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2022年7月12日火曜日

安倍氏死去/頼副総統、安倍元首相の葬儀に参列 今夜帰国/台湾―【私の論評】安倍元首相がなぜ世界から称賛されるのか、その本質を理解する人こそ安倍晋三氏の遺志を引き継ぐ人(゚д゚)!

安倍氏死去/頼副総統、安倍元首相の葬儀に参列 今夜帰国/台湾

安倍元首相の葬儀への参列を終え、会場の増上寺を後にする頼副総統

 安倍晋三元首相の弔問のために訪日している頼清徳(らいせいとく)副総統は12日、東京・港区の増上寺で営まれた葬儀に参列した。頼氏は同日夜に台湾に戻る予定。

 頼氏を乗せた車は12日午後0時34分ごろ、増上寺に到着した。葬儀は安倍氏の近親者らで執り行われた。頼氏は葬儀への参列を終えた後、同午後に帰国の途に就くとみられる。

【私の論評】安倍元首相がなぜ世界から称賛されるのか、その本質を理解する人こそ安倍晋三氏の遺志を引き継ぐ人(゚д゚)!

安倍元総理を悼み 台湾・蔡英文総統が台北市内の特設会場に弔問

蔡英文総統は11日朝、日本台湾交流協会台北事務所(台北市松山区。台湾における日本大使館に相当)を弔問に訪れ、亡くなった安倍晋三元首相の遺影に花を手向けました。

蔡総統は日本台湾交流協会に到着後、安倍元首相の遺影前で献花を行い、深々とお辞儀をした。また、色紙(写真下)に「台湾の永遠の良き友へ。台日友好と世界の民主主義、自由、人権、平和のために尽くしたあなたの貢献に感謝します」としたためました。


現在時代が動き、世界の秩序が変わろとしています。そうして、この現在を作ったのは米国でも英国でもロシアでも独仏でも中国でもありません。「アジアの民主的安全保障ダイヤモンド」を10年前に英語で発表した、安倍晋三氏という傑出した政治家に他ならないのです。

「自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)」は、2012年の第2次安倍政権発足直後、首相名で発表されたチェコ・プラハに所在地がある言論サイト「ブロジェクト・シンジケート」の英文の論文「アジア民主主義防護のダイアモンド」構想が最初でした。中国の台頭に対抗することを念頭に置いて、インド、ASEAN、オーストラリア、アメリカ、それに英国、フランスまでが加わる日本発の安全保障構想です。


米国はこの構想に基づいて、ハワイに本拠を多く太平洋軍の名称を「インド太平洋軍」と改称し、インド軍、自衛隊、オーストラリア軍などが加わる軍事訓練を重ねています。

これが2012年暮れに公開されているということに注目していただきたいです。この時点で中国に対してここまで懸念を抱いていた世界のリーダーは、先進国中では当時の安倍総裁(当時は総理大臣になる直前)のみだったと思います。

そうして、これを念頭に当時の安倍総理は、外交、安全保障、経済でも改革をしようとし、実際にできたもの、積み残したものもありますが、インド太平洋戦略を現実のものにしたことは、大きな功績です。優れた構想をだすだけ、あるはすでに確立された構想を実現する人は過去にも多数いたと思いますが、その両方を実現した人は稀です。

中国は、以前は日本を見下していました。実際に、1994 年中国の当時の李鵬首相が、オーストラリアを訪問した時に、当時の オーストラリアのジョン・ハワード首相に向かって 「い まの日本の繁栄は一時的なものであだ花です。 その繁栄を創ってきた世代の日本人がもう すぐこの世からいなくなりますから、20 年もしたら国として存在していないのではないで しょうか。 中国か韓国、 あるいは朝鮮の属国にでもなっているかもしれません」 という 発言をしました。

ところが安倍政権が誕生して以降、気がつけば日本が中国包囲網の中心になっていたのです。 安倍総理大臣が「自由で開かれたインド太平洋戦略」を2016年8月の第6回アフリカ開発会議(TICADVI)の場で提唱してから5年以上が経過し、アジア太平洋からインド洋を経て中東・アフリカに至るインド太平洋地域において、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を実現することの重要性が、国際社会で広く共有されてきています。

当時の安倍首相がこの構想を出したとき、中国はほとんど気にしていませんでした。しかし、その枠組みが目の前にでき上がってしまったということが、彼らの誤算でした。しかも「AUKUS(オーカス)」、「ファイブ・アイズ」という2つ枠組みがあり、アジアのなかでは日本だけが枠組みの一部に入るような事態も招いたともいえます。

しかし、習近平政権がこの数年間、戦狼外交や覇権主義戦略を進めた結果、このようなことを招いてしまったということに彼らは気が付いていなようです。

ジョー・バイデン米大統領は5月23日の日米首脳会談後の共同記者会見で、「台湾防衛への軍事的関与」を明言しました。この発言は失言なのか、それとも意図的なものなのか、現在でも論争の的になっています。

これには、この直前に公表された安倍論文が関係しているのではないかと言う有力な説があります。

これについては、以前もこのブログに掲載しました。その記事より以下に一部を引用します。

米国においては、もはや中国に対峙する姿勢は、上下左右から支持され、米国の意思となったといって過言ではありません。現在米国では中国に融和的発言をすれば、米国に対する裏切り行為だと指弾されかねません。

台湾を巡っても、中国に融和的な発言をすれば、ウクライナ侵攻直前にロシアのウクライナ侵攻に米軍を派遣することはないと名言したときのように、大反発をくらい、それこそ中間選挙では大敗確実になるのでしょう。

そうしてこれには、4月12日にチェコ・プラハに所在地がある言論サイト「ブロジェクト・シンジケート」に安倍元総理が発表した、米国は台湾防衛に曖昧戦略はやめよと主張した英語論文の影響もあることでしょう。


同論文は瞬く間に反響を呼び、「ロサンゼルス・タイムズ」や仏紙「ルモンド」など、米国をはじめ30カ国・地域近くのメディアで掲載されました。

同論文では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を台湾有事と重ねたうえで、米国がこれまで続けてきた「曖昧戦略」を改め、中国が台湾を侵攻した場合に防衛の意思を明確にすべきだと主張しています。

1979年、米国は中国と国交を結んで台湾と断交し、台湾に防御兵器を提供することを定めた「台湾関係法」を制定しました。しかし、中国が台湾へ軍事侵攻した場合、米国が軍事介入するかどうかについては明らかになっていません。安倍氏は、この「曖昧戦略」を見直すべきだと主張しています。

まさに、この論文は、世界中の様々なメディアに共有され、SNSで拡散されました。なぜそこのようなことになったのかといえば、 「アジア民主主義防護のダイアモンド」構想 は、その後の世界に大きな影響を与え、まさに現在の世界はこの構想の通り動いているからです。

そのような論文を書いた、安倍氏がまた論文を掲載して、 米国は台湾防衛に曖昧戦略はやめよと主張しているわけですから、バイデン大統領も「米国はこれからも曖昧戦略を継続する」と、はっきりとは言いづらかったのだと思います。

そうして、世界の多くの人は、また安倍氏の論文が世界のスタンダートになっていくだろうと見ていると思います。

ところが、日本ではこうした現在世界のスタンダードとなっている考え方を記した安倍論文のことをマスコミはほとんど報道しませんでした。 また、それに向かって国内外で着々と努力を積み重ねていったこともほとんど報道しませんでした。

林外相は閣議後の記者会見で、これまで259の国や地域、機関から1700件以上寄せられていることを明らかにしました。

林外相は「多数のメッセージが寄せられていることを受けて、改めて外交に残された大きな足跡を感じている」と語りました。

また、林外相は「安倍元首相は地球儀を俯瞰する外交を実践し、多大なる功績を残された。積極的な首脳外交を展開し、各国地域と良好な関係を築かれた」と述べた上で、哀悼の意を表しました。

林外相は残念ながら、安倍元首相の本当の外交の成果をしっかりと認識していません。安倍首相は地球儀外交をして、各国地域と良好な関係を築いたから、称賛されているのではありません。

「アジア民主主義防護のダイアモンド」構想を公表し、公表しただけでなく、本当に世界がこの構想通りになるように国内外で行動し、今日インド太平洋地域の構造を作り上げたからこそ、称賛されているのです。これを一言も語らないというか語れないのが、認識していない証拠です。

この本質を理解する人こそ、政治家であろうがなかろうが、どのような立場や地位にいようが、年齢や性別に関わらず、安倍晋三氏の遺志を引き継ぐ人であると私は思います。安倍元総理の論文がマスコミに報道されず、日本国内ではほとんど目立たかなかったのと同じく、こういう人たちも今は目立たないでしょうが、しかしこういう人たちが、さらにこれを理解する人たちを増やし、日本を変える原動力になっていくのは間違いないと思います。

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2022年5月24日火曜日

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習主席が墓穴!空母威嚇が裏目に バイデン大統領「台湾防衛」を明言 「『第2のウクライナにはさせない』決意の現れ」識者


 中国の習近平国家主席が「墓穴」を掘ったようだ。就任以来、台湾を「核心的利益」と言い続け、今月に入って沖縄県南方の太平洋で、空母「遼寧」の艦載機の発着艦などを繰り返し、軍事的圧力を強めていたが、ジョー・バイデン米大統領は23日の日米首脳会談後の共同記者会見で、「台湾防衛への軍事的関与」を明言したのだ。習氏は今年秋の共産党大会で「政権3期目」を狙っているが、余裕とはいえなくなった。


 女性記者「台湾防衛のために軍事的に関与するのか?」

 バイデン氏「イエス(はい)」

 女性記者「関与する?」

 バイデン氏「それが、われわれのコミットメント(約束)だ」

 注目の記者会見で、バイデン氏は明言した。

 台湾外交部(外務省)の報道官は同日、「歓迎と感謝」を表明し、台湾自身の防衛力を高めるとともに日米などと協力して「インド太平洋地域の平和と安定を守っていく」とした。

 一方、中国外務省の汪文斌報道官は同日、「強烈な不満と断固たる反対」を表明した。

 中国は、日米首脳会談や、日本と米国、オーストラリア、インドによる戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」の首脳会合(24日)を見据えて、軍事的威圧を強めていた。

 5月上旬以降、中国海軍の空母「遼寧」は、沖縄南方の太平洋で艦載戦闘機やヘリコプターの発着艦を行っており、その回数は18日までに300回を超えた。20日には、中国軍の戦闘機や爆撃機など計14機が、台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入した。

 習氏は今秋、5年に1度の党大会で「政権3期目」を目指すが、国内での新型コロナ拡大や経済停滞に加え、米国が台湾防衛への軍事的関与を明確にしたとなれば、3選も盤石とはいえない。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「バイデン氏の発言は意図的で、暴走を続ける中国を牽制(けんせい)する狙いがあるとみている。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、『台湾を第2のウクライナにはさせない』という決意が現れている。米国の姿勢は、中国国内の『反習派』を勢いづける。3選目を目指す習氏を、米国が揺さぶっている」と指摘した。

【私の論評】バイデン大統領の意図的発言は、安倍論文にも配慮した可能性が高いことを報道しないあきれた日本メディア(゚д゚)!


上の記事にもある通り、バイデン米大統領の23日の日米首脳会談後の協同記者会見での、中国が台湾に侵攻した場合、米国が軍事的に関与する考えを表明しました。台湾有事に米国がどう対応するかは「意図的に不透明にしておく」という長らく堅持してきた外交戦略と一線を画する姿勢を見せました。

これについて米政府は即座に、米政府の政策に変更はないとして火消しに走ったことから、発言は失言と受け止められました。 しかし、専門家の一部は、これは決して失言ではないと指摘しています。私もそう思います。

バイデン氏は、中国に対して融和的発言はできないのでしょう。米国内では、そうしてしまえば、共和党やトランプ元大統領から徹底的に批判されるでしょうし、それどころか党内からも突き上げを食うことになるのでしょう。

米国においては、もはや中国に対峙する姿勢は、上下左右から支持され、米国の意思となったといって過言ではありません。現在米国では中国に融和的発言をすれば、米国に対する裏切り行為だと指弾されかねません。

台湾を巡っても、中国に融和的な発言をすれば、ウクライナ侵攻直前にロシアのウクライナ侵攻に米軍を派遣することはないと名言したときのように、大反発をくらい、それこそ中間選挙では大敗確実になるのでしょう。

そうしてこれには、4月12日にチェコ・プラハに所在地がある言論サイト「ブロジェクト・シンジケート」に安倍元総理が発表した、米国は台湾防衛に曖昧戦略はやめよと主張した英語論文の影響もあることでしょう。


同論文は瞬く間に反響を呼び、「ロサンゼルス・タイムズ」や仏紙「ルモンド」など、米国をはじめ30カ国・地域近くのメディアで掲載されました。

同論文では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を台湾有事と重ねたうえで、米国がこれまで続けてきた「曖昧戦略」を改め、中国が台湾を侵攻した場合に防衛の意思を明確にすべきだと主張しています。

1979年、米国は中国と国交を結んで台湾と断交し、台湾に防御兵器を提供することを定めた「台湾関係法」を制定しました。しかし、中国が台湾へ軍事侵攻した場合、米国が軍事介入するかどうかについては明らかになっていません。安倍氏は、この「曖昧戦略」を見直すべきだと主張しています。

安倍氏はかねてより「台湾有事は日本有事」だと主張してきました。


ロシアによるウクライナ侵攻において、バイデン米大統領は早い段階から「米軍は軍事介入しない」と明言しました。それがロシア軍の侵攻を加速させたことは間違いないです。台湾に関しても、米国が防衛の意思を明確にしなければ中国が実際に台湾へ侵攻することは容易に想像できます。

同じ価値観を共有する周辺諸国に対する軍事侵攻は、日本の国家安全保障にも大きく影響します。尖閣諸島への領海侵犯が連日行われている以上、日本も対岸の火事ではないです。多くの日本人が傍観しないことを祈ります。

そうしてこの安倍論文は、ただ公表されただけではなく、引用という形で報道され世界を駆け巡りました。その事実を前に、バイデン大統領としても、曖昧戦略をこれからもはっきりと継続するとは言えなかったのでしょう。まさに、この論文は絶妙なタイミングで出されたと思います。

この論文はさらに国際政治に今後も影響を与える可能性があります。しかし、この論文に関しては日本のメデイアはほとんど報道しません。

マスコミは2012年暮れにやはりプロジェクト・シンジケートに公表された、当時総理になることが決まっていた安倍氏の論文「安全保障のダイアモンド」を無視しました。この論文は非常に重要なもので、その後のインド太平洋戦略構想やQUADにも結びついたものでした。そうして、これも世界各国の多数のメディアに掲載されたにもかかわらず、日本のメデイアは無視しました。

そのため、日本ではその存在そにものも知らない人が多いようです。特に、情報源がテレビや新聞などに限られている人はその傾向が強いです。

米国では、トランプ元大統領が大統領でなくなってしまってから、CNNなどの反トランプメディアは凋落しつつあるそうです。それは以下の動画をご覧いただければおわかりいただけると思います。


日本の反安倍メディアも同じような運命をたどりつつあるといえると思います。そうして、トランプ氏もバイデン批判、米民主党批判だけではなく、安倍元総理が間接的にバイデンを批判したように、岸田総理や林外務大臣に対する批判をしていただきたいものです。

無論、安倍氏のように、理詰めで、誰にも表立って反対できないような理性的で、実際に国際政治を変えるような形で実施していただきたいです。

安倍元総理の今回の論文は、直接トランプ氏や共和党を応援するものではないですが、バイデン大統領の行動を変えた可能性は十分にあります。

トランプ氏

そのような形で、日本の岸田総理や林外務大臣と自民党の行動を変えるような提言をして欲しいです。特に経済面やエネルギー政策では、そのようなことをしていただきたいです。

そのようなことができれば、トランプ氏が大統領に返り咲く可能性が高まると思います。

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2022年4月6日水曜日

民間人殺害、まず調査を 中国がEU外相の批判に反論―【私の論評】ウクライナ危機は前哨戦か?最悪中露印との連合軍との戦いも!自衛のための核保有も議論せよ(゚д゚)!

民間人殺害、まず調査を 中国がEU外相の批判に反論

中国外務省の趙立堅副報道局長

 中国外務省の趙立堅副報道局長は6日の記者会見で、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャなどでロシア軍の撤退後、民間人とみられる多数の遺体が確認されたことについて、「中国は民間人の被害に重大な関心を寄せている。事件の真相と原因を調査しなければならない」と指摘した。ただ、「調査の結論が出る前に、ゆえなく責め立てることは避けるべきだ」とも述べ、ロシアに対する糾弾に同調しない考えを強調した。

ロシアの「集団殺害」追及 捜査へ特別機構創設―民間人犠牲でウクライナ

 一方、欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)は5日の欧州議会で、1日にオンライン形式で開いた中国との首脳会談に関し、「中国のリーダーはウクライナについて話したがらなかった」と中国側の姿勢を批判した。これに対し、趙氏は6日の会見で「会談は成功裏に行われた。事実に符合しない、無責任なコメントはすべきでない」と反論した。

【私の論評】ウクライナ危機は前哨戦か?最悪中露印との連合軍との戦いも!自衛のための核保有も議論せよ(゚д゚)!

今回のウクライナ侵攻で、「中国がどう出るか」ということがかなり注目されていますが、いまのところ、よくわかりません。安保理の会合ではロシアに同調しているような感じはします。

最初は中国は、ロシアに武器を供与するという話もありました。しかし、それもいまは進んでいないので、様子を見ていると考えられます。 

中国は、これだけロシアが国際社会のなかで孤立しているのを見て、あまりそこに引き摺り込まれたくないという考えはあるのでしょう。ただ、中国には『唇滅びて歯寒し』ということわざがあります。

歯にとって、唇は盾のようなものです。ロシアがいなくなり、中国だけが欧州や米国と対立しなければいけなくなると厳しいので、ロシアがいてくれた方が少しは助かるという。そういう微妙な気持ちもあるようです。

中国にとっては、ロシアはないよりはあった方が良いのです。

現在のロシアは経済的には極めて脆弱です。GDPの規模は韓国を若干下回ります。一人あたりのGDPでは韓国を大幅に下回り、中国と同程度ですが、人口が韓国よりも多いので、それで韓国なみになっています。

ロシアの人口は、1億4千万人で、中国のそれは14億人で丁度10倍です。一人あたりのGDPでは中露はほぼ同じですが、人口が10倍なので、国単位では中国のGDPはロシアの10倍です。ロシアの輸出産業といえば、天然ガス、石油、小麦くらいしかなく、かなり脆弱な国です。

ただ、旧ソ連の核兵器と軍事技術を継承しているため、軍事力は突出しています。ただ、その軍事力ですら、現状では軍事費はインドを下回り、米国、中国などに遠く及びません。真の軍力としてはどの程度なのかは、未知数扱いにされるようになってきています。 一方で、中国は経済的には、未だロシアよりは極めて強いです。GDPも米国を抜く勢いなどといわれていますが、一人あたりのGDPからいけば、中国が米国を追い越すことは、しばらくはあり得ないものの、国全体としてはそういうこともあり得るわけで、そうなると、そのうちロシアは中国の属国になりかねないという見方もあります。

先日、政治学者で立命館大学教授の上久保誠人さんが、『ダイヤモンド・オンライン』に寄稿していました。
『中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り』~『ダイヤモンド・オンライン』2022年4月5日配信記事 より
中国が台頭し、ロシアを飲み込めば、モンゴル帝国の再出現するのではないかという内容です。これは、まさに「タタールのくびき」ですね。ユーラシア大陸が中国中心に再構築されて、ロシアはそこにぶら下がるだけの国になる可能性があるというのです。

ロシアからすると、それは嫌でしょう。キプチャク・ハン国はロシアに圧政を強いましたから、ロシアにとっての黒歴史そのものです。 そうは言いつつ、プーチン政権が続く限りは西側の制裁は終わらないです。しかも、プーチン大統領が自らすぐに身を引くとは思えないので、制裁が長く続けられことになるでしょう。そうするとロシア経済が低迷し、崩壊するでしょう。


今回のブチャ虐殺で、欧州がロシアから天然ガスを輸入しないという方向に舵を切りつつあります。そうなると、輸出先は中国しかなくなってきます。また、VISAやMastercardが使えなくなっているということで、銀聯(UnionPay)カードという、中国のクレジットカードがロシアで使えるようになるのではないかという話もあり、ロシアが中国経済的な枠組みのなかに取り込まれていく可能性はあります。

銀聯(UnionPay)カード

そうなると、一帯一路を中心として、中東諸国がどこまで中国に飲み込まれるかということになります。 明らかに「ロシア・中国対西側」ではなく、中国が盟主になるということです。

ユーラシアの一帯一路を軸にして、そうなる可能性は大きくなりつつあります。 地政学の基本に立ち返れば、ランドパワーとシーパワーの対立ということも考えられます。

今後世界は新冷戦に入るという話もありますが、中国の現状がかつての米ソ対立と違うのは、ソ連は経済的にも駄目になって、今や韓国より若干少ない程度で、ある意味、ロシアはもはや自壊した帝国になってしまったということがあります。しかし、中国の経済がすぐロシアなみに衰退する可能性は、現時点でほとんどありません。

 ただ、中露の結びつきは強く、強固なサプライチェーンを構築しています。 半導体でいえば、例えば台湾に侵攻して、台湾が制圧されれば、世界の半導体シェアの多くを中国が握ることになります。

もちろん、半導体の素材は日本が供給している部分も大きいので、必ずしも中国だけが供給できるというわけではないのですが、世界経済に対する影響力は極めて強くなります。 飯田)そうですね。 

ロシアによる今回のウクライナ侵攻は大変な事態なのですが、これは後世から見ると、「前哨戦だった」ということになるかもしれないのです。実は「中国対西側」というのが最大の主戦場になる可能性は極めて高いですし、この事態がどういう結末を迎えるのか、現状では全く検討もつきません。

ただし、このことは米国も強く意識していて、このブログにも以前掲載したように、米国は中国の対立を優先する旨をはっきりさせています。バイデン政権の初の「インド太平洋戦略」においては、「ロシア」という言葉は一言もでてきません。

そうして、米国はいずれ「中国対西側」という対立軸で、ロシアを実質的に飲み込んだ中国との対峙がもっとも重要とみているのでしょう。

3月2日の国連総会の「ロシア非難決議」に141カ国が賛成しましたが、インドは棄権しました。米国との関係は冷え込み、使用している武器の多くもロシア製です。中国との仲はかなり悪いのですが、経済制裁に対抗する形でロシアと中国が近づけば、3国が大同団結する可能性を否定できないです。


ロシアは米国を上回る数の核を保有します。中国の国内総生産(GDP)は世界第2位だ。ここに近い将来に人口が世界1位になると見込まれるインドが加わると人口30億人規模の勢力になります。これは、規模で言えば「モンゴル帝国」を上回るかもしれません。

 バイデン政権の経済制裁は、これらの国々に「米国中心の金融・経済システムは安全保障上危険だ」という恐怖を与え、軍事面だけではなく経済、金融システムにおいても団結を強めさせる恐れがあります。

その点、トランプ政権が中国を貿易戦争で攻めて、ロシアとの友好関係は維持し、両者を分断しようとしたのは正しかったといえるでしょう。 中印露の3カ国が結束することは、日本の安全保障においても脅威です。

ロシアは日本の経済制裁を理由として「平和条約締結交渉の打ち切り」を宣言しました。中国が尖閣諸島や台湾に侵攻したときにロシアが中立を保つと考えるのは期待薄です。それどころか北方領土にミサイル基地を建設する可能性さえ出てきました。

不幸にも日本はロシア、中国、北朝鮮に囲まれており、彼らが結束した場合のリスクはかなり大きいです。 日米安全保障条約は「片務契約」で、米国は日本を守るために戦いますが、日本は米国を守るためには戦う必要がないです。

ところが、実際に中国が尖閣に侵攻したときに、米国は第三次世界大戦のリスクを犯してまで日本を守るでしょうか。ウクライナで派兵をしない米国が、日本には在日米軍が存在するから、日本はウクライナと違って同盟国だからといって、尖閣での闘いに参加するでしょうか。

そこからさらに沖縄、さらに本土に手を出してきた場合、核保有国である中国と真正面から闘いを挑むでしょうか。

おそらく、挑むとは思います。ただ、今後世界情勢はどんどん変わっていきます。現在の米国の姿勢がいつまで続くかなど保証の限りではないのです。 ウクライナ危機は、明日の日本の危機でもあります。核共有の議論はもちろんですが、本来憲法上は問題がないはずの「自衛のための核(独自)保有」も議論しなければならないほど切迫した状況になりつつあるといえます。

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2021年6月4日金曜日

外交部、日本からのワクチン提供に「心から感謝」―【私の論評】これまで日本への支援を惜しまなかった台湾に、日本はワクチン提供で恩に報いることができた(゚д゚)!

外交部、日本からのワクチン提供に「心から感謝」


日本政府は3日、台湾にアストラゼネカ製ワクチン124万回分を提供し、台湾と共同で新型コロナウイルスに立ち向かう決意を示した。ワクチンはきょう(4日)午後、台湾に到着する。写真は成田空港でワクチンを載せた航空機に深々とお辞儀をする台北駐日経済文化代表処の謝長廷駐日代表。(台北駐日経済文化代表処より)


台日双方の緊密な交渉の末、日本政府が台湾にアストラゼネカ製ワクチン124万回分を提供し、台湾と共同で新型コロナウイルスに立ち向かう決意を示した。ワクチンはきょう(4日)午後、台湾に到着する。外交部(日本の外務省に相当)は同日、ニュースリリースを発表し、日本が適切なタイミングに支援の手を差し伸べてくれたことに「心から感謝する」と述べている。ニュースリリースの概要は以下のとおり。

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昨年、新型コロナウイルス感染症が全世界に拡大して以来、わが国は医療物資をさまざまな国に無償提供し、国際社会から評価されてきた。最近、新たな感染拡大の波が世界を襲っている。日本政府は、台湾で感染拡大が深刻化していることを鑑み、また、日本の各方面から台湾支援の声が上がる中、日本国内の感染状況が依然厳しい段階にあるにも関わらず、ワクチンを提供することで台湾に協力する決定を下した。これは「人溺己溺(他人が溺れていることを自分が溺れていることとみなす。つまり、他人の苦しみをわが事ととらえる)」、「同舟共済(同じことにあたっている者たちが力を合わせて難局を乗り切ること)」の人道的精神を発揮し、台湾と日本の感染症対策での協力を強化するものだ。外交部は、わが国の政府および国民を代表し、日本政府および関係者に心から感謝申し上げる。

台湾と日本はもとより緊密な関係にあり、固い友情を築いてきた。災害や事故が発生するたびに互いに支援の手を差し伸べ、「雪中に炭を送る」という行動を繰り返し、長期にわたって支え合いの手本を他国に示してきた。このコロナ禍においても、台湾と日本は互いに、第三国に取り残された相手国民の救出に協力してきた。大型客船ダイヤモンドプリンセス号の台湾人乗客を帰国させるためのチャーター機の運航、あるいはペルー、インド、フィジーなどに取り残された人々の帰国など、さまざまなケースを台日双方の協力で無事解決してきた。今年5月に開催された世界保健機関(WHO)年次総会では、日本の菅義偉首相をはじめとする多くの政府高官が、台湾のWHO参加を支持する立場を表明した。これに加えて、このたび日本政府からワクチンの支援を受けられることは、わが国の感染症対策システムを強化し、国民の健康を守るために大きく役立つことだ。このことはまた、台湾と日本のパートナーシップが「患難真情(まさかのときの友こそ真の友)」であることを改めて証明した。日本の人々からの心温まる支援を、わが国の政府と国民は永遠に忘れないだろう。

台湾と日本は、自由や民主主義という普遍的価値を共有している。さまざまな側面において、双方は重要なパートナーであり、貴重な友人である。わが国は、この盤石な関係を基礎に、さらに双方の関係を深めていきたいと考えている。

【私の論評】これまで日本への支援を惜しまなかった台湾に、日本はワクチン提供で恩に報いることができた(゚д゚)!

本日は、日本の無償提供ワクチン124万回分を載せた航空機が台湾到着しました。市民の感謝の声をメディアが一斉に報じています。蔡英文氏は6日前「困難な時代を支え合って共に切り抜けようという姿勢がこれまで以上に鮮明に。深い友情に心から感謝します」と発信していましたが、そのワクチンの到着が本日の天安門事件32周年と重なることになりました。なにやら、不思議なめぐり合わせを感じます。

新型コロナを長く抑えていた台湾では、5月中旬から一気に感染が広がり、累計感染者が約1万人に膨れ、ワクチン不足の課題が急浮上した。いち早く中国が台湾へのワクチン提供を申し入れたが、台湾当局は「中国のワクチンは怖くて使えない」とし、強く拒否する状況にありました。

中国は、こうした台湾の日米中で異なる対応の違いに強く反発している。外務省の汪文斌副報道局長は5月31日の記者会見で「我々は台湾の同胞のために(ワクチン提供などで)最善を尽くす意思を繰り返し表明してきた。だが(台湾与党の)民主進歩党が善意を踏みにじり、中国から台湾へのワクチン輸入を妨害している」と語りました。

その上で日本の台湾への支援については「新型コロナ対策を政治的なショーに利用しており、中国への内政干渉に断固反対する」などと批判しました。

台湾では域内のメーカーによる「国産」ワクチンの開発や、当局による調達努力が今なお続きました。ところが大量調達の確保には至っておらず、政権への批判も強まっています。

こうした状況に、蔡英文総統は5月26日、党内の会議で「(台湾当局のワクチン調達の動きに)中国が介入し、契約が進まず、今まで遅れている」と明かし、中国に対して強い不快感を示しています。

ただし、このブログにも以前掲載したように、台湾のコロナ感染症は、高橋洋一氏が「さざなみ」と評した日本の感染状況よりもさらに低く、現状でも欧米諸国に比較すれば、かなり感染は低い状態に抑えられています。そのため、感染の酷い地域から、ワクチンの接種を始めるという防疫上の観点からいっても、台湾の接種の遅れはさほどのものではないともいえます。

このような背景と、さらに中国の妨害があったので、若干遅れたというのが、実体であるとみるべきです。今後台湾は確実に感染症を抑え、いずれ収束に向かうと考えて良いでしょう。

台湾に対する英製薬大手アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの提供は、中国からの「横槍(よこやり)」を警戒しつつ、水面下で慎重に準備が進められてきた。ワクチンを共同購入して途上国に分配する国際的枠組み「COVAX(コバックス)」を通じて台湾に供給する案も検討されたが、「時間がかかりすぎる」と判断。安倍晋三前首相ら自民党議員も動き、迅速な提供を実現しました。
5月24日夜、東京都港区の台北駐日経済文化代表処では、台湾の駐日大使に当たる謝長廷代表と米国のヤング駐日臨時代理大使の意見交換会(写真下)に薗浦健太郎元首相補佐官が招かれていました。


「日本はアストラゼネカ製のワクチンを公的接種では当面使わない。それを台湾に譲る動きもある」 薗浦氏はアストラゼネカ製の使い道を問われ、こう答えた。薗浦氏の発言にヤング氏も「グッドアイデアだ」と賛意を示しました。

日本はファイザーとモルデナで全国民分のワクチンをすでに確保済。アストラゼネカも1億回分確保していて、今日その一部を台湾に提供することになったのです。

 台湾は新型コロナウイルスの押さえ込みに成功してきたのですが、5月中旬から感染が拡大。与党関係者によると、日本政府にも5月の大型連休明け以降に、台湾側から複数のルートで「100万回分ほどワクチンが融通できないか」と打診が届いており、水面下での検討が進められていたといいます。

 薗浦氏は翌日、安倍氏に謝氏らとのやり取りを報告して協力を要請しました。2人は前政権で首相と、首相を支える首相補佐官や党総裁外交特別補佐として外交政策を担ってきた間柄でもあります。

安倍氏も「すぐにやろう」と応じました。 国有財産であるワクチンの譲渡は財務省の了解が必要となります。麻生太郎副総理兼財務相に報告した上で、菅義偉(すが・よしひで)首相のゴーサインを得ました。

園裏元安倍首相補佐官(左)と安倍首相(右)

関係省庁間の調整役には加藤勝信官房長官が当たりました。 外務省は当初、コバックスを通じた提供を検討しましたが、安倍氏らから「それでは時間がかかりすぎる」との声が上がりました。

台湾側からは「数量はともかく、スピード重視で対応してもらいたい」との意向が伝えられていたこともあり、コバックスではなく日台間の相互援助の一環として提供する方針に転換しました。 

日本が震災や新型コロナのマスク不足で困難に直面した際、台湾からは多額の義援金やマスクが届いた経緯があります。今回はその「返礼」としてワクチンが送られることになりました。提供に関わった議員は「災害など、困ったときには互いに助け合ってきた歴史がある。国民の理解も得られるだろう」と語りました。

日本のワクチン提供を伝える台湾主要紙

4日付の台湾各紙は、日本政府が台湾に新型コロナウイルスの英アストラゼネカ製のワクチンを提供することを「日本の124万回分が今日台湾到着」との見出しで1面トップに掲載し、日台の友情を改めて証明したと報じた。米国が国際枠組み「COVAX(コバックス)」を通じ、台湾を含むアジアに700万回分を提供することも伝えました。

自由時報は「日本は中国の脅しに直面しながら気概を示した」とたたえました。日本政府がアストラゼネカ製を特例承認したものの、国内では当面使わない方針を決めたことを受け、蔡英文総統ら政権幹部が台湾への提供に向けて日本側と交渉を続けたとしました。

今回のワクチン提供は5/24、駐日台湾代表の謝氏が日米代表と会談、翌日には頼清徳副総統、金美齢さん、そして安倍-岸ブラザ一ズで「早急に実現させなければ」という連携があった、とも報道されています。見事なチームプレーでした。

駐日台湾代表の謝氏は、ご自身のフェイスブックに「一年前の四月、私はこの場所で中華航空が台湾から運んできたマスクを迎えました。今日はこの同じ場所で、日本航空が台湾に運ぶワクチンを嬉しく見送りました。どちらも新型コロナウィルス対策の為のもので、とても温かな気持ちで一杯です」と投稿されています。

東日本大震災のときには、義援金が世界で一番高額であったことなども含めて、これまで日本への支援を惜しまなかった台湾に、日本はワクチン提供で恩に報いることができました。

こうした動きは、人道的にも道義的にも高く評価できます。中国は「政治的利益を図っている」などと日本を批判していますが、ワクチン調達を妨害した中国こそ、政治的利益のために人命を軽視する本質が顕になったといえます。

最も難度の高かった台湾への支援を皮切りに、日本はこれから東南アジア諸国への「人道的ワクチン外交」を展開することになります。我が国日本は、アジアの大国だという自覚と責任を日本人は持つべきで、政府と国会、マスメディアはそれにふさわしい発信をすべきです。

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2021年3月16日火曜日

最新鋭掃海艦「えたじま」が就役――海自艦艇最大のFRP船―【私の論評】尖閣で、小競り合いではなく戦闘になれば日本が圧倒的に有利な理由(゚д゚)!

 最新鋭掃海艦「えたじま」が就役――海自艦艇最大のFRP船


海上自衛隊の最新鋭掃海艦「えたじま」が3月16日、就役した。ジャパン・マリンユナイテッド横浜事業所鶴見工場で同日、引き渡し式と自衛艦旗授与式があった。掃海艦の就役は2018年3月の「ひらど」以来、3年ぶりとなる。海上自衛隊呉基地の第3掃海隊に配備される。えたじまは、高性能化した機雷の除去などの任務に当たるが、特に潜水艦を狙う深深度機雷を排除する能力に優れる。

えたじまは2017(平成29)年度計画掃海艦で、艦名は広島県の江田島に由来する。同島は1888(明治21)年に海軍兵学校が東京築地から移転して以来、海軍ゆかりの島として知られる。海軍兵学校の代名詞ともなっている。


えたじまは掃海艦「あわじ型」の3番艦。あわじ型は、もともと海自初の掃海艦で既に退役した世界最大級の木造艦「やえやま型」の性能向上型だ。えたじまの総工費は約177億円。

●FRP製掃海艦として世界最大級

えたじまは、あわじ型の1番艦「あわじ」と2番艦「ひらど」とともに海自で最大の繊維強化プラスチック(FRP)製掃海艦だ。FRPで建造した掃海艦としては世界最大級となる。FRPは軽くて強度が高い。海中の機雷除去をする海自の艦艇としては、あわじ型掃海艦に先立ち、2012年に初めてFRP製となる新型掃海艇「えのしま」が就役した。それまでの船体は機雷に感知されない木材で造られていた。えのしま型掃海艇の3隻を含め、えたじまは船体がFRP化した6隻目の海自の掃海艦艇となる。

えたじま、船体に木材ではなくFRPを使うことで、やえやま型とほぼ同じ寸法ながら軽量化された。さらにFRPを採用することで、耐衝撃性を確保しつつ、使用年数が大幅に長くなる長寿命化が図られている。海上幕僚監部広報室によると、寿命は木造艦船が約20年に対し、FRP製は30年超になるという。

●えのしま型掃海艇より約120トン大型化

えたじまは基準排水量690トンで、前級のやえやま型掃海艦より約310トン小型化する一方、えのしま型掃海艇(MSC)よりは約120トン大型化した。全長は67メートルで、全幅11メートル、深さ5.2メートル、喫水2.7メートル、ディーゼル2基2軸、軸馬力2200馬力、最大速力は約14ノット。乗組員は約60人。

えたじまは、広範囲にわたる深度の機雷探知を可能にする深深度掃海装置1式を備える。海面上を漂流する機雷を昼夜を問わず遠距離から探知できる光学式監視装置(レーザー・レーダー)一式も搭載している。浮上した機雷を処理するための20ミリ機関砲1基も備える。

えたじまは、対機雷装備として、使い捨ての機雷処分具となる三井造船製の自走式機雷処分用弾薬(EMD)や日立製作所製の新型可変深度式探知ソナー(VDS)システムのOQQ-10を搭載。さらに無人水中航走体(UUV)として水路調査用で自律行動型の米ウッズホール海洋研究所製のリーマス600など多くの新装備を搭載している。えたじまは内外の技術の結晶ともいえる。

防衛省・海上自衛隊は2020年度予算に、えたじまに続くあわじ型4番艦の建造費126億円を計上している。

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【私の論評】尖閣で、小競り合いではなく戦闘になれば日本が圧倒的に有利な理由(゚д゚)!

昨年あたりから、海自では様々な艦艇が、進水しています。これらの進水は、概ね個別に報道され、互いの関連はあまり報道されていません。互いの関連がわからないと全体像は見えてきません。本日は、それに関することを掲載します。

昨年は、海上自衛隊に令和4年3月就役予定の新型潜水艦の命名・進水式が10月14日、神戸市の三菱重工業神戸造船所で開かれ、艦名は大きな鯨を意味する「たいげい」と命名されました。

昨年10月14日に浸水した最新鋭3000トン型潜水艦「たいげい」


防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」では平成22年以降、中国の海洋進出を念頭に日本が保有する潜水艦を16隻から22隻に増強する目標を掲げてきました。たいげいが部隊に投入されると、22隻体制が実現することになります。

今月は、新しい護衛艦「くまの」、「もがみ」の相次ぐ進水がニュースになっていました。皆さんの記憶にもまだ新しいと思います。
「海上自衛隊の新型護衛艦(全長133メートル、排水量3900トン)の命名・進水式が3日、三菱重工業長崎造船所(長崎市)で行われ、『もがみ』と命名された。2022年以降に就役する。昨年11月に三井E&S造船の玉野艦船工場(岡山県玉野市)で進水した『くまの』に続き、2隻目。

海自は、中国軍の海洋進出や北朝鮮の弾道ミサイルへの対応など任務が増大する中で、慢性的な人手不足に陥っている。新型艦は船体をコンパクト化し、運用システムを集約化。乗組員は約90人とイージス艦の3分の1程度に抑えた。複数のクルー制も導入し、限られた人員による護衛艦の運用体制を維持する」(3月3日付 時事通信)
記事にあるようなコンパクト化のほか、レーダーに映りにくいステルス性能も話題になっていました。ただ、ほとんど報道されていなかったことがあります。


それは機雷戦能力です。海上自衛隊が「くまの」、「もがみ」に与えた新たなコンセプトは、これまで掃海艇が担っていた掃海能力を備えさせ、日本列島沿岸の防備を固めるというものですが、無人機雷排除システムとともに装備されている簡易型機雷敷設装置が備わり、機雷戦能力が装備されました。

機雷戦能力が与えられたということは、日本が本気で中国の海洋進出を阻止する方向に舵を切ったとみえます。これまで海上自衛隊の能力は対潜水艦戦(ASW)に特化されており、「ASWのための海軍」という異名すら奉られてきたほどでした。

ただ、見逃してならないのは海上自衛隊の対機雷戦(AMW)能力の高さです。1991年、湾岸戦争後のペルシャ湾の掃海に派遣された当時、海上自衛隊のAMW能力は世界一とさえ評価されていたほどです。

その後、掃海艇の老朽化などで世界一の評価は返上しなければならない時期もありましたが、いまや掃海艦の導入と掃海艇、掃海ヘリコプターの新型への更新も進み、再び世界一の評価を回復しました。海上自衛隊のAMW能力は、掃海母艦(5700~5650トン)2隻、掃海艦(690トン)2隻、掃海艇(570~510トン)17隻、掃海ヘリコプター10機という勢力です。これは、米中をもしのぎます。

これまで、海上自衛隊のAMW能力は北朝鮮に対するものとして説明されてきました。機雷は、ミサイルや戦闘艦艇に比べて安価で大量に設置でき、しかも一隻数百億から数千億円もする高価で高性能な軍艦を沈めることができる恐ろしい兵器です。そのため、そこに機雷があるかもしれないという情報だけで、敵の海軍の動きを大きく制限することもできます。

北朝鮮が海峡部分などの日本周辺や朝鮮半島沿岸に機雷を敷設し、日本などの船舶の航行を妨害したり、朝鮮半島有事に北朝鮮に上陸する部隊を阻止したりしようとしたとき、それを除去するのが海上自衛隊に期待されているとの説明でした。

むろん、その位置づけは今後も変わらないでしょう。しかし、そこに「くまの」、「もがみ」のような機雷敷設能力を備えた艦艇が加わると、海上自衛隊は本格的な機雷戦能力を備えた海軍に生まれ変わることになります。

なにができるようになるかといえば、例えば、尖閣諸島をめぐって中国との関係が極度に緊張したとき、機雷戦を国際的に宣言すると同時に迅速に尖閣周辺に機雷を敷設し、中国の接近を阻止することが可能になります。その能力を持つこと自体が、中国に尖閣への手出しを躊躇わせる抑止力となることは言うまでもありません。

それだけではありません。場合によっては、世界各国が軍事的にも中国包囲網を敷く中で、機雷敷設によって中国に出入りする船舶を完全にコントロールし、中国が経済的に成り立たないようにすることもありうる話です。中国の掃海能力はきわめて限られていますから、これも中国に無謀な企てを放棄させるうえで、高い抑止効果があります

そうして、上の情報を組み立てていけば、尖閣防衛もより確かなものになったことが、はっきりしてきます。

以前このブログでは、尖閣有事のとき、日本の潜水艦隊がどう戦うのかをシミュレーションしてみたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
偵察衛星、無線傍受、サイバー情報戦、その他等で得たインテリジェンス情報から、中国海軍が尖閣奪取必至と判断され、中国沿岸基地では海軍の出動準備がなされたとの情報が入ったとします。

南西諸島各港に前方配備されたFFM2くまのクラスが、数隻全力で尖閣北方海域に出撃。そこで、左舷後方ハッチから機雷をばら撒くと、今度は全速で南下し、掃海母艦と合流。海自のFFM艦隊と掃海母艦が尖閣付近に機雷原を作り、南西諸島各海峡を機雷封鎖します。

空母いずもとイージス艦まやの機動艦隊が南西諸島東側海域に入ったとき、そうりゅう型潜水艦、たいげい型潜水艦は青島、上海の軍港と南西諸島の間に潜んで、中国空母艦隊を牽制します。

現在、中国空母は対潜哨戒機を持たず、艦載機J15も対潜爆弾を持っていません。護衛しているフリゲート艦たちの対潜能力も低いので、中国空母近くに海自潜水艦が行ければ、確実に撃沈できます。

海上自衛隊は長年、ソ連潜水艦と戦って来て、その対潜哨戒能力のレベルは恐ろしいほど高いです。その経験を対中潜水艦戦に投入していますから、浅海に潜む音の大きい中国潜水艦はそうりゅう型搭載の18式魚雷で撃沈できます。

このブログでは、以前から掲載してきたように、日本の潜水艦は静寂性(ステルス性)に優れ(リチュウム電池を動力とする、最新型ではほとんど無音)ていて、しかも中国の対潜哨戒能力が低いので、日本の潜水艦を探知することはできません。そのため、自由に尖閣諸島周辺を航行できます。それとは真逆で、中国の潜水艦は日本はすぐに探知できます。

しかも、海自は自ら設置した機雷はすべて敷設場所を認識しているので、これに妨げられることはありません。

海自の機雷


尖閣諸島付近に、機雷をばらまけば、中国海軍の掃海能力はかなり低いので、掃海に手間取り、尖閣に上陸はできません。それでも、人的被害をものともせず、掃海を無理やり実行して、尖閣に兵を送り込んだとしても、再度機雷を敷設されたり、日本の潜水艦で尖閣諸島を包囲されれば、補給ができず、尖閣諸島に上陸した人民解放軍もしくは民兵はお手上げになります。

さらに、空母やその護衛艦、強襲揚陸艦なども、日本の潜水艦にほとんど撃沈されることになります。

航空機での補給という手もあるでしょうが、まずは効率が非常に悪いということと、航空機を護衛する中国の戦闘機はこれもステルス性に劣るので、すぐに地対空ミサイルで日本の護衛艦等に撃ち落とされ、これも絶望的です。

世界一の軍事大国である米国といわれる米国ですが、潜水艦のステルス性や、対潜哨戒能力、掃海能力のような分野では総合的には日本の方が勝っています。なぜ、これらの分野が日本では優れるに至ったのでしょうか。

まず、対潜水艦能力についは、大東亜戦争のころの日本は対潜水艦の能力自体は高かったのですが、運用のう力が低く米国の潜水艦から大きな打撃を受けました。米軍の潜水艦は、大戦中東京湾に侵入して、情報収集にあたっていたほど、運用面ではすぐれていました。

一方日本は、航空機を3機も搭載できる、後に米軍のポラリス型潜水艦の原型になったといわれるほどの当時としては世界最大の超大型潜水艦を大戦中に建造しており、建造能力にたけていたのですが、運用面では効果的ではありませんでした。

当時世界最大の日本海軍伊400型潜水艦

そこから教訓を得た日本は、戦後は海上自衛隊で対潜水艦能力に力を入れ、強力なソナーを装備した護衛艦や最新の対潜水艦ミサイルを装備しているほか、対潜哨戒機も多く保有していて、その規模と実力は中国も甘く見ることはできないほどになりました。

特に、対潜哨戒能力については、冷戦中のオホーツク海における、哨戒活動が日本の哨戒能力を格段にあげました。一時に米国のそれを上回るともいわれていた時期がありました。現在でも、かなり高いです。おそらく、世界第二位でしょう。中露は、日米にははるかに及びません。

掃海能力についても、太平洋戦争中に米国が数多くの機雷を日本近海に敷設したため、日本は戦後、長期間にわたって機雷の除去を行わざるを得ない状況に追い込まれたため、能力が高まりました。

先の大戦末期の1945(昭和20)年3月、米軍が発動した「飢餓作戦」では、爆撃機や潜水艦で日本の港湾周辺や航路に敷設された1万2035発の機雷により、商船670隻125万トンが撃沈され、輸送能力の62・5%が失われました。終戦までのわずか半年で、日本の港湾に出入りできた船舶は85万トンから15万トンに減少し、海上輸送はほぼ窒息状態となったのです。

日本ではあまり知られていませんが、この掃海能力は朝鮮戦争の際にも発揮され、多くの機雷を除去することに成功しました。ただし、このときには戦後初の戦死者も出ています。ただ、当時の日本政府が表に出さなかったため一般にはほとんど知られていません。

日本の総合的な対潜水艦能力と掃海能力は非常に優れており、米国ですら総合力では日本には及びません。そのすべては太平洋戦争での敗戦と、米ソ冷戦時のオホーツク海の対ソ対潜哨戒にから来ているといえます。

無論、中国には核兵器があり、日本には核兵器はありません。そのため、いよいよになれば、核で脅しという手もあるでしょうが、日本には米軍が駐留しているし、実際中国が核兵器を用いることはできないでしょう。

もし、尖閣奪取のために、これを使えば、超大国としての中国は丸つぶれになります。それに、そんなことをすれば、日本はそれに報復するためにも、核兵器を開発することになるでしょう。かつて、バイデンが習近平を「日本は一晩で核保有可能」と脅したそうですが、それが本当になるでしょう。

日本が中国から核攻撃を受ければ、世論は激高し、日本の親中派・媚中派の政治家、官僚、財界人なども、政治生命や、官僚、財界人としての影響力を完璧に失うことでしょう。

最後に、このブログでは、よく物事に優先順位をつけるべきであると主張してますが、それは軍事力についてもいえると思います。

中国の軍事力と、日本の軍事力を比較すると、中国は総合的に開発されているといえますが、日本は対中国に特化しています。それも海洋戦に特化しています。

それは、予算や何のための軍事力であるかということで違いが生じているようです。まずは、ご存知のように、予算が違います。中国は膨大な予算を軍事力に使っていますが、日本はGDPの1%という枠があり、そこからほとんどはみ出ることはしません。

そのため、中国のようにあれもこれもと、予算を総合的に使うことはできません。そのため、対中国、それも海洋先に絞った予算ということになったのでしょう。当然といえば、当然です。

それと、何のための軍事力かといえば、中国は超大国を目指しており、場合によっては海外に大量の軍隊を送り、特定の地域を制圧することも視野にいれています。一方の、日本は、そもそも海外に大量の軍隊を制圧するなどのことは考えていません。

日本の軍事力は、あくまで基本的に自国を守ることです。そのため、海外に大量の軍隊を送り込む必要性もありません。

こうした、両者の違いが、両者の軍事力の大きな違いを生んだのでしょう。そうして、優先順位をつけるという方式はここでも、優位性を生んだようです。

日本は、目に見える形で着々と軍事力をつけていますが、中国のそれは総合的であり、陸上はもとより、海洋や宇宙にまで手を伸ばしていますが、結果として、日本の潜水艦を探知することもできず、静寂性に優れた潜水艦も建造できず、掃海能力に劣っています。

そうして、この差を中国はあと数十年かかっても埋めることはできません。

先日も述べたように米国の経営学会では忘れされてしまったかのような、偉大な経営学の大家ドラッカー氏は優先順位について以下のように述べています。

いかに単純化し組織化しても、なすべきことは利用しうる資源よりも多く残る。機会は実現のための手段よりも多い。したがって優先順位を決定しなければ何事も行えない。(『創造する経営者』)

誰にとっても優先順位の決定は難しくありません。難しいのは劣後順位の決定です。つまり、なすべきでないことの決定です。一度延期したものを復活させることは、いかにそれが望ましく見えても失敗というべきです。このことが劣後順位の決定をためらわせるのです。

優先順位の分析については多くのことがいえます。しかしドラッカーは、優先順位と劣後順位に関して重要なことは、分析ではなく勇気だといいます。彼は優先順位の決定についていくつかの原則を挙げています。そしてそのいずれもが、分析ではなく勇気にかかわる原則です。

 第一が、「過去ではなく未来を選ぶこと」である。 

 第二が、「問題ではなく機会に焦点を合わせること」である。

 第三が、「横並びでなく独自性を持つこと」である。

 第四が、「無難なものではなく変革をもたらすものに照準を当てること」である。

容易に成功しそうなものを選ぶようでは大きな成果はあげられない。膨大な注釈の集まりは生み出せるだろうが、自らの名を冠した法則や思想を生み出すことはできない。大きな業績をあげる者は、機会を中心に優先順位を決め、他の要素は決定要因ではなく制約要因にすぎないと見る。(『経営者の条件』)

まさに、日本は、中国の脅威をなんとしても防がなければならない、そのためには中国に比して日本が長けている部分を最大の機会とみなし、予算など他の要素は決定要因ではなく、制約要因にすぎないと見たからこそ、今日中国に対する備えができたのだと思います。

そうして、この傾向は安倍政権以降になり一層色濃くなりました。その具体的な動きは、安倍総理の9年前の論文、「安全保障のダイヤモンド構想」から始まったといえるでしょう。この流れはやがてインド太平洋構想、QUADにまでつながっていきました。

この日本のやり方は、多くの人々に教訓を与え、そうして勇気づけるものともなりました。そのせいでしょうか、日本の軍事力は昨年は世界のトップ5にランキングされました。

ただ、いくら日本が優先順位をつけても、中国が今後も軍事予算を増やし続ければ、日本の優位性は崩れていくことになりかねません。そのようなことを防ぐためにも、少なくとも防衛予算の1%枠は早々に破るべきです。

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2020年12月4日金曜日

米民主党、トランプ政権にクーデタ―【私の論評】必ずしも大統領選で、トランプ氏不利とは言えない状況になってきた(゚д゚)!

 米民主党、トランプ政権にクーデタ


 

【まとめ】
・トランプ大統領側は不正選挙を暴く重要なデータを得た可能性あり。
CIAがトランプ政権に反旗を翻し「クーデター」を起こしたか。 
・一部では、投票数が登録有権者数の100%をはるかに超え、不正は明らか。
今年(2020年)11月14日、米大統領選挙関連の裁判で活躍しているシドニー・パウエル(軍事)弁護士は「クラーケン(海の怪獣)を解き放て」という意味深長な言葉を口にした。

シドニーパウエル弁護士

 同弁護士の言う「クラーケン」とは国防総省のサイバー戦争プログラムの事を指すという。もしかして、トランプ大統領側がバイデン前副大統領(以下、バイデン候補)ら「反トランプ派」の違法行為を見つけ出し、犯罪の決定的な証拠を得たのだろうか。

 実は、パウエル弁護士が「クラーケン」を口にする前、米軍はドイツ政府の協力を得て、フランクフルトにあるサイトル(Scytl)社(スペイン)のドミニオン(Dominion)のサーバーを没収したと言われる。その際、CIAと米特殊部隊デルタフォースの間で銃撃戦が行われ、CIA側1人、デルタフォース側5人が死亡したという。この銃撃戦が事実ならば、大統領側は不正選挙を暴く重要なデータを得た公算が大きい。

 更に、同月30日、パウエル弁護士は、不気味な言葉を吐いた。「私が判事にすべての証拠を渡す前に、バイデン候補に最後の忠告をします。すぐに選挙を辞退しなければ、あなたは人生最期を刑務所で送らなければなりません」と。 

パウエル弁護士の警告は刺激的である。おそらく同弁護士はバイデン候補を刑務所送りにできるだけの十分な証拠を持っているのではないか。

 目下、パウエル弁護士は、ジョージア州とミシガン州で大規模な訴訟を起こしている。訴状には、数人の証言が添付され、そのうちの1人がサイバーセキュリティ専門家のナビッド・ケシャワルズニア(Navid Keshavarz-Nia)である。不正選挙の実態(主に投票集計ソフト)を暴いた同氏による宣誓証言は興味深い。

 ただ、裁判所がパウエル弁護士の思惑通り、バイデン候補に対し「国家反逆罪」のような厳しい判決を下すかどうか不明である(場合によっては、裁判に時間がかかりすぎて、来年1月20日、バイデン新大統領が誕生してしまうかもしれない)。

前述のドイツでの銃撃戦が真実ならば、なぜCIAが(票集計の不正が疑われている)ドミニオンのサーバーを秘匿しようとしたのか。CIAが「反トランプ派」へ回ったという事なのだろうか。

ならば、CIAがトランプ政権に反旗を翻し「クーデター」を起こしたと言える。一説には、FBI・米軍・司法省の大半も「反トランプ派」で、トランプ政権に対する「クーデター」に参加したという。 

一般に、「ディープステート」(「影の政府」)の存在を唱えている人達は“陰謀論者”だと決めつけられる。だが、仮に、「反トランプ派」が「ディープステート」とイコールだとしよう。そして、彼らがトランプ政権に対し「クーデター」を仕掛けたとする。もし、これが本当ならば、「ディープステート」の存在は“陰謀論者”の“妄想”と簡単に切り捨てる訳にはいかないだろう。 

さて、トランプ大統領は、共和党やQアノンに代表される“右翼”(保守派)に支えられている。一方、民主党系「反トランプ派」はANTIFA(“anti-fascist”の略称)に象徴される“左翼”(リベラル派)が支持層だろう。だとすれば、「反トランプ派」は、中国・ベネズエラ・キューバと近い理由がよくわかる。全面的ではないにせよ、お互い共鳴し合う部分があるに違いない(なお、イランやロシアの米大統領選挙関与説もある)。

昨今、米マスコミには、トランプ大統領を何が何でもその座から引きずり降ろそうという意図が窺える。そして、彼らは民主党による不正投票をまったく報じない。Facebook、Google、Twitter等も、それに追随している。不思議ではないか。

実際、激戦州の一部の郡では、投票数が登録有権者数の100%をはるかに超えている。少なくても郵便投票に関して不正があった事は火を見るよりも明らかだろう。

選挙前、米マスコミは、バイデン候補の息子、ハンター・バイデンのスキャンダルをほとんど報道しなかった。Facebook、Google、Twitterも、その隠蔽工作に加担している。選挙後、CNNは、バイデン候補が選挙で3.2億米ドル(約334億円)のブラックマネーを受け取ったと報じた。

これでは、まるで中国共産党が情報を隠匿しているのと同じではないか。いつから、米国はこのような情報統制国家に成り下がったのだろうか。面妖である。

選挙後に行われた“Biden Voter Messaging Survey Analysis”(2020年11月9月~18日)という調査結果は刮目に値する。バイデン候補に投票した16%の有権者が「もし、バイデン一家のスキャンダルを知っていたら、同候補に投票しなかった」と答えている。

最後に、12月2日現在、まだ勝者(トランプ大統領かバイデン候補)が決まっていない激戦州の状況を記しておこう。 

ペンシルベニア州(選挙人20人)では、選挙が公明正大とは言えないため、州議会が勝者を決定する事になった。他の激戦州―ウィンスコンシ州(同10人)、ネバダ州(同6人)、アリゾナ州(11人)、ジョージア州(同16人)―での法廷闘争の行方は、依然、微妙な情勢にある。

澁谷 司(アジア太平洋交流学会会長)

【私の論評】必ずしも大統領選で、トランプ氏不利とは言えない状況になってきた(゚д゚)!

澁谷 司氏

やっと Yahooニュース にこの分野の情報が掲載されました。すでに多くのネット放送局が報道していて感度の高い多くの人には周知の情報が発信されました。この記事を書いた澁谷司氏は現代支那学、安全保障専門の学者です。

澁谷 司(しぶや つかさ、1953年 - )氏は、アジア太平洋交流学会会長。元 拓殖大学 海外事情研究所 附属華僑研究センター長、元拓殖大学海外事情研究所教授です。

専門は、現代中国政治、現代台湾政治、東アジア国際関係論[。中国語が堪能で、現代中国の情報を駆使して、多数のメディアで中国共産党の崩壊への過程を論評している。

澁谷氏といえば、中国分析では定評があり、このブログでも澁谷氏の中国に関する論評を何度か取り上げたことがあります。

その澁谷氏が、以上のような文章を公にしているわけですから、確かな筋から様々な情報を得ての上でこのような記事を書いているのでしょう。私自身はこれを全くの妄想として、否定することは到底できません。

"当確"のはずのバイデン前副大統領側の不正選挙疑惑が、払拭できていません。わかりやすい例をあげると、バイデン候補自身は大勝したにもかかわらず、なぜか上下両院の議会選挙では、民主党候補が振るいませんでした。

一般的に、大統領選挙で勝利した候補の党が、議会選挙でも票を伸ばします。過去はほとんどがそうでした。ここで、民主党が躍進していれば、私自身も米国大統領選挙で今だに抱いている消化不良のような状況は払拭されていたかもしれません。

11月24日時点で、トランプ大統領側が一部の激戦州で選挙不正の訴えを起こしているため正確には、未だ大統領選挙は終わっていないのです。

それにもかかわらず、なぜバイデン陣営は政権移譲を急かすのでしょうか。無論、政権移行がスムーズに行われるべきではあります。ただし、大掛かりな不正選挙がない場合に限るのはいうまでもありません。

経営コンサルタント・鈴木貴博氏の「米大統領選でやはり『不正』があったかもしれない、ちょっとした状況証拠」(ダイヤモンド・オンライン)というコラムでは、鈴木氏は、1938年に米物理学者のフランク・ベンフォードが提唱した「ベンフォードの法則」を使って、大統領選挙の結果が不自然だと指摘しています。これに関しては、ここでは詳細は説明しませんが、興味のある方は、是非ご覧になってください。こうした不自然さもあります。

そもそも、バイデン氏、8000万票獲得した初の候補者になったということ自体が俄に新しじらません。

今回の大統領選挙では、ドミニオン社製の投票集計マシンが、全米28州で使用されました。ドミニオン社はカナダ発の投票機器製造および集計ソフトウェア開発企業ですが、そのソフトはスマートマティック製のものを使用しています。このソフトウェアは、ベネズエラの指導者が選挙の際、投票集計を操作し、権力を保持するために開発されたと言われています。

ドミニオン社製の投票集計マシン

なお、スマートマティック社会長ピーター・ネフェンジャー氏は、バイデン政権移行チームのメンバーとなっています。

トランプ大統領の顧問弁護士、ルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長によれば、2020年1月、ドミニオン社のジョン・プロスCEO(ナンシー・ペロシ米下院議長の元側近)は米議会の公聴会で、同社が製造する投票機は、中国製のLED液晶ディスプレイ、チップコンデンサ、可変抵抗器などの部品を使っていると証言したといいます。このプロス証言で、ドミニオン社が中国と繋がっていることが明らかになりました。

おそらく、中国共産党は、バイデン当選を渇望しているのではないでしょうか。なぜなら、習近平政権は、対中強硬策をとるトランプ大統領を最大の脅威と捉えているはずだからです。そのため、北京政府が米民主党と組んで、トランプ降ろしを画策したとしても不思議ではないです。

バイデン候補には認知症の疑念が生じています。選挙直前(10月24日)、同候補が「私たちはアメリカ政治史上最も広範囲で包括的な"不正投票組織"を作り上げた」と口を滑らせました。実に、"意味深長"な発言です。

上記を含むさまざまな状況証拠と合わせれば、「バイデン候補が認知症のため、思わず"真実"を暴露した」と勘ぐりたくもなります。

もしそれが真実であり、トランプ大統領が再選すれば、民主党も中国も不正選挙を暴かれて窮地に陥ることになります。そこでバイデン候補は、不正が白日の下に晒されないうちに政権移譲を完了しなければならないのでしょう。

さもないと、大統領選挙での大規模な不正行為という前代未聞の"犯罪"が明らかになってしまいます。だからこそ、バイデン候補は、盛んにトランプ大統領に政権移譲を迫っていたのではないでしょうか。

今回の大統領選を巡る不正疑惑を巡り、既にトランプ陣営と軍法弁護士のシドニー・パウエル氏による訴訟は本格化してきています。当初は門前払いのように敗訴ばかりだと言われていたのですが、最近は受理されるケースもあり、かなり通常の裁判になってきています。

ジョージア、アリゾナ、ウィスコンシンの3州では、トランプ陣営がどう少なく見積もっても確実と言える不正投票数が、現在のバイデン候補のリード数を上回るまでになりました。こうした流れは、必ずしもトランプ大統領に不利と言い切れない状況だと言えます。

米司法省パー長官

同時に、選挙不正について宣誓供述をした証言者が200人を超す中で、これまでは憶測としか言われなかった事実も表面化してきました。司法省のバー長官も、現段階では大統領選挙の結果を変えるような情報を米中央情報局(CIA)も米連邦捜査局(FBI)も持っていないと発言しのですが、後にFBIには新たな情報提供があったことも認めています(バー長官の発言段階では未確認)。

仮に時間的な面においても最高裁判決を仰ぐことが可能となるならば、どんな事態となるかは徐々にわからなくなりつつあります。それが、足元の状況です。

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2020年10月8日木曜日

メルケルも熱意を示さぬドイツの脱中国依存政策―【私の論評】名相の誉れが高かったメルケル首相の最大の置き土産が、ドイツの黄昏になりかねない(゚д゚)!

メルケルも熱意を示さぬドイツの脱中国依存政策

岡崎研究所

 9月2日、ドイツ政府は「アジア太平洋ガイドライン」を採択した。それによれば、今後の国際秩序をアジア太平洋の諸国とともに形作るべく、ドイツをより幅広く位置づけることを目指したいという。それには、関係を多様化して、ドイツの最も重要な貿易パートナーである中国への依存を低めることも含む。そういうわけで、一部報道では、「ドイツのインド太平洋戦略」が採択されたと持ち上げられているが、いくつかの意味で留保が必要かもしれない。まず、これは「戦略」ではなく、あくまで「ガイドライン」である。さらに、一応は閣議決定されたとは言え、あくまで外務省がまとめたガイドラインであり、多分に社民党(SPD)所属のハイコ・マース外相のアジェンダであるからだ。



 確かにドイツは、英仏がインド太平洋へのコミットメントを急速に深めつつあるのを見て、多少の焦りもあり、ここ数年急に「インド太平洋」概念に関心を示し始めた。長らくアジアの中でも中国、それもドイツ車の輸出市場としての中国にしか関心がなかったのだが、米中関係の悪化もあり、また東欧やバルカン、南欧などに中国が進出してきたことへの警戒感もあり、日本のインド太平洋概念に、少し関心を示し始めていた。

 中でもハイコ・マース外相は、昨年、一昨年と連続して訪日しており、2018年7月の訪日の際は、政策研究大学院大学で、「日独関係および変化する世界秩序におけるアジアの役割」と題して講演を行った。
(https://japan.diplo.de/ja-ja/themen/politik/-/2121328) 

 マース外相は、以前から日独が協調して世界の多国間主義、自由主義、ルールに基づく国際社会を守って行くべきであるという持論であり、今回の「ガイドライン」にもその考えが色濃く出ている。重視する原則として、多国間主義、ルールに基づく秩序、SDGs、人権、包括性、現地目線のパートナーシップなどがあげられている。

 もともとドイツは日本同様、安全保障政策概念を広く定義する国であり、今回も平和と安全保障をあげてはいるものの、アプローチは経済から文化まで含む包括的アプローチであり、取るべきイニシアチブも、環境や経済発展を重視したものが多い。

 ドイツは来年9月に総選挙が行われることになっており、すでに事実上選挙戦入りしている。今回のマース外相のイニシアチブも、価値観を前面に押し出し、中国との距離を相対化しようという点において、メルケル政権のこれまでの外交と少し距離を置こうとしている。この点は評価されるべきことであり、日本としても歓迎できる内容なのだが、問題はこれに対してメルケル首相がそれほど熱意を示していない点である。そのため、ガイドラインには具体的目標は余り盛り込まれていない。むしろこれは、来年の選挙に向けて、CDU(ブログ管理人注:ドイツキリスト教民主同盟)の経済重視の対中政策に対して、SPD(ブログ管理人注:ドイツ社会民主党)はより価値観重視の対中政策基軸を打ち出した、とアピールするための伏線とも見ることができる。したがって、今回の「ガイドライン」をもって、ドイツがアジア太平洋政策において急速に舵を切ったと見るのは、時期尚早のように思われる。

【私の論評】名相の誉れが高かったメルケル首相の最大の置き土産が、ドイツの黄昏になりかねない(゚д゚)!

ドイツの政党などに詳しくない方のために、以下に若干の説明をさせていただきます。

CDUは、2005年11月からはアンゲラ・メルケル党首が連邦首相となって以来、政権与党となっています。このキリスト教民主同盟と社会民主党(SPD)がドイツにおける二大政党です。

連邦議会では、バイエルン州のみを地盤とするキリスト教社会同盟(CSU)とともに統一会派(CDU/CSU)を組み、ドイツ社会民主党(SPD)とともに、議会内で二大勢力をなしています。なお、CDUはバイエルン州では活動していないため、CSUとCDUが競合することもなく、実質的にはCSUはCDUのバイエルン支部となっています。

さて、2016年に中国はドイツにとって最大の貿易相手国となりました。それ以降メルケル首相は公の場で、「中国はドイツにとって一番大切な国」と明言しています。つまりメルケル氏は政治信条だけで媚中なのではなく経済的にも中国を重視せざるを得ない立場にあるということです。

ちなみに前年に最大の貿易相手国だった米国は3位に転落、フランスは前年に続き2位でした。

ドイツにとっての米国の経済的重要性は低下しているのに、上得意である中国をトランプ氏(米国)が攻撃しているというのが、メルケル氏の本音でしょう。両者が犬猿の仲であるのは、政治信条の違いだけではなく経済的利害の対立も大きく影響しているようです。

象徴的なのはドイツ産業の中心とも言える自動車産業の状況です。

例えば、フォルクスワーゲンの2019年の中国販売は約423万台。全世界販売台数約1097万台(顧客ベース)のうち40%近くを占めます。 トヨタは米国依存度が高いと言われますが、2019年の販売台数約1074万台のうち米国市場は約238万台であり、22%ほどにしか過ぎません。

ちなみに、ワーゲンの米国市場での販売台数は65万台程度しかありません。また、トヨタの中国市場での販売台数は162万台(約15%)と決して少なくはないですが、ワーゲンの3分の1を少し上回った程度です。

また、中国との結びつきが強かったこと以上に構造的な問題をドイツは抱えています。それは依然として国内が輸出拠点としてのパワーを持ってしまっていることです。ドイツの輸出依存度(輸出÷実質GDP)は40%弱と日本の20%弱に比較してかなり高いです。ちなみに米国は数パーセントに過ぎません。


韓国もこうした傾向が強いですが、米国や日本のように、輸出依存度が低いということは、内需が大きいということです。これを国際競争力がないとみるのは間違いです。そうではなくて、国際環境の悪化しても影響が少ないということです。日本では、なぜか日本は輸出立国であり、輸出に大きく頼っていると信じて疑わない人がいるようですが、それは間違いです。

世界輸出に占めるドイツの存在感は中国の台頭と共に日本が小さくなっていたことに比べると、しっかりと維持されています。これは日本が対中依存を弱めたということであり、逆にドイツは対中依存を高めたということです。

コロナ禍になれば、輸出依存度が低ければ、海外の影響を被ることは少ないです。日本は、さらに対中依存度を低めようとして、中国から撤退する企業に対して補助金を提供することを実施しています。

一方ドイツのアンゲラ・メルケル首相は2005年11月に就任して以降、4期約15年間にわたって政権を担ってきました。しかし17年の総選挙や翌18年の地方選で敗北を重ねたことで、21年の任期をもって政界を引退する意向を示し、与党キリスト教民主同盟(CDU)の党首を辞任しました。

このようにメルケル政権は着実にレームダック化してきました。さらに悪いことにメルケル首相に代わってCDU党首に就任し、事実上の後継候補と目されてきたアンネグレート・クランプ=カレンバウアー(AKK)国防相が2月10日に党首を辞任する考えを示したことで、メルケル首相後のドイツ政治に対する不透明感が強まる事態となりました。

メルケル首相は、自らの求心力の低下を受けて党首を辞任し、そのポストを事実上の後継者に禅譲することで、権力のスムーズな移行を図ろうとしたのです。しかしそうしたメルケル首相の期待を、カレンバウアー党首は裏切ってしまったことになります。

カレンバウアー党首にとって致命的だったのが、19年5月の欧州議会選後の発言です。欧州議会選で与党CDUは連立を組む最大野党で中道左派の社会民主党(SPD)とともに議席を大きく減らしました。その際にカレンバウアー党首は、選挙期間中にオンラインメディアに対する規制を設ける必要性について言及しました。

一部オンラインメディアのインフルエンサーによる扇動的な政治活動に対する警鐘の意味を込めたカレンバウアー党首の発言は、言論の自由を阻害するものとして多くの有権者がこれに反発する事態を招きました。カレンバウアー党首では次期21年の総選挙は戦えないという機運が、CDU内に高まることになりましたた。

結局のところ、カレンバウアー党首はドイツを率いるだけの能力を有していません。メルケル首相をはじめとするCDU指導部がそう判断したことが今回の辞任劇につながりました。カレンバウアー党首はしばらくその職にとどまる見込みですが、ポストメルケルのレースは振り出しへ戻ったことになります。

アンネグレート・クランプ=カレンバウアー(左)とメルケル(右)


新党首の候補としてはラシェット副党首のほか、メルツ元院内総務、シュパーン保健相などの名前が挙がっています。とはいえどの候補もCDUが単独与党に返り咲くよう能力を持っているとは言い難く、2021年10月までに予定される次期総選挙では、ドイツ政治の多極化が進むものと考えられます。

ドイツ経済は今、2つの大きな課題を抱えています。1つが上でも解説したように、過度に輸出に依存した経済モデルを是正しなければならないという点です。メルケル政権下でドイツは、特に中国への輸出依存度を高めましたが、中国経済の構造的な成長鈍化を受け、このモデルは徐々に立ち行かなくなってきています。さらに、足元では新型コロナウイルス騒動の悪影響も加わりました。

もう1つが、東西ドイツ間に存在する格差問題への対応です。今年10月で東西ドイツ統一から30年が経ちますが、東西間には引き続き3割程度の所得格差があり、雇用格差もあります。そうした格差がメルケル政権下であまり改善しなかったことが、旧東独地域でAfDが台頭する事態につながっていることは紛れもない事実です。

この2つの課題のほかに、構造的な問題もあります。長らく、ドイツはEUあるいは世界経済の優等生だと言われてきました。しかし実のところドイツ経済の好調さは、第1に統一通貨ユーロを採用したことにより「為替調整」がなくなったことによるものです。

そうして、第2に中国市場へのシフトという危うい「一本足打法」に頼ったことによるものです。

これは、相当 いびつなものであり、その化けの皮がはがれてきたように見えます。もちろん、ドイツ銀行に代表されるようにリーマンショックの負の遺産を先送りして、ほとんど解決していないこともドイツ経済のアキレス腱です。

「為替調整」に関しては日本では聞きなれない言葉かもしないですが、要するに、ユーロの場合は、ドイツと他の加盟国の間で、ドルと円の間のような為替レートの変動によって黒字国の輸出額が調整されることがないから、ドイツが独り勝ちを続けられるということです。

しかし、ドイツが独り勝ちを続けても、他の加盟国が貿易赤字を垂れ流していれば、全体としてユーロの価値が下がりますから、ドイツの対EU貿易黒字は絵に描いた餅に過ぎないのです。

この問題点をトランプ大統領も指摘していたのですが、前述のように2016年に最大の貿易相手が中国となったことで「EUで稼いでいるわけではありませんよ!」とメルケル氏が言い返すことができるようになったわけです。

しかし、「中国シフト」は「東西ドイツ統一」と同じくらい愚かな判断だったかもしれないことは、今の世界情勢がはっきりと示しています。

これらの大きな課題を克服するためには、強いリーダーシップの発揮゛望まれます。しかし政治が多極化しつつある現在のドイツで、そうしたリーダーが生まれる展望は描き難いです。政治の多極化と表現すれば聞こえはいいですが、それは要するに、ドイツが抱える課題の改善を遠のかせる「決められない政治」の誕生に他ならないです。

長期政権に安住し適切な後継候補を育まず、ドイツ経済の構造的な課題にも切り込めなかったCDU指導部の罪は決して軽くないです。少なくとも先の任期の頃までは名相の誉れが高かったメルケル首相の最大の置き土産がドイツの黄昏(たそがれ)であるとしたら、これほど皮肉なものはないと言えます。そうなれば、メルケルの名相の誉は地に落ち、愚相と呼ばれることになるかもしれません。

アンゲラ・メルケル独首相


これに比較すると、日本は与党内に二階派などの親中・媚中派をかかえて、マスコミのほとんどは親中派ですが、そもそも輸出依存度が少なく、その少ないなかで中国の占める割合はさらに低く、さらには前安倍首相は、安全保障のダイヤモンド構想を提唱し、現在の日米のインド太平洋戦略の原型を提唱し、それに沿って安倍元首相が外交を展開したという実績もあります。

中国が台頭して、米国による世界秩序に対抗するようになった現在、従来みられた米国の日本に対する日本から理不尽ともみえる要請や過大な要求などはなくなり、それはすべて中国に振り向けられるようになりました。従来の米国の反日は、すべて反中に振り向けられたような状況です。

しかし、これは考えてみれば、当然といえば、当然です。

日本は、あくまで米国による世界秩序の中で、ルールを守った上で発展してきたのであって、中国やドイツとは根本的に異なります。

中国がこけるとドイツもこけますが、日本はそのようなことにはなりません。それどころか、日本がさらに安保で世界に貢献すれば、中国・ドイツがこけた後の新たな世界秩序において、米国とならんで世界でリーダーシップを発揮することになるかもしれません。

そのような傾向はすでにみえています。その格好の事例が、先日の日米豪印外相会議の日本での開催です。かつて、日本はドイツやイタリアと同盟をくんでいたことがありますが、その時には、このような会談はありませんでした。

合同幕僚長会議などを設置し緊密に連絡を取り合っていた連合国に対し、枢軸国では戦略に対する協議はほとんど行われませんでした。対ソ宣戦、対米宣戦の事前通知も行われず、一枚岩の同盟とは言えませんでした。

独伊は別にして、日本とドイツ・イタリアは特に戦略を共有するわけでもなく、バラバラに戦っていました。それどころか、ドイツは日独伊同盟が締結された後でさえ、当時の中華民国に対する軍事支援をやめませんでした。

ましてや今回のようにコロナ禍のようなパンデミック最中であってさえ、4カ国外相会談のような会談が開催される、それも日本で開催されるというようなことはありませんてした。

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2020年9月30日水曜日

菅首相の徹底した“情報収集術” 高い処理能力と速い政治決断、官僚はこれまでにない緊張感 ―【私の論評】菅総理の卓越した情報収集力に、マスコミも大緊張を強いられることになる(゚д゚)!

 菅首相の徹底した“情報収集術” 高い処理能力と速い政治決断、官僚はこれまでにない緊張感 

高橋洋一 日本の解き方

9月26日 福島を訪問した菅総理(左)

 菅義偉首相が連日、有識者と会食していることが話題になっている。菅氏はどのように情報収集し、どのように政治判断につなげるのだろうか。

 仁徳天皇の逸話にあるが、高台に登って国を見渡し、民家のかまどに煙が立っていなければ、民が貧しいと判断した。そして、3年間の徴税をやめた。

 政治家の仕事も、国民の声を拾って、政策として実現することだ。

 情報収集のやり方は政治家それぞれだが、菅首相は、役所の統計だけではなく、自ら集めた生の声を重視している。そして政治家としてこの情報収集にかなりの時間を割いている。その際、聞き上手でもっぱら聞き役に徹しているようだ。さらに、複数の異なるタイプの情報ソースを持ち、相互チェックもしているようだ。

 ある役人から聞いたことだが、資料を渡して、歩きながら説明しても、菅首相の目はしっかりと資料を見ており、しかも説明より先を見て、説明者が追い付かなかったという。

 資料全体を一瞬で読み込み、理解する人は、いわゆる仕事のできる人によく見かけるタイプで、情報処理能力の極めて高い人だ。

 こういう人は、一度聞いた説明を忘れない。そして、仕事の進捗(しんちょく)プランができているので、その後チェックして、適切に対応できているかを確認し、状況に応じて、政治決断をする。どんな職場にもいるが、仕事のできる幹部そのものだ。


 政治決断の結果は、それまで作業に当たっていた人の思惑とは異なっているかもしれない。もっと時間をかけて慎重に検討したいと思っていても、幹部の要求はもっと早くやるというものかもしれない。

 政治決断の結果、一定の成果を得るためには、担当する人を変えることもあるかもしれない。それは民間企業でもよくある話だ。そういう意味では、これまでの政治家にはない仕事への厳しさがあるのではないか。

 筆者のこれまでの印象では、菅首相はいろいろと話は聞くが、決断は速いと思う。話の途中でも決断し、すぐに指示を出すことも珍しくない。

 しかも、菅首相は官房長官を歴代最高の7年以上も務めた。首相に上がる情報は原則官房長官にも上がり、その過程で霞が関幹部官僚の大半の能力を把握し、頭の中に整理しているはずだ。

 官僚にとって、霞が関の人的情報を含めて各種の情報収集にたけ、政治決断の早い首相は、頼りがいもあるが、思い通りにならないという怖い側面もあるだろう。

 これまでの首相は、みこしに担がれ、比較的官僚には優しく、言いなりになる人が多かった。しかし、菅首相はたたき上げであり、仕事の成果を求め、決して官僚の言いなりにならないし、卓越した情報収集能力がある。

 官僚の間にはこれまでにない緊張感があるのではないか。その緊張感が官僚の良い仕事につながれば何よりだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】菅総理の卓越した情報収集力に、マスコミも大緊張を強いられることになる(゚д゚)!

ドラッカー氏

上の記事で、高橋洋一氏は、徹底した“情報収集術”と、高い処理能力と速い政治決断について述べています。情報について、経営学の大家ドラッカー氏は以下のように主張しています。
データそのものは情報ではない。情報の原石にすぎない。原石にすぎないデータが情報となるには、目的のために体系化され、具体的な仕事に向けられ、意思決定に使われなければならない。(『未来への決断』)
情報の専門家とは道具をつくる者です。ところが道具として、いかなる情報を、何のために、いかにして使うかを決めるのは、ユーザーです。ユーザー自身が、情報に精通しなければならないです。

ほとんどの政治家が、情報が自らの意思決定に対して持つ意味を考えていないようです。したがって、情報をいかに入手するか、いかに検証するか、既存の情報システムといかに統合するかが、今日最大の問題です。

かつては、とにかく情報を持つことが勝利への道でしたた。軍隊でも企業でも同じでしたた。ところが、情報革命により、情報が氾濫しました。今では、誰でもクリックするだけで、世界中のあらゆることについて情報を得られます。

その結果、情報力とは、情報を入手する力ではなく、情報を解釈して利用する力を意味することになりました。情報のユーザー自身が、情報の専門家にならなければならなくなりました。情報もまた、ほかのあらゆるものと同じく、使われて初めて意味を持ちます。
コンピュータを扱う人たちは、いまだにより速いスピードとより大きなメモリーに関心をもつ。しかし、問題はもはや技術的なものではない。いかにデータを利用可能な情報に転化するかである(『未来への決断』)
データに詳しくなることと、情報に精通することは違う、とドラッカーは主張しているのです。そうして、それを見分けるのに重要なのは、次の2つの問いに答えられるようになることだとしています。

1つは、企業経営者として(菅総理なら総理として)いかなる情報を必要とするか、もう1つは、自分個人としていかなる情報を必要とするか、で。

そうして、これらの問いに的確に答えるには、次の3つの点を真剣に考え抜かなければならない、としています。

第1点は、自分の職務とその本質は一体、何なのか、そして本来どうあるべきか。
第2点は、自分が寄与貢献できるのは何であり、また何であるべきか。
第3点は、自分の関わっている組織の基礎(ファンダメンタルズ)をつくる事柄は一体、何か。

以上の3点に関する、それぞれ異なった型の情報が必要であり、それらを別個に、独自のコンセプトでもってバックアップしておかなければならないのです。

それには外部の情報、内部の情報、そして組織を超えた情報、この3つを押さえることが重要になる、とドラッカーは言います。

さらには、組織としての成功も、自分個人としての成功も、すべてこの3問に的確に答え得るかにかかっている、と喝破します。

単なるデータ」に詳しいことから、「本当に必要な情報」に詳しくなるためには、上記の3つの問いに十分答えられるようにすることが必要不可欠であり、21世紀のマネジメントの真のあり方だとして、ドラッカーは重視しています。

菅氏は、このようなデータと情報の違いを長い間の経験から、熟知しているのだと思います。だからこそ、菅首相は、役所の統計だけではなく、自ら集めた生の声を重視しているのでしょう。

総理になる前から、このようなことを垣間見ることができた事例があります。

菅官房長官(当時)は昨年5月9日から12日の日程でアメリカ・ワシントンとニューヨークを訪問しました。危機管理を担う官房長官の外遊は“異例“で、歴代の官房長官を見ても平成以降は米国本土への外遊はなく、ホワイトハウスにまで乗り込んだ菅長官訪米は、まさに異例中の異例でした。

菅長官が会談した相手はペンス副大統領、ポンペオ国務長官、次期国防長官に指名されていたシャナハン国防長官代行といったトランプ政権のまさに中枢の面々で、北朝鮮情勢や拉致問題などについて意見交換を行いました。

菅官房長官(当時)とペンス副大統領(昨年5月10日 ワシントンDC)

この中で特筆したいのは、国務長官や国防長官といった閣僚だけではなく、政権ナンバー2のペンス副大統領が菅長官をホワイトハウスに迎え入れ会談したことです。ペンス副大統領が面会をする相手は各国の首脳級に限られ、閣僚クラスの面会はなかなか実現しないといわれていました。

菅氏が意識していたかは別にして、副大統領はポスト安倍を意識していたはずです。菅長官は、ペンス副大統領ら会談相手と「次もまた会おう」と約束したといいます。早速、6月にシャナハン国防長官代行が来日する際には表敬訪問を受けました。

元々、菅氏本人と、側近には米国に太いパイプ持つとされています。このパイプと菅氏自身の情報分析力が、このときにも生かされたと思います。

菅総理は、高い情報収集力を活かし、安倍前総理大臣にも匹敵するような、それでいて菅氏独自の外交を展開することも期待できます。

それにしても、日本のマスコミは相変わらず、どうしようもありません。安倍前総理が、現役で総理大臣をしていたときには、安倍外交を無視して(最悪は安全保障のダイヤモンド構想を報道しなかったので日本人で知らない人が未だに多い)ほとんど報道しなかったのですが、総理が菅氏に変わると、途端に安倍外交は良かったが、菅外交は心もとないなどと批判しています。

そのマスコミは、菅政権誕生の直前には、安倍政権の転換を求める報道をしていました。しかし、これはおかしなことです。安倍総理は、選挙で負けたわけではありません。あくまで病気で退いたのです。であれば、後継政権は、まずは安倍政権の政策を踏襲し発展させていくのが筋です。

今後選挙で、菅総理が安倍政権とは異なる政策をかがげて、大勝利したというならばともかく、マスコミが安倍政治の転換を求めるのは筋違いです。それでは、安倍政権を選挙という民主的手続きで、継続させた民意にそむくことになります。

特に、マスコミの情報収集力は格段に低いです。それは、トランプ大統領の登場を予測できなかったことでもはっきりしました。マスコミはとにかく「時の権力と対峙する」のが自分の仕事であると思っているようで、データを利用可能な情報に転化することができず、反権力を是とする、些末なデータばかり収集し、それに基づき報道するだけで、誰にとっても役にたたない存在になってしまいました。今のマスコミの報道は、野党にとってすら役にたたないと思います。

そのようなことをしているうちに、情報収集に長けた菅総理には、マスコミにとってこれまでにない緊張感を強いられることになりそうです。それはなぜかといえば、菅総理が官房長官だったときの、記者会見にもみられるように、マスコミは自分でも気づかないうちに、かなり低能力化していて、くだらない質問をいなすことが、度々ありましたが今度は官邸VSマスコミという構図に変わるからです。


その緊張感がマスコミの良い仕事につながれば何よりですが、まずは無理でしょう。現在のマスコミの記者の能力は地に落ちました。私は、マスコミは左よりというよりは、下(特に能力)なのだと思っています。これからも、マスコミは見当違いの愚かな報道を繰り返し、一部の老人には受け入れられるでしょうが、やはり情報収集に長けた大学生、高校生、中学生などの若者に馬鹿にされ、新聞は購読されなくなり、テレビもみられなくなり、ますます衰退していくことでしょう。

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