2021年9月5日日曜日

高市早苗氏は中国が最も恐れる総理候補?―【私の論評】細田派や、麻生派全員が高市氏を支援となれば、高市氏こそ最有力候補(゚д゚)!

高市早苗氏は中国が最も恐れる総理候補?

靖国神社を参拝した高市早苗前総務相(2020年8月15日東京)

 菅義偉総理の突然の退陣表明は、中国でも速報され大きく扱われたが、それは隣国日本の次のトップが誰になるかによって、両国関係に少なからぬ影響を与え得るからでもある。中でも、早くから自民党総裁戦へ出馬の意向を示している高市早苗前総務相に、警戒を強めているようだ。

日本初の女性首相が対中強硬派の悪夢?

「中国に強硬な彼女が、日本で初の女性首相になるのか?」

 菅総理が総裁選への不出馬を表明した3日の午後、こう題する評論を載せたのは中国の新聞「参考消息」ネット版。「参考消息」とは、中国国営通信「新華社」が発行する新聞で国際問題を扱う。

「中国に強硬な彼女」とは、高市早苗前総務相を指す。

 記事は、高市氏の経歴について、大学時代に軽音楽部でヘビーメタルのドラムを叩いていた過去から始まり、政界での遍歴、政治の世界での安倍晋三前総理との良好な関係も紹介した。

 政治的な立場としては「政策の主張は保守に偏向」。

 高市氏が「自衛隊法を改正し自衛隊により大きな権限を与えるよう主張」しており、「侵略の歴史に対する反省が足りず、従軍慰安婦の強制連行の存在を認めていない」人物であると警戒を強める。

靖国参拝も指摘

 高市氏が「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」のメンバーで、8月15日の終戦記念日に何度も参拝した事実も指摘した。

 更に、高市氏を評価する日本のネット上で声も紹介している。

 高市氏が日本の新総理になった場合の“危険性”を、そこはかとなく示唆したいようである。

 中国共産党の青年組織「共青団」の機関紙「中国青年報」も、アプリ版が配信した記事をこう題した。

「女性“新右翼”の人物が、就任する可能性がある」

 “新右翼”の女性とは、もちろん高市氏。

「彼女は言動から“新右翼”と見做されている」

 具体例としては、度重なる靖国神社への参拝に加え、高市氏は「日本の対外侵略戦争は、“自衛戦争”だと主張しており、他国が日本の教科書の内容に干渉することに反対」と紹介した。

自民党が初の女性総理の奇策に出れば…

 高市氏の次期総裁選での当選の可能性を高いとみているわけでもないが、やはり一定の警戒感を抱いているのは、国際問題を扱う中国共産党系の「環球時報」紙も同じ。公式アカウント上で、国内の複数の専門家の見解を伝える記事を配信した。

 資質や政策の継続性を重視すれば、岸田文雄前政調会長が優勢と見た上で、「自民党が突然奇策を打ち出す可能性もある」と分析したのは、外交学院の周永生氏(国際関係研究所教授)。

「初の女性総裁、女性首相を推そうとする、或いは右翼路線に傾こうとするならば、高市早苗にも可能性がある」

 日中関係に関して、周氏は、岸田氏が総理になれば「比較的温和で、日中関係が緩和する可能性がある」と述べてはいるものの、実はあまり期待はしていない。

 岸田氏が、日中関係を積極的に改善する政策は進められず、菅政権の政策を引き継ぐだろうからだ。

新総理の“反中”姿勢は折り込み済み?

「“嫌中”、“反中”が日本国内のある種の政治的な正しさ」

 同じ記事の中で、こう指摘したのは中国社会科学院の呉懐中氏(日本研究所副所長)。

 新首相が誕生した後は、政権基盤が弱いので、保守的な右派や国民に迎合して政権を守ろうとするだろうと分析する。

 さらに、総裁の候補者たちは、生まれが60年代前後。日本の政界では若手層に属し、現実主義だとして、そのスタンスをこう見る。

「対中政策への強硬度は同じではないが、総体的に言えば、“反中制中”を支持する一派に属している」

日本の総理は誰でもいい?

「環球時報」が4日付の紙面に載せたのは「日本の誰が菅義偉に替わろうとも、中国は対応できる」と題する社説。

「菅政権のこの1年の日中関係は酷かった」と評価した上で、誰が総理になろうとも、日中関係が良好に大転換するようなことが起きるのは「現実的ではない」。

 その理由を、日本国内で中国に対する悪いムードが日増し濃くなっていることに加え、中国を抑制しようとするアメリカの戦略の影響を日本は大きく受けるため、国内的にも国際的にも、新しい対中路線を進める条件がないと示している。

実は余裕の中国?

 同時に、こうした環境にありながらも、中国側は対日関係を冷静に対処すべきだと指摘する。

 なぜなら、中国の経済規模はすでに日本を大きく上回っており、長期的に見れば、日本の地位と役割はアメリカの共犯者ではあれ、日本が再び中国の根本的な脅威とは成り難いからだ。

 その上、日中の経済・貿易関係の規模や互恵性を考えれば、例え日本で対中強硬の声が多くなったとしても、衝突する可能性は大きくない。

 中国にとっては、もし高市氏が次期総理となれば、多少、日中関係が悪化する可能性もあるが、すでに国力で決着をつけた今、大勢には影響がない、といったところだろうか。

「環球時報」の社説はこう結んでいる。

「日本の次の総理が対中強硬路線に進んだとしても、中国は挑戦に対応できる。中国は、ますます日本より強くなり、両国関係の悪化で損害をより多く受けるのは日本である」

【私の論評】細田派や、麻生派全員が高市氏を支援となれば、高市氏こそ最有力候補(゚д゚)!

中国のメディアがこのように、一女性の閣僚経験者に対して警戒心を露わにするのは異例だと思います。これは、いくつかの原因があると思います。

高市早苗氏

まずは、高市氏が保守派であり、反中派それもかなりきつい反中派であることです。しかし、これだけなら、中国メディアがこれほどまでに警戒心を露わにすることはないはずです。

そうして、もう一つは、高市氏が自民党総裁になる可能性は、低くはなく高いとみているということです。

「環球時報」などのメディアが何の根拠もなく、このような報道をするはずはありません。以下、高市氏が総裁になる可能性は決して低くはない根拠を示します。

高市前総務大臣をめぐっては、安倍前総理大臣が3日、出身派閥の細田派の幹部に対し、高市氏を支援する考えを伝えたことが分かりました。

NHKは4日朝、総裁選に影響を与えそうな、以下のような報道をしました。
高市氏はインターネット番組「真相深入り!虎ノ門ニュース」に生出演した際(2日)に、安倍氏と今年2月以降、「2人だけの勉強会」を開いていたことを明かし、コロナ患者を早期に治療でき、重症者や死亡者を極小化する自らのコロナ対策や、自身の経済政策「ニューアベノミクス」について披露していた。
NHKが「虎ノ門ニュース」に言及した事自体も驚きです。このようなことは、滅多にありません。

さらに、細田派幹部は4日朝、「安倍氏は、今回の総裁選について、『派閥で行動は縛らない方がいい』『複数の総裁選とすべきだ』という意見とともに、『私は、女性でビジョンがしっかりした高市さんを支持するつもりだ』と語っていた」と夕刊フジに明かしています。

高市氏は、安倍氏の出身派閥である細田派に所属していました。

今は無派閥ですが、安倍氏と高市氏は共に保守系グループ「保守団結の会」で顧問を務めるなど、政治信条が近い関係にあります。 

安倍氏が支援すれば、高市氏は細田派の支持も一定程度得られることになりそうです。 

また、麻生副総理も自身の派閥に所属する河野行革担当大臣を支持せず、高市氏の支持に回る可能性があります。

そうなれば、総裁選出馬に必要な推薦人20人以上の獲得はほぼ間違いないでしょう。

安倍氏と麻生太郎氏が連携し高市氏を推すことになれば、総裁選の勢力図は一変ます。背景には“安倍路線継承”の狙いがあるようです。

高市氏は菅内閣の支持率低下などを受け、頻繁に安倍氏の元を訪れ“首相の再登板”を要請。さらに安倍氏の経済政策を発展させた「ニュー・アベノミクス」を目玉とする自身の政策をまとめた著書を近く出版予定で、総裁選に向け“安倍色”を強くアピールしていますし、 

安倍、麻生両氏と親密で、いわゆる「3A」の甘利明税調会長(72)を幹事長に据えることは安倍氏と麻生氏かねての希望のようであり、高市新総裁が誕生すればその現実味も増すことになります。

ただ、安倍氏が幹事長ということもありえます。そうなれば、党対党の外交はいくらでもできます。蔡英文さんと安倍さんが党対党で公式会談できる可能性があります。インドのモディ首相を呼んで三者会談というのも夢ではなくなります。


細田派や、麻生派全員が高市氏を支援するとは限らないですが、もしそうなれば、当初両氏からの支援が予想されていた岸田氏にとって分が悪くなることは間違いないです。

唯一出馬を正式表明している岸田文雄前政調会長(64)に加え、有力候補として名前が挙がる河野太郎行政改革担当相(58)や石破茂元幹事長(64)も早ければ週明けにも出馬可否を判断するとみられます。 

その他の候補としては、河野氏を神奈川を地盤とする菅首相や小泉進次郎環境相(40)らが後押しし、二階俊博幹事長(82)は、自身の下で幹事長代行を務める野田聖子氏(61)支援することになるかもしれません。

茂木敏充外相(65)は竹下派が支援することから推薦人確保はクリアする一方、下村博文政調会長(67)の出馬は難しいのではないかとみられます。


総裁選は、岸田前政調会長が立候補を表明しているほか、河野行革担当大臣が立候補の意思を固めたことが分かっています。

細田派や、麻生派全員が高市氏を支援ということになれば、総裁選において高市早苗氏は最有力候補ということになるでしょう。今後の動向に注目です。

自民党細田派(清和政策研究会)、竹下派(平成研究会)、二階派(志帥会)の3派は18日、東京都に発令中の新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の期限が9月12日まで延長されることを受け、9月上旬に都内で開催予定だった政治資金パーティーを再び延期すると決めた。細田派は6日、竹下派は7日、二階派は9日に予定していました。新たな日程は改めて調整するそうです。

岸田派は、パーティーを開催ずみですが岸田さん、総裁選で党員票で勝つためには、議員票を集める必要があったのですが、二階さんに喧嘩売って50を減らし、代わりに反二階票を取りに行ったと思いきや、安倍麻生に喧嘩売って150を失っています。今回の総裁選はかなり不利です。

そうなると、今回の総裁選はかなりクリーンなものになりそうです。今回は、自民党の党員投票も含めたフルスペックの総裁選となるだけに、国民的人気が高い河野氏が出馬すれば、当院票に強いとされる石破氏にはかなり不利になります。石破氏は、そもそも20人以上の推薦人を集められかどうかにさえ疑問符がつきます。そうなると、ますます高市氏に有利となってきたと思います。

多くのマスコミは高市氏を泡沫候補扱いをし続けるかもしれませんが、どう考えても高市氏は総裁選で台風の目になることは確かです。

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2021年9月4日土曜日

ある意味“超法規的措置”アフガンへの自衛隊派遣と新型コロナ対応で露呈した日本の法整備の限界 有事対応は“憲法改正”が必要だ ―【私の論評】平時に、憲法の緊急事態条項を制定し、それに基づく実定法を定めておくべき(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

アフガニスタンで邦人を移送させる準備のためC-2輸送機に乗り込む自衛隊員ら=24日午前0時38分、鳥取県境港市の航空自衛隊美保基地

 新型コロナウイルス対策としての罰則を伴う行動制限や、アフガニスタンでの自衛隊の活動など、国の法整備に関する問題が相次いで浮上している。

 前者の行動制限について簡単に言えば、一般人への罰則を伴う行動制限は、憲法上で規定されている移動の自由との兼ね合いで、公共の福祉で読み込むのは無理があり、憲法上に非常事態条項のような、非常時には私権制限できるとの規定が必要というものだ。

 しばしば憲法を改正したくない人々は、公共の福祉で対応できるため改正不要だというが、その立場では、民主党政権時代に制定されたインフルエンザ特措法程度の私権制限しかできない。今の新型コロナ対策は、基本的にはそのインフルエンザ特措法の改正法に基づくので、私権制限は他の先進国と比べて極めて不十分だ。

 また、今回のアフガニスタンへの自衛隊派遣については、自衛隊法84条の4(在外邦人輸送)に基づくものだ。この条文は「当該輸送を安全に実施することができると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる」と定めている。救出に行かなければならないところが安全であるはずがないのに、安全であるとごまかして行くのは、かなり辛いと言わざるを得ない。

 しかも、セットになっている84条の3(在外邦人等保護措置)では、要件として(1)当該地域が安全なこと(2)相手国の同意(3)相手国と当方との連携-が求められている。今のアフガニスタンではこれらの要件を満たしていないのは明らかだ。

 それでもカブール空港に自衛隊機を派遣したのは、ある意味で超法規的な措置かもしれないが、菅義偉政権として立派な判断だった。しかし、8月26日にはカブール空港周辺でIS(イスラム国)系による自爆テロが発生し多くの死傷者が出るなど、極めて危険だ。空港までたどり着けなかった日本の関係者も多いという。

 今の憲法では、自衛隊は行政機関なので、基本として国内法での規定が必要になってくる。しかし、在外邦人保護・輸送については、国際法に則って行えば足りるので、国内法で規定しなくても構わない。そのためには、憲法に非常事態条項を新設し、自衛隊の在外邦人保護・輸送については今の日本のように自国法で限定列挙で対処できる場合を規定するのではなく、他の先進国のように国際法にのっとり対処するとすべきだ。

 なお、在外邦人保護・輸送について、国際法では、領域国による保護が期待できない場合、限定的な期間および目的で実施されるのであれば、国連憲章2条4項で禁じられている武力の行使にはあたらないとされている。

 アフガン対応では、同月15日の首都陥落直後から、他の先進国は一刻を争って自国軍用機をカブールに向かわせ自国民を救出していた。

 新型コロナ対応もアフガン対応も、その根本には有事に対応できない日本の憲法の問題がある。憲法改正しないと有事対応はできないのが実情だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】平時に、憲法の緊急事態条項を制定し、それに基づく実定法を定めておくべき(゚д゚)!

憲法記念日の5月3日に際し、各紙が世論調査結果をまとめていましたが、新型コロナウイルスなどの感染症や大規模災害に対応するため、緊急事態条項を新設する憲法改正を「必要とする」と答えた人が多く、内閣権限強化や私権制限が想定される緊急事態条項新設を容認する声が反対意見を上回っています。

緊急事態宣言をしても私権制限できないという国は、世界では日本くらいしかありません。なぜそうなるかといえば、憲法上の戒厳令や非常事態宣言などという規定がないから、私権制限ができないのです。

そもそも日本では厳密には私権制限はできない

私権制限ができないと、様々なところで歪みが起きることが国民も理解しつつあるのではないでしょうか。コロナ感染が猛威をふるった昨年の4月~5月は、ほとんどの国が私権制限を最大の100くらいにしていました。それに比較して、日本では50でした。世界でほぼ最低でした。

日本には、緊急事態、非常事態宣言、あるいは、それに規定するような憲法の規定もないし、法律もないのです。 多くの人は、「入国制限が甘い」と政府を批判していましたが、憲法上の規定がないと国内法がそれに連動して緩くなるのです。そうすると入国制限もあまり厳しいことはできなくなります。完全に渡航制限するとか、なにかに違反した場合「罰金を取る」などというようなことが実施しにくいのです。

「入国制限が甘い」と政府を批判するひとたちは、それだけではなく、日本には憲法に緊急事態条項がないことも批判していただきたいです。

日本人が海外から帰って来るときも、全部一律に止めるというのは難しいです。外国人であればできるはずだと批判する人もいますが、日本人だとできません。そのため防疫の水際対策も実施しずらくなります。

昨年2月の各国の入国制限

上の高橋洋一氏の記事には、「カブール空港に自衛隊機を派遣したのは、ある意味で超法規的な措置かもしれない」とありますが、自衛隊が職務で駆けつけ警護で武器使用をした場合殺人罪に問われる場合もありえるのです。

自衛隊が駆けつけ警護をする場合、自衛隊の武器使用は「警察官職務執行法7条に準じる」とあり、このなかでは「武器使用は合理的に必要と判断される限度において」とされています。つまり、防衛出動以外の職務で武器を使用したときには、殺人罪で告発される場合もあるということです。この原則は自衛隊のみならず海上保安庁、警察も同様の武器使用規則で運用されており、告発されるリスクは存在しているのです。

刑法上の違法性を阻却しうる事由として、刑法35・37条があります。「35条:正当行為」そして、公安職の公務員の皆さんがよくご存知の「36条:正当防衛」、「37条:緊急避難」です。防衛出動や治安出動以外の自衛隊員の活動においても、武器使用を「35条の正当行為」として位置付ける必要があるのではないかと考えます。もちろん、海上保安庁や警察の正当な法執行活動でも同様の措置が必要です。

憲法上に規定がないと、様々なところに影響がでてきます。憲法に規定がないということは、国内の法律は憲法を超えられないわけですから、当然法律で規制することはできなくなります。 憲法を超えるような法律をつくろうとすれば、最終的に違憲立法審査にかかってしまうことになります。それでも何とかしようとすれば、超法規的措置や、倫理観に訴えるなどの空気で縛るというようなことになります。

菅政権は、ワクチンの打ち手が集まらないという危機に見舞われたとき、医師・看護師以外の歯科医なども打てることにするという、超法規的措置をとりました。これは、ほとんど報道されませんでしたが、日本赤軍事件以来初の、超法規的措置です。




このようなことをするのは、大変です。かなりの勇気が要ります。しかし、このようなことも憲法上の規定があれば、それに基づく実定法がすぐできます。本来はそのように用意すべきものです。

平時において、予め憲法の規定をつくっておいて、それに基づく実定法のときには、どのような歯止めをするかという議論もできるはずです。そのようなことがなく、いざというときに超法規的措置を連発すれば、そちらの方がよほど危険です。 

現状では、結果的に、超法規的措置に対してどう歯止めが効かせるのかという議論はありません。そのため「仕方なく超法規的措置でやる」というレベルです。これは、本来はあまり良いことではありません。

やはり、平時のときに、憲法の緊急事態条項をつくっておき、それに基づく実定法をつくっておくべきです。

そうでないと、これからも様々な矛盾が生じてくることになります。

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2021年9月3日金曜日

リトアニアでも動き出した台湾の国際的地位向上―【私の論評】国際社会からの共感とNATOによる兵力配備がリトアニアの安全保障の根幹(゚д゚)!

リトアニアでも動き出した台湾の国際的地位向上

岡崎研究所



 8月12日付のTaipei Timesの社説が、リトアニアによる台湾代表処設置について、「一つの中国」原則への痛手を与え得る、と指摘している。

 中国外交部は、バルト三国の一国であるリトアニアが、「台湾」の名称を使用して代表処を開設することに決定したことを激しく非難した。そして、駐リトアニア中国大使を直ちに召喚するとともに、中国に駐在するリトアニア大使に対して北京を直ちに離れるよう要求した。

 Taipei Timesの社説は、今回のリトアニアの行動を「大胆かつ勇気ある」ものとして歓迎しているが、中国が今後リトアニアに対し、如何なる報復的措置を取ることになるか、大いに注目されるところである。

 中国政府のメディアと呼んでよい「環球時報」は、リトアニアを「狂った、小さな国」と蔑視し、こんな小さな国が大きな国との関係を悪化させようとするのはまれなことだ、と書いた。中国によれば、リトアニアの行動は「一つの中国」の原則に反し、蔡英文政権下の台湾当局の目指す事実上の「台湾独立」への道を支持するものであり、それは滅亡への道である、ということになる。

 リトアニア政府が「台北」ではなく、「台湾」の名称を使った代表処を開設するというのは、ちょうど、東京にある台湾の代表処の名称を、今日の呼び名である駐東京「台北経済文化代表処」ではなく、駐日本「台湾代表処」へと切り替えることに等しい。

 昨年4月、約200人のリトアニアの政治家と公的立場にある人々が、ナウセーダ大統領に対し、公開書簡を出し、台湾が WHO(世界保健機構)に参加することを支持するようにと訴えた。その時、同大統領は動かなかったが、ランズベルギス外相は台湾が WHOにオブザーバーとして参加することを公然と支持した。そして、今年 6月には、リトアニア政府は台湾に対し、二万回分のワクチンを供与した。

 リトアニアとしては、このような行動が中国の怒りを買うであろうことは重々承知の上であったと思われる。それでも、リトアニアがこのような行動に出た理由については必ずしも明確ではない点もあるが、Taipei Timesの言うように、最近の中国との貿易関係の減少、歴史的・地政学的に見たリトアニアとロシアとの関係、そしてますます威圧的かつ覇権主義的になる中国共産党への警戒心などが、今回のリトアニアの対台湾政策のなかに反映されているように思われる。

 シャーマン米国務副長官はリトアニア外相と電話で会談し、台湾との関係をめぐって中国から圧力を受けているリトアニアに対する支援を強調したと報道されている。同副長官は北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)の加盟国であるリトアニアと「固く結束している」と述べた、という。

 近年、東欧諸国と台湾との関係の緊密化が伝えられることが多くなっている。チェコ国会議長一行が台湾を訪問し、台湾議会において「私は台湾人である」と発言し話題になったことは、記憶に新しい。

 なお、本年春のG7外相会談のコミュニケでは、7か国が一致して、WHOへの台湾の意義ある参加を支持すると表明し、台湾海峡の平和と安定の重要性にも言及した。

 この台湾をめぐる流れの中で、特筆しておきたいのは、東京オリンピック2020の開会式での各国選手団の入場の場面だった。2021年7月23日、Covid-19の影響で一年延期された東京オリンピックの開幕。IOC(国際オリンピック委員会)の公用語であるフランス語や英語のアルファベットの順番ではなく、日本語の五十音(あいうえお)順での入場だった。

 その際、「チャイニーズ・タイペイ」の所で、中継のNHKのアナウンサーは、日本語でお馴染みの「台湾の選手団です。」と紹介し、これが台湾では大きな話題になった。中国は不快感を示しはしたが、それ以上の抗議やボイコット等の行動はなく、東京オリンピックの競技に影響することはなかった。もはや台北が台湾の一都市(首都)の名称に過ぎず、台北の他に台南や台中が存在するように、台湾が台湾であることは、誰の目にも明らかになっている。

【私の論評】国際社会からの共感とNATOによる兵力配備がリトアニアの安全保障の根幹(゚д゚)!

リトアニアとはどのような国なのか、あまり知らない人も多いでしょう。グルメや観光などのことは、他のサイトをあたってください。ここでは述べません。ここでは、安全保障の観点から述べます。

リトアニアは、バルト三国の一つです。バルト三国、即ちリトアニア、ラトビアとエストニアは、ウクライナやジョージアと同じく旧ソ連構成国であり、人口はそれぞれ、約280万人、200万人、130万人です。

バルト三国

三国合わせても、その人口はウクライナの七分の一、面積は四分の一しかありません。また、個別に計算すれば、いずれの国もジョージアより小さいです。しかも、ラトビアとエストニアはロシアと陸続きで国境を接しており、両国の人口の四分の一はロシア民族です。そのロシア民族は当然バルト三国がロシアの支配下に入って欲しいし、何かあれば必ずロシアに全面的に協力するでしょう。

当然、ロシア自身もバルト三国を支配したいという強い願望を持っています。このような状況では、圧倒的な力の差やロシア系住民の存在を考えれば、ロシアのような軍事大国にとって、バルト三国を制圧するのは容易にみえます。

しかしロシアはバルト三国へ侵略できません。なぜなら、バルト三国はNATO加盟国だからです。NATOに入っていれば、どのような小さい国でも安全になります。

なぜならその国が武力攻撃を受けた場合は、アメリカ合衆国やイギリス、フランスなどの軍事大国かつ核保有国が反撃することになるからです。その反撃の恐れは最も効果的な抑止力となり、ロシアのような凶暴的な軍事大国であっても、簡単に手を出せないのです。

バルト三国とウクライナ、ジョージアの違いとは、正に集団安全保障の枠に入っている国と入っていない国の違いです。

集団安全保障の組織に入っておけば、どんなに小さい国でも安全でいられます。しかし入らなければ、自国を自分だけで守らなければならないです。もし攻撃してきた敵の方が強かったら、どうしようもないのです。

だかこそ2008年にウクライナとジョージアのNATO加盟のための行動計画への参加申請が承認され、その後両国がNATOに加盟できていたら、きっとウクライナもジョージアもロシアに侵略されず、領土や何千人の尊い命も奪われずに済んだでしょう。

リトアニアによる台湾代表処設置については、リトアニアが小国でありながらも、NATOの加盟国であるという背景があるのは間違いないでしょう。もし、NATO加盟国でなければ、大国の脅威におびえて、このようなことはできなかったでしょう。

リトアニアに対して中国が露骨に圧力をかけたり、軍事的脅威を煽れば、NATOは何らかの対象をするでしょう。リトアニアの背後にNATOがあるので、中露ともリトアニアに露骨な脅しをかけたりすることはできません。もしするのなら、制裁を受けるなど、それなりの覚悟が必要です。

リトアニアと中国とはリトアニア独立直後の1991年9月14日に国交を結び、「両国関係はおおむね順調に進展し、両国首脳は連絡を取り合っている」(中国外務省)という状況でしたた。だが近年、中国は「戦狼外交」を進め、米国との対立も激化。人権問題で西側諸国の中国批判が強まるにつれ、リトアニアも対中強硬姿勢を取るようになりましたた。

それが顕著になったのが今年5月20日。リトアニアの議会が、中国に向けた決議を議員の5分の3の支持によって採択しました。決議では、中国の少数民族ウイグル人に対する扱いを「民族大量虐殺(ジェノサイド)」と表現し、中国が「職業訓練目的」と主張する新疆ウイグル自治区の収容施設に関する国連の調査を要求。欧州委員会による対中関係の見直しも主張しました。

また、香港国家安全維持法の撤廃や、チベット自治区への監視団の受け入れも求めています。ただ決議に拘束力はなく、シモニテ首相やランズベルギス外相は投票に参加していません。

サカリエネ議員

決議案を提出したサカリエネ議員は「(リトアニアは)50年間、(ソ連の)共産党政権に占領されてきた。この残酷な教訓を決して忘れないためにも、われわれは民主主義を支持する」と話していました。

ちなみに、サカリエネ氏は、日米英など18カ国とEUの議員らで構成する「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」の所属です。IPACは昨年6月、中国による香港への統制強化などを機に発足した組織。民主主義国が連携して中国の人権問題に厳しく向き合うべきだと主張しています。

さらに、決議翌日にも、米政治サイト「ポリティコ」が、ランズベルギス外相の発言として「中国と旧共産圏など17カ国の経済協力枠組み(17+1)からの離脱を宣言し、EUに対しても中国との関係見直しも求めている」と伝えました。「17+1」は2012年に始まり、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」に関する経済協力などを推進してきたものです。

このように、中国に厳しいバイデン米政権に同調するような振る舞いを見せることから「リトアニアはEUと中国の関係悪化をリードする国の一つだ」(露紙イズベスチヤ)と指摘されるようになりました。

その後、リトアニアは台湾との関係重視を鮮明にして代表機関設置の流れとなり、7月には新型コロナウイルスのワクチンを台湾に送って友好ムードを前面に押し出しました。

中国は、台湾の国際的存在感を低下させることを目的として、主として経済を梃に台湾と国交のある国の切り崩しを図っています。2016年5月に蔡英文総統が就任して以来、7か国(サントメ・プリンシペ、パナマ、ドミニカ共和国、ブルキナファソ、エルサルバドル、ソロモン諸島及びキリバス)が台湾と断交、中国と国交を結んでいます。

現在台湾と外交関係のある国は15か国です。しかしながら、最近、経済を梃とする中国の影響力拡大は、「新植民地主義」、「債務の罠」との批判が高まっています。更には、新疆ウィグル族の人権問題に関連して中国とEUが対立、2020年12月にEUと中国で合意された「包括的投資協定」の批准に向けた欧州議会での討議は停止しています。

このような状況下で、EUの一員でもあるリトアニアの台湾との関係強化が「包括的投資協定」批准の阻害要因となりかねないことを危惧し、リトアニアの動きが他のEU諸国に広がらないように強い態度に出ていると考えられます。

2017年ドイツ連邦軍の装甲車がリトアニアに到着。バルト三国ではドイツ軍の武器が増えている。これは第二次大戦後としては、初の光景だった。

リトアニアは先にも掲載したように、2012年に開始された「中・東欧サミット」、いわゆる「17+1」の参加国でした。同サミットは、EU加盟国のポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア、スロベニア、リトアニア、ラトビア、エストニアの11か国とEU非加盟国のセルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア、アルバニア、モンテネグロの5か国の合計16か国でスタートし、2019年にギリシアが加わり17か国となりました。

中国が一帯一路の一環として、これら諸国との貿易、投資を増大させることが期待されていました。しかしながら、今年5月にリトアニアは、「期待していたほどの経済的メリットを得られない」として、「17+1」の枠組みからの離脱を明らかにしました。台湾代表処の設置は、これに引き続くものであり、単純に、台湾からの経済メリットのほうが中国より大きいと判断したかのように見えますがそうではありません。

リトアニア国防省は、今後10年間を対象とする「脅威評価2019」という文書を公表しています。旧ソビエト連邦の共和国として、長年独立運動を実施していた歴史から、脅威評価のほとんどはロシアで占められています。

しかしながら、脅威として名指しされていた国は、ロシアの他は中国のみです。ロシアの脅威が政治、経済、軍事と幅広く述べられているのに対し、中国からの脅威は、情報活動の拡大ででした。中国は、香港や台湾に対する中国の主張を正当化する勢力の拡大を図っており、今後このような活動がリトアニアを含むEU諸国で広がってくるであろうという評価です。

「17+1」が経済的繁栄を目指すものではなく、中国の影響力拡大に使われているというのがリトアニアの見方です。今年5月リトアニア議会は中国のウィグル人に対する扱いを「ジェノサイド」として、国連の調査を要求する決議を行いました。リトアニアでは1990年の独立に際し、ソ連軍により市民が虐殺されるという事件が起こっており、共産党に対する嫌悪感も相まって、反中国に傾いたという事ができます。

リトアニアが今回台湾の代表処設置を認め、更には「台湾」という名称の使用を許可したことは、国家として強い意志の表れと見ることができます。太平洋諸島国家の中には、支援額が中国のほうが多かったという理由で、台湾と断交し、中国と国交を結んだと伝えられる国家もあります。

「17+1」からの離脱は経済的メリットが少ないからと説明されていますが、今後中国が経済を梃に関係修復を図ったとしても、中国への不信感が根底にある以上、リトアニアの今回の決定を覆す可能性は低いです。ましてロシアと協力してリトアニアを罰するというような方法は、リトアニアの態度を硬化させるだけでしょう。

リトアニアは帝政ロシア、その後継であるソ連、そしてナチスドイツに国土を蹂躙され、国家の名前すら失った時期があります。しかしながら、粘り強く独立運動を継続し、1990年に旧ソ連邦共和国の中で最初の独立国となりました。

今回のリトアニアの決断には、中国から直接軍事的脅威を受けていないことが大きく影響していることは間違いないでしょう。しかしながら、中国の強圧的な姿勢に対し、毅然と対処することこそが、国際社会の注目と共感を呼び、そしてその共感が、ロシアという大国から直接脅威を受けている小国リトアニアの安全保障を担保するとの考えがあると考えられます。

リトアニアは先にも述べたように、NATOの一員であり、実質的な安全保障はNATOが担保します。NATOの対ロシア戦略の一環として、2019年以降、NATO軍1個大隊(兵士約500人)が、リトアニアにローテーション配備されています。国際社会からの共感とNATOによる兵力配備がリトアニアの安全保障の根幹となっています。

中国は大使の召還を行いましたが、リトアニアとの断交までには至っていません。今後中国がどのように振り上げたこぶしを下すのか注目されます。




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2021年9月2日木曜日

【日本復喝】中国が狙う地方の廃校 「心温まる交流」かと思いきや…日本での“進出基地”に すでに転居した周辺住民も―【私の論評】想定される危機に関しては、あらかじめ対応しておくのが、安全保障の基本(゚д゚)!

【日本復喝】中国が狙う地方の廃校 「心温まる交流」かと思いきや…日本での“進出基地”に すでに転居した周辺住民も

反対運動に使われた看板

 これも少子高齢化が進む日本の弱点か。子供の減少で学校の統廃合が進むなか、中国が何と、日本の地方の廃校に目を付けている。

 北京市にある中国共産党の子弟が通うエリート校「北京海淀外国語実験学校(海淀学校)」だ。1999年創立で、幼稚園から小・中・高校生の約6000人が、学校内で寮生活をしている。

 IT(情報技術)、語学、芸術、スポーツ分野で英才教育に力を入れており、人民解放軍さながらに軍服や銃を使った軍事訓練を行っている。

 そんな海淀学校と交流話が持ち上がり、地元住民を巻き込む大騒動となったのが、瀬戸内海に面し、香川県東部に位置する東かがわ市だ。

 市と海淀学校が交流を始めたのは2017年のことだ。心温まる交流が続くと思われた矢先、19年12月の市議会定例会で、宮脇美智子市議(幸福実現党)がこの問題を取り上げ、市を二分する大問題に発展した。

 海淀学校と市の交流について、市民にきちんと説明されないまま進められたためだ。住民が猛反発したのは当然だ。海淀学校側は、昨年3月に廃校となった市内の旧福栄小を借り上げ、「日本での進出基地としたい」と要請し、市が容認に傾いた。50人規模の児童や生徒が1週間ほど滞在するため、海淀学校が宿泊施設に改造するという。

 反対派住民は、旧福栄小学校が海淀学校に拠点化されれば、トラブルに巻き込まれるのではないかと反対した。周辺住民の一部はすでに引っ越してしまったという。

 実際、瀬戸内海の小豆島を望む市北部の海岸では、海淀学校がヨット訓練施設として空き家を買収する動きを見せ、これを察した地元住民が、先回りして買収を阻止した経緯がある。

 この騒ぎに上村一郎市長は今年3月、拠点化の中止に加え、安全面の不安を理由に海淀学校との交流中止を発表した。だが、反対派住民は、安全が確保されると市が判断すれば、交流が再開されるかもしれないと疑心暗鬼になっている。

 中国共産党の強い影響下にある海淀学校との交流は即、中国共産党との交流を意味する。ましてや日本側は年端もいかぬ義務教育の児童や生徒である。自由や民主主義という普遍的な価値観を共有できない相手との交流には、教育上もリスクが伴う。彼らと天安門事件や香港、ウイグル人弾圧をどう語るのか。

 7月19日、筆者は市長室に上村市長を訪ねた。

 上村市長は「国際情勢に鑑み、このまま中止もあるし(再開も)あり得る」と述べた。

 異文化を知り、相互理解を深めることは大切である。人口減少に悩み地域の活性化を図る自治体が、主体的に国際交流を図るのを頭から否定するものではない。ただ、国際交流には地元住民の理解が欠かせない。市は頭を冷やし、海淀学校との交流をきっぱり諦めるのも見識である。

 ■佐々木類(ささき・るい) 1964年、東京都生まれ。89年、産経新聞入社。警視庁で汚職事件などを担当後、政治部で首相官邸、自民党など各キャップを歴任。この間、米バンダービルト大学公共政策研究所で客員研究員。2010年にワシントン支局長、九州総局長を経て、現在、論説副委員長。沖縄・尖閣諸島への上陸や、2度の訪朝など現場主義を貫く。主な著書に『静かなる日本侵略』(ハート出版)、『日本が消える日』(同)、『日本復喝!』(同)など。

【私の論評】想定される危機に関しては、あらかじめ対応しておくのが、安全保障の基本(゚д゚)!

北海道でも、このブログにも過去にのべていますが、あいかわらず中国等による土地や森林等の買収が進んでいます。

農林水産省は、昨年5月外国資本による森林買収に関する調査を実施した結果、北海道で合計20haの森林買収が行われていたことを明らかにしました。

日本の農林水産省は、令和2年における外国資本による森林買収の事例について、森林法に基づく届出情報などの行政が保有する情報を参考に、都道府県を通じて調査を行い、結果を取りまとめました。

なお、行政が保有する情報は、「森林法に基づく届出情報(面積にかかわらず、森林の土地の所有者となった場合に市町村へ提出されたもの)」、「国土利用計画法に基づく届出情報(一定面積以上の土地について、売買等の契約を締結した場合に市町村へ提出されたもの)」、「不動産登記法に基づく届出情報(第三者への対抗要件として登記所に登記されたもの)」となります。

クリックすると拡大します

北海道では、蘭越町において、2haが資産保有の利用目的で買収されていました。ニセコ町では合計3.7haが買収され、真狩村では合計10ha、留寿都村では3.4ha、喜茂別町では0.8haとなります。北海道では合計20haが買収されていました。

また、神奈川県では、箱根町において合計0.6haが買収されていました。京都府では、京都市において合計1.2haが買収されていました。

国内の外資系企業と思われる者による森林買収の事例として都道府県から報告があった事例は、26件あり、森林面積は404haとなっています。

なお、居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われる者による森林買収の事例の集計(平成18年~令和2年における森林取得の事例)では、北海道が1,804ha、福島県が90ha、群馬県が44ha、神奈川県が13ha、長野県が12ha、兵庫県が260ha、岡山県が48ha、福岡県が60ha、沖縄県が10haとなっています。

なお、北海道に関しては、2019年10月に中国王岐山国家副主席が、習近平国家主席の特使として天皇陛下の「即位礼正殿の儀」に参列後、北海道に訪問しており、有珠山などを視察していました。

この中国王岐山国家副主席を歓迎するために開催された昼食会には、日本側からは、鈴木直道北海道知事、北海道議会議長、札幌市長などが参加していました。2019年9月に開催された中華人民共和国成立70周年祝賀レセプションの際には、鈴木直道知事は、北海道では、今後とも中国との友好関係の発展に向け、経済や文化、教育をはじめ多方面で取組を進めていく方針を表明していました。

中国では、10年2月、国防動員法なる法律が採択、公布され、同年7月に施行されました。全14章72の条文からなり、一言でいうと、中国国内で戦争や武力衝突が起きた場合、金融機関や交通輸送手段、港湾施設、報道やインターネット、医療機関、建設、貿易、食糧など、民間資源をすべて政府の管理下に置くことができるというものです。

さらに、動員命令が出されると18~60歳の男性と、18~55歳の女性が国防義務を負うことになります。免除条件に「外国に居住する者」とは書かれていないため、日本にいる中国人も有事の際は中国軍に動員され、日本にいながら破壊活動や軍事活動を展開する要員にすることができます。

11年3月11日の東日本大震災時、新潟の中国総領事館が5日後の16~21日に、東北地方に住む中国人1万人以上を新潟市体育館など3カ所に集め、5711人を新潟空港から30便の臨時便で上海とハルピンに向けて出国させました。

ところが、この3カ所には日本人は立ち入れませんでした。ある県議会関係者は「総領事館は治外法権になるが、市の施設を貸しただけなのに、体育館なども治外法権になった」と語りました。

もし、国防動員法が発令され、動員された在日の中国人が買収された森林や農地などに集結するとどういう事態になるのでしょうか。新潟のケースを当てはめると背筋が凍る思いがします。

冒頭の記事にあるように、中国資本の進出は北海道に限らないです。「経済振興」を目指す各自治体に「経済侵攻」を続ける中国資本。自衛隊施設の周辺が買収されると、安全保障上重大な事態になるという声が噴出します。しかし、安全保障は、軍事面だけではありません。

エネルギー、食糧、水源、教育と範囲は広いです。中国資本や中国の姿が背後に見え隠れする資本による国土買収は、治外法権地域の拡大、教育、政治への介入、そして主権までも脅かされることを忘れるべきではありません。

出所)平野秀樹・姫路大学特任教授作成

世界各国の外国資本による土地買収に対する法整備を見ると、取得や利用方法を制限していたり所有者や利用者を厳格に管理していたりしています。何ら法整備もルールも持たないのは日本だけともいえる。いわば、中国資本による〝草刈り場〟状態です。

とはいえ、中国資本の脅威ばかり唱えていてもこの問題は解決しません。現時点ではそれが〝合法〟であるからです。むしろ、問題は現状を放置している日本人の危機意識の欠如にあるともいえます。

このブログにたひたび掲載しているように、日本の海戦能力は中国をはるかに凌いでおり、特に日本の対潜哨戒能力や潜水艦隊のステルス性などは、中国のそれをはるかに凌いでおり、海戦において日本は中国に対して圧倒的に有利です。

そのため、軍事力では、中国は尖閣諸島など奪うことはとうていできません。そのため、中国は軍事力ではなく、日本に対して経済的侵攻を強めているのではないかと思います。

私はこれを「武器を持たない戦争」と位置づけています。それに耐えうる法整備や国づくりが求められています。これはもう以前からいわれていますが、本当に〝待ったなし〟の課題です。


ただ、日本には現在優秀な22隻の潜水艦隊があり、これで24時間交代で常時日本列島をカバーすることができます。たとえ国防動員法が発令され、日本各地で、動員された在日の中国人が買収された森林や農地などに集結して軍事行動をしたとしても、日本側は潜水艦隊によって、日本に近づく中国の艦船や、航空機を遮断すれば、中国人たちは食糧・弾薬などの補給を絶たれてお手上げになるのは必定です。

中国と日本が軍事衝突になれば、日本はすぐに負けてしまうと考える方は、中国のプロパガンダにかなりやられていると思います。それは、中国共産党の思うつぼです。

最終的に日本が中国に占領されることはないですが、それにしても、中国人が、日本国内に武器や食糧を備蓄しておけば、長期にわたってゲリラ活動などは可能です。それでも、いずれ陸自などによって掃討されるでしょうが、それまでの間は大変なことになります。

このようなことをいうと中国人差別だと思われるかもしれませんが、世界に類をみない「国防動員法」が存在する国の人間が中国人です。それを考えれば、中国人をそのようにみるのが当たり前であって、もはや個々人が良い人、悪い人などの次元ではなく、中国国籍を持つ人はすべて脅威になりえるのです。中国共産党がそれを望まないというのであれば、「国防動員法」は廃案にすべきでしょう。

想定される危機に関しては、あらかじめ対応しておくのが、安全保障の基本です。

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2021年9月1日水曜日

【日本の解き方】ワクチン接種者にも外出自粛、いつまで押しつけ続けるのか…国会こそオンラインで開催を―【私の論評】コロナ感染症対策は変更すべき!まずはワクチン接種者の自粛を緩和をせよ(゚д゚)!

【日本の解き方】ワクチン接種者にも外出自粛、いつまで押しつけ続けるのか…国会こそオンラインで開催を 

IOCバッハ会長

 緊急事態宣言が21都道府県に拡大し、改めてテレワークの強化や学校でのオンライン授業の導入が促されている。

 8月25日の衆院厚生労働委員会で興味深いやりとりがあった。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、立憲民主党の尾辻かな子氏の質問に答える形で、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長について「人々にテレワークを要請してるときに、また来るんです。バッハ会長の挨拶が必要なら、なぜオンラインでできないのか」と批判した。同日午後の衆院議院運営委員会では西村康稔経済再生相も「国民感情に配慮すべき」と尾身氏と同様に感情的な発言をした。

 バッハ会長は既にワクチンを2回接種している。ワクチン接種者にも感染リスクはあるが、未接種者と比べるとはるかに低いので、そういう人は、世界どこでも行動は原則として自由だ。

 尾身氏らはここ1年半くらい感染者の拡大を防ぐために行動制限一本やりだった。1年以上前から医療体制強化のための緊急包括支援交付金や新型コロナ患者入院確保のための緊急支援事業などの予算は確保されていたが、未消化であったり、補助金を受けていても実際に患者受け入れを怠ったりして、医療の供給体制は強化されていない。

 この点について言及せずに、今頃になって「臨時のプレハブ施設でもいい」というのは無責任だと言わざるを得ない。

 日本のワクチン接種はかなり進んできた。8月27日公表時点で、少なくとも1回接種したのは国民の54%、2回接種も43%になった。もう1、2カ月すると、欧米先進国の状況に追いつく。となると、ワクチン接種者をどのように社会の中で活用すべきかを考えたほうがいい。

 民間のソフトバンクは、プロ野球の一部の試合について2回接種者らを対象にチケットを販売すると発表した。

 国は今後もワクチン接種者を不要不急の外出の自粛対象にし続けたいのだろうか。ワクチン接種者のバッハ会長に「挨拶をオンラインでして来日するな」と言うのは、ウイルス保有者扱いのような言い方だ。世界でワクチンパスポートが導入される中で、今後のビジネス来日者への悪影響も懸念される。

 もちろんテレワークを推進するのは当然のことだが、ワクチン接種者に外出の自粛を押しつけることとは別問題だ。国会や政府分科会こそ、オンライン会議を積極的に導入したらどうだろうか。

 筆者はワクチン接種済みなので、大学の講義などについてはオンラインでも対面でもどちらでも可能で、それぞれのいいとこ取りをしている。講義以外の事務打ち合わせも、状況に応じて使い分けている。

 オンライン導入の前提となるのは一定の設備だが、一部で公費による負担もあり、対応はしやすくなった。かつては新型コロナ対応で大変だったが、今では良い環境が整ったのではないかと思っている。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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ワクチン接種者にまで、自粛を要請するの本当にもうやめたほうが良いです。このようなことをするので、多くの人に生活への不満が相当溜まっています。

内閣府は1日、「満足度・生活の質に関する調査」の結果を発表しました。それによりますと、回答者全体の平均満足度は10点満点中5.74点で、昨年と比べ0.09ポイント減少。調査を始めた2019年以降で最低だった。担当者は、新型コロナウイルス感染拡大が影響したと見ています。

男性の0.06ポイント減に対し、女性は0.12ポイントの減少。減少幅は男性の2倍でした。コロナ感染への不安やストレスが生じて困っているとの回答の割合も女性は59.0%で、男性は49.1%でした。

今回特徴的だったのは、東京圏の生活満足度が初めて地方を下回ったことです。 地域別では東京圏に住む人の生活満足度の低下幅が大きく、地方圏を下回りました。

 「新型コロナに感染する不安やストレスに困っている」という回答が東京圏の方が地方圏より多く、感染者数の多さや緊急事態宣言などによる生活の制限が影響したとみられます。

調査は3月、モニター登録した15~89歳の男女を対象に実施。5234人が回答しました。 生活の満足度を10点満点で評価してもらい、それを報告書にまとめました。

内閣府

もう、ワクチンを接種した人にまで、自粛を求めるのは限界に来たといえます。

しかし、こうした生活への不満は、マスコミが増長しているところがあります。特に最近では、「新型コロナ陽性になって自宅療養の場合、医療機関にかかることもできず、ひたすらじっと耐えるしかない」という誤解です。

このようなことが、日々テレビで報道されるので、多くの人が、信じ込んでしまい、このようなことか生活への不満に繋がつているところがあると思います。

結論からいいますが、新型コロナ陽性、あるいは、発熱などの症状がある場合、保健所の連絡を待たずに、診療所の治療を受けることができます。

検査で新型コロナ陽性の結果が出た場合、検査機関(医療機関や民間の検査機関)から「陽性のため、居住地の保健所から連絡が行くので、その指示に従ってください。」と言われることが報道されています。

そして、保健所から連絡が来るまで数日を要する、あるいは、保健所から連絡が来ても、ただ自宅にいて、体温や血中酸素濃度を保健所に報告するだけで(逼迫している地域では、保健所とのやり取りがないこともあります)、医療機関の治療が受けられない、という報道がなされています。

 あるいは、熱が出たため、心配になって近所の診療所に電話しても、「うちは新型コロナに対応していない」と言われて困った、とか、自治体の相談センターに電話してもなかなかつながらない、というお話も報道されています。

 しかし、新型コロナ陽性や疑いのある方が、「保健所の指示が無いと、医療機関の治療を受けられない」ということでは全くありません。陽性者や疑いのある方が、外出の自粛を求められるのは、「感染を広げないようにするため」であり、そこに気を付けていただいた上で、必要な治療はきちんと受けるべきです。

 具合が悪い中で、悪化するかもしれない不安を抱えながら、ただただ自宅にいるというのはとてもつらいことですし、万が一、容態が急変して亡くなるといった事態は、なんとしても防がねばなりません。そのためにも、適時に適切な治療を受けることが必要です。

 陽性が判明したら、あるいは、具合が悪いなコロナかなと思ったら、まずは、かかりつけ医(地域の診療所)などに連絡すべきです。かかりつけ医が新型コロナに対応できない場合、あるいは、かかりつけ医がいない方は、各都道府県で、新型コロナ患者に対応できる医療機関のリスト等(下記は、各県のリンク先の載った厚労省HPです。なお、各自治体のHPを見ると、自治体ごとに「親切度」が違うのが気になります。)がありますので、電話で連絡してください。

そうして予約をして、医療機関を受診することができます。状況によっては、患者が医療機関に出かけていくのではなく、電話やスマートフォンを使ったオンライン診療、そして、自宅に医師に来ていただく往診といった方法が可能な場合もあります。

 制度的にも、実態的にも、最近よく言われる、「新型コロナが感染症法の『2類相当』であるために、すべてを保健所がコントロールしていて、患者側が直接医療機関とつながることができない」ということではありません。

地域によって、新型コロナに対応できる診療所が十分ではない、という問題はありますが、それは法律や制度の問題とは違います。このようなことは、2021年8月13日の厚労省通知「感染拡大地域における陽性者の家族等への検査について」において、「診療所の医師は、検査陽性者を確認した際には、保健所の判断が無くとも、さらにその家族等の濃厚な接触の可能性のある者に検査を促すこと。さらに保健所の連絡を待たず、必要な治療や保健指導を行うこと」という「期間限定の緊急事態措置の更なる強化に関する提言」(新型コロナウイルス感染症対策分科会)(令和3年8月12日)を引用する形で、示されています。

テレビではこのようなシーンが報道され不安を煽っていた

抗体カクテル療法についても、誤解があるようです。早期(発症から7日以内)に投与することで、重症化を防ぐ効果を期待されている抗体カクテル療法は、現時点では、地域の入院設備のない診療所では投与できません。

厚労省の通知(2021年8月25日)により、抗体カクテル療法は、入院だけではなく、「外来でも投与可能」と変更されましたが、この「外来」というのは、入院機能を持ち、24時間救急対応できる病院の外来部門、ということであり、少なくとも現時点において、診療所で投与が可能となったわけではありません。

これは、投与後のアナフィラキシーショックなどに対応する必要があり、そうした機能を有した医療機関での取扱いに限定するという趣旨です。

新型コロナが日本で感染をしはじめて、もう一年を超えました。昨年は、ワクチンもなく接種に関するデータもありませんでしたが、それも除々に整いつつあります。

感染した人のワクチンの接種状況を厚生労働省が調べたところ、2回接種した人の感染は接種していない人に比べておよそ17分の1と大幅に少なくなっていることが分かりました。



さらに、ワクチンを2回接種した65歳以上の高齢者は、未接種の高齢者に比べ、感染後の死亡率が5分の1程度にとどまることが11日、厚生労働省の分析で分かっています。

感染者のデータを一元管理する情報システム「 HER―SYSハーシス 」のデータをもとに、今年6月に感染が判明した高齢者について、ワクチンの接種回数別の死亡者数と死亡率を調べたところ。死亡率は未接種者が4・31%だったのに対し、1回接種者が3・03%、2回接種者が0・89%でした。

ワクチンは間違いなく効いているようです。今後、毎年定期的にワクチンを接種する必要性がでてくるかもしれませんが、特に最近二度ワクチン接種済みの人は、今年から来年の冬あたりまでは、感染率も、重症化率も少ないとみて間違いないようで。

それにしても、国内だけみていては、比較の対象は難しいです。米国の例を以下にあげます。

新型コロナウイルスの再拡大に直面する米国では、ワクチン接種の進んだ州と遅れた州の明暗が分かれています。インド型(デルタ型)のまん延により、ワクチン拒否層が多い州では感染や入院者数が昨冬のピークを上回りましたが、先行州はマスク着用の推奨などを組み合わせ、抑えこみに成功しています。

現在、全米の新規感染者のほとんどをワクチン未接種者が占めています。米疾病対策センター(CDC)が24日発表した研究によると、未接種者が感染する確率は接種完了者に比べて5倍、入院する確率は29倍にのぼります。

CDCのデータによると、ワクチンの接種完了率が全人口の38%にとどまる南部ミシシッピ州では、8月中旬に1日の100万人あたり新規感染者数(7日移動平均)が一時1200人を超えるなど感染が急拡大しました。同州に隣接するアラバマ、ルイジアナ両州とともに接種完了率は全米最低水準で、8月に入って新規感染者数が昨冬のピークを超え過去最多を更新する州が増えています。


深刻な医療逼迫に直面するミシシッピ州保健当局は8月中旬、大学病院の駐車場に2つの「野戦病院」を開設したほか、州外から看護師や呼吸療法士など1000人超の医療従事者の派遣を求める入札を実施。24日から州内50カ所超の病院への派遣が始まりました。

一方、ワクチン接種完了率が65%超と高い東部マサチューセッツ州の新規感染者数は100万人あたり200人程度と、昨冬のピーク時に比べ5分の1程度にとどまります。同州を含む北東部6州の新規入院者数は27日時点で100万人あたり12.6人でした。ミシシッピやアラバマなどを含む南東部8州は72.9人と6倍近い格差があります。

接種完了率が5割台と全米平均並みながら、感染や医療逼迫が最悪レベルなのが南部フロリダ州です。27日の100万人あたり新規感染者数は1000人を超えミシシッピ州を上回りました。共和党のデサンティス知事はマスク着用を義務づけたりワクチン接種証明の提示を求めたりすることを禁じてきました。温暖な気候に引かれ旅行者や退職者が多く集まる土地柄だが、感染対策はほとんど取られていませんでした。

米国の状況などをみても、ワクチン2回摂取者に関しては、マスク、手洗い、三密回避などを行いつつ、自粛はしなくても良い方向にもっていくべきです。

このブログでは、以前から、コロナ感染症を現在の2類から5類に引き下げて、インフルエンザ相当の扱いをし、感染者が増えても重傷者、死者を増やさないようにして、強靭な社会を構築することを主張してきましたが、これを実施する前に、まずはワクチン摂取者の自粛緩和を実行すべきと思います。とにかく、なにかといば「自粛」一本やりの政策は、もうやめるべきです。

自粛緩和の内容としては、ワクチン2回摂取者を対象に飲食店の利用や、GOTOトラベルも含むべきです。ワクチン非摂取者に対して差別することは良くないとは思いますが、区別という考え方で、接種者の自粛は緩和の方向ですすめていくべきです。

特に、ワクチン接種希望者の全員が打ち終わったころには、必ずそうすべきです。ある程度打ち終わったら全員でなくても、様子をみながらその前にしても良いと思います。現在、日本はとてつもない速度でワクチン接種が行われています。10月から11月には希望者全員が家終わることにそうなりそうです。

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2021年8月31日火曜日

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中国の空母戦力が抱えるミサイルへの脆弱性

岡崎研究所


 フィナンシャル・タイムズ紙のカトリーン・ヒル中華圏特派員が、8月17日付け同紙掲載の論評‘China’s focus on giant aircraft carriers makes it vulnerable to missile threat’で、中国が増強する空母戦力について、地勢的に宮古海峡やバシー海峡を通過して太平洋に出る必要があり、その際必ず地上配備のミサイルの射程に入るので脆弱である、と指摘している。

 ヒルの議論は合理的と思われる。しかし、中国は空母群の建造を悲願とし、それに力を入れており、潜在的に彼我の軍事バランスに影響を与える可能性もあるので、注意深く見ていく必要があることは言うまでもない。

 空母戦力が抱える脆弱性という中国の状況は、ここ数年ミシェル・フロノイ(元国防次官)などの米専門家が米国の空母等巨艦中心主義が中国のA2/AD(接近阻止・領域拒否)戦略により脆弱になっている警鐘を鳴らしていることの丁度裏返しとなっており、興味深い。米国は、この非対称の問題を是正すべく、ドローンなど精密兵器の開発、配備に乗り出している。

 これまでに中国は2隻の空母を就役させている。ウクライナのバリヤアーグを購入、再建造した2012年9月の「遼寧」、最初の国産で「遼寧」の改良型となる19年12月の「山東」である。基地は青島と海南島の三亜である。30年頃までには4隻を保有する可能性が指摘されている。空母は、運用上最低4隻が必要と言われる。

 4隻目は原子力推進になるとの見方もあるが、そのためには相当の技術力が必要とされるようだ。またカタパルト(発艦方式)の開発も注目されており、3隻目は電磁式を採用すると見られている。なお、電磁式カタパルトの技術については、中国系米国人エンジニアが米国から持ち出したとして米国で起訴され、有罪になった。

 中国の空母能力が実際に大きな力を持つためには、まだ種々の問題を克服する必要があるように思える。空母が実際に作戦に出る場合、艦載機の他、警戒機、駆逐艦、潜水艦等で構成される空母艦隊が必要となる。そうでなければ裸の巨艦になる。今太平洋に入っている英国のクイーン・エリザベスも艦隊を組んできており、先日その一部を構成する潜水艦が韓国釜山に入港したと見られている。

 中国の空母が真に力を持つためには、これらの構成要素が全て高い能力で揃わねばならない。遠方で作戦する場合には、更に補給・保守サービスなどの基地やネットワークも必要となる。それには外交努力や保守能力の確保等が重要となる。簡単なことではない。中国は現在ジブチに基地を有しているが、パキスタンのグワダル港やスリランカのハンバントタ港も狙っているといわれる。

 米国は空母等の運用に必要な世界的同盟網、相互支援網を持っているが、中国はそれを欠いている。中国の空母が世界的な作戦をできる体制には未だ程遠い。しかし、今後そのようなネットワークを構築するかもしれない。注意すべきであろう。

 中国が何のために空母保有を追求するのか、そのドクトリン、シナリオは未だ判然としない。大国としてのステータス、国威発揚が目的かもしれない。中国の戦略家は、「今や中国は大国になったから、大国の役割を果たせねばならない。大きな軍事力も持たねばならない」という趣旨のことをよく言う。

【私の論評】海戦で圧倒的に有利な日米は、
中国の空母開発を大歓迎(゚д゚)!

このブログでは、以前から空母をはじめとする海上に浮かぶ艦艇は、もはや海上戦力ではないことを述べてきました。その代表的な記事のリンクを以下に掲載します。
中国への脅威となれる日米豪印「クワッド」―【私の論評】対潜哨戒能力も同盟関係も貧弱な中国にとって、日米豪印「クワッド」はすでに脅威(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部引用します。
現在、世界各国が持っている海軍の船は、実は2種類しかありません。1つは空母などの水上艦艇、もう1つが潜水艦です。水上艦艇はすべて、いざ戦争が起こったら、ターゲットでしかありません。

船が浮かんでいる時点で、レーダーなどで、どこで動いているのか存在がわかってしまいます。そこを対艦ミサイルなどで撃たれてしまったら、空母だろうと何であろうと1発で撃沈です。しかし、潜水艦はなかなか見つからないので、その意味では現代の海戦においては潜水艦が本当の戦力なのです。
現代の海戦においては潜水艦が本当の戦力
そういう観点から見ると、中国はたくさんの水上艦艇を所有していますが、潜水艦そのもや対潜戦闘などの能力、水面より下の戦力は弱いです。一方日米は、水面より下の戦力においては圧倒的に強いです。

サイズ的には中国海軍は、数も多いし脅威ではありますが、実際の戦闘態勢になったら、水中の戦力は日米のほうが圧倒的です。海戦ということになると、中国は日本単独と戦っても負け戦になってしまいます。

特に、日米が協同した場合、海戦においては世界最強です。日本の通常型潜水艦は、静寂性(ステルス性)に優れており、中国にはこれを発見することはできません。一方米国の原潜(米国製通常型潜水艦は製造されていない)は、攻撃型も戦略型も攻撃力は世界一です。

日米潜水艦隊が協同して、日本の潜水艦隊が情報収集にあたり、米原潜が攻撃をするなど双方の長所を生かした役割分担をした場合、これに勝てる海軍はありません。ロシアは無論のこと中国でも海戦では全く歯がたちません。

このような中国がなぜ空母を持つのでしょうか。そのヒントになりそうなことが、中国メディアの騰訊に今年の3月に掲載されていました。

記事はまず、海軍強国はどこも空母を保有しているという共通点があると指摘し、空母はその国の総合的な実力を測る良い指標となっていると主張。世界最強の海軍を持つ米国は11隻もの空母を運用していて、新たな空母も開発中だと伝えました。

続けて、空母の分野では米国が「圧倒的な発言権」を持っているのですが、実は日本も「空母を7隻保有している」と主張。これは、いずも型護衛艦2隻とひゅうが型護衛艦2隻、それにおおすみ型輸送艦の3隻を指しているようです。

ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」

これらは護衛艦という名前がついていることからも分かるとおり空母でないのは明白ですが、いずも型護衛艦を空母に改修することが決定していることから、「日本はその気になれば護衛艦を空母に改修したり、空母そのものを建造することが可能」と主張しているのでしょう。

さらに記事は「米国は、日本が目の前で7隻もの空母を造るとは思いもしなかったはずだ」と主張し、「このことから日本の野心がいかに大きいかがよく分かる」としています。ほかにも、日本は原子力発電に力を入れており、核兵器の分野で一定の成功を収めればいつでも核による反撃ができることになると分析。

「そうなったら隣国だけでなく、世界中の多くの国が大きな被害を受けることになる」と最大限の警戒を示して記事を結びました。どうやら中国は日本の防衛力とその潜在力を警戒しているようです。

この記事からもわかるように、まずは中国は世界から海軍強国であるとみられたいと考えているようです。

日本が7隻の潜在的な空母を持っていることや、潜在的な核保有国であることに非常に脅威を感じているようです。

こうした脅威をはねのけたいという願望もあるようです。だからこそ、空母を持ちたがるのでしょう。

空母は、日米などをはじめとする先進国や中国のようにある程度大きな軍事力を持つ国にとっては、もはや大きな標的にすぎず、海上戦力ではありません。

昭和17年1月の空母「瑞鶴」飛行甲板後方

では、米海軍をはじめ空母を所有する国々は、なぜそれを所有し続けるのでしょうか。

それは、まず第一に先程述べたように、中国もそう考えているように、「海軍強国はどこも空母を保有している」という根強いイメージがあるからでしょう。

次に、対艦ミサイルや潜水艦などを持ち、ある程度の軍事力のある国はではない国々とっては、未だに空母は大きな脅威です。よほど内陸の国で無い限り、空母により世界中のいかなる国にでも、戦闘機や爆撃機を送り込むことができます。

また、ある程度軍事力のある国でも、制空権・制海権を奪われた後には、空母は依然として脅威です。

現在の空母の現実的な使い方としては、軍事力の劣る国を短期間に制圧するとか、軍事力のある国に対しては、ミサイルや魚雷で制空権・制海権を奪った後の最後の仕上げを素早く行うことでしょう。軍事力のある国に対して、初戦で空母を用いるのは、相手に大きな標的を与えるだけのことになり、愚の骨頂といえます。

日米は、強力な対潜哨戒能力を持っているので、中国の空母は脅威ではありません。日本は、ステルス性に優れた潜水艦隊を、米国はステルス性にはおとるものの、驚異的な戦闘力を持つ原子力潜水艦隊を持っているので、海戦においては中国に対しては、圧倒的に有利です。

中国海軍は、米軍にはとうてい及ばないし、日本単独でも海戦では、勝ち目はありません。

日米にとっては、中国が空母を開発することには大歓迎でしょう。何しろ、海戦では全く役にたたない空母に中国が巨額の投資をするわけですから、その他の部分がおろそかになるわけですから、大歓迎です。

潜水艦や、対潜哨戒能力をあげることに投資するのではなく、空母に投資すれば中国は今の状況から抜け出せず、海戦においては日米に水を開けられたままの状態になるでしょう。

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2021年8月30日月曜日

自民党総裁選「大ピンチ」の菅首相に残された「勝算」はコロナ対策にある―【私の論評】自民党政権は、コロナ感染症に負けない強靭な社会の構築を目指さなければ、2009年のように政権交代を許してしまいかねない(゚д゚)!

自民党総裁選「大ピンチ」の菅首相に残された「勝算」はコロナ対策にある

行動制限「一本槍」はもうやめるべき

 第5波にはピークアウトの兆候

8月24日から、東京2020パラリンピックが始まった。その一方で、国内では政局がすでに動き始めている。これから自民党総裁選、そして衆院選挙を迎えることになる。自民総裁選は、9月17日告示、29日投開票だ。 

菅政権支持率は新型コロナの感染状況と見事に逆相関になっているので、調査によっては危険域といわれる30%を割り込んでいる。


 今後の政局を占う上でも、今後の新型コロナの感染状況を見てみよう。

 まず、全国の先行指標とも言える東京都では、第5波は既にピークアウトした可能性がある。日々の新規感染者だけではなく、その一週間前との差をみると、下表になる。


日々の新規感染者の増加は明らかに鈍化している。上表をみると、ピークは8月18日前後である。 

この分析は、一般的に統計学で用いられるが、最近話題の「再生産数」と基本的には同様のものだ。もちろん、これらの数字は単に過去を反映したものであり、将来について断言はできないが。

 マスコミも煽れなくなっていく

検査の陽性率も低下している。そのピークは8月15日前後だ。過去のデータを見ると、陽性率と新規感染者数にはかなりの相関関係がある。 


最近の陽性率の低下も、第5波のピークアウトの可能性を示唆している。

全国の新規感染者数のデータでも、東京都と似たような傾向が出てきている。ピークは、東京より一週間程度遅れの8月26日前後の可能性もなくはない。 


こうなると、さすがにマスコミが煽りたくても、「新型コロナ感染者数が過去最高」という常套句が使えなくなる。そこで、重症者数が過去最高と最近は言うようになった。 

しかし、重症者数は感染者数の遅行指標であり、だいたい2週間程度遅れる。なると、東京において重症者数が過去最高と言えるのは、あと1週間程度ではないかと筆者は予測している。

 全国の数字では、やはり遅効性のある東京以外で新規感染者数過去最高というだろう。そのうち、○○県では重症者数過去最高というだろう。

 ここで、ちょっと大胆な推計をしてみよう。もちろん、でている数字よりもかなりの幅をもってみてほしい。

 各地の緊急事態宣言は9月12日まで行われる予定だ。そのときには、東京都の新規感染者数は。500~1500人程度になっている可能性がある。東京都に今回の緊急事態宣言が出された7月12日と同じか、若干多い程度だ。それで、緊急事態宣言の解除となるかどうか。

 菅陣営にも勝算がある理由

東京都の新規感染者数について、自民党総裁選の告示日である9月17日には1000人を割り込み、投開票日の29日には500人程度になる可能性がある。前例で言えば、緊急事態宣言解除の目安になる数字だ。

 全国については、17日には10000~15000人程度、29日は2500~5000人程度になるかもしれない。 

この大胆な推計は、今では苦戦が強いられている菅陣営にも勝算があることを意味している。菅政権の支持率は、新型コロナの感染者数と逆相関である。であれば、新型コロナの感染が収まるにつれて、菅政権の支持率は高まる可能性があるからだ。

 新規感染者数は、新型コロナ対策としてはあまり意味がないが、政治的にはまだ意味がある。いずれにせよ、自民党総裁選でも、新型コロナ対策がカギにならざるを得ないだろう。


 自民党総裁選で、是非論点にしてもらいたいのが、憲法改正だ。新型コロナ対策で明らかになったのは、憲法改正してこなかった日本ではまともな有事対応ができないことだ。

 新型コロナ感染者の増加を受けて、全国知事会がロックダウン(都市封鎖)のような強い措置を検討すべきと政府に要望している。政府分科会も同じように要望している。現状の緊急事態宣言とロックダウンは違うのか、日本の現在の法律でどこまで可能なのか。

 1年半前海外からの新規株が流入しているときも、どうして入管で入国拒否できないのか、一定期間隔離できないのか、と疑問があった。そのときからの話が1年半ぶりにぶり返した。

 ロックダウンは一般人に対する罰則つきの行動規制(移動制限)があるが、現状の緊急事態宣言では一般人に対する行動規制は、罰則がなくお願い、自粛要請でしかない。

 行動制限「一本槍」に意味はあるのか

なぜ日本では罰則つき移動規制でなく自粛なのか。それは移動の自由は基本的人権として憲法22条で認められているが、その制限には公共の福祉では不十分で、緊急事態条項などの憲法上の規定が必要だからだ。先進国では緊急事態条項があるが、日本では憲法改正しなかったのでその条項はない。日本でロックダウンが行えない理由だ。

 もっとも、今の日本の憲法でも、私権制限がまったくできないわけではない。憲法の中の公共の福祉を活用して一部の私権制限は可能だ。

 日本の場合、飲食店などの一部業界については、限定的な規制ができる。筆者は、一般人に対する行動制限は憲法改正しないと厳しいと思うが、一部の免許業種では、公共の福祉による限定的な制限ができると考える。

 それは、免許条件で付せばいい。免許業種はしばしば「お上」に従うが、それは免許条件に反し免許を剥奪されると困るからだ。筆者も役人時代、法律に書き込めないものは、免許条件で対応した経験がある。

 全国知事会や政府分科会は、まず一般人の移動規制をいっているようだが、それは憲法上のハードルが高い。もちろん憲法改正も議論すべきであるが、より即効性があるのは免許業種に対する行動規制だ。

 特に、医療従事者には、医師法が適用できるのだから、免許条件で緊急時に政府や各都道府県知事の指揮命令に従うことを検討してもいい。

 さらに、今の新型コロナ対策での感染抑制一本槍も改めるべきだ。

 結局この1年半で医療体制は強化されたのか

今回、バッハ会長が再来日したが、それについても批判が出ている。

 25日午前の衆院厚生労働委員会での、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長の発言が典型だ。

 立憲民主党の尾辻かな子氏からの質問に西村氏が答える際に、尾辻氏は「バッハ会長が、人々にテレワークを要請してる時に、また来るんです。バッハ会長の挨拶が必要なら、なぜ、オンラインでできないのか」と疑問視。「国民に(不要不急の外出の自粛を)お願いしてるんだったら、オリンピックの会長、なんでわざわざ来るのか」と批判した。

 25日午後の衆院議院運営委員会でも、西村康稔経済担当相も、「国民感情に配慮すべき」と尾身氏と同様で、感情的な発言をしている。

 バッハ会長は既にワクチンを2回接種している。もちろん、ワクチン接種者でも感染リスクはあるが、未接種者と比べるとはるかに低い。世界中の国で、海外渡航用のワクチンパスポートを導入している。日本も7月末から導入した。

 さらに、公共施設や飲食店入店において、ワクチン接種済み証の提示を求める動きも世界に広がっている。つまり、ワクチン接種者は、世界ではどこでも行動は原則として自由になっている。しかし、日本ではワクチン接種済み者の入国でも一定の制限を課している。 

尾身会長は、ここ1年半くらい感染者の拡大を防ぐために行動制限一本槍だった。1年以上前から、医療体制強化のための緊急包括支援交付金や新型コロナ患者入院確保のための緊急支援事業などにより予算は確保されていたが、未消化であったり、補助金を受けていても実際に患者受け入れを怠るなど、医療の供給体制は強化されていない。

 合理的に考え、社会を回していくべき

この点について、尾身会長は1年以上前には何ら発言をしてこなかったのに、今頃になって「臨時のプレハブ施設でもいい」といっているのはかなり無責任だ。

日本でもワクチン接種はかなり進んでいる。27日時点で、少なくとも1回接種は国民の55%、2回接種も44%になっている。

となると、政府、尾身会長もワクチン接種者をどのように社会の中で活用すべきかを考えたほうがいい。民間のソフトバンクは、プロ野球でワクチン2回接種者にチケット販売すると発表した。 

ワクチン接種者のバッハ会長に、挨拶をオンラインでして、来日するなと言うのは、まるでバッハ会長をウイルス感染者であるかのような言い方だ。 

ワクチン接種者と未接種者を同一視し感情的に反応するよりも、(差別ではなく)区別して合理的に考え、社会を回すことを考えたらどうか。

【私の論評】自民党政権は、コロナ感染症に負けない強靭な社会の構築を目指さなければ、2009年のように政権交代を許してしまいかねない(゚д゚)!

上の記事で、ワクチン接種者と未接種者を同一視し感情的に反応するよりも、(差別ではなく)区別して合理的に考え、社会を回すことを考えたらどうかという主張は正しいと思います。

そうして、その行き着く先は、先日もこのブログで述べたように、コロナ感染症に負けない強靭な社会を構築することです。多少感染者が増えたにしても、重症者、死者を増やすことなく、自粛などもしないですむ社会を構築することです。

それについては、以前このブログでも述べました。その記事のリンクを以下に掲載します。
札幌で抗体カクテル療法開始 臨時診療所も1日から投薬 感染妊婦8カ所で入院可―【私の論評】抗体カクテル療法の先にあるのは、コロナに負けない強靭な社会を構築すること(゚д゚)!
新型コロナウイルスの構造

詳細は、この記事をご覧いただくものして、この記事では、新型コロナをインフルエンザと同じように扱えるようにすべきことを主張しました。そのためには、現在重症化リスクのある患者に限って適用できる、抗体カクテル療法などを、医師の判断によって、抗インフルエンザ薬のように用いることができるようにすべきことを述べました。

そうなれば、コロナウィルスを撲滅することには長い時間がかかるかもしれないし、場合によっては、永遠に撲滅はできないかもしれませんが、それでも感染症で多くの人が重症化し亡くなることの無い、社会経済活動を制限しなくてもすむ強靭な社会を構築できるようになります。

まさしく、このようにして、日本社会をコロナ感染症に負けない社会を構築すべきなのです。この方向に菅政権が舵を切り、さらにコロナで痛めつけられた、経済をいちはやく回復させるために、効果のある財政出動ならびに大規模な金融緩和を行うべきなのです。

これは、英米などではすでにその方向に向けて動きだしています。シンガポールもその方向に向けて動いています。

日本だけが、行動制限「一本槍」に固執していれば、とんでもないことになります。感染症ではないですが、これに似たようなことは以前にもありました。

それは、リーマンショックです。リーマンショック(2008年)の原因はいうまてもなくサププライムローン問題ですが、日本はその頃はデフレ真っ只中で、日本の証券会社などには、サブプライムローンなどに手を出すような余力はありませんでした。

ですから、本来日本はリーマンショックなどで悪影響など受けるはずはなかったのです。しかし、現実には大きな悪影響を受けました。

それは、何に原因があったかといえば、当時の日本は日本経済がどうであろうと、とにかく増税などの緊縮財政を続けたことと、日銀は、金融引締策を実行したことに原因がありました。

リーマンショックで直接悪影響を被った国々が、大規模な金融緩和、財政出動を行ったにもかかわらず、日本では日銀は金融引締、財務省は緊縮財政をつづけたわけですから、日本はより深刻なデフレ・円高に見舞われたのは当然のことでした。

このような有様でしたから、本来日本はリーマンショックなどとは無縁だったにもかかわらず、リーマンショックの直撃を受けた多くの国々がいちはやく経済を回復させたにもかかわらず、日本は長期にわたって回復せずに、一人負けの状態となりました。

今回のコロナ対策でも同じことです。他国か、コロナに負けない強靭な社会を目指し、経済対策も、大規模な金融緩和、財政出動を行っているときに、日本だけが、それを行わず、行動制限「一本槍」に固執しつづければ、リーマンショックの再現になります。

他国は、コロナに負けない強靭な社会を構築し、経済も素早く回復するなか、日本だけが税字訳な社会の経済も回復せずとんでもないことになってしまいます。

それを回避するためにも、菅政権はコロナに負けない強靭な社会の構築を目指すことと、物価目標2%を達成するまでは、実効性のある財政政策を重視することとを宣言し、実行すべきです。

そうすれば、菅総理に「勝算」の目が出てくることになります。それをせずに、行動制限「一本槍」に固執しつづければ、リーマンショックの二の舞になります。

それこそ、菅政権どころか、自民党が危なくなります。リーマンショックの頃のように、社会は閉塞感にさいなまされることになり、その結果として、民主党に政権交代をゆるしてしまった2009年を再現することになりかねません。それだけは、回避すべきです。

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2021年8月29日日曜日

テク企業への統制は中国企業の冬の時代を迎える―【私の論評】今後中国は社会も経済も発展することなく、図体が大きいだけの、アジアの凡庸な全体主義国家になるしかない(゚д゚)!

テク企業への統制は中国企業の冬の時代を迎える

岡崎研究所


 中国では、昨年11月、馬雲(ジャック・マー)のアント・グループの新規株式公開が中国の金融規制当局の指示で中止されて以来、テク企業への統制が進んでいる。中国の2大インターネット企業であるアリババとテンセントは、独占禁止法の規制を受けている。7月初めには、配車サービスの「ディディ」(Didi Global)が、ニューヨークで上場してわずか数日で網にかかった。

 さらに最近、教育関連のテクノロジー業界もターゲットになっている。学校のカリキュラムに載っている科目を教える会社は、海外での上場や外国人投資家の獲得、利益の計上ができないという新しい規制ができた。子供たちを教える事業では、誰も金持ちになってはいけないということだ。

 エコノミスト誌7月31日号の社説は、こうしたテク企業統制を取り上げ、この締め付けは、国内外の企業活動や投資にネガティブな影響を与えうることを論じている。同社説によれば、中国の意向ははっきりしている。中国は、自国の取引所で、自国の権限で、自国の条件で資本を調達することを望んでいる。このことが金融市場に与えるマイナスの影響は、まだまだ続くと思われる。中国自身が最大の敗者となるかもしれない。

 教育産業やITやネットサービス産業が、急速かつ野放図に発展し、経済の安定的発展、あるいは社会の安定のために、規制を強化する必要があったことは否定できない。問題は規制の仕方であり、中国のやり方は国内外の企業活動や投資にネガティブな影響を与えうるという上記エコノミスト社説の指摘は正しい。だからといって中国国内の規制強化、中国式の管理、監督強化の流れが変わるとも思えない。

 それは、習近平政権の体質、発想と深く関わっているからだ。政治、イデオロギーの優先であり、「党の指導」の強調は特に際立っている。彼らは、中国のすべての空間に「党の指導」を行き渡らせることが、中国の成功と共産党の統治の持続を保証すると考えている。なぜなら中国共産党ほど優秀な政党は存在せず、「党の指導」を貫徹することにより、正しいことを確実に成し遂げるというのが建前だからだ。

 この「想定」と現実とが一致するかどうかは別問題だ。種々の議論はあり得るし、現にある。しかし、習近平路線と異なる声を発出できる環境はほぼ存在しなくなった。経済の現場が、持続的経済発展への負荷が大きくなりすぎて悲鳴を上げるまで、習近平は聞く耳を持たないであろう。

 しかも、米中関係の悪化は、現時点をとれば習近平への追い風となっている。あの米国が理不尽にも中国を潰しにかかってきている。習近平主席の下に全人民が一丸となって、この難局を乗り切らなければならない。しかも時間は中国に有利であり、今頑張れば必ず勝てる。これが中国の大衆社会の雰囲気なのだ。

 中国の経済関係部門の人材は育っている。経済のことはよく分かっている。実体経済への損害を最小にするために彼らは現場で全力を尽くすであろう。しかし、管理・監督部門は往々にして政治、イデオロギーに引っ張られる。しかも、当局が管理を強化しようとしている分野は、中国で最も活力のある創造的な民営企業が作りだした産業である。

 そこに手を入れることは、中国経済の活力をそぐ。民営企業は、現在、首を縮めて風向きを図り、どうするか考えている。先進的な民営企業に冬の時代が来たことは間違いない。

【私の論評】今後中国は社会も経済も発展することなく、図体が大きいだけのアジアの凡庸な全体主義国家になるしかない(゚д゚)!

経済に関して、中国共産党が全く理解できていないことがあります。それは、先進国がどうして先進国になりえたかということです。

多くの発展途上国は、中国のように政府主導で、経済発展することができます。実際、過去には経済発展をした発展途上国もありました。ところが、一人あたりの国民の所得が100万円前後になると、それ以上になることはありませんでした。これを中進国の罠(中所得国の罠とも呼ぶ)といいます。

例外もありますが、それは産油国やシンガポール(人口570万人の都市国家)のような例外的な国だけでした。

なぜ、このようなことになるかといえば、それは民主化と、政治と経済の分離、法治国家化が行われないからです。

先進国は、過去において民主化、政治と経済の分離、法治国家化を成し遂げました。そのため、中所得国の罠を超えて、成長し現在に至っています。それ以外の国は、経済発展できず、発展途上国のままです。

これは、高橋洋一氏が作成した下の「民主主義指数(横)と一人当たりのGDP」を見ても明らかです。


民主化がなされれば、当然のことながら、その後政治と経済の分離、法治国家化もなされていくことになります。無論、経済・社会に規制などはなされますが、それは自由な競争等を阻害するときになされるのが筋です。

これによって何が起こるかといえば、多数の中間層が輩出され、それらが自由な社会経済活動を行うようになります。

自由が保証された中間層は、あらゆる階層、あらゆる地域で社会を変革するイノベーションを行うことになります。それによって、社会が改革され、あらゆる不合理、非効率が解消され、結果として経済発展します。そうして、中進国の罠を突破することになるのです。

これらをなし得たから、先進国は先進国になりえたのであり、故なく先進国になったわけではありません。

すべての発展途上国は、先進国のようにどこかで、民主化、経済と政治の分離、法治国家化に踏み切らなければ、中所得国の罠から逃れることはできないのです。

中国もその例外ではありません。いくら政府が音頭をとって、大金を投入してイノベーションをせよと号令をかけたところで、それは点のイノベーション、せいぜい線のイノベーションにしかなりえず、先進国の自由が保証された中間層による、あらゆる階層、あらゆる地域で社会を変革するイノベーション、立体的なイノベーションにはなりえないです。

その結果社会にあらゆる不合理、非効率が解消されずに残ったままで、社会が発展することなく、結果として経済発展もできなくなるのです。そうして、中進国の罠から逃れられなくなるのです。

社会にあらゆる不合理、非効率が残ったままで、経済発展しようとしてもできません。それでも、中国共産党は、デジタル政府、デジタル経済、デジタル社会を含むデジタルエコシステムによるデジタル中国を目指そうとしています。


しかし、いくらデジタル化をすすめたところで、社会にあらゆる不合理、非効率が残ったままでは、経済発展などできません。せいぜい、国民監視の能力を飛躍的に高めることができるだけでしょう。監視能力が高まっただけでは、社会は変革されず、経済発展もできません。

中国共産党は7月1日に結党100年周年を迎えました。国民党との内戦に勝利し、1949年10月1日に中華人民共和国の建国を宣言。以来、単独で統治しています。

1980年代に鄧小平氏の下で始まった中国の経済的奇跡は、かなりの政策的工夫がなされた結果であることを忘れるべきではありません。ソビエト連邦崩壊後のロシアでは、政府が急きょ規制を撤廃して自由市場を導入し、「ショック療法」と呼ばれる手法が取られました。

毛沢東氏の急進的な社会主義が、中国経済をソ連モデル以上に硬直的で脆弱なものにしていたことから、中国にはロシアが取ったような選択肢はありませんでした。

代わりに、鄧小平氏の指導の下、改革派は地元の有力者に自由化を慎重に試す権限を与え、私有財産を徐々に復活させ、農民や企業家が利益を保持できるようにしました。共産党は株や債券の取引所を復活させ、米金融市場を利用して非効率的な省庁の形態だった組織を上場企業に変えました。

彼らはいくつかの大胆な決断をしました。朱鎔基首相(当時)は、1990年代に非効率な政府系企業の従業員を推定で4000万人解雇しました。また中国共産党は、不動産資産を公的管理から私的管理に移行するという歴史上最も大々的な措置に踏み切りました。

中国の経済復興の大部分は勤勉な国民のおかげです。しかし、中国の政治指導者は、たとえ最初に混乱を引き起こしたとしても、賢明に道を切り開いたと評価できます。

このところ、中国共産党の創造力は枯渇の兆しを見せています。自由貿易試験区のような、現在の問題には対処できない古い解決策へのノスタルジーが高まっているようです。習氏は「頭を叩く」ことには長けているかもしれないです。彼の厳しい反腐敗キャンペーンは、低迷していた中国共産党に対する国民の信頼を取り戻すのに大いに役立ちました。しかし、経済的には、習政権は改革を止めたどころか失敗しました。

より生産性の高い資産クラスから資金を奪い、中国の家計を負債で苦しめている不動産への過剰投資を減らすための長期的キャンペーンを例に取ってみます。当局はパンデミックの際、景気刺激のための資金が不動産に流入しないよう努力したのですが、中核都市の住宅価格は再び急上昇しています。

その理由の一つは、中国共産党がパンデミックへの対応として、信用を緩和しつつインフラに支出するという、昔ながらの手法を用いたことでした。その結果、2008年の世界金融危機の後と同様に、資金が住宅に流れ込むことになりました。しかし、政府はこの流れを止めることができず、冷却効果があると思われる不動産税の導入も見送られました。

官僚は、問題のある業界の頭を叩くことを、改革と同義であると考えがちです。しかし、これは必ずしも正しいとは限らず、高くつく誤解である可能性が高いです。例えば、中国共産党が主導するアリババのようなテクノロジー大手に対する脅しは、投資やイノベーションを促進するとは思えません。

アリババは時価総額でアマゾンと肩を並べることを狙っていたがそれはもはや不可能になった

一方、当局は半導体分野での自立化を目指していますが、この問題に何年も資金を投入しているにもかかわらず、ほとんど成功していません。不良債権が2兆ドルに達しようとしている中、中国は無駄なイノベーションモデルに執着している余裕はありません。

例は枚挙にいとまがないです。労働人口の減少による人口動態の危機が加速する一方で、貧富の差が拡大しています。しかし、共産党は「戦狼」的な男性が牛耳っており、女性の出産に関する決定を細かく管理し、フェミニストを逮捕し、労働力の移動を制限することに依然固執しています。

15兆ドルの経済規模を誇る中国の共産党は莫大な資源と国民の支持を得ています。しかし、中国共産党が直面している問題は、鄧小平氏の改革者たちが克服した問題よりもさらに複雑です。共産党がもう1世紀持続したいならば、過去の成功に甘んじることをやめなければならないです。

過去の成功に甘んじることをやめるには、民主化をすすめるしかないのです。しかし、中国共産党にはその気は全くないようですから、今後中国は経済発展することなく、図体が大きいだけの、アジアの凡庸な全体主義国家になるしかないのです。

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2021年8月28日土曜日

バイデンのアフガン危機は「米国の歴史上で最もばかな行動」とトランプ―【私の論評】表面を取り繕うだけの、バイデンの中東外交は破綻した(゚д゚)!

バイデンのアフガン危機は「米国の歴史上で最もばかな行動」とトランプ

<引用元:FOXニュース 2021.8.27

フォックスニュースのショーン・ハニティ氏

ドナルド・トランプ前大統領は26日の「ハニティ」(ブログ管理人注:フォックスニュースのショーン・ハニティのこと)の独占インタビューで、ジョー・バイデン大統領がアフガニスタンの危機を増大させたのは、「おそらく米国の歴史上でなされた最もばかな行動」の結果だと述べた。また、デラウェア州民主党の大統領は、優先順位を国家安全保障からリベラル政治に転換させた「ウォークな(社会的不公正や人種差別に対して敏感な)将軍」に囲まれていると続けた。

トランプは司会のショーン・ハニティに、バイデンの「ウォークさ」とマーク・ミリー統合参謀本部議長のような将軍のそれが、一般軍人の力と傾向を間違って解釈し、優先順位をごちゃ混ぜにしていると警告した。

「バイデンとウォークな将軍たちは全くのウォークだ。私は在任期間の終わりに言っていたのだが、平等やこうした別の事柄についての手紙が送られてくるのを見ていた――兵士たち、彼らは戦いたいと思っており、戦う覚悟を持ちたいと思っており、兵士でありたいと思っているのだが、ウォークな将軍たちが、もう誰も信じられないようなレベルにまで状況が変わってしまっていた」とトランプは述べた。

アフガニスタンにおいて、バイデンと司令官たちは自分と同じように撤退しようとしていたが、それを全く逆の順序で行ったとトランプは述べた。「彼らは1つ忘れていた。彼らは人々を一緒に連れて行くのを忘れていた。品物を一緒に伴うのも。つまり世界で最高の軍事装備を持っていくのを忘れたということだ。そしてそれは信じ難いことだ。なぜなら子供でも分かることだったからだ。軍隊は最後に撤退させるものだ。子供でも分かることだった。どうして彼らはこのことを我が国に対して行ったのだろうか?」

その行動が米国の歴史上で現職の大統領による最悪の決定の1つとなり、13人の軍人が今回死亡し、カブールの混乱状態が継続しているとトランプは述べた。

「非常に残念だ。おそらく軍事戦術の観点からもそうだし、全く恥ずべきことであり、米国に起こったことの中で最も恥ずべきことだ。我々は世界中から見てばかのように見え、弱く、悲惨であり、自分で何をやっているか見当もつかない人々がリーダーとなっている」とトランプは語った。

「軍隊を撤退させて、これから人々を脱出させると言い、それで突然、タリバンが入ってきている―我々はタリバンを完全に支配下に置いていたので、我々の許可なしには行動しなかった。我々は信じられないほど素晴らしい合意を結んだ。我々の兵士を殺してはいなかった」

トランプは、バイデンが遠回しにその件についての自分の成功に言及したと述べ、大統領が発言の中で、2020年に結んだ合意のためにタリバンは18カ月間米軍兵士を1人も殺していなかったことを認めたことを指摘した。

「私が話したいことは、我々の兵士たちは、市民もだが、とてつもない危険に瀕していると思う。空港を出入りする飛行機はとてつもない危機に瀕していると思う。(タリバンは)最高の装備、最高のロケット、最高の戦車とヘリコプター、アパッチ・ヘリコプターを持っている。数多くあり、非常に価値のある物だ――ところでロシアはそれらを欲しがっている。調査のためであり、我々がはるかに優れた技術を持っているからだ。また中国も欲しがっている」とトランプは警告した。

「これはもっともばかなことだ――おそらく米国の歴史上でなされた最もばかな行動だったと思う。これが起こるのを許したのであり、軍隊を引き揚げてから『ああ、人々を脱出させたいと思います』と言っている」

トランプは、米国中央軍司令官のケネス・「フランク」・マッケンジー・ジュニア将軍が、米国は8月31日までに完全撤退することについて、タリバンと「共通の目的を共有」していると述べたことを批判した。

「その共通の目的を生かし続ける限り、彼ら有益な協力相手だった。彼らは我々の安全上の懸念の一部を縮小させ、協力していくのに有益だった」と司令官は述べた。

「マッケンジー将軍がタリバンが我々を守ると言うのを聞いたが、タリバンは敵だ。私はタリバンの指導者と取引した。この人物はあまり単純な男ではないし、ボーイスカウトではない」とトランプは怒りをあらわにした。

トランプはその後司会のショーン・ハニティに、自身がタリバン指導者のアブドゥル・バラダルと直接会談と交渉を行った際に、不当な行為があれば米軍による10倍の報復を受けることになるとその武闘派に対して明言したと述べた―その姿勢をバイデンの敬意を持った立場と対比させた。

「我々は彼らを完全に支配下に置いていた。動きを見た時はいつも、F-18で攻撃し、その動きは止まった」とトランプは述べた。

「だが我々はアブドゥルのためにそうしたことはほとんどなかった。我々が話した人物だが・・・アブドゥルは誰にも何もさせなかった」

(以下略)

【私の論評】表面を取り繕うだけの、バイデンの中東外交は破綻した(゚д゚)!

ウォークカルチャーのウォークは"Woke"で、もともとは「目覚める」という意味の動詞"wake(ウェイク)"の過去分詞ですが、そこから転じて「社会的正義や人種差別などに敏感なこと」を意味し、「あの映画はwokeだった」「あの人はwokeだ」のように使います。

ウォークカルチャーを標榜する人たちのデモ

wokeであること自体は、一見素晴らしいことかもしれません。しかし、一部ではそれが暴走して「絶対的な正義」を掲げ、自分と違う意見や大らかな意見、あるいは何も気にしない人々を強く非難するような人も出てきています。最近米国でしばしば話題となる「キャンセルカルチャー」もその流れでしょう。

キャンセルカルチャーとは、著名人やインフルエンサーの過去の発言などを掘り出し、前後の文脈や時代背景を無視して徹底的に糾弾するという潮流です。キャンセルとは「いらない/受け入れられない」を意味し、SNS上でさまざまな著名人が「おまえなんかキャンセルしてやる」とばかり吊るし上げられています。

例えば、2019年2月のアカデミー賞授賞式で司会を務めるはずだった黒人コメディアンのケヴィン・ハートは、約10年前の同性愛嫌悪的な発言がwokeな人たちの目に留まり大炎上。大役を辞退するに至りました。

私が個人的にも驚いたのは、アンダーグラウンド・コミックス運動の中心人物である作家のロバート・クラムまでもが"キャンセル対象"となったことです。

社会秩序を守るためにコミックスの表現が厳しく規制されていた1960年代、クラムはメインストリームでは決して描けない過激な性的表現、暴力、ドラッグ、差別......など社会の病んだ部分をテーマに、グロテスクな画風でアンダーグラウンドシーンを牽引(けんいん)しました。

彼の作品はたびたび摘発対象となり、販売した書店の店主が逮捕されるなど、麻薬と同じような扱いを受けた時期もありました。

そんな困難を乗り越え、アーティストとして評価されるに至ったクラムは、がんじがらめのメインストリームとは違う場所で独自に自由な表現を勝ち取ったパイオニアといっていいでしょう。彼の挑戦が、コミックスの表現そのものの広がりに寄与したことも紛れもない事実です。

ロバート・クラム

しかし、今や一部の"woke系"の人々にとっては、クラムの作品は「差別的でおぞましいもの」のようです。2018年マサチューセッツ州で開かれたインディ系コミックスの博覧会ではクラムの名前が削除され、先日もメリーランド州での出版系エキスポで、黒人女性漫画家ベン・バスモアがクラムをくさす発言をすると大きな拍手が起きたそうです。

ポップカルチャーを代表する作家で偉大なイノベーターでもあるクラムが、同業者から「表現が不快」との理由でキャンセルされるとは、思ってもみないことでした。

こうした状況を受け、オバマ前大統領は2019年にシカゴで開催されたあるイベントに登壇した際、こう述べました。

「こんなやり方で世の中を変えることなどできない。そうやって気に入らないものに石を投げつけているだけなら、成功には程遠い」

"正義の押しつけ"はリベラルを衰退させるだけという、オバマの忠告は、米国にだけ当てはまるものではないと感じるのは私だけでしょうか。リベラルの動きなど、日本でも少し遅れて、やってくることが多いです。日本もこのようなことにならないことを祈りたいです。

このような風潮を理解していなければ、上のトランプ氏の発言は理解できないでしょう。現在、バイデン政権を巡って信じがたいことが行われています。

たとえば、米軍がアフガニスタンからの退避作戦を円滑に進めるため、退避を希望する米国人やアフガン人の名簿をイスラム主義組織タリバン(Taliban)に提供していたと、米政治専門メディア「ポリティコ(Politico)」が26日に報じました。

この内容は、米当局者はタリバンに米国民、グリーンカード保有者、アフガン人協力者のリストを提供したというスクープです。

退避できなかったアフガン人協力者の命が危ぶまれます。タリバンはすでに外国への協力者をブラックリスト化し、家を訪問して探し回っています。米当局の極めて危険で短絡的で奇怪な行動です。

ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領は報道を完全に否定せず、共和党は騒然となりました。 記者団の質問攻めに遭ったバイデン氏は、タリバンに名簿が渡った可能性を排除せず、「実際に名簿があったとは断言できない」と述べました。

「あったかもしれないが、そのような状況は把握していない」 

さらに、「『これが12人の名前で、彼らが来るから通してほしい』といったようなことはなかった。そういうことも十分あり得た」と述べました。

バイデン氏の発言に、共和党は騒然となりました。ケビン・マッカーシー(Kevin McCarthy)共和党下院院内総務は、「政府が国民の名簿をタリバンに渡すだなんて、この国の歴史の中で考えられなかったことだ」と指摘。

「なぜ安全に移動できる状況をつくらなかったのか」 

米国防総省は、大規模な退避を調整するためにタリバンと連絡を取っていたことを認めています。

国務省関係者は、ナンバープレートや空港への到着時刻など、車両に関する情報が共有されることがあるとした上で、退避を円滑に進めるために退避希望者の名前が伝えられることがあった可能性も否定できないと述べました。

確かにこのようなことは、米国のリベラルのスラング的にいえば、ウォークでないとできないかもしれません。このブログにも最近も掲載しましたが、タリバンは、テロリストであり、過去の行状からして、彼らは信用できず、そのようなテロリストに名簿を渡すなどありえないことです。

ただ、ウォークの立場にたてば、タリバンも差別してはならないということで、タリバンに米国民、グリーンカード保有者、アフガン人協力者のリストを提供することも奇怪なことではないのかもしれません。

まだ、このことがなければ、トランプ元大統領もアフガンからの撤退を決めていたため、バイデンは運が悪かったともいえたかもしれませんが、これでは、誰もバイデンを擁護できないでしょう。

春頃に、バイデンの外交に関して、「さすがバイデンは玄人外交。トランプと違って安心して見ていられる」というような趣旨の事を言っていた日本人識者がいました。そうしてその「玄人外交」の結果がカブールでのテロです。一体何が玄人なのか困惑せざるを得ません。

私が見ている限りでも、ツイッターでよく発言をしている「国際政治学者」だけでも、「さすがバイデンは玄人外交。外交音痴のトランプとは違う。これでアメリカは普通に戻った、よかったよかった」と言ってた識者を五人くらいはいたと思います。

カーブル空港の自爆テロでは米兵も多く亡くなりました。数週間の任務の予定でアフガン入りし、二度と国に戻れず家族にも会えなくなってしまった人たち。以下はその人達の写真です。家族が彼らの笑顔を見ることはもうありません。「イスラム国は日本が好きだ」などとイスラム国擁護をしていた某研究者に改めて怒りが沸いてきます。


米軍はアフガニスタン東部でイスラム国に対する空爆を実施したと発表。さらに、本日は、アフガニスタン国内の過激派勢力「イスラム国(IS)」系組織「IS-K」の「計画者」をドローンで攻撃し、標的1人を殺害したと発表しました。

こんなことをしてもイスラム国を壊滅させることはもちろんできないです。先日のテロに報復した雰囲気を出すための演出でしかありません。表面を取り繕えばいいというバイデン政権の中東外交は完全に破綻したようです。

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