続くことになるのでしょう。

日本が北に対して援助をするということになれば、韓国での失敗を反省して、援助にもさまざまな条件をつけるべきです。拉致問題の解決は絶対条件です。さらには、人権擁護に関しても、ある程度の基準を満たすようにさせるべきです。それと、いきなり巨大な額を一度に援助とするというのではなく、様子をみながら少しずつ援助し、約束を守らないなら、中止するというような方式をとるべきです。

それと、韓国に対しては、援助にしても何にしても、目の前に北という協力なライバル現れて、慰安婦問題などでグズグズすれば、すべて北にかっさらわれてしまうという脅威を与えるべきです。

また、北に援助をしてもなかなか約束など破らないなどのことがあれば、すぐに援助を打ち切り、韓国への援助を厚くするなどのことをすべきです。

両方を拮抗させ、日本の国益にとって最も良くなるように、バランスをとって援助をしていくべきです。ただし、あまり長い間朝鮮半島にはかかわらないようすべきです。そもそも、ここしばらくは朝鮮半島には上で述べたような奇妙な状態が続くでしょうが、このような状態がいつまでも続くと考えるべきではありません。

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2018年6月14日木曜日

日本に巣食う寄生虫を駆除する方法とは?『財務省を解体せよ!』で高橋洋一氏が指摘する「官僚とマスコミの利害関係」―【私の論評】財政政策の大失敗をリスクとみない恐るべき怠慢官庁財務省(゚д゚)!


高橋洋一・嘉悦大学教授の著書『財務省を解体せよ!』(宝島社新書)
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

高橋洋一・嘉悦大学教授の新作『財務省を解体せよ!』(宝島社新書)は、題名からして剛速球だ。そしてそれはズドンと日本の本当の問題に気付いている人たちの心に響く。

 その昔、ある高名な評論家が、私に「日本を本当に支配しているのが誰かがわかった」とつぶやいたことがある。それは正確にいえば「誰」ではなく、組織であり、またそこに群がる人たちのことでもある。もちろんそれは財務省のことであった。

 最近の財務省のトップによるセクハラ疑惑とその辞任劇、そして理財局と近畿財務局という組織そのものが関与した文書改ざん問題、さらに今も懲りずに繰り返す「財政危機」というフェイク(嘘デタラメ)を利用した増税の宣伝工作。よく政治家の方が財務省よりも優位であり、財務省よりも政治家の責任が重く、財務省は悪くない、というデタラメな話がある。高橋氏の新著を読めば、財務省は歴代政権でさえも、消費増税や自分たちの政策を利用するひとつの道具でしかないことがよくわかるだろう。まさに財務省は日本国に巣食う最悪の寄生虫である。

 高橋氏によれば、財務省が増税を目指すのは自分達の利益になるからである。つまり予算編成権などでさらに権力をふるえる余地が生まれるからだ。この国民の血税を利用して、財務省官僚たちは、自らの虚飾に満ちた「権限」を強化していく。例えば、最近では、東京金融取引所のトップに旧大蔵省(現在の財務省)出身者が五代続いて就任する。完全なる「天下り」というか財務省の植民地である。しかもこの人物の経歴をみると日銀理事と金融庁幹部も歴任している。

東京金融取引所社長に木下信行氏 5代連続で大蔵OB

 90年代後半の大蔵省スキャンダルという不祥事で、当時の大蔵省は社会の批判を浴び、その権限から金融監督行政の権限を奪われ、それは金融庁となって財務省から「独立」した。また日本銀行も法律が改正され、これも政治つまりは財務省の権限から隔絶できるような地位を与えられた。しかし20年近く経過して金融庁、日本銀行ともに人事面を含めて財務省とのつながりは最強化され、再び植民地化している。

 ちなみに旧大蔵省、財務省ともにそこに務める人間の知的レベルをあまりにも世間は髙く評価しすぎである。偏差値や公務員試験での合格と、その後に官僚たちの行う行政のパフォーマンスはまったく因果関係はない。例えば財務省が主導する「財政危機」を理由にした緊縮増税路線が、日本を20年にも停滞させたのは自明である。まだこの単純な事実を理解できない人は、心の中に「小さな財務省」でも巣食っているのだろう。

■マスコミが財務省が擁護する理由とは?

 高橋氏の指摘にもあるが、日本のマスコミの「スクープ」のほとんどが官僚発のリークである。その意味で、マスコミと官僚たちは利害関係者である。特にいまのような時期では、「消費増税しても対策はばっちり」とか「消費増税しても景気はそんなに悪くならない」というマスコミと財務省のコラボが大展開中である。増税志向の政治家たち、とくにポスト安倍を狙う政治家たちもまたこのような増税脳とでもいうべきスタンスである。財政状況は、あくまでも民間の経済活動の結果でよくもわるくもなる。つまり我々が働くことで実現するのだ。財務省の目論見にしたがうのではない。この基本的なことさえも財務省は理解していない。その実例は高橋氏の著作に実に豊富だ。

 このような財務省の「おごり」をどうすべきか。高橋氏は長年、歳入庁を設置して、税金と年金など社会保険料の徴取を統合的に行う機関にすべきだと主張している。私も賛成だ。これにより国税庁という財務省の植民地であり、また税の調査権限という政治家さえも恐れる権力を財務省からとりあげることになる。ただし歳入庁には財務省に一年でもいた人は正規・非正規のポスト含めて一切ノータッチにすべきだろう。金融庁と日銀の経験がそれを教えている。また今回の文書改ざん問題をうけて、高橋氏は「公文書管理庁」の設置も提案している。それに日本銀行の目標を増税目的など財務省の思惑に左右されないように、雇用の最大化と物価の安定に寄与するよう改正すべきである。

 またこれは私見だが、トップがセクハラスキャンダルで辞任、そして組織の一部がまるごと関与した文書改ざんなど、財務省の体質は民間であればまさに「ブラック企業」そのものである。そんなところがぬけぬけと今年も国家公務員試験などで若い有能な人材を国家の権限として採用する。国民の厳しい視線をうけ、その体質改善も具体的でない今、今年の採用及びここしばらくの同省の採用は制限すべきである。それでは人材育成に弊害がでるという指摘があるだろう。なにを言っているのだろうか?「弊害」というペナルティを課すために行うべきなのだ。

それで仕事ができないなら、他の省庁の下部組織にでもなって人材を貸してもらえばいいだろう。だが、この財務省という「ブラック企業」は今日も健在で、「天下り」や増税指南に元気である。まさに国家の寄生虫そのものである。

経済評論家 / 上武大学ビジネス情報学部教授

田中秀臣



上武大学ビジネス情報学部教授。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。国土交通省社会資本整備審議会委員、内閣府経済社会総合研究所客員研究員など歴任。 著作『日本経済は復活するか』(編著 藤原書店)、『AKB48の経済学』(朝日新聞出版)、『デフレ不況』(朝日新聞出版)など多数。毎週火曜午前6時から文化放送『おはよう寺ちゃん活動中』レギュラーコメンテーターとして出演中。

【私の論評】財政政策の大失敗をリスクとみない恐るべき怠慢官庁財務省(゚д゚)!

財務省の所業は昔からひどいものがありますが、最近のものも掲載しておきます。

財務省は4日、『森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する報告調査書』を公表しました。最近も企業の不祥事が相次いでおり、そういうときの対応として、危機管理ということが、叫ばれています。その鉄則は、早めに記者会見を開き、「第三者委員会を設けたのでその結論を待ちたい」として一種の時間稼ぎをすることです。しかし、財務省の対応はあまりにも遅すぎましたし、未だに不十分です。

最近では日本大学の「危険タックル問題」があり、大学の危機管理能力が問われたばかりです。問題の試合から1カ月近く経ってからようやく、第三者委員会を立ち上げたことについて、そのスピードが遅すぎるという非難が高まっていました。その間、記者会見も中途半端で、かえって火に油を注ぐ結果となりました。

財務省の場合は、第三者委委員会すら作っていません。前事務次官のセクハラ問題については、不徹底とはいえ弁護士事務所に依頼していました。今回の文書改竄問題では、そうしたこともなく、財務省名で調査報告書が作られたのみでした。これでは、外部に対する説得力は皆無です。

危機管理の観点では、第三者委の設置が遅くて非難された、日大と比べても、第三者委すら作らなかった財務省の有様はあまりにもお粗末です。

まともな組織なら、文書改竄が部内で分かった段階で第三者委を設置し、国会からの問い合わせと並行して第三者委による部内調査を行い、大阪地検が財務省関係者の不起訴処分を発表する日に合わせて中間報告を実施し、時機を見て最終報告をするくらいのことはするでしょう。

財務省の報告書の表紙

報告書の中身も疑問だらけです。例えば、7ページ目の注10に「未利用国有地の売払いは、公用・公共用の利用を優先する考え方を基本として、まず3カ月間、地方公共団体及び公益法人その他の事業者からの取得等要望の受付を行い、当該受付期間中に要望がない場合には、一般競争入札により売却することとされている」とありますが、公共用でも当初に一般競争入札しておけば、問題なしだったはずです。

25ページの注27は「本省理財局の国有財産審査室長は、『一元的な文書管理システム』において『文書5(特例承認)』の決裁文書の更新処理を行えば、元の決裁文書は上書き保存されて無くなるものと考えていたが、実際には、元々の文書もそのまま保存されていた」と書かれているのですが、これでは単に電子ファイルに関するる無知を晒しているだけです。

さらに、あれだけの文書改竄を行えば、たとえ刑法には問われなくとも、国家公務員法違反です。この場合、停職3月等ではなく懲戒免職相当です。そういう処分であれば、退職金は全て返納となり、国民もある程度納得したかもしれません。

そもそも、財務省は普段からリスクを意識して仕事をしているのでしょうか。おそらく、全く意識していなかったのでしょう。だからこそ、実際にリスクが生じたときに、手順も何もなく、慌てふためき、まともに対応できなかったのが実情なのでしょう。

民間企業等のリスクについて、経営学大家であるドラッカー氏は以下のように述べています。

「事業においては、リスクを最小にすべく努めなければならない。だがリスクを避けることにとらわれるならば、結局は、最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち無為のリスクを負うことになる」(『創造する経営者』)

リスクには4つの種類がある。負うべきリスク、すなわち事業の本質に付随するリスク、負えるリスク、負えないリスク、負わないことによるリスクである。

ほとんどあらゆる産業に負うべきリスクがある。新薬には人体を傷つけるリスクがある。しかし、なおかつ製薬に携わるには負うべきリスクである。

多少の資金と労力を失うリスクは、負えるリスクです。失ったならば存続できないほどの資金がかかるのであれば、それは負えないリスクです。

事業に着手するに当たっては、成功を利用できるか、もたらされる機会を実現できるか、それとも誰かのために機会をつくるだけかを問わなければならない。

負わないことによるリスクの典型は、革新的な機会に伴うものである。その古典的な例が、第二次大戦直後のGEの原子力発電への進出である。専門家は原子力を経済的な電力源にできる可能性は低いと見ていた。しかしGEは発電機メーカーとして、万が一にも取り残されるというリスクを負うわけにはいかなかった。
「リスクの有無を行動の基盤としてはならない。リスクは行動に対する制約にすぎない」(『創造する経営者』)

ドラッカーが提唱した企業の4つのリスク

以上が、まともな民間企業のリスクについての考え方です。普段からこのように考えているからこそ、いざというときに特に「負うべきリスク」に関しては、リスク管理体制を普段から整え、迅速に対応できるようにしているのです。

さて、財務省の負うべきリスクとは何でしょうか。財務省や、マスコミ、経済学者が何をいおうが、それははっきりしています。それは財政政策に失敗することです。これこそが、財務省のリスクです。

ところが、当の財務省は財政政策の失敗をリスクとはみていません。過去20数年間財務省の財政政策は失敗続きでした。この度重なる失敗をしても、誰も責任をとったものはいません。

日銀も過去は金融引締め一辺倒で、失敗を繰り返してきましたが、2013年4月からは金融緩和策に転じて一部不十分なところがありながらも、現在まで継続しています。そのため、雇用状況はかなり良くなっています。しかし、財務省の場合は過去20数年間どころか、現在に至るまで、失敗続きです。

失敗の原因は明らかです。デフレの時期や、デフレからまだ完璧に抜けきっていない時期に、本来積極財政すべきところを増税等の緊縮財政を実行してきたことです。

そのため、日本経済は金融緩和の影響もあって、雇用は随分改善されそれによって若干経済にも良い影響を及ぼしている面もありますが、増税によって個人消費が落ち込み、未だに完璧にデフレから脱却しているとはいい難い状況ですし、GDPの伸び率は未だに韓国以下です。

これだけ失敗を続けてきたというのに、財務省の官僚は誰もマスコミや識者から非難されることもなく、また民間企業なら当然のごとく行われる、これらの失敗に対する降格、罷免、左遷、減給などの措置もありません。

病院や医師が患者の治療に何十年も失敗し続けてきたらどういうことなるでしょうか、病院は閉鎖され、医師は医師免許を剥奪されることもあり得ます。しかし、財務省はそうはなりませんでした。

これでは、財務省の官僚はリスクのことなど意識しなくなるのは当然のことです。リスクのことを意識せず、それに対する備えも何もしなければどういうことになるでしょうか。

民間企業でいえば、リスクを避けることにばかりとらわれ、リスクに向き合うことなく、結局は、最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち無為のリスクを負うことになってしまったのと同じです。

財務省の場合は本来のリスクに全く無頓着で気にもとめていなかったので、リスクというものに対する感受性やアンテナがすっかり失われしまったのです。

そのため、文書改ざんなどというリスクを平気でおかして、その挙句に、まともな対処もできず、佐川国税庁長官が自ら辞任ということになり、それでも未だリスクに対する備えがなく、次にはセクハラ問題で福田事務次官が自ら辞任ということになったのです。

まともにリスクを考えるような組織ならば、このようなことにはならなかったはすです。そもそも、このような問題など最初から起きなかったでしょう。

負うべきリスクについてまもに考えるどころか、それを無視して、憚らない財務省。民間企業の組織なら、とっくの昔に淘汰されてしまう組織です。それが淘汰されずに残ったため、今回のような不祥事が表面化してしまったのです。

このまま、財務省の組織がそのまま改革も改善もされないまま残れば、さらなる不祥事が起こり続けるでしょう。そうなる前に、ブログ冒頭の記事で田中秀臣氏が主張するように、財務省は解体して、ただ解体しただけでは、長い年月をかけて他省庁を植民地化するという性癖があるので、他の省庁の下部組織とするべきです。

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2018年6月13日水曜日

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明確な定義なく「煽る」だけ…非論理的な財政破綻論者 不要な緊縮招く危険な存在

財政破綻を煽る記事 写真はブログ管理人挿入 以下同じ


 「日本が財政破綻する」「国債が暴落する」と煽(あお)る論者はいまだに少なくない。

 そもそも財政破綻などを煽る人は、なぜかその定義を明らかにしない。これまでの筆者の体験も次のようなものだった。

 その1。私「国債暴落の定義を言ってください。何カ月以内で何%とか。暴落はあるのですか」

 先方「暴落なき暴落が『あります』」(ありますを強調)

 私「暴落はないのですか」

 先方「暴落『なき』暴落があります」(なきを強調)

 その2。私「ハイパーインフレの定義は何ですか。ケーガン(経済学者)のもの? 国際会計基準?」

 先方「(一切答えず)ハイパーインフレになっていいんですか。日銀引受はハイパーインフレになるのです」

 私「日銀引受は毎年やっていますよ。私はその最高記録保持者ですが」

 先方「…」

 かつて役所内で議論した際にも、「財政破綻の定義は難しい」と言われ、定義することも避けられた。

 不良債権処理の専門書を書いたこともある筆者にとって、民間の破綻認定は簡単だった。債務の支払い能力がないというためには、基本的には貸借対照表(B/S)で債務超過を示せばいいからだ。

 政府の場合、徴税権(見えない資産)があるから債務超過でも即破綻ではないが、資産を考慮したネット債務残高がポイントだ。通貨発行権は統合政府のB/Sに出てくるので、ネット債務残高を見ればいい。ちなみにインフレ目標は、通貨発行権の乱用予防の役割もある。

 ネット債務残高というものの、その国の経済力との関係が問題になる。となれば、ネット債務残高対国内総生産(GDP)比が将来的に発散(ブログ管理人注:数列の極限値や積分の値などが有限値に定まらない、つまり無限大や不定になること。数学に詳しくない人は無限大になったとの理解で十分です)したら、破綻と言っていいだろう。

 こうした計量的に明確な定義もなく財政破綻を唱える人は、客観的に説明できずに煽るだけになる。日本の今の財政状況とは関係なく、実際に財政破綻した国で行政サービスが低下したことなど、国民生活面での不都合を強調しがちだ。または、B/Sの片方の借金だけを強調して「借金は避けるべきだ」「将来世代の負担になる」というが、見合い(ブログ管理人注:対応していること、釣り合っていること)の資産があると、こうした論法は馬脚をあらわす。

 正確に定義され計算された基礎的財政収支(プライマリーバランス)の動向は、ネット債務残高対GDP比の発散条件と密接に関わっている。通常、プライマリーバランスが赤字であっても改善傾向にあれば、ネット債務残高対GDP比はめったなことでは発散しない。プライマリーバランスが均衡化するに越したことはないが、改善さえすれば「財政破綻」を過度に心配する必要はない。

 財政破綻の定義を明確にせずに財政再建を語るのは、不必要な緊縮財政(増税、歳出カット)を招き、意図せざる失業者を発生させるので、経済にとって危険である。

 今の多くのマスコミ、学者や財界は財務省に洗脳され、財政再建を盲目的に追求し、緊縮財政そのものを目的化している。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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何でも緊縮すれば良いと思い込む「緊縮脳」は始末に負えない

財政破綻論者のほとんどは当然のことながら、緊縮策の支持者です。

不況時に緊縮策をとれば景気はさらに冷え込み、その結果税収は落ち、財政状況はますます悪化する。このような事は経済学を学んだことがない人でも直感としてすぐにわかるはずだと言いたいところですが、日本のみならず、世界的に見ても不況時に緊縮こそが答えだと信じてしまう人のほうがむしろ多数派かもしれません。

さらには経済学を学んだことのある人どころか、権威あるとされる経済学者の中にも、依然としてこのような主張をする人までいます。古今東西の歴史を紐解けば緊縮策の結果として手痛い思いをした経験を持つ国は歴史的に数多くあり、その教訓を嫌というほど学んでいるはずなのに、なぜ緊縮策という「ゾンビ経済学」はこのように蘇ってくるのでしょうか。

ジョン・クギンのオーディオブック"ゾンビ経済"の表紙

日本でも、古くは江戸時代に徳川吉宗の緊縮策などを皮切りに、様々な緊縮策が何度も実行されましたが、長続きはしませんでした。さらに、戦前には日本が世界で一番はやく金融恐慌(日本では昭和恐慌)から脱却したのは、無論緊縮策ではなく、高橋是清による積極財政と金融緩和によるものでした。

こうした貴重な体験をした日本人が、過去の歴史を忘れて、緊縮策になびく人が多いというのは、全く理解に苦しむところです。しかし、世界恐慌の原因がデフレであったことが、わかったのはなんと1990年代の経済研究によるということを考えると無理もないのかもしれません。

高橋是清

それだけ、緊縮は多くの人々に支持される経済政策なのです。経済が悪い時に緊縮策が機能しないのははっきりと確かめられた事実です。緊縮策は倫理的な問題を別にしても、経済学的に不合理で誤った政策です。

経済的に正しいのは、不況の時は、財政政策と金融政策を二つとも発動せよ、です。

これはマクロ経済学を学んだ者にとっては当たり前の話です。通常の教科書モデルでも、変動相場制の国ではマンデル=フレミング効果が働いて、金融緩和の後ろ盾のない財政政策はあまり効果がありません。かといって、金融緩和だけでは、痛みの出ている箇所への集中投下ができないので即効性がなく、また大きな需給ギャップを埋めるには財政政策が不可欠になってきます。

さらに流動性の罠の下での財政出動は、クラウディングアウト(民間投資圧迫)も“後世へのツケ”も残すことはありません。

ノーベル賞受賞者でもあるアメリカの経済学者ジョセフ・スティグリッツも、不況の時の緊縮策は「自殺」への処方箋だとしています。同じくノーベル賞受賞者であるクルーグマンも、はっきり「狂気の沙汰」と言っています。過去おいては、欧州では緊縮財政で失敗しています。

日本も、安倍政権が誕生して、積極財政に踏み切るかとみられましたが、14年4月から、増税という緊縮策に踏み切ってしまいました。そのため、個人消費が低迷してしまい、今でもデフレに一歩手前の状況にあります。

ただし、金融緩和は政権発足当時が継続して行ってきたので、雇用は過去にない程良い状況になっています。

2012年に民主・自民・公明の三党合意で消費税増税法案が成立しました。そうして、14年4月から消費税が8%に増税されました。19年10月には、10%増税が予定されています。増税しないと日本が駄目になるというのですが、今の日本で緊縮財政を強行するのはデフレを長引かせるだけであり、まさに「狂気の沙汰」です。


緊縮策とは個人の行為でいえば、節約ですが、これが多くの人々の琴線に触れるのかもしれません。だれでも、贅沢三昧することよりは、節約のほうが、良いと考えるものですが、それを政府の支出にまで拡大して解釈し、緊縮こそ善であると思い込むのは完璧な「狂気沙汰」です。これは、社会の常識として多くの人々に認識していただきたいです。

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2018年6月12日火曜日

【日本の選択】朝鮮専門家の無見識バレた「米朝会談中止」報道―【私の論評】ドラゴンスレイヤー達の夢は実現するか?中朝首脳会談がすぐ開催されるか否かが今後の鍵(゚д゚)!

【日本の選択】朝鮮専門家の無見識バレた「米朝会談中止」報道

トランプ大統領(右端)をはじめ各国首脳が繰り広げる外交は駆け引きで成り立っている

 米朝首脳会談をめぐって、国内では一喜一憂したような報道が繰り返されている。いまだに実現されていない会談の結果を、あたかも知っているかのように論じる人たちもいるが、まことに滑稽である。

 先日の南北首脳会談で、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が終始笑顔であったこと、その他の映像を見て、正恩氏が人格者で人情味のある指導者であるかのように論じる人がいる。一方で、安倍晋三首相率いる日本外交は「蚊帳の外」に置かれていると警鐘を乱打する人まで、多種多様だった。

 冷静に考えれば、親族まで平然と殺戮(さつりく)する人物が、人格者であるはずがない。ドナルド・トランプ米大統領と太いパイプを持つ安倍首相が、「蚊帳の外」に置かれているはずがない。

 しかしながら、冷静になって考え直すべきなのは、この会談の本質である。これは、「米朝友好」や、「東アジアの平和」「正恩体制の維持」などをめぐる各国間の駆け引きであり、その結果は誰にも分からない。話し合いをすれば必然的に友好が訪れるといった類の話では決してない。

 私が最も情けなく感じたのは、トランプ氏が5月24日、正恩氏に「米朝首脳会談を中止する」との書簡を送ったときだ。トランプ氏を不甲斐なく思ったのではない。「これで米朝首脳会談がなくなってしまった」と素直に信じ込む人々が日本ではあまりに多かった。

米朝首脳会談中止を伝えたテレビ報道

 私は注意を喚起すべく、25日のツイッターで次のように指摘した。

 《米朝首脳会議が開催されるといえば、はしゃぎ、中止されるといえば、周章狼狽(ろうばい)する。これでは話にならない。開催すると言ったときに中止の可能性を考え、中止といったときに開催の可能性を考えておくのが政治だろう。日本の朝鮮問題の専門家とやらは、全く見識がないことが白日の下に曝された》

 率直に言えば、私はこの報道に接した際、「これで米朝首脳会談は実現に近づくのではないか」と感じた。両者の真剣さを確認するためのブラフではないかと直感したためだ。

 今回の会談は、平和な時代における紳士と紳士の和やかな話し合いではない。米国大統領史上、相当型破りなトランプ氏と、現代における冷酷な僭主、正恩氏の駆け引きなのだ。首脳会談を開催する、しないをめぐって駆け引きが存在しないはずがない。

 日本にとって重要なのは、この米朝首脳会談に過度な期待をすることでも、過度な失望をすることでもない。日本の同盟国として米国は何をなし、そして何をなすことができないのかを、冷静に見極めることだ。

 すべてを米国に依存するのではなく、戦略的に米国と友好関係を維持するために、日本自身が何をなすべきなのかを、焦ることなく冷静に考え始めることが肝要だ。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員等を経て、現在、大和大学政治経済学部政治行政学科専任講師。専攻は政治哲学。著書に『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『人種差別から読み解く大東亜戦争』(彩図社)、『「リベラル」という病』(同)など。

【私の論評】ドラゴンスレイヤー達の夢は実現するか?中朝首脳会談がすぐ開催されるか否かが今後の鍵(゚д゚)!

現状のニュースを見る限り、北朝鮮には得るものが多かったようですが、日本にとっては北朝鮮に核兵器が長期間有効なまま残存し続ける可能性が大きく、また拉致問題については提起はあったものの今後の進展は不透明です。壮大な予告編を見せられた感覚を覚えました。そうして、これは予告にもならない可能性もあります。

おそらく、交渉の本当の行方は、今後開催されるであろうポンペオ氏やボルトン氏等が関わる米朝実務者協議で決まることでしょう。

トランプ米大統領に同行してシンガポールを訪問したポンペオ米国務長官は11日、ホワイトハウスを通じて声明を発表し、シンガポールで11日午前に行われた米朝首脳会談を巡る両政府間の実務者協議について、「中身のある詳細な議論を行った」と評価しました。

ポンペオ米国務長官

首脳会談で最大の焦点となる北朝鮮の非核化を巡り、前進があった可能性があります。

ポンペオ氏は「米国の立場は明確で不変だ」と述べ、12日の首脳会談で北朝鮮に、「完全で検証可能かつ不可逆的な廃棄(CVID)」を求める方針を示しました。「大統領と米国のチームはあす(12日)の会談を楽しみにしている」と期待感も示しました。

今後もこのような実務者協議を何度か重ね、具体的な核放棄の方法や検証の方法などを話し合うことになると考えられます。この段階で決裂するということは十分あり得ます。

今後の実務者協議の決め手になるのは、昨日もこのブログで掲載したように、米国の対中国戦略において金正恩が使い勝手の良い駒になるかどうかです。ポンペオやボルトンなどのドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)たちは当然そのような見方をするはずです。

核兵器を確実に廃棄し、対中国の駒になる覚悟があれば、トランプ大統領は金正恩が米国の駒である限り、北の現体制の存続を認め、核兵器廃棄の後には実質的に米国の核の傘の下に入ることも認めるでしょう。

さらに、日米が北朝鮮に対して経済援助をすることも認めるかもしれません。その時が日本の拉致問題の解決の時です。拉致問題解決なくして、日米の援助なしという形をとることができれば、日本にとってはベストでしょう。

米国はすでにこれに関して、金正恩に踏み絵を用意している可能性があります。それは、今後金正恩が、米朝会談の直後(半年以内)に習近平を訪問して、中朝首脳会談を開催するか否かです。私は、トランプ大統領はこのことに関して、首脳会談中に金正恩に因果を含めたと思います。

中朝首脳会談がすぐ開催されれば北は米国から見放される

中朝首脳会談をすぐにでも実施すれば、米国は北の存続を認めない方向に大きく舵を切るでしょう。無論経済援助などしません。一方、すぐに開催しなければ、北の存続を認めるほうに大きく傾き、経済援助もする方向で検討に入ることでしょう。

半年以内に実際に、米朝首脳会談が開催されなければ、上で述べたことはかなりの確度をもって正しいことといえると思います。

そうして、核廃棄が終了した後には、北朝鮮が米国の対中国の最前線基地となり、将来的には米軍が駐留することもあり得るかもしれません。

米国のドラゴンスレイヤーたちはそのような日が来るのを夢見ているのかもしれません。

これは、私の想像ですが、ドラゴンスレイヤー達は、台湾と朝鮮半島の両方を中国に対抗するための最前線にすることを狙っているに違いないと思います。

米朝首脳会議が開催されるかされないかで一喜一憂するような人々は、このようなことは考えもつかないのだと思います。

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2018年6月11日月曜日

米朝首脳会談 中国の役割めぐる3つの疑問―【私の論評】正恩が中国に対抗する駒として機能するなら、トランプは条件付きで北の存続を認める(゚д゚)!


BBC News ジョン・サドワース記者 BBCニュース(北京)



ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が歴史的な首脳会談に臨もうとするなか、触れられていないものの誰もの念頭にあるのが中国だ。

中国は、北朝鮮にとって最も重要な長年にわたる同盟国なのと同時に、米国にとっては最も手ごわく、長期戦略上のライバルとなっている。

このため中国は、米朝首脳会談での合意が成功するかどうかの大きなかぎを握っている。

トランプ大統領と金委員長が脚光を浴びるなか、舞台の外で存在感を放つ影の主役をめぐる3つの疑問について考えてみる。
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中国が求めていることは?

一言で言えば安定だ。

言い換えれば、中国は国境の向こう側で核による瀬戸際政策がとられることを絶対に避けたいと考えている。

中国は、北朝鮮のパラノイアをいやというほど知っている。一方で、米国の気まぐれな大統領を信用していない。

そして、再び舌戦が始まり、軍事的な計算違いや緊張の高まりにつながるのを真剣に恐れている。

そうしたなかでは、外交と対話への復帰が中国の目的そのものになっているように思えることが時々あった。

しかし、北朝鮮に対する中国の堪忍袋の緒が切れそうになっているように近年見えるなかで、依然として北朝鮮は長年の同盟国で、米国は共通の戦略的なライバルだ。

金委員長が多大な犠牲を払って手に入れた核の抑止力を交渉によって一方的に放棄するような可能性があるのかどうか、中国はずっと現実的な考えを持っているだろう。

例えば朝鮮半島における米軍展開の変化といった何らかの妥協を、金委員長がトランプ大統領から得られたとしたら、中国にとってはもちろん好都合だ。

北朝鮮に対する中国の影響力はどの程度あるのか?

多少はある。

北朝鮮の貿易額の90%を対中国が占めている。

しかし、中国が北朝鮮を交渉の席に付かせたわけではない。

中国は隣国に対するこれまでになく厳しい制裁に同意したが、経済的に孤立化すればするほど北朝鮮は核抑止力の戦略に傾斜するだろうと、一理ある主張をしつつの同意だった。

金委員長は、自分自身の戦略的な理由から、自分自身で決めてシンガポールに向かった。

一方、中国が制裁を実施するのは主に、自国の目的に沿うからだ。

中国は協調的な姿勢によって、米国との地政学的競争という、より幅広い面で利点を得る。

さらに、中国の意向を完全には無視できないことを北朝鮮に思い出させる、限定的ながらも効果的な方法でもある。

制裁の効果はもちろん限られている。北朝鮮は、中国が恐れているのは核の現状よりも国境の向こう側で経済崩壊が起きることだと知っているからだ。

主客転倒の典型的な例だろう。

注目すべきことに、中国の習近平国家主席が金委員長と初めて会ったのは、わずか3カ月前。両首脳はその後、もう一度会談している。

一部のアナリストが言うように、一気に活発になった外交は中国が蚊帳の外に置かれるのを恐れたためだろうか。

急に制裁が少しだけ緩和されたと示唆する情報もある。

また、トランプ大統領は中国の介入を暗に指摘し、「少し失望しているとは言える。金正恩氏が習主席と会談したとき(中略)金正恩氏の態度に少し変化があったように思えるからだ。だからうれしくない」と語った。

米朝首脳会談が不調に終わったら中国はどうする?

中国にとっては、対話を続けさせるものなら、条約だろうと行程表だろうと友好的な握手とぼんやりした計画だろうと、何でも成功になる。

中国から見れば、北朝鮮の若き指導者に注目すべきなのは、曖昧な非核化に関する発言よりも、始まったばかりの国内経済の改革だ。

中国外務省によると、北朝鮮の高官らによる代表団が先月、「中国の国内経済開発の成果を学ぶため」北京を訪れたという。

それが中国が常に好んできたやり方だった。

中国からすれば、核兵器を限定的に保有する北朝鮮が終わりのない軍縮交渉を強いられるなかで、中国企業がインフラ建設や貿易拡大を進めるのは、それほどひどい状況とは言えないかもしれない。

「中国の夢」の輸出だ。繁栄による安定。もちろん相当程度の独裁も維持しつつ。

北京のカーネギー清華グローバル政策センターの北朝鮮専門家、ジャオ・トン氏は、「非核化について首脳会談でどれほど前進があるかにかかわらず、中国はより重要な長期的目標を持っている」と話した。

「それは、北朝鮮を経済成長させ、孤立したのけ者国家から、より普通で開放的な国に変化するのを助けるというものだ」

しかし、もし首脳会談がうまくいかず、米国が再び軍事攻撃を口にするようになったとき、中国はそれでも自分たちの計画を推し進めるかもしれない。

核爆弾を手に入れた北朝鮮は、今は明確に政治モードだ。

北朝鮮の「抑制的な」姿勢を評価する中国は、もし首脳会談が物別れになれば、責任はトランプ大統領にあると主張する可能性が高い。

ジャオ・トン氏は、「もし米国が首脳会談の席を立ち、最大限の圧力政策を復活させるなら、中国は外交の失敗の責任を米国に押し付けるだろう」と語った。

「もし米国が北朝鮮の非武装化に軍事攻撃をちらつかせるなら、米国に対する抑止力を示すため、中国が自国軍を動かそうとする可能性があると、私は考えている」

中国は舞台の袖で控えている。

シンガポールでの首脳会談はいずれにしろ、中国の影響力を高める可能性が高い。

(英語記事 Trump-Kim Summit: Three questions about China's role

【私の論評】金正恩が中国に対抗する駒として機能するなら、トランプは条件付きで北の存続を認める(゚д゚)!

この記事の見立てとは違い、私は、トランプ氏は当面中国の習近平皇帝に対する、盾となることを北朝鮮が認めれば、当面は北の体制を維持することにやぶさかではないのではないかと考えています。

そもそも、北朝鮮の独裁体制に関しては、かなり批判がありますが、中国とてさほど変わりありません。もともと、中国共産党一党独裁でしたが、最近では習近平が終身の主席になれるように、憲法も改正しています。習近平は、実質的に皇帝として中国を死ぬまで支配するつもりです。

北朝鮮も、中国ももうほとんど変わりがないような体制になってきました。両国とも、世界の他の先進国とは、価値観が全く異なります。そうして、これからもその価値観を変えることはないでしょう。しかも、中国のほうが、はるかに図体が大きいので、はるかにやっかいな存在です。

中国のICBM

これでは、経済力や軍事力ではるかに北朝鮮よりも大きな中国のほうが、はるかに危険です。中国はすでに米国に届くICBMを配備していますし、SLMB(潜水艦発射の核ミサイルょも配備しています。

ただし、SLMBは世界中から発射しても、米国に届く規模にはなっておらず、SLBMを米国に到達させようとすれば、SLBMを搭載した潜水艦を米国本土まで近づけそこから水中発射して米国に到達させることができます。

そうして、中国は中国付近の海底は、浅いため、すぐに潜水艦の動向が探られてしまうため、水深の深い南シナ海を中国のSLBM発射可能な戦略原潜の聖域にして、そこから西太平洋に潜水艦を発進させ、西太平洋のいずれかの地点で米国にSLBMを発射できるようにしようと目論んでいると考えられます。

だから、こそ中国はどこまでも、南シナ海にこだわるのです。現在では、そのようなことをしないとSLBMを米国に到達させることはできないのですが、いずれ時間がたてば、世界中のどこから発射しても米国に到達するSLMBを開発することでしょう。

中国のSLBMを搭載した潜水艦

たとえそうなったとしても、やはり南シナ海は中国にとって重要です。なぜなら、先程も述べたように、中国近海は水深が浅いのです、中国の戦略原潜の動向は、日米が逐一把握しています。不穏な動きがあれば、すぐに撃沈できます。

しかし、南シナ海の深海に中国の戦略原潜が深く潜行すれば、日米ともにこれをすぐに捕捉することは困難です。まさに、中国はこれを狙っているのです。

そうして、米国のトランプ政権はこれを何が何でも阻止しようとしているのです。中国が南シナ海で一線を超え、戦略原潜を派遣することになでなれば、米国はこれを絶対に許さないでしょう。

だからこそ、現在のトランプ政権には中国に対抗するため、ポンペオ氏やボルトン氏などのドラゴンスレイヤー(対中強硬派)らが跋扈しているのです。習近平が皇帝になることを宣言して以来、民主党の中にも中国に対する強硬派が目立つようになり、かつてのようなあからさまな擁護派、親中派、媚中派はいなくなりました。

そうして、トランプ大統領も、ドラゴンスレイヤーたちも、本当は北朝鮮をさほど重要視はしていません。ただし、オバマの戦略的忍耐により、北朝鮮に核開発をする余裕を与えてしまったため、オバマのこの負の遺産を払拭しようとしているだけであり、彼らの敵はあくまで中国です。

そうして、トランプ氏は金正恩をがんじがらめにして、習近平と会えない状況にしてしまいまいました。

これについては、以前このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
朝鮮半島の"再属国化"を狙う習近平の誤算―【私の論評】「習近平皇帝」を抑え込むためトランプは金正恩という駒を駆使している(゚д゚)!
正恩(左)率いる北朝鮮の属国化を目論む習近平(右)だが。5月に開かれた2度目の中朝首脳会談にて

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、“朝貢国”である北朝鮮の背後にいる“冊封国”中国にプレッシャーを与えること。これが、アメリカの本当の狙いです。

トランプ大統領にとっては、金正恩という駒を駆使して、中国にプレシャーをあたえることが、本当の狙いなのです。

以下にこの記事から、トランプが金正恩をがんじがらめにして、習近平に会えないようにした手法の部分のみを引用します。
トランプは、5月16日に北朝鮮が南北閣僚級会談をドタキャンしたり、「米朝首脳会談だって考え直さなければならない」などと「デカイ態度」を示し始めたことを、「金正恩が習近平と二度目の会談をしてからのことだ」と言い始め、5月7日と8日の大連会談に疑義を挟み始めました。 
そうして、トランプ大統領は5月16日以降の北朝鮮の態度の変化を「中国のせい」にしておいて、それもちらつかせながら米朝首脳会談を中止しました。 
これに対して、金正恩は、米朝首脳会談復活となれば、この段階でさらに習近平にSOSを出せぱ、きっとトランプがまた機嫌を悪くして「中止する」と言い出しかねないと考えたに違いありません。金正恩としては、腹の中ではどんなことをしてでも米朝首脳会談を成功させたいと考えているでしょうから、彼はもう訪中はできません。 
おまけに板門店とシンガポールの挟み撃ちで米朝実務者レベルの会談に急に追い込まれた状況で、習近平に会いに行くなどしたら、トランプの逆鱗に触れることになります。 
こうして金正恩をまず、「がんじがらめにして習近平に会わせないようにする」ことに、トランプは成功したのです。

 しかし「米朝は対話のテーブルに着け」と言い続けてきたのは中国です。今まさにそのテーブルに着こうとしているのですから、中国としては文句が言える筋合いではありません。こうしてトランプは、習近平の口をも閉ざさせてしまったのです。 
これが十分に練り上げた戦略として編み出されたものか、あるいはトランプのビジネスマンとしての「勘」が、結果的にここまで行ってしまったのかは、わからないです。いずれにしても、トランプの圧勝です。 
もしトランプが北朝鮮の「完全な非核化の程度」に満足して莫大な経済支援をしたとすれば、金正恩なら、「習近平からトランプに乗り換える」くらいのことは、やるかもしれないです。 
どんなに中朝軍事同盟があり、中朝蜜月を演じたとしても、それはアメリカへの威嚇であって、その威嚇が必要となくなれば、中国は「いざという時の後ろ盾」程度の位置づけになり、存在感を失うことになるでしょう。 
こうして、「中国の覇権」を抑え込むために、トランプは十分に金正恩という駒を駆使しているのかもしれないです。
私自身は、トランプ大統領は金正恩という駒を駆使しているのは間違いないと思います。この駒が駒として十二分に動く間は、トランプ大統領は核の完全即時廃棄、拉致問題の解決、その他人権問題での譲歩などがあれば、北の体制を許容する可能性があります。

もし、北がこれを断れば、さらに機雷封鎖なども含む制裁の最大限の強化をして、北朝鮮の社会の機能を奪い、自然崩壊するのを待つか、軍事オプションも行使することになるでしょう。

これについては、中国と本格的な対抗に備えて、あまり時間を費やすようなことはしないでしょう。今年中には間違いなく、少なくともこれからどのような方向に進んでいくか、誰の目にも明らかになると考えられます。

空母打撃群

北朝鮮問題が、ある程度収束すれば、次は台湾を巡って中国との対立が激化することでしょう。その口火は、米国が3つの空母打撃群を台湾に寄港させ、台湾海峡で本格的な軍事演習をすることなどから、本格的に口火が切られることでしょう。

このような演習は何度も行われ、日本やイギリス、フランス、オーストラリア、インドなども参考することになるでしょう。

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2018年6月9日土曜日

【日本の解き方】安倍政権批判とアベノミクス批判 区別できず墓穴を掘る人たち、筋違いの議論で笑われるだけ―【私の論評】アベノミクスは高校教科書掲載の当たり前のど真ん中の金融・財政政策(゚д゚)!

【日本の解き方】安倍政権批判とアベノミクス批判 区別できず墓穴を掘る人たち、筋違いの議論で笑われるだけ

米国訪問及びG7シャルルボワ・サミット出席についての会見

安倍晋三政権を批判する人は、とかく右派も左派もアベノミクスの柱である経済成長路線や金融緩和まで否定する向きがある。その理由や問題点について考えてみたい。

 アベノミクスと一般にいわれる政策群は、(1)金融政策(2)財政政策(3)成長戦略から成り立っている。(1)はデフレ脱却まで金融緩和(2)は機動的な財政政策の運営(3)は主に規制緩和を行う。

 (1)~(3)の政策メニューは、先進国ではどこでもある政策群なので、あえて名前を入れる必要もないものだが、政治的な考慮から、アベノミクスという名称が使われている。

 実は、多くの人は、政策の中身を考えないで、ネーミングで判断してしまう傾向がある。アベノミクスとネーミングされると、「安倍政権の経済政策」となり、政権批判の人にとってはまず否定すべき対象になってしまう。

 しばしばある政治手法なのだが、実際に経済政策が効果を上げているときには、政権側からネーミングに拘り、あえてネーミングを先行させる。成果を上げている経済政策を政権のおかげであると国民に強く訴えることができるからだ。同時に、政権批判者は政権の全ての政策を否定しがちなので、良好な経済環境を否定させ、批判者の政策遂行能力について国民が疑問を持つようにもできるのだ。

 筆者は別に安倍シンパではなく、20年近く前から、金融政策は雇用政策であると主張してきた。これは世界のマクロ経済学の常識だったからで、その事実を安倍首相のほかにも、自民党や民主党(当時)の幹部に何度も説明してきた。ただし、結果的に政策として実行したのは安倍首相だけだった。

 それにも関わらず、政権批判者の中には、筆者を「御用」と呼ぶ人もいる。もし民主党政権で金融政策をまともに行い雇用の実績を伸ばしたら、当然筆者は評価したはずだから、レッテル張りは間違いだ。

 あるテレビ番組で、筆者が就業者数の推移をグラフ化して、民主党政権の時には減少しているが、安倍政権になってから反転急増していると説明したら、当時の民主党議員から、グラフが間違っているとの指摘を受けたこともある。その筋違いにテレビ視聴者から失笑も出たが、この議員は安倍批判をしたいだけだったようだ。

 最近の雇用環境が良好なのは否定できない。しかし、安倍政権批判者は、雇用の良さですら否定したり、別の要因を求めたりして、墓穴を掘っている。

 安倍政権の経済政策にも弱点がある。2014年4月の消費増税は失敗だったし、19年10月にも再び増税をやろうとしている。批判者は、良いものは良いとして、こうした政策ミスを突けばいいものを、全て否定してしまう。

 そして経済政策での批判が無理となると、今度はモリカケのような無駄なことばかりやってしまう。批判者は建設的な議論ができず、典型的な悪循環に陥ってしまっているようだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】アベノミクスは高校教科書掲載の当たり前のど真ん中の金融・財政政策(゚д゚)!

私自身も、高校生のときに財政政策や金融政策のあらましを習い、財政政策の具体例や、金融政策では売りオペ、買いオペなる言葉を覚え、そのときは厨二病が抜けていなかったせいか、自分は国家レベルの金融政策や財政政策が理解でき、簡単だと思いました。

自分が、政治家や財務官僚や日銀官僚になれば、すぐにでも財政政策や金融政策を実行して、日本経済がたとえ悪くなっても、すぐに立て直すことができると思い、何やらワクワクしたのを覚えています。

高校の政治経済の教科書の表紙

そんな気持ちのままで大学に入り、大学時代は、理系だったので、経済のことなどはすつかり忘れ、社会人になってからも経済のことなどあまり考えなかったのですが、あるとき新聞の経済欄を読んでいて、本当に日本経済が全くわからなくなっている自分に気づきました。

その頃といえば、日本経済といえば、高校生のときに習った金融政策や、財政政策などとは程遠いことが話題となっていました。たとえば、「流動性の罠」とか、「構造改革」とか「生産性」とか、とにかく理解しがたいことばかりでした。


新聞を読んでも、テレビをみても、そのような話題ばかりで、自分がかつて高校時代に習った、もっと単純て明快なものとは似ても似つかないものになりました。とにかく、新聞で経済欄を読めば読むほど、テレビで経済の論議を聴けば聴くほど、本当に経済がわからなくなるという状態が続きました。自分は所詮経済が専門ではないので、わからないのは仕方ないことなのかもしれないと諦めていました。

高校時代にまともに政治経済を勉強した人なら、誰でも私と同じような思いを抱いたのでないでしょうか。私の場合は、政治経済で大学受験をしたので、比較的まともに勉強したと思います。

そうこうするうちに、最初は財政政策について述べる評論家などがでてきて、なんとなく納得はできるものの、それでもなにやら消化不良をおこしたような感覚がしたのを覚えています。今から考えると、彼らは、金融政策のことは何もいわず、財政政策のみで経済を立て直せると主張していました。

そうこうしているうちに、いわゆる金融政策を語る評論家などがでてきて、それを聴いていると財政政策だけよりは理解しやすいものの、それでも何やら少し消化不良気味でした。

そうして、あるとき、高橋洋一氏など、金融政策と財政政策の両方ですみやかにデフレ状況から脱却すべきという主張をする人たちが出てきて、というよりは、たまたま目にともり、それらの人たちを「リフレ派」と呼ばれていることがわかりました。

そうして、この「リフレ派」という人たちの主張こそ、私が高校生のときに初めて財政政策と金融政策を習ったときの当たり前のど真ん中の主張をしていました。

そうこうするうちに、安倍晋三氏がこの当たり前のど真ん中の主張をはじめ、2012 年の選挙に勝利し当たり前のど真ん中の政策をはじめました。すると、反アベノミクスの人々が、すぐに猛反対をしました。しかし、それらの批判はほとんど杞憂というものばかりでした。

ところが、なぜが2014年には8%増税という、当たり前のど真ん中とは反対の政策をはじめたら、経済が落ちた込みました。しかし、金融政策は当たり前のど真ん中の政策を実行したので、雇用に関しては良い状況が続き、今春の大卒の就職率は最高水準になりました。

安倍総理であろうと、なかろうと、政府が高校の政治経済で習った通りの、景気が悪ければ、金融緩和策と積極財政、景気が良ければ、金融引締めと緊縮財政をすれば良いだけの話なのです。無論どの程度の金融緩和と積極財政をするべきかという計量的なことをいえば、高校の政治経済レベルの話ではなくなります。

しかし、大まかに景気が良いとき、悪いときにはどのような金融政策、財政政策をすればよいのかということは、高校の政治経済レベルで十分に判断がつきます。さらに、デフレのとき、インフレのときということになれば、どのような経済対策をすれば良いのかは、高校レベルの政治経済の知識があれば、十分すぎるほどです。

自民党内にもアベノミクスという名の当たり前の
ど真ん中の金融・財政政策に異議を唱える人が・・・・

こんな簡単な高校の教科書に掲載されているような当たり前のど真ん中の政策すら、いったんアベノミクスというレッテルが貼られてしまうと、反対する人もいるというのは残念なことです。

経済に関しては、日本も高校の政治経済で教えられる、金融政策、財政政策が当たり前のど真ん中という当たり前の世の中にはやくなっていただきたいものです。

それにしても、高校の政治経済の教科書に出ているレベルの財政政策や、金融政策について理解しない、あるいは理解できない、政治家やマスコミなど一体どうなっているのかと、本当に不思議でしょうがありません。

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2018年6月7日木曜日

「関与してたら辞める」を歪曲する常軌を逸したマスコミのロジックと財務省の歪んだエリート意識―【私の論評】本当は低学歴で非常識な財務官僚!その弱みにつけ込み真の政治システム改革を(゚д゚)!

「関与してたら辞める」を歪曲する常軌を逸したマスコミのロジックと財務省の歪んだエリート意識

田中秀臣 
財務省

森友学園に関する財務省の文書改ざんについての報告書が、6月4日に明らかになって、またマスコミや野党の政権批判が加速している。

この報告書を読むと、

https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/20180604chousahoukoku.pdf
1)森友学園問題についての改ざん前文書などを参照にすると安倍首相も首相夫人も一切関係がない、 
2)文書改ざん・交渉記録の廃棄は財務省理財局と近畿財務局を中心に行われた。そして佐川宣寿前国税庁長官が方向性を決定付けた。その動機は、国会での問題の紛糾を回避するためだった、 
3)近畿財務局は本省理財局に抵抗する職員たちもいた

 などが注目ポイントだろう。

 財務省が国民の信頼を喪失させた責任は重大であり、今回の職員20人への処罰だけで終わることなく、同省の体質を含めて監視し、改革を求めていくものだと思う。ところがマスコミや野党は相変わらず政権批判に力を入れているだけだ。

 麻生財務大臣の責任は大きい。麻生大臣の進退については評価が分かれるだろう。私見では、単に文書管理の見直しや綱紀粛正程度では、麻生大臣はなんのために在任するのか皆目わからない。大胆な財務省改革でもしなければいてもいなくても構わない。安倍首相もこの機会に財務省改革と同時に、財務省の生命線ともいえる消費増税路線を終焉させるぐらいの大胆さがほしい。というか、(14年の増税以降)消費が低迷して日本経済を不十分な成長に押さえつけている状況を考えれば、財務省の権力の基盤ともいえる増税路線を廃止することこそ、国民にとって利益になる。財務省への忖度はいいかげんにやめよ。

 他方で、マスコミや野党は、財務省改革などはどうでもいいようだ。麻生大臣の進退も単に安倍政権への痛撃を狙うものにすぎない。野党はまだわかるが、「麻生氏、なぜ辞めぬ」と題した記事を書く毎日新聞などのマスコミはかなり政治的色彩に偏っている。麻生氏の監督責任があるにせよ、さすがに報告書を読めば財務省理財局と近畿財務局がまったく大臣の知らないところで勝手に改ざん・廃棄をすすめている。麻生氏がすべてを監視する目でももっていれば責任は重大だが、これでは予防のしようもない。むしろ監督責任よりも、麻生氏の財務省改革の姿勢のあるなしについて厳しく追求すべきではないか?

 問題は、財務省の役人たちが、まるで国会を仕切るかのように、国会審議でさらなる質問がでないようにすることが文書改ざん・廃棄の目的であったことだ。国会は国会議員が議論リードするべきところであり、財務省の役人が仕切る場ではない。ここに財務省の醜く歪んだエリート根性を見出すのはたやすい。財務省の歪み肥大化したプライドを傷つけることが今の日本には必要だ。その権限を分割・廃止し、さらに他省庁の下部組織にするぐらいの意識を政治家や国民がもつことが必要だ。90年代のような大蔵省改革がいかに無駄だったのかが今回明らかになった。財務省の歪んだプライドと権限の肥大化を正すべきだ。それには繰り返すが、消費増税を核にした「財政再建」を粉砕すべきである。

 いま財務省や国税庁は、小学校などの教育現場で、税や財政についての理解を促す教育プログラムを行っている。厳しい表現を使えば、これは一種の“消費増税のための洗脳教育”の可能性がある。検索すれば、国税庁などのホームページでも事例を確認できる。ただ筆者がみた事例だと、小学生たちは消費税について圧倒的に反対なようで心強い。財務省や国税庁の狙い(?)通りにはいっていないようだ。だが、財務省の増税への執念は“草の根”まで巻き込む悪質さがある。「悪質」と書いたが、それは現状の日本では財政危機の懸念はなく、むしろ上記した増税による経済低迷の方が懸念されるからだ。今の経済を悪くすることは、将来の子供たちの未来を危うくする。それなのに財務省とその周辺の増税政治家、増税マスコミたちの野望は潰えない。文書改ざん問題でも懲りることはないだろう。

 だが、マスコミや野党の多くは、報告書にはまったく書かれていない安倍首相に文書改ざんの責任を結びつけようと必死であるようだ。例の首相と首相夫人が森友学園に関与したら首相の職をやめるとする国会での発言が、文書改ざんの引き金になったというロジックである。

 だが報告書を読めば、そんな経緯はまったく書かれていない。むしろ森友学園に野党議員たちが押し寄せた出来事(テレビ向けのパフォーマンスの類)が大きなきっかけだった。そんな事実はマスコミや野党は無視である。当たり前だ。森友学園問題を無理やり、首相と首相夫人に結びつけようと派手なパフォーマンスをした野党、それを大々的にとりあげたマスコミ自体にいくばくかの批判の目がいくのを避けたいのかもしれない。もちろんそんな見え見えのパフォーマンスや報道姿勢であっても、財務省が文書改ざんや廃棄をした事実を弁護する材料にはひとつもならない。

 ちなみに首相の答弁自体は、森友学園の土地取引や価格交渉に首相と首相夫人が関与していれば辞めるという、当たり前の限定条件がついている。だがマスコミではなんの形であれ関与したらやめるとでもいった形で無限定に報道されている。悪質である。政治を常に距離を置き、その活動を批判的にみるのはジャーナリズムのひとつの在り方だ。だが、今回の麻生大臣の辞任要求とでもいうべき報道姿勢、また安倍首相の「関与」答弁への強引な関連づけなど、マスコミはこの一年以上そうであり続けたように常軌を逸していると思う。

田中秀臣氏

経済評論家 / 上武大学ビジネス情報学部教授

田中秀臣


上武大学ビジネス情報学部教授。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。国土交通省社会資本整備審議会委員、内閣府経済社会総合研究所客員研究員など歴任。 著作『日本経済は復活するか』(編著 藤原書店)、『AKB48の経済学』(朝日新聞出版)、『デフレ不況』(朝日新聞出版)など多数。毎週火曜午前6時から文化放送『おはよう寺ちゃん活動中』レギュラーコメンテーターとして出演中。
https://twitter.com/hidetomitanaka

【私の論評】本当は低学歴で非常識な財務官僚!その弱みにつけ込み真の政治システム改革を(゚д゚)!

財務省の官僚は、実は低学歴である。などというと、皆さんは驚かれるかもしれません。しかし、これは世界水準の見方をするとこういう見方もできるのです。

財務省のホームページに公開されている「採用昇任等基本方針に基づく任用の状況(平成24年度)」という資料には、キャリアおよびノンキャリアの官僚の出身大学と学部の情報が掲載されています。この資料をまとめると次のような恐ろしい事実が判明します。

まずはキャリア官僚の出身大学および学部を見てみましょう(図表5)。

 [図表5 財務省キャリア官僚の出身大学ならびに出身学部]
  〈大学・学部〉        〈人数〉
  東京大学法学部         11
  東京大学経済学部         4
  京都大学経済学部         1
  慶応義塾大学経済学部       1
  慶応義塾大学大学院経済学研究科  1
  信州大学経済学部         1
  名古屋大学経済学部        1
  北海道大学経済学部        1
  早稲田大学政治経済学部      1
  東京大学大学院公共政策学教育部  1
  早稲田大学大学院公共経営研究科  1
  早稲田大学商学部         1
  東京大学文学部          1
  同志社大学文学部         1
  京都大学法学部          1
  慶応義塾大学大学院法務研究科   1
  千葉大学法経学部         1
  東京大学大学院法学政治学研究科  1
  一橋大学法学部          1
  北海道大学大学院法学研究科    1
  明治大学法学部          1
  早稲田大学法学部         1
  東京大学大学院工学系研究科    1
  〈合計〉            36

次に、大学の壁を取り払って学部別の人数を集計してみましょう(図表6)。ここにも驚くべき事実あります。

 [図表6 財務省キャリア官僚の出身学部]
  〈学部〉 〈人数〉〈割合〉
  法学部   20   55.6%
  経済学部  11   30.6%
  その他    5   13.9%

圧倒的に法学部が優位です。経済を取り扱う官庁なのに、大学時代に経済学を学んだ人が3割しかいません。ただし、財務省側の立場にたって、この現状を説明すると、定められた財政を実行するためには、法律に基づいて実施しなければならず、そのためには法学が必要とされているようです。

そしてもう一つ注目しなければならないのは、彼らの学歴です。学歴というのは出身大学という意味ではなく、大学卒の学士なのか、大学院卒の修士なのかという点です。

ちなみに、日本は学歴社会ではなく、大学格差社会ともいえるような状況です。欧米というか、世界では、大卒は学歴あるものとはみなされません。たとえ、どのような名門大学を卒業していようと、大卒は大卒という扱いで、大学院を出ていなければ学歴があるものとはみなされません。日本でいえば、高卒のような扱いです。

日本の場合は、学歴などといっていますが、その実どこの大学を出たかということが、重要視されるので、これは学歴社会ではなく、大学格差社会というべきだと思います。

そうして、世界標準という立場から見直してみると、先ほどの表で数えてみると、大学院卒の修士は7名で、全体の2割しかいません。言い方は良くないのですが、意外にも低学歴です。他の先進国であれば、財務省や中央銀行の官僚のトップや幹部はまずは大学院卒です。

では、次に財務官僚のトップである財務事務次官の出身大学と学部について、前職の佐藤慎一氏から20年ぐらい遡って確認してみましょう。
佐藤慎一 東大経済学部卒
福田淳一 東大法学部卒
田中一穂 東京大学法学部卒業
香川俊介 東京大学法学部卒業
木下康司 東京大学法学部卒業
真砂 靖 東京大学法学部卒業
勝栄二郎 早稲田大学法学部卒業、東京大学法学部学士入学卒業
丹呉泰健 東京大学法学部卒業
杉本和行 東京大学法学部卒業
津田廣喜 東京大学法学部卒業
藤井秀人 京都大学法学部卒業
細川興一 東京大学法学部卒業
林 正和 東京大学法学部卒業
武藤敏郎 東京大学法学j部卒業
薄井信明 東京大学経済学部卒業
田波耕治 東京大学法学部卒業
小村 武 東京大学法学部卒業
小川 是 東京大学法学部卒業
篠沢恭助 東京大学法学部卒業
例外は勝氏、藤井氏、薄井氏ですが、勝氏は学士入学で東大法学部に入り直して卒業しています。80%以上の確率で東大法学部の出身者が財務省のトップになるというシステムであることは明らかなようです。

ちなみに、前職の佐藤慎一氏は珍しく東大経済学部出身です。増税推進派だった佐藤氏は信念を曲げて増税延期を進める官邸にお願いしたといいますから、経済学の知識だけでなく腹芸も達者なようです。

さて、経済の司令塔として財政政策を取り仕切る財務官僚ですが、経済のプロフェッショナルに見えるでしょうか。

法学部出身の新卒プロパー職員が、基本的に内部の研修と職務経験だけで昇進し、最後に事務次官にまで上り詰めるのです。これが日本の経済の司令塔となる人を育てるプログラムということになります。こんなことで良いのでしょうか。

財務省の本来の役割とは、政府の財政方針と目標に従い、専門家の立場から、それを実現するための方策を選んで実行することです。専門家的立場から、方法を選ぶということになれば、やはり大学院卒のほうが望ましいのかもしれません。

しかし、ここにも問題があります。財務省の官僚の出身大学のほとんどが東大です。その東大のいわゆる日本の主流の経済学者のほとんどは増税派だからです。

これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「2%インフレ目標未達」の批判は誤解で的外れ―【私の論評】復興を税で賄おうとか、8%増税の失敗を認めたくない輩の多いこの国で、いつまともな経済論議ができるようになるのか?間違いを認める潔さのない人々のリストはこれだ(゚д゚)!
日銀黒田総裁

この記事は、2015年3月19日のものです。この時期には、2%の物価目標がなかなか達成できないのは、日銀の責任ではなく、8%増税に原因があるとされていた時期です。

このブログには、高橋洋一氏が復興税を支持した、日本の主流派経済学者のリストが掲載されています。これらのリストに掲載されている人々はすべて増税推進派です。

そうして、このリストをみるとやはり東大が多いです。東大の経済学者らは、ほとんどが増税推進派です。

ということは、もし財務省が経済大学院卒を多めに採用するようにしたとしても、増税派の東大大学院の卒業生が多く入ってくることになり、何も変わりないといことになるということです。

結局東大を頂点とする日本の主流の経済学者も財務省の増税キャンペーンに協力しているのです。

これでは、どうにもなりません。しかし、財務官僚は西欧基準では低学歴だということがある意味では突破口になるかもしれません。

財務官僚は省益を優先するため、省益に物事を考えますから、国民のことなどはなおざりで、本当は日本経済そのものや、マクロ経済学には疎いのだと思います。本当は、省益など二の次、三の次にすれば、本当の日本の経済や社会の姿が見えるはずなのです。

それが見えたなら、日本経済のために、日本国民のために何をすればよいのかなどということは高度な経済知識がなくても、常識でわかるはずです。特に現状を見た場合増税などできるはずないと、普通の常識のある人なら理解できるはずです。

政府や政治家は、財務官僚が低学歴であること、それと常識に欠けることを逆手にとり、まずは財政の方針は政府が定めようにもっていくべきです。目標については、最初は実質財務省に定めさせるようにしても良いですが、いずれそれも財務省からとりあげるようにします。

財務官僚が何をいおうと、増税はしない、積極財政に踏み切るなどの方針を定めて、官僚に従わせるのです。もし、従わなければ、財務省の権限を分割・廃止し、さらに他省庁の下部組織にするぐらいの組織変革を行うのです。財務省は、財政の実行部分を担うだけにし、それでも企画と実行部門は別組織にします。

さらに、実行と統治の部分は完璧に分離し、政府が統治の部分を完璧に担うようにするのです。

その後というか、その過程におて、やはり以前このブログにも掲載したように、本格的な政治システム改革が必要になると思います。これについては、以下の記事をご覧になってください。
妄想丸出しで安倍政権の足引っ張るだけの政治家は市民活動家に戻れ ―【私の論評】本当に必要なのは財務省解体からはじまる政治システム改革だ(゚д゚)!


詳細は、この記事をご覧いただものとして、この記事では、財務省を解体した後に、政党の近代化を図るべきことを掲載しました。

この2つは、日本の政治システムの近代化には必要不可欠であると私は思っています。

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