2021年5月24日月曜日

【日本の選択】日本の“虚妄”中国との「政冷経熱」から脱却せよ! 人権問題で妥協しない米のユニクロ輸入禁止、欧州も決然とした姿勢示す―【私の論評】中国から輸入した製品や商品を使う人は、中国のブラック体質を応援し国内の労働者を脅かすことに(゚д゚)!

【日本の選択】日本の“虚妄”中国との「政冷経熱」から脱却せよ! 人権問題で妥協しない米のユニクロ輸入禁止、欧州も決然とした姿勢示す

菅総理

 欧州連合(EU)が、中国に決然とした姿勢を示した。中国当局によるウイグル族への人権弾圧をめぐる制裁合戦が続くなか、欧州議会は20日、EUと中国が昨年12月に合意した投資協定について、批准手続きを凍結する決議を圧倒的多数で採択したのだ。ジョー・バイデン米政権とともに、「人権問題では譲歩しない」という覚悟を固めたといえる。英国での先進7カ国(G7)首脳会談が来月に迫るなか、今後、アジアの自由主義大国である日本の姿勢が問われる。新進気鋭の政治学者、岩田温氏は、日本の政財官界に残る「政冷経熱」の終焉(しゅうえん)に迫った。


 「政冷経熱」との造語がもてはやされた時期があった。日本と中国は政治的には冷めた関係だが、経済的には熱い関係にあるとの意味で用いられてきた。「政治的には問題を抱えた2カ国だが、経済的には極めて友好的な関係を維持したい」という日本人の意識を端的に表した言葉だったといってよい。

 だが近年、「政冷経熱」なる言葉の空疎さが明らかになりつつある。

 ドナルド・トランプ前米政権の末期、マイク・ポンペオ国務長官(当時)は、習近平国家主席率いる中国における新疆ウイグル自治区の人権状況を「ジェノサイド」と厳しく非難した。「ジェノサイド」とは20世紀に、ポーランド系ユダヤ人の弁護士、ラファエル・レムキンが「占領されたヨーロッパの枢軸国支配」において提唱した概念で、「一民族の抹殺」を意味する非常に強い言葉だ。

 バイデン政権の、アントニー・ブリンケン国務長官も、こうした基本的な考え方を継承することを明らかにしていた。人権問題に関して中国に強い姿勢で臨むとの態度の表れだ。

 沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題があろうとも、深刻な人権弾圧の問題があろうとも、「政治は政治であり、基本的に経済とは関わりのない問題である」との立場を取ってきた。

習近平

 しかし、今回の米国によるユニクロ製品の輸入禁止措置で、「人権問題では中国と妥協しない」という米国の姿勢が明らかとなった。中国国内の人権問題という政治的問題が、日本企業の経済的問題につながったのだ。EU議会も「対中投資協定の批准凍結」という姿勢を示した。政治と経済とは無関係ではあり得ないことが示されたといっても過言ではない。

 あえて言おう。「政冷経熱」は日本国民の願望からなる虚妄に過ぎない。国家が存在する限り、政治と切り離された経済など存在しない。日本国民は目を覚ますべきときだ。 =おわり

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在、大和大学政治経済学部准教授。専攻は政治哲学。著書・共著に『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『なぜ彼らは北朝鮮「チュチェ思想」に従うのか』(扶桑社)など。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。

【私の論評】中国から輸入した製品や商品を使う人は、中国のブラック体質を応援し国内の労働者を脅かすことに(゚д゚)!

私は、このブログの中で、先進国が先進国になれた所以を民主化、政治と経済の分離、法治国家化によるものと主張してきました。

この3つが整わない限り、いかなる国でも、星の数ほどの中間層がでてきて、それらが自由に社会経済活動を行い、あらゆる地域、あらゆる階層においてイノベーション(技術革新ではなく社会革新)を行うことができず、結局経済発展しないということを述べてきました。

そうして、それは中進国の罠という形で、表面化します。中国も含めた発展途上国などの政府が経済に力を入れて、政府主導で経済を伸ばすこともできるのですが、ある一定限度を超えるとそれ以上は発展できなくなるのです。


一定限度とは国民の一人あたり所得、一人あたりGDPが100万円前後になると、そこから経済が伸びなくなるのです。これが、中進国の罠です。

現在の中国の一人あたりのGDPは100万円前後になっていますから、今後過去のように経済成長することはありません。さらに、以前このブログで指摘したように、中国は国際金融のトリレンマにはまり込み、独立した金融政策ができない状態になっています。たとえば、失業が増えても、有効な金融政策を実行できないのです。これでは、もう先は見えています。中国は今後経済発展しません。

今日先進国といわれる国々は、過去に民主化、政治と経済の分離、法治国家化をこれをすすめてきたからこそ、先進国になったのです。この文脈における「政治と経済」の分離は、いずれの先進国においても実現されています。

無論、「政治と経済」が完全に分離しているということはありませんが、それにしても政治が直接経済に介入するなどのことは、そもそも法律でも禁じられています。たとえば、株式市場などに政府が直接介入することなどは法律で禁じられています。ただし、規制という形などで、政治が経済に関与するということはあります。日本はどちらかといえば、規制が多い方です。

しかし、それにしても、中国のように政治と経済が不可分であり、政治が経済にたびたび直接介入するなどということはありません。政府が市場に直接介入することがあれば、自由競争が阻害され、市場が毀損されることになります。

しかし、中国においては、民主化も政治と経済の分離も法治国家化も行われておらず、政府は経済に直接介入します。

このような国とは元々「政冷経熱」などありえません。中国の経済は、富裕層が貧困層にたかって搾取して成り立っているといっても過言ではありません。日本でいえば、国そのものがブラック体質なのです。


その中国の製品や商品を輸入すれば、ブラック体質も一緒に輸入することになります。中国がブラック体質でただか、タダ同然の安い賃金で製造したものを海外に輸出することにより、輸入した国はブラック体質も輸入することになり、それだけではなく、輸入した国の労働者を脅かすことになります。

中国から輸入した製品や商品を使う人は、知らずに、中国のブラック体質を応援することになるだげではなく、国内の労働者を脅かすことになのです。

このようなことに「ノー」を突きつけたのが、トランプ政権であり、米国議会であり、EUなのです。日本も「政冷経熱」などという妄想等かなぐり捨てて、中国の人権問題と対峙すべきなのです。

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2021年5月23日日曜日

水素エンジン車レース完走 世界初、量産に向けトヨタ―【私の論評】昨年は第二次世界大戦後、最もCO2排出量が減ったが夏は暑く、世界中で異常気象が発生していた(゚д゚)!

水素エンジン車レース完走 世界初、量産に向けトヨタ

24時間耐久レースで水素を充填(じゅうてん)するトヨタ自動車のエンジン車

 トヨタ自動車が開発中の水素を燃やして走るエンジン車が24時間耐久レースに挑戦し、23日完走した。トヨタによると、水素のみを燃料にしてレースを走ったのは世界初。二酸化炭素(CO2)を排出しない新たな車の量産に向けてスタートを切った。

 参戦したのは静岡県小山町の「富士スピードウェイ」で22日にスタートした「富士SUPER TEC 24時間レース」。カローラスポーツを改造した水素エンジン車を、トヨタの豊田章男社長がオーナーとドライバーを務めるチームが走らせた。福島県浪江町の太陽光発電で製造した水素を使用した。

 約4・5キロのコースを358周し、1周のタイムで通常のエンジン車を上回る場面もあった。自らもハンドルを握った豊田氏はレース後の記者会見で「未来の社会に向けて選択肢を広げることの第一歩を示すことができた」と強調した。

【私の論評】昨年は第二次世界大戦後、最もCO2排出量が減ったが、夏は暑く世界中で異常気象が発生していた(゚д゚)!

水素といえば燃料電池車(FCV)が想起されますが、いま話題になっているのは水素を燃料として使う水素エンジン車です。上の記事の24時間耐久レースで競われたのも水素エンジン車です。


ここでは、詳細は述べませんが、FCVにしても、水素エンジンにしてもまだまだ技術的ハードルが高いです。詳細は是非以下のサイトをご覧になってください。


しかし、社会全体として水素を生かそうという動きは活発になる一方です。菅内閣の描く「2050年カーボンニュートラル」では水素が重要な役割を担います。ざっくり説明すると、目指す方向性は需要の電化と電源の低炭素化です。需要の電化とは、いまはガスやガソリン、灯油などを使用場面に応じて選択しているのですが、基本は電気に置き換えるということです。

そうして、こうしたことの背景には、ある前提があります。それは、CO2等が増えることによって、地球温暖化が引き起こされるというものです。地球温暖化CO2説です。

一方新型コロナウイルスの感染症COVID-19のパンデミックに対する世界的な取り組みにより、世界の2020年の年間の二酸化炭素(CO2)排出量は第2次世界大戦以来で最も減少したことが明らかになっています。研究結果は科学ジャーナル「Earth System Science Data」に昨年12月11日に掲載されました。

この研究によると、昨年のCO2排出量は7%減少したとされています。最も大きく減少したのはフランスとイギリスで、感染の第2波に対応するための厳格な経済活動の停止が主な要因だそうです。

世界の炭素収支を報告している「グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)」によると、昨年の炭素排出量は24億トン減少したそうです。



一方で、2009年の世界的な景気後退の最中の減少量はわずか5億トン。第2次世界大戦末期の減少量は10億トン弱だったそうです。昨年と今年あたりには、温暖化に関しては、どのようなことがおこっていたのか、あるいはおこるのか、注目すべきかもしれません。とにかくCO2を減らすことが何やら、至上命題のようになっていますが、実際にCO2が減っているのですから、これが環境に良い影響を及ぼしたのか、あるいは悪い影響を及ぼしたのかを精査すべきと思います。

どちらにしても、さらにこの状況が長く続いたとしたら、どうなるのか、これから先CO2が減り続けていけばどうなるのかシミレーションすべきと思います。日本でも富嶽のようなスーパーコンピューターがあるので、このようなこともできるはずです。

とはいいながら、期間が短いので、それが可能かどうなのかまでわからないのかもしれないですが、それにしても今でもわかっていることがあります。

気象庁は昨年に昨夏を「東日本は観測史上、最も暑い夏」と認定しています。最高気温が40度に達する観測点が続出し、西日本も記録的暑さに。熱中症とみられる症状での救急搬送、死亡者が相次ぎ、2020年夏の東京五輪・パラリンピック開催に影を落としたとしています。

2020年の世界と日本の平均気温が、観測が始まった19世紀末以降、最高となる見込みであることが今年1月の気象庁の調査で分かっています。気温上昇に伴い、各地で30年に一度の規模の高温や大雨などが頻発。国内も九州で豪雨災害が発生するなどしました。

これには、地球温暖化も寄与したとみられ、2020年は新型コロナウイルスだけでなく、気象も人類に牙を向いた年として記憶されそうだとしています。一方、今年はこうした傾向がやや緩和されるとの見方もあるそうです。

今年は皆さんもご存知のように、桜の開花がかなり早まりました、これも温暖化の影響といえるのでしょうか。ワクチン接種が進んだとはいえ、4月はまだコロナの流行は深刻で、CO2もどちらかといえば、通常の年よりは排出量が少なめだったと思います。


昨年はCO2排出量が7%減少していても、気温が上昇したり、異常気象が起こっているわけですから、あまりCO2など関係ないようにも見えます。

これは、短期だからなのでしょうか、それにしても、昨年のCO2排出量が第二次世界大戦後最低だったというのですから、少なくとも短期間でCO2排出量を7%減少させても、短期間ではあまり目立った効果はみられないということはいえそうです。

そうして、科学者らはこの機会を見逃すべきではないと思います。第二次世界大戦後最大のCO2減少がどのような影響を及ぼしたのか検証すべきです。このようなことが全く日本でも、世界でもほとんど報道されていないことが、本当に不思議です。都合の悪いことでもあるのでしょうか?

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2021年5月22日土曜日

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【日本の解き方】緊急事態宣言がGDPに悪影響 先進国では日本の落ち込みは軽微だが…ワクチン接種急ぎ経済正常化を

 1~3月期の国内総生産(GDP)速報値が発表された。新型コロナ禍が始まって以来、経済への影響はどれぐらいの大きさになっているだろうか。

 1~3月期GDPの内訳を見ると、民間消費が1・4%減、住宅投資が1・1%増、設備投資が1・4%減、政府消費が1・8%減、公共投資が1・1%減、輸出が2・3%増、輸入が4・0%増だった。

 消費は昨年7~9月期が5・1%増、10~12月期が2・2%増だったが、今年1~3月期はマイナスに転じた。1月からの緊急事態宣言による影響だ。

 住宅投資は昨年7~9月期に5・7%減、10~12月期に0・1%増の後、持ち直しつつある。

 設備投資は昨年7~9月期に2・1%減、10~12月期が4・3%増。政府消費は昨年7~9月期が2・9%増、10~12月期が1・8%増。公共投資は昨年7~9月期が0・7%増、10~12月期が1・1%増だったが、それぞれ今年1~3月期にマイナスになった。

 ここで、実質GDPの実額の推移を見てみよう。マスコミでは前期比伸び率だけを報じるので、そもそもGDPがいくらなのかが分からない。

グラフはブログ管理人挿入

 2019年7~9月期の557兆円をピークに、同年10月からの消費増税で10~12月期に546兆円と減少し、20年1~3月期544兆円、4~6月期500兆円と落ち込んだ。7~9月期に526兆円、10~12月期に541兆円と反発したが、21年1~3月期に534兆円と再び落ち込んでいる。

 年度ベースでみると、20年度は525兆円で、19年度の551兆円に比べると4・7%減となり、最近ではリーマン・ショックのあった08年度の3・6%減を上回っている。

 ただし、世界と比べると、日本の落ち込みは軽微だ。先進7カ国(G7)の2020年(暦年)でみると、米国は3・5%減、英国が9・8%減、カナダが5・4%減、フランスが8・1%減、ドイツが5・0%減、イタリアが8・9%減で日本の落ち込みは少ない。失業率の低さも先進国でトップレベルだ。その理由は、財政出動したからだ。それでも、緊急事態宣言による経済自粛などで、経済の落ち込みは防げなかった。

 筆者はコロナ禍による死者と経済活動縮小による死者を合わせて極小化すべきだと主張してきた。そのためには巨額の財政支出が必要だとも言ってきた。

 後年の財政負担を気にする向きもなきにしもあらずだったので、「政府と日銀の連合軍」という表現で、政府の国債発行による財政出動とインフレ目標の範囲での日銀の国債購入を唱え、安倍晋三政権も菅義偉政権も補正予算はその趣旨で行ってきたと理解している。

 この戦略は、これまでのところ間違っていないと思う。後はワクチン接種を急ぎ、一刻も早く正常な経済活動をできるかどうかがポイントだ。

 私事であるが、筆者も接種券が届いたので自衛隊による大規模接種会場に申し込んだ。混雑しているかと思ったが案外すんなりと予約できた。2~3カ月の辛抱ではないか。 (内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今年の秋から年末にかけて、消費のマグマはかつてない程の大爆発!東京五輪はそのファンファーレに(゚д゚)!

政府と日銀との連合軍とは、経済政策としては、財政政策と金融政策の同時・一体発動を意味しており、コロナ・ショックという戦後初、戦前の大恐慌に匹敵するくらいの経済危機に対し、政府の危機感を示すものです。

政府と日銀との連合軍では、政府が大量の国債発行によって財源調達を行うのですが、その一方で、日銀がその国債の買い入れを行います。これによって政府が巨額の有効需要を創出でき、不況の下支えをします。まさに大恐慌スタイルの経済政策です。

この政策のリスクは、インフレ率が高まることです。しかし、コロナ・ショックは基本的に需要蒸発した需要ショックなので、当面はインフレというよりデフレを心配すべきときです。

しかも、日本の長期金利はひところのマイナス寄りは上昇したとはいっても、以下のように現状でもかなり低い状況にあり、たとえ政府が大量の国債を発行したとしても、調達コストは無視できうるくらいです。


こうした状況では、さすがに財務省の事務方もすぐには財政再建や増税を言い出すべきではないのですが、先日もこのブログでも述べたように、その動きがみられます。しかし、本当に今後10年以内に消費増税などしてに出れば、財務省の信頼は地に落ちるでしょう。解体論もででくるでしょう。

経済政策において、一番重要なのは、雇用です。何をさておいても、失業率が低ければ、政府の経済対策は合格といえます。以下に失業率の国際比較をあげます。

完全失業率(月次、季節調整済、男女別、15~24歳/25歳以上)


いずれの国も、若年層の失業率は高いですが、日本以外ではかなり高いです。イギリス、フランスはかなり高いです。日本も若年層は高めですが、それにしてももともとの失業率が低いので、他国と比較すると低いです。

しかし、3度目の緊急事態宣言で事業継続が難しくなっている事業者も多いです。真に支援を必要とする企業や個人に向けた効果的な手立てを講じるべきです。

失業増を防ぐための雇用調整助成金の機能拡充など万全の安全網を構築すべきですし、時短営業の要請に応じた飲食店などへの協力金の支給も円滑かつ迅速に行う必要です。実情に応じて支給額を見直す柔軟さも求めたいところです。そのためにも、補正予算を編成すべきです。財源は、無論政府・日銀連合軍によるべきです。

手厚い、そうして効果的な財政・金融政策ができれば、後は日本経済の回復は、ワクチンが鍵を握りそうです。多くの国民がワクチン接種を済ませば、控えられていた外食や旅行などの需要が一気に戻り、個人消費が大きく回復する流れになるでしょう。

米国の21年1~3月期の実質GDPは、年率換算で前期比6・4%増でした。既に1億人以上が完了するなど急激にワクチン接種が進み、経済活動も順次再開しています。一方、1月からフランスやドイツなどで変異株による感染が広がった欧州連合(EU)は1~3月期はマイナス成長でしたが、ワクチン接種が進み、4~6月期はプラスに転じるとの見方が広がっています。

英オックスフォード大の研究者らが作るデータベース「アワー・ワールド・イン・データ」によると、5月16日時点で少なくともワクチンを1回接種した人の割合は英国が54%、米国が47%。これに対し日本は約3%と圧倒的に遅れてはいるのですが、日本は元々感染者数桁違いにが少ないため、現在までのワクチン接種により、ようやく日本なみになり、今後も順調に接種が進めば、収束に向かうでしょう。

この状況をマスコミは、日本はワクチン接種が遅れていると嘆くのみですが、台湾や日本が遅れているのは、元々感染者数や死者が他国に比較すると、桁違いに少なかったからです。感染症のワクチンなどは、感染がひどいところから優先するのが当然です。

そうして、日本の場合は欧米などと比較しても、経済的な落ち込み、特に失業率が低いわけですから、接種がすすめば個人消費が爆発して、経済の回復どころか、その後の躍進も期待できます。

一方5月20日時点で医療従事者のうち新型コロナウイルスワクチンを少なくとも1回接種した人の割合は80%で、2回の接種を終えた人は48%でした。一方、高齢者で少なくとも1回接種した人は4.7%と少なく、24日からの大規模接種を進めて7月末の接種完了をめざします。

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総務省と厚生労働省が12日公表した新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け接種時期に関する調査結果によると、政府が目標としている7月末までに接種が完了すると回答した自治体は全国1741のうち1490だった。高齢者人口の84.5%に相当する。もっとも、4月までの聞き取り調査では約1000程度にとどまっており、一定の改善は確認されました。

政府は7月末までに全国の高齢者3600万人に対する接種終了を掲げています。今回の調査では、7月末まで終了可能と回答した自治体の高齢者人口は3000万人となっています。

今後、健康上の理由などからワクチン接種ができない、あるいは意図してしない高齢者を除き、高齢者の8割〜9割程度のワクチン接種が終了すれば、状況は随分変わってくるでしょう。

そうなると、オリンピックが終了する8月に入れば、誰の目にもコロナが収束する時期がみえてくるでしょう。そうして、秋から年末にかけて、いままで様々な我慢していた分が爆発して、消費が爆発的に増えるでしょう。

いつまでもこの長いトンネルが永久に続くわけではありません。コロナが収束する日は目前に迫っています。それまでは、三密を守って心穏やかに過ごしていきたいものです。

今年の秋から年末にかけて、消費は大爆発!東京五輪はそのファンファーレとなることでしょう。それに合わせて今から準備をしている人たちも多いでしょう。今年のクリスマスは、いままでいないほど賑やかで、大爆発することでしょう。



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2021年5月21日金曜日

インド太平洋に同盟国合同の「空母打撃群」を―【私の論評】中国にも米とその同盟国にとってもすでに「空母打撃群」は、政治的メッセージに過ぎなくなった(゚д゚)!

インド太平洋に同盟国合同の「空母打撃群」を

岡崎研究所

 IISS(国際戦略研究所)上級フェローのニック・チャイルズが、インド・太平洋で米国とその同盟国が相互に調整して空母打撃群の運用に当たる必要性を、4月26日付のIISSのサイトで論じている。


 米国の空母については、中国が空母キラーと呼ばれる対艦ミサイルを開発・配備したこともあって、その脆弱性が指摘されて久しいが、空母打撃群が抑止と実戦においてその厳然たる有効性を発揮する場面が多い事情に変わりはない。しかし、米国がその持てる空母打撃群(米国は11隻の原子力空母を有する)をやりくりしてインド・太平洋のプレゼンスが必要とされる海域に頻繁に展開することには無理が生じている。その主要な要因に秩序破壊的な中国の海洋進出がある。この事情に対応するために、この論説は空母を有するフランスと英国が米国と協調し、更には(限定的な形になろうが)空母とはいわずともこれに近い能力を有する米国の同盟諸国(日本、韓国、豪州)がこれに加わり、必要な時と場所に空母不在の空白が生じないよう相互に調整された形で行動することの重要性を説いている。的を射た議論と言い得よう。

 米国はタリバンに対する空爆のためにインド洋に空母打撃群を展開していたが、今また、アフガニスタンからの安全な撤退を確保するために空母「ドワイト・アイゼンハワー」を展開している。ここにも空母を取られている訳である。アフガニスタンからの全面撤退にはリスクがあるが、バイデン大統領が指摘したように、他のより重大な脅威に対抗するために必要な決断だったと思われる。

 遠からず、英国の新鋭空母「クイーン・エリザベス」が東アジアに派遣され、日本にも寄港予定であるが、この論説は以上のような同盟・友邦諸国の海軍の間の相互調整という観点からこの空母の行動に関心を寄せている。この空母の派遣にそういう意義もあるのであれば、そのことは日本でも広く認識されるべき事柄であろう。

 バイデン政権は同盟諸国と協議し協調して行動し、中国の不当な行動に対抗しようとしているが、そのことは日本も置かれた状況に相応しい負担をすべきことを意味する。改修された護衛艦「いずも」と「かが」には海洋の秩序を守る上で米国海軍と連携して果たすことの出来る限定的かも知れないが有益な役割があろう。

 なお、この論説は、中国の空母「遼寧」には台湾や南シナ海に関連する対決の場面での役割は考えにくく、より遠隔の地域への展開を想定したものだとの観測を書いているが、その根拠は必ずしも明らかではない。有事に来援する米軍の阻止など役割は有るように思われる。

【私の論評】中国にも米とその同盟国にとってもすでに「空母打撃群」は、政治的メッセージに過ぎなくなった(゚д゚)!

かつて米海軍は戦艦中心主義でしたが、ミッドウェー海戦など太平洋戦争で航空母艦が中心的役割を果たしたことから、空母中心主義に転換しました。しかしながら、米海軍を支配している空母中心主義も、いまや新たな海軍戦略への抜本的転換が迫られています。

理由の一つが、航空母艦の稼働率が劇的に低下するという危機的状況に陥りつつあるということが挙げられます。稼働率の低下の最大の原因は、海軍工廠(こうしょう)と民間造船所を含んだ米国内における造艦・メンテナンス能力の不足にあるといえます。

このような海軍関係ロジスティックス能力の低下は量的なものだけではなく、質的にも深刻であるという調査結果も数多く提示され、米国の国防上、深刻な問題となりつつあるのです。

これまで米海軍は、護衛空母と呼ばれる小型空母を含め178隻の航空母艦を運用してきました。このうち、撃沈されたものと、大破したため自ら沈めたものを含めて、戦闘で喪失したのは12隻です。うち11隻は日本海軍によって、1隻はドイツ海軍によってです。

1945年2月21日、米海兵隊による硫黄島侵攻準備の事前爆撃に従事していた米海軍護衛空母ビスマルク・シー(CVE-95)が、日本海軍第二御楯特攻隊の2機の特攻機の体当たり攻撃を受けて沈められました。ところが、それ以降75年近くにわたって米海軍は1隻の空母も喪失していません。

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ攻撃に対応して、米軍は02年に莫大な予算(およそ2億5千万ドルといわれている)を投入して大規模なウォーゲーム「Millennium Challenge 2002(以下MC-2002)」を実施しました。

これはミリタリーシミュレーション、兵棋(へいき)演習、図上演習などとも呼ばれるもので、軍事組織やシンクタンクが、軍事理論や戦略、個々の作戦などを研究するため、敵と味方の詳細データに基づいてコンピューターなどを使って実施する軍事演習です。

日本の兵棋演習

MC-2002では米軍が、イランやイラクを想起させる仮想敵「レッドチーム」と2週間にわたって机上で戦闘を交えることになっていました。ところが、米海兵隊ポール・ヴァン・リッパー退役中将が率いたレッドチームは、対艦ミサイル連射攻撃や小型ボートによる接近攻撃などを駆使した見事な作戦を成功させました。

何と開戦2日目までに原子力空母や強襲揚陸艦などを含む16隻の米軍艦を撃沈しました。そして見積もられた米軍の戦死者は2万人に上ったのでした。

海軍首脳を中心とする米軍首脳部はMC-2002を中断させました。莫大な予算を投入し、演習予定期間2週間のMC-2002が開戦2日目で、しかも「レッドチーム」の勝利で終結したのでは、残りの期間が無駄になる、という理由でした。

撃沈された空母を含む16隻の軍艦は全て“再浮上”し、MC-2002は再開されました。ただしレッドチームは、これまで用いた戦術やさらなる奇抜な戦術を禁止されたのです。

そうして米軍側が勝利するという事前に策定されたシナリオに沿って演習が続けられ、その通りに米軍が勝利しました。このようにして「空母不沈神話」は守られたのでした。

海軍首脳や「空母こそ米軍の軍事的支配力の象徴である」と信じる多くの軍関係者、政治家にとって、「空母不沈神話」は不滅でなければならなかったのです。また、空母には戦闘攻撃機、早期警戒機、小型輸送機、哨戒ヘリコプター、輸送ヘリコプター、救難ヘリコプターなど様々な航空機が搭載されるため、造船造艦業界のみならず、航空機産業も巨大な原子力空母の建造やメンテナンスに関与して恩恵を得ています。

そのため、空母建造や運用に関連する幅広い産業やそれらの従業員にとっても「空母不沈神話」は不滅でなければならないのです。

MC-2002から19年が経過した現在、「レッドチーム」よりも強力な空母攻撃用軍事システムが続々と誕生しています。

かつては大海原を航行する敵艦艇を発見することは至難の業でしたた。ところが海上を警戒監視するための軍事衛星、水平線の先まで探知可能な超水平線レーダーシステム、それに高性能海洋哨戒機など、科学技術が飛躍的に進歩したため、海上を航行する艦艇や船舶、とりわけ原子力空母のような巨艦が敵の監視網から姿を隠すことは100%不可能になりました。

海上戦闘艦艇にとってさらに悪いことに、中国やロシアの各種対艦ミサイル(艦艇船舶を攻撃するためのミサイル)の射程距離、命中精度、スピードなど性能が、やはり飛躍的に進歩しています。

特に中国軍は、中国沿岸域に接近してくる米空母を撃破することを主目的として各種対艦兵器(アメリカ軍では接近阻止/領域拒否兵器あるいはA2/AD兵器と呼んでいる)の開発に全力を投入してきました。

中国本土の地上移動式発射装置、中国軍にとって安全な空域のミサイル爆撃機、中国軍にとって安全な海域の駆逐艦やフリゲートやミサイル艇などから、対艦弾道ミサイル、対艦巡航ミサイル、超音速対艦ミサイル、極超音速対艦グライダーなどで米軍艦を攻撃することができます。

とりわけ巨体の原子力空母は、それらA2/AD兵器にとっては、sitting duck(容易な標的)に近い、恰好の攻撃目標です。

これに対して米海軍は、空母艦隊を敵のミサイル攻撃や爆撃から防衛するために、超高性能防空戦闘システムである「イージスシステム」を開発し、常に改良を続けています。イージスシステムによって発射され、敵のミサイルや航空機を撃破するための「防空ミサイル」にも巨額の費用(日本からも引き出している)をつぎ込んで、その性能はめざましく向上しています。

しかしながら、軍艦に比べると米粒よりも小さいミサイルを攻撃するための防空ミサイル開発は、対艦ミサイルの開発よりも技術的に遙かに困難であることは容易に理解できます。

技術的に困難であるが故に、防空ミサイルの開発費や調達価格は対艦ミサイルの比ではない超高額になっています。そのため、中国軍やロシア軍の「各種対艦ミサイル」保有数と、米軍の「防空ミサイル」保有数を比較すると、「各種対艦ミサイル数」が凌駕しています。

ミサイル攻撃を受ける空母打撃群 想像図

中国軍による米空母艦隊へのミサイル攻撃は「猛烈な飽和攻撃」になることが確実です。すなわち短時間のうちに大量の対艦ミサイルが、地上発射装置、空中のミサイル爆撃機、海上の艦艇から、つるべ打ちにされるのです。

これに対して米軍艦艇に装填してある防空ミサイルや対空機関砲の弾薬の数量には限りがあります。米軍艦がそれらを撃ち尽くしてしまったら、それ以後に中国軍が発射する対艦ミサイルは百発百中になってしまうのです。

以上のような理由で、中国そしてロシアにはもはや、「空母不沈神話」など成り立たないといった指摘が、米海軍関係者の中からも唱えられ始めています。

「超巨大空母を中心に据えた海軍戦略は時代遅れで、そのような原子力空母に巨額の国防費を割り当てるこれまでの仕組みを抜本的に見直さなければならない」という空母中心主義からの脱却を巡る激しい議論が交わされ始めているのです。

もっとも、これまで空母中心主義の海軍戦略を維持することができたのは米海軍だけでした。したがって、米海軍の空母中心主義が時代遅れになってきたという事実は、米以外の国々が持つ航空母艦とは別次元の問題です。それぞれの海軍は、それぞれ独自の海軍戦略に基づいて自らの空母を運用しているからです。

要するに、空母中心主義が時代遅れになってきたからといって、航空母艦そのものが無用の長物になってきたということを意味しているわけではありません。大艦巨砲主義の時代に、空母打撃群が投入されるようになったのですが、空母打撃群には相変わらず、空母だけではなく、様々な艦艇が用いられていました。

無論、これは空母だけでは、防御力に劣るとか、様々な理由があります。現在の米海軍の巨大原子力空母も新しい時代に対応した新たな存在価値を付与されることになるでしょう。

この状況を打開するのは、このブログでも何度か掲載したように、海戦においては、潜水艦の有効活用でしょう。なぜなら、中国は対潜哨戒能力か極度におとり、これとは対照的に米国のそれは世界一です。

米軍の優れた対潜哨戒能力で、米軍は中国の潜水艦を丸裸にして、これに対処することができます。

ただ、米軍は潜水艦の運用でも失敗しています。それは、原潜を過信して、すべての潜水艦を原潜にしてしまい、通常型潜水艦を建造せず、それが長く続いたので、米国は最新型の通常型潜水艦を建造する能力を失ったしまったのです。

原子力潜水艦は、動力を原子力に頼っているため、半永久的に潜航して任務を継続することができます。実際には食料の問題で半永久的に潜っていることはできないのですが、原子力潜水艦であれば海水を蒸発させて真水を作りだすことができ、それを電気分解することによって酸素も作り出せます。

そのため、従来のディーゼルと蓄電池を使った通常動力潜水艦よりも、乗員たちは快適な環境で長期間生活をすることができます。水と電力をほぼ無限に使用することができることから、ロシアの原子力潜水艦にはサウナまで取り付けられているそうです。

ただ、原子力潜水艦は、長期間に渡って潜航し続けることができますが、難点があります。それは「うるさい」ということです。原子炉で発生させた蒸気を使ってタービンを回し、その力でプロペラ軸を回しますが、この時に使う減速歯車が騒音の原因といわれています。

タービン自体は高速で回転させるほうが効率も良いのですが、そのまま海中でプロペラを回転させるとさらなる騒音を発生させるために、減速歯車を使ってプロペラ軸に伝わる回転数を落とす必要があります。

ほかにも、炉心冷却材を循環させるためのポンプも大きな騒音を発生さるといいます。このポンプは静かな物を採用することによって、かつてに比べ騒音レベルは下がってきているといいますが、頻繁に原子炉の停止・再稼動をさせることが難しい原子力潜水艦においては、基本的にこのポンプの動きを止めることはできません。

一方ディーゼルエンジンと、蓄電池を元いる通常型潜水艦は、原潜よりは長期間潜航ができないという欠点はあるものの、静寂性に優れています。この静寂性が海戦においては、徹底的に重要です。

潜水艦を攻撃する方法は、種々ありますが、基本は今でもソナーによって索敵してこれを攻撃します。潜水艦の静寂性が高いと、ソナーでも発見できにくくなります。

日本の潜水艦は従来から、静寂性が高いのですが、最新型の潜水艦の動力はリチュウムバッテリーにしており、これによりさらに静寂性を高め、ほとんど無音に近いといわれています。

これは、海戦においては圧倒的に有利です。日本の潜水艦は、中国に発見されずに航行できます。一方、中国の潜水艦は日本にすぐに発見されてしまいます。これでは、最初から勝負になりません。

一方米国の原潜は、攻撃力は強大ですが、静寂性には劣ります。ただ、米軍が対潜哨戒能力が世界一なので、これも有利です。予め、深海に潜み、そこから動かず、ここぞというときに、ミサイルや魚雷で攻撃するという戦法もできます。

呉 第1潜水隊群

日米の潜水艦隊が組めば、世界一強力な潜水艦隊になるでしょう。上の記事では、空母打撃群の合同ということが語られていますが、それも一つの手でしょう。中国の空母打撃軍が軍事力というよりは「政治的メッセージ」であることを考えると、インド太平洋に同盟国合同の「空母打撃群」を置くことには「政治的メッセージ」として、中国に対する強い牽制となることは間違いないでしょう。

しかし、現代の海戦による本当の戦いは、最初潜水艦隊により行われ、それでほとんど雌雄を決することになるでしょう。そのときには、中国の艦船はほとんどが撃沈され、地上の基地も破壊され、その後に、米軍の空母打撃群等が参加して、最後の詰めをするという形になるでしょう。

中国も、米国とその同盟国も潜水艦を持っています。特に、日本、フランス、ドイツなどは現在でも静寂性の優れた通常型潜水艦を建造しています。ロシアもラダー型という静寂性の優れた通常型潜水艦を建造しています。中国も通常型潜水艦潜水艦を建造していますが、静寂性には劣ります。

ロシア海軍に関しては、もはやその実力は、象徴的なものに過ぎないとみるべきでしょうが、その中でも最も恐れるべきは、このラダー型潜水艦かもしれません。

これらの潜水艦は、すでに随分前から、南シナ海や東シナ海などに息を潜めて様々な行動をしています。米国とその同盟国の潜水艦は、何度も中国の艦艇を撃沈する模擬訓練も行っています。特に、中国の空母「遼寧」は日米が模擬訓練で、何度も撃沈訓練をしていたことは、このブログにも過去に掲載したことがあります。

すでに、日米と、他の同盟国は、潜水艦隊でも互いに協力しあう体制を整えたか、整えつつあるでしょう。空母打撃群の動向は、もはや中国と同じく「政治的メッセージ」とみたほうが良さそうです。無論政治的メッセージにも大きな意味があり、中国を牽制することになるでしょう。なにしろ、目に見えるものは、見えないものよりは相手に強力なメッセージを送ることができます。

そうして、実際の海戦になれば、目に見えない、耳で聞こえない敵の脅威は、そうではない敵よりもはるかに大きいです。

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2021年5月20日木曜日

「消費税率19%」まで引き上げが必要との試算が出るが…国の財政は悪くなっていない 増税などの緊縮議論は“不要”だ ―【私の論評】消費増税8%の前の消費支出水準に戻るまで、増税ではなく積極財政、金融緩和をするのが当然(゚д゚)!


経済同友会桜田幹事 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 経済同友会が経済成長や財政状況の2050年度までの試算と提言をまとめた。そこでは公的債務残高が国内総生産(GDP)に占める比率を縮小させるには、消費税率を段階的に19%まで引き上げる必要があると指摘した。また、コロナ対策による債務については「現在世代」で負担すべきだとしている。

 本コラムで何度も繰り返して説明しているが、財政状況を理解するには資産と負債を示すバランスシート(貸借対照表)をみる必要がある。なぜ、負債(債務)だけを取り出して財政の議論をするのか、正直なところ筆者には理解できない。

 今回のコロナ対策は、日本政府の広義のバランスシートをみれば、資産を加味したネット債務残高を増加させないため、財政状況を悪化させるものではない。財政状況が悪くなっていないので、増税などの対応は、無駄であるばかりか、有害になる。

 筆者の出身である財務省(旧大蔵省)は、財政キャンペーンのとき、債務の大きさだけを説明していたが、役人時代の筆者はそれに疑問を呈し、バランスシートで説明すべきだと内部で主張していた。

 大蔵省の役人として財政投融資を担当していたとき、資産負債総合管理(ALM)の必要性が出てきて、筆者はALMシステム作成の指示を受けた。

 そのためには財政投融資のバランスシートが必要となったのだが、まず国全体のバランスシートを作った。1995年ごろだ。国全体のバランスシートを作成しないと、その一部である財政投融資のバランスシートを作ることはできないためだ。

 そうしてみると、当時の大蔵省の財政キャンペーンに不都合な事実が少なくなかった。その後、ALMシステムを大蔵省が作成したことは公表されたが、国全体のバランスシートを作ったことは明かされなかった。

 その後も10年程度公表されなかったが、小泉純一郎政権時にようやく公表されるようになった。しかし、財務省が積極的に記者レクチャーしないので、会計知識の乏しい日本のマスコミは、国全体のバランスシートについてまともに報道できていない。

財務省太田次官

 経済同友会も、財務省からのバランスシートの説明がなかったのか、負債に関してのみ説明を受けたのかは分からない。しかし企業人がバランスシートを読めないとは考えにくい。何か別の原因があるのではないか。

 一般論として、企業人としては税金や税務署を意識せざるを得ない。税務署では社会教育の一環として租税教育を地元の学校などで行っている。その教材は国税庁が作るが、基本的に財務省の資料や見解が反映されている。

 となると、企業人が筆者の主張のような見解を出すと、結果的に税務署の言うことを否定することにもつながりかねない。まともな企業人なら、あえて無用な争いをしたくないはずだ。

 ただし、社会的に有害ともいえる提言をする必要もないのではないか。

(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】消費増税8%の前の消費支出水準に戻るまで、増税ではなく積極財政、金融緩和をするのが当然(゚д゚)!

総務省は、5月11日に2020年度の家計調査を発表しました。これにより、直近の状況などを振り返っておきます。


これによりますと、2人以上の世帯の消費支出は1ヵ月あたりの平均で見て27万6167円となり、物価変動の影響を除いた実質で、前年度から4.9%減となりました。落ち込み幅は比較可能な2001年度以降で、消費増税後の2014年度(5.1%減)に次いで2番目に大きくなりました。

コロナ禍があってから、毎月家計の動きを見ると、緊急事態宣言をすると消費支出が下がる傾向があります。3月は6.2%プラスとなっています。4月は少し良いかも知れないですが、5月はまた緊急事態宣言があったので下がることになるでしょう。

前年比だけで見ると、コロナの影響で前年が普通の年ではありませんから、前の年も悪いので、実数も慎重にみるべきです。 2020年3月から5月を振り返ると、相当消費が落ち込んでいました。

伸び率だけを見ているとと、前の年が普通だという前提であれば、これでも良いのですが、前の年が違うときには違う読み方をするべきです。1年間の数字だけを見ているとよくわからないのです。

2~3年を続けて見ると、ある程度わかります。 11日に発表された家計調査の3月の数字が出たので、年度と3月単月で出ていて、3月単月の方を取って「6.2%プラスでした」とするメディアも多くありました。 

そのような報道からすると良いようにみえますが、3月だけではなく、その前も状況でした。2020年2月くらいからずっと悪い状況でした。

それと比較して「あまり動いていない」という状況でありこれはかなり厳しいです。2020年の1年間は、その前の年と比べるとかなり低いです。コロナ禍になってから、旅行や飲食なども含めて消費需要が飛んでしまっています。消費が飛んでいるからGDPが落ちているのです。

それでも世界で見ると、日本は落ちていない方です。結果的にそれが雇用の安定につながっていると考えられます。失業率は、足元で2.9%くらいですが、これは少し上がっているのですが、それても他国と比較すれば、さほど上がっているわけではありません。


政府はコロナ禍にあっても雇用を守ることを目標にして来ました。そのためコロナ禍のようなときにも、雇用を維持しやすい「雇用調整助成金」などを増やしたのです。

巷には「現金給付をなぜしないのか」という主張もありますが、現金給付は、どちらかというと失業が出てしまったあとに対応する手段です。そうであれば、「失業が出ないように頑張った方がいい」という割り切り方もあるのです。政府は、収入が途絶えたあとの手立てではなく、収入が途絶えさせない方を実行したのです。

コロナ禍における雇用対策は、様々な国の対策見をながら、様々な対策を考えます。例えば雇用調整助成金の制度がない国もあります。そうすると失業率が増えるときには、いきなりかなる増えるのです。増えるから仕方なく現金給付になってしまうのです。米国は特にそうです。 

そもそも米国には日本の雇用保険に相当する制度がありません。そのため、不況になると失業率が急激に跳ね上がるのです。政府は、それが良いのかどうかということを議論するためにも、国際比較をしながら雇用対策をしているのです。 

政府は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、令和3年4月30日までを期限に 雇用調整助成金の特例措置を講じてきたところですが、一部内容を変更し、  この特例措置を6月30日まで延長します。これは、その後も様子をみて延長の必要があれば、さらに延長すべきでしょう。

今回多少の雇用減はあったものの、他国と比較すれば全体的には雇用は維持されて、ある程度社会は安定しているといえるでしょう。一方で、飲食業などではが大変な状況になっています。 

日本では憲法を改正しないからできないのですが、私権制限をしながらやると、個々の業種は現在ほど厳しくならないはずです。日本は私権制限ができないため、どうしてもある業種に偏ってしまうのです。本来は、休業補償を十分に出すべきでしょう。全額まではいかなくても、手厚くすべきでしょう。

日本の私権制限には限りがある

このような直近の状況を見ている限り、どう考えても、すぐに増税などということは、全くありえないことです。

今後すぐに家計の消費支出が元に戻るなどということは考えられず、コロナ禍が収束したとしても、これを元に戻すには数年かかるとみるべきでしょう。消費増税8%の前の消費支出水準もどるまで、増税ではなく積極財政、金融緩和をするのが当然の措置です。

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2021年5月19日水曜日

日本人が知らないイスラエル・パレスチナ紛争の「実相」―【私の論評】イスラエルだけ悪魔化しハマスのテロ行為を隠蔽するメディア報道は、偏向し倫理的にも大問題(゚д゚)!

日本人が知らないイスラエル・パレスチナ紛争の「実相」

ハマスは本当に「か弱きパレスチナ人を守る正義の味方」なのか

(飯山 陽:イスラム思想研究者)

5月16日、パレスチナからのロケット弾をイスラエルの対空防衛システム「アイアンドーム」が迎撃する瞬間

 ここ1週間ほどSNSの書き込みやニュースのコメント欄を見ていると、日本人の多くがイスラエルとパレスチナの紛争について特定のイメージを持っていることがわかる。圧倒的多数の人が、「罪のない子供まで殺すなんてイスラエルは残酷なテロ国家だ!」「子供や女性まで巻き込むなんてイスラエルは許せない!」「歴史をさかのぼれば占領したイスラエルが悪いのは明白だ!」などイスラエルへの怒り、憤りを表現している。

 だが日本人は果たして、この紛争について事実を正確に認識しているのだろうか。おそらくその可能性は低いと言えよう。なぜなら日本人は多くの場合、この紛争についての情報を日本語で書かれたメディア報道からのみ得ており、それらの報道は「反イスラエル」方向に顕著に偏向しているからである。

  イスラエルの攻撃は軍事拠点を狙ったピンポイント攻撃

 例えば17日の夕刻の出稿の見出しは、NHK「イスラエル 米を後ろ盾に空爆を継続」、毎日新聞「イスラエル軍、ガザを集中空爆 住宅多数倒壊」、産経新聞「空爆下のガザ地区『住民標的、遺体が増え続けている』」となっている。これらの見出しを読むだけで、「イスラエルはガザで民間人を無差別に空爆する残虐非道な存在だ」と印象付けられる。

 一般に「空爆」という言葉から連想されるのは、住宅地に戦闘機が雨霰と爆弾を投下する状況であろう。しかしこれは現在、イスラエルがガザで展開している作戦の実態とは大きく異なる。

 イスラエル軍は、ガザからロケット弾攻撃を繰り返すイスラム過激派テロ組織ハマスの拠点やロケット弾発射台、武器庫、地下に張り巡らされたトンネル網、ハマス幹部の自宅などを標的とし、ピンポイントで攻撃している。また攻撃実行の1〜3時間前には、それらの建物の近隣住民に電話やテキストメッセージで退避するよう通告している。これはイスラエル軍がテロリストとテロのインフラだけを攻撃し、できるだけ民間人に被害が及ばないよう尽力しているからだ。

 しかしメディアはそうした詳細を伝えない。それどころか朝日新聞は17日、「突然、空爆されるまで『あと10分』そのときAP記者は」という、「外国人ジャーナリストまで空爆する非道なイスラエル」と印象付ける記事を掲載した。

 メディアは「強力な軍事力で民間人を無差別攻撃するイスラエル」という印象を与える「空爆」という言葉を繰り返し用い、「子供を含む〜人が死亡」とガザの死者数の多さを強調する。これにより人々には、「イスラエルは多数の民間人を空爆する鬼畜」「子供を殺すチャイルドキラー」というイメージが刷り込まれていく。

  パレスチナ人を搾取しているのは誰か

 「イスラエルの空爆」を非難する記事と比べると、ハマスのイスラエルに対するロケット弾攻撃の記事は圧倒的に少ない。そしてそれに言及する場合も、「多くはミサイル迎撃システム『アイアンドーム』が迎撃」(朝日新聞デジタル5月15日)などと記し、「イスラエル側にほとんど被害はない」と印象づけ、「圧倒的な軍事力を有するイスラエル軍」と「脆弱なロケット弾で応戦する弱きパレスチナの正義の味方」という構図を際立たせようとする。

 メディアはハマスが日本やアメリカ、EUなど主要国でテロ組織指定されていることにも言及せず、「イスラム組織」などと説明してはぐらかす。ハマスに資金や武器を提供しているのは、世界最大のテロ支援国家であるイランやトルコ、カタールであることも伝えない。ハマスがメンバーをUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)に送り込んで実質的に支配し、国際的な援助物資や資金を収奪していること、そのせいで一般のパレスチナ人に支援が全く行き届かないことも報道しない。

 日本にもパレスチナを支援する組織や人が多くいる。しかし彼らの支援の多くはテロ組織の懐に入り、テロのインフラ建設に使用されたり、幹部の豪奢な生活に「転用」されたりするのが実情だ。米トランプ政権がパレスチナへの拠出金を停止した主な原因も、これである。

 メディアはイスラエルがガザを封鎖しているせいで、ガザの人々は貧困にあえいでいると強調する。しかしイスラエルがガザを封鎖したのは、ガザからパレスチナ自治政府の治安部隊を追放して武力制圧し、実効支配を続けているハマスのイスラエルに対する無差別攻撃が原因であり、ガザの人々の生活苦はハマスの「搾取」によるところも大きい。

  子供や女性を「人間の盾」にするのも正当化

 ハマスの罪は他にもある。パレスチナの子供の人権擁護NGOであるDCIPは5月11日、前日にガザから発射されたロケット弾が飛距離不足でイスラエルに届かずガザに着弾し、子供2人を含むパレスチナ人8人が死亡し、子供10人を含む34人が負傷したと伝えた。パレスチナ人の死者の中には死因が特定できないケースが多い、とも伝えている。ハマスは「弱きパレスチナ人を守る正義の味方」どころか、パレスチナ人を自ら殺しているのだ。

 ハマスは子供や女性を「人間の盾」として利用することも厭わない。イスラエル軍は今回の作戦でも、ガザの学校や病院にハマスの「テロ・トンネル」の入り口があるのを多く確認したと報告している。ハマスは弱者を隠れ蓑にする卑怯者でもある。

 ハマスのガザにおける指導者であるヤヒヤー・シンワールは、2018年にパレスチナ人の帰還権を求めてイスラエルとの境界線付近で行なわれた大規模デモ、いわゆる「帰還の行進」について、「これらの行進に乗り出すことを決めた際、私たちにとって最も大切なもの、つまり女性や子供たちの体を、アラブの現実の崩壊を阻止するダムにしようと決めたのだ」とアルジャジーラとのインタビューで語った。境界線付近はイスラエル軍との衝突が頻発する危険地帯である。

 つまりハマスの指導者は、女性や子供を人間の盾として利用したことを「有効な戦略」として堂々と認め、正当化しているのだ。ハマスこそ、正真正銘のチャイルドキラーなのである。

  イスラエル批判はハマスの思う壺

 ハマスは「弱きパレスチナ人を守る正義の味方」などでは全くない。パレスチナ人から搾取し、「正義」のためにはパレスチナの子供や女性を平然と利用する残虐なテロ組織だ。ハマスがイスラエルの殲滅を目標に掲げ、イスラエルの一般民衆を無差別攻撃し、今回の攻撃でもイスラエルの子供や女性を殺していることも忘れてはならない。
『イスム教再考-18億人が信仰する世界宗教の実相』(飯山陽著、扶桑社新書)
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 パレスチナ問題の本質は領土問題である。これについて日本政府は、パレスチナとイスラエルという二国家共存という解決法を公式に支持している。イスラエルにはハマスのテロ攻撃から国民と国土を守る権利がある。イスラエルが自衛権を行使しなければ900万人の国民はハマスによって殺戮され、イスラエルという国家は消滅することになる。だからアメリカをはじめとする主要先進国が、イスラエルの自衛権を認めると表明したのだ。

 本当にパレスチナ人をかわいそうだと思うならば、怒りを向けるべきはハマスである。メディアの偏向報道と印象操作にまんまと騙されてイスラエルに怒りを向けても、パレスチナの人々が「解放」されることはない。イスラエルに怒りを向けることは、テロ組織ハマスの思惑通りでもある。世界の世論がイスラエルを非難しハマスに同情的になれば、ハマスの思う壺だ。

【私の論評】イスラエルだけ悪魔化しハマスのテロ行為を隠蔽するメディア報道は、偏向し倫理的にも大問題(゚д゚)!

上の記事を読むと、ハマスの現実の姿がよくわかります。これは、日本では他ではなかなか手に入れられない貴重な情報だと思います。

ハマスとは「イスラム抵抗運動」のことです。源流はエジプトのイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」で、1987年12月にアハメド・ヤシンがガザ地区で創設しました。その最終目標は「イスラム原理主義国家」の樹立であり、イラク、シリアを席巻したあの「イスラム国」(IS)と目指すところは基本的には同じです。

ハマスはイスラエルの生存権を認めていませんし、武装闘争の旗も降ろしていません。このため米国はハマスをテロ組織に指定しています。パレスチナの現状を規定することとなった93年のオスロ合意により、ヨルダン川西岸と地中海沿いのガザ地区がパレスチナ自治区となりました。イスラエルは当初、ガザ地区に駐留していましたが、その後撤退。ガザ地区とイスラエルの境界にフェンスをめぐらし遮断しました。

ガザ地区は東京都23区の面積の6割程度しかありません。イスラエルのガザ隔離政策によって、地中海に面するガザの出入り口はイスラエル側の検問所とエジプト側の検問所の2カ所だけとなりました。海上もイスラエル艦船が常時監視しているため、海からのガザへの出入りは不可能になりました。

ハマスはこうした閉塞状態の中、ガザのパレスチナ人の支持を受けるようになりました。2006年に行われたパレスチナ評議会選挙(議会選挙)で、ハマスはパレスチナ自治政府を牛耳る主流派の政党ファタハに圧勝、過半数を超える74議席を獲得しました。ファタハは45議席にとどまりました。

翌07年にガザでハマスとファタハの内戦がぼっ発したのですが、ハマスの勝利に終わり、それ以降ハマスはガザの実効支配を確立しました。ハマスは貧困層などへの教育、医療、福祉事業といった社会活動も進め、パレスチナ人の人気を高めていきました。アラブ諸国の中では、カタールがハマスを支援しています。

こうしたハマスの勢力拡大を懸念したイスラエルはハマス幹部の暗殺や軍事拠点への空爆を常時実施、09年1月に軍をガザに地上侵攻させて衝突しました。イスラエル軍は2014年7月にも地上侵攻。1カ月に及ぶ戦闘で、パレスチナ人2250人が死亡、イスラエル側も兵士ら70人が犠牲になりました。

イスマイル・ハニヤ

ハマスの現在の指導者はカタールに亡命中のイスマイル・ハニヤ。ハマスは政治部門と軍事部門「カッサム旅団」に分かれており、同旅団の司令官はモハメド・デイフ。戦闘員は約3万人。ハマスは今回のイスラエルとの交戦を、パレスチナ人社会の中でその存在を誇示できるとして歓迎しているとの見方も強いです。

ハマスが保有するロケット弾は1万発とも3万発とも言われますが、実態は不明です。ほとんどが射程10キロ~20キロの短距離ロケットと見られています。ところが、ガザ地区から約80キロのテルアビブやエルサレムに着弾したロケット弾もあり、イスラエル側を驚かせました。米紙によると、ハマスのスポークスマンはテルアビブに撃ち込んだ新型ロケット弾を「アイシュ250」と呼び、射程距離が240キロあるとしています。

米ワシントン・ポストなどによると、ロケットはかつてエジプトとガザをつなぐ秘密トンネルを通してイランのファジル・ロケットやシリアのM302などが密輸されたとしています。現在は自前の兵器工場で生産しているとされています。ノウハウなどはイランやレバノンの武装組織ヒズボラが支援していると見られています。

ロケット弾と並ぶハマスのもう1つの武器はガザの地下に張り巡らした“メトロ”(地下鉄)と呼ばれる地下網だ。ハマスの指導者ハニヤは数年前、ガザの地下トンネルはベトナム戦争時にベトコンが建設したものより2倍ある、と豪語していたという。

ハマスは過去、イスラエル領内にまでトンネルを掘り進め、兵士や市民を誘拐したことがある。イスラエルはこれまでに、多くのトンネルを破壊し、ガザの境界にはトンネルを掘り進めることができないよう、地中に防護壁まで建設した。ハマスは2014年の戦争では、トンネルを使って戦闘員を神出鬼没に出現させ、イスラエル軍を翻弄した。

パレスチナ自治区ガザの地下トンネルで銃を持つイスラム原理主義組織ハマスの戦闘員=2014年8月

ハマスは現在、ガザ北部の地下トンネルからロケット弾を発射しており、トンネル網はイスラエルの最優先攻撃目標の1つ。イスラエルは14日、いったんは地上部隊のガザ侵攻を発表しながら、後にまだ侵攻していないと修正した。イスラエルのメディアではこの軍の発表がハマスをだます策略だったのではないかとの見方も浮上している。

その狙いは、ハマス戦闘員が侵攻という発表にあわてて地下に潜りこむのをドローンなどで監視し、トンネルの入り口を突き止めるためだった、というもの。事実かどうかは不明だが、ネタニヤフ首相は「ハマスはトンネルに隠れることができると思ったろうが、隠れることはできなかった」と意味深長な発言をしています。

さて、上の記事では飯山氏は、イスラエル批判はハマスの思うつぼであるとしていますが、私もそう思います。

そもそも、イスラエルを武力攻撃しているのはハマスというイスラム過激派テロ組織であり、一般のパレスチナ人ではありまん。日米やEUなどはハマスをテロ組織指定しています。今回の武力衝突がイスラエルとパレスチナ人一般の衝突であるかのように伝える報道は明らかな間違いであり、ハマスがテロ組織であることへの言及を避けることはハマスのテロの正当化に他ならないものです。

さらに、ハマスは「聖地エルサレムの守護者にしてパレスチナ人の擁護者」を自称しているのですが、実際はパレスチナ人も多く居住する「聖地」であるはずのエルサレムにロケット弾を撃ち込み、ガザ地区でもロケット弾の誤射や飛距離不足などで多数のパレスチナ人を殺傷しています。

メディアはハマスがあたかも「イスラエルによって抑圧されたかわいそうなパレスチナ人のために戦う正義の戦士」であるかのように報道していますが、パレスチナ人のために戦うどころかパレスチナ人を人間の盾として利用し、彼らのための支援を横取りするいわば「貧困ビジネス」で財をなしているのがハマスです。

ハマスの主張と行動が大いに矛盾していることも、メディアは決して伝えません。

ハマスのロケット弾攻撃とイスラエル軍の報復の空爆を同列に捉えるのは誤りです。ハマスのロケット弾攻撃は子供や女性、老人を含む一般のイスラエル人を狙った無差別テロです。ハマスはもちろん、イスラエルの子供も殺していますが、メディアはその事実も軽視あるいは無視しています。

一方イスラエル軍が空爆しているのはハマスの拠点やロケットランチャー、トンネル、幹部の家などであり、上の飯山氏の記事にもあるように、空爆前には近隣住民に電話やテキストメッセージなどにより退避を要請しています。

またハマスは拠点を意図的に住宅地に設置し、あるいは学校や病院など民間施設にトンネルの入り口を作ったり、武器庫として使ったりすることにより、イスラエル軍にそうした民間施設を空爆させ、それを世界的なメディアに取材させ、国際的な非難をイスラエルに向けさせるという戦略を長年とっています。

イスラエルの女性兵士

ハマスとメディアが「グル」であることは、多くの記者や研究者が指摘しているところです。

そうして、イスラエル・パレスチナ紛争をあたかも「聖地エルサレム」をめぐる宗教戦争のように報道するのも大きな誤りです。この問題の本質は領土問題です。

領土問題には双方に言い分があり、日本政府はこれについて「難民、入植地、エルサレム、国境画定など個々の問題の解決を図って、イスラエルとともに共存共栄するパレスチナ国家を建設すること」すなわち「二国家解決」を支持すると表明しています。これは国際的に多くの支持を集めている考え方でもあります。

一方ハマスは、武力攻撃によりイスラエルという国家を消滅させることを目標に掲げています。イスラエルは900万人の国民を抱える歴とした国家であり、当然、国民と国土を守る自衛権を有しています。米国やドイツ、フランス、カナダなど主要先進国はハマスのテロ攻撃に対するイスラエルの自衛権を支持すると明言しています。

イスラエルだけを悪魔化しハマスのテロ行為を隠蔽する報道は、大きく偏向しており、イスラエルの自衛権を否定し、900万人のイスラエル人は殺されて然るべきなのだと主張するに等しく、倫理的に大きな問題のあるものといわざるを得ません。

昨日は、このブログでは、そもそも統治の正当性がなかったイスラム過激派が衰退したと主張したばかりですが、ハマスもどう考えても、単なるテロ組織であり、イスラエルのように統治の正当性を持つ国家とはいえません。

これでは、他のイスラム過激派が衰退したように、いくらマスコミが応援しようとも、ハマスもいずれ衰退すると思います。

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中国・新疆ウイグル自治区で「ジェノサイドの可能性」 米報告書―【私の論評】ウイグル問題は、トランプ政権がバイデン政権に突きつけた踏み絵(゚д゚)!

2021年5月18日火曜日

〝イスラム教徒の幻滅〟がイスラム過激派を衰退させた―【私の論評】そもそも統治の正当性がなかったイスラム過激派が衰退したように、中共もこれから衰退する(゚д゚)!

〝イスラム教徒の幻滅〟がイスラム過激派を衰退させた

岡崎研究所


 オサマ・ビン・ラーデンが2011年5月2日の米軍による「ネプーチュンの槍」作戦で殺害されてから丁度10年を迎えた。この間、ほとんどのイスラム・テロは、米国と西側を標的とするグローバルな脅威から、ローカルな活動しかなし得ない存在へと変わった。アフガンのタリバン、ナイジェリアのボコハラム、アフリカの角のアル・シャバーブなどである。また、アルカイダは今や中心的な司令部もイデオロギーもない民兵組織に分散してしまったし、資金力のある「イスラム国」も作戦し得る場所としてはモザンビークなどの不安定な場所しかない。

 2001年の9・11同時多発テロが与えた衝撃は大きく、米国をはじめ、パニックに見舞われた状況であった。その中で、本来はそうではないはずのイスラムのテロが、戦略的脅威であるかのように見られるようになっていた。しかし、イスラム過激派によるテロは、かつては国際政治の中心的な課題であったが、今はそうではなく、若干の国において、その国の問題としてくすぶっているような問題になったと言ってよい。したがって、バイデン大統領がアフガンからの米軍の9月撤退を決めたのも是認される状況であると思われる。

 イスラム過激派の脅威がこのように小さくなったのは、米国を先頭に各国がその抑え込みに努力したことも大きいが、政治的イスラムの自壊という側面も大きいように思われる。ワシントン・ポスト紙コラムニストのファリード・ザカリアは、イスラム過激派のテロがローカルな存在に縮小した原因について、4月30日付けの同紙コラム‘Ten years later, Islamist terrorism isn’t the threat it used to be(10年経ち、イスラム・テロはかつてのような脅威ではない)’において、政治的イスラムが一部のイスラム教国の国家権力の一部分になったが実績が芳しくなく大多数のイスラム教徒を幻滅させたためである、という説を紹介している。このザカリアの論説には賛成できる。

 ザカリアは、「政治的イスラムを育てた土壌、現在の政権への不平、不満と宗教指導者への盲目的信頼は急速に減少した」、「今あるのはローカルな問題、不満であるが、これは世界的な運動の一部ではない」などとも指摘する。その通りであろう。
 
 アラブ諸国が今後どう発展していくのか、そこで近代化とイスラムがどう折り合っていくのかは難しい問題である。宗教の自由を尊重する自由民主主義は、一つの回答になり得ると思われる。

 なお、ザカリアは、米国には脅威を誇張する伝統があるが、それは避けるべきである、と言っている。これ自体は適切な指摘であるが、対中政策を念頭に置いてそう言っているのであるとすれば異論がある。米国の今の対中脅威認識は誇張されているとは思われない。香港の1国2制度は国際条約で2047年まで続くことになっていた。この条約を破った上に、香港政策はすべて中国の内政事項という主張は全く認められないことである。台湾への武力行使も内政問題ではありえない。米国の現在の対中政策は、脅威の誇張とは評価しがたい。

【私の論評】そもそも統治の正当性がなかったイスラム過激派が衰退したように、中共もこれから衰退する(゚д゚)!

上の記事を読んで、私自身は、イスラム教徒の幻滅自体がイスラム過激派を衰退させたわけではないと思います。もちろんその側面は大きいですが、それだけではありません。やはり、大きいのは統治の正当性を失ったというか、元々それがなかったことが大きいと思います。

無論、イスラム教徒の幻滅がイスラム過激派の正当性を失わせたという側面も否めないですが、それだけではないでしょう。


あらゆる組織のリーダーには、正当性が要求されます。政府や大企業の本部などにも統治の正当性が求められます。それを失えば、すべての組織が瓦解します。

ドラッカーはリーダーの正当性について以下のように語っています。
社会においてリーダー的な階層にあるということは、本来の機能を果たすだけではすまないということである。成果をあげるだけでは不十分である。正統性が要求される。社会から、正統なものとしてその存在を是認されなければならない。(『マネジメント──基本と原則[エッセンシャル版]』)
企業、政府機関、非営利組織など、あらゆる組織にとって、本来の機能とは、社会のニーズを事業上の機会に転換することです。つまり、市場と個人のニーズ、消費者と従業員のニーズを予期し、識別し、満足させることです。

さらに具体的にいうならば、それぞれの本業において最高の財・サービスを生み出し、そこに働く人たちに対し、生計の資にとどまらず、社会的な絆、位置、役割を与えることです。

しかしドラッカーは、これらのものは、それぞれの組織にとって存在の理由ではあっても、活動を遂行するうえで必要とされる権限の根拠とはなりえないとしています。神の子とはいえなくとも、少なくともどなたかのお子さんである貴重な存在たる人間に対し、ああせい、こうせいと言いえるだけの権限は与えないといいます。

ここにおいて、存在の理由に加えて必要とされるものが、正統性です。ドラッカーは
「正統性とは曖昧なコンセプトである。厳密に定義することはできない。しかし、それは決定的に重要である」としています。

かつて権限は、腕力と血統を根拠として行使されました。近くは、投票と試験と所有権を根拠として行使されています。

しかしドラッカーは、マネジメントがその権限を行使するには、これらのものでは不足だといいます。

社会と個人のニーズの充足において成果を上げることさえ、権限に正統性は与えないというのです。一応、説明はしてくれます。だが、それだけでは不足なのです。腹の底から納得はされないのです。

マネジメントの権限が認知されるには、所有権を超えた正統性、すなわち組織なるものの特質、すなわち人間の特質に基づく正統性が必要とされるというのです。
そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生かすことである。これが組織なるものの特質である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである。(『マネジメント[エッセンシャル版]』)
強みを生かすことは組織特有の機能です。ドラッカーは、組織における権力の正統性の基盤も、この人の強みを生かすという組織の機能に置くべきであるとまでいっているのです。

それは、国も同じことです。人の弱みではなく、強みを活かすことができる社会を構築しなければならないのです。そのために、政府がすべきことは、まずは民主化です。民主化されていない社会では、人の強みを活かすことなどできません。

さらに、政治と経済を分離することです。これができなければ、政府が経済に直接介入することになり、人は組織の強みを脅かし続けることになります。これでは、人や組織の強みを活かすことはできません。

そうして、法治国家です。法のもとで、万民が法のもとで平等でなければ、人や組織の強みを活かすことはできません。

これらが成就されて、はじめて、人やその集まりであるあらゆる組織の強みを活かすことができるのです。

組織といえども、人それぞれが持つ弱みを克服することはでません。しかし、組織は人の弱みを意味のないものにすることができます。

これらができて、はじめて富裕層だけではなく、星の数ほどの多数の中間層が生まれ、これらが自由に社会経済活動ができるようになります。

そうして、彼らが自由に活動して、あらゆる地域、あらゆる階層において、イノベーション(ドラッカーは、技術革新ではなく、社会を変革するのが真のイノベーションであるとしています)を成し遂げます。かつて、これを成し遂げた国だけが、先進国になることができました。

それ以外の国は、たとえ経済成長したとしても、一人あたりの所得が100万円前後で止まってしまいました。これを中所得国の罠と呼んでいます。これには、サウジアラビアなどのほんの僅かの例外しかありません。また、発展途上国から先進国になったのは、日本だけです。それとは、逆に先進国から発展途上国になった国は、アルゼンチンだけです。

現在まで、順調に経済成長してきた中国の一人あたりのGDPは現在100万円前後になっています。ここから先は中国は中所得国の罠にはまって経済成長はとまってしまうでしょう。

3月18日 米中外相会談

3月18日米国と中国の外交のトップ会談で激しい言葉の応酬がありました。中国側は「中国共産党の地位は人民が選んだものだ」と述べ、米国側に共産党による指導の正当性を強調しました。

中国国営の新華社によりますと、会談で中国側は台湾問題に触れ、「いかなる妥協の余地もない」と述べ、米国が進める政府高官の台湾訪問や武器売却の中止を求めました。

香港を巡っては「選挙制度の変更は内政問題だ」として民主派の排除を進める愛国者による統治の決定を尊重するよう要求しました。

また、米国がウイグル族への弾圧をジェノサイド(大量虐殺)と認定したことには「今世紀最大の嘘だ」と反発しました。

こうした主張に先立ち、中国側は「中国共産党は人民が選び14億人に心から支持されている」と述べ、共産党体制を正当性を強調しました。

中国の王毅外相は米国を強く牽制(けんせい)したと明らかにし、外交担当トップの楊潔篪(ようけつち)政治局委員は会談は有益だったとしつつ、「双方に重要な相違点がある」とも指摘しました。

さて、中国共産党政権には、統治の正当性があるのでしょうか。私は、そうではないことが、今後中国が経済成長しないことによって立証されると思います。無論、中国の経済統計はほとんどデタラメなので、中国政府は政治的メッセージとして、これからもデタラメな統計を出して、他国を幻惑し続けるでしょうが、真実を変えることはできません。

他国に比較して、ほとんど変動しない中国の不思議な経済成長率

たとえば、貿易統計をみていると、当該国が成長しているかどうかをかなりの程度まで推測できます。一般にどの国でも、景気が良いと輸入が増えます。これによって、当該国の景気が良いのか悪いのかかなりの程度まで推測できます。しかも、輸出・輸入統計は相手国があるため、相手国の統計をみればわかります。それ以外にも多くの経済学者らが、中国の真のGDPを知るてがかりを得つつあります。

現在、中国は近い将来米国の経済を追い抜くなどと予測する識者もいるようですが、それは全くの間違いです。それは、現在の中国経済をみていてもわかりますが、中国共産党の統治の正当性は、わざわざ米中外交のトップ会談で大声で主張しなければならないほど低いことからも、容易に理解できます。

本当に正当性があるなら、それをわぞわざ、外国に来てまで主張することはありません。正当性があるなしは、本来中共が主張するものではなく、中国の多くの人民が決めるべきものです。民主化、政治と経済の分離、法治国家化がされていない中国では、多くの人民が中共の正当性を認めているるとは、とても思えません。

もし、中共が認めているとするなら、それは武力を背景に無理やりそういわせているか、人民が他の世界の社会制度こを熟知していないからにすぎないです。

そうして、そもそも統治の正当性がなかったイスラム過激派が衰退したように、中共もこれから衰退していくでしょう。

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2021年5月17日月曜日

中国念頭の共同訓練、日米豪仏「参加定例化」へ 陸上部隊による国内初の実動訓練 中国は新たに強襲揚陸艦の開発―【私の論評】台湾有事で中国の艦艇や潜水艦が、港を出た途端に全艦撃沈の憂き目に会いかねない(゚д゚)!

中国念頭の共同訓練、日米豪仏「参加定例化」へ 陸上部隊による国内初の実動訓練 中国は新たに強襲揚陸艦の開発


 自衛隊と米国、フランス、オーストラリア各国軍による離島防衛の能力向上を目的とした共同訓練「アーク21」は17日、最終日を迎えた。軍事的覇権拡大を進める中国は、沖縄県・尖閣諸島や台湾への野心をあらわにしている。先週末に公開された日米仏の共同訓練は、離島への着上陸と市街地戦闘などが想定された。3カ国の訓練は今後定例化されるという。

 「太平洋国家として日米と認識を共有している。今後も日本で訓練を続け、相互運用能力の向上を図りたい」(仏陸軍のマルカイユ中佐)

 「フランスが参加し、良い機会となった。戦術技能の共有は重要だ」(米海兵隊のネルソン中佐)

 米仏の指揮官は、今回の共同訓練の意義をこう強調した。

 陸自は15日、宮崎県えびの市と鹿児島県湧水町にまたがる霧島演習場で、仏陸軍、米海兵隊との共同訓練を報道関係者に公開した。演習場を離島に見立てて、陸自のCH47大型輸送ヘリコプターから部隊を投入する「ヘリボン」作戦や空港のターミナルビルを占拠した敵を掃討する想定の市街地戦を展開した。日米仏の陸上部隊が日本国内で実動訓練したのは初めて。

 オーストラリアも交えた東シナ海での海上訓練と合わせ、4カ国は九州周辺で離島防衛の能力向上を主な目的とした訓練を行った。

 中国が、東・南シナ海で軍事的緊張を高めるなか、水陸両用作戦の実戦的な内容を誇示し、牽制(けんせい)する狙い。今後も連携を強化する考えだ。

 こうしたなか、中国軍の看過できない動向が報じられた。

 香港誌、広角鏡は17日までに、中国が新たに「076型」強襲揚陸艦の開発を進めていると報じた。大型ステルス無人攻撃機「攻撃11」の搭載を計画しているという。

 中国軍は4月、習近平国家主席が出席して、初の強襲揚陸艦「海南」(075型)の就役式を海南省三亜(海南島)の軍港で行った。尖閣や台湾侵攻を想定した装備とみられ、推定排水量約4万トンは米軍のワスプ級強襲揚陸艦に匹敵する。同誌によると、076型は空母に相当する戦力になるという。

 日本政府は、6月に英コーンウォールで開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせて、日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国による戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」首脳会談の開催を検討している。

 クアッドに、英国やフランスなどを加えた自由主義陣営の包囲網で、中国の軍事的暴走を阻止するしかない。

【私の論評】台湾有事で中国の艦艇や潜水艦が、港を出た途端に全艦撃沈の憂き目に会いかねない(゚д゚)!

海上自衛隊が14日、米仏豪と実施中の離島防衛訓練「アーク21」で、東シナ海で艦艇が隊形を組んで航行する画像を公開しました。 「アーク21」は11~17日の日程で11隻が参加しています。

この4ヵ国が東シナ海で揃う訓練は初めてで、結束をアピールして尖閣諸島や台湾の情勢を巡り緊張関係にある中国を強く牽制する狙いとみられます。

自衛隊と米仏豪各国軍による共同訓練「アーク21」の開始式=11日午後、長崎県佐世保市

陸上自衛隊も14日から霧島演習場で仏陸軍、米海兵隊との演習をしており、15日には九州西方沖の艦艇から演習場に部隊を送り込む水陸両用作戦を想定した演習をします。

陸上自衛隊、米海兵隊、仏陸軍の兵士約200名が5月15日に雨の中霧島演習場へCH-47で降着ししました。

これは11日に開始された日米仏共同演習ARC 21の一環で、15日には東シナ海で3ヵ国にオーストラリアも加わり11隻が共同訓練を行いました。

もし、近い将来に台湾が戦場になれば、日本政府が真っ先にやるべきは邦人救出です。

台湾には現在約2万人の邦人がいますが、これはコロナ禍で減った数字で、収束して元の水準に戻れば4万人にもなります。それこそ中国から弾道ミサイルが撃ち込まれている中で、これだけの人数をどう救出することになるのでしょうか。

具体的には、オスプレイを活用して在留邦人をピックアップし、輸送機C2、もしくは政府専用機に乗せて帰国させることになるでしょう。場合によっては、陸自の特殊作戦群(特殊部隊)の投入もあり得るでしょう。
陸自のオスプレイ

自衛隊が防衛出動した場合、何ができるのでしょうか。海洋国日本の自衛隊が大きな力を発揮するのが、“海の中”です。

このブログでも過去に何度か述べてきたように、自衛隊が台湾有事で活躍できるのは潜水艦の運用です。P1やP3Cといった哨戒機で、中国の潜水艦の位置を探知します。その位置情報を米軍に伝え、米艦艇が対潜ミサイルなどで沈めることになるでしょう。自衛隊機が対潜魚雷などで沈めることもできるでしょう。

海自の『そうりゅう』型やその後継の『たいげい』型は世界最高性能を誇る通常型潜水艦で、性能の高さだけでなく、世界最強の米海軍と共同訓練を行なっているので、練度も高いです。

洋上を機動する中国海軍の空母をはじめとする水上艦艇に対しては、高性能の魚雷やハープーン対艦ミサイルで攻撃できます。もちろん中国潜水艦に対しても優位に戦う能力があります。日本の潜水艦が展開するだけで、中国海軍の行動を牽制することができるでしょう。

敵の潜水艦を駆逐する戦闘でも、自衛隊のほうが圧倒的に有利です。対潜水艦では索敵能力が極めて重要で、先に相手を発見したほうが勝つとされています。

海自の対潜能力(ASW)は世界一とも言われています。海上自衛隊はその誕生から、対潜水艦作戦に重点を置いてその能力向上に努めてきました。保有する護衛艦には最新鋭の対潜装備の他、高性能の哨戒ヘリコプターも搭載しています。さらにP1およびP3C哨戒機も多数保有しており、これらを駆使して水中の敵潜水艦を探知して捕促し、対潜魚雷、対潜ロケット、対潜弾投射機で攻撃します。

台湾有事では、表では米中がドンパチやっている中で、文字通り水面下で、潜水艦による“神経戦”が繰り広げられることになるでしょう。日中開戦となれば中国がもっとも恐れるのは海上自衛隊の対潜能力と潜水艦戦力です。

それとともに、軍事衝突の行方は日本の準備と覚悟にかかっているでしょう。

現状の法制度では、台湾有事に自衛隊が本来持つ能力を発揮するのは難しいです。ただ、自衛隊の軍隊としての能力は中国軍を上回っていると見て間違いないです。中国の装備は徐々に向上していますが、まだ自衛隊のほうがレベルが高く、隊員の練度も中国よりかなり高いです。正面からぶつかれば自衛隊は中国軍に負けることはありません。

制度を整え米軍と一緒に作戦を行なえるのだとすれば、複数の安保シンクタンクの台湾有事のシミュレーションで中国が勝つとなっていたシナリオ等、簡単に覆すことができるでしょう。

ただ、制度が整うのを待っていれば、時宜を逸する可能性も否めません。ところが、最近菅政権は、超法規的措置を実行に移しました。それは、コロナワクチンを歯科医も打てるようにすると公表したことです。医師法によれば、治療目的などで、注射を打てるのは医師・看護師だけです。歯科医は口腔外科などでは、麻酔の注射をすることはありますが、それ以外の治療目的での注射はできません。

これは、先日も述べたように、戦後4度目の数十年ぶりの措置です。結局まともに国会審議などをしていれば、野党がのらりくらりとして、はなはだしいときには、審議拒否などして結局何も決まらないという事態が想定されたので、超法規的措置に踏み切ったのでしょう。

菅総理は、場合によっては、このような超法規的措置を実行する腹づもりがあるということです。本来ならば、このような超法規的措置については、戦争につながるなどとマスコミや野党が大騒ぎすべきなのでしょうが、今のところそのような動きは全くありません。これは、おそらく、国民の反発をかなり恐れてのことでしょう。

もし、そのようなことをすれば、マスコミや野党は、人非人のように多くの国民から謗られ、完璧に信頼を失ってしまうような事態を想定しているのかもしれません。

このブログでも述べたように、台湾有事になってからでも遅いことなどまったくなく、日米の潜水艦隊が台湾を包囲すれば良いのです。その他の空母や艦船などは、プラスアルファ程度であると考えて良いです。先にも述べたように、台湾有事は、日米の潜水艦隊によって戦われ、大勢が決まることになります。

日本の潜水艦は、静寂性( ステルス性)を利用し、台湾付近の海域を自由に動きまわり、情報を収集し、その情報を米軍の攻撃力に優れた攻撃型原潜と共有し、米軍原潜が中国の補給船や、補給用の航空機を撃破するという方式を実施すれば良いのです。

中国側は、日本の潜水艦を全く探知できないし、米国の潜水艦も発見しにくいです。米国の対潜能力(ASW)も世界一の水準です。これは日米にかなり有利な展開となります。中国が、強襲揚陸艦「海南」(075型)を台湾に覇権すれば、間髪いれず、日米の潜水艦隊がこれをすぐに撃沈することになるでしょう。

海上自衛隊の潜水艦「けんりゅう」

このようなことをいうと、中国の超音速ミサイルがどうの、ドローンがどうのと言われるかたもいるでしょうが、考えてみてください、どんなに優れた攻撃兵器を持っていたにしても、発見できない敵に対しては無効です。

無論台湾有事では、自衛隊の潜水艦隊が、自分を守るために、敵を攻撃しなければない場合もあるでしょうし、米国をはじめとする他国の艦艇・潜水艦を守るため、攻撃するという事態も想定されます。これに関しては、日本の海自には法的縛りがあります。この縛りを逸脱するのは、今の日本では、全く困難であるようにも見えます。

しかし、これも、超法規的措置でまねがれる可能性もでてきました。それは、菅総理によりコロナワクチンを歯科医師でも打てるようにした超法規的措置が実現したからです。

台湾の在留邦人を救うために、自衛隊が敵をやむなく攻撃したり、台湾に侵攻する中国を攻撃する味方の他国の軍隊が敵からの攻撃にさらされた場合、これに対して止む無く攻撃した場合、これを違法であるとして、攻撃した自衛隊員を殺人罪で起訴してみたり、政治利用したりすれば、それこそ、ワクチンの接種どころの話ではなく、人非人、碌でなしなどの言葉を浴びせられるのを覚悟しなくてはならないでしょう。妥当性が十分に考えられる場合には、超法規的措置もワクチンと同じく、あまり問題にされない可能が十分あります。

以上のようなことを考えれば、中国が台湾に侵攻するのは、自殺行為ともいえます。それどころか、中国が台湾侵攻を宣言して、中国の艦艇や潜水艦が、港を出た途端に全艦撃沈ということにもなりかねないです。そうなると、中国の艦艇は一歩も港から出られなくなります。これでは、台湾侵攻などおぼつきません。

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2021年5月16日日曜日

台湾、感染拡大止まらず 16日は207人 動揺広がる―【私の論評】感染者・死者数ともに他国と比較して少ない日台は、ワクチン接種でも常識的な動き(゚д゚)!

台湾、感染拡大止まらず 16日は207人 動揺広がる


台湾当局は16日、新型コロナウイルスの感染者が207人確認されたと発表した。海外で感染した症例が1人で、残りの206人は全て台湾域内で感染した。3日連続で過去最多を更新した。感染を抑えていた台湾だけに、急増する感染者の拡大に、政府や市民の間では動揺が広がっている。

当局の衛生福利部(厚生省に相当)中央感染症指揮センターが16日、記者会見を開き、感染状況を説明した。台湾でこれまで見つかる感染者の大半は、海外からの渡航者だった。

しかし、台北市内の接客を伴う飲食店でクラスターが発生して以降、今週から域内で感染する人が急増した。15日は180人と一気に増え、わずか1日で、それまでの累計の域内感染者数(164人)を上回った。

会見で、新型コロナ対策の指揮を執る陳時中・衛生福利部長は「外出は極力控えてほしい」などと危機感を示し、対策の徹底を呼びかけた。

当局は15日、台北市の警戒レベルを引き上げ、5人以上の会食や、屋外での10人以上の集まりを禁止した。台湾全土では、接待を伴う飲食店やスポーツジム、サウナ、カラオケ店などの施設の営業を全て禁止した。

市民の間には動揺が広がっている。台北市内は16日、日曜日にもかかわらず、人出が一気に減った。市内中心部の飲食店で働く20代男性店員は「台湾人は非常に神経質だ。休日でも当面は外出をせず、お客さんはお店に来ないだろう。残念だが、仕方がない」と語った。

台湾の感染者は累計1682人。海外からの渡航者が多く、域内での感染者数は550人。死者は累計12人にとどまる。

【私の論評】感染者・死者数ともに他国と比較して少ない日台は、ワクチン接種でも常識的な動き(゚д゚)!

台湾国内では近日、北部・台北市、新北市、北東部・宜蘭県でクラスターが相次いで発生。関連の感染者や感染経路不明の患者などが急速に増加し、予断を許さない状況となっていると報道されています。

台湾の感染者数は、本日207人だそうですが、これは日本と比較してどうなのでしょうか。残念ながらネットには最新で、両国とも15日の分しか掲載されていないので、15日で比較します。

15日は、台湾では185人、日本では6331人です。台湾の人口は2357万人、日本は1.263億人ですから、日本の人口は台湾の、5.36倍です。185×5.36=991ですから。台湾が日本の人口に換算した感染者数は991人です。

日本と比較すれば、さほどのことはないです。ちなみに、本日のコロナ死者数は台湾は本日0人、日本は、94人です。ちなみにかなりコロナ禍が緩和されたと報道される米国では、737人です。日本の人口は、米国の約1/3ですから、米国の現在の死者数を日本にあてはめる(1/3にする)と、245人ということになり、米国の死者数は日本にあてはめても、未だに一桁多いということになります。


台湾と日本は、死者数で比較すると、米国よりは日本は桁違いに低く、台湾は皆無ということです。この事実から考えると、日台とも大騒ぎする必要はありません。

それにしても、台湾がなぜこのように日本よりは、感染者数も死者数も少ないのか、これにははっきりとした背景があります。

それは、このブロクでも何度か指摘したように、2019年の夏から中国が中国人の台湾旅行を禁止したため、元々感染拡大の危険性は少なかったという特殊事情もあります。

無論コロナ禍発生直後に、海外からの渡航者の受け入れ拒否をすぐにしたということも効いていると思います。日本政府が国家安全保障会議で、外国人の入国拒否の対象を大幅に拡大することを決めたのは、昨年の4月1日でした。日本が台湾なみに、入国拒否の対象を拡大していれば、日本も台湾並のコロナ禍ですんだという可能性は十分にあります。

では、ワクチンの摂取状況はどうなっているのでしょうか。

台湾では、新型コロナウイルス対策を担う中央感染症指揮センターは15日、1日当たりのワクチン接種者が、接種開始以来最多となったとして、自費接種の予約を一時的に中止すると発表しました。

3月22日からアストラゼネカ製ワクチンの接種を開始した台湾。医療従事者を最優先として、対象者を段階的に拡大してきたのですが、接種状況がふるわず、計31 万回分余りあるワクチンを保存期限前に使い切るため、4月下旬からは自費接種も開始されていました。

これは、自費接種では費用がかかることから、予約をキャンセルしたり、無断で接種に来ないなどということは、ほとんどないからでしょう。日本では昨日述べたように、超法規的な措置で、歯科医もコロナワクチンを打てるように本腰を入れて、ワクチン接種に取り組む姿勢をみせていますが、台湾のように接種状況がふるわない場合には、自費接種も検討すべきでしょう。

それに、日本でも医療従事者、高齢者の接種を優先していますが、キャンセルなどで余った場合は、接種会場近くにいる人に、優先順位などは無視して接種して、無駄をなくすべきです。

同センターによると、14日に接種を受けた人は3万2351人で、内訳は公費2万9159人、自費3192人。3月以来の累計は18万6149人になりました。陳時中(ちんじちゅう)指揮官は、ワクチンを余らせたり、期限を切らしてしまう事態は避けられるとの見通しを示した上で、自費接種の予約をストップさせるのは、公費対象者を優先させるためと説明しています。予約を済ませている人の予定は変える必要がなく、次のワクチンが到着したら予約を再開するとしています。


日本のワクチン接種数は、累計で、5月13日までで、約400万です。台湾は、約18万ですから、日本に換算(5.36倍)すると100万を若干下回る程度です。ということは、日本の接種が遅れているとはいえ、台湾よりはかなり進んでいるといえます。これは、台湾よりも日本のほうが、感染者数や死者が多いので当然といえます。

台湾のワクチン接種数=日本のワクチンを一回以上接種

これは、どういうことかといえば、このブログでは何回か述べてきたように、一般にワクチン接種は感染が多いところからやりはじめるというのが、防疫上の常識であるからといえます。

もし、台湾がこの常識を破り、強力にワクチン接種をすすめていて、日本などの接種がそのために遅れたとしたら、台湾は日本からかなり非難されるということにもなりかねません。

その意味では、日台ともにワクチン接種に関しては、常識的な行動をしているということです。

台湾のマスコミはどうなのか知りませんが、日本のマスコミは上記のようなコロナ禍について、他国との比較分析をせずに、単に数ヶ月前と比較する等して、感染者数が増えていると報道したり、日本のワクチン接種は遅れているとするのみで、結局何をいいたいのか、全くわかりません。マスコミだけをコロナの情報源としている人たちは、コロナの状況を客観的に理解していないといえると思います。

上で述べたデータはすべて、ネットから入手できるものばかりです。マスコミだけを情報源とするのでなく、自分で調べるということも重要なことだと思います。まずは、国際比較などもせず、具体的なデータは感染者数だけとか、ワクチン接種に関しては、日本よりはるかに感染者数が多い国と比較して、日本は遅れていると断定するというお粗末な報道は信じるべきではありません。そうしなければ、簡単にマスコミに操られ煽られることになります。

最近は、テレビに顔を出す感染症専門家というのもあまりあてにならないと思えるようになってきました。無論、彼らもその分野においてはそれなりの専門家であることは間違いないのだと思います。

しかし、経済学においてはマクロ経済とミクロ経済があります。ミクロ経済学とマクロ経済学では見方が、全く違います。ミクロで正しいことが、マクロでは正しいとは必ずしもいえません。たとえば、家計と、日本経済は全く別ものです。これを同次元に扱うことは間違いです。

しかし、マスコミなどでは、これをないまぜにして論じて、国の借金1000万円超などとして、不安を煽っています。

それと同じように、感染症学にも、ミクロとマクロの見方があり、現在テレビに出ている専門家は、ほとんどがミクロの専門家であり、当然のことながらマクロ的な見方ができず、それをマスコミに利用されているのではと思えるようになってきました。これに関しては、いずれまともな専門家自身の方に是非聴いてみたいです。

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