- ドイツ経済が不調だ。企業倒産件数が増え、国内消費が冷え込んでいる。
- 英国エコノミスト誌はドイツについて、1990年代後半のように「欧州の病人」という言葉を使い始めた。
- ドイツが大幅に経済失速している背景にはインフレや金融引き締めだけではなく、最大の貿易相手国・中国の経済低迷の影響が色濃い。
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- 2023年第2四半期の主要国の経済成長率は、ドイツが0.5%、日本が1.5%、米国が0.8%、中国が0.2%だった。
- ドイツの経済成長率が最も低いのは、中国経済減速が大きな要因となっている。
- 日本の高い経済成長率は、円安の影響により、輸出が大幅に増加したことが要因となっている。
- 今後の経済成長は、インフレや金利の上昇などのリスク要因に左右されると考えられる。
- ドイツや日本は、内需比率を高めていくことで、経済の安定や成長を図っていくべきである。特に外需比率が異常に高いドイツはそうである。
ドイツ、日本、米国、中国の第2四半期成長率と年率成長率を以下に示します。
なお、これらの数字は、あくまでも第2四半期の速報値であり、年率成長率はあくまでも推計値です。実際の年間成長率は、これらの数字と異なる可能性があります。米国の年率成長率について、このブログでは以前5.8%と掲載しましたし他のメディアもそのように掲載していました。
米国のGDP成長率は、前年同期比で見ると、第1四半期の6.9%から、第2四半期の3.2%に減速しました。しかし、第3四半期には、前年同期比で13.7%と大幅に拡大しました。これは、インフレによる物価上昇が、GDPの計算上、GDPの成長を押し上げたことによるものです。
今後の米国の経済成長は、インフレや金利の上昇などのリスク要因に左右されると考えられます。
これらの数字は、IMFの2023年10月時点の予測値です。
ドイツは、GDPに占める輸出の割合が最も高く、42.3%となっています。これは、ドイツの製造業が世界有数の競争力を有していることによるものなどとされてきましたが、これだけ輸出に依存していると、世界経済の状況に影響を受けやすいです。米国の場合、輸出は、GDPの10%以下の数%台が元の水準です。2022年には、世界経済の回復や、米国経済の堅調な成長により、輸出が大幅に増加しました。しかし、今後、世界経済の成長が鈍化(元の水準にもどること)したり、米国経済が減速したりすると、輸出は減少する可能性があります。
日本の場合、輸出は、GDPの10%台が元の水準です。2023年には、円安の影響により、輸出が大幅に増加しました。しかし、今後、円安が是正されたり、世界経済の成長が鈍化(元の水準に戻ること)したりすると、輸出は減少する可能性があります。
なお、2023年10月時点のIMFの予測では、2024年の米国のGDPに占める輸出の割合は10.8%、日本のGDPに占める輸出の割合は17.9%と、いずれも元の水準に戻る見通しとなっています。
これは、元々両国とも外需よりも内需の比率が高いことを示しています。内需比率が高いことは、国際競争力が低いなどとネガティブに見られがちですが、別の側面からみると、世界経済の影響を受けにくいということです。
内需比率が高いことは、国際競争力が低いなどとネガティブに見られがちですが、別の側面からみると、世界経済の影響を受けにくいということです。いずれの国も、世界経済の影響を低く抑えるためにも、内需をできるだけ大きくすべきと思います。
内需比率が高いことは、世界経済の景気変動の影響を受けにくいというメリットがあります。これは、国内の需要が大きいため、外需の減少の影響を相殺しやすくなるためです。
また、内需が拡大すれば、国内の雇用や所得が拡大し、国民生活の安定につながります。さらに、内需の拡大は、国内の経済成長を促進し、経済の活性化につながります。
一方で、内需比率が高すぎると、国際競争力が低下するなどのデメリットもあります。しかし、世界経済の不安定性が高まる中、内需比率を高めていくことは、経済の安定や成長のために重要だと思います。
米国と日本は、ともに内需比率が高い国です。米国は、国内市場が大きいため、内需比率が自然と高くなっています。日本も、国内市場が大きいだけでなく、国民の所得水準が高いため、内需比率が高い傾向にあります。
今後も、世界経済の不安定性が高まる中、米国と日本は、内需比率を高めていくことで、経済の安定や成長を図っていくべきです。
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それは外需比率の高いドイツにも当てはまることです。貿易立国などとして、外需がもてはやされたのは過去の話です。外需の大きい国、中国、ドイツ、韓国などのきなみ経済の不振に悩まされています。ドイツも今後は内需を高めていくべきでしょう。
日本の経済成長率は、2022年には前年比3.6%と、2年連続でプラス成長となりました。これは、新型コロナウイルスの感染拡大からの経済回復や、貿易の拡大によって牽引されたものであり、国内の需要は依然として低迷しています。
2023年4-6月期の日本のGDPは、前期比1.5%増、年率換算で6.0%増と、3四半期連続のプラス成長となりました。これは、一般のエコノミスト予想を超える大幅増です。
内需は、民間消費が2.1%減、住宅投資が7.7%増、設備投資が0.1%増、政府消費が0.4%増、公共投資が5.0%増でした。内需の寄与度はマイナス1.2ポイントで、外需の寄与度はプラス7.2ポイントでした。
民間消費は、新型コロナウイルスの感染拡大からの行動制限が解除されたものの、物価上昇や景気の先行き不安などから、2四半期ぶりに減少しました。住宅投資は、底打ち感がありますが、依然として低迷しています。設備投資は、依然として力強さに欠けています。政府消費は、公共投資の増加が牽引しました。
名目GDPは、12.0%増となりました。内需の寄与度はプラス0.9ポイント、外需の寄与度はプラス11.1ポイントでした。
GDPデフレーターは、3.4%増となりました。
これらの数字を見ると、消費減、輸出増、輸入減という特徴があります。消費減は、国内需要不足が原因です。輸出増は、円安が効いていることが原因です。
GDPギャップはマイナス0.7%で、オーバーキャパシティー状態です。しかし、国内需要が弱すぎるため、内閣府の供給上限が低すぎてGDPギャップを過小に見積もっている可能性があります。
輸入物価の上昇が一段落し、食品や生活用品など国内での価格転嫁が広がっています。名目GDPも大幅に伸びているため、税収は好調です。
具体的には、ガソリン価格が上昇している現在、10月から補助制度が切れるが、これだけ税収増なのであれば、補助制度の継続か、ガソリン価格のトリガー条項を発動すべきです。
具体的には、日銀は、マイナス金利政策を維持し、長期国債の買い入れを継続することで、企業の資金調達を円滑にし、投資を促進する必要があります。また、政府は、補正予算で、社会保障や教育などの公共サービスの拡充や、インフラ整備などの投資を実施することで、国内の需要を拡大する必要があります。財源としては、先に述べたように、増えた税収を成長減税または成長給付金として国民に還元するのが正しい政策です。
さらに、政府は、労働市場の改革や、女性の活躍を促進することで、労働力人口の拡大を図り、生産性の向上に取り組む必要があります。
これらの施策を組み合わせることで、日本経済の持続的な成長を実現することが期待できます。
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